JP2010019186A - 酸素濃度センサの異常診断装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】フューエルカット中の吸気制御を通じて異常診断を早期に完了させることと、同吸気制御に起因する振動の発生を抑制することとの両立を図ることのできる酸素濃度センサの異常診断装置を提供する。
【解決手段】この異常診断装置では、内燃機関の排気管内を流れる排気の酸素濃度に応じて出力が変化する酸素センサについて、その異常診断をフューエルカットの実行中に行うものであり、吸入空気量を調整するスロットルバルブの開度を異常診断のために増大させるとともに、この制御を開始したときにはフューエルカットが終了するまでその終了を禁止する。
【選択図】図8
【解決手段】この異常診断装置では、内燃機関の排気管内を流れる排気の酸素濃度に応じて出力が変化する酸素センサについて、その異常診断をフューエルカットの実行中に行うものであり、吸入空気量を調整するスロットルバルブの開度を異常診断のために増大させるとともに、この制御を開始したときにはフューエルカットが終了するまでその終了を禁止する。
【選択図】図8
Description
本発明は、排気の酸素濃度に応じて出力が変化する酸素濃度センサの異常診断について、これをフューエルカットの実行中に行う酸素濃度センサの異常診断装置に関する。
上記異常診断装置としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。同文献のものをはじめとして、従来の異常診断装置では次の考え方に基づいて酸素濃度センサの異常診断を行うようにしている。
すなわち、フューエルカットの実行中においては吸入空気に含まれる酸素が燃焼室にて燃焼されずに排気通路に送り出されるため、酸素濃度センサが正常な状態にあれば、その出力値は理論空燃比よりもリーン側の空燃比に対応したものとなる。従って、フューエルカットの実行中に得られる酸素濃度センサの出力値が理論空燃比よりもリッチ側の空燃比に対応した値の場合には、これをもって酸素濃度センサに異常が生じている旨判定することが可能となる。
具体的には、酸素濃度センサとして濃淡電池式酸素センサ(いわゆるO2センサ)を備える内燃機関において、同センサの異常診断を行う場合、酸素濃度センサの出力電圧がリッチの空燃比に対応した値であることをもってセンサに異常が生じている旨判定することができる。また、酸素濃度センサとして限界電流式酸素センサ(いわゆるA/Fセンサ)を備える内燃機関において、同センサの異常診断を行う場合、酸素濃度センサの出力電流がリッチの空燃比に対応した値であることをもってセンサに異常が生じている旨判定することができる。
特開2006−284425号公報
ところで、フューエルカットが開始された直後は、排気通路内にはそれまでの混合気の燃焼により生じた排気が存在しているため(以下、「残留排気」)、吸入空気が燃焼されずに排気通路に送り出される状態にあるとはいえ、酸素濃度センサの出力値は残留排気の影響を受けたものとなる。すなわち、排気通路内に存在している排気の状態によっては、酸素濃度センサに異常が生じていなくともその出力値がリッチ側の空燃比に対応した値となることもあるため、より正確な診断を行ううえではこの点についても考慮する必要がある。
そこで、異常診断に際しての上記残留排気の影響を排除するため、フューエルカットの開始後において排気通路中の排気が十分に外部に送り出されたと推定される時間が経過するまでは、異常診断の開始を保留することも考えられる。しかしこの場合には、異常診断の完了時期が異常診断の開始を保留した分だけ遅れることになるため、より早期に異常検出を完了させることが困難となる点において課題を残すものとなっている。
従って、この点に鑑みさらに改良を加え、フューエルカットの開始にともない吸気量制御弁の制御を通じて吸入空気量を増大させることにより、残留排気を速やかに排気通路の外部に送り出しつつ、これと並行して異常診断を行うことも考えられる。しかしこうした吸気量制御弁の制御を実行する場合には、同制御弁の開度の変化に起因する機関回転速度の過度の変動をまねくことも想定されるため、この点についても考慮のうえ具体的な制御構造を設定することが望ましいものの、ここまでの事項を検討した異常診断装置の提案はいまのところなされていない。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、フューエルカット中の吸気制御を通じて異常診断を早期に完了させることと、同吸気制御に起因する振動の発生を抑制することとの両立を図ることのできる酸素濃度センサの異常診断装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路を流れる排気の酸素濃度に応じて出力が変化する酸素濃度センサについて、その異常診断をフューエルカットの実行中に行う酸素濃度センサの異常診断装置において、吸入空気量を調整する吸気量制御弁の開度を前記異常診断のために増大させる吸気制御と、この吸気制御を開始したときにはフューエルカットが終了するまで同吸気制御の終了を禁止する禁止制御とを行う制御手段を備えることを要旨としている。
(1)請求項1に記載の発明は、内燃機関の排気通路を流れる排気の酸素濃度に応じて出力が変化する酸素濃度センサについて、その異常診断をフューエルカットの実行中に行う酸素濃度センサの異常診断装置において、吸入空気量を調整する吸気量制御弁の開度を前記異常診断のために増大させる吸気制御と、この吸気制御を開始したときにはフューエルカットが終了するまで同吸気制御の終了を禁止する禁止制御とを行う制御手段を備えることを要旨としている。
上記発明によれば、異常診断に際して吸気制御を通じて残留排気を排気通路の外部に送り出すようにしていることにより、異常診断をフューエルカット開始後のより早い時期またはフューエルカットと同時に開始することが許容されるため、異常診断を早期に完了させることができるようになる。
ここで、異常診断のために吸気制御を開始し、その後の異常診断の完了にともない吸気制御を終了したとすると、この場合にはフューエルカットの実行中において吸気量制御弁の開度が減少することになるため、これに起因して機関回転速度の過度の変動をまねくことも想定される。上記発明ではこの点に鑑み、吸気制御を開始したときにはフューエルカットが終了するまで吸気制御の終了を禁止するようにしているため、上述したフューエルカット中における吸気量制御弁の開度の急激な減少が生じる状況をまねくことは回避されるようになる。従って、フューエルカット中の吸気制御に起因した機関回転速度の過度の変動の発生を抑制することができるようになる。
すなわち上記発明によれば、フューエルカット中の吸気制御を通じて異常診断を早期に完了させることと、同吸気制御に起因する機関回転速度の過度の変動を抑制することとの両立を図ることができるようになる。
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記制御手段は、フューエルカットの実行条件が成立していること及び前記異常診断の実行条件が成立していることに基づいてフューエルカットとともに前記吸気制御を開始し、フューエルカットの実行中である限りは前記開始した吸気制御の終了を禁止することを要旨としている。
(3)請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記制御手段は、フューエルカットの終了条件の成立と同時に前記吸気制御を終了することを要旨としている。
(4)請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記内燃機関は、アクセルペダルの操作量に応じて前記吸気量制御弁の開度を調整するものであって、アクセルペダルが踏み込まれている状態から開放された状態に移行したことをフューエルカットの実行条件とするものであり、前記制御手段は、前記吸気制御の実行中においては前記吸気量制御弁の開度をアクセルペダルの操作量に応じた開度よりも大きいものに維持することを要旨としている。
上記発明によれば、フューエルカットの実行中に吸気制御を実行するようにしているため、フューエルカット中における吸気量制御弁の開度はアクセルペダルの操作量に応じた開度よりも大きいもの、すなわち吸気量制御弁の開度の制御を通じて選択可能な最小開度よりも大きい開度に維持される。これにより、吸気量制御弁が最小開度に維持されるときと比較して吸入空気量が増量されるため、残留排気を速やかに排出することができるようになる。
(5)請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記制御手段は、前記吸気制御の実行中において吸入空気量が予め設定された基準吸気量以上か否かを判定し、基準吸気量以上である旨の判定結果が得られたときには前記吸気量制御弁の開度をそのときの開度に維持することを要旨としている。
上記発明では、吸入空気量が予め設定された基準吸気量以上のとき、すなわち残留排気を速やかに外部に送り出すうえで十分と考えられる吸入空気量が得られているとき、吸気量制御弁の開度をそのときの開度に維持するようにしている。従って、吸入空気量が不要に増大されることを抑制するとともに、吸気量制御弁の開度の減少に起因する機関回転速度の変動を抑制することができるようになる。
(6)請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記制御手段は、前記吸気制御において吸気量制御弁の開度を増大させる量である開度補正量について、これを機関回転速度に基づいて算出することを要旨としている。
上記発明では、吸入空気量と相関のある機関回転速度に基づいて開度補正量を設定するようにしているため、フューエルカット中において吸気量制御弁の開度が過度に大きくまたは小さく設定されることを抑制することができるようになる。
(7)請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記制御手段は、機関回転速度が高回転領域を除く低回転領域または中回転領域にあるときには機関回転速度の増大にともない前記開度補正量を増大させることを要旨としている。
(8)請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記制御手段は、機関回転速度が高回転領域にあるときには機関回転速度の変化にかかわらず前記開度補正量を一定の値に維持することを要旨としている。
(9)請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、前記制御手段は、吸入空気量が予め設定された判定空気量未満であるときには前記吸気制御を開始しないことを要旨としている。
図1〜図8を参照して、本発明を車載内燃機関に搭載される酸素濃度センサの異常診断装置として具体化した一実施形態について説明する。
図1に示されるように、内燃機関1は、吸入空気と燃料との混合気を燃焼させる機関本体10と、この機関本体10の燃焼室11に吸入空気及び燃料を供給する吸気装置20と、燃焼室11での燃焼後のガスを外部に送り出す排気装置30と、内燃機関1の各種装置を統括的に制御する制御装置40とにより構成されている。
図1に示されるように、内燃機関1は、吸入空気と燃料との混合気を燃焼させる機関本体10と、この機関本体10の燃焼室11に吸入空気及び燃料を供給する吸気装置20と、燃焼室11での燃焼後のガスを外部に送り出す排気装置30と、内燃機関1の各種装置を統括的に制御する制御装置40とにより構成されている。
吸気装置20は、燃焼室11に接続される吸気管21と、この吸気管21の途中に設けられて吸入空気の通路面積を変更するスロットルバルブ22と、このスロットルバルブ22を迂回して吸入空気を流通させるアイドル回転速度制御装置23と、吸気管21内に燃料を噴射するインジェクタ24とにより構成されている。アイドル回転速度制御装置23は、スロットルバルブ22を迂回する態様で吸気管21に接続されるバイパス通路23Aと、このバイパス通路23Aの途中に設けられて吸入空気の通路面積を変更するアイドルスピードコントロールバルブ23Bとにより構成されている。
排気装置30は、燃焼室11に接続される排気管31と、この排気管31の途中に設けられて排気を浄化する三元触媒装置32とにより構成されている。
機関本体10は、燃焼室11での混合気の燃焼を通じて往復運動するピストン12と、このピストン12の往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト13と、吸気管21と燃焼室11との接続部を開閉する吸気弁14と、排気管31と燃焼室11との接続部を開閉する排気弁15とにより構成されている。
機関本体10は、燃焼室11での混合気の燃焼を通じて往復運動するピストン12と、このピストン12の往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト13と、吸気管21と燃焼室11との接続部を開閉する吸気弁14と、排気管31と燃焼室11との接続部を開閉する排気弁15とにより構成されている。
制御装置40は、機関運転状態等をモニタする各種センサ、すなわちアクセルポジションセンサ42及び回転速度センサ43及びエアフロメータ44及びスロットルポジションセンサ45及び酸素センサ46を含む各種センサと、これらセンサの出力に基づいて各装置の動作を制御する電子制御装置41とにより構成されている。
アクセルポジションセンサ42は、車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下、「アクセル操作量AP」)に応じて出力が変化するものであり、アクセルペダルの付近に設けられている。また回転速度センサ43は、クランクシャフト13の回転速度(以下、「機関回転速度NE」)に応じて出力が変化するものであり、クランクシャフト13の付近に設けられている。またエアフロメータ44は、吸気管21内を流通する吸入空気の流量(以下、「吸入空気量GA」)に応じて出力が変化するものであり、スロットルバルブ22の吸気上流側に設けられている。またスロットルポジションセンサ45は、スロットルバルブ22の開度(以下、「スロットル開度TA」)に応じて出力が変化するものであり、スロットルバルブ22の付近に設けられている。また酸素センサ46は、排気管31内を流通する排気の酸素濃度に応じて出力が変化するものであり、三元触媒装置32の排気下流側且つその付近に設けられている。
ここで、酸素センサ46の詳細な構成について説明する。
酸素センサ46は、固体電解質であるジルコニア素子の特性を利用した濃淡電池式のものであり、大気中の酸素濃度と排気の酸素濃度との差に基づいて起電力を発生する。図2に示すように、起電力の発生に必要となる排気の酸素濃度は、理論空燃比の混合気の燃焼により生じた排気の酸素濃度の近くにあり、この付近で出力電圧は約1Vと約0Vとの間で大きく変化する。すなわち、酸素センサ46の出力電圧は排気の酸素濃度が理論空燃比よりもリッチのときに約1V(以下、この出力電圧を「リッチ信号」とする)となり、酸素濃度が理論空燃比よりもリーンのときに約0V(以下、この出力電圧を「リーン信号」とする)となる。これにより、酸素センサ46の出力電圧に基づいて混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかを把握することができる。具体的には、酸素センサ46がリッチ信号を出力した場合には、この結果を生じさせた排気の燃焼前の混合気はリッチであったとみなすことができる。反対に、酸素センサ46がリーン信号を出力した場合、この結果を生じさせた排気の燃焼前の混合気はリーンであったとみなすことができる。
酸素センサ46は、固体電解質であるジルコニア素子の特性を利用した濃淡電池式のものであり、大気中の酸素濃度と排気の酸素濃度との差に基づいて起電力を発生する。図2に示すように、起電力の発生に必要となる排気の酸素濃度は、理論空燃比の混合気の燃焼により生じた排気の酸素濃度の近くにあり、この付近で出力電圧は約1Vと約0Vとの間で大きく変化する。すなわち、酸素センサ46の出力電圧は排気の酸素濃度が理論空燃比よりもリッチのときに約1V(以下、この出力電圧を「リッチ信号」とする)となり、酸素濃度が理論空燃比よりもリーンのときに約0V(以下、この出力電圧を「リーン信号」とする)となる。これにより、酸素センサ46の出力電圧に基づいて混合気の空燃比が理論空燃比に対してリッチであるかリーンであるかを把握することができる。具体的には、酸素センサ46がリッチ信号を出力した場合には、この結果を生じさせた排気の燃焼前の混合気はリッチであったとみなすことができる。反対に、酸素センサ46がリーン信号を出力した場合、この結果を生じさせた排気の燃焼前の混合気はリーンであったとみなすことができる。
制御装置40は、アクセル操作量APに基づいてスロットル開度TAを調整するスロットル制御、及び吸入空気量GAに基づいて燃料噴射量を調整する噴射制御、及び酸素センサの46の出力電圧に基づいて混合気の空燃比を理論空燃比に近づける空燃比制御等を行う。ここで、酸素センサ46においてはその出力特性に異常が生じること、例えば排気の酸素濃度がリーン信号を出力させる程度の大きさであるにもかかわらずリッチ信号が出力されることもある。この場合には、空燃比制御の適切な実行態様を維持することが困難となるため、酸素センサ46の異常を速やかに検出してその改善を運転者等に促すことが必要となる。
そこで、本実施形態の制御装置40においては、酸素センサ46の異常を検出するための異常診断制御を内燃機関1の運転がなされる毎に実行するとともに、これを通じて酸素センサ46の異常が検出された際にはその旨を示すインジケータランプを点灯し、併せてその旨を示すデータを電子制御装置41のメモリに記録するようにしている。
上記異常診断制御は、フューエルカットの実行中における酸素センサ46の出力電圧に基づいて同センサ46に異常が生じているか否かを判定する「診断基本処理(図3)」と、この処理による診断結果の誤りを抑制しつつ診断の早期完了を図るための「診断補助処理(図4及び図5)」とにより構成されている。
「診断基本処理」では、次の態様をもって酸素センサ46の異常検出を行う。すなわち、フューエルカットの実行中においては吸入空気が燃焼されることなく排気管31内に送り出されるため、酸素センサ46が正常な状態であればその出力はリーン信号を示す。従って、フューエルカット中の酸素センサ46の出力がリッチ信号であるときには、これをもって酸素センサ46に異常が生じている旨判定する。
図3を参照して、「診断基本処理」の詳細な処理手順について説明する。なお、同処理は内燃機関1の始動後に開始された後、所定の演算周期毎に繰り返し実行される。
この処理では、ステップS11においてフューエルカットの実行中か否かを判定し、ステップS12において酸素センサ46の診断結果が確定していることを示す診断完了フラグがオフに設定されているか否かを判定し、またステップS13において酸素センサ46の異常診断のための前提条件が成立しているか否かを判定する。そしてこれら判定条件のうちいずれか一つでも成立していないものがあるときには、本処理を一旦終了する。
この処理では、ステップS11においてフューエルカットの実行中か否かを判定し、ステップS12において酸素センサ46の診断結果が確定していることを示す診断完了フラグがオフに設定されているか否かを判定し、またステップS13において酸素センサ46の異常診断のための前提条件が成立しているか否かを判定する。そしてこれら判定条件のうちいずれか一つでも成立していないものがあるときには、本処理を一旦終了する。
ここで、フューエルカットが実行されていないときには、排気管31内を流れる排気の酸素濃度が酸素センサ46の出力を確実にリーン信号にするものとは限らないため、上述した酸素センサ46のリッチ信号に基づく異常検出を行ううえで好ましい環境にあるとはいえない。そこで本診断基本処理では、ステップS11の判定処理を通じて異常診断を行うか否かを選択するようにしている。
また、酸素センサ46の状態の診断結果が確定しているときには、内燃機関1の運転が停止されるまでに酸素センサ46の状態がさらに変化するおそれは小さいため、さらに異常診断を行う必要はないと考えられる。そこで本診断基本処理では、ステップS12の判定処理を通じて異常診断を行うか否かを選択するようにしている。
また、異常診断のための前提条件が成立していないときには、異常診断を実行してもその結果の信頼性が十分に確保されない等の不都合をまねくことが想定される。そこで本診断基本処理では、ステップS13の判定処理を通じて異常診断を行うか否かを選択するようにしている。なお、ここでは上記前提条件として、酸素センサ46の温度が活性温度以上であること、及びフューエルカット開始直前の酸素センサ46の出力がリッチ信号であることが設定されている。
次のステップS14では、酸素センサ46の異常診断を開始する。すなわち、ここでは異常診断の実行条件(ステップS11〜S13の条件)が成立してからの経過時間(以下、「診断時間TS」)の計測を開始する。
そしてステップS15では、酸素センサ46の出力がリッチ信号であるか否かを判定し、リッチ信号ではない旨の判定結果が得られたときには、ステップS17において酸素センサ46に異常が生じていない旨(酸素センサ46が正常である旨)の診断結果を確定する。このとき、酸素センサ46の異常診断が完了したことを示す診断完了フラグをオフからオンに書き換える。
一方、ステップS15においてリッチ信号である旨の判定結果が得られたときには、ステップS16では診断時間TSが判定時間TX以上となったか否かをさらに判定する。そしてステップS15及びS16の双方の条件が満たされている旨判定したときには、ステップS17において酸素センサ46に異常が生じている旨の診断結果を確定する。このとき、酸素センサ46の異常診断が完了したことを示す診断完了フラグ及び酸素センサ46に異常が生じている旨を示す異常フラグをオフからオンに書き換え、且つインジケータランプを点灯する。
ここで、フューエルカット中においては先にも述べたとおり、正常な状態にある酸素センサ46の出力はリーン信号となるはずであるため、出力がリッチ信号である場合には酸素センサ46に異常が生じていると考えられる。ただし、フューエルカット開始直前の混合気がリッチであること等に起因して、異常診断が開始された直後の残留排気の酸素濃度が酸素センサ46にリッチ信号を生じさせる程度に小さい場合もあるため、酸素センサ46の異常診断を正確に行ううえではこの点についても考慮する必要がある。そこで本診断基本処理では、フューエルカット開始前の排気の影響により診断結果が誤ったものとなる可能性が高い期間内、すなわち診断時間TSが判定時間TX未満のときには、ステップS15において出力がリッチ信号である旨の判定結果が得られても診断結果の確定を行わないようにしている。そして、このように診断結果の確定を保留することにより、酸素センサ46が正常であるにもかかわらず異常であるとの判定をしてしまうことの抑制が可能となり、また判定時間TXとして、より大きい値を予め設定しておくことによりそうした効果を一層確実なものとすることが可能となる。一方、判定時間TXとして大きい値が設定されるほど診断結果の確定時期が先送りされることになるため、酸素センサ46の異常診断を速やかに完了させる観点からすると、判定時間TXとして極力小さい値を設定することが要求される。
そこで、当該異常診断制御では、診断結果の誤りの抑制と診断結果の早期の確定との両立を図るため、「診断基本処理(図3)」に併せて「診断補助処理(図4及び図5)」を実行するようにしている。この「診断補助処理」では、異常診断の実行条件が成立しているとき、吸入空気量GAを増大させることにより排気管31内の排気を速やかに外部に送り出し、フューエルカット開始前の排気が異常診断に影響を及ぼす期間の短縮を図るようにしている。そしてこうした吸入空気量GAを増大させる制御の採用に併せて、先の判定時間TXとしてより小さい値、すなわち同制御を採用しない場合には設定が許容されない値(ここでは7sec)を設定するようにしている。
図4及び図5を参照して、「診断補助処理」の詳細な処理手順について説明する。なお同処理は、「診断基本処理」とともに開始された後に所定の演算周期毎に繰り返し実行される。また図5は、同処理の一部として実行される「補正量算出処理」の詳細を示したものである。
この処理では、ステップS21においてフューエルカットの実行中か否かを判定し、またステップS22において診断完了フラグがオフに設定されているか否かを判定し、またステップS23において酸素センサ46の異常診断のための前提条件が成立しているか否かを判定する。なお同前提条件としては、酸素センサ46の温度が活性温度以上であること、及びフューエルカット開始直前の酸素センサ46の出力がリッチ信号であることが設定されている。
そしてこれら条件のうちいずれか一つでも成立していないものがあるときには、ステップS24の処理の実行を保留する。また、ステップS21において条件が満たされていない旨判定したときには、ステップS22以降の全ての処理を省略して本診断補助処理を一旦終了し、ステップS22またはS23において条件が満たされていない旨判定したときには、ステップS25の処理に移行する。
次のステップS24では、図5に示す「補正量算出処理」を開始し、この処理を通じてスロットル開度TAの増大側への補正量(以下、「開度補正量TAA」)を算出する。この開度補正量TAAは、フューエルカット開始後の所定時期までに残留排気を排気管31内から外部に十分に送り出すために必要となる吸入空気量GA(以下、「要求空気量GAX」)について、これを得るための値として各機関回転速度NEに対して予め設定されている。また、フューエルカット実行中におけるスロットル開度TA(以下、「最小開度TAL」)の補正量であるため、実質的には最小開度TALを基準としたときのスロットル開度TAの大きさに相当する。
そしてステップS25では、開度補正量TAAをスロットル開度TAに反映し、すなわち最小開度TALに開度補正量TAAを加算してこれを今回制御周期でのスロットル開度TAの指令値として設定する。これにより、電子制御装置41を通じて別途実行されるスロットル制御において、スロットルポジションセンサ45により検出されるスロットル開度TAを上記指令値と同じものにすべくスロットルバルブ22の制御が行われる。以降では、開度補正量TAAに基づくスロットル開度TAの補正により、実際のスロットル開度TAが最小開度TALよりも大きいものに維持する上記制御を開度増大制御とする。
なお、ステップS22またはS23において条件が満たされていない旨判定したときにステップS25の処理を行うようにしているため、開度補正量TAAとして「0」よりも大きい値がすでに算出されているときには、結果として前回制御周期において算出された開度補正量TAAがスロットル開度TAに反映される。すなわち、開度増大制御の実行中において、診断結果の確定がなされた場合または異常診断の前提条件が不成立となった場合、フューエルカット実行中である限りはすでに算出されている開度補正量TAAをスロットル開度TAに反映させ、これにより実際のスロットル開度TAをその時点での開度に維持するようにしている。またすなわち、開度増大制御の実行中において診断結果が確定した場合であっても、フューエルカットが終了するまでは開度増大制御の終了を禁止し、スロットル開度TAを診断結果が確定した時点での開度に維持するようにしている。
診断結果の確定がなされた場合においては、スロットル開度TAをフューエルカット中の本来の開度すなわちアクセル操作量APに対応した最小開度TALに変更することも考えられる。しかしこの場合には、スロットル開度TAの減少にともなう機関回転速度NEの過度の変動が生じ、搭乗者に違和感を与えるおそれもある。そこで本診断補助処理では、上述のようにフューエルカットの終了まで開度増大制御を継続することにより、そうした搭乗者への違和感の付与を抑制するようにしている。
図5を参照して、「補正量算出処理」の詳細について説明する。
本処理においては、まずステップS31を通じて今回の内燃機関1の運転開始後において算出した開度補正量TAAのうちの最新のものを前回制御周期の開度補正量(以下、「前回補正量TAF」)として設定する。なお、開度補正量TAAの初期値は「0」に設定されているため、運転開始後の最初のフューエルカットに基づいて本補正量算出処理が実行された際には、前回補正量TAFとしてもまずは「0」が設定される。また、開度補正量TAAはフューエルカットの終了毎に初期化されるため、運転開始後の2回目以降のフューエルカットに基づいて本補正量算出処理が実行された際にも前回補正量TAFはまず「0」に設定される。
本処理においては、まずステップS31を通じて今回の内燃機関1の運転開始後において算出した開度補正量TAAのうちの最新のものを前回制御周期の開度補正量(以下、「前回補正量TAF」)として設定する。なお、開度補正量TAAの初期値は「0」に設定されているため、運転開始後の最初のフューエルカットに基づいて本補正量算出処理が実行された際には、前回補正量TAFとしてもまずは「0」が設定される。また、開度補正量TAAはフューエルカットの終了毎に初期化されるため、運転開始後の2回目以降のフューエルカットに基づいて本補正量算出処理が実行された際にも前回補正量TAFはまず「0」に設定される。
次に、回転速度センサ43により検出された機関回転速度NEに基づいて開度補正量TAAを算出する。具体的には、図6(a)に示す態様をもって予め記憶されているマップに基づいて、そのときの機関回転速度NEに対応した開度補正量TAAを算出する。同マップにおいては、フューエルカットからの復帰がなされる機関回転速度NEを下限回転速度NELとし、フューエルカット中において要求空気量GAX以上の吸入空気量GAが得られる機関回転速度NEを基準回転速度NEHとして、次のように機関回転速度NEと開度補正量TAAとの関係が設定されている。すなわち、下限回転速度NELから基準回転速度NEHまでの領域では機関回転速度NEが増大するにつれて開度補正量TAAは次第に小さくなり、また基準回転速度NEHよりも大きい領域では機関回転速度NEにかかわらず開度補正量TAAは一定の値となる。
図6(b)に示されるように、フューエルカット中においては機関回転速度NEが低下するにつれて吸入空気量GAと要求空気量GAXとの差(以下、「空気量差△GA」)は増大する傾向を示す。従って、任意の機関回転速度NEにあるときに要求空気量GAXを得るためには、同回転速度NEにおいての空気量差△GAに対応する分だけスロットル開度TAを増大側に補正する必要がある。そこで、本診断補助処理の設計に際しては、機関回転速度NE毎の空気量差△GAを試験により把握し、この空気量差△GAに応じた分だけ吸入空気量GAを増大させるために必要となるスロットル開度TAを設定し、この作業を各機関回転速度NEについて行うことにより図6のマップを構成している。
ここで、同マップに基づく開度補正量TAAの算出態様の一例について説明する。
フューエルカット開始時の機関回転速度NEが回転速度NE1であり、この回転速度NE1に基づいて得られる吸入空気量GAが空気量GA1であったとすると、この時点で吸入空気量GA1は要求空気量GAXに対して空気量△GAだけ不足していることになる。従って、開度補正量TAAとしてはこの不足分の空気量△GAを増大させる値(開度補正量TAA1)が算出される。
フューエルカット開始時の機関回転速度NEが回転速度NE1であり、この回転速度NE1に基づいて得られる吸入空気量GAが空気量GA1であったとすると、この時点で吸入空気量GA1は要求空気量GAXに対して空気量△GAだけ不足していることになる。従って、開度補正量TAAとしてはこの不足分の空気量△GAを増大させる値(開度補正量TAA1)が算出される。
さて、上記ステップS32の処理を通じて開度補正量TAAを算出した後、次のステップS33では、アイドルスピードコントロールバルブ23Bの開度(以下、「ISC開度」)に基づいて開度補正量TAAの補正量(以下、「補助補正量TAB」)を算出する。具体的には、図7(a)に示す態様をもって予め記憶されているマップに基づいて、そのときのISC開度に対応した補助補正量TABを算出する。同マップにおいては、ISC開度が「0」のときには補助補正量TABも「0」、且つISC開度が増大するにつれて補助補正量TABも次第に大きくなる態様でこれらパラメータの関係が設定されている。ちなみに、当該内燃機関1においてアイドルスピードコントロールバルブ23Bは図7(b)に示す態様をもって制御されている。すなわち、機関回転速度NEが低回転領域及び中回転領域にあるときには機関回転速度NEが増大するにつれてISC開度は次第に小さくなり、機関回転速度NEが高回転領域にあるときには機関回転速度NEの大きさにかかわらずISC開度は「0」に維持される。
そしてステップS34において、ステップS32で算出した開度補正量TAAからステップS33で算出した補助補正量TABを減算し、その結果を新たな開度補正量TAAとして設定する。
ここで、ISC開度が「0」よりも大きいときには、アイドルスピードコントロールバルブ23B及びスロットルバルブ22のそれぞれを通過する吸入空気を合わせたものが燃焼室に供給される空気量となる。従って、そのような状態においてステップS32により算出した開度補正量TAAをそのままスロットル開度TAに反映させた際には、ISC開度に応じた分だけ吸入空気量GAが要求吸気量GAXを上回るようになる。すなわち、スロットル開度TAが不要に増大側に補正されることになる。そこで本診断補助処理では、そうしたスロットル開度TAの過度の補正を抑制するため、上記ステップS32〜S34の演算処理を通じて、ISC開度を加味した開度補正量TAAの算出を行うようにしている。
次のステップS36では、エアフロメータ44により検出された吸入空気量GAが要求空気量GAX以上か否かを判定し、要求空気量GAX以上である旨の判定結果が得られたときには、ステップS37において前回補正量TAFを開度補正量TAAとして設定する。すなわち、吸入空気量GAが要求空気量GAX以上のときには、開度補正量TAAを前回補正量TAFに維持する。一方、要求空気量GAX未満である旨の判定結果が得られたときには、ステップS36の処理を省略して次の処理へ移行する。
開度増大制御にともない吸入空気量GAが要求空気量GAXに達したときには、残留排気の外部への送り出しが十分になされた状態にあると推定されるため、吸入空気量GAをそれ以上に増量させる必要、すなわちスロットル開度TAをそれ以上に増大させる必要はない。そこで、スロットル開度TAを増大側に補正された開度からアクセル操作量APに対応した最小開度TALに変更することも考えられるが、この場合にはスロットル開度TAの減少にともなう機関回転速度NEの過度の変動が生じ、搭乗者に違和感を与えるおそれもある。従って本診断補助処理では、スロットル開度TAの開度増大制御を通じて吸入空気量GAが要求空気量GAXに達したときには、開度補正量TAAを前回補正量TAFに維持することにより、スロットル開度TAをその時点での開度に維持するようにしている。これにより、スロットル開度TAが増大側に過度に補正されることの抑制と、フューエルカット実行中において機関回転速度NEの過度の変動が生じることの抑制との両立が図られるようになる。
また、今回のフューエルカットが開始された最初の制御周期において、吸入空気量GAがすでに要求空気量GAX以上であるときにも、残留排気の外部への送り出しが十分になされた状態にあると推定されるため、吸入空気量GAをそれ以上に増量させる必要、すなわちスロットル開度TAをそれ以上に増大させる必要はない。本診断補助処理によれば、フューエルカット開始後の最初の制御周期において前回補正量TAFは「0」に設定されており、吸入空気量GAが要求空気量GAX以上である旨判定された際には、この前回補正量TAFが開度補正量TAAとして設定される。これにより、開度補正制御の制御ルーチンが実行されているとはいえ、スロットル開度TAは増大側に補正されることなく最小開度TALに維持されるため、スロットル開度TAの不要な補正は抑制される。
さて、先のステップS35またはS36の処理を実行した後、ステップS37においてアイドルスピードコントロールバルブ23Bの学習が完了していない旨判定したときには、ステップS38を通じて開度補正量TAAを「0」に設定する。一方、学習が完了している旨の判定結果が得られたときには、ステップS38の処理を省略し、ステップS34にて設定した開度補正量TAAを今回制御周期での最終的な開度補正量TAAとして維持する。
アイドルスピードコントロールバルブ23Bの学習が完了していない条件のもと、フューエルカット実行中にスロットル開度TAの増大側への補正を実行した際には、これに起因して機関回転速度NEの不安定化をまねくこともある。そこで本診断補助処理では、そうした状況が生じることを抑制するため、ステップS37の判定処理においてそれまでの処理を通じて算出した開度補正量TAAをスロットル開度TAに反映させてもよいか否かを確認するようにしている。
図8を参照して、異常診断制御の実行態様の一例について説明する。
時刻t11においてアクセル操作量APが「0」である旨判定され、これに基づいてフューエルカットが開始されたとすると、「診断基本処理」によりステップS11の条件が成立している旨判定され、さらにステップS12及びS13の条件が成立しているか否かの判定がなされる。そして、ステップS11〜S13の全ての条件(異常診断の実行条件)が成立している旨の判定結果が得られたとすると、ステップS14を通じて異常診断が開始される。またこれと並行して、「診断補助処理」においてもステップS21〜S23の全ての条件が成立している旨の判定結果が得られるため、ステップS24を通じて開度増大制御が開始される。
時刻t11においてアクセル操作量APが「0」である旨判定され、これに基づいてフューエルカットが開始されたとすると、「診断基本処理」によりステップS11の条件が成立している旨判定され、さらにステップS12及びS13の条件が成立しているか否かの判定がなされる。そして、ステップS11〜S13の全ての条件(異常診断の実行条件)が成立している旨の判定結果が得られたとすると、ステップS14を通じて異常診断が開始される。またこれと並行して、「診断補助処理」においてもステップS21〜S23の全ての条件が成立している旨の判定結果が得られるため、ステップS24を通じて開度増大制御が開始される。
そしてこの開度増大制御により、スロットル開度TAはフューエルカット開始時の開度TA1から増大側に向けて補正されるため、吸入空気量GAはこれにともない増加する傾向を示すようになる。ちなみに、開度増大制御がなされない場合には、アクセル操作量APが「0」であることに基づいてスロットル開度TAは最小開度TALに維持されるため((c)の破線)、吸入空気量GAもこれに応じた小さなものとなる。
時刻t12において吸入空気量GAが要求空気量GAXに到達したとすると、「診断補助処理」のステップS35及びS36により開度補正量TAAとして前回補正量TAFが設定され、吸入空気量GAが要求空気量GAX以上である限りスロットル開度TAは時刻t12での開度TA2に維持される。
そして時刻t13において、異常診断が開始された時刻t11からの経過時間である診断時間TSが判定時間TXに達し、この時点で酸素センサ46の出力がリッチ信号であるとすると、「診断基本処理」のステップS15〜S17の処理を通じて酸素センサ46に異常が生じている旨の診断結果が確定される。この診断結果の確定がなされて以降、フューエルカットが終了する時刻t14まではスロットル開度TAは同診断結果の確定時の開度TA2に維持され、時刻t14のフューエルカットの終了にともないアクセル操作量APに対応した開度に向けて変更される。
またあるいは、時刻t11〜t13の間に酸素センサ46の出力がリッチ信号からリーン信号に変化したとすると、「診断基本処理」のステップS15及びS17の処理を通じて酸素センサ46に異常が生じていない旨の診断結果が確定される。この場合、例えば診断結果が確定した時点でのスロットル開度TA1であるとすると、同時点からフューエルカット終了までの間、スロットル開度TAは開度TA1に維持される。
[実施形態の効果]
以上にて詳述した本実施形態の酸素濃度センサの異常診断装置によれば、以下に示す効果が得られる。
以上にて詳述した本実施形態の酸素濃度センサの異常診断装置によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態の異常診断装置では、異常診断に際して開度増大制御を通じて残留排気を排気通路の外部に送り出すようにしていることにより、異常診断をフューエルカット開始後のより早い時期またはフューエルカットと同時に開始することが許容されるため、異常診断を早期に完了させることができるようになる。
ここで、異常診断のために開度増大制御を開始し、その後の異常診断の完了にともない同制御を終了したとすると、この場合にはフューエルカット実行中においてスロットル開度TAが減少することになるため、これに起因して機関回転速度NEの過度の変動をまねくことも想定される。当該異常診断装置ではこの点に鑑み、開度増大制御を開始したときにはフューエルカットが終了するまで同制御の終了を禁止するようにしているため、上述したフューエルカット中におけるスロットル開度TAの急激な減少が生じる状況をまねくことは回避されるようになる。従って、フューエルカット中の開度増大制御に起因した機関回転速度NEの過度の変動の発生を抑制することができるようになる。
すなわち当該異常診断装置によれば、フューエルカット中の開度増大制御を通じて異常診断を早期に完了させることと、同制御に起因する機関回転速度NEの過度の変動を抑制することとの両立を図ることができるようになる。ちなみに、運転者がアクセルペダルを開放している期間においての機関回転速度NEの変動は、アクセルペダルを踏み込んでいるときの同程度の変動と比較して運転者に与える違和感は一層大きなものになると想定される。そしてこの点において、フューエルカット中の機関回転速度NEの変動を抑制すべく開度増大制御の終了を禁止する当該異常診断装置について、その実用性は十分に担保されているといえる。
(2)本実施形態の異常診断装置では、吸入空気量GAが要求空気量GAX以上のとき、すなわち残留排気を速やかに外部に送り出すうえで十分と考えられる吸入空気量が得られているとき、スロットル開度TAをそのときの開度に維持するようにしている。従って、吸入空気量GAが不要に増大されることを抑制するとともに、スロットル開度TAの減少に起因する機関回転速度NEの変動を抑制することができるようになる。
(3)本実施形態の異常診断装置では、吸入空気量GAと相関のある機関回転速度NEに基づいて開度補正量TAAを設定するようにしている。これにより、フューエルカット中においてスロットル開度TAが過度に大きく補正されることを抑制することができるようになる。
(その他の実施形態)
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示す態様をもって実施することもできる。
なお、本発明の実施態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば以下に示す態様をもって実施することもできる。
・上記実施形態では、異常診断の完了後も「診断基本処理」自体についてはこれを所定の演算周期毎に繰り返し実行する構成としたが、例えば次のように変更することもできる。すなわち、異常診断の完了後は「診断基本処理」を終了し、内燃機関1の運転終了までこれを行わないようにすることもできる。またあるいは、酸素センサ46に異常が生じている旨の診断結果が確定したときには、上記態様をもって「診断基本処理」を終了し、酸素センサ46に異常が生じていない旨の診断結果が確定したときには、次のフューエルカットが実行されたときに再び異常診断を行うこともできる。すなわち、酸素センサ46に異常が生じていない旨の判定結果が得られたときには、これをもって診断結果を確定することを保留し、異常が生じている旨の判定結果が得られたときにのみ診断結果を確定することもできる。
・上記実施形態では、「診断基本処理」による異常診断の開始後において、酸素センサ46の出力がリーン信号であるときにはこれをもって異常が生じていない旨判定するようにしたが、診断結果の確定態様を次のように変更することもできる。すなわち、診断時間TSが判定時間TXに達するまでは酸素センサ46の出力にかかわらず診断結果の確定を保留し、診断時間TSが判定時間TXに達した時点での出力に基づいて、酸素センサ46の状態が正常か異常かの診断結果を確定する。要するに、診断時間TSが判定時間TXに達した時点で診断結果が確定する態様であれば、その態様は上記実施形態のものに限られず適宜変更することができる。
・上記実施形態では、異常診断の開始とともに開度増大制御を開始するようにしたが、同制御の開始時期はこれに限られるものではない。例えば、フューエルカット開始後において異常診断の開始に先立ち開度増大制御を開始することもできる。またあるいは、フューエルカット開始とともに開度増大制御を開始することもできる。
・上記実施形態では、フューエルカットの終了と同時に開度増大制御を終了するようにしたが、同終了の時期はこれに限られるものではない。例えば、フューエルカットの終了直後に開度増大制御を終了することもできる。
・上記実施形態では、「診断補助処理」の構成を採用することによりフューエルカット開始後において開度増大制御を実行した際には、同フューエルカットの終了まで同制御を継続するすなわちその終了を禁止するようにしたが、同終了の禁止態様はこれに限られるものではない。例えば、診断結果が確定した後においては、ステップS23〜S25の処理に代えてスロットル開度TAの変更を禁止する処理を実行することもできる。
・上記実施形態では、「診断補助処理」においてステップS21〜S23の全ての条件が満たされているときに開度増大制御を実行するようにしたが、同制御を実行するための条件はこれに限られるものではない。例えば、ステップS21〜S23の判定処理に代えて、「診断基本処理」において異常診断が開始されているか否か(ステップS14以降の処理が開始されているか否か)を判定し、開始されている旨の判定結果が得られたときに開度増大制御を実行することもできる。
・上記実施形態では、開度増大制御において機関回転速度NE及びISC開度に基づいて開度補正量TAAを算出するようにしたが、他に例えば、エアフロメータ44による吸入空気量GAと要求空気量GAXとの差に基づいて開度補正量TAAを算出することもできる。要するに、開度補正量TAAとして、吸入空気量GAを要求空気量GAXに到達させることのできる値が算出される態様であれば、その具体的な算出態様は上記実施形態のものに限られず適宜変更することができる。
・上記実施形態の「診断補助処理」において、開度増大制御のための前提条件として、吸入空気量GAが要求空気量GAX未満であることを追加することもできる。この条件が成立していないとき、すなわち吸入空気量GAが要求空気量GAX以上のときには、開度増大制御を行わなくとも残留排気が排気管31の外部に送り出されると推定されるため、上記前提条件の追加によりスロットル開度TAの不要な補正がなされることを抑制することができるようになる。
・上記実施形態では、フューエルカット実行中のスロットル開度TAが最小開度TALに設定される構成を前提としたが、例えば最小開度TAL付近の開度に設定される構成をはじめとして、その他の開度に設定される構成を前提とした場合においても上記実施形態と同様の作用効果を奏することはできる。
・上記実施形態では、濃淡電池式酸素センサを異常診断の対象としたが、限界電流式酸素センサについても上記実施形態に準じた態様をもって異常診断を行うことは可能であり、この場合においても上記実施形態に準じた作用効果が奏せられるようになる。
1…内燃機関、10…機関本体、11…燃焼室、12…ピストン、13…クランクシャフト、14…吸気弁、15…排気弁、20…吸気装置、21…吸気管、22…スロットルバルブ、23…アイドル回転速度制御装置、23A…バイパス通路、23B…アイドルスピードコントロールバルブ、24…インジェクタ、30…排気装置、31…排気管、32…三元触媒装置、40…制御装置、41…電子制御装置、42…アクセルポジションセンサ、43…回転速度センサ、44…エアフロメータ、45…スロットルポジションセンサ、46…酸素センサ。
Claims (9)
- 内燃機関の排気通路を流れる排気の酸素濃度に応じて出力が変化する酸素濃度センサについて、その異常診断をフューエルカットの実行中に行う酸素濃度センサの異常診断装置において、
吸入空気量を調整する吸気量制御弁の開度を前記異常診断のために増大させる吸気制御と、この吸気制御を開始したときにはフューエルカットが終了するまで同吸気制御の終了を禁止する禁止制御とを行う制御手段を備える
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項1に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記制御手段は、フューエルカットの実行条件が成立していること及び前記異常診断の実行条件が成立していることに基づいてフューエルカットとともに前記吸気制御を開始し、フューエルカットの実行中である限りは前記開始した吸気制御の終了を禁止する
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項2に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記制御手段は、フューエルカットの終了条件の成立と同時に前記吸気制御を終了する
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記内燃機関は、アクセルペダルの操作量に応じて前記吸気量制御弁の開度を調整するものであって、アクセルペダルが踏み込まれている状態から開放された状態に移行したことをフューエルカットの実行条件とするものであり、
前記制御手段は、前記吸気制御の実行中においては前記吸気量制御弁の開度をアクセルペダルの操作量に応じた開度よりも大きいものに維持する
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記制御手段は、前記吸気制御の実行中において吸入空気量が予め設定された基準吸気量以上か否かを判定し、基準吸気量以上である旨の判定結果が得られたときには前記吸気量制御弁の開度をそのときの開度に維持する
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記制御手段は、前記吸気制御において吸気量制御弁の開度を増大させる量である開度補正量について、これを機関回転速度に基づいて算出する
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項6に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記制御手段は、機関回転速度が高回転領域を除く低回転領域または中回転領域にあるときには機関回転速度の増大にともない前記開度補正量を増大させる
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項6または7に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記制御手段は、機関回転速度が高回転領域にあるときには機関回転速度の変化にかかわらず前記開度補正量を一定の値に維持する
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸素濃度センサの異常診断装置において、
前記制御手段は、吸入空気量が予め設定された判定空気量未満であるときには前記吸気制御を開始しない
ことを特徴とする酸素濃度センサの異常診断装置。
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