JP2010001529A - 蒸着源、および蒸着装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】スプラッシュの発生が抑制され、また、蒸着レートが安定した蒸着源、および蒸着装置を提供すること。
【解決手段】ルツボ8には、導電体からなる複数の加熱板1が間隙を持って重なって配置されている。各加熱板1には、膜材料5が搭載可能に設けられている。最上段の加熱板1には、膜材料5がセットされていない。誘電コイル10によって磁界が形成されると、各加熱板1自体が誘電加熱によって斑なく発熱し、載せられた膜材料5も均一に加熱されるため、蒸着レートが安定する。また、膜材料5が薄く形成されているため、当該材料内における温度分布が略均一となり、スプラッシュの発生が抑制される。
【選択図】図3

Description

本発明は、蒸着源、および当該蒸着源を備えた蒸着装置に関する。
図7は、従来の蒸着源を示す図である。
基板などの被着体に薄膜を形成するために、真空蒸着法を用いた蒸着装置が用いられている。このような蒸着装置は、膜材料を加熱して蒸発させる蒸着源200を備えていた。
蒸着源200は、膜材料55を入れた導電体からなるルツボ(坩堝)58と、当該ルツボの周囲を囲って配置された誘電コイル10とから構成されていた。
当該蒸着源では、誘電コイル10に交流電流を流して磁界を形成し、その磁界によりルツボ58に渦電流を発生させ、当該渦電流が流れる際の抵抗によりルツボ58自体を誘電加熱していた。または、ルツボ58をヒータによって直接過熱していた。
このような蒸着装置は、例えば、有機EL(Electroluminescence)装置の有機膜(有機機能層)の成膜などに用いられており、有機膜を形成するための膜材料としては、一般的に昇華性の材料が用いられていた。
上述した従来の蒸着装置(蒸着源200)では、昇華性の膜材料を用いて蒸着を行う場合、蒸着レートを安定させることが難しく、また、スプラッシュが発生し易いという課題があった。
具体的には、昇華性の膜材料は、溶融性材料と異なり、加熱しても材料内での対流が生じないことに加え、一般的に熱伝導率が小さいため、直接熱が加わるルツボの内周に面した部分から蒸発が始まることになる。このため、当該内周と膜材料との間、特に、膜材料の側面との間に隙間が生じてしまい、膜材料における温度分布が不均一となってしまうため、蒸着レートを安定させることが難しかった。
また、温度分布が不均一となってしまうことに起因して、内側で蒸発した蒸気が、温度が低く蓋状になった表皮部を押し退けて微小な爆発を引き起こす現象、いわゆるスプラッシュ(突沸)を誘発してしまっていた。
これらの課題を鑑み、特許文献1には、ルツボを誘導加熱されない材料から構成するとともに、膜材料に誘導加熱される材料からなる混合物を混ぜた蒸着装置が示されている。
特開2004−323915号公報
しかしながら、特許文献1の蒸着装置では、成膜の都度、膜材料に混合物を混ぜる必要があるため、製造効率が悪く、また、混合物の混ぜ方が悪いと、均一に加熱されなくなってしまい、蒸着レートを安定させることが難しかった。また、膜材料に混入された混合物の周囲から蒸発が始まるため、スプラッシュの発生を抑制することも困難であった。
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例又は形態として実現することが可能である。
(適用例)
被着体に膜材料を蒸着させる蒸着装置に備えられ、膜材料を蒸発させるための蒸着源であって、ルツボと、ルツボ内に配置された導電性材料からなる複数の加熱板と、ルツボの外側に配置された誘電コイルと、を少なくとも備え、複数の加熱板は、平面的にルツボの内周から間隙を持って配置されるとともに、高さ方向に間隙を持って重ねられてなり、各々の加熱板は、膜材料を搭載可能に設けられていることを特徴とする蒸着源。
この蒸着源によれば、導電性材料からなる複数の加熱板は、ルツボの中で間隙を持って重ねられているため、誘電コイルによって電界が発生すると、それぞれの加熱板自体が誘電加熱によって斑なく発熱する。
さらに、膜材料が団子状の一つの塊となってしまっていた従来の膜材料55(図7)と異なり、膜材料が複数の加熱板に分散して配置されるため、膜材料と加熱板との接触面積が増え、各膜材料への加熱状態が均一化される。
これにより、加熱板に載せられた膜材料は均一に加熱され、膜材料の温度分布が略均一となり、安定した蒸気(量、濃度)が得られるため、蒸着レートを安定させることができる。また、膜材料の温度分布が均一化されるため、スプラッシュの発生を抑制することができる。
また、ルツボも導電性材料から構成されていることが好ましい。
また、加熱板は、膜材料を搭載するための搭載面と、搭載面の周縁に設けられた縁部とを備え、搭載面は、縁部から凹形状となっていることが好ましい。
また、搭載面には、複数の凹凸形状が形成されていることが好ましい。
また、複数の加熱板のうち、少なくとも最上段に重ねられる加熱板には、膜材料が載せられていないことが好ましい。
また、膜材料は、平板状をなした昇華性の材料であることが好ましい。
また、加熱板の裏面には、平面的に搭載面の周縁に沿って3本以上の脚部が設けられ、高さ方向の間隙は、複数の脚部によって確保されていることが好ましい。
また、さらに、加熱板を高さ方向の間隙をなして配置するためのスタンドを備え、スタンドは、3本以上の支柱と、支柱間を平面的に接続した棚部とを有し、複数の加熱板は、スタンドの高さ方向に複数段設けられた棚部に、それぞれ載せられることが好ましい。
上記記載の蒸着源と、蒸着源を底面に収納するとともに、天井面に被着体を配置し、減圧された密閉空間を形成する蒸着槽と、蒸着源の誘電コイルに電力を供給する電源と、を少なくとも備えることを特徴とする蒸着装置。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
<実施形態1>
(蒸着装置の構成)
以下、本発明の実施形態1に係る蒸着源が搭載された蒸着装置の概要について図1および図2を用いて説明する。
なお、以下に示す各図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、該各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
図1は、本実施形態に係る蒸着装置100の全体構成を示す図である。
蒸着装置100は、蒸着槽70と、蒸着源20と、高周波電源30と、制御部33と、保持部60などを備えている。
蒸着槽70は、天地面を閉じた円筒状をなしており、地面側の面には、蒸着源20が搭載されている。なお、以降の説明において、天面(井)側のことを「上」、地面側のことを「下」とも表現し、上方の面を「天面」、下側の面を「底面」という。
蒸着源20は、ルツボ(坩堝)8と、当該ルツボの周囲を囲む誘電コイル10などから構成されている。ルツボ8は、円筒状の容器であり、天面は開放している。また、ルツボ8には、複数の加熱板1が重ねて入れられており、いくつかの加熱板1には、膜材料5がセットされている。なお、加熱板1を含む蒸着源20の詳細な態様については、後述する。
電源としての高周波電源30は、誘電コイル10と接続された高周波電源生成回路であり、制御部33からの制御信号に基づき、当該コイルに交流電流を流す。
制御部33は、蒸着装置100の成膜条件を制御する制御装置であり、不図示の記憶部や操作部などを備えている。当該記憶部には、所期の蒸着レートを得るために必要となる周波数や、電圧などの電力量を規定した複数のデータテーブルや、高周波電源30を駆動制御するための複数のプログラムなどが記憶されている。データテーブルとしては、例えば、膜材料5の種類や分量と、当該種類や分量ごとに定められた周波数、電圧などの電力量の時系列における相関関係を規定したものが挙げられる。
制御部33には、センサ38を有する蒸着レート検知部35が接続されている。センサ38は、蒸着源20よりも上方における蒸着槽70の内壁に配置されており、例えば、水晶振動子のような振動子を含んで構成されている。蒸着レート検知部35は、センサ38に付着した蒸着膜の影響による発振周波数の変化を検知し、当該検知データを制御部33に送信する。
保持部60は、蒸着槽70の天面から吊り下がった支柱61と、当該支柱によって支持された平板状の保持板62とから構成されている。
保持板62は、蒸着源20と向かい合って配置されており、蒸着源20側の面に被着体としての基板50が固定されている。
また、図示は省略しているが、蒸着装置100は、蒸着槽70内の空気を排気して減圧環境とするための真空ポンプをさらに備えている。
(被着体の概要)
図2は、被着体としての基板を備えた有機EL装置の断面図である。
まず、図2を用いて、有機EL装置52の構成について説明する。
有機EL装置52は、被着体としての基板50と、有機機能層46と、共通電極47と接着層48と、対向基板49などから構成されている。
有機EL装置52は、有機機能層46の発光層45が発する光を、矢印で示すように、基板50側から出射するボトムエミッション方式の表示装置である。
基板50は、素子基板40と、当該素子基板上に形成された複数の画素電極41などから構成されている。
素子基板40は、ガラス、石英、樹脂(プラスチック、プラスチックフィルム)などの透明な材質から構成されている。
各画素電極41は、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明電極から構成されており、平面視において格子状に形成されたブラックマトリックスとしての隔壁42によってマトリックス状に区画されている。
また、画素電極41ごとに、当該画素電極をスイッチングするための薄膜トランジスタ43が当該画素電極の下層(素子基板40側)に形成されている。当該薄膜トランジスタは、平面視において隔壁42と重なる位置、例えば、隔壁42の交差部などに形成される。
有機EL装置52において、対応する薄膜トランジスタ43を含む1つの画素電極41と、平面的に当該画素電極と重なる有機機能層46、および共通電極47とまでの構成が、1つの画素に相当する。
なお、後述する成膜工程においては、素子基板40上に、画素電極41、および隔壁42までが形成された基板50を被着体としている。
隔壁42を含む画素電極41上には、有機機能層46を構成する正孔輸送層44と発光層45とがこの順番に積層されている。
正孔輸送層44は、芳香族ジアミン(TPAB2Me−TPD,α−NPD)などの昇華性の材料から構成される。膜厚は、例えば、50〜100nm程度である。
発光層45は、Alq3(アルミキノリノール錯体)などの昇華性の材料から構成される。膜厚は、例えば、50〜100nm程度である。
共通電極47は、電子注入層および反射層を兼ねており、有機機能層46を覆うように形成される。共通電極47は、Mg−Ag合金(重量比は例えば10:1)などの導電性および反射性を兼ね備えた材料から構成されている。膜厚は、例えば、5〜20nm程度である。
対向基板49は、共通電極47上に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などからなる接着層48を介して貼り付けられている。
このような構成の有機EL装置52では、発光層45から出射される光のうち、画素電極41側に向かう光はそのまま素子基板40側に出射され、また、共通電極47側に向かう光も共通電極47によって反射されて、素子基板40側に出射(ボトムエミッション)される。
なお、有機EL装置52は、有機機能層46として、正孔輸送層44と発光層45とに加えて電子輸送層を備えた構成であってもよい。
(成膜方法の概要)
図1に戻る。
続いて、蒸着装置100を用いて被着体としての基板50に蒸着膜を形成する方法の概要について説明する。
例えば、基板50に正孔輸送層44を蒸着する場合、まず、蒸着源20に膜材料5を載せた加熱板1をセットする。
続いて、蒸着装置100を起動し、制御部33の操作部に、膜材料5の種類、分量、および希望する膜厚などの蒸着レートに関する情報を入力する。
続いて、例えば、操作部の開始ボタンを押して、成膜工程を開始する。
これらの工程(操作)によって、制御部33(記憶部)のプログラムが実行され、まず、真空ポンプによって蒸着槽70内が所定の減圧環境とされ、次いで、高周波電源30によって誘電コイル10に電力が印加される。
これにより、加熱板1および膜材料5が加熱され、ルツボ8の天面の開口から膜材料5の蒸気が発生し、発生した蒸気は、基板50の表面に付着し、正孔輸送層44が成膜される。
なお、蒸着装置100による成膜は、前述した正孔輸送層44のみに限定されず、同様な昇華性の膜材料からなる発光層45の成膜も可能である。また、詳細は後述するが、例えば、共通電極47のような溶融性の膜材料の成膜も行うことができる。また、蒸着源20の具体的な構成、および膜材料5がどのように加熱および昇華されるかなどの作用についても、後述する。
また、制御部33は、蒸着レート検知部35からの成膜状態の検知データを、記憶しているデータテーブルと定期的に比較し、所期の成膜結果が得られるように、高周波電源30が供給する電力量などを適宜制御している。
なお、図示は省略しているが、基板50の表面(下面)には、平面視において成膜ヶ所と重なる部分を開口部とした蒸着マスクが配置されており、基板50における所望の部分にのみ、成膜を行うことができる。
例えば、図2の有機EL装置52において、隣り合う3つの画素をRGB各色の画素とする場合には、それぞれの色画素に対応した部分を開口部としたRGB用の3つの蒸着マスクと、各色用の膜材料とを準備する。そして、色調ごとに、対応する膜材料および蒸着マスクを用いて成膜する工程を行う、換言すると、3回成膜工程を行うことによって、RGB色の画素を形成することもできる。
(蒸着源の構成)
図3は、本実施形態に係る蒸着源の断面図である。
図4は、加熱板の斜視図である。
続いて、本願における特徴ある構成の一つである蒸着源20について、図3および図4を用いて、詳細に説明する。
ルツボ8は、石英や、セラミックなど、絶縁性および耐熱性に優れた材質から構成されている。ルツボ8には、導電性材料から構成された加熱板1が、間隙を持って複数枚重ねられている。加熱板1の材質としては、Ti,W,C,Moなどの誘電加熱に適した材料が好ましい。
また、平面視において加熱板1は、ルツボ8の円形の中に一回り小さな同心円状に配置されている。なお、平面的なルツボ8の形状は、加熱板1が収まる形状であれば良く、例えば、三角形や、四角形、または多角形であっても良い。
加熱板1の裏面1bには、3本の脚部3が形成されている。また、加熱板1の搭載面1aには、膜材料5が搭載(セット)可能に設けられている。
加熱板1は、皿状をなしており、搭載面1aは、皿の盛り付け面のように、加熱板1の周縁部の縁から凹状に設けられている。
3本の脚部3は、裏面1bにおける縁との境目に設けられており、平面視において3角形となるように配置されている。当該3角形は、好適には安定性の良い正三角形が好ましい。また、3本の脚部3の長さ(高さ)は、同一になっており、加熱板1を平面に置いたときに、搭載面1aも当該平面と略平行な平面となるように設定されている。
これらの構成により、加熱板1は、固形の膜材料5のみならず、粉状や、液状(溶融時も含む)の膜材料もこぼさずに、安定して保持することができる。
さらに、加熱板1を重ねる場合、上側となる加熱板の3本の脚部3が、下側の加熱板の搭載面1aに丁度収まるため、各加熱板の搭載面1aがそれぞれ略平行になった状態で複数の加熱板1を重ねることができる。
このため、複数の加熱板1に膜材料5をセットした状態でも、複数の加熱板1を安定して重ねることができる。
なお、脚部3の材質は、絶縁物によって形成しても良いが、本実施形態においては、好適な態様として導電性材料によって形成している。さらに、図3に示すように、側面視において複数段に重ねられた脚部3が直線状になるように平面的な脚部3の位置が揃えられている。これは、複数の加熱板1を重ねた際に、重なった状態の複数の加熱板全体を電気的に接続して一つの導電体とするためであり、特に、上下に直線状に連なった脚部は、鉄心と略同様な機能を果たし、より強力な磁界の形成に寄与するからである。
膜材料5は、平板状をなし、薄い円板状に加工されている。円板の直径は、加熱板1の搭載面1aにセットしたときに、3本の脚部3に当たらない長さに設定されている。膜材料5の厚さt1は、例えば、1〜40mm程度に設定する。より好適には、5〜20mm程度に設定する。これは、厚すぎると、加熱板1の熱が、膜材料5の上面側に伝わり難くなり、材料内部での温度分布が不均一となってしまうためである。
なお、膜材料5の平面形状は、円板状に限定するものではなく、3本の脚部3に当たらない大きさであれば、例えば、四角形などの多角形であっても良い。
また、膜材料5の上面と、その上に重ねられた加熱板1(裏面1b)との間隙t2は、膜材料5の厚さt1と同等か、それ以上であることが好ましい。これは、蒸発した蒸気の流動スペースを確保するためである。
また、加熱板1の周縁部とルツボ8の側壁との間隙t3は、間隙t2と同等か、それ以上であることが好ましい。これは、蒸気の流動スペース確保と、ルツボ8への加熱板1のセット性を良くする意味合いからである。
図3においては、ルツボ8の中に、8枚の加熱板1が重ねられている。そのうち、一番上段の1枚を除いた残りの7枚の加熱板1には、それぞれ膜材料5がセットされている。
加熱板1の重ね枚数については、8枚に限らず、搭載する膜材料5の種類や、蒸着レートなどを勘案して決めれば良いが、最上段の加熱板1には、膜材料5をセットしない。これは、最上段の加熱板1は、その下段の膜材料5から飛散してくる恐れのあるスプラッシュを付着させるために、配置しているからである。
誘電コイル10は、例えば、銅製のチューブからなり、ルツボ8の外周を螺旋状に囲って配置され、チューブの中を冷却水が巡回するように構成されている。
また、誘電コイル10は、各加熱板1の搭載面1a内における磁束密度がなるべく均一になるように、その太さや、巻数、および位置関係が調整されている。
(蒸着源の働き)
続いて、前述のような構成を備えた蒸着源20からの蒸気の発生態様、および効果について、図3を中心に、適宜他の図面を交えて説明する。
ここでは、蒸着装置100が起動され、誘電コイル10に電力が印加された段階から説明する。
電力が印加された誘電コイル10は、磁界を形成し、その磁界によって複数の加熱板1のそれぞれに渦電流が発生する。そして、各加熱板1は、当該渦電流が流れる際の抵抗によって加熱板1自体が誘電加熱される。
加熱板1が熱くなると、搭載面1aに載せられている膜材料5も、搭載面1aと接触している底面から加熱される。ここで、膜材料5は、厚さのある一つの塊状でルツボに直接入れられていた従来の膜材料55(図7)と比べて、複数の膜材料5に小分けされており、さらに薄く形成されているため、従来よりも熱容量が小さく、各膜材料5の温度分布が均一になり易い。
加熱された膜材料5は、昇華を始め、蒸気となって上昇を始める。このとき、蒸気は、上段の加熱板1との間隙t2を通って加熱板1の周縁部に向かい、さらに、他の加熱板1からの蒸気と交わりながら、当該周縁部とルツボ8の側壁との間隙t3を通って、ルツボ8の天面から外部(上方)に放出される。
上述した通り、本実施形態に係る蒸着源20、および蒸着装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
それぞれの加熱板1自体が誘電加熱によって斑なく発熱し、載せられた膜材料5は均一に加熱され、膜材料5の温度分布が略均一となり、安定した蒸気(量、濃度)が得られるため、蒸着レートを安定させることができる。
さらに、膜材料5が平板状に薄く形成されているため、当該材料内における温度分布が略均一となり、スプラッシュの発生が抑制される。
また、膜材料5が複数の加熱板1に分散されているため、加熱板1と膜材料5との接触面積が広くなり、大きな蒸着量(速度、レート)を得ることができる。
特に、膜材料5が平板状であり、昇華が搭載面1aに面した底面から始まるため、昇華によって底面と搭載面との間に一時的に隙間が生じても、その隙間は膜材料自体の自重によって常に塞がれることとなる。従って、ルツボの内壁からの加熱によって、側面に隙間が生じて内部の温度分布が不均一となっていた従来の膜材料55(図7)と比べて、常に膜材料5が平面的に略同じ面積で熱源の搭載面1aと密着しているため、膜材料5内部の温度分布が安定し、安定した蒸着レートを得ることができる。
また、加熱板1が厚さ方向で重なっているため、仮にスプラッシュが発生した場合であっても、飛散物は、上段の加熱板1の裏面1bに付着することになり、ルツボ8の外には飛散しない。特に、最上段の加熱板1には、膜材料5をセットせず、蓋として用いることにより、ルツボ8の外に放出されるのは、蒸気のみとすることができる。
さらに、裏面1bに付着した膜材料の一部であるスプラッシュが落下した場合、当該落下物は、下段の加熱板1に入り、再度、膜材料としてリサイクルされるため、無駄がない。または、成膜終了後、裏面1bに付着した付着物を回収して、膜材料として再利用することもできる。
また、複数の加熱板1のうち、膜材料5をセットする枚数を変化させることにより、所望の蒸着レートを得ることができる。
また、脚部3の材質も導電性材料によって形成するとともに、複数段の脚部3が上下に直線状に連なるように重ねることにより、脚部が鉄心と略同様な機能を果たし、より強力な磁界が形成されるため、蒸着効率を高めることができる。
また、3本の脚部3が付いた皿状の加熱板1に膜材料5を載せ、必要な枚数の加熱板1を重ねてルツボ8に入れるだけで成膜の準備ができるため、成膜の都度、膜材料に混合物を混ぜる必要があった従来の蒸着源(装置)よりも、製造効率が良い。
また、加熱板1が、凹状の搭載面1aを備えた皿状に構成されているため、昇華性の材料のような固形の膜材料5のみならず、粉状や、液状(溶融時も含む)の材料も、膜材料として用いることができる。
例えば、図2の共通電極47に用いられる導電性および溶融性を有する金属系の膜材料も、蒸着源20で扱うことができる。具体的には、当該膜材料を、上述した膜材料5と同様に、蒸着源20にセットする。
誘電コイル10に電力が印加されて磁界が形成されると、加熱板1に加えて、導電性を有する膜材料5自体も誘電加熱されることになる。このため、膜材料5は、自ら発する熱に加えて、加熱板1からも加熱されるため、効率良く溶融し、また、蒸発することになる。
ここで、搭載される膜材料5の大きさを、溶融時に凹状の搭載面1aに収まる容量に調整しておくことにより、溶融時においても膜材料が加熱板1から溢れることはないため、金属系の膜材料を用いても成膜を行うことができる。
<実施形態2>
以下、本発明の実施形態2に係る蒸着源が搭載された蒸着装置の概要について図1および図3を用いて説明する。
なお、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、同一の構成部位については同一の符号を附して説明する。
実施形態2の蒸着装置の構成は、図1に示された蒸着装置100の構成と略同様である。相違点は、蒸着源20のルツボ8が導電性の材料から構成されていることのみである。
具体的には、ルツボ8は、加熱板1と同様な材質、例えば、Ti,W,C,Moなどの誘電加熱に適した材料から構成されている。また、蒸着源20における誘電コイル10や、加熱板1などの他の構成は、実施形態1と同様である。
本実施形態に係る蒸着源、および蒸着装置によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
誘電コイル10に電力が印加されて磁界が形成されると、加熱板1に加えて、導電性を有するルツボ8自体も誘電加熱されることになる。加熱されたルツボ8の熱は、ルツボ8の底面から3つの脚部3を経由して加熱板1に伝わり、また、ルツボ8の内壁からは熱線として放出され、加熱板1および膜材料5を直接加熱するため、膜材料5の加熱効率が向上する。
特に、ルツボ8の内側壁から放射される熱線の一部は、膜材料5の上面に直接照射されるため、膜材料5における温度分布の均一化がより促進されることになる。
従って、膜材料5の温度分布がより均一となり、安定した蒸気(量、濃度)が得られることから、蒸着レートを安定させることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
<変形例1>
図5は、変形例1における加熱板の一部の態様を示した斜視図である。
図6は、加熱板の搭載面の拡大図である。
以下、変形例1に係る蒸着源について図5および図6を用いて説明する。
なお、実施形態1における説明と重複する部分は省略し、同一の構成部位については同一の符号を附して説明する。
変形例1の蒸着装置の構成は、図1に示された蒸着装置100の構成と略同様である。相違点は、蒸着源20に収納される加熱板の態様が異なることのみである。
本変形例における加熱板21は、円板状をなしており、実施形態1の加熱板1と同様な導電性の材料から構成されている。
加熱板21の表面は、搭載面21aとなっており、膜材料5を載せられる大きさを備えている。搭載面21aには、図6(a)に示すような凹凸形状が形成されている。当該凹凸形状は、クサビ状の溝が一方向にストライプ状に配列された形状をなしており、膜材料5は、その上にセットされる。
また、複数の加熱板21は、スタンド23に厚さ方向の間隙を持って配置される。スタンド23は、平面視において3角形の各頂点に配置された3本の支柱24〜26と、各支柱間を平面的に3本の支柱で結んだ複数段の棚部27とから構成されている。スタンド23の材質は、絶縁物によって形成しても良いが、本変形例においては、好適な態様として導電性材料によって形成している。
棚部27は、支柱24および支柱25を接続する支柱と、支柱25および支柱26を接続する支柱と、支柱26および支柱24を接続する支柱とから構成されている。また、図5においては2段のみが抜粋されているが、棚部27は、8段形成されており、各段に加熱板21がセットされる。
また、8段の加熱板21のうち、最上段の加熱板21には膜材料5をセットしていない。
各加熱板21の搭載面21aの高さ方向の位置は、図3に示された各加熱板1と同様である。また、加熱板21の直径も、図3の加熱板1と同様である。
平面視において3本の支柱からなる三角形は、支柱24を頂点とした二等辺三角形をなしており、棚部27も同様の形状となっている。加熱板21は、その重心gが、棚部27の三角形内に平面的に入るように搭載される。
本変形例に係る蒸着源、および蒸着装置によれば、前記各実施形態での該当する効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
加熱板21の搭載面21aに載せられた膜材料5は、誘電加熱される際に、搭載面21aに面した底面から昇華される。より詳しく説明すると、底面におけるクサビ状の凸部から昇華が始まるため、昇華された部分は欠落し、次第に底面にはクサビ状の溝が転写され、底面はクサビ状の溝に沿って密着することになる。
よって、搭載面21aと膜材料5との接触面積が増えるため、加熱効率が向上し、安定した蒸着レートを得ることができる。
また、膜材料5を搭載面21aにセットする際において、クサビ状の溝が滑り止めとして機能するため、膜材料5を安定した状態で保持することができる。
膜材料5を蒸着源20にセットする際に、あらかじめルツボ8の外で、スタンド23に加熱板21および膜材料5を準備することができるため、作業性に優れている。また、加熱板21および膜材料5がセットされたスタンド23を、ルツボ8に入れるだけで成膜の準備ができるため、効率的である。
また、搭載面21aに形成される凹凸形状は、例えば、図6(b)に示されるような、多数の四角錐からなる形状であっても良い。当該凹凸形状は、四角錐がマトリックス状に配置されている。
この構成によれば、上記効果に加えて、下記の効果を得ることができる。
膜材料5を搭載面21aにセットした際に、図6(a)のストライプ溝による凹凸形状よりも、滑り止め効果の方向依存性がないため、より安定した状態で膜材料5を保持することができる。
また、これらの凹凸形状を、実施形態1の加熱板1に適用しても良く、この場合も、同様な作用効果を得ることができる。
<変形例2>
以下、変形例2について図4および図5を用いて説明する。
なお、前記各実施形態、および変形例における説明と重複する部分は省略する。
図4の加熱板1において、脚部3は3本であったが、4本以上であっても良い。例えば、平面視において、4本の脚部が四角形の各頂点に配置されていても良い。または、5角形以上の多角形の各頂点に脚部が配置されていても良い。
これらの構成によれば、鉄心と略同様な機能を果たす脚部の本数が増えるため、より強力な磁界が形成されることになり、蒸着効率を高めることができる。
また、図5のスタンド23においても、同様に支柱の数は、4本以上であっても良く、同様な作用効果を得ることができる。
<変形例3>
以下、変形例3について図2および図3を用いて説明する。
なお、前記各実施形態、および変形例における説明と重複する部分は省略する。
図3において、複数の加熱板1にセットする膜材料5は、同一の膜材料であるものとして説明したが、異なる膜材料であっても良い。一般的に、有機機能層46を構成する各層は、正孔輸送層44や、発光層45などの各層の区分けが明確になされているが、この区分けは厳密でなくても良い。例えば、正孔輸送層44の成膜時において、1枚の加熱板1に発光層45の膜部材もセットして、正孔輸送層44を発光層の膜材料が混入した混合層としても良い。
このように、有機機能層46を構成する各層を上下に積層される膜材料の混合層とすることによって、有機機能層46の劣化を抑制することができる。また、混合層における膜材料の割合は、実験データに基づいて定めることが望ましい。
蒸着源20によれば、複数の加熱板1を重ねた構成を有しているため、混合割合に応じてセットする膜材料5(異なる膜材料)の数量を調整することにより、所望の混合割合の混合膜を容易に形成することができる。
実施形態1の蒸着装置の全体構成図。 被着体としての基板を備えた有機EL装置の断面図。 一態様における蒸着源の断面図。 一態様における加熱板の斜視図。 変形例1における加熱板の一態様を示した斜視図。 (a)加熱板の一態様における搭載面の拡大図、(b)加熱板の一態様における搭載面の拡大図。 従来の蒸着源を示す図。
符号の説明
1,21…加熱板、1a,21a…搭載面、1b…裏面、3…脚部、5…膜材料、8…ルツボ、10…誘電コイル、20…蒸着源、23…スタンド、24〜26…支柱、27…棚部、30…電源としての高周波電源、44…正孔輸送層、45…発光層、46…有機機能層、47…共通電極、50…被着体としての基板、70…蒸着槽、100…蒸着装置。

Claims (9)

  1. 被着体に膜材料を蒸着させる蒸着装置に備えられ、前記膜材料を蒸発させるための蒸着源であって、
    ルツボと、
    前記ルツボ内に配置された導電性材料からなる複数の加熱板と、
    前記ルツボの外側に配置された誘電コイルと、を少なくとも備え、
    前記複数の加熱板は、平面的に前記ルツボの内周から間隙を持って配置されるとともに、高さ方向に間隙を持って重ねられてなり、
    各々の前記加熱板は、前記膜材料を搭載可能に設けられていることを特徴とする蒸着源。
  2. 前記ルツボも導電性材料から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸着源。
  3. 前記加熱板は、前記膜材料を搭載するための搭載面と、前記搭載面の周縁に設けられた縁部とを備え、
    前記搭載面は、前記縁部から凹形状となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸着源。
  4. 前記搭載面には、複数の凹凸形状が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の蒸着源。
  5. 前記複数の加熱板のうち、少なくとも最上段に重ねられる前記加熱板には、前記膜材料が載せられていないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸着源。
  6. 前記膜材料は、平板状をなした昇華性の材料であることを特徴とする請求項5に記載の蒸着源。
  7. 前記加熱板の裏面には、平面的に前記搭載面の周縁に沿って3本以上の脚部が設けられ、
    前記高さ方向の間隙は、複数の前記脚部によって確保されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸着源。
  8. さらに、前記加熱板を前記高さ方向の間隙をなして配置するためのスタンドを備え、
    前記スタンドは、3本以上の支柱と、前記支柱間を平面的に接続した棚部とを有し、
    前記複数の加熱板は、前記スタンドの高さ方向に複数段設けられた前記棚部に、それぞれ載せられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蒸着源。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の蒸着源と、
    前記蒸着源を底面に収納するとともに、天井面に被着体を配置し、減圧された密閉空間を形成する蒸着槽と、
    前記蒸着源の前記誘電コイルに電力を供給する電源と、を少なくとも備えることを特徴とする蒸着装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2017186603A (ja) * 2016-04-05 2017-10-12 株式会社アルバック 蒸発源、真空蒸着装置および真空蒸着方法
KR20210002607A (ko) 2018-06-08 2021-01-08 가부시키가이샤 알박 진공 증착 장치용 증착원
CN115011931A (zh) * 2022-06-27 2022-09-06 合肥维信诺科技有限公司 蒸发源装置及蒸镀设备
KR20230104958A (ko) 2021-01-07 2023-07-11 가부시키가이샤 알박 진공 증착 장치용 증착원

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