JP2010006642A - 摺動部材、弁体およびフォーセットバルブ - Google Patents
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Abstract
【課題】 摺動部材およびこれを用いた弁体およびフォーセットバルブの摩擦係数を小さくする。
【解決手段】 互いに摺動し合うための第1摺動体2aおよび第2摺動体2bを備えた摺動部材30であって、第1摺動体2aおよび第2摺動体2bのそれぞれの摺動面が、多数の開口を有し気孔率15%以下の炭化珪素を主成分とするセラミック体からなり、多数の開口のうち円相当径が15μmを超える開口を対象とした第1摺動体2aと第2摺動体2bの開口面積比率の差が0.1〜12%である摺動部材とする。
【選択図】 図1
【解決手段】 互いに摺動し合うための第1摺動体2aおよび第2摺動体2bを備えた摺動部材30であって、第1摺動体2aおよび第2摺動体2bのそれぞれの摺動面が、多数の開口を有し気孔率15%以下の炭化珪素を主成分とするセラミック体からなり、多数の開口のうち円相当径が15μmを超える開口を対象とした第1摺動体2aと第2摺動体2bの開口面積比率の差が0.1〜12%である摺動部材とする。
【選択図】 図1
Description
本発明は、摺動部材、弁体およびフォーセットバルブに関する。
炭化珪素からなる摺動部材は、水栓バルブなどのフォーセットバルブの弁体として用いられている。例えば、メカニカルシール用部材は、炭化珪素からなる摺動部材の1つである。
特許文献1には、2〜12容量%の範囲の調節された気孔率を含み、その気孔が一般に球形状で実質的に焼結体中を均一に分布している。そして、平均直径50〜500μである炭化珪素焼結体と、この炭化珪素焼結体を含むメカニカルシール用部材とが開示されている。
特許文献2には、湯水混合栓が開示されている。この湯水混合栓は、少なくとも摺接面が多孔質炭化珪素焼結体の空孔内表面に撥水剤層を有する。そして湯水混合栓は、平均気孔径が5μm以下の複合体からなる一方の弁体と、少なくとも摺接面が緻密質セラミック焼結体からなる他方の弁体と、を有する。この複合体の気孔率は5〜20%であることが記載されている。
特開平7−33550号公報
特開平9−159035号公報
摺動部材は、互いに摺動する2つの部材の摺動時における摩擦係数が小さいことが求められている。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、摩擦係数を小さくすることができる摺動部材、弁体およびフォーセットバルブを提供することにある。
本発明の摺動部材は、互いに摺動し合うための第1摺動体および第2摺動体を備えた摺動部材であって、前記第1摺動体および前記第2摺動体のそれぞれの摺動面が、複数の開口を有し気孔率15%以下の炭化珪素を主成分とするセラミック体からなり、前記複数の開口のうち円相当径が15μmを超える開口を対象とした前記第1摺動体と前記第2摺動体の開口面積比率の差が0.1〜12%であることを特徴とする。
また、本発明の弁体は、上記摺動部材も用いたことを特徴とする。
さらに、本発明のフォーセットバルブは上記弁体を用いたことを特徴とする。
本発明の摺動部材、弁体およびフォーセットバルブによれば、摩擦係数を小さくすることができる。
以下、本発明に係る最良の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、摺動部材30は、互いに摺動し合うための第1摺動体10および第2摺動体20を備え、第1摺動体10の摺動面(第2摺動体20に対面する面)4aに多数の開口6、第2摺動体20の摺動面(第2摺動体20に対面する面)4bに多数の開口8を有する。第1摺動体10、第2摺動体20は、いずれも気孔率15%以下の炭化珪素を主成分とするセラミック体2a,2bからなり、多数の開口6,8のうち円相当径が15μmを超える開口を対象とした第1摺動体10と第2摺動体20の開口面積比率の差が0.1〜12%である。
次に、図2〜4について説明する。ここで、開口面積比率を0.1〜12%に設定できる場合には、図2(b)および図4(a)に示すように、図2(b)の第2摺動部材20を、図4(a)の第1摺動体10として用いることができる。
第1摺動体10および第2摺動体20の気孔率は、閉気孔(閉じた空間からなる、気孔または空隙)と開気孔(外部空間に向かって開いている箇所を有する、気孔または空隙)をあわせた気孔の気孔率である。気孔率が15%以下の摺動部材30は、各摺動体に連通気孔(摺動体の摺動面からこの摺動面に対向する面へつながっている気孔)が無いので、各摺動体の摺動面から水等の流体が浸透しない。このため、摺動面4a,4bが高い気密性を保持した状態で、摺動部材30を摺動させることができる。
第1摺動体10および第2摺動体20を炭化珪素を主成分としたのは、摩擦抵抗を小さくできるセラミックス2a、2bだからである。炭化珪素が主成分であるとは、セラミック体2a,2bの50質量%以上が炭化珪素からなることをいう。より好ましくは、セラミック体2a、2bの90質量%以上が炭化珪素からなる。この炭化珪素は、α−炭化珪素とすることにより、摩擦抵抗を小さくすることができる。
第1摺動体10の摺動面4aは、平面視した場合、多数の開口6を有している。これら開口6は、円相当径が15μmを超える開口6aと、円相当径が15μm以下の開口6bとからなる。開口6aは、単独で存在する略円形状の開口6a1と、2つの開口6a1がつながった複合開口6a1を有している。開口6bは、略円形状の開口6b1と、円形または略円形でない開口6b2からなる。図示しないが、開口6a2は、円相当径が15μm以上であれば、開口6a1と6b1がつながったもの、開口6a1と6b2がつながったもの、または、開口6a1,6b1および6b2がつながったものでもよい。
第2摺動体20の摺動面4bは、平面視した場合、多数の開口8を有している。円相当径が15μmを超える略円形状の開口8a1、円相当径が15μm以下の略円形状の開口8b1、円形または略円形状でない開口8b2を有している。図3(b),図4(b)に示す第2摺動体20の摺動面4bには、円相当径が15μm以上の開口は存在しない。
開口6,8のうち、円相当径が15μmを超える開口(6a1,6a2,8a1)を対象とした第1摺動体10と第2摺動体20の開口面積比率の差を0.1〜12%に設定することにより、摩擦係数を小さくすることができる。
摺動部材30は、フォーセットバルブ用の弁体として最も適した部材である。通常、弁体などの摺動部材は、摺動面に水またはアルコールなどの液体を介在させて摺動される。フォーセットバルブの場合は摺動面に水が介在する。
第1摺動体10と第2摺動体20の摩擦係数が低くなる理由は、以下のように推定される。炭化珪素(SiC)を主成分とするセラミック体は、介在する水またはアルコールなどと反応して、摺動面4a,4bに表面改質物質を生成させる。この表面改質物質は、シラノール基(−SiOH)、水和化SiO2ゲルなどであると考えられる。表面改質物質は極薄い層であると考えられる。摺動面4a,4bの間に表面改質物質が介在すると、セラミック体2a,2bの摩擦係数を十分に小さくすることができる。表面改質物質を摺動面4a,4bに介在させるには、一定の大きさ以上の開口が多数あることが必要である。この大きさが、円相当径で15μm以上であると考えられる。
また、第1摺動体10と第2摺動体20が摺動すると、摺動面4a,4bのいずれか一方の表面の微細形状が他方の微細形状に似てくる現象(いわゆる「なじみ」)が観察される。このなじみを効果的に発生できれば摩擦係数は小さくなる。摺動面の一方が他方の摺動面になじむには、表面の開口面積比率が異なっている必要がある。この開口面積比率の差が0.1〜12%である。開口面積比率の差が0.1〜12%であれば、なじみの効果を十分出すことができる。
次に、さらに好ましい実施形態について説明する。円相当径が15μm以上の開口6a1,8a1は、図示されているように、略円形であることが好ましく、開口6a2は略円形の開口が複数つながったものであることが好ましい。この理由は明確ではないが、摺動時に表面改質物質が開口6a1,8a1,6a2に入りやすく、かつ離脱しにくいので、摩擦抵抗を小さくすることができるからであると考えられる。
摺動部材30は、多数の開口6,8のうち円相当径が15μmを超える開口において、円相当径の平均値が45μm以下であることが好ましい。これにより、摩擦係数をさらに小さくすることができる。この理由は明確ではないが、表面改質物質がより効果的に開口6a1,8a1,6a2に入りやすく、かつ離脱しにくいので、摩擦抵抗を小さくすることができるからであると考えられる。
摺動部材30は、多数の開口6,8のうち円相当径が15μmを超える開口において、円相当径の最大値が78μm以下であることが好ましい。これにより、摩擦係数をさらに小さくすることができる。この理由は明確ではないが、円相当径が78μm以下であると開口に表面改質物質が偏在することが抑制されることにより、摩擦係数を十分に小さくできるからであると考えられる。
第1摺動体の摺動面と第2摺動体の摺動面との算術平均高さ(Ra)の差が0.3μm以下(ただし、前記多数の開口のうち円相当径が5μmを超える開口を除く。)である摺動部材は、さらに摩擦係数を低くすることができる。この理由は明確ではないが、先に述べた「なじみ」の効果を高めることができるからであると考えられる。
摺動部材30の各特性の測定方法について説明する。気孔率は、第1摺動体10、第2摺動体20、またはこれらを適当な大きさに加工したサンプルを用いて、アルキメデス法により測定する。
主成分は、第1摺動体10および第2摺動体20をX線回折により測定し、主結晶相が炭化珪素であることを確認することにより、主成分を炭化珪素とみなす。主結晶相が炭化珪素であるとは、最も大きなX線回折ピークが炭化珪素に帰属することをいう。さらに、ICP発光分光分析により、珪素と炭素の合計含有量が、50質量%以上あることによっても、主成分が炭化珪素であることを確認することができる。
開口の円相当径は下記式(1)により算出される。開口の円相当径(φ)とは、開口部を画像解析により面積の等しい円C(図5を参照)に置き換えた場合、この円の直径Dであり、下記式(1)に示すように定義される。
開口の円相当径(φ)=(4×S/π)1/2・・・(1)
ただし、 π:円周率(=3.14とみなす)
S:開口の面積
式(1)で示される円相当径(φ)は、次のように測定することが好ましいが、円相当径を正確に測定できる方法であれば他の方法で測定してもよい。下記の方法により円相当径の平均値、最大値などを求めることができる。測定面は、摺動面4a,4bであるが、これらの面が鏡面(算術平均高さで0.05μm以下)でない場合は、鏡面に加工してから測定する。
<第1の測定方法>
測定面を工業顕微鏡、レーザ顕微鏡またはデジタルマイクロスコープなどにより撮影し、それぞれの開口の円相当径をソフトウェア解析して計算する。例えば、レーザ顕微鏡としては、キーエンス株式会社のカラー3Dレーザ顕微鏡VK−8700、VK−9700、オリンパス株式会社の走査型共焦点レーザ顕微鏡LEXT OLS3100またはナノサーチ顕微鏡LEXT OLS3500等を用いることができる。ここで、15μm以下の開口部を測定の対象外とする。
<第2の測定方法>
工業顕微鏡を用いて、倍率を50倍とし、測定面を撮影して得られた画像を、画像解析ソフトを用いて解析することにより求めることができる。画像解析ソフトとしては、例えば、「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用い、粒子解析という手法を適用する。ここで、15μm以下の開口部を測定の対象外とする。
ただし、 π:円周率(=3.14とみなす)
S:開口の面積
式(1)で示される円相当径(φ)は、次のように測定することが好ましいが、円相当径を正確に測定できる方法であれば他の方法で測定してもよい。下記の方法により円相当径の平均値、最大値などを求めることができる。測定面は、摺動面4a,4bであるが、これらの面が鏡面(算術平均高さで0.05μm以下)でない場合は、鏡面に加工してから測定する。
<第1の測定方法>
測定面を工業顕微鏡、レーザ顕微鏡またはデジタルマイクロスコープなどにより撮影し、それぞれの開口の円相当径をソフトウェア解析して計算する。例えば、レーザ顕微鏡としては、キーエンス株式会社のカラー3Dレーザ顕微鏡VK−8700、VK−9700、オリンパス株式会社の走査型共焦点レーザ顕微鏡LEXT OLS3100またはナノサーチ顕微鏡LEXT OLS3500等を用いることができる。ここで、15μm以下の開口部を測定の対象外とする。
<第2の測定方法>
工業顕微鏡を用いて、倍率を50倍とし、測定面を撮影して得られた画像を、画像解析ソフトを用いて解析することにより求めることができる。画像解析ソフトとしては、例えば、「A像くん」(登録商標、旭化成エンジニアリング(株)製)を用い、粒子解析という手法を適用する。ここで、15μm以下の開口部を測定の対象外とする。
開口面積比率の差は、摺動部材10の開口面積比率と、摺動部材20の開口面積比率の差の絶対値である。
算術平均粗さRaは、次のように測定する。5μm以下の開口を測定の対象外として、キーエンス株式会社のカラー3Dレーザ顕微鏡VK−8700、VK−9700またはオリンパス株式会社の走査型共焦点レーザ顕微鏡LEXT OLS3100などのレーザ顕微鏡を用いて測定することが好ましい。接触式の測定機の場合、円相当径が15μm以下の開口と15μmよりも大きい開口の判別が困難なため、接触式の測定機は用いない方が好ましい。
摩擦係数は、一例を挙げると、次のようにして測定する。摺動部材30を水の入った恒温槽に埋没させる。水温は例えば22〜26℃に設定する。摺動部材2a,2bを当接させた状態で、バネ等を用いて摺動面に100N程度の荷重を印加する。摩擦運動として第1摺動体または第2摺動体を往復運動させる(この往復運動は一定の直線方向においてでもよい)。往復運動は、最大速度1mm/秒程度で1往復10秒程度の一定間隔とし、サイン波を用いた変速運動を数時間継続する。摩擦係数は、1000回/秒程度の分解能で検知可能な測定機を用い、例えば30分毎の一定間隔で測定する。往復回数は、合計で数千回〜数万回である。
次に、摺動部材30を構成する第1摺動体10、第2摺動体20の製造方法を説明する。第1摺動体10または第2摺動体のうち少なくとも一方は、以下の方法により製造する。
炭化珪素粉末と、シリコーンビーズ、ポリスチレンおよびポリアクリルースチレンの少なくとも1種からなる懸濁重合された非架橋性の樹脂ビーズからなる気孔形成剤と、この気孔形成剤を分散させる気孔分散剤と、水と、必要に応じてセラミックスの粉末を分散させる分散剤とを、ボールミルまたはビーズミルで混合してスラリーとする。このスラリーに焼結助剤および成形助剤としてバインダーを添加し、混合した後、噴霧乾燥することで顆粒が得られる。大部分の顆粒には気孔形成剤が内包された状態となる。焼結助剤は酸化アルミニウム粉末とイットリア等の希土類酸化物粉末とを用いることが好ましい。
このような気孔形成剤は、その圧縮強度が1.2MPa以下と低い。このため、成形工程で加圧方向に容易に塑性変形して、弾性回復に伴って発生しやすいマイクロクラックの発生を未然に抑えることができるという利点を有している。この気孔形成剤は、加熱により熱分解または消失し、摺動面に開口を形成する。
第1の製造方法において、気孔分散剤を用いることが重要である。摺動部材30には気孔形成剤が焼失して形成された焼失性気孔である開口部6a1,6a2,8a1,8b1が存在する。
しかしながら、この気孔形成剤は、疎水性であることから、気孔分散剤が存在することで、凝集しにくくなる。これにより、摺動面上で開口同士が連結して大きな開口が発生することが低減される。すなわち、添加した気孔分散剤は気孔形成剤に吸着することにより、気孔形成剤がスラリー中に容易に湿潤し浸透するので、気孔形成剤がスラリー中で凝集しにくくなり、スラリー中に分散する。
気孔分散剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩またはリン酸エステル塩等のアニオン界面活性剤が好ましい。アニオン界面活性剤が気孔形成剤に吸着することで気孔形成剤はスラリー中に容易に湿潤し、浸透する。さらにアニオン界面活性剤が有する親水基の電荷反発により、気孔形成剤の再凝集がさらに抑制される。このため、気孔形成剤がスラリー中に凝集しにくくなり、十分に分散することができる。アニオン界面活性剤は、気孔形成剤をスラリーに湿潤させ、浸透させる効果が高い。
次いで、顆粒を所定の成形型に充填し、成形圧力49〜147MPaの範囲で適宜選択される成形圧力で球状に成形して成形体を得る。
成形体を窒素雰囲気中、温度450〜650℃、保持時間2〜10時間で脱脂して、脱脂体とする。この脱脂体を焼成炉に入れ、アルゴンガスの減圧雰囲気中、温度1800〜2100℃、保持時間3〜5時間で保持し、焼成することにより炭化珪素質焼結体とすることができる。
得られた焼結体を所望の形状に加工するとともに、摺動面を平滑にして第1摺動体10,第2摺動体20を得ることができる。
第1摺動体10と第2摺動体20の気孔率、開口の円相当径の平均値および円相当径の最大値を上記範囲にするためには、次の方法を用いることができる。
摺動部材30の気孔率を15%以下とするためには、気孔形成剤の添加量を、炭化珪素粉末と焼結助剤の合計100質量%に対して、0.1質量%以上4.1質量%以下とする。また、気孔分散剤を気孔形成剤100質量%に対し0.1質量%以上添加し、焼成温度を1800〜2100℃に設定する。
第1摺動体2a、第2摺動体2bは、多数の開口6,8のうち円相当径が15μmを超える開口6a1,6a2,8a1を対象とした第1摺動体2aと第2摺動体2bの開口面積比率の差が0.1〜12%になる部材から選択する。
多数の開口6,8のうち円相当径が15μmを超える開口6a1,6a2,8a1において、円相当径の平均値が45μm以下である摺動部材を製造するためには、気孔形成剤の平均粒径を27μm以下にする。円相当径の平均値は、気孔形成剤の粒径が大きいほど、また気孔形成剤の添加量が多いほど、大きくなる傾向がある。気孔形成剤の平均粒径が同程度でも、気孔形成剤の添加量が多いと、15μmを超える開口の円相当径の平均値が大きくなる場合がある。
円相当径が15μmを超える開口6a1,6a2,8a1において、円相当径の最大値が78μm以下である摺動部材を製造するためには、気孔形成剤の最大粒径を70μm以下にする。円相当径の最大値は、気孔形成剤の最大粒径が大きいほど大きくなる傾向がある。また、気孔形成剤の添加量が多いほど、円相当径の最大値が大きくなる傾向がある。
第2摺動体20は、気孔形成剤を添加しない方法によっても製造することができる。この方法においては、気孔形成剤を添加しない点以外は、上記の製造方法と同じ方法によって製造することができる。
第1摺動体10の摺動面4aと第2摺動体20の摺動面4との算術平均高さ(Ra)の差が0.3μm以下(ただし、複数の開口のうち円相当径が5μmを超える開口を除く。)である摺動部材30を製造するには、摺動面4a,4bの研磨条件を変えればよい。
図6に示すように、フォーセットバルブ40は、互いの摺動面42a,44aを当接し摺動させる基板状の固定弁体42と回転弁体44とを備えている。固定弁体42、回転弁体44の一方が第1摺動体10、他方が第2摺動体からなる。
固定弁体42は、樹脂ケース(図示しない)に固定され、可動弁体44は樹脂ケースの内部で、固定弁体42上で可動するように構成されている。固定弁体42,可動弁体44内にはそれぞれ厚み方向に流体通路42b,44bが形成され、双方の流体通路42b,44bは、摺動面42a,44a上で連結している。
可動弁体44にはレバー46が固定され、このレバー46を上下方向あるいは回転方向に動かすことにより可動弁体18は可動する。
図6(a)に示すように、流体通路42b,44bが開いた状態では、矢印方向から水,湯水等の流体が流体通路42b,44bに順次流れ、フォーセットバルブ40に接続された蛇口(図示しない)から流体が吐出する。
他方、図6(b)に示すように、レバー46で可動弁体44を上下方向のいずれかに動かすことによって流体通路42b,44b間を閉ざすことができ、蛇口からの流体の吐出を制止することができる。
可動弁体44を回転方向に動かすことによって、流体通路42b,44bが連結する端面の面積が調整されるので、蛇口から吐出する流体の流量を調整することができる。
本実施形態のフォーセットバルブ40は、固定弁体42と回転弁体44との摩擦係数が小さな本実施形態の摺動部材を用いているため、長期信頼性が高い。
炭化珪素粉末に、酸化アルミニウム粉末とイットリア粉末とを焼結助剤として添加した。また、ポリスチレンからなる懸濁重合された非架橋性の樹脂ビーズを気孔形成剤として添加した。ここで、気孔形成剤は表1に示す最大径および平均径の気孔形成剤を用い、表1に示す添加量とした。さらに、気孔分散剤としてポリカルボン酸ナトリウムを、気孔形成剤100質量%に対して0.2質量%添加して、調合原料とした。
この調合原料をボールミルに投入した後、48時間混合してスラリーとした。このスラリーに成形助剤としてバインダーを添加し、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径80μmの炭化珪素の顆粒を作製した。
この顆粒を成形型に充填し、厚み方向に98MPaの圧力で加圧、成形して円板形状の成形体とした。得られた成形体は窒素雰囲気中、20時間で昇温し、600℃で5時間保持後、自然冷却して脱脂し、脱脂体とした。
次に、脱脂体を2030℃にて5時間保持して焼成することにより、板形状の炭化珪素質焼結体を得た。そして、各炭化珪素質焼結体の表面を精密研磨し、直径30mm、厚み3mmの第1摺動体10、直径20mm、厚み3mmの第2摺動体20の各一組の摺動部材30からなる試料No.1〜18を得た。
得られた試料の各特性を次のようにして測定、計算した。
<開口の円相当径>
測定面をキーエンス株式会社のカラー3Dレーザ顕微鏡VK−8700により撮影し、それぞれの開口の円相当径の平均値、最大値をソフトウェア解析して計算した。ここで、15μm以下の開口は測定の対象外とした。
<開口面積比率の差>
摺動部材10の開口面積比率と、摺動部材20の開口面積比率との差の絶対値である。
<算術平均高さ(Ra)>
円相当径が5μm以下の開口を対象外とし、キーエンス株式会社のカラー3Dレーザ顕微鏡VK−8700を用いてRaを測定した。
<開口の円相当径>
測定面をキーエンス株式会社のカラー3Dレーザ顕微鏡VK−8700により撮影し、それぞれの開口の円相当径の平均値、最大値をソフトウェア解析して計算した。ここで、15μm以下の開口は測定の対象外とした。
<開口面積比率の差>
摺動部材10の開口面積比率と、摺動部材20の開口面積比率との差の絶対値である。
<算術平均高さ(Ra)>
円相当径が5μm以下の開口を対象外とし、キーエンス株式会社のカラー3Dレーザ顕微鏡VK−8700を用いてRaを測定した。
摩擦係数は、次のようにして測定した。摺動部材30を22〜26℃に設定された水の入った恒温槽に埋没させた。摺動部材2a,2bを当接させた状態で、バネを用いて摺動面に垂直方向に100Nの荷重を印加した。摩擦運動として第1摺動体または第2摺動体を往復運動させた。往復運動は、最大速度1mm/秒程度で1往復10秒程度の一定間隔とし、サイン波を用いた変速運動を6継続した。摩擦係数は、1000/秒の分解能を有するサンプリング間隔で検知し、30分毎の一定間隔で測定した。往復回数は、合計で約2880回である。表1に示した摩擦係数は、摺動開始後2時間〜6時間の平均値である。摩擦係数は、摩擦係数は、摩擦力F÷荷重(100N)により計算した。
表1に示す条件以外は上記例と同様にして、試料No.19〜22を作製し、上記実施例と同様にして評価した。
なお、表1中における小文字vは焼成前(スラリー)であり、Vは焼成後を示し、v1,V1は第1摺動体を示し、v2,V2は第2摺動体を示す。
表1に示すように、試料No.1〜18は、摩擦係数が0.09〜0.26と小さかった。特に、円相当径の平均値が45μm以下、円相当径の最大値が78μm以下の試料No.1〜16は、摩擦係数が0.09〜0.21以下と小さかった。
これに対して、気孔率が15%を超えた試料No.19,20の摩擦係数は0.42,0.46と大きかった。また、開口面積比率の差が0%の試料No.21の摩擦係数は0.40、開口面積比率の差が12.6%の試料No.22の摩擦係数は0.41と大きかった。
次に、特開平9−159035号公報に記載されている内容を参考にして、次のようにして試料No.23(表1に記載しない)を作製した。
第1摺動体として、直径20mm、厚み3mm、アルミナ純度96質量%、密度3.75g/cm3の緻密質アルミナ焼結体(気孔率0.05体積%)を作製した。
平均粒径が0.28μmでβ型結晶よりなる炭化珪素粉末と、焼結助剤として酸化アルミニウム粉末およびイットリア粉末とを出発原料として用いた。出発原料に、水とバンダーを添加し、混合した後、噴霧乾燥することにより平均粒径80μmの炭化珪素の顆粒を作製した。この顆粒を試料No.1〜18と同様の条件にして成形した。そして、アルゴンガス中、1800℃で3時間、焼成して炭化珪素質焼結体を得た。得られた炭化珪素質焼結体に、平均粒径が0.14μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子を60質量%分散させた懸濁液に真空下で浸漬した。次いで、400℃の温度でポリテトラフルオロエチレンを焼き付けて、撥水剤層をその表面に有する第2摺動体を作製した。この第2摺動体は、平均気孔径が2μm、気孔率が16%であった。
緻密質アルミナ焼結体からなる第1摺動体と、撥水剤層を有する第2摺動体とを用いて、実施例と同様に摩擦運動を行い、摩擦係数を測定した。その結果、試料No.23は摩擦係数が0.38と大きかった。
2a:第1摺動体
2b:第2摺動体
4a,4b,42a,44a:摺動面
6a1,6a2,6b1,6b2,6a,6b,6:第1摺動体の開口
8a1,8b1,8b2,8a,8:第2摺動体の開口
10:第1摺動体
20:第2摺動体
30:摺動部材
40:フォーセットバルブ
42:固定弁体
44:回転弁体
42b,44b:流体通路
46:レバー
2b:第2摺動体
4a,4b,42a,44a:摺動面
6a1,6a2,6b1,6b2,6a,6b,6:第1摺動体の開口
8a1,8b1,8b2,8a,8:第2摺動体の開口
10:第1摺動体
20:第2摺動体
30:摺動部材
40:フォーセットバルブ
42:固定弁体
44:回転弁体
42b,44b:流体通路
46:レバー
Claims (6)
- 互いに摺動し合うための第1摺動体および第2摺動体を備えた摺動部材であって、前記第1摺動体および前記第2摺動体のそれぞれの摺動面が、複数の開口を有し気孔率15%以下の炭化珪素を主成分とするセラミックスからなり、前記複数の開口のうち円相当径が15μmを超える開口を対象とした前記第1摺動体と前記第2摺動体の開口面積比率の差が0.1〜12%であることを特徴とする摺動部材。
- 前記複数の開口のうち円相当径が15μmを超える開口において、円相当径の平均値が45μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の摺動部材。
- 前記複数の開口のうち円相当径が15μmを超える開口において、円相当径の最大値が78μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の摺動部材。
- 前記第1摺動体の摺動面と前記第2摺動体の摺動面との算術平均高さ(Ra)の差が0.3μm以下(ただし、前記多数の開口のうち円相当径が5μmを超える開口を除く。)であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の摺動部材。
- 請求項1乃至4のいずれかに記載の摺動部材を用いたことを特徴とする弁体。
- 請求項5に記載の弁体を用いたことを特徴とするフォーセットバルブ。
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JP2008168146A JP2010006642A (ja) | 2008-06-27 | 2008-06-27 | 摺動部材、弁体およびフォーセットバルブ |
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- 2008-06-27 JP JP2008168146A patent/JP2010006642A/ja active Pending
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