JP2010019099A - ギヤポンプ - Google Patents

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【課題】ポンプ室を形成する内周面の面粗さの悪化を回避する。
【解決手段】駆動ギヤ17の外周には複数の歯170が設けられており、被動ギヤ21の外周には複数の歯210が設けられている。駆動ギヤ17と被動ギヤ21とは、互いに噛み合わされた状態でポンプ室111に収容されている。駆動ギヤ17の外周(歯170の全周面及び歯底)にはダイヤモンド・ライク・カーボンからなるコーティング層24が設けられている。被動ギヤ21の外周(歯210の全周面及び歯底)にはダイヤモンド・ライク・カーボンからなるコーティング層25が設けられている。
【選択図】図2

Description

本発明は、外周に歯を有する一対のギヤが互いに噛み合った状態でロータハウジング内のポンプ室に収容されているギヤポンプに関する。
この種のギヤポンプでは、ギヤの歯の頂部と、ロータハウジング内のポンプ室を形成する内周面との間にクリアランスが設けられている。このクリアランスからの流体の洩れは、流体移送効率の低下をもたらすため、前記クリアランスを可及的に小さくすることが重要である。
前記クリアランスを小さくする方法としては、特許文献1に開示のように、吐出圧力を通常よりも高くした状態でギヤポンプを運転し、歯の頂部で前記内周面を切削するという慣らし運転がある。
特開平11−210644号公報
しかし、慣らし運転における金属同士の摺動では、ポンプ室を形成する内周面の面粗さが悪化し、流体洩れが大きくなるという問題がある。
本発明は、ポンプ室を形成する内周面の面粗さの悪化を回避することを目的とする。
本発明は、外周に歯を有する一対のギヤが互いに噛み合った状態でロータハウジング内のポンプ室に収容されており、前記一対のギヤが駆動軸の回転に基づいてポンプ室で回転され、前記一対のギヤの回転動作によって、前記ポンプ室に流体が吸入され、前記ポンプ室から流体が吐出されるギヤポンプを対象とし、請求項1の発明では、前記歯の頂部の表面にダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティング層が設けられている。
硬度が大きく、且つ摺動性に優れたダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティング層によってポンプ室を形成する内周面を切削すれば、内周面の面粗さの悪化を回避することができる。
好適な例では、前記ギヤと前記ロータハウジングとは、同種系の金属で形成されている。
同種系の金属の摺接は、凝着を起こしやすいが、ダイヤモンド・ライク・カーボンは、同種系の金属からなるギヤとロータハウジングとの摺接を阻止して凝着を防止する。
本発明は、ポンプ室を形成する内周面の面粗さの悪化を回避することができるという優れた効果を奏する。
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
図1に示すように、鉄系の材質(例えば鋳鉄)で形成されているロータハウジング11の一端にはフロントカバー12が連結されており、ロータハウジング11の他端にはリヤカバー13が連結されている。ギヤポンプ10を構成するロータハウジング11、フロントカバー12及びリヤカバー13は、ネジ30によって共締めされている。フロントカバー12とリヤカバー13とには駆動軸14がプレーンベアリング15,16を介して回転可能に支持されている。駆動軸14は、ロータハウジング11内のポンプ室111を挿通されており、ポンプ室111内の駆動軸14には駆動ギヤ17が一体形成されている。
フロントカバー12とリヤカバー13とには被動軸18がプレーンベアリング19,20を介して回転可能に支持されている。被動軸18は、ロータハウジング11内のポンプ室111を挿通されており、ポンプ室111内の被動軸18には被動ギヤ21が一体形成されている。駆動ギヤ17及び被動ギヤ21は、鉄系の材質(例えば鋼)で形成されている。
駆動ギヤ17及び被動ギヤ21の一端面と、フロントカバー12の内端面との間には側板22が介在されており、駆動ギヤ17及び被動ギヤ21の他端面と、リヤカバー13の内端面との間には側板23が介在されている。側板22と側板23との間のポンプ室111を形成するロータハウジング11の内周面114,115は、円周面である。
図2に示すように、駆動ギヤ17の外周には複数の歯170が設けられており、被動ギヤ21の外周には複数の歯210が設けられている。一対のギヤである駆動ギヤ17と被動ギヤ21とは、互いに噛み合わされた状態でポンプ室111に収容されている。駆動軸14は、矢印Rの方向に回転される。駆動軸14が回転されると、駆動ギヤ17の回転が被動ギヤ21へ伝達されて被動軸18が矢印Qの方向に回転する。
駆動ギヤ17及び被動ギヤ21の回転に伴い、駆動ギヤ17の歯170の頂部171は、内周面114を掃過してゆき、被動ギヤ21の歯210の頂部211は、内周面114を掃過してゆく。これにより、ロータハウジング11に形成された吸入口112から流体がポンプ室111内に吸入されると共に、ロータハウジング11に形成された吐出口113から流体が吐出される。
駆動ギヤ17の外周(歯170の全周面及び歯底)にはダイヤモンド・ライク・カーボンからなるコーティング層24が設けられている。同様に、被動ギヤ21の外周(歯210の全周面及び歯底)にはダイヤモンド・ライク・カーボン(以下においてはDLCと記すこともある)からなるコーティング層25が設けられている。DLCであるコーティング層24,25は、CVD法あるいはPVD法等の蒸着方法で形成されている。本実施形態では、コーティング層24,25の厚みは、1〜5μmである。
ギヤポンプ10を組み立てた後、吐出圧力を通常よりも高くした状態でギヤポンプ10を運転して、ポンプ室111を形成する内周面114,115を切削するという慣らし運転が行われる。
フロントカバー12とプレーンベアリング15,19との間にはクリアランスがあり、リヤカバー13とプレーンベアリング16,20との間にはクリアランスがある。又、プレーンベアリング15,16と駆動軸14との間にはクリアランスがあり、プレーンベアリング19,20と被動軸18との間にはクリアランスがある。そのため、駆動軸14及び被動軸18は、僅かではあるがラジアル方向に変位可能であり、駆動ギヤ17及び被動ギヤ21は、吐出圧によって吐出口113側から吸入口112側へ付勢されている。そのため、駆動ギヤ17の頂部171に設けられたコーティング層24が吸入口112側の内周面114に押し付けられると共に、被動ギヤ21の頂部211に設けられたコーティング層25が吸入口112側の内周面115に押し付けられる。
内周面114は、駆動ギヤ17の頂部171に設けられたコーティング層24によって切削され、内周面115は、被動ギヤ21の頂部211に設けられたコーティング層25によって切削される。
第1の実施形態では以下の効果が得られる。
(1)DLCは、硬度が大きく、且つ摺動性に優れている。このような材質のDLCのコーティング層24,25によって内周面114,115を切削すれば、ポンプ室111を形成する内周面114,115の面粗さの悪化を回避することができる。
(2)ロータハウジング11、駆動ギヤ17及び被動軸18は、強度的に優れた鉄系の材質で形成されているが、ロータハウジング11とギヤ17,21とを直接摺接させると、同種系の金属同士の摺接となるために凝着が起き、内周面114,115の面粗さが悪化する。
DLCのコーティング層24,25は、同種系の金属からなるギヤ17,21とロータハウジング11との摺接を阻止して凝着を防止する。
(3)同種系の金属同士の摺接による凝着を回避しようとするには、慣らし運転時に低速回転で吐出圧力を徐々に高めてゆくといった対処もあるが、慣らし運転に時間が掛かる。
本実施形態では、内周面114,115の面粗さの悪化を回避することができるため、慣らし運転では、駆動軸14の回転速度を高速にし、且つ吐出圧力を最初から高めておくことができる。その結果、慣らし運転に掛かる時間を短縮することができる。
(3)駆動ギヤ17、被動ギヤ21及びロータハウジング11は、同種系の金属(鉄系)で形成されており、同種系の金属同士を摺接させると、凝着を起こしやすい。
DLCは、同種系の金属からなるギヤ17,21とロータハウジング11との摺接を阻止して凝着を防止する。
次に、図3の第2の実施形態を説明する。第1の実施形態と同じ構成部には同じ符合を用い、その詳細説明は省略する。
駆動ギヤ17を一体形成した駆動軸14の全表面は、ニッケル−リンメッキ(以下においてはNi−Pメッキと記すこともある)のコーティング層26と、コーティング層26の全表面に形成されたDLCのコーティング層27とによって被覆されている。被動ギヤ21を一体形成した被動軸18の全表面は、Ni−Pメッキのコーティング層28と、コーティング層28の全表面に形成されたDLCのコーティング層29とによって被覆されている。Ni−Pメッキであるコーティング層26,28は、無電解メッキで形成されている。
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる上に、以下の効果が得られる。
(4)駆動軸14及び被動軸18の母材(地金)の硬度と、DLCの硬度との差が大きい場合、駆動ギヤ17及び被動ギヤ21の表面に高硬度のDLCを直接設けた場合には、駆動ギヤ17及び被動ギヤ21の母材の硬度とDLCの硬度との大きな差がDLCの剥離を招くおそれがある。
高硬度のDLCであるコーティング層27,29と、駆動軸14及び被動軸18の母材(鉄系)との間に介在されたNi−Pメッキであるコーティング層26,28の硬度は、DLCの硬度に比べて低いが、駆動軸14及び被動軸18の母材である鉄系の硬度よりも高くできる。つまり、DLCの密着対象部材の硬度とDLCの硬度との差を低減することができるため、DLCの応力が緩和されてDLCのコーティング層27,29の剥離が防止される。
(5)無電解メッキで形成されるNi系メッキは、駆動軸14及び被動軸18をメッキ液に浸すだけでよいので、駆動ギヤ17を含む駆動軸14及び被動ギヤ21を含む被動軸18の母材の表面全体を被覆するコーティング層26,28の形成に好適である。
(6)DLCのコーティング層27,29は、駆動ギヤ17を含む駆動軸14及び被動ギヤ21を含む被動軸18全体を被覆するため、部分的な被覆を行なう場合のマスキングが不要である。
本発明では以下のような実施形態も可能である。
○駆動ギヤ17の歯170の頂部171にのみDLCのコーティング層を設けてもよく、被動ギヤ21の歯210の頂部211にのみDLCのコーティング層を設けてもよい。
○吐出口113から吐出された流体の流路上にフィルタを設け、DLCのコーティング層によって切削されたロータハウジング11の切削屑を前記フィルタによって濾過するようにした場合には、慣らし運転を行なうことなく、通常運転時にDLCのコーティング層によってポンプ室を形成する内周面を切削することができる。
○ロータハウジング11の材質には、鉄系以外の材質(例えばアルミニウム系等)を用いてもよい。
○駆動軸14及び被動軸18の材質には、鉄系以外の材質(例えばアルミニウム系等)を用いてもよい。
○駆動軸と駆動ギヤとを別体で形成し、被動軸と被動ギヤとを別体で形成してもよい。この場合、駆動軸と駆動ギヤとを組み合わせる前に駆動ギヤにDLCのコーティング層を設け、被動軸と被動ギヤとを組み合わせる前に被動ギヤにDLCのコーティング層を設けてもよい。
前記した実施形態から把握できる技術思想について以下にその効果と共に記載する。
〔1〕前記ダイヤモンド・ライク・カーボンよりも硬度が低いメッキが前記歯の頂部の表面と前記コーティング層との間に設けられている請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載のギヤポンプ。
このようなメッキは、ダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティング層の密着性を高めると共に、ダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティング層の破断を防止する。
〔2〕前記〔1〕項のメッキは、ニッケル系メッキ(Ni−P・メッキ等)である前記〔1〕項に記載のギヤポンプ。
無電解メッキで形成されるニッケル系メッキは、駆動ギヤを含む駆動軸の全表面及び被動ギヤを含む被動軸の全表面に形成するのに好適である。
〔3〕前記一対のギヤの一方は、駆動軸に一体形成されており、前記一対のギヤの他方は、被動軸に一体形成されており、前記一方のギヤ(駆動ギヤ)を含む駆動軸の全表面にダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティング層が設けられており、前記他方のギヤ(被動ギヤ)を含む被動軸の全表面にダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティング層が設けられている請求項1、請求項2及び前記〔1〕,〔2〕項のいずれか1項に記載のギヤポンプ。
DLCのコーティング層を形成するためのマスキングが不要である。
第1の実施形態を示す平断面図。 図1のA−A線断面図。 第2の実施形態を示す平断面図。
符号の説明
10…ギヤポンプ。11…ロータハウジング。111…ポンプ室。14…駆動軸。17…駆動ギヤ。170…歯。171…頂部。21…被動ギヤ。210…歯。211…頂部。24,25,27,29…コーティング層。

Claims (2)

  1. 外周に歯を有する一対のギヤが互いに噛み合った状態でロータハウジング内のポンプ室に収容されており、前記一対のギヤが駆動軸の回転に基づいてポンプ室で回転され、前記一対のギヤの回転動作によって、前記ポンプ室に流体が吸入され、前記ポンプ室から流体が吐出されるギヤポンプにおいて、
    前記歯の頂部の表面にダイヤモンド・ライク・カーボンのコーティング層が設けられているギヤポンプ。
  2. 前記ギヤと前記ロータハウジングとは、同種系の金属で形成されている請求項1に記載のギヤポンプ。
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