JP2009533458A - 神経系の可塑性を媒介する分子経路の同定および変調 - Google Patents

神経系の可塑性を媒介する分子経路の同定および変調 Download PDF

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Abstract

本発明は、可塑性に関与する遺伝子および経路を同定するための方法を提供する。本発明をこれらの方法のいくつかに適用して、改変された神経系可塑性をもたらすことが知られている疾患、すなわち、暗所飼育(DR)または単眼除去(MD)をもたらすことが知られた条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において差別可能に調節される遺伝子を同定する。該遺伝子は、可塑性を改変する薬理学的剤のための標的である。本発明は、改変された神経系可塑性をもたらすことが知られた条件下で差別可能に調製される遺伝子が富化された生物学的経路を同定する。本発明は、さらに、対象の神経系において可塑性を変調するための方法および組成物を提供する。

Description

(関連出願)
本願は、米国特許法第119条(e)の下で2006年4月14日に出願された米国仮特許出願第60/792,275号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/792,275号は、本明細書中に参考として援用される。
(政府の支援)
本発明は、NIHによって拠出されたグラント番号EY014134の下で、政府のサポートによってなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
(発明の背景)
多くの国においては、死亡率および罹患率の主な原因の中で、神経系の損傷または変性を導く病気および事故がある。例えば、ほぼ70万の人々が合衆国において毎年最初のまたは再発性の卒中を罹っている。卒中は中枢神経系(CNS)に対する損傷の最も一般的な原因を占める、多くの他の疾患もまた、損傷の直接的結果として、または膨潤のような事象に対して二次的なものとしてのいずれかでの脳組織の損傷に起因する機能的欠陥の重要な原因である。これらの中には、原発性脳腫瘍、脳転移、およびこれらまたは他の疾患についての手術がある。
卒中は脳の一部に向けての血流の突然の破壊の結果であり、通常は脳組織に供給する血管が破裂するか、あるいは血餅(例えば、血栓塞栓)または他の塞栓症または閉塞によるように、一時的または永久的にブロックされるようになる場合に起こる。正常な血流にいて生じた破壊は、必要とされる酸素および栄養素を侵された組織から奪い、また、廃棄産物の除去を損ないかねず、その結果、神経系細胞に対する損傷、またはその死滅をもたらす。現在、合衆国食品医薬品局(FDA)によって認可された虚血性卒中に対する唯一の療法は、原因となる事象後に短い時間枠内での血栓溶解剤である組織タイプのプラスミノーゲンアクチベーター(tPA)の注入である。そのような血栓溶解療法は、もし兆候の開始から3時間以内に送達されるならば、安全かつ有益であることが示された(非特許文献1)。
卒中は、先進工業国における死亡の第三の主な原因であるが、ほとんどの場合、卒中は致命的でない。しかしながら、卒中は病態の主な原因であり、かつひどい長期の身体障害の主な原因である。約480万の卒中からの生存者が合衆国において今日生存しており、これは世界中で非常に大きな合計数である。これらの個体の多くは、感覚、運動活動、言語行動および/または言語行動、挙動、思考パターン、記憶、情緒、または他の態様の認識を理解する能力に影響する機能的制限に苦しんでいる。卒中の後の機能的欠陥は永久的であり得るが、多くの場合において、十分な回復または部分的な回復が可能である。治療の主流は対症療法およびリハビリ療法であり、これは、数ヶ月または数年の間頻繁に継続する。あいにくと、卒中の長期結果を改良するのに示された効力を有する薬理学的剤はない。
ほぼ10,000〜12,000の個体が、合衆国において、毎年、脊髄損傷(SCI)を罹っており、合衆国における予測される有病率は2014年までに280,000にのぼるであろう(DeVivo,M.J.,2002)。対症療法における改善はそのような損傷後の生存率を大いに増加させたが、治療の選択肢は制限されたままであり、努力はリハビリに集中している。脊髄または髄膜に影響する腫瘍(原発性腫瘍または転移のいずれか)は有病率の有意な源でもある。
神経系の障害はまた、社会に対して大きな影響力を有する。自閉症のような脳発達の障害は、今日、約166人の子供のうち1人が罹っている。自閉症、学習障害、および同様な障害に罹った合衆国における個人の数は、400万人を超えると見積られる。精神分裂症および双極性障害のような神経精神障害は、罹った個体についての人生のケアにおける膨大なコストならびに介護人および家族に対する感情的な犠牲を生み出す。自閉症のような神経精神障害は、通常、挙動的療法単独で治療され、それらの戦略は限定された成功しか有さない。同様に、精神分裂症および双極性障害のような神経精神障害は、非常に制限された治療的可能性しか有さない。
かくして、CNSに対する損傷後の回復を高め、および/または神経精神障害および神経発達障害におけるCNSおよび認識機能を改良するのを助けるであろう改良された治療、特に、薬理学的治療に対する要望が当該分野に存在する。広範なCNS疾患に共通するのは、それらが、シナプスの機能およびその変化する能力(すなわち、可塑性)に中心的に関与しているという概念である。かくして、可塑性のような鍵となる神経系の特性において役割を演じ、そして変調されて治療的利点を供することができる遺伝子、分子、細胞型および生物学的経路の同定に対する新しいアプローチについての要望が存在する。
NINDS,急性虚血性卒中のための組織プラスミノーゲンアクチベーター;米国立神経疾患脳卒中研究所RT−PA脳卒中試験グループ。N.Engl.J.Med.333:1581−1587,1995
発明の要旨
本発明は、神経系可塑性を変調する条件に個体を供し;個体の神経系の少なくとも一部における複数の遺伝子の各々のレベルまたは活性を測定し;および、その発現または活性が、別の条件下でのその発現または活性に対する個体の神経系の一部において差別可能に調節される1つ以上の遺伝子を同定する工程を含み、可塑性に関与する遺伝子を同定する方法を提供する。いくつかの実施形態において、該条件は、正常なインプットの個体の神経系の少なくとも一部を奪うことを含む。該方法は、可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において差別可能に調節される遺伝子で富化された生物学的経路またはプロセスを同定することを含むことができる。
本発明は、可塑性を改変する条件下で差別可能に調節される遺伝子を提供する。本発明は、そのような遺伝子が富化される生物学的経路を提供する。本発明は、可塑性を延長する条件下でダウンレギュレートされるものとして、特異的な細胞型であるパルブアルブミン含有介在ニューロンを同定する。これらの遺伝子、経路、および細胞型の同定に少なくとも部分的には基づき、本発明は、特別な用途の可塑性改変剤の組合せを提供する。例えば、1つの実施形態において、インスリン様成長因子1(IGF1)経路のアクチベーター(例えば、IGF1またはその活性なペプチド断片;またはJAK/STAT経路のモジュレータ、例えば、スタチンのようなIFNγまたはHMG−CoAレダクターゼ阻害剤)を、個々に、または単一組成物にて対象に投与する。
本発明は、可塑性改変剤をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、該剤は、神経系可塑性を改変するのに有効な量にて、単独で、または1つ以上のさらなる剤と組合せて投与され、該可塑性改変剤は、可塑性改変に供された個体の神経系の少なくとも一部において差別可能に調節される遺伝子または経路を変調することを特徴とする、対象の神経系において可塑性を改変する方法を提供する。該剤は、1回、複数回、および/または継続的に投与することができる。該時間は、神経系可塑性を改変するのに有効な量と組合せて選択することができる。例示的な可塑性改変条件は、暗所飼育または単眼除去を含む。
本発明は、可塑性改変剤を対象に投与することを含み、該可塑性増強剤は、可塑性改変剤、例えば、暗所飼育(DR)または単眼除去(MD)に供された個体の神経系において差別可能に調節される遺伝子または経路を変調することを特徴とする、神経系の回復および/または再組織化の増強を必要とする対象の神経系において回復および/または再組織化を促進する方法を含む。該剤は、神経系において回復または再組織化を促進するのに有効な量で投与される。該剤は1回、複数回、および/または連続的に投与することができる。該時間は、神経系の回復または再組織化を促進するのに有効である量と組合せて選択することができる。対象は、神経系に対する虚血性、出血性、新形成、変性、外傷、および/または神経発達損傷の結果としての、神経系の回復または再組織化を必要とするものであり得る。対象は、神経発達障害または神経精神障害の結果として神経系の再組織化を必要とするものであり得る。該方法は、対象を、罹ったそのような損傷を有するかまたは神経発達障害または神経精神障害を有するものとして同定または提供し、例えば、診断する工程を含むことができる。該方法は、対象を、合理的な尤度(例えば、少なくとも5%の確率、少なくとも10%、または少なくとも50%の確率)を有するものとして同定し、または診断する工程を含むことができる。
該方法は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、プラスミン、またはPAI阻害剤のような蛋白質分解増強剤を対象の神経系に投与することも含む。本発明の可塑性改変剤は、一般に、本明細書中に記載された蛋白質分解増強剤から区別される。可塑性改変剤および蛋白質分解増強剤は単一の組成物の一部として、または個々に投与してもよい。本発明は、可塑性改変剤および蛋白質分解増強剤を含む組成物を提供する。組成物は、移植可能なマイクロチップから注入ポンプを介して、あるいはポリマー送達ビヒクルを用いて、注射を含めた種々の技術を用いて送達することができる。組成物は、例えば、脳、脊髄、または1つ以上の神経、または身体の多様な領域を刺激する1つ以上の神経または神経管の1つ以上の亜区画または領域に投与することができる。
特定の実施形態において、組成物は、所望の位置において、またはそれに近接して、一定の時間にわたって可塑性改変剤を放出する薬物送達デバイスを対象に移植することによって投与される。所望の位置は、例えば、中枢または末梢神経系における虚血性、出血性、新形成、外傷、および/または神経発達損傷の領域、あるいは損傷の領域とは反対側の脳半球における位置であり得る。いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスはポンプを含む。いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスは、生体適合性ポリマー、例えば、生分解性ポリマーを含む。いくつかの実施形態において、薬物送達デバイスのポリマーマトリックスはヒドロゲルを含む。本発明のいくつかの実施形態において、組成物は、それに会合した(例えば、それにカプセル化された、それに吸着された、ポリマーネットワークに絡ませた等)可塑性改変剤を有する複数のポリマーミクロ粒子またはナノ粒子を含む。
また、本発明は、対象の身体へ移植して、可塑性を改変するための薬物送達デバイスを含む。本発明の特定の実施形態において、デバイスは、虚血性、出血性、新形成、外傷、変性、および/または神経発達損傷後の神経系の再組織化および/または回収を促進するように移植される。
本発明のデバイスは、蛋白質分解増強剤、例えば、プロテアーゼのような蛋白質分解剤を含むことができる。別法として、あるいは加えて、蛋白質分解増強剤は別々に投与することができる。特定の実施形態において、蛋白質分解増強剤はプラスミン、プラスミノーゲンアクチベーター、および/または内因性プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤の阻害剤である。例えば、特定の実施形態においては、蛋白質分解増強剤は組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)、例えば、ヒトtPAである。本発明の特定の実施形態において、蛋白質分解増強剤はプラスミンである。特定の実施形態において、蛋白質分解増強剤は、細胞外マトリックス(ECM)の成分の分解を促進する。特定の実施形態において、蛋白質分解剤はフィブリンを直接的にまたは間接的に分解する。
所望により、可塑性改変剤および/または蛋白質分解増強剤は、所望により、切断可能な結合によってポリマーに共有結合により連結される。いくつかの実施形態において、可塑性−増強剤および蛋白質分解増強剤の一方または双方は、溶液に送達され、それは生理学的流体と接触した後、ゲルを形成する。可塑性改変剤および、所望により、蛋白質分解増強剤は、例えば、シナプス結合の構造的再組織化を促進し、新しいシナプス結合の形成を増加させ、樹状突起棘運動性を増加させ、軸索の成長およびシナプス結合を促進し、機能的および/または構造的悪化または分解を少なくとも部分的に阻害し、シナプスを安定化し、または前述のいずれかの組合せを行うのに有効な量で送達することができる。
特定の実施形態において、組成物は、1つ以上の神経成長増強剤、神経伝達物質またはそのアナログ、神経的に活性な成長因子、神経シグナル伝達分子、神経的に活性な低分子、および神経的に活性な金属を含む。別法として、または加えて、これらの剤の1つ以上は、例えば、神経系への局所投与によって、または代替経路によって、別々に投与することができる。
本発明は、さらに、可塑性改変剤および蛋白質分解増強剤を含む組成物を対象の中枢または末梢神経系に局所投与することを含む、神経系において回復または再組織化の増強を必要とする対象を治療する方法を提供する。対象は、典型的には、虚血性、出血性、新形成、変性、外傷、および/または神経発達損傷の結果として神経系損傷に罹っている。本発明は、可塑性改変剤、蛋白質分解増強剤、および神経成長増強剤を対象に投与することを含む、神経系における回復および/または再編成の増強を必要とする対象を治療する方法を提供する。1、1を超える、または全ての剤を中枢または末梢神経系に局所投与することができる。剤は、別々に、または単一組成物にて投与することができる。本明細書中で考えられる投与の方法のいずれも用いることができる。
本発明の方法のいずれにおいても、対象は、神経系に対する虚血性、出血性、新形成、外傷および/または神経発達損傷に続いて機能的回復を促進するように設計されたリハビリのプログラムに専念させることができ、該対象は、その間に剤が投与される、あるいはその間に剤は対象の神経系で活性なままである時間間隔の少なくとも一部の間にそのように専念する。
本明細書中に記載された方法のいずれにおいても、対象は、神経発達障害から後に神経系の機能を改良するために挙動または認識療法のプログラムに専念させることができ、対象は、その間に剤が投与されるか、またはその間に剤が対象の神経系において活性なままである時間間隔の少なくとも一部の間にそのように専念させる。
本発明は、生体適合性ポリマーおよび可塑性改変剤を含む薬物送達デバイスを提供し、可塑性改変剤は、対象の神経系において構造的または機能的回復または再組織化を促進するのに有効な量にてポリマーから放出される。該デバイスは蛋白質分解増強剤を含んでもよい。
本発明は、可塑性改変剤および神経成長増強剤を含む組成物を提供し、これは、所望により、神経伝達物質またはそのアナログ、神経的に活性な成長因子、神経シグナル伝達分子、および神経的に活性な低分子、および神経的に活性な金属の中から選択される。本発明は、薬物送達デバイス、例えば、該組成物を含むポリマー−ベースの薬物送達デバイスを含む。
本出願は、種々の特許および刊行物に言及する。これらの全ての内容は参照として組み込まれる。加えて、以下の刊行物が本明細書中に参照として組み込まれる:Ausubel,F.,(ed.).Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols in Immunology,Current Protocols in Protein Science,and Current Protocols in Cell Biology,all John Wiley&Sons,N.Y.,edition as of July 2002;Sambrook,Russel,and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Mannual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,2001;Kandel,E.,Schwartz,J.H.,Jessell,T.M.,(eds.),Principles of Neural Science,4th ed.,McGraw Hill,2000;Cowan,W.M.,Suedhof,T.C.,and Stevens,C.F.,(eds.),Synapses,The Johns Hopkins University Press,Baltimore and London,2001;and Hardman,J.,Limbird.E.,Gilman,A.(Eds.),Victor,M.and Ropper,A.H.,Adams and Victor’s Principles of Neurology,7th ed.,McGraw Hill,2000;Grossman,R.I.and Yousem,D.M.,Neuroradiology:The Requisites,2nd ed.,C.V.Mosby,2003;Gillen,G.and Burkhardt,A.(eds.),Stroke Rehabilitation:A Function−Based Approach,2nd ed.,C.V.Mosby,2004;Somers,M.F.,Spinal Cord Injury:Functional Rehabilitation,2nd ed.,Prentice Hall,2001;Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Ed.,McGraw Hill,2001(本明細書中においては、Goodman and Gilmanという)。組み込まれた参照のいずれかと本出願または当業者の理解との間に矛盾または不一致がある場合には、本明細書に準じ、矛盾または不一致が発明者の裁量内に存在するか否かの決定はなんどきでもなすことができると理解される。
数値の範囲が明細書中で述べられている場合、特に断りのない限り、またはそうでなければ文脈から明らかでないのであれば、端点が範囲内に含まれる。ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限〜下限間の、特に明瞭に文脈がそうでないことを示すのでなければ下限の単位の1/10まで、各間に存在する値もまた具体的に開示される。いずれかに述べられた値または述べられた範囲における間の値、およびその述べられた範囲中のいずれかの他の述べられたまたは間にある値の間の各々より小さな範囲は本発明に含まれる。これらのより小さな範囲の上限および下限は独立して該範囲内に含まれるか、または該範囲から排除することができ、限界のいずれか、いずれでもないか、または双方がより小さな範囲に含まれる各範囲は、述べられた範囲中のいずれかの具体的な排除された限界を条件として本発明内に含まれる。述べられた範囲が限界の一方または双方を含む場合、それらの含まれた限界のいずれかまたは双方を排除する範囲もまた本発明に含まれる。
本出願は、当該分野でよく知られた名称を用いて種々の遺伝子および蛋白質に言及する。時々、これらの遺伝子および蛋白質についての1つ以上の識別子および/またはアクセション番号が供される。そのような名称、識別子、および/またはアクセション番号は、GenbankおよびPubmedのような当業者に入手可能な種々のデータベースで用いられる。例えば、当業者は、URL www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=geneを有するウェブサイトで入手可能な、National Center for Biotechnology Information (NCBI)によって供されるEntrez Geneデータベースを検索することができ、それにより、目的とするいずれかの特定の遺伝子または蛋白質について遺伝子同定番号を突き止めることができる。該遺伝子同定番号エントリーは、生物学的情報、別名、染色体の位置等、ならびに対応するヌクレオチドおよび蛋白質配列についてのデータベースエントリーに対するリンク、および科学的文献中の引用文献を供する。本明細書中で言及された遺伝子の名称および/または配列は異なる種において異なり得ることが認識されるであろう。本発明は、種に関わらず遺伝子を含む。可塑性を改変する方法、神経系の構造または機能、神経系の回復または再組織化等を対象に適用する場合、多くの場合には剤は多数の種において効果的であるが、対象が属する種に存在する遺伝子の発現および/または活性、および/または経路を変調する剤を使用するのが好ましいであろう。本発明の特定の実施形態において、遺伝子はヒト遺伝子である。当業者であれば、ヒトのような他の種における、本明細書中で言及されたマウス遺伝子のヒトホモログを同定することが可能である。
添付の表の簡単な説明
本明細書の一部である添付物は以下の表よりなる:
表4は、DRの条件下における視覚野においてその発現がダウンレギュレートされる遺伝子を列挙する。
表5は、DRの条件下における視覚野においてその発現がアップレギュレートされる遺伝子を列挙する。
表6は、長期間MDの条件下において視覚野においてその発現がダウンレギュレートされる遺伝子を列挙する。
表7は、長期間MDの条件下において視覚野においてその発現がアップレギュレートされる遺伝子を列挙する。
表8は、短期間MDの条件下において視覚野においてその発現がダウンレギュレートされる遺伝子を列挙する。
表9は、短期間MDの条件下において視覚野においてその発現がアップレギュレートされる遺伝子を列挙する。
表10は、IGF1経路のアクチベーターで処理された対象における短期間MDの条件下で視覚野においてダウンレギュレートされる遺伝子を列挙する。
表11は、IGF1経路のアクチベーターで処理された対象における短期間MDの条件下で視覚野においてアップレギュレートされる遺伝子を列挙する。
定義
ほぼ:本明細書中で使用される場合、数字に言及する用語「ほぼ」は、一般には、(数が可能な値の100%を超える場合を除いて)文脈からそうでないことが述べられ、またはそうでなければ明らかでない限り、数字のいずれかの向きに10%の範囲内に入る(よりも大または小)数を含むために採用される。
アゴニスト:本明細書中で使用される場合、用語「アゴニスト」は、一般には、レポーターと直接的に作用し(例えば、結合する)ことができ、その受容体の活性、例えば、内因性の正に作用するリガンドと受容体との相互作用によって正常に誘導される活性の生理学的または薬理学的応答特徴を開始することができる物質をいう。一般に、特別な受容体のアゴニストとして認識される物質は、本明細書中に記載された方法で用いられるものである。用語「アゴニスト」は部分的アゴニスト、すなわち、受容体を部分的に活性化する、例えば、その内因性リガンドよりも低い程度までそれを活性化することができる化合物をいう。該用語は、例えば、内因性直接的アゴニストの再取込みまたは分解/代謝を阻害することによって、および/または内因性直接的アゴニストの生産または放出を刺激することによって、受容体を間接的に刺激する物質も含む。
アンタゴニスト:本明細書中で使用される場合、用語「アンタゴニスト」は、一般には、内因性の正に作用するリガンドのようなもう1つの生体活性剤によって通常は誘導される受容体−関連応答に反対に作用する物質をいう。典型的には、アンタゴニストは受容体に結合し、受容体を通常は活性化し、または受容体への内因性アゴニストの結合を妨げる内因性リガンドの結合を妨げる。アンタゴニストは効果それ自体を誘導してもしなくてもよい。受容体の活性は、一般には、内因性の正に作用するリガンドの結合に関連する活性であると取られる。文献において特定の受容体のアンタゴニストとして一般に認識される物質は、本明細書中に記載された方法で用いられるものである。該用語は、例えば、再取込みを阻害することによって、または内因性の直接的アゴニストの分解/代謝を刺激することによって、および/または内因性の直接的アンタゴニストの生産または放出を刺激することによって、受容体を間接的に阻害する物質も含む。
生体適合性:もし物質が、量において、かつ用いる位置において受容者に対して実質的に毒性でなく、また、受容者の身体に対して優位に有害なまたは予期しない効果、例えば、有意な免疫学的または炎症的反応、許容できない瘢痕組織形成等を誘導し、または引き起こさなければ、「生体適合性」と考えられる。
生分解性:本明細書中で使用される場合、用語「生分解性」とは、例えば、生物学的条件下での加水分解によって、身体内に存在する酵素の作用のような天然の生物学的プロセスによって、対象の身体内で物理的におよび/または化学的に分解されて、代謝し、および/または排出することができるより小さな化学種を形成することができる物質をいう。
生物学的情報源:本明細書中で使用される場合、用語「生物学的情報源」とは、(i)生化学的種が特定の生物学的プロセスの成分であるか否か;(ii)いずれの生化学的種が特定の生物学的プロセスの成分であるか否か;(iii)いずれの生物学的プロセスが成分としての特定の生化学的種を誘導するか否か;(iv)特定の生物学的プロセスが成分としての特定の生化学的種を誘導するか否かのような情報をそれから便宜に決定できる、(例えば、遺伝子またはそれらの発現産物、物質、補因子、生理学的な重要なイオンまたは低分子)、生物学的プロセスおよび、所望により、生物学的経路についての信頼性がある情報の編集をいう。生物学的情報源は、いずれのタイプの更なる生物学的情報も含むことができる。例えば、生化学的種と相互作用することが知られている、または生物学的経路に影響することが知られている化合物の識別子のような情報を含めることができる。例えば、生物学的プロセスまたは生化学的種が原因的役割を演じ、または生物学的プロセスまたは生化学的種における欠陥が原因的役割を果たす、生物学的プロセスまたは生化学的種に関連する病気または臨床的疾患の名称を含めることができる。「信頼性がある情報」とは、一般に、実質的に正確であるとして当該分野で認められた情報を意味する。典型的には、そのような情報は科学文献に公表されており、独立して確認することができるように十分に詳細にその中に記載されており、1つ以上のさらなる科学的出版物に正確であるとして複製され、および/または認識されている。生物学的情報源は、典型的には、データベースを含み、そしてユーザーが情報に容易にアクセスでき、1つ以上の手掛かりとなる用語、すなわち、生化学的種、生物学的プロセス等の識別子を用いて情報を検索できるようにする1つ以上のソフトウエアツールを提供する。「識別子」とは、生化学的種、生物学的プロセス等をいうのに用いられるいずれの用語、または用語の組合せもいう。識別子は、例えば、遺伝子の名称または生物学的プロセスの名称であり得る。
生物学的経路:本明細書中で使用される場合、用語「生物学的経路」とは、生きた生物中で起こり、典型的には、その結果、生物学的効果をもたらす反応の系列(例えば、分子の間の物理的相互作用、酵素反応)をいう。経路は、典型的には、該経路に関与する分子(該経路の「成分」という)が、しばしば、特徴的かつ順序立った様式で、相互に対してシグナルを発し、または相互に対して作用する事象のカスケードを含む。該経路の成分の多くは(「遺伝子産物」ともいう)遺伝子のRNAまたはポリペプチド発現産物である。そのような遺伝子は経路の成分ともいうことができる。目的とする生物学的経路は、本明細書中においては、IGF1経路、JAK/STAT経路、PI3キナーゼ経路、およびそのサブ経路を含む。
生物学的プロセス:本明細書中で使用される場合、用語「生物学的プロセス」とは、1つ以上の生化学的種、または生化学的種の順序立ったアセンブリによって達成される事象の系列をいう。生化学的種またはそのアセンブリは、生物学的プロセスの「成分」という。該成分は、生物学的プロセスに「関与する」といわれる。例えば、生物学的プロセスの成分であり、すなわち、その生物学的プロセスを実行するにおいて役割を果たす遺伝子産物は、その生物学的プロセスに関与するといわれる。その発現産物が生物学的プロセスの成分である遺伝子もまた該経路の成分ということができる。生物学的プロセスを構成する事象の系列は、典型的には、生物学的系に対する重要な生物学的目標を達成することに向けられる。生物学的プロセスの例は、限定されるものではないが、細胞の通信、代謝、形態、分泌等を含む。生物学的プロセスは複数の生物学的プロセス(サブプロセス)を含むことができることが認識されるであろう。生物学的プロセスは1つ以上の生物学的経路を含むことができ、またはそれによって実行することができる。「中枢神経系」(CNS)は脳、脊髄、視覚、嗅覚、および聴覚系を含む。CNSは、ニューロンの機能を助ける支持細胞であるニューロンおよび神経膠細胞(ニューログリア)双方を含む。稀突起神経膠細胞、神経膠星状細胞、および小神経膠細胞はCNS内の神経膠細胞である。稀突起神経膠細胞はCNS中の軸索を有髄化し、他方、神経膠星状細胞は、CNSを血中蛋白質および細胞から分離し、かつニューロンに対する多数の支持的機能を行う血液−脳関門に寄与する。小神経膠細胞は免疫系機能を発揮する。
同時投与:2つ以上の剤、例えば、治療剤に関して、本明細書中で用いる用語「同時投与」は、投与される剤が、身体内で、あるいはCNSにおけるように身体中の作用部位において一緒に存在するように用量および時間間隔を用いて行われる、分、時間、日、週等の時間間隔にわたって生物学的効果を有するのに十分な量での投与である。剤は単一組成物の一部として一緒に投与することができるが、必要があるというのではない。加えて、剤は同時に(例えば、5分未満内に、または1分未満内に)、あるいは相互に短い時間内に(例えば、1時間未満、30分未満、10分未満、ほぼ5分離れて)投与することができるが、必要なわけではない。
臨床的期間:本明細書中で使用される場合、用語「臨床的期間」とは、生物の神経系が、典型的には、外部環境刺激に少なくとも一部分は応答して、特異的機能的能力および/または構造的立体配置を特に獲得することができる生物の発生の間の期間をいう。臨床的期間における適当な刺激の不存在は、典型的には、これらの刺激が存在した場合には発達したであろう機能的能力および/または構造的立体配置を発達させない。臨床的期間のタイミングおよび持続は、受けた環境の刺激に依存し得る。例えば、ある環境的刺激の欠如は臨界的期間を延長する。
剥奪された条件:本明細書中で使用される場合、用語「剥奪された条件」とは、神経系の1つ以上の機能的または構造的特徴の正常な発達を可能とするのに必要な適切な環境刺激を供することができない環境をいう。剥奪条件に付される個体は、典型的には、「正常な条件」に付される個体よりも1つ以上のタイプのより少数のおよび/またはより低い強度または変化した刺激を受ける。実験室で育てた動物の場合には、「正常な条件」は、典型的には、そのような動物の維持で用いられる標準実験室的条件である。
有効量:本明細書中で使用される場合、活性剤の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘導するのに十分な活性剤の量をいう。当業者によって認められているように、有効である特定の剤の絶対量は、所望の生物学的エンドポイント、送達すべき剤、標的組織等のような因子に依存して変化することができる。当業者であれば、さらに、「有効量」は単一用量で投与することができるか、あるいは複数用量の投与によって達成することができるのを理解するであろう。所望の生物学的応答は、例えば、(i)シナプス結合、樹状突起、または軸索突起の機能的または構造的再組織化;(ii)シナプス結合、樹状突起、または軸索突起の、それらがそうでなければ悪化する条件下での維持;(iii)神経または軸索突起系の再生、またはそれがそうでなければ悪化するであろう条件下でのその維持;(iv)運動または感覚機能を必要とする仕事の性能の改良;(v)認識機能を必要とする仕事の性能の改良、例えば、学習および/または記憶を測定するテストでの改良された性能;(vi)運動、感覚、および/または認識機能の衰退の速度の遅延であり得る。
富化された条件:本明細書中で使用される場合、用語「富化された条件」とは、「正常な条件」に供された個体よりも多くの刺激および/または1つ以上のタイプのより強いまたは変化した刺激を供する環境をいう。
発現産物:本明細書中で使用される場合、用語「発現産物」または「遺伝子産物」とは、遺伝子から転写されたRNAまたは遺伝子から転写されたRNAから翻訳されたポリペプチドをいう。それらの転写または翻訳に従って変性されるRNAまたはポリペプチドは、それらをコードする遺伝子の発現産物と考えられる。変性は、例えば、スプライシング、切断、リン酸または脂肪酸基の付加等を含む。
局所送達:本明細書中で使用される場合、用語「局所送達」(または薬理学的剤の送達に言及される「局所投与」)とは、血管系を介する剤のその意図した標的組織への輸送に依拠しない送達をいい、例えば、剤は血管に直接的に投与されない。該剤は、例えば、針、カテーテルまたはカニューレを介する注射によって、あるいは該剤を含有する送達ビヒクルまたはデバイスの移植によって、意図した標的組織へ、またはそれに近接して直接的に送達される。もし剤が標的組織それ自体よりはむしろその標的組織の近隣に送達されるならば、該剤は拡散によってその標的組織に到達することができる。本発明の目的では、頭蓋骨または髄膜(脳および脊髄を被覆する膜)の外部の部位からの血管系を介する輸送を必要とすることのないCNSまたはその部分への剤の送達を達成するいずれの方法も、患者の局所送達を達成すると考えられる。具体的には、移植されたまたは外部ポンプの使用による送達、および/またはCNSの1つ以上の脳室への直接的送達が含まれる。一旦局所送達されたならば、剤の一部(典型的には、その微小な割合のみ)は部分的に血管系に侵入することができ、もう1つの部位へ輸送され得ると理解されるであろう。
機能:本明細書中で使用される場合、神経系またはその成分に言及する用語「機能」は、神経系またはその成分によって行われるいずれの機能、役割、仕事または活性もいうのに本明細書中において広く用いられる。該用語は、制限されるものではないが、情報を処理し、回収し、挙動を調節し、内因性化学物質の放出を刺激し、運動機能を制御し、感覚インプットを受け取り、処理し、意識を維持する能力を含む。
機能的回復:本明細書中で使用される場合、用語「機能的回復」とは、それが従前行った機能を実行する能力を少なくとも部分的に喪失した神経系またはその成分が、該機能を実行する能力を少なくとも部分的に再び得るプロセスをいう。機能的回復は少なくとも2つの異なる方法で起こり得る:(i)機能の回復は、機能を従前行った神経系の一部の部分的または完全な回復を含むことができ;(ii)機能の回復は、それが従前行われなかった機能を行う神経系の一部を含むことができる。もちろん、いくつかの例においては、双方のプロセスが起こり得る。機能的回復は、物理的改変、破壊、物理的または化学的傷または神経変性疾患が、またはそうでなければ、機能を実行する神経系またはその部分の能力の悪化または喪失に導くと予測される場合、神経系またはその成分が物理的に改変され、破壊され、またはそうでなければ物理的もしくは化学的障害または神経変性疾患に供された後に、それが従前に行った機能を行う神経系またはその部分の能力の維持もいうことができる。
機能的再組織化:神経系またはその部分に言及するにおいて用いられる用語「機能的再組織化」とは、神経系の一部が、神経系のその一部によって従前は行われていなかった機能(例えば、感覚、運動、または認識機能)を全体的にまたは部分的に採る、すなわち、受け継ぐプロセスをいう。該機能または作業は、必ずしもそれが必要とされるわけではないが、神経系の異なる部分によって以前行われたものであってもよい。機能的再組織化は、必ずしもそれが必要とされるわけではないが、構造的再組織化の1つ以上の態様を含むことができる。機能的再組織化は機能的再編成をいうこともできる。
機能的再組織化の例は、身体の一部に対するCNSアウトプットを制御するか、または身体の領域からのインプットを受け取り処理するための、損傷または壊死したCNS組織の領域に隣接する感覚または運動皮質の領域の能力である。ここで、このCNSアウトプットは、損傷または壊死した組織によって従前は制御されていたものであり、このCNSインプットは、損傷または壊死した組織によって従前は受け取られ、または処理されていたものである。別の例は、配置において損傷または壊死したCNS組織の領域に相当するが、脳の反対の半球に位置する感覚または運動皮質の領域の、身体の一部に対するCNSアウトプットを制御するか、または身体の領域からのインプットを受け取り処理するための能力である。ここで、このCNSアウトプットは、損傷または壊死した組織によって従前は制御されていたものであり、このCNSインプットは、損傷または壊死した組織によって従前は受け取られ、または処理されていたものである。もう1つの例は、後にさらに議論する、単眼除去に対する神経系の応答によって供される。
梗塞:本明細書中で使用される場合、用語「梗塞」とは、例えば、血管の閉塞により、不適切な血液供給から由来する局所的な組織壊死の領域をいう。壊死組織が脳組織である場合、梗塞は、脳梗塞または脳梗塞であり得る。
変調する:本明細書中で使用される場合、用語「変調する」は、時間的パターンの変動を改変する、例えば、増加させ、または増強し、減少または阻害し、または引き起こすことを意味する。「遺伝子を変調する」は、例えば、アゴニストまたはアンタゴニストを投与することによって、遺伝子のRNAまたはポリペプチド発現産物のレベルおよび/または活性を変調することを意味する。発現産物の「レベル」とは、細胞当たりの、または重量または容量で表した、分子の量、例えば、重量または容量濃度、数をいう。「経路を変調する」は、典型的には、経路の生物学的効果または結果の改変をもたらす、経路に関与する少なくとも1つの反応および/または遺伝子を変調することを意味する。「細胞を変調する」は、細胞の発生、生存および/または活性を増加させまたは増強し、または減少させまたは阻害することを意味する。
神経組織:本明細書中で使用される場合、用語「神経組織」とは、中枢神経系および/または末梢神経系の1つ以上の成分をいう。そのような成分は、束または管にて存在することができる脳組織および神経を含む。一般に、脳組織および神経は(典型的には、細胞本体、軸索、および樹状突起を含む)ニューロン、膠細胞(例えば、CNS中の神経膠星状細胞、稀突起神経膠細胞、および小膠細胞;PNS中のシュワン細胞)を含有する。脳組織および神経は典型的には、神経中の(PNS中の)基底ラミナ、神経内膜、神経周膜、および神経上膜のような種々の非細胞支持物質も含有することが認識されるであろう。神経芽細胞、内皮細胞、マクロファージ等のようなさらなる非神経細胞も典型的には存在する。種々の神経組織の構造のさらなる記載については、Schmidt and Leach,2003参照。
末梢神経系:本明細書中で使用される場合、用語「末梢神経系」(PNS)は、(視神経および嗅覚神経以外の)脳から生起する脳神経、脊髄から生起する脊髄神経、感覚神経細胞本体、およびそれらの突起、すなわち、CNSの外部の全ての神経組織を含む。PNSは、ニューロンの機能を助ける細胞を支持するニューロンのおよび神経膠細胞(ニューログリア)を共に含む。PNS内の神経膠細胞はシュワン細胞として知られており、軸索を囲うサヤを供することによって軸索を有髄化するように働く。本発明の種々の実施形態において、本明細書中に記載された方法および組成物はPNSの異なる部分に適用される。
可塑性:本明細書中で使用される場合、用語「可塑性」とは、一般に、環境的条件、損傷、経験、または持続する神経系の活性に応答して、その構造および/または機能を変化させる(例えば、再組織化する)神経系またはその部分の能力をいう。可塑性はニューロンまたは膠細胞の増殖、ニューロン突起の成長または運動、および/またはそれらの形状の変化を含むことができる。可塑性は、ニューロンの間の新しいシナプス結合の形成および/または存在するシナプス結合の強化または弱化を含むことができる。新しいシナプス結合の形成は、ニューロン突起の成長または運動を含むことができる。可塑性は、神経系の非−ニューロン成分、例えば、神経膠星状細胞または他の神経膠細胞の改変を含むこともできる。
可塑性改変剤:本明細書中で使用される場合、用語「可塑性改変剤」とは、単独で、あるいは1つ以上の他の物質または非薬理学的療法と組み合わせた対象へのその投与の結果、神経系の少なくとも一部の可塑性の検出可能な改変をもたらす物質をいう。改変は、剤の不存在下において観察されるであろう機能および/または構造と比較して、神経系の機能および/または構造の改変によって証明することができる。該剤は、可塑性を改変する神経系に対する臨床的に重要な効果を有し、単に栄養または食事目的のためには投与されない。該剤は可塑性を増加させ、減少させ、および/または遅延させることができる。
複数:本明細書中において、用語「複数」は、1を超えることを意味する。
ポリペプチド:本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」とは、アミノ酸のポリマーをいう。本明細書中で使用される場合、用語「蛋白質」とは、1つ以上のポリペプチドから構成される分子をいう。用語「蛋白質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は本明細書中においては相互交換可能に用いることができる。本明細書中に記載されたポリペプチドは、典型的には、天然アミノ酸のみを含有するが、当該分野で知られているように、非天然アミノ酸(すなわち、ポリペプチドにおいて天然には生じないが、ポリペプチド鎖に取り込むことができる化合物)および/またはアミノ酸アナログを使用することもできる。
蛋白質分解:本明細書中で使用される場合、用語「蛋白質分解」とは、典型的には、ペプチド結合の切断による、蛋白質のより小さなポリペプチドへの分解、または悪化をいう。究極的には、蛋白質分解の結果、蛋白質の個々のアミノ酸への分解がもたらされ得る。
蛋白質分解増強剤:本明細書中に用いるように、用語「蛋白質分解増強剤」とは、1つ以上の蛋白質の蛋白質分解を増加させ、それに寄与し、またはそれを引き起こし、あるいは蛋白質分解の阻害剤を阻害する物質、例えば、プロテアーゼをいう。
精製された:本明細書中で使用される場合、用語「精製された」は、多くの他の化合物または存在物から分離された、を意味する。化合物または存在物は、それが(溶媒、イオン等以外の)実質的に全ての他の化合物または存在物から除去された場合にそれが純粋であれば、すなわち、それが好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99%を超えて純粋であれば、部分的に精製され、実質的に精製され、または純粋であり得る。部分的にまたは実質的に精製された化合物または存在は、それがそれと共に天然で見出される物質、例えば、細胞蛋白質および/または核酸のような細胞物質の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、または少なくとも80%から除去することができる。好ましい実施形態において、精製された蛋白質は、精製された蛋白質が乾燥w/wベースで調製物中の物質の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%を構成するように、調製物中の他の蛋白質の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも99%以上から除去される。
回復:本明細書中で使用される場合、用語「回復」とは、構造的および/または機能的回復をいう。
再組織化:本明細書中で使用される場合、用語「再組織化」とは、構造的および/または機能的再組織化をいう。
RNAi剤:本明細書中で使用される場合、用語「RNAi剤」とは、RNAi干渉メカニズムによって遺伝子発現を阻害する核酸をいう。その例は短い干渉性RNA(siRNA)、短いヘアピンRNA(shRNA)、ミクロRNA(miRNA)、および例えば、多数の、二本鎖RNAを切断するDICERのようなヌクレアーゼのRNase IIIファミリーによって細胞内で処理されて、siRNA、shRNA、またはmiRNAを生じる核酸を含む。RNAi剤は、もし化学合成を用いて生産されたならば、ホスホジエステル結合によって連結されたリボヌクレオチドに加えて、またはその代わりに、1つ以上のデオキシリボヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ、変性された骨格構造等を含むことができる。
連続投与:本明細書中で使用される場合、2つ以上の剤の「連続投与」とは、該剤が僅少な濃度よりも多くは対象身体中で一緒に存在しないような、対象への2つ以上の剤の投与をいう。かくして、該剤が、各々が、別々の生物学的効果を有するのに十分な濃度にて対象の身体中で一緒には存在しない。特定の実施形態において、第一の剤は対象に投与される。第二の剤は、後の時間に投与され、その時点で、第一の剤の濃度はCNSまたはPNSにおけるそのピーク濃度の1%未満、5%未満、または10%未満まで減少している。該剤の投与は、必要ではないが、代替物であってよい。各剤は複数回投与してもよい。
低分子:本明細書中で使用される場合、用語「低分子」とは、天然に生じるかまたは(例えば、化学合成を介して)人工的に作製されたかに関わらず、比較的低い分子量を有し、かつ蛋白質、ポリペプチドまたは核酸ではない有機化合物をいう。典型的には、低分子は約1500g/モル未満の分子量を有する。また、低分子は、典型的には、複数の炭素−炭素結合を有する。
棘ダイナミックス:本明細書中で使用される場合、用語「棘ダイナミックス」とは、経時的な棘の種々の特性のいずれかの変化をいう。該特性は棘の形状、サイズ、数、密度および運動性を含む。棘ダイナミックスは、個々の棘に関して、あるいは複数の(すなわち、1を超える)棘に関して調べることができる。
棘の運動性:本明細書中で使用される場合、用語「棘の運動性」とは、経時的な棘長さの変化をいう。複数の棘に関して調べる場合、棘運動性とは、経時的な棘の長さの平均的変化をいう。
構造的回復:神経系またはその部分に言及するのに用いられる用語「構造的回復」とは、酸素および/または栄養素の剥奪を含めることを意図する、物理的に改変された、破壊された、またはそうでなければ物理的または化学的傷害に供された構造の部分的または完全な回復をいう。「構造的回復」とは、当該物理的改変、破壊、物理的または化学的傷が、そうでなければ、正常な構造的特徴における悪化および/または喪失または改変に導くと予測される場合、物理的に改変された、破壊された、またはそうでなければ物理的または化学的傷に供された構造の保持もいうことができる。該構造は、例えば、シナプス結合、神経、神経束、神経管、核、脳領域、脳領域の間の結合等であり得る。
構造的再組織化:神経系またはその部分に言及するのに用いられる用語「構造的再組織化」とは、2つ以上のニューロンの間の、あるいは1つ以上のニューロンおよび1つ以上の神経膠細胞(例えば、神経膠星状細胞、稀突起神経膠細胞、小膠細胞、シュワン細胞)の間の結合のパターンの変化、あるいは相互に対する、2つ以上のニューロンまたは神経膠細胞ボディまたは細胞突起(軸索、樹状突起、樹状突起棘)の位置における改変をいう。該改変は、該期間の開始において相互に接合していなかったニューロンの間のシナプスの形成を含むことができる。該改変は、該期間の開始において少なくとも1つのシナプス接合を有したニューロンの間のさらなるシナプスの形成を含むことができる。該改変は、該期間の開始において存在したシナプスの喪失をやはり、あるいは含むことができる。再組織化は、軸索のような神経突起(例えば、軸索発芽または再生)、樹状突起、または樹状突起棘の成長または収縮、ニューロンまたは神経膠の移動、および/またはニューロンまたは神経膠細胞分裂を含むことができる。構造的な再組織化は構造的再編成ということもできる。
対象:本明細書中で使用される場合、用語「対象」または「個体」とは、例えば、実験、診断および/または治療目的のために剤が送達されるべき個体、および/または可塑性を改変する疾患に従う個体をいう。好ましい対象は哺乳動物、特に家畜動物(例えば、イヌ、ネコ等)、霊長類またはヒトである。
シナプス:本明細書中で使用される場合、用語「シナプス」とは、「そこで、シグナルが高い空間的精度およびスピードでもって1つの細胞からもう1つの細胞へ伝播する、ニューロンの間の、またはニューロンおよび他の興奮性細胞との間の特殊化された細胞間接合」をいう(De Camilli,in Cowan,上述)。それらは、哺乳動物の神経系における細胞間通信の主な部位である。一般に、シナプスの基本的構造は、シナプス接合を形成するための、シナプス前およびシナプス後ニューロンといわれる、2つのニューロンの原形質膜の特殊化された領域の密接した並列よりなる。シナプス前ニューロンは、シグナルを伝達する神経細胞であり、他方、シナプス後ニューロンはシグナルの受容体である。脊椎動物神経系におけるほとんどのニューロンは、細胞体および2つのタイプの細胞突起、軸索および樹状突起を保有する。シグナル、すなわち、活動電位は軸索によって開始され、伝達され、他方、樹状突起(および細胞体)も、他のニューロンからシナプス接触を介してインプットを受け取る。
治療:本明細書中で使用される場合、用語「治療」とは、一般に、対象が罹った病気、障害、または疾患に関する対象の状態の改善を実現する、および/または対象の状態のさらなる悪化を低下させ、遅延させる目的での患者の医学的および/または外科的管理をいう。治療には、そのような用語が適用される病気、障害または疾患の進行の逆行、緩和および/または阻害、および/またはそのような病気、障害または疾患の1つ以上の兆候または発現の進行の逆行、緩和、阻害を含むことができる。
本発明の特定の実施形態の詳細な記載
可塑性に関与する遺伝子、生物学的経路および細胞を同定する方法
本発明は、個体の神経系における可塑性を改変するために変調することができる分子標的(例えば、遺伝子およびその発現産物)を同定するための方法を提供する。該遺伝子は、可塑性を変調する条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される。たとえば、特定の実施形態において、本発明の方法は、遺伝子を同定する。ここで、この遺伝子の発現産物のレベルおよび/または活性は、患者が可塑性を変調することが知られている条件に供されていないか、または別の条件に供された場合の、その患者の神経系の少なくとも一部における発現または活性に対して、患者が可塑性を変調することが知られている条件に供された場合のその患者のその部分において異なる。いくつかの実施形態において、本発明の方法は遺伝子を同定し、該遺伝子の発現産物のレベルおよび/または活性は、可塑性を変調する条件に供されたことがない神経系の部分におけるその発現または活性に対して、可塑性を変調する条件に供されたことがある神経系の部分において異なる(例えば、対象の反対側の脳半球の対応する位置に局所化された部分)。神経系の部分は、神経系のいずれかの機能的にまたは構造的に規定された部分、エリア、領域、単位、または成分であってよい。神経系の部分は皮質、小脳、視床、視床下部、海馬、扁桃、脳幹神経節(尾状核、実および淡蒼球)、中脳、橋、髄質、神経管等、および前記のもののいずれかのサブ部分を含む。例えば、皮質のサブ領域は視覚野、聴覚野、体性感覚皮質、内嗅皮質、嗅覚野、ブローカ野、ウェルニッケ野等を含む。これらの領域は、それ自体、より小さなサブ領域から構成され得る。例えば、霊長類の皮質はブロードマン野1〜49および59に分けられており、そのいくつかは、細胞構築区別に基づいてサブ領域を含む。霊長類視覚野の重要な領域はV1、V2、V3、V4、およびMT(V5ともいう)という。神経系の部分は、6つの主な皮質層(I−VI)、およびそれらのサブ層を含む。神経系の部分は、皮質柱も含み、これは、皮質の表面から、機能的および/または解剖学的単位を含む白色物質まで垂直に配列した細胞のコレクションをいう用語である。かくして、皮質柱は、解剖学的特徴(例えば、ピラミッド細胞先端樹状突起束の紋切り型パターン)、機能的特徴(例えば、全てが同一の刺激の向きに応答する皮質細胞の柱)またはその双方に基づいて定義することができる。皮質柱は目の支配、向き、空間的頻度、および色柱を含む。特定の実施形態において、神経系の一部は1つ以上のタイプの細胞、例えば、1つ以上のニューロン細胞型を含む。細胞は興奮性または阻害性であってよい。神経系で見出される例示的な細胞型はピラミッド細胞、星型細胞、介在ニューロン(例えば、シャンデリア細胞、神経膠形態細胞、かご細胞、二重かご細胞、プルキニエ細胞、顆粒細胞、カハル−レトジウス細胞、マイネルト細胞等)を含む。
本発明の方法を本明細書に適用して、単眼除去または暗所飼育下(双方とも、可塑性を改変することが知られている条件である)で視覚野において特異的に調節される遺伝子を同定する。本発明はそのような遺伝子において富化された生物学的経路を同定する。
本発明は、(i)個体を、可塑性を変調する条件に供し;(ii)個体の神経系の少なくとも一部における複数の遺伝子の各々のレベルまたは活性を測定し;および、(iii)その発現または活性が、別の条件下でのその発現または活性に対して個体の神経系の一部で特異的に調節される1つ以上の遺伝子を同定する工程を含む、可塑性に関与する遺伝子(本明細書中では、「可塑性関連遺伝子」という)を同定する方法を提供する。条件は、個体が通常に経験するであろう1つ以上の環境的刺激を欠如する環境条件であってよい。条件は、個体が通常経験しないであろう1つ以上の環境刺激を含むことができる。代替条件は、通常の環境条件、例えば、標準実験室条件であってよい。動物を維持するのに適した条件は、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals,Institute for Laboratory Animal Research(ILAR)Commission on Life Sciences,National Research Council,National Academies Press,Washington,D.C.(1996)に議論されている。ある範囲の状態は「正常」と考えることができるが、一般には、典型的には、これまでの文献に記載されたように維持された動物によって受け取られるであろう神経系インプットを奪い、または補う具体的努力を含まないことが認識されるであろう。
本発明の方法は、可塑性関連遺伝子の1つ以上を含む1つ以上の生物学的プロセスまたは経路を同定することを含むことができる。生物学的プロセス経路は、該方法によって同定された遺伝子について富化され得る。例えば、生物学的プロセスまたは経路は、プロセスまたは経路における遺伝子の数、およびその特定の種の個体における既知の遺伝子の数に基づいて予測されるであろうよりも該方法によって同定されたより高い割合の遺伝子を含むことができる。言い換えれば、特異的に調節されるとして同定された遺伝子は、生物学的プロセスまたは経路における遺伝子内で過剰に表現される。さらなる詳細については実施例を参照のこと。
本発明の特定の実施形態において、個体は、1つ以上の神経系の構造、機能または特性の発達のための臨界的期間の少なくとも一部の間に、個体を条件に供する。それに対して臨界的期間が1つ以上の種においてよく記載されている神経系の構造、機能または特性は、目の支配、向きの偏り、神経筋接合の発達、登上線維、改良、ウィスカーバレルマップ形成、ウィスカーRFチューニング、皮質緊張向性マップ、音局所化、鳥の鳴き声、およびヒトの言語を含む。該条件は、これらの構造、機能または特性のいずれかの確立で必要な正常なインプットを個体から奪うことを含む。臨界的期間のタイミング、および具体的環境条件の効果は当該分野でよく知られている(例えば、Hensch,2004,Annu.Rev.Neurosci.,27:549参照)。
本発明の特定の実施形態において、条件は、所望により、視覚野の発達のための臨界的期間の間に、対象を視覚インプットの改変に供することを含む。誕生後発達の間における視覚インプットの改変は、視覚野回路の成熟の適合性変化を引き起こす。活性依存性の可塑性に関与する遺伝子、生物学的経路、および細胞を同定するのに用いる1つの方法は、発達の臨界的期間の間に視覚的経験を改変することである。視覚系の発達のためのそのような臨界的期間のタイミングは当該分野で知られている。視覚的経験を改変する1つの例は、誕生から完全な暗さにおいて動物を生起させることである(暗所飼育)。暗所飼育(DR)は視覚野に対する多様な効果を有し、ニューロンのサブセットにおける小型シナプス電位のアップレギュレーション、そのままである棘の領域の増加を伴う棘数の低下、シナプス増強および抑制を誘導するための閾値の変化7,8、および視覚的機能の経験依存性変化を誘導するための臨界的期間の延長を引き起こす。
視覚野ニューロンおよびネットワークに対する活性の影響を研究するのに、および可塑性に関与する遺伝子、生物学的経路、および細胞を同定するのに用いる操作の1つの例は単眼除去(MD)である。両眼視を持つ動物においては、視覚野の部分へのインプットは、2つの目からのインプットの交互縞へ、解剖学的におよび機能的に分離されるようになる(目支配柱といわれる)。結果として、両眼に対して元来反応性であった個々の皮質ニューロンは1つの目のみに対して反応性となる。しかしながら、もし1つの目が臨界的期間の間に視覚インプットが奪われれば(単眼除去)、その目は、皮質を活性化させるその能力、および奪われていない目に向けての細胞シフトの応答、すなわち、奪われていない目に好都合な眼の優位(OD)シフトのほとんどを失う。機能的欠乏の迅速な出現、続いて、数週間〜数ヶ月のタイムスケジュールで起こる、奪われた目によって駆動される皮質領域の低下、および奪われていない目によって駆動される病気の拡大を含めた構造的変化が起こる。奪われた目からの視床皮質の軸索の軸の程度および複雑性は低下し、他方、奪われていない目からの軸の程度および複雑性は増大する。臨界的期間の間において1つの目の瞼を縫合することによって達成することができるMDは、開けた目に応答する皮質のV1領域の両眼部分におけるニューロンの割合の増加を引き起こす13。短期間MDは、機能的および構造的双方での皮質内接合の再組織化を引き起こし14−17、他方、長期MDは、奪われた目からの視床皮質軸の低下、および奪われていない目からの軸の拡大に導く18,19
個体は、臨界的期間の全てまたは一部の間(例えば、合計臨界的時間の10%と100%の間)、条件に供することができる。個体は、条件に間欠的にまたは連続的に供することができる。本発明の特定の実施形態においては、臨界的期間は、例えば、24時間〜1年の長さ、例えば、24時間〜60日の長さである。臨界的期間は、考慮する特定の神経系の構造、機能または特性に依存して、誕生後、あるいは誕生に先立ってさえいずれの時点においても開始することができ、いずれかの後の時点で止めることができる。
いずれかの適当な方法を用いて、特異的に調節された遺伝子を同定することができる。一般に、該方法は、神経系の少なくとも一部において可塑性を変調する状態(例えば、インプットの低下、インプットの増加)に供されたことがある対象から神経系の試料(例えば、皮質、海馬等のような脳の一部からの組織の試料)を得ることを含む。複数の遺伝子産物の各々のレベルおよび/または活性を試料において測定し、別の条件下で存在するであろうレベルおよび/または活性と比較する。該方法は、上記条件に供されたことがない異なる対象から神経系組織の試料を得ること、または同一対象の、しかしながら条件に供されたことがない神経系の一部からの神経系組織の試料を得ることを含むことができる。2つの試料におけるレベルおよび/または活性を、2つの試料で行った実験において比較することができる。別法として、あるいは加えて、発現レベルおよび/または活性についての従前に集められたデータとの比較を用いることができる。
遺伝子産物のレベルを決定する方法は当該分野でよく知られており、いずれかの適当な方法を用いることができる。例えば、もし遺伝子産物がRNAであるならば、cDNAまたはオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、減算ハイブリダイゼーション、ノーザンブロッド、定量的逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT−PCR)等を用いて測定することができる。もし遺伝子産物がポリペプチドであれば、そのレベルは、免疫組織化学、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウエスタンブロット、蛋白質アレイ技術(例えば、抗体アレイ、または他の特異的結合剤を用いるアレイ)のような種々の免疫学的ベースの方法を用いて測定することができる。
遺伝子産物の活性は、典型的には、その活性が測定される特異的遺伝子産物に依存する種々の方法で測定することもできる。例えば、もし遺伝子産物がキナーゼまたはホスファターゼであるならば、内因性基質がリン酸化される程度は、遺伝子産物の活性の表示を提供する。基質は、その中でそれが発現される細胞から単離され、およびそのリン酸化状態が評価される。別法として、または加えて、イン・ビトロキナーゼまたはホスファターゼアッセイを行うことができる。もし遺伝子産物が転写因子であれば、転写因子に対して応答性であるDNAエレメントを含有するレポーター構築体の発現を測定することを含むアッセイを用いることができる。ある種のポリペプチドの活性は、1つ以上の細胞構造または分子での、翻訳後変性、局所化、および/または物理的会合(典型的には、非共有結合)によって調節される。例えば、ある種のポリペプチドはリン酸化によって活性化または不活化される。活性は、結合アッセイ、特定の細胞内構造または分子との細胞下局所化または会合を決定するアッセイ、変性状態、電気泳動、質量分析等を決定するアッセイを用いて評価することができる。当業者であれば、遺伝子産物の活性を測定し、それを比較するための適当な方法を選択することができるであろう。
本発明の特定の実施形態において、高度に平行した方法が用いられる。「高度に平行した」とは、該方法が、実質的に同時に、かつ/または単一の実験において、少なくとも10の遺伝子産物のレベルまたは活性を決定することを意味する。その例はマイクロアレイ分析および蛋白質アレイ分析を含み、そこでは、アレイは少なくとも10の特徴を含む(例えば、オリゴヌクレオチドまたは抗体のような少なくとも10の特異的結合剤がアレイに付着される)。本発明の特定の実施形態において、高度に平行な方法は、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10,000、または少なくとも100,000遺伝子産物のレベルまたは活性を実質的に同時に、および/または対立の実験で決定する。
前述の方法を用いて同定された、または同定されるであろう遺伝子の多くは1つ以上の生物学的プロセスまたは経路の成分である。そのような生物学的プロセスまたは経路は、種々の方法を用いて同定することができる。当業者であれば、文献を検索することによって、あるいは容易に入手可能な生物学的情報源を用いることによって、遺伝子のいくつかが役割を演じている、あるいはそのようなプロセスおよび経路を同定することができるプロセスおよび経路に精通しているであろう。
特別な用途の1つの生物学的情報源は、Gene Ontologyプロジェクトである(www.geneontology.org)。該Gene Ontology(GO)は、均一な用語を用いて遺伝子産物およびそれらの関連する生物学的プロセスおよび細胞構成要素を記載する3つの構造的に制御された語彙(存在論)のリストを提供する。特に、Gene Ontologyデータベースは、その遺伝子産物は構成要素である生物学的プロセスの識別子と共に遺伝子産物の識別子(例えば、遺伝子の名称)を注釈し(それにより、関連付ける)。かくして、該Gene Ontologyデータベースを用いて、特定の生物学的プロセスを行う遺伝子産物を同定し、および/または目的とするいずれかの遺伝子産物が役割を果たす生物学的プロセスを同定することができる。該Gene Ontologyデータベースは、本明細書中においては、可塑性改変条件に供された個体の神経系において特異的に調節される遺伝子を含む生物学的プロセスおよび経路の同定を例示するのに用いられ、および生化学的種の識別子を、生物学的プロセスおよび/または経路に関連付ける情報の同様な編集を、Gene Ontologyデータベースの代わりに、またはそれに加えて用いることができよう。例えば、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)は同様な施設を幾分提供する。生物学的情報に対して便宜な統一されたアクセスを供する多数のさらなるコンピュータ−ベースの源が、World Wide Webで利用可能である。
特定の実施形態において、その成分(例えば、遺伝子)が可塑性関連遺伝子の中でもとりわけ過剰発現される生物学的プロセスまたは経路は、可塑性を改変するのに関与するらしいと同定され、すなわち、それらは可塑性関連プロセスまたは経路として同定される。生物学的プロセスの構成要素である遺伝子(または他の生化学的種)は、もしその生物学的プロセスに関連する可塑性関連遺伝子の数が、同定された可塑性関連遺伝子の数、および生物学的プロセスまたは経路の構成要素である遺伝子の数に基づいてその生物学的プロセスに関連すると予測される可塑性関連遺伝子の数よりも大きいならば、可塑性関連遺伝子の中で過剰発現されている。可塑性関連プロセスまたは経路であると同定された生物学的プロセスまたは経路の構成要素である遺伝子は、もしそれらが、それ自体、可塑性改変条件下で特異的に調節されるとしても、候補可塑性関連遺伝子である。例えば、その発現が可塑性改変条件下で特異的に調節される第二のポリペプチドに対するリガンド、受容体、皮質、または結合パートナーとして作用する第一のポリペプチドは、その第一のポリペプチドが構成要素であり、第一のポリペプチドの変調の代わりに、またはそれに加えて変調できる生物学的経路の構成要素であってよい。
本発明の特定の実施形態において、一旦、前述の方法を用いて、遺伝子、経路、またはプロセスが同定されたならば、神経系の構造、機能、または特性におけるその役割は、種々のアプローチのいずれかを用いてより正確に見積られる。これらのアプローチのあるものは、治療目的で可塑性を変調するのに、例えば、回復または再組織化を必要とする対象において神経系の回復または再組織化を改良するのにも有用である。例えば、遺伝子、経路、またはプロセスを変調する剤は個体に投与することができ、神経系に対する該剤の効果が決定される。該個体は、剥奪条件または富化条件のような可塑性改変条件に供されてもよいし、供されなくてもよい。該剤は、個体が条件に供される期間の全てまたは一部の間に投与することができる。特定の実施形態において、遺伝子の時間的におよび/または空間的に改変された発現を有する(例えば、遺伝子の発現を欠如し、または低下させた、あるいは遺伝子の上昇したまたは異所性発現を有する)トランスジェニック非ヒト動物(例えば、マウスまたはラット)を分析して、該動物が、遺伝子の発現が改変されていない動物(例えば、「野生型」動物)に対して、改変された神経系の構造または機能および/または改変された可塑性を有するか否かを決定する。トランスジェニック動物は、当該分野で知られた標準的な方法を用いて作出することができ、これは、本発明の態様である。特定の実施形態において、可塑性改変条件に供された個体において特異的に調節される遺伝子、経路、またはプロセスを変調する遺伝子は非ヒト動物に投与される。動物は、神経系を損なうか組成変性条件または事象に供されなくてもよい。該動物は、該剤が投与されない動物に対して改変された可塑性を呈する。該動物は、可塑性を改変し、および/または神経系の再組織化または回復を促進するのに有用なさらなる剤についてスクリーニングするためのモデルとして用いられる。
本発明の特定の実施形態において、可塑性関連生物学的プロセスまたは記得色の構成要素である遺伝子を変調する剤が投与される。該遺伝子それ自体は、可塑性改変条件下で特異的に調節してもしなくてもよい。いくつかの場合において、特定の遺伝子、または経路を変調する剤は当業者に知られているであろう。いずれのそのような剤を用いることもできる。本発明の特定の実施形態において、siRNAまたはshRNAのようなRNAi剤を用いて、例えば、遺伝子から転写されたmRNAの分解を誘発することによって、遺伝子の発現を阻害する。RNA−媒介干渉(RNAi)は、最近、哺乳動物細胞におけるいずれかの標的転写体の発現を低下させるための強力な方法として出現した(例えば、Elbashir,2001;Brummelkamp,2002;McManus&Sharp,2002;および米国特許公開2005/0026278、2004/0259248、および2003/0108923参照)。簡単に述べれば、その1つのストランドが約17〜29ヌクレオチドの長さにわたって細胞に存在する転写体(標的転写体)に対して実質的に相補的である、短干渉性RNA(siRNA)という短い二本鎖RNA分子の細胞内での存在の結果、標的転写体の発現の阻害がもたらされる。メカニズムは、典型的には、(翻訳阻害も起こり得るが)RNAを切断する細胞内マシーナリーによる転写体の分解を含む。短いヘアピンRNAは、(RNAの2つの相補性部分の自己−ハイブリダイゼーションによって形成された)ステムを含む一本鎖RNA分子である。ステムループ構造は細胞内でsiRNAに加工することができる。いくつかの実施形態において、特異的結合特性を持つ抗体、アプタマーまたは他の分子を用いて、ポリペプチドの活性を変調する。いくつかの実施形態において、リガンド(例えば、アゴニストまたはアンタゴニスト)を用いて受容体の活性を変調する。本発明の特定の実施形態において、該剤は、許容できない副作用を生じない濃度にて神経系外部の配置において対象に(例えば、経口、静脈内、腹腔内)投与した場合に、CNSにおいて有効な濃度を達成するにように血液脳関門を横切ることができるものである。
特定の実施形態において、ポリペプチドをコードするmRNA転写体に対して相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはmRNA転写体を切断するリボザイムを用いて、発現を減少させる。アンチセンスオリゴヌクレオチド、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの細胞内合成のための鋳型を供するベクター、あるいは該オリゴヌクレオチドを合成する細胞を投与することができる。アンチセンス技術およびその適用は当該分野でよく知られており、Phillips,M.I.(ed.)“Antisense Technology,”Methods Enzymol.,Vol.313 and 314,Academic Press,San Diego,2000、およびその中で言及されている文献に記載されている。また、Crooke,S.(ed.)“Antisense Drug Technology:Principles,Strategies,and Applications”(1sted),Marcel Dekker,ISBN:0824705661,1st edition(2001)、およびその中の文献も参照。
いくつかの実施形態において、ポリペプチドに結合し、その活性を阻害するアプタマーを用いる。アプタマーは、特定の蛋白質に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、種々の変性されたヌクレオチド、例えば、2’−O−メチル変性ヌクレオチドを含むことができるDNA,RNA)である。アプタマーは、典型的には、イン・ビトロ進化プロセス(SELEX)から由来し、目的とする蛋白質に特異的なアプタマーを得る方法は当該分野で公知である(例えば、Brody,2000参照)。
リボザイムおよびデオキシリボザイムは、分子のヌクレオチド配列によって特定される触媒的に活性な構造に折畳むことによって酵素として作用することができるRNAおよびDNA分子である。そのような分子は、RNA分子の配列特異的切断を触媒することが示されている。切断部位は、標的RNAにおけるヌクレオチドとRNAまたはDNA酵素におけるヌクレオチドとの相補的対合によって決定される。かくして、RNAおよびDNA酵素は、いずれかのRNA分子に切断し、それにより、その分解速度を増大させるように設計することができる(Cotten and Birnstiel,1989;Usman,1996;およびSun,2000)。
siRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アプタマー、リボザイム等のような合成核酸は、RNA、DNA、ヌクレオシドアナログを含むことができ、および/または変性された糖、または変性された骨格構造を含むことができるのは認識されるだろう。
本発明の方法を用いて同定された遺伝子、経路、またはプロセスの発現または活性は、神経系の構造、機能または特性を変性する目的で前述のように変調することができる。これらのアプローチが、治療目的で可塑性を変調するのに、例えば、神経系の回復または再編成を必要とする対象において神経系の回復または再組織化を改良するのに用いられる。
本発明は、神経系に存在する特定の細胞型を変調することによって可塑性を変調するための方法を提供する。神経系に存在する細胞は、(本明細書中においては、「マーカー」という)分子またはその部分、または2つ以上の分子またはその部分の組の発現のそのレベルに基づいて多数の異なる細胞型に分類されている。該分子またはその部分は、例えば、(本明細書中においては、「マーカー」という)特定の遺伝子産物、資質、ポリペプチドまたは資質の炭水化物変性等であってよい。マーカーは、細胞型に特徴的であるといわれる。細胞は、種々の程度の特異性を持つタイプに分類することができる。例えば、細胞タイプは介在ニューロンであってよく、あるいは介在ニューロンの特定のタイプであるとしてより具体的に分類してもよい。ある細胞タイプは、単一マーカーのその発現に基づいて同定することができる。他の細胞タイプは、(マーカーの「組」という)2つ以上のマーカーのそれらの発現に基づいて同定することができ、この場合、各マーカーは、特異的細胞型を同定するように働くマーカーの特定の組にて1を超える細胞型で発現され得る。いくつかの場合において、細胞は、マーカーが(バックグラウンドを超える)有意なレベルで細胞中に、またはその表面に検出可能に存在するか否かに基づいて同定される。いくつかの場合において、細胞は、マーカーが、それが他のタイプの細胞に存在するレベルに対して細胞において存在するレベルに基づいて特定のタイプであると同定される。マーカーは、分子およびその部分を含み、該分子またはその部分の不存在を部分的に用いて、細胞を異なるタイプに分類することができる。マーカーまたはマーカーの特定の組の発現は、形態(例えば、ニューロン突起の分岐パターン)、配置、および/または電気物理学的特性のような種々のパラメーターに相関させることができる。
本発明は、可塑性改変条件下で特異的に調節される遺伝子の同定に基づいて可塑性を変調するように変調の標的として細胞タイプを選択する方法を提供する。細胞タイプの細胞は、可塑性の1つ以上の態様の調節に関与する。細胞タイプの細胞は、臨界的期間を維持し、または停止させるのに役割を果たすことができる。それらは、インプット、例えば、環境刺激の結果として生起する神経インパルスに応答する他の細胞の能力を変調するにおいて役割を果たすことができる。それらは、ニューロンの間の新しいシナプス結合の形成を変調することができ、および/または存在するシナプス結合の強化または弱化を調節することができる。本発明は、(i)可塑性を変調する条件に個体を供し;(ii)個体の神経系の少なくとも一部における複数の遺伝子の各々のレベルまたは活性を測定し;(iii)その発現または活性が、別の条件下でのその発現または活性に対して個体の神経系の一部において特異的に調節される1つ以上の遺伝子を同定し;および、(iv)細胞タイプを変調についての標的として選択する工程を含み、該遺伝子の少なくとも1つの産物が細胞タイプのマーカーであることを特徴とする、細胞タイプを変調についての標的として選択する方法を提供する。「産物」とは、本明細書中においては、遺伝子の発現産物、あるいは遺伝子の発現の結果として、細胞中に、またはその表面において存在する分子または分子変性をいう。例えば、もし遺伝子がキナーゼをコードするならば、「産物」は、キナーゼの基質のリン酸化形態であってよい。本発明の特定の実施形態において、細胞タイプは特異的に調節された遺伝子の少なくとも2つを発現し、あるいは異なって調節される遺伝子の少なくとも1つを発現し、かつ特異的に調節される遺伝子の少なくとも1つを有意に発現しない。該方法は、細胞タイプの細胞の数が、可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において改変されたことを決定することを含むことができる。例えば、免疫組織化学またはイン・ビボイメージングを用いて、細胞の数を見積ることができる。
マーカーは、神経系に存在する細胞を異なる細胞タイプに分類するのに有用なものとして当該分野で認められたいずれのマーカーであってもよい。本発明の特定の実施形態において、マーカーはカルシウム結合蛋白質である。カルビンジン、パルブアルブミン、およびカルレテニンのような種々のカルシウム結合蛋白質(CBP)は、異なるタイプの介在ニューロンのマーカーであると当該分野で認識されている(Markram et al.,2004,Nat.Rev.Neurosci.,5:793;およびFlames et al.,2005,Neuron,46:377)。マーカーは、ソマトスタチン、血管活性腸ペプチド、神経ペプチドY、またはコレシストキニンのような神経ペプチドであってよい。これらの神経ペプチドは、異なるタイプの介在ニューロンのマーカーであると当該分野で認識されている(Markram,2004;およびFlames and Marin,2005)。ある種の細胞タイプは、1つ以上のCBPおよび1つ以上の神経ペプチドのそれらの発現に基づいて同定される。
例示的な実施形態において、実施例に記載されたように、本発明の方法を適用して、パルブアルブミン(PV)をコードする遺伝子を、DRの条件下で視覚野においてダウンレギュレートされる(過少発現される)ものとして同定し、その条件は臨界的期間に関連する可塑性の状態を延長する。本発明は、さらに、DRの条件下で視覚野において数が減少するとしてPV発現介在ニューロンを同定する。かくして、本発明の特定の実施形態において、変調についての標的として選択された細胞タイプはPV−発現介在ニューロンであり、すなわち、パルブアルブミンは変調についても標的として選択された細胞タイプのマーカーである。皮質において、PVを発現する開示ニューロンは、γ−アミノ酪酸(GABA)をそれらの神経伝達物質として利用し、形態学的にかご細胞およびシャンデリア細胞として分類される(Markram,2004)。
本発明は、前述の方法のいずれかに関連する情報を貯蔵するコンピュータ−読み出し可能媒体(例えば、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、ジップディスク、フラッシュメモリー、磁性メモリー等)を含む。情報は、データベース、すなわち、その内容を容易にアクセスし、管理し、更新することができるように組織化されたデータのコレクションであってよい。情報は、所望により、剤が、個体が可塑性改変条件に供される期間の間に、またはその後に個体に投与される条件下で、可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される1つ以上の遺伝子を同定することができる。遺伝子は、名称によって、配列によって、アクセション番号によって同定することができる。発現および/または活性についての情報は、遺伝子それ自体および/またはそれらの発現産物(RNAまたは蛋白質)のいずれかに関するものであってよいことは認識されるであろう。該情報は、特異的調節が観察された条件の性質を含み、その発現が可塑性改変剤などによって改変される遺伝子を同定することができる。遺伝子は、例えば、それらの特異的調節の重要性に従ってランク付けするために列挙することができる。そのような情報の例示的なコレクションを表4〜11に掲げる。コンピュータ−読取り可能媒体は、特異的に調節されない遺伝子を同定する情報を貯蔵することができ、但し、それらは特異的に調節される遺伝子に関する情報を含み、それらの遺伝子が、神経系の構造、機能、回復または再組織化などに対する可塑性に関連するもことを同定する者とする。遺伝子、および/または可塑性あるいは神経系の回復または再組織化におけるそれらの役割に関するさらなる情報、例えば、(i)遺伝子が特異的に調節される程度、および/またはその重要性に関する定量的情報;(ii)1つ以上の遺伝子において富化された生物学的経路またはプロセスを同定する情報;(iii)対象への、1つ以上の遺伝子の発現または活性を変調する剤を投与することによって得られた結果、などを含めることができる。また、本発明は、前述の情報のいずれかを電子的に送り、または受け取り、所望により、情報の少なくとも一部を貯蔵し、および/または情報の少なくとも一部を含有する新しいコンピュータ−読取可能媒体またはコピーを作製する工程を含む方法を含む。
可塑性を変調し、神経系の再生および回復を促進するための組成物および方法
本発明は、部分的には、可塑性を変調する特別な環境条件、すなわち、暗所飼育および単眼除去に応答して、特異的に調節される遺伝子の同定に基づく。本発明は、部分的には、これらの特異的に調節された遺伝子の1つ以上について富化され、従って、本明細書中においては、特異的に調節された経路であると考えられる生物学的プロセスおよび経路の同定に基づく。いくつかの実施形態において、本発明は、DRおよび/またはMDに応答して特異的に調節されるある種の遺伝子の発現産物が可塑性に関与するという認識を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、これらの遺伝子のあるものが、神経系損傷に続いて構造的および/または機能的神経系再組織化に関与するものと考えられ、治療的利益を達成するように操作することができるという認識を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、ある種のこれらの発現産物、およびそれらの発現および/または活性を変調する剤は、神経系の損傷に続いて、例えば、虚血性、出血性、新形成、変性、外傷、および/または神経発達損傷に続いて神経系の回復および/または再組織化を変調し、および/または、例えば、インプットの剥奪の結果として、起こるであろう神経系の悪化を阻害するのに用いられるという認識を含む。
本発明は、(i)DR(表4)の条件下でその発現が視覚野においてダウンレギュレートされる遺伝子、(ii)その発現がDR(表5)の条件下で視覚野においてアップレギュレートされる遺伝子、(iii)その発現が長期MD(表6)の条件下で視覚野においてダウンレギュレートされる遺伝子、(iv)その発現が長期MD(表7)の条件下で視覚野においてアップレギュウレートされる遺伝子、(v)その発現が短期MD(表8)の条件下で視覚野においてダンウンレギュレートされる遺伝子、(vi)その発現が短期間MD(表9)の条件下で視覚野においてアップレギュレートされる遺伝子を同定する。本発明は、可塑性改変剤、すなわち、IGF1経路のアクチベーターで治療される対象において短期MDの条件下で視覚野において特異的に調節される遺伝子を同定する(表10および11)。これらの遺伝子は、可塑性を変調し、および/または神経系の機能的および/または構造的神経系再組織化または回復を促進するための変調についての候補として同定される。遺伝子は、少なくとも部分的には、非常に多数のマウス遺伝子に対するプローブを含有するAffymetrix(www.affymetrix.com)からのマイクロアレイにmRNAをハイブリダイズさせることによって同定された(実施例1)。表4〜11におけるナンバリングした列は(スペースまたはタブによって分けられ、左から右に)プローブのAffymetrix識別子、p値、実験条件(例えば、MDまたはDRおよび対照についてのデータ、(利用可能な場合)プローブに対応する遺伝子記号、遺伝子および/または蛋白質についてのアクセション番号、および参照配列(RefSeq)識別子を列挙する。利用可能でない、または含まれていない項目は――によって示される。表中のエントリーは多数の異なる方法で配列させることができ、および表中に存在する特定の順序付けは限定的なことを意図しないことは認識されるであろう。例えば、エントリーは上昇させるp値に基づいて、実験および対照条件の間の発現の差の絶対的または相対的大きさなどに基づいて列挙し、および/またはランク付けすることができる。
当業者であれば、PubMed、ヌクレオチドおよび蛋白質配列(例えば、Genbank)、蛋白質構造、完全なゲノム、分類法など(www.ncbi.nlm.nih.gov/gquery/gquery.fcgi)を含めたデータベースについて、Entrezを通じて入手可能なもののような公のデータベース、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov)で用いる検索および検索システムを検索することによって、表4〜11に列挙された、および/または本明細書中において議論された遺伝子およびそれらの発現産物についてのさらなる情報、例えば、それらの配列を得ることができるであろう。これらのデータベースは、遺伝子の記号または名称を用いて検索することができる。当業者であれば、さらなる情報は、GeneChip(登録商標)アレイの結果をアレイの設計および注釈情報と相関させることを可能とし、およびIDによって問い合わせることができる、2006年4月12日に閲覧された公に入手可能なAffymetrix website,Netaffx Analysis Center(www.affymetrix.com/analysis/index.affx)で見出すことができることも認識するであろう。該ウェブサイトは、プローブのID、および対応する遺伝子および蛋白質についてのアクセション番号を供する各マイクロアレイについてのライブラリーを含む。
本発明は:可塑性改変剤をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、該剤は、神経系の可塑性を改変するのに有効な量にて、単独で、あるいは1つ以上のさらなる剤と組合せて投与され、該可塑性改変剤は、可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される遺伝子または経路を変調することを特徴とする、対象の神経系において可塑性を変調する方法を提供する。言い換えれば、対象に投与する場合、該剤は遺伝子または経路を変調し、該遺伝子または経路は、可塑性改変条件に供された個体の神経系において特異的に調節される遺伝子または経路、例えば、本発明の方法を用いて同定される遺伝子または経路である。該剤が投与される対象は、可塑性改変条件に付しても付さなくてもよい。本発明の特定の実施形態において、可塑性改変条件は、DRまたはMDである。ある特定の実施形態において、可塑性改変条件は、MDである。本発明の特定の実施形態において、該剤は、神経系の活性に依存するように可塑性を変調し、例えば、該剤の存在下において構造的または機能的改変を受ける程度は、神経系によって受け取られるインプットのタイプ、および/または神経系が付される刺激のタイプに依存するであろう。本発明の特定の実施形態において、該剤は、神経成長増強剤のような第二の剤の存在に応答してその構造または機能を変性する神経系の能力を増強させる。かくして、可塑性増強剤は、少なくとも部分的には許容される役割を果たすことができ、神経系インプットを変性するリハビリ療法を受けている、あるいは神経成長増強剤を受けている対象に投与する場合、神経系における構造的または機能的回復または再組織化に寄与する。
本発明は、さらに、可塑性改変剤をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、該剤は、神経系の再組織化または回収を増強するのに有効な量にて、単独で、あるいは1つ以上のさらなる剤と組合せて投与され、該可塑性改変剤は、可塑性改変条件、例えば、DRまたはMDの条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される遺伝子または経路を変調することを特徴とする対象の神経系において再組織化または回復を促進する方法を提供する。該対象は、神経系に対する虚血性、出血性、新形成、外傷、神経変性、毒性、および/または神経発達損傷をこうむっていてもよい。該剤は、対象の神経系において回復または再組織化に寄与でき(例えば、増強させることができ)、および/または機能の正常化を促進することができる。言い換えれば、神経系の再組織化または回収、または機能の改善の程度は、もし該剤が対象に投与されていなかったならば当てはまったであろうよりも大きい。本発明の特定の実施形態においては、該剤は、神経保護効果を発揮することによって単独で、または主として作用せず、例えば、細胞の死滅または機能不全(例えば、壊死またはアポトーシス)を阻害することによって単独でまたは主として作用しない。本発明の特定の実施形態においては、該剤は神経保護効果および可塑性−増強効果を共に発揮する。本発明の特定の実施形態によると、該剤は神経保護効果を発揮することができるが、卒中のような特異的損傷事象に引き続いて特定の時間枠内で、その間に剤が神経保護効果を発揮するであろう時間枠の外側に入る時点で投与される。
前述の方法は、神経系のいずれかの1つ以上の部分において、可塑性を改変し、および/または回復または再組織化を促進することができる。例えば、本発明の特定の実施形態においては、ある方法は可塑性を改変し、例えば、視覚野の少なくとも一部において可塑性を促進し、および/または回復または再組織化を促進する。本発明の特定の実施形態において、神経系の一部は、移植された薬物送達デバイスに近接して位置するものである。例えば、神経系の部分は、デバイスの表面または境界から1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10センチメートル(cm)まで離れて位置させることができる。
典型的には、本発明による剤および組成物は、神経系またはその部分の構造的再組織化および/または機能的再組織化を促進し、あるいはそのように再組織化が起こり得る状態に神経系を維持する。ある特別な実施形態において、本発明の剤は神経系またはその部分の構造的および/または機能的回復を促進する。しばしば、(i)構造的再組織化および/または回復、および(ii)機能的再組織化および/または回復の間に相関があり、例えば、構造的再組織化および/または回復、ならびに機能的再組織化および/または回復の双方が起こるのが認識されるであろう。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態において、機能的再組織化および/または回復は、構造的再組織化および/または回復の検出可能な証拠なくして起こる。本発明のいくつかの実施形態において、構造的再組織化および/または回復は、特定の期間の評価の間に機能的再組織化および/または回復の検出可能な証拠なくして起こる。そのような実施形態において、機能的再組織化および/または回復はより後の時点で起こり得、および/または回復は、評価で用いる特定の測定ツールおよび方法を用いて検出しなくてもよい。また、再組織化は典型的には回復と関連するが、再組織化は、時々、かなりの時間によって回復の認識可能な証拠に先行することができる。
損傷事象からの機能的回復は、生存する神経系細胞(例えば、ニューロン、神経膠細胞)および/または新しい結合の樹立の間の物理的結合(例えば、シナプス)の再成長を含むことができる。ある種の可塑性改変剤は細胞(例えば、ニューロン、神経膠細胞など)と直接的に相互作用して、それらの可塑性を増強し、および/または構造的および/または機能的再組織化についてのそれらの能力を刺激することができる。剤は、さもなければ有益な構造的変化を妨げ、または神経系の細胞に対して阻害的効果を発揮するであろうECMに存在する分子の悪化を引き起こす剤と組合せて投与することができる。本発明の特定の実施形態においては、2つ以上の剤を対象に同時にまたは順次に投与する。該剤のいずれかまたは双方を、対象の神経系に局所投与することができる。
可塑性改変剤
本発明は、変調して可塑性を改変することができる多数の遺伝子および生物学的経路を同定する。ある種のこれらの遺伝子および経路を議論する前に、本明細書中で議論するある種の遺伝子およびそれらがコードするポリペプチドはファミリーのメンバーであり、いくつかの場合においては、特定のポリペプチドの多数のイソ形態、ならびに翻訳後変性された形態(例えば、リン酸化、グリコシル化、アシル化などによって変性されている形態)として存在することに注意すべきである。そのような場合、単一の名称を用いて、集合的に多数の遺伝子またはポリペプチドに言及することができる。例えば、「PI3K」とは、PI3Kファミリーのいずれかのメンバー、またはメンバーの組をいう。「AKT」とは、少なくともAkt1、Akt2、および/またはAkt3などをいう。「STAT」とは少なくともSTAT12、3、4、5a、5b、6、および/または7などをいう。「JAK」とは、少なくともJAK1、JAK2、JAK3、および/またはTyk2などをいう。同様に、「JAK/STAT経路」とは、少なくとも1つのJAKおよび少なくとも1つのSTATを含むいずれかの経路をいう。本発明の特定の実施形態においては、ファミリーの1つ以上のメンバー、例えば、神経系に存在する1つ以上のメンバーを選択的に変調するのが望ましいであろうことが認識されるであろう。また、単一の遺伝子によってコードされた多数の変種ポリペプチドはRNAおよび/または蛋白質スプライシングから生起することができ、遺伝子編集は変種を制御させることもでき、そのすべては同一の名称または記号によって本明細書中においては言及することができる。本発明は、かくして、RNA、または蛋白質スプライシングまたは遺伝子編集、翻訳後に変性された形態などから生起するファミリー、イソ形態、スプライス編集のいずれかの1つ以上のメンバーが変調される実施形態を含む。
当業者であれば、いずれの特定の遺伝子および遺伝子産物(例えば、mRNAおよびポリペプチド)が、本明細書中に列挙された名称を用いて言及され、これらの遺伝子および遺伝子産物の配列、および例えばGenbankおよびPubMedのような公に入手可能なデータベースを用いてそれから分子を精製し、または得ることができる源のような関連情報を検索することができるのは容易に理解するであろう。例えば、当業者であれば、URL www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?CMD=search&DB=geneを有するウェブサイトで入手可能なNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって供されるEntrez Geneデータベースを検索することができ、それにより、目的とするいずれかの特定の遺伝子またはポリペプチドについてGeneIDをつきとめることができる。本明細書中に記載された分子の対立遺伝子変種、ホモログ、および生物学的に活性な断片または変種もまた用いられることが認識されよう。
(実施例により詳細に記載される)いくつかの実施形態において、IGFBP5は、特定の剥奪された条件(MD)下で特異的に調節されるとして同定される。IGFBP5はIGF1経路の構成要素である。本発明では、可塑性を変調するためのIGF1経路の1つ以上の構成要素の変調が考えられる。本発明では、それを必要とする対象において神経系の回復または再組織化を促進するためのIGF1経路の1つ以上の構成要素の変調が考えられる。
実施例に記載されたように、IGFBP5は、MDに供される対象の視覚野においてMDの条件下で有意にアップレギュレートされる。IGFBP5は、mRNAおよび蛋白質レベルの双方においてMD後に最もアップレギュレートされる遺伝子の1つである。さらに、IGF1経路は、MD後に特異的に調節される遺伝子について最も富化された生物学的経路の1つであり、IGFBP5およびIGF1の双方は、MD後におけるいくつかの高度に富化された経路の構成要素である。従って、IGF1経路は特に目的とする可塑性関連経路であると同定される。実施例4に記載されたように、IGF1経路のアクチベーターの投与は、皮質のV1領域に対する単眼除去の効果の多くを妨げた。発明者らの知識の及ぶ限り、これらの結果は、皮質における経験依存的可塑性でのIGF1/IGFBP5系の可能な機能的関与を示す第一の証拠を表す。結果は、IGF1および/または経路およびIGF1に関連するメカニズムがシナプスを安定化させ、可塑性を改変することを示す。
IGF1は、配列および生物学的活性においてインスリンに関連する成長促進ペプチドのスーパーファミリーのメンバーである。IGF1の作用は、IGF1の結合を細胞内シグナル伝達カスケードに伝達するタイプIのIGF受容体(IGF1R)によって媒介される。IGFのIGF1Rへの結合は受容体のチロシンキナーゼ活性を増強し、その結果、インスリン受容体基質IRS1−IRS4のリン酸化がもたらされ、これは、2つの主な下流シグナル伝達経路、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)およびホスホイノシタイド3−キナーゼ(PI3K)経路の活性化に導く。PI3K経路が後にさらに議論する。6つのIGF結合蛋白質(IGFBP1−IGFBP6)は種々のメカニズムによってIGF1の生物学的活性を調節し、およびIGFBPのいくつかはIGF1から独立した効果を有する。IGF1、IGF1R、およびIGFBPのある種のものはCNFにおいて発現され、そこで種々の異なる機能を有すると仮定されてきた(Russo,2005)。IGF1は種々の異なる蛋白質と相互作用し、IGF1経路の活性化の結果、非常に多数の下流基質がリン酸化される。
IGF1経路は種々の異なる方法を用いて変調することができる。本発明の特定の実施形態において、該経路は、該経路の活性を増加させるように変調される。IGF1または生物学的に活性なその断片は、対象に投与されて、該経路を活性化することができる。いくつかの実施形態において、トリペプチドGPEが用いられる。別法として、または加えて、IGF受容体の異なるリガンドを投与することができる。該リガンドは、受容体を阻害し、または活性化するのが望まれるかに応じて、アゴニストまたはアンタゴニストとすることができる。いくつかの実施形態において、方法は(i)IGF1およびIGFBPの間の物理的会合を破壊する剤を投与し;(ii)1つ以上のIGF1基質をリン酸化するキナーゼを活性化し、または阻害する剤を投与し;(iii)1つ以上のIGF1基質を脱リン酸化するホスファターゼを活性化し、または阻害する剤を投与し;(iv)IGF1またはIGF1R;の発現をアップレギュレートする剤を投与し;(v)IGFBPの発現をアップレギュレートし、またはダウンレギュレートする剤を投与し;(vi)PI3Kの構成要素、および/またはAktシグナル伝達経路などの発現または活性を増加させる剤を投与することを含む。いくつかの場合において、RNAi剤を用いて、該経路における1つ以上の遺伝子、例えば、IGFBP5のようなIGF結合蛋白質をコードする遺伝子の発現を阻害する。
本発明の特定の実施形態において、ホスホイノシタイド3−キナーゼ(PI3K)シグナル変換経路が変調される。ホスファチジルイノシトール3−キナーゼともいわれるホスホイノシタイド3−キナーゼは、Src様、またはIGF1受容体のような受容体チロシンキナーゼを含むシグナル変換経路の構成要素である脂質キナーゼおよびセリン/スレオニンキナーゼである。かくして、PI3K経路は、少なくとも部分的には、IGF1の作用を担う。PI3Kキナーゼスーパーファミリーは、異なる調節および基質を持つ非常に多数の構造的に関連する酵素を含む(レビューについては、Foster,2003およびPaez et al.,2003参照)。「古典的な」PI3Kは、調節サブユニット(p85)および110kDa触媒サブユニット(p110)を含む。PI3Kは下流のエフェクタープロテインキナーゼB(Aktとも呼ばれるPKB)を介して作用して、細胞の生存、細胞の増殖、小胞トラフィッキング、炎症およびアポトーシス阻害を含めた多くの細胞プロセスを調節する。Akt(Akt1、Akt2、およびAkt3)のこれらのイソ形態は知られている。活性化されると、PI3Kはホスホイノシタイドをイノシトール環の3’位置においてリン酸化する。それらのリン酸化に続き、ホスホイノシタイドはリン酸化によってAkt活性化を促進する。次いで、活性化されたAkt(ホスホAkt)は種々の基質をリン酸化する。
実施例に記載したように、IGF1によって活性化されるPI3KはMD後に発現がかなり減少するが、IGF1処理が投与されるとMD後には発現は十分に回復し、これは、IGF1の可塑性関連効果が少なくとも部分的にはPI3Kを介して媒介され得ることを示唆する。本発明は、所望により、Aktの発現または活性を変調することによって、PI3K経路を変調して、それを必要とする対象において可塑性を改変することを含む。例えば、本発明は、Aktのリン酸化を阻害し、または増強する剤を投与することを含む。本発明では、PI3K経路の1つ以上の構成要素、例えば、Aktを変調して、それを必要とする対象において神経系の回復または再組織化を促進することが考えられる。PI3Kおよび/またはAktの活性を変調する剤は当該分野で知られている(例えば、PI3Kを阻害するのに有用な二環または三環縮合ヘテロアリール誘導体を記載する米国特許公開2003/0236271;およびPI3Kの低分子阻害剤を記載する米国特許公開2004/0176385参照)。いくつかの実施形態において、該剤は、PI3Kシグナル変換経路の構成要素に対して標的化されるsiRNAのようなRNAi剤である(例えば、米国特許公開2005/0272682参照)。
(実施例においてより詳しく記載される)特定の実施形態において、STAT1は特定の剥奪された条件下で(単眼除去)特異的に調節されるものとして定義され、JAK/STAT経路は可塑性関連経路であると同定される。特に、STAT1は、MDに付される対照の視覚野においてアップレギュレートされる。さらに、リン酸化されたSTAT1はアップレギュレートされ、これは、JAK−STATカスケードの活性化を示す。本発明では、それを必要とする対象において可塑性を改変するためのJAK/STAT経路の1つ以上の構成要素を変調することが考えられる。また、本発明では、それを必要とする対象において神経系の回復または再組織化を促進するためのJAK/STAT経路の1つ以上の構成要素の変調も考えられる。JAK/STAT経路は、(Rawlings et al.,2004,J.Cell Sci.,117:1281にレビューされた)サイトカインおよび成長因子の多様な群についての主なシグナル伝達メカニズムである。これらのリガンドのそれらの受容体への結合は、Janusチロシンキナーゼ(JAK)に関連する受容体サブユニットの多量体化を誘導し、JAKのトランスリン酸化を可能とする。活性化されたJAKは、転写蛋白質(STAT)、活性化されるまで潜在的形態で細胞質に存在する転写因子のシグナルトランデューサーおよびアクチベーターをリン酸化する。リン酸化されたSTATはダイマー化され、核にトランス配置され、そこで、それらは標的遺伝子の転写を活性化し、または抑制する。JAK/STAT経路のこれらの主な構成要素に加えて、JAK/STATシグナル伝達に寄与する他の蛋白質はシグナル−トランスアダプター分子(STAM)、STAT−相互作用蛋白質(StIP)、およびSH2B/Lnk/APSファミリーを含む。JAK/STATシグナル伝達の負のレギュレーターの3つの主なクラス:サイトカインシグナル伝達(SOCS)蛋白質、活性化されたSTAT(PIAS)蛋白質の蛋白質阻害剤、および蛋白質チロシンホスファターゼ(PTP)がある。
JAK/STAT経路は、種々の異なる方法を用いて変調することができる。JAK/STAT経路の構成要素(例えば、STATまたはJAKポリペプチド)、またはJAK結合サイトカイン受容体のリガンドを投与することができる。例えば、受容体アゴニストを投与して経路を活性化することができ、あるいはアンタゴニストを投与して経路を阻害することができる。JAK/STAT経路を変調する他の方法は、(i)JAKおよびSTATの間の物理的会合を破壊し、または阻害し;(ii)1つ以上のJAK基質をリン酸化するキナーゼを活性化し、または阻害する;(iii)1つ以上のJAK基質を脱リン酸化するホスファターゼを活性化し、または阻害し;(iv)JAK/STAT経路の構成要素の発現をアップレギュレートし;(v)JAK/STAT経路の構成要素の発現をダウンレギュレートし;(vi)JAK結合サイトカイン受容体およびJAKの間の物理的会合を破壊し;(vii)JAK結合サイトカイン受容体を活性化し、または阻害し;(viii)STATの核へのトランス配置を阻害し、または増強し;(ix)STATとDNAとの会合を阻害し;(x)JAK結合サイトカイン受容体、およびSOCSまたはPIAS蛋白質のような内因性JAK調節蛋白質の間の物理的会合を破壊し;(xi)内因性JAK調節蛋白質などの発現を誘導し、または阻害する剤を投与することを含む。前述のように、RNAi剤は経路における遺伝子、例えば、1つ以上のJAK、STAT、SOCS、またはPIAS蛋白質の発現を阻害するのに用いられる。一般に、JAKまたはSTATの発現の阻害はJAK/STAT経路を阻害し、他方、SOCSまたはPIAS蛋白質のような負のレギュレーターの発現の阻害は、経路を活性化するであろう。
本発明は、リン酸化されたSTAT1がMD後にアップレギュレートされるという発見を含む。いずれかの理論に束縛されるつもりはないが、このアップレギュレーションは、剥奪された目結合を除去し、または低下させ、ならびに、おそらくは、非剥奪目結合を拡大するための脳の応答であり得る。かくして、STAT1のアップレギュレーションまたはそうでなければそれが作用する経路の活性化は、可塑性を増強させおよび/またはMDモデルにおいて目支配シフトを増加させるであろう。
いくつかの実施形態において、JAK/STAT経路を変調する剤はサイトカインである。サイトカインは、他の免疫系の細胞および/または身体中の他の細胞に対して生物学的効果を発揮する免疫系細胞(例えば、リンパ球、マクロファージなど)によって分泌されるポリペプチドである。その例はインターフェロン、インターロイキン、ケモカインなどを含む。サイトカインはSTAT1のようなJAK/STAT経路の構成要素をアップレギュレートすることができる。IFNγは、JAK/STAT経路を活性化する本発明で用いる例示的なサイトカインである。いくつかの実施形態において、該剤はSTAT1発現または活性を低下させる。STAT1発現または活性を低下させる例示的な剤はイオノマイシンおよびフルダラビンを含む。いずれかの理論の束縛されるつもりはないが、これらの剤の投与はMDモデルにおける目の支配シフトを改変することができる。いくつかの実施形態において、該剤はペルオキシソームプロリファレーター受容体(PPAR)−ガンマアゴニストである。その例は15−デオキシ−デルタ12,14−プロスタグランジンJ(2)のようなプロスタグランジン、ロシグルタゾンのようなチアゾリジンジオンなどを含む。本発明の特定の実施形態において、1つ以上のこれらの剤を投与して、1つ以上のSTATまたはJAK蛋白質のリン酸化を阻害する。いくつかの実施形態において、該剤はHMG−CoAレダクターゼ阻害剤である。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロバスタチンなどのようなスタチンを含む。これらの剤を投与して、JAK/STAT経路を阻害することができる。JAKを阻害することによってSTAT1リン酸化を阻害する剤は、JAK3(Sudbeck et al.,1999,Clin.Cancer Res.,5:1569)の作用をブロックする、JAK2(Meydan et al.,1996,Nature,379:645)およびWHI−P131の作用をブロックするAG490のようなトリホスチンを含む。チルホスチンは、プロテインチロシンキナーゼを特異的に阻害する低分子量化合物である。また、JAK3の阻害剤として有用な種々のジメトキシキナゾリン化合物を記載する米国特許第6,080,748号も参照。また、米国特許公開2003/0236244、2004/0209799、2004/0097504、2005/0159385、および2005/0148574も参照。
本発明は:細胞型の1つ以上のマーカーが、可塑性を改変する条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される遺伝子の産物であることを特徴とする細胞型を変調する工程を含む、可塑性を改変する方法を提供する。本発明は:細胞型の1つ以上のマーカーが、可塑性を改変する条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される遺伝子の産物であることを特徴とする細胞型のマーカーを変調する工程を含む、可塑性を改変する方法を提供する。
前述のように、本発明は、臨界的期間に関連する可塑性の状態を延長する、DRの条件下で視覚野においてダウンレギュレートされる(すなわち、過少発現される)PVをコードする遺伝子を同定する。本発明は、DRの条件下で視覚野において数が低下しているとしてPV発現介在ニューロンを定義する。これらの発見に少なくとも部分的には基づき、本発明は、可塑性改変剤を対象に投与することを含み、該可塑性改変剤は脳の少なくとも一部においてパルブアルブミン発現介在ニューロンの発達、生存、および/または活性を変調することを特徴とする、対象の神経系において可塑性を改変する方法を提供する。いくつかの実施形態において、該剤は脳の少なくとも一部においてパルブアルブミン発現介在ニューロンの発達、生存、および/または活性を阻害する。本発明の特定の実施形態において、可塑性改変剤はパルブアルブミンの発現または活性を阻害する。
パルブアルブミン発現介在ニューロンの発達、生存、および/または活性を阻害する例示的な方法は、ニモジピンまたはニフェジピンのようなL−タイプのカルシウムチャネルアンタゴニストを投与することを含む(Jiang et al.,2005,Neuroscience,135:839)。いくつかの実施形態において、PV発現介在ニューロンは、細胞傷害性剤および標的化部位を含む複合体を投与することによって排除につき標的化され、該標的化部位はPV発現介在ニューロンのマーカー、例えば、PV発現介在ニューロンの細胞表面に存在する分子またはその部分に特異的に結合する。該複合体またはその部分は内部化することができる。細胞傷害性剤は、それらが細胞表面に存在するマーカーを有する介在ニューロンを選択的に殺傷する。「細胞表面において」とは、本明細書中においては、分子またはその部分が細胞外環境に曝露され、適当な結合剤による結合にアクセスできることを意味するのに用いる。
細胞傷害性剤は、標的化部位と共有結合により、または非共有結合により会合することができる。別法として、または加えて、細胞傷害性剤および標的化部位の双方は第三の存在と共有結合により、または非共有結合により会合することができる。例えば、いくつかの実施形態において、細胞傷害性剤および標的化部位は相互に直接的にまたはリンカー部位を介して共有結合して、コンジュゲートを形成する。いくつかの実施形態において、細胞傷害性剤および標的化部位はポリマー足場、ポリマー粒子またはリポソームのような送達ビヒクルと会合させる。種々の細胞傷害性部位を用いることができる。例示的なクラスはアルカリ化またはアルキル化剤、アルキルスルホネート、アジリジン、エチレンイミンおよびメチルアメラミン、ナイトロジェンマスタード、ある種の抗生物質、抗−代謝産物、葉酸アナログ、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、アラビノシド、白金アナログ、微小管阻害剤(例えば、微小管脱重合剤または安定化剤)、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プロアポトーシス剤、キナーゼ阻害剤、放射性同位体、ジフテリアトキシンのようなトキシン、PseudomonasエンドトキシンA(PE)、コレラトキシン(CT)、百日咳トキシン(PT)、リシンA鎖、ボツリヌストキシンA、コノトキシンなどのようなトキシンを含む。マーカーは、例えば、PV発現介在ニューロンによって発現されるイオンチャネルまたは受容体サブユニットであってよい。典型的には、該マーカーは、それが神経系においてほとんどのまたは全ての他の細胞タイプの細胞表面に存在するレベルよりは高い平均レベルにてPV発現介在ニューロンの細胞表面に存在する。その例はL−タイプのカルシウムチャネルのアルファサブユニット(例えば、サブユニット1.2または1.3;Jiang and Swann,2005、NMDA受容体のNR2Aサブユニット(Kinney,2006)、および以下のイオンチャネルサブユニット:HCN2、Kv3.1、Kv1.2、Kv1.6、Kv1.1、Kv3.2、HCN1、KVβ1、およびCaα1A(Markram,2004)を含む。標的化部位は、これまでのサブユニットのいずれか、抗体またはこれまでのサブユニットのいずれかのようなマーカーに結合する他の特異的な結合剤(例えば、ファージディスプレイを通じて選択されたアプタマーまたは結合ペプチド)を含む受容体またはチャネルのリガンドであり得る。
別法として、あるいは加えて、本発明の特定の実施形態においては、PV発現介在ニューロンの発達、生存、および/または活性を加速し、または増強させることによって可塑性を低下させるのが望ましい。例えば、BayK 8644のようなL−タイプのカルシウムチャネルのアゴニストを用いることができる。
いくつかの実施形態において、本発明は、複数の可塑性改変剤の組合せを対照に投与することに関する。該剤は単一の組成物において、または別々に一緒に投与することができる。いくつかの実施形態において、IGF1経路を変調する剤、およびJAK/STAT経路を変調する剤が投与される。いくつかの実施形態において、IGF1またはJAK/STAT経路を変調する、およびPV発現介在ニューロンの発達、生存、および/または活性を阻害する剤が投与される。いくつかの実施形態において、IGF1経路を変調する剤、JAK/STAT経路を変調する剤、およびPV発現介在ニューロンの発達、生存、および/または活性を阻害する剤が投与される。
いくつかの実施形態において、本発明は、複数の可塑性改変剤を含む組成物に関する。1つのそのような組成物はIGF1経路を活性化する剤、およびJAK/STAT経路を活性化し、または阻害する剤を含む。該組成物は、IGF1経路を活性化するいずれかの剤、およびJAK/STAT経路を活性化し、または阻害するいずれかの剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、該組成物はGPEのようなIGF1または生物学的に活性な変種またはその断片、およびスタチンのようなHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を含む。いくつかの実施形態において、該組成物はIFNγまたはその生物学的に活性な断片または変種、およびHMG−CoAレダクターゼ阻害剤を含む。
可塑性改変剤および蛋白質分解増強剤の組合せ投与
本発明の特定の実施形態において、1つ以上の可塑性改変剤および1つ以上の蛋白質分解増強剤を対象に投与する。COMPOSITIONS AND METHODS FOR ENHANCING STRUCTURAL AND FUNCTIONAL NERVOUS SYSTEM REORGANIZATIONと題され、米国特許公開2006/0104969として公開された、同時係属特許出願U.S.S.N.11/205,501において記載されているように、本発明者らは、tPA、プラスミン、またはプラスミン様活性を持つ剤のような蛋白質分解増強剤の対象の神経系への局所投与は、対象の神経系における再組織化および回復を促進することを示した。本発明は:可塑性改変剤および蛋白質分解増強剤をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、該剤は神経系の可塑性を改変するのに有効な量および時間にて投与され、該可塑性改変剤は、可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される遺伝子または経路を変調することを特徴とする、対象の神経系において可塑性を改変する方法を提供する。例えば、本発明の特定の実施形態において、該剤は、暗所飼育(DR)または単眼除去(MD)の条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において特異的に調節される遺伝子または経路を変調する。可塑性改変剤は、例えば、本明細書中に記載された剤のいずれかであり得る。
いずれかの理論の束縛されるつもりはないが、tPAおよび/またはプラスミンのような蛋白質分解増強剤によって媒介される1つ以上のECM成分の蛋白質分解は、恒常的再組織化に許容される環境を作り出し、可塑性改変剤の活性を増強させることができる。かくして、本発明は、可塑性改変剤の投与と組み合わせた神経系損傷に続いての神経系における蛋白質分解活性の増強が、いずれかの療法単独に対して増大した構造的再形成を可能とすることができ、それにより、改良された機能的回復に寄与するという認識を含む。以下のセクションは、本発明で用いる蛋白質分解増強剤、薬物送達デバイス、可塑性−増強剤の局所投与用の方法および配置、および蛋白質分解増強剤、および本発明の種々の他の特徴を記載する。
種々の異なる蛋白質分解増強剤、またはその組合せを本発明で用いる。本発明の特定の実施形態において、蛋白質分解増強剤はポリペプチドである。本発明の特定の実施形態において、ポリペプチドはプロテアーゼである。本発明の特定の実施形態において、蛋白質分解増強剤はフィブリンの蛋白質の分解を増強させる。該剤はフィブリンを直接的に切断することができ、あるいはフィブリンを切断する内因性プロテアーゼを活性化することができる。本発明の特定の実施形態において、該剤は、フィブリンの蛋白質分解の増強に加えて、またはその代わりに、フィブリン以外のECMの構成要素の蛋白質分解を増強させる。例えば、蛋白質分解増強剤は、限定されるものではないが、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、およびプロテオグリカンを含めた1つ以上の細胞外マトリックス構成要素を切断することができる。可塑性増強剤または蛋白質分解増強剤としての特定の剤の分類は、断じて限定的であると理解されるべきではないことを注記する。かくして、神経系に対する蛋白質分解増強剤の効果は、全体的にまたは部分的には、蛋白質分解に関係しない1つ以上の活性に由来し得る。本発明の可塑性増強剤は蛋白質分解活性を有するものとして認識されていないが、そのような活性は排除されず、かつ神経系に対する可塑性増強剤の効果は、全体的にまたは部分的にはそれらの投与の間接的効果として起こる蛋白質分解に由来し得る。例えば、可塑性増強剤の投与はプラスミンのような内因性蛋白質分解増強剤の発現を増加させることができ、あるいは蛋白質分解増強剤の内因性阻害剤の発現を阻害することができる。
本発明で用いる適当な剤はtPA/プラスミンカスケードの構成要素を含む。tPA/プラスミンかスケードの化合物は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)およびその変種、プラスミノーゲン、およびプラスミンのようなプラスミノーゲンアクチベーターを含む。プラスミノーゲンアクチベーター(PA)は、単一のペプチド結合(R561−V562)の切断によってプラスミノーゲンのプラスミンへの変換を触媒する(Vassalli,1991)セリンプロテアーゼであり、2つのジスルフィド結合によって結合されたままである2つの鎖を生じる(Higgins and Bennett,1990)プラスミンは、その主なイン・ビボでの基質がフィブリン、血餅のタンパク質性構成要素である優れたセリンプロテアーゼである。tPAによるプラスミノーゲン活性化は、フィブリンの存在下で刺激される。プラスミンは広い基質範囲を有し、ECMで見出されたほとんどの蛋白質を含めた、多くの他の蛋白質を直接的にまたは間接的に切断することができる。本明細書中で使用される場合、「直接的」は、プロテアーゼが、切断されるポリペプチドと物理的に相互作用することを意味し、他方、「間接的に」は、プロテアーゼが、切断されるポリペプチドと通常は物理的に相互作用しないが、もう1つの分子、例えば、もう1つのプロテアーゼと相互作用する傾向があり、これは、次いでポリペプチドを直接的または間接的に切断することを意味する。プラスミンは、メタロプロテアーゼ前駆体を活性化することもできる。メタロプロテアーゼは、次いでECM分子を分解する。メタロプロテアーゼは、本発明の特定の実施形態で用いられる。前述の基質に加えて、プラスミンは種々の成長因子および成長因子前駆体を切断し活性化する。肝臓はプラスミン合成の主な部位であるが、プラスミノーゲンmRNAおよび蛋白質は多数の脳領域で検出されてきた。かくして、プラスミノーゲンが、神経系に投与されたtPAによって切断されるように利用可能である。
2つのPA、組織タイプのPA(tPA)およびウロキナーゼタイプのPA(uPA)が哺乳動物において同定されている。PAの主な生理学的機能は、フィブリンを分解するプラスミンへプラスミノーゲンを活性化することによって血餅の溶解を誘発することである。身体中においては、PA活性は、その多数が同定されている、PAを阻害する種々の内因性セリンプロテアーゼ阻害剤によって部分的には調節される。ニューロセルピン(Gene ID 5274)は、セリンプロテアーゼ阻害剤のセルピンファミリーに属し、発達するおよび成人神経系双方のニューロンによって発現される。ニューロセルピンは脳の領域に存在し、そこでは、tPAメッセージまたはtPA蛋白質いずれかが見出され、ニューロセルピンはCNSにおいてはtPAの選択的阻害剤であり得ることを示唆する。プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤1(PAI−1;Gene ID 5054)は血漿中の主なプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤(PAI)であり、神経系においてもやはり見出される。プロテアーゼ−ネキシンI(Gene ID 5270)、PAI−2(Gene ID 5055)、およびPAI−3(Gene ID 268591,Mus musculus)は他の内因性PAIである。プロテアーゼ−ネキシンIおよびニューロセルピンはPAに加えてプラスミンを阻害する。
いずれかの議論に拘束されるつもりはないが、その蛋白質分解が神経系において構造的再組織化に寄与することができるtPAおよび/またはプラスミンの多数の潜在的基質がある。これらの中には、フィブリン、フィブロネクチン、テナスシンおよびラミニンのような種々のECM蛋白質がある。プラスミンに加えて、tPAはプラスミン様蛋白質肝細胞成長因子(HGF)のような他のプロテアーゼを活性化することができ、該因子は、今度は、さらなる基質を切断することができる。
本発明で用いるtPAはいずれの種からのものであってもよいが、ヒトへの投与では、ヒトtPAまたはその変種を用いるのが望ましい。改良された特性を持つ変種を含めた、tPAおよびその有用な変種は米国特許第6,284,247号;第6,261,837号;第5,869,314号;第5,770,426号;第5,753,486号;第5,728,566号;第5,728,565号;第5,714,372号;第5,616,486号;第5,612,029号;第5,587,159号;第5,520,913号;第5,520,911号;第5,411,871号;第5,385,732号;第5,262,170号;第5,185,259号;第5,108,901号;第4,766,075号;第4,853,330号、およびGenentech,Inc.に譲渡された他の特許に記載されている(また、Higgins 1990参照)。例えば、限定されるものではないが、tPA変種は天然に生じるtPAに対してプロテアーゼドメインにおいて改変を有することができ、および/または天然に生じるtPAに対してN末端において1つ以上のアミノ酸の欠失を有することができる。tPA変種は天然に生じるtPAに対して1つ以上のさらなるグリコシル化部位を有することができ、および/または真核生物細胞、例えば、哺乳動物細胞において発現された場合に、天然に生じるtPAにおいて通常起こるグリコシル化を破壊する改変を有することができる。用いることができる特性は、限定されるものではないが、増大した半減期、増大した活性、フィブリンに対する増大した親和性または特異性などを含む。
ヒトtPAにはEntrez Geneデータベース(National Center for Biotechnology Information;NCBI)においてはGene ID 5327が割り当てられており、全長アミノ酸、mRNA、および遺伝子配列についてのGenBankエントリーは、各々、AAA98809、K03021、およびNM_000930である。しかしながら、(例えば、米国特許第4,853,330号およびYelverton 1983に記載されているように)シグナル配列ペプチドを欠如するtPAの成熟形態、またはその変種を用いるのが好ましいであろうことを注記する。
tPAがそのメンバーであるキモトリプシンファミリーセリンプロテアーゼは、通常、単一鎖蛋白質として分泌され、ポリペプチド鎖において特異的部位における蛋白質分解切断によって活性化され、二本鎖形態を生じる(Renatus,1997,およびその中の文献)。単一鎖および二本鎖形態の双方は、プラスミノーゲンに対して活性であるが、二−鎖形態の活性はより大きい。プラスミンは単一鎖tPAを二本鎖形態に活性化し、かくして、その結果、正のフィードバックグループがもたらされる。単一鎖tPAの二本鎖形態、および/またはその組合せを本発明で用いることができる。
tPAおよびその変種は商業的に入手可能であって、種々の疾患についてヒトへの投与が認可されている。例えば、アルテプラーゼ(Activase(登録商標),Genentech,South San Franciso,CA)は組換えヒトtPAである。レテプラーゼ(Retavase(登録商標),Rapilysin(登録商標);Boehringer Mannheim,Roche Centoror)はヒトtPAの組換え非―グリコシル化形態であり、そこでは、分子が遺伝子的に元の蛋白質の527アミノ酸のうち355を含有するように作製されている。テネクテプラーゼ(TNKase(登録商標),Genentech)は、3つのアミノ酸置換を有することによって天然に生じるヒトtPAとは異なるヒトtPAの527アミノ酸糖蛋白質誘導体である。これらの置換は血漿クリアランスを減少させ、フィブリン結合を増加させ(それにより、フィブリン特異性を増加させ)およびプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤―1(PAI−1)に対する耐性を増加させる。アニストレプラーゼ(Eminase(登録商標),SmithKline Beecham)は商業的に入手可能なヒトtPAである。
更なるプラスミノーゲンアクチベーターはストレプトキナーゼ(Streptase(登録商標),Kabikinase(登録商標))およびウロキナーゼ(Abbokinase(登録商標))を含む、その双方は商業的に入手可能である。
別法として、あるいは加えて、本発明で用いる蛋白質分解増強剤は、吸血コウモリ唾液(Liberatore,2003,およびその中の文献)に由来するDesmodus rotundus唾液プラスミノーゲンアクチベーター(DSPA)デスモテプラーゼ(Paion,Germany)のようなtPAアクチベーターを含む。4つの区別されるプロテアーゼが特徴付けられており、D rotundus唾液プラスミノーゲンアクチベーター(DSPA)という。全長吸血コウモリプラスミノーゲンアクチベーター(DSPA1)は最もよく研究された変種であって、ヒトtPAに対して>72%アミノ酸配列同一性を呈する。しかしながら、2つの重要な機能的差が明らかである。まず、DSPAは、2つの鎖形態に切断されない単一鎖分子として存在する。第二に、DSPAの触媒活性はフィブリン補因子に依存するように見える。レスクパーゼ(Saruplase(登録商標),Grunenthal)、およびミクロプラスミン(プラスミノーゲンの切断産物)のようなウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーターもまた、本発明の種々の実施形態で用いられる。アルフィメプラーゼ(Nuvelo)は、本発明で用いる尚もう1つの蛋白質分解増強剤である。アルフィメプラーゼは、南アメリカマムシ(Agkistrodon contortrix contortrix)の毒から最初に単離された公知の直接的にフィブリン溶解性の亜鉛メタロプロテイナーゼであるフィブロラーゼの組換えにより生産された切形形態である(Toombs,2001)。これらの酵素はフィブリンを直接的に分解する。フィブロラーゼそれ自体は本発明で用いられる。また、スタフィロキナーゼも用いられる(Schlott,1997)。
本発明のいくつかの実施形態において、プラスミンまたはミニプラスミンはtPAの代わりに、またはそれに加えて投与される。プラスミン様活性を有する種々の他の剤を用いることができる。一般に、そのような物質は、プラスミンおよび活性化されたプラスミノーゲンに対する便宜にアッセイされた色原体基質である、合成基質S−2251TM(Chromogenix−Instrumentation Laboratory,Milan,Italy)のような典型的なプラスミン基質を切断することができる。tPA様活性を有する他の剤(例えば、それらはプラスミノーゲンを切断することができ、それをtPAと同様にして活性化することができる)を用いることができる。
ルームブロキナーゼは、ある期間知られていたミミズLumbricus rubellusに由来する酵素または酵素の群である(例えば、ルミブロキナーゼをコードする遺伝子のクローニングの報告、PI239、GenBankアクセション番号AF433650;Gen,2005参照)。ミミズから単離された他のフィブリン溶解プロテアーゼが用いられる(Cho,2004)。また、ナットウキナーゼも用いられる。
いくつかの実施形態において、種々の虫、昆虫、および寄生虫から単離されている種々のフィブリン溶解酵素を本発明に関して用いることができる。例えば、ヒルに存在する酵素であるデスタビラーゼはフィブリン架橋を加水分解する(Zavalova,1996;Zavalova,2002)。
本発明のいくつかの実施形態において、プラスミノーゲンをtPAの代わりに、またはそれに加えて投与する。
それ自体がプラスミノーゲンアクチベーター活性、プラスミン活性、またはプラスミン様活性を有する分子の投与の代わりに、またはそれに加えて、プラスミノーゲンアクチベーターまたはプラスミンの内因性発現を増加させる物質を投与することができる。そのような物質は、分子をコードするmRNAの転写または翻訳を増加させることによって作用し、分子を安定化させるなどすることができる。それらは、限定されるものではないが、脳由来神経向性因子(BDNF)、トランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)、フォルボールエステル、レチノイン酸を含む。
種々の他の剤を投与して、中枢または末梢神経系において蛋白質分解を増強させて、虚血性、出血性、新形成、外傷、変性、および/または神経発達疾患による神経系の損傷を治療することができる。ある種のこれらの剤は局所投与され、他方、他の剤は、代替投与経路、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、皮下、肺(例えば、肺への吸入による)、鼻投与などを用いて投与される。例えば、スロデキサイドは、細胞tPAを放出し、かくして、tPA活性を増加させるのに用いられるフィブリン溶解剤である。本発明の特定の実施形態において、それは経口投与される(Harenberg,1998)PAIを阻害する為に本発明で用いられる他の剤はエナラプリル(Sakata,1999)及びアンポテリン(Parkinnen,1993)を含む。
プラスミン活性を刺激すると報告されているアスピリンを本発明で用いる(Milwidksy,1991)。特定の実施形態において、アスピリンは用いられず、あるいはもし対象がアスピリンを受けているならば、異なる剤をアスピリンに加えて用いる。
プラスミノーゲンアクチベーター活性、プラスミン活性、またはプラスミン様活性のレベルを増加させるのに用いることができるもう1つの戦略は、tPAまたはプラスミンの内因性阻害剤の1つ以上を阻害する物質を投与することである。そのような内因性阻害剤はPAI−1、PAI−2、PAI−3、およびニューロセルピンを含む。プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤を、本明細書中においては、PAIという。いくつかの実施形態において、プラスミノーゲンアクチベーターを阻害することができないPAIの不活性形態を用いる(例えば、その双方がPAIの種々の不活性な形態を記載するPCT公開WO97/39028;およびLawrence et al.,1997,J.Biol.Chem.272:7676参照)。いずれかの理論に拘束されるつもりはないが、PAIの不活性な形態を活性な形態と比較することができ、それにより、tPAの阻害を妨げることができる。1つ以上のPAIを阻害する低分子およびペプチドは当該分野で知られており、本発明で用いられる。その例はPAI−039(Hennan,2005)、ZEK4044(Liang,2005)、チプラクスチニン(Elokdah,2004)、ピペラジン系誘導体(Ye,2004)、T−686(Ohtani,1996)、フェンドザル(HP129)、AR−H029953XX、XR1853、XR5118およびペプチドTVASS(Gils,2002)を含む。
RNAiを用いて、阻害性蛋白質、例えば、内因性PAIをコードする転写体の発現を低下させることができる。内因性PAIをコードする転写体に標的化されたsiRNAまたはshRNAを、蛋白質分解増強剤と一緒に送達することができるか、あるいは別々に投与することができる。別法として、あるいは加えて、相互にハイブリダイズし、あるいは自己−ハイブリダイズして、疎外性蛋白質の発現を阻害するsiRNAまたはshRNAを形成する1つ以上のRNAの細胞内合成用の鋳型を供するベクター、あるいはそのようなRNAを合成する細胞を投与することができる。
阻害性蛋白質をコードするmRNA転写体に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド、または転写体を切断するリボザイム、またはアンチセンスRNAまたはリボザイムの細胞内合成用の鋳型を供するベクターを用いて、阻害剤の発現をダウンレギュレートすることもできる。本発明のいくつかの実施形態において、PAIに結合し、およびその阻害性活性を阻害するアプタマーを用いる。いくつかの実施形態において、PAIをコードし、かくして、その阻害性活性を阻害する転写体を切断するRNAまたはDNA酵素を用いる。
特定の実施形態において、PAIに結合する抗体または抗体断片を用いて、その活性、または同様な結合特異性を有するいずれかのポリペプチド、例えば、アフィボディを阻害する。該抗体または抗体断片は、抗原に結合するいずれかの免疫グロブリンまたは免疫グロブリン−様分子であり得、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。
分解を引き起こすことによって、隔離によって、発現を低下させることによって、または分子ともう1つの分子との、または細胞とのブロッキング相互作用によるかを問わず、蛋白質増強剤の活性に対して阻害性である分子の効果に逆作用するように作用するいずれの物質も、阻害性分子に逆作用するといわれ、これは本発明の範囲および精神内にある。
本発明は、神経系の損傷に続いての神経系における蛋白質分解活性の増強は増大した構造的再形成を可能とすることができ、それにより、改善された機能的回復に寄与し、可塑性−増強剤の効率を増大させるという認識を含む。しかしながら、本明細書中に記載された発明は、いずれの特定の作用メカニズムも必要としない。本発明は、蛋白質分解増強剤の変種、または改変された形態の使用を含み、該変種または改変された形態は蛋白質分解を増強しない。例えば、本発明は、プロテアーゼの変種(例えば、活性部位領域に突然変異を有する変種)を含み、そこでは、変種がもはや活性な蛋白質分解剤ではないように配列が改変されている。また、本発明は、蛋白質分解増強剤が、それがもはや蛋白質分解を増強しないように化学的に不活化されている実施形態も含む。かくして、本発明のいくつかの実施形態において、蛋白質分解増強剤の不活性な形態は局所投与される。しかしながら、一般には、蛋白質分解増強剤は活性であるか、あるいは本発明に従って用いる場合は活性化され得る。
種々の剤が、蛋白質分解の増強以外を目的として、神経系に対する虚血性、出血性、新形成、外傷、毒性、神経変性、および/または神経発達損傷に罹った対象の神経系に局所投与されてきたことは認識されるであろう。例えば、鎮痛剤は慣用的に投与される。それは、そのような従前に投与された剤のいずれかが蛋白質分解を増強する場合に当てはまれば、そのような剤は本発明から明示的に排除することができ、あるいはもし本発明で用いられれば、本発明の文脈でのその使用はそのような従前の使用とは異なる。例えば、本発明の文脈での使用は、異なる部位への投与を含み、異なる投与手段を用い、可塑性改変剤と組み合わせた投与を含み、および/または異なる用量および/または時間コースなどを使用する。
血餅の溶解を誘発するPAの能力は、前述のように、心筋梗塞および卒中の治療のための、PA、および血栓溶解剤としてのストレプトキナーゼのような他のプラスミノーゲン活性化プロテアーゼの使用に導いた。しかしながら、研究は、虚血症において起こるように興奮性毒性に続いてニューロンによって放出されるtPAはニューロンの損傷を増加させ得ることを示唆する。更に、血管系からのtPAの放出または漏出、および神経系組織に対する損傷に付随する可能性は、血栓溶解療法の害となることが認識されている。かくして、プラスミンおよび/またはtPAのようなプラスミノーゲン−活性化プロテアーゼの適切な投与は、現実には、構造的および/または機能的神経系再組織化および回復に寄与することを示す本明細書中に記載された発明は特に価値がある。
本発明の種々の実施形態は、以下にさらに詳細に記載される以下の方法:(i)本明細書中に記載した投与は神経系に局所的に向けられ、典型的には、血管系を介しては行なわず;(ii)本明細書中に記載された投与は、典型的には、卒中または他の損傷事象の開始から少なくとも3時間後に行なわれ、典型的には、損傷事象の開始から少なくとも12時間以上後に行なわれ;(iii)本明細書中に記載された投与は損傷事象の開始後に多数回(例えば、2、3回またはそれ以上)行なうことができ、および/または損傷事象の開始後に長時間に渡って間欠的にまたは連続的に行うことができ(少なくとも1週間、4週間、1ヵ月(30日)、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、3年以上にわたる);(iv)本明細書中に記載された投与は、典型的には、血餅溶解を達成することを意図する方法を用いて投与された場合に投与の部位において効果的な血餅溶解を引き起こすのに十分であろう用量を用いない;のうちの少なくも1つにおいて、(例えば、血栓溶解の目的で)tPAの従前に報告された使用とは異なることが認識されよう。
変種および断片
ほとんどの蛋白質は、機能的活性の実質的喪失なくしてある量の配列変異を許容することができると認識され、但し、そのような配列変異は、そのような機能的活性に必要な鍵となる残基に影響しないものとする。本発明は、従って、種々の可塑性増強または蛋白質分解増強ポリペプチド(および本明細書中に開示された他のポリペプチド)の変種を含み、そのような変種はかなりの量の生物学的活性を保有する。例えば、該断片は、元のポリペプチドに対して実質的に同様な活性(例えば、関連活性の少なくとも約10〜20%)関連活性の少なくとも約50%などを有することができる。用語「変種」は、その配列が本明細書中に開示されたポリペプチドの連続的サブセットである断片、すなわち、ポリペプチドを含む。本明細書中において目的とするある種のポリペプチドの生物学的に活性な変種または断片は当該分野で知られている。本発明では、いずれのそのような変種または断片の使用も考えられる。例えば、GPEは、本発明で用いるIGF1の生物学的に活性な断片である。具体的には、本明細書中に開示されたポリペプチド、例えば、プラスミンまたはtPAの1つ以上のクリングルドメインが除去された変種または断片が含まれる。本発明で用いられるある種の断片はプロテアーゼドメインおよび、所望により、少なくとも1つのクリングルドメインを含有する。
当該分野でよく知られているように、ある種のアミノ酸は、一般には、特定の特性に関して同様であり、しばしば、ポリペプチドの機能的および構造的特性を有意に改変することなくポリペプチド中の相互に対して置換することができる。例えば、変種は、Stryer,Biochemistry,3rd ed.,1988に関連して定義することができる1つ以上の保存的アミノ酸置換を含有することができる。以下の群中のアミノ酸は、電荷、疎水性、芳香族性などのような側鎖の特性に関する同様な特徴を保有し、本発明の特定の実施形態に従って相互の代わりに置換することができる:(1)脂肪族側鎖:G、A、V、L、I;(2)芳香族側鎖:F、Y、W;(3)硫黄−含有側鎖:C、M;(4)脂肪族ヒドロキシル側鎖:S、T;(5)塩基性側鎖:K、R、H;(6)酸性アミノ酸:D、E、N、Q;(7)環状脂肪族側鎖:P(Pは群(1)内に入ると考えることができる)。当業者であれば、保存的置換の他の定義を用いることもできることを認識するであろう。本明細書中で用いるアミノ酸の略語は、当該分野での通常の用法に従う。
本発明は、ポリペプチドのアミノ酸の数の少なくとも50%と等しい多数のアミノ酸にわたって、本明細書中に開示されたポリペプチドの1つ以上に対して少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一である変種の投与を含む。パーセント同一性が、標準的な方法によって計算することができる。例えば、評価の枠にわたっての第一および第二のポリペプチドの間のパーセント同一性は、ポリペプチドを整列させ、同一性を最大とするようなギャップの導入を可能とする、同一のポリペプチドとは反対である評価の枠内のポリペプチドの数を決定し、枠中のアミノ酸の位置の合計数で割り、100を掛けることによって計算することができる。BLAST2、BLASTP、Gapped BLASTなどのような種々のコンピュータープログラムは整列を生じさせ、目的とする配列の間の%同一性を供する。(デフォルト値を利用する)プログラムで用いるアルゴリズムを用いることができる。
本発明は、アミノ酸残基の20%まで、15%まで、10%まで、5%まで、または2%までが本明細書中に開示されたポリペプチドに対して置換され(例えば、保存的に置換され)、欠失され、または付加された変種を含む。具体的には、集団内に存在する対立遺伝子変種が含まれる。本発明は、本明細書中に開示されたポリペプチドを認識する免疫学的試薬(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体)によって特異的に認識される変種を含み、すなわち、免疫学的試薬は、それがポリペプチドに結合するそれに対して実質的に同様な親和性を持つ(例えば、少なくとも50%と大きなKaを有する)変種に結合する。
本発明は、本明細書中に開示されたポリペプチドに対して実質的に同様な総じての構造を有する変種を含む。例えば、ある種の変種は、その三次元構造(実際の構造または予測された構造)が蛋白質の構造に重ねられた場合に、重複の容量が構造の合計容量の少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%となるように、本明細書中に開示された蛋白質に対して十分な構造的同様性を保有する。更に、変種の部分的または完全な三次元構造は、当該分野で知られた方法を用いて蛋白質を結晶化することによって決定することができる。別法として、あるいは加えて、NMR溶液構造を生じさせることができる(例えば、Heinemann,2001;Wishart D.2005;およびその中の文献参照)。MODELLER(Sali and Blundell,1993)、またはいずれかの他のモデリングプログラムのようなモデリングプログラムを用いて、予測される構造を生じさせることができる。プログラムのPROSPECT−PSPPスイートを用いることができる(Guo,2004)。
本発明の特定の実施形態において、変種は、その変種であるポリペプチドとしての実質的に同様な可塑性改変または蛋白質分解増強活性を有する。本発明の特定の実施形態において、変種は、活性部位残基において置換を有さない。本明細書中に開示されたプロテアーゼのようなセリンプロテアーゼの活性部位残基は当該分野でよく知られている。
本発明の剤を調製する方法
本明細書中に開示された剤は、全て、当該分野で知られており、その製造に適した方法は十分に当業者の技量内にあり、従って、本明細書中において詳細に記載される必要はない。例えば、限定されるものではないが、本明細書中に記載された低分子の多くは、siRNAおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド、およびポリペプチドがそうであるように、公知の方法を用いて化学的に合成することができる。ある種の剤は天然源から精製することができる。
本発明で用いられる、IGF1、IFNγのような可塑性改変剤、および蛋白質分解増強剤、例えば、tPA、またはプラスミン、成長因子などのような他のポリペプチドは天然源から精製することができ、組換えDNA技術を用いて製造でき(例えば、組換えtPA)、純粋に化学的な合成(すなわち、ポリペプチドを生産するのに細胞の使用を必要としない合成)を用いて合成することができる。
組換えDNA技術を用いて目的とするポリペプチドを生産する方法は当該分野でよく知られている。簡単に述べれば、そのような方法は、一般には、蛋白質をコードするmRNAが、発現ベクターが適当な宿主細胞に導入された場合に転写されるように、プロモーターのような発現シグナルに操作可能に会合した、発現ベクターに、ポリペプチドについてのコーディング配列を挿入することを含む。宿主細胞はmRNAを翻訳して、ポリペプチドを生産する。ポリペプチドは、ポリペプチドが培地に分泌されるように、分泌シグナル配列を含むことができる。ポリペプチドは、細胞から、または培地から収穫することができる。トランスジェニック動物および植物を通常は用いて、ポリペプチドを生産する。ウイルスベクターが導入された植物を用いても、ポリペプチドが生産される。
非ペプチド神経伝達物質およびそのアナログ、小さなペプチド、神経的に活性な金属、および本明細書中に開示された他の化合物のような低分子は、典型的には、適切には、標準的な方法に従い、天然源から精製されるか、あるいは化学的に合成される。
本明細書中に開示された剤のいずれも、医薬的に許容される塩、プロドラッグなどとして供することができる。更に、本明細書中に開示されたポリペプチドのいずれも、当該分野で知られた種々の方法を用いて変性することができる。例えば、それらは、ポリエチレングリコール(PEG)またはその変種の添加付加によって変性することができる。
そのような変性はポリペプチドの活性な半減期を増加させることができる(例えば、多数のそのような変性剤を記載し、適当な結合体化手法の詳細を提供するNektar Advanced Pegylation 2005−2006 Product Catalog,Nektar Therapeutics,San Carlos,CA参照)。注射または注入による投与では、本発明の組成物は、典型的には、塩化ナトリウム(例えば、0.9%)またはデキストロース(例えば、5%デキストロース)水性溶液のような医薬上許容される担体または希釈剤と混合される。溶液または凍結乾燥あるいはそうでなければ乾燥された形態のいずれかでの投与のための剤を供することができる。それらは水、生理食塩水など中で復元することができ、続いて、適当な医薬上許容される担体または希釈剤中に希釈することができる。
ポリマー系薬物送達デバイス
本発明は、例えば、神経系に対する虚血性、出血性、新形成、外傷および/または神経発達損傷後において、対象の神経系に移植して、回復または再組織化を促進するための薬物送達デバイスを提供する。薬物送達デバイスは放出物質、可塑性改変剤および、所望により、蛋白質分解増強剤のような1つ以上の更なる活性剤を含む。用語「放出物質」とは、拡散、またはマトリックスの崩壊によって取り込まれた分子を放出するいずれのマトリックスまたは物質もいうのに用いる。本発明の特定の実施形態においては、放出物質が生体適合性ポリマーである。蛋白質分解増強剤は、神経系の再組織化および/または回復を促進するのに有効な量にて放出物質から放出される。活性剤が本明細書中に開示されたもののようなポリマー物質と物理的に会合した薬物送達デバイスを、そのようなデバイスを、本発明の種々の実施形態で用いられる注入ポンプのような機械的薬物送達デバイスから区別するために、「ポリマー系薬物送達デバイス」というが、ポリマー以外の物質を用いることもできることは認識されるべきである。
本発明の特定の実施形態において、可塑性改変剤および、所望により、蛋白質分解増強剤は、生分解性または非生分解性であってよい生体適合性ポリマーマトリックスに取り込まれ、あるいはそうでなければ該マトリックスと物理的に会合する。物理的会合いずれの形態も許容できる。但し、該会合は貯蔵および移植条件下で、所望の時間にわたって活性な剤を放出する十分な時間の間、安定なままであるものとする。例えば、活性剤は、ポリマーマトリックス内にカプセル化し、ポリマーマトリックス内に捕獲し、または絡ませ、ポリマーマトリックスの表面に吸着させ、ポリマーマトリックスに共有結合させるなどすることができる。マトリックスは、標的組織の配置において、またはその近隣において、身体に送達し、または移植される。該剤は、マトリックスが分解し、または侵食されるにつれて、例えば、マトリックスからの拡散、または細胞外環境への放出によって、一定期間にわたってポリマーマトリックスから放出される。いくつかの実施形態において、活性剤はリポソームに取り込まれる。
ポリマーマトリックスは、多数の異なる形状を有することができる。例えば、(ビーズ、マイクロビーズ、マイクロスフィア、ナノ粒子、ナノビーズ、ナノスフィアなどともいうことができる)種々のサイズのミクロ粒子を用いることができる。薬物の送達のためのポリマーミクロ粒子およびそれらの使用は当該分野でよく知られている。そのような粒子は、典型的には、形状がほぼ球状であるが、不規則な形状を有してもよい。一般に、マイクロ粒子は500ミクロン未満、より典型的には、100ミクロン未満の直径を有し、ナノ粒子は1ミクロン以下の直径を有する。もし粒子の形状が不規則であれば、容量は、典型的には、マイクロスフィアまたはナノスフィアのそれに対応するであろう。マイクロスフィアを作製するための方法は文献に、例えば、米国特許第4,272,398号;Mathiowitz and Langer,1987;Mathiowitz et al.,1987;Mathiowitz et al.,1998;Mathiowitz et al.,1990;Mathiowitz et al.,1992;およびBenita et al.,1984に記載されている。固体ナノ粒子またはマイクロ粒子は、限定されるものではないが、噴霧乾燥、ナノ沈殿、相分離、単一および二重エマルジョン溶媒蒸発、溶媒抽出、および単純なおよび複雑なコアセルベーションを含めた当該分野で知られたいずれの方法を用いてもなすことができる。好ましい方法は、噴霧乾燥及び二重エマルジョンプロセスを含む固体剤−含有ポリマー組成物は、造粒、押出、および/または球形化を用いて作成することもできる。
粒子を調製するのに用いる条件を変更して、所望のサイズまたは特性(例えば、疎水性、親水性、外部形態、「粘着性」、形状など)の粒子を得ることができる。粒子を調整する方法、および用いる条件(例えば、溶媒、温度、濃縮、空気流速など)は、カプセル化される剤、および/またはポリマーマトリックスの組成に依存してもよい。もし前述の方法のいずれかによって調製される粒子が所望の範囲の外側にあるサイズ範囲を有するならば、粒子は、例えば、ふるいを用いて整粒することができる。
固体ナノ粒子またはマイクロ粒子は、生理食塩水のような医薬上許容される流体に懸濁させ、または分散させることができ、神経系に(例えば、ポンプをもちいて)注射または注入によって局所投与することができる。
固体ポリマー剤組成物(例えば、ディスク、ウエハ、チューブ、シート、ロッドなど)を、当該分野でよく知られた種々の方法のいずれかを用いて調製することができる。例えば、剤が送達されるべきおよび/またはポリマーが分解し、または望ましくなく反応性となる温度未満に融点を有するポリマーの場合には、ポリマーを融解させ、送達すべき剤と混合し、次いで、冷却によって固化させることができる。固体製品は溶媒キャスティングによって調製することができ、そこでは、ポリマーを溶媒に溶解させ、剤をポリマー溶液に溶解させ、または分散させる。溶媒の蒸発に続き、物質はポリマーマトリックス中に残る。このアプローチは、一般には、ポリマーが有機溶媒に溶解性であること、および剤が溶媒に可溶性であるか、または分散性であることを必要とする。なお他の方法において、ポリマーの粉末を剤と混合し、次いで、圧縮して、インプラントを形成する。ポリマーマトリックスおよび蛋白質分解増強剤及び、所望により、1つ以上の他の活性剤を含むマイクロ粒子またはナノ粒子を、所望により、バインダーを用いて圧縮して、インプラントを形成することができる。
ポリマーマトリックスは、一定範囲の異なるサイズおよび容量を有することができるウエハ、チューブ、ディスク、ロッド、シートなどのような種々の形状に形成することができる。例えば、重合に先立って、ポリマー溶液を適当な形状および寸法を有する型に注ぐことができる。重合に続き、該物質は型の形状を採り、インプラントとして使用できる。剤は重合に先立って溶液に存在させてもよく、あるいはインプラントにその製造後に剤を含浸させてもよい。
その多数が生分解性である適当な生体適合性ポリマーは、例えば、ポリ(ラクチド)ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカルボネート、ポリエステルアミド、ポリアンヒドライド、ポリ(アミド)、ポリ(アミノ酸)、ポリエチレングリコールおよびその流動体、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリエーテレート、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、ポリエチレングリコールおよびポリオルトエステルのコポリマー、生分解性ポリウレタンを含む。他のポリマーはポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(エチレングリコール)、およびポリ(テトラメチレンオキサイド)のようなポリ(エーテル);メチル、エチル、他のアルキル、ヒドロキシエチルメタクリレートのようなビニルポリマー−ポリ(アクリレート)およびポリ(メタクリレート)、アクリル酸およびメタクリル酸、およびポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、およびポリ(酢酸ビニル)のようなその他;ポリ(ウレタン);アルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、エステル、ニトロルセルロース、および種々の酢酸セルロースのようなセルロースおよびその誘導体;ポリ(シロキサン)などを含む。他のポリマー物質は、多糖(例えば、アルジネート)、キトサン、アガロース、ヒアルロン酸、ゼラチン、コラーゲン、および/または他の蛋白質、およびその混合物および/または変性された形態のような天然に生じる物質に基づくものを含む。本明細書中に開示されたポリマーのいずれかの化学的流動体(例えば、化学基、アルキル、アルキレンの置換、付加、ヒドロキシル化、酸化、および当業者によって日常的になされた他の変性)が考えられる。更に、これらのポリマーのいずれかのブロックコポリマーを含めた、ブレンド、グラフトポリマーおよびコポリマーを用いることができる。膨大な数の異なるポリマー変種が入手可能であると認められる。ある種のこれらのポリマーは適当な開始剤または架橋剤を用いて、重合させることを必要とするのは理解されるであろう。
当業者であれば、適当なポリマーおよび製造方法を選択するにおいて、剤の安定性に適合する物質および方法を選択するのが重要であるのを理解するであろう。例えば、剤の実質的分解または変性をもたらすようであり、それは、生物活性の喪失をもたらし得る、処理温度を回避するのが望ましいであろう。また、組成物をテストして、剤が所望の期間に渡って有意な量で放出されるのを確証するのも望ましいであろう。
一般に、以下の基準が、活性な剤の送達で用いるべき物質の選択で重要である:(1)最小の細胞傷害性、または細胞傷害性無し、(2)免疫応答および炎症の最小の誘導、または誘導無し、(3)水性溶液および生理学的条件に対する適合性、および(4)取り込むべき剤の安定性に対する、物質およびその加工方法の適合性。制御された速度の生分解性を持つ物質を利用するのが望ましいであろう。架橋およびモノマー濃度のような特徴は、剤の分解および放出の所望の速度を供するように選択することができる。本発明のポリマー薬物送達デバイスは、緩衝液、球形化剤、充填剤、界面活性剤、崩壊剤、バインダーまたはコーティングのような1つ以上の医薬上許容される物質を含んでもよいことは認識されるであろう。例示的な物質は米国特許第5,846,565号に記載されている。
本発明の薬物送達系で用いる種々のポリマーを精製し、または合成する方法は当該分野で知られている。治療的に活性な剤をポリマーマトリックスに取り込む方法は、当該分野で知られているようである。例えば、活性剤を、重合に先立ってポリマーと溶液中で合わせることができるか、あるいは固体形態で供し、ポリマーが重合するにつれてカプセル化され得る。多数の異なる剤が、そのようなポリマーマトリックスを用いてCNSに送達されてきた。例えば、化学治療剤は、成型された形態に作製されたポリマーマトリックスに剤をカプセル化し、マトリックスを脳に外科的に移植することによって、神経系中の腫瘍に送達されてきた(例えば、米国特許第5,626,862号;第5,651,986号;および第5,846,565号参照)。活性剤がポリマーマトリックス中で供される更なる薬物送達デバイスが記載されている(例えば、米国特許第4,346,709号および第5,330,768号;Wu,1994;Dang,1996;Fleming,2002;およびWestphal,2002参照)。
前記参照で用いたものと同様な方法が、本発明の剤を局所投与するのに用いられる。本発明の特定の実施形態において、薬物送達デバイスは制御されたまたは維持された放出を提供し、すなわち、デバイスに含まれた蛋白質溶解増強剤およびいずれかの他の剤は長期間にわたって、例えば、数時間〜数日、数週間、または数ヶ月にわたって放出される。
ポリマー剤薬物送達デバイスの調製は、当該分野で知られた標準的な方法を用いて行うことができる。簡単に述べれば、薬物送達デバイスは、典型的には、いくつかの方法のうちの一つで調製された。例えば、ポリマーを融解させ、送達すべき物質と混合し、次いで、冷却によって固化される。そのような融解物製造プロセスは、一般には、送達すべき物質およびポリマーそれ自体が分解し、または反応性となる温度未満の融点を有するポリマーを利用する。別法として、または加えて、デバイスは溶媒キャスティングによって調製することができ、ポリマーは溶媒に溶解させ、送達すべき物質はポリマー溶液に溶解させ、または分散させる。次いで、溶媒を蒸発させ、物質がポリマーマトリックスに残る。溶媒キャスティングは、典型的には、有機溶媒に可溶性であるポリマーを利用し、カプセル化すべき薬物は溶媒に可溶性であるか、または分散性であるべきである。同様なデバイスは、相分離、または乳化、あるいは噴霧乾燥技術さえによって作製することができる。尚他の方法において、ポリマーの粉末を剤と混合し、次いで、圧縮して、インプラントを形成する。
インプラントを製造する方法は造粒、押し出し、球形化も含む。所望の賦形剤およびマイクロスフィアも含めた乾燥粉末ブレンドが生産される。乾燥粉末は、水、または油のようなマイクロスフィア用の他の非溶媒で造粒し、それがエクストゥルーダースクリーンを通過するにつれ、湿潤密集物質の「ストリング」または「繊維」を形成する。エクストゥルーダーを通過させる。押出物ストリングはスフェロナイザーに入れられ、これは、ストリングの破壊、および粒子、スフェロナイザー壁および回転するスフェロナイターベースプレートの間の反復した接触によって球状粒子を形成する。インプラントを乾燥し、スクリーニングして、凝集体および微細な物を除去する。
これらの方法を用いて、マイクロインプラント(放出すべき薬物を取り込むマイクロ粒子、マイクロスフィア、およびマイクロカプセル)、スラブまたはシート、フィルム、チューブおよびその他の構造を作成することができる。注入または注射用の好ましい形態は、本明細書中の他の箇所に記載されているように、マイクロインプラントである。
蛋白質およびペプチドは首尾よくポリマーマトリックスに取り込まれてきた。例えば、インスリンは生分解性ポリマーマイクロカプセルに取り込まれ、遊離形態と実質的に同一の生物活性を保有する(Takenaga 2004)。天然および合成コラーゲン状マトリックスは、種々の異なる成長因子のキャリアとして用いられてきた(Kanematsu,2004)。
本発明で特に目的とするもののうち、ヒドロゲル、すなわち、実質的な割合の水を含有するゲルを形成するポリマーである。ヒドロゲルは、例えば、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上の量の水をw/wベースで含有することができる。ポリマー物質は、対象への投与に先立って、またはその後に、ヒドロゲルに形成することができる。例示的な物質はhPLA−b−PEG−PLAマクロマーを含む。該剤は、重合を開始するに先立ってポリマー溶液と混合される。他の適当なヒドロゲル−形成性ポリマーは当該分野で知られている。例えば、種々の多糖、ポリペプチド、およびその誘導体を用いることができる。例示的な多糖はアルギネート、コラーゲン、セルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、キトサン、前述のいずれかの誘導体などを含む。ヒドロゲルを形成する他の物質は、PluronicsTMまたはTetronicsTMのようなポリエチレンオキサイド−ポリプロピレングリコールブロックコポリマー、ポリ(ビニルアルコール)、シリコーン、ゼラチンのようなポリペプチド、ポリエチレングリコールおよび関連分子、ポリエチレンオキサイドおよび関連分子、あるいは誘導体などのような合成ポリマーを含む。ヒドロゲル前駆体物質は、相互に架橋するようになる官能基を含有することができ、または含有するように変性することができる。所望により、光重合を使用する。いくつかの実施形態において、米国特許第6,153,211号に記載されたもののような生分解性マクロマーを含む薬物送達デバイスを用いる。
本発明のいくつかの実施形態において、可塑性改変剤、蛋白質分解増強剤、または双方を、所望により、エステル結合またはジスルフィド結合のようなイン・ビボで切断可能な部位を介してポリマーに共有結合させる。
本発明のポリマーベースの薬物送達デバイスは、CNS内のいずれかの所望の配置に移植することができる。例えば、限定されるものではないが、ポリマーベースの薬物送達デバイスは(例えば、卒中後の虚血性領域のような損傷の部位の近くに、または反対の脳半球に)脳に、または脳の基部にて、脳質のようなCSF充填空間にてまたはその近くに移植することができる。CSF充填空間に移植されたデバイスの場合には、デバイスは剤をCSFに放出させ、それが空間を囲う脳の領域まで拡散するのを可能とする。デバイスのサイズに依存して、それはPNSの神経、神経管、神経節などにおいて、またはそれに隣接して移植することができる。例えば、マイクロインプラントは、神経の上膜または神経周膜内に、またはその内部に移植することができる。
移植可能なマイクロチップベースの送達
本発明の特定の実施形態において、その各々を薬物、試薬、または他の化学物質のいずれかの組合せで充填することができる、数ダース〜数百または数千のマイクロ貯蔵庫を含有する、外部または移植可能なケイ素またはポリマーマイクロチップを用いて神経系に1つ以上の剤が送達される。マイクロ−貯蔵庫は、予めプログラムされたマイクロプロセッサ、遠隔制御、またはバイオセンサーを用いて所望の時点に、および/または必要に応じて開けることができる。所望であれば、これらのアプローチを用い、複雑な化学放出パターンを達成することができる。いくつかの実施形態において、マイクロ貯蔵庫は経時的に分解する「キャップ」を有する。放出は、キャップの厚さおよび/または組成を変化させ、それにより、放出が検出可能なかつ実質的に所定の時点において起こるのを可能とすることによって制御することができる。キャップ物質は、例えば、分解性ポリマーであり得る。いくつかの実施形態において、キャップ材料は非分解性であって、送達すべき分子に浸透性である。用いる材料の物理的特性、その架橋の程度、およびその厚みは、分子がキャップ材料を通って拡散するのに必要な時間を決定するであろう。もし放出系からの拡散が制限的であれば、キャップ材料は放出を遅延させる。もしキャップ材料を通っての拡散が制限的であれば、キャップ材料は、放出時間の遅延に加えて、分子の放出速度を決定する。
いくつかの実施形態において、送達すべき剤は、液体溶液またはゲルとして、それらの純粋な形態で貯蔵庫に挿入され、それらは放出物質内に、またはそれによってカプセル化することができる。放出材料が、例えば、生分解性または非生分解性ポリマーであってよい。代表的なポリマーは前述のものを含む(例えば、マイクロチップ−ベースの送達系の議論については、Santini et al.,2000;米国特許第5,797,898号および第6,808,522号;および米国特許公開2002/0072784、2004/0166140、および2005/0149000参照)。マイクロチップは、(前述のように)CNS中にいずれかの所望の配置において移植することができる。デバイスのサイズに応じて、それはPNSの神経、神経管、神経節などにおいて、またはそれに隣接して移植することもできる。例えば、マイクロチップは神経の上膜または周膜内に、またはその内部に移植することができる。
局所送達のための方法
本発明の特定の実施形態において、可塑性改変剤および、所望により、蛋白質分解増強剤を含む組成物は局所送達によって対象に投与された。局所送達は多数の異なる方法で達成することができる。中枢神経系内の、または末梢神経系内の神経、神経管、または神経節内の、またはそれに隣接する部位における前述のもののようなポリマーベースの薬物送達デバイスの移植は、局所送達を達成するための適当な方法である。
内部(移植可能)または外部ポンプを、本発明の実質的に流体の組成物を投与するのに使用することができる。そのようなポンプを、典型的には、それから連続的または完結的放出が標的組織へ起こり、またはカテーテルを介してその隣接において起こる薬物貯蔵庫を含む。本発明の特定の実施形態において、処理は、ポンプにカップリングされた基部側端部を有し、かつ治療容量の本明細書中に記載された1つ以上の剤を脳組織中の、脊髄への、所定の注入へ本明細書中に記載された1つ以上の剤の治療容量を脳組織または脊髄へ注入するための放出部分を有するインプラント可能なポンプおよびカテーテルを用いて行なわれる(内送達)。
注入(この用語は、注射以外の手段による身体中の配置への実質的に流体の物質の投与をいうのに用いられる)は、連続的に、またはほとんど連続的に行うことができ、あるいは完結的であってよい。ポンプは、所定の時間間隔で所定量の剤を放出するようにプログラムすることができる。(Medtronic,Inc.,Minneapolis,MNに譲渡された)米国特許第4,692,147号は、適当なポンプを記載する。特定の実施形態において、Synchromed(登録商標)注入システム(Medtronic,Inc.,Minneapolis,MNによって製造;URL www.medtronic.comを有するウェブサイト参照)として知られた1つ以上の注入システムを用いる。しかしながら、ポンプは、貯蔵庫からの移動する流体で用いられるいずれのデバイスの形態を取ることもできるのは認識されるであろう。機械的、圧力ベースの浸透圧、または動電学的な手段を用いることができる。
剤を脳実質に送達するためには、放出部分が脳実質に存在するように、ポンプに付着されたカテーテルを、移植することができる(例えば、それらを対象の体に移植し、活性剤の脳中所望の配置への投与を指令するための種々の適当なシステムおよび方法の記載については、米国特許第6,263,237号参照)。連続ICMは、脳実質への直接的な治療剤の領域的送達の比較的新しい技術であり、これは、大きな分子さえ均一に分布させる能力を有するバルク気流を確立している(例えば、剤の脳内の病気への投与の例については、例えば、Laske,1997参照)。
本発明の特定の実施形態において、該剤は、中枢神経系のCSF含有キャビティまたはチャンバーの1つ以上、例えば、頭蓋骨の底に位置する脳質または大槽に送達される。当該分野でよく知られているように、脳内には2つの側方脳質および中線第三および第四脳質がある。注入ポンプを用いて剤を脳質または大槽へ送達するためには、硬質部分が脳質または槽に存在するようにカテーテルを移植することができる。該剤は、脳質または大槽から外へ拡散する。従って、これらの配置への送達は、剤を特異的部位のより近くに局所化させるよりは該剤の脳の比較的広い領域への送達を可能とする。脳質内または槽内投与は、神経系への投与であると考えられる。本発明の特定の実施形態において、CSF含有空間、例えば、脳質への送達は、先端が該空間へアクセスするように、カテーテルを頭蓋骨を通って外科的に移植することによって達成させる。次いで、カテーテルの他端を貯蔵庫(例えば、Ommaya貯蔵庫)へ連結させ、これを頭皮直下に入れる(皮下)。この方法は、科学治療剤の送達で用いられている(例えば、Ommaya and Punjab,1963;Galicich and Guido,1974;Machado,1985;Obbens,1985;およびAl−Anazi,2000参照)。
もし対象が脊髄に対する損傷を被っていれば、放出部分が脊髄の内空間に存在するようにカテーテルを移植し、他方、他端はポンプ貯蔵庫に連結される。剤を脊髄液に(すなわち、内)投与する方法は当該分野でよく知られている。そのような方法は慢性疼痛の治療で通常は用いられ、日常的には、数ヶ月の期間に渡って鎮痛剤を送達するのに用いられる。同様な方法が本発明で用いられる(例えば、多数の異なる疾患の治療のための種々の異なる治療剤の送達用の移植可能なポンプの使用の記載については、Lamer,1994;Paice,1996;Winkemuller,1996;Tutak,1996;およびRoberts,2001参照)。
PNSへの送達のためには、適当な方法は、例えば、神経損傷の部位に隣接する神経または神経幹への注射または浸潤、およびポリマーベースの送達デバイスまたはマイクロチップの、神経損傷部位に隣接させた移植を含む。麻酔剤をPNS内の多様な神経、神経束などへ投与する方法は当該分野でよく知られており、これらの方法のいずれも本発明との関係で適応可能である。
本発明の特定の実施形態においては、ポリマー、可塑性改変剤および、所望により、1つ以上のさらなる活性な剤を含む溶液は、前述の手段のいずれかを用いる注射または注入によって投与される。ポリマーは組立てられて、例えば、生理学的流体との接触の後に投与に際してゲルを形成する。そのようなアセンブリは、例えば、一価または二価カチオンへの暴露によって誘発することができる。例えば、米国特許公開2002/0160471は、ヒドロゲルを形成する自己アセンブリペプチドを記載する。米国特許第6,129,761号は、種々の異なる自己アセンブリポリマー組立を容易とするのに重合剤または架橋剤を必要とするポリマーを記載する。ある種のこれらのポリマーは組立てられて、対象への投与の後に生理学的流体との接触に際してヒドロゲル構造を形成する。もう1つの実施形態において、コラーゲンベースの系が用いられる(例えば、細胞または治療剤の送達のための注射可能なコラーゲンベースの系を記載するPCT公開WO00/47130参照)。
送達位置、タイミング、治療の持続および用量
可塑性改変剤は、いずれかの投与経路、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、皮下、肺(例えば、肺への吸入による)、鼻投与などを用いて投与することができる。該経路および用量は、過度な副作用なくして神経系において効果的な濃度を達成するように選択されるであろう。
本発明の組成物を投与すべき、または移植すべき位置は、治療すべき特定の疾患に関連して選択することができる。例えば、もし対象が、例えば、卒中、外傷などの結果として脳に対して負傷または損傷を被ったならば、組成物は脳実質へ、または脳の脳質の1つ以上へ、または大槽へ送達することができる。もし対象が脊髄に対する負傷または損傷を被ったならば、本発明の組成物は、例えば、組成物を脊髄内に移植し、または投与することによって、脊髄へ送達することができる。もし可塑性改変剤または本発明の組成物が血液−脳関門を横切るならば、それは、例えば、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮内、経皮、皮下、肺(例えば、肺への吸入による)、鼻投与などによって全身投与することができる。
剤が投与されるべき領域は、例えば、損傷された領域(例えば、虚血性病巣)、または損傷された領域に隣接する領域であってよい。剤は、限定されるものではないが、運動皮質、視覚皮質、聴覚皮質、および体知覚皮質を含めた感覚皮質、皮質の言語領域、前部皮質、内包、脳幹神経節、視床、および/または他の前述の領域などを含む、脳の主な細分(皮質、海馬、小脳、視床、中脳、脳幹)のいずれかを含めた脳内のいずれかの領域、核または機能的領域に投与することができる。前述のように、脳内の多数の特異的領域は、解剖学的および組織学的考慮に基づいて規定されている。加えて、種々の仕事を実行することを担う脳中の領域は、機能的理由で規定さてており、当該分野でよく知られている(例えば、Kandel,上述;およびVictor and Ropper,上述参照)。
本発明の特定の実施形態において、損傷された領域が同定される。損傷された領域は、当該分野で知られた種々の異なるイメージング技術を用いて同定することができる。例えば、限定されるものではないが、適当な方法は、磁気共鳴イメージング(MRI)のようなイメージング技術、所望により、灌流、拡散、または双方のような血流に関連するイメージング特徴、コンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放出断層撮影法(PET)、超音波などを含む。構造および/または機能をイメージするイメージング技術が利用できる。機能的実験は、例えば、グルコースのような標識された基質を用いて実行して、代謝的に不活性な、および/または刺激に応答しない脳の領域を同定することができ、これは、それらが機能的には不活性であることを示唆する(例えば、Grossman and Yousem,supra参照)。
臨床的診断を、イメージング技術の代わりに、またはそれに加えて用いることができる。例えば、損傷が起こった領域は、神経学的調査を行うことによって同定することができる。神経学的調査で気が付いた血管は、中枢および/または末梢神経系の特定の領域に対する損傷に相関させることができる(Kandel,supra;およびVictor and Ropper,supra)。発達または成人起源の神経精神障害のようなある種の疾患においては、遺伝子テストを臨床的診断に加えて用いることができる。
これまでの方法のいずれかを(例えば、卒中または負傷のような損傷事象から数時間〜数日以内に)急性に、または(事象から数日〜数週間、数ヶ月、または数年後に)より後の時点で利用することができる。神経系病巣の外観の特徴的進化は当該分野でよく知られており、従って、実行者は、損傷を引き起こす事象が起こった時に対するいずれかの所望の時点に損傷した組織の位置を容易に同定することができる。
本発明の特定の実施形態において、剤は、組織壊死および/または瘢痕組織形成がCNSで起こった部位に、またはそれに隣接して送達される。壊死の領域は、前述のもののような種々のイメージング技術を用いて同定することができる。また、兆候を用いて、マトリックスを移植すべき適当な位置の選択を導くこともできる。例えば、もし対象が運動、感覚、言語行動などのような特定の機能の損傷を経験するならば、その機能の制御または達成を通常は担う脳の部分、または対象の身体の両側にある対応する領域を、本発明の薬物送達デバイスの移植に適した部位として選択することができる。標準的な外科的技術を用いることができる。
本発明のいくつかの実施形態において、該剤は、梗塞によって損傷されている領域に隣接する領域に、例えば、梗塞周辺領域に投与される。いずれかの理論に拘束されるつもりはないが、梗塞周囲領域は、卒中後の臨床的に関連する皮質再形成の部位のようである。例えば、該剤は、梗塞領域の端部からほぼ0.5cmまで、梗塞領域の端部から1.0cmまで、または梗塞領域の端部から2cmまで位置する部位に投与することができる。いくつかの実施形態において、剤は、梗塞領域に直ちに隣接する、例えば、梗塞領域の端部から0.5cmまでの部位に投与される。本発明のいくつかの実施形態において、該剤は、卒中後に重篤な虚血症の領域に隣接する虚血性部分に投与される(例えば、Furlan et al,1996)。虚血性部分は、温和〜中程度の虚血症を経験するが、卒中後一定期間(例えば、数時間まで、またはそれ以上)生きたままである脳組織の領域であり、もし灌流が再度確立されれば、および/または神経保護剤の使用を介して救済することができる。虚血性部分は、例えば、拡散および灌流MRIを用いて操作的に定義することができるSchlaug et al.,1999;およびKidwell et al.2003)。当業者であれば、適当な定義および測定技術を選択することができるであろう。
本発明のいくつかの実施形態において、該剤は、損傷が起こった側から脳の反対側の位置に投与される。投与の部位は、損傷された領域に対して実質的に対称に位置し得る。いずれかの理論に拘束されるつもりはないが、脳の特定の領域に対する損傷後に、両側に位置した領域は再度組織化されて、損傷した領域によって従前に行われた機能について担当する。例えば、通常は(例えば、損傷前には)左側についての運動の命令を発する脳の部分のみが再組織化して、従前は右側に命令した脳の部分に対する損傷後に両側に対する命令を発することができる。
前述のように、注射または注入ポンプによる送達は、本発明の剤が液体に溶解された組成物で、および適当な寸法のミクロ粒子を含む組成物に適している。本発明のポリマーベースの薬物送達デバイスは、典型的には、それらが所望の位置において活性剤を放出するように、神経系における適当な位置にて対象に移植されるであろう。例えば、それらは脳実質に移植することができる。また、それらは、本発明の種々の実施形態においては、脳質に、または脊柱管に移植することもできる。移植のための位置は、神経系中の所望の位置において、すなわち、典型的には、効果的な濃度を達成することが望まれる位置に合理的に近くにて、活性な剤の有効な量を達成するように選択される。注意を払って、可能な程度まで神経系の損傷していない部分の破壊を回避する。イメージングを用いて、本発明の組成物および薬物送達デバイスの投与または移植を導くことができ、例えば、それらは定位ガイダンス下で投与し、または移植することができる。
剤は連続的にまたは間欠的に投与することができる。間欠的なまたはパルス的な送達を、剤の活性な半減期に関連して選択された時点において行って、治療的に有用な用量を維持することができ、および/または日周期のような生理学的パターンに従って、あるいは対象が特定の活動に携わっている、または携わっていない期間の間に行うことができる。もし剤がポンプまたはマイクロチップのような移植されたデバイスを用いて投与されるならば、外部コントローラーを用いて、所望の時点で放出を誘発することができるか、あるいはデバイスを、特定の時点または間隔で剤を放出するようにプログラムすることができる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、脳または脊髄を損傷する事象の後に、あるいは有限な時間の間の神経精神障害または神経発達障害の診断後に対象に投与することができる。例えば、本発明の組成物は、1週間まで、4週間まで、2ヶ月まで、6ヶ月まで、12ヶ月まで、18ヶ月まで、2年まで、5年まで、10年まで、20年まで、またはそれ以上の間に対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、脳または脊髄を損傷する事象後に、または神経精神障害または神経発達障害の診断後に、対象の人生の残りの間に対象に投与することができる。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、脳または脊髄を損傷する事象後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後に直ちには投与されない。しかしながら、数個の例を挙げると、投与はある種の他の治療的戦略(例えば、挙動療法)が行われた後に;対象が所望のレベルの健康に到達した後に;対象が所望の年齢に到達した後に開始することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、脳または脊髄を損傷する事象後に、または神経精神障害または神経発達障害の診断の後に、少なくとも1週間、少なくとも4週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも2年、少なくとも5年、少なくとも10年、少なくとも20年、またはそれ以上の間投与される。
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は一定期間投与することができ、次いで、中断することができる。例えば、対象が投与に応答する場合、(例えば、もし兆候が改良されたならば、もし損傷が逆行されたならば、もし可塑性が改変されたならば、もし機能が神経系に対して回復されたならば、もし神経の発達が刺激されたならば)、投与は中断することができる。もう1つの例を挙げれば、対象が少なくとも1つの所望のエンドポイントまたは治療の節目に到達したならば、投与は中断することができる。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、中断する前に、1週間まで、4週間まで、2ヶ月まで、6ヶ月まで、12ヶ月まで、18ヶ月まで、2年まで、5年まで、10年まで、20年まで、またはそれ以上の長さであっても対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、中断された本発明の組成物の投与は、投与中断後いずれかの時点において再開することができる。しかしながら、1つの過程的な例を挙げれば、(i)可塑性改変剤は、神経発達障害との診断後に対象に投与することができ;(ii)対象の兆候は消失するかもしれず;(iii)可塑性改変剤の投与は中断でき;(iv)兆候は戻ることができ;および(v)可塑性改変剤の投与は再開することができる。いくつかの実施形態において、投与は、投与が再開される前に、4週間まで、2ヶ月まで、6ヶ月まで、12ヶ月まで、18ヶ月まで、2年まで、5年まで、10年まで、20年まで、またはそれ以上の長さの間さえ中断することができる。
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物は、例えば、卒中または損傷のような損傷事象の開始または発生の後直ちに、ないしはかなり後に、例えば、少なくとも3時間後に変化させて時々投与される。例えば、開始投与は、損傷事象の開始または発生から数分〜数時間、例えば、少なくとも6、12、24、36または48時間であってよい。本発明の特定の実施形態において、開始投与は損傷事象の開始または出現後24時間〜1週間、損傷事象の開始または発生から1週間〜1ヶ月後、または損傷事象の開始または発生後1〜3ヶ月、3〜6ヶ月、6〜12ヶ月である。開始投与は、具体的損傷事象の開始または発生から1年を超えて、例えば、1〜5年の間などにおいて、時々起こり得る。本発明のいくつかの実施形態において、開始投与は、対象が機能的回復のプラトーに到達した後に起こる。例えば、対象は1つ以上の標準化されたテストについて改善を呈しなかってもよく、あるいはこれまで1〜3ヶ月、3〜6ヶ月以上の間に主観的な改善を経験していなくてもよい。神経精神障害、神経変性疾患、栄養剥奪、新形成病、および特異的な同定可能な損傷事象がない他の疾患の治療では、投与は病気の診断後にいずれの時点で行うこともできる。
その間に治療を行う合計時間、およびそのような期間内での治療の数は変化させることができる。治療の合計持続(すなわち、最初および最後の治療の間の時間間隔)は数日〜数週間、数ヶ月または数年の間の範囲とすることができる。例えば、合計持続は1日;1週間;4週間;1、3、6、9または12ヶ月、1〜2年;2〜5年;2および10年;2および20年などの間であり得る。もし剤が、連続的に投与されるに加えて、またはそれの代わりに区別される用量にて投与されるならば、対象は単一用量、〜数ダース用量のどこか、あるいは数百または数千用量さえ受けることができる。用量の間の時間間隔は変化させることができる。例えば、毎日規定された時間の間、例えば、10分/日、1時間/日などの間、剤を投与するのが望ましいであろう。
可塑性改変剤の用量は、特定の剤、治療すべき疾患、投与の経路、および他の関連因子をコードして選択されるであろう。用量(または複数用量)は、軸索の成長または発芽を促進し、シナプス結合の構造的再組織化を促進し、新しいシナプス結合の形成を増加させ、樹状突起棘運動性を増加させ、構造的または機能的変性(例えば、そうでなければ起こることが予測されるであろう変性)またはこれまでのいずれかの組合せに有効な量であり得る。該用量は約0.001〜100mg/kg体重、例えば、約0.01〜25mg/kg体重の範囲とすることができる。用量は、例えば、1μg/kg〜100mg/kg間、例えば、10μg/kg〜10mg/kg間の範囲とすることができる。例示的な用量は0.1〜20mg/kg体重、例えば、約1〜10mg/kgの範囲である。
蛋白質分解増強剤の用量は、可塑性改変剤の効果を増強するように選択されるであろう。典型的には、蛋白質分解増強剤の各投与のための用量は、血管系に投与された場合に有意な血餅の溶解を引き起こすのに必要であろう用量よりも有意に低いであろう。蛋白質分解増強剤、例えば、tPAについての例示的な非限定的用量範囲は、以下の:(i)細胞外流体中、または脳質または脊柱管のようなCSF含有キャビティ中で、10〜100,000IU/ml間、または100〜10,000IU/ml間、または100〜1,000IU/ml間の濃度を達成するのに十分な用量;1μg/日〜10mg/日間の用量;1μg/日〜1mg/日間の用量;5μg/日〜500μg/日間の用量;10μg/日〜100μg/日間の用量、などの1つ以上を含む。
種々の投与レジメンを用いることができる。例えば、最初に比較的長い「負荷用量」を与え、次いで、より小さな用量を連続的にまたは間欠的に投与して、治療すべき神経系の領域において有効な濃度を達成するのが望ましいであろう。また、一般に、より局所的に向けられた送達であれば、必要であろう合計用量はより少ないと認識されるであろう。かくして、特異的脳領域へのカテーテルを介する直接的投与は、脳質への送達よりも低い合計用量を必要とするであろう。さらに、損傷の領域がより大きければ、および/または必要な再組織化および/または回復の量が大きければ、用量はより大きなものとなろう。
所望ならば、可塑性改変剤(またはその投与が本発明において考えられるいずれかの他の剤)の濃度が、例えば、対象のCSFでモニターすることができる。用量はそれに従って調整して、所望の濃度を得ることができる。
本発明の特定の実施形態において、剤は、例えば、1つ以上のリハビリ活動において対象の従事の間、それに先立って、またはそれに続いて、リハビリ療法に対する規定された時間の関係で投与される、例えば、放出される。剤は、例えば、活動に先立って5分〜12時間まで、活動後5分〜12時間まで、活動の間に、または治療セッションの開始に先立って直ちに、またはその後直ちに、例えば、療法セッションの開始に先立って5分まで、または療法セッションの開始後5分まで投与することができる。「療法セッション」は、対象が、CNSまたはPNSに対する損傷後に対象の機能的回復を助ける目的で、あるいは神経発達障害に罹った対象の機能を改善するために、医療サービス提供者によって提案された、または処方された活動を実行するのに専念するいずれかの期間を意味する。医療サービス提供者は療法セッションの間に存在する必要はなく、例えば、対象は独立てして、または医療サービス提供者以外の個人の助けを借りて活動を実行してもよい。
さらなる活性剤、細胞、および遺伝子療法の投与
本発明の種々の実施形態において、可塑性改変剤および、所望により、蛋白質分解増強剤の投与と組合せて、1つ以上のさらなる活性な剤が対象に投与される。さらなる活性剤は、同時にまたは順次に投与することができる。さらなる活性な剤は、局所的に送達することができるが、別法として、いずれかの適当な投与経路(例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、肺、鼻投与など)を用いて全身投与してもよい。さらなる活性な剤は、蛋白質分解増強剤と同一の溶液または投与形態で送達してもよい。さらなる活性な剤は、蛋白質分解増強剤と一緒にポリマーマトリックスに取り込んでもよく、ポリマーベースの薬物送達デバイスを介して送達してもよく、あるいは本明細書中に開示されたポンプまたはいずれかの他の送達系を用いて送達してもよい。
本発明のいくつかの実施形態において、蛋白質分解剤以外の剤を投与し、該剤はペプチド結合以外の結合において細胞外マトリックスの1つ以上の成分を切断する。例えば、該剤はプロテオグリカンまたはグリコサミノグリカンのようなECM成分の多糖部分を切断することができる。適当な剤の例は、(コンドロイチン硫酸およびヒアルロン酸を切断する)コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ、(ヘパリンを切断する)ヘパリナーゼ、(ヘパラン硫酸を切断する)ヘパラナーゼを含む。
本発明の特定の実施形態において、さらなる活性な剤は神経成長増強剤である。神経成長増強剤は、神経組織の成長または再生の1つ以上の態様を促進し、増強させ、増加させるいずれかの分子または細胞である。例えば、該分子または細胞は軸索成長を促進することができる。本明細書中で用いられるように、神経成長増強剤は、神経的に活性な成長因子、神経伝達物質または神経伝達物質アナログ、神経的に活性な金属、シナプスシグナル伝達分子のモジュレータ、または細胞であり得る。典型的には、この文脈で用いられる「細胞」とは、多数の細胞を言うと理解されるであろう。用語「神経的に活性な」は、該剤が神経組織に対して生物学的効果を発揮することを意味する。例えば、該剤は、構造的および/または機能的神経系再組織化または回復を増強する効果を発揮することができる。
従って、本発明は、可塑性改変剤、神経成長増強剤および、所望により、蛋白質分解増強剤を含む組成物を提供する。本発明は、組成物を含む薬物送達デバイスを提供する。薬物送達デバイスは、例えば、本明細書中に記載された薬物送達デバイスのいずれかであり得る。
本発明は、さらに:神経系の回復または再組織化の増強を必要とする対象に、可塑性改変剤、神経成長増強剤および、所望により、蛋白質分解増強剤を投与する工程を含む、対象の神経系において回復または再組織化を増強する方法を提供する。対象は、典型的には、神経系に対する虚血性、出血性、新形成、変性、外傷、および/または神経発達損傷の結果として神経系の回復または再組織化を必要とする。本発明は、可塑性改変剤、神経成長増強剤および、所望により、蛋白質分解増強剤を対象に投与する工程を含む、神経系において回復または再組織化の増強を必要とする対象を治療する方法を提供する。該対象は、典型的には、神経系に対する虚血性、出血性、新形成、変性、外傷、および/または神経発達損傷の結果として神経系の回復または再組織化の増強を必要とする。前述の方法における剤のいずれも、本明細書中に記載された方法のいずれかを用い、個々にまたは組合せて、中枢または末梢神経系に局所投与することができる。剤のいずれか、または双方は、いずれの代替投与経路によっても投与することができる。本発明のこの態様のある特徴、例えば、用量範囲、補助的療法等は、本発明の他の態様について記載されたのと同様とすることができる。
神経的に活性な成長因子は、限定されるものではないが、神経成長因子(NGF)、脳−由来神経栄養因子(BDNF)、ニュートロフィン−1(NT−3)、ニュートロフィン−4/5(NT−4/5)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害因子(LIF)、神経膠細胞由来成長因子(GDNF)、ニュールツリン(neurturin)、アルテミン(artemin)、ペルセフィン(persephin)、酸性または塩基性繊維芽細胞成長因子(aFGF,bFGF)、骨形成蛋白質−1(OP−1)、血管内皮成長因子(VEGF)、エリスロポエチン(EPO)、および顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)を含む。
「シナプスシグナル伝達分子」とは、シナプス活性化を介して、または細胞内貯蔵からのカルシウムの放出に続いての、カルシウムの細胞へのエントリーから下流で活性化され、および電気的活性をニューロンにおける構造的変化に変換する内因性分子をいう。これらは、カルシウム/カルモジュリン−依存性プロテインキナーゼIIおよびIV、プロテインキナーゼC(PKC)、プロテインキナーゼA(PKA)、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)、環状AMP(cAMP)、依存性キナーゼのような種々のキナーゼを、環状AMP応答エレメント結合蛋白質(CREB)、活性調節細胞骨格関連蛋白質(arc)、トロポニンC、およびRacおよびRho経路およびそれらの関連キナーゼのような分子と共に含む。Gプロテインカップルド受容体は、細胞外空間からの情報を(活性の内とりわけ)細胞内シグナルに変換し、これは、シナプスシグナル伝達分子であるとも考えられる。多数のこれらのシグナル伝達分子のモジュレータ(すなわち、それを活性化し阻害する剤)は当該分野で知られており、本発明で用いられる。Gプロテインカップルド受容体に結合することができる分子は、重要なことには、(a)PKAおよびcAMP;(b)環状GMP、および(c)PKCを活性化し、または阻害することができるものを含む。GPCR活性化の下流の経路は、重要なことには、CREB、BDNF、アクチン、樹状突起および軸索細胞骨格等の再組織化を調節する。その例として、cAMPのアクチベーターは、0.02〜0.5μg/kg/日の典型的な用量にて脳に送達することができるSp−cAMPS(Sigma)、および1〜100μg/kg/日の用量にて筋肉内投与することができるRolipram(登録商標)(Sigma)を含む(Ramos et al.,Neuron 2003)。ロリプラムは、cAMPの分解を妨げるホスホジエステラーゼ阻害剤である。cAMPの阻害もまた、ある条件下では、シナプスに対する刺激効果を有し、本発明の特定の実施形態において用いられる。cAMPの阻害剤は、0.02〜0.5μg/kg/日の典型的な用量にて脳に送達することができるRp−cAMPS(Sigma)を含む(Ramos et al.,2003)。
cGMPのアクチベーターは8−Br−cGMPであり;阻害剤はRp−cGMPである。双方は典型的には局所送達される。脳スライスにおける神経突起の成長およびダイナミックスに対する有効用量は約10〜100μMである(Nishiyama et al.,2003)。もう1つの阻害剤はODQであり;軸索成長に影響する有効用量は約10μMである(Leamey et al.,2001)。PKCのアクチベーターは、ジアシルグリセロールおよびホスファチジルセリンを含む。阻害剤はGF109203X(GFX)と呼ばれる薬物である。スライス中の有効用量はほぼ10〜100μM(Nishiyama et al.,2003)である。
本明細書中で4示した用量は断じて限定的なものと解釈されるべきではないことを注記する。一般に、本発明は、健全な医学的判断と合致して、本明細書中に記載されたものよりも少なくとも10〜100倍低い用量、および剤の最大許容用量までの用量を含む。さらに、特異的剤のための投与経路は例として本明細書中で言及され、限定する意図のものではない。一般に、いずれの適当な投与経路を用いることもできる。特に、これらの剤のいずれも、本明細書中に記載された局所投与用の方法を用いて投与することができる。
神経的に活性な低分子は、前述の多数のモジュレータおよび神経伝達物質、ならびに神経系の機能に影響することが当該分野で知られた多様な化合物を含む(例えば、Goodman and Gilman,supra;およびKandel,supra参照)。
神経伝達物質は、一般に、低分子(例えば、カテコールアミン)およびペプチドのカテゴリーに入る天然に生じる化合物である。本発明で用いるための神経伝達物質は興奮性または阻害性であり得る。例示的な神経伝達物質は、限定されるものではないが、アセチルコリン、ドーパミン、セロトニン、グリシン、グルタメート、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびガンマアミノ酪酸(GABA)を含む。本明細書中で用いる神経伝達物質アナログは、神経伝達物質受容体に対して興奮性または阻害性効果を発揮する天然に生じる神経伝達物質以外の化合物である。該アナログは、典型的には、天然に生じる神経伝達物質に対して構造的類似性を持ち、その受容体に対する結合についてそれと競合するであろう。
神経的に活性な金属なマグネシウムおよび亜鉛を含む。マグネシウムおよび/または亜鉛はいずれの適当な形態で供することもできる。典型的には、金属は、金属カチオン、および対イオンとして働くアニオンを含有する塩の形態で供されるであろう。対イオンは有機または無機物質であり得る。例えば、対イオンはホスフェート、カルボネート、グルコネート、シトレート、スルフェート、アセテート、マルトネート、オキサレート、または以下に述べるもののようないずれかの他の医薬上許容されるイオンであり得る。いくつかの実施形態において、金属カチオンはキレートとして供され、そこでは、金属カチオンは、複素環のような有機分子と複合体化する。
遺伝子治療方法を用いて、産物、例えば、可塑性増強剤、蛋白質分解増強剤、および/または神経系の機能および/または構造的再組織化および/または回復を促進する剤をコードする遺伝子の発現を増加させることができる。遺伝子療法は、目的とする細胞への、目的とする分子の合成のための鋳型を含む核酸の送達を含む。核酸(または、例えば、逆転写によるものとして核酸に由来する核酸)を、細胞のゲノムに組込むことができるか、あるいはエピソームとして細胞に永久的に留まってよい、遺伝子療法は、それらが送達される細胞において組込まれないか、または永久的に留まる核酸の送達も含む。そのようなアプローチは、目的とする分子の時間的または一過的合成を可能とする。遺伝子療法を実行するための方法および材料は当該分野でよく知られており、本明細書中において後半にレヴューされるであろう(例えば、Berry,2001;Han,2000;およびThomas and Klibanov,2003参照)。
ポリペプチドの合成のための鋳型を含む核酸を提供するベクターおよび送達ビヒクル(例えば、ポリマーマトリックス)は、本発明の組成物に取込むが、または別々に投与することができる。典型的には、核酸は、目的とする細胞において発現されるべき遺伝子についてのコーディング配列を含み、また、適当な発現シグナル、例えば、プロモーター、ターミネーター等を含んで、適切な発現を確実とする。
一般に、ウイルスまたは非−ウイルスベクターを用いることができる。例えば、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ−関連ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルスを用いることができる。鋳型を細胞に送達するにおいて無傷ウイルスの使用を回避するのが望ましいであろう。かくして、DNAベクターまたは線状DNA分子を送達するのが望ましいであろう。これらのベクターは、必要かというのではないが、ロングターミナルリピート等のようなウイルス配列を含むことができる。トランスフェクションで有用な広く種々の剤のいずれを用いて、細胞による核酸の取込みを増強することもできる。ベクターは、神経系に細胞によって取込まれ、目的とするポリペプチドが発現され、通常分泌される。
本発明のいくつかの実施形態において、細胞は対象に投与される。本発明のいくつかの実施形態において、細胞は、可塑性−増強剤のための源として働く。例えば、細胞は細胞外空間にIGF1を分泌することができる。本発明の特定の実施形態において、細胞は、それらの投与に先立って遺伝子的に変性して、可塑性−増強剤のそれらの合成を増加させる。例えば、剤をコードするRNAの転写のための鋳型を含むベクターで安定に形質転換することができる。細胞は、特定配置においてそれらを保持し、投与の部位またはそれらのより広い分散の部位において、細胞でのそれらの取込みを妨げる非生分解性貯蔵庫または区画に確認することができる。
本発明のいくつかの実施形態において、細胞は、可塑性改変剤および、所望により、蛋白質分解増強剤を含む組成物を受けることができる対象に投与される。いくつかの実施形態において、細胞は、神経系の構造的および/または機能的回復に寄与する。細部はニューロン、神経膠、または非−神経細胞であり得る。適当な細胞は、限定されるものではないが、シュワン細胞および嗅覚形成神経膠細胞を含む(Bunge,2003)。細胞は、単一細胞のタイプとすることができ、あるいは異なる細胞型の組合せを投与することができる。細胞は、不可逆的に損傷した神経組織を置き換え、または補充することができ、および/または支持的機能を供することができる。いくつかの実施形態において、神経幹細胞が投与される。ニューロンおよび神経膠細胞双方を生起させることができる多能性神経幹細胞は、ヒトを含めた全ての成体動物の脳質をライニングする。いくつかの細胞型を生じさせる能力も有する名目上神経膠細胞先祖細胞の区別される集団は、皮質下白色物質および皮質全体に分布する(Goldman 2005)。いくつかの実施形態において、成体または肺性幹細胞が投与される。そのような細胞は、神経系外部の配置、例えば、骨髄、肝臓、臍帯等に由来することができる。いずれのタイプの細胞も用いることができる。細胞はオートロガスまたは非−オートロガスであり得る。特定の実施形態において、細胞が対象と同一種からのものである。
本発明の特定の実施形態において、細胞は、快適な環境を供して、細胞の生存率を維持する前述のもののようなある種の材料で作製されたポリマー足場に投与される。ポリマー材料は生分解性であってよい。マトリックスまたは足場は、対象の神経系への移植に先立って形成することができるか、あるいは例えば、生理学的流体との接触に際して、投与の後に形成され得る。種々の異なるポリマーマトリックスまたは足場における細胞のカプセル化は当該分野でよく知られている(例えば、米国特許第6,129,761号および第6,858,229号;米国特許公開2002/0160471;およびTeng,2002参照)。
神経系における構造的または機能的回復または再組織化を増強させるそれらの有用な特性に主として基づいて選択される前述の種々の活性剤に加えてまたはその代わりに種々の他の物質を投与することができる。そのような物質は、限定されるものではないが、感染を治療し、またはその危険性を低下させるための抗生物質または抗真菌剤、腫瘍を治療するための化学治療剤等を含む。
本発明は、所望により、本明細書中に記載された蛋白質分解増強剤のいずれか、および/または本明細書中に記載されたさらなる活性剤のいずれかと組合せた、本明細書中に記載された蛋白質分解増強剤のいずれかの各特異的組合せを含む組成物を明示的に含む。各およびあらゆる組合せを列挙するのが現実的でないゆえに、少数の例のみがここに提供される。例えば、本発明はIFNγおよびtPAを含む組成物を含む。組成物は、さらに、神経的に活性な成長因子(例えば、BDNF)を含むことができる。本発明は、tPA、およびシナプスシグナル伝達分子のモジュレータを含む組成物(例えば、tPAおよびロリプラム);tPAおよび神経伝達物質を含む組成物(例えば、tPAおよびセロトニン);tPAおよび神経的に活性な金属を含む組成物(例えば、tPAおよびマグネシウム);tPAおよび神経的に活性な低分子を含む組成物;tPAおよび細胞を含む組成物(例えば、tPAおよび神経幹細胞)等を含む。同様に、本発明は(i)プラスミン、および(ii)神経的に活性な成長因子、シナプスシグナル伝達分子、神経伝達物質、神経的に活性な金属、および/または細胞を含む組成物を含む。蛋白質分解増強剤および/またはさらなる剤の3、4、5つ以上を含む組成物が考えられる。本発明は、これらの組成物のいずれかを含むポリマー−ベースの薬物送達デバイス、およびこれらの組成物のいずれかを含み、または個々に剤を投与するように設計された移植可能なマイクロチップを提供する。
本発明は、本明細書中に記載されたさらなる剤のいずれかの1つ以上と組合せた、本明細書中に記載された蛋白質分解増強剤のいずれかの1つ以上の、神経系の再組織化および/または回復を必要とする対象への投与を含む。対象は、典型的には、中枢または末梢神経系に対する虚血性、出血性、新形成、外傷、変性、および/または神経発達損傷を経験しているものである。剤は一緒にまたは別々に投与することができる。いくつかの実施形態において、蛋白質分解増強剤およびさらなる剤の双方は局所投与される。いくつかの実施形態において、蛋白質分解増強剤は神経系に局所投与され、さらなる剤は別の経路によって(例えば、静脈内または経口)投与される。
治療適用および補助的療法
本発明の組成物および方法は、(例えば、自己または外科的処置による)卒中または損傷のような事象を経験した対象を治療するのに用いられる。本発明の組成物および方法は、限定されるものではないが、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、亜急性硬化性全汎脳炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮症、および栄養剥奪またはトキシン(例えば、ニューロトキシン、薬物乱用)によって引起された疾患を含めた種々の他の病気および疾患に罹った対象を治療するための用途を見出す。ある種の組成物および方法は、自閉症または失読症のような神経発達病、すなわち、神経系の少なくとも一部が正常な構造および/または機能を発達させる病気を治療するのに用いられる。ある種の組成物および方法は、精神分裂症および双極性障害のような神経精神病、すなわち、神経系の少なくとも一部が認識機能のその典型的なレベルを達成しない病気を治療するのに用いられる。ある種の組成物および方法は、認識増強を供するのに、および/または認識減衰、例えば、「良性老年健忘」、「年齢−関連記憶損傷」、「年齢−関連認識減衰」等(Patersen 2001;Burns 2002)を治療するのに用いられる。これらの用語は、記憶損傷の病理学的形態に対する前駆体よりはむしろ正常な老化に関連する極端を反映することを意図する。かくして、これらの疾患はアルツハイマー病から区別される。ある種の組成物および方法は、アルツハイマー病を治療するのに用いられる。本発明の特定の実施形態において、対象はアルツハイマー病を有さない、例えば、アルツハイマー病と診断されたことがない。本発明の特定の実施形態において、対象はアルツハイマー病を有すると疑われていない。本発明の特定の実施形態において、対象は、アルツハイマー病を発生する増大した危険性を有すると同定されたことがない。いずれかのそのような方法がPCT公開WO01/58476に記載され、および/または実施可能とされた程度にアルツハイマー病を治療しまたは予防する方法は、本発明の特定の実施形態から明示的に排除されている。
広く種々の機能的損傷のいずれかは、本発明の組成物および方法を用いて治療することができる。特定の実施形態において、組成物を用いて、脊髄損傷(SCI)後に呼吸器系機能の回復を促進させる。この目的では、組成物は、典型的には、脊髄に、例えば、内投与される。所望であれば、投与は脊髄損傷の領域、例えば、脊髄の頸部領域に局所化させることができる。呼吸器系障害は、SCI後の罹患率および死亡率の主な原因であり、SCI後の神経学的欠乏を持つ全ての患者の殆ど半分に影響する。頸部SCIに由来する呼吸器系損傷、最も普通の臨床的症例は、頻繁に、生存者を、慢性的に、または永久的に、劇的に生活の質を危うくする続発症である、ベンチレータ依存性とする。SCIを伴う呼吸障害のための薬物治療はない。発生段階ならびに成人時期双方において発現する神経可塑性の高度に動的な系を呼吸器系が有することは研究が確率している。本発明者らの1人の研究室における研究は、生体ラット脊髄における殆ど50%の横隔膜呼吸器系運動領域喪失でもってさえ、呼吸器系機能は中央−頸部脊髄損傷後5〜6週間以内に自然に回復できる。この神経可塑性−媒介事象からの最終的な結果は有望であるが、必要な長い期間が深刻な人生または死亡挑戦をSCI患者に課す。本発明は、SCI後呼吸器系神経回路再書式化を有意に刺激することができ、かくして、頻繁な臨床的発生であり、不完全な脊髄離断後に呼吸器系機能を迅速に回復させることができる。
種々の疾患に対する外科的処置は、時々、神経に対する損傷をもたらし得る。本発明のいくつかの実施形態において、組成物および方法を用いて、PNS供給筋、器官、または身体の他の部分の神経後に機能を再生し、修復し、またはそうでなければ回復させ、あるいは身体の一部からの情報の担持は、必然的にまたは偶然に中断されており、あるいは外科的処置の間に損傷される。いくつかの実施形態において、本発明を用いて、神経、例えば、筋肉、器官、または身体の他の部分に脊髄によって供給される、あるいは身体からの感覚受容体から脊髄に入る神経の変性を再生し、修復し、または妨げる。いくつかの実施形態は、CNSにおける損傷したまたは変性した神経、例えば、視神経または聴覚神経の再生または修復、あるいは病気、障害、および/または損傷によるCNSにおける軸索管または繊維束の変性の予防を含む。これらの実施形態は、限定されるものではないが、脊髄における繊維管および結合を上昇または低下の変性の、およびCNSの他の構造的および機能的細分における繊維管および結合の再成長、回復、修復または予防を含む。いくつかの実施形態は、現存の脳領域からの新規な機能を引出すような脳経路の再配線または再組織化を含む。この実施形態の例は、特に、特異的脳領域に従事する実行レジメンとカップリングさせた場合に、脳機能の増強である。
本発明の特定の実施形態において、本発明の組成物が投与される対象は、リハビリ療法または訓練のプログラムに従事している。そのようなプログラムは、典型的には、損傷または卒中後に起こるが、発生または成人開始の種々の障害における救済および訓練のプログラムを含む。そのようなプログラムは、失読症、自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害−特定不能の、チューレット症候群、個性障害、精神分裂症および関連障害のような障害で通常使用される(例えば、これらの障害の議論については、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,4th Ed.,DSM−IV,American Psychiatric Association,1994,Diagnostic and Statistical Manual,Am.Psychiatric Assoc.,Washington,DC参照)。卒中、脊髄損傷および/または他の形態の神経系損傷の犠牲についての多数のリハビリプログラムが当業者に知られており、対象はそのようなプログラムに専念することができる(例えば、卒中の犠牲についての適当なプログラムの議論については、Gillen and Burkhardt,supra参照)。同様なプログラムが、脳に対する損傷の他の形態の犠牲で用いる事ができる(例えば、脊髄損傷の犠牲についての適当なプログラムの議論については、Somers,supra参照)。PNSに対する損傷に罹った個体についての適当なプログラムも当該分野で知られている。リハビリプログラムは、典型的には、リハビリ療法の領域の知識を持つ介護業者によって設計され、推奨されている。療法セッションは、介護業者の参画を含むことができる。しかしながら、対象は、介護業者の援助または監督なくしてプログラムに関連するセッションまたは仕事に従事することができる。
対象は、剤の投与に関して規定された時間的関係においてプログラムに専念することができる。例えば、対象は一定期間プログラムに専念することができ、そこでは、該剤は投与されており、および/またはその間に、剤は神経系に有効量で存在する。いくつかの実施形態において、剤の用量は、特定のリハビリセッションまたは仕事における対象の専念に先立って規定された期間内に投与される。例えば、剤は、対象がセッションまたは仕事に専念する時点に先立って、24時間まで、48時間まで、または1週間までの任意の時点において有効量にて投与でき、および/または存在させることができ、あるいは剤は、セッションまたは仕事の完了後24時間まで、48時間まで、または1週間までの任意の時点において有効量にて投与することができ、および/または存在させることができる。典型的には、対象は、数週間、数ヶ月、または数年の期間にわたってプログラムに専念し、すなわち、対象は一定期間にわたって複数の療法セッションに参画するであろう。対象のそのようなセッションへの参画は、最適な効果を達成するように、剤の投与と同調させることができる。リハビリ療法の有益な効果は、少なくとも部分的には、そのような療法の結果として起こる構造的および/または機能的再組織化によるものであろう。いずれかの理論に拘束されるつもりはないが、発明者らは、本明細書中に開示された剤の蛋白質分解−増強活性および/またはシナプス可塑性活性はこのプロセスを促進することができることを提唱する。かくして、少なくとも相加的および、潜在的には、相乗的効果をもたらすであろう。
本発明の方法および組成物は、神経系に対する損傷について種々の動物モデルのいずれかを用いてテストすることができる。用いることができるモデルは、限定されるものではないが、血栓塞栓性卒中についてのげっ歯類、ウサギ、ネコ、イヌ、または霊長類モデル(Krueger and Busch,2001;Gupta,2004)、脊椎損傷についてのモデル(Webb et al.,2004)、その他(Schmidt and Leach,2003中の実施例6および7および文献参照)を含む。該方法および組成物はヒトでテストすることもできる。
標準化されたテストおよびスコアリング系を含めた種々の異なる方法が、動物およびヒトにおいて、運動、感覚、挙動および/または認識機能の回復を評価するのに利用できる。いずれの適当な方法も用いることができる。1つであるがその例を挙げれば、ヒトにおいて感覚機能の回復を測定するための主な機器となったAmerican Spinal Injury Associationスコアを用いることができよう(例えば、種々のスコアリング系および方法の例については、Martinez−Arizala A.,2004;Thomas and Noga,2004;Kesslak JP and Keirstead HS,2003参照)。
ヒトで用いられる望ましい用量範囲は、剤の効率、および観察されたいずれの毒性も考慮して、剤を組織培養系において、および動物モデルにおいてテストすることによって確率することができる。
医薬組成物
適当な製剤、例えば、所望により、1つ以上のさらなる活性な剤と一緒にした、蛋白質分解増強剤の実質的に純粋な製剤は、医薬上許容される担体、希釈剤、溶媒等と組合せて、適当な医薬組成物を生産することができる。一般に、当業者に知られた医薬組成物を生産するための方法および成分を用いる。本明細書中における記載は、例示目的のものであって、限定する意図のものではない。本発明の医薬組成物は、対象に投与する場合、典型的には、その治療のためにそれらが投与される病気または疾患を治療するのに有効な時間および量にて投与されることが理解されるべきである。投与および処方の適当な態様は本明細書中に記載する。
さらに、受容者への投与に際して、本発明の剤、またはその活性な代謝産物または残渣を直接的にまたは間接的に供することができる本発明の剤のいずれかの非−毒性塩、エステル、エステルまたは他の誘導体の塩を意図する、本発明の剤のいずれかの医薬上許容される誘導体(例えば、プロドラッグ)を含む医薬上許容される組成物が提供される。本明細書中で使用される場合、用語「その活性な代謝産物または残渣」は、その代謝産物または残渣が親化合物に対して同様な活性をやはり保有することを意味する。例えば、活性なポリペプチドを投与するよりはむしろ、チモーゲン(すなわち、それが活性な酵素となるために、活性部位を露出する加水分解反応のような生化学的変化を必要とする不活性な、または活性が低い酵素前駆体)を投与することができよう。
用語「医薬上許容される担体、補助剤、またはビヒクル」とは、それと共に、それが処方される剤の薬理学的活性を破壊しない非−毒性の担体、補助剤、またはビヒクルをいう。さらに、医薬組成物についての調製方法は、典型的には、それと共に、それが処方される剤の活性を実質的に低下させないように選択されることが認識される。
本発明のある種の剤の医薬上許容される塩は、医薬上許容される無機および有機の酸および塩基に由来するものを含む。適当な酸塩の例はアセテート、アジペート、アルギネート、アスパルテート、ベンゾエート、ベンゼンスルホネート、ビスルフェート、ブチレート、シトレート、カンフォレート、ショウノウスルホネート、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコネート、ドデシルスルフェート、エタンスルホネート、フォルメート、フマレート、グルコへパタノエート、グルセロホスフェート、グリコレート、ヘミスルフェート、ヘプタノエート、ヘキサノエート、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸、2−ヒドロキシエタンスルホネート、ラクテート、マレエート、マロネート、メタンスルホネート、2−ナフタレンスルホネート、ニコチネート、ニトレート、オキサレート、パルモエート、ペクチネート、ペルスルフェート、3−フェニルプロピオネート、ホスフェート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、サリシレート、スクシネート、スルフェート、タルトレート、チオシアネート、トシレートおよびウンデカノエートを含む。それ自体医薬上許容されるにおけるものではないが、シュウ酸のような他の酸を、中間体として有用な塩の調製で使用することができる。適当な塩基に由来する塩は、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニアおよびN+(C1−4アルキル)4塩を含む。また、本発明では、本明細書中に開示された化合物のいずれの塩基性窒素−含有基の第四級化も考えられる。水または油−可溶性または分散性生成物はそのような第四級化によって得ることができる。
医薬組成物は、その意図した投与の経路に適合するように処方される。注射または注入に適した医薬組成物は、典型的には、(水溶性である場合)滅菌水性溶液、または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即席調製用の滅菌粉末を含む。適当な担体は生理食塩水、静菌水、注射用水、デキストロース溶液、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)またはリンゲル液を含む。抗菌剤および/または抗真菌剤;エチレンジアミンテトラ酢酸のようなキレート化剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩のような緩衝液;および塩化ナトリウムまたはデキストロースのような等張性の調整のための剤を含めることができる。pHは塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調整することができる。投与の容易性および用量の均一性のために投与単位形態に組成物を処方するのが有利であろう。本明細書中で用いる投与単位形態は、治療すべき対象についての単一用量として適した物理的に区別される単位をいい;各々は、必要な医薬担体と組み合わせて所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性な剤を含有する。製剤は、例えば、アンプル、ディスポーザブルシリンジ、またはガラスもしくはプラスチックで作製された複数用量バイアルに入れることができる。
滅菌注射または注入用液は、所望により、先に列挙した1つの成分、または成分の組合せと共に、必要な量の活性な化合物を適当な溶媒に配合し、続いて、濾過滅菌することによって調製することができる。典型的には、溶液はエンドトキシンを含まない。一般に、分散液は、基本的な分散媒体および、所望により、他の成分を含有する滅菌ビヒクルに活性な化合物を配合することによって調製される。滅菌溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、調製の通常の方法は真空乾燥および凍結−乾燥(例えば、凍結乾燥)であり、これは、有効成分+その従前に滅菌濾過された溶液からのいずれかのさらなる所望の成分の粉末を生じる。
(実施例)
実施例1:視覚剥奪パラダイム下で特異的に調節される遺伝子の同定および分析
材料および方法
RNA調節およびマイクロアレイ分析
実験は、臨界的期間のピークにおいて28、誕生後27日(P)にマウス(129/SvEv)で行った。全ての動物プロトコルは、動物の愛護および使用についてのMIT委員会によって認可され、NIHガイドラインに従ったものであった。単眼除去(MD)については、動物をアベルチン(0.016ml/g)で麻酔し、(マイクロアレイ分析では15〜16日間、P11−12において)1つの眼の瞼を縫合した。暗所飼育(DR)動物(年齢でP27−30)では、動物を暗所において麻酔し、深く麻酔されるまで光に曝露しなかった以外は、手法は前述と同一であり;これらのマウスにおいては、両眼応答のみを評価し、対照動物におけるそれと比較した。
実験の最初の組においては、本発明者らは、正常に飼育されたP27マウス(対照,n=3試料)のV1から、暗所で誕生し飼育したP27マウス(DR,n=3試料)のV1から、および単眼除去が眼が開く前にP11−12において開始されたP27マウスの剥奪眼に対して両側のV1からの全RNAを抽出した(MD,n=6試料;3つの試料は右側の眼の剥奪を行い、3つの試料は左の眼の剥奪を行った;これらの6つの試料は1群とみなした。なぜならば、右側の眼の剥奪と左側の眼の剥奪との間に有意な差が観察されなかったからである)。各試料については、動物は異なる同腹子に由来し、組織は少なくとも2つの異なる動物のV1から剥奪した。動物の療法の群において、単眼および両眼部分を分析のために含めた。
ネムブタール(100mg/kg)でマウスを麻酔し、断頭し、頭蓋骨を開いた。ミクロブレードを用いて、適当な半球の視覚野から組織の小さなコアを取り出した。Affymetrixウェブサイトで利用可能な「真核生物標的調製」マニュアル中の指示に従って、全RNAを抽出し、精製した。断片化されたビオチニル化cRNAを、合計36,902のプローブ標的化遺伝子および発現された配列タグ(EST)(Affymetrix)に対応するオリゴヌクレオチドを含有する、AffymetrixマウスゲノムU74v2 GeneChip組にハイブリダイズさせた。アレイ処理(ハイブリダイゼーション、洗浄、染色および走査)は、標準Affymetrixプロトコルに従ってMITにおけるバイオポリマー研究所によって行われた。全体的スケーリングアルゴリズムを用いて、全ての試料からの発現レベルデータを正規化した。
短期間(P23−27から4日)MDの効果を調べ、同様に、MDと同時のIGF1注入の効果を調べたさらなる実験において、合計4つの実験群を分析した:対照動物の新しい群(3試料)、4日間の間に単眼除去されたマウスの同側および両側皮質(同側皮質については3つの試料、および両側皮質については3つの試料)4日間で単眼除去され、IGF1溶液を毎日腹腔内注射したマウスの両側皮質(3試料)。組織を取り出し、前述のようにRNA抽出し、標識されたRNAは、合計42,000のプローブ標的化遺伝子およびESTに対応するオリゴヌクレオチドを含有する、Affymetrixマウスゲノム430.2チップにハイブリダイズした。
データ分析
マイクロアレイの有意性分析
遺伝子発現の変化を評価するためのマイクロアレイの優位性分析のための方法を用い31、および該方法をMATLAB(The Mathworks,Natick,MA)において実施した。該方法は、2つの条件下での各遺伝子の発現レベルの比較を可能とする(例えば、MD vs.対照;またはDR vs.対照)。発現に変化がないという帰無仮説下で、アウトプットは、(2つの条件からのデータをシャッフリングすることによって得られた)偶然による与えられた差を観察する確率である。この分析の結果を、各遺伝子の最小強度についての固定された閾値、および2つの条件の間の発現の最小比率を設定することによって得られたものに対して比較した。二連の間の相関が、全ての条件について相関係数(c.c.)として計算した:対照(c.c.=0.99±0.002)、MD16日(c.c.=0.9±0.05)、MD4日両側(c.c.=0.99±0.001)、MD4日同側(0.99±0.005)、MD4日両側+IGF1(c.c.=0.99±0.004)。
GO注釈
実験の最初の組については、Gene Ontology(GO)注釈を遺伝子の各々について検索した(http://www.geneontology.org/)。遺伝子名称への各Affymetrixプローブのマッピングは、Affymetrixからの注釈を用いて行った(http://www.affymetrix.com/)。GOは、与えられた遺伝子の分子機能(例えば、核酸結合、イオントランスポーター活性等)、関与する生物学的プロセス(例えば、細胞成長、細胞通信)、および細胞位置(例えば、核、細胞質等)についても情報を提供する。これらの組織化原理の各々については、GOは、各遺伝子を割り当てることができる異なるカテゴリーのリストを提供する。FatiGO32を用いて、視覚インプット剥奪の異なるプロトコルにおいて過剰または過少に表現された生物学的機能についてのカテゴリーを同定した。
半定量的RT−PCR
RNAを前述のように抽出し、RT−PCRについてのSuperscript First−Strand Synthesis System(Invitrogen)でcDNAを得た。PCRはInvitrogen指示マニュアルに従って行った。各試料については、PCRは選択された分子について、および対照としてのグリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ(GPDH)について行った。PCR産物を臭化エチジウムで染色し、アガロースゲルで実行した。各バンドの強度はImageJソフトウエア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)で評価し、GPDH発現のレベルによって正規化された。
結果
DNAマイクロアレイを用いて、単一遺伝子の定量的分析、ならびに遺伝子ネットワーク活性化の計算分析を用い、暗所飼育(DR)および単眼除去(MD)の後の皮質のV1領域における遺伝子発現の大規模な変化を調べた(図1A)。長期視覚剥奪のマイクロアレイ分析で用いるマウスは(a)誕生からP27まで完全な暗所で飼育した動物、マウスにおける眼支配可塑性についての臨界的期間のピーク28、(b)P27を通じて(P11−12において)眼を開く前から縫合された1つの瞼を有したMD動物、および(c)標準的な条件で発育させたP27対照動物、であった(図1A)。剥奪プロトコルのタイムコースを選択して、DRおよびMD条件において可能な限り匹敵する剥奪期間−すなわち、誕生で開始し、P27間で継続する期間、を保証した。V1は固有のシグナル29の双方の光学的イメージングで確認された定位座標、および(LGN)その配置によって、および皮質30においてなされたAlexa−CTBの注射からの外側膝状核(LGN)における細胞の逆標識によって同定された。RNAはV1から抽出し、マイクロアレイ(Affymetrix)にハイブリダイズさせた。まず、遺伝子転写体の発現レベルを、マイクロアレイ31の有意性分析のための手法を用いて対照動物と剥奪動物の間で比較した(図1B,C)。遺伝子の2つのリストを剥奪プロトコロルのために得た:剥奪条件 vs 対照においてアップレギュレートされたもの(1930遺伝子;DR後にアップレギュレートされた1730遺伝子およびMD後にアップレギュレートされた200遺伝子)および剥奪条件 vs 対照においてダウンレギュレートされたもの(1381遺伝子:DR後にダウンレギュレートされた950遺伝子、およびMD後にダウンレギュレートされた431遺伝子;図1D)。有意に(P≦0.01)アップレギュレートされた、およびダウンレギュレートされた遺伝子の完全なリストは(http://ramonycajal.mit.edu/kreiman/resources/v1plasticity/)における各実験についての表、および(添付書類において提示する)本明細書中における表4〜9において報告されている。
Gene Ontology(GO)データベース32、33を用いて、それらが関与する生物学的プロセスに従って区別して発現された遺伝子をグループ分けした。視覚剥奪群における3311の区別されて発現された遺伝子のうち、1227は公知の機能を有しており、一般的な生物学的プロセスについてGOカテゴリー(レベル3)で報告されている。この分析は、いくつかの生物学的プロセスは双方の剥奪条件に共通し、他方、他のものは1つの条件または他の条件において区別されて、または排他的にさえ提示されることを示唆する。
例えば、「代謝」および「細胞通信」に関係する遺伝子は双方の条件でアップレギュレートされ、DR皮質においてはより強い提示であった。同時に、「細胞移動性」および「細胞成長および維持」に関連する遺伝子が、DR後に主にアップレギュレートされた。他方、「細胞生理学プロセス」および「生物生理学的プロセス」を含む遺伝子はMD後に主にアップレギュレートされた。この概観は、いくつかの同様なメカニズムが剥奪の2つの形態の基礎となっているが、区別される細胞プロセスも2つの条件において関与し得ることを示唆する。
該区別をさらに分析するために、グルタミン作動性およびGABA受容体をコードする遺伝子のより詳細な実験を行い、これは、NMDA、AMPAのサブユニットおよび代謝調整型グルタメート受容体およびGABA−AおよびGABA−B受容体のサブユニットを含む。表1は、MDおよびDRにおけるGABAおよびグルタメート受容体の異なるサブユニットの発現の変化を示す。「+」は、対照に対して剥奪条件におけるmRNAレベルの有意な(両側t検定P≦0.05)増加を示し;「=」は有意な変化無しを示す。対照に対して剥奪後にダウンレギュレートされた遺伝子はなかった。
Figure 2009533458
皮質における興奮性および阻害性伝達の主な形態のこの比較は、興奮性および阻害性受容体遺伝子の実質的組がDR後にアップレギュレートされたことを示した。MDは、DRよりも小さなサブセットを除いて、双方の組をアップレギュレートした(図2A)。これらの受容体遺伝子のいずれも、剥奪のいずれかの形態後にダウンレギュレートされなかった。かくして、興奮性および阻害性受容体の双方の遺伝子の発現は、視覚剥奪に応答して広くアップレギュレートされるが、この応答は、光が完全に存在しないDRの場合の方が、パターン化形態でではないが閉じた瞼を通じての依然として視覚刺激がある34MDの場合よりも強い。
いくつかの研究は、DRが阻害の飽和の遅延を誘導すると報告している11、35、36。GAD65発現の変化はDRまたはMD後には観察されなかったが、GAD67発現の増加がDR後に観察された(図2B)。より一般的には、低下は、皮質阻害性ニューロンに関連する唯一の遺伝子の発現で観察され:パルブアルブミンに関連する全てのプローブはDR後にダウンレギュレートされ、他方、カルビンジン、ソマトスタチン、カルレチニン、コレシストキニンおよび神経ペプチドYを含めた、阻害性ニューロン37、38の他のマーカーに関連するプローブはアップレギュレートされるか、あるいはDR後には変化しなかった(図2B)。MD後のこれらのマーカーのいずれにおいても変化はなかった(また、後記および図9参照)。かくして、DR後の阻害の、およびDR後の阻害性ニューロンの機能的低下36は、恐らくは、具体的には、パルブアルブミンを発現するニューロンの数の低下によって媒介される。
次に、遺伝子のサブセットのマイクロアレイ発現レベル(図3A)を、マイクロアレイで用いたものからの独立した試料で行った半定量的RT−PCRを用いて遺伝子発現の独立した尺度と比較した。選択された遺伝子は、DRまたはMD皮質 vs 対照において有意にアップレギュレートされ(両側t検定P<0.05)、剥奪の1つまたは他の形態後において少なくとも1.5倍大きい発現が伴った。さらに、(剥奪および対照条件における平均マイクロアレイ発現レベルおよび標準偏差からの)各遺伝子のノイズに対するシグナルの比率の計算に基づいて、選択された遺伝子は、DRまたはMD後の発現の変化によってランク付けされたプローブのリストにおいてトップ5%にあった。DR単独後に、MD単独後に、または双方後にアップレギュレートされた代表的な遺伝子の分析を図3B、Cに示す。マイクロアレイデータにおける(MDではなく)DR後にアップレギュレートされた遺伝子は、シナプス形成(ニューレキシン1およびシナプシン2)、エクソサイトーシス(シナプトタグミン1)のようなシナプス伝達メカニズム、神経伝達物質受容体(GluR1)、およびカルシウム−活性化シグナル伝達(CaMKIIαおよびCREB)に関与するもののような、シナプス構造および機能に関連する分子を含んだ。RT−PCRで観察された変化は、マイクロアレイデータからの観察と合致した。すなわち、DR皮質におけるこれらの分子の発現の増加が観察され、それらの各々についてMDと比較してDR条件のより大きな増大があった。
少数の遺伝子が、対照と比較して(DRではなく)MD後にアップレギュレートされた。それらは、癌腫(DEAD−ボックスRNAヘリカーゼDDX639)および変性(シグナルトランスジューサーおよび転写1のアクチベーター、STAT1−後記参照)を含む、細胞病理学に通常は関連する分子を含むか、あるいは急病(CaMKIIδ40)によって活性化される。これらの遺伝子は、RT−PCR分析においてより大きな発現を示した。最後に、DRおよびMD双方後にアップレギュレートされた遺伝子は、シナプス活性に関連する分子(GluR3およびGABA−Aα2)、ならびにニューロンの成長および結合の再組織化(インスリン様成長因子結合蛋白質5、IGFBP5−後記参照)、および脳発達の態様(核因子IB、NfiB41−43)に関連する分子を含んだ。これらの場合の全てにおいて、RT−PCRで測定された相対的発現レベルは、マイクロアレイ発現レベルに合致した。総じて、これらのデータは、対照動物と比較して、DR動物のV1における広い範囲のシナプスおよびニューロンメカニズムの増大した活性化、および程度はより低いが、MD動物におけるその増大した活性化を示唆した。逆に、それらは、対照動物と比較して、MD動物におけるおよび程度はより低いがDR動物における、ニューロン成長の増大した活性化および変性メカニズムを示唆する。
MDの効果は長期間において顕著であるが、それらは短期間においても有意である14−17。MDの長い(16日)期間との同様性および差を調べるために、P23−27からの、MDの短い(4日)期間のマイクロアレイ分析を行った。短期間MDは、長期間MDよりも多くの遺伝子の発現の変化に導いた。長期間MD後にアップレギュレートされまたはダウンレギュレートされた遺伝子の約50%が、短期間MD後にも発現が改変され;アップレギュレートされた遺伝子はDDX6、IGFBP5およびNFiBを含んだ。短期間MDはアップレギュレートされなかったが、長期間MDによってアップレギュレートされた遺伝子は、STAT1およびCaMKIIδを含んだ。(GluR1、GluR3およびGABA−Aα2のような)シナプス伝達に関連するいくつかの遺伝子は短期間MD後に変化しなかったが、(シナプシン2およびシナプトタグミン1のような)より多くの伝達関連遺伝子が、長期間MDと比べて、短期間後にアップレギュレートされるか、またはダウンレギュレートされた。
実施例2:遺伝子組の同定、および視覚剥奪パラダイムにおいて差別可能に調節される遺伝子で富化された経路
材料および方法
遺伝子組富化分析(GSEA)は、遺伝子の群の全てのmRNAプローブにおける小さな変異さえ考慮し、それにより、全遺伝子組の富化を評価する。このことは、機能的に関連する遺伝子の群の発現の中程度であるが、同調された変化を検出するのに関連する。そのような分子は、組におけるいくつかの遺伝子の活性の増加が、分子カスケードにおける単一遺伝子の強力な活性化よりも重要であり得る場合、そのような物質は特定の値を有する。さらに、組における遺伝子は、典型的には、いくつかの機能的または構造的特徴を共有する。異なる遺伝子組は異なるサイズを有し(例えば、遺伝子組「チャネル受動的トランスポーター」は238のプローブを有し、他方、「IGF1経路」は46のプローブを有する)、および単一遺伝子に対応する全てのプローブは各遺伝子組において報告される。該方法44の最近の記載を以下に掲げ;より詳細な記載も現在までに存在している85
sμが条件S(ここで、S=DR、MDまたは対照)におけるプローブiの試料にわたる平均発現レベル(i=1,...,N、ここで、Nはプローブの合計数である)を表すとし、sσが試料にわたる標準偏差を示すものとする。与えられたプローブiに対して、剥奪条件のノイズに対するシグナルの比率(SNR)は対照に対して定義される。例えば、暗所飼育では、SNRは
Figure 2009533458
と定義される。プローブは、SNRに従ってランク付けされ、順序のリストL={g,...,g}を得る。
プローブを含有する組Gを仮定し、プローブの組が(個々のプローブの発現が有意に変化したか否かに関わらず)対照条件に対して剥奪条件の1つにおいて有意に過剰にまたは過少に示されるか否かを評価することができる。アルゴリズムを説明する代表的な例は、図4Aに示される。以下の2つの累積分布関数が定義され:Phit(i)=i未満のランクを示す組G中の遺伝子の割合
Figure 2009533458
およびPmiss(i)=i未満のランクを示す組Gの外側の遺伝子の割合
Figure 2009533458
実行する富化スコアはRES(i)=Phit(i)−Pmiss(i)として定義され(図4A,頂部)、該組における遺伝子の位置またはランクから誘導される(図4A,底部)。富化スコアESは、RES(i)の0からの最大偏りである。もし該組中の遺伝子が剥奪条件において高度に富化され、かつ先ず順序のリストLで出現するならば、Phitはiの初期値についてのPmissよりもiにてより速く成長し、これは高い正のES値に導くであろう。逆に、もし該組中の遺伝子が剥奪条件において過少発現されリストLの最初に出現しないならば、PmissはPhitよりもiにてより速く成長し、これは高い負のESスコアに導くだろう。もし該組中の遺伝子が無作為に分布するならば、ESは0近くの値を示すであろう。ESの特定の値の統計学的有意性は、(1,000の順列を用いて)各プローブについて条件標識(剥奪および対照)を無作為にシャッフリングすることによって得られたヌル分布とそれとを比較することによって評価される。
上述の手法は各遺伝子組について反復し、各組について富化されたスコアおよび富化確率値を得る。遺伝子の組を、いくつかの異なる基準に基づいて定義するのは可能である。ここで、3つの特定の生物学的データベースにおける共通の機能的または構造的特性によって規定された遺伝子の組を調べた:BioCarta(http://www.biocarta.com/)、GenMapp(http://www.genmapp.org/)、およびGO(http://www.geneontology.org/)。今回の場合のように非常に多数の遺伝子組を考慮すると、包含される多数の比較(それによる、1つの比較が偶然有意な結果を生じる尤度の増大)のため、注意を払うべきである。多数の比較の問題は、ここでは、ファミリーワイズエラーレート(Family Wise Error Rate)を制御することによって取組まれた。遺伝子組にわたる富化スコアを比較するために、各データ、遺伝子組対の平均および偏差を用いてESをセンタリングし、スケーリングすることによって正規化する。本明細書を通じ、そして表4および5において、対照に対する暗所飼育または単眼除去で富化された遺伝子組について(またはその逆について)、正規化された富化スコア(NES)が示される。
結果
個々の遺伝子の発現とは別に、具体的な機能的経路において一緒に連結される遺伝子の組は、DRおよび長期MDにおいて異なって発現され得、それにより、剥奪の2つの形態に続いて異なる細胞および分子応答に導き得る。この可能性を調べるために、単一の転写体の発現よりはむしろ、(細胞経路、共発現された遺伝子、または同一ゲノム遺伝子座における遺伝子のような)遺伝子の組の活性化をコードする計算ツール(遺伝子組富化分析(GSEA)44、45)を用いた。かくして、遺伝子の組または経路が剥奪パラダイムで富化される経路が、対照に関して測定することができた(または逆も成立した)。以下のデータベースから採られた1374の経路および遺伝子組を考慮した:BioCarta、GenMapp、およびGO。ランニングおよび正規化された富化スコア(NES)の計算の例を、ADPリボシル因子(ARF)経路について図4Aに示す。この経路における19のプローブについての発現レベルを図4Bに示す。定性的には、図4Bは、これらのプローブのほとんどが、対照におけるよりもMD後により高度に発現されたことを示す。定量的には、図4Aは、これらのプローブの多くがMDプローブのランク付けされた組において高度にランク付けされ、ARF経路についての高ランニング富化スコアに導くことを示す。剥奪条件−vs−対照における最高スコアを持つ遺伝子組を表2に列挙し、これは、DR(左側欄)およびMD(右側欄)−vs−対照で富化されたトップの遺伝子組を表す。遺伝子組は、それらの正規化された富化スコアに従ってランク付けされる。双方の条件において富化される遺伝子組は、明るい陰影でもって示される。星印は、対応する遺伝子組の少なくとも1つのプローブがRT−PCRで確認されたことを示す。対照−vs−剥奪条件において最高のスコアを持つ遺伝子組(すなわち、剥奪後にダウンレギュレートされたもの)を表3に列挙する。遺伝子組は、それらの正規化された富化スコアに従ってランク付けされる。
Figure 2009533458
これらの経路は、1000の無作為に並べ替えた遺伝子組で得られた富化スコアの統計学的比較に基づいて、全て、データセット内で有意に富化された(並べかえ検定,P<0.0001)。GSEA方法は、異なる遺伝子組がDRおよびMD後に優先的に活性化されたことを定量的に明らかにした。例えば、DR後のトップの富化遺伝子組は、(「代謝」および「成長ホルモン経路」のような)代謝関連経路、および(「チャネル受動的トランスポーター」、「小胞被覆蛋白質」、および「分泌小胞」のような)シナプス活性関連ネットワークを共に含み、細胞活性に関与するものを含んだ。しかしながら、MD後に、頂部富化遺伝子組の大部分は、成長因子で(「表皮成長因子」、「インスリン様成長因子1」および「血小板由来成長因子」)によって活性化された経路、ならびにニューロン再形成および変性(「活性化されたT細胞の核因子」、「JAK−STATカスケード」、および「胚形成および形態形成」)に対応する。いくつかの遺伝子組は双方の条件において富化されたが、異なる順序でランク付けされ、これは、共通のプロセスが2つの条件の間でやはり共有されることを確認する。
Figure 2009533458
RT−PCRでDRまたはMD後に高度に発現されると既に同定された遺伝子もまた、高NES値を持つ特異的遺伝子組に存在し(対応する遺伝子組に印をつけた)、このことは、高度に発現された遺伝子が一緒に特異的経路または活性化のネットワークを富化することを示す。DR−vs−対照比較についての正NES値の分布を図4Cに示し、これは、各々、分子CrebおよびGluR1を含有する2つの経路についてのランニング富化スコアを示す。MD−vs−対照比較についてのNES分布を、各々、分子STAT1およびIGFBP5/IGF1を含有する2つの経路についてのランニング富化スコアと共に図4Dに示す。これらの遺伝子の各々はDRまたはMD遺伝子のランク付けされた組において初期に出現し(すなわち、組中のトップの富化遺伝子の1つであって、図4C、Dに示されたランニング富化スコアに対して有意に寄与する)。事実、個々の経路は、しばしば、DRまたはMDに示される多数の遺伝子を含有する。逆に、個々の遺伝子は、しばしば、DRまたはMD後に富化された多数の経路に含まれる。多くの遺伝子は予測されるように2つの剥奪条件の間で共通しているが、いくつかは異なる(図3参照)。剥奪条件における100の最も富化された遺伝子組を考慮すると、1928プローブがDRに存在するが、MD遺伝子組には存在せず、1590プローブはMDに存在するが、DR遺伝子組には存在せず、2361プローブがMDおよびDR遺伝子組双方において存在する。
実施例3:差別可能に発現された遺伝子によってコードされる選択された蛋白質の発現
材料および方法
免疫組織化学
マウスを麻酔し、4%パラホルムアルデヒドの溶液を経心臓灌流する。適切な脳半球を取り出し、PBS中の30%スクロースにおいて平衡化させた。視覚野を含む冠状断面を、凍結ミクロトームを用いて切断した。GluR1(1:500,Upstate)、IGFBP5(1:500,USBiological)、CaMK2alpha(1:500,Sigma)、PhosphoCREB(1:500,Cell Signaling)、活性化されたStat1(1:500,Abcam)、パルブアルブミン(1:1000,Chemicon)、カルレチミン(1:500,Chemicon)、ソマトスタチン(1:300,Chemicon)、神経ペプチドY(1:400,Chemicon)、シナプシン1(1:500,Chemicon)、IGF1(1:250,Chemicon)、GAD67(1:400,Chemicon)、IGF1R(1:500,Upstate)、PI3K−触媒サブユニット110(1:400,Upstate)、リン酸化−Akt(1:250,Cell Signaling)についての免疫組織化学は、他の箇所に記載されているように行った8283。各染色については、対照および剥奪動物について分析を平行して反復した。実験は、各群について少なくとも2匹の動物で行い、2回反復した。対照および剥奪動物からのセクションにおける染色の強度は、ImageJソフトウェア(http://rsb.info.nih.gov/ij/)で評価した。パルブアルブミン、カルレチニン、ソマトスタチンおよびNPY陽性細胞のカウントは、他の箇所に記載されているように行った29
結果
ここまでに記載された結果はmRNAレベルでの情報を表す。多数の対照メカニズムは転写段階後にそれらの作用を発揮することができると仮定すると、蛋白質発現の分析を用いて、RNA分析を超える経路の機能的活性化を確認することができる。前述の遺伝子およびそれらの関連経路の調節をさらに調べるために、免疫組織化学を用いてそれらの蛋白質の発現を分析した。
まず、マーカーを、介在ニューロンの選択されたクラスについて調べた。パルブアルブミンについての全てのマイクロアレイプローブはDR後にダウンレギュレートされ(図2B)、他方、他の介在ニューロンマーカーは変化しないままであるか、または増大したので、これらのマーカーに対して免疫陽性であるニューロンの数において、同様なパターンが反映されたか否かを決定した。対照動物に対するDRにおけるパルブアルブミン陽性ニューロンの数の有意な減少(40%の、p<0.01)(図5A)が観察され、他方、カルレチニン陽性ニューロンは変化しないままであり、ソマトスタチンおよび神経ペプチドYに対して陽性であるニューロンの数は増加した(P<0.05)。調べた全ての抗体について、染色されたニューロン数に対するMDの効果はなかった。かくして、阻害を遅延させるものとしてのDRの報告された効果は、パルブアルブミンを発現するニューロンの発生の遅延によるものらしい。
DR後の高度に富化された遺伝子組に続き、「CREB経路」遺伝子組に存在する、GluR1(図5B)、ホスホ−CREB(図5C)、およびCaMKIIαを調べた。これらの分子の各々は、対照と比較してDR動物のV1において過剰発現され、DR46におけるCaMKIIαの、CaMKIIα発現に対する基質としてのGluR1の47、およびウイルス皮質の成熟に関連するCREB媒介遺伝子発現48の関与の従前の報告に合致する。同様に、MDに続き、2つの新規な蛋白質、高度に富化された遺伝子組の構成要素である活性化されたSTAT1およびIGFBP5を調べたが、いずれも、MDの皮質効果に、または視覚剥奪のいずれかの形態に従前は関連付けられていない。STAT蛋白質はJanusキナーゼ(JAK)によってリン酸化され;JAK−STAT化スケードは、通常、サイトカインシグナル伝達に応答して活性化されるが、神経損傷および虚血症に応答してやはりアップレギュレートされる49−51。JAK−STATカスケードの活性化を示す、STAT1のリン酸化形態についての免疫染色は、分子がMD後にV1において有意にアップレギュレートされることを示した(図5D)。IGFBP5は脳において広く発現され52、遺伝子的にインスリンに関連するペプチドであるIGF1に結合する535455。IGFBP5の発現は長期MD後にV1において有意にアップレギュレートされた(図5E)。
実施例4:IGF1の投与は、単眼除去の効果に逆作用する。
材料および方法
単眼除去
単眼除去のために、動物をアベルチン(0.016ml/g)で麻酔し、(イメージング実験のためにP20−22において7日間)1つの目の瞼を縫合させた。イメージングの前に、縫合を除去し、剥奪された目を再度開いた。剥奪縫合が無傷であって、剥奪された目の条件が健康的であると見えた動物のみをイメージングセッションのために用いた。DR動物(年齢P27−30)については、動物を暗所で麻酔し、深く麻酔されるまで光に曝露しなかった以外は、該手法は前述のものと同一であり;これらのマウスにおいては、両眼応答のみを評価し、対照動物におけるものと比較した。
V1の光学イメージング
年齢P26−30のマウス129/SvEvおよびC57B1/6を、記載されているように84、ウレタン(1.5g/Kg)およびクロルプロチキエン(0.2mg)で麻酔した。皮膚を切り出し、頭蓋骨をV1に曝露した。特注のアタッチメントを用いて、頭部を固定し、運動を最小化した。皮質をアガロース溶液(1.5%)およびガラス製カバースリップで覆った。イメージングセッションの間に、動物の体温を、加熱ブランケットで一定に保ち、EKGを一定にモニターした。目をシリコーン油で周期的に処理し、動物に純粋な酸素を呼吸させた。赤色光(630nm)を用いて、皮質表面を照明し、輝度の変化を、視覚刺激の提示(STIM,Optical Imaging)の間にCCDカメラ(Cascade 512B,Roper Scientific)によって捕獲した。カスタムソフトウエアを、イメージ獲得、およびカメラおよび刺激の間の同調を制御するように開発した。均一な灰色バックグラウンドにわたる細長い水平または垂直の白色棒線(9°×72°)を、視覚野の上−下または周辺−中央範囲にわたって連続的にドリフトさせた。最後の位置まで移動させた後、棒線を逆に最初の位置までジャンプさせ、別のサイクルの移動を開始した−このように、視覚空間の選択された領域(72°×72°)を周期的に刺激した(9秒/周期)。視覚野のイメージを、25分の各刺激セッションの間に15フレーム/秒の速度にて連続的に保存した。刺激(上方、下方、左向き、右向き)の4つの組を、いずれかの目に単眼的に、または双方の目に無作為に提示した。
時間的高パスフィルター(135フレーム)を使用して、遅いノイズ区画を取り除き、その後、刺激頻度(9秒−1)の時間的速フーリエ変換(FFT)成分を、イメージの全組から画素ごとに計算した。FFT成分の振幅を用いて、各目に対する視覚的に駆動される応答の強さを測定し、目の支配的指標は、ODI=(Rcontra−Ripsi)/(Rcontra+Ripsi)として各画素における各目の応答(R)に由来した。両眼ゾーンは、双方の目からの同等な駆動を持つ領域として定義された。
IGF1処置
IGF1処置については、GPE、IGF1の機能的ペプチドを含有する溶液を記載されたように調製した56:300μgのGPEを剥奪の全期間の間、毎日腹腔内注射した。このペプチドは以下の結果において「IGF1」という。
結果
IGFBP5はMD後の最もアップレギュレートされた遺伝子の1つであり、RT−PCR後の最高のmRNA発現レベル、およびMDまたはDR後の最高の異なるレベルの蛋白質発現のものである。さらに、IGF1経路はGSEAにおけるMD後のトップの富化経路の1つであり、IGFBP5およびIGF1の双方はMD後のいくつかの高度に富化された経路の構成要素である。本発明は、MD後のIGFBP5のアップレギュレーションは、MD後の目支配可塑性を媒介するにおいてIGF1に対して競合的役割を示し、従って、IGF1の該陰性適応はMDの効果を妨げることができるという認識を含む(例えば、参考文献56参照)。視覚野またはいずれかの皮質での経験依存性可塑性におけるIGF1/IGFBP5システムの可能な機能的関与は今日まで調べられていなかった。かくして、VIにおける目支配可塑性に対するIGF投与の生理学的効果をイン・ビボで決定した(図6)。
IGF1は血液脳関門を横切ることができ56、かくして、IGF1の腹腔内投与はCNS57における虚血症の効果を妨げる。固有のシグナルの光学的イメージングを用いて、V1の生理学的に同定された両眼部分における各目からのシグナルの強度を評価した(図6A)。イメージングを、臨界的期間の間にマウスの3つの年齢のマッチした群で行い:対照動物(n=3)、7日間単眼を除去した動物(n=4)、剥奪の期間の間にIGF1を腹腔内送達したMD動物(n=3)。図6Bは、個々の対照、MDおよびMD+IGF1動物における両眼ゾーン内の画素の目支配分布を示す。対照マウスにおける画素分布は、単一ユニット記録28、および視覚誘導電位58で既に記載されたように、対側目に好都合であった。対側目の縫合は、開いた同側目に向けてのシフトに対する目の支配分布を引き起こした。IGF1の同時投与は開いた目に向けての目の支配的シフトを妨げた。動物の集団にわたる平均目支配指標の比較(図6C)は、対側目の剥奪は対照動物に対して指標を有意にシフトさせ(P<0.05、単一データとしての各動物の処理)、他方、IGF1の投与と組み合わせたMDはシフトを妨げた(P>0.2)ことを示した。
IGF1/IGFBP5作用のメカニズムは、特異的細胞型および蛋白質が該経路に関与するかを問うことによって調査した。IGFBP5が興奮性または阻害性ニューロンで発現されるかを明らかにするために、IGFBP5およびGAD67についての二重免疫染色を行い、IGFBP5は、阻害性介在ニューロンにおいて専らというのではなく、ある範囲のニューロンで発現されることが示された(図7A)。次に、IGF1シグナル伝達に関与するいくつかの分子53、59のV1における発現は、MD単独の後の、およびIGF1の同時送達を伴うMD後の免疫染色によってアッセイした(図7B)。IGFBP5免疫染色は、短期間MD後の有意な増加、および剥奪期間の間にやはりIGF1を受けた短期間MD動物での正常なレベルからの変化無し(MD+IGF1)を示した。他方、IGF1受容体(IGF1R)の発現はMD後に有意にダウンレギュレートされ、発現はMD+IGF1動物において部分的に回復した。IGF1によって活性化されるホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)はMD後の発現が有意に減少したが、MD+IGF1処理後に十分に回復した(双方の比較についてP<0.05;図7B)。
PI3Kの基質の1つであるリン酸化−Aktの発現はMDによって有意に低下され、IGF1の添加によって回復した。IGF1およびPI3Kシグナル伝達はニューロン伝達に関連付けられてきたゆえに60−62、シナプス活性の変化を、シナプシン1についての免疫染色によってスクリーニングした。シナプス発現のレベルはMD動物−vs−対照において有意に変化しなかったが、MD+IGF1動物は有意な増加を示した(P<0.05)。最後に、MD+IGF1動物のマイクロアレイ分析をMD動物との比較のために行って、IGF1によって特異的に調節され、よって、IGF1メカニズムに特異的に関連付けられる遺伝子を調べた。遺伝子の小さな割合のみの発現が、MD動物と比較してMD+IGF1動物において有意に改変された(表10および11参照)。IGF1の添加は、MD単独と比較して、IGFBP5を有意にダウンレギュレートさせ、PI3Kをアップレギュレートした(P<0.01)。かくして、PI3Kは、目支配可塑性を媒介するにおいてIGF1の下流の重要なシグナルであるように見える。
実施例5:ヒドロゲルディスクからの可塑性改変剤の放出
薬物送達に適したヒドロゲルマトリックスからの経時的な可塑性改変剤の放出を示すために、種々の量のIGF1を含有するヒドロゲルディスクを製造し、PBS溶液中でのインキュベーションに付し、その間IGF1の放出を経時的に測定する。
ヒドロゲルはポリ(乳酸)(PLA)結合と共にポリ(エチレングリコール)(PEG)よりなり(すなわち、それはhPLA−b−PEG−PLAマクロマーを含有する)、それは従前に記載されている(Sawhney,et al.,1993;およびBurdick,et al.,2002)。ディスクを製造するために、ヒドロゲルマクロマーを、PBS溶液中で、IFNγ、および光開始剤2−ヒドロキシ−1−[4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン(Ciba−Geigy)を合わせる。溶液(50μl)を所望の寸法の金型に入れ、次いで、UV光下で10分間架橋して、重合を引き起こし、それにより、ほぼ5mm×1mmの寸法を持つヒドロゲルのディスクが得られる。
ヒドロゲルディスクを0.5mlのPBS溶液に入れ、製造業者の指示に従ってELISAキットを用いて放出を14日間にわたってモニターする。これらのヒドロゲルディスクを条件(各々、単一−鎖および2−鎖tPAについての2つの異なる負荷用量)の各々についてテストし、放出されたtPAの量を各時点において平均した。データを分析して、IGF1放出、およびディスクに存在するIGF1の量の間の関係を決定した。該関係は、最初にゲルに負荷されたIGF1の量を変化させることによって放出されたIGF1の量の対照を可能とする。放出されたIGF1の合計量は、濃度、およびディスクを0.5mlのPBS溶液中でインキュベートする事実から計算することができる。この情報を用いて、経時的に所望の用量で送達することが必要とされるIGF1の量およびヒドロゲルの量を決定することができる。
実施例6:脊髄損傷からの回復に対するIGF1の効果
材料および方法
実験の最初の組において、6匹の雌Sprague−Dawleyラットを麻酔し、10gm重量および12.5mm重量降下を備えたNew York Universityインパクターを用いることによって、脊髄損傷(SCI)をT10において誘導した。BBB(Basso,Beattie,Bresnahan)挙動テストを用いて、後足の反射ならびに後足の協調した使用を調べた(Basso et al.,1995;およびBasso,et al.,1996)この「BBB」スケールは、Multicenter Animal Spinal Cord Injury Study(マルチセンター動物脊髄損傷実験)によっておよび当該分野において他の研究者によって採用されている。従って、実験SCI後の結果尺度としてのBBBの使用は、結果のより容易な実験室間比較をサポートする。
第二の操作は、10μgのIGF1またはGPEおよび、ある実験においては、10μgのtPAの、6匹のラットのうちの3匹へのボーラスマイクロインジェクション(凍結乾燥粉末から10μg/10μLに復元したヒト2鎖組織プラスミノーゲンアクチベータ−;American Diagnostica,Inc.)のためにT8〜T9において操作から3日後に行った。ボーラス注射に続き、IGF1またはGPEおよび、ある実験においては、tPA(200 μL合計用量、0.5μg/時間で送達、10μgのIGF1またはGPEおよび、ある実験においては、10μg tPA/日を負荷した浸透圧ミニポンプAlzet Model 2002:14日ポンプ;Durect Corp.,Cupertino,CAを損傷の側に移植し、tPAを10連続日の間に送達した。操作後6週間において、BDAおよびフルオロゴールド(Fluorogold)注射を皮質において行って、脊髄皮質管再成長および再結合の程度を評価し、操作後10週目において、動物を灌流し、それらの脊髄を組織学的分析のために取り出した。移植されたミニポンプは、残りの溶液中のIFG1活性(および、ある実験においては、tPA活性)の分析のために貯蔵した。
実験の第二の組は、90μLの合計用量を保持し、0.5μl/時間を注入するAlzet Model 1007B:7日ポンプを用い、送達を10日ではなく7日連続したこと以外は、最初のものと同一の技術を用いて、動物のより大きな群について行う。
実験の第三の組においては、GPEをある範囲の異なる用量(10μ/1mg)にて毎日腹腔内投与する。
実験の第四の組においては、GPEを、ある範囲の異なる用量(10μ〜1mg)にて毎日腹腔内投与し、tPAを送達するポンプを前述のように移植する。
全ての実験において、脊髄皮質管の再成長および再結合の程度を評価し、組織学を行う。ヘマトキシリンおよびエオシン染色での解剖学的分析を行って、打撲傷部位を評価する。Teng and Wrathall,1997に記載されたように、セクションをソルベントブルー[SB]/ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。残存する白色物質の一体性を評価する。例えば、散在する白色物質中の高い品質のミエリン染色は有髄軸索の存在を示す。
機能的パラメーターを評価する。操作前には、BBBテストでの動物パフォーマンスは、21のベースライン値を有すると予測される。操作後初日に、全ての動物はBBBテストについて有意に損なわれ、それらのスコアは0に低下すると予測される。10週間の回復の後に、対照動物は、典型的には、BBBテストで約2.5の最終スコアを達成し、他方、処置された動物はより高いスコア、例えば、9に近い最終スコアを達成し、これは有意な改良であると考えられる。
実施例7:卒中の動物モデルにおけるtPAのありまたはなしでのIGF1の効果
30匹のラットを、それらが無兆候レベルの能力を達成するまで、挙動タスクのバッテリーで訓練する。次いで、標準的な手法に従い、ラットに中央大脳動脈(MCAO)の閉塞を受けさせる。外科的処置からの回復の後に、ラットは挙動タスクの全てにおいて有意に損なわれている。MCAO外科的処置の時点において、MCAOの側に対して両側での脳質内注入のために、30匹のラットのうち20匹に浸透圧ミニポンプ(90μlの全用量および1.0μl/時間注入でのAlzet Model 2001:7日ポンプ)を移植する。20匹のラットのうち10匹については、ミニポンプに10μg/日のIGF1を充填する。他の10匹については、ミニポンプを10μg/日のIGF1、および10μg/日のヒト2鎖組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA;American Diagnostica,Inc.)を充填する。他の10匹のラットには、10μg〜10mgの範囲の用量、例えば300μgのGPEの腹腔内注射を毎日受けさせる。
処理は、MCAOの後2日に開始し、7日間維持する。対照および処理ラットを、引き続いて、挙動回復について毎週テストする。
同等物および範囲
当業者であれば、日常程度の実験を用いて、本明細書中に記載された本発明の実施形態に対する多くの同等物を認識し、または確認することができるであろう。本発明の範囲は前記記載に限定されることを意図せず、むしろ、特許請求の範囲に記載された通りである。
当業者であれば、日常程度の実験を用いて、本明細書中に記載された本発明の実施形態に対する多くの同等物を認識し、または確認することができるであろう。本発明の範囲は前記記載に限定されることを意図せず、むしろ、特許請求の範囲に記載された通りである。
特許請求の範囲において「ある」および「該」は、逆のことが示されたり、またはそうでなければ文脈から明らかでない限り、1または1を超えることを意味することができる。かくして、例えば、「あるナノ粒子」に対する言及は、複数のそのようなナノ粒子を含み、「該細胞」に対する言及は当業者に知られた1つ以上の細胞への言及を含む、などである。群の1つ以上のメンバーの間に「または」を含む特許請求の範囲または明細書は、もし1、1を超える、または全ての群メンバーが、逆を示したりまたはそうでなければ文脈から明らかでない限り、与えられた物または方法において存在し、そこで使用され、またはそうでなければ関連するのであれば満足していると考えられる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが与えられたものまたは方法に存在し、そこで使用され、またはそうでなければ関連する実施形態を含む。本発明は、1を超える、または群メンバーのすべてが与えられたものまたは方法に関連する実施形態を含む。さらに、本発明は、列挙された請求項の1つ以上からの1つ以上の限定、エレメント、説、記載的用語などがもう1つの請求項に導入されたすべての変形、組合せ、および順列を含むものと理解されるべきである。例えば、もう1つの請求項に従属するいずれの請求項も、同一の基礎請求項に従属するいずれかの他の請求項で見出された1つ以上の限定を含むように改変できる。さらに、請求項が組成物を引用している場合、本明細書中に開示された目的のいずれかための組成物を用いる方法が含まれ、本明細書中に開示された製法、または当該分野で知られた他の方法のいずれかに従った組成物の製法が含まれ、特記しない限り、反駁または矛盾が起きるのは当業者に明らかであろうことは理解されるべきである。
エレメントが、例えば、マーカッシュ群様式で列挙して示された場合、エレメントの各サブ群もまた開示され、およびいずれのエレメントも群から除去することができるのは理解されるべきである。一般に、本発明、または本発明の態様が特定のエレメント、特徴等を含むと言及している場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様はそのようなエレメント、特徴等よりなり、または実質的にそれよりなると理解されるべきである。単純にする目的で、それらの実施形態はこういう意味で具体的に記載されている。用語「を含む」は、オープンされており、さらなるエレメントまたは工程を含めることを許容することを意図することを注記する。
範囲が与えられた場合、エンドポイントが含まれる。さらに、反対のことが示され、または文脈および当業者の理解から明らかであるのでなければ、範囲として表現された値は、文脈が明瞭にそうでないことを指令しているのでなければ、該範囲の下限の単位の1/10まで、本発明の異なる実施形態において述べられた範囲内のいずれの特定の値、またはサブ範囲をとることができるのが理解されるべきである。
加えて、本発明のいずれかの特定の実施形態は先行技術内に入る本発明のいずれの特定の実施形態の特許請求の範囲のいずれの1つ以上からも明示的に配慮することができるのが理解されるべきである。そのような実施形態は当業者に知られているとみなされているので、もし該排除が本明細書中において明示的に記載されていないとしても、それらは排除することができる。本発明の組成物のいずれかの特定の実施形態(例えば、可塑性改変条件、いずれかの可塑性改変剤、いずれかの蛋白質分解増強剤、いずれかの活性剤、いずれかの薬物送達系、いずれかの投与の形態、いずれかの投与療法、いずれかの治療的適用等)は、何らかの理由で、先行技術の存在に関連するか否かに拘わらず、いずれかの1つ以上の請求項から排除することができる。
前記で議論した、およびテキストを通じての公開は、本出願の出願日に先立ってそれらの開示についてだけ供される。本明細書中においては、先の開示によるそのような開示を更新する権利が発明者にはないことを自認するものと解釈されるべきものはない。
(参考文献)
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視覚インプット剥奪の異なるパラダイムにおいて活性化された遺伝子の分析および特徴付け。(A)3つの実験群を考慮した:対照マウス、暗所飼育(DR)マウスおよび単眼除去(MD)マウス。各試料から、解剖学的に規定された一次視覚野(V1)由来の組織をP27において採取した。対照およびDRマウスについては、V1を双方の半球から採取し、他方、MDマウスについては、剥奪された目に対して両側のV1のみを用いた。各試料について、全RNAを抽出し、マイクロアレイ手法のために処理した。MDおよびDR試料を、各々を2つの異なる計算方法で独立して対照と比較した(実施例1参照):単一遺伝子の分析のためのマイクロアレイの優位性分析(SAM)、および遺伝子セットの富化分析(GSEA)。各手法は、剥奪された群−対−対照においてアップレギュレートされた、またはダウンレギュレートされた単一遺伝子または遺伝子セットを同定した。これは、インプット剥奪の2つのモデルに関与する細胞事象の同定を導いた。(B),(C)全てのプローブの発現レベルを示す、(B)暗所飼育−対−対照および(C)単眼除去−対−対照動物における遺伝子発現の比較。有意に異なる発現レベルを示す遺伝子(p≦0.01)を赤色(剥奪プロトコルにおける過剰発現)または緑色(対照における過剰発現)で示す。遺伝子発現を対数スケールで示す。白色ダッシュ線は同一(y=x)に相当する。(D)本発明者らの分析で選択されたものの中で異なる発現を示した代表的な遺伝子の発現のレベルを示すヒートマップ(p≦0.01)。各行は別々の試料に対応する(MDについてはn=6、DRについてはn=3、および対照についてはn=3)。高レベルの発現は、鮮やかな赤色に対応し、低レベルの発現は暗い青色に対応する(色スケールについては図面の底部参照)。各群について、有意な遺伝子の中で25の無作為に選択した遺伝子をここに示す。各群内の遺伝子を、それらの発現値に基づいて分類する。 MDおよびDR動物における興奮性および阻害性伝達に関与する遺伝子の調節。(A)MDまたはDR−対−対照において有意にアップレギュレートされた阻害性/興奮性受容体遺伝子の数。(B)グルタミン酸でカルボキシラーゼ遺伝子(GAD65およびGAD67)、GABAについても合成酵素、および阻害性ニューロンの異なるクラスの、対照(con)、単眼除去(MD)および暗所飼育(DR)動物におけるマイクロアレイ発現レベル(MEN)の表示。パルブアルブミンについてのプローブのみがDRにおいて有意にダウンレギュレートされ、他方、他のマーカーはアップレギュレートされるか、または変化しない(星印は両側t検定を示す,P<0.05)。 RT−PCRでの選択された分子の確認。(A)半定量的PCRで確認された遺伝子のヒートマップ。発現のレベルは対数スケールで表され;赤色は最大発現に対応し、青色は最小発現に対応する。遺伝子は、MD後のそれらの発現レベルに従ってランク付けされる。(B,C)マイクロアレイ発現レベル(赤色)およびPCR値(緑色)についてのDRまたはMD−対−対照の間の比を示し、DR(B)およびMD(C)−対−対照における選択された分子の倍増加の表示。星印は、対応する遺伝子のマイクロアレイ発現が有意にアップレギュレートされることを示す(DR−対−対照、またはMD−対−対照における両側t検定P<0.05)。 DRおよびMD後における遺伝子発現の遺伝子組富化分析。(A)MD−対−対照データセットにおけるARF経路の富化の試料分析。検定された仮説は、ARF遺伝子組(n=19遺伝子)の発現がMD−対−対照データセットにおいて富化されるというものである。データセットにおける遺伝子は相関統計学に従ってランク付けされる(シグナル−対−ノイズ比率);対照に対してMDの後にアップレギュレートされる遺伝子は最初に現れ、対照においてアップレギュレートされた(すなわち、対照に対してMDにおいてダウンレギュレートされる)遺伝子は後に現れる。直線は、ARF経路にあるランク付けされたリストにおける遺伝子を表す(底部)。ランニング富化スコアを上部グラフにプロットする(頂部)。MD−対−対照データにおけるARF経路についてのピーク富化スコアは0.48であり、6.8の正規化された富化スコア(NES)を導く。(B)MDおよび対照試料におけるARF経路遺伝子組の全てのプローブの発現レベルのヒートマップ。最高レベルの発現は鮮やかな赤色に対応し、他方、最低レベルの発現は暗い青色に対応する。(C)DR−対−対照データセットについての正規化された富化スコア(NES)値の分布。矢印は、DRにおいて特に富化され、本明細書中で考察する2つの経路(CREB経路およびチャネル受動的トランスポーター経路)を強調する。挿入図は、これらの2つの経路についてのランニング富化スコアを示し;赤色矢印は、各々、CrebおよびGluR1プローブの位置を示す。(D)MD−対−対照データセットについてのGSEA分析におけるNES値の分布。矢印は、MDにおいて特に富化される本明細書中で考察された2つの経路:EGF経路およびIGF1経路を示す。これらの経路の各々について、挿入図は、ランニング富化スコアを示す。挿入図中の赤色矢印は、各々、Stat1およびIGF1−IGFBP5プローブの位置を示す。 DRおよびMDの後に増加した発現を示す分子の免疫組織化学。選択された分子についての免疫組織化学は、P27対照、暗所飼育(DR)および単眼除去(MD)マウスからのV1を含有する頭頂スライスで行った。DRマウスにおいては、3つの蛋白質:(A)パルブアルブミン、(B)GluR1および(C)Phospho−Crebの発現を調べた。パルブアルブミン遺伝子はDR−対−対照においてダウンレギュレートされ、免疫組織化学はDR動物におけるパルブアルブミン−陽性ニューロンの数の減少を示す。右側のヒストグラムは、パルブアルブミン作動性ニューロン−対−対照の数の有意な減少(P<0.01)を示す。GluR1およびP−Creb蛋白質は、DR動物−対−対照の視覚野において過剰発現された。MDマウスにおいては、(D)活性化されたStad1および(E)IGFBP5の発現を調べた。双方の蛋白質は、対照に対して、MDの15日後にV1において選択的にアップレギュレートされる。右側パネル(B−E)中の棒線は、DRまたはMDおよび対照動物のセクションにおける染色の強度を示し;調べた全ての分子について、染色の強度は対照におけるものよりも剥奪条件におけるものにおいて有意に高かった(P<0.05)。各分子については、低倍率写真(スケールバー=765μm)および高倍率写真(スケールバー=100μm)を示す。低倍率写真中の矢印はV1の境界を定める。 IGF1の適用は、マウスV1におけるMD後の目の支配的なシフトを妨げる。(A)左側:V1の位置を示すマウス脳(黒色領域)。右側:マウスV1における眼の優性指数マップ。点線は両眼ゾーン(b)を単眼ゾーン(m)から分ける。(B)3つの代表的なマウスの両眼ゾーンにおける眼の優性指数のヒストグラム。赤色の線、P27対照マウス;黒色線、MDの7日後におけるP27マウス;青色線、MDの7日後におけるP30マウス+同一期間のIGF1適用。各動物からのデータは、典型的には、2000を超える画素を含有する両眼野内の領域を含む。(C)マウスの3群の眼の優性指数平均。白丸は、各動物からの両眼ゾーン画素の眼の優性指数を示し;黒丸は各群の平均値を示す。 IGF1経路の選択されたマーカーについての免疫組織化学。(A)P28マウスの視覚野におけるIGFBP5(緑色)およびGAD67(赤色)についての二重染色。黄色の矢印は2つの色の間の重複を示し、これは、IGFBP5がGABA作動性ニューロンに存在することを示唆し;しかしながら、GAD67については免疫陽性ではないが、IGFBP5については免疫陽性である細胞(緑色矢印)、およびその逆である細胞(赤色矢印)の存在は、IGFBP5が同様に他の細胞クラスにも存在することを示す。スケールバー=17μm。(B)3つの異なる条件における選択された分子についての免疫染色:P28対照(通常の明条件で飼育した動物)、P28 MD(4日間単眼除去した動物)、およびP28 MD+IGF1(4日間単眼除去され、同時に、IGF1溶液を毎日IP注射した動物)。全てのMDパネルにおいては、示された野は除去された目に対して両側である。右側の棒線は、異なる条件における各分子の染色強度を示す。スケールバー=70μm。

Claims (101)

  1. 対象の神経系において可塑性を改変し、または機能の回復を助けるための方法であって、可塑性改変剤をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、前記剤は、神経系の可塑性を改変するのに有効な量で、単独で、あるいは1つ以上のさらなる剤と組合せて投与され、前記可塑性改変剤は、可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部分において差別可能に制御される遺伝子または経路を変調する、方法。
  2. 前記疾患が神経発達障害である請求項1記載の方法。
  3. 前記神経発達障害が自閉症、レット症候群、脆弱性X症候群、結節硬化症、または自閉症スペクトル障害よりなる群から選択される請求項2記載の方法。
  4. 前記疾患が神経精神障害である請求項1記載の方法。
  5. 前記神経精神障害が精神分裂症および双極性障害よりなる群から選択される請求項3記載の方法。
  6. 前記疾患が、卒中のような疾患によって引き起こされる神経系に対する外傷である請求項1記載の方法。
  7. 前記可塑性改変条件が暗所飼育(DR)または単眼除去(MD)を含む請求項1記載の方法。
  8. 前記可塑性改変剤がIGF1またはIGF1経路のモジュレータである請求項1記載の方法。
  9. 前記可塑性改変剤がJAK/STAT経路のモジュレータである請求項1記載の方法。
  10. 前記可塑性改変剤がIFNγである請求項1記載の方法。
  11. 前記可塑性改変剤がスタチンである請求項1記載の方法。
  12. IGF1経路を活性化する第一の剤、およびJAK/STAT経路を活性化する第二の剤を投与することを含む請求項1記載の方法。
  13. 前記可塑性改変剤が、パルブアルブミン発現介在ニューロンの発達、生存または活性を阻害する請求項1記載の方法。
  14. 前記可塑性改変剤がパルブアルブミンの発現または活性を阻害する請求項1記載の方法。
  15. 前記可塑性改変剤が神経系、またはその一部の能力を増強するのに有効な量で送達され、活性に依存した様式で、または第二の剤に応答して、失われた機能を回復する請求項1記載の方法。
  16. 前記可塑性改変剤が、神経系に対する損傷を罹っているかまたは神経系の障害と診断された対象に投与され、かつ神経系の回復、再組織化または機能を促進するのに有効な量および時間で投与される請求項1記載の方法。
  17. 前記投与の工程が:
    (1)脳または脊髄を損傷する事象の後に、あるいは神経精神障害または神経発達障害後に、前記対象に第一の期間、第一の可塑性改変剤を投与し;
    (2)第二の可塑性改変剤を第二の期間、前記対象に投与し、前記第二の期間は前記第一の期間とは別である;
    工程を含む請求項1記載の方法。
  18. 前記期間が脳または脊髄を損傷する事象後、あるいは神経精神障害または神経発達障害の診断後24時間以内に開始する請求項1記載の方法。
  19. 前記期間が脳または脊髄を損傷する事象後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後1週間以内に開始する請求項1記載の方法。
  20. 前記期間が、脳または脊髄を損傷する事象の後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後4週間以内に開始する請求項1記載の方法。
  21. 前記期間が、脳または脊髄を損傷する事象の後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後6ヶ月以内に開始する請求項1記載の方法。
  22. 前記期間が、脳または脊髄を損傷する事象の後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後1年以内に開始する請求項1記載の方法。
  23. 前記期間が、脳または脊髄を損傷する事象の後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後2年以内に開始する請求項1記載の方法。
  24. 前記期間が、脳または脊髄を損傷する事象の後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後5年以内に開始する請求項1記載の方法。
  25. 前記期間が、脳または脊髄を損傷する事象の後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後10年以内に開始する請求項1記載の方法。
  26. 前記第一の期間が、前記第一の可塑性改変剤の投与に対する前記対象の応答に際して終了する請求項17記載の方法。
  27. 前記第一の期間が、前記対象が少なくとも1つの所望のエンドポイントまたは治療の節目に到達すると終了する請求項17記載の方法。
  28. 前記第一の期間終了から前記第二の期間開始までの間の時間が少なくとも1週間である請求項17記載の方法。
  29. 前記第一の期間終了から前記第二の期間開始までの間の時間が少なくとも4週間である請求項17記載の方法。
  30. 前記第一の期間終了から前記第二の期間開始までの間の時間が少なくとも6ヶ月である請求項17記載の方法。
  31. 前記第一の期間終了から前記第二の期間開始までの間の時間が少なくとも1年である請求項17記載の方法。
  32. 前記第一の期間終了から前記第二の期間開始までの間の時間が少なくとも2年である請求項17記載の方法。
  33. 前記第一の期間終了から前記第二の期間開始までの間の時間が少なくとも5年である請求項17記載の方法。
  34. 前記第一の期間終了から前記第二の期間開始までの間の時間が少なくとも10年である請求項17記載の方法。
  35. 工程1〜2が、前記対象が少なくとも1つの所望のエンドポイントまたは治療の節目に到達するまで反復される請求項17記載の方法。
  36. 前記第一の可塑性改変剤が前記第二の可塑性改変剤と同一である請求項17記載の方法。
  37. 前記第一の可塑性改変剤が前記第二の可塑性改変剤と同一ではない請求項17記載の方法。
  38. 前記可塑性改変剤が、脳または脊髄を損傷する事象後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後24時間と10年との間に投与される請求項1記載の方法。
  39. 前記可塑性改変剤が、脳または脊髄を損傷する事象後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後1週間と10年との間に投与される請求項1記載の方法。
  40. 前記可塑性改変剤が、脳または脊髄を損傷する事象後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後4週間と10年との間に投与される請求項1記載の方法。
  41. 前記可塑性改変剤が、脳または脊髄を損傷する事象後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後5年と10年との間に投与される請求項1記載の方法。
  42. 前記可塑性改変剤が、脳または脊髄を損傷する事象の後、または神経精神障害または神経発達障害の診断後に、少なくとも1週間にわたって、連続的または間欠的のいずれかで投与される請求項1記載の方法。
  43. 前記可塑性改変剤が全身投与される請求項1記載の方法。
  44. 前記全身投与が経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与、経鼻投与、および肺投与よりなる群から選択される請求項43記載の方法。
  45. 前記可塑性改変剤が局所投与される請求項1記載の方法。
  46. 前記可塑性改変剤が、中枢または末梢神経系において、所望の位置において、またはその近隣において、一定時間にわたって前記剤を放出する薬物送達デバイスを前記対象に移植することによって投与される請求項1記載の方法。
  47. 前記所望の位置が、中枢または末梢神経系における虚血性、出血性、新形成、変性、外傷、または神経発達損傷の証拠を示す領域であるか、あるいはそのような損傷の証拠を示す領域とは反対の脳半球に位置する請求項46記載の方法。
  48. 前記薬物送達デバイスがポンプを含む請求項46記載の方法。
  49. 前記薬物送達デバイスが生体適合性ポリマーを含む請求項46記載の方法。
  50. 前記ポリマーが生分解性である請求項49記載の方法。
  51. 前記組成物が、可塑性改変剤が会合した複数のポリマーミクロ粒子またはナノ粒子を含む請求項1記載の方法。
  52. 前記可塑性改変剤が、生理学的流体との接触の後に、ゲルを形成する溶液中にて送達される請求項1記載の方法。
  53. 前記可塑性改変剤が、インプットの喪失の結果として起こる神経悪化を阻害するのに有効な量で送達される請求項1記載の方法。
  54. 前記可塑性改変剤が、軸索の成長または発芽を促進し、シナプス結合の構造的再組織化を促進し、新しいシナプス結合の形成を増加させ、樹状突起棘運動性を増加させ、シナプス結合を安定化し、あるいは前述のいずれかの組合せに有効な量で送達される請求項1記載の方法。
  55. 前記組成物が、中枢または末梢神経系における所望の位置において、またはその近隣においてそれを注射または注入することによって投与される請求項1記載の方法。
  56. 前記組成物が鞘内投与される請求項1記載の方法。
  57. さらに、蛋白質分解促進剤を対象に投与することを含む請求項1記載の方法。
  58. 前記蛋白質増強剤がプロテアーゼである請求項57記載の方法。
  59. 前記蛋白質分解増強剤がプラスミン、プラスミノーゲンアクチベーター、または内因性プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤の阻害剤である請求項57記載の方法。
  60. 前記蛋白質分解増強剤が組織プラスミノーゲンアクチーベーター(tPA)である請求項57記載の方法。
  61. 前記蛋白質分解増強剤が細胞外マトリックスの成分の分解を促進する請求項57記載の方法。
  62. 前記蛋白質分解増強剤が局所投与される請求項57記載の方法。
  63. 局所送達が、生体適合性ポリマーおよび前記蛋白質分解増強剤を含む薬物送達デバイスを前記対象の神経系に、あるいは損傷の領域において、またはその近隣に移植することによって達成される請求項62記載の方法。
  64. 前記可塑性改変剤および前記蛋白質分解増強剤が単一組成物の成分として投与される請求項62記載の方法。
  65. さらに、所望により神経伝達物質またはそのアナログから選択される神経成長増強剤、神経的に活性な成長因子、神経シグナル伝達分子、神経的に活性な低分子、および神経的に活性な金属よりなる群から選択される剤を投与することを含む請求項1記載の方法。
  66. さらに、神経系に対する損傷後に機能的回復を促進するように設計されたリハビリのプログラムに前記対象を専念させる工程を含み、前記対象は、その間に前記剤が投与されるか、あるいは前記対象の神経系に存在したままである時間間隔の少なくとも一部の間にそのように専念させる請求項1記載の方法。
  67. 対象の神経系において回復または再組織化を促進するための方法であって、可塑性改変剤をそれを必要とする対象に投与する工程を含み、前記剤は、神経系において回復または再組織化を促進するのに有効な量にて、単独で、または1つ以上のさらなる剤と組合せて投与され、前記可塑性改変剤は、可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部において差別可能に調節される遺伝子または経路を変調する、方法。
  68. 前記可塑性改変条件が暗所飼育(DR)または単眼除去(MD)を含む請求項67記載の方法。
  69. 前記可塑性改変剤がIGF1経路のモジュレータである請求項67記載の方法。
  70. 前記可塑性改変剤がJAK/STAT経路のモジュレータである請求項67記載の方法。
  71. 前記可塑性改変剤がIFNγである請求項67記載の方法。
  72. 前記可塑性改変剤がスタチンである請求項67記載の方法。
  73. IGF1経路を活性化する第一の剤、およびJAK/STAT経路を変調する第二の剤を投与することを含む請求項67記載の方法。
  74. 前記可塑性改変剤がパルブアルブミン発現介在ニューロンの発達、生存または活性を阻害する請求項67記載の方法。
  75. 前記可塑性改変剤がパルブアルブミンの発現または活性を阻害する請求項67記載の方法。
  76. 前記可塑性改変剤を、神経系、またはその一部の能力を増強させるのに有効な量にて送達して、活性に依存した様式で、または第二の剤に応答して、失われた機能を回復させる請求項67記載の方法。
  77. さらに、蛋白質分解増強剤を対象に投与することを含む請求項67記載の方法。
  78. 神経系の回復または再組織化を必要とする対象の神経系において回復または再組織化を促進する方法であって、前記対象に、蛋白質分解増強剤および剤を投与する工程を含み、前記剤は、IGF1経路を活性化する剤、JAK/STAT経路を活性化する剤、パルブアルブミン発現介入ニューロンの発達、生存または活性を阻害する剤、およびパルアルブミンの発現を阻害する剤よりなる群から選択され、前記蛋白質分解増強剤は、具体的損傷事象、または障害の診断から少なくとも3時間後、6時間後、12時間後、24時間後またはそれより長い時間後において、かつ所望により、具体的損傷事象または障害の診断から3時間に先立って投与される、方法。
  79. 対象の神経系への移植用の薬物送達デバイスであって、前記薬物送達デバイスは:
    生体適合性ポリマー;および
    可塑性改変剤を含み、
    前記可塑性改変剤は、対象の神経系における可塑性を改変するのに有効な量で放出される、対象の神経系への移植用の薬物送達デバイス。
  80. 前記生体適合性ポリマーが生分解性である請求項79記載の薬物送達デバイス。
  81. 前記可塑性改変剤が:IGF1経路のアクチベーター、JAK/STAT経路のモジュレータ、パルブアルブミン発現介在ニューロンの生存または活性を脳内で阻害する物質、およびパルブアルブミンの発現または活性を阻害する物質よりなる群から選択される請求項79記載の薬物送達デバイス。
  82. 前記蛋白質分解増強剤がプラスミン、プラスミノーゲンアクチベーター、または内因性プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤の阻害剤よりなる群から選択される請求項79記載の薬物送達デバイス。
  83. 可塑性改変剤、および蛋白質分解増強剤を含む組成物。
  84. 前記可塑性改変剤が:IGF1経路のアクチベーター、JAK/STAT経路のアクチベーター、脳内でパルブアルブミン発現介在ニューロンの生存または活性を阻害する物質、およびパルブアルブミンの発現または活性を阻害する物質よりなる群から選択される請求項83記載の組成物。
  85. 前記蛋白質分解増強剤が組織プラスミノーゲンアクチベーター、プラスミン、および組織プラスミノーゲンアクチベーターの阻害剤よりなる群から選択される請求項83記載の組成物。
  86. 可塑性に関与する遺伝子を同定する方法であって、
    神経系可塑性を改変する条件において個体を評価するか、または個体を前記条件に供し;
    前記個体の神経系の少なくとも一部において複数の遺伝子の各々の発現のレベルまたは活性を測定し;そして
    その発現または活性が、別の条件下でのその発現または活性に対して個体の神経系の一部において差別可能に調節される1つ以上の遺伝子を同定する;
    工程を含む、方法。
  87. 前記条件が正常なインプットの個体の神経系の少なくとも一部を奪うことを含む請求項86記載の方法。
  88. 前記神経系が臨界期間の少なくとも一部の間に正常なインプットが奪われる請求項86記載の方法。
  89. 複数の遺伝子の各々の発現のレベルが、マイクロアレイで、多数の異なるmRNAのレベルを測定することによって測定される請求項86記載の方法。
  90. 前記同定する工程が、高度に平行した様式で発現または活性を評価する方法を用いて行われる請求項86記載の方法。
  91. 前記個体の神経系の少なくとも一部における複数の遺伝子の各々の発現または活性を、正常な条件下で維持された対象におけるそれらの遺伝子の発現または活性と比較することを含む請求項86記載の方法。
  92. 第一の剥奪条件下における前記個体の神経系の少なくとも一部での複数の遺伝子の各々の発現または活性を、第二の剥奪条件下で維持された対象におけるそれらの遺伝子の発現または活性と比較することを含む請求項86記載の方法。
  93. 剥奪疾患に供された個体の神経系の少なくとも一部における複数の遺伝子の各々の発現または活性を、富化条件下で維持された個体におけるそれらの遺伝子の発現または活性と比較することを含む請求項86記載の方法。
  94. 可塑性改変条件に供された個体の神経系の少なくとも一部における複数の遺伝子の各々の発現または活性を、可塑性改変条件に供されていない個体の神経系の反対に位置した部分におけるそれらの遺伝子の発現または活性を比較することを含む請求項86記載の方法。
  95. 剥奪条件に供された個体の神経系の一部における複数の遺伝子の各々の発現または活性を、剥奪条件に供されていない個体の神経系の反対に位置した部分におけるそれらの遺伝子の発現または活性と比較することを含む請求項86記載の方法。
  96. さらに、前記個体の神経系の少なくとも一部において差別可能に調節される遺伝子において富化される生物学的経路またはプロセスを同定することを含む請求項86記載の方法。
  97. コンピュータ可読媒体に、前記遺伝子の少なくとも一部を同定する情報を貯蔵することをさらに含む請求項86記載の方法。
  98. さらに:
    前記遺伝子を変調する剤を個体に投与し;そして
    前記遺伝子が可塑性を改変するか否かを決定する;
    ことを含む請求項86記載の方法。
  99. さらに:
    神経系損傷を罹った個体に前記遺伝子を変調する剤を投与し;そして
    前記剤が前記個体の神経系の構造的または機能的回復を改善するか否かを決定する;
    ことを含む請求項86記載の方法。
  100. その発現または活性が、可塑性を改変する条件に供された個体において差別可能に調節される遺伝子の組を同定する情報を貯蔵するコンピュータ可読媒体。
  101. 前記コンピュータ可読媒体が、前記条件下での前記遺伝子の発現または活性の絶対レベルまたは相対レベルを含む情報をさらに貯蔵する請求項78記載のコンピュータ可読媒体。
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