JP5834477B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
又、前記高イオン導電体は、定着温度よりも高温側において電気伝導度が急激に増加する相転移温度を有することとすることができる。さらに、前記高イオン導電体は、AgI又はCuIであることとすることができる。
以下、本発明に係る一形態の画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した場合を例にして説明する。
[1]プリンタの構成
先ず、本実施の形態に係るプリンタ1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプリンタ1の構成を示す図である。同図に示すように、このプリンタ1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、制御部60を備えている。
以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
作像部3Y、3M、3C、3Kの構成は、いずれも同様の構成であるため、以下、主として作像部3Yの構成について説明する。
作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、1次転写ローラ34Y、および感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナ35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。
形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各1次転写ローラにより、中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次1次転写された後、2次転写ローラ45による静電力の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。トナー像が2次転写された記録シートは、さらに定着装置5に搬送され、記録シート上のトナー像(未定着画像)が、定着装置5において加熱及び加圧されて記録シートに熱定着された後、排出ローラ71により排紙トレイ72に排出される。
繰り出しローラ42、タイミングローラ44等の各ローラは、搬送モータ(不図示)を動力源とし、歯車ギヤやベルトなどの動力伝達機構(不図示)を介して回転駆動される。この搬送モータとしては、例えば、高精度の回転速度の制御が可能なステッピングモータが使用される。
給紙部4から2次転写位置46に搬送され、2次転写ローラ45により中間転写
ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。
[2]定着装置の構成
図2は、定着装置5の構成を示す模式図である。同図に示すように、定着装置5は、定着ベルト51、摺接部材52と、定着ローラ53と、加圧ローラ54と、磁束発生部55と、を有し、定着ベルト51を電磁誘導により加熱して、未定着画像の形成されたシートを、定着ベルト51と加圧ローラ54との間の定着ニップに通し、未定着画像を熱定着する。
図3(a)に示すように、定着ベルト51は、補強層511、発熱制御層512、主発熱体層513、酸化防止層514、弾性層515、離型層516がこの順に積層されて構成される。補強層511は、定着ベルト51の強度を補強するための層であり、例えば、耐熱性樹脂で構成することができる。耐熱性樹脂としては、耐熱性と強度を充分確保するという観点から、ポリイミド樹脂を用いるのが望ましい。
発熱制御層512に用いる高イオン導電体としては、高温側で大きい電気伝導度を示す銀ハライド(例えば、ヨウ化銀(AgI)、ヨウ化銀ルビジウム(RbAg4I5)、銅ハライド(例えば、ヨウ化銅(CuI))、カルコゲナイト(例えば、硫化銀(Ag2S))、温度上昇とともに連続的に電気伝導度が上昇するハロゲン陰イオン導電体(例えば、フッ化鉛(PbF2)、フッ化ランタン(LaF2)、蛍石(CaF2))、アルミナ(Naβ)、ガルシア安定化ジルコニア(ZrO3+CaO)、イットリア安定化ジルコニア(ZrO3+Y2O3)、ガドリア安定化ジルコニア(ZrO2+Gd2O3)、1次元導電体(例えば、ボランダイト)、プロトン導電体(例えば、BaCeO2)などを用いることができる。発熱制御層512の厚みは、5〜200μm、望ましくは、20〜100μmの範囲内とすることが望ましい。
酸化防止層514の材料としては、非通気性の金属材料を用いることができる。又、主発熱体層513及び発熱制御層512の発熱性能への影響を少なくする観点から、酸化防止層514は、なるべく非磁性かつ低抵抗の金属材料で薄く形成することが望ましい。ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀(Ag)は、薄肉形成が可能で発熱性能への影響が少なく、弾性層515との接着性も良好であり、酸化防止層514の材料として用いるのに適している。金属材料を用いる場合の酸化防止層514の厚みは、0.5〜40μmの範囲内であることが望ましい。厚さが0.5μm未満ではピンホールが生じシール性が悪化し、厚さが40μmを超えると主発熱体層513及び発熱制御層512の発熱性能に影響し、特に発熱制御層512の過剰昇温防止効果に悪影響を与えるからである。
ポリイミド樹脂を用いる場合の酸化防止層514の厚みは、3〜70μmの範囲内であることが望ましい。
弾性層515は、トナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性層515を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。このため、弾性層515には耐熱性と弾性とを有するゴム材や樹脂材を用いる。弾性層515の材料としては、例えば、定着温度での使用に耐えられるシリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性エラストマーを用いることができる。
弾性層515の厚みは10〜800μmの範囲内であることが望ましく、より望ましくは100〜300μmの範囲内とするのがよい。厚さが10μm未満では厚さ方向に十分な弾力性を得ることが難しく、また、厚さが800μmを超えていると、主発熱体層513において発生した熱を定着ベルト51の外周面まで到達させることが難しくなるからである。
摺接部材52は、図3(b)に示すように、磁性層521と保護層522とがこの順に積層されて構成される。両層は互いに接着されて板状になっている。磁性層521は、磁束発生部55が発生する交番磁束を定着ベルト51の発熱制御層512及び主発熱体層513に導けるように、その全域が定着ベルト51の発熱制御層512及び主発熱体層513に近接している。保護層522は、磁性層521を摩擦磨耗から保護する層であり、その全域が定着ベルト51の補強層511に近接又は接触している。
定着ローラ53は、図3(c)に示すように、芯金531と断熱層532とが互いに接着されてローラ状になるように構成されている。芯金531は、定着ローラ53を支持する支持体であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金531の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
磁束発生部55は、定着ベルト51の外周に対面するとともに、定着ベルト51の回転軸方向に沿って、定着ベルト51と平行に配置されている。磁束発生部55は、図2に示すように励磁コイル551、磁性体コア552、コイルボビン553、サーミスタ554、高周波インバータ555を有している。
コイルボビン553は、電線を巻いて励磁コイル551を形作るための空芯である。サーミスタ554は、定着ベルト51の表面に当接して配置され、定着ベルト51の定着前の表面温度を検出する。なお、定着ベルト51の定着前の表面温度の検出は、サーミスタに限らず、他の非接触式の温度センサによって行ってもよい。高周波インバータ555は、励磁コイル551に、20〜40kHz、100〜2000Wの高周波電力を供給する。
定着処理時には、図2中の矢印で示すように、加圧ローラ54が図中時計回りに回転駆動される。これにより、定着ベルト51及び定着ローラ53は、加圧ローラ54との摩擦力によって、図中反時計回りに従動回転される。なお、この駆動と従動との関係は逆であってもよい。
そしてこのとき発熱制御層512(ここでは、発熱制御層512は、高イオン導電体のヨウ化銀(AgI)で構成されているものとする。)が、その相転移温度より低温の常温状態であれば、図4に示すように電気伝導度が低い(体積抵抗率が高い)状態にあるので、この状態では、交番磁束により誘導される渦電流は、発熱制御層512中にはほとんど流れず、ほとんどが発熱制御層512よりも電気伝導度が高い(体積抵抗率が低い)主発熱体層513中を流れる。このため、発熱制御層512は、ほとんど発熱せず、主として主発熱体層513が発熱する。
本実施の形態では、主発熱体層513が非磁性金属材であるが、非常に薄い層であるため、主発熱体層513による発熱量が大きい。このことは、次のように説明できる。一般に、高周波の交番磁界を印加した場合に、導電層に誘導される渦電流は、いわゆる表皮効果のために表面層に集中し、内部にはあまり流れない。
表皮効果の程度は、以下の式1で表される。
ただし、δは浸透深さ(電流密度が表面の1/eになる深さ)、fは交番電圧の周波数、μは透磁率、ρは体積抵抗率である。ここで、浸透深さδ当たりの抵抗は、以下の式2に示す表皮抵抗Rで表され、このRを用いて導電層の発熱量Pは以下の式3で表される。
R = ρ/δ …(式2)
P = R・I2 … (式3)
ただし、Iは、渦電流である。
このように、非通紙領域においては、相転移温度を超えると、発熱制御層512における体積抵抗率が大きく低下することにより、定着ベルト51における発熱量が全体として低下するので、非通紙領域における過剰昇温が有効に防止される。本実施の形態では、発熱制御層512と主発熱体層513とが連続するように積層されているので、主発熱体層513における温度上昇があると、当該温度上昇がすぐに発熱制御層512に伝達され、発熱制御層512においてすばやく、相転移を起こさせて、過剰昇温防止効果を発現させることができる。
なお、ヨウ化銀(AgI)が相転移を起こす相転移温度は、通常は147℃であるが、相転移温度は、その粒子サイズに依存し、粒子サイズが小さくなる程、相転移温度は、低くなる。従って、定着温度に応じて粒子サイズを調整することで、定着温度の近傍で定着温度よりも高温側で相転移が起こるように調整することができ、これにより、定着ベルト51の非通紙領域の温度が定着温度を超えると、すぐに相転移により、発熱制御層512の体積抵抗率を低下させ、効果的に過剰昇温防止効果を発現させることができる(例えば、特開2010−260759号公報、段落55、図8の記載参照)。
(1)補強層511(ポリイミドスリーブ)の成形工程
円筒状又は円柱状の芯体上にポリイミド前駆体溶液を塗布し、加熱して溶媒を除去するとともにポリイミド前駆体をイミド化して補強層511としてのポリイミドスリーブを成形する。ポリイミド前駆体溶液は、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶媒中で、約90℃以下で反応させることにより得られる。
又、芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニル等を用いることができる。
成形した補強層511の上に、発熱制御層512として、高イオン導電体をメッキやスパッタリングによって積層する。例えば、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に、高イオン導電体(ここでは、ヨウ化銀(AgI)とする。)の重量%が50%となるように、高イオン導電体を溶解し、当該溶解液にキシレンの重量%が50%となるように、キシレンを溶解し、さらに、キシレンを溶解した溶液に、ポリオールの重量%が1〜2%となるように、ポリオールを加え、ポリオール添加後の溶液を100℃の雰囲気下で、(1)で成形した補強層511にスプレーコートし、高イオン導電体から構成される発熱制御層512を成形する。
(3)定着ベルト51作成工程
(2)で成形した発熱制御層512の上に主発熱体層513、酸化防止層514を、化学メッキ又は電気メッキ加工によりこの順に積層し、その上に弾性層515、及び離型層516この順に被覆することにより、定着ベルト51を作成する。
[4]により作成した本実施の形態に係る定着ベルト51と、高イオン導電体の発熱制御層512を設けていないことを除き、定着ベルト51と同一構成の比較用定着ベルト1と、非磁性金属材の主発熱体層513の代わりに、磁性金属材のニッケル(Ni)を主発熱体層として用いた点を除いて、比較用定着ベルト1と同一構成の比較用定着ベルト2との3者の各定着ベルトについて、磁気結合の結合係数及び発熱効率の温度変化について調べた実験結果を図5に示す。なお、定着ベルト51と比較用定着ベルト1の主発熱体層513の材料としては厚みが10μmの銅を、比較用定着ベルト2の主発熱体層の材料として厚みが40μmのニッケルを用いた。又、定着ベルト51と比較用定着ベルト1については、摺接部材52を用い、当該部材の磁性層521の材料としては、厚みが40μmのニッケル(Ni)を用い、比較用定着ベルト2については、摺接部材52を用いなかった。
その結果、図6の符合601で示す定着ベルト51では、最大温度差が55℃であるの対し、符号602で示す比較用定着ベルト1では、87℃であった。この結果から、高イオン導電体を用いた定着ベルト51において、熱定着時の非通紙領域における過剰昇温防止効果があることが確認された。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(2)本実施の形態においては、記録シートの加熱体を定着ベルト51としたが、当該加熱体の形態は、ベルトの形態に限定されず、例えば、加熱ローラの形態とすることとしてもよい。具体的には、定着ベルト51と定着ローラ53との間に摺接部材52、空間SPを設けないこととし、定着ローラ53の断熱層532の上に、定着ベルトの各構成要素である、磁性金属で構成する補強層511、発熱制御層512、主発熱体層513、酸化防止層514、弾性層515、離型層516をこの順に積層して加熱ローラを構成し、記録シートの加熱体とすることとしてもよい。
3 画像プロセス部
3Y〜3K 作像部
4 給紙部
5 定着装置
10 露光部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
31Y 感光体ドラム
32Y 帯電器
33Y 現像器
34Y 1次転写ローラ
35Y クリーナ
41 給紙カセット
42 繰り出しローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ
45 2次転写ローラ
46 2次転写位置
51 定着ベルト
52 摺接部材
53 定着ローラ
54 加圧ローラ
55 磁束発生部
56 分離爪
60 制御部
71 排出ローラ
72 排紙トレイ
511 補強層
512 発熱制御層
513 主発熱体層
514 酸化防止層
515 弾性層
516、543 離型層
521 磁性層
522 保護層
531、541 芯金
532、542 断熱層
551 励磁コイル
552 磁性体コア
553 コイルボビン
554 サーミスタ
555 高周波インバータ
Claims (6)
- 交番磁束により発熱する発熱層を有する加熱回転体の外周面に加圧回転体を圧接して定着ニップを形成し、未定着画像の形成された記録シートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、
前記発熱層は、導電性の非磁性金属材で構成される第1の層と、前記第1の層よりも電気伝導度が低く、温度上昇に伴い、電気伝導度が上昇する高イオン導電体から構成される第2の層と、が積層されて構成されている
ことを特徴とする定着装置。 - 前記発熱層は、非導電性の耐熱性樹脂層上に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。 - 前記発熱層は、さらに磁性金属層を有し、
前記第1の層と前記第2の層との積層は、前記磁性金属層上に形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。 - 前記高イオン導電体は、定着温度よりも高温側において電気伝導度が急激に増加する相転移温度を有する
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の定着装置。 - 前記高イオン導電体は、AgI又はCuIである
ことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。 - 請求項1〜5の何れかに記載の定着装置を備える
ことを特徴とする画像形成装置。
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