以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくとも一対の対向する電極間に発色空間を有する表示素子において、該発色空間が前記式(1)及び(2)を満たすことを特徴とする表示素子により、より少ない発色色材量、低消費電力で良好なコントラスト比を得ることのできる表示素子を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
〔発色空間〕
本発明の表示素子においては、少なくとも一対の対向する電極間に発色空間を有する表示素子において、該発色空間が下記式(1)、(2)を満たすことを特徴とする。
式(1)
n2・d2≦90、またはn2・d2≧185
式(2)
100≦n1・d1≦175
ただし、n1、d1はそれぞれ表示素子が着色(または黒色)表示状態における発色空間の屈折率n1と厚さd1(nm)であり、n2、d2はそれぞれ表示素子が白色表示状態における発色空間の屈折率n2と厚さd2(nm)を表す。
〔表示素子の基本構成〕
図1に、本発明の表示素子の構成の一例を示す。
図1に示すように、代表的な本発明の表示素子1においては、少なくとも1対の対向電極が設けられている。表示部に近い対向電極の1つである電極としてはITO電極等の透明電極5、他方の電極には導電性電極2が設けられている。透明電極5と導電性電極2との間に、発色空間4を有する。対向電極間に正負両極性の電圧を印加することにより、白表示と着色表示を可逆的に切り替えることができる。発色空間4とは、1対の対向電極間に印加する電圧によって可視光の透過と吸収を可逆的に切り替えることができる空間のことであり、例えば、エレクトロクロミック化合物を含有させたエレクトロクロミック層や、電解質中の金属イオンが析出溶解する電極表面の空間などが挙げられる。また、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、導電性電極2上には白色散乱性物質を含有する多孔質白色散乱層3を設けることが好ましい。
更に詳しくは、表示素子1が着色表示状態ときに発色空間4の上面Aと下面Bで反射した可視光Cの位相が1/2波長程度ずれている場合、光の干渉によって可視光の反射が弱められ、着色濃度がより高くなる。発色空間4の上面Aからの反射光C′と下面Bからの反射光C″の光路差が2n1・d1であるので、2n1・d1の値が1/2波長程度であると発色空間4の上面Aと下面Bで反射した可視光Cの位相が1/2波長ずれることになる。可視光Cの波長は400nm〜700nm程度なので、100≦n1・d1≦175であると光の干渉によって可視光の反射が弱められ、着色表示状態の着色濃度がより高くなる。一方、発色空間4が可視光透過吸収状態のときには光の干渉によって可視光Cの反射が弱められないようにすることで、白色表示状態での反射率を高くすることができ、表示素子1のコントラスト比を高くすることができる。すなわち光の干渉による光の吸収が紫外または赤外の領域にあればよいので、n2・d2≦90、またはn2・d2≧185である。
発色空間4が、着色剤としてエレクトロクロミック化合物を含有する場合、エレクトロクロミック化合物は電気的な酸化還元により発色消色が起こるが、その際電荷を補償するため発色空間4に電解液中のイオンが出入りし、それに伴い発色空間の屈折率nが変化し、同時に発色空間の厚さd(nm)も変化する。
本発明において、本発明に係る式(1)及び式(2)で規定する条件を達成するための手段としては、以下の通りである。
第1のステップとしては、発色空間を構成するエレクトロクロミック色素の種類及び添加量(発色空間における体積率)、エレクトロクロミック色素の発色空間における存在形態、発色空間を構成するその他の部材、例えば、電解液、顔料、多孔質微粒子を適宜選択すること、あるいは電極を多孔質電極で構成し、そこに吸着させるエレクトロクロミック色素の種類及び添加量(発色空間における体積率)を調整することにより、発色空間のn1、n2を決定する。
次いで、第2のステップとして、上記により設定した発色空間のn1、n2に従って、式(1)及び式(2)を満たすように、d1、d2を設定する。
電解質中に金属塩化合物が含有され、発色空間において金属の析出溶解が起こる場合、金属の析出に伴い発色空間の屈折率が変化する。また発色空間の厚さが変化することもある。いずれの場合も表示素子の発色空間の屈折率と厚みを前記したように適切に設定することで本発明の効果を得ることができる。
以下、本発明の表示素子の各構成要素の詳細について説明する。
〔電解質〕
本発明の表示素子においては、一対の対向する電極間に電解質を含有していることが好ましい。
本発明でいう「電解質」とは、一般に、水などの溶媒に溶けて溶液がイオン伝導性を示す物質(以下、「狭義の電解質」という。)をいうが、本発明の説明においては、狭義の電解質に電解質、非電解質を問わず他の金属、化合物等を含有させた混合物を電解質(「広義の電解質」)という。
(支持電解質)
本発明の表示素子において用いることができる支持電解質としては、電気化学の分野又は電池の分野で通常使用される塩類、酸類、アルカリ類が使用できる。
塩類としては、特に制限はなく、例えば、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等を使用できる。
塩類の具体例としては、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するLi塩、Na塩、あるいはK塩が挙げられる。
また、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有する4級アンモニウム塩、具体的には、(CH3)4NBF4、(C2H5)4NBF4、(n−C4H9)4NBF4、(C2H5)4NBr、(C2H5)4NClO4、(n−C4H9)4NClO4、CH3(C2H5)3NBF4、(CH3)2(C2H5)2NBF4、(CH3)4NSO3CF3、(C2H5)4NSO3CF3、(n−C4H9)4NSO3CF3、
更には
等が挙げられる。
また、ハロゲンイオン、SCN−、ClO4 −、BF4 −、CF3SO3 −、(CF3SO2)2N−、(C2F5SO2)2N−、PF6 −、AsF6 −、CH3COO−、CH3(C6H4)SO3 −、および(C2F5SO2)3C−から選ばれる対アニオンを有するホスホニウム塩、具体的には、(CH3)4PBF4、(C2H5)4PBF4、(C3H7)4PBF4、(C4H9)4PBF4等が挙げられる。また、これらの混合物も好適に用いることができる。
支持電解質の使用量は任意であるが、一般的には、支持電解質は溶媒中に上限としては20モル/L以下、好ましくは10モル/L以下、さらに好ましくは5モル/L以下存在していることが望ましく、下限としては通常0.01モル/L以上、好ましくは0.05モル/L以上、さらに好ましくは0.1モル/L以上存在していることである。
固体電解質の場合には、電子伝導性やイオン伝導性を示す以下の化合物を、電解質中に含むことができる。
パーフルオロスルホン酸を含むフッ化ビニル系高分子、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、トリフェニルアミン類、ポリビニルカルバゾール類、ポリメチルフェニルシラン類、Cu2S、Ag2S、Cu2Se、AgCrSe2等のカルコゲニド、CaF2、PbF2、SrF2、LaF3、TlSn2F5、CeF3等の含フッ素化合物、Li2SO4、Li4SiO4、Li3PO4等のLi塩、ZrO2、CaO、Cd2O3、HfO2、Y2O3、Nb2O5、WO3、Bi2O3、AgBr、AgI、CuCl、CuBr、CuBr、CuI、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl4、LiAlF4、AgSBr、C5H5NHAg5I6、Rb4Cu16I7Cl13、Rb3Cu7Cl10、LiN、Li5NI2、Li6NBr3等の化合物が挙げられる。
〔エレクトロクロミック化合物〕
本発明の表示素子においては、一対の対向する電極間に形成する発色空間が、エレクトロクロミック化合物を含有することが好ましい。更には、エレクトロクロミック化合物が、有機色素であることが好ましい。
本発明に適用可能なエレクトロクロミック化合物としては、電気化学的な酸化反応及び還元反応により発色又は消色する作用を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。このようなエレクトロクロミック化合物としては、例えば、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化チタン、酸化インジウム、酸化クロム、酸化マンガン、プルシアンブルー、窒化インジウム、窒化錫、窒化塩化ジルコニウム等の無機化合物に加え、導電性高分子化合物及び有機色素が知られている。
また、本発明の表示素子においては、本発明に係るエレクトロクロミック化合物として、電気化学的な酸化反応及び還元反応による溶解、析出により消色及び発色することができる金属を用いることができる。好ましい金属種としては、例えば、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、その中でも、より好ましくは銀、ビスマスである。
エレクトロクロミック特性を示す導電性高分子化合物としては、例えば、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリフェニレンジアミン、ポリベンジジン、ポリアミノフェノール、ポリビニルカルバゾール、ポリカルバゾール及びこれらの誘導体などが挙げられる。
エレクトロクロミック特性を示す有機色素としては、ビオロゲン等ピリジニウム系化合物、フェノチアジン等アジン系色素、スチリル系色素、アントラキノン系色素、ピラゾリン系色素、フルオラン系色素、ドナー/アクセプター型化合物類(例えば、テトラシアノキノジメタン、テトラチアフルバレン)等が挙げられる。その他、酸化還元指示薬、pH指示薬として知られている化合物を用いることもできる。
エレクトロクロミック化合物を、色調変化の点で分類すると、下記3つのクラスに分けられる。
クラス1:酸化還元により、ある特定の色から別の色に変化するエレクトロクロミック化合物、
クラス2:酸化状態で実質無色であり、還元状態である特定の着色状態を示すエレクトロクロミック化合物、
クラス3:還元状態で実質無色であり、酸化状態である特定の着色状態を示すエレクトロクロミック化合物。
本発明の表示素子においては、目的や用途により上記クラス1からクラス3のエレクトロクロミック化合物を適宜選択することができる。
〔クラス1のエレクトロクロミック化合物〕
クラス1のエレクトロクロミック化合物は、酸化還元により、ある特定の色から別の色に変化するエレクトロクロミック化合物であり、その取り得る酸化状態において、二色以上の表示が可能な化合物である。
クラス1に分類される化合物として、例えば、V2O5は酸化状態から還元状態へ変化することで橙色から緑色に変化し、同様にRu2O3は黄色から暗緑色に変化する。
また、導電性ポリマーもその多くはクラス1に分類される。例えば、ポリチオフェンは酸化状態から還元状態へ変化することで青から赤へと変化し、ポリピロールは褐色から黄色へと変化する。また、ポリアニリン等は、マルチカラー特性を示し、酸化状態の紺色から順に青色、緑色、淡黄色へと変化する。
クラス1に分類されるエレクトロクロミック化合物は、単一の化合物で、多色表示が可能であるというメリットを有するが、反面、実質無色と言える状態を形成することができないという欠点を有する。
〔クラス2のエレクトロクロミック化合物〕
クラス2のエレクトロクロミック化合物は、酸化状態で無色乃至は極淡色であり、還元状態である特定の着色状態を示す化合物である。
クラス2に分類される無機化合物としては、下記化合物が挙げられ、各々還元状態でカッコ内に示した色を示す。WO3(青)、MnO3(青)、Nb2O5(青)、TiO2(青)等。
クラス2に分類される有機色素としては、特開昭62−71934号公報、特開2006−71765号公報等に記載されている化合物、例えば、テレフタル酸ジメチル(赤)、4,4′−ビフェニルカルボン酸ジエチル(黄色)、1,4−ジアセチルベンゼン(シアン)、或いは特開平1−230026号公報、特表2000−504764号公報等に記載されているテトラゾリウム塩化合物等が挙げられる。
クラス2に分類される色素として、最も代表的なのはビオロゲン等のピリジニウム系化合物である。ビオロゲン系化合物は表示画像が鮮明であること、置換基を変えることにより、色のバリエーションを持たせることが可能であることなどの長所を有しているため、有機色素の中では最も盛んに研究されている。発色は、還元で生じた有機ラジカルに基づくものである。
ビオロゲン等のピリジニウム系化合物としては、例えば、特表2000−506629号公報を初めとして下記の各特許文献に記載されている化合物が挙げられる。
特開平5−70455号公報、特開平5−170738号公報、特開2000−235198号公報、特開2001−114769号公報、特開2001−172293号公報、特開2001−181292号公報、特開2001−181293号公報、特表2001−510590号公報、特開2004−101729号公報、特開2006−154683号公報、特表2006−519222号公報、特開2007−31708号公報、特開2007−171781号公報、特開2007−219271号公報、特開2007−219272号公報、特開2007−279659号公報、特開2007−279570号公報、特開2007−279571号公報、特開2007−279572号公報等。
以下に、本発明に用いることができるビオロゲン等のピリジニウム化合物を例示するが、これらに限定されるものでは無い。
〔クラス3のエレクトロクロミック化合物〕
クラス3のエレクトロクロミック化合物は、還元状態で無色あるいは極淡色であり、酸化状態で特定の着色状態を示す化合物である。
クラス3に分類される無機化合物としては、例えば、酸化イリジウム(暗青色)、プルシアンブルー(青)等が挙げられる(各々酸化状態でカッコ内に示した色を呈する)。
クラス3に分類される導電性ポリマーとしては、例は少ないが、例えば、特開平6−263846号公報に記載のフェニルエーテル系化合物が挙げられる。
クラス3に分類される色素としては、多数の色素が知られているが、スチリル系色素、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系色素、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール等のアゾール系色素等が好ましい。
以下に、本発明に用いることのできるスチリル系色素、及びアジン系色素、アゾール系色素を例示するが、これらに限定されるものではない。
本発明の好ましい態様においては、前記エレクトロクロミック色素と共に電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩を併用し、黒表示、白表示及び黒以外の着色表示の3色以上の多色表示を行う。この場合、該金属塩が還元されて黒表示を行う為、エレクトロクロミック色素としては酸化により発色するクラス3のエレクトロクロミック化合物が好ましい。
特に、本発明においては、屈折率の観点から、エレクトロクロミック化合物として、本発明に係る下記一般式(L)で表されるエレクトロクロミック化合物が好ましい。
以下、本発明に係る上記一般式(L)で表されるエレクトロクロミック化合物について説明する。
上記一般式(L)において、Rl1は置換もしくは無置換のアリール基を表し、Rl2、Rl3は各々水素原子または置換基を表す。Xは>N−Rl4、酸素原子または硫黄原子を表し、Rl4は水素原子または置換基を表す。
Rl1が置換基を有するアリール基を表す場合、置換基としては特に制限は無く、例えば、以下のような置換基が挙げられる。
アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基(例えば、プロパルギル基等)、グリシジル基、アクリレート基、メタクリレート基、芳香族基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基等)、スルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、エタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ヘキサンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、ウレタン基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、フェニルウレイド基、2−ピリジルウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、メチルウレイド基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、フェニルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、アニリノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、沃素原子等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ホスホノ基(例えば、ホスホノエチル基、ホスホノプロピル基、ホスホノオキシエチル基)等を挙げることができる。また、これらの基はさらにこれらの基で置換されていてもよい。
Rl1としては、置換もしくは無置換のフェニル基が好ましく、更に好ましくは置換もしくは無置換の2−ヒドロキシフェニル基または4−ヒドロキシフェニル基である。
R12、Rl3で表される置換基としては特に制限は無く、前記Rl1のアリール基上への置換基として例示した置換基等が挙げられる。好ましくはRl2、Rl3はそれぞれ、置換基を有しても良い、アルキル基、シクロアルキル基、芳香族基、複素環基である。Rl2、Rl3は互いに連結して、環構造を形成しても良い。Rl2、Rl3の組み合わせとしては、双方共に置換基を有しても良いフェニル基、複素環基である場合、若しくは何れか一方が置換基を有しても良いフェニル基、複素環基であり、他方が置換基を有しても良いアルキル基の組み合わせである。
Xとして好ましくは、>N−Rl4である。Rl4として好ましくは、水素原子、アルキル基、芳香族基、複素環基またはアシル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数5〜10のアリール基、アシル基である。
本発明の表示素子においては、本発明に係る一般式(L)で表される化合物が、電極表面と化学吸着または物理吸着する基を有していることが好ましい。本発明でいう化学吸着とは、電極表面との化学結合による比較的強い吸着状態であり、本発明でいう物理吸着とは、電極表面と吸着物質との間に働くファンデルワールス力による比較的弱い吸着状態である。本発明に係る吸着性基は、化学吸着性の基である方が好ましく、化学吸着する吸着性基としては、−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2、または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す)が好ましい。
一般式(L)で表されるアゾール色素の中でも、特に、下記一般式(L2)で表されるイミダゾール系色素が好ましい。
上記一般式(L2)において、Rl21、Rl22は各々脂肪族基、脂肪族オキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、アシル基、スルホンアミド基、またはスルファモイル基を表し、Rl23は芳香族基または芳香族複素環基を表し、Rl24は水素原子、脂肪族基、芳香族基、または芳香族複素環基を表し、Rl25は水素原子、脂肪族基、芳香族基、またはアシル基を表す。
これらRl21〜Rl25で表される基は、更に任意の置換基で置換されていても良い。但し、Rl21〜Rl25で表される基の少なくとも1つは、その部分構造として−COOH、−P=O(OH)2、−OP=O(OH)2、または−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す)を有する。
一般式(L2)において、Rl21、Rl22で表される基としては、アルキル基(特に分岐アルキル基)、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基が好ましい。Rl23としては置換若しくは無置換のフェニル基、5員もしくは6員環複素環基(例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基等)が好ましい。Rl24としては置換若しくは無置換の、フェニル基、5員もしくは6員環複素環基、アルキル基が好ましい。Rl25としては特に水素原子若しくはアリール基が好ましい。
また、一般式(L2)で表される化合物を電極上に固定する際、これらRl21からRl25で示される基の少なくともひとつに、部分構造として、−P=O(OH)2、−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましく、特に、Rl23またはRl24で示される基の部分構造として−Si(OR)3(Rは、アルキル基を表す)を有することが好ましい。
以下に、一般式(L2)で表されるエレクトロクロミック色素の具体的化合物例、及び一般式(L2)には該当しないが、一般式(L)に含まれるエレクトロクロミック色素の具体例を示すが、本発明はこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
〔金属塩化合物〕
本発明に係る金属塩化合物とは、対向電極上の少なくとも1方の電極上で、該対向電極の駆動操作で、溶解・析出を行うことができる金属種を含む塩であれば、如何なる化合物であってもよい。好ましい金属種は、銀、ビスマス、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛等であり、特に好ましいのは銀、ビスマスである。
〔銀塩化合物〕
本発明に係る銀塩化合物とは、銀または、銀を化学構造中に含む化合物、例えば、酸化銀、硫化銀、金属銀、銀コロイド粒子、ハロゲン化銀、銀錯体化合物、銀イオン等の化合物の総称であり、固体状態や液体への可溶化状態や気体状態等の相の状態種、中性、アニオン性、カチオン性等の荷電状態種は、特に問わない。
本発明の表示素子においては、ヨウ化銀、塩化銀、臭化銀、酸化銀、硫化銀、クエン酸銀、酢酸銀、ベヘン酸銀、p−トルエンスルホン酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、メルカプト類との銀塩、イミノジ酢酸類との銀錯体、等の公知の銀塩化合物を用いることができる。これらの中で、ハロゲンやカルボン酸や銀との配位性を有する窒素原子を有しない化合物を銀塩として用いるのが好ましく、例えば、p−トルエンスルホン酸銀が好ましい。
本発明に係る電解質液に含まれる金属イオン濃度は、0.2モル/kg≦[Metal]≦2.0モル/kgが好ましい。金属イオン濃度が0.2モル/kg以上であれば、十分な濃度の銀溶液となり所望の駆動速度を得ることができ、2モル/kg以下であれば析出を防止し、低温保存時での電解質液の安定性が向上する。
〔銀塩溶剤〕
本発明においては、金属塩(特に銀塩)の溶解析出を促進するために、銀塩溶剤を用いることができる。銀塩溶剤とは、電解質中で銀を可溶化できる化合物であればいかなる化合物であってもよい。例えば、銀と配位結合を生じさせたり、銀と弱い供給結合を生じさせたりするような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物等と共存させて、銀または銀を含む化合物を可溶化物に変換する手段を用いるのが一般的である。前記化学種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用しかつ、共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
本発明の表示素子においては、電解質が、銀塩溶剤として前記一般式(G−1)または(G−2)で表される化合物を含有することが好ましい。
〈一般式(G−1)または(G−2)で表される化合物〉
本発明に係る前記一般式(G−1)で表されるチオエーテル化合物及び前記一般式(G−2)で表されるメルカプト化合物は、銀の溶解析出を生じさせるため、電解質中での銀の可溶化を促進する化合物である。
一般に、銀の溶解析出を生じさせるためには、電解質中で銀を可溶化することが必要であり、例えば、銀と配位結合を生じ、銀と弱い共有結合を生じさせるような、銀と相互作用を示す化学構造種を含む化合物が有用である。前記化学構造種として、ハロゲン原子、メルカプト基、カルボキシル基、イミノ基等が知られているが、本発明においては、チオエーテル基を含有する化合物及びメルカプトアゾール類は、銀溶剤として有用に作用し、かつ共存化合物への影響が少なく溶媒への溶解度が高い特徴がある。
前記一般式(G−1)において、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表す。また、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含んでも良く、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を取っても良い。
前記一般式(G−2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
前記一般式(G−1)において、Rg11、Rg12は各々置換または無置換の炭化水素基を表すが、これらの炭化水素基では、1個以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子を含んでも良く、Rg11とRg12が互いに連結し、環状構造を取っても良い。
炭化水素基に置換可能な基としては、例えば、アミノ基、グアニジノ基、4級アンモニウム基、ヒドロキシル基、ハロゲン化合物、カルボン酸基、カルボキシレート基、アミド基、スルフィン酸基、スルホン酸基、スルフェート基、ホスホン酸基、ホスフェート基、ニトロ基、シアノ基等を挙げることができる。
以下、本発明において適用可能な一般式(G−1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
G1−1:CH3SCH2CH2OH
G1−2:HOCH2CH2SCH2CH2OH
G1−3:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
G1−4:HOCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OH
G1−5:HOCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2OH
G1−6:HOCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OH
G1−7:H3CSCH2CH2COOH
G1−8:HOOCCH2SCH2COOH
G1−9:HOOCCH2CH2SCH2CH2COOH
G1−10:HOOCCH2SCH2CH2SCH2COOH
G1−11:HOOCCH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2COOH
G1−12:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
G1−13:HOOCCH2CH2SCH2CH2SCH2CH(OH)CH(OH)CH2SCH2CH2SCH2CH2COOH
G1−14:H3CSCH2CH2CH2NH2
G1−15:H2NCH2CH2SCH2CH2NH2
G1−16:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
G1−17:H3CSCH2CH2CH(NH2)COOH
G1−18:H2NCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2NH2
G1−19:H2NCH2CH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH2NH2
G1−20:H2NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NH2
G1−21:HOOC(NH2)CHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH(NH2)COOH
G1−22:HOOC(NH2)CHCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2CH(NH2)COOH
G1−23:HOOC(NH2)CHCH2OCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2OCH2CH(NH2)COOH
G1−24:H2N(O=)CCH2SCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SCH2C(=O)NH2
G1−25:H2N(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NH2
G1−26:H2NHN(O=)CCH2SCH2CH2SCH2C(=O)NHNH2
G1−27:H3C(O=)CNHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(=O)CH3
G1−28:H2NO2SCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2SO2NH2
G1−29:NaO3SCH2CH2CH2SCH2CH2SCH2CH2CH2SO3Na
G1−30:H3CSO2NHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHO2SCH3
G1−31:H2N(NH)CSCH2CH2SC(NH)NH2・2HBr
G1−32:H2N(NH)CSCH2CH2OCH2CH2OCH2CH2SC(NH)NH2・2HCl
G1−33:H2N(NH)CNHCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2NHC(NH)NH2・2HBr
G1−34:〔(CH3)3NCH2CH2SCH2CH2SCH2CH2N(CH3)3〕2+・2Cl−
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物G1−2、G1−3が好ましい。
次いで、本発明に係る一般式(G−2)で表される化合物について説明する。
前記一般式(G−2)において、Mは水素原子、金属原子または4級アンモニウムを表す。Zは含窒素複素環を構成するのに必要な原子群表す。nは0〜5の整数を表し、Rg21は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、スルホニル基、アミノ基、ヒドロキシ基または複素環基を表し、nが2以上の場合、それぞれのRg21は同じであってもよく、異なってもよく、お互いに連結して縮合環を形成してもよい。
一般式(G−2)において、Mで表される金属原子としては、例えば、Li、Na、K、Mg、Ca、Zn、Ag等が挙げられ、4級アンモニウムとしては、例えば、NH4、N(CH3)4、N(C4H9)4、N(CH3)3C12H25、N(CH3)3C16H33、N(CH3)3CH2C6H5等が挙げられる。
一般式(G−2)のZを構成成分とする含窒素複素環としては、例えば、テトラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、インドール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾセレナゾール環、ナフトオキサゾール環等が挙げられる。
一般式(G−2)において、Rg21で表される具体的な基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、ドデシル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、トリフルオロメチル、ベンジル等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等)、アルキルカルボンアミド基(例えば、アセチルアミノ、プロピオニルアミノ、ブチロイルアミノ等)、アリールカルボンアミド基(例えば、ベンゾイルアミノ等)、アルキルスルホンアミド基(例えば、メタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基等)、アリールスルホンアミド基(例えば、ベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、エチルチオ、ブチルチオ等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、トリルチオ基等)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、ジブチルカルバモイル、ピペリジルカルバモイル、モルホリルカルバモイル等)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル、メチルフェニルカルバモイル、エチルフェニルカルバモイル、ベンジルフェニルカルバモイル等)、アルキルスルファモイル基(例えば、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ジエチルスルファモイル、ジブチルスルファモイル、ピペリジルスルファモイル、モルホリルスルファモイル等)、アリールスルファモイル基(例えば、フェニルスルファモイル、メチルフェニルスルファモイル、エチルフェニルスルファモイル、ベンジルフェニルスルファモイル等)、アルキルスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基等)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル、4−クロロフェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル等)アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル等)、アルキルカルボニル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチロイル等)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基、アルキルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチロイルオキシ等)、複素環基(例えば、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、セレナゾール環、テトラゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、チアジン環、トリアジン環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、インドレニン環、ベンズセレナゾール環、ナフトチアゾール環、トリアザインドリジン環、ジアザインドリジン環、テトラアザインドリジン環基等)が挙げられる。これらの置換基はさらに置換基を有するものを含む。
次に、一般式(G−2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
上記例示した各化合物の中でも、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点から、特に、例示化合物G2−12、G2−18、G2−20が好ましい。
〔酸化還元されうる補助化合物〕
本発明の表示素子においては、エレクトロクロミック材料の電気化学反応を促進するために、前記エレクトロクロミック化合物に加え、酸化還元されうる補助化合物(以下、プロモーターと記す)を添加しても良い。プロモーターは、酸化還元反応の結果として、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものでも良いし、変化するもの、即ち前記エレクトロクロミック化合物であっても良く、電極上に固定化されていても良く、電解質中に添加されていても良い。これらプロモーターは、例えば、対極反応物質としての利用或いは、酸化還元メディエーターとしての利用が考えられる。
例えば、表示電極側でエレクトロクロミック化合物を酸化(或いは還元)発色させる場合、対向電極側でプロモーターの還元(或いは酸化)反応を利用することによって、低い駆動電圧で高い発色濃度を得ることが可能となる。このように、プロモーターを対極反応物質として利用する場合、エレクトロクロミック化合物を表示電極上に固定化し、エレクトロクロミック化合物とは逆の酸化還元活性を有するプロモーターを、対向電極上に固定化して用いることが好ましい。プロモーターを対極物質として用いる場合、プロモーターは酸化還元反応の結果として可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化しないものが好ましい。但し、本発明の好ましい態様において記載したように、表示素子中に白色散乱物を用いて、プロモーターによる発色を遮蔽するような態様の場合、可視領域(400〜700nm)の光学濃度が変化するプロモーター、即ちエレクトロクロミック化合物を用いても良い。このような構成の態様は、プロモーターの選択が容易と成り好ましい。また別の態様として、表示電極側のエレクトロクロミック化合物と同色の発色を示すプロモーターを用いることは、好ましい態様のひとつである。
一方、酸化還元メディエーターは、有機電解合成の分野等で一般に用いられている材料である。有機化合物はそれぞれ固有の酸化電位に加えて、電解法や電解条件にも依存する酸化過電圧を有しており、陽極電位がこれらを合わせた酸化電位より高いときに、実際上酸化反応が起こる。陽極電位に実験上の限界があることから、直接法で全ての基質を酸化することは不可能である。高い酸化電位を有する基質を酸化する場合、基質から陽極への電子移動は起こらない。この反応系に低電位で陽極に対して電子移動(酸化)が起こるようなメディエーターを共存させると、まずはメディエーターが酸化され、酸化されたメディエーターによって基質が酸化されて生成物が得られる。この反応系の利点は、基質の酸化電位よりも低い陽極電位で基質を酸化することが可能であることと、酸化されたメディエーターは、基質を酸化してもとのメディエーターに戻るため、理論的には触媒として作用することである。また、低電位での酸化が可能となるため、基質や生成物の分解等も抑えられる。
本発明において、例えば、前記基質として酸化発色するエレクトロクロミック化合物を用いる場合、触媒の酸化メディエーターを共存させることにより、低い駆動電圧で表示素子を駆動することが可能と成り、表示素子の耐久性が高まる。また表示の切り替え速度の向上、高い発色効率が得られるなどの利点がある。同様に、還元メディエーターと、還元発色するエレクトロクロミック化合物の組み合わせでも、上記効果が得られる。
本発明の表示素子においては、有機電解合成の分野で示されているように、単一のメディエーターを用いても良いし、複数のメディエーターを組み合わせて用いても良い。本発明においてプロモーターをメディエーターとして用いる場合、エレクトロクロミック化合物を表示電極上に固定化し、その近傍にプロモーターを局在化させて用いることが好ましい。
本発明においては、プロモーターを対極反応物質として用いてもよく、またメディエーターとして用いても良い。また両者の目的で、複数のプロモーターを同時に組み合わせて用いても良い。
プロモーターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。特に対極反応物質として利用する場合には、公知のエレクトロクロミック化合物を利用することが可能である。また酸化還元メディエーターとして利用する場合は、表示色素として用いるエレクトロクロミック化合物の特性に合わせ、有機合成化学協会誌第43巻第6号(「電気エネルギーを利用する有機合成」特集号)(1985)等に記載されている公知のメディエーターを適宜選択して用いることができる。
本発明に用いることができる好ましいプロモーターとしては、例えば、以下のような化合物が挙げられる。
1)TEMPO等に代表されるN−オキシル誘導体、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体等、N−O結合を有する化合物、
2)ガルビノキシル等、0−位に嵩高い置換基を導入したアリロキシ遊離基を有する化合物、
3)フェロセン等、メタロセン誘導体、
4)ベンジル(ジフェニルエタンジオン)誘導体、
5)テトラゾリウム塩/ホルマザン誘導体、
6)フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、アクリジン等のアジン系化合物、
7)ビオロゲン等ピリジニウム化合物。
その他、ベンゾキノン誘導体、ベルダジル等ヒドラジル遊離基化合物、チアジル遊離基化合物、ヒドラゾン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアリルアミン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体、チアントレン誘導体等もプロモーターとして用いることができる。
本発明の表示素子においては、上記1)から7)の範疇のプロモーターが好ましく、特に1)が好ましい。
以下、上記1)の範疇の化合物について、その詳細を説明する。
N−オキシル(ニトロキシドラジカルとも呼ばれる)とは、ヒドロキシルアミンの酸素−水素結合がラジカル的に開裂して生じた酸素中心ラジカルである。ニトロキシドラジカルは、下記スキームに示すように2つの可逆的な酸化還元対を有することが知られている。ニトロキシドラジカルは1電子酸化によりオキソアンモニウムカチオンとなり、これが還元されてラジカルを再生する。またニトロキシドラジカルは1電子還元によりアミノキシアニオンとなり、これが酸化されてラジカルを再生する。従って、ニトロキシドラジカルはp型の対極反応物質、若しくはn型対極反応物質として機能することができる。
N−オキシル誘導体を電極表面上に固定化する方法は、N−オキシル誘導体に電極表面と化学吸着または物理吸着する基を導入する方法やN−オキシル誘導体をポリマー化して電極表面上に薄膜を形成する方法などが挙げられる。尚、N−オキシル誘導体はN−オキシルラジカルの状態で添加しても良く、またN−ヒドロキシ化合物の状態、更にはオキソアンモニウムカチオンの状態で添加しても良い。
N−オキシル誘導体としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−N−オキシル)をはじめ、各種置換基を置換した誘導体が市販されている。また、公知の文献に従って、ポリマーを含め、各種誘導体を容易に合成することができる。
一般に、ニトロキシドラジカルのα位炭素に水素が置換している場合、容易にヒドロキシアミンとニトロンへ不均化してしまうことが知られている。このため、TEMPOのN−オキシル基α位の4つのメチル基は、安定ラジカルとして存在する上での必須の構造と言えるが、逆にこれら4つのメチル基の立体障害によって、反応性が落ちる場合がある。これら活性低下を引き起こさない点で、アザアダマンタンN−オキシル誘導体、或いはアザビシクロN−オキシル誘導体が好ましい。
次に、N−ヒドロキシフタルイミド誘導体、ヒドロキサム酸誘導体等について説明する。下記スキームに示すように、N−ヒドロキシフタルイミド(NHPI)の電極酸化により生じたフタルイミドN−オキシル(PINO)は、2級アルコールを酸化してケトンを生成する。この例から分かるように、NHPI/PINOの酸化還元対は、本発明の表示素子においても、対極反応物質或いはメディエーターとして機能することが理解されよう。またNHPI同様、ヒドロキサム酸誘導体、トリヒドロキシイミノシアヌル酸(THICA)も、プロモーターとして用いることができる。
これらの化合物を用いて、本発明の表示素子を作製する場合、N−OHの状態で添加することが好ましい。N−OHの状態で表示素子を作製した後、表示素子を駆動させて酸化をすることでラジカルが生成する。
上記1)の範疇で示されるプロモーターは、下記一般式(M1)で表すことが出来、下記一般式(M2)から(M5)で表されるプロモーターが好ましい。特に一般式(M6)で示される、多環式N−オキシル誘導体が好ましい。
尚、一般式(M1)から(M5)表されるプロモーターは各種市販されており、容易に入手することができる。また公知の文献に従って、各種誘導体を容易に合成することができる。一般式(M6)で示されるプロモーターは、J.Am.Chem.Soc.,128,8412(2006)及びTetrahedron Letters 49(2008)48−52を参考として合成することができる。
またこれらをポリマー化したプロモーターは、例えば特開2004−227946号公報、同2004−228008号公報、同2006−73240号公報、同2007−35375号公報、同2007−70384号公報、同2007−184227号公報、同2007−298713号公報等を参考にして合成することができる。
上記一般式(M1)において、Rm11及びRm12は各々独立に置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基、または>C=O、>C=S、または>C=N−Rm13を介して窒素原子と結合する基を表す。Rm13は水素原子、置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。また、Rm11及びRm12は互いに連結して、環状構造を形成しても良い。
脂肪族炭化水素基には、鎖状及び環状のものが包含され、鎖状のものには直鎖状のもの及び分岐状のものが包含される。このような脂肪族炭化水素基には、メチル、エチル、ビニル、プロピル、イソプロピル、プロペニル、ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、iso−ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、オクチル、iso−オクチル、シクロオクチル、2,3−ジメチル−2−ブチル等の各基が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられ、複素環基としては、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等が挙げられる。
これら置換基は更に置換基を有していても良い。それらの置換基には、特に制限は無く例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、オクテニル基等)、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等)、複素環基(例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基、モルフォリノ基等)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−ナフチルオキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、1−ナフチルチオ基等)、複素環チオ基(例えば、ピリジルチオ基、チアゾリルチオ基、オキサゾリルチオ基、イミダゾリルチオ基、フリルチオ基、ピロリルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基、モルフォリノスルホニル基、ピロリジノスルホニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基、ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基、モルフォリノカルボニル基、ピペラジノカルボニル基等)、アルカンスルフィニル基またはアリールスルフィニル基(例えば、メタンスルフィニル基、エタンスルフィニル基、ブタンスルフィニル基、シクロヘキサンスルフィニル基、2−エチルヘキサンスルフィニル基、ドデカンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルカンスルホニル基またはアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、シクロヘキサンスルホニル基、2−エチルヘキサンスルホニル基、ドデカンスルホニル基、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、N−メチルアニリノ基、ジフェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、tert−ブチルジメチルシリルオキシ基等)、アミノカルボニルオキシ基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ基、モルホリノカルボニルオキシ基、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ基、N−n−オクチルカルバモイルオキシ基等)、アルコキシカルボニルオキシ基(例えば、メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、tert−ブトキシカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等)、アリールオキシカルボニルオキシ基(例えば、フェノキシカルボニルオキシ基、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ基、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ基等)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、tert−ブトキシカルボニルアミノ基、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ基等)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ基、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ基等)、スルファモイルアミノ基(例えば、スルファモイルアミノ基、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ基、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、ナフチルアゾ基、p−クロロフェニルアゾ基等)、複素環アゾ基(例えば、ピリジルアゾ基、チアゾリルアゾ基、オキサゾリルアゾ基、イミダゾリルアゾ基、フリルアゾ基、ピロリルアゾ基、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ基等)、イミノ基(例えば、N−スクシンイミド−1−イル基、N−フタルイミド−1−イル基等)、ホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、メチルフェノキシホスフィノ基等)、ホスフィニル基(例えば、ホスフィニル基、ジオクチルオキシホスフィニル基、ジエトキシホスフィニル基等)、ホスフィニルオキシ基(例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ基、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ基等)、ホスフィニルアミノ基(例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ基、ジメチルアミノホスフィニルアミノ基等)、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、スルホ基、カルボキシル基等が挙げられる。
一般式(M1)で表される化合物は、これら置換基で連結された二量体、三量体等の多量体であっても良く、また重合体で有ってもよい。
上記一般式(M2)において、Rm21、Rm22、Rm23、Rm24は各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。また、Rm21からRm24及びZ1を構成する原子は互いに連結して、環状構造を形成しても良く、Z1は更に置換基を有していても良い。
前記一般式(M2)において、Rm21、Rm22、Rm23、Rm24は各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表すが、これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、前記一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。
Z1は環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Z1は更に置換基を有していても良く、それらの置換基としては、前記一般式(M1)で例示したのと同様の置換基が挙げられる。また、Rm21〜Rm24及びZ1を構成する原子は互いに連結して、環状構造を形成しても良く、例えば、窒素原子と共にアザノルボルネン構造、アザアダマンタン構造等の多環式構造を取っても良い。
一般式(M2)で表される化合物の環構造としては、ピペリジン環、若しくはピロリジン環、アザアダマンタン環が好ましい。
上記一般式(M3)において、Rm31は直接、若しくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を介してカルボニル炭素原子に置換する、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表し、Rm32は置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表す。またRm31及びRm32は互いに連結して、環状構造を形成しても良い。
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、前記一般式(M3)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
前記一般式(M3)において、Rm31は直接、若しくは酸素原子、窒素原子、硫黄原子を介してカルボニル炭素原子に置換する、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表し、Rm32は置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表すが、これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。また、Rm31及びRm32は互いに連結して、環状構造を形成してもよい。一般式(M3)において、Rm32は芳香族炭化水素基が好ましく、特に置換基を有しても良いフェニル基が好ましい。フェニル基上の置換基としては、シアノ基、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基が好ましい。Rm31としては、カルボニル炭素原子に直接結合したフェニル基若しくは脂肪族炭化水素基が好ましく、特に、分岐アルキル基及びシクロアルキル基が好ましい。
尚、一般式(M3)で表される化合物はN−OHの状態で添加し、表示素子を作製するのが好ましい。
上記一般式(M4)において、Z2は環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、更に置換基を有していても良い。
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、前記一般式(M4)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
前記一般式(M4)において、Z2は環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Z2は更に置換基を有していても良く、それらの置換基としては、一般式(M1)で例示した置換基が挙げられる。また、Z2は縮合環で有っても良い。
尚、一般式(M4)で表される化合物はN−OHの状態で添加し、表示素子を作製するのが好ましい。
上記一般式(M5)において、Rm51からRm55は各々独立に置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基を表す。
本発明においては、本発明に係るN−オキシル誘導体が、前記一般式(M5)で表される化合物であることが好ましい態様の1つである。
前記一般式(M5)において、Rm51からRm55は各々独立に置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、または複素環基を表すが、これら脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基については、一般式(M1)におけるそれぞれと同義である。
一般式(M5)において、Rm51は芳香族炭化水素基が好ましく、特に置換基を有しても良いフェニル基が好ましい。フェニル基上の置換基としてはシアノ基、アルコキシカルボニル基、トリフルオロメチル基等の電子吸引性基が好ましい。Rm52からRm55としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
上記一般式(M6)において、Rm61及びRm62は各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基を表し、Z3、Z4及びZ5は環状構造を形成するのに必要な原子群を表し、nは0または1を表す。
一般式(M6)において、Rm61及びRm62は各々独立に水素原子若しくは置換基を有しても良い脂肪族炭化水素基を表すが、Rm61及びRm62としては水素原子若しくは、炭素数4以下の直鎖アルキル基が好ましく、Rm61及びRm62の少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
Z3、Z4及びZ5は各々環状構造を形成するのに必要な原子群(例えば炭素、窒素、酸素、イオウ等)を表し、各々5員環若しくは6員環を形成するのが好ましい。Z3、Z4及びZ5は更に置換基を有していても良い。
nは0または1を表すが、n=0の時、一般式(M6)はビシクロ化合物を表し、n=1の場合トリシクロ化合物を表す。
一般式(M6)で表される化合物としては、n=1が好ましく、特にアザアダマンタン誘導体が好ましい。
以下に、本発明で用いることのできるプロモーターの具体例を示すが、これらに限定されるものでは無い。
〔溶媒〕
本発明に係る電解質には、溶媒として、一般に電気化学セルや電池に用いられ、電気化学的な酸化還元反応により可逆的に溶解析出する金属塩化合物、プロモーター等各種添加剤を溶解できる溶媒を使用することができる。
具体的には、無水酢酸、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ニトロメタン、アセトニトリル、アセチルアセトン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、スルホラン、プロピオニトリル、ブチロニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、メチルピロリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、エチルジメチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリヘプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリノニルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリス(トリフフロロメチル)ホスフェート、トリス(ペンタフロロエチル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、2−エチルヘキシルホスフェート、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、4−メチル−2−ペンタノン、ジオクチルフタレート、ジオクチルセバケート、及びエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等のポリエチレングリコール類などが使用可能である。
さらに、常温溶融塩も溶媒として使用可能である。前記常温溶融塩とは、溶媒成分が含まれないイオン対のみからなる常温において溶融している、即ち液状のイオン対からなる塩であり、通常、融点が20℃以下であり、20℃を越える温度で液状であるイオン対からなる塩を示す。常温溶融塩はその1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合しても使用することもできる。
本発明に用いる電解質溶媒としては、非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、スルホラン、ジオキソラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホラン、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートが好ましい。溶媒はその1種を単独で使用しても良いし、また2種以上を混合して使用しても良い。
〈一般式(S1)、(S2)で表される化合物〉
本発明において、特に好ましく用いられる溶媒は、下記一般式(S1)または(S2)で表される化合物である。
上記一般式(S1)において、Lは酸素原子またはアルキレン基を表し、Rs11からRs14は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
一般式(S2)において、Rs21,Rs22は各々アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
はじめに、一般式(S1)で表される化合物の詳細について説明する。
前記一般式(S1)において、Lは酸素原子またはCH2を表し、Rs11からRs14は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表し、これらの置換基は更に任意の置換基で置換されていても良い。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
以下、一般式(S1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
次いで、本発明に係る一般式(S2)で表される化合物の詳細について説明する。
前記一般式(S2)において、Rs21,Rs22は各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基またはアルコキシ基を表す。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等、アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等、シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等、アルコキシアルキル基として、例えば、β−メトキシエチル基、γ−メトキシプロピル基等、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等を挙げることができる。
以下、一般式(S2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
上記例示した一般式(S1)及び一般式(S2)で表される化合物の中でも、特に、例示化合物(S1−1)、(S1−2)、(S2−3)が好ましい。
本発明に係る一般式(S1)、(S2)で表される化合物は電解質溶媒の1種であるが、本発明の表示素子においては、本発明の目的効果を損なわない範囲でさらに別の溶媒を併せて用いることができる。具体的には、テトラメチル尿素、スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−(N−メチル)−2−ピロリジノン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ブチロニトリル、プロピオニトリル、アセトニトリル、アセチルアセトン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ブタノール、1−ブタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、エタノール、メタノール、無水酢酸、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ジメトキシエタン、ジエトキシフラン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、水等が挙げられる。これらの溶媒の内、凝固点が−20℃以下、かつ沸点が120℃以上の溶媒を少なくとも1種含むことが好ましい。
さらに本発明で用いることのできる溶媒としては、J.A.Riddick,W.B.Bunger,T.K.Sakano,“Organic Solvents”,4th ed.,John Wiley & Sons(1986)、Y.Marcus,“Ion Solvation”,John Wiley & Sons(1985)、C.Reichardt,“Solvents and Solvent Effects in Chemistry”,2nd ed.,VCH(1988)、G.J.Janz,R.P.T.Tomkins,“Nonaqueous Electrolytes Handbook”,Vol.1,Academic Press(1972)に記載の化合物を挙げることができる。
本発明において、電解質溶媒は単一種であっても、溶媒の混合物であってもよいが、エチレンカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。エチレンカーボネートの添加量は、全電解質溶媒質量の10質量%以上、90質量%以下が好ましい。特に好ましい電解質溶媒は、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネートの質量比が7/3〜3/7の混合溶媒である。プロピレンカーボネート比が7/3より大きいとイオン伝導性が劣り応答速度が低下し、3/7より小さいと低温時に電解質が析出しやすくなる。
〔多孔質白色散乱層〕
本発明においては、表示コントラスト及び白表示反射率をより高める観点から、白色散乱性物質を含有する多孔質白色散乱層を有することができる。
本発明に適用可能な多孔質白色散乱層は、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子と白色顔料との水混和物を塗布乾燥して形成することができる。
本発明でいう電解質溶媒に実質的に溶解しないとは、−20℃から120℃の温度において、電解質溶媒1kgあたりの溶解量が0g以上、10g以下である状態と定義し、質量測定法、液体クロマトグラムやガスクロマトグラムによる成分定量法等の公知の方法により溶解量を求めることができる。
本発明において、電解質溶媒に実質的に溶解しない水系高分子としては、水溶性高分子、水系溶媒に分散した高分子を挙げることができる。
水溶性高分子としては、ゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、カラギーナン等の多糖類のような天然化合物や、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体やそれらの誘導体等の合成高分子化合物が挙げられる。ゼラチン誘導体としては、アセチル化ゼラチン、フタル化ゼラチン、ポリビニルアルコール誘導体としては、末端アルキル基変性ポリビニルアルコール、末端メルカプト基変性ポリビニルアルコール、セルロース誘導体としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。更に、リサーチ・ディスクロージャー及び特開昭64−13546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたもの、また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマー同士もしくは他のビニルモノマー(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸カリウム等)との共重合体も使用される。これらのバインダは2種以上組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン系化合物を好ましく用いることができる。
水系溶媒に分散した高分子としては、天然ゴムラテックス、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム等のラテックス類、ポリイソシアネート系、エポキシ系、アクリル系、シリコン系、ポリウレタン系、尿素系、フェノール系、ホルムアルデヒド系、エポキシ−ポリアミド系、メラミン系、アルキド系樹脂、ビニル系樹脂等を水系溶媒に分散した熱硬化性樹脂を挙げることができる。これらの高分子のうち、特開平10−76621号に記載の水系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
本発明において、水系高分子の平均分子量は、重量平均で10,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは30,000〜500,000の範囲である。
本発明で適用可能な白色顔料としては、例えば、二酸化チタン(アナターゼ型あるいはルチル型)、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウムおよび水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、アルカリ土類金属塩、タルク、カオリン、ゼオライト、酸性白土、ガラス、有機化合物としてポリエチレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ポリアミド樹脂などが単体または複合混合で、または粒子中に屈折率を変化させるボイドを有する状態で使用されてもよい。
本発明では、上記白色顔料の中でも、二酸化チタンが好ましく用いられ、特に無機酸化物(Al2O3、AlO(OH)、SiO2等)で表面処理した二酸化チタン、これらの表面処理に加えてトリメチロールエタン、トリエタノールアミン酢酸塩、トリメチルシクロシラン等の有機物処理を施した二酸化チタンがより好ましく用いられる。
これらの白色顔料のうち、高温時の着色防止、屈折率に起因する素子の反射率の観点から、酸化チタンまたは酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物は、公知の分散方法に従って白色顔料が水中分散された形態が好ましい。水系化合物/白色顔料の混合比は、容積比で1〜0.01が好ましく、より好ましくは、0.3〜0.05の範囲である。
多孔質白色散乱層の膜厚は、5〜50μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜30μmの範囲である。
溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の水との溶解性が高いアルコール系溶剤が好ましく用いられ、水/アルコール系溶剤との混合比は、質量比で0.5〜20の範囲が好ましく、より好ましくは2〜10の範囲である。
本発明において、水系化合物と白色顔料との水混和物を塗布する媒体は、表示素子の対向電極間の構成要素上であればいずれの位置でもよいが、観察側から最も遠いエレクトロクロミック発色層に付与することが好ましい。
媒体への付与の方法としては、例えば、塗布方式、液噴霧方式、気相を介する噴霧方式として、圧電素子の振動を利用して液滴を飛翔させる方式、例えば、ピエゾ方式のインクジェットヘッドや、突沸を利用したサーマルヘッドを用いて液滴を飛翔させるバブルジェット(登録商標)方式のインクジェットヘッド、また空気圧や液圧により液を噴霧するスプレー方式等が挙げられる。
塗布方式としては、公知の塗布方式より適宜選択することができる。例えば、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースローラーコーター、トランスファーローラーコーター、カーテンコーター、ダブルローラーコーター、スライドホッパーコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、ビードコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カレンダーコーター、押し出しコーター等が挙げられる。
媒体上に付与した水系化合物と白色顔料との水混和物の乾燥は、水を蒸発できる方法であればいかなる方法であってもよい。例えば、熱源からの加熱、赤外光を用いた加熱法、電磁誘導による加熱法等が挙げられる。また、水蒸発は減圧下で行ってもよい。
本発明でいう多孔質とは、前記水系化合物と白色顔料との水混和物を電極上に塗布乾燥して多孔質の白色散乱物を形成した後、該散乱物上に、銀または銀を化学構造中に含む化合物を含有する電解質液を与えた後に対向電極で挟み込み、対向電極間に電位差を与え、銀の溶解析出反応を生じさせることが可能で、イオン種が電極間で移動可能な貫通状態のことを言う。
本発明の表示素子では、上記説明した水混和物を塗布乾燥中または乾燥後に、硬膜剤により水系化合物の硬化反応を行うことが望ましい。
本発明で用いられる硬膜剤の例としては、例えば、米国特許第4,678,739号の第41欄、同第4,791,042号、特開昭59−116655号、同62−245261号、同61−18942号、同61−249054号、同61−245153号、特開平4−218044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド等)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタン等)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素等)、ほう酸、メタほう酸あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234157号等に記載の化合物)が挙げられる。水系化合物としてゼラチンを用いる場合は、硬膜剤の中で、ビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独または併用して使用することが好ましい。また、ポリビニルアルコールを用いる場合はホウ酸やメタホウ酸等の含ホウ素化合物の使用が好ましい。
これらの硬膜剤は、水系化合物1g当たり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また、膜強度を上げるため熱処理や、硬化反応時の湿度調整を行うことも可能である。
〔電子絶縁層〕
本発明の表示素子においては、電子絶縁層を設けることができる。
本発明に適用可能な電子絶縁層は、イオン電導性、電子絶縁性を合わせて有する層であればよく、例えば、極性基を有する高分子や塩をフィルム状にした固体電解質膜、電子絶縁性の高い多孔質膜とその空隙に電解質を担持する擬固体電解質膜、空隙を有する高分子多孔質膜、含ケイ素化合物の様な比誘電率が低い無機材料の多孔質膜等が挙げられる。
多孔質膜の形成方法としては、燒結法(融着法)(高分子微粒子や無機粒子をバインダ等を添加して部分的に融着させ粒子間に生じた孔を利用する)、抽出法(溶剤に可溶な有機物又は無機物類と溶剤に溶解しないバインダ等で構成層を形成した後に、溶剤で有機物又は無機物類を溶解させ細孔を得る)、高分子重合体等を加熱や脱気するなどして発泡させる発泡法、良溶媒と貧溶媒を操作して高分子類の混合物を相分離させる相転換法、各種放射線を輻射して細孔を形成させる放射線照射法等の公知の形成方法を用いることができる。具体的な電気絶縁層としては、例えば、特開平10−30181号公報、特開2003−107626号公報、特公平7−95403号公報、特許第2635715号公報、同第2849523号公報、同第2987474号公報、同第3066426号公報、同第3464513号公報、同第3483644号公報、同第3535942号公報、同第3062203号公報等に記載の電子絶縁層を挙げることができる。
〔電解質添加の増粘剤〕
本発明の表示素子においては、電解質に増粘剤を使用することができ、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アルキレングリコール)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類、疎水性透明バインダとして、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタン等が挙げられる。
これらの増粘剤は2種以上を併用して用いてもよい。また、特開昭64−13546号公報の71〜75頁に記載の化合物を挙げることができる。これらの中で好ましく用いられる化合物は、各種添加剤との相溶性と白色粒子の分散安定性向上の観点から、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、ヒドロキシプロピルセルロース類、ポリアルキレングリコール類である。
〔その他の添加剤〕
本発明の表示素子の電解質には、その他各種性能を向上させる目的の添加剤を使用することができる。それらは目的に応じて選択され、特に制限されるものではない。
各種の化学増感剤、貴金属増感剤、感光色素、強色増感剤、カプラー、高沸点溶剤、カブリ防止剤、安定剤、現像抑制剤、漂白促進剤、定着促進剤、混色防止剤、ホルマリンスカベンジャー、色調剤、硬膜剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、スベリ剤、紫外線吸収剤、イラジエーション防止染料、フィルター光吸収染料、防ばい剤、ポリマーラテックス、重金属、帯電防止剤、マット剤等を、必要に応じて含有させることができる。
上述したこれらの添加剤は、より詳しくは、リサーチ・ディスクロージャー(以下、RDと略す)第176巻Item/17643(1978年12月)、同184巻Item/18431(1979年8月)、同187巻Item/18716(1979年11月)及び同308巻Item/308119(1989年12月)に記載されている。
これら三つのリサーチ・ディスクロージャーに示されている化合物種類と記載箇所を以下に掲載した。
上記の添加剤は、保護層、フィルター層、ハレーション防止層、クロスオーバー光カット層、バッキング層等の補助層を設け、それら補助層中に含有させることも可能である。
〔基板〕
本発明の表示素子を構成する基板としては、透明基板であることが好ましく、このような透明基板としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート等)、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、シリコン樹脂、ポリアセタール樹脂、フッ素樹脂、セルロース誘導体、ポリオレフィンなどの高分子のフィルムや板状基板、ガラス基板などが好ましく用いられる。本発明に用いられる透明な基板とは、可視光に対する透過率が少なくとも50%以上の基板をいう。また、対向基板としては、例えば、金属基板、セラミック基板等の無機基板など不透明な基板を用いることもできる。
〔電極〕
(表示側電極)
表示側電極には、少なくとも可視光を透過する透明電極が用いられる。例えば、Indium Tin Oxide(ITO:インジウム錫酸化物)、Indium Zinc Oxide(IZO:インジウム亜鉛酸化物)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、白金、金、銀、ロジウム、銅、クロム、炭素、アルミニウム、シリコン、アモルファスシリコン、BSO(Bismuth Silicon Oxide)等が挙げられる。
また、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリセレノフェニレン等、およびそれらの修飾化合物を単独あるいは混合して用いることができる。
表示側電極の導電性を示す表面抵抗値としては、100Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。電極の厚みには特に制限はないが、0.1〜20μmであるのが一般的である。
(透明多孔質電極)
表示側電極の表面に、ナノ多孔質構造を有するナノ多孔質電極を設けることができる。このナノ多孔質電極は、表示素子を形成した際に実質的に透明で、エレクトロクロミック色素等の電気活性物質を担持することができる。
本発明でいうナノ多孔質構造とは、層中にナノメートルサイズの孔が無数に存在し、ナノ多孔質構造内を電解質中に含まれるイオン種が移動可能な状態のことを言う。
このようなナノ多孔質電極の形成方法としては、ナノ多孔質電極を構成する微粒子を含んだ分散物をインクジェット法、スクリーン印刷法、ブレード塗布法などで層状に形成した後に、所定の温度で加熱、乾燥、焼成することよって多孔質化する方法や、スパッタ法、CVD法、大気圧プラズマ法などで電極層を構成した後に、陽極酸化、光電気化学エッチングすることによってナノ多孔質化する方法などが挙げられる。また、ゾルゲル法や、Adv.Mater.2006,18,2980−2983に記載された方法でも、形成することができる。
ナノ多孔質電極を構成する微粒子の主成分は、Cu、Al、Pt、Ag、Pd、Au等の金属やITO、SnO2、TiO2、ZnO等の金属酸化物やカーボンナノチューブ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、窒素含有カーボン等の炭素電極から選択することができ、好ましくは、ITO、SnO2、TiO2、ZnO等の金属酸化物から選択されることである。
ナノ多孔質電極が透明性を有するためには、平均粒子径が5nm〜10μm程度の微粒子を用いることが好ましい。微粒子の形状は不定形、針状、球形など任意の形状のものを用いることができる。
ナノ多孔質電極の膜厚は、0.1〜10μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.25〜5μmの範囲である。
(対向電極)
対向電極は、表示色に関与することなく用いることができるため、電気を通じるものであれば、特に制限されず用いることができる。
表示側電極に用いられる材料と同じ材料に加え、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金、カーボン等、透明性を有しない材料でも好ましく用いることができる。
(補助電極)
本発明に係る一対の対向する電極のうち少なくとも一方の電極に、補助電極を付帯させることができる。
補助電極は、主となる電極部より電気抵抗が低い材料を用いることが好ましい。例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマスなどの金属およびそれらの合金等を好ましく用いることができる。
補助電極は、主となる電極部と基板との間と、主となる電極部の基板と反対側の表面とのいずれに設置することもできる。いずれにしても、補助電極が主となる電極部と電気的に接続していればよい。
補助電極の配置パターンには、特に制限はない。直線状、メッシュ状、円形など、求められる性能に応じて適宜形成することが可能である。主となる電極部が複数の部分に分割されている場合には、分割された電極部同士を接続する形で設けてもよい。ただし、主となる電極部が表示側の基板に設けられた透明電極の場合、補助電極は、表示素子の視認性を阻害しない形状と頻度で設けることが求められる。
補助電極を形成する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィ法でパターニングする方法や、印刷法やインクジェット法、電解メッキや無電解メッキ、銀塩感光材料を用いて露光、現像処理してパターン形成する方法でも良い。本発明の補助電極パターンのライン幅やライン間隔は、任意の値で構わないが、導電性を高くするためにはライン幅を太くする必要がある。一方、透明電極に補助電極を付帯させる場合には、視認性の観点から、表示素子観察側から見た補助電極の面積被覆率は30%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
このように透過率と導電性の点から、補助電極のライン幅は1μm以上、100μm以下が好ましく、ライン間隔は50μmから1000μmが好ましい。
(電極の製法)
表示側電極および対抗電極(、補助電極)を形成するには、公知の方法を用いることができる。例えば、基板上にスパッタリング法等でマスク蒸着するか、全面形成した後に、フォトリソグラフィ法でパターニングしてもよい。
また、電解メッキや無電解メッキ、印刷法や、インクジェット法によっても電極形成が可能である。
インクジェット方式を用いて基板上にモノマー重合能を有する触媒層を含む電極パターンを形成した後に、該触媒により重合されて重合後に導電性高分子層になりうるモノマー成分を付与して、モノマー成分を重合し、さらに、該導電性高分子層の上に銀等の金属メッキを行うことにより金属電極パターンを形成することもでき、フォトレジストやマスクパターンを使用することがないので、工程を大幅に簡略化できる。
電極材料を塗布にて形成する場合は、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の公知の方法を用いることができる。
インクジェット方式の中でも、下記の静電インクジェットは高粘度の液体を高精度に連続的に印字することが可能であり、本発明の透明電極や金属補助電極の形成に好ましく用いられる。インクの粘度は、好ましくは30mPa・s以上であり、更に好ましくは100mPa・s以上である。
(静電インクジェット)
本発明の表示素子においては、複合電極の透明電極及び金属補助電極の少なくとも一方が、帯電した液体を吐出する内部直径が30μm以下のノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル内に溶液を供給する供給手段と、前記ノズル内の溶液に吐出電圧を印加する吐出電圧印加手段とを備えた液体吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
さらに前記ノズル内の溶液が当該ノズル先端部から凸状に盛り上がった状態を形成する凸状メニスカス形成手段を設けた吐出装置を用いて形成されることが好ましい。
また、前記凸状メニスカス形成手段を駆動する駆動電圧の印加及び吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記吐出電圧印加手段による吐出電圧の印加を行わせつつ液滴の吐出に際して前記凸状メニスカス形成手段の駆動電圧の印加を行わせる第一の吐出制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい。
また、前記凸状メニスカス形成手段の駆動及び吐出電圧印加手段による電圧印加を制御する動作制御手段を備え、この動作制御手段は、前記凸状メニスカス形成手段による溶液の盛り上げ動作と前記吐出電圧の印加とを同期させて行う第二の吐出制御部を有することを特徴とする液体吐出装置を用いること、前記動作制御手段は、前記溶液の盛り上げ動作及び吐出電圧の印加の後に前記ノズル先端部の液面を内側に引き込ませる動作制御を行う液面安定化制御部を有する液体吐出装置を用いることも好ましい形態である。
この様な静電インクジェットを用いて電極パターンを作製することにより、オンデマンド性に優れ、廃棄材料が少なく、寸法精度に優れた電極を得ることができ有利である。
〔表示素子のその他の構成要素〕
本発明の表示素子には、必要に応じて、シール剤、柱状構造物、スペーサー粒子を用いることができる。
シール剤は外に漏れないように封入するためのものであり封止剤とも呼ばれ、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン−チオール系樹脂、シリコン系樹脂、変性ポリマー樹脂等の、熱硬化型、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型等の硬化タイプを用いることができる。
柱状構造物は、基板間の強い自己保持性(強度)を付与し、例えば、格子配列等の所定のパターンに一定の間隔で配列された、円柱状体、四角柱状体、楕円柱状体、台形柱状体等の柱状構造物を挙げることができる。また、所定間隔で配置されたストライプ状のものでもよい。この柱状構造物はランダムな配列ではなく、等間隔な配列、間隔が徐々に変化する配列、所定の配置パターンが一定の周期で繰り返される配列等、基板の間隔を適切に保持でき、且つ、画像表示を妨げないように考慮された配列であることが好ましい。柱状構造物は表示素子の表示領域に占める面積の割合が1〜40%であれば、表示素子として実用上十分な強度が得られる。
一対の基板間には、該基板間のギャップを均一に保持するためのスペーサーが設けられていてもよい。このスペーサーとしては、樹脂製または無機酸化物製の球体を例示できる。また、表面に熱可塑性の樹脂がコーティングしてある固着スペーサーも好適に用いられる。基板間のギャップを均一に保持するために柱状構造物のみを設けてもよいが、スペーサー及び柱状構造物をいずれも設けてもよいし、柱状構造物に代えて、スペーサーのみをスペース保持部材として使用してもよい。スペーサーの直径は柱状構造物を形成する場合はその高さ以下、好ましくは当該高さに等しい。柱状構造物を形成しない場合はスペーサーの直径がセルギャップの厚みに相当する。
〔表示素子駆動方法〕
本発明の表示素子の駆動操作は、単純マトリックス駆動であっても、アクティブマトリック駆動であってもよい。本発明でいう単純マトリックス駆動とは、複数の正極を含む正極ラインと複数の負極を含む負極ラインとが対向する形で互いのラインが垂直方向に交差した回路に、順次電流を印加する駆動方法のことを言う。単純マトリックス駆動を用いることにより、回路構成や駆動ICを簡略化でき安価に製造できるメリットがある。アクティブマトリックス駆動は、走査線、データライン、電流供給ラインが碁盤目状に形成され、各碁盤目に設けられたTFT回路により駆動させる方式である。画素毎にスイッチングが行えるので、階調やメモリー機能などのメリットがあり、例えば、特開2004−29327号公報の図5に記載されている回路を用いることができる。
〔商品適用〕
本発明の表示素子は、電子書籍分野、IDカード関連分野、公共関連分野、交通関連分野、放送関連分野、決済関連分野、流通物流関連分野等の用いることができる。具体的には、ドア用のキー、学生証、社員証、各種会員カード、コンビニストアー用カード、デパート用カード、自動販売機用カード、ガソリンステーション用カード、地下鉄や鉄道用のカード、バスカード、キャッシュカード、クレジットカード、ハイウェイカード、運転免許証、病院の診察カード、電子カルテ、健康保険証、住民基本台帳、パスポート、電子ブック等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
《電解質の調製》
(電解質1の調製)
プロピレンカーボネートの2.5質量部中に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを0.1質量部と、カルボキシTEMPO(4−カルボキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル フリーラジカル)を0.05質量部溶解して、電解質1を調製した。
(電解質2の調製)
ジメチルスルホキシドの2.5質量部中に、塩化ビスマスを0.1質量部と、臭化リチウムを0.2質量部と、テトラブチルアンモニウムパークロレートを0.025質量部溶解して、電解質2を調製した。
(電解質3の調製)
ジメチルスルホキシドの2.5質量部中に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを0.1質量部と、p−トルエンスルホン酸銀を0.1質量部溶解して、電解質3を調製した。
(電解質4の調製)
ジメチルスルホキシドの2.5質量部中に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを0.1質量部と、p−トルエンスルホン酸銀を0.1質量部と、例示化合物(G1−3)を0.2質量部溶解して、電解質4を調製した。
(電解質5の調製)
ジメチルスルホキシドの2.5質量部中に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを0.1質量部と、p−トルエンスルホン酸銀を0.1質量部と、例示化合物(G2−12)を0.2質量部溶解して、電解質5を調製した。
(電解質6の調製)
プロピレンカーボネートの25質量部中に、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムを7.0質量部と、ピロールを0.2質量部溶解させて、電解質6を得た。
《電極の作製》
(電極1の作製)
厚さが1.5mmで、幅が2cm×4cmのガラス基板上に、導電層として幅1cmのITO(Indium Tin Oxide、インジウム錫酸化物)膜を公知の方法に従って形成して、電極1を作製した。
(電極2の作製)
上記電極1のITO膜形成面上に、下記二酸化チタン分散物を乾燥後の平均膜厚が20μmになるようにスクリーン印刷し、その後50℃で30分間乾燥して溶媒を蒸発させた後、85℃の雰囲気中で1時間乾燥させて、多孔質白色散乱層を有する電極2を作製した。
〈二酸化チタン分散物の調製〉
水/エタノール(1/1)の混合溶液に、クラレポバールPVA235(クラレ社製、ポリビニルアルコール樹脂)を固形分濃度で2質量%になるように添加し、加熱溶解させた後、二酸化チタンCR−90(石原産業社製)を20質量%となるように超音波分散機で分散させて、二酸化チタン分散物を得た。
(電極3の作製)
上記電極1と白金電極とを対向した位置に配置し、この電極対を、電解質6を含むガラス容器中に浸漬し、電極1と白金電極の間に通電電気量が12mC/cm2となるまで3Vの電圧を印加し、ピロールが電解重合して形成されたポリピロール膜を電極1上に形成した。ポリピロール膜が形成された電極1をガラス容器から取り出し、エタノールで洗浄、乾燥させて、これを電極3とした。
(電極4の作製)
上記電極1のITO膜形成面上に、厚み0.085μmの二酸化チタン層(平均粒子径10nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を形成し、電極4を作製した。
(電極5の作製)
上記電極3の作製において、電極1に代えて電極4を用いた以外は同様にして、電極5を作製した。
(電極6の作製)
上記電極4を、下記処理液1に浸漬し、室温で約24時間放置した後、エタノールで洗浄、乾燥して、電極6を作製した。
〈処理液1の調製〉
純水の20質量部中に、下記化合物(A−1)の0.05質量部と、下記化合物(A−2)の0.06質量部と、下記化合物(A−3)の0.07質量部とを溶解して、処理液1を調製した。
(電極7の作製)
電極1のITO膜形成面上に、厚み0.075μmの二酸化チタン層(平均粒子径10nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を形成し、電極7を作製した。
(電極8の作製)
上記電極6の作製において、電極4に代えて電極7を用いた以外は同様にして、電極8を作製した。
(電極9の作製)
上記電極1と白金電極とを対向した位置に配置し、この電極対を、電解質6を含むガラス容器中に浸漬し、電極1と白金電極の間に通電電気量が40mC/cm2となるまで3Vの電圧を印加し、ピロールが電解重合して形成されたポリピロール膜を電極1上に形成した。ポリピロール膜が形成された電極1をガラス容器から取り出し、エタノールで洗浄、乾燥させて、これを電極9とした。
(電極10の作製)
電極1のITO膜形成面上に、厚み1.0μmの二酸化チタン層(平均粒子径10nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を形成し、電極10を作製した。
(電極11の作製)
上記電極9の作製において、電極1に代えて電極10を用いた以外は同様にして、電極11を作製した。
(電極12の作製)
上記電極6の作製において、電極4に代えて電極10を用いた以外は同様にして、電極12を作製した。
(電極13の作製)
上記電極1のITO膜形成面上に、厚み0.06μmの二酸化チタン層(平均粒子径10nmの粒子が4〜10個程度ネッキング済み)を形成し、電極13を作製した。
(電極14の作製)
上記電極3の作製において、電極1に代えて電極13を用いた以外は同様にして、電極14を作製した。
(電極15の作製)
上記電極4を、下記処理液2に浸漬し、室温で約24時間放置した後、エタノールで洗浄、乾燥して、電極15を作製した。
〈処理液2の調製〉
純水の20質量部中に、エレクトロクロミック化合物として、例示化合物(L19)を0.18質量部溶解して、処理液2を調製した。
(電極16の作製)
上記電極4を、下記処理液3に浸漬し、室温で約24時間放置した後、エタノールで洗浄、乾燥して、電極16を作製した。
〈処理液3の調製〉
純水の20質量部中に、エレクトロクロミック化合物として、例示化合物(L29)を0.18質量部溶解して、処理液3を調製した。
《表示素子の作製》
(表示素子1の作製)
上記作製した電極2の周辺部を、平均粒径40μmのガラス製の球形ビーズを、体積分率として10%含むオレフィン系封止剤で縁取りした後、電極2と電極3とを、それぞれストライプ状の電極が直交するように貼り合わせ、さらに加熱押圧して空セルを作製した。該空セルに電解質1を真空注入し、注入口をエポキシ系の紫外線硬化樹脂にて封止し、表示素子1を作製した。
(表示素子2の作製)
上記表示素子1の作製において、電極3に代えて電極5を用いた以外は同様にして、表示素子2を作製した。
(表示素子3の作製)
上記表示素子1の作製において、電極3に代えて電極6を用いた以外は同様にして、表示素子3を作製した。
(表示素子4の作製)
上記表示素子1の作製において、電極3に代えて電極8を用いた以外は同様にして、表示素子4を作製した。
(表示素子5の作製)
上記表示素子1の作製において、電解質1に代えて電解質2を、電極3に代えて電極13を用いた以外は同様にして、表示素子5を作製した。
(表示素子6の作製)
上記表示素子5の作製において、電解質2に代えて電解質3を用いた以外は同様にして、表示素子6を作製した。
(表示素子7の作製)
上記表示素子5の作製において、電解質2に代えて電解質4を用いた以外は同様にして、表示素子7を作製した。
(表示素子8の作製)
上記表示素子5の作製において、電解質2に代えて電解質5を用いた以外は同様にして、表示素子8を作製した。
(表示素子9の作製)
上記表示素子1の作製において、電極3に代えて電極9を用いた以外は同様にして、表示素子9を作製した。
(表示素子10の作製)
上記表示素子2の作製において、電極5に代えて電極11を用いた以外は同様にして、表示素子10を作製した。
(表示素子11の作製)
上記表示素子3の作製において、電極6に代えて電極12を用いた以外は同様にして、表示素子11を作製した。
(表示素子12の作製)
上記表示素子5の作製において、電極13に代えて電極1を用いた以外は同様にして、表示素子12を作製した。
(表示素子13の作製)
上記表示素子6の作製において、電極13に代えて電極1を用いた以外は同様にして、表示素子13を作製した。
(表示素子14の作製)
上記表示素子1の作製において、電極3に代えて電極14を用いた以外は同様にして、表示素子14を作製した。
(表示素子15の作製)
上記表示素子6の作製において、電極13に代えて電極4を用いた以外は同様にして、表示素子15を作製した。
(表示素子16の作製)
上記表示素子7の作製において、電極13に代えて電極15を用いた以外は同様にして、表示素子16を作製した。
(表示素子17の作製)
上記表示素子7の作製において、電極13に代えて電極16を用いた以外は同様にして、表示素子17を作製した。
《表示素子の評価》
各表示素子の電圧を印加する前(白表示状態)の、波長550nmにおける反射率をコニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。次いで、表示素子の両電極を電気化学測定装置HSV−100(北斗電工製)に接続し、各表示素子に1.5Vの電圧を印加して着色表示させたときの波長550nmにおける反射率を、コニカミノルタセンシング社製の分光測色計CM−3700dで測定した。電圧の印加時間を適宜調整して測定を繰り返し、反射率が電圧印加前の1/10になるまでに消費した電荷量(CR10電荷量(mC/cm2))を測定した。
また、各表示素子の電圧を印加する前(白色表示)および着色表示させたときの屈折率(n2、n1)と発色空間の厚さ(d2、d1)を、25℃の環境下で、分光エリプソメーターFE−5000(大塚電子製)を用いて測定し、n1、d1、n2、d2をそれぞれ求めた。
得られた結果は表2に示した。CR10電荷量が低いほど、低消費電力で駆動できることを表す。
表2に記載の結果より明らかな様に、本発明の表示素子は、比較例に対し、CR10電荷量が低く、低消費電力で駆動可能であることが分かる。