JP2010019390A - 高速回転用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】工作機械等の高速回転される装置用の転がり軸受において、従来よりも合成樹脂製保持器の弾性率を高めて高速回転下での変形を抑えるとともに、合成樹脂製保持器が摩耗した場合でも露出した補強繊維により保持器案内面が摩耗されるのを抑えて耐久性を向上させ、更には保持器案内面の硬化処理を不要にして低コスト化を図る。
【解決手段】エポキシ系またはアミノ系のシランカップリング剤で処理されたチタン酸カリウムウィスカーを30〜45質量%の割合で含有する樹脂組成物からなり、かつ、曲げ弾性率が10〜15GPaである合成樹脂製保持器を備える高速回転用転がり軸受。
【選択図】図1
【解決手段】エポキシ系またはアミノ系のシランカップリング剤で処理されたチタン酸カリウムウィスカーを30〜45質量%の割合で含有する樹脂組成物からなり、かつ、曲げ弾性率が10〜15GPaである合成樹脂製保持器を備える高速回転用転がり軸受。
【選択図】図1
Description
本発明は、工作機械等のように高速で回転する主軸を支持するために使用される高速回転用転がり軸受に関する。
一般的に工作機械主軸用軸受には、円筒ころ軸受やアンギュラ玉軸受等が使用されている。これらの軸受の保持器としては、綿布補強のフェノール樹脂を切削加工した保持器や、ガラス繊維や炭素繊維等の補強繊維で強化したポリアミド66樹脂やポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等を材料とする合成樹脂製保持器が使用されている(例えば、特許文献1、2参照)。合成樹脂製保持器は、軽量のため回転時の遠心力が小さく、さらに自己潤滑性を有するという特徴を備えているため、高速回転に有利である。
近年、工作機械では、切削能力を向上させて加工時間を短縮する方向にあり、それに伴い主軸の回転数を高速化する傾向が顕著である。そのため、主軸を支承する軸受に供給する潤滑油量も微量(必要最小限の量)となる傾向にある。これらの軸受の潤滑法としては、グリース潤滑、オイルエア潤滑、ジェット潤滑等が、使用条件やコストによって適宜、選択され採用されているが、一般的には低コストでメンテナンスも容易なことからグリース潤滑が利用されることが多い。しかし、グリース潤滑では、回転中に外部から軸受内部に潤滑油が供給されない場合には、時間の経過とともに潤滑油が一時的あるいは継続的に不足して、潤滑油膜が途切れがちになるため、上記のような厳しい潤滑条件では、十分な潤滑を得ることが困難である。そのため、保持器と転動体(外輪・内輪)との摺動部が発熱して高温になり、場合によっては焼き付いて回転停止に到ることもある。
このような問題は、特に、保持器の案内面と外輪内径面との摺接部、あるいは、保持器と転動体との摺接部において生じることが多い。そのため、補強繊維を含有する合成樹脂製保持器では、摩耗が進展すると、徐々に保持器表面に補強繊維が露出するようになり、露出した補強繊維が相手材である軌道輪案内面を傷付けるようになる。そのため、案内面に硬化処理を施す等の対策が必要になり、コスト増を招く。
尚、綿布補強の保持器では保持器案内面の摩耗が無いものの、強度不足のために高速用途として実用的ではない。
また、高速で回転するのに従って保持器が変形しやすくなり、回転に支障をきたすようになるという問題もある。
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、工作機械等の高速回転される装置用の転がり軸受において、従来よりも合成樹脂製保持器の曲げ弾性率を高めて高速回転下での変形を抑えるとともに、合成樹脂製保持器が摩耗した場合でも露出した補強繊維により保持器案内面が摩耗されるのを抑えて耐久性を向上させ、更には保持器案内面の硬化処理を不要にして低コスト化を図ることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は下記の高速回転用転がり軸受を提供する。
(1)高速回転する主軸を支承し、合成樹脂製保持器を備える高速回転用転がり軸受において、前記合成樹脂製保持器が、エポキシ系またはアミノ系のシランカップリング剤で処理されたチタン酸カリウムウィスカーを30〜45質量%の割合で含有する樹脂組成物からなり、かつ、曲げ弾性率が10〜15GPaであることを特徴とする高速回転用転がり軸受。
(2)前記合成樹脂製保持器が、樹脂成分として直鎖状ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びポリエーテルケトン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする上記(1)記載の高速回転用転がり軸受。
(3)前記合成樹脂製保持器が外輪に案内されることを特徴とする上記(1)または(2)記載の高速回転用転がり軸受。
(1)高速回転する主軸を支承し、合成樹脂製保持器を備える高速回転用転がり軸受において、前記合成樹脂製保持器が、エポキシ系またはアミノ系のシランカップリング剤で処理されたチタン酸カリウムウィスカーを30〜45質量%の割合で含有する樹脂組成物からなり、かつ、曲げ弾性率が10〜15GPaであることを特徴とする高速回転用転がり軸受。
(2)前記合成樹脂製保持器が、樹脂成分として直鎖状ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びポリエーテルケトン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする上記(1)記載の高速回転用転がり軸受。
(3)前記合成樹脂製保持器が外輪に案内されることを特徴とする上記(1)または(2)記載の高速回転用転がり軸受。
本発明の高速回転用転がり軸受では、合成樹脂製保持器がチタン酸カリウムウィスカーを高充填しているため曲げ弾性率が高く、高速回転下で変形することがない。また、チタン酸カリウムは、SUJ2鋼等の一般的な軸受鋼よりも硬度が低いため、合成樹脂製保持器が摩耗して露出しても保持器案内面を損傷することがなく、保持器案内面に硬化処理を施す必要もなくなり低コストになる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明において、高速回転用途で、後述する合成樹脂製保持器を備える限り、軸受の種類や構造に制限はない。例えば、図1に示すような円筒ころ軸受110を例示することができる。図示されるように、円筒ころ軸受110は、内周面に外輪軌道面111aを有する外輪111と、外周面に内輪軌道面112aを有する内輪112と、外輪軌道面111aと内輪軌道面112aとの間に転動可能に配設される複数の円筒ころ(転動体)113と、複数の円筒ころ113を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器114と、を備える。
合成樹脂製保持器114は、図2に示すように、軸方向に互いに同軸に離間配置される一対の円環部115と、一対の円環部115を連結すべく、円周方向に略等間隔で配置される複数の柱部116と、円周方向に互いに隣り合う各柱部116の間に形成され、円筒ころ113を転動可能に保持するポケット部117と、を有する。
また、軸受として図3に示すようなアンギュラ玉軸受120を例示することもできる。図示されるアンギュラ玉軸受120は、内周面に外輪軌道面121aを有する外輪121と、外周面に内輪軌道面122aを有する内輪122と、外輪軌道面121aと内輪軌道面122aとの間に転動可能に配設される複数の玉(転動体)123と、複数の玉123を円周方向に略等間隔に保持する合成樹脂製保持器124と、を備える。
合成樹脂製保持器124は、図4に示すように、板状の円環部材125と、この円環部材125に円周方向に略等間隔で形成され、玉123を転動可能に保持する複数のポケット部126と、を有する。
本発明では、合成樹脂製保持器114、124の高速回転時の変形を防止するために、その曲げ弾性率を10〜15GPa、好ましくは12〜15GPaとする。そのためには、合成樹脂製保持器114、124を形成する樹脂組成物に、チタン酸カリウムウィスカーを30〜45質量%、好ましくは35〜45質量%の割合で含有させる。チタン酸カリウムウィスカーの含有量が30質量%未満では、10GPa以上の曲げ弾性率を実現することが困難になる。一方、45質量%を超える場合は、相対的に樹脂量が少なすぎて成形性が悪くなる。
チタン酸カリウムは、モース硬度が4であり、SUJ2鋼等の一般的な軸受鋼よりも柔らかい(鉄のモース硬度5)。従って、合成樹脂製保持器114、124が摩耗してチタン酸カリウムウィスカーが露出しても、保持器案内面111b、121bに損傷を与えることが無い。そのため、耐摩耗性付与のために保持器案内面111b、121bに硬化処理を施す必要がなく、軸受全体として低コストとなる。
尚、チタン酸カリウムウィスカーは、自身の強度確保や分散性を考慮すると、平均繊維径が0.3〜0.6μm、平均繊維長が10〜20μmであることが好ましい。
また、チタン酸カリウムウィスカーは、樹脂組成物中での分散性及び樹脂成分との接着性を向上させて、目的とする機械的強度を達成するために、分子構造中にエポキシ基を有するエポキシ系シランカップリング剤、または分子構造中にアミノ基を有するアミノ系シランカップリング剤で処理されている。シランカップリング剤未処理のチタン酸カリウムウィスカーを用いても、機械的強度は殆ど向上しない。
一方、樹脂成分としては、吸水や温度による寸法変化、耐熱性、機械的強度から、直鎖状ポリフェニレンサルファイド樹脂(L−PPS;融点285℃)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK;融点343℃)及びポリエーテルケトン樹脂(PEK;融点373℃)が好適であり、軸受が支持する回転軸の回転数に応じて選択される。これら樹脂は、それぞれ単独または組み合わせて使用できるが、広い回転数をカバーするのであれば、自身の曲げ弾性率が高く、チタン酸カリウムウィスカー配合による高弾性率化に優れるPEEKが特に好ましい。
尚、これら樹脂との接着性はエポキシ基が最も高いことから、上記のシランカップリング剤の中ではエポキシ系シランカップリング剤が特に好ましい。
また、樹脂組成物には種々の添加剤を添加することが可能であるが、中でも摺動性を向上させるために、PTFEや黒鉛等の固体潤滑剤を添加することが好ましい。含有量は1〜5質量%が好適であり、1質量%未満では摺動性の改善効果が少なく、5質量%を超える場合は相対的にチタン酸カリウムウィスカー及び樹脂成分の量が少なくなり、機械的強度に影響を与える恐れがある。
上記樹脂組成物を用いて保持器を製造するには、従来と同様の方法で構わず、樹脂成分にチタン酸カリウムウィスカー、必要に応じて固体潤滑剤等の添加剤をそれぞれ所定量配合して十分に混練し、図2や図4に示したような形状に成形すればよい。成形方法としては、生産効率に優ることから射出成形が好適であるが、これに限定されることはない。
ところで、転がり軸受では一般的に保持器を外輪案内型とする方が案内面の摩耗が大きくなるため、上記の円筒ころ軸受110及びアンギュラ玉軸受120においても、各合成樹脂製保持器114、124を外輪案内型とした場合に摩耗防止効果がより顕著となる。
また、転動体を窒化珪素等のセラミック製とし、内外輪を一般的なSUJ2製に代えて、浸炭窒化材(SHX材等)製とすることにより、高速回転時の焼付きや摩耗をより防止することができるようになる。
更に、本発明の転がり軸受では、潤滑のために、例えばグリース(図示せず)が封入される。
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。
(実施例1〜6、比較例1〜4)
表1に示すように、樹脂及び強化繊維を用いて樹脂組成物を調製し、引張強度測定用及び曲げ弾性率測定用の各試験片を作製した。尚、実施例及び比較例2では、エポキシ系シランカップリング剤処理チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学(株)製「ティスモD102」)を用い、比較例4ではシランカップリング剤未処理のチタン酸カリウムウィスカー(大塚化学(株)製「ティスモD」)を用いた。また、比較例1では、炭素繊維30%入りL−PPS材(ポリプラスチックス製「フォートロン2120A1」)を用いた。そして、引張強度をISO527−1に準じて、曲げ弾性率をISO178に準じてそれぞれ測定した。結果を表1に併記する。
表1に示すように、樹脂及び強化繊維を用いて樹脂組成物を調製し、引張強度測定用及び曲げ弾性率測定用の各試験片を作製した。尚、実施例及び比較例2では、エポキシ系シランカップリング剤処理チタン酸カリウムウィスカー(大塚化学(株)製「ティスモD102」)を用い、比較例4ではシランカップリング剤未処理のチタン酸カリウムウィスカー(大塚化学(株)製「ティスモD」)を用いた。また、比較例1では、炭素繊維30%入りL−PPS材(ポリプラスチックス製「フォートロン2120A1」)を用いた。そして、引張強度をISO527−1に準じて、曲げ弾性率をISO178に準じてそれぞれ測定した。結果を表1に併記する。
また、上記の樹脂組成物を用いて、アンギュラ玉軸受(日本精工(株)製「65BNR10DBB」;内径65mm、外径100mm、幅18mm、接触角18°、4列組合せ)用の保持器(図4参照)を作製した。
また、内外輪をSUJ2製(実施例及び比較例1、2、4)または浸炭窒化鋼SHX製(比較例3)とし、玉は何れもSi3N4製とした。
上記の保持器(比較例3は比較例1と同一材料)、内外輪及び玉を用いて試験用アンギュラ軸受を作製し、MTEグリース(Baコンプレックス−エステル系)を封入した。保持器は外輪案内方式とした。また、組み込み時予圧荷重は300Nである。
そして、各試験用アンギュラ軸受を、12000min−1、15000min−1または18000min−1の回転数にて各1000時間連続回転させた。回転後に軸受を分解し、保持器案内面の摩耗状態を観察し、更に保持器の変形の有無を確認した。結果を表2に示す。
表1、2に示すように、本発明に従う各実施例では、高速回転でも保持器の変形はない。また、保持器案内面も、硬化処理を施していないにも関わらず摩耗がない。
これに対し比較例2では、保持器中のチタン酸カリウムウィスカー含有量が少ないため強度不足であり、高速回転下で保持器が変形している。また、比較例4でも、エポキシ系シランカップリング剤による処理を施さないチタン酸カリウムウィスカーを使用しているため、保持器が強度不足により高速回転下で変形している。
また、比較例1では、保持器が炭素繊維を含有しているため、保持器案内面が摩耗している。比較例3では、比較例1と同材料の保持器を用いているもの、内外輪が浸炭窒化鋼であるため、比較例1に比べて保持器案内面の摩耗が少ない。即ち、強化繊維として炭素繊維を用いた保持器を用いると、保持器案内面の摩耗を抑えるためには硬質処理が必要となる。
110 円筒ころ軸受
114 合成樹脂製保持器
120 アンギュラ玉軸受
124 合成樹脂製保持器
114 合成樹脂製保持器
120 アンギュラ玉軸受
124 合成樹脂製保持器
Claims (3)
- 高速回転する主軸を支承し、合成樹脂製保持器を備える高速回転用転がり軸受において、
前記合成樹脂製保持器が、エポキシ系またはアミノ系のシランカップリング剤で処理されたチタン酸カリウムウィスカーを30〜45質量%の割合で含有する樹脂組成物からなり、かつ、曲げ弾性率が10〜15GPaであることを特徴とする高速回転用転がり軸受。 - 前記合成樹脂製保持器が、樹脂成分として直鎖状ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びポリエーテルケトン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載の高速回転用転がり軸受。
- 前記合成樹脂製保持器が外輪に案内されることを特徴とする請求項1または2記載の高速回転用転がり軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008182440A JP2010019390A (ja) | 2008-07-14 | 2008-07-14 | 高速回転用転がり軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008182440A JP2010019390A (ja) | 2008-07-14 | 2008-07-14 | 高速回転用転がり軸受 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2010019390A true JP2010019390A (ja) | 2010-01-28 |
Family
ID=41704499
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2008182440A Pending JP2010019390A (ja) | 2008-07-14 | 2008-07-14 | 高速回転用転がり軸受 |
Country Status (1)
Country | Link |
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2008
- 2008-07-14 JP JP2008182440A patent/JP2010019390A/ja active Pending
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