JP2009113030A - 有害物質除去材及び有害物質除去方法 - Google Patents

有害物質除去材及び有害物質除去方法 Download PDF

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Abstract

【課題】抗体を担持した担体からなる有害物質除去材であって、該抗体の安定性が高い有害物質除去材の提供。
【解決手段】抗体を担持した担体からなる有害物質除去材であって、抗体安定化剤として糖、アミノ酸、SH基保護剤、及び界面活性剤から選択される少なくとも1種類を含む有害物質除去材。
【選択図】なし

Description

本発明は、有害物質除去材及び有害物質除去方法に関する。より詳しくは、本発明は、抗体が担持された担体からなる安定性の高い有害物質除去材、及びそれを用いた有害物質除去方法に関する。
抗体担持フィルターは、液相や気相中のウイルスや雑菌の除去を行う材料として有望である。抗体担持フィルターは、抗体の変性によってフィルター性能が低下するため、特に気相中で雑菌等の除去に用いられる場合においては、抗体変性を防止し安定性の高い抗体担持フィルターとする必要がある。
特許文献1においては、担体に抗体を担持してなる有害物質除去材につき、抗体活性の維持のために、所定の温度及び湿度条件で保管することや、グリセロールなどの活性安定化剤を含ませた水を含浸させて保管することについて記載があるが、いずれも保湿による活性維持を意図するもので、抗体の変性を防止するものではない。
特許文献2には、別の蛋白質を共存させることにより抗体を安定的に固定化する方法が開示されているが、該蛋白質の担体への競争吸着や物理的吸着阻害が懸念される。
特許第3642340号 特開2003-302404号公報
本発明の目的は、抗体を担持した担体からなる有害物質除去材であって、該抗体の安定性が高い有害物質除去材を提供することである。
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、上記課題を解決する抗体安定化剤を見出し、この知見をもとに本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記[1]〜[16]を提供するものである。
[1] 抗体を担持した担体からなる有害物質除去材であって、抗体安定化剤として糖、アミノ酸、SH基保護剤、及び界面活性剤から選択される少なくとも1種類を含む有害物質除去材。
[2] 前記抗体安定化剤が、グルコース、ガラクトース、フルクトース、サッカロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、ラフィノース、マンニトール、及びソルビトールからなる群から選択される1種又は2種以上の糖である[1]に記載の有害物質除去材。
[3] 前記抗体安定化剤が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、プロリン、リシン、及びグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上のアミノ酸である[1]に記載の有害物質除去材。
[4] 前記抗体安定化剤が、2−メルカプトエタノール又はジチオスレイトールからなる群から選択されるSH基保護剤である[1]に記載の有害物質除去材。
[5] 前記抗体安定化剤が、3−[3−コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)である[1]に記載の有害物質除去材。
[6] 前記抗体安定化剤の含量が、前記抗体の含量に対して1〜100質量%である[1]〜[5]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[7] 前記抗体安定化剤が二糖類または三糖類であり、かつ前記抗体安定化剤の含量が、前記抗体の含量に対して、質量比で1倍〜1000倍である[1]又は[2]に記載の有害物質除去材。
[8] 前記担体が、カルボニル基及び/又はエーテル基を含有する少なくとも1種類のポリマーからなる[1]〜[7]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[9]前記担体が、ビニロンを含有する繊維を少なくとも1種類含む[1]〜[8]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[10]前記担体が平均繊維径100nm以下の繊維である[1]〜[9]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[11]前記抗体が、鳥類卵由来の抗体である[1]〜[10]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[12]前記抗体が鶏卵抗体である[1]〜[11]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[13]前記抗体がダチョウ卵抗体である[1]〜[11]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[14]前記抗体及び前記の抗体安定化剤が溶解又は分散した溶液に前記担体を浸漬することにより製造される[1]〜[13]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[15]前記抗体が気相に面している[1]〜[14]のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
[16][1]から[15]のいずれか一項に記載の有害物質除去材を用いて、気相中の有害物質を除去することを含む、有害物質除去方法。
本発明により、抗体を担持した担体からなる有害物質除去材であって、該抗体の安定性の高い有害物質除去材が提供される。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の有害物質除去材は、抗体を担持した担体からなる有害物質除去材であって、抗体安定化剤として糖、アミノ酸、SH基保護剤、界面活性剤から選択される少なくとも1種類を含む。これらの抗体安定化剤を含むことによって、担体に担持されている抗体の変性が防止でき、使用環境に左右されずに、抗体の活性が長期間保持される。
糖としては特に限定されないが、例としては、グルコース、ガラクトース、フルクトースなどの単糖類;サッカロース、マルトース、トレハロース、セロビオースラクトースなどの二糖類;フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、マルトトリオース、及びラフィノースなどのオリゴ糖;エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール;デンプン、デキストリン、グリコーゲンなどの多糖類などが挙げられる。この中でグルコース、ガラクトース、フルクトース、サッカロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、ラフィノース、マンニトール、及びソルビトールが好ましい。これらの糖は1種を用いても2種以上を用いてもよく、また、その他の抗体安定化剤と同時に用いてもよい。
糖は、その原料ならびに製法に係らず用いることができる。デンプンを酵素分解したもの(グルコース、マルトース、デキストリンなど)、デンプンを還元したもの(ソルビトール、マルチトール)、デンプンを酵素転移したもの(トレハロース、カップリングシュガーなど)、砂糖を酵素転移したパラチノース、砂糖を還元したパラチニット、ラクトースを還元したラクチトール、キシランを酵素分解したキシロース、キシランを還元したキシリトールなどを用いることができ、特に限定されない。
本発明における糖の望ましい添加量は、抗体種・糖種や目的、用途により異なるが、抗体の含量(質量)に対して一般に1〜200質量%、より好ましくは2〜100質量%、特に好ましくは5〜50質量%である。二糖類または三糖類を添加する場合は、前記抗体の含量に対して、質量比で1倍〜1000倍、より好ましくは10倍〜500倍、特に好ましくは、20倍〜200倍である。これらの添加量よりも低い場合は安定化効果が小さく、高い場合は、抗体活性が低下する、又は粘度が高くなって含有量の制御やハンドリングが難しくなるといった問題が生ずる場合がある。
アミノ酸としては特に限定されず、いずれの天然アミノ酸、修飾アミノ酸を用いてもよい。好ましくは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、プロリン、リシン、及びグルタミン酸が用いられる。これらのアミノ酸は1種を用いても2種以上を用いてもよく、また、その他の抗体安定化剤と同時に用いてもよい。
本発明におけるアミノ酸の望ましい添加量は、抗体種・アミノ酸種や目的、用途により異なるが、一般に抗体の含量(質量)に対して1〜50質量%、より好ましくは2〜20質量%、特に好ましくは5〜10質量%である。これらの添加量よりも低い場合は安定化効果が小さくなり、高い場合には抗体活性が低下して所望の性能を発揮できなくなる場合がある。
SH基保護剤としては特に限定されないが、例としては 2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、グルタチオン、エチレンジアミン4酢酸塩などが挙げられる。この中で2−メルカプトエタノール又はジチオスレイトールが好ましい。これらのSH基保護剤は1種を用いても2種以上を用いてもよく、また、その他の抗体安定化剤と同時に用いてもよい。SH基保護剤のみを抗体安定化剤として用いてもよいが、抗体の不活性化はSH基の酸化以外の原因が複合している場合が多いため、糖、アミノ酸、界面活性剤等の別の種類の抗体安定化剤と併用することが好ましい。
本発明におけるSH基保護剤の望ましい添加量は、抗体種、SH基保護剤種により、又は目的・用途により異なるが、抗体の含量(質量)に対して一般に1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、特に好ましくは5〜10質量%であればよい。これらの添加量よりも低い場合は安定化効果が小さくなり、高い場合には抗体活性が低下したり、臭気の問題が発生したりする場合がある。
界面活性剤としては、カチオン系、アニオン系、ベタイン系、ノニオン系のいずれの界面活性剤を用いてもよい。カチオン系界面活性剤としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウムなどが挙げられる。ベタイン系界面活性剤としては、パルミトイルリゾレシチン、3−[3−コラミドプロピルジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートなどが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(7)デシルエーテル、ポリオキシエチレン(10)イソオクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。界面活性剤としては、ベタイン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤を用いることが好ましく、特に3−[3−コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)を用いることが好ましい。界面活性剤は1種を用いても2種以上を用いてもよく、また、その他の抗体安定化剤と同時に用いてもよい。
界面活性剤は、抗体担持工程(抗体の吸着阻害など)、使用時(有害物質の吸着阻害)や評価(抗体や捕捉有害物質の溶出、細胞毒性、クロマトグラフィーへの影響など)の際に妨害物質となることがあるので、種類と量に関しては他の安定化剤よりも慎重に選択する必要がある。
本発明で望ましい界面活性剤の添加量は、抗体種・界面活性剤種や目的・用途により異なるが、抗体の含量(質量)に対して5〜20質量%、より好ましくは8〜15質量%、特に好ましくは10〜12質量%である。これらの添加量よりも低い場合は安定化効果が小さくなり、高い場合には抗体活性が低下するほか、抗原抗体反応を阻害する場合がある。
担体としては、特に限定されないが、繊維が好ましい。繊維としては、セルロースエステル、ビニロン、アクリル系、ポリウレタンのうち少なくとも1種類を主成分とする繊維が好ましい。また、ポリアミドを主成分とする繊維も好ましい。本発明でいう主成分とは、全繊維中の質量分率にして25%以上を構成する成分であることを指す。
セルロースエステルとは、セルロースの水酸基を有機酸でエステル化されているセルロース誘導体を指す。エステル化に用いる有機酸は、例えば酢酸・プロピオン酸・酪酸などの脂肪カルボン酸、安息香酸・サリチル酸などの芳香族カルボン酸などがある。単独もしくは併用したものであってもよい。セルロースの水酸基のエステル基置換率について特に制限はないが、60%以上であることが好ましい。
本発明において担体として用いられる繊維の群のなかでは、セルロースアシレート繊維が望ましい。セルロースアシレートは、セルロースの水酸基を構成する水素原子の一部又は全部がアシル基で置換されているセルロースエステルを指す。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、及びブチリル基など挙げられる。これらの基は1種のみが置換されて構成されていてもよいし、2種以上のアシル基が混合置換されていてもよい。アシル基置換度の総和は、好ましくは2.2〜3.0であり、より好ましくは2.2〜2.8であり、特に好ましくは2.2〜2.7である。なかでも、この置換度を満たすセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、又はセルロースアセテートブチレートのいずれかであることが好ましく、セルロースアセテートであることが最も好ましい。一般にセルロースアシレートは、エステル化度によって溶剤が異なることが知られているが、あらかじめエステル化率の高いセルロースアシレートで担体を作製したのちに、アルカリ加水分解処理等を行って表面を親水化してもよい。
セルロースアシレート繊維のみでも十分に実用的な有害物質除去材料を形成することが可能であるが、強度や寸度安定性をさらに向上させる等の目的で、ポリエステル系繊維・ポリオレフィン系繊維・ポリアミド系繊維・アクリル系繊維等との混紡繊維により担体を形成してもよい。混紡繊維を用いる場合には、セルロースアシレート繊維の質量分率は50%以上であることが望ましく、70%以上であることがさらに望ましい。
本発明において担体として用いられる繊維の群のなかでは、ポリアミド繊維であることも望ましい。
本明細書においてポリアミドとは、化学構造単位が主としてアミド結合で結合されている線状高分子からなる繊維を指す。
ポリアミドの中でも、エチレンジアミン、1−メチルエチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミンと、マロン酸、コハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸との結合体である直鎖型脂肪族ポリアミドが好ましい。特に、ナイロン66が好ましい。
前記のジアミン及びジカルボン酸以外にも、ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸等を単独又は共重合成分として用いた脂肪族ポリアミドを用いることもできる。特に、ε−カプロラクタムの単独使用で製造されるナイロン6が好ましい。
これらの他に、原料の脂肪族ジアミンとして一部又は全部をシクロヘキサンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1、4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどの脂環族ジアミンを用いた脂肪族ポリアミド、及び/又は、ジカルボン酸として一部又は全部を1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの脂環式ジカルボン酸を用いた脂肪族ポリアミドであってもよい。
更に、脂肪族パラキシリレンジアミン(PXDA)やメタキシリレンジアミン(MXDA)などの芳香族ジアミン、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を部分的な原料として用いて、吸水性の低減や弾性率向上を実現したポリアミドも含まれる。また、ポリアクリル酸アミド、ポリ(N−メチルアクリル酸アミド)、ポリ(N,N−ジメチルアクリル酸アミド)などのような側鎖にアミド結合を有するポリマーであってもよい。
ポリアミドの中で最も望ましいのは、ナイロン66又はナイロン6である。アミド結合に由来する適度な吸湿性、適度な長さの長鎖脂肪酸からなる分子鎖を繊維軸配向させやすく比較的延伸性が高いこと、融解熱が高く熱容量が大きいことから動力学的にも速度論的にも溶融しにくい(耐溶融性)、長鎖脂肪鎖からなる分子鎖の可とう性や、アミド結合間の水素結合形成のためにフィブリル化やキンクバンドが生じにくい性質、すなわち繰返し屈伸性など、担体として好ましい性能を活用することができるためである。
同様に強度や寸度安定性を向上させる目的で、担体を金属・高分子材料・セラミックス等の他の適切な構造材料により補強してもよい。これらの補強材は、有害物質除去材料を供給する側面の実質的な最表面以外の部分(例えば、該側面の反対面や芯材に用いる等)に用いることが望ましい。
本明細書において、ビニロンとは、ビニルアルコール単位を65質量%以上含む線状高分子からなり、温度20℃湿度65%の環境に1週間以上放置した後の水分率が7%以下である繊維を指す。ビニルアルコールの水酸基をホルマール化したものであってもよいが、水酸基をホウ酸架橋したポリマーや、公知のアルカリ紡糸法や冷却ゲル紡糸法などの方法により耐水化処理が施された非ホルマール化繊維であってもよい。ビニルアルコール単位以外の成分としてはエチレン鎖、酢酸ビニル鎖などが含まれていてもよいが、ビニルアルコール担体から形成される繊維であることが好ましい。さらに、均質で高配向度・高結晶化度であるために、優れた機械的特性と信頼性が得られるという点で、冷却ゲル紡糸による非ホルマール化繊維であることが最も望ましい。
ビニロンは一般に、他の繊維に対して、高強度、高弾性率、適度な親水性、耐候性、耐薬品性、接着性などに優れており、担体としてこれらの好ましい性能を活用することができる。
本明細書において、アクリル系とは、アクリロニトリル基の繰返し単位が質量比で40%以上含む繊維を指し、例えば、アクリロニトリルのホモポリマーや、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニルなどの非イオン性モノマーとアクリルニトリルのコポリマー、ビニルベンゼンするスルホン酸、アリルスルホン酸などのアニオン性モノマーとアクリロニトリルのコポリマー、あるいは、ビニルピリジン、メチルビニルピリジンなどのカチオン性モノマーとアクリロニトリルのコポリマーなどの例がある。アクリロニトリルとミルクカゼインのから形成されるいわゆるプロミックス繊維も本カテゴリーに包含される。
アクリル系の繊維は一般に、有機系湿式紡糸法で製造することが多い。この方法では、紡糸原液が凝固浴中で凝固糸を形成するときに、凝固剤である水がノズルより紡出される紡糸原液中に浸入する一方で、紡糸溶剤が紡出した原液から外部に拡散し、このとき、水と有機溶剤(DMF、DMAcなど)が相互拡散することで重合体が析出して無数の空洞が網目状につながった構造をもつ凝固糸条が形成される。また、凝固過程で溶剤が凝固浴中に拡散することによる体積収縮により形成される繊維断面の変形や表面のマクロフィブリル構造形成による凹凸形成が特徴である。これらの微細構造は本発明で使用する担体の構造としては、非表面積向上や抗体担持のし易さの点で好ましい。
本発明で用いるアクリル系繊維は、原料ポリマーの組成や紡糸法、製造工程内の後処理条件などにより変動するが、一般に、適度な親水性、耐候性が高い、かさ高い繊維が得られやすいという利点がある。
本発明で用いるポリウレタンは、単量体相互の結合部分又は基本となる基材重合体相互の結合部分が主としてウレタン結合による線状合成高分子からなる繊維を指す。ポリウレタンセグメントを質量比で85%以上含むことが望ましい。低融点で柔らかい分子量数千までのソフトセグメントと、剛直性で凝集力の高い高融点のハードセグメントからなるセグメント化ポリウレタンのブロック共重合であることが望ましい。ソフトセグメントとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル、ハードセグメントとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネートなどで形成されるウレタン基を用いることができる。ポリウレタンは一般に高い弾性を示すのが特徴で、両セグメントの化学構造や分布など高分子鎖の一時構造の違いや、製糸条件の違いなどからくる二次構造の違いによって異なるが、よく伸びる、伸縮回復力が高い、ゴム材料に比べて老化しにくい・細い繊維が得られるなどの特徴があり、担体として用いた場合にもこれらの性質を活用することができる。
また、本発明で用いる担体を構成する繊維の20℃の水に対する体積膨潤度は1.1%以上10%未満であり、好ましくは1.1%以上8%未満であり、特に好ましくは1.1%以上6%未満であり、最も好ましくは1.1%以上5%未満である。なお、本明細書において20℃の水に対する繊維の体積膨潤度とは、乾燥繊維を20℃の純水に1時間浸漬する前後の繊維の密度を密度勾配管法(JIS−K7112)にて求めた体積膨潤度をさす。
担体を構成する繊維の機械的物性ならびに寸法安定性については、乾燥時伸度が25%以上であることが望ましい。ここで乾燥時伸度とは、十分に長い時間かけて乾燥した繊維の20℃における引張試験における破断伸度をさす。一般に乾燥時伸度が10%以上で製布等の加工に適することが、フィルター加工及び実用時の破壊(ろ過効率の低下につながる)を防止するには25%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、35%以上であることが最も好ましい。
担体を構成する繊維の公定水分率は、1.0%以上7.0%未満であることが好ましく、3.0%以上6.5%未満であることがより好ましく、5.0%以上6.5%未満であることが最も好ましい。また、二糖類または三糖類を添加する場合は、公定水分率は、1.0%以上7.0%未満であることが好ましく、1.5%以上6.5%未満であることがより好ましく、2.0%以上6.5%未満であることが最も好ましい。本領域の公定水分率において、担持した抗体の活性の発現と、担体の機械的強度、剛性、環境(特に湿度)に対する寸法安定性が得られ、ひいてはフィルターとしての高い性能と信頼性を示すことができる。
なお、ここで言う水分率とは公定水分率のことであり、公定水分率とは繊維を20℃、相対湿度65%の環境下に長時間放置したときに繊維に含まれる水分率のことを指す。また、他の繊維との混紡繊維の場合にはその混紡繊維全体の公定水分率を指すものとする。
担体を構成する繊維の表面は、数十ナノメートルから数マイクロメートルスケールの微細な凹凸構造を有することが好ましい。凹凸の形状は、繊維方向と平行方向に形成された溝状あるいは筋状の立体形状であってもよいし、繊維方向と垂直すなわち軸に対して同心円状に形成された溝状あるいは筋状の立体形状であってもよく、これらの立体形状は繊維方向と平行方向から垂直方向迄の任意の角度で形成されたものが任意の比率、密度で存在してもよい。公知のセルロースアセテート繊維の紡糸法で得られる試料には、表層のスキン層形成と溶剤乾燥に伴うスキン層の陥没により、繊維断面が不定形の菊型を形成することが知られているが、この凹凸は本発明においても好ましい形態である。
ナノメートルからマイクロメートルスケールの微細な凹凸構造は、空孔状及び/又は突起状であってもよい。平均径にして50nmから1μmの空孔又は突起であることが望ましい。これらの空孔や突起は、例えば溶液のキャビテーションや微細分散質を分散させた溶液(例えば硫酸バリウム粒子を分散させたスラリーとの混合)を利用するなどの方法により紡糸工程で形成させたり、アシル基の加水分解や表面酸化処理など方法(例えばアルカリ水溶液により繊維表面をセルロース化したのち、酵素処理により繊維表面にミクロクレーターを発現させたりするなど)により後工程によって形成させたりすることができる。
担体として用いられる繊維の平均繊維径は、50μm以下であることが望ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましく、100nm以下であることが最も好ましい。また、担体としてビニロンを用いる場合は、50μm以下であることが好ましく、45μm以下であることがより好ましく、35μm以下であることが最も好ましい。なお、本明細書において平均繊維径とは走査型電子顕微鏡(SEM)の観察画像から任意の300箇所における繊維中の直径を測定し、それを算術平均することによって求めた数値である。
本発明において担体として用いられる繊維の作製法としては、溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸、湿乾式紡糸など一般的な製造法や、物理的処理(例えば超高圧ホモジナイザーによる強力な機械的せん断処理)によって繊維を微細化する方法などが挙げられるが、安定な品質を確保するためには、乾式紡糸もしくは湿乾式紡糸法を用いることが好ましい。平均繊維径が100nm以下で均一な繊維を作製するためには、さらに加工技術、2005年、40巻、No.2、101頁、及び167頁;Polymer International誌、1995年、36巻、195〜201頁;Polymer Preprints誌、2000年、41(2)号、1193頁;Journal of Macromolecular Science : Physics誌、1997年、B36、169頁などに開示されている電界紡糸法を採用することが好ましい。
紡糸に用いる溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、THF、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水など、合成樹脂繊維に用いられる樹脂を溶解するものであれば何でも用いることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、複数種混合して用いてもよい。
電界紡糸法を採用する場合には樹脂溶液に、さらに塩化リチウム、臭化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの塩を添加してもよい。
本発明の有害物質除去材の担体を構成する繊維同士は部分的に接着することにより三次元ネットワークを形成している構造をもつことが望ましい。かような構造をとることにより、加工ならびに実用上の機械的耐性の向上、ひいては有害物質除去材の信頼性をあげることができる。また抗体の保持特性を上げることができる。繊維同士の接着はSEM等の方法で観察することができる。繊維同士の接着点の密度は、該有害物質除去材の投影表面積に対して1mm角辺り10箇所以上存在することが好ましく、100箇所以上であることがより好ましい。
接着点を形成する方法としては、乾式紡糸法で形成される癒着や溶融紡糸法で形成される融着点で形成してもよいし、紡糸後に加熱や、接着剤・可塑化溶剤等の添加による接着点形成処理を行ってもよい。製造コストの観点では適切な溶液処方により乾式紡糸法で癒着点を形成させることが好ましい。
本発明に担体として用いられる繊維は、不織布を形成していてもよい。不織布の製造方法については特に制限はなく、目的・用途に応じて、乾式法、湿式抄造法、メルトブローン法、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、エアレイド法などで得られたウェブを水流交絡法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法などの物理的方法、サーマルボンド法などの熱による接着方法、レジンボンドなどの接着剤による接着方法で強度を発現させる方法を適宜組み合わせて製造することができる。
本発明の有害物質除去材に用いられる抗体は、特定の有害物質(抗原)に対して特異的に反応(抗原抗体反応)するタンパク質であり、分子サイズが7〜8nmであって、Y字状の分子形態を有する。抗体のY字状分子構造のうち、一対の枝部分をFab、幹部分をFcといい、これらのうち、Fabの部分で有害物質を捕捉する。
前記抗体の種類は、捕捉しうる有害物質の種類に対応する。抗体により捕捉される有害物質としては、例えば、細菌、カビ、ウイルス、アレルゲン及びマイコプラズマを挙げることができる。具体的には、細菌としては、例えば、グラム陽性菌であるブドウ球菌属(黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌)、ミクロコッカス菌、炭疽菌、セレウス菌、枯草菌、アクネ菌などや、グラム陰性菌である緑膿菌、セラチア菌、セパシア菌、肺炎球菌、レジオネラ菌、結核菌などを挙げることができる。カビとしては、例えば、アスペルギルス、ペニシリウス、クラドスポリウムなどを挙げることができる。ウイルスとしては、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARSウイルス)、アデノウイルス、ライノウイルスなどを挙げることができる。アレルゲンとしては、花粉、ダニアレルゲン、ネコアレルゲンなどを挙げることができる。
前記抗体の製造方法としては、例えば、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ウサギ等の動物に抗原を投与し、その血液からポリクローナル抗体を精製する方法、抗原を投与した動物の脾臓細胞と培養癌細胞とを細胞融合し、その培養液又は融合細胞を植え込んだ動物の体液(腹水等)からモノクローナル抗体を精製する方法、抗体産生遺伝子を導入した遺伝子組み換え細菌、植物細胞、動物細胞の培養液から抗体を精製する方法、鳥類、特にニワトリ又はダチョウに抗原を投与して免疫卵を産ませ、卵黄液を殺菌及び噴霧乾燥して得た卵黄粉末から鶏卵抗体またはダチョウ卵抗体を精製する方法、卵黄液を脱脂、硫安分画、透析により精製して鶏卵抗体液またはダチョウ卵抗体液を精製する方法を挙げることができる。これらのうちでも、鶏卵から抗体を得る方法は、容易にかつ大量に抗体が得られ、有害物質除去材の低コスト化を図ることができる。
本発明の有害物質除去材に用いられる抗体は鳥類卵由来の抗体であることが好ましく、鶏卵抗体またはダチョウ卵抗体であることがより好ましい。
前記担体に抗体を担持する(固定化する)方法としては、前記担体に抗体を物理的に吸着させる方法のほか、担体をγ−アミノプロピルトリエトキシシランなどを用いてシラン化した後、グルタールアルデヒドなどで担体表面にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、未処理の担体を抗体の水溶液中に浸漬してイオン結合により抗体を担体に固定化する方法、特定の官能基を有する担体にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法、特定の官能基を有する担体に抗体をイオン結合させる方法、特定の官能基を有するポリマーで担体をコーティングした後にアルデヒド基を導入し、アルデヒド基と抗体とを共有結合させる方法をあげることができる。
ここで、前記の特定の官能基としては、NHR基(RはH以外のメチル、エチル、プロピル、ブチルのうちいずれかのアルキル基)、NH2基、C65NH2基、CHO基、COOH基、OH基を挙げることができる。
また、前記担体表面の官能基を、BMPA(N-β-Maleimidopropionic acid)などを用いて他の官能基に変換した後、その官能基と抗体とを共有結合させる方法もある(BMPAではSH基がCOOH基に変換される)。
更に、前記抗体のFcの部分に選択的に結合する分子(Fcレセプター、プロテインA/Gなど)を担体表面に導入し、それに抗体のFcを結合させる方法もある。この場合、有害物質を捕捉するFabが担体に対して外向きになり、Fabへの有害物質の接触確率が高くなるので、効率よく有害物質を捕捉することができる。
前記抗体は、リンカーを介して担体に担持されていてもよい。この場合、担体上での抗体の自由度が高くなり、有害物質への接近が容易となるので、高い除去性能を得ることができる。リンカーとしては、二価以上のクロスリンク試薬を挙げることができ、具体的にはマレイミド、NHS(N-Hydroxysuccinimidyl)エステル、イミドエステル、EDC(1-Ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimido)、PMPI(N-[p-Maleimidophenyl]isocyanate)があり、標的官能基(SH基、NH2基、COOH基、OH基)に選択的なものと非選択的なものとがある。また、クロスリンク間の距離(スペースアーム)もクロスリンク試薬ごとに異なっており、目的の抗体に応じて0.1nm〜3.5nm程度の範囲で選択することができる。有害物質を効率的に捕捉するという観点からは、リンカーとして抗体のFcに結合するものが好ましい。
リンカーを導入する方法としては、抗体にリンカーを結合させておき、それを更に抗体に結合する方法、担体にリンカーを結合させておき、担体上のリンカーに抗体を結合させる方法のいずれも可能である。
抗体安定化剤を本発明の有害物質除去材に含ませる方法としては、抗体安定化剤を前記担体に物理的に吸着や含浸させる方法のほか、前記担体に担持する方法が挙げられる。抗体安定化剤を前記担体に担持する方法としては、上記と同様に担体の特定の官能基と前記材料とを共有結合させる方法、イオン結合により前記材料を担体に固定化する方法などをあげることができる。
本発明の有害物質除去材の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、抗体を含む溶液(担持液)に担体を浸漬して抗体を担体に結合させることにより製造する方法が挙げられる。前記の抗体安定化剤は、上記担持液に溶解又は分散させてもよく、別に抗体安定化剤を溶解又は分散した溶液を用意し、抗体の担持前又は前に担体を浸漬させてもよい。このうち、抗体ならびに抗体安定化剤を含む担持液を用いることが好ましい。抗体と抗体安定化剤とを同時に担体に担持させることが可能であるためである。
該溶液は、抗菌剤、抗カビ剤などの添加剤を含んでいてもよい。
なお、担持液における抗体と抗体安定化剤との含有量比は、通常本発明の有害物質除去材において担体に担持される抗体と抗体安定化剤との含有量比に反映されるものと考えることができる。
本発明の有害物質除去材によって、気相中又は液相中の有害物質の除去が可能である。
本発明の有害物質除去材は、空気清浄機用フィルター、マスク、拭き取りシートなどに用いることができる。
本発明の有害物質除去材においては、抗体が気相に面しているドライな環境においても、抗体の活性が高く、かつ抗体の安定性が高い。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
[例1]
セルロースアセテート(アルドリッチ製、全置換度2.4、数平均分子量3万)のアセトン:水(97:3)溶液(10質量%)を用い、ナノファイバー製造装置(カトーテック製:図1参照)を用いて、シリンジ送り速度0.05mm/min、引加電圧15kVで電界紡糸を行い、さらに真空中80℃8時間乾燥して膜厚50μmの微細不織布を作製した。この不織布のSEMで平均繊維径を測定したところ、80nmであった。次に抗原を投与したニワトリが産んだ免疫卵を精製して作製したインフルエンザ抗体(IgY抗体)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させ、抗体濃度100ppmになるよう調液し、さらにサッカロースを10ppmとなるように添加して撹拌後、0.45μmのフィルターによるろ過を経て担持液を調製した。本担持液に前記不織布を室温で16〜24時間浸漬して繊維表面に抗体を担持させ、フィルター試料(N-1)を得た。
[例2]
例1のサッカロースの代わりに表1に記載の安定化剤を表1に記載の添加量で、添加した以外は例1と同じ方法にてフィルター試料(N-2〜31)を作製した。
[比較例1]
例1のサッカロースを添加しない以外は例1と同じ方法にてフィルター試料(H-1)を作製した。
[比較例2]
例1のサッカロースの代わりに、等量のダコ社製精製CEA抗体を添加した以外は例1と同じ方法にてフィルター試料(H-2)を作製した。
[ウイルス不活化効率評価]
供試ウイルス液は精製インフルエンザウイルスをPBSで10倍希釈したものを使用した(20万プラーク/mL)。各試料を5cm角に切り、ウイルス噴霧試験装置の中央に取り付け固定した。上流側に設置したネブライザーに供試ウイルス液を入れ、下流側にウイルス回収装置を取り付けた。エアーコンプレッサーから圧縮空気を送り、ネブライザーの噴霧口から供試ウイルスを噴霧した。試料下流側にはゼラチンフィルターを設置し、10L/分の吸引流量で5分間試験装置内空気を吸引し、通過ウイルスミストを捕集した。試験後、ウイルスを捕集したゼラチンフィルターを回収し、MDCK細胞を用いたTCID50法(50%細胞感染量測定法)により、試料通過後のウイルス感染価を求めた。試料の有り無しでのゼラチンフィルターのウイルス感染価の比較から、各試料のウイルスの一過性除去率を算出した。
[高温保存性試験] N-1〜31及びH-1、2を50℃相対湿度90%の環境に一週間静置した前後で上記のウイルス噴霧試験を実施した。結果を表1に示す。
表1に示す結果より、抗体とともに糖、アミノ酸、SH基保護剤、又は界面活性剤を担体に担持させることにより、抗体が安定化してウイルス除去率が維持されていると同時に、比較例2で見られるような初期能の低下もないことが分かる。また、N-1、N-2、N-9〜N-11 、N-13〜31の結果から、サッカロース、トレハロースなどの二糖類およびラフィノースなどの三糖類では、添加量が抗体に対して質量比で1倍〜1000倍の場合でもウイルス除去率維持効果が高いことが分かる。
[例3]
ビニロン繊維を主体繊維とし、ポリエステル繊維を含み、アクリル系接着剤でレジンボンドしてなる坪量100g/m2 の乾式不織布を基材として準備した。この不織布のSEMで平均繊維径を測定したところ、25μmであった。次に抗原を投与したダチョウが産んだ免疫卵を精製して作製したインフルエンザ抗体(IgY抗体)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈し、抗体濃度100ppmになるよう調液し、さらにサッカロースを10ppmとなるよう添加撹拌後、0.45μmのフィルターによるろ過を経て担持液を調製した。本担持液に前記不織布を室温で5分浸漬して繊維表面に抗体を担持させ、フィルター試料(B-1)を得た。
[例4]
例3のサッカロースの代わりに表2に記載の安定化剤を表2に記載の添加量で、添加した以外は例3と同じ方法にてフィルター試料(B-2〜B-30)を作製した。
[比較例3]
例3のサッカロースを添加しない以外は例3と同じ方法にてフィルター試料(H-3)を作製した。
[比較例4]
例3のサッカロースの代わりに、等量のダコ社製精製CEA抗体を添加した以外は例3と同じ方法にてフィルター試料(H-4)を作製した。
[ウイルス不活化効率評価]
供試ウイルス液は精製インフルエンザウイルスをPBSで10倍希釈したものを使用した(20万プラーク/mL)。各試料を5cm角に切り、ウイルス噴霧試験装置の中央に取り付け固定した。上流側に設置したネブライザーに供試ウイルス液を入れ、下流側にウイルス回収装置を取り付けた。エアーコンプレッサーから圧縮空気を送り、ネブライザーの噴霧口から供試ウイルスを噴霧した。試料下流側にはゼラチンフィルターを設置し、10L/分の吸引流量で5分間試験装置内空気を吸引し、通過ウイルスミストを捕集した。試験後、ウイルスを捕集したゼラチンフィルターを回収し、MDCK細胞を用いたTCID50法(50%細胞感染量測定法)により、試料通過後のウイルス感染価を求めた。試料の有り無しでのゼラチンフィルターのウイルス感染価の比較から、各試料のウイルスの一過性除去率を算出した。
[高温保存性試験]
B-1〜30およびH-3、4を50℃相対湿度90%の環境に一週間静置した前後で上記のウイルス噴霧試験を実施した。結果を表2に示す。
表2に示す結果より、抗体とともに糖を担持させることにより、抗体が安定化してウイルス除去率が維持されていると同時に、比較例4で見られるような初期能の低下もないことが分かる。また、サッカロース、トレハロースなどの二糖類およびラフィノースなどの三糖類では、添加量が抗体含量に対し質量比で1倍〜1000倍の場合においてもウイルス除去率維持効果が高く、グルコースなどの単糖類よりも、安定化効果が高いことがわかった。
実施例ならびに比較例で用いた電界紡糸装置の概略図である。
符号の説明
11 電源装置
12 シリンジ
13 ニードル
14 コレクター
15 ポリマー溶液
16 ナノファイバー

Claims (16)

  1. 抗体を担持した担体からなる有害物質除去材であって、抗体安定化剤として、糖、アミノ酸、SH基保護剤、及び界面活性剤から選択される少なくとも1種類を含む有害物質除去材。
  2. 前記抗体安定化剤が、グルコース、ガラクトース、フルクトース、サッカロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、ラフィノース、マンニトール、及びソルビトールからなる群から選択される1種又は2種以上の糖である請求項1に記載の有害物質除去材。
  3. 前記抗体安定化剤が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、プロリン、リシン、及びグルタミン酸からなる群から選択される1種又は2種以上のアミノ酸である請求項1に記載の有害物質除去材。
  4. 前記抗体安定化剤が、2−メルカプトエタノール又はジチオスレイトールからなる群から選択されるSH基保護剤である請求項1に記載の有害物質除去材。
  5. 前記抗体安定化剤が、3−[3−コラミドプロピル]ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート(CHAPS)である請求項1に記載の有害物質除去材。
  6. 前記抗体安定化剤の含量が、前記抗体の含量に対して1〜100質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  7. 前記抗体安定化剤が二糖類または三糖類であり、かつ前記抗体安定化剤の含量が、前記抗体の含量に対して、質量比で1倍〜1000倍である請求項1又は2に記載の有害物質除去材。
  8. 前記担体が、カルボニル基及び/又はエーテル基を含有する少なくとも1種類のポリマーからなる請求項1〜7のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  9. 前記担体が、ビニロンを含有する繊維を少なくとも1種類含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  10. 前記担体が平均繊維径100nm以下の繊維である請求項1〜9のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  11. 前記抗体が、鳥類卵由来の抗体である請求項1〜10のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  12. 前記抗体が鶏卵抗体である請求項1〜11のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  13. 前記抗体がダチョウ卵抗体である請求項1〜11のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  14. 前記抗体及び前記の抗体安定化剤が溶解又は分散した溶液に前記担体を浸漬することにより製造される請求項1〜13のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  15. 前記抗体が気相に面している請求項1〜14のいずれか一項に記載の有害物質除去材。
  16. 請求項1から15のいずれか一項に記載の有害物質除去材を用いて、気相中の有害物質を除去することを含む、有害物質除去方法。
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