JP2010138038A - 窒化珪素系セラミックスの被接合部材同士を接合する方法 - Google Patents

窒化珪素系セラミックスの被接合部材同士を接合する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】接合部分の欠陥が有意に抑制されるとともに、比較的均質な接合体を得ることが可能な窒化珪素系セラミックス部材の接合方法。
【解決手段】本発明による方法は、(a)シリコン粒子を含む第1の原料を調製するステップと、(b)第1の原料から成形体を形成するステップと、(c)窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に前記成形体を保持し、該成形体中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップと、(d)第1の原料と同様の第2の原料を調製するステップと、(e)第2の原料からスラリーを調製するステップと、(f)後に接合材が形成される前記被接合部材同士の隙間に、前記スラリーを注入して、接合材を形成させるステップと、(g)ステップ(c)と同様の反応焼結処理により、前記接合材中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップと、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、窒化珪素を含むセラミック材料の接合方法に関する。
窒化珪素セラミックス材料は、金属に比べて耐熱性、耐食性、耐摩耗性等に優れることから、既に各種産業分野において幅広く使用されている。
一般に、窒化珪素セラミックス製品は、大別して、2種類の方法により製作される。
第1の方法は、原材料として窒化珪素粉末を用いる方法である。この方法では、まず、窒化珪素粉末、あるいはそれに焼結助剤を加えた混合物から、成形体が製作される。さらに成形方法に応じて、各種溶媒、結合剤および/または分散剤が加えられる場合もある。成形体の製作方法としては、金型プレス法、冷間静水圧加圧法、押出法、射出成形法、およびスリップキャスト法等が使用される。例えば、冷間静水圧加圧法は、CIP法とも呼ばれ、原料粉末を充填したゴム型を、圧力容器中に配置し、静水圧を加えることにより、成形体を得る方法である。また、スリップキャスト法では、原料粉末を含むスラリーを石膏型に注入して、水分を吸引させることにより、スラリーが固化され、成形体を得ることができる。次に、いずれかの方法で形成された成形体を焼結処理することにより、窒化珪素セラミックス製品が得られる。一般に、焼結温度は、約1600℃〜2000℃の範囲である。
第2の方法は、原材料としてシリコン粉末を用いる方法である。この方法においても、前述の方法と同様の方法で、成形体が作製される。ただし、この方法の場合、シリコン粉末を窒化珪素に転化させる処理、いわゆる「反応焼結処理」が必要となる。通常の場合、反応焼結処理は、シリコン粉末を含む成形体を、窒素雰囲気中で約1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に加熱することにより行われる。さらに、必要な場合、焼結体の強度向上のため、反応焼結処理の後、約1600℃〜2000℃の範囲で、後焼結処理が行われる。
なお、前述のような窒化珪素セラミックスの優れた特性は、逆に生産性の点、特に加工性の面では、大きな問題となる。特に、窒化珪素セラミックス製品は、複雑形状化および/または大型化が難しいという問題がある。
そこで、2つ以上の窒化珪素セラミックス部材同士を、接合材を介して接合することにより、製品の複雑形状化および/または大型化を実現することが検討されている。
例えば、特許文献1には、窒化珪素とは異なる材料系ではあるが、アルミナおよび窒化アルミニウム等の系において、予め焼結温度以下の温度で仮焼したセラミックス部品と、他の仮焼したセラミックス部品との間に、これらの部品と同じ焼結温度で焼結し、同じ収縮率をもち、かつ焼結後の熱膨張率がこれらのセラミックス部品とほぼ等しくなるようなセラミック粉末を挟んで、2つのセラミックス部品を圧接した状態で焼結することにより、セラミックス部品同士を接合する方法が記載されている。
また、被接合部材となる2つのセラミックス焼結体の間に、これらのセラミックス構成金属を挟んでセラミックス焼結体の加熱接合を行い、その後、この金属を酸化、炭化、窒化させることにより、セラミックス焼結体を接合する方法が提案されている(特許文献2)。
特開平11−43379号公報 特開平6−115009号公報
しかしながら、前述の特許文献1に記載の方法は、反応焼結処理によって製作される窒化珪素セラミックス製品を想定した方法ではないため、前述の第2の方法、すなわち、シリコン粉末を出発原材料とし、これから窒化珪素セラミックス製品を製作する方法には、適用することができない。また、この方法では、接合の際に、2つのセラミックス部品を相互に圧接する必要があり、このような方法を大型製品の製作に適用しようとした場合、大型の圧接装置(プレス機等)が必要となってしまうという問題がある。
一方、前述の特許文献2に記載の方法では、例えば、被接合セラミックス部材の間に介在される金属の形態として、板状の材料を想定した場合、この板状材料を高温で反応させて、被接合セラミックス部材と同等の特性、例えば材料組成、緻密性(密度)、ポロシティ、および機械的特性等を有する接合部分を得ることは、極めて難しいという問題がある。この場合、最終的に、被接合部材と接合材の間で、特性が異なる接合体が得られる。従って、このような方法では、製作後の接合体において、被接合部材と接合材の接合界面に欠陥が生じる危険性が高まる。また、完成後の接合体に、そのような特性の不均一性が存在する場合、局部的に強度が低下し、その箇所において、ワレや損傷が生じ易くなるという問題がある。
従って、大型形状の製品に容易に適用することができ、接合部分に欠陥が生じにくく、全体的に均質な接合体を得ることが可能な、窒化珪素セラミックス部材の接合方法が要望されている。
本発明は、このような背景の下なされたものであり、本発明では、大型形状および/または複雑形状の製品にも適用することができ、接合部分の欠陥が有意に抑制されるとともに、比較的均質な接合体を得ることが可能な窒化珪素系セラミックス部材の接合方法を提供することを目的とする。
本発明では、窒化珪素系セラミックスの被接合部材同士を接合する方法であって、
(a)シリコン粒子を主成分とする第1の原料を調製するステップと、
(b)前記第1の原料から、成形体を形成するステップと、
(c)窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に、前記成形体を保持し、該成形体中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップであって、これにより窒化珪素系セラミックスの多孔質な被接合部材が得られるステップと、
(d)シリコン粒子を含む第2の原料を調製するステップであって、前記第1の原料および第2の原料に含まれるシリコン粒子の粒度分布を比較した場合、前記第2の原料に含まれるシリコン粒子の最大粒径、最頻粒径、および最頻粒径を有する粒子の割合のうちの少なくとも一つのパラメータ値は、前記第1の原料に含まれるシリコン粒子の同じパラメータ値の±20%の範囲内にある、ステップと、
(e)前記第2の原料から、スラリーを調製するステップと、
(f)後に接合材が形成される前記被接合部材同士の隙間に、前記スラリーを注入して、前記被接合部材に前記スラリー中の水分を吸収させ、前記スラリーを固化させ、接合材を形成させることにより、組立体を得るステップと、
(g)窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に、前記組立体を保持し、前記接合材中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップと、
を有し、
前記ステップ(a)〜(c)は、前記ステップ(d)〜(e)よりも前もしくは後に実施され、または前記ステップ(a)〜(c)は、前記ステップ(d)〜(e)と並列に実施される方法が提供される。
ここで、当該方法において、前記第1の原料および/または前記第2の原料は、さらに、添加物質を含んでも良い。
また、前記添加物質は、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Zr(ジルコニウム)、Yb(イッテリビウム)、Hf(ハフニウム)、Ti(チタン)、Lu(ルテニウム)、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選定された金属、または前記金属の酸化物、または前記金属の窒化物を含んでも良い。
また、当該方法において、前記第1の原料および/または前記第2の原料は、さらに、TiN(窒化チタン)、SiC(炭化珪素)、BN(窒化ホウ素)、C(カーボン)、ZrO(ジルコニア)のうちの少なくとも一つの材料を含んでも良い。
また、前記第1の原料と前記第2の原料は、実質的に同一の組成を有しても良い。
また当該方法において、前記ステップ(g)の後、さらに、
(h)得られた接合体を後焼結処理するステップを有し、
前記後焼結処理の温度は、前記ステップ(c)および前記ステップ(g)における反応焼結処理の温度よりも高く、ならびに/または
前記後焼結処理は、前記ステップ(c)および前記ステップ(g)における反応焼結処理の窒素雰囲気の圧力と同等以上の圧力の窒素雰囲気で実施されても良い。
なおこの場合、前記後焼結処理は、1〜9.5気圧の窒素雰囲気において、1600℃〜2000℃の温度範囲で実施されても良い。
また当該方法において、前記ステップ(e)で調製されるスラリーは、水と、分散剤および/または結合剤とを含んでも良い。
本発明では、大型形状および/または複雑形状の製品にも適用することができ、接合部分の欠陥が有意に抑制されるとともに、比較的均質な接合体を得ることが可能な窒化珪素系セラミックス部材の接合方法が提供される。
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明は、窒化珪素系セラミックスの被接合部材同士を接合する方法において、被接合部材および接合材に、「同様の」原料を使用し、被接合部材(正確には被接合部材用成形体)および接合材(正確には接合材用スラリーが固化したもの)に対して、「同様の」反応焼結処理を実施することにより、結果的に均質な接合体を得ることを一つの特徴とするものである。
より具体的には、本発明の方法は、
(a)シリコン粒子を主成分とする第1の原料を調製するステップと、
(b)前記第1の原料から、成形体を形成するステップと、
(c)窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に、前記成形体を保持し、該成形体中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップであって、これにより窒化珪素系セラミックスの多孔質な被接合部材が得られるステップと、
(d)前記第1の原料に含まれるシリコン粒子の粒度分布と「同様の」粒度分布を有するシリコン粒子を含む、第2の原料を調製するステップと、
(e)前記第2の原料から、スラリーを調製するステップと、
(f)後に接合材が形成される前記被接合部材同士の隙間に、前記スラリーを注入して、前記被接合部材に前記スラリー中の水分を吸収させ、前記スラリーを固化させ、接合材を形成させることにより、組立体を得るステップと、
(g)窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に、前記組立体を保持し、前記接合材中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップと、
を有する。
なお、「窒化珪素系セラミックス」と表現したのは、本発明の方法は、純粋な窒化珪素セラミックス製品に限らず、窒化珪素を主成分とするセラミックス製品にも広く適用することができるためである。すなわち、本願において、「窒化珪素系セラミックス」とは、窒化珪素を主成分とするセラミックスの総称を意味する。
また本願において、「反応焼結処理」とは、シリコン粒子を窒化させて窒化珪素を生成すると同時に、生成された窒化珪素を焼結させることにより、窒化珪素系セラミックスの焼結体を得る処理を意味する。
前述のような特徴的な構成により、本発明の方法では、以下のような効果が得られる。
(i)接合材および被接合部材は、「同様の」原料から、「同様の」反応焼結処理を経て、窒化珪素系セラミックスに転化される。
従って、最終的に得られる接合材および被接合部材において、両者の特性、例えば、組成、物性(密度、ポロシティ、熱膨張係数等)、機械的特性(強度等)、および/または化学的特性(耐薬品性、濡れ性等)等を、十分に近づけることができる。このため、本発明により得られる接合体は、従来の接合法によって得られる接合体に比べて、より均質となる。
ここで、本発明では、接合材用の第2の原料に、被接合部材用の第1の原料と「同様の」原料を使用することを特徴としており、例えば、第2の原料は、第1の原料に含まれるシリコン粒子と同様のシリコン粒子を含む。例えば、前記ステップ(d)では、第2の原料に含まれるシリコン粒子の粒径は、第1の原料に含まれるシリコン粒子の粒径と、実質的に等しくされる。一般に、シリコン粒子の粒径がほぼ等しい場合、実質的に同様の反応焼結処理を実施することにより、実質的に同等の窒化珪素系セラミックス焼結体が得られる。従って、この場合、以降の反応焼結処理を経て得られる接合材の状態を、被接合部材の状態に近づけることができる。
なお、本願において、シリコン粒子の粒度分布は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)により測定された値である。また、「シリコン粒子の粒度分布がほぼ(実質的に)等しい」とは、比較される2種類のシリコン粒子の粒度分布において、最大粒径、最頻粒径、および最頻粒径を有する粒子の割合のうちの少なくとも一つが、±20%の範囲内にある場合を言うものとする。例えば、第1の原料に含まれるシリコン粒子の最頻粒径が10μmで、第2の原料に含まれるシリコン粒子の最頻粒径が8μm〜12μmの範囲の場合、両シリコン粒子の粒度分布は、ほぼ(実質的に)等しいと言える。
前記ステップ(g)では、スラリーを固化することにより形成された接合材中のシリコン粒子を反応焼結処理するため、前記組立体は、前記ステップ(c)と同様、窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に保持される。一般に、同様のシリコン粒子を含む原料を使用して、窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度で反応焼結処理を実施した場合、実質的に同等の状態の窒化珪素系セラミックス焼結体が得られる。従って、ステップ(g)により、得られる接合材の状態を、被接合部材の状態に近づけることができる。
例えば、接合材用のスラリーは、被接合部材用の原料と実質的に同一の原料を用いて調製されても良い。また、接合材用のスラリーは、例えば、被接合部材と実質的に同一の反応焼結処理条件を用いて反応焼結処理されても良い。
(ii)本発明では、接合材の導入形態として、流動性の高いスラリーが使用される。この場合、前述のステップ(f)において、被接合部材の間の隙間にスラリーを注入した場合、スラリーに含まれる水等の液体成分は、隙間部分から、多孔質な被接合部材のポアを経由して、容易に外部に排出される。またスラリーは、ペーストとは異なり、流動性が高いため、スラリー中に含まれるシリコン粒子は、水等の液体の流動とともに、隙間中の微小空間部分を充填するように移動する。このステップにより、隙間部分には、シリコン粒子が均質かつ高充填密度で充填される。従って、最終的に、接合材の内部および接合材と非接合材の界面に、欠陥の少ない接合体を得ることができる。
(iii)前述のステップ(g)において、反応焼結処理の際には、接合材用スラリーに含まれるシリコン粒子は、液相と気相の両状態から、窒化珪素に変化する。すなわち、反応焼結処理の際、シリコン粒子の一部は、シリコン表面の酸化層(ガラス)や焼結助剤との反応等により溶融状態または半溶融状態となり、この液相が雰囲気中の窒素と反応して、窒化珪素が形成される。また、シリコン粒子の別の一部は、熱により気化し、気相状態で、雰囲気中の窒素と反応する。後者の場合、得られる窒化珪素は、接合部分のうち、液相および固相で充填されていない部分、すなわち空間部を充填するようにして、ウィスカー状に生成される。従って、反応焼結処理を介して、接合部分のシリコン粒子を窒化珪素系セラミックスに転化した場合、接合部分の空隙が埋められ、処理後には、接合材の内部および接合材と非接合材の界面に欠陥の少ない接合材を得ることができる。
(iv)本発明の方法では、被接合部材同士の接合箇所(隙間部分)にスラリーを注入することにより、隙間部分に簡単にシリコン粒子を充填することができる。接合過程には、被接合部材同士を圧接する工程は、含まれない。従って、特殊な圧接装置は不要となり、大型製品の接合にも、容易に適用することができる。同様に、複雑形状製品にも、容易に適用することができる。
(v)本発明の方法では、被接合部材の接合面に、予め特定の表面仕上げを行っておく必要はない。スラリーの流動性が高いため、被接合部材の接合面に多少の凹凸が存在しても、シリコン粒子を、接合面に均一に充填することができるからである。(従来の一般的なセラミックス部材同士の接合方法では、接合面を平滑化するなど、予め表面に特定の仕上げを実施しておく必要があることに留意する必要がある。)従って、本発明では、極めて単純な処理工程で被接合体の接合を行うことができ、処理コストが抑制される。
このように、本発明による方法では、接合材と被接合部材の間で特性の差異が小さく、接合部分に欠陥の少ない接合体を、比較的簡単に得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1には、本発明の方法を実施するための概略的なフロー図の一例を示す。
図1に示すように、本発明による方法は、被接合部材用の第1の原料を調製するステップ(S110)と、前記第1の原料を用いて、被接合部材の成形体を得るステップ(S120)と、得られた成形体を反応焼結させて、被接合部材を得るステップ(S130)と、接合材用の第2の原料を調製するステップ(S140)と、前記第2の原料を用いて、接合材用のスラリーを調製するステップ(S150)と、前記被接合部材の接合部分に、前記スラリーを注入し、固化させることにより、接合材を形成するステップ(S160)と、前記接合材を反応焼結させ、これにより、被接合部材同士が接合材を介して接合された接合体を得るステップ(S170)と、得られた接合体を後焼結処理するステップ(S180)と、を有する。
なお、ステップS140〜S150は、ステップS110〜S130の前後のいずれの段階で実施されても良く、またはステップS110〜S130と並列に実施されても良い。また、最後の接合体を後焼結処理するステップ(S180)は、省略しても良い。
以下、各ステップについて、具体的に説明する。
(ステップS110)
このステップでは、窒化珪素系セラミックスの被接合部材を製作するため、第1の原料が調製される。第1の原料は、主成分としてシリコン粉末を含む。
第1の原料は、さらに、添加物質を含んでも良い。例えば、第1の原料は、第1の原料全体の重量に対して、0.1wt%〜10wt%程度の焼結助剤を含んでも良い。通常、焼結助剤としては、金属、酸化物または窒化物等が使用される。金属焼結助剤の例は、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Zr(ジルコニウム)、Yb(イッテリビウム)、Hf(ハフニウム)、Ti(チタン)、Lu(ルテニウム)、およびこれらの2種以上の組み合わせ等である。酸化物および窒化物の焼結助剤の例には、前述の金属の酸化物、窒化物等がある。焼結助剤は、例えば、Y−Al、Y−Al−MgO、ZrO−Al、ZrO−Al−MgO等である。
また、第1の原料は、さらに別の添加物質として、TiN(窒化チタン)、SiC(炭化珪素)、BN(窒化ホウ素)、C(カーボン)、ZrO(ジルコニア)等を含んでも良い。これらの添加物質を添加することにより、最終的に得られる窒化珪素系セラミックスの被接合部材に、各種特性を付与することができる。例えば、第1の原料にTiNを添加することにより、被接合部材の導電性を向上させることができる。また第1の原料にSiC(炭化珪素)を添加することにより、被接合部材の耐酸化性、強度、靭性を向上させることができる。また、第1の原料にBN(窒化ホウ素)を添加することにより、被接合部材の耐熱衝撃性を向上させたり、金属溶湯の付着を防止させたりすることができる。さらに第1の原料にC(カーボン)を添加することにより、被接合部材の耐摩耗性や導電性を高めることができる。また、第1の原料にZrO(ジルコニア)を添加することにより、被接合部材の靭性を高めることができる。これらの添加物質は、2種類以上添加されても良い。これらの添加物質の添加量は、第1の原料全体の重量に対して、5wt%〜30wt%程度である。
なお、ここに記載された物質は、単なる一例であって、この他にも様々な物質を、第1の原料に添加しても良いことは、当業者には明らかであろう。
これらの成分を十分に混合することにより、第1の原料が得られる。なお、混合(撹拌)の際には、アルコールまたは水等の適当な液体を添加しても良い。その場合、混合(撹拌)後に、適当な乾燥手段(乾燥機の使用、スプレードライ等)により、液体分の除去を行うことにより、混合粉末が得られる。その他、次のステップ(S120)における成形法に応じて、各種粉末処理を行っても良い。
(ステップS120)
次に、ステップS110で得られた第1の原料を用いて、被接合部材用の成形体が形成される。この成形方法は、特に限られず、いかなる成形方法を採用しても良い。例えば、成形方法は、金型プレス法、冷間静水圧加圧法(CIP法)、押出法、射出成形法、またはスリップキャスト法等であっても良い。
(ステップS130)
次に、前記成形体を用いて、反応焼結処理(以下、「第1の反応焼結処理」という)が行われる。第1の反応焼結処理の条件は、特に限られず、成形体に含まれるシリコンが窒化珪素に変化する条件であれば、いかなる条件を採用しても良い。一般には、前記成形体を、1気圧の窒素雰囲気中、1100℃〜1450℃の温度範囲に保持することにより、反応焼結が生じ、シリコン粒子が窒化珪素に変化する。
なお本発明では、反応焼結を実施した窒化ケイ素系セラミックスを、被接合部材として使用している。これは、反応焼結を実施してない成形体では、シリコン粒子同士の結合が弱く、以降のステップS160において、被接合部材同士の隙間にスラリーを注入した際に、被接合部材が濡れて膨張、崩壊したり、乾燥時の収縮により、被接合部材にき裂が発生したりする危険性があるからである。これに対して、反応焼結を実施した窒化ケイ素系セラミックスを、被接合部材として使用した場合、窒化ケイ素粒子同士が強固に結合されているため、被接合部材が濡れや乾燥による影響を受けることはない。
この処理により、窒化珪素系セラミックスの多孔質被接合部材が得られる。
(ステップS140)
このステップでは、後に接合材となる第2の原料が調製される。ここで、第2の原料には、前述の第1の原料と「同様の」原料が使用される。すなわち、第2の原料は、主成分として、前述の第1の原料と「同様の」シリコン粉末を含む。例えば、第2の原料に含まれるシリコン粒子は、前述の第1の原料に含まれるシリコン粒子の粒径と実質的に等しい粒径を有する。また、第2の原料は、さらに前述のような添加物質を含んでも良い。特に、第2の原料には、第1の原料と同じものを使用しても良い。
このような特徴により、以降のステップを経て得られる窒化珪素系セラミックスの接合材に、被接合部材と同等の特性を発現させることができる。
(ステップS150)
次に、第2の原料を用いて、接合材用のスラリーが調製される。スラリーの調製方法は、特に限られない。スラリーは、例えば、前述の第2の原料に、水を添加し、さらに分散剤および/または結合剤を加え、この混合液を十分に撹拌することにより調製される。分散剤としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリカルボン酸アンモニウム等が使用される。また、結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリルエマルジョン等が使用される。分散剤および結合剤のそれぞれの添加量は、例えば、第2の原料に対して、0.2wt%〜3wt%程度である。
得られるスラリーの粘度は、500cps以下であり、例えば、50cps〜300cpsの範囲である。従って、このスラリーは、いわゆる「ペースト」とは異なり、比較的高い流動性を有する。
(ステップS160)
次に、前記ステップS130で作製された少なくとも2つの被接合部材が所定の形状となるように、隙間を介して組み立てられ、この隙間部分に、ステップS150で調製されたスラリーが注入される。
前述のように、このステップにおいて、スラリーに含まれる液体成分は、隙間部分から、多孔質な被接合部材中に含まれる微細なポアを経由して、容易に外部に排出される。またスラリーの高流動性のため、スラリー中に含まれるシリコン粒子は、液体成分の流動とともに、空間部分を稠密に充填するように移動する。従って、このステップにより、隙間部分に、シリコン粒子を均一かつ高充填密度で充填することができる。
ここで、このようなスラリーの特徴のため、このステップを実施する前に、各被接合部材の接合面に対して、特殊な表面仕上げを行っておく必要はない。スラリーの流動性のため、接合面に多少の凹凸が存在しても、液体成分の流出の際に、シリコン粒子が接合面の凹凸を埋めるように移動し、結果的に、シリコン粒子が均一に配置されるからである。
また、本発明では、スラリーの注入により、隙間部分をスラリー成分で充填する方式であるため、隙間部分の幅には、特に制限はなく、いかなる寸法の隙間部分にも容易に適用することができるという特徴がある。
(ステップS170)
ステップS160の後、任意で、得られた組立体の乾燥処理を実施しても良い。乾燥処理は、例えば組立体を室温の大気環境下で保持することにより、実施されても良い。乾燥処理により、スラリーを注入した隙間部分から被接合部材の方に流出した水分を除去することができる。
次に、この組立体全体が、窒素雰囲気下で加熱される(接合材の反応焼結処理)。これにより、隙間部分に形成された接合材中のシリコン粒子が反応焼結して、接合材が窒化珪素系セラミックスに変化する。
このステップでの反応焼結処理(以下、「第2の反応焼結処理」という)は、第1の反応焼結処理と「同様の」条件で実施される。例えば、第2の反応焼結処理は、例えば1気圧の窒素雰囲気において、例えば1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に、組立体全体を保持することにより実施される。特に、第2の反応焼結処理の際の温度は、第1の反応焼結処理の際の温度に対して、±50℃以内の範囲にあることが好ましい。この場合、被接合部材と接合材との間に、極めて近似した焼結状態を得ることができる。
ここで、前述のように、隙間部分には、シリコン粒子が均質かつ高充填密度で充填されているため、この処理により、均質な接合材が形成される。また、被接合部材と接合材の間には、欠陥やクラックが有意に抑制された界面が生じる。
またこの接合材は、被接合部材と同様の原料を用いて、被接合部材に対して実施された反応焼結処理条件と同様の反応焼結処理条件を経て、形成されたものである。従って、隙間部分には、被接合部材と同等の特性を有する窒化珪素系セラミックスの接合材が形成される。
従って、このステップを経て得られた接合体では、被接合部材と接合材の間における特性の差異が有意に抑制され、全体的に均質な接合体が得られる。
(ステップS180)
前述の工程により、本発明の特徴を有する窒化珪素系セラミックス接合体を得ることができるが、必要な場合、ステップS170で得られた接合体を用いて、さらに、後焼結処理が実施される。この処理により、より均質で、高焼結状態の窒化珪素系セラミックス接合体を得ることができる。後焼結処理は、例えば、大気圧または加圧窒素雰囲気下、接合体を1600℃〜2000℃の温度に保持することにより行われる。窒素圧力は、例えば1気圧〜9.5気圧の範囲である。また、処理時間は、例えば、1時間〜10時間程度である。
なお当然のことながら、この後処理工程では、接合体全体が同条件で処理されるため、この処理を経ても、被接合部材と接合材の間における特性の差異が少ない状態、すなわち全体的に均質な状態は、そのまま維持される。
次に実施例により、本発明の効果をより詳しく説明する。
(実施例1)
まず、被接合部材用の原料として、粒度#600以下(平均粒径22μm)のシリコン粉末(純度98%)と、焼結助剤とをボールミルにより十分に混合後、乾燥し、混合粉末を得た。焼結助剤には、ジルコニア(ZrO)粒子(平均粒径2μm)およびスピネル(MgAl)粒子(平均粒径4μm)を使用した。各粒子は、焼結後の組成がSi−5wt%ZrO−5wt%MgAlとなるように混合した。
次に、この混合粉末を用いて、前述のCIP法により成形を行ない、2つの成形体を得た。処理圧力(静水圧)は、100MPaとした。得られた両成形体は、寸法がいずれも縦60mm×横40mm×厚さ6mm程度の板形状であった。
さらに、これらの成形体を反応焼結処理し、窒化珪素系セラミックスの多孔質板状被接合部材を得た。反応焼結処理は、1気圧の窒素雰囲気下で、成形体を室温から1450℃まで30時間かけて昇温した後、この温度に2時間保持することにより実施した。
次に、前述の混合粉末重量に対し、分散剤0.7wt%、結合剤1wt%および水35wt%を加え、十分に撹拌することにより、接合材用のスラリーを調製した。分散剤には、ポリアクリル酸アンモニウムを使用した。また結合剤には、ポリビニルアルコールを使用した。スラリーの粘度は、110cpsであり、固形分濃度は、55%であった。
次に、前述の接合材用のスラリーを用いて、以下の方法により、前述の2枚の板状被接合部材を接合した。
まず、各板状被接合部材の一つの端面(縦60mm×厚さ6mmの領域)を、表面を粗くするため、#220の研磨紙により研磨した。次に、それぞれの板状被接合部材を、研磨された端面同士が約1.5mmの隙間を介して対向するようにして、板状被接合部材よりも十分に大きな寸法のアルミナ製の台座上に配置した。次に、板状被接合部材の間の隙間部分の両端を、目留め材で目留めした後、この隙間部分に前述のスラリーを注入した。スラリーは、隙間部分が固形分で完全に充填されるまで注入した。
この状態で、得られた組立体を、大気中室温で保持し、組立体中に含まれる水分を十分に乾燥させた。
次に、この組立体を台座ごと雰囲気炉内に設置し、接合材(スラリーが固化した部分)の反応焼結処理を実施した。反応焼結処理は、1気圧の窒素雰囲気下で、組立体を室温から1450℃まで30時間かけて昇温した後、この温度に2時間保持することにより実施した。その後、組立体を室温まで冷却(炉冷)することにより、2枚の被接合部材が接合材により接合された接合体(縦60mm×横81.5mm)が得られた。
次に、得られた接合体を用いて、後焼結処理を実施した。後焼結処理は、5気圧の窒素雰囲気下で、接合体を室温から1800℃まで、3時間かけて昇温した後、この温度に8時間保持することにより実施した。
以下、このような工程を経て得られた窒化珪素系セラミックスの接合体を、「実施例1に係る接合体」と称する。
(比較例1)
被接合部材用の原料として、粒度#320以下(平均粒径4μm)の窒化珪素粉末(純度99%)と、焼結助剤とをボールミルにより混合、乾燥し、混合粉末を得た。焼結助剤には、ジルコニア(ZrO)粒子(平均粒径2μm)およびスピネル(MgAl)粒子(平均粒径4μm)を使用した。各粒子は、焼結後の組成がSi−5wt%ZrO−5wt%MgAlとなるように混合した。
次に、この混合粉末を用いて、実施例1の場合と同様、CIP法により成形を行ない、窒化珪素系の2つの成形体を得た。処理圧力(静水圧)は、100MPaとした。得られた両成形体は、寸法がいずれも縦60mm×横40mm×厚さ6mm程度の板形状であった。
さらに、これらの成形体を焼結処理(いわゆる仮焼成処理)し、多孔質板状被接合部材を得た。仮焼結処理は、1気圧の窒素雰囲気下で、成形体を室温から1300℃まで2時間かけて昇温した後、この温度に2時間保持することにより実施した。
次に、前述の混合粉末重量に対し、分散剤0.8wt%、結合剤1wt%および水35wt%を加え、十分に撹拌することにより、接合材用のスラリーを調製した。分散剤には、ポリアクリル酸アンモニウムを使用した。また結合剤には、ポリビニルアルコールを使用した。スラリーの粘度は、130cpsであり、固形分濃度は、47%であった。
次に、前述の接合材用のスラリーを用いて、以下の方法により、前述の2枚の板状被接合部材を接合した。
まず、各板状被接合部材の一つの端面(縦60mm×厚さ6mmの領域)を#220の研磨紙により研磨した。次に、それぞれの板状被接合部材を、研磨された端面同士が約1.5mmの隙間を介して対向するようにして、板状被接合部材よりも十分に大きな寸法のアルミナ製の台座上に配置した。次に、板状被接合部材の間の隙間部分の両端を、目留め材で目留めした後、この隙間部分に前述のスラリーを注入した。スラリーは、隙間部分が固形分で完全に充填されるまで注入した。
この状態で、得られた組立体を、大気中に室温で保持し、組立体中に含まれる水分を十分に乾燥させた。
次に、この組立体を台座ごと雰囲気炉内に設置し、接合材(スラリー)の焼結処理を実施した。焼結処理は、1気圧の窒素雰囲気下で、組立体を室温から1300℃まで3時間かけて昇温した後、この温度に2時間保持することにより実施した。その後、組立体を室温まで冷却(炉冷)することにより、2枚の被接合部材が接合材により接合された接合体(縦60mm×横81.5mm)が得られた。
次に、得られた接合体を用いて、後焼結処理を実施した。後焼結処理は、5気圧の窒素雰囲気下で、接合体を室温から1800℃まで、3時間かけて昇温した後、この温度に8時間保持することにより実施した。
以下、このような工程を経て得られた窒化珪素系セラミックスの接合体を、「比較例1に係る接合体」と称する。
(比較例2)
まず、被接合部材用の原料として、実施例1の場合と同様、粒度#600以下(平均粒径22μm)のシリコン粉末(純度98%)と、焼結助剤とをボールミルにより混合、乾燥し、混合粉末を得た。焼結助剤には、ジルコニア(ZrO)粒子(平均粒径2μm)およびスピネル(MgAl)粒子(平均粒径4μm)を使用した。各粒子は、焼結後の組成がSi−5wt%ZrO−5wt%MgAlとなるように混合した。
次に、この混合粉末を用いて、実施例1の場合と同様、CIP法により成形を行ない、2つの成形体を得た。処理圧力(静水圧)は、100MPaとした。得られた両成形体は、寸法がいずれも縦60mm×横40mm×厚さ6mm程度の板形状であった。
さらに、実施例1の場合と同様、これらの成形体を反応焼結処理し、窒化珪素系セラミックスの多孔質板状被接合部材を得た。反応焼結処理は、1気圧の窒素雰囲気下で、成形体を室温から1450℃まで30時間かけて昇温した後、この温度に2時間保持することにより実施した。
次に、前述の混合粉末重量に対し、結合剤1wt%、可塑剤0.5wt%および水35wt%を加え、十分に撹拌することにより、接合材用のペーストを調製した。結合剤には、ポリビニルアルコールを使用した。可塑剤には、グリセリンを使用した。ペーストの固形分濃度は、55%であり、粘度は、940cpsであった。
次に、前述の接合材用のペーストを用いて、以下の方法により、前述の2枚の板状被接合部材を接合した。
まず、各板状被接合部材の一つの端面(縦60mm×厚さ6mmの領域)を#220の研磨紙により研磨した。次に、それぞれの板状被接合部材を、研磨された端面同士が約1.5mmの隙間を介して対向するようにして、板状被接合部材よりも十分に大きな寸法のアルミナ製の台座上に配置した。次に、板状被接合部材の間の隙間部分に前述のペーストを塗布した後、直ちに両板状被接合部材を両側から相互に圧接することにより、両板状被接合部材を仮接合した。この操作により、前述の隙間(ペースト)の幅は、約70μmとなった。次に、この組立体を台座ごと雰囲気炉内に設置し、実施例1の場合と同様の条件により、接合材(ペースト)の反応焼結処理、および後焼結処理を実施した。
これにより、2枚の被接合部材が接合材により接合された接合体(縦60mm×横80mm)が得られた。以下、このような工程を経て得られた窒化珪素系セラミックスの接合体を、「比較例2に係る接合体」と称する。
(比較例3)
比較例2と同様の方法により、被接合部材同士を接合した。
ただし、この比較例3では、被接合部材のみの反応焼結処理の後、さらに、被接合部材を緻密化するため、被接合部材単独で、追加焼結処理を行った。この追加焼結処理は、5気圧の窒素雰囲気下、被接合部材を室温から1800℃まで、3時間かけて昇温した後、この温度に8時間保持することにより実施した。
なお、この比較例3では、両板状被接合部材を、ペーストを介して両側から相互に圧接した際に、隙間(ペースト)の幅は、約30μmとなった。
その他の工程および条件は、比較例2と同様である。
以下、このような工程を経て得られた窒化珪素系セラミックスの接合体を、「比較例3に係る接合体」と称する。
(各サンプルの評価試験)
実施例1および比較例1〜3に係る接合体を、接合材部分が中央部分に含まれるように切り出したサンプルを用いて、評価試験を行った。評価試験として、接合部分の顕微鏡観察、および強度測定を実施した。
顕微鏡観察は、光学顕微鏡およびSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて、接合材内部、ならびに接合材と被接合部材の界面を観察することより実施した。また、サンプルの表面に青インクを塗布してから、青インクの浸透状態を実体顕微鏡で観察した。強度測定は、JS−R1601に規定される曲げ強度試験法に準拠し、縦3mm×横4mm×長さ40mmに切り出した試験片を用いて、4点曲げ試験により実施した。
各サンプルにおける評価試験の結果を表1にまとめて示す。なお、各サンプルの強度は、4点曲げ試験の10回の平均値(平均強度)で示した。
図2には、実施例1のサンプルの接合材のSEM写真を示す。また、図3には、比較例2のサンプルにおける、強度試験後の接合材破面のSEM写真を示す。図4には、比較例3のサンプルにおける、接合材/被接合部材界面の光学顕微鏡写真を示す。さらに、図5および図6には、それぞれ、実施例1および比較例1のサンプルにおける、青インク塗布試験後の状態の一例を示す。
顕微鏡観察の結果、比較例1〜3のいずれのサンプルにおいても、接合材内部に欠陥が生じていることがわかった。また、接合材と被接合部材の界面に、欠陥が生じていることが確認された。例えば、図3から、比較例2のサンプルでは、接合材中に、多数の欠陥が含まれていることがわかる。また図4に示すように、比較例3のサンプルの場合、界面には、矢印に示す位置に多数の欠陥が生じていることがわかる。
青インクの塗布試験では、いずれのサンプルにおいても、接合材と被接合部材の界面に、青インクが進入していることが確認された。一例として、図6には、比較例1のサンプルにおける、青インク塗布試験後の状態を示した。
さらに、表1に示すように、比較例1〜3のサンプルでは、強度が170〜260MPa程度であり、いずれも十分な強度が得られていないことがわかった。特に、比較例3のサンプルでは、強度が後述する実施例1の結果の半分以下となった。
このように、シリコン粒子の反応焼結を利用しない方法(比較例1)、および反応焼結を利用する方法であっても、接合材の導入形態として、ペーストを使用した場合(比較例2、3)には、いずれの場合も、良好な接合状態を得ることができないことがわかった。
比較例1の場合は、製作工程に反応焼結過程が含まれないため、気相から窒化珪素が形成されることがなく、空間を埋めるような形態で窒化珪素を配置させることが難しく、均一な接合材が形成されなかったものと考えられる。
また、比較例2、3の場合は、ペーストの低流動性のため、隙間部分にシリコン粒子を稠密に充填することが難しく、均一な接合材が形成されなかったものと考えられる。特に、比較例3のサンプルでは、接合材の設置形態として、流動性の悪いペーストを使用した上、被接合部材が高焼結化されている。このため、ペースト中に含まれるシリコン粒子が、隙間内に均一かつ高充填密度で配置され得ず、結果的に、接合材の強度が大きく低下したものと考えられる。
これに対して、実施例1のサンプルでは、接合材内部に欠陥は認められず、接合材と被接合部材の界面には、欠陥がほとんど存在しなかった。図2には、実施例1のサンプルの接合材のSEM写真を示す。この写真から、接合材の内部および界面には、欠陥がほとんど認められないことがわかる。また接合材は、被接合部材と同質化しており、境界が不明瞭になっていることがわかる。
また、図5に示すように、青インクの塗布試験の結果、実施例1のサンプルでは、青インクは、接合材内部にほとんど浸透していないことがわかった。さらに、表1に示すように、実施例1のサンプルでは、強度が400MPaを超え、他のサンプルに比べて十分に大きな強度が得られることが確認された。
本発明は、窒化珪素系セラミックスの被接合部材同士を、接合材を介して接合する方法に利用することができる。
本発明の方法を実施するための概略的なフローの一例を示した図である。 実施例1のサンプルの接合材のSEM写真である。 比較例2のサンプルにおける接合材の破断面を示したSEM写真である。 比較例3のサンプルにおける接合材/被接合部材界面の光学顕微鏡写真である。 実施例1のサンプルにおける、青インク塗布試験後の状態を示した写真である。 比較例1のサンプルにおける、青インク塗布試験後の状態を示した写真である。

Claims (8)

  1. 窒化珪素系セラミックスの被接合部材同士を接合する方法であって、
    (a)シリコン粒子を主成分とする第1の原料を調製するステップと、
    (b)前記第1の原料から、成形体を形成するステップと、
    (c)窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に、前記成形体を保持し、該成形体中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップであって、これにより窒化珪素系セラミックスの多孔質な被接合部材が得られるステップと、
    (d)シリコン粒子を含む第2の原料を調製するステップであって、前記第1の原料および第2の原料に含まれるシリコン粒子の粒度分布を比較した場合、前記第2の原料に含まれるシリコン粒子の最大粒径、最頻粒径、および最頻粒径を有する粒子の割合のうちの少なくとも一つのパラメータ値は、前記第1の原料に含まれるシリコン粒子の同じパラメータ値の±20%の範囲内にある、ステップと、
    (e)前記第2の原料から、スラリーを調製するステップと、
    (f)後に接合材が形成される前記被接合部材同士の隙間に、前記スラリーを注入して、前記被接合部材に前記スラリー中の水分を吸収させ、前記スラリーを固化させ、接合材を形成させることにより、組立体を得るステップと、
    (g)窒素雰囲気下、1100℃〜1450℃の範囲のいずれかの温度に、前記組立体を保持し、前記接合材中のシリコン粒子を反応焼結処理するステップと、
    を有し、
    前記ステップ(a)〜(c)は、前記ステップ(d)〜(e)よりも前もしくは後に実施され、または前記ステップ(a)〜(c)は、前記ステップ(d)〜(e)と並列に実施される、方法。
  2. 前記第1の原料および/または前記第2の原料は、さらに、添加物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記添加物質は、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、La(ランタン)、Ce(セリウム)、Zr(ジルコニウム)、Yb(イッテリビウム)、Hf(ハフニウム)、Ti(チタン)、Lu(ルテニウム)、およびこれらの2種以上の組み合わせからなる群から選定された金属、または前記金属の酸化物、または前記金属の窒化物を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記第1の原料および/または前記第2の原料は、さらに、TiN(窒化チタン)、SiC(炭化珪素)、BN(窒化ホウ素)、C(カーボン)、ZrO(ジルコニア)のうちの少なくとも一つの材料を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の方法。
  5. 前記第1の原料と前記第2の原料は、実質的に同一の組成を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の方法。
  6. 前記ステップ(g)の後、さらに、
    (h)得られた接合体を後焼結処理するステップを有し、
    前記後焼結処理の温度は、前記ステップ(c)および前記ステップ(g)における反応焼結処理の温度よりも高く、ならびに/または
    前記後焼結処理は、前記ステップ(c)および前記ステップ(g)における反応焼結処理の窒素雰囲気の圧力と同等以上の圧力の窒素雰囲気で実施されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の方法。
  7. 前記後焼結処理は、1〜9.5気圧の窒素雰囲気において、1600℃〜2000℃の温度範囲で実施されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
  8. 前記ステップ(e)で調製されるスラリーは、水と、分散剤および/または結合剤とを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一つに記載の方法。
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