JP2010021285A - 層間接続用導電体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多層プリント基板において、層間接続の接続信頼性を向上することが可能な層間接続用導電体を製造する製造方法を提供する。
【解決手段】銀粒子と錫粒子とを含む導電ペースト25を耐熱プレート21上に印刷形成し、蒸気式リフローはんだ付装置30により、数秒オーダーの短時間だけ、錫粒子の融点以上の温度まで加熱することによって、導電体5を製造する。これにより、層間接続用導電体として必要な強度を備えた導電体5を製造することができる。
【選択図】図5

Description

本発明は、配線層と絶縁層とが交互に積層された多層プリント基板において、隣接する配線層を層間接続するために、絶縁層内のビアホールに配置される層間接続用導電体の製造方法に関する。
従来の多層プリント配線基板においては、例えば特許文献1に記載されるように、絶縁層としての樹脂フィルムに形成されたビアホール内に、導電性の金属粒子に導電性のフィラーや樹脂粒子を添加したものを溶剤に混合させて攪拌した導電ペーストを充填し、この導電ペーストを用いて隣接する配線層(回路パターン層)の層間接続を行なっていた。
ただし、導電ペーストをビアホールに充填するときに、導電ペーストがビアホール以外の樹脂フィルムの表面に付着しないようにするために、ビアホールの導電ペースト充填入口側となる樹脂フィルムの表面に保護フィルムを貼着していた。このように保護フィルムを貼着した樹脂フィルムにビアホールを形成するために、例えば保護フィルム側からレーザ光を照射していた。このレーザ光の照射により、樹脂フィルムの保護フィルムの貼着面とは反対側の面に形成された回路パターン層を底面とする有底孔が形成される。この有底孔をビアホールとして、当該ビアホール内に導電ペーストを充填する。そして、導電ペーストの充填後、保護フィルムを樹脂フィルムから剥離して、ビアホールに導電ペーストが充填された樹脂フィルムを得ていた。
特開2001−24323号公報
従来のように、保護フィルムを用いてビアホールに導電ペーストを充填する場合、まず、レーザ加工などによって、保護フィルム及び樹脂フィルムに、ビアホールとなる有底孔を形成する必要がある。この有底孔の形成時には、必ず加工屑が発生する。
ここで、導電ペーストは、保護フィルム上に塗布され、刷毛等によってビアホール内に押し込まれることによって充填される。従って、加工屑が保護フィルムの表面に付着していると、ビアホール内への導電ペーストの充填時に、その加工屑が導電ペースト中に取り込まれる可能性が生じる。このような加工屑がビアホールに充填された導電ペースト中に混入していると、層間接続の信頼性を低下させる要因となる。このため、導電ペーストを頻繁に交換しなければならず、これにより、製造コストが高くなってしまう。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、多層プリント基板において、層間接続の接続信頼性を向上することが可能な層間接続用導電体を製造する製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の層間接続用導電体の製造方法は、
耐熱プレート上に、形成すべき導電体形状に対応する形状を有するように、銀粒子と錫粒子とを溶剤に混ぜ合わせて製造した導電ペーストを印刷する印刷工程と、
導電ペーストが印刷された耐熱プレートを、蒸気式リフローはんだ付装置により、数秒オーダーの短時間だけ、錫粒子の融点以上の温度まで加熱する加熱工程と、
加熱により固化された導電体を耐熱プレートから回収する回収工程と、を備えることを特徴とする。
請求項1に記載の発明では、従来のように樹脂フィルム(絶縁層)のビアホールに導電ペーストを充填することなく、隣接する配線層を層間接続することができるように、予め、絶縁層のビアホールの形状に対応した導電体を作製する。このように作製された導電体は、絶縁層の各ビアホール内に1個ずつ配置される。従って、ビアホール形成時の加工屑が導電体中に混入する虞はない。このような理由から、予めビアホールの形状に対応した導電体を用いることにより、層間接続の信頼性が低下することを抑制することができる。
特に、請求項1に記載の発明では、銀粒子と錫粒子とを含む導電ペーストを耐熱プレート上に印刷し、蒸気式リフローはんだ付装置により、数秒オーダーの短時間だけ、錫粒子の融点以上の温度まで加熱することによって、導電体を製造している。ここで、錫粒子は、通常、その表面は酸化錫によって覆われている。導電ペーストを固化させて導電体を製造するには、リフロー加熱時に、その酸化錫を破壊して、錫粒子の一部の錫を銀粒子と合金化させる必要がある。本発明では、リフロー装置として、蒸気式リフローはんだ装置を用いているので、熱媒体である蒸気が低温のワーク(導電ペースト)に触れる際に液化して、体積の急激な収縮(爆縮)が生じる。この爆縮のエネルギーが、錫粒子表面の酸化錫を突き破り、その酸化錫が破壊された箇所から溶融した錫が流出し、銀粒子と合金化する。これにより、層間接続用導電体として充分な強度を確保することができる。
ただし、リフロー加熱時間は数秒オーダーの短い時間であるため、銀粒子と合金化するのは、錫粒子の一部に留まる。換言すれば、製造される導電体には、錫と銀との合金部分の他に、錫及び銀がそれぞれ単独の成分として残されている。従って、後に、導電体が、層間接続用導電体として、樹脂フィルムのビアホールに配置された状態で、加熱及び加圧により複数枚の樹脂フィルムが積層されるとき、層間接続用導電体は、樹脂フィルムとともに変形すること、及び錫成分が、回路パターン層を形成する金属層と相互に拡散して金属接合することが可能となる。これにより、層間接続用導電体によって、隣接する回路パターン層を良好に層間接続することができる。
請求項2に記載したように、印刷工程では、形成すべき導電体形状に対応する複数の孔部が形成されたシート状マスクを耐熱プレート上に載置した状態で、シート状マスクの複数の孔部に導電ペーストを充填することにより、耐熱プレート上に、導電体形状に対応する形状を有する導電ペーストを印刷することが好ましい。これにより、導電ペーストを、所望の導電体形状に対応する形状で、耐熱プレート上に容易に印刷することができる。
請求項3に記載したように、シート状マスクは、加熱工程が行なわれる前に耐熱プレートから除去されることが好ましい。これにより、導電ペーストの側面も露出されるので、導電ペーストの加熱を効果的に行なうことができる。
請求項4に記載したように、回収工程は、耐熱プレートを溶剤中に浸漬させた状態で、当該耐熱プレートを超音波により振動させることにより、導電体を耐熱プレートから分離させる工程を含むことが好ましい。これにより、導電体の耐熱プレートからの分離を効率的に行なうことができるとともに、その溶剤により導電体を洗浄することも可能となる。なお、耐熱プレートから分離された溶剤中の導電体は、フィルタで濾して取出せば良い。
請求項5に記載したように、溶剤として、テルピネオールを用いることが好ましい。溶剤として、例えばロジン及び活性剤を含むフラックスを用いた場合、その活性剤の作用により、錫粒子の表面の酸化被膜が除去され、銀粒子と錫粒子との濡れ性が増す。このため、導電ペーストは、耐熱プレートに印刷されたときの形状を維持することが困難になる。それに対して、テルピネオールには、フラックスのような活性作用がないので、導電ペーストの形状をほぼそのまま維持することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、最初に、本実施形態により製造される層間接続用導電体を用いた、多層プリント基板の製造方法の一例を、図1を用いて説明する。図1(a)〜(f)は、多層プリント基板の各製造工程を説明するための工程別断面図である。
図1(a)に示すように、まず、絶縁性基材である樹脂フィルム1の片側表面に導体である金属層2を貼着したフィルムを用意する。樹脂フィルム1は、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂65〜35重量%とポリエーテルイミド樹脂35〜65重量%とからなる厚さ25〜75μmの熱可塑性樹脂フィルムである。金属層2は例えば厚さ18μmの銅箔により形成されている。
次に、導体により構成される回路パターン3を樹脂フィルム1の表面に形成する回路パターン形成工程を実施する。回路パターン形成工程は、エッチング、印刷、蒸着、めっき等により行うことができるが、本実施形態では図1(b)に示すように、図1(a)の樹脂フィルム1に貼着された金属層2をエッチングし、金属層2を所望の回路パターン3に形成して、片面に第1の回路パターン層(配線層)10を作成する。
次に、図1(c)に示すように、回路パターン層10が設けられていない側の樹脂フィルム1の表面に炭酸ガスレーザを照射することにより、樹脂フィルム1に回路パターン3を底面とする有底のビアホール4を複数個形成する(ビアホール形成工程)。各ビアホール4の開口径は、例えば100μm〜150μm程度であって、後述の導電体配置工程で配置される1個の導電体(ペレット)5がビアホール4内に収まる大きさである。つまり、ビアホール4の開口寸法は、円柱状に形成される導電体5の最大径となる部分よりも僅かに大きく形成されている。
ビアホール4の底面となる回路パターン3の部位は、複数の樹脂フィルム1を多層化する際に、回路パターン3の層間接続のための電極となる部位である。ビアホール4の形成においては、炭酸ガスレーザの出力と照射時間等を適切に調整することにより、回路パターン3に穴を開けないようにしている。
ビアホール4の形成には、炭酸ガスレーザを使用する以外にエキシマレーザ等が使用可能である。レーザ以外のドリル加工等によるビアホール形成方法も可能であるが、レーザビームによる穴あけ加工では微細な径で穴あけでき、回路パターン3に過度の損傷を与えないため好ましい。
次に、図1(d)に示すように、導電体5を各ビアホール4に1個ずつ配置する(導電体配置工程)。導電体5は、例えばビアホール4の形成位置に貫通孔を有するメタルマスクを用いてビアホール4内に配置することができる。具体的には、導電体5がメタルマスク上に複数載置され、スキージのような刷毛で導電体5を移動させる。すると、メタルマスクの貫通孔が形成された位置で導電体5がビアホール4へと落下する。これにより、各ビアホール4へ1個ずつ導電体5を配置することができる。また、ビアホール4内に導電体5を配置するには、メタルマスクを使用せず樹脂フィルム1上で導電体5を刷毛等で移動させて、各ビアホール4に1つの導電体が嵌まり込むようにし、残存した余分な導電体5を回収するようにしても良い。
この導電体配置工程で配置された導電体5は、各樹脂フィルム1を積層したときに、隣接する樹脂フィルム1の回路パターンとの電気的接続を確実に行なうべく、ビアホール4の開口縁部の表面と同じ高さか、あるいは僅かに突出していることが好ましい。また、ビアホール4内においてビアホール4の内周面と導電体5の外周面との間には、隙間が形成されていることが好ましい。これは、導電体5をビアホール4内に配置しやすくするとともに、後の加熱加圧工程において、樹脂フィルム1が圧縮されたとき、導電体5が上記隙間を埋めるように変形できるようにするためである。
次に、図1(e)に示すように、図1(a)〜(d)までの工程によって製造された、片面に回路パターン3が形成され、かつビアホール4内に導電体5が配置された樹脂フィルム1を複数枚積層する。そして、樹脂フィルム1を複数枚積層した積層体を、図示しない真空加熱プレス機により、真空条件下において上下両面から加熱しつつ、加圧する。この加熱・加圧工程では、例えば、樹脂フィルム1の積層体を、250〜350℃に加熱しつつ、1〜10MPaの圧力で10〜20分間加圧する。
上述の加熱加圧工程により、複数枚の樹脂フィルム1が相互に熱融着されて一体化する。さらに、ビアホール4内の導電体5が、その両端に位置する回路パターン3と金属接合する。具体的には、導電体5中の錫粒子が溶融して銀粒子と合金化するとともに(このとき、導電体5は、圧縮される樹脂フィルムとともに変形する)、導電体5の錫成分と回路パターン3を構成する銅箔のCu成分とが相互に固相拡散し、導電体5と回路パターン3との界面に固相拡散層を形成する。これにより、隣接する回路パターン3が導電体5により電気的に層間接続された多層プリント基板100が得られる。
次に、本実施形態における層間接続用導電体5の製造方法について、詳しく説明する。
まず、図2に示すように、形成すべき導電体5の形状に対応する複数の孔部23が形成されたシート状マスク22を耐熱プレート21上に載置する。例えば、シート状マスク22は金属製のメタルマスクからなり、耐熱プレートはフッ素樹脂やテフロン(登録商標)樹脂などの樹脂性のプレートからなる。
そして、図2に示す如く、スキージのような刷毛24を用いて、銀粒子と錫粒子とを溶剤に混ぜ合わせて製造した導電ペースト25を、シート状マスク22の複数の孔部23に充填していく。シート状マスク22の孔部23の開口径及び厚さは、例えば、加熱時の収縮量を考慮して、Φ150μm×60μmである。また、導電ペースト25は、銀粒子と錫粒子とを、モノテルペンアルコールの一種であるテルピネオールに混ぜ合わせて製造されたものである。銀粒子には、銀粒子同士の固結を防止するため、ステアリン酸からなる分散材がコーティングされている。これにより、銀粒子と錫粒子とは溶剤中において均一に分布する。
図3に示すように、シート状マスク22の孔部23への導電ペースト25の充填が完了すると、図4に示すように、シート状マスク22を、耐熱プレート21の導電ペースト25の印刷面と垂直方向に移動させる。このようにして、シート状マスク22は、導電ペースト25の充填が完了すると、耐熱プレート21から除去される。この結果、耐熱プレート21上には、所望の導電体形状に対応する形状の導電ペースト25が、印刷形成される。
導電ペースト25が印刷された耐熱プレート21は、図5に示す蒸気式リフローはんだ付装置(VPS装置)30により、リフロー加熱される。すなわち、導電ペースト25が加熱されるときには、シート状マスク22が除去されて、導電ペースト25の側面も露出されている。VPS装置30は、公知のように、フッ素系不活性液体32をヒーター31によって加熱することにより気化させ、その蒸気を熱媒体として、フッ素系不活性液体32の沸点に対応する温度でリフロー加熱を行なうことができるものである。なお、このVPS装置30では、使用する液体の種類に依存してリフロー加熱温度を変化させることができる。また、フッ素系不活性液体32を加熱するヒーター31の温度により、蒸気の量を変化させることにより、リフロー加熱温度を調節することも可能である。蒸気の量が増減すると、蒸気を通じてワークに供給される熱量も増減するので、リフロー加熱温度を調節することができるためである。
本実施形態では、VPS装置30により、導電ペースト25が印刷された耐熱プレート21を、数秒オーダーの短時間(例えば、3秒)だけ、錫の融点(約232℃)以上の温度まで加熱する。
上述したように、樹脂フィルム1を積層して多層基板100を形成するための加熱加圧工程において、樹脂フィルム1のビアホール4に配置される導電体5は、樹脂フィルム1とともに変形する必要がある。このことは、換言すれば、導電体5において、錫及び銀がそれぞれ単独の成分として残されていることが必要ということである。錫及び銀が単独の成分として残されていれば、多層基板100を形成するための加熱加圧工程において、錫成分が溶融するので、導電体5が変形できるためである。もし、導電体5のほぼ全体が錫と銀との合金からなる場合、その融点は非常に高くなるとともに(400℃以上)、導電体5は非常に硬くなる。このため、上述した加熱加圧工程において、導電体5の変形が困難になるとともに、回路パターン3と金属接合できなくなり、接続信頼性が著しく損なわれる。
この点に関して、本実施形態では、VPS装置30によって、数秒オーダーの短時間だけしか導電ペースト25を加熱しないので、銀粒子と合金化するのは錫粒子の一部のみに限られる。そのため、VPS装置30によって導電ペースト25を加熱することにより製造される導電体5には、錫と銀との合金部分の他に、錫及び銀がそれぞれ単独の成分として残される。従って、上述した導電体5が、層間接続用導電体として、樹脂フィルム1のビアホール4に配置された状態で、加熱及び加圧により複数枚の樹脂フィルム1が一体化されるとき、導電体5は、樹脂フィルム1とともに変形することができる。また、導電体5の錫成分が、回路パターン3のCu成分と相互に拡散して金属接合することが可能となる。これにより、導電体5によって、隣接する回路パターン3を良好に層間接続することができる。
ここで、錫粒子は、通常、その表面は酸化錫によって覆われている。このため、導電ペースト25の錫粒子の一部を銀粒子と合金化させて導電体5を製造するには、リフロー加熱時に、その酸化錫を破壊する必要がある。本実施形態では、リフロー装置として、VPS装置30を用いることにより、この問題を解決している。つまり、VPS装置30では、熱媒体である蒸気が低温のワーク(導電ペースト25)に触れる際に液化して、体積の急激な収縮(爆縮)が生じる。この爆縮のエネルギーが、錫粒子表面の酸化錫を突き破る。その結果、酸化錫が破壊された箇所から溶融した錫が流出し、銀粒子と合金化することが可能になる。このように、導電体5において、錫粒子の一部が銀粒子と合金化することにより、層間接続用導電体として充分な強度を確保することができる。
VPS装置30によるリフロー加熱後、冷却及び乾燥を行なってから、図6に示す装置40を用いて、導電体5を回収する。図6に示す装置40は、内部に洗浄液としてアルコールベースの溶剤が充填されている。また、装置40の一面には、超音波振動子41が装着されている。
導電体5を搭載した耐熱プレート21は、図6に示す装置40の溶剤42中に浸漬される。その状態で、超音波振動子41を駆動することにより、耐熱プレート21は、溶剤42を介して伝達される超音波により振動させられる。この振動により、耐熱プレート21上に搭載されていた導電体5は、耐熱プレート21から分離し、溶剤42中に放出される。導電体5が溶剤42中を浮遊することにより、導電体5に付着している煤などの不純物を取り除くことができる。このように、図6に示す装置40は、導電体5の洗浄作用も果たす。その後、溶剤42中の導電体5を、図示しないフィルタを用いて回収する。
以上の製造方法により、樹脂フィルム1のビアホール4の形状に対応した導電体5を作製することができる。このように作製された導電体5は、樹脂フィルム1の各ビアホール4内に1個ずつ配置される。従って、従来のように加工屑が導電体5中に混入する虞はない。このような理由から、予めビアホール4の形状に対応した導電体を用いることにより、層間接続の信頼性が低下することを抑制することができる。
特に、本実施形態では、上述したように、銀粒子及び錫粒子を含む導電ペースト25を、VPS装置30を用いてリフロー加熱することにより、導電体5を製造した。このため、耐熱プレート21上に印刷形成された導電ペースト25の形状を保持しつつ、層間接続用導電体として必要な強度を備えた導電体5を製造することができる。
例えば、リフロー装置として、上述したVPS装置30ではなく、ヒーターや赤外線により、ワークの雰囲気温度を高めることによりリフロー加熱する装置を用いた場合、260℃まで加熱しても、層間接続用導電体として必要な強度は得られなかった。これは、ワークの雰囲気温度を高めるだけでは、上述した錫粒子表面の酸化錫を破壊することができず(酸化錫の融点は1000℃を超える)、その酸化錫により、錫と銀との合金化が妨げられたためと考えられる。
なお、本実施形態では、錫粒子と銀粒子とを含む導電ペーストを製造するために、溶剤として、テルピネオールを用いている。溶剤としては、テルピネオール以外にも、例えばロジン及び活性剤を含むフラックスを用いることも考えられる。しかしながら、フラックスを用いた場合、その活性剤の作用により、錫粒子の表面の酸化被膜が除去され、銀粒子と錫粒子との濡れ性が増す。このため、導電ペースト25をVPS装置30で加熱したときに、導電ペースト25が、耐熱プレート21に印刷されたときの形状を維持することが困難になる。それに対して、テルピネオールには、フラックスのような活性作用がないので、導電ペースト25の形状をほぼそのまま維持して、導電体5を製造することができる。
図7(a)、(b)は溶剤としてテルピネオール及びフラックスを用いたそれぞれの場合に得られる導電体5を示す図であり、図8(a),(b)は、それぞれの導電体5の拡大図である。さらに、図9(a),(b)は、それぞれの導電体5を用いて、多層基板100において、隣接する回路パターン3を層間接続したときの、導電体5の断面を示す図である。
図7,8から確認されるように、フラックスを溶剤として用いた場合には、導電体5は、導電ペースト25の円柱形状を維持することができず、半球形状に近くなっている。それに対して、テルピネオールを溶剤として用いた場合には、導電体5は、ほぼ円柱形状を維持している。この結果、フラックスを用いた場合の導電体5は、樹脂フィルム1のビアホール4内の空間を充分に埋めることができないので、図9(b)に示すように、層間接続時に空孔が各所に発生しているが、テルピネオールを用いた場合の導電体5は、図9(a)に示すように、層間接続時の空孔は僅かとなる。このことから、層間接続用の導電体を製造するには、溶剤としてテルピネオールを用いることが好ましいことが分かる。
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
例えば、上記実施形態では、樹脂フィルム1としてポリエーテルエーテルケトン樹脂65〜35重量%とポリエーテルイミド樹脂35〜65重量%とからなる熱可塑性樹脂フィルムを用いた。しかし、樹脂フィルムは、これに限定されるものではなく、ポリエーテルエーテルケトン樹脂とポリエーテルイミド樹脂に非導電性フィラーを充填したフィルムであってもよいし、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、液晶フィルムなどを使用することもできる。
(a)〜(f)は、多層プリント基板の各製造工程を説明するための工程別断面図である。 耐熱プレート上へ導電ペーストを印刷する印刷工程を説明するための図である。 印刷工程が完了した状態を示す図である。 耐熱プレートからシート状マスクを取り外した状態を示す図である。 導電ペーストが印刷された耐熱プレートに対してリフロー加熱するための蒸気式リフローはんだ付装置を示す図である。 耐熱プレートから導電体を分離して回収するための装置を示す図である。 (a)、(b)は溶剤としてテルピネオール及びフラックスを用いたそれぞれの場合に得られる導電体を示す図である。 (a),(b)は、図7(a),(b)のそれぞれの導電体の拡大図である。 (a),(b)は、図8(a),(b)それぞれの導電体を用いて、多層基板において隣接する回路パターンを層間接続したときの、導電体の断面を示す図である。
符号の説明
1…樹脂フィルム(絶縁性基材)、2…金属層(導体)、3…回路パターン、4…ビアホール、5…導電体、21…耐熱プレート、22…シート状マスク、23…孔部、24…スキージ(刷毛)、25…導電ペースト、30…蒸気式リフローはんだ付装置(VPS装置)、31…ヒーター、32…フッ素系不活性液体

Claims (5)

  1. 配線層と絶縁層とが交互に積層された多層プリント基板において、隣接する配線層を層間接続するために、絶縁層内のビアホールに配置される層間接続用導電体の製造方法であって、
    耐熱プレート上に、形成すべき導電体形状に対応する形状を有するように、銀粒子と錫粒子とを溶剤に混ぜ合わせて製造した導電ペーストを印刷する印刷工程と、
    前記導電ペーストが印刷された耐熱プレートを、蒸気式リフローはんだ付装置により、数秒オーダーの短時間だけ、前記錫粒子の融点以上の温度まで加熱する加熱工程と、
    前記加熱により固化された導電体を前記耐熱プレートから回収する回収工程と、を備えることを特徴とする層間接続用導電体の製造方法。
  2. 前記印刷工程では、形成すべき導電体形状に対応する複数の孔部が形成されたシート状マスクを前記耐熱プレート上に載置した状態で、前記シート状マスクの複数の孔部に前記導電ペーストを充填することにより、前記耐熱プレート上に、前記導電体形状に対応する形状を有する導電ペーストを印刷することを特徴とする請求項1に記載の層間接続用導電体の製造方法。
  3. 前記シート状マスクは、前記加熱工程が行なわれる前に前記耐熱プレートから除去されることを特徴とする請求項2に記載の層間接続用導電体の製造方法。
  4. 前記回収工程は、前記耐熱プレートを溶剤中に浸漬させた状態で、当該耐熱プレートを超音波により振動させることにより、前記導電体を前記耐熱プレートから分離させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の層間接続用導電体の製造方法。
  5. 前記溶剤として、テルピネオールを用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の層間接続用導電体の製造方法。
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