本発明は、変速機の制御装置に関する。
入力軸からクラッチ,中間軸、及び変速機構を介して出力軸に至る二つの動力伝達機構に回転電機から相対的にトルクを印加できるように構成された変速機が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された変速機では、動力伝達機構の一方に設けられた変速機構の複数の変速ギアのうちの一つを選択すると共に、動力伝達機構の一方に設けられたクラッチを締結し、内燃機関からの動力を動力伝達機構の一方によって出力軸に伝達しているとき、動力伝達機構の他方に設けられた変速機構の複数の変速ギアのうちの一つを選択し、回転電機からの動力を動力伝達機構の他方によって出力軸に伝達することによりトルクアシストが可能である。
また、特許文献1に開示された変速機では、内燃機関からの動力又は車輪からの動力によって回転電機を発電動作させることにより回生が可能である。
尚、本明細書では、内燃機関の動力を伝達するのに用いられる変速ギアを走行ギア、回転電機によるトルクアシスト又は回生の際に用いられる変速ギアをアシストギアと呼ぶことにする。
特開2002−204504号公報
特開2003−113932号公報
特開平5−189698号公報
特開平7−101271号公報
特開平7−192194号公報
特許文献1に開示された変速機では、トルクアシスト時、最大アシストトルクが得られるようにアシストギアを選択している(段落0031参照)。この際、特許文献1に開示された変速機では、回転電機が過回転を起こさないように考慮している。ところが、特許文献1に開示された変速機では、例えば走行ギアとして5速の変速ギアが選択されているとき、アシストギアとして2速の変速ギアが選択されるというように、走行ギアとは段数が大きく離れたアシストギアが選択される場合があると考えられる。このように、走行ギアとは段数が大きく離れたアシストギアが選択されると、走行ギアと近いアシストギアが選択された場合と比較して回転電機の回転速度が大きくなるので、機械音や回転慣性抵抗などが増加すると考えられる。特許文献1に開示された変速機において、これまで以上に低騒音化や車両の燃費向上に寄与するためには、最適なアシストギアの選択によって機械音や回転慣性抵抗などの低減が望ましい。
また、内燃機関及び電動機を動力源として有するハイブリッド車においては、電動機の電源である蓄電装置の充電量が極端に低い状態又は極端に高い状態が長時間継続しないように、蓄電装置の充電量をある一定の範囲に管理するのが一般的である。このため、特許文献1に開示された変速機を搭載したハイブリッド車において、上述のような蓄電装置の充電量の管理を実現するためには、ハイブリッド車の運転状態や走行路の環境に応じて最適なアシストギアの選択が必要になる。
本発明の代表的なものは、車両にとって好適な変速ギアの選択制御を実現できる変速機の制御装置を提供する。また、本発明の代表的なものは、回転電機の電源である蓄電装置の充電量の管理にとって好適な変速ギアの選択制御を実現できる変速機の制御装置を提供する。
ここに、本発明の代表的なものは、内燃機関側の軸と車軸側の軸との間に設けられ、内燃機関側の軸と車軸側の軸との間の動力伝達路を構成する第1及び第2動力伝達機構と、
第1動力伝達機構に設けられた第1クラッチと、第2動力伝達機構に設けられた第2クラッチと、第1動力伝達機構に設けられ、互いに変速段数が異なる複数の変速ギアを有する第1変速機構と、前記第2動力伝達機構に設けられると共に、前記第1変速機構とは変速段数が異なり、かつ互いに変速段数が異なる複数の変速ギアを有する第2変速機構と、第1及び第2動力伝達機構に機械的に接続された回転電機とを有する変速機の制御装置において、第1又は第2クラッチのいずれか一方を締結し、締結状態のクラッチに対応する側の変速機構の複数の変速ギアのうちの一つを選択したとき、開放状態のクラッチに対応する側の変速機構の変速ギアとして、締結状態のクラッチに対応する側の変速機構の選択された変速ギアに最も近い段数の変速ギアを選択することを特徴とする。
また、本発明の代表的なものは、回転電機の回転速度,車両の速度,アクセル開度,変速機の内部の抵抗の推定値,舵角,地図情報を含む複数の状態情報うちの少なくとも1つ以上を入力し、この入力された状態情報に基づいて、開放状態のクラッチに対応する側の変速機構の変速ギアを変更することを特徴とする。
さらに、本発明の代表的なものは、回転電機の電源である蓄電装置の充電量が基準値を下回った場合、締結状態のクラッチに対応する側及び開放状態のクラッチに対応する側の変速機構の複数の変速ギアを各々選択したときの回転電機による発電電力を算出し、非選択の変速ギアのときの回転電機による発電電力と、選択中の変速ギアのときの回転電機による発電電力との差分が判定値よりも上回っているときには、締結状態のクラッチに対応する側及び開放状態のクラッチに対応する側の変速機構の少なくとも一方の変速ギアを変更し、それ以外のときには、締結状態のクラッチに対応する側及び開放状態のクラッチに対応する側の変速機構の変速ギアを選択中の変速ギアのままとすることを特徴とする。
上記において、開放状態のクラッチに対応する側の変速機構の変速ギアを変更する場合には、電気的エネルギーの回収率が最も大きい変速段数の変速ギアを選択することが好ましい。
上記において、回転電機の電源である蓄電装置の充電量が基準値を上回った場合には、開放状態のクラッチに対応する側の変速機構の変速ギアを、消費電力が最も大きい変速段数の変速ギアに変更することが好ましい。
本発明の代表的なものによれば、最適なアシストギアを選択できるので、機械音や回転慣性抵抗などの増加を抑制できる。これにより、本発明の代表的なものによれば、従来よりも低騒音化や車両の燃費向上を図ることができる。また、本発明の代表的なものによれば、最適なアシストギアを選択できるので、回転電機の電源である蓄電装置の充電量を最適に管理できる。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
以下に説明する実施例では、本発明を、内燃機関であるエンジン及び回転電機を動力源として有するハイブリッド自動車に適用した場合を例に挙げて説明する。本発明は、エンジン及び回転電機を動力源として有する他のハイブリッド車両にも適用できる。他のハイブリッド車両としては、鉄道車両、トラックなどの貨物自動車,バスなどの乗合自動車及び建設機械などの特殊車両などがある。
本発明の第1実施例を図1〜図5に基づいて説明する。
まず、図1を用いて、ハイブリッド自動車1の駆動システムについて説明する。
ハイブリッド自動車1は車両の駆動源(動力源)の一つとして、内燃機関(原動機)であるエンジン6を備えている。エンジン6の出力(回転動力)は変速機100,最終減速機(デファレンシャルギア)5及び駆動輪ドライブシャフト4を介して駆動輪(例えば後輪)2に伝達される。これにより、駆動輪2が駆動される。
尚、本実施例では、エンジン6としてガソリンエンジンを用いた場合を例に挙げて説明する。エンジン6としては、ディーゼルエンジン又は水素エンジン或いはガスエンジン若しくはバイオ燃料エンジンなど、他のエンジンを用いても構わない。
3は従動輪(例えば前輪)を示す。
変速機100には、回転電機(原動機)であるモータジェネレータ200が内蔵されている。モータジェネレータ200は車両のもう一つの駆動源(動力源)を構成している。モータジェネレータ200の出力(回転動力)は変速機100,最終減速機5及び駆動輪ドライブシャフト4を介して駆動輪2に伝達される。これにより、駆動輪2が駆動される。
以上のように、本実施例では、エンジン6及びモータジェネレータ200の両方を車両の駆動源とする、いわゆるパラレル方式によりハイブリッド自動車1の駆動システムを構成している。パラレル方式の駆動システムでは、主駆動源であるエンジン6の動力のみを用いて車両を駆動する運転モード(エンジン駆動モード)、従駆動源であるモータジェネレータ200の動力で、主駆動源であるエンジン6の動力をアシストして車両を駆動する運転モード(アシスト駆動モード)が可能である。また、パラレル方式の駆動システムでは、従駆動源であるモータジェネレータ200のみの動力を用いて車両を駆動する運転モード(モータ駆動モード)も可能である。
尚、本実施例では、モータジェネレータ200として、三相交流同期機、例えば回転磁界を発生する電機子、及び永久磁石を備えた界磁から構成された永久磁石界磁型三相交流同期機を用いた場合を例に挙げて説明する。モータジェネレータ200としては三相交流誘導機或いは直流機を用いても構わない。また、三相交流同期機としては、回転磁界を発生する電機子、及び界磁巻線を備えた界磁から構成された巻線界磁型三相交流同期機を用いてもよい。
モータジェネレータ200の電機子にはインバータ装置7を介して蓄電装置8が電気的に接続されている。
蓄電装置8はモータジェネレータ200の駆動用直流電源であり、車載補機用バッテリよりも高電圧のバッテリ、例えばリチウムイオンバッテリ或いはニッケル水素バッテリにより構成されている。
尚、本実施例では、蓄電装置8を高電圧のバッテリにより構成した場合を例に挙げて説明する。蓄電装置8としては大容量のキャパシタ或いはコンデンサを用いても構わない。
インバータ装置7は電力変換回路を備え、モータジェネレータ200の電機子と蓄電装置8との間において直流電力から三相交流電力への電力変換、及び三相交流電力から直流電力への電力変換を行う電力変換装置である。電力変換回路は、二つのスイッチング半導体素子を電気的に直列に接続した一相分の直列回路が三相分、蓄電装置8の直流正極と負極との間に対して電気的に並列に接続されることにより構成されている。各直列回路の中点にはモータジェネレータ200の電機子の対応する相の巻線が電気的に接続されている。
尚、本実施例では、電力変換用の六つのスイッチング半導体素子として、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)を用いた場合を例に挙げて説明する。スイッチング半導体素子としては、金属酸化膜半導体型電界効果トランジスタ(MOSFET)を用いても構わない。
エンジン6の作動はエンジン制御装置(図示省略)によって制御されている。エンジン制御装置は、エンジンコンポーネント機器(空気絞り弁,吸排気弁,燃料噴射弁など)に対して指令信号を出力してエンジンコンポーネント機器の駆動を制御し、エンジン6に供給される空気量,燃料量などを制御する。
モータジェネレータ200の作動は変速機制御装置300によって制御されている。変速機制御装置300は、インバータ装置7に対して駆動指令信号を出力してインバータ装置7の駆動を制御し、モータジェネレータ200の電機子と蓄電装置8との間の電力を制御する。
蓄電装置8から供給された直流電力がインバータ装置7によって三相交流電力に変換されてモータジェネレータ200の電機子に供給されると、モータジェネレータ200は力行動作、すなわち電動機として動作し、回転動力を発生する。発生した回転動力は駆動輪2に伝達される。これにより、エンジン6の動力のアシスト及びモータジェネレータ200のみの動力による車両の駆動が可能である。一方、エンジン6或いは駆動輪2からの動力によってモータジェネレータ200が駆動されると、モータジェネレータ200は回生(発電)動作、すなわち発電機として動作し、三相交流電力を発生する。発生した三相交流電力はインバータ装置7によって直流電力に変換され、蓄電装置8に供給される。これにより、蓄電装置8の蓄電及び回生制動が可能である。
変速機100の作動は変速機制御装置300によって制御されている。変速機制御装置300は、変速機構を構成する変速ギア及びクラッチのアクチュエータに対して指令信号を出力して変速ギア及びクラッチのアクチュエータの駆動を制御し、変速機100における変速動作を制御する。
変速機制御装置300には、変速機100及びモータジェネレータ200の制御に必要な複数の入力情報に対応する複数の信号が入力されている。複数の入力情報としては、例えばアクセルペダル9の操作情報(アクセル踏込量検出装置から出力された検出情報或いは空気絞り弁の開度情報),車速検出装置10から出力された車速情報、蓄電装置8のバッテリ制御装置から出力されたバッテリ状態情報(例えば充電量(SOC)情報,充放電許容電力情報など),シフトレバーの位置情報(シフトレバー位置検出装置から出力された検出情報),モータジェネレータ200とインバータ装置7との間に流れる三相交流電流情報(電流センサから出力された検出情報),モータジェネレータ200の回転位置情報(レゾルバなどの磁極位置センサから出力された検出情報)などがある。
変速機制御装置300は、通信ネットワークによってエンジン制御装置を含む他の制御装置と電気的に接続され、相互に信号伝送が可能である。変速機制御装置300に入力される複数の入力情報は、各検出装置或いは他の制御装置から通信ネットワークを介して信号伝送される。
次に、図2を用いて、変速機100の構成について説明する。
本実施例の変速機100はツインクラッチ方式のものであり、二つの動力伝達機構間にモータジェネレータ200がギア機構を介して機械的に接続されたものである。
二つの動力伝達機構は、エンジン6に機械的に接続された入力軸(エンジン側軸)110と出力軸(駆動輪側軸)120との間に構成されている。入力軸110には入力ギア111が結合されている。
第1動力伝達機構は、入力ギア111と噛み合う第1結合ギア130,第1結合ギア130に結合され、入力軸110と平行に配置された第1結合軸131,第1クラッチ140,第1結合軸131と同軸に配置された第1中間軸150、及び第1中間軸150と平行に配置された出力軸120と第1中間軸150との間に設けらた第1変速機構から構成されている。
第1クラッチ140は第1中間軸150と第1結合軸131との間に設けられ、第1クラッチアクチュエータ101によって第1結合軸131側のクラッチ板及び第1中間軸150側のクラッチ板の両者が係合(或いは締結)/開放されることにより、第1中間軸150と第1結合軸131との間の動力の伝達/遮断を行う摩擦クラッチである。第1クラッチ140は、例えばドッグクラッチのような他の形式のクラッチに置き換えてもよい。
第1変速機構は前進用奇数変速段を構成しており、第1中間軸150上に配置され、互いに変速段数の異なる複数のドライブギア(1速のドライブギア151,3速のドライブギア152,5速のドライブギア153)、出力軸120に結合され、互いに変速段数が異なり、対応する変速段のドライブギアと噛み合う複数のドリブンギア(1速のドリブンギア121,3速のドリブンギア122,5速のドリブンギア123)、ドライブギア151,152との係合(或いは締結)/開放が可能であり、変速アクチュエータ103によって、第1中間軸150に沿って平行移動させられることにより、ドライブギア151と第1中間軸150との間の機械的な接続/切離し、ドライブギア152と第1中間軸150との間の機械的な接続/切離しを行う変速クラッチ154、及びドライブギア153との係合(或いは締結)/開放が可能であり、変速アクチュエータ104によって、第1中間軸150に沿って平行移動させられることにより、ドライブギア153と第1中間軸150との間の機械的な接続/切離しを行う変速クラッチ155から構成されている。変速クラッチ103,104はドッグクラッチである。
第2動力伝達機構は、入力ギア111と噛み合う第2結合ギア132,第2結合ギア132に結合され、入力軸110と平行に配置された第2結合軸133,第2クラッチ141,第2結合軸133と同軸に配置された第2中間軸160、及び第2中間軸160と平行に配置された出力軸120と第2中間軸160との間に設けられた第2変速機構から構成されている。
第2クラッチ141は第2中間軸160と第2結合軸133との間に設けられ、第2クラッチアクチュエータ102によって第2結合軸133側のクラッチ板及び第2中間軸160側のクラッチ板の両者が係合(或いは締結)/開放されることにより、第2中間軸160と第2結合軸133との間の動力の伝達/遮断を行う摩擦クラッチである。第2クラッチ140は、例えばドッグクラッチのような他の形式のクラッチに置き換えてもよい。
第2変速機構は前進用偶数変速段及び後退変速段を構成しており、第2中間軸160上に配置され、互いに変速段数の異なる複数のドライブギア(2速のドライブギア161,4速のドライブギア162)、出力軸120に結合され、互いに変速段数が異なり、対応する変速段のドライブギアと噛み合う複数のドリブンギア(2速のドリブンギア124,4速のドリブンギア125)、第2中間軸160上に配置された後退用ドライブギア163、後退用ドライブギア163と噛み合い、後退用ドライブギア163に従動する後退用アイドルギア170,出力軸120に結合され、後退用アイドルギア170と噛み合う後退用ドリブンギア126,ドライブギア161,162との係合(或いは締結)/開放が可能であり、変速アクチュエータ105によって、第2中間軸160に沿って平行移動させられることにより、ドライブギア161と第2中間軸160との間の機械的な接続/切離し、ドライブギア162と第2中間軸160との間の機械的な接続/切離しを行う変速クラッチ164、及び後退用ドライブギア163との係合(或いは締結)/開放が可能であり、変速アクチュエータ106によって、第2中間軸160に沿って平行移動させられることにより、後退用ドライブギア163と第2中間軸160との間の機械的な接続/切離しを行う変速クラッチ165から構成されている。変速クラッチ105,106はドッグクラッチである。
このように、本実施例の変速機100は、前進5段+後退1段の有段変速機から構成されている。
尚、各変速段を構成するギアの組み合わせをまとめると、以下の通りになる。
前進変速1段目(1速):ドライブギア151+ドリブンギア121
前進変速2段目(2速):ドライブギア161+ドリブンギア124
前進変速3段目(3速):ドライブギア152+ドリブンギア122
前進変速4段目(4速):ドライブギア162+ドリブンギア125
前進変速5段目(5速):ドライブギア153+ドリブンギア123
後退変速1段目(後退):ドライブギア163+アイドルギア170+ドリブンギア126
第1中間軸150と第2中間軸160との間にはモータジェネレータ200が配置されている。モータジェネレータ200は遊星歯車機構180及びギア190〜193を介して第1中間軸150と第2中間軸160に機械的に接続されている。
遊星歯車機構180は、その中心に配置されたサンギア181,サンギア181の外周側に配置されたリングギア182,サンギア181とリングギア182との間に配置されて、それらと噛み合い、自転しながらサンギア181及びリングギア182と同心軸上において公転する複数のプラネタリ(ピニオン)ギア183、及び複数のプラネタリギア183の軸が回動可能に結合され、複数のプラネタリギア183の公転を受けて回転するキャリア184から構成されている。
モータジェネレータ200の回転子(界磁)201は遊星歯車機構180のサンギア181の軸と機械的に接続されている。遊星歯車機構180のリングギア182の軸にはギア190が結合されている。ギア190はギア192に噛み合っている。ギア192は第1中間軸150に結合されている。これにより、遊星歯車機構180のリングギア182及び第1中間軸150の両者は機械的に接続される。遊星歯車機構180のキャリア184の軸にはギア191が結合されている。ギア191はギア193に噛み合っている。ギア193は第2中間軸160に結合されている。これにより、遊星歯車機構180のキャリア184及び第2中間軸160の両者は機械的に接続される。以上の構成により、モータジェネレータ200は第1中間軸150及び第2中間軸160に機械的にされる。モータジェネレータ200の回転速度は、第1中間軸150と第2中間軸160の回転速度差に遊星歯車機構180の変速比を乗算したものとなる。
第1クラッチアクチュエータ101,第2クラッチアクチュエータ102、及び変速アクチュエータ103〜106は、変速機制御装置300から出力された指令信号によりその動作が制御されている。
エンジン6から出力された回転動力は、入力軸110,入力ギア111,第1結合ギア130,第1結合軸131を介して第1クラッチ140に伝達されると共に、入力軸110,入力ギア111,第2結合ギア132,第2結合軸133を介して第2クラッチ141にそれぞれ伝達される。第1クラッチ140が係合している場合には、エンジン6の回転動力は第1変速機構によって変速された後、出力軸120に伝達される。第2クラッチ141が係合している場合には、エンジン6の回転動力は第2変速機構によって変速された後、出力軸120に伝達される。出力軸120に伝達された回転動力は、前述したように、最終減速機5及び駆動輪ドライブシャフト4を介して駆動輪2に伝達される。これにより、駆動輪2が駆動され、車両がエンジン6の回転動力によって走行する。
前述のように、エンジン6の回転動力によって車両が走行しているとき、モータジェネレータ200から出力された回転動力でトルクアシストする場合には、クラッチを係合してエンジン6の回転動力を出力軸120に伝達している動力伝達路とは異なる動力伝達路を用いることにより可能である。すなわち第1クラッチ140が係合され、1速,3速,5速の変速ギアのうちのいずれかが走行ギアとして選択されている場合には、2速,4速の変速ギアのうちのいずれかをアシストギアとして選択し、第2クラッチ141が係合され、2速,4速の変速ギアのうちのいずれかが走行ギアとして選択されている場合には、1速,3速,5速の変速ギアのうちのいずれかをアシストギアとして選択し、モータジェネレータ200から出力された回転動力を出力軸120に伝達する。
次に、図3を用いて、本実施例の変速機100によるトルクアシスト時のトルクの流れについて説明する。
例えば今、第1クラッチ140を係合すると共に、変速クラッチ154とドライブギア152とを係合し、3速の変速ギアを走行ギアとして第1動力伝達機構によりエンジン6の回転動力を出力軸120に伝達しているとき、変速クラッチ164とドライブギア161とを係合して、2速の変速ギアをアシストギアとして選択し、モータジェネレータ200の回転動力によりトルクアシストするとする。
このとき、エンジン6から出力軸120に伝達されるエンジントルクTeoは数式1のようになる。
Teo=Te×G3 (数式1)
また、モータジェネレータ200の回転動力は、遊星歯車機構180のプラネタリギア183,キャリア184,ギア191,ギア193からなる第1動力伝達経路(1)を介して第2中間軸160に伝達され、第2中間軸160から2速の変速ギアを介して出力軸120に伝達されると共に、遊星歯車機構180のリングギア182,ギア190,ギア192からなる第2動力伝達経路(2)を介して第1中間軸150に伝達され、第1中間軸150から3速の変速ギアを介して出力軸120に伝達される。
このとき、第1動力伝達経路(1),第2中間軸160,2速の変速ギアを介して出力軸120に伝達されるモータジェネレータ200の第1アシストトルクTmo1は数式2のようになる。
Tmo1=Tm×Gm2×G2 (数式2)
また、第2動力伝達経路(2),第1中間軸150,3速の変速ギアを介して出力軸120に伝達されるモータジェネレータ200の第2アシストトルクTmo2は数式3のようになる。
Tmo2=−Tm×Gm1×G3 (数式3)
これにより、モータジェネレータ200のアシストトルクTmoは、第1アシストトルクTmo1と第2アシストトルクTmo2とを加算した合成トルクとなり、数式4のようになる。
Tmo=Tmo1+Tmo2
=Tm×Gm2×G2−Tm×Gm1×G3 (数式4)
以上のことから、出力軸120におけるトルクは、エンジントルクTeoとモータジェネレータ200のアシストトルクTmoとを加算した合成トルクとなり、数式5のようになる。
To=Teo+Tmo
=Te×G3+Tm×Gm2×G2−Tm×Gm1×G3
=Te×G3+Tm(Gm2×G2−Gm1×G3) (数式5)
尚、Teはエンジン6の出力トルクを、Tmはモータジェネレータ200の出力トルクを、G1〜G5は1速〜5速の変速ギアの変速比を、Gm1はモータジェネレータ200から遊星歯車機構180を介して第1中間軸150に至るまでの減速比を、Gm2はモータジェネレータ200から遊星歯車機構180を介して第2中間軸160に至るまでの減速比をそれぞれ示す。
数式5から判るように、走行ギアとアシストギアの変速比の差がモータジェネレータ200の出力トルクTmの増幅比を支配している。すなわちモータジェネレータ200の出力トルクTmが一定である場合、アシストギアと走行ギアとの変速比の差を大きくすればするほど、アシストトルクは増大することになる。
しかし、アシストギアと走行ギアとの変速比の差を大きく、すなわち走行ギアとは段数が大きく離れたアシストギアを選択すると、走行ギアと近いアシストギアを選択した場合と比較してモータジェネレータ200の回転速度が大きくなるので、機械音や回転慣性抵抗などが増加する。これらは、低騒音化や車両の燃費向上などに影響を与える。このようなことから、機械音や回転慣性抵抗などの低減を図り、低騒音化や車両の燃費向上への影響を小さくすることが望ましい。
次に、図4を用いて、本実施例のハイブリッド自動車1の駆動システムによるトルクパターンを説明する。
ハイブリッド自動車1の駆動システムによるトルクパターンには、図4(a)のトルクアシスト、図4(b)のエンジン回生、図4(c)の回生制動、図4(d)のエンジン回生+回生制動の4パターンがあり、それぞれ、エンジン6の駆動動作,エンジン6のブレーキ動作,モータジェネレータ200の電動機(力行)動作,モータジェネレータ200の発電機(回生)動作の4動作によるトルクのうちの2つのトルクの組み合せによって形成されている。
尚、図4(a)〜(d)の一点鎖線よりも右側の矢印方向(駆動)は正トルクを、左側の矢印方向(制動)は負トルクをそれぞれ示す。
それぞれのトルクパターンについて具体的に説明すると、図4(a)のトルクアシストパターンは、エンジン6の駆動動作によるエンジントルクTeo及びモータジェネレータ200の電動機動作によるアシストトルクTmoによって車両を走行させている状態(例えば車両の発進時,加速時,高負荷走行時など)を示す。この場合、エンジントルクTeoとアシストトルクTmoとを加算したトルクToが駆動トルクとして出力軸120から出力される。
図4(b)のエンジン回生は、エンジン6の駆動動作によるエンジントルクTeoの一部によってモータジェネレータ200を発電機動作させると共に、残りのエンジントルクTeoによって車両を走行させている状態(例えば車両の低負荷走行など)を示す。この場合、エンジントルクTeoから回生トルクTmoを差し引いたトルクToが駆動トルクとして出力軸120から出力される。
図4(c)の回生制動は、アクセルのオフにしてエンジン6をブレーキ動作させる(エンジンブレーキをかける)と共に、車両(駆動輪2)からの運動エネルギー(回転動力)によってモータジェネレータ200を発電機動作させている状態(例えば減速走行、下り坂走行など)を示す。この場合、エンジントルクTeoと回生トルクTmoとを加算したトルクToが制動トルクとして車両に作用する。また、回生トルクTmoによって得られた電気エネルギーが蓄電装置8に回収される。
図4(d)のエンジン回生+回生制動は、エンジン6の駆動動作によるエンジントルクTeoと車両(駆動輪2)からの運動エネルギー(回転動力)とによってモータジェネレータ200を発電機動作させている状態を示す。この場合、回生トルクTmoからエンジントルクTeoを差し引いたトルクToが制動トルクとして車両に作用する。また、回生トルクTmoによって得られた電気エネルギーが蓄電装置8に回収される。
次に、図5を用いて、変速機制御装置300の構成について説明する。
尚、図5において、1〜5は前進変速段を、Rは後退変速段をそれぞれ示す。
変速機制御装置300は、半導体装置であるマイクロコンピュータ及び記憶装置を含む複数の電子部品が電子回路基板に実装されて電気的に接続されることにより構成されている。マイクロコンピュータは変速機制御部及びモータジェネレータ制御部を備えている。それらの制御部はソフトウエアによって構成されている。
モータジェネレータ制御部は、インバータ装置7のスイッチング半導体素子をオンオフさせるための駆動指令信号をインバータ装置7に出力してインバータ装置7による電力変換を制御し、これによってモータジェネレータ200の作動を制御する制御演算部であり、モータジェネレータ200に対するトルク指令値,モータジェネレータ200の磁極位置,インバータ装置7とモータジェネレータ200との間の三相交流電流値を含む複数の入力情報に基づいて、インバータ装置7のスイッチング半導体素子をオンオフするための駆動指令値を演算し、その駆動指令値を出力情報として、その駆動指令値に対応する信号(例えばPWM(パルス幅変調)信号)をインバータ装置7の駆動回路に出力する。
モータジェネレータ200に要求されるトルク指令値は、変速機制御装置300の上位の制御装置において演算された値を入力するようにしてもよいし、変速機制御装置300に入力されたアクセル開度情報に基づいて、運転者から車両に要求されるトルク指令値を演算し、この演算されたトルク指令値からモータジェネレータ200の要求分として分配された値(エンジン6に要求されるトルク指令値分をトルク指令値から差し引いた値)を用いるようにしてもよい。
変速機制御部は、6つの各クラッチアクチュエータを駆動するための駆動指令信号を出力して各クラッチアクチュエータの駆動を制御し、これによって変速機100の作動を制御する制御演算部であり、走行ギア演算部301,アシストギア演算部310、及びクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302を備えている。
走行ギア演算部301は、アクセル開度,車速,シフトレバー位置を含む複数の入力情報に基づいて、選択すべき走行ギアの選択指令値を演算し、その選択指令値をアシストギア演算手段310及びクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302に出力する。走行ギアの選択指令値の演算は、アクセル開度と車速との関係に基づいて予め設定された変速線に関するテーブル(マップ)を用いて行われる。また、走行ギア演算部301は、車両の発進時かつシフトレバー位置が「D」レンジにある場合には前進変速段1段目(1速)の変速ギアを、車両の発進時かつシフトレバー位置が「R」レンジにある場合には後進変速段1段目(後退)の変速ギアをそれぞれ走行ギアとするように、それらのギアに対応する選択指令値を出力する。すなわちデフォルトで設定されている。
アシストギア演算手段310は、走行ギアの選択指令値に基づいて、選択すべきアシストギアの選択指令値を演算し、その選択指令値を駆動指令信号発生部に出力する。アシストギアの選択指令値の演算は、アシストギアと走行ギアとの関係に基づいて予め設定されたアシストギア選択演算に関するテーブル(マップ)を用いて行われる。テーブル(マップ)は、走行ギアのダウンシフト及びアップシフトを想定し、図5(a)に示すアップシフト用テーブルと、図5(b)に示すダウンシフト用テーブルとを用意している。
図5(a)に示すアップシフト用テーブルでは、走行ギアに対してアシストギアは基本的に1段下となるように一義的に設定している。すなわち複数のアシストギアのうち、選択された走行ギアに最も近い段数のアシストギアが選択されるように設定している。但し、選択された走行ギアが最も低速の1速のときには、アシストギアは走行ギアの1段上の2速のギアが選択されるように、走行ギアが後退のときには、アシストギアは1速のギアが選択されるように設定している。
図5(b)に示すダウンシフト用テーブルでは、走行ギアに対してアシストギアは基本的に1段上となるように一義的に設定している。すなわち複数のアシストギアのうち、選択された走行ギアに最も近い段数のアシストギアが選択されるように設定している。但し、選択された走行ギアが最も高速の5速のときには、アシストギアは走行ギアの1段下の4速のギアが選択されるように、走行ギアが後退のときは、アシストギアは1速のギアが選択されるように設定している。
本実施例によれば、図5(a)(b)に示すテーブルを用いて、選択された走行ギアの選択指令値から、アップシフトの場合は、選択された走行ギアに対して1段下のアシストギアを一義的に選択し、ダウンシフトの場合は、走行ギアに対して1段上のアシストギアを一義的に選択する、というように、複数のアシストギアのうち、選択された走行ギアに最も近い段数のアシストギアを選択できる。このように、アシストギアを最適に選択できると、アシストギアと走行ギアとの変速比の差を小さくでき、アシストギアと走行ギアとの変速比の差を大きく、すなわち走行ギアとは段数が大きく離れたアシストギアを選択する場合と比べて、モータジェネレータ200の回転速度の増加を抑制し、機械音や回転慣性抵抗などの増加を抑制できる。従って、本実施例によれば、低騒音化や車両の燃費向上に大きく寄与できる。
また、本実施例によれば、走行ギアに対してアシストギアが1段下或いは1段上であるので、走行ギアのダウンシフト及びアップシフトを最短のシーケンスで行えるので、走行ギアとは段数が大きく離れたアシストギアを選択する場合と比べて、変速時間を短くできる。
本発明の第2実施例を図6に基づいて説明する。
本実施例は第1実施例の改良例であり、アシストギア演算部310の入力側に加速要求値演算部311を設け、加速要求値演算部311から出力された加速要求値及び走行ギア演算部301から出力された走行ギアの選択指令値に基づいて、アシストギアの選択指令値をアシストギア演算部310により演算する例である。
第1実施例では、図5(a)(b)に示すように、走行ギアに対するアシストギアとして、アップシフト及びダウンシフトに応じて1段下或いは1段上のギアを選択している。大きなアシストトルク要求があった場合、その要求に対して、図5(b)のダウンシフトよりも、図5(a)のアップシフトの方が十分に応じることができる。
例えば3速の変速段に対して上の変速段(4速)を選択したときと、下の変速段(2速)を選択したときの変速段数差が1段で同じであった場合、それぞれのときの変速比の差が、|(3速変速比−4速変速比)|<|(2速変速比−3速変速比)|というように、上の変速段(4速)との変速比差よりも下の変速段(2速)との変速比差が大きくなる。このため、トルクアシスト時のモータジェネレータ200のトルクが一定である場合、3速の変速段に対して下の変速段(2速)をアシストギアとして選択した方が、アシストトルクは大きくなる。従って、大きなアシストトルク要求があった場合、その要求に対して、図5(b)のダウンシフトよりも、図5(a)のアップシフトの方が十分に応じることができる。
以上のことを考慮すると、第1実施例のようなアシストの選択方法では、運転者がアクセルを踏み込んで加速要求し、この要求にしたがって走行ギアがダウンシフトされると共に、モータジェネレータ200からトルクがアシストされた場合、その要求に確実に応じることができない場面があるのではないかと考えられる。
そこで、本実施例では、走行ギア及び運転者の加速要求に基づいてアシストギアを選択できるようにしている。このため、本実施例では、図6に示すように、アクセル開度情報に基づいて運転者の加速要求値を演算する加速要求値演算部311を設けている。
加速要求値演算部311は、アクセル開度から、アクセル開度と加速値との関係に基づいて予め設定された加速要求値演算に関するテーブル(マップ)を用いて加速要求値を演算し、その加速要求値をアシストギア演算部310に入力する。
アシストギア演算部310は、走行ギアの選択指令値及び加速要求値演算部311からの加速要求値から、アシストギアと走行ギアと加速要求値との関係に基づいて予め設定されたアシストギア選択演算に関するテーブル(マップ)を用いて、アシストギアの選択演算を行い、演算された選択指令値をクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302に出力する。アシストギア選択演算に関するテーブルは加速要求値に応じて3段階に分けられており、加速要求値の大小に走行ギアとアシストギアの変速比差の大小とが対応するように、アシストギアの変速段数を決定したものとなっている。
その他の構成は第1実施例と同様であるので、その説明を省略する。
以上の構成を備えた本実施例によれば、運転者の加速要求に応じたアシストギアを選択でき、運転者の加速要求に応じたトルクを確実に出力できる。また、本実施例においても、走行ギアに対するアシストギアの選択は、第1実施例と同様に、選択された走行ギアに最も近い段数のアシストギアを選択することを基本としている。従って、本実施例においても第1実施例と同様の効果を達成できる。
ここで、1〜5速の各変速段の変速比をG1〜G5、後退の変速段の変速比をGRとしたとき、それぞれを、G1=3.5,G2=2.0,G3=1.3,G4=1.0,G5=0.8,GR=3.3とし、モータジェネレータ200から遊星歯車機構180を介して第1中間軸150までの減速比をGm1としたとき、それをGm1=1.0とし、モータジェネレータ200から遊星歯車機構180を介して第2中間軸160までの減速比をGm2としたとき、それをGm2=1.0とすると、例えば走行ギアが3速、加速要求値が低、アシストギアが4速の場合、アシストトルクTmoは数式4より、
Tmo=Tm×Gm2×G4−Tm×Gm1×G3
=Tm×1.0×1.0−Tm×1.0×1.3
=Tm(1.0−1.3)
=−0.3Tm
となる。
次に、例えば走行ギアが3速、加速要求値が上の例よりも少し高、アシストギアが2速の場合、アシストトルクTmoは数式4より、
Tmo=Tm×Gm2×G2−Tm×Gm1×G3
=Tm×1.0×2.0−Tm×1.0×1.3
=Tm(2.0−1.3)
=0.7Tm
となる。
次に、例えば走行ギアが3速、加速要求値が上の例よりも更に高、アシストギアが後退の場合、アシストトルクTmoは数式4より、
Tmo=−(Tm×Gm2×GR)−Tm×Gm1×G3
=−(Tm×1.0×3.3)−Tm×1.0×1.3
=Tm(−3.3−1.3)
=−4.6Tm
となる。
上記例のように、走行ギアが3速、アシストギアが4速の場合、及び走行ギアが3速、アシストギアが後退の場合、モータジェネレータ200のトルクTmが正であればアシストトルクTmoは負になるので、走行ギアが3速、アシストギアが2速の場合に対してモータジェネレータ200のトルクを逆方向に作用させる必要がある。モータジェネレータ200のトルクを逆方向に作用させるには、インバータ装置7からモータジェネレータ200の電機子巻線に印加する三相交流電圧の位相を反転させればよい。
次に、一定の走行ギアで走行している状態から運転者が加減速意思の下にアクセルペダルの踏み加減を変化させたときの変速について説明する。運転者がアクセルペダルを高開度から低開度へ緩めて加速要求値が低い方へ変化すれば、走行ギアのアップシフト要求とアシストギアの変速要求とが同時に起こる場合がある。また、運転者がアクセルペダルを低開度から高開度へアクセルペダルを踏み込んで加速要求値が高い方へ変化すれば、走行ギアのダウンシフト要求とアシストギアの変速要求とが同時に起こる場合がある。このように、走行ギアの変速要求とアシストギアの変速要求とが同時に起こる場合があるが、あくまでもアシストギアは走行ギアに対して決定されるので、走行ギアの変速要求が優先される。走行ギアの変速要求は、前述した変速線によって行われる。
次に、変速シーケンスの具体的な例について、図19及び図20を用いて説明する。
図19は走行ギアのアップシフト要求が起こった場合である。今、第2クラッチ141が係合され、走行ギアが2速、加速要求値が高、アシストギアが1速で走行中であるとする。このとき、エンジン6のトルクは第2クラッチ141から第2中間軸160→2速の変速ギア161,124→出力軸120へと伝達される。この状態からアクセルペダルが緩められて加速要求値が低下すると、変速線に基づいて走行ギアの3速へのアップシフト要求が起こる。この場合、まず、走行ギアの変速準備としてモータジェネレータ200のトルクをゼロ、アシストギアである1速の変速ギア151,121を開放として3速の変速ギア152,122を係合する。次に、モータジェネレータ200のトルクを増加させていくと、エンジン6のトルクが第2クラッチ141から第2中間軸160→遊星歯車機構180→第1中間軸150→3速の変速ギア152,122→出力軸120へと伝達されはじめる。走行ギアは、2速の変速ギア161,124に作用するモータジェネレータ200のトルクがゼロになるまで増加させる間に2速から3速へ移り変わる。2速の変速ギア161,124に作用するトルクがゼロになれば2速の変速ギア161,124を開放する。次に、第1クラッチ140を係合させてモータジェネレータ200のトルクをゼロにすると、エンジン6のトルクは第1クラッチ140→第1中間軸150→3速の変速ギア152,122→出力軸120へと伝達される。最後に4速の変速ギア162,125を係合すると、走行ギアが3速、アシストギアが4速になり、変速が終了する。
図20は走行ギアのダウンシフト要求が起こった場合である。今、第1クラッチ140が係合され、走行ギアが3速、加速要求値が低、アシストギアが4速で走行中であるとする。このとき、エンジン6のトルクは第1クラッチ140→第1中間軸150→3速の変速ギア152,122→出力軸120へと伝達される。この状態からアクセルペダルが踏まれて加速要求値が増加すると、変速線に基づいて走行ギアの2速へのダウンシフト要求が起こる。まず、走行ギアの変速準備として、モータジェネレータ200のトルクをゼロ、アシストギアである4速の変速ギア162,125を開放して2速の変速ギア161,124を係合する。次に、モータジェネレータ200のトルクを増加させていくと、エンジン6のトルクが第1クラッチ140→第1中間軸150→遊星歯車機構180→第2中間軸160→2速の変速ギア161,124→出力軸120へと伝達されはじめる。走行ギアは、3速の変速ギア152,122に作用するモータジェネレータ200のトルクがゼロになるまで増加させる間に、3速から2速へ移り変わる。3速の変速ギア152,122に作用するトルクがゼロになれば3速の変速ギア152,122を開放する。次に、第2クラッチ141を係合させてモータジェネレータ200のトルクをゼロにすると、エンジン6のトルクは第2クラッチ141→第2中間軸160→2速の変速ギア161,124→出力軸120へと伝達される。最後に1速の変速ギア151,121を係合すると、走行ギアが2速、アシストギアが1速になり、変速が終了する。
以上のように、本実施例では、図19及び図20に示すタイムチャートのように変速が行われる。より具体的な走行ギアの変速方法については、特開2003−113932号公報に記載されている。
尚、本実施例では、走行ギア及び加速要求値に基づいてアシストギアを選択するようにしたが、例えば急発進などのように、走行ギアを1速から2速、更に3速へと短時間で移行させなければならない場合、その都度、加速要求値に応じてアシストギアによる変速を行うと、アシストギアによる変速に多くの時間を要してしまい、走行ギアによる変速が間に合わなくなることが考えられる。そこで、例えば急発進などのように、走行ギアを1速から2速、更に3速へと短時間で移行させなければなら場合であって、走行ギアが比較的低速段にある場合には、加速要求値に応じてアシストギアによる変速を行わないようにすることが、走行ギアの変速を確実に行う上で好ましい。
本発明の第3実施例を図7に基づいて説明する。
本実施例は第2実施例の改良例であり、アシストギア演算部310によって演算されたアシストギアの選択指令値に基づいて、最終的なアシストギアの選択指令値を決定するアシストギア決定部312を備えた例である。
第2実施例では、図6に示すように、加速要求値が大きいときには、より変速比差が大きいアシストギアを選択するようにした。しかし、そのようにしても、例えばモータジェネレータ200の最大電力制限にかかった場合には、変速比差が大きい分だけモータジェネレータ200の軸トルクが下がってアシストトルクが増加せず、かえって、モータジェネレータ200及びアシストギアに対応する側の中間軸の回転による回転慣性抵抗及び潤滑油攪拌抵抗が増加し、燃費が悪化するなどの影響が及ぶと考えられる。
そこで、本実施例では、回転慣性抵抗及び潤滑油攪拌抵抗を考慮して、最終的なアシストギアを決定できるようにしている。このため、本実施例では、図7に示すように、アシストギア演算部310から出力されたアシストギアの選択指令値に基づいて、最終的なアシストギアの選択指令値を演算して出力するアシストギア決定部312を備えている。
アシストギア決定部312は、アシストギア変更演算部313〜320,アシストトルク演算部321〜329,回転慣性抵抗及び潤滑油攪拌抵抗を演算する抵抗演算部330〜338,加算器340〜348,最大アシストトルク選択部350、及び選択指令値選択部351から構成されている。
アシストギア変更演算部313〜320は、アシストギア演算部310から出力されたアシストギアの選択指令値に対応する変速段数に1〜4の変速段数をそれぞれ加算したときの変速段数に対応するアシストギアの選択指令値、及びアシストギア演算部310から出力されたアシストギアの選択指令値に対応する変速段数に1〜4の変速段数をそれぞれ減算したときの変速段数に対応するアシストギアの選択指令値をそれぞれ演算し、それらのアシストギアの選択指令値を、選択指令値選択部351、対応するアシストトルク演算部321〜329及び対応する抵抗演算部330〜338に出力する。
アシストトルク演算部321〜329は、アシストギア演算部310及びアシストギア変更演算部313〜320のそれぞれに対応して設けられ、それぞれのアシストギアの選択指令値に対応するアシストトルク値をそれぞれ演算し、それらのアシストトルク値を、対応する加算器340〜348に出力する。ここで、アシストギア変更演算部313〜320により演算されたアシストギアの選択指令値に対応するアシストギア(1〜5速及び後退の変速段)が存在しない場合には、アシストトルク演算部321〜329はアシストトルク値を0として出力する。
抵抗演算部330〜338は、アシストギア演算部310及びアシストギア変更演算部313〜320のそれぞれに対応して設けられ、それぞれのアシストギアの選択指令値、第1中間軸150の回転速度及び第2中間軸160の回転速度に基づいて、それぞれのアシストギアの選択指令値に対応する回転慣性抵抗値及び潤滑油攪拌抵抗値をそれぞれ演算し、それらの回転慣性抵抗値及び潤滑油攪拌抵抗値を、対応する加算器340〜348に出力する。
加算器340〜348は、対応するアシストトルク演算部321〜329から出力されたアシストトルク値を正の値として入力し、対応する抵抗演算部330〜338から出力された回転慣性抵抗値及び潤滑油攪拌抵抗値を負の値として入力し、各変速段数毎に対応する2つの値を加算して、損失分を除く最終的なアシストトルク値を演算し、その最終的なアシストトルク値を最大アシストトルク選択部350に出力する。
最大アシストトルク選択部350は、加算器340〜348から出力された最終的なアアシストトルク値を入力し、それらの中から、最大のアシストトルク値を選択し、その最大のアシストトルクがアシストギア演算部310及びアシストギア変更演算部313〜320のうち、どの演算部から出力されたかを示す演算部選択指令値を選択指令値選択部351に出力する。
選択指令値選択部351は、アシストギア演算部310及びアシストギア変更演算部313〜320から出力されたアシストギアの選択指令値と、最大アシストトルク選択部350から出力された演算器選択指令値とを入力し、演算器選択指令値に対応する演算器から出力されたアシストギアの選択指令値を、最終のアシストギアの選択指令値として、クラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302に出力する。
その他の構成は第2実施例と同様であるので、その説明を省略する。
以上のように、本実施例では、回転慣性抵抗及び潤滑油攪拌抵抗を考慮してアシストギアを選択しているので、モータジェネレータ200及びアシストギアに対応する側の中間軸の回転による回転慣性抵抗及び潤滑油攪拌抵抗の増加による燃費の悪化などの影響を小さくできる。
本発明の第4実施例を図8に基づいて説明する。
本実施例は第3実施例の改良例であり、渋滞,山間路,高速道路などの道路環境、及びゆったり運転,スポーティ運転などの運転状態などの運転状況を推定する運転状況推定部352を備えると共に、アシストギア決定部312から出力されたアシストギアの選択指令値及び運転状況推定部352から出力された運転状況値に基づいて、運転状況を勘案してアシストギアを選択するアシストギア総合判定部353を備えた例である。
運転状況推定部352は、車速,アクセル開度,舵角,路面勾配、及び地図情報の各情報を入力情報として入力し、それらの入力情報に基づいて、渋滞,山間路,高速道路などの道路環境、及びゆったり運転,スポーティ運転などの運転状態などの運転状況を推定し、その結果を示す運転状況値をアシストギア総合判定部353に出力する。入力情報による道路環境,運転状態の推定方法は、例えば特開平5−189698号公報,特開平7−101271号公報,特開平7−192194号公報など記載されている。
アシストギア総合判定部353は、アシストギア決定部312から出力されたアシストギアの選択指令値、及び運転状況推定部352から出力された運転状況値に基づいて、アシストギア決定部312から出力されたアシストギアの選択指令値をそのまま出力するか、或いは異なるアシストギアの選択指令値に変更して出力するかを判定し、この判定結果に応じた選択指令値をクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302に出力する。
その他の構成は第3実施例と同様であるので、その説明を省略する。
以上説明した本実施例によれば、運転状況推定部352が例えば渋滞であると判断した場合には、変速比差の小さいアシストギアが選択されるように、アシストギア決定部312から出力されたアシストギアの選択指令値をそのまま或いは変更して出力する。これにより、本実施例によれば、アクセルペダル操作に対するモータジェネレータ200の回転速度変化と、それによるトルク変動が緩やかになり、運転性が向上する。
また、本実施例によれば、運転状況推定部352が例えば山間路或いはスポーティ運転であると判定した場合には、変速比差の大きいアシストギアを選択するように、アシストギア決定部312から出力されたアシストギアの選択指令値をそのまま或いは変更して出力する。これにより、本実施例によれば、強めのコーストトルクと強めのアシストトルクを得ることができ、運転性が向上する。
さらに、本実施例によれば、運転状況推定部352が例えば高速道路或いはゆったり運転であると判定した場合には、変速比差の小さいアシストギアを選択するように、アシストギア決定部312から出力されたアシストギアの選択指令値をそのまま或いは変更して出力する。これにより、本実施例によれば、モータジェネレータ200の回転速度が小さくなり、騒音(機械音)が低下する。
本発明の第5実施例を図4,図9〜図15に基づいて説明する。
本実施例は第1乃至第4実施例のいずれかの改良例であり、蓄電装置8の状態が強制充電領域にあるとき、現在の走行ギアに基づいて選択された現在のアシストギア、すなわち第1乃至第4実施例のいずれかによって最終的に選択されたアシストギア(第1及び第2実施例の場合はアシストギア演算部310の出力,第3実施例の場合はアシストギア決定部312の出力,第4実施例の場合はアシストギア総合判定部353の出力)を、蓄電装置8の充電量を早く回復できるアシストギアに変更すると共に、エンジン6及びモータジェネレータ200のトルクを制御する例である。
蓄電装置8はその制御装置によって充電状態(以下、「SOC」という)が所定の範囲に管理されている。もし、蓄電装置8を、SOC=0[%]になるまで放電を続け、その後、100[%]まで充電するという、フル充放電が繰り返されると、蓄電装置8を構成する蓄電器の内部抵抗が増加して蓄電器が早く劣化してしまう。このため、蓄電装置8はSOCが0[%]や100[%]にならないように、SOCに基づいて充放電制御領域が設定され、例えば20[%]から80[%]の範囲内で充放電が繰り返されるように制御され、長寿命化が図られている。SOCに基づく充放電制御領域の設定例を図9に示す。
図9の設定例は、横軸にSOCをとり、0[%]と100[%]の間に、SOC_1(強制充電領域と非強制充電放電領域の境界設定値)と、SOC_2(強制放電領域と非強制充電放電領域の境界設定値)の2つの値を設定し(但し、SOC_1≦SOC_2)、強制充電領域,非強制充電放電領域,強制放電領域の3つの充放電制御領域を定義している。図9の設定例によれば、3つの充放電制御領域は次の通り設定される。
SOC≦SOC_1:強制充電領域
SOC≧SOC_2:強制放電領域
SOC_1<SOC<SOC_2:非強制充電放電領域
ここで、図9の設定例の場合、SOC_1とSOC_2とを跨いで頻繁にSOCが変動すると、SOCの変動に応じて領域が頻繁に切り換わる。これを避けるためには、図10に示す設定例のように、充放電制御領域の切り換わりにヒステリシスを持たせればよい。この場合、SOC_1,SOC_2,SOC_3,SOC_4の4つの値を設定し(ただし、SOC_1≦SOC_3<SOC_4≦SOC_2)、3つの充放電制御領域を設定すると、次の通りになる。
SOCが低下し、SOC_1以下:強制充電領域
強制充電領域後、SOCが上昇し、SOC_3以上:非強制充電放電領域
SOCが上昇し、SOC_2以上:強制放電領域
強制放電領域後、SOCが低下し、SOC_4以上:非強制充電放電領域
尚、本実施例では、SOCと充放電制御領域との関係としては、図9の関係を用いた場合を例に挙げて説明する。
蓄電装置8の充放電制御では、充放電制御領域が強制充電領域にある場合、蓄電装置8を充電して、できるだけ早くSOCを回復することが大変重要である。早くSOCを回復するためには、モータジェネレータ200の発電電力(回生トルク)を大きくする必要があるが、これによる出力軸トルクへの影響を考慮しなければならない。また、早くSOCを回復するためには、モータジェネレータ200を効率の良い動作点で動作させることが好ましい。それらの点について、図4のパターンを用いて説明する。
蓄電装置8の充電時におけるエンジントルクTeo,モータジェネレータ(回生)トルクTmo,出力軸トルクToの関係を示すパターンとしては、図4(b)(c)(d)の3つが考えられる。また、それらは、出力軸トルクToが駆動側にある場合(図4(b))と、出力軸トルクToが制動側にある場合(図4(c)(d))とに分けられる。
出力軸トルクToが制動側にある場合(例えばアクセルがオフの状態にあるとき)において、できるだけ早くSOCを回復するために、モータジェネレータ(回生)トルクTmoを大きくすると、図4(c)のパターンでは、回生を伴う場合と回生を伴わない場合で出力軸トルクToに大きな差ができてしまい、運転者に違和感を与えてしまう。これに対して図4(d)のパターンでは、出力軸トルクToが制動側に、エンジントルクTeoが駆動側になるので、出力軸トルクToとエンジントルクTeoとの差を回生トルクTmoにできる。図4(d)のパターンは、図4(c)のパターンに比べて、出力軸トルクToを制御しやすく、回生トルクTmoを大きくすることができる。
一方、図4(b)のパターンでは、エンジントルクTeoと出力軸トルクToとの差分が、モータジェネレータ(回生)トルクTmoとなる。モータジェネレータ(回生)トルクTmoをできるだけ大きく設定するためには、エンジントルクTeoをできるだけ大きく設定する必要がある。この場合、図11に示すエンジンの全負荷トルク特性から得られる全負荷トルクによる出力軸トルクをエンジントルクTeoに設定すると、エンジントルクTeoと出力軸トルクToとの差分がモータジェネレータ(回生)トルクTmoになる。しかし、図12に示すモータジェネレータの全負荷トルク特性から得られる全負荷トルクによる出力軸トルクを、モータジェネレータ(回生)トルクTmoが上回った場合、モータジェネレータ(回生)トルクTmoは、モータジェネレータの全負荷トルクによる出力軸トルクに制限されてしまう。この結果、モータジェネレータ(回生)トルクTmoとモータジェネレータの全負荷トルクによる出力軸トルクとの差分が出力軸トルクToに上乗せされ、その上乗せ分だけ余計に車両が加速し、運転者に違和感を与える場合がある。
尚、図4(b)で説明したことは、図4(d)のパターンにおいても同様に言える。すなわち図4(b)のパターンと図4(d)のパターンとを対比すると、図4(d)のパターンは、図4(b)のパターンの出力軸トルクToを駆動側から制動側に切り換えることにより得られる。従って、図4(d)のパターンは図4(b)のパターンと同様に考えることができる。
以上説明したことから、蓄電装置8が強制充電領域にあるときには、エンジン6の全負荷トルク、モータジェネレータ200の全負荷トルクを考慮することが大変重要であり、それにしたがってアシストギアを決定すると共に、モータジェネレータ200のトルクとエンジン6のトルクを制御する必要がある。
また、モータジェネレータ200は図13に示す効率特性を有する。図13に示す効率特性と蓄電装置8の充電時間と、の間には比例の関係がある。このため、モータジェネレータ(回生)トルクを一定とし、モータジェネレータ200を効率のより良い動作点において運転させる。これにより、モータジェネレータ200の発電電力が大きくなり、蓄電装置8を短時間で充電できる。
そこで、本実施例では、蓄電装置8の状態が強制充電領域にあるとき、エンジン6及びモータジェネレータ200の全負荷トルクと、モータジェネレータ200の効率とを考慮し、アシストギアを変更すると共に、エンジン6及びモータジェネレータ200のトルクを制御している。このため、本実施例では、図15に示すアシストギア変更部360を備え、図14に示す処理を行っている。
以下、図14,図15を用いて、アシストギアの変更処理、エンジン6及びモータジェネレータ200のトルク制御処理について説明する。
ステップ1000:強制充電領域の判定
アシストギア変更部360は、蓄電装置8の制御装置からSOCの情報を入力し、蓄電装置8の充放電制御領域が強制充電領域(閾値SOC_1)であるか否かを判定する。この結果、否定の場合には、アシストギア変更部360はアシストギア変更処理を終了する。この場合、アシストギア変更部360は、現在の走行ギア及びアシストギアの選択指令値をクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302にそのまま出力すると共に、現在のアシストギアに対応する回生トルクの指令値をモータジェネレータ制御部210に出力し、さらには、現在のアシストギアに対応する回生トルクと現在のアシストギアに対応する目標回生トルクとの比較に基づいて演算されたエンジン目標トルクの指令値をエンジン制御装置60に出力する。判定結果が肯定の場合には、アシストギア変更部360はステップ1001の処理を実行する。
ステップ1001:走行ギア及びアシストギアの選択指令値の取得
アシストギア変更部360は、走行ギア演算部301から出力された走行ギアの選択指令値を現在の走行ギアの選択指令値として、第1乃至第4実施例の最終的に選択されたアシストギアの選択指令値(第1及び第2実施例の場合はアシストギア演算部310の出力、第3実施例の場合はアシストギア決定部312の出力、第4実施例の場合はアシストギア総合判定部353の出力)を現在のアシストギアの選択指令値として、それぞれ取得する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1002の処理を実行する。
ステップ1002:モータジェネレータ200の動作点及び効率の取得
アシストギア変更部360はモータジェネレータ200の動作点を取得する。ここで、モータジェネレータ200の動作点とは、モータジェネレータ200のトルク及び回転速度の2つの変数によって決まる点を示す。従って、現在のモータジェネレータ200の動作点を取得するとは、現在のモータジェネレータ200のトルク指令値及び回転速度を取得することを意味する。現在のモータジェネレータ200のトルク指令値はアシストギア変更部360からモータジェネレータ制御部210に出力されるトルク指令値である。現在のモータジェネレータ200の回転速度は、モータジェネレータ200に設けられた回転センサの出力に基づいて検出された検出値、或いは第1及び第2中間軸150,160の回転速度を検出してその差分に遊星歯車機構180の変速比を乗算した演算値である。モータジェネレータ200の効率は、例えばモータジェネレータ200のトルク及び回転速度の2変数(動作点)によって決まる効率特性の配列データ(図13に示すように、モータジェネレータ200のトルク、回転速度、及び効率の3つの関係から予め設定されたテーブル(マップ))を用いて、モータジェネレータ200の動作点から演算する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1003に進む。
ステップ1003:エンジン6の動作点の取得
アシストギア変更部360は現在のエンジン6の動作点を取得する。ここで、エンジン6の動作点とは、エンジン6のトルク及び回転速度の2つの変数によって決まる点を示す。従って、現在のエンジン6の動作点を取得するとは、現在のエンジン6のトルク指令値及び回転速度を取得することを意味する。現在のエンジン6のトルク指令値はアシストギア変更部360からエンジン制御装置60に出力されるトルク指令値である。現在のエンジン6の回転速度はエンジン制御装置60から出力された値である。
この後、アシストギア変更部360はステップ1004に進む。
ステップ1004:エンジン6の全負荷トルクの取得
アシストギア変更部360はエンジン全負荷トルク演算部361を備えている。エンジン全負荷トルク演算部361は、ステップ1003で取得した現在のエンジン6の回転速度に対する全負荷トルクを、例えばエンジン6の回転速度から決定される全負荷トルク特性の配列データ(図11に示すように、エンジン6のトルク及び回転速度の両者の関係から予め設定されたテーブル(マップ))を用いて、ステップ1003で取得した現在のエンジン6の回転速度から演算する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1005に進む。
ステップ1005:要求駆動トルクの取得
アシストギア変更部360は要求出力軸トルク演算部362を備えている。要求出力軸トルク演算部362は、入力されたアクセル開度に基づいて要求駆動トルクを演算する。要求駆動トルクは、アクセル開度及び要求駆動トルクの両者の関係から予め設定されたテーブル(マップ)を用いて、アクセル開度から演算する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1006に進む。
ステップ1006:要求出力軸トルク及び出力軸回転速度の取得
要求出力軸トルク演算部362は現在の要求出力軸トルク及び出力軸回転速度を演算する。要求出力軸トルクは、ステップ1005で取得した現在の要求駆動トルクを最終減速機160のギア比で除算することにより得られる。現在の出力軸回転速度は、現在の駆動輪回転速度に最終減速機160のギア比を乗算することにより得られる。また、変速機100の出力軸120に回転センサを取り付けることにより、現在の出力軸回転速度は、その回転センサの出力信号から検出できる。
この後、アシストギア変更部360はステップ1007に進む。
ステップ1007:目標回生トルクの取得
アシストギア変更部360は目標回生トルク演算部364を備えている。目標回生トルク演算部364は、ステップ1004で取得したエンジン6の全負荷トルクから、それによる出力軸トルクを演算し、この演算によって得られた全負荷トルクによる出力軸トルクから、ステップ1006で得られた要求出力軸トルクを減算する。これにより、目標回生トルクが得られる。ここで、強制充電領域判定が成立しているので、目標回生トルクは現時点で得られる最大回生トルクになる。
この後、アシストギア変更部360はステップ1008に進む。
ステップ1008:各アシストギア毎のモータジェネレータの回転速度の取得
アシストギア変更部360はモータジェネレータ回転速度演算部363を備えている。モータジェネレータ回転速度演算部363は、ステップ1006で取得した出力軸回転速度、ステップ1001で取得した現在の走行ギアの選択指令値に対応するギア比、及び各アシストギアのギア比に基づいて、各アシストギアでのモータジェネレータ200の回転速度を演算する。
ここで、例えば走行ギアを3速、アシストギアを2速とした場合、モータジェネレータ200の回転速度Nmは、走行ギアのギア比をG3、アシストギアのギア比をG2、出力軸回転速度をNoとすると、数6の式から算出できる。尚、Gm1とGm2は、数式4において用いたものと同じものである。
Nm=(Gm2×G2−Gm1×G3)×No (数式6)
この後、アシストギア変更部360はステップ1009に進む。
ステップ1009:各アシストギア毎の回生トルクの取得
アシストギア変更部360は回生トルク演算部365を備えている。回生トルク演算部365は各アシストギアにおける回生トルクを取得する。まず、回生トルク演算部365は、図12に示すモータジェネレータ200の全負荷トルク特性のテーブル(マップ)を用いて、ステップ1008で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度から、各アシストギアにおいて発生可能なモータジェネレータ200の全負荷トルクを演算する。このとき、回生トルク演算部365は、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度と最大回転速度とを比較し、回転速度が最大回転速度を上回っている場合には、その回転速度に対応するアシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクを0に設定する。或いはそのアシストギアについてのステップ1010以降の処理をスキップするフラグを立てるなどの対応しても構わない。モータジェネレータ200の回転速度が最大回転速度以下のアシストギアについては次の処理を続ける。
次に、回生トルク演算部365は、演算された各アシストギアにおける全負荷トルクから数式4を用いて、モータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクを演算する。
次に、回生トルク演算部365は、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクと、ステップ1007で取得した目標回生トルクとを比較する。各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクが目標回生トルクを上回っている場合には、回生トルク演算部365は、そのアシストギアにおける回生トルクを目標回生トルクに設定する。各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクが目標回生トルク以下の場合には、そのアシストギアにおける回生トルクを、そのアシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクに設定する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1010に進む。
ステップ1010:各アシストギア毎のモータジェネレータの効率の取得
アシストギア変更部360はモータジェネレータ効率演算部366を備えている。まず、モータジェネレータ効率演算部366は、ステップ1009で取得した各アシストギアにおける回生トルクTmoから数式7を用いて、モータジェネレータ200のトルクTmを演算する。尚、Gm1,Gm2は数式4と同じものを、Giは第2中間軸160で選択されたギアの変速比を、Gjは第1中間軸150で選択されたギアの変速比をそれぞれ示す。
Tm=Tmo/(Gm2×Gi−Tm×Gm1×Gj) (数式7)
次に、モータジェネレータ効率演算部366は、図13に示すモータジェネレータ200の効率特性のテーブル(マップ)を用いて、ステップ1008で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度Nm、及び数式7から演算したモータジェネレータ200のトルクTmから、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の効率を演算する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1011に進む。
ステップ1011:アシストギアの決定
アシストギア変更部360はアシストギア決定部367を備えている。まず、アシストギア決定部367は、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の発電電力を、ステップ1008で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度、ステップ1009で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回生トルク、及びステップ1010で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の効率に基づいて演算する。モータジェネレータ200の回生動作で蓄電装置8に充電される電力(発電電力)Wgは、数式8に示す通り、モータジェネレータ200のトルクTmとモータジェネレータ200の回転速度Nmとの積にモータジェネレータ200の発電時の効率ηgを乗じることにより演算できる。
Wg=Tm×Nm×ηg (数式8)
次に、アシストギア決定部367は、アシストギアを決定するための判定を行う。変速機100の場合、走行ギアに対する選択可能なアシストギアの組み合わせは、走行ギアが奇数ギアの場合にはアシストギアは2速,4速の2通りあり、走行ギアが遇数ギアの場合にはアシストギアは1速,3速,5速の3通りある。そこで、アシストギア決定部367は、ステップ1001で取得した現在のアシストギアにおけるモータジェネレータ200の発電電力Wgと、他の選択可能なアシストギアにおけるモータジェネレータ200の発電電力Wgiとを用いて、数式9の判定を行う。K1は判定基準値である。
Wgi−Wg>K1 (数式9)
アシストギア決定部367は、数式9の判定式が成立しない場合には、アシストギアを現在のアシストギアに決定する。数式9の判定式が成立する場合には、アシストギア決定部367は、アシストギアを、現在のアシストギアとは異なる、選択可能な他のアシストギアに決定する。選択可能な他のアシストギアが複数ある場合には、例えばモータジェネレータ200の回転速度に起因する回転音を小さく抑えられるように、回転速度が小さい方のアシストギアに決定する。そして、アシストギア決定部367は、決定されたアシストギアの選択指令値と走行ギアの選択指令値とをクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302に出力する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1012に進む。
ステップ1012:決定されたアシストギアによる回生トルクの取得
アシストギア決定部367は、ステップ1009で取得した各アシストギアの回生トルクから、ステップ1011で決定したアシストギアにおける回生トルクを取得し、その回生トルクに対応する指令値をモータジェネレータ制御部210に出力する。
この後、アシストギア変更部360はステップ1013に進む。
ステップ1013:目標回生トルクと回生トルクの比較
アシストギア変更部360はエンジン目標トルク演算部368を備えている。エンジン目標トルク演算部368は、ステップ1012で取得された回生トルクと、ステップ1007で取得した目標回生トルクとを比較する。ここで、ステップ1009において、回生トルクを目標回生トルク以下に制限していることから、ステップ1013での比較は、目標回生トルクよりも回生トルクが小さいか、目標回生トルクと回生トルクとが等しいかを判定する。エンジン目標トルク演算部368は、目標回生トルクよりも回生トルクが小さいと判定(肯定)した場合にはステップ1014に進み、目標回生トルクと回生トルクとが等しいと判定した場合(否定)にはステップ1015に進む。
ステップ1014:エンジン6の目標トルクの取得
エンジン目標トルク演算部368は、ステップ1013の判定が肯定の場合には、まず、ステップ1012で取得した回生トルクと、ステップ1006で取得した要求出力軸トルクとを加算して出力軸トルクTeotを演算し、この出力軸トルクTeotを、数式10に示す通り、走行ギアの変速比Geによって除算し、エンジン6の目標トルクTetを演算する。このようにして得られた目標トルクTetはエンジン目標トルク演算部368からエンジン制御装置60に出力される。
Tet=Teot/Ge (数式10)
ステップ1015:エンジン6の目標トルクの取得
エンジン目標トルク演算部368は、ステップ1013の判定が否定の場合には、エンジン6の目標トルクTetを、その回転速度におけるエンジン6の全負荷トルクとする。このようにして得られた目標トルクTetはエンジン目標トルク演算部368からエンジン制御装置60に出力される。
この他の構成は第1乃至第4実施例のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
以上説明したように本実施例では、モータジェネレータ200の発電電力が最も大きなアシストギアを決定することができるので、蓄電装置8のSOCをできるだけ早く非強制充電放電領域に回復することができる。
本発明の第6実施例を説明する。
本実施例は第5実施例の改良例である。第5実施例では、現在の走行ギアに対してアシストギアを選択した。しかし、走行ギアも変速した方がより大きな発電電力を得られ、蓄電装置8のSOCの回復を早くできる場合がある。この場合、以下に述べる処理を図14のフローにおいて実行すればよい。
まず、ステップ1001の走行ギア及びアシストギアの取得において、現在の走行ギア及びアシストギアの選択指令値と同時に、現在の選択指令値以外の走行ギアとアシストギアの組み合わせを取得する。例えば変速機100において、現在の走行ギアが3速の場合を例に挙げて説明する。現在の走行ギア3速に対して選択可能なアシストギアは2速、4速の2つである。このうち、現在係合しているアシストギアが2速の場合、現在の走行ギアの選択指令値として3速、現在のアシストギアの選択指令値として2速を記憶する。この現在の選択指令値以外では、走行ギアが奇数段の場合はアシストギアとして偶数段が選択でき、走行ギアが偶数段の場合はアシストギアとして奇数段が選択できる。この様に現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせを全て記憶する。
次に、ステップ1003のエンジン6の動作点の取得において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについて、エンジン6の回転速度を算出する。
次に、ステップ1004のエンジン6の全負荷トルクの取得において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについて、エンジン6の全負荷トルクを算出する。
次に、ステップ1007の目標回生トルクの取得において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについて、エンジン6の全負荷トルクによる出力軸トルクに対する目標回生トルクを算出する。
次に、ステップ1008の各アシストギアでのモータジェネレータ200の回転速度の取得において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについてモータジェネレータ200の回転速度を算出する。
次に、ステップ1011のアシストギアを決定において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせについて、モータジェネレータ200の発電電力を比較し、数式9の判定にしたがって走行ギアとアシストギアとの組み合わせを決定する。
走行ギアとアシストギアの決定後、走行ギアとアシストギアを変更する。
この他の構成は第5実施例と同様であるので、その説明を省略する。
本実施例によれば、上記各処理を図14のフローに追加して走行ギア及びアシストギアの両方を決定するようにしたので、モータジェネレータ200からより大きな発電電力が得られ、蓄電装置8のSOCをより早く回復できる。
本発明の第7実施例を図16に基づいて説明する。
本実施例は第5及び第6実施例の改良例である。第5及び第6実施例では、目標回生トルクを、エンジン6の回転速度の全負荷トルクによる出力軸トルクと要求出力軸トルクの差で算出している。登坂路を走行中に勾配が大きくなると、エンジン6が全負荷トルクに近いトルクを出す場合もあり得る。このような状況で強制充電領域判定が成立した場合、エンジン6の発生可能な全負荷トルクによる出力軸トルクと要求出力軸トルクとの差が小さくなる場合や、エンジン6の発生可能な全負荷トルクによる出力軸トルクと要求出力軸トルクとが一致する場合も考えられる。この結果、ステップ1007において求める目標回生トルクが非常に小さくなる又はゼロという場合も起こり得る。このような場合、第5及び第6の実施例のようにアシストギアを決定しても、SOCを早く回復することができない。
そこで、本実施例では、回生トルク下限値を設定し、ステップ1007の後、第5及び第6の実施例で算出した目標回生トルクと回生トルク下限値とを比較し、数式11の判定を実施する(ステップ1016)。
目標回生トルク−回生トルク下限値>0 (数式11)
上記判定の結果が肯定の場合にはステップ1008に進み、第5及び第6実施例と同様にアシストギアを決定する。上記判定の結果が否定の場合にはステップ1017に進み、目標回生トルクに回生トルク下限値を代入した後、ステップ1008に進む。
また、ステップ1012において、決定したアシストギアによる回生トルクを取得した後、ステップ1018に進み、数式11の判定を実施する。
上記判定の結果が肯定の場合にはステップ1013に進み、ステップ1013の判定を実施する。上記判定の結果が否定の場合にはステップ1015に進み、エンジン6の目標トルクを全負荷トルクに設定する。
この他の構成は第5或いは第6実施例と同様であるので、その説明を省略する。
以上説明した本実施例によれば、回生トルク下限値を設定し、目標回生トルクが回生トルク下限値よりも小さい或いは等しい場合には、目標回生トルクを回生トルク下限値に設定するようにしたので、登坂路を走行中に勾配が大きくなるなど、エンジン6が全負荷トルクに近いトルクを出す状況で強制充電領域判定が成立した場合でも、目標回生トルクを大きくでき、蓄電装置8のSOCを早く回復することができる。
尚、ステップ1016の判定の結果が否定の場合、目標駆動トルクを維持できず、加速度が低下し運転者に違和感を与えてしまう場合がある。このとき、目標回生トルクに代入する回生トルク下限値をステップ状に設定すると、目標駆動トルクもステップ状に変化してしまうため、トルク段差に伴うショックが発生してしまう。これを回避するためには、目標回生トルクに代入する回生トルク下限値を、ゼロから回生トルク下限値まで徐々に値を変化させればよい。例えば時間に対する1次関数で変化させる方法や、1次遅れフィルタを施す方法などが考えられる。
また、運転者の意思に反して車両の加速度が低下した場合、車両の加速を維持させようと、運転者がアクセルを大きく踏み込む場合も考えられる。しかし、アクセルの踏み込み量に対応して車両が加速しないので、運転者に更なる違和感を与えてしまう。この運転者の違和感を緩和するためには、運転者に対し強制充電中であることを告知すればよい。例えば車室内スピーカーでのアナウンスや、インストゥルメント・パネル上に強制充電中を示すランプを点灯する方法などがある。
本発明の第8実施例を説明する。
本実施例は第7実施例の改良例であり、第7実施例において発生する加速度の低下の頻度を低減する例である。加速度の低下の頻度を低減するためには、強制充電領域を判定するための閾値を、図10に示すように、2つ(SOC_1,SOC_3)設定し、以下の通り処理すればよい。尚、第1閾値(SOC_3)は第2閾値(SOC_1)よりも高い値である。
まず、SOCが第1閾値(SOC_3)よりも低下したか或いはそれ以外かを判断する(第1判定)。SOCが第1閾値(SOC_3)よりも低下した場合にはモータジェネレータ200の力行動作を禁止し、蓄電装置8の消費エネルギーを最小に抑える。尚、モータジェネレータ200の力行動作を禁止しても、蓄電装置8のSOCは補機類の電力を蓄電装置8から供給する場合は徐々に低下する。
第1判定の成立後から、第2閾値によるSOCの低下判定(第2判定)までの間に走行状態が変化し、数式11の判定の結果、肯定の場合には回生を実施し、SOCを回復することができる。第1判定から第2判定が成立するまでの間にSOCを回復できず、第2判定が成立した場合には、図16に示す処理を実施する。
以上説明したように、本実施例では、SOCの判定閾値を2つ設定し、第2判定が成立する頻度を低減している。これにより、本実施例では、図16に示すの処理を実施することによる、車両の加速度の低下の発生頻度を低減できる。
本発明の第9実施例を図17,図18に基づいて説明する。
第5乃至第8実施例では、蓄電装置8のSOCが強制充電領域であるときのアシストギアの変更処理について説明した。本実施例では、蓄電装置8のSOCが強制放電領域であるときのアシストギアの変更処理について説明する。
強制放電領域の場合、できるだけ早く蓄電装置8のエネルギーを消費してSOCを非強制充電放電領域へ回復する必要がある。蓄電装置8のエネルギーを消費する場合、すなわち蓄電装置8の放電時におけるエンジントルクTeo,モータジェネレータ(アシスト)トルクTmo、出力軸トルクToの関係を示すパターンとしては図4(a)が考えられる。図4(a)に示すパターンでは、エンジントルクTeoとモータジェネレータ(アシスト)トルクTmoとの和が出力軸トルクToになる。蓄電装置8のエネルギーをモータジェネレータ200で消費するには、モータジェネレータ200を力行動作させれば良い。この場合、モータジェネレータ200のトルク分は数式12で表すことができる。
Tmo=To−Teo (数式12)
また、蓄電装置8のエネルギーをモータジェネレータ200で消費するには、モータジェネレータ200の効率がより悪い動作点となるようにアシストギアを選択すれば、より早く蓄電装置8のエネルギーを消費してSOCを非強制充電放電領域に回復できる。
そこで、本実施例では、蓄電装置8の状態が強制放電領域にあるとき、モータジェネレータ200の全負荷トルク及びモータジェネレータ200の効率を考慮し、アシストギアを変更する共に、エンジン6及びモータジェネレータ200のトルクを制御している。このため、本実施例では、図18に示すアシストギア変更部370を備え、図17に示す処理を行っている。
以下、図17,図18を用いて、アシストギアの変更処理,エンジン6及びモータジェネレータ200のトルク制御処理について説明する。
ステップ2000:強制放電領域の判定
アシストギア変更部370は、蓄電装置8の制御装置からSOCの情報を入力し、蓄電装置8の充放電制御領域が強制放電領域(閾値SOC_2)であるか否かを判定する。この結果、否定の場合には、アシストギア変更部370はアシストギア変更処理を終了する。この場合、アシストギア変更部370は、現在の走行ギア及びアシストギアの選択指令値をクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302にそのまま出力すると共に、現在のアシストギアに対応するアシストトルクの指令値をモータジェネレータ制御部210に出力し、さらには、現在のアシストギアに対応するアシストトルクと現在のアシストギアに対応する目標アシストトルクとの比較に基づいて演算されたエンジン目標トルクの指令値をエンジン制御装置60に出力する。判定結果が肯定の場合には、アシストギア変更部370はステップ2001の処理を実行する。
ステップ2001:走行ギア及びアシストギアの選択指令値の取得
アシストギア変更部370は、走行ギア演算部301から出力された走行ギアの選択指令値を現在の走行ギアの選択指令値として、第1乃至第4実施例の最終的に選択されたアシストギアの選択指令値(第1及び第2実施例の場合はアシストギア演算部310の出力、第3実施例の場合はアシストギア決定部312の出力、第4実施例の場合はアシストギア総合判定部353の出力)を現在のアシストギアの選択指令値として、それぞれ取得する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2002の処理を実行する。
ステップ2002:モータジェネレータ200の動作点及び効率の取得
アシストギア変更部370はモータジェネレータ200の動作点及び効率を取得する。それらの取得方法は第5乃至第8実施例と同様である。
この後、アシストギア変更部370はステップ2003に進む。
ステップ2003:エンジン6の動作点の取得
アシストギア変更部370は現在のエンジン6の動作点を取得する。その取得方法は第5乃至第8実施例と同様である。
この後、アシストギア変更部370はステップ2004に進む。
ステップ2004:エンジン6の目標トルクの設定
アシストギア変更部370はエンジン6の目標トルクをゼロに設定する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2005に進む。
ステップ2005:要求駆動トルクの取得
アシストギア変更部370は要求出力軸トルク演算部371を備えている。要求出力軸トルク演算部371は、入力されたアクセル開度に基づいて要求駆動トルクを演算する。要求駆動トルクの演算方法は第5乃至第8実施例と同様である。
この後、アシストギア変更部370はステップ2006に進む。
ステップ2006:要求出力軸トルク及び出力軸回転速度の取得
要求出力軸トルク演算部371は現在の要求出力軸トルク及び出力軸回転速度を演算する。要求出力軸トルクは、ステップ2005で取得した現在の要求駆動トルクを最終減速機160のギア比で除算することにより得られる。現在の出力軸回転速度は、現在の駆動輪回転速度に最終減速機160のギア比を乗算することにより得られる。また、変速機100の出力軸120に回転センサを取り付けることにより、現在の出力軸回転速度は、その回転センサの出力信号から検出できる。
この後、アシストギア変更部370はステップ2007に進む。
ステップ2007:目標アシストトルクの取得
アシストギア変更部370は目標アシストトルク演算部372を備えている。目標アシストトルク演算部372は、ステップ2006で取得した要求出力軸トルクを目標アシストトルクに設定する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2008に進む。
ステップ2008:各アシストギア毎のモータジェネレータの回転速度の取得
アシストギア変更部370はモータジェネレータ回転速度演算部373を備えている。モータジェネレータ回転速度演算部373は、ステップ2006で取得した出力軸回転速度、ステップ2001で取得した現在の走行ギアの選択指令値に対応するギア比、及び各アシストギアのギア比に基づいて、数式6から、各アシストギアでのモータジェネレータ200の回転速度を演算する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2009に進む。
ステップ2009:で、各アシストギア毎のアシストトルクの取得
アシストギア変更部370はアシストトルク演算部374を備えている。アシストトルク演算部374は各アシストギアにおけるアシストトルクを取得する。まず、アシストトルク演算部374は、図12に示すモータジェネレータ200の全負荷トルク特性のテーブル(マップ)を用いて、ステップ2008で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度から、各アシストギアにおいて発生可能なモータジェネレータ200の全負荷トルクを演算する。このとき、アシストトルク演算部374は、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度と最大回転速度とを比較し、回転速度が最大回転速度を上回っている場合には、その回転速度に対応するアシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクを0に設定する。或いはそのアシストギアについてのステップ2010以降の処理をスキップするフラグを立てるなどの対応しても構わない。モータジェネレータ200の回転速度が最大回転速度以下のアシストギアについては次の処理を続ける。
次に、アシストトルク演算部374は、演算された各アシストギアにおける全負荷トルクから数式4を用いて、モータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクを演算する。
次に、アシストトルク演算部374は、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクと、ステップ2007で取得した目標アシストトルクとを比較する。各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクが目標アシストトルクを上回っている場合には、アシストトルク演算部374は、そのアシストギアにおけるアシストトルクを目標アシストトルクに設定する。各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクが目標アシストトルク以下の場合には、そのアシストギアにおけるアシストトルクを、そのアシストギアにおけるモータジェネレータ200の全負荷トルクによる出力軸トルクに設定する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2010に進む。
ステップ2010:各アシストギア毎のモータジェネレータの効率の取得
アシストギア変更部370はモータジェネレータ効率演算部375を備えている。まず、モータジェネレータ効率演算部375は、ステップ2009で取得した各アシストギアにおけるアシストトルクTmoから数式13を用いて、モータジェネレータ200のトルクTmを演算する。尚、Gm1,Gm2は数式4と同じものを、Giは第2中間軸160で選択されたギアの変速比を、Gjは第1中間軸150で選択されたギアの変速比をそれぞれ示す。
Tm=Tmo/(Gm2×Gi−Tm×Gm1×Gj) (数式13)
次に、モータジェネレータ効率演算部375は、図13に示すモータジェネレータ200の効率特性のテーブル(マップ)を用いて、ステップ2008で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度Nm、及び数式13から演算したモータジェネレータ200のトルクTmから、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の効率を演算する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2011に進む。
ステップ2011:アシストギアの決定
アシストギア変更部370はアシストギア決定部376を備えている。まず、アシストギア決定部376は、各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の力行動作時における蓄電装置8の消費電力Wmを、ステップ2008で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の回転速度、ステップ2009で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200のアシストトルク、及びステップ2010で取得した各アシストギアにおけるモータジェネレータ200の効率に基づいて演算する。モータジェネレータ200の力行動作時における蓄電装置8の消費電力Wmは、数式14に示す通り、モータジェネレータ200のトルクTmとモータジェネレータ200の回転速度Nmとの積にモータジェネレータ200の力行動作時の効率ηmの逆数を乗じることにより演算できる。
Wm=Tm×Nm×(1/ηm) (数式14)
次に、アシストギア決定部376は、アシストギアを決定するための判定を行う。変速機100の場合、走行ギアに対する選択可能なアシストギアの組み合わせは、走行ギアが奇数ギアの場合にはアシストギアは2速,4速の2通りあり、走行ギアが遇数ギアの場合にはアシストギアは1速,3速,5速の3通りある。そこで、アシストギア決定部376は、数式14によって演算されたモータジェネレータ200の複数の消費電力Wmのうち、消費電力Wmが最大となるギアをアシストギアとして決定する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2012に進む。
ステップ2012:決定されたアシストギアによるアシストトルクの取得
アシストギア決定部376は、ステップ2009で取得した各アシストギアのアシストトルクから、ステップ2011で決定したアシストギアにおけるアシストトルクを取得し、そのアシストトルクに対応する指令値をモータジェネレータ制御部210に出力する。
この後、アシストギア変更部370はステップ2013に進む。
ステップ2013:目標アシストトルクとアシストトルクの比較
アシストギア変更部370はエンジン目標トルク演算部377を備えている。エンジン目標トルク演算部377は、ステップ2012で取得されたアシストトルクと、ステップ2007で取得した目標アシストトルクとを比較する。ここで、ステップ2009において、アシストトルクを目標アシストトルク以下に制限していることから、ステップ2013での比較は、目標アシストトルクよりもアシストトルクが小さいか、目標アシストトルクとアシストトルクとが等しいかを判定する。エンジン目標トルク演算部377は、目標アシストトルクよりもアシストトルクが小さいと判定(肯定)した場合にはステップ2014に進み、目標アシストトルクとアシストトルクとが等しいと判定した場合(否定)にはステップ2015に進む。
ステップ2014:エンジン6の目標トルクの取得
エンジン目標トルク演算部377は、ステップ2013の判定が肯定の場合には、まず、ステップ2007で取得した目標アシストトルクから、ステップ2012で取得したアシストトルクを減算して出力軸トルクTeotを演算し、この出力軸トルクTeotを、数式15に示す通り、走行ギアの変速比Geによって除算し、エンジン6の目標トルクTetを演算する。このようにして得られた目標トルクTetはエンジン目標トルク演算部377からエンジン制御装置60に出力される。
Tet=Teot/Ge (数式15)
ステップ2015:エンジン6の目標トルクの取得
エンジン目標トルク演算部377は、ステップ2013の判定が否定の場合には、エンジン6の目標トルクTetをゼロとする。このようにして得られた目標トルクTetはエンジン目標トルク演算部377からエンジン制御装置60に出力される。
この他の構成は第1乃至第4実施例のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
以上説明したように本実施例では、モータジェネレータ200の消費電力が最も大きなアシストギアを決定することができるので、蓄電装置8のSOCをできるだけ早く非強制充電放電領域に回復することができる。
本発明の第10実施例を説明する。
本実施例は第9実施例の改良例である。第9実施例では、ステップ2011のアシストギア決定処理において、選択可能なアシストギアそれぞれの場合について、モータジェネレータ200の消費電力が最大となるアシストギアを選択した。
しかし、ステップ2001で取得した現在のアシストギアとステップ2011で選択したアシストギアとによって決まるモータジェネレータ200の消費電力にほとんど差が無い場合には、アシストギアを変更する必要が無い。この場合、ステップ2011のアシストギアを決定する処理に以下の処理を追加すれば、不必要なアシストギアの変更を行わなくてもよい。
アシストギア決定部376は、現在のアシストギアにおけるモータジェネレータ200の消費電力Wmと、他の選択可能なアシストギアにおけるモータジェネレータ200の消費電力Wmiについて、数式16の判定を実施する。K2は判定基準値である。
Wmi−Wm>K2 (数式16)
アシストギア決定部376は、数式16の判定式が成立しない場合には、アシストギアを現在のアシストギアに決定する。数式16の判定式が成立する場合には、アシストギア決定部376は、アシストギアを、現在のアシストギアとは異なる、選択可能な他のアシストギアに決定する。そして、アシストギア決定部376は、決定されたアシストギアの選択指令値と走行ギアの選択指令値とをクラッチアクチュエータ駆動指令信号発生部302に出力する。
以上説明した本実施例では、現在のアシストギアと新たに選択されるアシストギアとによって決まるモータジェネレータ200の消費電力にほとんど差が無い場合には、アシストギアの変更を行わなくて済む。
本発明の第11実施例を説明する。
本実施例は第9及び第10実施例の改良例である。第9及び第10実施例では、現在の走行ギアに対してアシストギアを選択した。しかし、走行ギアも変速した方がより大きな消費電力を得られ、蓄電装置8のSOCの回復を早くできる場合がある。この場合、以下に述べる処理を図17のフローにおいて実行すればよい。
まず、ステップ2001の走行ギア及びアシストギアの取得において、現在の走行ギア及びアシストギアの選択指令値と同時に、現在の選択指令値以外の走行ギアとアシストギアの組み合わせを取得する。例えば変速機100において、現在の走行ギアが3速の場合を例に挙げて説明する。現在の走行ギア3速に対して選択可能なアシストギアは2速、4速の2つである。このうち、現在係合しているアシストギアが2速の場合、現在の走行ギアの選択指令値として3速、現在のアシストギアの選択指令値として2速を記憶する。この現在の選択指令値以外では、走行ギアが奇数段の場合はアシストギアとして偶数段が選択でき、走行ギアが偶数段の場合はアシストギアとして奇数段が選択できる。
次に、ステップ2003のエンジン6の動作点を取得において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについて、エンジン6の回転速度を算出する。
次に、ステップ2004のエンジン6の目標トルクのゼロ設定において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについて、エンジン6の目標トルクをゼロに設定する。
次に、ステップ2007の目標アシストトルクの取得において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについて、現在の走行ギアの選択可能な走行ギアに対する目標アシストトルクとして要求出力軸トルクを設定する。
次に、ステップ2008の各アシストギアでのモータジェネレータ200の回転速度の取得において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせそれぞれについてモータジェネレータ200の回転速度を算出する。
次に、ステップ2011のアシストギアの決定において、現在の走行ギアとアシストギアの組み合わせと、走行ギアとアシストギアの他の組み合わせについて、モータジェネレータ200の消費電力を比較し、消費電力が最大となる走行ギアとアシストギアの組み合わせを決定する。
走行ギアとアシストギアの決定後、走行ギアとアシストギアを変更する。
この他の構成は第9及び第10実施例と同様であるので、その説明を省略する。
本実施例によれば、上記各処理を図17のフローに追加して走行ギア及びアシストギアの両方を決定するようにしたので、モータジェネレータ200によってより大きな電力を消費でき、蓄電装置8のSOCをより早く回復できる。
本発明の第12実施例を説明する。
本実施例は第9乃至第11実施例の改良例である。第9乃至第11実施例では、ステップ2007の処理において、目標アシストトルクとして要求出力軸トルクを設定している。例えば一定速度で走行中の場合、要求出力軸トルクが走行抵抗分とほぼ等しくなる。このような状況で強制放電領域判定が成立した場合、要求出力軸トルクが小さく、目標アシストトルクを大きく設定できないので、モータジェネレータ200の消費電力が小さくなり、SOCをできるだけ早く非強制充電放電領域へ回復することができなくなる。このため、本実施例ではアシストトルク下限値を設定し、第9乃至第11実施例で算出した目標アシストトルクと比較して、数式17の判定処理を実施する。
目標アシストトルク−アシストトルク下限値>0 (数式17)
数式17の判定式が成立した場合には、第9乃至第11実施例にしたがってアシストギアを決定する。
数式17の判定式が成立しない場合には、モータジェネレータ200で蓄電装置8のエネルギーを消費できない。このような場合には、例えば、(1)エンジン6を切り離してモータジェネレータ200で走行する、(2)エンジン6を切り離さずにエンジン6の燃料を停止するなどして、エンジン6を負荷として用い、モータジェネレータ200で走行する、(3)ヒータなどの電気負荷を駆動して蓄電装置8のエネルギーを消費する、などの手段を講じるようにすればよい。
この他の構成は第9乃至第11実施例と同様であるので、その説明を省略する。
本実施例によれば、アシストトルク下限値を設定し、数式17の判定処理を実施するようにしたので、例えば一定速度で走行中の場合、要求出力軸トルクが走行抵抗分とほぼ等しくなるような状況においても、目標アシストトルクを大きく設定でき、モータジェネレータ200の消費電力を大きくして、SOCをできるだけ早く非強制充電放電領域へ回復することができる。
本発明の第1実施例であるハイブリッド自動車の駆動系の構成を示すブロック図。
図1のハイブリッド自動車に搭載された変速機の構成を示す機構図。
図2の変速機による動力伝達(トルク)の流れの一例を示す動作図。
図1のハイブリッド自動車におけるエンジンとモータジェネレータとのトルクの分配を示す分配図。
図2の変速機の制御装置の構成を示すブロック図。
本発明の第2実施例である変速機の制御装置の構成を示すブロック図。
本発明の第3実施例である変速機の制御装置の構成を示すブロック図。
図7−(a)のアシストギア決定部の構成を示すブロック図。
本発明の第4実施例である変速機の制御装置の構成を示すブロック図。
本発明の第5実施例を示す図であって、蓄電装置の充放電制御領域を示す図。
図9の充放電制御領域にヒステリシスを持たせたときの蓄電装置の充放電制御領域を示す図。
本発明の第5実施例を示す図であって、トルクと回転速度との関係で示されるエンジン全負荷トルク特性を示す特性図。
本発明の第5実施例を示す図であって、トルクと回転速度との関係で示されるモータジェネレータ全負荷トルク特性を示す特性図。
本発明の第5実施例を示す図であって、トルクと回転速度と効率との関係で示されるモータジェネレータ効率を示す特性図。
本発明の第5実施例である変速機の制御装置による制御動作を示すフローチャート。
本発明の第5実施例である変速機の制御装置のアシストギア変更部の構成(図14の制御動作を実行するための構成)を示すブロック図。
本発明の第7実施例である変速機の制御装置による制御動作を示すフローチャート。
本発明の第9実施例である変速機の制御装置による制御動作を示すフローチャート。
本発明の第9実施例である変速機の制御装置のアシストギア変更部の構成(図16の制御動作を実行するための構成)を示すブロック図。
図6に示す変速機の制御装置によるアップシフト動作を示すタイムチャート。
図6に示す変速機の制御装置によるダウンシフト動作を示すタイムチャート。
符号の説明
4 駆動輪ドライブシャフト
6 エンジン
100 変速機
110 入力軸
120 出力軸
121〜126 ドリブンギア
140 第1クラッチ
141 第2クラッチ
150 第1中間軸
151〜153 ドライブギア
160 第2中間軸
161〜163 ドライブギア
170 アイドルギア
200 モータジェネレータ
300 変速機制御装置