JP5834477B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents

定着装置及び画像形成装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5834477B2
JP5834477B2 JP2011102977A JP2011102977A JP5834477B2 JP 5834477 B2 JP5834477 B2 JP 5834477B2 JP 2011102977 A JP2011102977 A JP 2011102977A JP 2011102977 A JP2011102977 A JP 2011102977A JP 5834477 B2 JP5834477 B2 JP 5834477B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
fixing
temperature
fixing belt
heat
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011102977A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012234065A (ja
Inventor
のぼる 米川
のぼる 米川
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Priority to JP2011102977A priority Critical patent/JP5834477B2/ja
Publication of JP2012234065A publication Critical patent/JP2012234065A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5834477B2 publication Critical patent/JP5834477B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Fixing For Electrophotography (AREA)
  • General Induction Heating (AREA)

Description

本発明は、プリンタ、複写機等の画像形成装置が備える定着装置に関し、特に定着装置用の加熱回転体の発熱層に関する。
従来、画像形成装置の定着装置として、電磁誘導加熱方式によるものが利用されている。この電磁誘導加熱方式では、交番磁束により発熱する、厚みが薄く、熱容量が小さい発熱部材(例えば、発熱ベルト)を用いて短時間で定着温度まで昇温させ、記録シートの熱定着動作を開始することができる。これにより、待機時において発熱部材を予熱しておく必要がなくなり、定着装置におけるエネルギー消費を少なくすることができる。
近年、電磁誘導加熱方式による発熱部材としては、磁性金属部材(例えば、ニッケル(Ni))に代えて発熱効率に優れた非磁性金属部材(例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag))が利用されるようになってきている。非磁性金属を発熱部材として用いた方が、磁性金属を用いた場合よりも、良好な発熱効率が得られるからである(後述する図5参照)。
例えば、特許文献1には、非磁性金属部材の膜厚を表皮深さより薄くすることにより、良好な発熱効率が得られることが記載されている。これにより、より短時間で発熱部材を昇温でき、昇温に要するエネルギー消費量をより少なくすることができる。
特許第3931589号公報
しかしながら、非磁性金属部材を発熱部材として用いた場合には温度の上昇と共に発熱効率が高まる傾向があるため、熱定着時に記録シートが通紙されない、非通紙領域では、記録シートとの接触による温度低下がなく、非通紙領域の温度が過剰に昇温してしまい、その後、過剰に昇温された領域に、サイズの大きい記録シートが通紙されて、トナー像の熱定着が行われると、例えば、端部でホットオフセットの問題が生じたり、中央部と端部で画質が不均一となったりして、画質低下を招くことになる。
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、非磁性金属部材を発熱部材として用いる電磁誘導加熱方式の定着装置において、簡易な構成で熱定着時における非通紙領域における過剰昇温を有効に防止することが可能な定着装置及び当該定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る定着装置は、交番磁束により発熱する発熱層を有する加熱回転体の外周面に加圧回転体を圧接して定着ニップを形成し、未定着画像の形成された記録シートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、前記発熱層は、導電性の非磁性金属材で構成される第1の層と、前記非磁性金属層よりも電気伝導度が低く、温度上昇に伴い、電気伝導度が上昇する高イオン導電体から構成される第2の層と、が積層されて構成されている。
ここで、前記発熱層は、非導電性の耐熱性樹脂層上に形成されていることができる。又、前記発熱層は、さらに磁性金属層を有し、前記非磁性金属材で構成される第1の層と前記高イオン導電体から構成される第2の層との積層は、前記磁性金属層上に形成されていることとすることができる。
又、前記高イオン導電体は、定着温度よりも高温側において電気伝導度が急激に増加する相転移温度を有することとすることができる。さらに、前記高イオン導電体は、AgI又はCuIであることとすることができる。
又、本発明の一形態に係る画像形成装置は、前記定着装置を備える画像形成装置とすることができる。
上記構成を備えることにより、温度上昇に伴い、電気伝導度が上昇し、体積抵抗率が低下するNTC特性を有する高イオン導電体から構成される第2の層と導電性の非磁性金属材で構成される第1の層とが積層されて加熱回転体の発熱層が構成されるので、熱定着時に非通紙領域が過剰に昇温すると昇温とともに前述の第2の層の体積抵抗率が低下し、その分、第2の層に電流が流れやすくなり、それに伴い、磁束を受けることにより発生する渦電流が、発熱層を流れる電流密度が減少するので、発熱層における発熱量が少なくなり、これにより非通紙領域における過剰昇温を防止することができる。
プリンタ1の構成を示す図である。 定着装置の構成を示す模式図である。 定着ベルト51、摺接部材52、及び定着ローラ53の詳細な構成を示す図である。 代表的な高イオン伝導体における電気伝導度の温度変化の具体例を示す図である。 定着ベルト51、比較用定着ベルト1及び2について磁気結合の結合係数及び発熱効率の温度変化について調べた実験結果を示す。 定着ベルト51と比較用定着ベルト1の両者の定着ベルトについて、小サイズ記録シートの連続通紙時の各定着ベルトにおける非通紙領域の熱定着時の温度上昇について調べた実験結果を示す。
(実施の形態)
以下、本発明に係る一形態の画像形成装置の実施の形態を、タンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という。)に適用した場合を例にして説明する。
[1]プリンタの構成
先ず、本実施の形態に係るプリンタ1の構成について説明する。図1は、本実施の形態に係るプリンタ1の構成を示す図である。同図に示すように、このプリンタ1は、画像プロセス部3、給紙部4、定着装置5、制御部60を備えている。
プリンタ1は、ネットワーク(例えばLAN)に接続され、外部の端末装置(不図示)や図示しない操作パネルから印刷指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各色のトナー像を形成し、これらを多重転写してフルカラーの画像を形成することにより、記録シートへの印刷処理を実行する。
以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表し、各再現色に関連する構成要素の番号にこのY、M、C、Kを添字として付加する。
画像プロセス部3は、作像部3Y、3M、3C、3K、露光部10、中間転写ベルト11、2次転写ローラ45などを有している。
作像部3Y、3M、3C、3Kの構成は、いずれも同様の構成であるため、以下、主として作像部3Yの構成について説明する。
作像部3Yは、感光体ドラム31Yと、その周囲に配設された帯電器32Y、現像器33Y、1次転写ローラ34Y、および感光体ドラム31Yを清掃するためのクリーナ35Yなどを有しており、感光体ドラム31Y上にY色のトナー像を作像する。
現像器33Yは、感光体ドラム31Yに対向し、感光体ドラム31Yに帯電トナーを搬送する。中間転写ベルト11は、無端状のベルトであり、駆動ローラ12と従動ローラ13に張架されて矢印C方向に周回駆動される。露光部10は、レーザダイオードなどの発光素子を備え、制御部60からの駆動信号によりY〜K色の画像形成のためのレーザ光Lを発し、作像部3Y、3M、3C、3Kの各感光体ドラムを露光走査する。
この露光走査により、帯電器32Yにより帯電された感光体ドラム31Y上に静電潜像が形成される。作像部3M、3C、3Kの各感光体ドラム上にも同様にして静電潜像が形成される。各感光体ドラム上に形成された静電潜像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各現像器により現像されて各感光体ドラム上に対応する色のトナー像が形成される。
形成されたトナー像は、作像部3Y、3M、3C、3Kの各1次転写ローラにより、中間転写ベルト11上の同じ位置に重ね合わされるように、中間転写ベルト11上にタイミングをずらして順次1次転写された後、2次転写ローラ45による静電力の作用により中間転写ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。トナー像が2次転写された記録シートは、さらに定着装置5に搬送され、記録シート上のトナー像(未定着画像)が、定着装置5において加熱及び加圧されて記録シートに熱定着された後、排出ローラ71により排紙トレイ72に排出される。
給紙部4は、記録シート(図1の符号Sで表す)を収容する給紙カセット41と、給紙カセット41内の記録シートを搬送路43上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラ42と、繰り出された記録シートを2次転写位置46に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラ44などを備えている。給紙カセットは、1つに限定されず、複数であってもよい。
記録シートとしては、大きさや厚さの異なる用紙(普通紙、厚紙)やOHPシートなどのフィルムシートを利用できる。給紙カセットが複数ある場合には、異なる大きさ又は厚さ又は材質の記録シートを複数の給紙カセットに収納することとしてもよい。
繰り出しローラ42、タイミングローラ44等の各ローラは、搬送モータ(不図示)を動力源とし、歯車ギヤやベルトなどの動力伝達機構(不図示)を介して回転駆動される。この搬送モータとしては、例えば、高精度の回転速度の制御が可能なステッピングモータが使用される。
記録シートは、中間転写ベルト11上のトナー像の移動タイミングに合わせて
給紙部4から2次転写位置46に搬送され、2次転写ローラ45により中間転写
ベルト11上のトナー像が一括して記録シート上に2次転写される。
[2]定着装置の構成
図2は、定着装置5の構成を示す模式図である。同図に示すように、定着装置5は、定着ベルト51、摺接部材52と、定着ローラ53と、加圧ローラ54と、磁束発生部55と、を有し、定着ベルト51を電磁誘導により加熱して、未定着画像の形成されたシートを、定着ベルト51と加圧ローラ54との間の定着ニップに通し、未定着画像を熱定着する。
定着ベルト51は、周回駆動される無端状のベルトであり、定着ベルト51の周回経路内側には、摺接部材52と定着ローラ53とが、互いに離れた状態で配されている。定着ローラ53は、定着ベルト51の周回経路の外側から加圧ローラ54により、定着ベルト51を介して押圧され、これにより、定着ベルト51と加圧ローラ54との間に定着ニップが形成される。又、定着ベルト51と定着ローラ53との間には空間SPが設けられている。
摺接部材52は、上面が定着ベルト51の内周側に沿って湾曲した曲面となっており、定着ベルト51の周回経路の内側の定着ニップに近接しない位置で、定着ベルト51の内周面に接触し、定着ベルト51を挟んで磁束発生部55とほぼ対向する位置に配設され、かつ定着ベルト51が周回駆動する際に、定着ベルト51の内周面と摺擦し、定着ベルト51の周回位置を規制するように固定されている。
図3は、定着ベルト51、摺接部材52、及び定着ローラ53の詳細な構成を示す図である。図3(a)は、定着ベルト51の詳細な構成を、図3(b)は、摺接部材52の詳細な構成を、図3(c)は、の定着ローラ53の詳細な構成をそれぞれ示す。
図3(a)に示すように、定着ベルト51は、補強層511、発熱制御層512、主発熱体層513、酸化防止層514、弾性層515、離型層516がこの順に積層されて構成される。補強層511は、定着ベルト51の強度を補強するための層であり、例えば、耐熱性樹脂で構成することができる。耐熱性樹脂としては、耐熱性と強度を充分確保するという観点から、ポリイミド樹脂を用いるのが望ましい。
又、補強層511を耐熱性樹脂の代わりに磁性金属で構成することとしてもよい。磁性金属としては例えば、ニッケル(Ni)、ステンレス(SUS)、パーマロイなど比透磁率の高い材料を用いることができる。補強層511として磁性金属を用いる場合には、摺接部材54を不要とすることができる。磁性金属を用いる場合の補強層511の比透磁率は、50〜2000の範囲内であることが望ましい。又、補強層511の厚さは、5〜80μmの範囲内であることが望ましい。
発熱制御層512は、熱定着時に記録シートが通紙されない、定着ベルト51の非通紙領域における過剰昇温を防止するための層であり、高イオン導電体から構成される。高イオン導電体とは、イオン結合性の高い化合物の内、その化合物の融点より低い温度領域で電気伝導性を有し、温度上昇とともに電気伝導度が指数関数的(両対数グラフにおいて直線的)に増加する性質又は電気伝導度が急激に増加する相転移温度を有し、相転移温度を超えると電気伝導度が指数関数的に増加する性質を有する物質のことをいう。
図4は、代表的な高イオン導電体における電気伝導度の温度変化の具体例を示す図である。同図に示すグラフの縦軸は、電気伝導度(σ)の常用対数(logσ)を、横軸は温度を示し、温度のスケール(目盛り)は、常用対数で表されている。同図においては、ヨウ化銀(α―AgI、β―AgI)、ナトリウムイオン伝導体(NaZrSiPO12)、ハロゲン陰イオン伝導体(LaF)、イットリア安定化ジルコニア(ZrO+Y)、ガルシア安定化ジルコニア(ZrO+CaO)の各高イオン導電体の電気伝導度の温度変化が示されている。同図に示すように、温度の上昇に伴い、各高イオン導電体の電気伝導度σは、指数関数的に(横軸の温度の常用対数に対し、縦軸の常用対数で示す電気伝導度(logσ))が直線的に)上昇する傾向を示すか又は相転移温度までは非指数関数的に増加し、相転移温度に達すると、急激に電気伝導度が増加し、相転移温度を超えると、温度の上昇と共に電気伝導度が指数関数的に上昇する傾向を示す。その上昇率は、ヨウ化銀(AgI)、ハロゲン陰イオン伝導体(LaF)、イットリア安定化ジルコニア(ZrO+Y)、ガルシア安定化ジルコニア(ZrO+CaO)において特に大きい。
中でもヨウ化銀(AgI)は、温度上昇に伴い、約150℃でβ―AgIからα―AgIに相転移される時に、電気伝導度σが飛躍的に上昇する。さらに、α―AgIに相転移後も、電気伝導度σは温度上昇に伴い、指数関数的に増加する。このように、高イオン導電体は、温度上昇と共に、電気伝導度が指数関数的に又は相転移により急激に上昇するため、温度上昇と共に体積抵抗率が有意に低下するという優れたNTC特性を示す。
定着ベルト51の非通紙領域では、記録シートの熱定着時に通紙される記録シートによって定着ベルト51が冷やされないため、連続通紙されたとき、通紙領域に比べ、温度が高温になるが、発熱制御層512を高イオン導電体で構成することにより、高温になった領域の体積抵抗率が大きく低下し、これにより、発熱制御層512に電流が流れやすくなり、それに伴い、磁束を受けることにより発生する渦電流が、主発熱体層513を流れる電流密度が大きく減少し、その分、主発熱体層513における発熱量が少なくなる。
一方、発熱制御層512に流れる渦電流量は、増加するが、体積抵抗率が著しく低下しているため、発熱制御層512における発熱量は、非通紙領域においてほとんど増加しない。これにより非通紙領域における過剰昇温を防止することができる。
発熱制御層512に用いる高イオン導電体としては、高温側で大きい電気伝導度を示す銀ハライド(例えば、ヨウ化銀(AgI)、ヨウ化銀ルビジウム(RbAg)、銅ハライド(例えば、ヨウ化銅(CuI))、カルコゲナイト(例えば、硫化銀(AgS))、温度上昇とともに連続的に電気伝導度が上昇するハロゲン陰イオン導電体(例えば、フッ化鉛(PbF)、フッ化ランタン(LaF)、蛍石(CaF))、アルミナ(Naβ)、ガルシア安定化ジルコニア(ZrO+CaO)、イットリア安定化ジルコニア(ZrO+Y)、ガドリア安定化ジルコニア(ZrO+Gd)、1次元導電体(例えば、ボランダイト)、プロトン導電体(例えば、BaCeO)などを用いることができる。発熱制御層512の厚みは、5〜200μm、望ましくは、20〜100μmの範囲内とすることが望ましい。
主発熱体層513は、磁束発生部55が発生する交番磁界による磁束(以下、「交番磁束」という。)を受けることにより、渦電流が誘起されて発熱する層である。主発熱体層513は、銅、銀などの非磁性金属材で構成される。主発熱体層513の厚みは、5〜20μmの範囲内の薄い層で形成される。本実施の形態では主発熱体層513の内側の近傍に後述する透磁率の高い磁性層521が形成されているので、非磁性金属材に交番磁束を通すことができる。又、主発熱体層513は、非常に薄い層で形成されているので、交番磁束により誘起される渦電流が主発熱体層513全体に流れたとしても電流密度が大きく、良好な発熱量を得ることができる。このように発生した熱は、主発熱体層513上に積層されている、酸化防止層514、弾性層515、離型層516を介して、定着ベルト51の表面へ伝達される。
酸化防止層514は、主発熱体層513の酸化を防止するための層である。酸化防止層514は、主発熱体層513と外気との接触を断つことにより、主発熱体層513の腐食を抑制し、主発熱体層513と弾性層515との接着を長期間に渡って良好に維持する。
酸化防止層514の材料としては、非通気性の金属材料を用いることができる。又、主発熱体層513及び発熱制御層512の発熱性能への影響を少なくする観点から、酸化防止層514は、なるべく非磁性かつ低抵抗の金属材料で薄く形成することが望ましい。ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、銀(Ag)は、薄肉形成が可能で発熱性能への影響が少なく、弾性層515との接着性も良好であり、酸化防止層514の材料として用いるのに適している。金属材料を用いる場合の酸化防止層514の厚みは、0.5〜40μmの範囲内であることが望ましい。厚さが0.5μm未満ではピンホールが生じシール性が悪化し、厚さが40μmを超えると主発熱体層513及び発熱制御層512の発熱性能に影響し、特に発熱制御層512の過剰昇温防止効果に悪影響を与えるからである。
又、酸化防止層514の材料として金属材料を用いる代わりに、ポリイミド樹脂を用いることとしてもよい。ポリイミド樹脂は絶縁体であるため、主発熱体層513の発熱性能への影響はないが、金属材料に比べ若干の通気性を有するため、
ポリイミド樹脂を用いる場合の酸化防止層514の厚みは、3〜70μmの範囲内であることが望ましい。
厚みが3μm未満であるとシール性が不十分となり、酸化被膜が成長してしまい、厚みが70μmを超えると、主発熱体層513で発生した熱を定着ベルト51の外周面まで到達させることが難しく、熱効率が悪化するからである。
弾性層515は、トナー像に均一かつ柔軟に熱を伝えるための層である。弾性層515を設けることにより、トナー像が押しつぶされたり、トナー像が不均一に溶融されたりするのを防止し、画像ノイズの発生を防止することができる。このため、弾性層515には耐熱性と弾性とを有するゴム材や樹脂材を用いる。弾性層515の材料としては、例えば、定着温度での使用に耐えられるシリコーンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性エラストマーを用いることができる。
又、弾性層515の熱伝導性の向上や補強等を図るため、各種の充填材、例えば、熱伝導性を向上させるために、ダイヤモンド、銀、銅、アルミニウム、大理石、ガラス等を、実用的には、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、酸化ベリリウム等を混入させることとしてもよい。
弾性層515の厚みは10〜800μmの範囲内であることが望ましく、より望ましくは100〜300μmの範囲内とするのがよい。厚さが10μm未満では厚さ方向に十分な弾力性を得ることが難しく、また、厚さが800μmを超えていると、主発熱体層513において発生した熱を定着ベルト51の外周面まで到達させることが難しくなるからである。
又、弾性層515の硬度は、JIS硬度で1〜80度の範囲が望ましく、5〜30度の範囲がより望ましい。この範囲の硬度であれば、弾性層515の強度の低下や密着性の低下を防止しつつ、安定した定着性を確保できる。硬度がこの範囲となるシリコーンゴムとしては、例えば、1成分系、2成分系、あるいは3成分系以上のシリコーンゴムや、LTV(Low Temperature Vulcanizable:低温加硫)型、RTV (Room Temperature Vulcanizable:常温加硫型)、HTV(High Temperature Vulcanizable:高温加硫)型、縮合型、及び付加型のシリコーンゴムが使用できる。本実施の形態では、JIS硬度10度で厚さ200μmのシリコーンゴムを使用している。
離型層516は、定着ベルト51の最外層であり、記録シートとの離型性を高めるための層である。離型層516の材料としては、定着温度での使用に耐えられるとともにトナーに対する離型性に優れた、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)、PTFE(四フッ化エチレン)、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化エチレン共重合体)、PFEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体)等のフッ素樹脂、及びこれらを混合したものが好ましい。
又、離型層516の厚みは、5〜100μmの範囲が望ましく、10〜50μmの範囲がより望ましい。なお、離型層516と弾性層515との接着力を向上させるために、プライマー等による接着処理を行ってもよい。また、離型層516の中に、必要に応じて、導電材、耐摩耗材、良熱伝導材等をフィラーとして添加してもよい。
摺接部材52は、図3(b)に示すように、磁性層521と保護層522とがこの順に積層されて構成される。両層は互いに接着されて板状になっている。磁性層521は、磁束発生部55が発生する交番磁束を定着ベルト51の発熱制御層512及び主発熱体層513に導けるように、その全域が定着ベルト51の発熱制御層512及び主発熱体層513に近接している。保護層522は、磁性層521を摩擦磨耗から保護する層であり、その全域が定着ベルト51の補強層511に近接又は接触している。
磁性層521は、磁性金属材で構成され、磁性層521の比透磁率は、20〜2000の範囲内とし、望ましくは、150〜1000の範囲内とするのがよい。又、磁性層521の体積抵抗率は、5〜1000×10−8Ωmの範囲内とし、望ましくは、50〜500Ωmの範囲内とするのがよい。この磁性層521には、高温において発熱制御層512よりも高抵抗である材料を用いるのがよい(ここでいう「高温」とは、定着ベルト51が過剰昇温状態にあるときの温度、具体的には、定着温度(例えば、150℃)を超えた温度範囲の温度のことをいう。)。例えば、壁厚が0.2〜2.0mm程度の鉄製のものを磁性層521として用いることができる。或いは、比透磁率及び体積抵抗率が上記の範囲内にあるものであれば、ニッケル(Ni)、パーマロイ等を磁性層521として用いることができる。
保護層522は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂系材料で構成される、厚みが10〜50μm程度の層である。
定着ローラ53は、図3(c)に示すように、芯金531と断熱層532とが互いに接着されてローラ状になるように構成されている。芯金531は、定着ローラ53を支持する支持体であり、耐熱性と強度を有する材料から構成される。芯金531の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス等を用いることができる。
断熱層532は、定着ベルト51が発熱した熱を芯金531に逃がさないようにするための層である。断熱層532の材料としては、熱伝導率が低く、耐熱性及び弾性を有するゴム材や樹脂材のスポンジ体(断熱構造体)を用いるのが望ましい。定着ベルト51のたわみを許容し、ニップ幅を広くすることができるからである。断熱層532を、ソリッド体とスポンジ体との2層構造にしてもよい。シリコンスポンジ材を断熱層532として用いる場合には、その厚さを1〜10mmとするのが望ましい。さらに望ましくは、2〜7mmとするのがよい。又、断熱層532の硬度は、アスカーC硬度で20度〜60度の範囲内であることが望ましく、さらに望ましくは30度〜50度の範囲内とするのがよい。
図2の説明に戻って、加圧ローラ54は、芯金541の周囲に、断熱層542を介して離型層543が積層されてなる。芯金541としては、例えば、壁厚3mmのアルミ製のパイプを用いることができる。強度が確保できればPPS(ポリフェニレンサルファイド)のような耐熱性の材質のモールドパイプを用いることとしてもよい。鉄パイプも使用可能であるが、電磁誘導の影響を受けにくい非磁性金属材のパイプを用いる方が好ましい。
断熱層542は、厚みが3〜10mmの範囲内のシリコーンスポンジゴムの層から構成される。断熱層532をシリコーンゴムとシリコーンスポンジとの2重構造としてもよい。離型層543は、厚みが10〜50μmのPTFE、PFA等のフッ素系樹脂から構成される。
磁束発生部55は、定着ベルト51の外周に対面するとともに、定着ベルト51の回転軸方向に沿って、定着ベルト51と平行に配置されている。磁束発生部55は、図2に示すように励磁コイル551、磁性体コア552、コイルボビン553、サーミスタ554、高周波インバータ555を有している。
励磁コイル551は、定着ベルト51の長手方向に沿って巻かれたコイルであり、その横断面(図2参照)は、定着ベルト51の外周に倣ってやや湾曲した形状となっている。また励磁コイル551には、高周波インバータ555が接続され、高周波電力が供給される。これにより、励磁コイル551は、所定周波数の交番磁界を発生し、定着ベルト51を加熱する。
本実施の形態では、励磁コイル551の巻き線として、細い素線を数十〜数百本束ねてリッツ線としたものを使用している。また励磁コイル551は通電時に自己発熱するので、高温でも絶縁性を保てるように、巻き線に耐熱性の樹脂が被覆されたものを使用している。さらに、例えばファン等によって、励磁コイル551を空冷することが望ましい。なお、本実施の形態の励磁コイル551は、その長手方向に一繋がりのものであり、複数個に分断されてはいない。
磁性体コア552は、磁気回路の効率を上げ、かつ磁気を遮蔽するためのものであり、メインコア552a、端部コア552b、裾コア552cを含む。メインコア552aは、横断面が図2に示すようなアーチ形状である。本実施の形態では、長さが約10mmのコア片を、定着ベルト51の回転軸方向に13個配置している。なお、メインコア552aとして、中央部に定着ベルト51側へ突出した部分がある断面が略「E」字の形状のものを使用することもでき、この形状のものを使用すれば、さらに発熱劾率を高めることができる。また、端部コア552bは、横断面が四角形状で長さが5〜10mmのコア片を、定着ベルト51の両端部に配置したものである。また、裾コア552cは、横断面が四角形状のものを、定着ベルト51の長手方向寸法に略対応した範囲に速続的に配置したものである。
又、磁性体コア552は高透磁率であり、かつ渦電流の損失が低い材質で形成されている。本実施の形態の磁性体コア552のキュリー温度は、140〜220℃の範囲が望ましく、160〜200℃の範囲がより望ましい。本実施の形態では高周波を用いるためコア内における渦電流の損失が大きくなりがちであり、さらに、パーマロイのような高透磁率の合金によるコアでは渦電流の損失が大きくなりがちであるので、薄板を積層した構造とすることが望ましい。
なお、励磁コイル551と磁性体コア552とによる磁気回路部分の磁気遮蔽が、他の手段によって十分になされる場合には、コアなしにしてもよい。さらに、磁性体コア552として、樹脂材に磁性粉を分散させたものを用いることもでき、透磁率はやや低いが、形状を自由に設定できるという利点がある。
コイルボビン553は、電線を巻いて励磁コイル551を形作るための空芯である。サーミスタ554は、定着ベルト51の表面に当接して配置され、定着ベルト51の定着前の表面温度を検出する。なお、定着ベルト51の定着前の表面温度の検出は、サーミスタに限らず、他の非接触式の温度センサによって行ってもよい。高周波インバータ555は、励磁コイル551に、20〜40kHz、100〜2000Wの高周波電力を供給する。
高周波インバータ555は、制御部60によって制御され、制御部60は、サーミスタ554の検出結果に基づいて定着ベルト51の定着前の表面温度が熱定着に適した適切な定着温度の範囲内になるように高周波インバータ555を制御する。ここで適切な定着温度は、トナーの種類等に応じてあらかじめ設定されており、例えば、100〜200℃程度である。
[3]定着装置の動作
定着処理時には、図2中の矢印で示すように、加圧ローラ54が図中時計回りに回転駆動される。これにより、定着ベルト51及び定着ローラ53は、加圧ローラ54との摩擦力によって、図中反時計回りに従動回転される。なお、この駆動と従動との関係は逆であってもよい。
又、制御部60による制御に基づいて、高周波インバータ555が、励磁コイル551に高周波電力を供給する。これにより励磁コイル551が交番磁束を発生し、これが磁性体コア552の内部を通って、磁性体コア552の突起部間から外部に出て定着ベルト51に至る。
そしてこのとき発熱制御層512(ここでは、発熱制御層512は、高イオン導電体のヨウ化銀(AgI)で構成されているものとする。)が、その相転移温度より低温の常温状態であれば、図4に示すように電気伝導度が低い(体積抵抗率が高い)状態にあるので、この状態では、交番磁束により誘導される渦電流は、発熱制御層512中にはほとんど流れず、ほとんどが発熱制御層512よりも電気伝導度が高い(体積抵抗率が低い)主発熱体層513中を流れる。このため、発熱制御層512は、ほとんど発熱せず、主として主発熱体層513が発熱する。
例えば、定着装置5のウォームアップ時は、上記のように、主発熱体層513が大きく発熱し、しかも、発熱に寄与する層(発熱制御層512と主発熱体層513)の厚みが薄く、そのため熱容量が小さく、かつ断熱層532によって定着ベルト51が断熱されていることから、より短時間で発熱ベルト51を昇温させることができる。
本実施の形態では、主発熱体層513が非磁性金属材であるが、非常に薄い層であるため、主発熱体層513による発熱量が大きい。このことは、次のように説明できる。一般に、高周波の交番磁界を印加した場合に、導電層に誘導される渦電流は、いわゆる表皮効果のために表面層に集中し、内部にはあまり流れない。
表皮効果の程度は、以下の式1で表される。
δ = √ (ρ/(π・f・μ)) … (式1)
ただし、δは浸透深さ(電流密度が表面の1/eになる深さ)、fは交番電圧の周波数、μは透磁率、ρは体積抵抗率である。ここで、浸透深さδ当たりの抵抗は、以下の式2に示す表皮抵抗Rで表され、このRを用いて導電層の発熱量Pは以下の式3で表される。
R = ρ/δ …(式2)
P = R・I … (式3)
ただし、Iは、渦電流である。
磁性金属材の発熱層では、この表皮効果により、層自体の厚さにかかわらず渦電流の流れる範囲が限定されるので、電流密度が大きく発熱量も大きい。非磁性金属材の揚合は、表皮効果が小さく渦電流が層全体に流れる。本形態の主発熱体層513は、非磁性金属材の非常に薄い層であるので、渦電流が層全体に流れたとしても電流密度が大きく、十分な発熱量を得ることができる。また、低抵抗の主発熱体層513があることにより、芯金531側へ交番磁束の一部が漏れることが防止されている。
このように発生した熱は、主発熱体層513に接着されている、酸化防止層514、弾性層515を介して、定着ベルト51の表面へ伝達される。また、定着ベルト51の表面温度が適切な定着温度となるように、制御部60によって高周波インバータ555が制御される。トナー像を担持する記録シートSは、トナー像の載っている面を定着ベルト51の側に向けた状態で、定着ベルト51と加圧ローラ54との間のニップに挿入され、図2における左方向から右方向へと、記録シートSがニップを通過する間に、トナーが溶融されて定着される。
ニップを通過した記録シートSは、定着ベルト51から分離されて後段へと搬送される。ここで記録シートSがニップを通過した後も、定着ベルト51に張り付いたままであれば、分離爪56によって定着ベルト51から強制的に分離されるので、記録シートSのジャムが防止されている。なお、分離爪56の先端部は、定着ベルト51の表面に接触していてもしていなくてもよい。
定着処理により、記録シートS及びトナーによって定着ベルト51の表面から熱が奪われるため、定着ベルト51の回転軸方向において、記録シートSが通紙された通紙領域では定着ベルト51の表面温度が下がり、記録シートSが通紙されない非通紙領域では定着ベルト51の表面温度はほとんど下がらない。一方、サーミスタ554は、記録シートSが通紙される通紙領域で温度を検出する。従って、制御部60は、サーミスタ554の検出結果を受けて、記録シートSが通紙される通紙領域の温度が定着温度となるように高周波インバータ555を制御する。
上記のような温度制御が行われるので、比較的シート幅が小さい記録シートSを連続して定着処理すると、定着ベルト51における、記録シートSが通紙されない非通紙領域では上記の温度制御により温度が徐々に上昇し、その結果、非通紙領域の温度が発熱制御層512のヨウ化銀(AgI)の相転移温度を超える。この場合、発熱制御層512における、非通紙領域に対応する領域の体積抵抗率が相転移により大きく低下し、交番磁束が通ることにより誘導される渦電流が発熱制御層52と主発熱体層54の両層に流れるため、主発熱体層54に流れる渦電流の電流密度が大きく減少し、主発熱体層54における発熱量が大きく低下するため、主発熱体層513の非通紙領域における発熱量の増加が抑えられる。
一方、発熱制御層512に流れる渦電流量は、増加するが、体積抵抗率が著しく低下しているため、発熱制御層512における発熱量は、非通紙領域においてほとんど増加しない。
このように、非通紙領域においては、相転移温度を超えると、発熱制御層512における体積抵抗率が大きく低下することにより、定着ベルト51における発熱量が全体として低下するので、非通紙領域における過剰昇温が有効に防止される。本実施の形態では、発熱制御層512と主発熱体層513とが連続するように積層されているので、主発熱体層513における温度上昇があると、当該温度上昇がすぐに発熱制御層512に伝達され、発熱制御層512においてすばやく、相転移を起こさせて、過剰昇温防止効果を発現させることができる。
一方、定着ベルト51における、記録シートSが通紙される通紙領域では、温度が定着温度に維持されるので、温度上昇による発熱制御層512における体積抵抗率の低下がないため、主発熱体層513を流れる渦電流の電流密度は変化せず、発熱量は変化しない。
なお、ヨウ化銀(AgI)が相転移を起こす相転移温度は、通常は147℃であるが、相転移温度は、その粒子サイズに依存し、粒子サイズが小さくなる程、相転移温度は、低くなる。従って、定着温度に応じて粒子サイズを調整することで、定着温度の近傍で定着温度よりも高温側で相転移が起こるように調整することができ、これにより、定着ベルト51の非通紙領域の温度が定着温度を超えると、すぐに相転移により、発熱制御層512の体積抵抗率を低下させ、効果的に過剰昇温防止効果を発現させることができる(例えば、特開2010−260759号公報、段落55、図8の記載参照)。
各粒子サイズのヨウ化銀(AgI)は、硝酸銀(AgNO)水溶液と有機ポリマーであるPVP(ポリ−N−ビニル−2−ピロリドン)の水溶液を常温常圧下で混合し、ろ過、乾燥させることにより得られる。硝酸銀とPVPの比率など、作製条件を変えることで、異なる粒子サイズ(10〜50nmの範囲の異なる粒子サイズ)のヨウ化銀が得られる(例えば、特開2010−260759号公報、段落23の記載参照)。
[4]定着ベルトの製造方法
(1)補強層511(ポリイミドスリーブ)の成形工程
円筒状又は円柱状の芯体上にポリイミド前駆体溶液を塗布し、加熱して溶媒を除去するとともにポリイミド前駆体をイミド化して補強層511としてのポリイミドスリーブを成形する。ポリイミド前駆体溶液は、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを有機溶媒中で、約90℃以下で反応させることにより得られる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
又、芳香族ジアミンとしては、パラフェニレンジアミン(PPD)、メタフェニレンジアミン(MPDA)、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニル等を用いることができる。
(2)発熱制御層512(高イオン導電体)の成形工程
成形した補強層511の上に、発熱制御層512として、高イオン導電体をメッキやスパッタリングによって積層する。例えば、5重量%のヨウ化カリウム水溶液に、高イオン導電体(ここでは、ヨウ化銀(AgI)とする。)の重量%が50%となるように、高イオン導電体を溶解し、当該溶解液にキシレンの重量%が50%となるように、キシレンを溶解し、さらに、キシレンを溶解した溶液に、ポリオールの重量%が1〜2%となるように、ポリオールを加え、ポリオール添加後の溶液を100℃の雰囲気下で、(1)で成形した補強層511にスプレーコートし、高イオン導電体から構成される発熱制御層512を成形する。
ポリオールを加えることにより、補強層511との接着性や高イオン導電体同士の結着性を向上させることができる。又、上記の方法の代わりに、キシレン中に高イオン導電体の粉体を、重量%が50%なるように投入し、ポールミルあるいはアトライターなどにより粉体を湿式粉砕した後、ポリオールを重量%が1〜2%になるように加え、ポリオール添加後の溶液を100℃の雰囲気下で、(1)で成形した補強層511にスプレーコートして、高イオン導電体層512を成形することとしてもよい。
(3)定着ベルト51作成工程
(2)で成形した発熱制御層512の上に主発熱体層513、酸化防止層514を、化学メッキ又は電気メッキ加工によりこの順に積層し、その上に弾性層515、及び離型層516この順に被覆することにより、定着ベルト51を作成する。
[5]実施例
[4]により作成した本実施の形態に係る定着ベルト51と、高イオン導電体の発熱制御層512を設けていないことを除き、定着ベルト51と同一構成の比較用定着ベルト1と、非磁性金属材の主発熱体層513の代わりに、磁性金属材のニッケル(Ni)を主発熱体層として用いた点を除いて、比較用定着ベルト1と同一構成の比較用定着ベルト2との3者の各定着ベルトについて、磁気結合の結合係数及び発熱効率の温度変化について調べた実験結果を図5に示す。なお、定着ベルト51と比較用定着ベルト1の主発熱体層513の材料としては厚みが10μmの銅を、比較用定着ベルト2の主発熱体層の材料として厚みが40μmのニッケルを用いた。又、定着ベルト51と比較用定着ベルト1については、摺接部材52を用い、当該部材の磁性層521の材料としては、厚みが40μmのニッケル(Ni)を用い、比較用定着ベルト2については、摺接部材52を用いなかった。
当該実験は、各定着ベルトを、高周波インバータ555を介して、それぞれ誘導加熱しながら、LCRハイテスタ(HIOKI製3532−50)を用いてインダクタンス及びリアクタンスを測定することにより、結合係数及び発熱効率を算出し、その変化を調べた。同図の符号501は、定着ベルト51の結合係数及び発熱効率の温度変化を、符号502は、比較用定着ベルト1の結合係数及び発熱効率の温度変化を、符号503は、比較用定着ベルト2の結合係数及び発熱効率の温度変化をそれぞれ表す。又矢印Aは、符号501、502の温度上昇方向を、矢印Bは,符号503の温度上昇方向を表す。
定着ベルト51では、温度が高温になると図4に示すように、発熱制御層512のAgIの相転移が起こり、その体積抵抗率が低下し、それにより、発熱制御層512と主発熱体層513の両層に渦電流が流れることになるので、発熱効率が高温側で大きく低下している。一方、AgIを含まない比較用定着ベルト1では、高温になるにつれて、発熱効率が上昇し、磁性金属材を主発熱体層として用いた比較用定着ベルト2では、高温になるにつれて発熱効率は、低下している。又、結合係数については、各定着ベルトにおいて、高温になるにつれて結合係数は、低下している。
次に、定着ベルト51と比較用定着ベルト1の両者の定着ベルトについて、小サイズ記録シートの連続通紙時の各定着ベルトにおける非通紙領域の熱定着時の温度上昇について調べた実験結果を図6に示す。当該実験は、定着ニップにおける全圧が300N(ニュートン)、ニップ幅が7mm、各定着ベルトの周速度が186mm/秒、定着温度を155℃とし、通紙速度が1分当たり30枚の速度で100枚連続通紙して行った。又、通紙用の記録シートは、A4縦サイズ坪量64g/mの記録シートを用いた。
温度上昇は、ベルト軸方向の最大温度差を、赤外線サーモグラフィ(NEC三栄製サーモトレーサTH700)で測定することにより検出した。
その結果、図6の符合601で示す定着ベルト51では、最大温度差が55℃であるの対し、符号602で示す比較用定着ベルト1では、87℃であった。この結果から、高イオン導電体を用いた定着ベルト51において、熱定着時の非通紙領域における過剰昇温防止効果があることが確認された。
(変形例)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(1)本実施の形態においては、発熱制御層512の上に主発熱体層513を積層して定着ベルト51を構成することとしたが、発熱制御層512と主発熱体層513の積層順を入れ替えて定着ベルトを構成することとしてもよい。
(2)本実施の形態においては、記録シートの加熱体を定着ベルト51としたが、当該加熱体の形態は、ベルトの形態に限定されず、例えば、加熱ローラの形態とすることとしてもよい。具体的には、定着ベルト51と定着ローラ53との間に摺接部材52、空間SPを設けないこととし、定着ローラ53の断熱層532の上に、定着ベルトの各構成要素である、磁性金属で構成する補強層511、発熱制御層512、主発熱体層513、酸化防止層514、弾性層515、離型層516をこの順に積層して加熱ローラを構成し、記録シートの加熱体とすることとしてもよい。
本発明は、プリンタ、複写機等の画像形成装置が備える定着装置に関し、特に定着装置用の加熱回転体の発熱層に関する技術として利用できる。
1 プリンタ
3 画像プロセス部
3Y〜3K 作像部
4 給紙部
5 定着装置
10 露光部
11 中間転写ベルト
12 駆動ローラ
13 従動ローラ
31Y 感光体ドラム
32Y 帯電器
33Y 現像器
34Y 1次転写ローラ
35Y クリーナ
41 給紙カセット
42 繰り出しローラ
43 搬送路
44 タイミングローラ
45 2次転写ローラ
46 2次転写位置
51 定着ベルト
52 摺接部材
53 定着ローラ
54 加圧ローラ
55 磁束発生部
56 分離爪
60 制御部
71 排出ローラ
72 排紙トレイ
511 補強層
512 発熱制御層
513 主発熱体層
514 酸化防止層
515 弾性層
516、543 離型層
521 磁性層
522 保護層
531、541 芯金
532、542 断熱層
551 励磁コイル
552 磁性体コア
553 コイルボビン
554 サーミスタ
555 高周波インバータ

Claims (6)

  1. 交番磁束により発熱する発熱層を有する加熱回転体の外周面に加圧回転体を圧接して定着ニップを形成し、未定着画像の形成された記録シートを当該定着ニップに通紙して熱定着する定着装置であって、
    前記発熱層は、導電性の非磁性金属材で構成される第1の層と、前記第1の層よりも電気伝導度が低く、温度上昇に伴い、電気伝導度が上昇する高イオン導電体から構成される第2の層と、が積層されて構成されている
    ことを特徴とする定着装置。
  2. 前記発熱層は、非導電性の耐熱性樹脂層上に形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  3. 前記発熱層は、さらに磁性金属層を有し、
    前記第1の層と前記第2の層との積層は、前記磁性金属層上に形成されている
    ことを特徴とする請求項1記載の定着装置。
  4. 前記高イオン導電体は、定着温度よりも高温側において電気伝導度が急激に増加する相転移温度を有する
    ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の定着装置。
  5. 前記高イオン導電体は、AgI又はCuIである
    ことを特徴とする請求項4に記載の定着装置。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載の定着装置を備える
    ことを特徴とする画像形成装置。
JP2011102977A 2011-05-02 2011-05-02 定着装置及び画像形成装置 Active JP5834477B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011102977A JP5834477B2 (ja) 2011-05-02 2011-05-02 定着装置及び画像形成装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011102977A JP5834477B2 (ja) 2011-05-02 2011-05-02 定着装置及び画像形成装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012234065A JP2012234065A (ja) 2012-11-29
JP5834477B2 true JP5834477B2 (ja) 2015-12-24

Family

ID=47434426

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011102977A Active JP5834477B2 (ja) 2011-05-02 2011-05-02 定着装置及び画像形成装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5834477B2 (ja)

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0619347A (ja) * 1992-03-31 1994-01-28 Canon Inc 加熱装置
JP2003347030A (ja) * 2002-05-27 2003-12-05 Canon Inc 加熱装置、像加熱装置および画像形成装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012234065A (ja) 2012-11-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7390995B2 (en) Image forming apparatus, fixing device and image heater having an adjustable exciting member
JP5716703B2 (ja) 定着装置及び画像形成装置
JP4798622B2 (ja) 定着装置及び画像形成装置
US7925198B2 (en) Fixing device and image forming apparatus
JP2007226125A (ja) 定着装置およびそれを備えた画像形成装置、並びに画像形成方法
JP2010002604A (ja) 定着装置、及び画像形成装置
JP2011047990A (ja) 発熱ローラ、定着装置および画像形成装置
JP4623106B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP4803285B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2012141589A (ja) 定着装置、及び、画像形成装置
JP5522135B2 (ja) 定着装置及び画像形成装置
JP5834477B2 (ja) 定着装置及び画像形成装置
JP5194769B2 (ja) 誘導加熱装置,定着装置および画像形成装置
JP5488683B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5304621B2 (ja) 画像形成装置
JP5374877B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5564699B2 (ja) 定着装置、定着加熱体及び画像形成装置
JP5082880B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2010002657A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5136097B2 (ja) 定着装置および画像形成装置
JP5157633B2 (ja) 誘導加熱装置,定着装置および画像形成装置
JP5169201B2 (ja) 誘導加熱装置,定着装置および画像形成装置
JP2012042772A (ja) 定着装置及び画像形成装置
JP4911124B2 (ja) 定着装置に用いる定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置
JP4915397B2 (ja) 定着装置および画像形成装置。

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20130417

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140313

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20140613

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20150108

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150203

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150403

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150714

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150911

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20151006

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20151019

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5834477

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150