JP2010014637A - 気相においてfret法を用いた分子間の相互作用の検知方法、及び有害物質除去材 - Google Patents

気相においてfret法を用いた分子間の相互作用の検知方法、及び有害物質除去材 Download PDF

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Abstract

【課題】2種類の分子間の相互作用を気相において検知するための新規な方法、並びに2種類の分子間の相互作用を気相において検知するための気相センサーを提供すること。
【解決手段】蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分を、互いに相互作用する2種類の分子の各々にそれぞれ結合させたものを用意し、一方の分子を固定化した基板に他方の分子を気相中において上記基板に接触させ、FRET強度を測定することを含む、上記2種類の分子間の相互作用を気相において検知する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、気相においてFRET法を用いた分子間の相互作用の検知方法に関する。さらに本発明は、上記方法を用いて選択される所定の性能を有する有害物質除去材に関する。
近年、細菌、カビ又はウイルスなどが原因となる感染症が社会問題になっており、例えば、病院内や、公共施設など不特定多数の人の集まる場所での大量感染が懸念されている。特に病院内での感染は、抗生物質の乱用などからMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)等の発生を招く原因となることもある。
このことに関し、最近の建築物では全室にダクトを設け、このダクトを通じてエアーコンディショナーにより空気を循環させて建物全体の室温等を調整しているため、このエアーコンディショナーを介して施設内を浮遊する細菌、カビ又はウイルスなどが施設全体に拡散することが多く、特にこのような空気を媒体とした感染ルートを遮断することが有効であると考えられるようになってきている。すなわち、エアーコンディショナーや空気清浄機などの空気流通部に、細菌、カビ、ウイルス又はこれらの媒体として空気中の微細浮遊物(ダスト等)を目の細かいフィルターに吸着させたり、酸化チタンや強酸性の滅菌ゾーンを設けて、ここを通過する細菌、カビ又はウイルスなどを不活性化して除去することが行われている。
例えば、特許文献1には、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材であって、上記担体は、公定水分率が7%以上である繊維で形成されていることを特徴とする有害物質除去材が記載されている。
しかしながら、抗体を担持させたフィルターに捕捉される抗原のうち、抗原抗体反応を起こしている割合を評価する手段は知られていなかった。
一方、特許文献2には、空気中の特定物質と特異的に結合するレセプタ分子、および該特定物質と該レセプタ分子との結合により光吸収特性が変化するポリマー分子から構成される発色センサを用いて、フィルタを通過する空気中に存在する特定物質を該発色センサの色変化によって検出することが記載されている。この検出方法は、特定物質とレセプタ分子との結合による光吸収特性変化をモニタ―する方法である。
また、特許文献3には、ペプチド又はタンパクの相互作用パートナーの同定のための方法であって、少なくとも2つのペプチド又はタンパクが異なる蛍光成分とカップリングされ、蛍光共鳴エネルギー遷移が可能なように前記蛍光成分の吸収及び放射スペクトルが重複しており、かつ前記蛍光成分が、FRETが起こり、測定される程度に前記タンパク又はペプチド間の相互作用によって集合させられることを特徴とする方法が記載されている。特許文献3は、FRET法の一般的な解析法を示すものである。
特許第3642340号公報 特開2004−325432号公報 特表2001−515208号公報
本発明は、2種類の分子間の相互作用を気相において検知するための新規な方法、並びに2種類の分子間の相互作用を気相において検知するための気相センサーを提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、抗体を担持させた有害物質除去材において、当該有害物質除去材に捕捉される抗原のうち抗原抗体反応を起こしている割合を評価するための方法を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、上記方法を利用して選択される所望の性能を有する有害物質除去材を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、均一反応系である液相における現象としてモニターに利用されるFRET信号検出を、気相系に適用することを試みた結果、意外にも、FRET強度の測定によって2種類の分子間の相互作用を気相において検知できることを見出した。さらに本発明者らは、この気相におけるFRET信号検出を利用して有害物質除去材の性能の特徴を規定できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分を、互いに相互作用する2種類の分子の各々にそれぞれ結合させたものを用意し、一方の分子を固定化した基板に他方の分子を気相中において上記基板に接触させ、FRET強度を測定することを含む、上記2種類の分子間の相互作用を気相において検知する方法が提供される。
好ましくは、互いに相互作用する2種類の分子は、抗原と抗体である。
好ましくは、ドナー蛍光成分又はアクセプター蛍光成分の一方を結合させた抗体を固定化した基板に、ドナー蛍光成分又はアクセプター蛍光成分の他方を結合させた抗原を気相中において接触させ、FRET強度を測定する。
好ましくは、抗体を担持した有害物質除去材の評価を行う。
好ましくは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の組み合わせは、Eu3+クリプテート/アロフィコシアニン(APC)、シアン蛍光タンパク質(CFP)/黄色蛍光タンパク質(YFP)、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)/テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R−フィコエトリン(R−PE)/アロフィコシアニン(APC)、又はCy3/Cy5の何れかである。
本発明によればさらに、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を、互いに相互作用する2種類の分子のうちの一方に結合させた分子を固定化した気体透過性基板からなる、上記した本発明の方法を行うための気相センサーが提供される。
好ましくは、上記気体透過性基板は繊維である。
好ましくは、上記気相センサーは、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を抗体に結合させた分子を固定化した気体透過性基板からなる。
本発明によればさらに、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を結合した抗体を気体透過性基材に担持させた有害物質除去材において、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の他方を結合した抗原を気相中において上記有害物質除去材に通過させた後のFRET強度が、液相系で検出されるFRET強度の5%以上100%未満である、有害物質除去材が提供される。
好ましくは、抗原のエアロゾルを気相中において有害物質除去材に通過させる。
好ましくは、抗体を担持させた気体透過性基材の表面の25℃60%RHにおけるみかけの水の接触角は30度以下である。
好ましくは、抗体を担持させた気体透過性基材の平衡含水率は4%以上である。
本発明によれば、2種類の分子間の相互作用を気相において検知するための新規な方法、並びに2種類の分子間の相互作用を気相において検知するための気相センサーが提供される。上記の方法及び気相センサーは、室内換気テスト、空気清浄機等の性能評価、特定塵埃落下テスト、特定ガス検知器などに適用可能であり、また競合系を確立すれば非標識物質を検知することも可能である。特に、上記の方法及び気相センサーを利用することによって、抗体を担持した有害物質除去材の性能の定量的又は定性的な評価が可能になり、有害物質除去材の寿命を定量的又は定性的に表示することも可能になる。本発明を利用することにより、気相中の有害物質を効率的に除去できる空気清浄機あるいは液体清浄機を作製できるため、産業において非常に有用である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、気相においてFRET法を用いた分子間の相互作用の検知方法に関するものである。FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)とは、ドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分と呼ばれる2種類の蛍光成分がg10nm以内に近づいた時に、ドナーが発した光エネルギーをアクセプター蛍光成分が吸収する現象のことを言う。励起されたドナー蛍光成分は、エネルギーを蛍光又は熱エネルギーとして放出し、その近傍にアクセプター蛍光成分が存在すると、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)が起こり、エネルギーを受け取ったアクセプター蛍光成分は励起状態になり、蛍光が生成する。FRETの模式図を図1に示す。
本発明で用いることができるドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するものであれば特に限定されないが、好ましくは、Eu3+クリプテート/アロフィコシアニン(APC)、シアン蛍光タンパク質(CFP)/黄色蛍光タンパク質(YFP)、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)/テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R−フィコエトリン(R−PE)/アロフィコシアニン(APC)、又はCy3/Cy5などを挙げることができる。
本発明においては、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分を、互いに相互作用する2種類の分子の各々にそれぞれ結合させたものを用意する。本発明で用いる「互いに相互作用する2種類の分子」とは、相互作用を検出するための対象となる分子であり、その種類は特に限定されないが、例えば、抗原と抗体、アビジンとビオチン、酵素と基質、ホストとゲスト、錯体と金属などを挙げることができる。上記の中でも特に好ましくは、抗原と抗体である。
互いに相互作用する2種類の分子として抗原と抗体を用いる場合、抗原の種類は特に限定されないが、例えば、細菌(ブドウ球菌、ミクロコッカス属、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌、緑膿菌、セラチア菌、セパチア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌など)、カビ(酵母、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムなど)、ウイルス(インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、ノロウイルスなど)、アレルゲン(花粉、ダニアレルゲン、カビ胞子、ネコアレルゲンなど)、ハプテン(ベロ毒素・マイトトキシン・シガトキシン・ペニシリンなどの生物毒素、煙草の煙・煤塵・自動車排気ガスなどに含まれるベンゾピレン類、ダイオキシン類、ステロイド、農薬、医薬品、麻薬、香料等におい物質など)などを挙げることができる。また、抗体としては、上記抗原を認識して結合できる抗体を用いることができるが、抗体の詳細については、本明細書中において後述する。
本発明では、蛍光成分をそれぞれ結合させた上記の互いに相互作用する2種類の分子のうちの一方の分子を固定化した基板に、他方の分子を気相中において上記基板に接触させ、FRET強度を測定することによって、上記2種類の分子間の相互作用を気相において検知することができる。本発明の特に好ましい態様によれば、ドナー蛍光成分又はアクセプター蛍光成分の一方を結合させた抗体を固定化した基板に、ドナー蛍光成分又はアクセプター蛍光成分の他方を結合させた抗原を気相中において接触させ、FRET強度を測定することができ、この方法を利用することによって、例えば、抗体を担持した有害物質除去材の評価を行うことができる。
FRET強度の測定は常法により行うことができ、例えば、市販の蛍光測定装置を用いて行うことができる。ドナー蛍光成分を有する分子とアクセプター蛍光成分を有する分子の蛍光を測り、ドナーの蛍光が溶液状態でのスペクトルを測定する。ドナーの蛍光が減少し、アクセプターの蛍光が増加していることを確認することでFRETが起こっていることを確認することができる。FRETしていない対照として何を測るかについては複合体を想定する方法、非ラベル化した成分で複合体を形成させる方法などいくつかの方法があるが、アクセプターの蛍光強度とドナーの蛍光強度の比率で相対的な強度を求めることは相対値としてよく活用されている。
使用する蛍光装置としては光学的な定量性が確保されれば、蛍光スキャナ、CCDカメラタイプイメージャー、マイクロタイタープレートリーダーなど様々な検出機器が使用可能であるが、マイクロタイタープレートリーダーの使用が望ましい。さらにバックグラウンンドの影響を除くため、時間分解蛍光検出機能がついた装置を用いることが最も望ましい。
本発明によればさらに、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を、互いに相互作用する2種類の分子のうちの一方に結合させた分子を固定化した気体透過性基板からなる気相センサーが提供される。気体透過性基板の種類は、気相センサーの用途に応じて適宜選択することができ、例えば、空気中の対象物質モニターする場合(室内換気効率モニター、塵埃落下テスト、気流モニターなど)には、気体透過性基板として不織布などを用いることができ、エアフィルターの性能試験を行う場合には、捕捉対象物質のサイズや吸着性に応じた多孔質基材を用いることができ、高濃度系(ppmオーダー以上)の検出を行う場合には、メッシュ基材を用いることができ、定量を行う場合には、活性炭など吸着性多孔質基材を用いることができる。
さらに本発明によれば、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を結合した抗体を気体透過性基材に担持させた有害物質除去材において、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の他方を結合した抗原を気相中において上記有害物質除去材に通過させた後のFRET強度が、液相系で検出されるFRET強度の5%以上100%未満である、有害物質除去材が提供される。
抗原を気相中において上記有害物質除去材に通過させた後のFRET強度は好ましくは、液相系で検出されるFRET強度の10%以上100%未満であり、さらに好ましくは20%以上100%未満であり、さらに好ましくは40%以上100%未満であり、さらに好ましくは60%以上100%未満であり、さらに好ましくは70%以上100%未満である。
本発明の有害物質除去材において用いる気体透過性基材としては、繊維が好ましい。本発明で用いる繊維の主たる繊維としては、セルロースエステル、ビニロン、アクリル系、ポリウレタンのうち少なくとも1種類を主成分とする繊維が好ましい。
本発明におけるセルロースエステルとは、セルロースの水酸基を有機酸でエステル化されているセルロース誘導体を指す。エステル化に用いる有機酸は、例えば酢酸・プロピオン酸・酪酸などの脂肪カルボン酸、安息香酸・サリチル酸などの芳香族カルボン酸などがある。単独もしくは併用したものであってもよい。セルロースの水酸基のエステル基置換率について特に制限はないが、60%以上であることが好ましい。
本発明における繊維径1μm以下の微細繊維集合体を形成する主たる材料の群のなかでは、セルロースアシレート繊維が望ましい。セルロースアシレートは、セルロースの水酸基を構成する水素原子の一部または全部がアシル基で置換されているセルロースエステルを指す。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、およびブチリル基など挙げられる。これらの基は1種のみが置換されて構成されていてもよいし、2種以上のアシル基が混合置換されていてもよい。アシル基置換度の総和は、好ましくは2.0〜3.0であり、より好ましくは2.1〜2.8であり、特に好ましくは2.2〜2.7である。なかでも、この置換度を満たすセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、又はセルロースアセテートブチレートのいずれかであることが好ましく、セルロースアセテートであることが最も好ましい。一般にセルロースアシレートは、エステル化度によって溶剤が異なることが知られているが、あらかじめエステル化率の高いセルロースアシレートで繊維径1μm以下の微細繊維集合体を作製したのちに、アルカリ加水分解処理等を行って表面を親水化してもよい。
セルロースアシレート繊維のみでも十分に実用的な有害物質除去材料を形成することが可能であるが、強度や寸度安定性をさらに向上させる等の目的で、ポリエステル系繊維・ポリオレフィン系繊維・ポリアミド系繊維・アクリル系繊維等との混紡繊維により繊維径1μm以下の微細繊維集合体を形成してもよい。混紡繊維を用いる場合には、セルロースアシレート繊維の質量分率は50%以上であることが望ましく、70%以上であることがさらに望ましい。
本発明における繊維径1μm以下の微細繊維集合体を形成する主たる材料の群のなかでは、ポリアミド繊維であることも望ましい。
本発明におけるポリアミドとは、化学構造単位にアミド結合を有する線状高分子からなる繊維を指す。
ポリアミドの中でも、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンと、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸との結合体である直鎖型脂肪族ポリアミドが好ましい。特に、ナイロン66が好ましい。
前記のジアミンおよびジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸等を単独または共重合成分として用いた脂肪族ポリアミドを用いることもできる。特に、ε−カプロラクタムの単独使用で製造されるナイロン6が好ましい。
これらの他に、原料の脂肪族ジアミンとして一部または全部をシクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1、4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環式ジアミンを用いた脂肪族ポリアミド、および/または、ジカルボン酸として一部または全部を1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリアミドであってもよい。
更に、脂肪族パラキシリレンジアミン(PXDA)やメタキシリレンジアミン(MXDA)などの芳香族ジアミン、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を部分的な原料として用いて、吸水性の低減や弾性率向上を実現したポリアミドも含まれる。また、ポリアクリル酸アミド、ポリ(N−メチルアクリル酸アミド)、ポリ(N,N−ジメチルアクリル酸アミド)などのような側鎖にアミド結合を有するポリマーであってもよい。
ポリアミドの中で最も望ましいのは、ナイロン66またはナイロン6である。アミド結合に由来する適度な吸湿性、適度な長さの長鎖脂肪酸からなる分子鎖を繊維軸配向させやすく比較的延伸性が高いこと、融解熱が高く熱容量が大きいことから動力学的にも速度論的にも溶融しにくい(耐溶融性)、長鎖脂肪鎖からなる分子鎖の可とう性や、アミド結合間の水素結合形成のためにフィブリル化やキンクバンドが生じにくい性質、すなわち繰返し屈伸性など、本発明の担体として好ましい性能を活用することができるためである。
化学構造単位中のアミド結合が、主鎖ではなく側鎖に有するポリアミドも好ましく用いることができる。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N‘−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(N−ヘキシルアクリルアミド)などのポリアクリルアミドを挙げることができる。一般に側鎖にアミド結合を有するポリマーは親水性が高く膨潤・変形しやすいため、ゲル化現象を利用して物理架橋体を形成させたり、アルキル基を導入させたりするなどの方法により疎水化することが望ましい。
同様に強度や寸度安定性を向上させる目的で、担体を金属・高分子材料・セラミックス等の他の適切な構造材料により補強してもよい。これらの補強材は、有害物質除去材料を供給する側面の実質的な最表面以外の部分(例えば、該側面の反対面や芯材に用いる等)に用いることが望ましい。
本発明におけるビニロンとは、ビニルアルコール単位を65質量%以上含む線状高分子からなり、温度20℃湿度65%の環境に1週間以上放置した後の水分率が7%未満である繊維を指す。ビニルアルコールの水酸基をホルマール化したものであってもよいが、水酸基をホウ酸架橋したポリマーや、公知のアルカリ紡糸法や冷却ゲル紡糸法などの方法により耐水化処理が施された非ホルマール化繊維であってもよい。ビニルアルコール単位以外の成分としてはエチレン鎖、酢酸ビニル鎖などが含まれていてもよいが、ビニルアルコール単体から形成される繊維であることが好ましい。さらに、均質で高配向度・高結晶化度であるために、優れた機械的特性と信頼性が得られるという点で、冷却ゲル紡糸による非ホルマール化繊維であることが最も望ましい。
ビニロンは一般に、他の繊維に対して、高強度、高弾性率、適度な親水性、耐候性、耐薬品性、接着性などに優れており、本発明の担体としてこれらの好ましい性能を活用することができる。
本発明におけるアクリル系とは、アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で40%以上含む繊維を指し、例えば、アクリロニトリルのホモポリマーや、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルなどの非イオン性モノマーとアクリルニトリルのコポリマー、ビニルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸などのアニオン性モノマーとアクリロニトリルのコポリマー、あるいは、ビニルピリジン、メチルビニルピリジンなどのカチオン性モノマーとアクリロニトリルのコポリマーなどの例がある。アクリロニトリルとミルクカゼインから形成されるいわゆるプロミックス繊維も本カテゴリーに包含される。
アクリル系の繊維は一般に、有機系湿式紡糸法で製造することが多い。この方法では、紡糸原液が凝固浴中で凝固糸を形成するときに、凝固剤である水がノズルより紡出される紡糸原液中に浸入する一方で、紡糸溶剤が紡出した原液から外部に拡散し、このとき、水と有機溶剤(DMF、DMAcなど)が相互拡散することで重合体が析出して無数の空洞が網目状につながった構造をもつ凝固糸条が形成される。また、凝固過程で溶剤が凝固浴中に拡散することによる体積収縮により形成される繊維断面の変形や表面のマクロフィブリル構造形成による凹凸形成が特徴である。これらの微細構造は本発明で使用する担体の構造としては、比表面積向上や抗体担持のし易さの点で好ましい。
本発明で用いるアクリル系繊維は、原料ポリマーの組成や紡糸法、製造工程内の後処理条件などにより変動するが、一般に、適度な親水性、耐候性が高い、かさ高い繊維が得られやすいという利点がある。
本発明で用いるポリウレタンは、単量体相互の結合部分または基本となる基材重合体相互の結合部分が主としてウレタン結合による線状合成高分子からなる繊維を指す。ポリウレタンセグメントを質量比で85%以上含むことが望ましい。低融点で柔らかい分子量数千までのソフトセグメントと、剛直性で凝集力の高い高融点のハードセグメントからなるセグメント化ポリウレタンのブロック共重合であることが望ましい。ソフトセグメントとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル、ハードセグメントとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートなどで形成されるウレタン基を用いることができる。ポリウレタンは一般に高い弾性を示すのが特徴で、両セグメントの化学構造や分布など高分子鎖の一時構造の違いや、製糸条件の違いなどからくる二次構造の違いによって異なるが、よく伸びる、伸縮回復力が高い、ゴム材料に比べて老化しにくい・細い繊維が得られるなどの特徴があり、本発明の担体として用いた場合にもこれらの性質を活用することができる。
担体を構成する繊維の機械的物性ならびに寸法安定性については、乾燥時伸度が25%以上であることが望ましい。ここで乾燥時伸度とは、十分に長い時間かけて乾燥した繊維の20℃における引張試験における破断伸度をさす。一般に乾燥時伸度が10%以上で製布等の加工に適することが、フィルター加工及び実用時の破壊(ろ過効率の低下につながる)を防止するには25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることが最も好ましい。
本発明に用いられる繊維の作製法としては、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、湿乾式紡糸など一般的な製造法や、物理的処理(例えば超高圧ホモジナイザーによる強力な機械的せん断処理)によって繊維を微細化する方法などが挙げられるが、安定な品質を確保するためには、乾式紡糸もしくは湿乾式紡糸法を用いることが好ましい。平均繊維径が100nm以下で均一な繊維を作製するためには、さらに加工技術、2005年、40巻、No.2、101頁、および167頁;Polymer International誌、1995年、36巻、195〜201頁;Polymer Preprints誌、2000年、41(2)号、1193頁;Journal of Macromolecular Science : Physics誌、1997年、B36、169頁などに開示されている電界紡糸法を採用することが好ましい。
紡糸に用いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒など、合成樹脂繊維に用いられる樹脂を溶解するものであれば何でも用いることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数種混合して用いてもよい。
電界紡糸法を採用する場合には樹脂溶液に、さらに塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩を添加してもよい。
本発明の有害物質除去材の担体を構成する繊維同士は部分的に接着することにより三次元ネットワークを形成している構造をもつことが望ましい。かような構造をとることにより、加工ならびに実用上の機械的耐性の向上、ひいては有害物質除去材の信頼性をあげることができる。また本発明の抗体の保持特性を上げることができる。繊維同士の接着はSEM等の方法で観察することができる。繊維同士の接着点の密度は、該有害物質除去材の投影表面積に対して1mm角辺り10箇所以上存在することが好ましく、100箇所以上であることがより好ましい。
接着点を形成する方法としては、乾式紡糸法で形成される癒着や溶融紡糸法で形成される融着点で形成してもよいし、紡糸後に加熱や、接着剤・可塑化溶剤等の添加による接着点形成処理を行ってもよい。製造コストの観点では適切な溶液処方により乾式紡糸法で癒着点を形成させることが好ましい。
本発明の有害物質除去材においては、抗体を担持させた気体透過性基材の表面の25℃60%RHにおけるみかけの水の接触角は、特異的FRET信号を取得するという観点から見て、30度以下であることが好ましく、20度以下であることがより好ましく、10度以下であることが特に好ましい。
本発明の有害物質除去材において、抗体を担持させた気体透過性基材の平衡含水率は、特異的FRET信号を取得するという観点から見て、4%以上であることが好ましい。平衡含水率の上限は特に限定されないが、一般的には、20%以下程度である。
本発明の有害物質除去材に用いられる抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、分子サイズが7〜8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状分子構造のうち、一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
前記抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、カビ、ウイルス、アレルゲン及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス菌、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌などを挙げることができる。カビとしては、例えば、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムなどを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイスル(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスなどを挙げることができる。アレルゲンとしては、花粉、ダニアレルゲン、ネコアレルゲンなどを挙げることができる。
前記抗体の製造方法としては、例えば、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ダチョウ、ウサギ等の動物に抗原を投与し、その血液からポリクローナル抗体を精製する方法、抗原を投与した動物の脾臓細胞と培養癌細胞とを細胞融合し、その培養液または融合細胞を植え込んだ動物の体液(腹水等)からモノクローナル抗体を精製する方法、抗体産生遺伝子を導入した遺伝子組み換え細菌、植物細胞、動物細胞の培養液から抗体を精製する方法、ニワトリに抗原を投与して免疫卵を産ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から鶏卵抗体を精製する方法を挙げることができる。これらのうちでも、鶏卵から抗体を得る方法は、容易にかつ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。
本発明の有害物質除去材に用いられる抗体は鶏卵抗体あるいはダチョウ抗体であることが好ましい。
本発明の有害物質除去材を構成する担体には、抗菌剤を含有するコーティングを行うなどの抗菌加工及び/または防カビ剤を含有するコーティングを行うなどの抗カビ加工が施されていることが望ましい。抗体は、基本的にはタンパク質であり、特に鶏卵抗体は食物であり、また抗体以外のタンパク質を伴う場合もあり、それらは細菌やカビが増殖するための格好の餌となるが、担体に抗菌加工及び/または防カビ加工が施されていれば、かかる細菌やカビの増殖が抑制され、長期間の保管を行うことができる。
抗菌/防カビ剤としては、有機シリコン第4級アンモニウム塩系、有機第4級アンモニウム塩系、ビグアナイド系、ポリフェノール系、キトサン、銀担持コロイダルシリカ、ゼオライト担持銀系などが挙げられる。そして、その加工法としては、繊維からなる担体に抗菌/防カビ剤を含浸させるまたは塗布する後加工法や、担体を構成する繊維の合成段階で抗菌/防カビ剤を練り込む原糸原綿改質法などがある。
前記担体に抗体を固定化する方法としては、担体をγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定化する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングした後にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法をあげることができる。
ここで、前記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C65NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
また、前記担体表面の官能基を、BMPA(N-β-Maleimidopropionic acid)などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
更に、前記抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、有害物質を捕捉するFabが担体に対して外向きになり、Fabへの有害物質の接触確率が高くなるので、効率よく有害物質を捕捉することができる。
前記抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよい。この場合、担体上での抗体の自由度が高くなり、有害物質への接近が容易となるので、高い除去性能を得ることができる。リンカーとしては、二価以上のクロスリンク試薬を挙げることができ、具体的にはマレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl)エステル、イミドエステル、EDC(1-Ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimido)、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanate)があり、標的官能基(SH基、NH2基、COOH基、OH基)に選択的なものと非選択的なものとがある。また、クロスリンク間の距離(スペースアーム)もクロスリンク試薬ごとに異なっており、目的の抗体に応じて0.1nm〜3.5nm程度の範囲で選択することができる。有害物質を効率的に捕捉するという観点からは、リンカーとして抗体のFcに結合するものが好ましい。
リンカーを導入する方法としては、抗体にリンカーを結合させておき、それを更に抗体に結合する方法、担体にリンカーを結合させておき、担体上のリンカーに抗体を結合させる方法のいずれも可能である。
本発明の有害物質除去材は、空気清浄機用フィルター、マスク、拭き取りシートなどに用いることができる。
空気清浄機用フィルターとして使用する際には、粗塵を除くためのプレフィルター、除塵フィルター、消臭効果を示す光触媒フィルター、他の有害物質を除去する抗菌フィルター、VOC吸着フィルターなど任意の公知のフィルターと組み合わせて使用してもよい。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
三菱製紙製エレクトレット(30EP)1cm2上に、CIS bio international製htrf試薬Eu3+クリプテート標識anti−6HIS抗体試薬の水溶液(85ng/mL)500μLを均一滴下し、室温で1時間静置した後、送風乾燥機にて50℃1時間乾燥して同標識抗体を担持した(試料A−1)。
次に、同社製htrf試薬 6HIS check kitのXL665(APC)標識6HIS試薬で約1nM水溶液を調製し、TOPAS社製エアロゾルジェネレータ(ATM−226)をカノマックス社製拡散ドライヤーに接続して乾燥したXL665標識6HISのエアロゾルを、上記標識抗体担持フィルターを市販のフィルターホルダーに装着し、30分間通過させた(流速3L/min、試料I−1)。
[比較例1]
実施例1のEu3+クリプテート標識anti−6HIS試薬をEu3+クリプテート標識anti−GST抗体試薬を用いた以外は同じ方法にて試料R−1を作製した。
[評価1]
上記エアロゾルを曝露したフィルター(試料I−1、R−1)を直径6mmの大きさに切り出し、Nunc製96穴イムノプレート(黒、平底タイプ)のWell底に曝露面を表になるよう設置した。該イムノプレートをBMG LABTEC製RUBY starにてFRET測定を行った(337nm励起、620nmと665nmの蛍光;20flash積算,delay=50μs)。FRET強度の評価にはhtrf Ratio=(650nm蛍光強度)/(615nm蛍光強度)×10000の値を用いた。htrf Ratioは試料I−1が2250、試料R−1が315であった。前者は後者に対して高い値を示し、抗原抗体反応を示す特異的FRET信号を確認した。ちなみに試料I−1の噴霧前のhtrf Ratioは320であった。気相条件下で有意なFRET信号が得られ、気相センシングが可能であることを確認した。
[実施例2]
実施例1で作製した試料A−1を直径6mmの大きさに切り出し、評価1と同様の方法にてNunc製96穴イムノプレートに、評価1で得られた620nmの蛍光強度が同じになるよう濃度調節を行ったXL665標識抗体水溶液を注入し、室温2時間浸漬した。htrf Ratioは2950であった。すなわち、液相系に対する、気相系のFRET強度比は76%であった。
[実施例3]
実施例1で使用した基材に、市販のプラズマ表面処理装置(ユーテック製Space2)を用いて、表1の条件にて表面酸化処理を行った。次に1分間の流水水洗を行った後、試料1cm2上に、CIS bio international製htrf試薬 Eu3+クリプテート標識anti−6HIS抗体試薬の水溶液(85ng/mL)500μLを均一滴下し、室温で1時間静置した後、送風乾燥機にて50℃で1時間乾燥して同標識抗体を担持した。該試料の25℃60%RHにおける水の接触角を測定した(表1)。
さらに同社製htrf試薬6HIS check kitのXL665(APC)標識6HIS試薬で約1nM水溶液を調製し、TOPAS社製エアロゾルジェネレータ(ATM−226)をカノマックス社製拡散ドライヤーに接続して乾燥したXL665標識6HISのエアロゾルを上記標識抗体担持フィルターを市販のフィルターホルダーに装着し30分間通過させた(流速3L/min、試料A−2〜7。[評価1]と同じ方法にてFRET強度比を求めた。
Figure 2010014637
抗体の固定化表面の25℃60%RHにおけるみかけの水の接触角が30℃以下である試料は、特に、特異的FRET信号が観測されることが分かった。
[実施例4]
セルロースアセテート(アルドリッチ製、全置換度2.4、数平均分子量3万)のアセトン:水(97:3)溶液(10質量%)を用い、ナノファイバー製造装置(カトーテック製)を用いて、シリンジ送り速度0.05mm/min、印加電圧15kVで電解紡糸を行い、膜厚85μmの不織布試料を作製した。温度20℃相対湿度65%の環境に1週間以上放置し、その後各サンプルの水分率を、ハロゲン水分計MB35(OHAUS社製)を用いて測定した。原料・紡糸条件を表2に変更した試料A−9〜12を作製した。
次に実施例1、評価1と同じ方法にてFRET強度比を求めた。
Figure 2010014637
抗体を固定した基材の平衡含水率が4%以上である場合に特に、特異的FRET信号が観測されることが分かった。
[実施例5]
基材として、ナイロンメッシュ(SEFAR社製)、カーボンメッシュ(同社製)、マイクロポーラスフィルム(住友3M製)を用いた以外は実施例1と同様にしてFRET信号確認試験を行った。いずれの系においてもFRETが観測され、気相センサーとして利用可能であることを確認した。
図1は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の原理を示す。

Claims (12)

  1. 蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分を、互いに相互作用する2種類の分子の各々にそれぞれ結合させたものを用意し、一方の分子を固定化した基板に他方の分子を気相中において上記基板に接触させ、FRET強度を測定することを含む、上記2種類の分子間の相互作用を気相において検知する方法。
  2. 互いに相互作用する2種類の分子が、抗原と抗体である、請求項1に記載の方法。
  3. ドナー蛍光成分又はアクセプター蛍光成分の一方を結合させた抗体を固定化した基板に、ドナー蛍光成分又はアクセプター蛍光成分の他方を結合させた抗原を気相中において接触させ、FRET強度を測定する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 抗体を担持した有害物質除去材の評価のために行う、請求項3に記載の方法。
  5. 蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の組み合わせが、Eu3+クリプテート/アロフィコシアニン(APC)、シアン蛍光タンパク質(CFP)/黄色蛍光タンパク質(YFP)、フルオロセインイソチオシアネート(FITC)/テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R−フィコエトリン(R−PE)/アロフィコシアニン(APC)、又はCy3/Cy5の何れかである、請求項1から4の何れかに記載の方法。
  6. 蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を、互いに相互作用する2種類の分子のうちの一方に結合させた分子を固定化した気体透過性基板からなる、請求項1から5の何れかに記載の方法を行うための気相センサー。
  7. 上記気体透過性基板が繊維である、請求項6の気相センサー。
  8. 蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を抗体に結合させた分子を固定化した気体透過性基板からなる、請求項6又は7に記載の気相センサー。
  9. 蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の一方を結合した抗体を気体透過性基材に担持させた有害物質除去材において、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を発生するドナー蛍光成分及びアクセプター蛍光成分の他方を結合した抗原を気相中において上記有害物質除去材に通過させた後のFRET強度が、液相系で検出されるFRET強度の5%以上100%未満である、有害物質除去材。
  10. 抗原のエアロゾルを気相中において有害物質除去材に通過させる、請求項9に記載の有害物質除去材。
  11. 抗体を担持させた気体透過性基材の表面の25℃60%RHにおけるみかけの水の接触角が30度以下である、請求項10に記載の有害物質除去材。
  12. 抗体を担持させた気体透過性基材の平衡含水率が4%以上である、請求項9から11の何れかに記載の有害物質除去材。
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WO2013113153A1 (zh) * 2012-01-31 2013-08-08 庞磊 一种荧光分析方法
JP2013163662A (ja) * 2012-02-10 2013-08-22 Ostrich Pharma Kk 抗体含有花粉アレルギー防御素材
CN111289675A (zh) * 2020-03-11 2020-06-16 宁波市疾病预防控制中心 一种测定食品接触材料中十二内酰胺迁移量的方法

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