JP2009529510A - 神経膠腫腫瘍の治療のためのiex−1の使用 - Google Patents
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Abstract
本発明は、薬物としてのIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子に関する。さらなる局面では、本発明は、神経膠腫の治療用薬物の製造のためのIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子に関する。
Description
本発明は、神経膠腫の治療用薬物の製造のためのIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子の使用に関する。
悪性神経膠腫は最も多く認められる悪性の脳腫瘍である。神経膠腫は、中枢神経系の非制御増殖細胞に由来する神経細胞悪性腫瘍である。神経膠腫の診断が下された患者の予後は悪く、5年生存率は平均5%未満である。症状は腫瘍部位に応じて変化するが、腫瘍細胞の急速な増殖挙動のために非常に速く発症する傾向がある。初発症状としては、頭痛、てんかん発作、麻痺、又は患者の人格変化があり得る。
神経膠腫は、上衣細胞、星状細胞、乏突起膠細胞、及び異なる種類の膠細胞を含むいくつかの細胞種に由来しうる。臨床上、神経膠腫は4つの悪性度に分けられ、悪性度は腫瘍の病理学的評価によって決定される。低悪性度の神経膠腫は、高分化型であり、増殖が遅く、生物学的な侵襲は少なく、患者の予後は良好と考えられる。高悪性度の神経膠腫は、未分化型又は低分化であり、増殖が速く、隣接組織に浸潤して、予後は悪い。不幸にも、これらの悪性度の中で最も侵襲性の高い悪性度4又は多形性膠芽腫(GBM)が、ヒトにおいて最も多く認められる。GBM患者の大半がこの疾患のため1年以内に死亡しており、患者において長期生存は実質的に認められないため、これらの腫瘍は大きな注目を集めてきたが、しかし、過去半世紀にわたってこれらの腫瘍は治療の全ての試みから上手く回避してきた。
治療上の処置に対するGBMの耐性の理由の1つは、腫瘍自体の複雑な特徴である。GBMという名称が示すように、膠芽細胞腫は多形である。膠芽細胞腫は肉眼的に多形であり、壊死及び出血部位を呈する。膠芽細胞腫は顕微鏡下で多形であり、偽柵状配列の壊死、多形性の核及び細胞、ならびに微小血管増殖の部位を伴う。また、膠芽細胞腫は遺伝的に多様であり、INK4a-ARFの喪失、又はサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)の増幅に関連するp53変異、又は網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)の喪失による細胞周期停止経路の破壊の他、上皮増殖因子受容体(EGFR)や血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)などのチロシンキナーゼ受容体の下流でのシグナル伝達経路の活性化を導く様々な欠失、増幅、及び点突然変異を伴う。
神経膠腫が外科手術によって治せない主な理由の1つは、疾患の組織分布的なびまん性の性質にある。腫瘍本体内の先述のばらつきに加えて、脳内での腫瘍細胞の位置にもばらつきがあるため、この腫瘍を完全には摘除できない。神経膠腫細胞は、初発腫瘍から脳実質を通って移動して、軟膜の縁の真下に集まり(軟膜下転移)、ニューロン及び血管を取り囲み(ニューロン周囲及び血管周囲の随伴増殖)、そして白質路を介して移動する(束内転移)。この挙動による最終転帰は、散在的に遠方にわたる、患者の生存に必須な脳の部位への個々の腫瘍細胞の転移である。この挙動の極端な例は、大脳膠腫症と呼ばれる症状であり、脳全体に散在的に腫瘍細胞が浸潤して、腫瘍自体の中心病巣部は最小限であるか、若しくは認められない。このように、神経膠腫は血流によって転移することはないが、髄液を介して転移可能であり、脊髄に「滴下転移(drop metastasis)」を招く可能性がある。GBM患者の25%において、剖検時に複数のGBM又は多中心性のGBMが認められる。したがって、これらの腫瘍の浸潤増殖様式のため根治的脳神経外科手術は不可能となり、「完全な」外科摘出後でさえ、ほとんどの場合で高悪性度の神経膠腫が再増殖する。腫瘍再発に対する再手術を施しても、脳の重要部位への腫瘍転移のために最終的には患者は死亡する。
悪性神経膠腫の複雑な挙動のため、高悪性度の神経膠腫の標準的治療では、それぞれ特定の1つの方法や治療戦略にのみ頼ることはできない。長年の間、治療には実質的に変化はなく、つまり可能な限りの腫瘍の外科切除、これに続く放射線療法及び化学療法の併用である(通常、DNAに損傷を与える、若しくはDNA複製を抑制するよう計画する)。しかし、(MRIスキャンによってモニタリングされうる)実質的に全ての腫瘍を外科的に除去でき、患者が放射線及び化学療法によって完全に治療される最善の状況下でさえ、この疾患の平均生存期間は2〜3カ月から1年に延びるだけである。非常に多くの場合、腫瘍は機能的な(野生型)腫瘍抑制性遺伝子p53の産物を含む、及び含まない細胞の混合物であり、このことが放射線治療や化学療法に対する感受性に影響を及ぼしている。機能的な野生型p53遺伝子によって化学療法に対する感受性が高められ、これは放射線照射に対する耐性因子として作用する。逆も同様である。
疾患の広汎性と相まって、GBMに対する標準的治療での不良転帰は、原発腫瘍から伝播した新生物細胞の殺傷をも目的とする新規治療法の多くの試みをもたらす。本質的に、これらのアプローチには、免疫学的アプローチ、遺伝子治療的アプローチ、又はウイルス的アプローチの3つの戦略が含まれる。
免疫学的アプローチ、つまり免疫系によって生理的に腫瘍拒絶を誘発させる試みは、広範に研究されており、実験動物において多くの成功を収めている。しかし、げっ歯類では成功しているが、ヒトでは成功していない。神経膠腫の悪性腫瘍は、増殖速度の亢進のみならず、生理的アポトーシスレベルの低下の結果としても生じる。このように、通例、腫瘍細胞は、放射線照射や化学療法のみならず、免疫療法にも耐性である。
最近のウイルス的アプローチには、腫瘍細胞で特異的に自己複製し、その結果腫瘍細胞を溶解によって殺傷するウイルスベクターの使用が含まれる。これらのアプローチでは、通常、中枢神経系に感染するが、この使用のために改変させたウイルスを利用する。組換えウイルスは、正常組織に対する病原性はないが、腫瘍細胞に対しては溶解性を持ち続けるように設計される。単純ヘルペスウイルスの無毒化非神経毒性型が以前から使用されており、培養中、及び、げっ歯類への移植のいずれでも神経膠腫細胞を殺傷することが示されている。Gromeierらはこのアプローチの別の例について記載しており(PNAS 97, 2000:p. 6803-6808)、ポリオウイルスの神経毒性を持たないが、培養中、及び、胸腺欠損マウスへの異種移植のいずれでもクローン性ヒト神経膠腫細胞株に感染して、これを殺傷するハイブリッド・ウイルス(ポリオウイルス-ヒト・ライノウイルス)の使用について報告している。現在、これらのウイルスの一部は臨床試験中である。
遺伝子治療的アプローチは腫瘍細胞への致死遺伝子の移入に依存している。この戦略の典型例は、腫瘍細胞への単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(TK)遺伝子のレトロウイルス移入、そしてこれに続く、TK発現細胞を殺傷する抗ウイルス化合物ガンシクロビルでの処理であった。予備レポートでは、この戦略による、げっ歯類に実験的に移植された神経膠腫の除去能が示された。残念なことに、ヒト神経膠腫に対するこの戦略の適用では、ヒトにおいて治療上の利益はないと思われる。
神経膠腫疾患の治療において、本来の成功、即ち患者を治癒させる機会をもたらす利用可能な戦略がないことは明らかである。この点において、現在適用される全ての治療の併用さえ不十分に思われる。
ヒトの前初期遺伝子X-1(IEX-1、別名Dif1、PRG1)、つまりマウスgly96のヒトのオルソログはX線照射誘導性の前初期遺伝子としてヒト扁平上皮癌細胞において最初に同定された。IEX-1遺伝子はアミノ酸156個のタンパク質をコード化しており、いずれの他の既知のタンパク質とも有意な配列類似性を共有しない。タンパク質は翻訳後にグリコシル化されて、27〜29kDaの産物をもたらす。他の既知のタンパク質との有意な配列相同性を欠いているにもかかわらず、ヒト、ラット、及びマウスのIEX-1のアミノ酸配列は十分に保存されている(>73%)。
IEX-1の転写は、細胞種、ならびに刺激の数及び強さに応じて、相互に排他的な過程、例えば、細胞生存対細胞死、又は、細胞分裂対細胞周期停止を操作可能であることが記録されている、p53、c-Myc、及びNF-KB/relなどの転写因子の制御下にある。同時に、これらの転写因子のように、IEX-1も細胞生存及び細胞周期の進行にプラス及びマイナスの影響を及ぼすことができる。IEX-1は、増殖、死、及び生存のシグナル伝達経路に関与する細胞シグナルを生じる。しかし、IEX-1媒介性の細胞応答の正確な分子機序は依然として完全には明らかにされていない。免疫化学的染色法により、膵臓及び乳房の他、皮膚、気管、胃腸、及び尿生殖器系の上皮においてIEX-1タンパク質が強く発現していることが示される。この組織分布パターンは、上皮組織が直接接触する外部環境に応じたIEX-1の役割を示唆している。
異所性IEX-1が存在しない場合と比較した、存在下での実質的なアポトーシス細胞の増加及びカスパーゼ-3活性の上昇から証明されるように、特定の刺激に応じてIEX-1の過剰発現がアポトーシスを促進させることが数例の研究において示されている。
しかし、アポトーシスへの感作に加えて、IEX-1の過剰発現がHeLa及びケラチノサイトにおいて細胞周期の進行を有意に促進しうるため、IEX-1は細胞周期制御においても役割を担いうる。このことは、細胞周期において進行中の細胞はアポトーシスを起こしやすいが、G1期停止期にある細胞は治療がより困難であるとの概念と矛盾しない。
さらに、細胞株を利用したインビトロ試験とは対照的に、インビボ試験では、IEX-1によって活性化T細胞がアポトーシスから保護されることが実証されている。IEX-1トランスジェニック動物において脾腫、リンパ節腫脹、及びリンパ腫の発生率が有意に上昇した。このように、IEX-1発現はインビボにおいて実質的な発癌潜在性を有する。
その上、IEX-1の高レベル発現が多くの腫瘍細胞株において認められている。IEX-1発現が複数の機序を介してp53によって抑制可能であるという知見は、これと矛盾しない。したがって、p53の不活化(腫瘍細胞で多く認められる)によりIEX-1発現が上方制御され、細胞周期の進行又は細胞生存に及ぼすIEX-1の効果によって腫瘍形成傾向を招くことが示されている。このことは、放射線及び比較的高レベルの多くの化学療法剤によって発現誘導されるIEX-1が、癌の放射線及び化学療法に対する耐性の一因となりうることも意味している。
しかし、様々な細胞種におけるIEX-1の正確な役割は依然として不明である。
したがって、生存率を高める、神経膠腫及び他の関連する神経細胞腫の治療アプローチを提供することが本発明の目的である。
目的は、特許請求の範囲に定める内容によって解決される。
本発明は、薬物として使用するためのIEX-1ポリペプチドをコード化する配列を含む核酸分子に関する。
特に、本発明は、神経膠腫の治療用薬物の製造におけるIEX-1ポリペプチドをコード化する配列を含む核酸分子の使用に関する。
驚くべきことに、発明者らは、悪性神経膠腫細胞において、組換えプラスミド又はベクターによるヒトIEX-1自体の発現によってこれらの神経膠腫細胞の選択的な殺傷及び/又は不活化が可能となり、同じコンストラクトを発現している神経細胞はIEX-1発現の影響を受けないままであることを見出した。
悪性神経膠腫細胞におけるIEX-1組換え体の発現によってこれらの神経膠腫細胞の選択的な殺傷及び/又は不活化が可能となり、ひいてはこれらの点で抗癌特性を持つとの知見は、予測不可能かつ予想外であったが、神経膠腫及び関連する状態の新しい治療方法を提供する。
本明細書の神経膠腫という用語は、中枢神経系の非神経細胞、特に膠細胞及び関連する細胞、さらに上衣細胞、星状細胞、乏突起膠細胞、又は他の種類の膠細胞から生ずる腫瘍に関する。したがって、神経膠腫という用語は、上衣細胞腫、星細胞腫、特に膠芽腫、乏突起神経膠腫、乏突起星細胞腫、及び雑多な起源の、つまり星状細胞、上衣細胞、及び/又は乏突起膠細胞を含む2種以上の細胞から生じる他の神経膠腫などの病態を含む。罹患組織は、神経系の任意の部分、つまり脊髄組織の他、脳組織であり得る。
好ましい態様では、本発明は、IEX-1をコード化する核酸分子がS型(短型)IEX-1を示すSEQ ID NO:1の核酸配列又はその断片を含む、本発明で使用する核酸分子に関する。別の好ましい態様では、IEX-1ポリペプチドはL型(長型)IEX-1を示すSEQ ID NO:2の配列を含む。または、IEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子はIEX-1遺伝子座のゲノム配列を含むことができ、即ち、例えば、標的細胞におけるポリペプチドの発現を向上させるために、コード配列に加えて、ゲノム部位の非コード配列を含むことができる。
好ましくは、本発明で使用する核酸分子は、ウイルスベクターなどの哺乳動物細胞で機能的に活性なベクター、特にアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、又は他の哺乳動物ウイルスに由来するベクターである。当技術分野において、多くのこのような発現ベクター、又はその構築方法について記載されており、当業者であればこのようなベクターのいくつかの構築方法を見いだすであろう。
本発明の一態様では、本発明で使用するIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子の発現は、プロモーター、特にSV40、CMV、チミジンキナーゼ、E2A、LTRから選択されるプロモーター、又は外部から誘導可能なプロモーターによって促進される。このように、好ましい態様では、IEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子には、このようなプロモーターが含まれる。
他の好ましい態様では、組織及び/又は細胞種特異的プロモーターを介して発現制御することにより、すなわち腫瘍特異的プロモーターを使用する、及び/又は目的の組織/細胞種において転写プロモーター活性を上方制御もしくは下方制御する適当なエンハンサーカセットを利用することにより、IEX-1ポリペプチドの発現又は過剰発現を特定の組織及び/又は細胞種に限定させる。好ましくは、組織は中枢神経系の一部であり、細胞種は膠細胞である。このような発現の制限は、健常組織/細胞におけるIEX-1の発現に起因する有害作用を最小限にするために望ましい。このようなプロモーターの例としては、限定はされないが、ヒトのグリア線維性酸性タンパク質プロモーター(GFAPプロモーター)又はヒトのテロメラーゼ逆転写酵素プロモーター(hTERTプロモーター)が挙げられる。GFAPは、ほぼ星状細胞にのみ、また高い頻度で神経膠腫において発現する中間径フィラメントタンパク質である(McLendon and Bigner, Brain Pathol. 4, 1994:p. 221-228)。神経膠腫細胞でのHSV-TK及びgas1の発現のためのGFAPプロモーターの利用に成功している(Vandier et al., Cancer Gene Ther. 7, 2000:p. 1120-1126;Zamorano et al., Neurobiol.Disease 15, 2004:p. 483-491)。hTERTプロモーターに関して、腫瘍の約90%がテロメラーゼ活性を有するのに対して、正常細胞の大半がテロメラーゼを発現していない。テロメラーゼ活性が多形性膠芽腫(悪性度IV)の75〜90で検出される。対照的に、正常脳組織はテロメラーゼ活性を発現していない。hTERTプロモーターは神経膠腫細胞において正常に機能して、カスパーゼ-6(Komata et al., Cancer Res.61, 2001: p. 5796-5802)及びPUMA(Ito et al., Human Gene Ther.16, 2005: p. 685-698)を発現させる。このように、さらに好ましい態様において、本発明は、膠細胞において前記IEX-1ポリペプチドの組織特異的発現をもたらすプロモーター、特に、例えば前記GFAPプロモーター、又は腫瘍特異的発現をもたらすプロモーター、特にhTERTプロモーターによって促進される、本発明の核酸分子の使用に関する。好ましくは、組換えIEX-1の発現は無関係な組織/細胞においては完全に遮断されている。プロモーターは、誘導性プロモーター、つまり、当業者には公知のGLAプロモーター、tet制御可能プロモーター(tetオン/オフ)など、特定の薬剤及び刺激への暴露後にのみ活性化又は不活性化するプロモーターでもよい。
本発明の好ましい態様では、薬物にはさらに野生型p53タンパク質の阻害剤が含まれる。阻害剤は、p53発現を阻害する核酸分子、又はこのようなp53発現を阻害する核酸分子をコード化する核酸分子、又はp53遺伝子産物の発現を阻害する他の任意の分子でよい。p53発現を阻害する核酸分子は、例えば、p53 mRNAに対するsiRNAでよい。p53発現を阻害する他の分子の例は、ピフィスリン-α(Pifithrin-α)である。当業者には公知の他の形態のp53遺伝子発現の阻害剤も利用できる。特に腫瘍が野生型p53を喪失していない場合には、p53阻害剤の同時投与によって腫瘍細胞の殺傷効率が高まる。
神経膠腫細胞が患者の腫瘍を構成する場合、ベクターを直接腫瘍に投与する、又は、他の態様においては、ベクターを患者に全身投与する、若しくは、腫瘍、つまり神経膠腫細胞にベクターを送達する標的部分を含む送達ビヒクル中で投与する。
好ましい態様では、IEX-1核酸分子の組織又は生体の標的細胞への移入を可能にする(シャトル)化合物を含むように薬剤を設計する。このようなシャトル化合物は当業者には公知であり、例えば、リポソーム膜の外側に、標的細胞の特定の細胞表面マーカーを特異的に認識して結合するモノクローナル抗体(mAb)、リガンド及び/又は他のタンパク質及び物質を有するリポソーム化合物でよく、つまり、IEX-1核酸分子による特定の組織及び/又は細胞の標的化、好ましくは神経膠腫細胞のみの標的化をもたらす。または、特別に設計したウイルス、例えばアデノウイルス、レトロウイルス、又は適当なエピトープを有するHIVキャプシドを基本とするレトロウイルスを適用できる。アデノウイルスDNAはレトロウイルスとは対照的に宿主ゲノムに取り込まれず、数回の細胞分裂後に失われるため、アデノウイルスベクターは細胞へ一過性にトランスフェクトされる。アデノウイルス感染は細胞の増殖に左右されないため、標的細胞/標的腫瘍組織が徐々にしか増殖しない、又は非増殖性の場合には、アデノウイルスの使用は好ましい態様である。レトロウイルスでのアプローチは急速に増殖している腫瘍に好ましく、これは標的細胞が恒久的にトランスフェクトされるためである。
このようなウイルス粒子又はリポソームの製造については先行技術に記載されている(Strauss M, et al., 1997;Tarhovsky YS et al., 1998;Anderson WF, 1998; Martin F et al., 1999; Kurane S et al., 1998)。
本発明の薬物は薬学的調製物として使用できる。このような態様では、薬物にはIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子、及び更に薬学的に許容される担体が含まれる。このような調製物は、薬学的技術分野において周知の方法で製造される。好ましい1つの調製物では、生理的食塩水の媒体を利用するが、生理的濃度の他の非毒性塩、5%グルコース水溶液、滅菌水などの他の薬学的に許容される担体の使用も企図される。適当な緩衝剤が組成物中に存在することも望まれうる。このような溶液は、適宜、凍結乾燥させて、無菌アンプルに保存し、無菌水の添加によっていつでも再調製して、直ちに注射できるように準備できる。
これらの薬学的組成物は適当な用量で対象に投与できる。適当な組成物の投与は、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、皮内投与などの様々な方法によってもたらされうる。
特定の態様では、IEX-1をコード化する核酸分子を含む組成物は経口投与される。このような製剤は、好ましくは、カプセルに入れて、固形の剤形中で適当な担体を用いて製剤化される。適当な担体、賦形剤、及び希釈剤の一例として、乳糖、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ゼラチン、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウム、ステアリン酸塩、水、鉱油などが挙げられる。製剤としては、さらに、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、甘味剤、又は香料添加剤を挙げることができる。当技術分野では周知の方法を利用することで、患者への投与後に活性成分が急速放出、持続放出、又は徐放されるように組成物を製剤化することができる。製剤には、例えば、界面活性剤など、タンパク質分解を低下させて、吸収を促進させる物質を含むことができる。
担体には、pH、浸透圧、粘度、透明度、色、無菌性、安定性、溶解速度、又は製剤の香気を改変又は維持させるための他の薬学的に許容される賦形剤を含めることができる。同様に、担体には、放出、又は吸収、又は脳血液関門を介した浸透を改変又は維持させるための他の薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。このような賦形剤は、通例、単位用量もしくは多用量の非経口投与向け、又は持続注入もしくは定期注入による脳脊髄液への直接注入向けの用量を製剤化するために習慣的に使用される物質である。
好ましい別の態様では、IEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子を含む本発明の薬物は、他の腫瘍への併用投与、つまり、化学療法、放射線療法、外科手術、免疫療法、ウイルス療法、又はIEX-1以外の他の致死遺伝子による他の遺伝子治療アプローチなどの二次腫瘍治療向けに製剤化される。本発明の薬物の投与は、二次治療における投与前、同時、又は投与後でよい。
放射線療法は、例えば、外照射療法(例、X線、γ線治療)、体内の腫瘍部位近く又は腫瘍部位での放射性物質の挿入により送達される放射線(例、γ線を放出する放射性核種による治療)、中性子、荷電粒子などを利用した粒子線治療など、当技術分野において利用される任意の様式の放射線療法でよい。
本発明の別の態様には、化学療法との併用での、本発明の組成物の使用が含まれる。化学療法薬は当技術分野において公知であり、ピリミジン類似体及びプリン類似体代謝拮抗薬、植物アルカロイド、抗腫瘍抗生物質、アルキル化剤を含む代謝拮抗薬が含まれる。
一局面では、本発明は、本発明の核酸分子を含む薬学的組成物に関する。
本発明の別の局面は、対象に本発明のIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子を投与することによる、疾患、特に神経膠腫の治療法である。好ましい態様では、神経膠腫の治療方法は、上衣細胞腫、星細胞腫、特に膠芽腫、乏突起神経膠腫、乏突起星細胞腫、又は少なくとも2種類の膠細胞に由来する混合神経膠腫から選択される神経膠腫の治療方法に関する。好ましい態様では、本発明の治療方法は、SEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:2の配列を含むIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子の対象への投与を含む。さらなる好ましい他の態様では、治療方法には対象への核酸分子の投与が含まれ、核酸分子はベクター、特にアデノウイルス、アデノ関連性ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、又は他の哺乳動物ウイルスに由来するウイルスベクターである。好ましい別の態様では、治療方法にはIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子の対象への投与が含まれ、核酸分子の発現は、プロモーター、特にSV40、CMV、チミジンキナーゼ、E2A、LTRから選択されるプロモーター、又は誘導性プロモーターによって促進される。治療方法は、前記核酸分子の投与を含むことができ、IEX-1ポリペプチド発現を促進させるプロモーターは組織特異的発現をもたらす、若しくは、前記プロモーターは腫瘍特異的発現をもたらす。特に、このような組織特異的プロモーターがGFAPプロモーターであり、腫瘍特異的プロモーターの場合、hTERTプロモーターである。好ましくは、治療方法によって、併用投与、又は化学療法、放射線療法、外科手術、免疫療法、ウイルス療法、もしくはIEX-1以外の他の致死遺伝子による他の遺伝子治療アプローチなどの二次治療方法の適用が可能となる。好ましい態様では、本発明の治療方法には、さらにp53阻害剤の投与が含まれる。
本明細書又は本明細書において開示される本発明の実施を考慮すれば、特許請求の範囲内の他の態様は、当業者には明らかであろう。本明細書は、実施例と共に例示のみを意図し、本発明の精神及び範囲は、実施例に続く特許請求の範囲によって示される。
限定はされないが、以下の実施例によって、本発明を今回さらに詳述している。
実施例1:プラスミドベクターを含むIEX-1cDNAのクローニング
IEX-1(SEQ ID NO:1)発現用に、プライマーを用いたPCRによって完全長cDNAを増幅させた:センス
及びアンチセンス
。
pCR-II-TopoベクターにcDNA断片をサブクローニングして、ヌクレオチド配列を決定した。プラスミドをEcoRIで消化して、結果として得られたIEX-1カセットをEcoRIで消化したpIRES2-EGFPプラスミドベクターにサブクローニングした。結果として得られたベクターをpIRES2-EGFP/IEX1と名付けた。このベクターはIEX-1及びEGFPを同時発現する。
IEX-1(SEQ ID NO:1)発現用に、プライマーを用いたPCRによって完全長cDNAを増幅させた:センス
及びアンチセンス
。
pCR-II-TopoベクターにcDNA断片をサブクローニングして、ヌクレオチド配列を決定した。プラスミドをEcoRIで消化して、結果として得られたIEX-1カセットをEcoRIで消化したpIRES2-EGFPプラスミドベクターにサブクローニングした。結果として得られたベクターをpIRES2-EGFP/IEX1と名付けた。このベクターはIEX-1及びEGFPを同時発現する。
実施例2:IEX-1プラスミドベクターによる神経膠腫細胞のトランスフェクション
ヒトの膠芽腫細胞株U87-MG、U-373MG、U251 MGをアメリカ培養コレクション(American Type Culture Collection)(米国メリーランド州ロックビル)から入手した。5%二酸化炭素(CO2)を含む37℃の加湿空気中において、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン(FBS/DMEM)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で細胞を維持した。メーカーの使用説明書に従って、Trans-ITを使用してU-87MG(p53+)、U373 MG(P53-)、及びU251 MG(P53-)神経膠腫細胞に発現プラスミドをトランスフェクトした。対照として、PC12神経細胞にもトランスフェクトした。pIRES2-EGFP/IEX1プラスミドベクターをトランスフェクトした細胞は、緑色蛍光タンパク質(GFP)とIEX1のいずれも発現する。したがって、トランスフェクションに成功した細胞は、緑色蛍光発光によって容易に認識される。
ヒトの膠芽腫細胞株U87-MG、U-373MG、U251 MGをアメリカ培養コレクション(American Type Culture Collection)(米国メリーランド州ロックビル)から入手した。5%二酸化炭素(CO2)を含む37℃の加湿空気中において、10%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)、100単位/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシン(FBS/DMEM)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で細胞を維持した。メーカーの使用説明書に従って、Trans-ITを使用してU-87MG(p53+)、U373 MG(P53-)、及びU251 MG(P53-)神経膠腫細胞に発現プラスミドをトランスフェクトした。対照として、PC12神経細胞にもトランスフェクトした。pIRES2-EGFP/IEX1プラスミドベクターをトランスフェクトした細胞は、緑色蛍光タンパク質(GFP)とIEX1のいずれも発現する。したがって、トランスフェクションに成功した細胞は、緑色蛍光発光によって容易に認識される。
実施例3:機能的p53の不活化
U87 MG細胞の機能的p53は、HPV E6タンパク質のレトロウイルス遺伝子移入によって下方制御可能であり、これはp53に結合して、ユビキチン経路を介したp53タンパク質分解を促進させる。したがって、p53(+)細胞株U-87MGの細胞にE6タンパク質をコード化するレトロウイルスベクターをトランスフェクトした。U-87 MG細胞にLXSN、LXSN-16E6SD、及びLXSN-16E6SD-8S9A10Tレトロウイルスを感染させて、続いて800μg/mlのG418で2週間薬剤選択することで、U87-LXSN(空ベクター感染)、U87-W E6(野生型E6発現)、及びU87-M E6(変異型E6発現)細胞株をそれぞれ得た(Sawada et al.Oncogene 20, 2001:p.1368-1378参照)。または、shRNAのレトロウイルス送達を利用したsiRNAによってp53発現を標的とすることもできる。shRNA発現レトロウイルスベクターを作製するために、自己不活化ウイルスベクターを使用した。SI-MSCVpuro-H1R-p53Ri、及び骨格(SI-MSCVpuro-H1R)レトロウイルスを感染させて、続いて1μg/mlのピューロマイシンで選択することで、p53 shRNAを発現するU-87 MG細胞(U87-p53SIとして設計)及び対照細胞H1R(U87-Vec)をそれぞれ得た。マウス幹細胞ウイルスベクターpCMSCVpuro-DESTの3'LTRは内部欠失(NheI-XbaI)によって不活化させた。自己不活化ウイルスベクターはpSI-CMSCVpuro-DESTと名付けた。過去にBrummelkampらが記載した、スタッファーを持つ/持たないHIプロモーターカセットに対して、アダプターPCRによってattB2及びattB1配列を付着させて、メーカーの使用説明書に従ったBP反応によってpDONR221に組み込み、pENTR221-H1R-スタッファー、pENTR-H1Rを作製した。pENTR221-H1Rp53Riを作製するために、pENTR221-H1R-スタッファーをBglIIとHindIIIで消化して、アニーリングさせたオリゴ
をスタッファーと置換させた。メーカーの使用説明書に従ったLR反応によって、両方の挿入断片をpSI-CMSCVpuro-DESTに組み込み、pSI-CMSCVpuro-H1R-p53Ri及びpSI-CMSCVpuro-H1Rを作製した。SI-MSCVpuro-H1R-p53Ri、及び骨格(SI-MSCVpuro-H1R)レトロウイルスを感染させて、続いて1μg/mlのピューロマイシンで選択することで、p53 shRNAを発現しているU-87 MG細胞(U87-p53SIとして設計)及び対照細胞H1R(U87-Vec)をそれぞれ得た。
U87 MG細胞の機能的p53は、HPV E6タンパク質のレトロウイルス遺伝子移入によって下方制御可能であり、これはp53に結合して、ユビキチン経路を介したp53タンパク質分解を促進させる。したがって、p53(+)細胞株U-87MGの細胞にE6タンパク質をコード化するレトロウイルスベクターをトランスフェクトした。U-87 MG細胞にLXSN、LXSN-16E6SD、及びLXSN-16E6SD-8S9A10Tレトロウイルスを感染させて、続いて800μg/mlのG418で2週間薬剤選択することで、U87-LXSN(空ベクター感染)、U87-W E6(野生型E6発現)、及びU87-M E6(変異型E6発現)細胞株をそれぞれ得た(Sawada et al.Oncogene 20, 2001:p.1368-1378参照)。または、shRNAのレトロウイルス送達を利用したsiRNAによってp53発現を標的とすることもできる。shRNA発現レトロウイルスベクターを作製するために、自己不活化ウイルスベクターを使用した。SI-MSCVpuro-H1R-p53Ri、及び骨格(SI-MSCVpuro-H1R)レトロウイルスを感染させて、続いて1μg/mlのピューロマイシンで選択することで、p53 shRNAを発現するU-87 MG細胞(U87-p53SIとして設計)及び対照細胞H1R(U87-Vec)をそれぞれ得た。マウス幹細胞ウイルスベクターpCMSCVpuro-DESTの3'LTRは内部欠失(NheI-XbaI)によって不活化させた。自己不活化ウイルスベクターはpSI-CMSCVpuro-DESTと名付けた。過去にBrummelkampらが記載した、スタッファーを持つ/持たないHIプロモーターカセットに対して、アダプターPCRによってattB2及びattB1配列を付着させて、メーカーの使用説明書に従ったBP反応によってpDONR221に組み込み、pENTR221-H1R-スタッファー、pENTR-H1Rを作製した。pENTR221-H1Rp53Riを作製するために、pENTR221-H1R-スタッファーをBglIIとHindIIIで消化して、アニーリングさせたオリゴ
をスタッファーと置換させた。メーカーの使用説明書に従ったLR反応によって、両方の挿入断片をpSI-CMSCVpuro-DESTに組み込み、pSI-CMSCVpuro-H1R-p53Ri及びpSI-CMSCVpuro-H1Rを作製した。SI-MSCVpuro-H1R-p53Ri、及び骨格(SI-MSCVpuro-H1R)レトロウイルスを感染させて、続いて1μg/mlのピューロマイシンで選択することで、p53 shRNAを発現しているU-87 MG細胞(U87-p53SIとして設計)及び対照細胞H1R(U87-Vec)をそれぞれ得た。
実施例4:細胞死解析
異なる2つの方法によって細胞死解析を行なうことができる。(1)pIRES2-EGFPはネオマイシン(G418)耐性遺伝子を含むため、pIRES2-EGFP/IEX1を取り込まなかった細胞はまず0.5 mg/mlのG418で殺され、緑色蛍光を有する生存細胞数をカウントした。(2)同じ培養シャーレ2枚にpIRES2-EGFPベクター又はpIRES2-EGFP/IEX1をトランスフェクトした。72時間後、各シャーレ内の緑色蛍光を有する細胞数を比較した。一部の実験において、Hoechst 33258染色したアポトーシス細胞を蛍光顕微鏡解析によって定量した。
異なる2つの方法によって細胞死解析を行なうことができる。(1)pIRES2-EGFPはネオマイシン(G418)耐性遺伝子を含むため、pIRES2-EGFP/IEX1を取り込まなかった細胞はまず0.5 mg/mlのG418で殺され、緑色蛍光を有する生存細胞数をカウントした。(2)同じ培養シャーレ2枚にpIRES2-EGFPベクター又はpIRES2-EGFP/IEX1をトランスフェクトした。72時間後、各シャーレ内の緑色蛍光を有する細胞数を比較した。一部の実験において、Hoechst 33258染色したアポトーシス細胞を蛍光顕微鏡解析によって定量した。
完全に存在しない、若しくは下方制御されている、野生型p53発現レベルの認められない神経膠腫細胞(p53(-)、U373 MG、U251 MG、U87-W E6、U87-p53SI)は、pIRES2-EGFP/IEX1発現後、アポトーシスに入り、アポトーシス細胞死に直面した。
実施例5:pIRES2-EGFP/IEX1を発現する非膠細胞の分析
非膠細胞由来の細胞にpIRES2-EGFP/IEX1をトランスフェクトさせて、先述の通りに分析した。培養された非神経細胞(線維芽細胞NIH3T3、軟骨細胞HCS-2/8、HeLa、SCC14A扁平上皮癌細胞)の形状及び生存は、IEX-1cDNA発現の影響を受けなかった。同じことがPC12細胞(褐色細胞腫;神経細胞モデル)などの神経細胞であるが非膠細胞である細胞に当てはまった。
非膠細胞由来の細胞にpIRES2-EGFP/IEX1をトランスフェクトさせて、先述の通りに分析した。培養された非神経細胞(線維芽細胞NIH3T3、軟骨細胞HCS-2/8、HeLa、SCC14A扁平上皮癌細胞)の形状及び生存は、IEX-1cDNA発現の影響を受けなかった。同じことがPC12細胞(褐色細胞腫;神経細胞モデル)などの神経細胞であるが非膠細胞である細胞に当てはまった。
実施例6:ウェスタンブロット解析によるタンパク質の検出
全細胞タンパク質抽出物をウェスタンブロット解析に使用した。氷冷溶解バッファー(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、150 mM NaCl、10 mM EGTA、1% Triton-X、0.1% SDS、1% デオキシコール酸、0.3 mM PMSF、30μg/ml (L-3-トランス-カルボキシオキシラン-2-カルボニル)-L-ロイシル-アグマチン(E64)、1 mM オルトバナジン酸ナトリウム、10 mM フッ化ナトリウム、0.1 mM モリブデン酸ナトリウム、0.5 mM 4-デオキシピリドキシン)中で細胞を可溶化させた。SDS-PAGEによってタンパク質を分離させ、電気泳動的にポリビニリデンジフルオリドメンブレンに転写させた。まず、示した一次抗体とメンブレンをインキュベートして、次に抗マウス又は抗ヤギIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体とインキュベートした。ECLシステムにより検出した。IEX-1(N-17)、S-100、及びGFAPに対する抗体、ならびに抗ヤギIgG HRP結合二次抗体はSanta Cruz Biotechnology社(カリフォルニア州サンタクルス)から入手した。抗アクチン抗体はCalbiochem社(カリフォルニア州ラホーヤ)から入手した。抗マウスIgG HRP結合二次抗体及びECLウェスタンブロット検出システムはAmersham Biosciences(英国バッキンガムシャー)から入手した。結果として、IEX-1プラスミドベクターのトランスフェクション後、IEX-1発現を容易に検出可能であった。
全細胞タンパク質抽出物をウェスタンブロット解析に使用した。氷冷溶解バッファー(50 mM Tris-HCl、pH 7.4、150 mM NaCl、10 mM EGTA、1% Triton-X、0.1% SDS、1% デオキシコール酸、0.3 mM PMSF、30μg/ml (L-3-トランス-カルボキシオキシラン-2-カルボニル)-L-ロイシル-アグマチン(E64)、1 mM オルトバナジン酸ナトリウム、10 mM フッ化ナトリウム、0.1 mM モリブデン酸ナトリウム、0.5 mM 4-デオキシピリドキシン)中で細胞を可溶化させた。SDS-PAGEによってタンパク質を分離させ、電気泳動的にポリビニリデンジフルオリドメンブレンに転写させた。まず、示した一次抗体とメンブレンをインキュベートして、次に抗マウス又は抗ヤギIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ結合二次抗体とインキュベートした。ECLシステムにより検出した。IEX-1(N-17)、S-100、及びGFAPに対する抗体、ならびに抗ヤギIgG HRP結合二次抗体はSanta Cruz Biotechnology社(カリフォルニア州サンタクルス)から入手した。抗アクチン抗体はCalbiochem社(カリフォルニア州ラホーヤ)から入手した。抗マウスIgG HRP結合二次抗体及びECLウェスタンブロット検出システムはAmersham Biosciences(英国バッキンガムシャー)から入手した。結果として、IEX-1プラスミドベクターのトランスフェクション後、IEX-1発現を容易に検出可能であった。
実施例7:実験的な膠芽腫モデルの治療のためのアデノウイルス媒介IEX-1遺伝子治療
本発明は動物モデルにおいても試験した。したがって、神経膠腫細胞株、及び、IEX-1をコード化するアデノウイルス又はPBSのいずれかをヌードマウスに注入した。
本発明は動物モデルにおいても試験した。したがって、神経膠腫細胞株、及び、IEX-1をコード化するアデノウイルス又はPBSのいずれかをヌードマウスに注入した。
注入前のヒト膠芽腫細胞株U87(p53陽性)及びU87-E6突然変異体(p53陽性だが、機能が失われている)は、5% CO2の加湿空気中で10%ウシ胎仔血清を添加したDMEM中で増殖させた。
複製欠損アデノウイルス、つまりIEX-1をコード化するアデノウイルスベクターは、メーカーの使用説明書に従って、Adenovirus Expression Vector Kit(Dual Version)(タカラバイオ社、日本)を使用して構築した。IEX-1 DNAを有する組換えアデノウイルスをAxCA-IEX-1と名付けた。TCID50(50%の細胞の組織培養感染量)の測定によって組換えアデノウイルスを滴定した。ウイルスストックを10%グリセロール中に保存して、使用まで-80℃に保った。
全ての実験において、実験前には6週齢の雄BALB/cヌード(nu/nu)マウスを特定病原体未感染の状態に維持した。
実験では、U87細胞(7×106個)又はU87-E6変異体(7×106個)をそれぞれ動物に皮下注入した。対照群には細胞浮遊液の混合物と共にPBSを注入し、アデノウイルス-IEX-1群には2.2×109pfu(プラーク形成単位)のAxCA-IEX-1組換えウイルス及び各細胞浮遊液の混合物を注入した。各群にヌードマウス5匹が含まれた。
全ての細胞株が腫瘍増殖を誘導した。7日毎にカリパスを使用して腫瘍の大きさを測定し、腫瘍容積は次の計算を利用して決定した:長さ(mm)×幅の二乗(mm)2×1/2。
細胞注入後28日目にヌードマウスから全ての腫瘍を除去した。同時に、腎臓及び肝臓も除去して、AxCA-IEX-1組換えウイルスによる副作用を観察した。全検体を10%ホルムアルデヒトに浸して、組織学的検査のためにパラフィン包埋した。検査によって以下のことが明らかになった:U87及びU87-E6変異体細胞株は、AxCA-IEX-1組換えウイルスの代わりにPBSを注入した対照群のマウスでは十分に増殖したが、アデノウイルス-IEX-1処理群のいずれの細胞株の増殖も強く抑制された(28日目での低下 >90%)。特に、U87-E6-変異体細胞株の場合、注入後28日目に腫瘍は検出されなかった。全ての細胞株が腫瘍細胞の増殖を示し、対照群では腫瘍内の一部の細胞が有糸分裂段階を示した。アデノウイルス-IEX-1処理したU87細胞の残存腫瘍組織は、腫瘍壊死、部分的な石灰化、腫瘍壊死上の被膜形成、及び腫瘍壊死内への組織球性浸潤も呈した。このように、IEX-1投与された精製された組換え複製欠損アデノウイルスAxCA-IEX-1は、ヒト膠芽腫腫瘍の増殖抑制と腫瘍壊死の強い効果を示した。
Claims (9)
- 神経膠腫の治療用薬物の製造のためのIEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子の使用。
- IEX-1ポリペプチドをコード化する核酸分子がSEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:2の配列を含む、請求項1記載の使用。
- 核酸分子がベクター、特にアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、又は他の哺乳動物ウイルスに由来するウイルスベクターである、請求項1又は2記載の使用。
- 核酸分子が、IEX-1ポリペプチドの発現を促進させるプロモーター、特にSV40、CMV、チミジンキナーゼ、E2A、LTR、又は外部から誘導可能なプロモーターから選択されるプロモーターを含む、前記請求項のいずれか1項記載の使用。
- 薬物が、化学療法、放射線療法、外科手術、免疫療法、ウイルス療法、又はIEX-1以外の他の致死遺伝子による他の遺伝子治療アプローチなどの二次治療との併用投与向けに製剤化される、前記請求項のいずれか1項記載の使用。
- 薬物がp53阻害剤を含み、特に該阻害剤が、p53の発現を阻害する核酸分子、又はそのようなp53の発現を阻害する核酸分子をコード化する核酸分子であるか、又は該阻害剤がp53の発現を阻害する他の任意の分子、特にピフィスリン-α(Pifithrin-α)である、前記請求項のいずれか1項記載の使用。
- 神経膠腫が、上衣細胞腫、星細胞腫、特に膠芽腫、乏突起神経膠腫、乏突起星細胞腫、又は少なくとも2種類の膠細胞に由来する混合神経膠腫から選択される、前記請求項のいずれか1項記載の使用。
- プロモーターが、膠細胞におけるIEX-1ポリペプチドの組織特異的発現をもたらす、又はプロモーターが腫瘍特異的発現をもたらす、請求項4記載の使用。
- 組織特異的プロモーターがGFAPプロモーターである、又は腫瘍特異的プロモーターがhTERTプロモーターである、請求項8記載の使用。
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