JP2009542230A - 酸素増強細胞培養基盤 - Google Patents

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Abstract

拡散又は散布を必要としない細胞への増強された酸素の輸送と供給とをもたらす細胞を培養するための細胞培養装置を提供する。酸素の拡散が培養容器の側部と、上部と、底部とで生じる。組成物中にペルフルオロカーボンを含むガス透過性膜は、細胞培養容器装置内に含まれる細胞又は組織の環境と、細胞培養装置をインキュベートするインキュベーター内の雰囲気との間で酸素の迅速な、増強された、均一な移動を可能にする。
【選択図】図1

Description

本発明は、一般的に、試験管内での細胞成長又は組織培養の装置と方法とに関する。さらに詳しくは、本発明は少なくとも1種類のガス透過性膜を備えた細胞培養装置に関するものであり、前記ガス透過性膜は前記細胞培養容器装置に含まれる細胞の環境と細胞培養装置を一定の温度に保つインキュベーターの雰囲気との間での、迅速な、増強された、均一な酸素輸送を可能にする。
真核細胞培養系では、通常、前記細胞培養はpHと、温度と、湿度と、オスモル濃度と、イオン濃度と、ガス交換とを制御した条件の下で行なわれる。ガス交換に関して、酸素と二酸化炭素(CO)が細胞培養に特に重要である。典型的な真核細胞培養装置では、COを注入し、インキュベーター内を約5%のCO雰囲気に保持するインキュベーターが提供される。前記COは組織培地と相互作用し、特に緩衝系で生理的濃度に近いpHに保持する。従来の細胞培養容器は、組織培養フラスコと、組織培養ボトルと、組織培養プレートとから成る。前記インキュベーター雰囲気から組織培養プレートへのCOの注入は、通常、緩いフィッティングカバーを含み、前記プレートを前記フィッティングカバーで覆い1つか複数のプレートチェンバーに粒子状汚染物が混入することを防ぐが、インキュベーター雰囲気と前記組織培養プレート内の雰囲気との間のガス交換は可能である。同様に、組織培養フラスコ又は組織培養ボトルでは、緩いフィッティングキャップにより粒子状汚染物が前記フラスコ又はボトルのチェンバーに混入することを防ぐが、インキュベーター雰囲気と前記フラスコ又はボトル内の雰囲気との間のガス交換は可能である。さらに近年、ガス透過性膜又はガス透過性フィルターを備えたキャップが提供されており、これにより固いフィッティングキャップでのガス交換が可能である。
COに加えて、細胞の培養は、細胞の呼吸機能と代謝機能に必要とされる十分な量の酸素を細胞へ輸送する能力に依存する。従来の細胞培養容器では、細胞呼吸のための酸素は、例えば、組織培地の表面上方に位置する容器内の空隙のような、容器のヘッダースペースで供給される。培養細胞の酸素濃度を増加させるために、機械的撹拌、及び/又は培地の環流かエアレーション、及び/又は酸素の分圧の上昇、及び/又は気圧の上昇を試みた。このように、従来の細胞培養容器では、容器全体の体積又は表面に比べて、ガス交換に用いられる体積又は表面は非効率的にしか使用されず、及び/又は結果としてガスの交換速度が制限されるかガスが平衡に保たれることとなる。前記の現象は規模の小さな培養(15ml以下)でより一層顕著であり、前記培養では空間と表面積とガス交換が制限されるため、細胞増殖の速度が遅く、細胞密度が低く、細胞の総数が少ない場合が多い。また、試験管内における前駆組織での準最適な酸素レベルが低い分化度をもたらすという実証もある。
胚性幹細胞の培養での様々な酸素レベルによって、例えば前記胚性幹細胞が急速に増加するか分化するかなどが決まる。また、内皮細胞と間葉系幹細胞とで、酸素輸送と分化との間の明らかな相間が見られた。その他の試験管内の系では、試験管内において膵臓ベータ細胞の分化が酸素により大幅に改善されることがわかった。これは、胚発生(二次転移)の際のベータ細胞特異化の第二の波と最も著しい波とが膵芽内での血流の開始と同時であるという結果と一致する。以上のことから、当技術分野において、酸素輸送を増強するか、培養環境、及び/又は増殖、及び/又は分化、及び/又は生存性を調整する組織培養システムを提供することが求められている。
培養容器の複数の側部と、上部と、下部とで酸素の拡散が生じる従来の培養システムを改良することにより、従来の静置培養基盤での細胞への酸素輸送の増強をもたらすシステム/装置を記載する。さらに、ガス透過性膜組成物を提供する。
典型的な培養容器では、安定にし、ポリスチレンやポリプロピレンのような比較的にガスを透過しないプラスチックの底面上に細胞を静置し、培地層上部の空気から十分な量の酸素輸送を可能にするために、特定の深さの培地で被覆する。前記システムは、培養組織の播種密度と酸素消費率とに依存する傾きの大きい酸素勾配が細胞/培地層で急速に形成されるという発想とは全く異なるものである。これは、培養細胞の直径が約400マイクロメートル未満である場合か、培養フラスコ表面積の1−3%超の播種密度で培養細胞が培養される場合に、培養細胞で無酸素核領域が進むことにつながる。その結果、大量の細胞を培養する際に費用がかさむと共に非効率的となり、当然のこととして多数の培養容器を操作することでコンタミネーションのリスクが高まる。また、特に細胞において、ランゲルハンス島のような著しい代謝活性を伴う細胞の機能性と、生存性と、分化とに対し、非常に悪い影響をもたらす。
好ましい実施態様では、膜障壁を備えた組織培養ウェルと、前記組織培養ウェルを持ち上げるために前記組織培養ウェルの底部から延出した支持部材と、前記組織培養ウェルを備えたトレイ又は組織培養フラスコとを含む細胞培養装置及び組織培養装置。また、支持部材により前記障壁底部が持ち上げられ、空気の流動が可能となるように、支持部材は前記ウェルの側部か上部に配置するか、又はその他の任意の方法で配置することができる。前記組織培養ウェルは、上部開口部及び下部開口部と、ガス透過性・液体不透過性膜障壁とを備え、連続する前記組織培養ウェル底面が前記障壁により規定される。
好ましい実施態様では、前記膜障壁がペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物とを含む。好ましくは、前記ペルフルオロ炭化水素が、フルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含む。
酸素交換を促進し、障壁の形成に用いることができるその他の代替分子はニューログロビンと、ヘモグロビンと、ミオグロビンとを含むが、これらに限定されない。
好ましい実施態様では、前記ペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が約0.001%v/v以上であって、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が80%v/v以下の比率である。
他の好ましい実施態様では、高いO取り込みが可能である様々の培地内で細胞を培養することにより前記Oをさらに増強する。例えば、複数の種類のペルフルオロエマルジョンなどである。
その他の好ましい実施態様では、前記膜障壁はセラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ヒドロゲル、シリコーンとから選択される少なくとも1種類の物質を含む。
好ましい実施態様では、前記膜障壁は少なくとも約0.001μm以上0.5μm以下の大きさの複数の孔を備える。好ましくは、前記膜障壁は少なくとも約0.01μm以上約1mm以下の厚みである。
さらにその他の実施態様では、前記組織培養ウェルはポリプロピレン、ポリスチレン、ビニル、他の種類のプラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラスとから選択される少なくとも1種類の物質から作られる。少なくとも1種類以上の組織培養ウェルを含む前記トレイは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビニル、他の種類のプラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラスとから選択される少なくとも1種類の物質から作られる。
前記組織培養ウェル及び前記組織培養トレイの形状と大きさは使用者の要求に応じて種々であってもよい。例えば、前記組織培養ウェルは円形と、長方形と、これらに類するものであってもよい。前記組織培養ウェルの大きさは、典型的な384−ウェルプレートの大きさと、典型的な96−ウェル組織培養プレートの大きさ、典型的な24−ウェル組織培養プレートの大きさ、12−ウェル組織培養プレートの大きさ、6−ウェル組織培養プレートの大きさ、及びこれらに類する大きさであってもよい。また、前記システムは組織培養フラスコの形状であってもよい。前記障壁をフラスコの底面か側面に沿って設置することができる。
本発明の一形態では、前記トレイはガス交換を可能にする蓋体を備える。前記システムは、種々のパーセントの酸素を含むインキュベーター内でインキュベートされる。例えば、インキュベーターはOが約1%から100%であり、及び/又は高圧室を備える。典型的な組織培養システムに比べ、前記システムはOの輸送を連続的にし、効率的にすると共に増強する。
その他の好ましい実施態様では、前記装置はバッグの形である。前記バッグは、例えば、正方形と、長方形と、円形と、これらに類するものなど、使用者の要求に応じていかなる形でも、いかなる大きさであっても良い。前記膜の厚さは少なくとも約0.01μm以上、約1mm以下である。バッグの大きさの例としては、200mLバッグ:縦17.53cm×横11.43cm(縦6.9インチ×横4.50インチ);150mLバッグ:縦14.86cm×横7.62cm(縦5.85インチ×横3.0インチ);バッグ:縦8.84cm×幅7.04cm×奥行き0.74cm(縦3.48インチ×幅2.77インチ×奥行き0.29インチ)を含むが、これらに限定されない。他の複数の実施態様では、前記バッグは1つ以上のチェンバーと、1つ以上の開口部と、これらに類するものとを備える。
その他の好ましい実施態様では、組成物はペルフルオロカーボンを含浸した高透過性のシリコーンマトリックスを含む。好ましくは、前記ペルフルオロカーボンはフルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含む。
一実施態様では、前記ペルフルオロカーボンとシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが約0.001%v/v以上であって、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが80%v/v以下の比率を有する。
その他の好ましい実施態様は、酸素輸送増強組織培養装置での細胞又は組織外植体の増殖方法であり、前記方法は(a)懸濁液を形成するために組織培地の適当量に、本発明の前記装置内で培養される前記細胞又は組織外植体を懸濁することと;(b)前記装置の組織培養ウェル内に前記懸濁液を注入するための器具内に懸濁液を導入することと;(c)細胞培養インキュベーター内で、培地と細胞の前記懸濁液を含む前記細胞培養装置をインキュベートすることとを含む。好ましくは、培養される前記細胞は足場依存性細胞か足場非依存性細胞かである。また、培養組織切片も本発明の範囲内であることを意図する。
その他の好ましい実施態様では、前記細胞、組織、器官かのいずれかを含む前記培養システムは、特定の酸素レベルと温度の範囲内でインキュベートされる。例えば、インキュベーターはOが約1%から100%であり、及び/又は高圧室を備える。
その他の好ましい実施態様では、増強された酸素輸送の効果と、細胞培養への利用可能性を決定する方法は、膜障壁を備えた組織培養デバイスと;前記組織培養ウェルを持ち上げるために前記組織培養ウェルの底部か、側部か、上部かのいずれかから延出した支持部材と;前記組織培養ウェルを備えたトレイ又は培養フラスコとを含む装置内で細胞を培養することを含む。
その他の好ましい実施態様では、前記装置は上部開口部及び下部開口部と、ガス透過性膜障壁とを備え、連続する前記組織培養デバイス底面が前記障壁により規定される。好ましくは、前記膜障壁がセラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ヒドロゲル、シリコーンとから選択される少なくとも1種類の物質を含む。
好ましい実施態様では、前記膜障壁はペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物を含む。ペルフルオロ炭化水素の例としては、フルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含むが、これらに限定されない。
その他の好ましい実施態様は、細胞と、組織と、器官とを輸送するための装置であり、膜障壁を備えた培養デバイスと、無菌状態下で前記培養デバイスを内設する容器とを備える。
その他の好ましい実施態様では、前記培養デバイスは、上部開口部及び下部開口部と、ガス透過性膜障壁とを備え、連続する前記培養デバイスの少なくとも1つの側面が前記障壁により規定される。好ましくは、前記膜障壁はペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物を含む。
その他の好ましい実施態様では、前記ペルフルオロ炭化水素は、フルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含む。
好ましい実施態様では、前記ペルフルオロ炭化水素及びシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が約0.001%v/v以上であって、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が80%v/v以下の比率である。
その他の好ましい実施態様では、前記膜障壁は、少なくとも約0.001μm以上、1mm以下の大きさの複数の孔を備える。
前記培養デバイスか、培養装置か、培養システムかは、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビニル、他の種類のプラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラスとから選択される少なくとも1種類の物質から作られる。前記容器は、ポリプロピレン、ポリスチレン、ビニル、他の種類のプラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラスとから選択される少なくとも1種類の物質から作られる。
その他の好ましい実施態様では、前記膜障壁は少なくとも約0.01μm以上、約1mm以下の厚さである。
本発明の他の形態を以下に記載する。
本発明は、添付した特許請求の範囲中で詳細に指摘される。本発明の上記の利点と更なる利点とが、添付した以下の図面を組み合わせ、下記の詳細な記載を参照することにより更に理解されるであろう。
本発明の前記装置の一実施態様を図示した略図である。 図2A−2Dは、以下の写真のスキャンである。図2Aは、高いO対照条件(48時間)で培養したニューロスフェアである。図2Bは、PFC/Siディッシュで、同様に高いO(48時間)で培養したニューロスフェアである。これらは、標準のO濃度での対照と高いO濃度での対照とに対するPFC/Si条件の典型的なものである。対照(図2C)とPFC/Siで培養したニューロスフェア(図2D)でのRed BrdU染色(増殖を表示)を示す。DAPI(青)は、細胞核対比染色である。尺度目盛(上の列と下の列):500μm。 図3は、製造後24時間での全種類のディッシュの比較の結果を示すグラフである。前記の図は、各々の群の反復操作の典型的な平均曲線を示す。誤差バーは表示しないが、PFC/シリコーン基盤対シリコーン単独と、PFC/シリコーン基盤対ポリスチレンとの差異は、非常に大きく、PFC/シリコーン基盤が非常に優位である(最大濃度の半分となる時間と再酸素化勾配の比率となる時間での、P<0.01対シリコーン単独と、P<0.01対ポリスチレン)。 薄膜光学スポット酸素センサーの略図の典型的なものである。 図5A−5Bは、PFC/Siデバイスでの増強酸素輸送を示すものである。図5Aは、「酸素サンドイッチ」方式の略図の典型的なものである。標準的な培養容器では、大気中の酸素は培地の拡散後にのみ組織に達することが可能である。PFC/Siデバイスでは、更なる酸素輸送をもたらす濃ペルフルオロカーボン,空気透過性シリコーン膜上に試料を静置する。図5Bは、酸素21%の標準条件(上)と、酸素35%の標準条件(中央)と、酸素35%のPFC/Siデバイス(下)での平衡(第0日)直後の膵芽での酸素勾配のコンソールv.3.2数学モデリングである。左:酸素分圧目盛(mmHg),青(最小)から赤(最大)。酸素<0.1mmHg(無酸素)の領域では、白に表示される。 図6A−6Bは、高増殖率誘発PFC/デバイスを示すものである。図6Aは各条件(標準条件と、高酸素条件と、PFC/Si)での培養3日後の膵芽の体積(m)を示し、細胞増殖への酸素の好ましい影響を示すグラフである。ベースラインは、採取直後の芽の平均体積を示している(第0日)。誤差バー:各群の標準である。図6Bは左欄で:各条件で3日間培養した芽の顕微鏡写真を示している。尺度目盛:400μm。右欄:<10mmHg(低酸素)の領域を検出する(緑)ハイポキシプローブ(ケミコン)での膵芽の免疫蛍光分析(培養第3日)。青、DAPI細胞核対比染色。尺度目盛:500μm。 図7は、未分化上皮細胞の複製でのPFC/Si−誘発増殖を示す一連の写真である。BrdU(緑)の存在下で、PFC/Siデバイスで3日間培養した膵芽を共焦点免疫蛍光分析した。青は、DAPI細胞核対比染色。上列:左から時計回りに、赤字で:グルカゴン(Glu)、インスリン(Ins)、カルボキシペプチダーゼA(CPA)、及びアミラーゼ(Amy)である。最終分化細胞のいくつかは、BrdU共染色される。下列:2−チャネル組み合わせ(顕微鏡写真1と2と3)と、3−チャネル組み合わせ(顕微鏡写真4)として表されるPFC/Si培養芽のBrdU(緑)と、DAPI(青)と、E−カドヘリン(E−cad)(赤)染色。芽の細胞の大部分は、(上皮の)E−カドヘリン+である。増殖は、E−カドヘリン+−未分化群内で選択的に起こる。尺度目盛:50μm(Glu,Ins,CPA)及び75μm(Amy,E−cad)。 図8A−8Cは、PFC/Si基盤での培養が内分泌腺の分化を促進することを示すものである。図8Aは、標準条件(閉じた棒)と、高酸素(縞の棒)と、PFC/Siデバイス(グレーの棒)とで培養した膵芽の相体qRT−PCR分析を示すグラフである。値は、対照(=1)に対するx倍の増加として表される。誤差バー:標準誤差(7回の独立試験)。全ての値は、18S RNAに対して標準化した(方法を参照)。図8Bは、標準設定(閉じた棒)と、高酸素設定(縞の棒)と、PFC/Si設定(グレーの棒)とで培養した免疫染色芽でのインスリン(左)とグルカゴン(右)のシグナルのMetamorph(登録商標)分析を示すグラフである。Y軸:対照(=1)に対するx倍の増加。誤差バー:標準誤差(5回の独立試験)。図8Cは、標準条件(左)と、高酸素(中央)と、PFC/Si基盤(右)とで3日間培養したe13.5芽の典型的な部分の共焦点顕微鏡写真を示すものである。インスリン(Ins)陽性細胞は赤で染色され、グルカゴン(Glu)陽性細胞は緑に染色される。青:DAPI細胞核対比染色。白の点線は、試料の外形を強調するために加えられた。尺度目盛:100μm。 図9A−9Bは、e16.5芽で近似したPFC/Si−培養e13.5芽培養のインスリン含有量と遺伝子発現像を示すグラフである。図9Aは、各群(標準対照と、高酸素対照と、PFC/Si)での全インスリン含有量を示すものであり、e16.5胚(=1)から得られた背側膵芽で観測されるインスリンの割合として表される。誤差バー:各群に対する標準誤差(n=4)。図9Bは、PFC/Si−培養e13.5芽の遺伝子発現像を示すものであり、新たに単離されたe16.5芽のインスリンの割合として表される。点線は、100%のe16.5発現を強調するものである。誤差バー:各群に対する標準誤差(e16.5に対する独立回収はn=4、PFC/Siに対する独立回収はn=7)。 図10A−10Bは、PFC/Siが外分泌腺より内分泌腺細胞の分化を選択的に促進し、α細胞よりβ細胞の分化を選択的に促進することを示すグラフである。PFC/Si群における遺伝子発現のレシオメトリック分析は、e16.5芽(縞の四角)と、標準(グレーの四角)と、高酸素対照(閉じた四角)とを比較した。値は、他の3種類の群に対するPFC/Si群の遺伝子の各ペアのネット比のx倍の増加として表される。図10Aは、Ins1/Amy(インスリン1対アミラーゼ)と、Ins1/p48(インスリン1対p48)と、Ins1/CPA(インスリン1対カルボキシペプチダーゼA)の内分泌腺対外分泌腺のレシオメトリック分析を示すものである。インスリン2(Ins2)について、同様の比率を算出した。図10Bは、Pax4/Arxと、Ins1/Glu(インスリン1対グルカゴン)と、Ins2/Glu(インスリン2対グルカゴン)と、Pax4/Pax6のβ細胞対α細胞のレシオメトリック分析を示すものである。誤差バー:各群に対する標準誤差。 図11は、膵臓発生におけるOの役割を説明するための仮想モデルの略図である。仮説によると、血流の開始前に膵臓で低酸素状態が生じることが、内分泌前駆細胞のHIF−1αを介するノッチの活性化を優位にし、自己再生を促進するが分化は大幅に抑制される。また、低酸素状態ではHIF−1α安定化がVEGF−介在血管形成を誘導し、最終的には約e13.5での血流開始を導く。その時、膵臓組織の増強酸素輸送は、HIF−1αを不安定化し、内分泌細胞型のノッチダウンレギュレーションと分化とをもたらす。これに対して、外分泌前駆細胞はROSによるNRX隔離を介したWnt/β−カテニン経路を活性化することにより、高Oレベルに反応する場合がある。これは、胚発生の停止の間に、細胞の拡大を促進し得る。
装置は、前記培養容器の側部と、上部と、底部とで酸素の拡散をもたらす静置培養基盤内での細胞への酸素の増強輸送を提供する。
本発明の組織培養装置/システム/デバイスは細胞への酸素輸送の増加をもたらすことにより、任意の典型的なシステムより優れたものとなる。典型的なシステムにおいて、酸素要求量の増加は、機械的撹拌法と細胞へのガス散布法で調整される。しかしながら、撹拌とガス散布とはどちらも細胞の損傷をもたらし、これにより、培養物の生存性が減少すると共に、細胞培養及び/又は組織培養の全体的効率と生産性が減少する。さらに、ガスを用いた細胞培養物と組織培養物への直接散布により泡が生成することがあり、また、細胞の生存性に悪影響をもたらす。他方で、試料全体に急な酸素勾配が生じるために、前記インキュベーターでの酸素濃度の増加は不十分なものとなることが確認されている。さらに、本発明は高密度組織の細胞の培養を可能にする。
胚性幹細胞を培養する際の種々の酸素レベルにより、例えば急速に増殖するか、分化するかが決まる。また、内皮細胞及び間葉系幹細胞において、酸素輸送と分化との明確な関係が見られた。その他の試験管内システムでは、試験管内における膵臓ベータ細胞の分化が酸素により大きく促進されることがわかった。これは、胚発生(二次転移)の際のベータ細胞特異化の最も著しい波と第二の波が、膵芽での血流の開始と同時であるという観測結果と一致する。
好ましい実施態様では、組織培養装置は培養する細胞又は組織への酸素の増強輸送をもたらす。前記装置又はシステムは、前記培養容器の側部と、上部と、下部とで、酸素の拡散を提供することにより、従来の培養システムより優れたものとなる。典型的な培養容器では、安定にし、ポリスチレンやポリプロピレンのような比較的にガスを透過性しないプラスチックの底面上に細胞を静置し、培地層上部の空気から十分な量の酸素輸送を可能にするために、特定の深さの培地で被覆する。これらのシステムの形態は、培養組織の播種密度と酸素消費率とに依存する傾きの大きい酸素勾配を細胞/培地層が急速に形成するという発想とは全く異なるものである。これは、培養細胞の直径が約400マイクロメートル未満である場合か、培養フラスコ表面積の1−3%超の播種密度で培養細胞が培養される場合に、培養細胞で無酸素核領域が進むことにつながる。その結果、大量の細胞を培養する際に費用が増すと共に非効率的となり、当然のこととして多数の培養容器を操作することでコンタミネーションのリスクが高まる。また、特に細胞において、ランゲルハンス島のような著しい代謝活性を伴う細胞の機能性と、生存性と、分化に対し、非常に悪い影響をもたらす。
本発明の前記組織培養装置は、底面が10−20%v/vペルフルオロカーボンミセル懸濁液を含む薄い膜シリコーン層を備えた培養基盤を含む。好ましい実施態様では、前記ペルフルオロカーボンミセル懸濁液は、ペルフルオロカーボン対シリコーンが約0.001%以上であって、80%v/v以下の範囲である。シリコーンとペルフルオロカーボンはどちらも、培地又はプラスチックよりもはるかに大きい酸素の溶解性と、拡散性/透過性とを有する。酸素をより豊富に含む透過性の層上に細胞を載置することにより、培養される組織は、従来の培養条件で生じる上から下への勾配を防ぎ、酸素で効率的にサンドイッチされる。この場合、酸素輸送の少ない領域はディッシュの低領域というよりむしろ前記細胞層の中間領域となり、酸素濃度を変更することで、前記の領域が無酸素にならないように制御することができる。
前記装置又はシステムは、底面がペルフルオロカーボンを含まない薄いシリコーン層からなる同様の培養基盤より優れたものである。O拡散に関して、シリコーン単独よりもPFC/Siが優れていることが、非侵襲的光Oバイオセンサーを用いて直接測定することにより確認された(後述の実施例の欄の酸素輸送試験を参照)。また、内分泌腺の分化の結果も、膵臓発生のマウス・モデルにおいて優れたものであった(後述の実施例参照:増強酸素輸送が試験管内でのベータ細胞の分化を促進する)。
培養ウェル又は挿入部分の特徴は、目的とする組織切片の培養又は細胞の培養に応じて様々である。例えば、24−ウェル型の培養が必要である場合は、ウェルは典型的な24−ウェルプレートに対応する特徴を有する。
その他の実施例では、現在の工業規格形式の一般的な構造の例である96−ウェルプレート構造がある。前記ウェルプレートの全高は約0.560インチであり、幅は3.365インチであり、長さは5.030インチに規格化される。前記プレートは、周囲のすそと、上部表面と、プレート内に96個の同一のウェルを提供するために8個のウェルがそれぞれ12列配置されたウェルの列とを備える。例えば、標準的なマイクロタイタープレート(96ウェル)の底面積は、0.32cmである。これは、半径が0.32cmであり、膜厚が例えば50−600μmのマイクロメートルの範囲に収まるよう変形してもよい。上部表面はすそから96ウェルマトリックスの外側に位置するウェルの外周に広がる。前記プレートは典型的にはプラスチックの成形品であり、ガス交換を可能にし、無菌を保つと同時に、蒸発による水分の蒸発を制御するためのドロップ・リングを有する透明カバーを備える。
ウェルチェンバーから及びウェルチェンバーへの液体の移動を可能にするためと、ウェルを通して光を透過するためと、個々のウェルでの色の変化又は蛍光の変化又は化学発光を測定するためと、その他の多くの機能のために、96−ウェル型に標準化することは多くの種類の装置の開発につながる。液体輸送装置は手動か、ロボット制御かで操作され、ウェルの含有物を調べるために用いる多くの装置はデータを記録し、分析し、操作するために自動化され、機器を備える。本発明は、任意の形態の96−ウェル型又は384−ウェル型用に設計された付属装置に適合する自動化され簡便な容器と、単一容器又はマルチ−ウェルベースプレートとを提供する。
その他の実施例では、前記ウェル又は組織培養物挿入部分は内径が1cmであり、高さが約1cmであり、最大体積が約785μLである。前記培養物挿入部分底部は、ある特定の体積/体積パーセントでペルフルオロカーボンを含浸した高透過性シリコーンマトリックスを備える。前記の組み合わせは、底面が液体不透過性であるので、細胞と空気の間に培地の障壁がない酸素貯留層を基底面上に提供する。
図1の略図に示すような培養装置の概要に移る。図への言及は実施例のためであり、これらは本発明の範囲を制限する目的ではない。前記組織培養ウェル又は挿入部分110はガス透過性障壁111を備え、前記障壁111は培養される細胞112への酸素の増強輸送をもたらす。前記組織培養ウェル(挿入部分)は、さらに前記挿入部分の底部に取り付けられた少なくとも2つ以上の部材113を備え、前記の部材は前記組織培養ウェル/挿入部分をトレイ114より高い位置に持ち上げる。前記持ち上げ部材113は、前記組織培養ウェル/挿入部分110を前記トレイより約1mmから約3mm高い位置に持ち上げる。前記トレイは蓋体115を有し、典型的にはガス交換を可能にするための組織培養に用いる。プレートは典型的にはプラスチックの成形品であり、ガス交換を可能にし、無菌を保つと同時に、蒸発による水分の蒸発を制御するためのドロップ・リングを有する透明カバーを備える。
前記挿入部分/組織培養ウェルは例えば、従来の組織培養プレートで使用するために単独で製造されることが可能であり、ここで前記トレイ114は前記組織培養プレートであってもよい。また、複数の前記組織培養ウェル/挿入部分は、例えば、24−ウェルプレート、12−ウェルプレート、6−ウェルプレート、及びこれらに類するもののような1つの組織培養プレートの一部として製造が可能である。本発明の前記装置での細胞培養は、標準の組織培養インキュベーターでインキュベートされてもよい。前記インキュベーターのO含有量は、各細胞タイプの最適な成長に必要とされる量に応じて様々である。
本発明に用いることができる空気は、任意の細胞増殖に適したガスの適宜の混合物とすることができる空気を含むが、これに限定されない。一実施態様では、ペルフルオロカーボンとシリコーンとの体積/体積比は、必要とされる輸送量に調節するように種々に変更される。さらに、前記培養装置は、COか、COか、NOか、Oか、HSか、細胞増殖又は生存性又は分化に適していると考えられるその他の任意のガス組成物かの種々のパーセントでインキュベートできる。例えば、インキュベーターはOが約1%から100%であり、及び/又は高圧室である。
前記トレイの蓋体又は閉鎖手段は、スクリューキャップやスナップキャップを含むが、これらに限定されない任意の形状や形態の物であってもよい。前記蓋体/閉鎖手段は、前記トレイに合う大きさである。さらに、閉鎖手段は、プラスチックを含むがこれに限定されない任意の材料で構成されることができる。好ましい実施態様では、前記閉鎖手段はエアフィルターを含む場合があり、前記エアフィルターは微生物や、細胞や、ウイルスや、任意の汚染物質が細胞培養デバイス内に混入し、細胞培養デバイス外に通過することを防ぐものである。無菌エアフィルターは当技術分野で公知であり、例えばマサチューセッツ州のミリポアにより市販されている。
その他の好ましい実施態様では、使用者の必要に応じて、前記装置と前記細胞/組織培養ウェルの形状を決定できる。例えば、一実施態様では、組立部は典型的な組織培養プレートで構成される。他の種類の形状は、6−ウェルプレート、12−ウェルプレート、24−ウェルプレート、96−ウェルプレートとこれらに類するものとを含む。他の形状は、組織培養フラスコと、特に臓器移植に使用される臓器などの運搬用容器と、細胞を大量に培養するためのローラーボトルと、バッグと、これらに類するものとを含む。
PFC/シリコーンバッグ:PFC/シリコーン混合物を高圧下で、この場合はバッグのような目的物の反対の形をした(CNC機械加工で予め作成した)ステンレス製金型に注入した。前記金型は、バッグの固体の内側部分と、所望の膜厚にするための物質注入用の細いチャネルと、硬化プロセスの際に物質を所望の膜厚に保持する働きをする最外ブロックとを備える。前記金型は通常中子とキャビティの2つの部分からなり、これにより射出成形後に取り出すための部分を確保する。混合物が硬化すると、前記混合物は加工前に金型内に組み込まれた一組のピンを用いるか、金型内に切り込まれたチャネルに空気噴出することにより、金型から取り出される。PFC/シリコーンバッグは、本技術を利用し、任意の所望の厚さになるよう製造することができる。
PFC/シリコーンプロトタイプ圧縮成形:一実施例において、金型キャビティは深さ8mmの円形チャネルを有し、厚さ6mmであるステンレス製ブロックから製造される。空気注入口は、成形品の取り出しを可能にするために前記チャネルの側部に沿って穿設された。これを圧縮成形機の万力ロック内に載置し、成形機の主な表面で平らに固定した。前記キャビティの上部と、圧縮成形機の表面上とに、前記PFC/シリコーン混合物を過剰に注入し、300マイクロメートルのステンレス製シムを成形品先端面(水硬性圧縮表面)の側部に沿って設置した。約24インチ×24インチの単なる大きなステンレス製表面である上面を前記シムのレベルまで圧縮し、材料を37℃で3時間硬化した。3時間後に圧縮機を解除し、前記先端面を持ち上げ、300マイクロメートルの底部膜を備えた固体シリコーンディッシュを放出する前記注入口に空気を注入した。
好ましい実施態様では、前記装置は96−ウェルを含み、試験用に典型的に用いられる装置と同じ大きさである。
その他の好ましい実施態様では、前記組織培養ウェルは分離可能な挿入部分を備えることができ、ここで前記ウェルの一部は前記膜障壁を備え、トランスウェル構造と類似している。例えば、成長培地を含むウェル内に前記膜を吊設するために用いられるデバイスの一部に、前記PFC/Si膜を備えた細胞の成長を補助するために用いられる前記組織培養ウェルの一部が着脱可能に固定される。この配置により、前記培養細胞の取扱いが容易になる。
この形態では、前記組織培養デバイスは、細胞保持部と、ウェル内で前記細胞保持部を吊設するためのハンガーとの2種類の構成部分を有する2ピーストランスウェルを備える。前記保持部は、前記ハンガーの底部に着脱可能に固定される。前記細胞保持部は、前記PFC/Si膜表面を含む。前記ハンガーは、ウェルに延伸するハンガーの底部で、前記ウェルの外周から吊り下げられるように構成され、配置される。前記ハンガーはウェルの外周から吊り下げられ、前記保持部はウェル内に水平に吊り下げられる。
その他の好ましい実施態様では、前記保持部は、突起部又は持ち上げ部を備える。
一実施態様では、前記保持部は、摩擦嵌合により前記ハンガーの底部に固定される。その他の実施態様では、前記保持部は第一の実施態様に対し逆方向に摩擦嵌合することにより、前記ハンガーの底部に固定される。さらにその他の実施態様では、前記保持部はハンガーから吊り下げられる。
前記ハンガーは好ましくは外側に延出するフランジを備え、前記フランジは組織培養クラスターディッシュ内のウェルの上端に吊り下げられるように段状になっている。前記段状フランジにより前記ハンガーがウェル内で水平方向に移動することを防ぎ、これによりハンガーの側壁をウェルの側壁から離した状態で配置し続けることができ、ハンガー側壁間での流体の毛細管現象を防止できる。一実施態様では、前記ハンガー側壁を前記ウェル側壁からさらに離して配置する漏斗状ハンガーを使用することで、より一層毛細管現象を防ぐ。前記フランジはピペットを前記ハンガーとウェル側壁の間の空間に挿入することを可能にし、ウェル内の培地に接触できるようにする開口部を提供するために不連続である。
前記保持部は、好ましくは、内部を規定する側壁と、側壁から延出した外縁部とを有する。膜は、組織増殖サポート又は細胞増殖サポートを形成する前記側壁の底面に設置される。前記外縁部は保持部の取扱いを容易にすると共に、前記保持部の使用を可能にする構造を提供する。
組立部は、1つ以上のPFC/Si膜と培地チェンバーとを含むことができる。例えば、前記膜の下方や、間や、上方に設けられる。これは、輸送試験と細胞間相互作用の試験で、膜上で細胞が成長することを可能にする。
さらに、本発明のその他の形態は、上述のような組織培養デバイスを含む複数のウェルを備えた培養ディッシュである。
本発明の目的の一つは、培地を添加又は除去するためのクラスターディッシュ内のウェルへの接触を可能にし、組織又は細胞に栄養を与えられるように培養ディッシュに載置可能な組織培養デバイスか細胞培養デバイスを提供することである。
本発明の三次元培養システムは、種々に適用して用いることができる。これらは、ほんの数例を挙げると、試験管内での細胞培養及び組織培養と、幹細胞の増殖及び分化と、分析と、細胞毒性化合物のスクリーニングと、アレルゲンと、増殖/調節因子と、医薬品など;特定の病気のメカニズムの解明;薬物及び/又は成長因子が作用する機構の研究;患者の癌の診断とモニタリング;遺伝子治療;及び生物学的活性生成物の製造を含むがこれらに限定されない。
本発明の細胞は、好ましくは真核細胞である。好ましい実施態様では、前記細胞は動物細胞であり、哺乳類細胞であり、好ましくはヒト細胞である。前記細胞は、例えばSf−9などの昆虫細胞か、Veroなどの霊長類細胞か、BHK又はC−127などのマウスか、CHOのようなハムスターか、腫瘍又は形質転換細胞又は非形質転換細胞又は上皮細胞又は内皮細胞又は骨芽細胞又は胎芽細胞又は間充織幹細胞のようなヒトかのいずれかを含む任意の種類の組み換え又は非組み換えの真核細胞であってもよい。本発明によると、任意の細胞が細胞培養デバイスで成長可能である。特に、本発明で選択される細胞は、足場依存性か足場非依存性かであってもよい。足場依存性細胞は成長するために表面が必要であるが、足場非依存性細胞は液体懸濁液中で成長できる。
その他の好ましい実施態様では、前記システム/装置は、これらの細胞の効率的な分化のための幹/前駆細胞の培養に用いられる。幹細胞への効率的で増強されたOの輸送は、これらの細胞の分化レベルを強化することにつながる。
さらに別の実施態様では、本発明は三次元組織培養物を培養させるための細胞培養装置を提供する。移植用の組織を培養するには、組織が食品医薬品局(FDA)の承認を受ける前に複数の条件を満たす必要がある。このFDAの要件は、組織構造体の培養のための疾患の一貫性及び再現性を改善する機能性と、証明された無菌性とを含むが、これらに限定されない。生体内の機能性を達成するために、設計される組織構造体は三次元でなければならない。培養構造体の無菌モニタリングによるデータを使用して、無菌性を確認し、明細を確立することができる。
移植可能な組織は3つの重要な特徴、すなわち、1)機械的安定性及び足場のための細胞外マトリックスと、2)生存能力及び機能を維持するための細胞間接触と、3)生育及び増殖のために細胞分集団を分離する三次元形状とを有する。標準の組織培養手法(例えば、Tフラスコと、ペトリ皿と、ローラーボトルと、撹拌ローラーボトルと)は器官機能に直接取って代わる移植可能な組織を一貫して発生させることができない。
ペルフルオロ化合物を含むポリマー製剤は、言及されることによりその全体がここに援用される米国特許公報第6,630,154号に記載されている。
酸素代謝は、真核細胞の代謝機能に必須のものである。特に、哺乳動物細胞培養技術及び動物細胞培養技術では、急速な細胞分裂の初期段階中に酸素流量が重要となる。哺乳動物細胞及び動物細胞には、足場依存性であって生育する表面を必要とするものもあれば、足場非依存性であって細胞の種類に関係なく液体環境中で生育できるものもある。しかしながら、これらの細胞は全て培地中の溶存酸素を必要とする。それにもかかわらず、足場依存性細胞及び足場非依存性細胞を含む細胞培養の後期段階中に、単位体積当たりの細胞数が増加するにつれて、大量の酸素物質輸送の必要量が再び増加する。
従来、少なくとも足場非依存性細胞では、機械的撹拌方法及び培養物へのガス散布により酸素必要量の増加に対応した。しかしながら、前記撹拌及びガスの散布により細胞が損傷を受け、これにより培養物の生存能力、ならびに細胞及び/又は組織培養の全体の効率及び生産性が低下する。さらに、細胞培養物及び組織培養物をガスと共に直接散布することにより、細胞の生存能力に有害な泡状の生成物が生じる可能性がある。
本発明は、増強された酸素輸送により前記の欠陥を克服できる。
本発明を制限することも、説明することも意味していないが、説明に役立つ実施例を以下に記載する。ステンレス製金型はフロリダ州マイアミのバイオレップ社で製造され、仕様は以下の通りである:内径8.5cmで、シリコーンが所定位置で硬化し、固定した状態になるように、下端から約300マイクロメートルの底部突起部に沿って傾斜のある溝を備えた。インキュベーター内に載置したときに底面に沿ってガス交換が可能になるように、前記金型を縁端に沿って3つの脚部を備えたステンレス製の外輪に取り付け、前記脚部により前記底面を培養インキュベーターのステンレス製の棚より高い位置に保持した。その他のデバイスはミリポア・CM培養挿入部分を用いて製造され、液体透過性テフロン底部を除去し、注入したシリコーン/PFCで置き換えた。しかしながら、任意の幾何学的培養金型は、効率的に製造することができる。前記PFC/シリコーンは以下の方法で製造された:比体積を達成するために、ダウ・コーニングRTV−615A エレクトリカルシリコーンを秤量した(密度1.1g/mL)。添加後の体積パーセントの比率がシリコーン10パーセントに対して触媒1パーセントとなるように加えられたシリコーン及び触媒の体積の10%−20%となるように、FC−43(3M社)を加え、秤量した(1.9g/mL)。その後、PFCが全体に均一に分散するように、氷スラリーで冷却した50mLコニカル内のPFC−シリコーン混合物にプローブ超音波機を用いて20秒のパルス間隔で超音波をかけ、前記超音波機をコニカルの底部から開始し、徐々にコニカルの上部へと移動させた。超音波を1分かける度毎に、5分間の冷却間隔を置く。白色混濁混合物が形成する。PFCとシリコーンとの相分離が確認できなくなり、前記分散が視覚的に均一になるまで超音波を続ける。ここで、さらに均一にするために前記混合物を1分間ボルテックスし、その後脱気するためにガラス真空乾燥チェンバー内に載置する。シリコーン混合物から気泡を真空除去し、脱気を行い、気泡を破裂させるために5分から10分毎に真空を中断する。視覚的に気泡が確認できなくなったら、前記混合物を脱気チェンバーから除去し、混合物に対し10%の体積の触媒を添加する。前記触媒はポリマー懸濁液に比べ粘性が非常に低いため、慎重に数分間管を反転させることで、触媒を前記シリコーン混合物全体によく分散させる。ここで、前記金型の開口底部領域をピンと張った平らなパラフィルム表面で被覆する。その後、所望の膜厚を得るために、ピペットチップの内部に沿ったシリコーンの接着を防ぐことができるプランジャー分注ピペットを用いて、所定体積のシリコーン/PFC混合物をパラフィルム層に加える。例えば、8.5cmディッシュで300マイクロメートルの膜厚を使用すると、加える体積はπrh、すなわち、0.03*(π)*(4.25)、つまり1.7mLとなる。その後、前記体積の混合物は、ディッシュを回転することにより前記表面に完全に広がり、シリコーンが前記パラフィルム上に広がると共に完全に覆うこととなる。その後、前記表面に沿って定着するので、シリコーン混合物がさらに均一に分配するようディッシュを立たせた。以上のことが完了すると、ディッシュ全体を45℃のインキュベーターか乾燥機内に載置し、一晩硬化させる。6時間以内に硬化が起こるが、完全な硬化を補償するために、デバイスを利用する前に前記プレートを約18時間硬化させた。硬化すると、培養デバイスで使用する前に無菌状態を確保するため、たとえ小さな挿入部分であっても、前記プレートを使用前の数時間70%エタノール中に浸し、前記装置を加圧滅菌する。
以下の実施例は例として挙げられるものであり、発明の範囲を制限するものではない。具体例を挙げ、上述の記載を例示するが、発明の範囲を制限するものではない。上記の実施態様の一つ以上の任意の特徴は、本発明のその他の任意の実施態様の一つ以上の特徴と任意の方法で併用することができる。さらに、明細書を検討することにより、本発明の多くの変形が当業者にとって明白である。
各出版物又は特許文献が個別に表示されているように同じ範囲のあらゆる目的のために、本出願に引用した全ての出版物と特許文献は言及されることによりその全体がここに援用される。本明細書の種々の参照文献を引用することにより、出願人はどの参照文献も本発明の「先行技術」にあたるとは認めない。
実施例1:ペルフルオロシリコーン高酸素細胞培養基盤
培養物挿入部分底部を、特定の体積/体積パーセントでペルフルオロカーボンを含浸した高透過性シリコーンマトリックスで修飾した。前記の組み合わせは、底面が液体不透過性であるので、細胞と空気の間に培地の障壁がない酸素貯留層を基底面上に提供する。
バイオメディカル/エレクトリカルグレードRTVシリコーン(RTV−615A)と対応する加硫触媒(RTV−615B)とはどちらも密度が1.1g/cmであり、ダウ・コーニング・ケミカルから購入できる。前記のシリコーンは、既知の生体適合性特性と、高い酸素溶解性と、高いショア硬さのために選択された。膜厚は膜の酸素輸送特性に大きな影響を及ぼすため、破損の可能性が最小となる最も薄い膜が望ましい。
密度が1.9g/cmであるペルフルオロトリブチルアミン(PFC),FC−43は、3M社から購入できる。他のペルフルオロ炭化水素は高い酸素溶解性を有するが、FC−43は化学安定性と非反応特性(高い沸点、低い蒸気圧)のためにより選択され、シリコーンへ混合しやすい。
無菌の50mLコニカルチューブでシリコーンを秤量し、密度により特定の体積のシリコーンを得た。例えば、10mLのシリコーンが必要な場合、シリコーン11gを50mLコニカルに加えた(10×1.1g/cm)。前記シリコーンに、FC−43の特定量(10%又は20%v/v)を同じ方法で加えた。例えば、上述の10mLのシリコーン内でPFC濃度を10%v/vとするために、1.9gのFC−43を加えた。
ペルフルオロカーボン化合物は超高密度であるため、ペルフルオロカーボン化合物はより低密度のいかなる化合物ともほとんど混合しない。その他の成分と混合したとき、ペルフルオロカーボン化合物は直ちにその他の物質と二層の構造を形成する。他の液体又はより低密度の成分内でPFCの均一な懸濁を得るためには、超音波処理か、高圧乳化かが必要となる。これらのプロセスの最終生成物は、マイクロメートルからナノメートルの大きさのペルフルオロカーボンミセルの粒子懸濁液である。しかしながら、時間が経過するにつれて、前記ミセルはより大きな液滴へと会合していく傾向にあり、この現象はオズワルド熟成として知られている。これは非粘性液体だけでのエマルジョンの特性であり、ゲル化ポリマー溶液を用いた以前の試験では見られなかった。シリコーンのような半固体状ヒドロゲル又は半固体状化合物を使用する利点は、液滴会合を防ぐか、液滴会合を大幅に減少させるそれらのマトリックス内に前記のヒドロゲル又は化合物が前記PFC液滴を取り込む能力を有していることである。
前記二層PFC/シリコーン混合物は、20秒パルスのVirsonic 200プローブ超音波機を用いて、40Wで超音波処理合計時間3分間の間に、1分間の冷却間隔を置いて、超音波処理を行なった。引き続き、前記混合物を氷スラリー浴で冷却した。超音波処理の結果得られた生成物は、白色で、不透明な均一混合物であった。超音波処理後には、FC−43とシリコーンの層分離は確認できなかった。ここで、均一な分布を得るために、加硫触媒の10%v/vアリコートを混合物に添加し、懸濁液中でボルテックスした。
次に、混合物全体を真空チェンバーに載置し、混合物から全ての気泡を抜いた。気泡は界面に集まるので、通常は真空で気泡が破裂する。完全な脱気には、約45分を要した。これにより得られた生成物は、シリコーンの完全性に影響を及ぼす可能性のあるガスポケットを含まない、なめらかで不透明な懸濁液であった。
その後、無菌顕微鏡手術用ハサミを用いて、ミリポアCM挿入部分の底面からテフロン膜を除去した。慎重にパラフィルムを底面全体に沿って載置した。ディッシュの最下部に前記パラフィルムをピンと張り、各挿入部分の外縁の周囲を固定し、シリコーンを硬化したときに底部が平らとなり固定されることを確実にした。パラフィルムが固定された後、粘性液体を精密に分注するために特別に設計された特別なプランジャーピペットを用いて、シリコーン/PFC混合物の特定の体積を底面に添加した。特定の体積を添加し、精密な膜厚を得た。挿入部分の大きさが既知のものを利用し、円柱の体積を求めるための公式であるπRhを用いて所望の厚さを算出した。膜をできる限り薄くし、かつ、膜の破損の危険性を最小にすることが必要となる。これらの理由のために、種々の膜の深さを調べた。最適な拡散と膜の完全性とが得られたため、300μmの深さを用いた。それゆえ、各ディッシュ底部に添加されたシリコーン/PFCの体積は、π*(0.5cm)*(0.03cm)、すなわち23.5μLであった。
シリコーン/PFC混合物の添加直後に、改良したチューブ回転装置上で前記ディッシュを徐々に回転させ、パラフィルム表面全体に溶液を均一に広げた。室温では前記シリコーンの硬化は比較的遅く、ディッシュを直立状態にし、さらに溶液の固定を可能にした。平面上に載置すると、手動の操作/回転後、シリコーンがより均一に分布されることが確認できた。均一な分散が確認されると、前記挿入部分を40℃の乾燥機内に載置し、完全に硬化させた。2−3時間以内に完全な硬化が起こった。
シリコーンを完全に硬化させた後、前記挿入部分を乾燥機から取り出し、冷却した。その後、前記シリコーン/PFC膜に亀裂が入らないように、前記パラフィルム基礎を慎重に除去し、傷がなく液体と組織を保持することが可能なガス透過性の底部とする。使用前に、70%エタノール中に一晩浸した後、100%エタノール中に30分間浸すことにより、前記挿入部分を滅菌した。採取した組織を加える直前に、前記挿入部分を無菌のPBSで5回洗浄し前記エタノールを完全に除去し、その後、層流フード内の無菌半紙上で乾燥した。
実施例2:数学モデリング
膵芽を採取し、倒立顕微鏡で段階的な目盛り付レンズを用いて、慎重に測定した。表1に、18個の膵芽の測定結果をまとめた。
完全な芽では3次元が均一であると仮定して、全ての状態について上記の大きさの楕円を用いて、数学モデリングを行った。インステック社の撹拌マイクロリッターチェンバーシステムを用いて、芽の酸素消費率を測定した。つまり、重炭酸塩を含まない従来の培地400μLを入れたチェンバー内に3個の芽を載置した。NaSO を蒸留水に懸濁させ、前記チェンバーを培地の大気酸素濃度とゼロとに較正した。システム内の温度を常に、水浴チタンチェンバーを用いて37.5℃±0.05℃に保持した。細胞と培地を前記チェンバーに加えた後、勾配付きのガラス製キャップを用いて密封し、側部から気泡と過剰の培地を押し出し、最終体積を250μLとした。分光ソフトウェアで、測定期間中の毎秒ごとの酸素分圧を測定し、記録した。140mmHg以下の分圧から酸素プロファイルを分析すると、前記システムが熱的に安定するのは、直線性がある程度満たされる通常約70−80mmHgであった。
変換係数(210/158.8)を用いて、前記傾きをmmHgからμMに変換した。次に、前記の変換したμMの傾きを、チェンバー体積を掛けることにより消費される酸素マイクロモルに変換した。この値を1分当たりの消費量、1秒当たりの消費量に変換するために60で割り、その後、mol/m・s−1の最終的な消費率とするために、最後に、使用した全ての芽の体積mで割った。採取した各々の芽の全てのバッチについて前記の操作を行なったところ、前記消費率は採取物に関わらず良く一致していることが確認できた。表2は各消費率と数学モデリングで使用した平均である。
コンソールマルチフィジックス3.2有限要素モデリングソフトウェアを用いて、培養条件をモデル化した。従来の培養条件は、以下のパラメーターを用いてモデル化した。従来の95%RA/5%CO培養条件を基に、初期酸素濃度を0.1995mol/mと仮定した。培地中での酸素の拡散性を37℃の水中での酸素の拡散性3.3E−09m/sと見なした。組織への酸素の拡散性もまた、文献に記載されている平均値1.3E−09m/sを用いた。酸素消費率は内分泌腺の酸素消費量の文献値に基づきKm値5.81E−04mol/mを含む1次と見なされ、ミカエリス・メンテン反応速度論に基づきRm*(c/(c+Km))としてモデル化される。使用される前記Rm値は、上記の表に記載された平均値である組織の8.82E−03mol/mである。用いた境界条件は、PFC/シリコーンディッシュ中の高さ2.65mm及び3.15mmの培地の上面の初期濃度と、ディッシュ底面の培地内の拡散係数での酸素濃度又はPFC/シリコーンディッシュの場合での増強された酸素有効拡散での酸素濃度とである。
ディッシュ内で一緒に培養したと確認できる2個又は3個の芽と、離して培養した2個又は3個の芽とで、培養をモデル化した。各芽の直径の大きさで酸素プロファイルを測定した。無酸素組織パーセントを、平衡での酸素濃度が文献値の酸素消費率のKm値5.81E−04mol/mより小さい組織として算出した。表3は、1cmディッシュ当たり2個又は3個の芽を前提とした全ての培養条件での前記無酸素組織計算値をまとめたものである。
さらなるモデリングは、シリコーンのみからなる培養基盤に比べ、PFC/シリコーンが優位であることを示している。膵芽の場合、シリコーンのみの場合に比べ、酸素濃度の平均差はPFC/シリコーンプレートでの局部的な酸素濃度で0.012mol/m増加した。たとえわずかな酸素濃度の差であっても、胚組織培養の際の内分泌腺マーカー遺伝子発現の相対的な倍増に大きな影響を与え得ることが観察されたので、これは非常に重要なことである。酸素増加の分化に及ぼす影響を評価するために、このモデリングの情報を基に試験を行った。試験計画と試験結果とを次の実施例に詳述する。
実施例3:酸素輸送研試験
これらの試験の目的は、酸素が主に上面から輸送されるシリコーンのみと従来のプラスチック培養システムの場合とに比較して、PFC/シリコーンシステムの典型的な酸素輸送特性を評価することである。
酸素輸送を測定するための蛍光減衰に基づく最適な酸素センサーの使用:材料:2.4cmPFC/シリコーンティッシュと、シリコーンディッシュと、プラスチックディッシュ
薄膜光スポット酸素センサー(ドイツのプレセンス社と、フロリダ州,サラソタのWPI社)を用いて、酸素濃度を測定した。これらのセンサーは直径約5mm、薄さ50μmである。通常、前記のセンサーは平面上で培養システムの内側に固定され、光ファイバー検出ケーブルは非侵襲的に培養基盤の外側に固定され、蛍光値(強度と位相角)が検出器と分析用ソフトウェアパッケージとに送られる。前記センサーは長時間の蛍光減衰(蛍光寿命)に基づいており、酸素の存在量に反比例する蛍光特性を有する酸素感受性蛍光プローブで構成される。センサーは非常に安定であり、必要であれば加圧滅菌処理をして、1回の較正で複数回の再利用が可能である。偏りは最小であり、既知の温度と室内分圧とでのスポット較正により容易に計測できる。測定用のセンサー/ファイバー組立品を以下に詳述する:急速に硬化するシリコーンで、スポットセンサーをPFC/シリコーン(10%v/v FC−70,FC−43)と、シリコーンと、プラスチック(ポリスチレン)との2.4cm挿入部分の底部中央領域に固定した。センサー蛍光性表面がSMAコネクターの光出口と同一平面となるように配列した6ウェルプレートの外側底部に、SMAコネクターを接着した。
接着物が硬化し乾いた後、前記光ファイバー検出ケーブルをSMAコネクターに固定し、蛍光信号が分析に十分な強度を有するシリコーンと、PFC/シリコーンと、プラスチックとを通過可能となることを確実にするために、信号伝達の検査を行った。光ファイバープローブとスポットセンサーとの間の数ミリメートルの距離間隔では、いかなる人為的な測定値も信号強度結果も発生しなかった。
その後、ウェルプレートを37℃の標準5%COインキュベーター内に載置し、各ディッシュに1.8mLのddHOを添加した。次に、ウェルプレートをカバーし、約1時間モニターしながら、前記システムを平衡に保った。前記システムが平衡に達し、142mmHgの予測された酸素分圧に近づいたことが確認されると、ソフトウェア記録が10分間のベースライン読み取りを開始する。前記10分のベースライン読み取りの最後に、予め温めた調製直後の1M亜硫酸ナトリウム溶液18μLを最初のピペットで各ウェルに添加し、その後、他のピペットでよく混合した。
前記亜硫酸ナトリウムは非常に安定しており、酸素を除去するためのシステムで用いられる。平衡では、1Mのストック溶液を加えたときの亜硫酸ナトリウムの最終濃度10mMよりはるかに少ない約192μmの溶解した酸素が水中に含まれる。このように、あらゆる種類の細胞を培養する際の酸素消費量をはるかに上回る急速で過剰な酸素の消費量となり、それゆえ、あらゆるシステムでの「最悪の状態」の対照として用いることができる。膜システムでセンサーにより測定される大部分の酸素移動は、膜を通過した拡散によるものであり、頂点から基底面への勾配が大きくなり平衡になるのに時間を要するような(L/D;ここでLはセンチメートルで表される表面からセンサーまでの拡散の経路長であり、Dは37℃の水中での酸素の拡散性3.0E−05cm/sである。)十分な培地高さ(4mm)となることを確実にするために、使用する際の水の体積(1.8mL)を選択した。システムがベースラインの値の少なくとも95%に戻るまで、酸素の値を記録した。Oのベースラインに戻るまでの傾きと、(最大濃度−最小濃度)/2での、最大酸素濃度の半分となる時間Tとを用いて、酸素輸送の比較を行った。PFCの揮発による損失を最小限にするために、製造後24時間の硬化時間の後に、これらの試験を実施した。
結果:図3は、製造後24時間でのあらゆる種類のディッシュを比較した結果をまとめたものである。図3は各群の反復操作の典型的な平均曲線を示している。誤差バーは表示しないが、PFC/シリコーン基盤対シリコーン単独と、PFC/シリコーン基盤対ポリスチレンとの差異は非常に大きく、PFC/シリコーン基盤が優位である(最大濃度の半分までの時間と再酸素化の傾きの比率について、P<0.01対シリコーン単独と、P<0.01対ポリスチレン)。FC−70基盤に対するFC−43基盤の差は統計的にはわずかではあるが、酸素輸送率と最大濃度の半分までの時間との両方でFC−43に比べてFC−70が優位な傾向にあった。明らかに、PFC/シリコーン基盤は、酸素輸送能の点で単なるシリコーンとポリスチレンとを超える十分な改善を提供する。
現在、揮発により観測されるPFCの損失に関連する長時間にわたる輸送率を調べるための試験が続けられている。また、細胞培養をより良くシミュレートするためにより低い高さの培地を用いて試験を行い、数学モデルを作成して培養物の観察を記載すると共に、更なるシステムの最適化に使用した。
実施例4:製造工程の最適化
変動が最小となるようディッシュの各バッチを製造する能力が、PFC/シリコーン培養基盤の開発で重要となる。各製造での変動を慎重に検査し、シリコーン中のペルフルオロカーボンの均一なミセル懸濁液と、硬化プロセス前の膜マトリックス全体での均一なペルフルオロカーボン濃度が保証された触媒混合物とを再現性良く製造する最適な方法を開発した。
方法
PFC/シリコーンの製造:可変成分と、処理設定とを操作した後、揮発特性と最適な輸送特性を決定するためのPFCの安定性試験についても同様に、最適な製造プロトコルを決定した。手順はプロトコルを詳述したものである。この実施例では、10mLの10%v/vPFCと20%触媒膜組成物とを製造し、2.4cmトランスウェル挿入部分を前記PFC/シリコーン溶液から製造した。
材料:RTV615−A GE シリコーンと、RTV615−A用RTV615−B触媒と、3M社FC−70フロリナート液体。
50mLコニカルチューブ内に過剰のシリコーンを注入した。水を満たしたカウンターバランスチューブを用いて、約1000gで5分間シリコーンを遠心分離した。この操作は前記シリコーンのガスを抜くためである。コニカルチューブホルダー内の(キャップを含まない)50mLコニカルチューブを秤量し、その重量を記録した。シリコーンに気泡が入らないように、慎重にシリコーン7mLを秤量した前記50mLコニカルチューブに分注した。従来のピペットではシリコーンの大部分がピペットチップの壁に付着して正確な体積を押し出せないので、粘性の溶液を移す際に一般的に用いられるプランジャーピペットを使用する必要がある。前記溶液7mLを前記チューブへ確実に添加するために、チューブを再度秤量し、初めの重量を差し引いた。これによりシリコーンのみの重量が得られる。この数字をシリコーンの密度で割ると、添加したシリコーンの体積が得られる。例えば、シリコーンの密度が1.013g/mLであるので、7mLには重量が7.091gとなる必要がある。バケツ内で、バケツの1/2の氷と1/2の冷水とを混合して、氷スラリーを調製した。シリコーンの体積全体が氷スラリーに浸るようにリングスタンドとクランプで固定したシリコーンを含む50mLコニカルをフードに載置した。別のクランプで3/16インチの超音波プローブチップ(Virsonic 100用VirTis 390910)をリングスタンドに固定し、シリコーン内に設置し、前記チップをコニカルチューブ底部から1/8インチに位置させた。前記超音波チップがコニカルチューブのどの部分にも接触しないように注意すると共に、底部の中央に位置するよう注意を払った。(VirSonic 100超音波機で16に設定し、)25−30Wで溶液の超音波処理を開始した。まるで調整されていないような超音波機の音が前記シリコーンから発生するが、プランジャーピペットを用いて1mLのFC−70の添加を開始する。前記ピペットチップはできる限り前記プローブに近接させる。これにより、シリコーン内に導入するとすぐにPFCが混合され始めることを確実にする。PFCはシリコーンよりも非常に密度が高いので(ρ=1.9243g/mL)、すぐに前記チューブの底部に沈む。30秒後超音波処理を停止し、前記溶液を氷浴で30秒間冷却する。前記の手順をさらに2回繰り返し、合計で3回超音波処理を行なう。3回目の超音波処理後、試料は30秒間の冷却を行わない。最後の30秒間、溶液を冷却する代わりに、白濁し始めた溶液から前記プローブチップを引き上げ、過剰な分をコニカルに滴下させ、その後、コニカルチューブをクランプから外し、コニカル上にキャップを載置した。前記溶液を最高の設定で1分間ボルテックスした。混合物を氷スラリーに戻し、キャップを外し、混合物内の前述の位置に超音波プローブチップを設置した。どのような段階であれ、氷スラリーが温まり、氷がなくなると、上述の量のスラリーと交換した。溶液を1分間冷却した。上述したように、30秒超音波をかけ、30秒冷却する操作をさらに3回行い(合計6回)、溶液を超音波処理した。前記プローブチップを引き上げ、過剰な分をコニカルに滴下させた後、混合物をクランプとスラリーから外した。チューブ上にキャップを載置し直し、固く閉めた。所定位置でバランスチューブを用いて、約1000gで5分間遠心分離した(この操作は気泡を取り除き、混合されていないPFCを確認するためである)。混合物の遠心分離をやめ、キャップをコニカルチューブから外し、混合物に2mLの触媒溶液を添加した。滅菌したスパチュラで完全に触媒を撹拌した。混合物からスパチュラを取り除き、過剰の溶液をチューブ内に捨てた。チューブキャップを載置し直して、固く閉めた。上述のように、溶液を1分間ボルテックスした。上述の通り、溶液に最後の遠心分離処理を行なった。
この工程の一般的な生成物として、均一で、不透明で、粘性のあるミセル懸濁液が得られた。前記のプロトコルにより、相分離しない懸濁液を製造できる。しばしば混合物の上部付近に非常に薄く、より透明な層が存在する場合があるが、これは超音波の能力が低く、上部まで完全に混合することができなかったことが原因である可能性が高い。この理由から、混合物の中央領域が最も再現性良く均一であることが確認できたので、我々は通常、前記混合物の(垂直方向の)中央領域から基盤製造用の一定量を使用する。次の試験では、加工の際に連続的に数種類の体積を混合する貫流超音波機を使用した。
ディッシュ製造:コーニング2.4cmトランスウェル透過性支持体(6−ウェルプレート用)、パラフィルム、膜除去外科用メス。
所望の数のトランスウェル挿入部分を無菌の包装から取り除く。外科用メスを用いて、慎重にポリカーボネート膜底部を切断し、挿入部分のプラスチックフレームから膜を完全に剥がす。挿入部分の底部を被覆するのに十分大きな正方形のパラフィルムを載置し、パラフィルムがしわにならないように慎重に、挿入部分のフレームに沿ってピンと張る。これが、PFC/シリコーンが硬化する一時的な基盤となる。各ディッシュに加えられる体積は、以下の式を用いて算出される所望の膜厚により決定する:
ここで、Vは添加する体積であり、rは培養基盤の半径であり、Tは所望の膜厚である。変動が最小であり基盤表面全体への均一な分布を確実にするために我々が使用した典型的な膜厚は650μmであり、他の製造方法(圧縮成形)を用いても、より均一で薄い膜を製造することができた。650μmの膜厚を有するには、PFC/シリコーン混合物の必要な体積は295μLである。揮発性の試験か均一性の測定のためにプレートを用いる場合は、以下の指示を参照するか、そうでなければ、プランジャーピペットを用いて、295μLのPFC/シリコーン組生物を各ディッシュの中央に慎重に分注した。混合物中に気泡が入らないように注意すると共に、混合物を吸い込むときに、確実にピペットチップが完全に満たされるよう注意した。前記の体積を排出する際、ピペットチップをパラフィルム表面に接触させて最後の液滴を取り除き、混合物が全て押し出されているかを慎重に確認した。時間が経つにつれ、前記混合物はパラフィルム表面全体に均一に広がるが、パラフィルムの領域が被覆されないまま残っている場合は、混合物が下方へ流れパラフィルムが被覆されるように、ディッシュを非被覆領域と基本的な方向で90°の角度をなすように固定した。均一なコーティングを確実なものとするために、ディッシュを回転した。複数のディッシュを6ウェルプレート内に載置し、プレート蓋体で覆った。37℃のインキュベーターに入れて、一晩硬化させた。一晩経過後、ピペットチップをいくつかのディッシュ膜表面に接触させ、完全に硬化しているかを確認した(可塑性と弾力性があり、粘つきと粘着性はない)。前記パラフィルムを各ディッシュ底部から慎重に剥がした。パラフィルムを引き剥がすと、前記膜は伸縮するが、亀裂や破損は生じない。この段階で、前記ディッシュは使用できる状態となった。
均一性の測定:製造したディッシュの各バッチについて、重量測定法を用いて、マトリックスの各成分の既知の添加体積から算出される理想値に対する製造した個々のディッシュでのPFCの体積パーセントを測定した。一実施例として、10%v/vPFC(FC−70)と、20%v/v触媒と、70%v/vシリコーンとを含むディッシュ製品を以下に詳述する:初期体積のPFC/シリコーンを上記の通り製造した。膜材料の初期体積を10mLと仮定すると、個々のディッシュ中の混合物の理想重量はいずれも以下に相当する。
上記10%混合物295μLを含むディッシュ(2.4cm D 円形培養物挿入部分)では、前記理想重量は、
0.295×(0.7×1.0132+0.2×0.9918+0.1×1.9243)すなわち、0.3245gとなる。各ディッシュを製造すると、各ディッシュ/パラフィルムフレームの重量を記録し、その後、295μLのPFC/シリコーンを含む各ディッシュ/パラフィルムフレームの重量を記録した。理想重量に対し、前記重量から、各ディッシュでのPFCの体積を算出する。各バッチについて、平均と、標準偏差と、変動係数とを表にまとめた。
結果:早期のバッチ生産と混合物製造の結果、より多くの異なる体積パーセントが混入することとなった。温度と、超音波処理力と、超音波処理時間と、超音波処理再現性のような重要変数が、再現性に最も重要であることが確認された。フレームに混合物を加える際のピペッティング技術も、非常に重要であることがわかった。早期のバッチでは7−15%の範囲の変動係数となるが、上記の製造プロトコルでは変動係数<1%であり、はるかに良い再現性が得られた。
表4−6は、製造後の13.82%v/vPFCディッシュと、10%v/vPFCディッシュと、5%v/vPFCディッシュのバッチで得られた測定値を列挙している。
考察:マトリックスに添加したペルフルオロカーボンのv/v%に関わらず、本製造プロトコルを使用することで、上記のバッチ基盤は変動が低くなることが確認された。明らかに、前記材料の製造が大量生産プロトコルに好適であり、自動化システムで容易に拡大できることが前記のデータによって実証された。
実施例5:PFC揮発性試験−最適なペルフルオロカーボンの決定
酸素輸送の増強に関する培養基盤の最も重要な成分は、使用するペルフルオロカーボンである。種々のペルフルオロカーボンは非常に密度が高く、化学的に不活性な液体であり、酸素の溶解性が高く、さらに酸素輸送特性がヘモグロビンと同様かヘモグロビンを超えることも多い(直線対シグモイド結合/放出曲線)。しかしながら、また、ペルフルオロカーボンは典型的には揮発性が高く、標準温度と標準気圧で蒸発する。蒸発速度はそれぞれの種類のPFCの沸点と蒸気圧とに依存し、さらに温度にも依存する。蒸気圧は、液体の蒸発速度を示すものである。分子と原子の液体又は固体からの脱離のしやすさに関連している。標準温度で高い蒸気圧を有する物質は、多くの場合、揮発性と呼ばれる。ある特定の温度で物質の蒸気圧が高いほど、沸点は低くなる。
あらゆる物質の蒸気圧は、クラウジウス−クラペイロンの関係式に従い、温度と共に非直線的に増加する:
ここで、Pは圧力であり、Tは温度であり、Lは物質の融解熱であり、ΔVは液体からガスに相転移する際の体積変化である。温度が上昇すると、蒸気圧も増加し、これにより揮発性も増加する。定常気圧・高沸点の特徴を有する臨床グレードのPFCと、ペルフルオロデカインと、人工血液エマルジョンに用いたFC−43及びFC−70の2種類のペルフルオロカーボンとを調べた。
PFC揮発性の測定:温度、沸点、及び蒸気圧の影響:材料:ペルフルオロデカイン、FC−43、FC−70、フロリナート液体、及び35mmペトリ皿。
この試験のために、35mmペトリ皿に印を付け、蓋を取り付けた空の状態で秤量した。次に、上記の4通りの全てのPFC用の各ペトリ皿に1mLのPFCを添加し、蓋を取り付け秤量した。ペトリ皿の初期重量とペトリ皿+PFCの重量とを記録した。その差をT0PFC重量として記録した。1mLを全ての測定で使用したので、その後、体積%の損失を以下の公式を用いて決定した:
前記ペトリ皿をその後、種々の温度(50℃と、37℃と、25℃)で一晩保存した。
調べた3種類のペルフルオロカーボンのうち、ペルフルオロデカインが最も低い沸点と、最も高い蒸気圧とを有し、それゆえ、蒸発速度は最も大きくなると予測される。24時間後、ペルフルオロデカインは50℃と37℃の条件で完全に蒸発し、室温では約5%の体積が残った。ペルフルオロカーボンの特性から予測されるように、より高い沸点(215℃対174℃)とより低い蒸気圧(0.1125mmHg対1.44mmHg)とを有するFC−70では損失した体積%が最も少なく、一方、FC−43ではいくつかの条件でわずかに大きく(50℃:一時間当たり0.9%対一時間当たり0.80%)、その他の条件では著しく大きかった(37℃及び25℃:37℃ 0.2%対0.05%及び、25℃ 0.1%対0.01%)。予測した通り、損失は温度と直接関連しており温度が高いほど損失が大きくなると共に、湿度にも関連しており加湿インキュベーター内のペトリ皿はキュアオーブン中のペトリ皿よりも損失が少なかった(37℃)。FC−70が、揮発性に関して最適なPFCであった。FC−70は、より安定であり、より化学的に不活性であり、製品安全データと類似しており、さらに高い酸素溶解性と酸素輸送特性とを有する。
PFC/シリコーンマトリックス培養基盤でのPFCの揮発性:硬化と貯蔵の際のシリコーンマトリックス内でのFC−70の安定性と、酸素輸送の損失の影響とを評価し、PFC損失を最小にするための長期間にわたる貯蔵方法を開発するために、これらの試験を実施した。これらの試験において、(5%と、13.86%と、10%の)種々の体積パーセントのFC−70のディッシュを製造した。製造したディッシュの各バッチについて、マトリックスの各成分の既知の添加体積から算出された理想値に対して、重量測定法を用いて製造した各ディッシュ中のPFCの体積パーセントを測定した。
一例としては、10%v/vPFC(FC−70)と、20%v/v触媒と、70%v/vシリコーンとからなるディッシュの製品を以下に詳述する。初期体積のPFC/シリコーンを上述の通り作成した。膜材料の初期体積を10mLと仮定すると、全ての各ディッシュ中の混合物の理想重量は以下の式に相当する。
前記10%混合物を295μL含むディッシュでは(2.4cm D 円形培養挿入部分)、理想重量は、
0.295×(0.7×1.0132+0.2×0.9918+0.1×1.9243)、すなわち0.3245gとなる。各ディッシュを製造する際、各ディッシュ/パラフィルムフレームの重量を記録した後、295μLのPFC/シリコーンを含む各ディッシュ/パラフィルムフレームの重量を記録した。この重量から、理想重量に対して、各ディッシュ中のPFCの体積を算出する。各バッチについて、平均と、標準偏差と、変動係数とを表にまとめた。
製造した合計数に基づき前記ディッシュをn個ずつに分け、37℃での初期硬化の後、(25℃と、−20℃と、25℃で2mLの70%エタノールを含む場合と、25℃で2mL培地を含む場合の)種々の条件で貯蔵した。これらの試験は前述のPFC揮発性試験とは異なり、この試験では(膜の両面がプラスチックではなく、空気あるいは培地にさらされる)2つの表面があることにより、2倍の表面積からFC−70が蒸発する可能性がある。前に行ったシリコーンのみを用いた対照試験は、硬化の際に観測された重量の損失は全てPFCの蒸発によるものであり、同様の方法で製造したシリコーン/触媒ディッシュでは重量の変化は観測されなかったので、ディッシュ重量を24時間ごとに測定し、記録し、Δ重量からPFC損失パーセントを表にまとめた。
結果:全ての群において、どのディッシュでもPFCが徐々に損失し、この損失は蒸気圧平衡の特性により決まる揮発性の非直線パターンに従うものであった。損失速度は、初期のv/v%濃度(濃度が高い程、損失速度は速い)と、温度(温度が高い程、損失速度は速い)と、湿度(加湿しないと、損失は大きい)と、環境暴露体積(大気開放対カバーをしたプレートでは、大気開放の方が損失は大きい)とに依存していた。−20℃で保存したディッシュは損失速度が最も遅いが、カバーをしたプレート内に70%エタノールを2mL含み25℃で保存したディッシュは損失速度において非統計的に著しい差異があった。保存培地としてエタノールを使用することは包装や発送に適さないが、研究室における培養での使用前に基盤を滅菌する方法には好適である。
考察:損失速度とシリコーンへのPFC混合の限定(約20%v/v)により、理論計算では54日で全てのPFC損失が生じることとなる。この結果は、異なる貯蔵方法に改良しなくてはならず、そうでなければその他のディッシュは短期間の使い捨て製品として利用しなくてはならないことを意味している。しかしながら、酸素輸送能力は短期間での経時的な損失による影響をさほど受けず、実際良くなることが酸素輸送試験により実証された。環境大気への暴露がより少ない密封状態にすることにより、蒸発を引き起こす平衡を減少する異なる貯蔵方法の効果を測定するために試験を継続中である。さらに、加湿培養環境における損失と、前記損失の長期間(>7日)での酸素輸送への影響とを評価するために試験を行っている。
実施例6:試験管内でのベータ細胞分化を促進する酸素輸送増強
輸送システムのより生理的な状態が内分泌腺の分化速度を早めることにつながるという仮説について調べた。標準条件で培養した対照に比べ、試験群で調べた全ての膵臓の分化した遺伝子の大幅な増加が観測された。試験管内での対照と比較した場合だけでなく、対応する開発した生体内条件でも、外分泌腺細胞に対する内分泌細胞の分化速度と、α細胞に対するβ細胞の分化速度とはどちらも著しく速かった。標準基盤とPFC/Si基盤とにおいて高濃度のOは上皮細胞の増殖を増大させるが、内分泌腺の分化へのプラスの効果はPFC/Si基盤においてのみ見られた。試験管内での幹細胞及び/又は前駆細胞からのβ細胞の生産性と機能性とを改善する方法の定義に照らして、これらの効果をもたらす分子的なメカニズムの可能性を検討した。
材料と方法
PFC/Siディッシュの製造:材料の密度がどちらも1.1g/cmである生物医学/電気グレードのRTVシリコーン(RTV−615A)と対応する加硫触媒(RTV−615B)とをシリコーン膜の製造に用いた(ダウ・ケミカル社、マリエッタ、ジョージア州)。膜内のペルフルオロカーボン酸素部分として、密度が1.9g/cmであるペルフルオロトリブチルアミン,FC−43を使用した(3M社、セントポール、ミネソタ州)。20%PFC/シリコーン混合物に20Wで3分間超音波をかけ、その後、気泡を取り除くためにバキュームチェンバー内に(45分)載置した。テフロン膜をミリポアCM挿入部分から除去し、硬化後に平らで固いシリコーンの底部とするために、パラフィルム(商標)(シグマ−アルドリッチ社、セントルイス、ミズーリ州)を慎重に底面全体に沿って置いた。35μlの混合物を各挿入部分に加え、2−3時間40℃で硬化させた。パラフィルムを剥がした後の最終膜厚は450μmであり、この膜厚が拡散の最適化と膜の完全性との最良の妥協点であることがわかった。
リアルタイムPCR分析:用いられる分析試料は、PCNA(Mm00448100_g1)カルボキシペプチダーゼA(Mm00465942_m1);アミラーゼ(Mm02342487_g1);インスリン1(Mm01259683_g1);インスリン2(Mm00731595_gH);グルカゴン(Mm00801712_m1);Ptf1a(p48)(Mm00479622_m1);Pdx1(Mm00435565_m1);Isl−1(Mm00627860_m1);Ngn3(Mm00437606_s1);Pax4(Mm01159035_g1);Glut−2(Mm00446224_m1);Pax6(Mm00443072_m1);及びArx(Mm00545903_m1)である。発現レベルは、18S rRNA(Hs99999901_s1)に対して標準化した。
レシオメトリック分析:個々の遺伝子の相対定量に加えて、各群の外分泌遺伝子に対する内分泌遺伝子と、アルファ細胞遺伝子に対するベータ細胞遺伝子との差次的発現を調べた(レシオメトリック分析)。まず、目的の遺伝子の分子の遺伝子と分母の遺伝子について、3種類のウェルの平均を算出した。この場合、遺伝子比は個々の群で算出した。平均遺伝子値(Ct)から、ハウスキーピング遺伝子(18S)の平均値を差し引いた。得られた数値が、dCtである。その後、調整した分子サイクルの平均を調整した分母サイクルから差し引いた。最後に、各サイクルは反応生成物の2倍を表すので、倍の差異は次の式により求められる:
倍の変化=2−n
ここで、nは、分子遺伝子と分母遺伝子との間のサイクル数の平均差に相当する。対照と試験群それぞれの各遺伝子の組み合わせについて、これらの比を算出し、対照値に対する試験値の比を調べた。このようにして、各群でのレシオメトリック差異を調べることができ、さらに群の間のレシオメトリック差異を調べることができた。遺伝子A/遺伝子Bの比について、この方法の説明に役立つ実例を以下に示す。
このように、PFC/Si群での遺伝子Aの遺伝子Bに対する比は256である。同様の計算の結果、標準の対照での比は32となった。それゆえ、標準の対照群よりPFC/Siの方が、遺伝子A/遺伝子Bの比は256/32=8倍大きいと結論を下すことができる。
酸素消費量:ルテニウム光ファイバー酸素センサーを設置した温度制御酸素消費率(OCR)撹拌マイクロ−チェンバー装置(インステックラボラトリーズ,プリマスミーティング,ペンシルベニア州)に膵芽を載置した。前記装置は時間経過に伴う酸素濃度の減少(ΔcO)を測定する。前記プローブは大気(210μM酸素)と、硫黄との化学結合により装置内の全酸素を消費する100mM亜硫酸ナトリウム(NaSO3−)(シグマ−アルドリッチ・ケミカル社、セントルイス、ミズーリ州)とで較正した。5回の連続した前駆芽の採取物を用いて、前記の測定を行った。チェンバー当たり3個の芽の反復操作を3回の採取で行ない、6個の芽の1回の操作を4回と5回の採取で行なった。完全な培地で、全ての測定を行った。前記装置を撹拌し続けることにより、チェンバー内の酸素の平衡を保持した。前記チェンバーの体積は既知であるので、ΔcOの直線の傾きから酸素消費量を測定することができる。(μMとして表される)前記の傾きに前記チェンバー体積(250μL)を乗ずることで、消費された酸素の物質量が得られる。mol/minで表されるこの値を60で割ることにより、1秒当たりに消費された酸素の分子量が得られる。
ポーラログラフ微小電極酸素測定:採取の翌日に、対照とPFC/Si培養条件のマウス膵芽を組織酸素勾配の測定に使用した。標準プラスチック底部あるいはペルフルオロカーボン−シリコーンマトリックス底部を有する35mm培養ディッシュ(3.36ml培地)中に、各群から3個の膵芽を移動させた。次に、ツァイスの倒立顕微鏡の試料台に装着したマイクロインキュベーター(ハーバード装置,ボストン,マサチューセッツ州)内に、重炭酸ナトリウム塩を含まない未使用の培地3.36mlを加えた各ディッシュを載置した。測定を継続する間、前記マイクロインキュベーターの温度を37℃に保持した。重炭酸塩を用いない場合は、25mMのHEPES緩衝液で前記培地のpHを保った。測定の際の蒸発は(合計体積<2%であり)、最小であった。使用した酸素微小電極(ダイアモンド・ジェネラル社,アナーバー,ミシガン州)は、平均チップ直径が8μmであった。各プローブは、まず培地中に溶解した窒素(0%)で、その後培地中の大気(20.9%)で二点較正を行った。熱的な整合性を保持するために、37℃で較正を行った。
各測定では、吸引パッチクランプ法により、顕微鏡試料台の片側上のガラスピペットチップに個々の膵芽を装着した。前記の膵芽を105分間平衡に保ち、ここで、105分というのはシステムの平衡時間であり、拡散経路長(培地の高さ)の2乗を培地中での酸素の拡散係数(2.1E−05cm/s)で割って計算した。x、y、z平面で解像度0.2μmまでの精密な移動が可能であるロボットマイクロマニピュレーター(Eppendorf)で、顕微鏡試料台の反対側に酸素微小電極を装着した。RS−232連結を介して研究室のPCと連動させたアナログデータ収集基板で、全ての電極データと温度データとを記録した。膵芽内の酸素濃度を評価するために、データ収集ソフトウェア(DASYLab)を用いてアナログ電圧信号をデジタル表示に変換した。
前記電極を組織表面に垂直に案内し、2分間隔で酸素測定値を収集した。初期測定は表面に対し−250μmで行い、内部測定は膵芽の表面から核まで10μmの間隔で行った(約260μm)。酸素を測定するために、各芽につき各3回測定を行い、各群につき3個の芽を用いた。
免疫染色の定量化:Metamorph(登録商標)画像ソフトウェア(モレキュラー・デバイス社,ダウニングタウン,ペンシルベニア州)を用いて、全ての区分でのインスリンとグルカゴン染色の相対量を定量化した。前記画像パッケージにより、あらゆる生物組織切片での蛍光シグナルの正確な定量化が可能である。プラスの領域は、プラスの画素数/区分を総画素数/区分で割ることによりパーセントとして算出した。その後、任意の特定の芽の全ての区分について、全てのプラスの体積パーセント/芽を以下の式により算出した:
ここで、nは区分の数であり、Ptは総画素数であり、P+は特定の各ホルモンに対するプラスの画素数である。各群での各パーセントの値から平均パーセントを算出した。
組織の入手と培養:e9.5−e16.5CBAxB6胚(膣栓が見つかった日の正午を妊娠0.5日と見なす)からの膵芽を分離し、顕微切断した。0.1mMのMEM非必須アミノ酸(インビトロジェン)と、ピルビン酸ナトリウムと、5%(v/v)新生仔ウシ血清と、5%(v/v)ウシ胎仔血清と、0.1mM2−メルカプトエタノールと、ペニシリン(100U/ml)/ストレプトマイシン(100μg/ml)と、L−グルタミン(250μm)(インビトロジェン)とを加えたGMEM(インビトロジェン)を培地とした。12mm,0.4μmミリセル挿入部分(典型的には、2個の芽/挿入部分)に対照を載置し、37℃及び5%CO、21%あるいは35%Oで培養した。試験群に割り振った芽をPFC/Si培養基盤挿入部分に載置し(図5A−5Bを参照)、37℃かつ5%COかつ35%Oで培養した。
免疫染色と画像分析:外植体を3日間上述のように培養した後、4%パラホルムアルデヒドで固定し(30分)、PBSで洗浄し(30分)、O.C.T.コンパウンド(サクラ)中で凍結させた。膵臓原基を全体(5μm)で区分し、DAPI−vectashield(ベクター)で封入した。二重染色のために、モルモット抗インシュリン抗体とウサギ抗グルカゴン抗体(バイオジェネックス,そのままで使用できる溶液)とを用いた。最終濃度が10μMとなるようBrdU(シグマ)を前記培地に添加し、固化するまで一晩放置した(固化するまで毎日新たに添加した)。ラット非ブロモデオキシウリジン(BrdU)抗体(アキュレート,1:100希釈)を増殖細胞の検出に、FITC共役ハイポキシプローブ(ケミコン,1:100希釈)を低酸素状態の検出のために使用した。アミラーゼ(1:200)と、カルボキシペプチダーゼ(1:200)と、E−カドヘリン(1:100)と、ネスチン(1:100)に対するラビットのそれぞれの抗体を、サンタクルーズと、シグマと、ザイメッドと、コーヴァンスから入手した。二次抗体は全て、モレキュラー・プローブ(インビトロジェン)から購入した。インスリンとグルカゴン染色とを定量するために、METAMORpH(登録商標)ソフトウェアを使用した。
リアルタイムqRT−PCR。キアゲンキット(QIAShredderと、RNeasyと、DNase−free)を用いて、全てのRNAを精製した。cDNA(ランダムオリゴマー)を合成するために、一本鎖システム(ロシュ)を用いた。7500ファーストリアルタイムPCRサイクラー(アプライド・バイオシステムズ,ABI)でタックマンアッセイを用いて相対的な遺伝子発現を計算した。相対定量のためのΔCt法が、本発明に最適であると考えられる。全ての分析(ABI)を、エキソンエキソンジャンクションにわたるように設計することで、ゲノムのDNAコンタミネーションの可能性を除去する。qRT−PCRの結果は、結果の欄に示すような複数の独立した実験の平均である。また、各実験では、各マーカーを3回分析した。詳細な分析数を補足情報として示す。遺伝子発現を18S rRNAに対して標準化した。前記の内因性の対照は本システムで認証され、非常に安定であり、他の標準より種々のO濃度にわたり正確であることが証明された。
統計的分析。異なる群の平均間の分散を分析するためにANOVA試験を行った(P<0.05)。2種類以上の群を比較したとき、対応のあるスチューデントのt検定で一般的にタイプI誤差の可能性が高くなる場合(すなわち、真実だとしても帰無仮説が棄却される場合)に、ANOVAを使用した。全ての分析には、平均値(S.E.M)の標準誤差を用いた。
拡散モデリング:コンソールv.3.2有限要素分析ソフトウェアを用いて、対照と実験培養システムとを置き換えて、3D拡散/反応理論モデリングを行った。時間依存性解法を用いて、濃度プロファイル用の反復解を決定した。前記モデリングにより、培地の高さと、組織の近接と、ペルフルオロカーボンの体積分率と、外部のO濃度とを含む多数の変数の効果を調べることができる。計算は、公知の組織と培地での拡散係数と、測定したマウスの膵芽の大きさとO消費率(OCRs)とを基にした。ポーラログラフ微小電極に基づく方法を用いた試験管内での膵芽の直接的なO測定値により、直接モデルの有効性を確認した。
インスリン測定:6−8個の膵芽の群からタンパク質を全て抽出し、Mercodia ELISAキットを用いて、インスリン含有量を測定した。
結果
e13.5膵芽での高い酸素化レベルを保証するPFC/Siデバイス:試験管内での分化の主要なモデルとして、e13.5で移植された背側膵芽を用いた。これは成長中のマウスでの最大のβ細胞特異化の期間内であり、試験管内での内発的成長への発明の効果を容易に定量化することができる。e13.5胚(6妊娠C57雌)から得られた30背側膵芽を顕微切断し、測定した。平均の大きさは、449.7+/−78.5μm×649.8+/−79.3μm×450.1+/−79.1μmであった。平均O消費率は、8.95+/−0.75x10−3mol/m・s−1であった。異なる採取物から得られた組織を用いたにも関わらず、試料間のばらつきは<10%であった。
従来の膵芽の培養は、培地の下でわずかに浸した組織を透過性の膜上に静置した挿入部分で行われた。これらの「培地/空気接触面」の状態は許容可能な酸素輸送レベルを確保するが、栄養の拡散は準最適であり、成長が制限され、乾燥を防ぐためにしばしば培地を補給する必要がある。たとえ小さな外植体の成長試験の域外であったとしても、これはほとんど使用されない煩雑で、非常に特殊な培養システムである。特に、大規模な治療への応用などでは、幹細胞の分化は、細胞がきちんと培地に浸かった標準的な発展したシステムを必要とする。
(芽の形態学的な完全性を保持する底部の膜を必要とする)我々の生物学的モデルの特殊な必要性に対応しつつ、標準的な幹細胞の培養法での空気輸送の制限を再現するために、膵芽を透過性膜の上に載置するが、(図5A参照,細胞の上部1mmまで)全体が培地に浸るように底部の管理状態を改良した。この「混成物」システムでの酸素輸送レベルは従来の設定での酸素輸送レベルより低いと主張できるが、インキュベーター内でO濃度が35%まで増加する第2の制御を加えた。数学モデリングと試験管内での直接の測定により、栄養摂取と、拡大と、分化とを補うのに十分な培地高さを保持しながら、酸素輸送レベルが「培地/空気接触」状態時の酸素輸送レベルと同程度に調整されることが実証された。このように、我々は3種類の培養基盤をモデル化した。(a)標準対照(ミリポアテフロン挿入部分を用いて、95%大気/5%COインキュベーター内で従来のO濃度で培養した);(b)高O対照(上記システムを用いて、35%O存在下で培養した);(c)PFC/Si(ミリポア挿入部分の底部を厚さ450μmのシリコーン/20%ペルフルオロカーボン膜で置き換え、同様に35%Oで培養した)。対照はどちらも、プラスチック製底部の上に吊るした液体透過性テフロン膜上に試料を静置することで、頂点の領域と底部の領域とを培地に浸けた(図5A上)。これに対して、PFC/Si膜は液体不透過性である。前記膜の上部に静置することにより、試料は上部のみが培地に浸かり、底部が大気中のOに直接さらされる(図5A下)。培地を介した拡散性により制限されないので、細胞への大量のOの輸送率がこのシステムで大幅に増強される。
コンソールv3.2ソフトウェアを用いて、各培養環境の拡散/反応パラメーターの有限要素モデリングを行った。組織全体での実験で得られたO濃度により、前記の計算を確認した。
培養開始時(第0日)、標準対照条件で培養した膵芽では(図5B上)、全体の酸素化レベルは100mmHg以下であり、(白で表示されている)大部分は0.1mmHg以下であった。通常は、これが無酸素の閾値であると考えられる。標準培養システムで21%から35%にO濃度を増加させることで(図
5B中央)、PFC/Siデバイス(図5B下)ほどではないが、無酸素を防ぐことができると共に酸素化を改善できる。
低酸素状態を防ぐPFC/Si設定での高Oによる膵芽の成長の促進:e13.5背側膵芽を移植し、標準的な条件(標準対照;n=13)と、35%O(高濃度のO対照;n=14)と、35%OでのPFC/Si膜(試験群;n=14)とで培養する。培養72時間で、外植体の最大の成長が確認できた。(1週間までの)より長い期間では、さらなる拡大は見られなかった。培養3日の間に、試験群の芽の体積は3倍になった。高Oに保っただけの外植体でも、3倍まではいかないが(2倍に)大幅に拡大した。最終的に、標準条件の芽が、もっとも大きさの増加が少なかった(1.1倍)(図6A及び図6B,左欄)。72時間での芽の大きさの増加について調整した我々の理論計算は、この成長が組織全体へのO拡散の減少を伴うことを示している。このことは、培養3日後に固定した試料中の低酸素についての組織学的プローブを用いることで確認された。組織学的プローブは、組織が<10mmHg58のO分圧にさらされたときに形成するタンパク質付加体と結合する。各群の典型的な試料の中間点部分は、標準条件と高いO条件とで培養された芽では低酸素領域が広くなったが、PFC/Siデバイス上に載置した芽では低酸素領域が広くないことを示している(図6右欄)。結論として、PFC/Si基盤が低酸素を防止すると共に、試験システム内での高酸素輸送レベルを確実にすることが以上の試験により確認できた。
PFC/Si誘発増殖は、未分化の上皮細胞の複製によるものである。培養時に観察される増殖に関与する細胞の性質を調べるために、全ての実験期間(72時間)での培地にブロモデオキシウリジン(BrdU)を添加し、試料を固定し、区分化し、免疫染色した。図7に示したように、BrdUの共発現と、最終分化(インスリンと、グルカゴンと、アミラーゼと、カルボキシペプチダーゼA)のマーカーとは全ての群でほとんど見られなかった。この観察結果は、成熟した上皮細胞の複製がほどんどないことを示している。間葉系E−カドヘリン−/ネスチン+細胞はこの発達段階で上皮細胞と混ざり合うことが知られている。しかしながら、全ての群で、これらの細胞は稀であり、大部分がBrdU陰性であることがわかった。BrdU結合の大部分は、E−カドヘリン+/分化マーカー−細胞内で局部的に確認された(図7,下列)。要するに、これらの結果は、実験経過中に成熟しない未分化上皮細胞で選択的に増殖が起こるということを示している。
標準対照と高O対照に比べPFC/Siデバイスで分化が大幅に増強される:上述の通りe13.5背側膵芽を採取し培養した。第3日目に、外植体をRNAの分離とタンパク質抽出のために溶解し、免疫組織化学法のために固定した。膵臓分化とβ細胞成熟との進行に関与する遺伝子群を、qRT−PCRを用いて7回の独立した実験で調べた(2−3個の芽/群)。図8Aに示したように、調べた全ての遺伝子は、標準対照に比べPFC/Si群で増幅した:インスリン1(30倍),インスリン2(34倍),グルカゴン(8倍),Pdx1(2倍),Ngn3(8倍),Isl1(4倍),Pax4(14倍),Pax6(3.5倍),Arx(15倍),P48(4.5倍),カルボキシペプチダーゼA(9倍),アミラーゼ(5倍),及びGlut−2(4倍)。驚いたことに、高O対照で観測された値は標準対照で観測された値をわずかに超えるものであり、一部はむしろ低い値であった。
PFC/Si群と対照とでの差異は、インスリン1(P=0.025)及び2(P=0.025)と、グルカゴン(P=0.020)と、Ngn3(P=0.017)と、Pax4(P=0.039)と、Pax6(P=0.037)と、Glut−2(P=0.025)とで統計的に顕著であり、膵臓内分泌マーカーであるPdx1(P=0.07)及びIsl1(P=0.06)及びArx(P=0.09)、又は膵臓外分泌マーカーであるP48(P=0.45)及びカルボキシペプチダーゼA(P=0.43)及びアミラーゼ(P=0.34)ではわずかであった。免疫蛍光でラベルした芽(n=5の独立した実験,3個の芽/群)のMetamorph(登録商標)解析により、この成長の段階で観測される2種類の主要な内分泌ホルモンであるインスリンとグルカゴンとを増加させる調節が確認された。図8Bに示したように、PFC/Si芽でのインスリン+染色は標準対照の約10倍である(高O対照の2.5倍
)。同様に、従来の設定でのグルカゴン+信号に比べ、試験群でのグルカゴン+信号は5倍高かった(高O対照の3倍)。PFC/Si群と標準対照群との差異は統計的に顕著であるが(インスリンではP=0.01、グルカゴンではP=0.001)、二種類の対照の間での差異はわずかであることが、ANOVA試験により明らかになった。図8Cに示した各条件で培養した芽の典型的な部分から、PFC/Siでのインスリン生産細胞とグルカゴン生産細胞とは対照の芽よりも薄く、密度が高いことがわかった。
前記の試験管内での培養の際に分化した新たな内分泌細胞と外分泌細胞の大部分は、分裂終了前駆細胞(図7)に起因するものであるので、成長の速度と分化の速度の増大はPFC/Siデバイスでの明らかに異なる二種類の培養効果であると判断することができる。増殖しないPFC/Si誘発分化を調べることにより、さらなる証拠を求めた。各条件で培養する前に、新たな顕微解剖したe13.5芽を細胞分裂の強力な阻害剤であるマイトマイシンC(MMC)で処理した。前述のように劇的ではないにしろ、二種類の対照に比べ試験群では依然として分化が顕著であった(内分泌細胞マーカーで2−6倍)。芽を培養したPFC/Siでの内分泌の分化の増強は、増殖能の平行した増加とは別に生じることがこの観察結果から確認できた。
生体内での成長と非常に類似した試験管内でのPFC/Siデバイスでの成熟:PFC/Siで培養した芽は生体内での分化のレベルに近似するとどの程度かを判断するために、(e13.5芽+生体外での成長の第3日目に対応する時点の)e16.5で得られた膵芽を、RNA抽出とタンパク質抽出のために溶解させた(n=4の独立した実験)。これらの値をPFC/Siで培養した芽で得られた前述の値と比較した。PFC/Siで3日間培養した芽のインスリン含有量の合計は新たに移植されたe16.5芽のインスリン含有量の合計の80%近くであり、これに比べ高O対照群では30%、標準対照群では15%であった(図9A)。この観察結果はqRT−PCRで確認され、遺伝子の上記の群はe16.5採取物で操作し、7回の試験管内でのPFC/Si実験と比較し、さらに展開した。図9Bは、e16.5で測定した芽のパーセントとして表されるPFC/Si群の遺伝子発現像を示したものである。PFC/Si群とe16.5との差異の多くは統計的に顕著であり(P>0.05)、試験管内での成熟は生体内での速度で生じることが示唆される。
PFC/Siは外分泌腺の分化より内分泌腺の分化を促進し、α細胞の分化よりもβ細胞の分化を促進する:O輸送を改善する方法が分化を全体的に大幅に促進するということにより、上記の結果を説明することができる。しかしながら、内分泌腺細胞が必要とするOは外分泌腺組織が必要とするOをはるかに上回るので、増強した酸素輸送の方法が選択的に内分泌腺細胞の特異化を誘発すると仮定した。この仮定を調べるために、前述のqRT−PCRデータに基づき、内分泌腺対外分泌腺とβ細胞対α細胞の分化の比率を算出した。図10に示したように、前記の2種類の比率は、2種類の試験管内での対照に比べ、PFC/Si群で常に高くなり(内分泌腺/外分泌腺率で最大30倍、β細胞分化/α細胞分化率で最大2−3倍)、e16.5膵芽でも高くなった(2種類の比率で2−3倍)。
考察:細胞の生産可能な源からの膵臓内分泌組織の効率的な分化に成功することは、I型糖尿病の治療に応用することに直結する。しかしながら、現在のβ細胞の試験管内での特異化の方法は、未だ非効率的なものである。(酸素輸送が主要な要素である)β細胞の生理環境をより良く再現することが高い分化をもたらすだろうと仮定した。
我々の結果により、底部−上部方法で大気が輸送されたときのみ膵臓発達のマウス・モデルで上述の仮定が裏付けられた。標準培養条件におけるインキュベーター内のO濃度の増加は、内分泌腺の分化の顕著な増加調節を全く引き起こさなかった。シリコーンのみで製造した膜でも「酸素サンドイッチ」効果はあるが、前記組成物にPFCを含む膜が予備実験で優位性を示した。シリコーンのみの群に比べて、PFC/Siの群では、(グルカゴンと、インスリン1と、インスリン2と、Pax4の)内分泌腺マーカーの発現は2−5倍高く、外分泌遺伝子の分化又は増殖マーカーでの顕著な差異は見られなかった。非侵襲的光バイオセンサーを用いた直接測定により、シリコーンのみに比べPFC/SiがO拡散に関して優位であることがさらに確認できた。そのため、次の実験全てにPFC/Siデバイスを選択した。
内分泌腺の分化が進んだことがデータから明らかであり、インスリン1とインスリン2の発現レベルは、21%又は35%のOの標準条件で培養した芽の発現レベルの30倍を超えるものであった。また、Ngn3(前内分泌細胞型のマーカー)と、グルカゴン及びPax−6(α細胞)と、Isl1(内分泌細胞)と、Pax4(前β細胞)と、Glut−2及びPdx1(β細胞)と、Pax6(前β細胞)とを含む内分泌腺の分化のマーカーは、全て増加した。標準条件に比べ、PFC/Siで培養された芽で観察されるPdx1レベルの増加は見たところほんの2倍ほど(高O対照の6倍)であったが、管上皮以外では、この遺伝子の発現はちょうどβ細胞が発生する頃に再現し始めることに注目しなければならない。
我々の結果は内分泌腺の分化への増強された酸素輸送の優先的効果というよりむしろ、単により良い培養条件を反映するものであると主張できる。しかしながら、観察されたPFC/Siで培養した芽の外分泌腺マーカーの増加は、統計的に顕著であった。内分泌(インスリン1及びインスリン2)マーカーと外分泌(カルボキシペプチダーゼA、アミラーゼ、及びp48)マーカーとの間の比率を算出することにより、上記の仮定が誤りであることをさらに証明できる。また、内分泌細胞内では、インスリン/グルカゴンの比率と、Pax4/Pax6の比率と、Pax4/Arxの比率とを決定した。後者は、共通の前駆細胞からα細胞分離とβ細胞分離へと分岐する際に重要であることがわかっている(ArxよりもPax4が過剰な場合はα細胞分化を引き起こし、その反対の場合はα細胞の発生促進がもたらされる)。同様に、Pax4ではなく、Pax6の発現は、一般的に発生段階でのα細胞の特異化に関連する。行った全ての実験では、試験管内での2種類の対照よりPFC/Si群の方が、高い内分泌細胞分化対外分泌細胞分化の比率と、高いβ細胞分化対α細胞分化の比率とを常に示した。驚いたことに、生体内での分化の重要な制御を表すe16.5膵芽を新たに移植した場合よりも、内分泌細胞分化対外分泌細胞分化の比率とβ細胞分化対α細胞分化の比率とは高くなった。
また、PFC/Siデバイスを用いた場合に、成長速度が増大することが確認された。BrdU結合試験は、新たに生成された細胞の大部分が上皮(E−カドヘリン)であることを示している。しかしながら、BrdUが(アミラーゼか、カルボキシペプチダーゼか、インスリンか、グルカゴンかの)最終分化細胞で確認されるのは非常に稀なことであった。このことは、新たに分化した内分泌細胞か外分泌細胞の多くが試験の開始時にすでに停止していた前駆細胞に起因することを示している。それゆえ、我々のデータはPFC/Siマトリックスが(a)一連の実験の際に分化しない上皮細胞の増殖の増大と、(b)前駆細胞の分裂終了亜母集団の内分泌の分化の増大という、e13.5膵芽への2種類の異なる効果を有するという主張を支持するものである。増殖の停止を誘発するマイトマイシンCがあったにもかかわらず、それでもなお内分泌の分化が増大した実験により、増殖と分化とが独立であることをさらに確認できた。Oの増加により直接影響を受ける分化経路のうちで、ノッチが膵臓発生に最も妥当であった。通常この経路は未分化状態の維持に関連しており、そのダウンレギュレーションは内分泌の分化カスケードの開始の鍵となる。低酸素条件下では、低酸素誘導因子1α(HIF−1α)は安定化し、このシグナル伝達系カスケードを活性化するノッチの細胞内ドメインと相互作用する。これに関連して、より高い酸素輸送がHIF−1αを不安定化し、次にノッチ伝達を抑制し、内分泌の分化を促進する。これはβ細胞特異化(二次転移)の第二の波と最も顕著な波は、組織での内皮細胞の最初の発生のはるかに後であり、膵芽内の血流の開始と同時であるという観察結果と一致する。
しかしながら(試験管内でのモデルでも見られるように)、高い酸素輸送は非内分泌細胞系の増殖も促すことができ、この挙動はHIF−1/ノッチ経路では説明できない。典型的には、前記の現象は、多くの生体内作用でのシグナル伝達物質として働くことが確認されている活性酸素種(ROS)の生成により生じる。
実験的根拠と一致するモデルを図11に示した。e13.5までの低酸素状態の存在は、理論的にはノッチ依存性の膵臓前駆細胞の増殖に有利に働く。前記の条件は、HIF−1依存で血管形成を促進するので、血流の開始とそれに続く酸素輸送が、(a)内分泌前駆細胞でのノッチシグナル伝達を停止させ(これにより、ほぼ同時に内分泌の分化の大きな波が起こる)、(b)外分泌前駆細胞でのWnt/β−カテニンシグナル伝達を活性化する(これにより、腺房細胞の持続的な増殖を誘発する)。この仮定によると、(低酸素の対照条件ではなく)PFC/Siデバイスは、膵臓の発達の異なる細胞群での血管形成の2種類の独立した効果を、ある程度、再現するものである。この仮説の試験は、現在、我々の研究室でのいくつかの系列の研究の題材である。
高いO濃度それ自体が基礎レベルを超える分化を増強しなかったという観察結果は、空気輸送の標準的な方法が細胞集合体の成長と分化とを維持するのには適していないことを示している。培養3日後、高Oで培養した芽は低酸素の発生率が非常に顕著であり、この低酸素の発生はPFC/Si培養外植体では見られなかった。特に、改善されたO輸送は、酸素誘発圧力を伴わない。予備的な多重分析は、両方の対照に比べて、PFC/Si群でのAKTリン酸化反応(生存シグナル)の活性化差異と、c−jun及びNF−kB及びERK(ストレス活性化キナーゼ)の抑制とを示している。
考察:今までの幹細胞から膵島を分化するほとんどの試みは、その分子環境にのみ焦点が当てられてきた。我々の結果は適切な生理環境での前駆細胞の成長を提供する重要性を強調し、この領域において平行する利点を適時に補完する研究に対して新しい道を切り開くものである。要するに、本実施例は、(1)分子メカニズムを現在検討中である酸素輸送と膵臓内分泌細胞の分化との間の直接的な関係の証拠を提示し、(2)成熟細胞及び/又は胚性幹細胞からのより効果的な膵島分化プロトコルの開発にすぐに利用できる生理学的な方法でOを輸送するために設計された新しい細胞培養ツールを記載する。
実施例7:ヒト胚性幹(huES)細胞由来の胚様体の培養でのPFC/Si条件の効果
目的:huES細胞細胞由来の胚様体における膵臓内分泌マーカーの発現での(PFC/Siデバイスにより提供される)増強された酸素輸送の影響を評価することである。
(懸滴や細菌性ペトリ皿など)付着しにくい条件で培養した場合、huES細胞は胚様体で組織化する。前記胚様体(EBs)は、内胚葉と、外胚葉と、中胚葉の3種類全ての胚層の種々の組織を発生させる。低い率ではあるが、約3週間で自然発生的に分化したEBs内で、インスリン陽性細胞が検出された。この実験の目的は、PFC/Siディッシュでの培養により高レベルで膵臓内分泌遺伝子が発現するかどうかを調べることである。
方法:30パーセントでH10huES細胞をコンフルエントしたT180フラスコをトリプシン処理し、20日間無血清条件で細胞からEBsを形成させた。その際、ベースラインを設定するためにRNA試料を採取した。その後、EBsを、対照(標準のペトリ皿)と、高酸素対照(35%Oでの標準のペトリ皿)と、PFC/Si(10cmPFC/シリコーン皿)と、高酸素PFC/Si(35%Oでの10cmPFC/シリコーン皿)の4つの群に分けた。前記の複数の細胞を5日間以上培養し、qRT−PCR解析のためにRNA試料を採取した。
結果:この予備実験の結果を以下のようにまとめることができる。
1.培養3日後、グルカゴン遺伝子の発現は高酸素PFC/Si群で(第20日に比べ5倍と)最も高く、次に(4倍の)PFC/Siが続いた。対照は2.734倍の増加であり、高酸素対照は3.2倍の増加であった。
2.培養5日後、(第20日に比べ11倍の増加である)高酸素PFC/Si群を除き、どの群でもグルカゴンの発現は検出できなかった。それゆえ、PFC/Si基盤のみで、この特殊な生物学的システムでのグルカゴンの長期発現が可能である。
3.インスリンの発現は、ベースラインの第20日でも、培養3日後でも(全ての条件で)検出できなかった。高酸素PFC/Si群を除き、培養5日後も同様であった。高酸素PFC/Si条件の細胞でのみインスリンの発現が検出された(3試料の平均Ct=34.88)。検出閾値がCt=40であることを考慮すると、厳しく見積もっても、観察物の増加はその他の条件に比べ40−34.88=5.12,25.12=34倍に相当する。
4.Pdx1の発現レベルは培養3日後では(第20日に比べ1.5−2.8倍と)4種類の群とも同程度であったが、培養5日では高酸素PFC/Si群でのみPdx1の発現が検出され、第20日に比べ6.35倍の増加であった。
要するに、PFC/Si条件、特に高O条件で、EBsでの内分泌膵臓発生遺伝子が最も自然発生的に発現する可能性が高いと考えられる。この結果は、酸素輸送を増強することにより膵臓内分泌分化が大幅に促進されるという本出願の本文で既に仮定した暫定的な仮説と一致するものである。2種類のhuES細胞の分化プロトコルで前記の点を調べることを目的とする実験が、現在進行中である。
実施例8:非ヒト霊長類始原幹細胞の培養でのPFC/SI条件の効果
標準条件対PFC/シリコーンデバイスで培養した非ヒト霊長類幹細胞での、幹細胞分化マーカーであるアルブミンの発現レベルを評価するため。
実験計画:フィブロネクチンで前処理した6−ウェルプレート(100,000個の細胞を2ml培地中に載置した)、又はフィブロネクチンで前処理したPFC/Siプレート(51,000個の細胞を1mlの培地中に載置した)で、3代継代のNHP肝細胞を培養した。両方の培地条件において、標準(21%)又は高い(35%)O濃度で、プレートをインキュベートした。RNA試料を培養5日後に採取し、アルブミン発現をqRT−PCRで測定した(アプライド・バイオシステムズ)。
結果:培養5日後、PFC/Siデバイスで培養した幹細胞は、表面に付着した細胞集合体に結合しやすい。これに対して、対照細胞は単層のままである。
考察:予備試験ではあるが、PFC/Siデバイスでの培養により幹細胞表現型の維持に関連するマーカー(アルブミン)の発現が改善されることが、上記の結果から示唆されると考えられる。培養した幹細胞で観察される共通の効果は時間と共に種々の分化マーカーが損失するので、この結果は試験管内での幹細胞の増殖で非常に顕著になった。興味深いことに、PFCは通常、代謝に必要な種々の組織(特に、3D集合体)の培養のプラスの効果を有するにもかかわらず、PFCマトリックスを用いた場合に、高酸素はアルブミンの発現の改善をもたらさず、最も良い結果が得られる具体的なO濃度をその都度調節する必要がある。
実施例9:PFC/Siデバイスでのマウスのニューロスフェアの培養の効果
ニューロスフェアは、試験管内での神経幹細胞(NSCs)により生成される浮遊3D集合体である。前記ニューロスフェアは自己複製し、あらゆる神経細胞集団に分化する能力を有する多能性細胞である(Bez A,et al.Brain Res. Dec 12 2003;993(1−2):18−29)。これは、分化前の神経幹細胞を増殖するという選択の培養方法であり、神経生物学と神経発生の研究のための手段である(Campos LS. J Neurosci Res.Dec 15 2004;78(6):761−769)。その他の3D細胞集合体のように、ニューロスフェアは特に酸素の拡散に関連する、塊の輸送の制限の影響を受けやすい(Plotnikov EY,et al.Bull Exp Biol Med.Jan 2006;141(1):142−146)。臨界サイズに達すると、低酸素に関する生存性と増殖率への影響を防ぐために、ニューロスフェアをバラバラにし、継代する必要がある。胚性膵芽を用いた実験に基づいて、PFC/Siデバイスでのニューロスフェアの培養が増殖率の向上をもたらすという仮定を調べた。
方法:B27と、ペニシリン/ストレプトマイシンと、bFGFと、EGF
とを加えたDMEM/F−12培地でマウスのニューロスフェアを培養した。前記の条件において、集合体は150−250μmまで成長し、その後、塊の移動速度が制限される。前記平均サイズのニューロスフェアは典型的には、トリプシン処理の必要性がある。対照のニューロスフェアを、低Oインキュベーター(5%)か、標準Oインキュベーター(21%)か、高Oインキュベーター(35%)内の6−ウェルプレートに載置し;ニューロスフェアをPFC/Siディッシュに載置した以外の実験条件は同一とした。培養を48時間行った。増殖を調べるために実験開始時に、BrdUのパルスを加えた。
結果:PFC/Siディッシュで培養したニューロスフェアは、標準のO濃度と高いO濃度の両方で、48時間経過後には、(直径1mm未満の)関連する対照に比べて容量分析で10倍にまで増殖した。BrdU染色により高い増殖率が確認された(図2A−2D)。増殖は、低いOの群で最小であった。
考察:PFC/Siディッシュは、ニューロスフェアでの神経幹細胞の増殖を劇的に向上させる。対照集合体では、増殖活性のほとんどが表面に検出されることがBrdU混和試験でわかった(図2C)。これは、増殖が酸素に依存し、低酸素のニューロスフェアの中心部分では増殖がめったに起こらないという仮定と一致する。これとは対照的に、PFC/Si培養では、より高い閾値まで酸素拡散の制限なしでニューロスフェアの連続的な成長が可能であった。対照群でのものとは異なり、PFC/Siで培養したニューロスフェアの中心部分でも増殖が確認できた(図2D)。要するに、前記培養システムは従来の方法に内在していた酸素輸送の制限を回避し、試験管内での神経幹細胞の増殖率の劇的な増加を可能にする。
他の実施態様
本発明は、発明の詳細な説明に記載されているが、前記の発明の詳細な説明は説明することを意図するものであり、発明の範囲を限定するものではない。他の形態と、利点と、改良とは次の特許請求の範囲内である。
ここに記載したすべての引用文献は、言及されることによりその全体がここに援用される。

Claims (41)

  1. 膜障壁を備えた組織培養デバイスと、
    組織培養ウェルを持ち上げるために前記組織培養ウェルの底部か、側部か、上部かから延出した支持部材と、
    前記組織培養ウェルを備えたトレイ又は組織培養フラスコとを含むことを特徴とする細胞培養装置及び組織培養装置。
  2. 前記組織培養装置は、上部開口部及び下部開口部と、ガス透過性・液体不透過性膜障壁とを備え、連続する前記組織培養デバイス底面が前記障壁により規定されることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  3. 前記膜障壁がセラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ビニル、プラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラス、ヒドロゲル、シリコーンとから選択される少なくとも1種類の物質を含むことを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  4. 前記膜障壁がペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物とを含むことを特徴とする請求項3記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  5. 前記ペルフルオロ炭化水素がフルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含むことを特徴とする請求項3記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  6. 前記ペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が約0.001%v/v以上であって、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が80%v/v以下の比率であることを特徴とする請求項4記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  7. 前記ペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が約1%以上20%v/v以下の比率であることを特徴とする請求項4記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  8. 前記膜障壁が、約0.001μm以上1mm以下の大きさの複数の孔を有することを特徴とする請求項4記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  9. 前記組織培養デバイスが、セラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ビニル、プラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラス、ヒドロゲル、シリコーンとから選択される少なくとも1種類の物質から製造されることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  10. 前記トレイが、セラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ビニル、プラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラス、ヒドロゲル、シリコーンとから選択される少なくとも1種類の物質から製造されることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  11. 前記膜障壁が少なくとも約0.01μm以上約1mm以下の厚みであることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  12. 前記トレイが複数の組織培養ウェルを有することを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  13. 前記トレイが6−ウェル、12−ウェル、24−ウェル、96−ウェル、384−ウェルかのいずれかを有することを特徴とする請求項12記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  14. 前記トレイがガス交換を可能にする蓋体を含むことを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  15. 少なくとも約0.01μm以上約1mm以下の厚みのペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物とを備えたバッグの形態であることを特徴とする細胞培養装置及び組織培養装置。
  16. 前記バッグが少なくとも1つの開口部を有することを特徴とする請求項15記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  17. 前記バッグが1つ以上のチェンバーを有することを特徴とする請求項15記載の細胞培養装置及び組織培養装置。
  18. ペルフルオロカーボンを含浸した高透過性シリコーンマトリックスを含むことを特徴とする組成物。
  19. 前記ペルフルオロカーボンがフルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含むことを特徴とする請求項18記載の組成物。
  20. 前記ペルフルオロカーボンとシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが約0.001%v/v以上であって、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが80%v/v以下の比率を有することを特徴とする請求項18記載の組成物。
  21. 前記ペルフルオロカーボンとシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが約20%v/vの比率を有することを特徴とする請求項18記載の組成物。
  22. 前記ペルフルオロカーボンとシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが約10%v/vの比率を有することを特徴とする請求項18記載の組成物。
  23. 酸素輸送増強組織培養装置での細胞又は組織外植体の増殖方法であり、前記方法は
    (a)懸濁液を形成するために組織培地の適当量に、請求項1記載の前記装置内で培養される前記細胞又は組織外植体を懸濁することと;
    (b)前記装置の組織培養ウェル内に前記懸濁液を注入するための器具内に懸濁液を導入することと;
    (c)細胞培養インキュベーター内で、培地と細胞の前記懸濁液を含む前記細胞培養装置をインキュベートすることとを含むことを特徴とする酸素輸送増強組織培養装置での細胞外植体又は組織外植体の増殖方法。
  24. 培養される前記細胞が足場依存性細胞であることを特徴とする請求項23記載の方法。
  25. 培養される前記細胞が足場非依存性細胞であることを特徴とする請求項23記載の方法。
  26. 培養される前記細胞が幹細胞であることを特徴とする請求項23記載の方法。
  27. 増強された酸素輸送の効果と、細胞培養への利用可能性を判断する方法であって、
    膜障壁を備えた組織培養デバイスと;
    前記組織培養ウェルを持ち上げるために前記組織培養ウェルの底部か、側部か、上部から延出した支持部材と;
    前記組織培養ウェルを備えたトレイ又は培養フラスコとを含む装置内で細胞を培養することを含むことを特徴とする方法。
  28. 前記装置が上部開口部及び下部開口部と、ガス透過性・液体不透過性膜障壁とを備え、連続する前記組織培養デバイス底面が前記障壁により規定されることを特徴とする請求項27記載の方法。
  29. 前記膜障壁が、セラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ビニル、プラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラス、ヒドロゲル、シリコーンから選択される少なくとも1種類の物質を含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
  30. 前記膜障壁がペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物とを含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
  31. 前記ペルフルオロ炭化水素がフルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含むことを特徴とする請求項27記載の方法。
  32. 膜障壁を備えた培養デバイスと、
    前記培養デバイスを内設する容器とを備えることを特徴とする細胞と、組織と、器官とを輸送するための装置。
  33. 前記培養デバイスが上部開口部及び下部開口部と、ガス透過性膜障壁とを備え、連続する前記培養デバイスの少なくとも一側面が前記障壁により規定されることを特徴とする請求項32記載の装置。
  34. 前記膜障壁がセラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ヒドロゲル、シリコーンとから選択される少なくとも1種類の物質を含むことを特徴とする請求項31記載の装置。
  35. 前記膜障壁がペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物とを含むことを特徴とする請求項32記載の装置。
  36. 前記ペルフルオロ炭化水素がフルオロヘプタン、フルオロシクロヘプタン、フルオロメチルシクロヘプタン、フルオロヘキサン、フルオロシクロヘキサン、フルオロペンタン、フルオロシクロペンタン、フルオロメチルシクロペンタン、フルオロジメチルシクロペンタン、フルオロメチルシクロブタン、フルオロジメチルシクロブタン、フルオロトリメチルシクロブタン、フルオロブタン、フルオロシクロブタン、フルオロプロパン、フルオロエーテル、フルオロポリエーテル、フルオロトリブチルアミン、フルオロトリエチルアミン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロプロパン、六フッ化硫黄かのいずれかを含むことを特徴とする請求項32記載の装置。
  37. 前記ペルフルオロカーボンとシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが約0.001%v/v以上であって、シリコーン1ml当たりペルフルオロカーボンが80%v/v以上の比率を有することを特徴とする請求項36記載の装置。
  38. 前記ペルフルオロ炭化水素とシリコーン組成物は、シリコーン1ml当たりペルフルオロ炭化水素が約1%以上20%v/v以下の比率を有することを特徴とする請求項35記載の装置。
  39. 前記膜障壁が、少なくとも約0.001μm以上1mm以下の大きさの複数の孔を有することを特徴とする請求項35記載の装置。
  40. 前記培養デバイスと前記培養容器とが、セラミックス、ポリマー、織布基材、不織布基材、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、フルオロカーボン重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ペルフルオロ炭化水素、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ビニル、プラスチック、金属、合金、鉱物、非金属鉱物、木、線維、布、ガラス、ヒドロゲル、シリコーンとから選択される少なくとも1種類の物質から作られることを特徴とする請求項35記載の装置。
  41. 前記膜障壁が、少なくとも約0.01μm以上約1mm以下の厚さであることを特徴とする請求項36記載の装置。
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