JP2009536850A - 歯科用組成物分出用エアロゾル送出システム - Google Patents

歯科用組成物分出用エアロゾル送出システム Download PDF

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Abstract

多成分歯科用組成物を分出するエアロゾル送出システムが提供される。本システムは、混合された組成物A及びBを含有する歯科用印象材料を分出するのに特に好適である。本システムは、加圧されたエアロゾルチャンバを有する内側容器を有する分出装置を含む。第1のチャンバは、成分Aを貯蔵及び分出するのに使用され、第2のチャンバは、成分Bを貯蔵及び分出するのに使用される。分出装置は、第1のチャンバ内で摺動する第1のピストン部材と、第2のチャンバ内で摺動する第2のピストン部材とを有するピストンアセンブリを含む。ピストンは、成分を共通のマニホルドへ押し出し、組み合わされた材料は、スタティックミキサを含む分出チップへ給送され、混合されてから分出される。

Description

本発明は包括的に、多成分歯科用組成物を分出(dispense)するエアロゾル送出システムに関する。好ましくは、当該歯科用組成物は、第1の成分及び第2の成分を含む歯科用印象材料である。送出システムは、組成物の成分を貯蔵及び分出するエアロゾル容器を含む。当該システムにおいて、スタティック混合要素を含む分出チップが、成分を混合し、混合された製品を送出するために用いられる。
[関連出願の相互参照]
本願は、2006年5月11日付けで出願された、米国仮特許出願第60/799,481号の利益を主張する。当該特許の全内容は、参照により本明細書に援用される。
歯科専門家は、種々の歯科用組成物を貯蔵、混合及び分出する分出装置を使用している。例えば、歯科医は、歯科用印象材料;修復材(restoratives)、例えばクラウン、ブリッジ、ベニア及び充填剤等;歯科用セメント及び接着剤;及び他の歯科用材料を調製及び分出する際に分出装置を使用し得る。そのような歯科用組成物は、自己硬化性、光硬化性、熱硬化性又は二重硬化性(dual-curable)であり得る。歯科用組成物は、異なる化学反応機構によって硬化(cured and hardened)され、強く耐久性の或る製品を形成する。
例えば、歯科専門家は、印象材料をバイトトレイに注入するのに分注装置を使用する。歯科医は、充填されたトレイを患者の口に挿入し、患者はトレイの印象材料を咬合する。トレイの材料は硬化され、患者の歯及び周囲の歯茎組織の陰(ネガ)型印象を形成することができる。次いで、得られた固形の印象は歯科研究所に送ることができ、ここで、技工士が歯科用石膏を印象に注ぎ込み、歯の模型(鋳物)を製造することができる。この模型を用いて、インレー、クラウン及びブリッジ、取り外し可能な補綴具、並びに種々の他の歯科用製品を作製することができる。
印象を取るのに使用される歯科用組成物は、2つのペースト成分から調製されることが多い。印象材料を作製するのに使用される1つの成分は、ベースペーストであり、もう1つの成分は触媒ペーストである。ペースト成分の少なくとも一方は、例えば、付加重合可能なビニル末端ポリシロキサン等のエラストマー材料を含有する。これらのペーストは、混合されると、硬化し始めてゴム状の印象材料を形成する。ベース成分及び触媒成分は、市販のカートリッジに貯蔵されており、所定の容積比で分出されて適切に混合された組成物を形成する。このような自動混合システムを用いて、歯科医は時間を節減し、混合比を誤ることを回避することができる。
自動混合システムでは、二重バレルのシリンジ状分出装置が用いられることが多い。二重バレルのシリンジは、並んで配置される、2つの別個の細長いバレル又はチャンバを含む。バレルはシールされ、ベースペーストが一方のバレルに貯蔵され、触媒ペーストが他方のバレルに貯蔵される。バレルは分出チップに接続されている。実際には、歯科医がプランジャを押してベース材料及び触媒材料をそれらのそれぞれのバレルから分出チップに押しやる。分出チップは通常、スタティックミキサを含む。ベースペースト及び触媒ペーストは、スタティックミキサを通して押し出されるときに、組み合わされて混合され、最終の混合された印象材料を形成する。次いで歯科医は、結果として生じた印象材料を、印象を取るためのバイトトレイに分出する。
二重バレル分出シリンジの一例は、Drakeの米国特許第4,538,920号に示されている。‘920号特許は、歯科用樹脂を別々に貯蔵する1対のチャンバと、チャンバ内へ押しやられて樹脂を吐出する1対のプランジャとを有する分出装置を開示している。この装置は、吐出ノズル内に収容されているスタティック混合要素をさらに含む。歯科用樹脂は、吐出ノズルを通して押し出されるときに組み合わされて混合される。
歯科用材料を分出する他の二重チャンバシステムは、Wilcox他の米国特許第5,624,260号及び同第5,722,829号に記載されているような手持形のエジェクタタイプのガンを含むものとして知られている。これらのガン様アプリケータは、異なる歯科用組成物を貯蔵する第1のチャンバ及び第2のチャンバを有するカートリッジと、吐出チップを通してこの組成物を分出する1対のプランジャとを含む。このアプリケータは、本体部から延びるハンドルと、ハンドルの隣に位置して本体に対して移動可能であるアームとをさらに含む。プランジャを前進させるために、アームが枢着点を中心に旋回する。アームがハンドルの方へ移動すると、爪の前下縁がプランジャのラチェット歯と係合し、同時にプランジャを前進させる。これらのアプリケータガンは、高粘性の樹脂材料を分出する効果的なシステムを提供することができる。アプリケータガンによって、操作者の機械的利点が増す。これによって、操作者はガンを種々の向きで保持し、患者の口腔の領域に到達するのが難しい材料を分出することができる。しかし、このようなアプリケータガンは、嵩が増していること、操作の複雑さ、及び比較的高い製造コストを含むいくつかの欠点を有する。
いくつかの従来の歯科用分出装置に伴ういくつかの欠点を鑑みて、本技術分野では、改善されたシステムを開発するための努力がなされてきた。1つの有望な新規な送出システムはエアロゾル容器を使用する。歯科用組成物はエアロゾル容器に圧力下で貯蔵される。組成物は、使用準備が整うと、気体状推進剤によって容器から排出される。この装置は、組成物を選択された標的に送出する吐出ノズルを備えていてもよい。
エアロゾル分出システムは、一般的に知られており、種々の産業で使用されている。例えば、O'Neillの米国特許第3,273,762号は、推進剤を、分出される製品から隔離するのに使用されるピストンを含む加圧エアロゾル容器を開示している。エアロゾル缶は、食料品及び塗料を分出するのに有用であると記載されている。そのようなピストンを使用するエアロゾル容器は、当該業界ではバリアパッケージとして知られている。これは、ピストンが製品と推進剤との間のバリアを提供するためである。
Safianoffの米国特許第3,575,319号に記載されている分出装置では、それぞれ別個の加圧成分を貯蔵している2つのエアロゾル容器が、支持フレームに取り付けられている。各容器は弁を含み、これらの弁は、支持フレームのトリガによって同時に作動されることができる。成分は、それらのそれぞれの容器から吐出され、混合チャンバに給送される。混合された組成物は次いで、出口ポートから吐出される。このディスペンサは、ポリウレタンフォーム反応混合物を分出するのに特に好適であると記載されている。
Moddernoの米国特許第3,818,484号は、2つの異なる材料が別個の容器にそれぞれ貯蔵されている分出装置を開示している。この分出装置は、気体状推進剤によって加圧される。第1の材料が外側容器に貯蔵され、第2の材料が、外側容器内に軸方向に配置されている内側容器に貯蔵される。内側容器はキャップに摩擦固定され、これによって、第1の材料と第2の材料とを互いから分離して保つ。材料を混合するために、ユーザはノズルを押す。これによって、内側容器がキャップから離脱され、材料を互いに混合することができる。‘484号特許は、染髪料、歯科印象用配合物、ポリウレタン、ゴム入りシリコン(rubberized silicones)、エポキシ、ポリスチレンフォーム、食品、殺虫剤、ラカー及び塗料組成物を含む、多くの異なる材料をこの装置に詰めることができることを意図する。しかし、‘484号特許は、分出装置内のそのような材料の作製方法も使用方法も記載していない。そのような材料の組成又は配合に関する記載はない。さらに、‘484号特許は、推進剤が、分出される製品から隔離されているエアロゾルバリアシステムを記載していない。
Miczkaの米国特許第4,801,046号は、加圧された流動性成分を貯蔵及び分出する2つの別個の容器を有する装置を開示している。金属装置が、同様にピストンに支持されているアコーディング様のひだ状構造を有する2つのより小さいプラスチック容器を収容する。気体推進剤が、ピストンを容器に対して作用させ、成分が、アダプタヘッドの混合チャンバへ送出される。成分を混合チャンバへ送出する供給ラインがアダプタヘッドに含まれている。分配(dosing)スリーブを供給管路に含むことができ、これによって、成分の比を或る程度まで変更することが可能になる。このディスペンサは、加圧された流動性成分を分出するのに特に好適であると記載されている。Miczka特許は、D字型の圧潰可能な区画を開示しているが、これらはピストンとは区別され、別個のものである。Miczka特許の装置は、充填中、圧潰可能な容器のひだ状の折り目に気泡が蓄積する可能性があるため好ましくない。
Mearsの米国特許第6,168,335号は、圧力下で成分を含有する複数のエアロゾル容器に取り付けられるアプリケータヘッドを有する装置を開示している。このアプリケータヘッドは、エアロゾル容器から分出される成分を混合する混合チャンバを含む。結果として生じた混合製品は、複数の出口ポートを通って吐出される。アダプタは、複数の中実及び中空の歯(タイン)を含む櫛様構造を有する。ユーザは、櫛又はブラシを保持するのと同じ方法でアダプタを保持する。混合された製品は、中空のタインの出口ポートから人の髪に吐出され、長いタインは、髪に貫通して製品を広げるのに使用される。この装置は、シャンプー、コンディショナー、スタイリングジェル、染髪料、及び他のヘアトリートメント製品を分出するのに特に好適であると記載されている。
Greenの米国特許第6,736,288号は、多弁体を有するエアロゾル容器を開示している。単一のアクチュエータが弁を作動させる。第1の材料が第1の圧潰可能なバッグオンバルブ区画に貯蔵されており、第2の材料が第2の圧潰可能なバッグオンバルブ区画に貯蔵されている。加圧気体が、容器内の、バッグを囲む領域に注入される。アクチュエータが押圧されると、各バッグ内の適当な量の材料が加圧気体によってバッグから追い出される。‘288号特許は、エアロゾルシステムが、樹脂、シール化合物、歯科用組成物、接着剤、塗料、染髪剤、及び他の化学成分を分出するのに概して有用であると記載しているが、歯科材料の組成又は配合に関しては詳細を提供していない。
さらに、多くの産業において、非エアロゾル分出装置を使用して、2つの流体材料を混合する前にこれらの材料を同時に分出することができることが知られている。例えば、Andersonの米国特許第4,366,919号は、内側円筒チャンバ及び外側環状チャンバを備える同軸カートリッジを開示している。このカートリッジを用いて、エポキシ樹脂を分出することができる。組成物の一液部(Part)A(例えば、エピクロロヒドリン/ビスフェノールA型樹脂)を内側チャンバに貯蔵することができ、他液部(Part)B(触媒)を、外側環状チャンバに貯蔵することができる。内側チャンバは円形ピストンを有し、外側チャンバはドーナツ形環状ピストンを有する。これらのピストンは別個のものであり区別され、二次プランジャ機構によって駆動される。
前述のエアロゾル送出システムのいくつかは、歯科用ではない組成物の混合及び分出には効果的であり得るが、これらのシステムは、歯科用組成物の送出には実用的ではない。多成分のペースト状歯科用組成物は、特に困難な課題を有する。組成物の各ペースト成分は、エアロゾルシステムを滑らか且つ均一に流れることができなくてはならない。混合されたペースト成分は、混合された組成物をその意図された目的(例えば印象を取るか又は修復材を作製する)に使用することができるように、十分な厚みがなければならないか、又はチキソトロピー挙動を示さなければならない。歯科医は、混合された組成物を用いて作業をし、且つこれを扱うことができなくてはならない。すなわち、組成物は良好な作用時間及び凝縮時間を有する必要がある。同時に、混合前の個々のペースト成分の粘度は十分に低くなければならないか、又はペースト成分は、エアロゾル容器から排出することができるようにチキソトロピー特性を有しなくてはならない。ペースト成分のレオロジー特性によって、成分は、均一に混合されることができるようにエアロゾル容器から均一に分出されることができる必要がある。エアロゾル容器は、成分が同時に且つ同調して変位するように機能しなければならない。
本発明は、これらの特徴及び特性を有するエアロゾル送出システムを提供する。分出装置は、多成分歯科用組成物を送出するのに好適である。本発明のこれら及び他の目的、利益及び利点は以下の説明及び例示の実施の形態から明らかである。
本発明は、多成分歯科用組成物を分出するのに好適であるエアロゾル送出システムに関する。本システムは、第1のエアロゾル加圧チャンバ及び第2のエアロゾル加圧チャンバを有する内側容器を有する分出装置を含む。第1のエアロゾルチャンバは、組成物の第1の成分Aを貯蔵及び排出するのに使用され、第2のエアロゾルチャンバは、第2の成分Bを貯蔵及び排出するのに使用される。分出装置は、第1のチャンバ内で摺動する第1の内側ピストン部材と、第2のチャンバ内で摺動する第2のピストン部材とを有するピストンアセンブリをさらに含む。接合部材が、ピストンアセンブリが一体型のユニットとして摺動するように第1のピストン部材と第2のピストン部材とを接続する。バリア手段が、成分をエアロゾル成分から分離する。外側容器が、内側容器アセンブリ、ピストンアセンブリ、及びエアロゾル推進剤を収容する。
第1の弁システム及び第2の弁システムが、成分を共通のマニホルドに吐出する手段を提供し、当該マニホルドは、これらの成分を組み合わせて共通の流れにし、次いでこの流れを、好ましくはスタティックミキサを含む分出チップに給送する。エアロゾル推進剤は、第1のチャンバ及び第2のチャンバから成分を強制的に排出させ、共通のマニホルドに入れる。このようにして、混合された組成物が分出される。
好ましい一実施形態では、内側容器アセンブリは、1つの成分を貯蔵する第1の細長い円筒形チャンバを含む。第2の成分を貯蔵する第2のチャンバは、第1のチャンバを囲み、第1のチャンバと同軸である。
本発明の新規な特徴は、特許請求の範囲に記載されている。しかし、本発明の好ましい実施形態は、さらなる目的及び付随する利点と共に、添付の図面と関連して以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解される。
本発明は包括的に、第1のエアロゾル容器及び第2のエアロゾル容器を有する分出装置に関する。第1のエアロゾル容器は、組成物の第1の成分を貯蔵及び排出するのに用いられ、第2のエアロゾル容器は、第2の成分を貯蔵及び排出するのに用いられる。本明細書において用いる場合、「エアロゾル容器」という用語は、圧力下でその成分を保持すると共に、これらの成分を推進剤によって排出する、剛性及び半剛性の缶、ボトル、バイアル、チャンバ、区画、圧潰可能なバッグ等を含むがこれらに限定されない任意のタイプのレセプタクルを意味する。容器は、金属、プラスチック、又は他の好適な材料から作製することができる。エアロゾル容器は複数の区画又はチャンバを含んでいてもよく、1つ又は複数の区画が組成物の成分を貯蔵し、別個の区画が成分を排出させるための推進剤を貯蔵する。本発明では、エアロゾル容器は、推進剤が組成物の成分から隔離されるように構成されることが好ましい。換言すると、推進剤は組成物の成分ではない。装置のピストンアセンブリは、組成物を推進剤から隔離したままに保つバリアシステムを含み得る。
分出装置は本明細書において、主に2つのエアロゾル容器を含むものとして説明されているが、装置は、任意の好適な数のエアロゾル容器を含むように構成されてもよいことを理解すべきである。例えば、3成分歯科用組成物を作製する必要がある場合、装置は、組成物の各成分をそれぞれ保持及び貯蔵する3つのエアロゾル容器を備えていてもよい。2つのエアロゾル容器を有する装置は、本明細書においては例示のためだけに記載されており、これが限定的であると見なされるべきではない。
分出装置は、第1の成分及び第2の成分が第1の容器及び第2の容器からそれぞれ排出されるときにこれらの成分を受け取る分出チップを含み得る。分出チップは、成分を組み合わせて混合するスタティック混合要素を備えていてもよい。結果として生じた混合組成物は、分出チップの遠位開口を通って選択された標的へ分出される。
図1及び図1Aを参照すると、本発明の分出装置10の一実施形態が示されている。装置10は、組成物の第1のペースト状成分A及び第2のペースト状成分Bをそれぞれ貯蔵するのに使用される第1の区画又はチャンバ12及び第2の区画又はチャンバ13を有する内側容器11を含む。第1のチャンバ12及び第2のチャンバ13は、エアロゾル推進剤15で加圧されている。内側分割壁が、貯蔵チャンバ12、13を分離している。第1の弁システム19及び第2の弁システム39が、各成分A及びBを共通のマニホルド20に放出する手段を提供しており、当該マニホルド20は、これらの成分を組み合わせて共通の流れにし、次いでこの流れを、好ましくはスタティックミキサを含む分出チップ21に給送する。弁システム19、39を作動させると、各成分A及びBは出口ポート22、23を通ってそれぞれ分出されてマニホルド20に入る。さらに詳細に後述するように、弁システム19、39の開閉によって、各成分A、Bのマニホルド20への流れを停止及び開始する手段を提供する。
製品の各成分A、Bは、低い粘度を有するか、あるいは成分を混合することができ、結果として生じた混合組成物が商業的製品として十分な速さで流れるのに必要なチキソトロピー特性を有するように特別に配合される。例えば、歯科用印象材料に関して、流速は40mL/分よりも速く、150mL/分より遅いことが好ましいものとする。
分出装置10は、第1の弁アセンブリ19及び第2の弁アセンブリ39を同時に作動させる、押圧可能なボタン又はレバー様アクチュエータ24を含む。ボタン又はレバーが弁アセンブリ19、39のばね(図示せず)の付勢力に抗して下方に押圧されると、個々の弁部材が開く。これによって、それぞれの区画12、13内部の高圧に加圧された内容物A、Bが外部雰囲気と接触する。バリア14の裏側にある推進剤15は、気体状態に膨張し、成分A、Bを、出口ポート22、23を通して強制的に排出させる。
第1のチャンバ12内で摺動するようになっている第1の内側ピストン部材27と、第2のチャンバ13内で摺動するようになっている第2のピストン部材28とを備えるピストンアセンブリ29が装置10内に含まれている。接合部材30が、ピストンアセンブリ29が一体型のユニットとして摺動するように第1のピストン部材27と第2のピストン部材28とを接続する。ピストンアセンブリは、ピストン部材27、28と共に摺動するバリア14をさらに含んでいる。そのように摺動する際に、バリア14は、推進剤15が分出サイクル全体を通して各成分A、Bから十分に隔離されるように、外側容器31の内壁内でシールを維持する。弁部材19、39を開くと、第1の成分A及び第2の成分Bが第1の区画12及び第2の区画13から共通のマニホルドチャンバ20にそれぞれ同時に吐出され、当該マニホルドチャンバ20は、組み合せた流れを混合チップ21に給送する。
例えば窒素、二酸化炭素及びハイドロフルオロカーボン(HFC)を含むがこれらに限定されない任意の好適な推進剤15を装置10において使用することができる。1つのそのような好適な推進剤はHFC−134a(ハイドロフルオロカーボン、CHFCF)である。70PSIの蒸気圧を有するHFC等の液体推進剤を使用することができる。推進剤は、圧力が70PSI未満の場合、液体から気体に変化する。推進剤15は、高圧下で液体として圧送されて、エアロゾルバリア14の裏側に位置する副区画に入る。推進剤15は、圧力が維持される限り液体形態のままである。弁部材19、39を開くと、液体推進剤15にかかる圧力が低下し、液体推進剤15は気体に変化して、バリア14を押圧するのに必要な圧力を提供し、この圧力が次いで各成分A、Bを、出口ポート22、23を通して押し出す。
分出チップ又はノズル21は、第1の成分A及び第2の成分Bが第1のチャンバ12及び第2のチャンバ13から排出されるときにこれら各成分を受け取ることができるように、共通のマニホルドチャンバ20に取り付けられている。分出チップ21は、本技術分野において一般的なスタティック混合要素(図示せず)を含む。各成分A、Bは、スタティック混合要素内を給送されるときに組み合わされ、混合される。次いで、十分に混合された組成物は、分出チップ21を通って吐出される。分出装置10は、内側容器アセンブリ11、ピストンアセンブリ29、及びエアロゾル推進剤15を収容する外側容器31を含む。
使用者が、自身の指をアクチュエータボタン又はレバー24から離すと、もはや下向きの力は加えられず、弁部材は閉じる。ばねが、弁部材を上方に押しやって弁を閉じる。その結果、区画12、13内部の加圧されている各内容物A、Bはもはや外部雰囲気と接触しなくなる。各弁部材が閉位置にある場合、区画12、13内部の貯蔵されている各成分A、Bは装置内に収容されており、排出されない。
図2〜図5を参照すると、エアロゾル分出装置30の別の実施形態が示されている。装置30は、以下にさらに詳細に説明する同軸の内側容器アセンブリ34を収容する細長い円筒形外側容器32を含む。ピストンアセンブリ36が、同軸の容器34内で摺動すると共に、第1の成分A及び第2の成分Bを送出するようにこの容器を摩擦シールするようになっている。本明細書で用いる場合、「ピストン」という用語は、容器又は区画をシールし、この区画内にシールされている材料を変位させるように移動する摺動部品を指す。本明細書で用いる場合、「プランジャ」という用語は、区画内の別の円筒体(通常はピストン)に対して作用するが、区画に対するシールは提供しない摺動部品を意味する。外側主容器部材32は、第1の端が上部カバー38でシールされ、第2の端が底部カバー40でシールされる。
図3は、同軸の容器34の底部端面図である。第1の細長い、円筒形チャンバ42が、外側容器32の軸と同じ軸に沿って同軸の内側容器34の中心に位置する。第2の細長いチャンバ44が第1のチャンバ42を囲み、第1のチャンバ42と同軸である。第1のチャンバ42は、内壁面41及び外壁面43を有する円筒形内側分割壁によって第2のチャンバ44から分離されている。第1の円筒チャンバ42の外壁面は、第2のチャンバ44の第1の同心内壁面43を形成する。第2のチャンバは、外壁面45及び内壁面47を有する円筒形外壁をさらに含む。第1のチャンバ42は、組成物A又はBの一方の成分を貯蔵し、第2のチャンバ44は、他方の成分A又はBを貯蔵する。各成分A、Bをそれぞれ吐出するために、内側チャンバ42は出口ポート46を有し、外側チャンバ44は出口ポート48を有する。好ましくは、各出口ポート46、48は、同軸の容器34の送出端において互いに隣接して位置する。
図4(成分A及びBで充填された状態で示されている)を参照すると、同軸の内側容器34にはピストンアセンブリ36が嵌合している。これは、第1の成分Aを第1の出口ポート46に押しやる前方に面する部分85と、対向する後方に面する部分73とを有する第1のディスク形ピストン部材52を含む。ピストンアセンブリは、第2の成分Bを第2の出口ポート48に押しやる前方に面する部分75と、対向する後方に面する部分77とを有する第2のドーナツ形ピストン部材54をも含む。接合部材63が、ピストンアセンブリ36が一体型のユニットとして摺動するように、第1のピストン部材52と第2のピストン部材54とを接続する。ピストンアセンブリは、各成分A、Bをエアロゾル推進剤から分離し、ピストン部材52、54と一致して摺動するバリア62をさらに含む。
実際には、ピストン52、54は、各区画42、44をそれぞれ摩擦シールするようにチャンバ42、44の内壁面に沿って摺動する。ピストン52、54は、この摺動/シール機構によって、第1の成分A及び第2の成分Bを、出口ポート46、48を通して押し出す。一方のピストン52は、(端部から見た場合に)ディスク形であり、内側チャンバ42内に嵌まる。他方のピストン54は、(端部から見た場合に)ドーナツ形であり、外側同軸チャンバ内に嵌まる。外側同軸チャンバ44及びピストン54は、内側チャンバ42及びピストン52に対して環状位置にあると言うこともできる。ピストン54は、内側端縁69と、外側端縁70とを有し、この外側端縁70は、外側環状チャンバ44と共に一次(primary)シールを形成する。ピストン52は、外側端縁68を有し、これは、内側チャンバ42の内壁面と共に一次シールを形成する。好ましくは、ピストン52、54は、実質的にチャンバ42、44の深さ程度の長さを有する。接合部材63が、内側ピストン52と外側ピストン54とを組み合わせて、これらの後端において1つの連続部分を形成している。後方接合部材63は、2つのピストン52、54が一致して摺動し、軸方向に移動する際に互いに対して同じ位置を維持するようにこれらを連結する。この構造によって、ピストン52、54が同調して変位することができる。ピストン52、54は、第1の成分A及び第2の成分Bが出口ポート46、48を通して同時に送出されるように、内側チャンバ42及び外側チャンバ44内で共に移動する。
一体型のピストンアセンブリ36は、突出スカート62を含み、これは、外側容器32の内壁面に適合し、且つこれに沿って摺動する。スカート62は、外側容器32の底部に貯蔵されているエアロゾル推進剤と、スカートシール62の反対側に位置する他のシステム構成要素との間に一次シールを提供する。このスカート62は、エアロゾル推進剤を、容器アセンブリ30の後端に対して効果的に隔離する。
実際には、2成分製品の場合、内側区画42は1つの成分(例えば成分A)によって予め充填され、外側区画44は、第2の成分(例えば成分B)によって予め充填される。2つの区画42、44間に位置する内側分割壁43は、2つの成分A、Bを分離する。成分A、Bが内側ピストン52及び外側ピストン54の移動によって分出されるとき、同軸の容器34の内側分割壁43は、内側ピストン52及び外側ピストン54間に位置する溝71に嵌合する。
上述し、且つ図1及び図1Aに示したように、共通のマニホルドを有する弁アセンブリ19、39は、出口ポート46、48からそれぞれ吐出される第1の成分A及び第2の成分Bを受け取ることができるように、同軸の内側容器アセンブリ34の送出端に取り付けられる。弁アセンブリ19、39は、2つの成分A、Bの流れを制御し、製品を分出する必要に応じて開閉することができる。弁アセンブリは、押圧可能なボタン又はレバー様アクチュエータ24によって、上述したのと同じ方法で開くことができる。マニホルド20は、2つの成分A、Bを組み合わせて1つの流れにする。組み合わされた流れは次いで、各成分A、Bを混合する混合要素を含む分出チップ21を通って運ばれる。50mLの歯科材料カートリッジにおいて現在用いられている混合チップ等、本技術分野において知られている従来の分出チップを本発明の分出装置において用いることができる。
2つのチャンバ42、44が各成分A、Bで充填された後、HFC−134a等の液体エアロゾル推進剤が、高圧力下で容器30の底部に圧送される。容器30の底部は次いで、弾性プラグでシールされる。これは、エアロゾルの技術分野においては通常のプロセスであり、缶の装填において知られている。
図4aを参照すると、使用のために全ての材料が混合されて吐出されるまで、同軸のピストンアセンブリ36は、同軸の内側容器34内で摺動する。この時点で、内側容器34は実質的に空の状態であり、残留材料のみが残されている。
図5を参照すると、ディスク形ピストン52の内側構造は補強構造リブ72を有し、ドーナツ形外側ピストン54の内側構造は補強構造リブ74を有する。同軸の内側容器34及び周囲の外側容器32を有する同軸のピストンアセンブリ36を有するエアロゾル分出装置30は、本発明の分出装置の一実施形態を表しているに過ぎないことを理解すべきである。分出装置は、図6、図7及び図8に示すような構造等、他の構造を有してもよい。図6〜図12に示される分出装置は、図2〜図5に示す装置と類似の多くの構成要素を含み、同様の構成要素を特定するのに同様の参照符号が用いられる。
図6を参照すると、装置は、ディスク形内側ピストン52及びドーナツ形外側ピストン54を含む、ピストン・プランジャアセンブリ78を含む。ピストン・プランジャアセンブリ78は、内側ディスク形ピストン52の後方に面する部分73に対して作用する一体型の内側プランジャ80と、外側ドーナツ形ピストン54の後方に面する部分77に作用する一体型の外側プランジャ82をさらに含む。プランジャ80、82は、1つの連続的な構成要素である。このタイプの構成を用いて、同軸の容器34は、別々の作業で、オフラインで充填され、エアロゾル分出装置として組み立てられ得る。
図7を参照すると、本発明の別の実施形態は、細長い一次ピストン52、54を有する。これらの細長いピストン52、54は、図6に示す比較的短いピストン52、54に比べて長さが長い。一次ピストン52、54の前端85、75は、同軸の容器34の区画内でシールを形成する。細長いピストン52、54は、バリア部分62によって前方に駆動される。
さらに別の実施形態では、第1の区画42及び第2の区画44は、組成物の成分A、Bを保持及び分出するための任意の好適な断面形状を有し得る。例えば、図8及び図9に示すように、第1のチャンバ42及び第2のチャンバ44は、D字形断面構造を有し得る。この構造に伴う1つの利点は、出口ポート46、48が全体アセンブリの中心軸付近に位置することができ、製造、充填及び使用が、軸からずれている出口ポートを有するものよりもはるかに容易になるということである。円筒形区画を有する上述した同軸構造と同様に、図8及び図9の装置における好ましいピストン構成は、一体型の接合部材63によって後端で接合される、2つの細長いD字形ピストン52、54を有する1つの連続部分である。D字形ピストン52、54は、同軸の容器34のD字形区画内で摺動する。スカート62は、外側金属容器32の内側壁をシールし、製品の成分及びエアロゾル推進剤間のバリアを提供する。
別の実施形態では、分出装置は、製品A、B及びCを分出する2つ以上の楔形区画を含むように構成され得る。例えば、3つ以上の成分を出口ポート80、81及び82を通して分出する3つ以上の楔形区画76、77及び78を有する装置は、図10に示すように構成され得る。このような構成では、これらの成分は、等しい比率であるか又は等しくない比率であってもよく、この比率は楔形区画のサイズによって決まる。
図11では、分出装置は、フットボール形又は卵形区画42、44を有する。上述したように、嵌め合いピストン52、54は相補的な形状を有し得る。
図12に示すさらに別の実施形態では、分出装置は、円筒形区画42、44を有する。上述したように、嵌め合いピストン52、54は相補的な形状を有し得る。
上述のエアロゾル分出装置は、本発明に従って使用され得るシステムのいくつかの例である。これらの装置は、例示する目的でのみ提供され、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の歯科用組成物を送出するのに多くの他のエアロゾル分出装置を使用することができることを認めるであろう。
実際には、第1のエアロゾルチャンバは歯科用組成物の第1の成分で予め充填されており、第2のエアロゾルチャンバは第2の成分で予め充填されている。本発明に従って、任意の好適な歯科用組成物を使用することができる。例えば、歯科用修復材、充填材料、印象材料、セメント、接着剤、シーラント、磨き剤等を作製するのに使用される2成分組成物を使用することができる。患者の歯科解剖学の印象を取るのに使用される歯科用組成物が特に好ましい。印象を取るのに使用される歯科用組成物は、2つのペースト成分から調製される。歯科用印象材料を作製するのに使用される一方の成分はベースペーストであり、他方の成分は触媒ペーストである。
ベースペースト
触媒ペーストと混合されて歯科印象用組成物を形成するベースペーストは、重合性化合物、架橋剤、界面活性剤及びフィラー材料の混合物を含み得る。
好適な重合性化合物の1つの種類は、ビニルオルガノポリシロキサンである。これらの化合物は、付加重合することができるビニル基を含有する。好ましくは、ビニルオルガノポリシロキサンは、分子当たり少なくとも約2つのビニル基を含有する。ビニル末端ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。異なるアルキル、アリール、ハロゲン及び他の置換基を有する他のビニルオルガノポリシロキサン化合物を本発明に従って使用してもよい。また、本技術分野においてQM樹脂として既知の、二次官能性(quadric-functional)ポリシロキサンを使用してもよい。ベースペースト及び触媒ペーストにおいて、重合性化合物を単独で使用してもよく、あるいは重合性化合物の混合物を使用してもよい。例えば、ビニル基及びビニル末端ポリジメチルシロキサン化合物を含むQM樹脂の分散液を調製することができる。
ビニルオルガノポリシロキサン化合物は、本発明の歯科印象用化合物を調製するのに用いることができる重合性化合物の一種類にすぎないものであり、これらの化合物は例示的であり、用いられ得る化合物を限定するものではないものと理解されるべきである。水性又は非水性の、任意のエラストマー歯科用印象材料を用いることができる。水性印象材料の一例はアルギン酸であり、非水性材料の例としては、ポリエーテル、ポリスルフィド、縮合シリコン、ポリビニルシロキサン、及びポリウレタンメタクリレート型の印象材料が挙げられる。
ベースペーストは、オルガノヒドロポリシロキサン架橋剤をさらに含む。ポリメチルヒドロシロキサンが特に好ましい架橋剤である。異なるアルキル、アリール、ハロゲン及び他の置換基を有する他のオルガノヒドロポリシロキサン化合物を本発明に従って使用してもよい。
さらに、ベースペーストは、本組成物の濡れ性(wettable nature)を改善する界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、本組成物を、歯の表面及び周囲の組織を濡らすのに効果的なものとするのに役立つ。界面活性剤は、陽イオン性、陰イオン性、両性又は非イオン性タイプのものであり得る。界面活性剤を選択する場合の重要な基準は、界面活性剤の親水親油バランス(HLB)値である(Gower、「Handbook of Industrial Surfactants」(1993)に記載されている)。界面活性剤のHLB値は、約8〜約11の範囲でなければならないことが分かっている。HLB値が高くなることは、物質がより疎水性になることを意味する。さらに、界面活性剤のpHは、印象材料の重合に悪影響を及ぼす可能性がある副反応を防止するように6〜8の範囲でなければならない。市販されている好ましい界面活性剤としては、Rhone-Poulenc(ニュージャージー州クランベリー)によって販売されており、ノニルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを含有するIGEPAL CO−530と、BASFから入手可能なPEG−8 METHICONEとが挙げられる。
ベースペーストは、組成物の扱いやすさ及び流動特性を改善する非重合性可塑剤も含み得る。好ましい乳化可塑剤(emulsifying plasticizer)は、オクチルベンジルフタレートである。例えば、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、及び低分子量ポリグリコール等の他の可塑剤も用いることができる。
天然又は合成であり得る無機フィラーを、ベースペーストに加えてもよい。このような材料としては、シリカ、二酸化チタン、酸化鉄、窒化ケイ素、ガラス、例えばカルシウム、鉛、リチウム、セリウム、スズ、ジルコニウム、ストロンチウム、バリウム及びアルミニウム系ガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸リチウム、リチウムアルミナシリケート、カオリン、石英及びタルクが挙げられるが、これらに限定されない。シリカ粒子の混合物を使用してもよい。この混合物は、微粉石英(pulverized quartz)等の結晶シリカと、珪藻土等の非結晶シリカと、シラン化(silanated)ヒュームドシリカを含み得る。異なる直径サイズ及び表面積を有するフィラー粒子を用いて、得られる組成物の粘度及びチキソトロピー性を制御することができる。フィラー粒子は、粒子及び樹脂間の結合を改善するためにシラン化合物又は他の結合剤で表面処理することができる。
ベースペーストは、特別に所望される特性を有する組成物を提供するために添加剤も含み得る。例えば、抗菌化合物、フッ化物離型剤、香味料(flavorant)、顔料等を組成物に加えることができる。
触媒ペースト
概して、触媒ペーストは、重合性化合物、触媒、重合禁止剤及びフィラー材料の混合物を含む。
ベースペーストに加えるのに有用である重合性ビニルオルガノポリシロキサン化合物は、触媒ペーストに用いてもよい。ビニルオルガノポリシロキサン化合物とオルガノヒドロポリシロキサン架橋剤との付加重合反応を加速するのに有用である触媒は、白金系であることが好ましい。1つ又は複数のビニル材料、特にビニルポリシロキサンとの混和剤又は錯体であることが好ましいクロロ白金酸等の白金化合物を使用することができる。他の触媒も有用であり、例えば、それぞれの錯体及び塩と共に、パラジウム、ロジウム及び他の金属が挙げられるがこれらに限定されない。
触媒ペースト又はベースペーストは、例えば1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン等の重合禁止剤も含み得る。重合禁止剤は、始めに重合反応において消費され、これが、上述したビニルオルガノポリシロキサン化合物の重合反応を減速させるように働く。したがって、組成物の硬化が遅らされる。組成物の作用時間及び凝縮時間が延びるため、歯科開業医は組成物をよりうまく扱うことができる。
上述したように、組成物のぬれ性を改善する界面活性剤を、触媒ペーストに加えることができる。しかし、ベースペーストのみが界面活性剤を含有していることが好ましい。界面活性剤は、触媒ペーストに加えられると、白金系触媒と反応し、これは組成物の重合問題につながる可能性がある。
触媒ペーストは、上述したようにベースペーストにおいて使用されるフィラー及びベースペーストと同じ群から選択されるフィラー並びに添加剤を含有し得る。触媒ペースト及びベースペーストは、同じフィラー、例えばシラン化シリカを含み得る。代替的には、触媒ペーストは異なるフィラー材料を含んでもよい。
さらに、本組成物は、ビニル重合の結果として生じる可能性がある水素ガス発生の存在又は程度を減少させる化学系を含み得る。特に、本組成物は、そのような水素を除去し吸い取る、細かく分割された白金族金属を含み得る。白金族金属は、1グラム当たり約0.1m〜約40mの表面積を有する実質的に不溶性の塩上に堆積し得る。好適な塩は、好適な粒子サイズの硫酸バリウム、炭酸バリウム及び炭酸カルシウムである。他の基材としては、珪藻土、活性アルミナ、活性炭素等が挙げられる。無機塩が特に好ましく、これは無機塩が安定性を改善するためである。そのような基材が触媒ペーストに加えられることが好ましい。
歯科開業医は、印象材料を作製する準備が整うと、分出装置のアクチュエータボタン又はレバーを押圧する。このベースペースト及び触媒ペーストは、上述したように、エアロゾル容器から排出されて分出チップへ給送される。ベースペースト及び触媒ペーストは、所定の容積比、好ましくは1:1の容積比で混合されて、混合組成物を形成する。ベースペースト及び触媒ペーストが分出チップのスタティックミキサを通って排出されるときに、ビニルオルガノポリシロキサンが付加重合する。混合されたペーストは印象トレイに分出され、ここで重合及び硬化が始まる。混合されたペーストの粘度は徐々に増加する。概して、標準的に凝固する印象材料の場合、組成物は、成分が最初に混合された時から約2分〜約5分以内に硬化する。一方で、迅速に凝固する印象材料の場合、組成物は混合から約1分〜約3分以内に硬化する。
歯科印象用材料は、患者の歯及び周囲の歯茎組織の正確な記録を行なうことができるように、良好な流動特性及び処理特性を有することが重要である。本発明の歯科用組成物はそのような特性を有する。印象材料は、空隙又は気泡が最小限に抑えられるように広がるか又は湿潤する。これによって、印象材料が患者の歯科解剖学の細部を捉えることもできる。さらに、歯科印象用材料は、歯科開業医がこの材料を用いて作業することができるように良好な流動特性を有する。また必要以上に早く凝固する問題は回避される。さらに、歯科印象用材料は、この材料を引裂くか又は歪めることなく口から容易に分離することができるように良好な強度を有する。
歯科用組成物を分出するエアロゾル送出システムを使用することは多くの利点を提供する。第1に、エアロゾル送出システムは持ち運び可能である。分出装置は、歯科開業医の手に保持されるように設計されることが好ましい。歯科開業医は、患者が着座している場所に近接する「椅子の脇」で分出装置を使用することができる。これに対して、今日一般的に使用されている、或るタイプの歯科用印象材料送出システムはダイナミックミキサとして知られている。これらのダイナミックミキサは、印象材料を大量に送出する比較的大きい機械である。ダイナミックミキサは持ち運び可能ではなく、通常、カウンター、テーブル又は他の水平な表面上に置かれる。歯科用印象材料を含有するカートリッジは、ダイナミックミキサ機械に装填され、印象材料はこのカートリッジから分出される。そのような従来のシステムに伴う1つの問題は、開業医が、ミキサ機械と隣接するカウンター又は他の安定した表面で印象トレイを充填する必要があることである。いくつかの例では、この機械は患者のいる場所とは異なる治療室に位置し、開業医はこれらの部屋間を行き来する必要がある。本発明のエアロゾル送出システムを用いると、開業医は分出装置を容易に持ち運びすることができる。このシステムを用いて、患者を治療するのに必要とされる時間を短縮することができる。患者を治療する際の効率が改善される。
第2に、歯科開業医は、エアロゾル送出システムから分出される用量を正確に制御することができる。開業医は、アクチュエータボタン又はレバーを押下することによって、正確に制御された方法で組成物を分出することができる。開業医がアクチュエータボタンから自身の指を離すと、弁部材が閉位置に移動し、組成物がそれ以上分出されない。これに対して、上述した従来の歯科カートリッジ及び手動分出ガンを使用して組成物を正確に分出することは困難である可能性がある。そのようなガンを用いる場合、開業医は、ハンドルを繰り返し握って印象材料をトレイに分出しなければならない。この握る動きによって、分出チップの移動を制御することが困難になる。分出チップを静止して保つことは、印象材料に気泡及び空隙が形成されることを最小限に抑えるのに役立つため、重要である。
第3に、分出装置は、開業医がアクチュエータボタンに過剰な力を加える必要がないため、機械的利点及び人間工学的利益を提供する。むしろ、開業医は、アクチュエータボタンを簡単且つ容易に押圧して印象材料を送出することができる。
本明細書において説明及び図示したエアロゾル分出装置及び歯科用組成物は、本発明のいくつかの実施形態のみを表していることが理解される。当業者には、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、そのような分出装置及び組成物に対して種々の変更及び追加を行なうことができる。そのような全ての実施形態は添付の特許請求の範囲によって網羅される。
本発明のエアロゾル送出装置の一実施形態の断面図である。 図1に示すエアロゾル送出装置の分解断面図である。 外側容器、同軸の内側容器、及びピストンアセンブリを有する装置を示す、本発明のエアロゾル送出装置の別の実施形態の分解斜視図である。 図2に示す同軸の内側容器の底部端面図である。 容器内の第1のチャンバ及び第2のチャンバに歯科用組成物の各成分A、Bが充填されている、図2に示す同軸の内側容器の断面図である。 容器内の第1のチャンバ及び第2のチャンバの歯科用組成物の各成分A、Bが空になっている、図2に示す同軸の内側容器の断面図である。 図2に示すピストンアセンブリの断面図である。 同軸の内側容器と、ディスク形内側ピストン及びドーナツ形外側ピストンを有するピストンアセンブリとを示す、本発明のエアロゾル送出装置の別の実施形態の分解斜視図である。 同軸の内側容器と、細長い内側ピストン及び細長いドーナツ形外側ピストンを有するピストンアセンブリとを示す、本発明のエアロゾル送出装置の別の実施形態の分解斜視図である。 半円形である第1のチャンバ及び第2のチャンバを有する内側容器を示す、本発明のエアロゾル送出装置の別の実施形態の分解斜視図である。 出口ポートを示す、図8の内側容器の底部端面図である。 3つのチャンバを有する内側容器の底部端面図を示す、本発明のエアロゾル送出装置の内側容器の別の実施形態を示す図である。 2つの卵形チャンバを有する内側容器の底部端面図を示す、本発明のエアロゾル送出装置の内側容器の別の実施形態を示す図である。 2つの円筒形チャンバを有する内側容器の底部端面図を示す、本発明のエアロゾル送出装置の内側容器の別の実施形態を示す図である。

Claims (18)

  1. 2成分歯科用組成物(A、B)を分出するエアロゾル送出装置(10)であって、
    a.内側容器アセンブリ(11)であって、
    i.該組成物の第1の成分を貯蔵する第1のチャンバ(12)であって、第1のピストン部材(27)を受け入れる近位開口と、該第1の成分(A)を吐出する第1の出口ポート(22)とを有する、第1のチャンバ(12)と、
    ii.該組成物の第2の成分を貯蔵する第2のチャンバ(13)であって、第2のピストン部材(28)を受け入れる近位開口と、該第2の成分(B)を吐出する第2の出口ポート(23)とを有する、第2のチャンバ(13)と、
    を含む、内側容器アセンブリ(11)と、
    b.ピストンアセンブリ(29)であって、
    i.該第1のチャンバ(12)内で摺動するよう構成された第1の内側ピストン部材(27)と、
    ii.該第2のチャンバ(13)内で摺動するように構成された第2のピストン部材(28)と、
    iii.該ピストンアセンブリ(29)が一体型のユニットとして摺動するように、該ピストンアセンブリの該第1のピストンと該第2のピストンとを接続する接合部材(30)であって、該第1のピストン(27)は、該第1の成分(A)を該第1の出口ポート(22)を通して押し出して該共通のマニホルドチャンバ(20)に入れるように該第1のチャンバ(12)内で摺動し、該第2のピストン(28)は、該第2の成分を該第2の出口ポート(23)を通して押し出して該共通のマニホルドチャンバ(20)に入れるように該第2のチャンバ(13)内で摺動する、接合部材(30)と、
    iv.該各成分をエアロゾル推進剤(15)から分離するバリア(14)と、
    を含む、ピストンアセンブリ(29)と、
    c.該ピストンアセンブリによって該各成分から隔離されているエアロゾル推進剤(15)と、
    d.該内側容器アセンブリ、該ピストンアセンブリ及び該エアロゾル推進剤を含む外側容器(31)と、
    e.分出チップ(21)と該内側容器アセンブリ(11)とを接続する該共通のマニホルドチャンバ(20)と、
    f.該第1の成分(A)の流れを制御する第1の弁アセンブリ(19)と、該第2の成分(B)の流れを制御する第2の弁アセンブリ(39)とに接続されている押圧可能なアクチュエータ(24)と、
    g.該組成物を吐出するように該共通のマニホルドチャンバ(20)に取り付けられている分出チップ(21)と、
    を有することを特徴とするエアロゾル送出装置。
  2. 2成分歯科用組成物を分出するエアロゾル送出装置(30)であって、
    a.内側容器アセンブリ(34)であって、
    i.該組成物の第1の成分を貯蔵する第1の細長い円筒形チャンバ(42)であって、内側壁表面(41)及び外側壁表面(43)と、第1のピストン部材(52)を受け入れる近位開口と、該第1の成分を吐出する第1の出口ポート(46)とを有する、第1の細長い円筒形チャンバ(42)と、
    ii.該組成物の第2の成分を貯蔵する第2の細長い同心チャンバ(44)であって、ドーナツ形断面と、内側壁表面(47)及び外側壁表面(45)と、該第1の円筒形チャンバ(42)の軸と一致する軸とを有し、且つ該第1の円筒形チャンバを同心状に囲み、該第1の円筒形チャンバの該外側壁表面(43)は、該第2のチャンバの該第1の同心内側壁表面(43)を形成し、該同心チャンバはドーナツ
    を受け入れる近位開口を有する、第2の細長い同心チャンバ(44)と、
    を含む内側容器アセンブリ(34)を有することを特徴とするエアロゾル送出装置。
  3. a.内側容器アセンブリ(34)であって、
    i.該組成物の第1の成分を貯蔵する第1の細長い円筒形チャンバ(42)であって、内側壁表面(41)及び外側壁表面(43)と、第1のピストン部材(52)を受け入れる近位開口と、該第1の成分を吐出する第1の出口ポート(46)とを有する、第1の細長い円筒形チャンバ(42)と、
    ii.該組成物の第2の成分を貯蔵する第2の細長いチャンバ(44)であって、ドーナツ形断面と、内側壁表面(47)及び外側同心壁表面(45)と、該第1の円筒形チャンバ(42)の軸と一致する軸とを有し、且つ該第1の円筒形チャンバを同心状に囲み、該第1の円筒形チャンバの該外側壁表面(43)は、該第2のチャンバの該第1の内側同心壁表面(43)を形成し、該同心チャンバは、ドーナツ形ピストン部材を受け入れる近位開口と、該第2の成分を吐出する第2の出口ポート(48)とを有する、第2の細長いチャンバ(44)と、
    を含む、内側容器アセンブリ(34)と、
    b.ピストン・プランジャアセンブリ(78)であって、
    i.該第1の円筒形チャンバ(42)内で摺動するようになっている第1のディスク形ピストン部材(52)であって、該第1のピストンは、該第1の成分を該第1の出口ポート(46)に押し出す前方に面する部分(85)と、対向する後方に面する部分(73)とを有する、第1のディスク形ピストン部材(52)と、
    ii.該第2の同心チャンバ(44)内で摺動するようになっている第2のドーナツ形ピストン部材(54)であって、該ピストンは、該第2の成分を該第2の出口ポート(48)に押し出す前方に面する部分(75)と、対向する後方に面する部分(77)とを有する、第2のドーナツ形ピストン部材(54)と、
    iii.該ディスク形ピストン(52)の該後方に面する部分(73)に作用する第1のプランジャ(80)と、
    iv.該ドーナツ形ピストン(54)の該後方に面する部分(77)に作用する第2のプランジャ(82)と、
    v.該ピストンアセンブリが一体型のユニットとして摺動するように、該内側容器アセンブリの該第1のプランジャ及び該第2のプランジャを同時に且つ同調して変位させる手段であって、該第1のピストンは該第1のチャンバ内で摺動し、該第1の成分を該第1の出口ポートを通して押し出して該共通のマニホルドチャンバに入れ、該第2のピストンは、該第2のチャンバ内で摺動し、該第2の成分を該第2の出口ポートを通して押し出して該共通のマニホルドチャンバに入れる、手段と、
    vi.該成分及びエアロゾル推進剤間のバリア(62)と、
    を含む、ピストン・プランジャアセンブリ(78)と、
    c.該ピストン・ピストンアセンブリによって該成分から隔離されているエアロゾル推進剤と、
    d.該内側容器アセンブリ、該ピストン・プランジャアセンブリ及び該エアロゾル推進剤を含む外側容器と、
    e.弁アセンブリを含む該共通のマニホルドチャンバと、
    f.該弁アセンブリを作動させるように該アセンブリに接続されている押圧可能なアクチュエータと、
    g.該組成物を吐出するように該共通のマニホルドチャンバに取り付けられている分出チップと、
    を有することを特徴とするエアロゾル送出装置。
  4. 前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが、互いに対して平行に、且つ隣接して配置されている請求項1に記載のエアロゾル送出装置。
  5. 前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが円筒形である請求項4に記載のエアロゾル送出装置。
  6. 前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが半円形である請求項4に記載のエアロゾル送出装置。
  7. 前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが卵形である請求項4に記載のエアロゾル送出装置。
  8. それぞれパイ形状である複数のチャンバがある請求項4に記載のエアロゾル送出装置。
  9. 前記第1のチャンバ及び前記第2のチャンバが実質的に同じサイズであり、その結果、前記成分は約1:1の容積比で混合される請求項4に記載のエアロゾル送出装置。
  10. 前記各チャンバが異なるサイズであり、その結果、前記成分は1:1以外の容積比で混合される請求項4に記載のエアロゾル送出装置。
  11. 前記歯科用組成物の一方の成分がベースペーストであり、他方の成分が触媒ペーストである請求項1に記載のエアロゾル送出装置。
  12. 前記ベースペーストが、重合性化合物、架橋剤、表面活性剤及びフィラー材料を含む請求項11に記載のエアロゾル送出装置。
  13. 前記重合性化合物がビニルオルガノポリシロキサンである請求項12に記載のエアロゾル送出装置。
  14. 前記界面活性剤が、約8〜約11の範囲の親水親油バランス(HLB)を有する請求項12に記載のエアロゾル送出装置。
  15. 前記触媒ペーストが、重合性化合物、触媒、重合禁止剤及びフィラー材料を含む、請求項11に記載のエアロゾル送出装置。
  16. 前記重合性化合物がビニルオルガノポリシロキサンである請求項15に記載のエアロゾル送出装置。
  17. 前記触媒が白金化合物である請求項15に記載のエアロゾル送出装置。
  18. 前記重合禁止剤が1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンである請求項15に記載のエアロゾル送出装置。
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