JP2010007674A - 内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置 - Google Patents

内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ウエストゲートバルブの駆動機構における機械的ながた等が生じる場合にもウエストゲートバルブの開度を適正に制御する。
【解決手段】ターボチャージャ30を設けたエンジン10において、タービンホイール32を迂回するバイパス通路36にはウエストゲートバルブ37が設けられており、そのウエストゲートバルブ37は、機械的な結合部分を有するWGVアクチュエータ42により駆動される。ECU60は、所定の制御周期でWGV開度を制御する。また、ECU60は、WGVアクチュエータ42における機械的な結合部分でがたが発生したか否かを判定し、がた発生が判定された場合に、WGV開度制御の制御周期を短縮する。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置に関するものである。
従来から、ターボチャージャ等の過給機を設けた内燃機関が種々実用化されており、この過給機の作動により吸気効率が改善され内燃機関の出力向上が図られている。また、こうした過給機付き内燃機関において、過給機の過給状態を調整するための過給状態可変装置を備えた構成が提案されており、その一つとして、排気管に設けた排気タービンを迂回するようにしてバイパス通路を設けるとともに該バイパス通路にウエストゲートバルブを配設した技術がある。このウエストゲートバルブの作動により排気タービンに流れ込む排気流量が調整され、過給圧の過上昇などが抑制されるようになっていた。
また、ウエストゲートバルブを開閉するアクチュエータとしてダイアフラム弁を用い、該アクチュエータの圧力室に導入される過給圧を過給圧制御弁のデューティ制御により調整するようにした従来技術が知られている。かかる従来技術では、例えば、デューティ制御に際し、過給圧制御弁に印加する駆動電圧の周波数を、低回転域では高い周波数に、高回転域では低い周波数に、不連続に切り替えるようにしていた(特許文献1参照)。
しかしながら、ウエストゲートバルブの開度制御に関する既存の技術では以下の問題が生じる。すなわち、ウエストゲートバルブの駆動時には、上記のアクチュエータを含む駆動機構において機械的な結合により動力が伝達され、当該ウエストゲートバルブが開閉駆動される。このとき、機械的な結合部分においてがた等が発生すると、ウエストゲートバルブの制御精度が低下し、ひいては過給圧制御に悪影響が及ぶおそれがあった。特許文献1等ではがた発生に伴う問題について何ら示唆はなく、その対策を講じる必要があった。なお、上記特許文献1の技術では、駆動電圧の周波数と吸気脈動との共振によって制御性が悪化するという問題も生じると考えられる。
また、上記のように過給圧を導入することで開閉するアクチュエータの場合、ウエストゲートバルブの開度は過給圧に依存するものとなっており、同開度を任意の開度に制御することができない。この場合、過過給の抑制だけでなく燃費改善等を実現するには、過給圧に依存せずにウエストゲートバルブの開度を任意に制御できる技術が望まれる。その具体的な構成として、モータと複数のギア部材等との機械的な結合により構成される電動式アクチュエータを用いることが考えられる。
こうした電動式アクチュエータを用いる場合、モータ動力を伝達するためのギア部材のかみ合い部分にはバックラッシュ(歯面間の隙間)が設けられており、そのバックラッシュにより、前述のようなウエストゲートバルブの制御精度低下が生じることが考えられる。
特許第2674842号公報
本発明は、ウエストゲートバルブの駆動機構における機械的ながた等が生じる場合にもウエストゲートバルブの開度を適正に制御することができる内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置を提供することを主たる目的とするものである。
本発明では、排気タービン及び吸気コンプレッサを有してなるターボチャージャを設けた内燃機関において、排気タービンを迂回する通路にウエストゲートバルブを設け、そのウエストゲートバルブを、機械的な結合部分を有するウエストゲートバルブ駆動機構により駆動することとしている。ウエストゲートバルブ駆動機構としては、例えば、モータ等の動力源と複数のギア部材(歯車)とを機械的に結合して構成されるものが考えられる。
そして、第1の発明として、制御手段は、所定の制御周期でウエストゲートバルブの開度を制御する。動作判定手段は、ウエストゲートバルブが停止状態から開側若しくは閉側のいずれかの動作方向に動作し始める動作開始時であるか、又はその動作方向が反転する動作反転時であるかを判定する。また、制御周期短縮手段は、動作判定手段により動作開始時又は動作反転時であると判定された場合に、前記制御手段による制御周期を短縮する。
要するに、機械的結合を有するウエストゲートバルブ駆動機構はその結合部分において隙間(遊び)を有している。この結合部分の隙間としては、ギア間のかみ合い部分において歯面間隙間としてあらかじめ設定されるバックラッシュや、摩耗など、経時的な変化により生じる機械的ながた等があると考えられる。かかる場合、ウエストゲートバルブの動作開始時又は動作反転時には前記隙間(バックラッシュやがた)に起因してウエストゲートバルブの動作遅れが生じ、これによりウエストゲートバルブ開度の制御精度が低下する。この点、本発明では、ウエストゲートバルブの動作開始時又は動作反転時において制御手段による制御周期を短縮したため、上記がた等に起因する動作遅れが生じてもウエストゲートバルブの開度を適正に制御することができる。
ここで、車両の加速時などでウエストゲートバルブの目標開度が変化する際、その目標変化に伴い実際の開度が変化し、ウエストゲートバルブが動作が開始されたり、動作方向が反転されたりする。それ故に、ウエストゲートバルブの目標開度又は実開度の変化に基づいて、ウエストゲートバルブの動作開始時又は動作反転時であることを判定すると良い。又は、車両の加減速の状態に基づいて、ウエストゲートバルブの動作開始時又は動作反転時であることを判定すると良い。
また、第2の発明として、制御手段は、所定の制御周期でウエストゲートバルブの開度を制御する。がた判定手段は、ウエストゲートバルブ駆動機構における機械的な結合部分でがたが発生したか否かを判定する。そして、制御周期短縮手段は、がた判定手段によりがた発生が判定された場合に、前記制御手段による制御周期を短縮する。
前述したとおり機械的結合を有するウエストゲートバルブ駆動機構では、その結合部分において摩耗など、経時的な変化により機械的ながたが生じる。駆動機構の要素としてギアのかみ合いを含む構成では、バックラッシュ(歯面間隙間)が大きくなってがたつきが発生する。かかる場合、がた発生に起因してウエストゲートバルブの動作遅れが生じ、これによりウエストゲートバルブ開度の制御精度が低下する。この点、本発明では、がた発生が判定された場合において制御手段による制御周期を短縮したため、がた発生に起因する動作遅れが生じてもウエストゲートバルブの開度を適正に制御することができる。
ここで、摩耗などによりがたが発生すると、ウエストゲートバルブの目標開度に対する実開度の遅れの度合が大きくなる。そこで、ウエストゲートバルブの目標開度の変化に対する実開度の変化に基づいて前記がたの発生を判定し、該判定に基づいて制御周期の短縮を行うと良い。
また、同じく摩耗などによりがたが発生すると、内燃機関の定常運転時においてウエストゲートバルブ開度の変動量が大きくなり、許容されうる変動幅から外れる。そこで、内燃機関の定常運転時において、ウエストゲートバルブ開度の変動量が所定値(許容変動量)よりも大きくなった場合に前記がたが発生したと判定し、該判定に基づいて制御周期の短縮を行うと良い。これにより、ウエストゲートバルブ開度の変動量が小さくなり、制御性が安定する。
ウエストゲートバルブ駆動機構における機械的な結合部分でがたが発生した場合、目標開度に対するウエストゲートバルブの開度変化が遅れる。そのため、がた判定手段により前記がたの発生が判定された場合に、前記制御手段の制御ゲインを大きくすると良い。これにより、がた発生時におけるウエストゲートバルブ開度変化の遅れが解消できる。
また、ウエストゲートバルブの制御精度は、前記がた等に起因してウエストゲートバルブの動作開始時又は動作反転時に顕著となり、その後安定すると考えられる。したがって、前記制御周期短縮手段により制御周期を短縮した後、所定期間の経過時点で当該制御周期を元の周期に戻すと良い。又は、前記制御周期短縮手段により制御周期を短縮した後、ウエストゲートバルブの開度が安定した時点で当該制御周期を元の周期に戻すと良い。上記のとおり制御周期の短縮を一時的なものとすることにより、演算装置における演算負荷の過剰な増加を抑制することができる。
発明の実施の形態におけるエンジン制御システムの概略を示す構成図である。 WGVアクチュエータの機械的構成を示す図である。 等トルク特性を示す図である。 エンジンのP−V線図である。 過給圧制御に関してECUによる制御機能の概要を示す制御ブロック図である。 (a)は目標過給圧マップを示す図であり、(b)はベースWGV開度マップを示す図である。 ウエストゲートバルブの動作を説明するためのタイムチャートである。 制御周期設定処理を示すフローチャートである。 WGV開度制御処理を示すフローチャートである。 ウエストゲートバルブの動作を説明するためのタイムチャートである。 第2の実施の形態における制御周期設定処理を示すフローチャートである。
(第1の実施の形態)
以下、第1の実施の形態を図面に従って説明する。本実施の形態は、内燃機関である車載多気筒ガソリンエンジンを対象にエンジン制御システムを構築するものであり、当該制御システムのエンジンには過給手段としてのターボチャージャが設けられている。先ずは、図1を用いてエンジン制御システムの全体概略構成図を説明する。
図1に示すエンジン10において、吸気管11には、DCモータ等のスロットルアクチュエータ15によって開度調節される空気量調整手段としてのスロットルバルブ14が設けられている。スロットルアクチュエータ15には、スロットル開度を検出するためのスロットル開度センサが内蔵されている。スロットルバルブ14の下流側にはサージタンク16が設けられ、このサージタンク16にはスロットル下流側の吸気圧を検出する吸気圧センサ17が設けられている。また、サージタンク16には、エンジン10の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド18が接続されており、吸気マニホールド18において各気筒の吸気ポート近傍には燃料を噴射供給する電磁駆動式の燃料噴射弁19が取り付けられている。
エンジン10の吸気ポート及び排気ポートにはそれぞれ吸気バルブ21及び排気バルブ22が設けられており、吸気バルブ21の開動作により空気と燃料との混合気が燃焼室23内に導入され、排気バルブ22の開動作により燃焼後の排ガスが排気管24に排出される。エンジン10のシリンダヘッドには各気筒毎に点火プラグ25が取り付けられており、点火プラグ25には、点火コイル等よりなる図示しない点火装置を通じて、所望とする点火時期において高電圧が印加される。この高電圧の印加により、各点火プラグ25の対向電極間に火花放電が発生し、燃焼室23内に導入した混合気が着火され燃焼に供される。
エンジン10のシリンダブロックには、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ26と、エンジン10の回転に伴い所定クランク角毎に(例えば30°CA周期で)矩形状のクランク角信号を出力するクランク角度センサ27とが取り付けられている。
吸気管11と排気管24との間にはターボチャージャ30が配設されている。ターボチャージャ30は、吸気管11に設けられたコンプレッサインペラ(吸気コンプレッサ)31と、排気管24に設けられたタービンホイール(排気タービン)32とを有し、それらが回転軸33にて連結されている。タービンホイール32を挟んで排気管24の上流部と下流部との間にはバイパス通路36が設けられており、このバイパス通路36にはウエストゲートバルブ(WGV)37が設けられている。
ウエストゲートバルブ37にはロッド41を介してモータ(電動機)付きアクチュエータ42(以下、WGVアクチュエータという)が接続されており、WGVアクチュエータ42を駆動することによりウエストゲートバルブ37が開閉動作し、それに伴いバイパス通路36の開口面積、すなわちバイパス通路36を流れる排気流量が可変調整される。この場合、ウエストゲートバルブ37は過給状態可変手段として機能し、任意の状態で過給圧の調整が可能な構成となっている。WGVアクチュエータ42はウエストゲートバルブ駆動機構に相当する。
図2は、WGVアクチュエータ42の機械的構成を模式的に示す図面である。WGVアクチュエータ42のケース(図示略)にはモータ43が配設されており、モータ回転軸43aの先端部にはモータギア44が取り付けられている。モータギア44には平ギア45が噛み合っており、その平ギア45の軸部にはウォーム46が連結されている。また、ウォーム46に噛み合うようにしてヘリカルギア47が設けられており、ヘリカルギア47は軸部48を中心に回動可能となっている。軸部48にはヘリカルギア47と一体回転するアーム49が設けられており、アーム49の一端にはロッド41を介してウエストゲートバルブ37が連結されている。また、ヘリカルギア47を囲むケース(図示略)には、当該ギア47の回転位置を検出することでWGV開度を検出するWGV開度センサ50が設けられている。
上記構成のWGVアクチュエータ42では、モータ43が通電されることでモータギア44が正逆いずれかの方向に回転し、その回転が平ギア45及びウォーム46を介してヘリカルギア47に伝達される。そして、ヘリカルギア47が回転することに伴いロッド41が連動し、結果としてウエストゲートバルブ37が開閉動作する。
従来の正圧式アクチュエータを用いた構成では、過給圧に応じてWGV開度が制御されるが、上記のように電動式のWGVアクチュエータ42を用いることで、過給圧に依存せずにWGV開度を任意に設定できるようになっている。
図1の説明に戻り、ターボチャージャ30では、タービンホイール32に供給される排気によって同タービンホイール32が回転し、その回転力が回転軸33を介してコンプレッサインペラ31に伝達される。そして、コンプレッサインペラ31により、吸気管11内を流れる吸入空気が圧縮されて過給が行われる。このとき、その都度のエンジン運転状態等に基づいてウエストゲートバルブ37が開閉されることにより、所望とする過給圧が実現できるようになっている。
ターボチャージャ30にて過給された空気は、インタークーラ38によって冷却された後、その下流側に給送される。インタークーラ38によって吸入空気が冷却されることで、吸入空気の充填効率が高められる。
また、本制御システムでは、ドライバによるアクセルペダルの踏み込み操作量(アクセル開度)を検出するアクセル開度センサ51が設けられている。
ECU(電子制御ユニット)60は、周知の通りCPU、ROM、RAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、その都度のエンジン運転状態に応じてエンジン10の各種制御を実施する。すなわち、ECU60には、前述した各種センサから各々検出信号が入力される。そして、ECU60は、随時入力される各種の検出信号に基づいて燃料噴射量や点火時期等を演算し、燃料噴射弁19や点火装置等の駆動を制御する。
また、ECU60は、各種検出信号に基づいて目標スロットル開度を演算し、その目標スロットル開度に基づいてスロットルアクチュエータ15を駆動することで所望とする空気量制御を実施する。この場合特に、アクセル開度等に基づいて目標空気量を算出するとともに、該目標空気量をパラメータとして目標スロットル開度を算出し、この目標スロットル開度を基にスロットル開度を制御する。更に、ECU60は、スロットル開度制御に並行して、その都度要求されるWGV開度となるようWGV開度制御を実施する。上述したスロットル開度制御とWGV開度制御により、ドライバが要求する要求トルクが実現できるようになる。
ところで、スロットル開度、WGV開度及びエンジン10の出力トルクは図3に示す関係を有しており、同図によれば等トルク線L1〜L4が図示のように規定されている。等トルク線は、トルクが小さいものから順にL1,L2,L3,L4となっている。
例えば等トルク線L2上においてP1,P2の各点でトルク制御を実施した場合の違いを述べる。点P1でのトルク制御は従来制御(ダイアフラム弁等よりなる従来構成のWGVアクチュエータを用いた場合の制御)に相当し、点P2でのトルク制御は本実施の形態の制御(電動式のWGVアクチュエータを用いた場合の制御)に相当する。なお、点P1では、WGV開度=a1(ほぼ全閉値)、スロットル開度=b1であり、点P2では、WGV開度=a2、スロットル開度=b2である。
点P1,P2での各トルク制御を比較すると、点P2でのトルク制御の方がスロットル開度が大きくなっている。これにより、図4のP−V線図(圧力容積図)に示すように、排気圧力が低くなり、結果としてポンプ損失の低減が図られる。なお図4において、二点鎖線はWGV開度を略全閉とした状態の特性を示し、実線はWGV開度を所定開度に開放した状態での特性を示す。したがって、点P2でのトルク制御により燃費向上効果が得られる。本実施の形態では、所定の全閉領域を除く中間開度でWGV開度を制御することとしており、具体的には、エンジン10の通常運転時において20〜100%の範囲内(望ましくは50〜80%の範囲内)でWGV開度を制御する。
ただし、加速操作が行われる場合を想定すると、点P1から加速時には、図3の矢印X1に示すようにスロットル開度を大きくすることでトルクアップが可能となる。これに対し、点P2からの加速時において、トルクアップを図るには、図3の矢印X2に示すようにスロットル開度を大きくすることに加え、WGV開度を小さくする必要が生じる。すなわち、本実施の形態では、従来制御に比べてウエストゲートバルブ37の開閉操作量が多くなる。故に、WGVアクチュエータ42の応答遅れ等を考えると、過給圧の応答が遅れ、トルク制御の応答性にも影響が及ぶこととなる。
そこで本実施の形態では、過給圧応答を改善すべく、目標過給圧と実過給圧との差である過給圧偏差に基づいて目標WGV開度を設定するとともに、実WGV開度を目標WGV開度に一致させるようにして過給圧フィードバック制御を実施する。
次に、ECU60により実現される制御内容について詳しく説明する。図5は、過給圧制御に関し、ECU60による制御機能の概要を示す制御ブロック図である。図5では、ECU60内のCPUにより実現される演算機能をブロックごとに示している。なお本実施の形態では、スロットル下流側の吸気管圧力を「過給圧」と称し、吸気圧センサ17により検出される圧力を「実過給圧PM」として説明を進めることとする。
図5において、目標過給圧算出部61は、例えば図6の(a)に示すマップを用い、その都度のスロットル開度TAとエンジン回転速度NEとをパラメータとして目標過給圧PMTGを算出する。上記マップによれば、エンジン回転速度NEが大きいほど、又はスロットル開度TAが大きいほど、目標過給圧PMTGとして大きい値が算出される。
WGV開度補正量算出部62は、前記算出した目標過給圧PMTGと、吸気圧センサ17により検出した実過給圧PMとの偏差ΔPMを算出するとともに(ΔPM=PMTG−PM)、周知のフィードバック手法を用いてWGV開度補正量を算出する。具体的には、例えばPID手法を用い、過給圧偏差ΔPM等に基づいてWGV開度補正量を算出する。
また、ベースWGV開度算出部63は、例えば図6の(b)に示すマップを用い、その都度のスロットル開度TAとエンジン回転速度NEとをパラメータとしてベースWGV開度を算出する。上記マップによれば、エンジン回転速度NEが大きいほど、又はスロットル開度TAが大きいほど、ベースWGV開度として大きい値が算出される。この場合特に、ベースWGV開度は50〜80%の範囲内で設定される。
目標WGV開度算出部64は、ベースWGV開度とWGV開度補正量とにより目標WGV開度を算出する(目標WGV開度=ベースWGV開度+WGV開度補正量)。
WGV開度制御部65は、前記算出した目標WGV開度と、WGV開度センサ50により検出した実WGV開度とに基づいてWGV制御量を算出する。そして、WGV開度制御部65で算出したWGV制御量が駆動回路66に出力され、該駆動回路66によってWGVアクチュエータ42が駆動される。
一方、上記構成のWGVアクチュエータ42では、駆動源であるモータ43からヘリカルギア47までの動力伝達経路において各ギア部材を通じて動力が伝達される。かかる場合、WGVアクチュエータ42の機械的な結合部分である各ギア部材(歯車)のかみ合い部分では、互いの回転を滑らかにするために多少のバックラッシュ(歯面間の隙間)が設けられている。それ故に、ウエストゲートバルブ37の動作方向を開側⇔閉側で切り替えるためにモータ43の回転方向が反転したり、ウエストゲートバルブ37が動作停止の状態から動き始めたりする際には、バックラッシュによりWGV開度の変化に遅れが生じる。そしてこれにより、WGV開度制御の制御性が低下し、ひいては過給圧制御に悪影響が及ぶおそれがあった。
そこで本実施の形態では、ウエストゲートバルブ37の動作反転時や停止状態からの動作開始時において、ECU60によるウエストゲートバルブ37の制御周期を通常時よりも短縮し、WGV開度制御の制御性の改善を図ることとする。図7のタイムチャートを用いてより具体的に説明する。図7では、ウエストゲートバルブ37が動作停止の状態から動き始める際の制御の様子を示している。
WGV開度がほぼ一定であるタイミングt1以前、すなわち通常制御時においては、ECU60によって通常の制御周期(本実施の形態では32ms周期)でWGV開度制御が実行される。これに対し、タイミングt1で加速要求等によりスロットル開度が図示の如く変化すると、それに伴い目標WGV開度が増加する。そして、その目標WGV開度に応じてWGV制御量が算出され、該制御量によってWGVアクチュエータ42が駆動される。その際、WGVアクチュエータ42のバックラッシュにより実WGV開度の変化に遅れが生じる。
その後、タイミングt2では、目標WGV開度の変化に基づいてウエストゲートバルブ37の動作開始が判定され、それに対応して制御周期が16ms周期に短縮される。このとき、制御周期短縮フラグFtanに1がセットされる。このように制御周期を短縮することにより、WGV開度制御の制御精度が向上する。ちなみに、制御周期を一定(32msのまま)とした場合には、図に二点鎖線で示すように、WGV開度の安定するまでに時間を要してしまう。
図示は省略するが、ウエストゲートバルブ37の動作方向が開閉反転する場合にも、上記したウエストゲートバルブ37の動作開始時と同様に、バックラッシュに起因して図7で説明したような動作遅れが生じる。かかる場合にも、上記のとおりECU60による制御周期の短縮が行われる。なお、動作反転の場合には、ギア部材における歯面のかみ合いが必ず逆側となるため、動作遅れによる問題が顕著になると考えられる。
次に、WGV開度制御に関してECU60による具体的な処理内容をフローチャートに基づいて説明する。図8は、後述するWGV開度制御処理(図9)の実行周期を決定するための制御周期設定処理を示すフローチャートであり、本処理はECU60により所定の時間周期(例えば32ms周期)で実行される。
図8において、ステップS101では、ウエストゲートバルブ37が停止状態から動作し始める動作開始時であるか否か、又はその動作方向が反転する動作反転時であるか否かを判定する。このとき、目標WGV開度に基づいてウエストゲートバルブ37の動作開始又は動作反転が判定される。YESの場合、ステップS102に進み、制御周期短縮フラグFtanに1をセットする。続くステップS103では、WGV開度制御の制御周期を16msとする。
また、ステップS101がNOの場合、ステップS104に進み、制御周期短縮フラグFtanが1であるか否かを判定する。前記ステップS102でのフラグセット後であれば、ステップS105に進み、フラグセット後に所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS104,S105が共にYESの場合、ステップS106で制御周期短縮フラグFtanをクリアするとともに、続くステップS107でWGV開度制御の制御周期を32msとする。
上記処理によれば、ウエストゲートバルブ37が停止状態から動作開始した後所定時間が経過するまでの期間、又は開閉反転動作時から所定時間が経過するまでの期間において制御周期が短縮され、それ以外の期間において制御周期が通常周期とされる。
図9は、WGV開度制御処理を示すフローチャートであり、本処理は前記図8で設定された制御周期でECU60により繰り返し実行される。
図9において、まずステップS201では、本処理に必要なパラメータ(エンジン回転速度NE、スロットル開度TA、実過給圧PM)を読み込む。また、ステップS202では、WGV開度マップ(例えば図6の(b))を参照してベースWGV開度を算出し、続くステップS203では、目標過給圧マップ(例えば図6の(a))を参照して目標過給圧PMTGを算出する。
その後、ステップS204では、過給圧偏差ΔPMを算出し(ΔPM=PMTG−PM)、続くステップS205では、PID等のフィードバック手法を用い、過給圧偏差ΔPMに基づいてWGV開度補正量を算出する。
その後、ステップS206では、ベースWGV開度とWGV開度補正量の加算により目標WGV開度を算出する(目標WGV開度=ベースWGV開度+WGV開度補正量)。最後に、ステップS207では、目標WGV開度と実WGV開度とに基づいてWGV制御量を算出する。そして、こうして算出されたWGV制御量によりWGVアクチュエータ42(モータ43)の駆動が制御される。
以上詳述した本実施の形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
ウエストゲートバルブ37の動作開始時又は動作反転時においてECU60による制御周期を短縮したため、WGVアクチュエータ42におけるバックラッシュ等に起因する動作遅れが生じてもWGV開度を適正に制御することができる。
ECU60によりWGV開度制御の制御周期を短縮した後、所定時間の経過後に前記制御周期を元に戻すようにしたため、制御周期の短縮が一時的なものとなり、ECU60における演算負荷の過剰な増加を抑制することができる。
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について上記第1の実施の形態との相違点を中心に説明する。上記第1の実施の形態では、目標WGV開度の変化に基づいてウエストゲートバルブ37の動作開始又は動作反転を判定し、その判定に基づいてWGV開度制御の制御周期を短縮したが、本実施の形態では、WGVアクチュエータ42でがたが発生したか否かを判定し、その判定に基づいてWGV開度制御の制御周期を短縮する。
すなわち、WGVアクチュエータ42におけるバックラッシュ(ギアの歯面間隙間)は、摩耗等の経時的変化により大きくなると考えられる。例えば、排気圧の脈動によってウエストゲートバルブ37を開放しようとする力が生じ、その力によりWGVアクチュエータ42でギアの摩耗が生じることも考えられる。この場合、バックラッシュの増大によりがたが生じると、目標WGV開度が変化してもそれに追従する実WGV開度の変化が検出できなくなる。そこで本実施の形態では、目標WGV開度の変化に対する実WGV開度の変化に基づいてがたの発生を判定し、該判定に基づいて制御周期の短縮を行う。
ここで、ウエストゲートバルブ37が動作停止の状態から動き始める際の制御の様子を図10のタイムチャートを用いて説明する。
WGV開度がほぼ一定であるタイミングt11以前、すなわち通常制御時においては、ECU60によって通常の制御周期(本実施の形態では32ms周期)でWGV開度制御が実行される。これに対し、タイミングt11で加速要求等によりスロットル開度が図示の如く変化すると、それに伴い目標WGV開度が増加する。そして、その目標WGV開度に応じてWGV制御量が算出され、該制御量によってWGVアクチュエータ42が駆動される。その際、WGVアクチュエータ42でのがた発生により実WGV開度の変化に遅れが生じる。そのため、次の制御タイミングのタイミングt12では未だ実WGV開度が変化しない。
その後、タイミングt13では、目標WGV開度の変化に対する実WGV開度の変化の遅れに基づいてWGVアクチュエータ42でのがた発生が判定され、それに対応して制御周期が16ms周期に短縮される。このとき、制御周期短縮フラグFtanに1がセットされる。このように制御周期を短縮することにより、WGV開度制御の制御精度が向上する。
図示は省略するが、ウエストゲートバルブ37の動作方向が開閉反転する場合にも、がた発生に起因して図10で説明したような動作遅れが生じる。かかる場合にも、上記のとおり制御周期の短縮が行われる。なお、動作反転の場合には、ギア部材における歯面のかみ合いが必ず逆側となるため、動作遅れによる問題が顕著になると考えられる。
図11は、本実施の形態における制御周期設定処理を示すフローチャートであり、本処理は前記図8に置き換えてECU60により実行される。なお、図11は、前記図8と対比してステップS301が相違し、他の処理は前記図8に準ずるものとなっている。
図11において、ステップS301では、WGVアクチュエータ42でのがた発生を判定する。このとき、目標WGV開度の変化に対する実WGV開度の変化の遅れに基づいてWGVアクチュエータ42でのがた発生が判定される。YESの場合、制御周期短縮フラグFtanに1をセットするとともに、WGV開度制御の制御周期を16msとする(ステップS302,S303)。
また、ステップS301がNOの場合、制御周期短縮フラグFtanが1であるか否か、フラグセット後に所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS304,S305)。そして、制御周期短縮フラグFtan=1でかつ所定時間経過の場合、制御周期短縮フラグFtanをクリアするとともに、WGV開度制御の制御周期を32msとする(ステップS306,S307)。
以上第2の実施の形態においては、がた発生が判定された場合にWGV開度制御の制御周期を短縮するようにしたため、がた発生に起因する動作遅れが生じてもウエストゲートバルブ37の開度を適正に制御することができる。
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施しても良い。
上記第1の実施の形態では、目標WGV開度の変化に基づいてウエストゲートバルブ37の動作開始又は動作反転を判定し、その判定に基づいてWGV開度制御の制御周期を短縮したが、この構成を変更する。例えば、実WGV開度の変化に基づいてウエストゲートバルブ37の動作開始又は動作反転を判定し、その判定に基づいてWGV開度制御の制御周期を短縮する。又は、スロットル開度やアクセル開度に基づいて車両の加減速の状態を判定し、その加減速の状態からウエストゲートバルブ37の動作開始又は動作反転を判定するとともに、その判定に基づいてWGV開度制御の制御周期を短縮する。更に、エンジントルクやタービン回転速度等、他の運転状態パラメータに基づいてウエストゲートバルブ37の動作開始又は動作反転を判定し、その判定に基づいてWGV開度制御の制御周期を短縮するようにしても良い。
上記実施の形態では、WGV開度制御の制御周期を短縮した後、所定時間の経過後に前記制御周期を元に戻すようにしたが、これを変更する。例えば、同じくWGV開度制御の制御周期を短縮した後、WGV開度が安定した時点で前記制御周期を元に戻すと良い。なお、WGV開度が安定したかどうかは、WGV開度の偏差やWGV開度補正量を基に判定されればよい。或いは、WGV開度制御の制御周期を一旦短縮した後は、当該制御周期を元に戻さない、すなわち短縮したままとすることも可能である。
また、摩耗などによりWGVアクチュエータ42でがたが発生すると、エンジンの定常運転時においてWGV開度の変動量が大きくなり、許容の変動幅から外れると考えられる。そこで、エンジンの定常運転時において、WGV開度の変動量が所定値(許容変動量)よりも大きくなった場合に前記がたが発生したと判定し、該判定に基づいて制御周期の短縮を行うと良い。これにより、WGV開度の変動量を小さくすることができ、制御性が安定する。
上記第2の実施の形態において、WGVアクチュエータ42でのがた発生が判定された場合に、ECU60による制御ゲイン(フィードバックゲイン)を大きくするようにしても良い。これにより、がた発生時におけるWGV開度変化の遅れが解消できる。また、過渡応答性が向上する。
上記実施の形態では、ウエストゲートバルブ駆動機構として電動アクチュエータを用いたが、この構成に限定されず、他の構成の駆動機構を採用することも可能である。例えば、ギア部材以外の構成からなる機械的な結合部分を有する駆動機構を採用するようにしても良い。これには、従来技術で説明したダイアフラム式のアクチュエータも含まれる。かかる場合においても、ウエストゲートバルブ駆動機構における機械的な結合部分で部材間の隙間(遊び)が存在したり、経時変化に伴うがた等が発生したりすると、ウエストゲートバルブの動作遅れによりWGV開度制御の制御精度が悪化するおそれがあるが、そうした問題が本発明の適用により解消される。要は、機械的な結合部分を持った駆動機構であれば、本発明の適用により既述の優れた効果を得ることができる。
10…エンジン、11…吸気管、24…排気管、30…ターボチャージャ、31…コンプレッサインペラ、32…タービンホイール、36…バイパス通路、37…ウエストゲートバルブ、41…ロッド、42…WGVアクチュエータ、43…モータ、44…モータギア、45…平ギア、46…ウォーム、47…ヘリカルギア、50…WGV開度センサ、60…ECU。

Claims (6)

  1. 排気タービン及び吸気コンプレッサを有してなるターボチャージャと、前記排気タービンを迂回する通路に設けられ該通路の開口面積を可変とするウエストゲートバルブと、機械的な結合部分を有するウエストゲートバルブ駆動機構とを備えた内燃機関に適用され、
    所定の制御周期で前記ウエストゲートバルブの開度を制御する制御手段と、
    前記駆動機構における機械的な結合部分でがたが発生したか否かを判定するがた判定手段と、
    前記がた判定手段によりがた発生が判定された場合に、前記制御手段による制御周期を短縮する制御周期短縮手段と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記ウエストゲートバルブの目標開度を設定し、その目標開度に実開度を一致させるようフィードバック制御を実施するウエストゲートバルブ制御装置であって、
    前記がた判定手段は、前記目標開度の変化に対する実開度の変化に基づいて前記がたの発生を判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置。
  3. 前記がた判定手段は、前記内燃機関の定常運転時において、ウエストゲートバルブ開度の変動量が所定値よりも大きくなった場合に前記がたが発生したと判定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置。
  4. 前記がた判定手段により前記がたの発生が判定された場合に、前記制御手段の制御ゲインを大きくすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置。
  5. 前記制御周期短縮手段により前記制御周期を短縮した後、所定期間の経過時点で当該制御周期を元の周期に戻すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置。
  6. 前記制御周期短縮手段により前記制御周期を短縮した後、前記ウエストゲートバルブの開度が安定した時点で当該制御周期を元の周期に戻すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の内燃機関のウエストゲートバルブ制御装置。
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