JP2010020149A - 表示素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】安定性に優れた電気化学的な表示素子の製造方法を提供する。
【解決手段】一対の対向基板1a,1b間に、少なくとも電解質液5を有する電気化学的な表示素子の製造方法において、該電解質液は、互いに粘度が異なり、混和あるいは相溶して一つの電解質液となる特性を有する少なくとも二つの成分から構成され、一対の対向基板の少なくとも一方の基板に、電解質液成分の中で最も粘度の高い成分A(3)を付与した後に、最も粘度の低い成分B(4)を付与して製造することを特徴とする表示素子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、新規の電気化学的な表示素子の製造方法に関するものである。
近年、パーソナルコンピューターの動作速度の向上、ネットワークインフラの普及、データストレージの大容量化と低価格化に伴い、従来紙への印刷物で提供されたドキュメントや画像等の情報を、より簡便な電子情報として入手、電子情報を閲覧する機会が益々増大している。
この様な電子情報の閲覧手段として、従来の液晶ディスプレイやCRT、また近年では、有機ELディスプレイ等の発光型が主として用いられているが、特に、電子情報がドキュメント情報の場合、比較的長時間にわたってこの閲覧手段を注視する必要があり、これらの行為は人間に優しい手段とは言い難く、一般に発光型のディスプレイの欠点として、フリッカーで目が疲労する、持ち運びに不便、読む姿勢が制限され、静止画面に視線を合わせる必要が生じる、長時間読むと消費電力が嵩む等が知られている。
これらの欠点を補う表示手段として、外光を利用し、像保持の為に電力を消費しない、いわゆるメモリー性を有する反射型ディスプレイが知られているが、下記の理由で十分な性能を有しているとは言い難い。
すなわち、反射型液晶等の偏光板を用いる方式は、反射率が約40%と低いため白表示に難があり、また構成部材の作製に用いる製法の多くは簡便とは言い難い。また、ポリマー分散型液晶は高い電圧を必要とし、また有機物同士の屈折率差を利用しているため、得られる画像のコントラストが十分でない。また、ポリマーネットワーク型液晶は駆動電圧が高いことと、メモリー性を向上させるために複雑なTFT回路が必要である等の課題を抱えている。また、電気泳動法による表示素子は、10V以上の高い電圧が必要となり、電気泳動性粒子凝集による耐久性に懸念がある。
これら上述の各方式の欠点を解消する表示方式として、エレクトロクロミック表示素子(以下、EC方式と略す)や金属または金属塩の溶解析出を利用するエレクトロデポジション方式(以下、ED方式と略す)などの電気化学方式が知られている。これらの方式は簡易な素子構成で形成でき、3V以下の低電圧で駆動できるという利点がある。EC方式は、エレクトロクロミック材料の選択によりフルカラー表示が可能であり、ED方式は、黒と白のコントラストや黒品質に優れる等の利点があり、様々な方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
このような電気化学方式の表示素子を製造する方法としては、LCD等の表示素子の製造で知られている真空注入方式が広く用いられている。この真空注入方式は、注入口を設けたセルを、真空容器内で脱気し、注入口を電解質液(電解質層を形成する液)に浸漬した後、常圧に戻すことにより電解質液をセル内に注入するという方法である。
このような真空注入方式に適する電解質液は、比較的粘度が低いものである。使用する真空注入装置により差はあるが、せいぜい数Pa(パスカル)・s程度と言われている。しかしながら、電気化学的な表示素子によっては、用いる電解質液が数十Pa・s以上の高粘度液体である場合も多く、このような場合、真空注入法で表示素子を製造しようとすると、非常に長時間要し、電解質液が細部まで行き渡らないことによる欠陥を生じることがある。特に、表示素子のように、面積に対して厚みが薄い形状を取るため、特に細部まで液を行き渡らせるのが困難になる。
注入する電解質液の粘度を下げるためには、液を加温することが考えられるが、電解質液に含まれる成分によっては、加温により揮発して成分比が変動したり、化学的な反応により性質が変化してしまうこともあり、問題を抱えている。
米国特許第4,240,716号明細書 特許第3428603号公報 特開2003−241227号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、安定性に優れた電気化学的な表示素子の製造方法を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.一対の対向基板間に、少なくとも電解質液を有する電気化学的な表示素子の製造方法において、該電解質液は、互いに粘度が異なり、混和あるいは相溶して一つの電解質液となる特性を有する少なくとも二つの成分から構成され、一対の対向基板の少なくとも一方の基板に、電解質液成分の中で最も粘度の高い成分Aを付与した後に、最も粘度の低い成分Bを付与して製造することを特徴とする表示素子の製造方法。
2.前記表示素子は、一対の対向基板と周辺部材とから構成するセル形状を有し、前記電解質液成分の中で最も粘度の高い成分Aを、セル形成前に該一対の対向基板の少なくとも一方の基板に付与し、次いで、セル形成を行った後に、前記最も粘度の低い成分Bをセル内部に付与することを特徴とする前記1に記載の表示素子の製造方法。
3.前記最も粘度の低い成分Bが、真空注入法により付与されることを特徴とする前記1または2に記載の表示素子の製造方法。
4.前記表示素子が、金属の溶解析出により画像表示を行う電気化学な表示素子であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
5.前記表示素子が、エレクトロクロミック系化合物の着消色により画像表示を行う電気化学的な表示素子であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
6.前記表示素子が、金属の溶解析出による画像表示とエレクトロクロミック系化合物の着消色による画像表示を組合せた、白表示及び黒表示とその他の色の表示を行う電気化学的な表示素子であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
7.前記電解質液が、顔料粒子を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
8.前記電解質液が、高分子成分を含有することを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
9.前記電解質液が、イオン性液体を含有することを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
10.前記電解質液が、低沸点溶媒を含有することを特徴とする前記1〜9のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
11.前記電解質液が、下記一般式(1)または(2)で表される化合物を含有することを特徴とする前記5〜10のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
Figure 2010020149
〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、Rはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRは同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
一般式(2)
−S−R
〔式中、R、Rは各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。〕
本発明により、安定性に優れた電気化学的な表示素子の製造方法を提供することができた。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、一対の対向基板間に、少なくとも電解質液を有する電気化学的な表示素子の製造方法において、該電解質液は、互いに粘度が異なり、混和あるいは相溶して一つの電解質液となる特性を有する少なくとも二つの成分から構成され、一対の対向基板の少なくとも一方の基板に、電解質液成分の中で最も粘度の高い成分Aを付与した後に、最も粘度の低い成分Bを付与して製造することを特徴とする表示素子の製造方法により、安定性に優れた電気化学的な表示素子の製造方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
以下、本発明の表示素子の製造方法の詳細について説明する。
〔対向基板への電解質液の付与方法〕
本発明の表示素子の製造方法の特徴を、図を交えて説明する。なお、ここに示す図は、本発明の好ましい実施の形態の一例を示すものであり、本発明はここで例示する製造方法にのみ限定されるものではない。
図1〜図4に、表示素子を製造する際のセル形成及び各電解質液成分の各付与手順を示した概略図である。
図1に示す表示素子の製造方法は、b)に示すように、一方の対向基板1a上の周辺部に、シール剤を用いて、開口部を有する周辺部材2を付与した後、c)に示すように、対向基板1a上の周辺部材2内部に、電解質液成分の中で最も粘度の高い成分A(3)を中心部に供給する。次いで、d)に示すようにその上部を他方の対向部材(主には、表示側の透明基板)1bで蓋をして、セルを形成する。d)でセルを形成した状態で、セルを真空容器内で脱気し、開口部を最も粘度の低い成分B(4)に浸漬した後、常圧に戻すことにより、e)に示すように電解質液の成分B(4)をセル内に注入する。この状態で、最も粘度の高い成分A(3)と最も粘度の低い成分B(4)とは相溶して、f)に示すように一つの電解質液5を形成する。
図2に示す表示素子の製造方法は、図1で示した製造工程のうち、工程b)と工程c)の順序を入れ替えて製造する方法であり、一方の対向基板1a上に電解質液成分の中で最も粘度の高い成分A(3)を中心部に供給した後、対向基板1a上の周辺部に、シール剤を用いて、開口部を有する周辺部材2を形成する方法である。
図3に示す表示素子の製造方法は、図2で示した製造工程のうち、工程d)と工程e)の順序を入れ替えて製造する方法である。工程c)までに、一方の対向基板1a上に電解質液成分の中で最も粘度の高い成分A(3)と周辺部材2を形成した後、開放系で最も粘度の低い成分B(4)を注入した後、e)に示すようにその上部を他方の対向部材(表示側透明基板)1bで蓋をして、セルを形成する方法である。
図4に示す表示素子の製造方法は、図2で示した製造工程のうち、工程b)における電解質液成分の中で最も粘度の高い成分A′(3)を、単一の液塊ではなく、ストライプ状あるいは微小液滴(ドット)として分割付与する方法である。
図5は、周辺部材に電解質液注入の開口部を形成する方法の一例を示した概略斜視図である。
上記図1〜図3に示す表示素子の製造方法においては、セルを真空容器内で脱気して、開口部より最も粘度の低い成分B(4)を注入するが、その開口部の形成方法を図5に示す。
図5の(a)に示す開口部6の形成方法は、一方の対向基板1a上に周辺部材2を付与した後、周辺部材2の一部を除去して、開口部6を形成する方法である。
図5の(b)に示す開口部の形成方法は、一方の対向基板1a上に周辺部材2を付与する際に、その一部に障害物7を配置し、適当な時期の障害物7を取り除くことにより、開口部6を形成する方法である。
図5の(c)、(d)に示す開口部の形成方法は、図1あるいは図2に示した製造工程のd)まで行い、対向基板1a、周辺部材2及び対向基板1bによりセルを形成した後、図5の(c)では側面部に、図5の(d)ではコーナー部に、表示部分に影響のない領域の基板の一部を一緒に切り欠くことで開口部6に電解液の吸入口8を設ける方法である。
次いで、本発明の製造方法で製造される電気化学な表示素子の各構成要素の詳細について説明する。
〔基板〕
本発明の表示素子に適用可能な対向基板としては、下記の各基板を挙げることができる。
本発明で用いることのできる基板のなかで、表示側基板は透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。
また、対向基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
〔電解質液〕
本発明に係る電解質液とは、電位差に応じてイオン伝導性を示し、電気化学反応による着色と消色を可能とするものである。その目的を達成するために、有機溶媒、電解質、イオン性液体、電気活性物質、錯化剤、白色散乱物、高分子バインダー等を必要に応じて選択して構成することができる。
本発明の表示素子の製造方法においては、電解質液は、少なくとも第1に付与される最も粘度の高い成分Aと、後から付与される最も粘度の低い成分Bとの2つの成分に分離調製される。先に付与される成分Aは、後から付与される成分Bに比べて粘度が高い。その粘度の範囲は使用する装置や電解質液を構成する成分により異なるため、明瞭に示すことは難しいが、現状では、後から付与される成分Bの粘度が、せいぜい100Pa・s程度に抑えられるように調製されることが好ましい。すなわち、後から付与される成分Bの粘度をせいぜい100Pa・s程度に抑えることにより、真空注入のような汎用の真空注入装置を適用することが可能となる。この時、先に付与される成分Aの粘度は、100Pa・sより大きくなる。成分Aの粘度により、好ましい付与方法が選択される。
最も高粘度の成分Aは、基板上に付与された時に、自立的に存在することが可能な程度の粘度であることが好ましい。流動性を有すると、セルの形成などの後工程で、成分が不要な位置に流れ出してしまうなど、取り扱いが困難になる。
先に付与される最も高粘度の成分Aには、揮発性成分は含まれないことが好ましい。揮発性成分が含まれると、最も高粘度の成分Aの付与から、最も低粘度の成分Bの付与による表示素子の形成までの間で、最も高粘度の成分Aが周辺環境に曝される時間が長くなり、揮発性成分が揮発してしまう可能性が高くなるからである。
〔電解質〕
本発明でいう電解質とは、電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)という。
電解質とは、一般に、水などの溶媒に溶けて、その溶液がイオン伝導性を示す物質をいう。
このような物質としては、カリウム化合物としてKCl、KI、KBr等、リチウム化合物としてLiBF、LiClO、LiPF、LiCFSO等、テトラアルキルアンモニウム化合物として過塩素酸テトラエチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム、ホウフッ化テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等が挙げられる。さらに、I/I 、Br/Br 、キノン/ハイドロキノン等の酸化還元対になる化合物を用いることができる。
上記のように、溶媒に溶けてイオン伝導性を示す物質に加え、イオン性液体を電解質として用いることもできる。本発明でいうイオン液体とは、常温溶融塩とも言われ、融点が100℃以下の塩である。この塩は同数のカチオンとアニオンから構成されており、分子構造によって融点が室温以下の物質も数多く存在し、これらは溶媒をまったく加えなくても室温で液体状態である。イオン性液体は、強い静電的な相互作用をもっているため蒸気圧がほとんどないことが大きな特徴であり、高温でも蒸発がなく揮発しない。
本発明に用いるイオン性液体としては、一般的に研究・報告されている物質ならばどのようなものでも構わない。特に有機のイオン性液体は、室温を含む幅広い温度領域で液体を示す分子構造がある。
本発明で好適に用いることができるイオン性液体は、式Qで表され、20〜100℃、好ましくは20〜80℃、より好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは20〜40℃、特に20℃で液体として存在する塩のことを指し、粘度(25℃)は、常温で融体である限り特に制限されないが、好ましくは1〜200mPa・sである。さらに、式中Q+で表されるカチオン成分はオニウムカチオンが好ましく、さらに好ましくはアンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、スルホニウムカチオン及びホスホニウムカチオンである。
上述のイオン性流体について具体的に詳述すると、上式中のQとしては、R、R、R、R=CR、R=CR[ここで、RからRは、互いに独立して、水素、飽和または不飽和の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基、R−X−(R−Y−)−(式中、Rは炭素数4以下のアルキル基、Rは炭素数4以下のアルキレン基、XおよびYは酸素原子または硫黄原子、nは0〜10の整数を示す)を表し、これらの基は置換基を有していても良い]から成る群から選択されるアンモニウムおよび/またはホスホニウムイオン、R=CR−R−RC=N、R−R−S、R=CR−R−RC=P(ここで、R、RおよびRは、前記で定義したものと同じであり、そしてRは、炭素数1〜6のアルキレンまたはフェニレン基を表し、これらの基は置換基を有していても良い)から成る群から選択される第四級アンモニウムおよび/またはホスホニウムイオン、さらには下記一般式で表される窒素、硫黄および燐原子から選ばれる原子を1、2または3個含む窒素、硫黄および燐原子含有複素環から誘導されるアンモニウムイオン、スルホニウムイオンまたはホスホニウムイオンなどを挙げることができる。
Figure 2010020149
式中RおよびRはこの上で定義した通りであり、Zは、N、N=C、S、PあるいはP=Cを含む4〜10員環を構成しうる原子を指し、この構成する原子には置換基を有していても良い。
上述の中でRからRの具体的な例はとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどの直鎖又は分枝を有するアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどのシクロアルキル基、無置換あるいはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、水酸基、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等の各基)、カルボキシル基、アセチル基、プロパノイル基、チオール基、低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等の各基)、アミノ基、低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基などの置換基を1〜3個有するフェニル、ナフチル、トルイル、キシリル等のアリール基、ベンジルなどのアラルキル基などを挙げることができる。また、Rの具体的な例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル基などのアルキル基などが挙げられ、Rとしてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン基などのアルキレン基などを挙げることができる。さらにRの具体的な例はとしては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのアルキレン基、フェニレンなどのフェニレン基などを挙げることができる。
また、式中のAで表される対アニオンとしては、ヘキサフルオロ燐酸塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、フルオロスルホン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、硝酸塩、アルキルスルホン酸塩、フッ化アルキルスルホン酸塩または水素硫酸塩を表す。
さらに、WO95/18456号、特開平8−259543号、特開2001−243995、電気化学第65巻11号923頁(1997年)、EP−718288号、J.Electrochem.Soc.,Vol.143,No.10,3099(1996)、Inorg.Chem.1996,35,1168〜1178等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩なども本発明に応じては適時選択して用いることができる。
〔金属塩化合物〕
本発明に係る金属塩化合物とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀、ビスマスである。
(銀塩化合物)
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中でハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
本発明に係る電解質液に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
(ハロゲンイオン、金属イオン濃度比)
本発明の表示素子においては、電解質液に含まれるハロゲンイオンまたはハロゲン原子のモル濃度を[X](モル/kg)とし、前記電解質液に含まれる銀または銀を化学構造中に含む化合物の銀の総モル濃度を[Metal](モル/kg)としたとき、下式(1)で規定する条件を満たすことが好ましい。
式(1):0≦[X]/[Metal]≦0.1
本発明でいうハロゲン原子とは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子、フッ素原子のことをいう。[X]/[Metal]が0.1よりも大きい場合は、金属の酸化還元反応時に、X→Xが生じ、Xは析出した金属と容易にクロス酸化して析出した金属を溶解させ、メモリー性を低下させる要因の1つになるので、ハロゲン原子のモル濃度は金属銀のモル濃度に対してできるだけ低い方が好ましい。本発明においては、0≦[X]/[Metal]≦0.001がより好ましい。ハロゲンイオンを添加する場合、ハロゲン種については、メモリー性向上の観点から、各ハロゲン種モル濃度総和が[I]<[Br]<[Cl]<[F]であることが好ましい。
〔一般式(1)または(2)で表される化合物〕
本発明においては、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤とは、電解質液中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀と配位結合を生じさせたり、銀と弱い供給結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
特に、下記一般式(1)で表されるメルカプト化合物または一般式(2)で表されるチオエーテル化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記一般式(1)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRは同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
一般式(1)のMで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH、N(CH、N(C、N(CH1225、N(CH1633、N(CHCH等が挙げられる。
一般式(1)のZで表される含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
一般式(1)のRで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチル等の各基が挙げられ、アルキルカルボンアミド基としては、例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等の各基が挙げられ、アリールカルボンアミド基としては、例えば、ベンゾイルアミノ等が挙げられ、アルキルスルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールスルホンアミド基としては、例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等が挙げられ、アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ等が挙げられ、アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等の各基が挙げられ、アリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等が挙げられ、アルキルカルバモイル基としては、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等の各基が挙げられ、アリールカルバモイル基としては、例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルファモイル基としては、例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等の各基が挙げられ、アリールスルファモイル基としては、例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等の各基が挙げられ、アルキルスルホニル基としては、例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等が挙げられ、アリールスルホニル基としては、例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等の各基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等の各基が挙げられ、アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル等が挙げられ、アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等の各基が挙げられ、アリールカルボニル基としては、例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等が挙げられ、アシルオキシ基としては、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等の各基が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
次に、一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されているわけではない。
Figure 2010020149
Figure 2010020149
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物1−12、1−18が好ましい。
次いで、前記一般式(2)で表されるチオエーテル系化合物について説明する。
前記一般式(2)において、R、Rは各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。
前記一般式(2)のR、Rで表されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等の各基が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、例えば、オキサゾール環、イミダゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズイミダゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
次に、一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されているわけではない。
2−1:CHSCHCHOH
2−2:HOCHCHSCHCHOH
2−3:HOCHCHSCHCHSCHCHOH
2−4:HOCHCHSCHCHSCHCHSCHCHOH
2−5:HOCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHOH
2−6:HOCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHOH
2−7:HCSCHCHCOOH
2−8:HOOCCHSCHCOOH
2−9:HOOCCHCHSCHCHCOOH
2−10:HOOCCHSCHCHSCHCOOH
2−11:HOOCCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCOOH
2−12:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
2−13:HOOCCHCHSCHCHSCHCH(OH)CH(OH)CHSCHCHSCHCHCOOH
2−14:HCSCHCHCHNH
2−15:HNCHCHSCHCHNH
2−16:HNCHCHSCHCHSCHCHNH
2−17:HCSCHCHCH(NH)COOH
2−18:HNCHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCHNH
2−19:HNCHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCHNH
2−20:HNCHCHSCHCHSCHCHSCHCHSCHCHNH
2−21:HOOC(NH)CHCHCHSCHCHSCHCHCH(NH)COOH
2−22:HOOC(NH)CHCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHCH(NH)COOH
2−23:HOOC(NH)CHCHOCHCHSCHCHSCHCHOCHCH(NH)COOH
2−24:HN(O=)CCHSCHCHOCHCHOCHCHSCHC(=O)NH
2−25:HN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NH
2−26:HNHN(O=)CCHSCHCHSCHC(=O)NHNH
2−27:HC(O=)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(=O)CH
2−28:HNOSCHCHSCHCHSCHCHSONH
2−29:NaOSCHCHCHSCHCHSCHCHCHSONa
2−30:HCSONHCHCHSCHCHSCHCHNHOSCH
2−31:HN(NH)CSCHCHSC(NH)NH・2HBr
2−32:HN(NH)CSCHCHOCHCHOCHCHSC(NH)NH・2HCl
2−33:HN(NH)CNHCHCHSCHCHSCHCHNHC(NH)NH・2HBr
2−34:〔(CHNCHCHSCHCHSCHCHN(CH2+・2Cl
Figure 2010020149
Figure 2010020149
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に例示化合物2−2が好ましい。
本発明に係るメルカプト系化合物またはチオエーテル系化合物は、1種のみで用いても複数種を併用して用いてもよく、電解質液のAgイオンのモル数に対するメルカプト系化合物及びチオエーテル系化合物の合計のモル数が0.2〜2の範囲にあることが好ましい。
〔エレクトロクロミック化合物〕
本発明に係る電解質液には、エレクトロクロミック特性を有するエレクトロクロミック化合物を使用することができる。
本発明に係るエレクトロクロミック化合物(EC化合物)としては、電気化学的な酸化反応及び還元反応の少なくとも一方により発色又は消色する作用を示す限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。EC化合物としては、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物に加え、有機金属錯体、導電性高分子化合物及び有機色素が知られている。
エレクトロクロミック特性を示す有機金属錯体としては、例えば、金属−ビピリジル錯体、金属フェナントロリン錯体、金属−フタロシアニン錯体、希土類ジフタロシアニン錯体、フェロセン系色素などが挙げられる。
エレクトロクロミック特性を示す導電性高分子化合物としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリフェニレンジアミン、ポリベンジジン、ポリアミノフェノール、ポリビニルカルバゾール、ポリカルバゾール及びこれらの誘導体などが挙げられる。
また、例えば、特開2007−112957号に記載されているような、ビスターピリジン誘導体と金属イオンから成る高分子材料もエレクトロクロミック特性を示す。
エレクトロクロミック特性を示す有機色素としては、ビオロゲン等ピリジニウム系化合物、フェノチアジン等アジン系色素、スチリル系色素、アントラキノン系色素、ピラゾリン系色素、フルオラン系色素、ドナー/アクセプター型化合物類(例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン)等が挙げられる。その他、酸化還元指示薬、pH指示薬として知られている化合物を用いることもできる。
(色調によるEC化合物の分類)
本発明に係るEC化合物は、色調変化の点で分類すると、下記3つのクラスに分けられる。
クラス1:酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物。
クラス2:酸化状態で実質無色であり、還元状態である特定の着色状態を示すEC化合物。
クラス3:還元状態で実質無色であり、酸化状態である特定の着色状態を示すEC化合物。
本発明の表示素子においては、目的及び用途により上記クラス1からクラス3のEC化合物を適宜選択することができる。
〈クラス1のEC化合物〉
クラス1のEC化合物は、酸化還元によりある特定の色から別の色に変化するEC化合物であり、その取り得る酸化状態において、二色以上の表示が可能な化合物である。
クラス1に分類される化合物としては、例えば、Vは酸化状態から還元状態へ変化することで橙色から緑色に変化し、同様にRhは黄色から暗緑色に変化する。
有機金属錯体の多くはクラス1に分類され、ルテニウム(II)ビピリジン錯体、例えばトリス(5,5′−ジカルボキシルエチル−2,2′−ビピリジン)ルテニウム錯体は+2〜−4価の間で、順にオレンジ色から、紫、青、緑青色、褐色、赤錆色、赤へと変化する。希土類ジフタロシアニン類の多くも、このようなマルチカラー特性を示す。例えばルテチウムジフタロシアニンの場合、酸化に従い順次、紫色から青、緑、赤橙色へと変化する。
また、導電性ポリマーもその多くは、クラス1に分類される。例えば、ポリチオフェンは酸化状態から還元状態へ変化することで青から赤へと変化し、ポリピロールは褐色から黄色へと変化する。また、ポリアニリン等では、マルチカラー特性を示し酸化状態の紺色から順に青色、緑色、淡黄色へと変化する。
クラス1に分類されるEC化合物は、単一の化合物で、多色表示が可能であると言うメリットを有するが、反面実質無色と言える状態を作れないと言う欠点を有する。
〈クラス2のEC化合物〉
クラス2のEC化合物は、酸化状態で無色乃至は極淡色であり、還元状態である特定の着色状態を示す化合物である。
クラス2に分類される無機化合物としては、下記化合物が挙げられ、各々還元状態でカッコ内に示した色を示す。WO(青)、MnO(青)、Nb(青)、TiO(青)等。
クラス2に分類される有機金属錯体としては、例えば、トリス(バソフェナントロリン)鉄(II)錯体が挙げられ、還元状態で赤色を示す。
クラス2に分類される有機色素としては、特開昭62−71934号、特開2006−71765号等に記載されている化合物、例えば、テレフタル酸ジメチル(赤)、4,4′−ビフェニルカルボン酸ジエチル(黄色)、1,4−ジアセチルベンゼン(シアン)、あるいは特開平1−230026号、特表2000−504764号等に記載されているテトラゾリウム塩化合物等が挙げられる。
クラス2に分類される色素として、最も代表的な化合物はビオロゲン等ピリジニウム系化合物で有る。ビオロゲン系化合物は表示が鮮明であること、置換基を変えることなどにより色のバリエーションを持たせることが可能であることなどの長所を有しているため、有機色素の中では最も盛んに研究されている。発色は、還元で生じた有機ラジカルに基く。
ビオロゲン等ピリジニウム系化合物としては、例えば、特表2000−506629号を初めとして下記特許に記載されている化合物が挙げられる。
特開平5−70455号、特開平5−170738号、特開2000−235198号、特開2001−114769号、特開2001−172293号、特開2001−181292号、特開2001−181293号、特表2001−510590号、特開2004−101729号、特開2006−154683号、特表2006−519222号、特開2007−31708号、2007−171781号、2007−219271号、2007−219272号、特開2007−279659号、特開2007−279570号、特開2007−279571号、特開2007−279572号等。
以下に、本発明に用いることができるビオロゲン等のピリジニウム化合物を例示するが、これらに限定されるものでは無い。
Figure 2010020149
Figure 2010020149
〈クラス3のEC化合物〉
クラス3のEC化合物は、還元状態で無色乃至は極淡色であり、酸化状態である特定の着色状態を示す化合物である。
クラス3に分類される無機化合物としては、例えば、酸化イリジウム(暗青色)、プルシアンブルー(青)等が挙げられる(各々酸化状態でカッコ内に示した色を呈する)。
クラス3に分類される導電性ポリマーとしては、例は少ないが、例えば、特開平6−263846号に記載のフェニルエーテル系化合物が挙げられる。
クラス3に分類される色素としては多数の色素が知られているが、スチリル系色素、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系色素、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール等のアゾール系色素等が好ましい。
以下に、本発明に用いることができるスチリル系色素、及びアジン系色素、アゾール系色素を例示するが、これらに限定されるものでは無い。
Figure 2010020149
Figure 2010020149
本発明の好ましい態様においては、前記EC色素と共に電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩を併用し、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行う。この場合、該金属塩が還元されて黒表示を行う為、EC色素としては酸化により発色するクラス3のEC化合物が好ましく、特に、発色の多様性、低駆動電圧、メモリー性等の点でアゾール系色素が好ましい。
〔一般式(L)で表される化合物〕
本発明において、最も好ましい色素は、下記一般式(L)で表される化合物である。
以下、本発明に係る前記一般式(L)で表されるエレクトロクロミック化合物について説明する。
Figure 2010020149
上記一般式(L)において、Rlは置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rl、Rlは各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−Rl、酸素原子または硫黄原子を表し、Rlは水素原子、または置換基を表す。
Rlが置換基を有するアリール基を表す場合、置換基としては特に制限は無く、例えば以下のような置換基が挙げられる。
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基(例えば、ホスホノエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホノオキシエチル基)等を挙げることができる。また、これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
Rlとしては、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、更に好ましくは置換もしくは無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
R1、Rlで表される置換基としては特に制限は無く、前記Rlのアリール基上への置換基として例示した置換基等が挙げられる。好ましくはRl、Rlは置換基を有しても良い、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基である。Rl、Rlは互いに連結して、環構造を形成しても良いRl、Rlの組み合わせとしては、双方共に置換基を有しても良いフェニル基、複素環基である場合、若しくは何れか一方が置換基を有しても良いフェニル基、複素環基であり、他方が置換基を有しても良いアルキル基の組み合わせである。
Xとして好ましくは>N−Rlである。Rlとして好ましくは、水素原子、アルキル基、芳香族基、複素環基、アシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、アシル基である。
本発明の表示素子においては、上記一般式(L)で表される化合物が、電極表面と化学吸着または物理吸着する吸着性基を有していることが好ましい。本発明でいう化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明でいう物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態である。
本発明において、吸着性基としては化学吸着性の基である方が好ましく、化学吸着する吸着性基としては、−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)が好ましい。
一般式(L)で表されるアゾール色素の中でも、特に下記一般式(L2)で表されるイミダゾール系色素が特に好ましい。
Figure 2010020149
上記一般式(L2)において、Rl21、Rl22は脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アシル基、スルホンアミド基、スルファモイル基を表し、R123は芳香族基または芳香族複素環基を表し、Rl24は水素原子、脂肪族基、芳香族基、芳香族複素環基を表し、RL25は水素原子、脂肪族基、芳香族基、アシル基を表す。
これらRl21からRl25で表される基は、更に任意の置換基で置換されていても良い。ただし、Rl21からRl25で表される基の少なくとも1つは、その部分構造として−COOH、−P=O(OH)、−OP=O(OH)及び−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有する。
一般式(L2)において、Rl21、Rl22で表される基としては、アルキル基(特に分岐アルキル基)、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基が好ましい。Rl23としては置換若しくは無置換のフェニル基、5員もしくは6員環複素環基(例えばチエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基等)が好ましい。Rl24としては置換若しくは無置換の、フェニル基、5員もしくは6員環複素環基、アルキル基が好ましい。Rl25としては、特に、水素原子またはアリール基が好ましい。
また、一般式(L2)で表される化合物を電極上に固定する際、これらRl21〜Rl25で示される基の少なくともひとつに、部分構造として、−P=O(OH)、−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましく、特に、Rl23若しくはRl24で示される基の部分構造として−Si(OR)(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましい。
以下、一般式(L2)で表されるEC色素の具体的化合物例、及び一般式(L2)には該当しないが、一般式(L)に含まれるEC色素の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
これらエレクトロクロミック化合物は、電極、特に閲覧側(表示側)の電極に固定化させることが好ましい。閲覧側電極に固定化されることにより、閲覧濃度の向上を得ることができる。
〔プロモーター〕
本発明の表示素子においては、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物の電気化学反応を促進するために、酸化還元されうる補助化合物(以下、プロモーターと記す)を添加することが好ましい。プロモーターは酸化還元反応の結果として、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものでもよいし、変化するもの、即ち前記電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物であってもよく、電極上に固定化されていてもよく、電解質液中に添加されていてもよい。これらプロモーターは例えば、対極反応物質としての利用あるいは、酸化還元メディエーターとしての利用が考えられる。
例えば、表示電極側で電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を酸化(あるいは還元)発色させる場合、対向電極側でプロモーターの還元(あるいは酸化)反応を利用することによって、低い駆動電圧で高い発色濃度を得ることが可能となる。このようにプロモーターを対極反応物質として利用する場合、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物とは逆の酸化還元活性を有するプロモーターを、対向電極上に固定化して用いることが好ましい。プロモーターを対極物質として用いる場合、プロモーターは酸化還元反応の結果として可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものが好ましい。ただし、本発明の好ましい態様において記載したように、表示素子中に白色散乱物を用いて、プロモーターによる発色を遮蔽するような態様の場合、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化するプロモーター、即ち電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を用いてもよい。このような構成の態様は、プロモーターの選択が容易となり好ましい。また別の態様として、表示電極側の電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物と同色の発色を示すプロモーターを用いることは、好ましい態様の一つである。
一方、酸化還元メディエーターは有機電解合成の分野等で一般に用いられている材料である。有機化合物はそれぞれ固有の酸化電位に加えて、電解法や電解条件にも依存する酸化過電圧を有しており、陽極電位がこれらを合せた酸化電位より高いときに、実際上酸化反応が起こる。陽極電位に実験上の限界があることから、直接法で全ての基質を酸化することは不可能である。高い酸化電位を有する基質を酸化する場合、基質から陽極への電子移動は起こらない。この反応系に低電位で陽極に対して電子移動(酸化)が起こるようなメディエーターを共存させると、まずはメディエーターが酸化され、酸化されたメディエーターによって基質が酸化されて生成物が得られる。この反応系の利点は、基質の酸化電位よりも低い陽極電位で基質を酸化することが可能であることと、酸化されたメディエーターは、基質を酸化してもとのメディエーターに戻るため、理論的には触媒量として作用することである。また低電位での酸化が可能となるため、基質や生成物の分解等も抑えられる。
本発明において、例えば前記基質として酸化発色する電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を用いる場合、触媒量の酸化メディエーターを共存させることにより、低い駆動電圧で表示素子を駆動することが可能となり、表示素子の耐久性が高まる。また表示の切り替え速度の向上、高い発色効率が得られる等の利点がある。同様に、還元メディエーターと、還元発色する電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物の組み合わせでも、上記効果が得られる。
本発明の表示素子においては、有機電解合成の分野で示されているように、単一のメディエーターを用いてもよいし、複数のメディエーターを組み合わせて用いてもよい。本発明においてプロモーターをメディエーターとして用いる場合、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を表示電極上に固定化し、その近傍にプロモーターを局在化させて用いることが好ましい。
本発明においては、プロモーターを対極反応物質として用いてもよく、またメディエーターとして用いてもよい。また両者の目的で、複数のプロモーターを同時に組み合わせて用いてもよい。
プロモーターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。特に対極反応物質として利用する場合には、公知の電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物を利用することが可能である。また、酸化還元メディエーターとして利用する場合は、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に変色する化合物の特性に合わせ、有機合成化学協会誌第43巻第6号(「電気エネルギーを利用する有機合成」特集号)(1985)等に記載されている公知のメディエーターを適宜選択して用いることができる。
本発明に用いることができる好ましいプロモーターとしては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
1)TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシル)等に代表されるN−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体等、N−O結合を有する化合物、
2)ガルビノキシル等、0−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物、
3)フェロセン等のメタロセン誘導体、
4)ベンジル(ジフェニルエタンジオン)誘導体、
5)テトラゾリウム塩/ホルマザン誘導体、
6)フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系化合物、
7)ビオロゲン等ピリジニウム化合物、
その他、ベンゾキノン誘導体、ベルダジル等ヒドラジル遊離基化合物、チアジル遊離基化合物、ヒドラゾン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアリルアミン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、チアントレン誘導体等もプロモーターとして用いることができる。
本発明の表示素子においては、上記1)から7)の範疇のプロモーターが好ましく、特に1)が好ましい。
以下、1)の範疇の化合物について詳細に説明する。
N−オキシル(ニトロキシドラジカルとも呼ばれる)とは、ヒドロキシルアミンの酸素−水素結合がラジカル的に開裂して生じた酸素中心ラジカルである。ニトロキシドラジカルは、下記スキームに示すように2つの可逆的な酸化還元対を有することが知られている。ニトロキシドラジカルは1電子酸化によりオキソアンモニウムカチオンとなり、これが還元されてラジカルを再生する。またニトロキシドラジカルは1電子還元によりアミノキシアニオンとなり、これが酸化されてラジカルを再生する。従って、ニトロキシドラジカルはp型の対極反応物質、若しくはn型対極反応物質として機能することができる。またオキソアンモニウムカチオンは高い酸化能を有しており、ロイコ色素等の酸化が可能である為、メディエーターとして機能し得る。
Figure 2010020149
N−オキシル誘導体は、電解質液中に含有されていても、電極表面上に固定化されていてもよい。電極表面上に固定化する方法は、N−オキシル誘導体に電極表面と化学吸着または物理吸着する基を導入する方法やN−オキシル誘導体をポリマー化して電極表面上に薄膜を形成する方法などが挙げられる。尚、N−オキシル誘導体はN−オキシルラジカルの状態で添加しても良く、またN−ヒドロキシ化合物の状態、更にはオキソアンモニウムカチオンの状態で添加しても良い。
N−オキシル誘導体としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシル)をはじめとして、各種置換基を置換した誘導体が市販されている。また、公知の文献に従って、ポリマーを含め、各種誘導体を容易に合成することができる。
一般に、ニトロキシドラジカルのα位炭素に水素が置換している場合、容易にヒドロキシアミンとニトロンへ不均化してしまうことが知られている。このため、TEMPOのN−オキシル基α位の4つのメチル基は、安定ラジカルとして存在する上での必須の構造と言えるが、逆にこれら4つのメチル基の立体障害によって、反応性が落ちる場合がある。これら活性低下を引き起こさない点で、アザアダマンタンN−オキシル誘導体、或いはアザビシクロN−オキシル誘導体が好ましい。
次に、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体等について説明する。下記スキームに示すように、N−ヒドロキシフタルイミド(NHPI)の電極酸化により生じたフタルイミドN−オキシル(PINO)は、2級アルコールを酸化してケトンを生成する。即ち、NHPIが酸化メディエーターとして機能することが報告されている(Chem.Commun.,1983,479.)。この例から分かるように、NHPI/PINOの酸化還元対は、本発明の表示素子においても、対極反応物質或いはメディエーターとして機能することが理解されよう。またNHPI同様、ヒドロキサム酸誘導体、トリヒドロキシイミノシアヌル酸(THICA)も、プロモーターとして用いることができる。
これらの化合物を用いて、本発明の表示素子を作製する場合、N−OHの状態で添加することが好ましい。N−OHの状態で表示素子を作製した後、表示素子を駆動させて酸化をすることでラジカルが生成する。
Figure 2010020149
上記1)の範疇で示されるプロモーターとしては、下記一般式(M1)で表すことができ、下記一般式(M2)〜(M6)で表されるプロモーターが好ましい。特に、一般式(M6)で表される多環式N−オキシル誘導体が好ましい。尚、一般式(M1)〜(M5)で表されるプロモーターは各種市販されており、容易に入手することができる。また公知の文献に従って、各種誘導体を容易に合成することができる。一般式(M6)で示されるプロモーターは、J.Am.Chem.Soc.,128,8412(2006)及びTetrahedron Letters 49 (2008) 48−52を参考として合成することができる。
また、これらをポリマー化したプロモーターは、例えば、特開2004−227946号公報、同2004−228008号公報、同2006−73240号公報、同2007−35375号公報、同2007−70384号公報、同2007−184227号公報、同2007−298713号公報等を参考にして合成することができる。
はじめに、一般式(M1)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
上記一般式(M1)において、Rm11及びRm12は各々独立に置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基若しくは>C=O、>C=S、>C=N−Rm13を介して窒素原子と結合する基を表す。Rm13は水素原子、若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基または複素環基を表す。また、Rm11及びRm12は互いに連結して、環状構造を形成しても良い。
脂肪族炭化水素基には、鎖状及び環状のものが包含され、鎖状のものには直鎖状のもの及び分岐状のものが包含される。このような脂肪族炭化水素基には、メチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、プロペニル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、iso−ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オクチル、iso−オクチル、シクロオクチル、2,3−ジメチル−2−ブチル等の各基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等が挙げられる。
これら置換基は更に置換基を有していても良い。それらの置換基には、特に制限は無く例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、ピロリルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルフィニル基またはアリールスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ブタンスルフィニル基、シクロヘキサンスルフィニル基、2−エチルヘキサンスルフィニル基、ドデカンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルカンスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、ドデカンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基等)、複素環アゾ基(例えば、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基、オキサゾリルアゾ基、イミダゾリルアゾ基、フリルアゾ基、ピロリルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、ホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。
一般式(M1)で表される化合物は、これら置換基で連結された二量体、三量体等の多量体であっても良く、また重合体で有ってもよい。
次いで、一般式(M2)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
上記一般式(M2)において、Rm21、Rm22、Rm23、Rm24は、各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、前記一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。
は環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Zは更に置換基を有していても良く、それらの置換基としては、前記一般式(M1)で例示したのと同様の置換基が挙げられる。また、Rm21〜Rm24及びZを構成する原子は互いに連結して、環状構造を形成しても良く、例えば、窒素原子と共にアザノルボルネン構造、アザアダマンタン構造等の多環式構造を取っても良い。
一般式(M2)で表される化合物の環構造としては、ピペリジン環、若しくはピロリジン環、アザアダマンタン環が好ましい。
次いで、一般式(M3)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、一般式(M3)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
上記一般式(M3)において、Rm31は直接、若しくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を介してカルボニル炭素原子に置換する、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表し、Rm32は置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。また、Rm31及びRm32は互いに連結して、環状構造を形成してもよい。
一般式(M3)において、Rm32は芳香族炭化水素基が好ましく、特に置換基を有しても良いフェニル基が好ましい。フェニル基上の置換基としては、シアノ基、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基が好ましい。Rm31としては、カルボニル炭素原子に直接結合したフェニル基若しくは脂肪族炭化水素基が好ましく、特に、分岐アルキル基及びシクロアルキル基が好ましい。なお、一般式(M3)で表される化合物はN−OHの状態で添加し、表示素子を作製するのが好ましい。
次いで、一般式(M4)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、上記一般式(M4)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
上記一般式(M4)において、Zは環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Zは更に置換基を有していても良く、それらの置換基としては、一般式(M1)で例示した置換基が挙げられる。また、Zは縮合環で有っても良い。なお、一般式(M4)で表される化合物はN−OHの状態で添加し、表示素子を作製するのが好ましい。
次いで、一般式(M5)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、前記一般式(M5)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
上記一般式(M5)において、Rm51〜Rm55は各々独立に置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。
一般式(M5)において、Rm51は芳香族炭化水素基が好ましく、特に置換基を有しても良いフェニル基が好ましい。フェニル基上の置換基としてはシアノ基、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基が好ましい。Rm52〜Rm55としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
次いで、一般式(M6)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
上記一般式(M6)において、Rm61及びRm62は各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基を表す。Rm61及びRm62としては、水素原子若しくは、炭素数4以下の直鎖アルキル基が好ましく、Rm61及びRm62の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
、Z及びZは、各々環状構造を形成するのに必要な原子群(例えば、炭素、窒素、酸素、イオウ等)を表し、各々5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Z、Z及びZは更に置換基を有していても良い。
nは0または1を表すが、n=0の時、一般式(M6)はビシクロ化合物を表し、n=1の場合は、トリシクロ化合物を表す。
一般式(M6)で表される化合物としては、n=1が好ましく、特に、アザアダマンタン誘導体が好ましい。
以下に、本発明で用いることのできるプロモーターの具体例を示すが、これらに限定されるものでは無い。
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
Figure 2010020149
〔白色散乱物〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子の電解質液には、反射型表示で白色を呈するために、白色散乱物を含有させることが好ましい。
本発明で適用可能な白色散乱物としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
本発明では、上記白色散乱物粒子の中でも二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛が好ましく用いられる。また、無機酸化物(Al、AlO(OH)、SiO等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンを用いることができる。
これらの白色散乱物粒子のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
〔溶媒〕
必要に応じ、電解質液に溶媒を含有することができる。溶媒としては、一般に電気化学セルや電池に用いられ、本発明で用いられるエレクトロクロミック化合物を初め、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩化合物、プロモーター等各種添加剤を溶解できる溶媒であればいずれも使用することができる。
具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、エチレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、ジメトキシエタン、プロピオンニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸エチルジメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチルリン酸トリへキシル、リン酸トリヘプチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリノニル、リン酸トリデシル、リン酸トリス(トリフフロロメチル)、リン酸トリス(ペンタフロロエチル)、リン酸トリフェニルポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコール等が使用可能である。さらに、常温溶融塩も溶媒として使用可能である。前記常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している(即ち、液状の)イオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
本発明に用いる電解質液溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが好ましい。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
本発明において、特に好ましく用いられる溶媒は、下記一般式(S1)、(S2)で表される化合物である。
(一般式(S1)、(S2)で表される化合物)
本発明の表示素子においては、電解質液が、下記一般式(S1)または(S2)で表される化合物を含有することが好ましい。
はじめに、一般式(S1)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
上記一般式(S1)において、Lは酸素原子またはアルキレン基を表し、Rs11〜Rs14は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基し、これらの基は更に任意の置換基で置換されていても良い。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
以下、一般式(S1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
Figure 2010020149
次いで、本発明に係る一般式(S2)で表される化合物について説明する。
Figure 2010020149
上記一般式(S2)において、Rs21、Rs22は各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
以下、一般式(S2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
Figure 2010020149
上記例示した一般式(S1)及び一般式(S2)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(S1−1)、(S1−2)、(S2−3)が好ましい。
本発明に係る一般式(S1)、(S2)で表される化合物は電解質液溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,Nジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electorlytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
(電解質液の有機溶媒)
本発明に係る電解質液には、有機溶媒としては、電解質液を形成した後、揮発を起こさず電解質液に留まることができる沸点が120〜300℃の範囲にある有機溶媒であることが好ましく、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、無水酢酸、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート等を挙げることができる。
上記有機溶媒の中でも、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチルラクトン等のカルボン酸エステル系化合物を用いることが好ましい。
〔電解質液添加の増粘剤〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される素子に用いられる電解質液は、表示素子の諸性能を達成するために、所望の粘度に調整される。
電解質液の粘度を調整するためには、高分子化合物やゲル化剤と言われる化合物を添加する方法が広く知られている。目的で用いられる化合物の例としては、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、ブチラール樹脂、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリアミド、セルロース、ポリプロピレンオキサイド、ナフィオン等が挙げられる。前記ゲル化剤としては、特に限定されず、オキシエチレンメタクリレート、オキシエチレンアクリレート、ウレタンアクリレート、寒天、等が挙げられる。なお、ゲル化液系電解質は、ポリマーの前駆体モノマーやゲル化剤の前駆体を液系電解質と混合したのち、前記の通り特定の方法によりセル内に注入した後、ゲル化することにより対向する基板の間に挟持させることができる。
また、特開2008−071749号公報に開示されているように、層状粘土鉱物及び/又は有機化層状粘土鉱物を混合することで、ゲル化させることも可能である。このような電解質は、クレイゲル電解質と呼ばれる。層状粘土鉱物としては、ケイ酸四面体が2次元シート状に結合したフィロケイ酸塩の使用が好ましく、具体的には、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、スティブンサイト等のスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライトなどのバーミキュライト系粘土鉱物、ムスコバイト、フロコバイトなどのマイカなどの、天然又は合成の粘土鉱物をあげることができる。これらのうち、水中で膨潤し、陽イオン交換能を有するスメクタイト系粘土鉱物、膨潤性マイカなどの使用が好ましい。これら層状粘土鉱物の陽イオン交換量は、10〜300ミリ当量/100gのものが好ましい。本発明では、特に、クニミネ工業の天然モンモリロナイト(商品名:クニピアF)、クニミネ工業の合成スメクタイト(商品名:スメクトンSA)、コープケミカルの合成膨潤性雲母(商品名:ソマシフME−100)、合成スメクタイト(商品名:ルーセンタイトSWN、同SWF)が好適に用いられる。本発明で用いる有機化層状粘土鉱物を製造するに際して使用することができる層状粘土鉱物としては、上記で例示したものが挙げられる。有機化層状粘土鉱物は一般的な層間の陽イオン交換を行なうことで得ることができる。例えば、前述のような粘土鉱物の水系スラリーに有機オニウムイオンを添加し、攪拌下反応を完了した後、濾過洗浄乾燥することによって得ることができる。
ここで有機オニウムイオンとしては、層状粘土鉱物の交換無機イオンを置換できるものであれば特に限定はないが、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、オキソニウムイオン、スルホニウムイオン等があげられる。このうちアンモニウムイオンが最も一般的であり、好ましくは第4級アンモニウムイオンであり、具体的には、脂肪族アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、キノリニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ベタイン類、レシチン、カチオン染料(色素)等を例示できる。第4級アンモニウムイオンとしては、例えば、メチルエチルイミダゾリウム、メチルプロピルイミダゾリウム、メチルブチルイミダゾリウム、メチルペンチルイミダゾリウム、メチルヘキシルイミダゾリウム、エチルエチルプロピルイミダゾリウム、エチルプロピルイミダゾリウム、エチルブチルイミダゾリウム、エチルペンチルイミダゾリウム、エチルヘキシルイミダゾリウム、ヒドロキシポリオキシエチレントリアルキルアンモニム、ヒドロキシポリオキシプロピレントリアルキルアンモニウム、ジ(ヒドロキシポリオキシエチレン)ジアルキルアンモニウム、ジ(ヒドロキシポリオキシプロピレン)ジアルキルアンモニム等が挙げられる。有機オニウムイオンを含む有機オニウム塩は、例えば、Cl、Br、I、NO 、OH、CHCOO、CHSO 等のアニオンよりなる塩を挙げることができる。有機化層状粘土鉱物を調整するための有機オニウム塩としては、市販品(例えば、ライオン(株)製のエソカードシリーズ、旭電化工業(株)製のアデカコールCCシリーズ)を用いることができる。
さらに、本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子の電解質は、固体電解質とする使用することもできる。固体電解質としては、室温で固体であり、かつイオン導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレンメタクリレートのポリマー、ナフィオン、ポリスチレンスルホン酸、LiN、Na−β−Al、Sn(HPO・HO等を挙げることができ、特に、オキシアルキレンメタクリレート系化合物、オキシアルキレンアクリレート系化合物又はウレタンアクリレート系化合物を前駆体の主成分とし、当該前駆体を重合することによって得られる高分子化合物等を用いた高分子固体電解質が好ましい。
〔その他添加剤〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子の電解質液には、その他各種性能を向上させる目的で、様々な添加剤を使用することができる。それらは目的に応じて選択され、特に制限されるものではない。
各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
添加剤 RD17643 RD18716 RD308119
頁 分類 頁 分類 頁 分類
化学増感剤 23 III 648右上 96 III
増感色素 23 IV 648〜649 996〜8 IV
減感色素 23 IV 998 IV
染料 25〜26 VIII 649〜650 1003 VIII
現像促進剤 29 XXI 648右上
カブリ抑制剤・安定剤
24 IV 649右上 1006〜7 VI
増白剤 24 V 998 V
硬膜剤 26 X 651左 1004〜5 X
界面活性剤 26〜7 XI 650右 1005〜6 XI
帯電防止剤 27 XII 650右 1006〜7XIII
可塑剤 27 XII 650右 1006 XII
スベリ剤 27 XII
マット剤 28 XVI 650右 1008〜9 XVI
バインダー 26 XXII 1003〜4 IX
支持体 28 XVII 1009 XVII
上記の添加剤は、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を設け、それら補助層中に含有させることも可能である。
〔電極〕
本発明の表示素子においては、対向基板としてそれぞれ電極を用いることができる。
(表示側透明電極)
対向電極のうち、表示側には位置する電極としては、透明電極であることが好ましい。
透明電極としては、透明で電気を通じるものであれば特に制限はない。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。透明電極の厚みは特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
(透明多孔質電極)
透明電極の一つの態様として、上記透明電極上にナノ多孔質化構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
本発明でいうナノ多孔質化構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質化構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO、TiO、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
(グリッド電極:補助電極)
本発明に係る対向電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィ法でパターニングしたり、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。
補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
(電極の形成方法)
透明電極、金属補助電極を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着する方法や、全面形成した後に、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法等が挙げられる。
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
電極材料を塗布方式で形成する場合には、例えば、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェット方式は高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
〈静電インクジェット方式〉
本発明の表示素子においては、複合電極の透明電極及び金属補助電極の少なくとも1方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることが好ましい態様の1つである。さらにノズル内の溶液がノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けた吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
また、凸状メニスカス形成手段を駆動する駆動電圧の印加及び吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を行わせつつ液滴の吐出に際して、凸状メニスカス形成手段の駆動電圧の印加を行わせる第一の吐出制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい。
また、凸状メニスカス形成手段の駆動及び吐出電圧印加手段による電圧印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記凸状メニスカス形成手段による溶液の盛り上げ動作と前記吐出電圧の印加とを同期させて行う第二の吐出制御部を有することを特徴とする液体吐出装置を用いること、前記動作制御手段は、前記溶液の盛り上げ動作及び吐出電圧の印加の後に前記ノズル先端部の液面を内側に引き込ませる動作制御を行う液面安定化制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい形態である。
この様な静電インクジェットを用いて電極パターンを作製することにより、オンデマンド性に優れ、廃棄材料が少なく、寸法精度に優れた電極を得ることができ有利である。
〔その他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いる。
(シール剤)
シール剤は、外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
(柱状構造物)
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
(スペーサー)
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
〔電解質液の付与法〕
本発明においては、電解質液を構成する成分を、予め、低粘度の溶液状成分Bと、より高粘度あるいは固体状の成分Aに分けて個別に調製し、はじめに高粘度あるいは固体状の成分Aを付与することを特徴とする。
より高粘度の液状の成分Aを付与する方法としては、塗布法、印刷法、ディスペンサ法で、基板上に設けることができる。塗布法としては、押し出し塗布法、ディツプコーティング法、スプレー法、スピンコーティング法などが知られている。印刷法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、インクジェット法などを用いることができる。
より低粘度の成分Bは、スプレー法、インクジェット法、注入法により付与することが好ましい。
(スクリーン印刷)
印刷法の中でも特にスクリーン印刷は、高粘度成分の付与だけでなく、シール剤や前記各種構造物を形成する際にも用いることが可能である。
スクリーン印刷法は、所定のパターンが形成されたスクリーンを介し、印刷材料(柱状構造物形成のための組成物、例えば、光硬化性樹脂など)を載せる。そして、スキージを所定の圧力、角度、速度で移動させる。これによって、印刷材料がスクリーンのパターンを介して該基板上に転写される。
スクリーン印刷法で柱状構造物を形成する場合、樹脂材料は光硬化性樹脂に限られず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂も使用できる。熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリエーテル樹脂等が挙げられる。樹脂材料は樹脂を適当な溶剤に溶解する等してペースト状にして用いることが望ましい。
以上のようにして柱状構造物等を基板上に形成した後は、所望によりスペーサーを少なくとも一方の基板上に付与し、一対の基板を電極形成面を対向させて重ね合わせ、空セルを形成する。重ね合わせた一対の基板を両側から加圧しながら加熱することにより、貼り合わせて、表示セルが得られる。
〔電気化学的な表示素子の駆動方法〕
本発明の電気化学的な表示素子においては、析出過電圧以上の電圧印加で黒化銀を析出させ、析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続させる駆動操作を行なうことが好ましい。この駆動操作を行なうことにより、書き込みエネルギーの低下や、駆動回路負荷の低減や、画面としての書き込み速度を向上させることができる。一般に電気化学分野の電極反応において過電圧が存在することは公知である。例えば、過電圧については「電子移動の化学−電気化学入門」(1996年 朝倉書店刊)の121ページに詳しい解説がある。本発明の電気化学表示素子も電極と電解質中の銀との電極反応と見なすことができるので、銀溶解析出においても過電圧が存在することは容易に理解できる。過電圧の大きさは交換電流密度が支配するので、本発明のように黒化銀が生成した後に析出過電圧以下の電圧印加で黒化銀の析出を継続できるということは、黒化銀表面の方が余分な電気エネルギーが少なく容易に電子注入が行なえると推定される。
本発明の電気化学的な表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号の図5に記載されている回路を用いることができる。
〔商品適用〕
本発明の表示素子の製造方法で作製される表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェーカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、ワンタイムパスワード、電子ブック、携帯電話のカバー等各種機器の筐体装飾、キーボード表示、電子棚札、電子POP、電子広告等が挙げられる。特に大画面の表示が求められる電子ブック、電子広告、電子POP等の製造に有効である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《表示素子の製造》
〔表示素子1の製造:本発明〕
(多価オニウム塩化合物1の合成)
下記反応式に従って、N−メチルイミダゾリウムと1,6−ジヨードヘキサンとをトルエン中で、温度80℃で16時間反応させることによって、多価オニウム塩化合物1として、下記式のジイミダゾリウム塩を得た。
Figure 2010020149
(電解質液の成分A1の調製)
上記調製した多価オニウム塩化合物1の50mgを溶解させたイオン性液体1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド2g(下式参照)に、あらかじめトルエン中に膨潤分散させた層状粘土鉱物ルーセンタイトSPNの300mg(無機分約100mg)を攪拌しながら添加し、室温下で3時間攪拌した。反応溶液を静置した後、トルエン溶液を除去した。更に、沈殿物をトルエン洗浄し、乾燥することによりゲル状物質である電解質液の成分A1を得た。
Figure 2010020149
(電解質液の成分B1の調製)
上記イオン性液体1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドに対して0.5mol/Lのヨウ化リチウム、0.3mol/Lのヨウ素、0.58mol/Lの4−tert−ブチルピリジンを混合して、電解質液の成分B1を得た。この電解質液の成分B1は、上記電解質液の成分A1に対し低粘度の液特性である。
(表示素子の作製)
図3に示す表示素子の製造方法に従って、表示素子1を作製した。
ゲル状物質である上記電解質液の成分A1を、市販の厚さ0.7mmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜付きガラス基板a1のITO膜上に、スクリーン印刷法により付与し、その後、ガラス基板1aの周囲部に、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を付与し、厚みと高さがそれぞれ40μmの周辺部材2を形成した。
ゲル状物質である電解質液の成分A1が付与されたガラス基板a1と周辺部材2により構成された内部に、上記電解質液の成分B1をインクジェット法により付与して満たし、その上に、市販の厚さ0.7mmのITO膜付きガラス基板b1を、ITO膜が電解質液の成分B1に接するように置き、溢れた電解質液の成分B1をふき取った後に、UV照射して、周辺部材2とガラス基板b1を強固に接着して、電気化学的な表示素子1を得た。
〔表示素子2の製造:本発明〕
図1に示す表示素子の製造方法に従って、表示素子2を作製した。
市販の厚さ0.7mmのITO膜付きガラス基板a2のITO膜面の周囲に、平均粒径が40μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を付与し、厚みと高さがそれぞれ40μmの周辺部材2を形成した。
ガラス基板a2と周辺部材2により構成された内部に、表示素子1の作製に用いたゲル状物質である電解質液の成分A1をスクリーン印刷法により付与した。
次いで、市販の厚さ0.7mmのITO膜付きガラス基板b2を、ITO膜面側が周辺部材2に接着するように貼り付け、セルを形成した。
シール剤の一部に、図5の(a)に記載の方法により注入口を設け、その対向側にオーバーフロー用の排気口を形成し、注入孔から、表示素子1の作製に用いた低粘度の電解質液の成分B1を押し出し注入し、オーバーフロー口から溢れたところで、注入を停止し、注入孔を封止した後に、オーバーフロー口も封止し、UV照射により周辺部材のシール剤全体を硬化して、セル全体を封止し、表示素子2を得た。
〔表示素子3の製造:本発明〕
上記表示素子2の製造と同様にして、ガラス基板a2、周辺部材2及びガラス基板b2から構成され、内部に電解質液の成分A1を有するセルを形成した後、図5の(d)に記載の形態で、セルのコーナーの1箇所について、ガラス基板a2、b2と周辺部材2を除去して、開口部8を形成した。
次いで、開口部8を設けたセルを真空注入容器内に入れ、減圧処理を行った後、開口部を低粘度の電解質液の成分B1に浸漬し、次いで減圧状態を解除して、真空注入法によりセル内部に低粘度の電解質液の成分B1を注入した。
セル内部全体が低粘度の電解質液の成分B1により満たされたことを確認した後、開口部8を封止材で封止し、次いでUV照射により封止材を硬化して、表示素子3を得た。
〔表示素子4の製造:本発明〕
(対向基板の作製)
〈対向基板a4の作製〉
市販の厚さ0.7mmのITO膜付きガラス基板20cm×30cmの周辺部領域のITO膜を、公知の方法によりエッチングし、配線部を残してITO膜を除去し、対向基板a4とした。
〈対向基板b4の作製〉
対向基板b4として、市販のITO付きTFTガラス基板を20cm×30cmの大きさで用意した。
(電解質液の調製)
〈成分A4の調製〉
分子量が20万のポリエチレンオキシドと二酸化チタン(TiO)とを、質量比で0.2:1.2の割合で混合し、これを均一に分散した後、ポリエチレンオキシドに対し、質量比で2%の割合で架橋剤を添加して、電解質液の高粘度成分である成分A4を調製した。
〈成分B4の調製〉
ジメチルスルホキシド(DMSO)とγ−ブチロラクトン(γBr)を6:4の割合で混合した溶媒に、析出溶解材料として1.00mol/Lのヨウ化銀(AgI)および支持電解質塩として1.33mol/Lの臭化リチウム(LiBr)を溶解して、電解質液の低粘度成分である成分B4を調製した。
(表示素子の作製)
対向基板a4の周囲部に平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を付与し、厚みと高さがそれぞれ20μmの周辺部材を形成した内部に、電解質液の高粘度成分である成分4Aを押し出し塗布法により付与した。その後、対向基板b4を重ね、接着してセルを形成し、表示素子3と同様にして、セルのコーナーの一部を切り欠いて、真空注入法により電解質液の低粘度成分である成分B4を注入し、注入孔を封止した後、UV照射して、表示素子4を形成した。
〔表示素子5の製造:本発明〕
(対向基板の作製)
〈対向基板b5の作製〉
対向基板a4のITO膜が存在する領域に、酸化チタン分散液(Solaronix社製 NanoxideHT)を用い、乾燥膜厚が約5μmの酸化チタンナノ多孔質層を形成した。次に、エレクトロクロミック色素として、下記化合物EC−1を水、ジエチレングリコール、エタノールの混合溶媒に溶解させ、この溶液に酸化チタンナノ多孔質層を浸漬した後、乾燥して、エレクトロクロミック色素を吸着させた対向基板b5を得た。
Figure 2010020149
(電解質液の調製)
〈成分A5の調製〉
酸化チタン(平均一次粒径:0.34μm)を45質量%、ポリエチレングリコール(平均分子量50万)を6質量%含むγ−ブチロラクトン溶液を調製し、これを電解質液の高粘度成分である成分A5とした。
〈成分B5の調製〉
過塩素酸リチウムを5mmol含むγ−ブチロラクトン溶液を調製し、これを電解質液の低粘度成分である成分B5とした。
(表示素子の作製)
図3に示す方法に従って、表示素子5を作製した。
対向基板a4上に、電解質液の高粘度成分である成分5Aを、厚さ40μmとなるようにスクリーン印刷法で塗布し、乾燥させた後、周囲を平均粒径が20μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤で囲んで周辺部材を形成した。次いで、周辺部材内部へ、電解質液の低粘度成分である成分B5を、滴下法により滴下し、電解質液で完全に満たした後に、対向基板b5を色素が吸着した面が内側になる様にして接着した後、UV照射して表示素子5を作製した。
〔表示素子6の製造:本発明〕
(対向基板の作製)
〈対向基板b6の作製〉
上記対向基板b5の作製の作製において、エレクトロクロミック色素として、前記化合物EC−1に代えて、4,4′−ビフェニルジカルボンのエタノール溶液を用いた以外は同様にして、EC色素が吸着した対向基板b6を作製した。
(表示素子の作製)
上記表示素子4の作製において、対向基板b4に代えて、上記対向基板b6を用いた以外は同様にして、表示素子6を作製した。
〔表示素子7の製造:本発明〕
(電解質液の調製)
〈成分A7の調製〉
ポリアクリロニトリル(平均分子量86000)10質量部をジメチルスルホキシド15質量部に溶解し、さらに石原産業社製の二酸化チタンCR−90を20質量部添加して分散させて、高粘度ペーストの成分A7を調製した。
〈成分B7の調製〉
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートとからなるイオン性液体30質量部、19質量部のLiBF、塩化ビスマス18質量部を混合し、120℃に加熱して、電解質液の低粘度成分である成分B7を調製した。
(表示素子の作製)
前記対向基板b4上に、上記調製した成分A7を、スクリーン印刷法により所定量付与した。次いで、周囲を、平均粒径が30μmのガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤を付与し、厚みと高さがそれぞれ30μmの周辺部材を形成し、次いで、対向基板a4を重ね、加熱押圧してセルを形成した。その際、液注入用の孔を一部に設けた。
次いで、真空注入法により電解質液の低粘度成分である成分B7をセル内部に注入し、注入孔を封止した後、UV照射して、表示素子7を形成した。
〔表示素子8の製造:本発明〕
(電解質液の調製)
〈成分A8の調製〉
ジメチルスルホキシド10質量部に、平均分子量20万のポリエチレンオキシドの4質量部と、石原産業社製の二酸化チタンCR−90の1.3質量部とを加え、加温分散して、電解質液の高粘度成分である成分A8を調製した。
〈成分B8の調製〉
ジメチルスルホキシド15質量部に、例示化合物1−2を1.5質量部、トシル酸銀を0.75質量部加えて、完全に溶解させ、電解質液の低粘度成分である成分B8を調製した。
(表示素子の作製)
上記表示素子7の作製において、電解質液の高粘度成分として成分A7に代えて成分A8を用い、更に、電解質液の低粘度成分として成分B7に代えて成分B8を用いた以外は同様にして、表示素子8を作製した。
〔表示素子9の製造:本発明〕
(電解質液の調製)
〈成分B9の調製〉
ジメチルスルホキシド15質量部に、例示化合物2−1を1.5質量部、トシル酸銀を0.75質量部、テトラブチルアンモニウムパークロレートを0.3質量部加えて、完全に溶解させ、電解質液の低粘度成分である成分B9を調製した。
(表示素子の作製)
上記表示素子8の作製において、電解質液の低粘度成分である成分B8に代えて、上記調製した成分B9を用いた以外は同様にして、表示素子9を作製した。
〔表示素子10の製造:比較例〕
上記表示素子1の作製において、ガラス基板a1、ガラス基板b1及び周辺部材2によりセルを形成した後、電解質液の成分A1及びB1を、同一液に混合した後、セル内に空注入法により注入を行なった以外は同様にして、表示素子10を製造した。
〔表示素子1b、4b〜9bの製造:比較例〕
(電解質液の調製)
上記表示素子1、4〜9の製造にそれぞれ用いた電解質液の高粘度成分である成分Aと電解質液の低粘度成分である成分Bとを一液に混合して、これを電解質液1b、4b〜9bとした。
(セルの形成)
上記表示素子1、4〜9の製造に用いたガラス基板aまたは対向基板aと、ガラス基板bまたは対向基板bと、所定の平均粒径のガラス製球形ビーズ状スペーサーを体積分率として10%含むオレフィン系シール剤による周辺部材とにより、それぞれの空セルを形成し、周辺部材の側面部を図5の(d)に示すように、一部コーナーを切り欠いて、開口部を形成した。
(表示素子の作製)
上記調製した電解質液1b、4b〜9bを、それぞれ対応するセルの注入口より、真空注入法により注入し、注入が完了した後、注入口を封止材で封止し、UV照射により硬化して、比較例の表示素子1b、4b〜9bを製造した。
なお、上記方法で作製した表示素子1bは、注入時に粘土鉱物成分が濾し取られる状態で残留してしまい、所望の表示素子とすることができなかった。
なお、表示素子2、3については、使用する電解質液構成が表示素子1と同一であるため、作製を省略した。
Figure 2010020149
《表示素子の評価》
〔セル品質の評価〕
作製した各表示素子のセル部への電解質液の充填状態について、下記評価を行った。
(充填性の評価)
上記作製した表示素子1〜9、1b、4b〜9bのセル部へ電解質液を充填した後、未充填部の発生の有無について目視観察し、下記の基準に従って充填性の評価を行った。
○:スムーズにセル内部に電解質液が注入され、未充填部が全く発生しない
○△:ほぼスムーズにセル内部に電解質液が注入されるが、一部で微小な未充填部が僅かに発生している
△:セル内部への電解質液の注入に時間を要し、一部に未充填部の発生が認められる
△×:セル内部への電解質液の注入にかなりの時間を要し、明らかな未充填部の発生が認められる
×:セル内部への電解質液の安定注入ができず、未充填部が多発している
(気泡耐性の評価)
上記作製した表示素子1〜9、1b、4b〜9bのセル部へ電解質液を充填した後、セル内部での気泡の有無について目視観察し、下記の基準に従って気泡耐性の評価を行った。
○:スムーズにセル内部に電解質液が注入され、気泡の混入が全くない
○△:ほぼスムーズにセル内部に電解質液が注入されるが、一部で微細な気泡の混入が認められる
△:セル内部への電解質液の注入に時間を要し、気泡の混入が認められる
△×:セル内部への電解質液の注入にかなりの時間を要し、明らかな気泡の混入が認められる
×:セル内部への電解質液の安定注入ができず、多量の気泡混入が認められる
〔表示性能の評価〕
(駆動前の白地状態での評価)
上記作製した表示素子4〜9、4b〜9bの駆動前の表示部について、下記の評価を行った。
〈ムラ耐性の評価〉
各表示素子の白表示(未印加)状態でのムラの有無を目視観察し、下記の基準に従ってムラ耐性の評価を行った。
○:表示ムラの発生がまったく認められず、均質性が極めて高い品質である
○△:表示ムラの発生がほぼ認められず、良好な均質性である
△:やや弱い白表示ムラの発生が認められる
△×:明らかな白表示ムラの発生が認められ、実用上問題となる品質である
×:極めて強い白表示ムラの発生が認められ、実用に耐えない品質である
〈気泡耐性の評価〉
各表示素子の白表示(未印加)状態での気泡発生の有無を目視観察し、下記の基準に従って気泡耐性の評価を行った。
○:気泡の発生がまったく認められず、均質性が極めて高い品質である
○△:気泡の発生がほぼ認められず、良好な均質性である
△:微小な気泡の発生が認められる
△×:明らかな気泡の発生が認められ、実用上問題となる品質である
×:極めて多量の気泡の発生が認められ、実用に耐えない品質である
(駆動直後の着色状態での評価)
上記作製した表示素子4〜9、4b〜9bの各基板から引き出した配線端子の表示側となるITO付基板の電極に+2Vの定電圧を印加し、着色を呈した状態での表示部について、下記の評価を行った。
〈ムラ耐性の評価〉
各表示素子の着色状態(印加状態)での表示ムラの有無を目視観察し、下記の基準に従ってムラ耐性の評価を行った。
○:表示ムラの発生がまったく認められず、均質性が極めて高い品質である
○△:表示ムラの発生がほぼ認められず、良好な均質性である
△:やや弱い表示ムラの発生が認められる
△×:明らかな表示ムラの発生が認められ、実用上問題となる品質である
×:極めて強い表示ムラの発生が認められ、実用に耐えない品質である
〈気泡耐性の評価〉
上記駆動前の白地状態での気泡耐性の評価と同様に基準で、評価を行った。
(コントラスト1の評価)
駆動前における白表示と駆動直後の着色表示の反射濃度の比から、下式に従ってコントラスト1を計算した。なお、測定波長は、最大吸収を示す波長で行なった。
コントラスト1=着色表示反射濃度/白表示反射濃度
(100回繰り返した後の特性評価)
上記作製した表示素子4〜9、4b〜9bの各基板から引き出した配線端子の表示側となるITO付基板の電極に+2Vの定電圧を印加し、着色するまでの時間を測定した。次いで、表示側の電極に−2Vの定電圧を印加し、消色するまでの時間を測定した。上記測定した各時間に応じて、着色と消色を100回繰り返した後、下記の各評価を行った。
〈消色状態での品質評価〉
100回の+2Vと−2Vの印加を100回繰り返した後、白表示状態(消色状態)でのムラ耐性及び気泡耐性を、上記駆動前の白地状態での評価と同様にして行った。
〈着色状態での品質評価〉
100回の+2Vと−2Vの印加を100回繰り返した後、着色状態でのムラ耐性及び気泡耐性を、上記駆動直後の着色状態での評価と同様にして行った。
(コントラスト2の評価)
100回繰り返した後の白表示と着色表示の反射濃度の比から、コントラスト2を計算した。測定波長は最大吸収を示す波長で行なった。
コントラスト2=着色表示反射濃度/白表示反射濃度
以上により得られた結果を、表2に示す。
Figure 2010020149
表2に記載の結果より明らかなように、本発明の表示素子の製造方法に従って製造した表示素子は、比較例に対し、セル内への電解質液の充填が迅速かつ均一に行うことができ、連続して行った白表示及び着色表示性能での表示ムラに優れ、気泡の発生が抑制された極めて均質性、安定性の高い表示素子を得ることができた。また、コントラストの値とその変化の差は、製造工程により電解質液の成分比が変動したためと考えられる。
表示素子を製造する際のセル形成及び各電解質液成分の各付与手順の一例を示した概略図である。 表示素子を製造する際のセル形成及び各電解質液成分の各付与手順の他の一例を示した概略図である。 表示素子を製造する際のセル形成及び各電解質液成分の各付与手順の他の一例を示した概略図である。 表示素子を製造する際のセル形成及び各電解質液成分の各付与手順の他の一例を示した概略図である。 周辺部材に電解質液注入の開口部を形成する方法の一例を示した概略斜視図である。
符号の説明
1a、1b 対向基板
2 周辺部材(シール剤)
3、3′ 最も粘度の高い成分A
4 最も粘度の低い成分B
5 電解質液
6 開口部
7 障害物
8 吸入口

Claims (11)

  1. 一対の対向基板間に、少なくとも電解質液を有する電気化学的な表示素子の製造方法において、該電解質液は、互いに粘度が異なり、混和あるいは相溶して一つの電解質液となる特性を有する少なくとも二つの成分から構成され、一対の対向基板の少なくとも一方の基板に、電解質液成分の中で最も粘度の高い成分Aを付与した後に、最も粘度の低い成分Bを付与して製造することを特徴とする表示素子の製造方法。
  2. 前記表示素子は、一対の対向基板と周辺部材とから構成するセル形状を有し、前記電解質液成分の中で最も粘度の高い成分Aを、セル形成前に該一対の対向基板の少なくとも一方の基板に付与し、次いで、セル形成を行った後に、前記最も粘度の低い成分Bをセル内部に付与することを特徴とする請求項1に記載の表示素子の製造方法。
  3. 前記最も粘度の低い成分Bが、真空注入法により付与されることを特徴とする請求項1または2に記載の表示素子の製造方法。
  4. 前記表示素子が、金属の溶解析出により画像表示を行う電気化学な表示素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
  5. 前記表示素子が、エレクトロクロミック系化合物の着消色により画像表示を行う電気化学的な表示素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
  6. 前記表示素子が、金属の溶解析出による画像表示とエレクトロクロミック系化合物の着消色による画像表示を組合せた、白表示及び黒表示とその他の色の表示を行う電気化学的な表示素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
  7. 前記電解質液が、顔料粒子を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
  8. 前記電解質液が、高分子成分を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
  9. 前記電解質液が、イオン性液体を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
  10. 前記電解質液が、低沸点溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
  11. 前記電解質液が、下記一般式(1)または(2)で表される化合物を含有することを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載の表示素子の製造方法。
    Figure 2010020149
    〔式中、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を表す。nは0〜5の整数を表し、Rはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRは同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。〕
    一般式(2)
    −S−R
    〔式中、R、Rは各々アルキル基、アリール基または複素環基を表し、それぞれ同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して環を形成してもよい。〕
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JPWO2011096298A1 (ja) * 2010-02-08 2013-06-10 コニカミノルタホールディングス株式会社 表示素子

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