JP2010002655A - 定着装置に用いる定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】誘導発熱方式の定着装置に用いられる定着ベルト56であって、3層以上の金属層(酸化防止層513、模擬主発熱体層514、発熱制御層515、主発熱体層516、酸化防止層517)が積層された複合金属層を含み、複合金属層は、各層の熱膨張量の違いによるバイメタル効果が、ベルト周回経路の内側と外側とで、互いに打ち消しあうように、各層の熱膨張率と膜厚とが調整されている。
【選択図】図3
Description
特に、励磁コイルに交流電流を流すことによって発生する磁束を、フェライトコア等のコア材を用いて導電発熱層へ導くような構成にすることにより、発熱部の熱容量をかなり小さく設計することができるので、ウォームアップ時間を大幅に短縮することができる。
また上記定着装置において、定着温度よりも幾分高めのキュリー点を有する整磁合金を発熱部に用いることで、非通紙部の温度がある程度上昇したときに、自動的に非通紙部の位置の発熱部のみが整磁を失い、発熱量が低下する自己温度制御機能を備えることにより、非通紙部の過昇温を抑制する技術がある。
このような定着ベルトを、自己温度制御機能を備えさせつつ、誘導発熱方式により加熱するには、ローラや規制板等の、定着ベルトに接触する別部材に整磁合金を用い、これを発熱させて、別部材の熱を熱伝導させて間接的に加熱する方法や、定着ベルト内に整磁合金層を設けて、直接的に加熱する方法等が考えられる。
上記目的を達成するために、本発明に係る画像形成装置は、上記定着装置を備える画像形成装置である。
ここで、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置において、前記複合金属層は、2種以上の金属層がN層(Nは3以上の整数)積層されたものであり、M層目(2≦M≦N−1、Mは整数)の金属層の熱膨張率をα M、M+1層目の金属層の熱膨張率をα M+1、M−1層目の金属層の熱膨張率をα M−1とすると、α M<α M+1のときは、α M<α M−1であり、α M>α M+1のときは、α M>α M−1であることを特徴とすることもできる。
ここで、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置において、前記M+1層目の金属層と、前記M−1層目の金属層とは、熱膨張率、及び膜厚が略同一であることを特徴とすることもできる。
ここで、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置において、前記Nは5以上の整数であり、前記Mは、3以上、N−2以下であり、前記M+2層目の金属層と、前記M−2層目の金属層とは、熱膨張率、及び膜厚が略同一であることを特徴とすることもできる。
ここで、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置において、前記M層目の金属層は、パーマロイ層であることを特徴とすることもできる。
ここで、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置において、前記M+1層目の金属層、及び前記M−1層目の金属層は、パーマロイでない金属からなる導電層であることを特徴とすることもできる。
ここで、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置において、前記Nは5以上の整数であり、前記Mは、3以上、N−2以下であり、前記M+1層目の金属層、及び前記M−1層目の金属層は、銅であり、前記M+2層目の金属層、及び前記M−2層目の金属層は、銅よりも耐腐食性が高い金属からなる酸化防止層であることを特徴とすることもできる。
<概要>
実施の形態1は、誘導発熱方式の熱源を用いて、未定着画像を記録シートに溶融定着する定着装置を備える画像形成装置であって、定着ベルトを多層構造とし、各層の熱膨張量の違いによるバイメタル効果が、ベルト周回経路の内側と外側とで互いに打ち消しあうように、各層の熱膨張率と膜厚とを調整することにより、定着ベルトの長寿命化を図るものである。
1.画像形成装置の全体構成
図1は、実施の形態1における画像形成装置の全体構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態における画像形成装置1は、タンデム型カラーデジタルプリンタであり、画像プロセス部3、給送部4、定着装置5、制御部6を備え、ネットワーク(例えば社内LAN)に接続されて、社内の端末装置から印刷の実行指示を受付けると、その指示に従って、記録シート上にカラー画像を形成して出力する。
イエローのトナーによる画像を生成するにあたり、帯電器32Yが感光体ドラム31Yを一様に帯電させ、制御部6の制御により、光学部10が一様に帯電した感光体ドラム31Yへレーザ光Lを出射して静電潜像を形成し、形成された静電潜像に現像器33Yがイエローのトナーによる現像を行い、現像されたトナー像が中間転写ベルト11に1次転写され、1次転写後、感光体ドラム31Yに残留するトナーがクリーナ35Yによって除去される。
中間転写ベルト11に1次転写されるトナー像は、画像形成ユニットのそれぞれを通過する毎にそれぞれの色が重ねられ、最終的にフルカラーのトナー画像が生成される。
一方、給送部4は、主に記録シートの搬送を担う部分であり、記録シートSを納める給紙カセット41と、納められている記録シートSを搬送路43へ1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された記録シートSを送り出すタイミングを図るタイミングローラ対44と、2次転写ローラ45とを備え、記録シートSが2次転写位置46まで搬送され、中間転写ベルト11に生成されたフルカラーのトナー画像が、2次転写位置46において記録シートSに2次転写される。
定着後の記録シートSは排紙ローラ71等の駆動により排紙トレイ72へ排紙される。
制御部6は、画像形成装置1の全体の動作や温調等を一括して制御するコントローラであり、形成すべき画像のデータに基づいて、各画像形成ユニット別に光学部10の発光素子用の駆動信号を生成し、1次転写において各色のトナー像を正確に重ねたり、2次転写において記録シートSにトナー画像が正確に転写されるようにタイミングを調整する。
2.定着装置の詳細
図2は、定着装置5の構成を模式的に示す図である。
加熱ローラ51と加圧ローラ12とは互いに平行に配置され、いずれも回転可能に支持されており、また、加圧ローラ52は、加熱ローラ51へ向けて軸と垂直の方向に付勢され、加熱ローラ51と加圧ローラ52との間にニップが形成される。また、ニップの出口(図中右側)の近傍には、定着後の記録シートを加熱ローラ51から分離するための分離爪54が備えられている。
3.加熱ローラの詳細
図3は、加熱ローラ51の中心から表面までの層構造の概略を示す図である。
また、特に、本明細書では、定着ベルト56内の3層以上の金属層(本実施の形態では、酸化防止層513、模擬主発熱体層514、発熱制御層515、主発熱体層516、酸化防止層517)が積層された部分を、特に複合金属層と呼ぶことにする。
(a)芯金
芯金511は、加熱ローラ51の全体を支持する支持体であり、十分な耐熱性と強度とを有する必要があり、本実施の形態では、高温時に発熱制御層515が磁性を失ったときに逆磁界を発生させて元の磁束を打ち消す補助発熱制御層としての機能を兼ね備えているので、高温において発熱制御層515よりも低抵抗である電気抵抗率の低い非磁性材料を用いることが好ましい。従って、芯金511の比透磁率は0.99〜2.0の範囲が望ましく、実用的には0.99〜1.1の範囲がより望ましい。また、芯金511の体積抵抗率は、1.0〜10.0×10-8Ωmの範囲が望ましく、実用的には1.0〜2.0×10-8Ωmの範囲がより望ましい。
ここで、本明細書における 「高温」とは、過昇温状態である温度範囲を示し、より具体的には発熱制御層515のキュリー温度を超える温度を意味する。
(b)断熱層
断熱層512は、定着ベルト56において発生した熱を芯金511へ逃がさないようにし、かつ定着ベルト56のたわみを許容してニップ幅を大きく保ち、良好な印字品質を得るための層である。従って、断熱層512の材質は、熱伝導率が低く、かつ耐熱性および弾性を有するゴム材や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)が好ましく、また、ソリッド体とスポンジ体との2層構造のものを使用してもよい。
(c)発熱制御層
発熱制御層515は、常温において芯金511よりも適度に体積抵抗率の大きい磁性体の層であって、かつ定着温度と同程度のキュリー温度を有する材質を用いる。例えば発熱制御層515の比透磁率は、50〜2000の範囲が望ましく、実用的には100〜1000の範囲がより望ましい。また、キュリー温度より低温の温度範囲における発熱制御層515の体積抵抗率は、2〜200×10-8Ωmの範囲が望ましく、実用的には5〜100×10-8Ωmの範囲がより望ましい。また、発熱制御層515の厚みは、20〜200μmの範囲が望ましく、実用的には40〜100μmの範囲がより望ましい。さらには、目標とする定着温度が約180℃(170〜190℃)の場合には、キュリー温度を150〜220℃の範囲とするのが望ましく、理想的には180〜200℃の範囲とするのがより望ましい。
(d)模擬主発熱体層、主発熱体層
主発熱体層516は、磁束発生部53が発生する磁束を受けて誘導電流が誘起されて発熱する層であり、模擬主発熱体層514は、熱膨張量の違いによるバイメタル効果が、ベルト周回経路の内側と外側とで互いに打ち消しあうようにするために追加された調整用の層である。
(e)酸化防止層
酸化防止層513、及び酸化防止層517は、それぞれ、模擬主発熱体層514、及び主発熱体層516の酸化を防止するための層である。各酸化防止層が各酸化防止層と外気(空気)との接触を断ち、模擬主発熱体層514、及び主発熱体層516の腐食を抑制することができ、また主発熱体層516、酸化防止層517、及び弾性層518の接着が長期間に渡って良好に維持される。特に主発熱体層516が銅である場合には、銅における酸化皮膜の成長が激しく、酸化皮膜自体の強度が非常に弱いため、酸化防止層517が無いと酸化皮膜層内で剥離が発生しやすいので、より効果的である。
(f)弾性層
弾性層518は、トナー像に均一かつ柔軟に熱を伝え、トナー像が押しつぶされたり不均一な溶融となることによる画像ノイズの発生を防止するための層である。従って、弾性層518の材質は、耐熱性と弾性とを有するゴム材や樹脂材が好ましい。
また、弾性層518の硬度は、JIS硬度で1〜80度の範囲が望ましく、5〜30度の範囲がより望ましい。この範囲の硬度であれば、弾性層518の強度の低下や密着性の低下を防止しつつ、安定した定着性を確保できる。
(g)離型層
離型層519は、加熱ローラ51の最外層であり、記録シートとの離型性を高めるための層である。従って、離型層519の材質は、定着温度での使用に耐えられるとともにトナーに対する離型性に優れた、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)、PFEP (四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂、及びこれらを混合したものが好ましい。
なお、離型層519と弾性層518との接着力を向上させるために、プライマー等による接着処理を行ってもよい。また、離型層519の中に、必要に応じて、導電材、耐摩耗材、良熱伝導材等をフィラーとして添加してもよい。
(h)定着ベルトの製造方法の例
まず、後に酸化防止層513、及び酸化防止層517となるニッケル板と、後に模擬主発熱体層514、及び主発熱体層516となる銅板と、後に発熱制御層515となるパーマロイ板とをそれぞれ圧延し、これらを順番通りに重ねてクラッド化し、これに絞り加工、スピニング加工、DI加工(ドローイング・アイアニング加工)などの塑性加工を施して、無端状のベルトに成形する。続いて、当該ベルトの外周面に、弾性層518となるシリコーンゴムのシートと、離型層519となるフッ素ゴムのシートとを接着剤により接合し、定着ベルト56が完成する。ここで接着剤による接着の際には、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「プライマーC」を用いると効果的である。
4.加圧ローラの詳細
図2に示すように、加圧ローラ52は、中心から順に、芯金521、断熱層522、及び離型層523の3層構成になっている。
(a)芯金
芯金521は、加圧ローラ52の全体を支持する支持体であり、十分な耐熱性と強度とを有する必要がある。
(b)断熱層
断熱層522は、芯金521の外周に設けられ、ニップの熱を芯金521へ逃がさないようにするための層である。従って、断熱層522の材質は、熱伝導率が低く、かつ耐熱性を有する必要がある。
(c)離型層
離型層523は、加圧ローラ52の最外層であり、加熱ローラ51の離型層519と同様に、記録シートとの離型性を高めるための層である。従って、離型層523の材質は、離型層519と同様である。
5.磁束発生部の詳細
磁束発生部53は、加熱ローラ51の外周に対面するとともに、加熱ローラ51の回転軸方向に沿って、加熱ローラ51と平行に配置され、定着ベルト56及び定着ローラ55へ向けて磁束を発生させる。
(a)励磁コイル
励磁コイル531は、加熱ローラ51の長手方向に沿って巻かれたコイルであり、その横断面(図2参照)は、加熱ローラ51の外周に倣ってやや湾曲した形状となっている。また励磁コイル531には、高周波インバータ532が接続され、高周波電力が供給される。
(b)高周波インバータ
高周波インバータ532は、励磁コイル531に、20〜40kHz、100〜2000Wの高周波電力を供給する。
(c)磁性体コア
磁性体コア533は、磁気回路の効率を上げ、かつ磁気を遮蔽するためのものであり、メインコア533a、端部コア533b、裾コア533cを含む。メインコア533aは、横断面が図2に示すようなアーチ形状である。本実施の形態では、長さが約10mmのコア片を、加熱ローラ51の軸方向に13個配置している。なお、メインコア533aとして、中央部に加熱ローラ51側へ突出した部分がある断面が略「E」字の形状のものを使用することもでき、この形状のものを使用すれば、さらに発熱劾率を高めることができる。また、端部コア533bは、横断面が四角形状で長さが5〜10mmのコア片を、加熱ローラ51の両端部に配置したものである。また、裾コア533cは、横断面が四角形状のものを、加熱ローラ51の長手方向寸法に略対応した範囲に速続的に配置したものである。
(d)コイルボビン
コイルボビン534は、電線を巻いて励磁コイル531を形作るための空芯である。
(e)サーミスタ
サーミスタ535は、加熱ローラ51の表面に当接して配置され、加熱ローラ51の定着前の表面温度を検出する。
なお、加熱ローラ51の定着前の表面温度の検出は、サーミスタに限らず、他の非接触式の温度センサによって行ってもよい。
(f)制御部
制御部536は、加熱ローラ51の定着前の表面温度が適切な定着温度の範囲内となるように、定着処理時はサーミスタ535による検出結果に基づいて、高周波インバータ532を制御する。
<動作>
定着処理時には、図2中の矢印で示すように、加圧ローラ52が図中時計回りに回転駆動される。これにより、加熱ローラ51は、加圧ローラ52との摩擦力によって、図中反時計回りに従動回転される。なお、この駆動と従動との関係は逆であってもよい。
このとき、発熱制御層515がキュリー温度よりも低温であれば、発熱制御層515は透磁率が高い状態なので、シールド効果により、磁束は加熱ローラ51の内周側へほとんど漏れない。従って、発熱制御層515のキュリー温度よりも低温であれば、励磁コイル531が発生する磁束のほとんどは、主発熱体層516と発熱制御層515との厚さの中を加熱ローラ51の周方向に通って、磁束発生部53へ戻るので、これらの層では磁束密度が非常に高い。例えば、ウォームアップ時はこのような状態であるので、主発熱体層516と発熱制御層515とがともに発熱する。さらに本実施の形態では、発熱に寄与する層(主発熱体層516と発熱制御層515)の熱容量が小さく、かつ断熱層522によって定着ベルト56が断熱されていることから、より短時間で昇温させることができる。
表皮効果の程度は、以下の式1で表される。
ただし、δは浸透深さ(電流密度が表面の1/eになる深さ)、fは交番電圧の周波数、μは透磁率、ρは体積抵抗率である。ここで、浸透深さδ当たりの抵抗は、以下の式2に示す表皮抵抗Rで表され、このRを用いて導電層の発熱量Pは以下の式3で表される。
R = ρ/δ …(式2)
P = R・I2 … (式3)
ただし、Iは、渦電流である。
[変形例]
実施の形態1では、定着ベルト内の複合金属層の層構成を、酸化防止層513(ニッケル)、模擬主発熱体層514(銅)、発熱制御層515(パーマロイ)、主発熱体層516(銅)、酸化防止層517(ニッケル)の5層構造としたが、各層の熱膨張量の違いによるバイメタル効果が、ベルト周回経路の内側と外側とで互いに打ち消しあうように、各層の熱膨張率と膜厚とが調整されていれば、いかなる層構成であってもよい。例えば、複合金属層が、実施の形態1の定着ベルト56から酸化防止層517(ニッケル)を除いた4層構造としてもよいし、酸化防止層513(ニッケル)と模擬主発熱体層514(銅)とに代えて、模擬主発熱体層(ニッケル)とし、主発熱体層516(銅)と酸化防止層517(ニッケル)とに代えて、主発熱体層(ニッケル)とした3層構造としてもよい(以下に説明する図4に記載)。また模擬主発熱体層と主発熱体層の材質は同じでなくてもよいが、発熱制御層に対する膨張率の大小関係は同じでなければならない。
(a)第1の実験
まず、従来の定着ベルトにおける加熱時の変形量を調べた。
本実験では、パーマロイ30μm(発熱制御層)の上に、順に銅10μm(主発熱体層)、シリコーンゴム200μm(弾性層)、PFA30μm(離型層)を積層し、180℃まで加熱した時のベルトに生じる変形量を解析した。その結果、従来の定着ベルトの両端部に、全周に亘り0.1mm程度の変形が生じていることが確認された。
(b)第2の実験
次に、様々な層構成の定着ベルトについて、それぞれ180℃程度に加熱し、最大30万枚の通紙を行い、破損の有無を調べ、耐久性を判定した。
図4において、定着ベルトA、Bは、比較の為に検証した従来の定着ベルトであり、、定着ベルトC、D、Eは、本願の定着ベルトである。
定着ベルトAは、パーマロイ30μm(発熱制御層)の上に、順に銅10μm(主発熱体層)、ニッケル5μm(酸化防止層)、シリコーンゴム200μm(弾性層)、PFA30μm(離型層)を積層したものである。
定着ベルトCは、順に、ニッケル1μm(酸化防止層)、銅10μm(模擬主発熱体層)、パーマロイ30μm(発熱制御層)、銅10μm(主発熱体層)、ニッケル1μm(酸化防止層)、シリコーンゴム200μm(弾性層)、PFA30μm(離型層)を積層したものである。
定着ベルトEは、順に、ニッケル5μm(模擬主発熱体層)、パーマロイ30μm(発熱制御層)、ニッケル5μm(主発熱体層)、シリコーンゴム200μm(弾性層)、PFA30μm(離型層)を積層したものである。
また、定着ベルトC、D、Eの耐久性の判定結果は「○」であり、30万枚の通紙を行なっても破損には至らず、継続して使用可能であった。
<まとめ>
以上に説明したように、実施の形態1、及びその変形例によれば、定着ベルト内の3層以上の金属層が積層された複合金属層において、各層の熱膨張量の違いによるバイメタル効果が、ベルト周回経路の内側と外側とで互いに打ち消しあうように、各層の熱膨張率と膜厚とが調整されているので、バイメタル効果による定着ベルトの変形が非常に少なくなり、長期に亘り安定した定着性能を発揮することができ、耐久性を向上させた定着ベルトを提供することができる。
[実施の形態2]
<概要>
実施の形態2は、実施の形態1と定着装置内の加熱ローラの構成のみが事なり、定着ローラの外径を、定着ベルトの内径よりも小さくして、定着ベルトから定着ローラへ逃げる熱量を小さくし、ウォームアップ時間をさらに短縮するものである。
<構成>
1.画像形成装置の全体構成
実施の形態2の像形成装置は、図1に示す実施の形態1の画像形成装置1おいて、定着装置5を定着装置8に置き換えたものである。
2.定着装置の詳細
図5は、定着装置8の構成を模式的に示す図である。
図6は、加熱ローラ81の中心から表面までの層構造の概略を示す図である。
図6に示すように、加熱ローラ81は、中心から順に、芯金811、断熱層512、補助発熱制御層812、発熱制御層813、酸化防止層513、主発熱体層516、酸化防止層517、弾性層518、及び離型層519の9層構成になっている。ここで実施の形態1と同様に、芯金811と断熱層512とは接着されて、ローラ状の定着ローラ82を形成している。また、酸化防止層513、主発熱体層516、酸化防止層517、弾性層518、及び離型層519は互いに接着されて、無端ベルト状の定着ベルト83を形成している。また、補助発熱制御層812と発熱制御層813とは互いに接着されて、板状の摺接部材84を形成している。なお、定着ベルト83の内部に、定着ローラ82及び摺接部材84が挿入され、これらは互いに接着されていない。また、摺接部材84と定着ベルト83とは接触しており、摺接部材84と定着ローラ82とは接触していない。
以上のような構造により、定着装置8は、定着ベルト83と定着ローラ82との接触面積が小さいので、定着ベルト83から定着ローラ82へ逃げる熱量が小さく熱効率がよい。また、発熱制御層813を定着ベルト83内に設けていないので、その分定着ベルト83の熱容量を小さくできる。従って、ウォームアップ時間を短縮することができる。
(a)芯金
芯金811は、加熱ローラ81の全体を支持する支持体であり、十分な耐熱性と強度とを有する必要があるが、実施の形態1の芯金511のように、補助発熱制御層としての機能を兼ね備える必要はない。
(b)補助発熱制御層
補助発熱制御層812は、高温時に発熱制御層813が磁性を失ったときに逆磁界を発生させて元の磁束を打ち消す層である。従って、高温において発熱制御層813よりも低抵抗である電気抵抗率の低い非磁性材料を用いることが好ましい。従って、補助発熱制御層812の比透磁率は0.99〜2.0の範囲が望ましく、実用的には0.99〜1.1の範囲がより望ましい。また、補助発熱制御層812の体積抵抗率は、1.0〜10.0×10-8Ωmの範囲が望ましく、実用的には1.0〜2.0×10-8Ωmの範囲がより望ましい。
(c)発熱制御層
発熱制御層813は、常温において補助発熱制御層812よりも適度に体積抵抗率の大きい磁性体の層であって、かつ定着温度と同程度のキュリー温度を有する材質を用いる。例えば発熱制御層813の諸特性は、実施の形態1の発熱制御層515と同様である。また、発熱制御層813の厚みは、20〜1000μmの範囲が望ましく、実用的には40〜200μmの範囲がより望ましい。
(d)摺接部材の製造方法の例
後に補助発熱制御層812となる銅板と、後に発熱制御層813となるパーマロイ板とをそれぞれ圧延し、これらを順番通りに重ねてクラッド化し、これにプレス加工を施して成形し、摺接部材84が完成する。
(e)定着ベルトの製造方法の例
まず、後に酸化防止層513となるニッケル板と、後に主発熱体層516となる銅板と、後に酸化防止層517となるニッケル板とをそれぞれ圧延し、これらを順番通りに重ねてクラッド化し、これに絞り加工、スピニング加工、DI加工(ドローイング・アイアニング加工)などの塑性加工を施して、無端状のベルトに成形する。続いて、当該ベルトの外周面に、弾性層518となるシリコーンゴムのシートと、離型層519となるフッ素ゴムのシートとを接着剤により接合し、定着ベルト83が完成する。ここで接着剤による接着の際には、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「プライマーC」を用いると効果的である。
<まとめ>
以上に説明したように、実施の形態2においても、実施の形態1と同様の効果が得られ、バイメタル効果による定着ベルトの変形が非常に少なくなり、長期に亘り安定した定着性能を発揮することができ、耐久性を向上させた定着ベルトを提供することができ、また、小サイズの記録シートを連続通紙した場合であっても、部分的な過昇温が発生せず、安定した定着性能を発揮することができる。
[実施の形態3]
<概要>
実施の形態3は、実施の形態1、及び2と定着装置内の加熱ローラの構成のみが事なり、実施の形態2と同様に、定着ローラの外径を、定着ベルトの内径よりも小さくして、定着ベルトから定着ローラへ逃げる熱量を小さくし、ウォームアップ時間をさらに短縮するものである。
<構成>
1.画像形成装置の全体構成
実施の形態3の像形成装置は、図1に示す実施の形態1の画像形成装置1おいて、定着装置5を定着装置9に置き換えたものである。
2.定着装置の詳細
図7は、定着装置9の構成を模式的に示す図である。
図8は、加熱ローラ91の中心から表面までの層構造の概略を示す図である。
図8に示すように、加熱ローラ91は、中心から順に、芯金811、断熱層512、補助発熱制御層911、酸化防止層513、模擬主発熱体層514、発熱制御層515、主発熱体層516、酸化防止層517、弾性層518、及び離型層519の10層構成になっている。ここで実施の形態2と同様に、芯金811と断熱層512とは接着されて、ローラ状の定着ローラ82を形成している。また、酸化防止層513、模擬主発熱体層514、発熱制御層515、主発熱体層516、酸化防止層517、弾性層518、及び離型層519は互いに接着されて、無端ベルト状の定着ベルト56を形成している。また、補助発熱制御層911は単独で、板状の摺接部材92を形成している。なお、定着ベルト56の内部に、定着ローラ82及び摺接部材92が挿入され、これらは互いに接着されていない。また、摺接部材92と定着ベルト56とは接触しており、摺接部材92と定着ローラ82とは接触していない。
以上のような構造により、定着装置9は、定着ベルト56と定着ローラ82との接触面積が小さいので、定着ベルト56から定着ローラ82へ逃げる熱量が小さく熱効率がよい。
(a)補助発熱制御層
補助発熱制御層911は、高温時に発熱制御層515が磁性を失ったときに逆磁界を発生させて元の磁束を打ち消す層である。従って、高温において発熱制御層515よりも低抵抗である電気抵抗率の低い非磁性材料を用いることが好ましい。従って、補助発熱制御層911の諸特性は、実施の形態1の補助発熱制御層812と同様である。
(b)摺接部材の製造方法の例
後に補助発熱制御層911となる銅板をそれぞれ圧延し、これにプレス加工を施して成形し、摺接部材92が完成する。
<まとめ>
以上に説明したように、実施の形態3においても、実施の形態1と同様の効果が得られ、バイメタル効果による定着ベルトの変形が非常に少なくなり、長期に亘り安定した定着性能を発揮することができ、耐久性を向上させた定着ベルトを提供することができ、また、小サイズの記録シートを連続通紙した場合であっても、部分的な過昇温が発生せず、安定した定着性能を発揮することができる。
本発明によって、誘導発熱方式の定着装置に用いられる耐久性を向上させた定着ベルトを製造することができるので、その産業的利用価値は極めて高い。
3 画像プロセス部
4 給送部
5 定着部
6 制御部
10 光学部
11 中間転写ベルト
3Y、3M、3C、3K 画像形成ユニット
31Y、31M、31C、31K 感光体ドラム
32Y、32M、32C、32K 帯電器
33Y、33M、33C、33K 現像器
34Y、34M、34C、34K 1次転写ローラ
35Y、35M、35C、35K クリーナ
41 給紙カセット
42 繰り出しローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ対
45 2次転写ローラ
46 2次転写位置
51 加熱ローラ
52 加圧ローラ
53 磁束発生部
54 分離爪
55 定着ローラ
56 定着ベルト
71 排紙ローラ
72 排紙トレイ
81 加熱ローラ
82 定着ローラ
83 定着ベルト
84 摺接部材
91 加熱ローラ
92 摺接部材
511 芯金
512 断熱層
513 酸化防止層
514 模擬主発熱体層
515 発熱制御層
516 主発熱体層
517 酸化防止層
518 弾性層
519 離型層
521 芯金
522 断熱層
523 離型層
531 励磁コイル
532 高周波インバータ
533 磁性体コア
533a メインコア
533b 端部コア
533c 裾コア
534 コイルボビン
535 サーミスタ
536 制御部
811 芯金
812 補助発熱制御層
813 発熱制御層
911 補助発熱制御層
Claims (9)
- 誘導発熱方式の定着装置に用いられる定着ベルトであって、
3層以上の金属層が積層された複合金属層を含み、
前記複合金属層は、
各層の熱膨張量の違いによるバイメタル効果が、ベルト周回経路の内側と外側とで、互いに打ち消しあうように、各層の熱膨張率と膜厚とが調整されていること
を特徴とする定着ベルト。 - 前記複合金属層は、
2種以上の金属層がN層(Nは3以上の整数)積層されたものであり、
M層目(2≦M≦N−1、Mは整数)の金属層の熱膨張率をα M、
M+1層目の金属層の熱膨張率をα M+1、
M−1層目の金属層の熱膨張率をα M−1とすると、
α M<α M+1のときは、α M<α M−1であり、
α M>α M+1のときは、α M>α M−1であること
を特徴とする請求項1に記載の定着ベルト。 - 前記M+1層目の金属層と、前記M−1層目の金属層とは、熱膨張率、及び膜厚が略同一であること
を特徴とする請求項2に記載の定着ベルト。 - 前記Nは5以上の整数であり、
前記Mは、3以上、N−2以下であり、
前記M+2層目の金属層と、前記M−2層目の金属層とは、熱膨張率、及び膜厚が略同一であること
を特徴とする請求項3に記載の定着ベルト。 - 前記M層目の金属層は、パーマロイ層であること
を特徴とする請求項2に記載の定着ベルト。 - 前記M+1層目の金属層、及び前記M−1層目の金属層は、パーマロイでない金属からなる導電層であること
を特徴とする請求項5に記載の定着ベルト。 - 前記Nは5以上の整数であり、
前記Mは、3以上、N−2以下であり、
前記M+1層目の金属層、及び前記M−1層目の金属層は、銅であり、
前記M+2層目の金属層、及び前記M−2層目の金属層は、銅よりも耐腐食性が高い金属からなる酸化防止層であること
を特徴とする請求項6に記載の定着ベルト。 - 請求項1〜7のうちの何れか1項に記載の定着ベルトを備える定着装置。
- 請求項8に記載の定着装置を備える画像形成装置。
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