JP2010009890A - プラズマ処理装置 - Google Patents

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哲司 柴田
Takahiko Hirai
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Abstract

【課題】安定してストリーマ放電を生成して均一なプラズマを生成することができ、しかも装置の大型化や高コスト化を抑制することができるプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】対向する電極1、1間に形成される対向領域2にプラズマ生成ガスGを供給する。大気圧又はその近傍の圧力下で上記電極1、1間に電圧を印加することにより対向領域2にストリーマ放電Sを形成すると共にこのストリーマ放電Sにより対向領域2でプラズマPを生成する。このプラズマPを被処理物Hに供給するプラズマ処理装置に関する。不均一な電界強度分布を対向領域2に発生させることにより上記ストリーマ放電Sを形成するためのストリーマ放電形成手段と、このストリーマ放電Sを対向領域2で分散させるためのストリーマ放電分散手段とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離やエッチング、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、成膜、めっき前処理、コーティング前処理、各種材料・部品の表面改質などのプラズマ処理に利用されるプラズマ処理装置に関するものであり、特に、幅広の被処理物(ワーク)の表面の改質に好適に応用されるものである。
従来より、筒状容器内にプラズマ生成用ガスを導入し、筒状容器の外部に配設された電極により電圧を印加することにより、プラズマ生成用ガスのガス流れと同じ方向にストリーマ放電を形成すると共にこのストリーマ放電により筒状容器内にプラズマを生成し、このプラズマを筒状容器から吹き出して被処理物に供給することによって、被処理物にプラズマ処理を施すことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−93768号公報
しかし、特許文献1に記載のプラズマ処理装置では、ストリーマ放電を生成するためのストリーマ放電形成手段がなく、単に電極間に電圧の印加により発生するストリーマ放電を利用しているため、ストリーマ放電を安定して持続させるのが難しい場合があった。また、幅広の被処理物をプラズマ処理するためには、幅広の筒状容器を必要とするが、ガラス等で形成される筒状容器の強度を確保するのは困難なため、筒状容器の変形によりプラズマを均一に吹き出すことが難しく、被処理物のプラズマ処理にバラツキが生じるおそれがあった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、安定してストリーマ放電を生成して均一なプラズマを生成することができ、しかも装置の大型化や高コスト化を抑制することができるプラズマ処理装置を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係るプラズマ処理装置は、対向する電極1、1間に形成される対向領域2にプラズマ生成ガスGを供給し、大気圧又はその近傍の圧力下で上記電極1、1間に電圧を印加することにより対向領域2にストリーマ放電Sを形成すると共にこのストリーマ放電Sにより対向領域2でプラズマPを生成し、このプラズマPを被処理物Hに供給するプラズマ処理装置において、不均一な電界強度分布を対向領域2に発生させることにより上記ストリーマ放電Sを形成するためのストリーマ放電形成手段と、このストリーマ放電Sを対向領域2で分散させるためのストリーマ放電分散手段とを備えて成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項2に係るプラズマ処理装置は、請求項1において、ストリーマ放電形成手段は、被処理物Hの搬送方向と略直交する方向において不均一な電界強度分布を発生するものであることを特徴とするものである。
本発明の請求項3に係るプラズマ処理装置は、請求項1又は2において、ストリーマ放電形成手段は、対向する電極1、1の間隔を不均一にして形成して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項4に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至3のいずれか一項において、ストリーマ放電形成手段は、対向する電極1、1の少なくとも一つの対向面20を誘電体3で被覆すると共にこの誘電体3の誘電率を部分的に異ならせることにより形成して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項5に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至4のいずれか一項において、ストリーマ放電形成手段は、対向する電極1、1の少なくとも一つの対向面20を誘電体3で被覆すると共にこの誘電体3の厚みを部分的に異ならせることにより形成して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項6に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至5のいずれか一項において、プラズマ生成用ガスGを対向領域2に供給するためのガス供給手段4を対向領域2に隣接して設けて成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項7に係るプラズマ処理装置は、請求項6において、ガス供給手段4をストリーマ放電分散手段として兼用して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項8に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至7のいずれか一項において、被処理物HにプラズマPを供給するための処理空間5が対向領域2と分離して成ることを特徴とするものである。
本発明の請求項9に係るプラズマ処理装置は、請求項1乃至8のいずれか一項において、少なくとも対向する電極1、1とストリーマ放電形成手段とストリーマ放電分散手段とを収容するチャンバー6を具備して成ることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、プラズマ生成効率のよいストリーマ放電Sをストリーマ放電形成手段で安定して形成することができると共に局所的な放電形態となりやすいストリーマ放電Sをストリーマ放電分散手段で対向領域2で均一に分散させることができ、安定してストリーマ放電Sを生成して均一なプラズマを生成することができるものであり、しかも、ストリーマ放電Sをストリーマ放電分散手段で分散させるために、ストリーマ放電Sを発生させるための多数の電極を備える必要が無く、装置の大型化や高コスト化を抑制することができるものである。
請求項2の発明では、搬送方向と略直交方向に電界強度分布をつけることにより、同一方向にストリーマ放電を分布させることができる。このようにストリーマ放電の分布方向を被処理物の幅方向と異なる方向に形成することにより、被処理物表面のプラズマ処理強度のばらつきを抑制することができる。
請求項3の発明では、電極1、1の対向する対向面20を傾斜面としたり、平板と曲面等にしたりすることにより、不均一な電界強度分布を発生させるストリーマ放電形成手段を容易に形成することができるものである。
請求項4の発明では、誘電体の材質を変えることにより、電極1の対向面20を平滑な状態のままで電界強度分布を不均一にすることができ、ストリーマ放電形成手段を有する電極1、1であってもその間隔調整を容易に行うことができて安定してストリーマ放電を形成することができるものである。
請求項5の発明では、誘電体の厚みを変えることにより、電極1の対向面20に凹凸加工や傾斜加工をすることがなくても電界強度分布を不均一にすることができ、ストリーマ放電形成手段を容易に形成することができるものである。
請求項6の発明では、対向領域2に効率よくプラズマ生成用ガスを供給することができ、プラズマ生成用ガスの使用効率を高めることができるものである。
請求項7の発明は、ガス供給手段から供給されるプラズマ生成用ガスのガス流を利用することによりストリーマ放電を分散することができ、部材の兼用により装置の小型化や簡素化及び低コスト化を図ることができるものである。
請求項8の発明では、電気回路を含む被処理物Hをプラズマ処理するにあたって、電圧の印加された対向領域2に被処理物Hを導入する必要が無く、被処理物Hに対する電気的なダメージを小さくしてプラズマ処理を行うことができるものである。
請求項9の発明では、チャンバー6によりプラズマ生成用ガスGの拡散を少なくすることができ、対向領域2でのガス雰囲気の制御を容易に行うことができると共に環境への負荷を小さくすることができるものである。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1、2に示すプラズマ処理装置は、一対の電極1、1を対向配置して備えるものであり、対向する電極1、1間の空間は対向領域2として形成されている。電極1は銅、アルミニウム、チタニウム合金、真鍮、耐食性の高いステンレス鋼(SUS304など)などの導電性の金属材料で形成することができる。また、電極1は断面略台形状で長尺に形成されている。図1のものでは電極1は紙面に直交する方向に長尺に形成されている。一対の電極1、1の対向面20、20は傾斜面として形成されており、電極1の下部になるにしたがって対向面20、20の間隔が狭くなるように、一方の電極1の対向面20と他方の電極1の対向面20とが逆向きに傾斜するようになっている。これにより、対向領域2は下側ほど狭くなるテーパー状に形成されている。このように電極1、1の間隔を上下方向で不均一にすることによって、ストリーマ放電形成手段を形成することができる。すなわち、電極1、1の間隔は対向領域2の上部になるほど広くなるため、対向領域2の下部に比べて電界強度が低くなる。従って、対向領域2の上部から下部に向かって電界強度が徐々に大きくなるように不均一な電界強度分布が生じることになる。ここで、対向領域2の最上部における電界強度は2kV/mm、対向領域2の最下部における電界強度は20kV/mmとすることができるが、これに限定されるものではない。尚、図2において符号28は対向領域2の長手方向の両端部を閉塞するための閉塞板である。
また、一方の電極1には電源21が接続されて高圧電極として形成されていると共に他方の電極1は接地されて接地電極として形成されている。また、電極1には冷却水循環用の流通孔30が長尺方向の略全長にわたって形成されている。さらに、電極1の上面と対向面20と下面はアーク放電の防止のために誘電体3により被覆されている。誘電体3としては、例えば、石英ガラス、アルミナ、チタン酸バリウム、イットリア、ジルコニウムなどのガラス質材料やセラミック材料などの高融点の絶縁材料で形成することができ、比誘電率が5以上であることが好ましい。また、誘電体3の被膜の厚みは全体にわたって一定であり、例えば、0.5〜5mmとする。
プラズマ処理装置はガス供給手段4としてガスノズル22を備えている。ガスノズル22は下面が開口する断面略コ字状に形成されるものであって、上記一対の電極1、1の上を跨ぐようにして配置されており、ガスノズル22を対向領域2に隣接させている。また、ガスノズル22は電極1の長尺方向の略全長にわたって配設されている。ガスノズル22の上片には上下に貫通するガス導入孔23が形成されている。また、ガスノズル22の下面開口には噴射板24が設けられている。噴射板24には上下に貫通する多数個のオリフィス(貫通孔)25が全面にわたって形成されている。オリフィス25の直径は0.3〜5.0mmとすることができるが、これに限定されるものではない。この実施の形態1では、噴射板24をガスノズル22に設けることによって、ガス供給手段4とストリーマ放電分散手段とを兼用するものである。
電極1の下方の空間は被処理物HにプラズマPを供給してプラズマ処理するための処理空間5として形成されている。また、上記の電極1、ガスノズル22及び処理空間5は箱状のチャンバー6内に収容されている。チャンバー6には搬入口26と搬出口27が設けられている。尚、本発明のプラズマ処理装置には被処理物Hを搬送するための適宜の搬送手段(例えば、ベルトコンベアやローラなど)が具備されているが、図示を省略している。
そして、上記のプラズマ処理装置を用いて平板状などの被処理物Hをプラズマ処理するにあたって次のようにして行う。まず、大気圧又はその近傍の圧力下(90〜107kPa)において、プラズマ生成用ガスGを対向領域2にその上面開口から導入しながら電極1、1の間に電圧を印加することによって対向領域2に多数本のストリーマ放電Sを発生させる。ここで、プラズマ生成用ガスGはガスノズル22のガス導入孔23から噴射板24のオリフィス25を通じて対向領域2に導入されるため、オリフィス25により加速されて高速で対向領域2に噴射されることになり、この噴射によりプラズマ生成用ガスGの乱流が生じてストリーマ放電Sが対向領域2内で拡散されて分散される。従って、不均一な電界強度分布により局所的にストリーマ放電Sを形成しても、それを対向領域2の全体にわたって分散させることができる。この後、分散されたストリーマ放電Sにより対向領域2の全体にわたって略均一にプラズマPが生成され、このプラズマPが対向領域2の下面開口から処理空間5にプラズマジェットとして吹き出される。プラズマPはプラズマ生成用ガスGの上からの圧力で吹き出される。尚、電極1、1間に印加される電圧の波形は正弦波などの連続波形とすることができ、その周波数は1kHz〜200MHzに設定するのが好ましい。連続波形の電圧を用いると電極1、1間への電力の供給を大きくすることができ、高密度のプラズマを生成することができる。また、電極1、1間に印加される電圧の波形はパルス波形とすることができ、この場合、周波数は0.5kHz〜200MHzに設定するのが好ましい。パルス波形の電圧を用いることにより、対向領域2の温度上昇を抑制することができ、耐熱性の低い被処理物Hであってもプラズマ処理をすることができる。電極1、1間に印加される電圧は電極1、1間の距離やプラズマ生成用ガスGの組成等によって異なるが、電界強度が1〜30kV/mmの範囲になるように設定するのが好ましい。
一方、被処理物Hは搬入口26からチャンバー6内に搬入され、処理空間5を通過した後、搬出口27からチャンバー6外に搬出される。ここで、このプラズマ処理装置では被処理物Hは略水平に搬送されるため、被処理物Hの搬送方向と略直交する上下方向において不均一な電界強度分布をストリーマ放電形成手段により発生させている。そして、処理空間5において被処理物Hの上面に上記プラズマPを吹き付けて供給することによって、被処理物Hの表面改質処理などのプラズマ処理を行うことができる。ここで、被処理物Hを搬送しながらプラズマPを吹き付けることにより、被処理物Hの搬送方向の全長にわたってプラズマ処理をすることができる。また、被処理物Hの幅方向(搬送方向と水平面内で直交する方向)においても、電極1の長尺方向の全長にわたってプラズマ処理をすることができる。尚、被処理物Hは対向領域2の下面開口から下側0.5〜20mmを搬送することができ、その搬送速度は0.05〜10m/分とすることができるが、これに限定されるものではない。
(実施の形態2)
図3に示すプラズマ処理装置は、一対の電極1、1を対向配置して備えるものであり、対向する電極1、1間の空間は対向領域2として形成されている。電極1は上記と同様の材料で形成することができる。また、電極1は断面略矩形状で長尺に形成されている。図3のものでは電極1は紙面に直交する方向に長尺に形成されている。一対の電極1、1の対向面20、20は凹凸面として形成されている。この凹凸面は複数の突起29や突条を対向面20に設けることにより形成することできる。対向面20の粗度は最大高さRmaxで10〜2000μmとすることができるが、これに限定されるものではない。このようにして、対向する電極1、1の対向面20、20の間隔を上下方向及び電極1の長尺方向で部分的に不均一にすることによって、ストリーマ放電形成手段を形成することができる。すなわち、電極1、1の間隔が広い部分では狭い部分に比べて電界強度が低くなる。従って、対向領域2の全体に不均一な電界強度分布が生じることになる。また、電極1は上記と同様の誘電体3により全面にわたって被覆されている。誘電体3の被膜の厚みは上記と同様に全体にわたって一定であるため、対向面20を被覆する部分では誘電体3の被膜の表面に対向面20の凹凸が表出することになる。そして、このプラズマ処理装置では、この誘電体3の表面の凹凸がストリーマ放電分散手段として形成されている。従って、このプラズマ処理装置にはガス供給手段4として上記と同様のガスノズル22を備えられているが、このガスノズル22には噴射板24が設けられていない。その他の構成は上記プラズマ処理装置と同様である。
そして、このプラズマ処理装置を用いて平板状などの被処理物Hをプラズマ処理するにあたって、上記と同様にして行うことができる。すなわち、大気圧又はその近傍の圧力下において、ガスノズル22のガス導入孔23を通じてプラズマ生成用ガスGを対向領域2にその上面開口から導入しながら電極1、1の間に電圧を印加することによって対向領域2に多数本のストリーマ放電Sを発生させる。このとき、対向領域2に面する誘電体3の被膜表面は凹凸面に形成されているので、対向領域2でプラズマ生成用ガスGの乱流が生じることになり、この乱流でストリーマ放電Sが対向領域2で拡散されて分散される。従って、不均一な電界強度分布により局所的にストリーマ放電Sを形成しても、それを対向領域2の全体にわたって分散させることができる。この後、上記と同様に、分散されたストリーマ放電Sにより対向領域2の全体にわたって略均一にプラズマPが生成され、このプラズマPが対向領域2の下面開口から処理空間5にプラズマジェットとして吹き出される。そして、上記と同様にして、被処理物Hをチャンバー6内に搬入した後、処理空間5において被処理物Hの上面に上記プラズマPを吹き付けて供給することによって、被処理物Hの表面改質処理などのプラズマ処理を行うことができる。
(実施の形態3)
図4に示すプラズマ処理装置は、図3のものと同様に、電極1、1の対向面20が凹凸面として形成されているが、これを被覆する誘電体3の厚みを不均一にして部分的に異ならせるようにし、対向領域2に面する誘電体3の被膜表面を平坦面に形成している。従って、図3のプラズマ処理装置のように、誘電体3の被膜表面の凹凸をストリーマ放電分散手段とせずに、その代わりに、図1のプラズマ処理装置のように、オリフィス25を有する噴射板24を備えたガスノズル25でガス供給手段4とストリーマ放電分散手段とを兼用するようにしている。その他の構成は上記プラズマ処理装置と同様である。
そして、このプラズマ処理装置を用いて平板状などの被処理物Hをプラズマ処理するにあたって、上記と同様にして行うことができる。すなわち、大気圧又はその近傍の圧力下において、ガスノズル22のガス導入孔23を通じてプラズマ生成用ガスGを対向領域2にその上面開口から導入しながら電極1、1の間に電圧を印加することによって対向領域2に多数本のストリーマ放電Sを発生させる。このとき、ストリーマ放電形成手段は電極1の対向面20の表面の凹凸及び部分的に厚みの異なる誘電体3の被膜である。この後、上記と同様に、ストリーマ放電分散手段によりストリーマ放電Sが対向領域2内で拡散されて分散し、分散されたストリーマ放電Sにより対向領域2の全体にわたって略均一にプラズマPが生成され、このプラズマPが対向領域2の下面開口から処理空間5にプラズマジェットとして吹き出される。そして、上記と同様にして、被処理物Hをチャンバー6内に搬入した後、処理空間5において被処理物Hの上面に上記プラズマPを吹き付けて供給することによって、被処理物Hの表面改質処理などのプラズマ処理を行うことができる。
(実施の形態4)
図5(a)に示すプラズマ処理装置では、ストリーマ放電形成手段は、対向する電極1、1の対向面20を被覆する誘電体3の誘電率を部分的に異ならせることにより形成している。すなわち、図5(b)に示すように、対向面20を被覆する誘電体3を誘電率が異なる複数種の誘電体3a、3bで形成し、細長い誘電体3a、3bを交互に上下方向に並べて対向面20に設けている。これにより、誘電体3aの部分と誘電体3bの部分とで電界強度が異なり、上下方向に不均一な電界強度分布を対向領域2内に形成することができる。誘電体3aと誘電体3bの比誘電率の差は1〜1600であることが好ましいが、これに限定されるものではない。また、図1のプラズマ処理装置のように、オリフィス25を有する噴射板24を備えたガスノズル22でガス供給手段4とストリーマ放電分散手段とを兼用するようにしている。その他の構成は上記プラズマ処理装置と同様である。
そして、このプラズマ処理装置を用いて平板状などの被処理物Hをプラズマ処理するにあたって、上記と同様にして行うことができる。すなわち、大気圧又はその近傍の圧力下において、ガスノズル22のガス導入孔23を通じてプラズマ生成用ガスGを対向領域2にその上面開口から導入しながら電極1、1の間に電圧を印加することによって対向領域2に多数本のストリーマ放電Sを発生させる。この後、上記と同様に、ストリーマ放電分散手段によりストリーマ放電Sが対向領域2内で拡散されて分散し、分散されたストリーマ放電Sにより対向領域2の全体にわたって略均一にプラズマPが生成され、このプラズマPが対向領域2の下面開口から処理空間5にプラズマジェットとして吹き出される。そして、上記と同様にして、被処理物Hをチャンバー6内に搬入した後、処理空間5において被処理物Hの上面に上記プラズマPを吹き付けて供給することによって、被処理物Hの表面改質処理などのプラズマ処理を行うことができる。
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
図1に示すプラズマ処理装置を形成した。電極1はチタン製で長尺方向の寸法が200mm、短尺方向の寸法15mm、高さ40mmに形成されている。また、電極1の断面は台形に形成されており、対向領域2は下側ほど電極1、1の間隔が狭くなるテーパー状に形成されている。従って、上下方向で不均一な電界強度分布を対向領域2に形成することができる。電極1の表面には溶射法により1mm厚の誘電体(アルミナ)3の被膜を形成した。また、電極1の流通孔30に冷却水を流して循環させた。一対の電極1、1は未放電時において最も短い箇所での間隔が1mmとなるように対向配置した。ガス供給手段4としては直径1mmの多数個のオリフィスを有する噴射板24を備えたガスノズル22を用い、ストリーマ放電分散手段と兼用するようにした。
(実施例2)
図3に示すプラズマ処理装置を形成した。電極1の断面は長方形とし、その対向面20には多数の突起29を設けて凹凸面(最大高さRmax500μm)に形成されている。また、電極1の表面には溶射法により1mm厚の誘電体(アルミナ)3の被膜を形成し、対向面20を被覆する誘電体3の被膜の表面も凹凸面に形成されている。これら以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。
(実施例3)
図4に示すプラズマ処理装置を形成した。電極1としては実施例2と同様のものを用い、また、電極1の表面には溶射法により最も薄い部分の厚みが1mmとなる誘電体(アルミナ)3の被膜を形成した。対向面20を被覆する誘電体3の被膜の表面は平坦面に形成した。これら以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。
(実施例4)
図5に示すプラズマ処理装置を形成した。電極1の断面は長方形とし、その対向面20は平坦面とした。また、電極1の対向面20以外の表面には溶射法により厚み1mmとなる誘電体(アルミナ)3の被膜を形成した。対向面20を被覆する誘電体3の被膜はアルミナからなる誘電体3aとチタン酸バリウムからなる誘電体3bを用いた。二種類の誘電体3a、3bの被膜は上下方向に交互に並べて上下寸法5mmずつで配置した。また、誘電体3の被膜の表面は平坦面に形成した。これら以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。
(比較例1)
図6に示すように、噴射板24のないガスノズル22を用いた以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。従って、これはストリーマ放電分散手段を具備しないものである。
(比較例2)
図7に示すように、対向面20を平坦面とした断面長方形の電極1を用いると共に、噴射板24のないガスノズル22を用いた。これら以外は実施例1と同様にしてプラズマ処理装置を形成した。従って、これはストリーマ放電形成手段及びストリーマ放電分散手段を具備しないものである。
<プラズマ処理能力の評価>
大気圧下で窒素60リットル/分、酸素0.15リットル/分のプラズマ生成用ガスGを対向領域2に導入し、電源21により電極1、1間に正弦波の波形を有する10kHz、12kVの電圧を印加した。これにより、対向領域2内に実施例1〜4及び比較例1ではストリーマ放電Sを、比較例2ではグロー状の放電を生じさせると共にプラズマPを生成し、このプラズマPを処理空間5に吹き出した。
被処理物Hとしては幅200mmのABS樹脂板を用い、対向領域2の下面開口から被処理物Hの上面までの距離(照射距離)を5mmに設定し、5m/分で略水平に搬送した。そして、この条件で実施例1〜4及び比較例1、2で被処理物Hにプラズマ処理を施し、プラズマ処理前後での水の接触角を測定した。プラズマ処理後の水の接触角は被処理物Hの上面に20点の測定点を10mm間隔で設定して測定した。プラズマ処理前の水の接触角は85°であった。結果を表1に示す。
Figure 2010009890
表1から判るように、実施例1〜4は比較例1、2よりもプラズマ処理後の水の接触角が低下した。比較例1は比較例2よりもプラズマ処理後の水の接触角は低下しているが、ストリーマ放電分散手段がないために、プラズマ処理のバラツキが生じた。従って、不均一な電界強度分布を生じさせるストリーマ放電形成手段を具備し、且つストリーマ放電Sを分散させるストリーマ放電分散手段を具備する実施例1〜4のプラズマ処理能力が高いと言える。
本発明の実施の形態1を示す概略の断面図である。 同上の分解した斜視図である。 同上の実施の形態2を示す概略の断面図である。 同上の実施の形態3を示す概略の断面図である。 (a)は同上の実施の形態4を示す概略の断面図、(b)は電極を示す概略図である。 比較例1を示す概略の断面図である。 比較例2を示す概略の断面図である。
符号の説明
1 電極
2 対向領域
3 誘電体
4 ガス供給手段
5 処理空間
6 チャンバー
S ストリーマ放電
G プラズマ生成用ガス
H 被処理物
P プラズマ

Claims (9)

  1. 対向する電極間に形成される対向領域にプラズマ生成ガスを供給し、大気圧又はその近傍の圧力下で上記電極間に電圧を印加することにより対向領域にストリーマ放電を形成すると共にこのストリーマ放電により対向領域でプラズマを生成し、このプラズマを被処理物に供給するプラズマ処理装置において、不均一な電界強度分布を対向領域に発生させることにより上記ストリーマ放電を形成するためのストリーマ放電形成手段と、このストリーマ放電を対向領域で分散させるためのストリーマ放電分散手段とを備えて成ることを特徴とするプラズマ処理装置。
  2. ストリーマ放電形成手段は、被処理物の搬送方向と略直交する方向において不均一な電界強度分布を発生するものであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
  3. ストリーマ放電形成手段は、対向する電極の間隔を不均一にして形成して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
  4. ストリーマ放電形成手段は、対向する電極の少なくとも一つの対向面を誘電体で被覆すると共にこの誘電体の誘電率を部分的に異ならせることにより形成して成ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  5. ストリーマ放電形成手段は、対向する電極の少なくとも一つの対向面を誘電体で被覆すると共にこの誘電体の厚みを部分的に異ならせることにより形成して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  6. プラズマ生成用ガスを対向領域に供給するためのガス供給手段を対向領域に隣接して設けて成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  7. ガス供給手段をストリーマ放電分散手段として兼用して成ることを特徴とする請求項6に記載のプラズマ処理装置。
  8. 被処理物にプラズマを供給するための処理空間が対向領域と分離して成ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
  9. 少なくとも対向する電極とストリーマ放電形成手段とストリーマ放電分散手段とを収容するチャンバーを具備して成ることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
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