図1、図2a、及び図2bは、可変透過率の窓110、210a、210bを用いる多人数乗り車両102、202a、202bを示している。可変透過率の窓110、210a、210bを用いる多人数乗り車両には、例えば、航空機102、バス202a、及び列車202bが含まれる。そのいくつかを本明細書の他所でより詳細に説明する他の多人数乗り車両は、可変透過率の窓110、210a、210bを用いることができることは認められるべきである。更に、一般的に図1、図2a、及び図2bに示されている多人数乗り車両は、可変透過率の窓を制御するための窓制御システム(図1〜図2bには示さないが、図10に示し、それを参照して説明する)も含む。本出願人に譲渡された米国特許第6、567、708号及び「可変透過性窓システム」という名称の2006年6月9日出願の米国特許出願第60/804、378号は、可変透過率窓に関する様々な詳細を説明しており、その開示内容は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。
図3には、可変透過率窓の別の用途が説明されている。建造物301の建築窓302は、有利な態様においては、可変透過性機能を組み込むことができる。これらの可変透過性の建築窓は、住居施設、商業施設、及び工業施設に含むことができることを理解すべきである。
図4は、様々な可変透過率及び可変反射率の要素を含む制御車両400を示している。一例として、内部バックミラーアセンブリ415を示しており、実施形態の少なくとも1つでは、このアセンブリ415は、可変反射率ミラー要素及び車両外部光自動制御システムを含む。このような車両外部光自動制御システムの詳細説明は、本出願人に譲渡された米国特許第5、837、994号、第5、990、469号、第6、008、486号、第6、130、448号、第6、130、421号、第6、049、171号、第6、465、963号、第6、403、942号、第6、587、573号、第6、611、610号、第6、621、616号、第6、631、316号、及び米国特許出願出願番号第10/208、142号、第09/799、310号、第60/404、879号、第60/394、583号、第10/235、476号、第10/783、431号、第10/777、468号、及び第09/800、460号に含まれており、その開示内容は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。更に、制御車両は、運転者側の外側バックミラーアセンブリ410a、乗客側の外側バックミラーアセンブリ410b、中心高部に装着された停止灯(CHMSL)445、Aピラー450a、450b、Bピラー455a、455b、及びCピラー460a、460bも含むように示されているが、これらの位置のいずれかを、代替的に、画像センサ、各画像センサ、又は関連する処理及び/又は制御構成要素の位置とすることができることを理解すべきである。バックミラーのいずれか又は全ては、自動調光電気光学ミラー(すなわち、可変反射率ミラー要素)とすることができることを理解すべきである。実施形態の少なくとも1つでは、制御車両は、可変透過率窓401、402を含むことができる。制御車両は、前灯420a、420b、霧天候灯430a、430b、前部方向指示/故障表示灯435a、435b、尾灯425a、425b、後部方向指示灯426a、426b、後部故障表示灯427a、427b、及び後退灯440a、440bを含むいくつかの外部照明を含むように示されている。分離ロービーム及びハイビーム前灯、多目的照明を含む一体化灯などのような付加的な外部照明を用いることができることを理解すべきである。更に、所定の外部照明の関連主要光軸を調節するために、外部照明のいずれにもポジショナ(図示せず)を設けることができることも理解すべきである。実施形態の少なくとも1つでは、方向410a1、410a2、410b1、410b2にピボット回転することができるようにピボット回転機構を備える少なくとも1つの外部ミラーアセンブリが設けられる。図4の制御車両は、一般的に、例を示すためのものであり、本明細書及び参照により本明細書に組み入れた開示内容に説明する他の特徴と共に、引用により本明細書に組み入れた特許及び特許出願に開示されているような適切な自動調光バックミラーを用いることができることを理解すべきである。
制御車両は、単位倍率の内部バックミラーを含むことが好ましい。単位倍率ミラーとは、本明細書で用いる場合、それを通る物体の画像の高低角及び幅が、通常の製造公差を超えない傷を除いて同じ距離で直接見る時の物体の高低角及び幅に等しい反射面を備える平面又は平坦なミラーを意味する。少なくとも1つの関連する位置で単位倍率が生じるプリズム状の昼夜調節バックミラーは、本明細書では、単位倍率のミラーであると考えられる。好ましくは、ミラーは、突出した眼の点から測定した開光水平角が少なくとも20度であり、制御車両が運転者及び4人の乗客又は指定搭乗者収容数により占有されている時、それに満たない場合には、平均搭乗者重量である68kgに基づいて、制御車両の後部まで61mを超えない点で開始する水平線に延びる平坦道表面の視野を設けるのに十分な鉛直角の視野を与える。視線は、座った搭乗者又はシート枕により部分的に覆い隠される可能性があることを理解すべきである。運転者の眼の基準点の位置は、規則によるか、又は全ての95パーセンタイルの男性運転者に適切な公称位置であることが好ましい。実施形態の少なくとも1つでは、制御車両は、少なくとも1つの単位倍率の外部ミラーを含む。好ましくは、外部ミラーにより、制御車両の運転者は、制御車両の最も幅広い点の運転者側に正接する縦方向平面に垂直で、座席を最後部の位置にして運転者の眼の10.7m後方の接平面から2.4m外側に延びる線から水平線に延びる平坦道表面の視界が得られる。視線は、制御車両の荷台又は泥除けの外形により部分的に覆い隠される可能性があることを理解すべきである。運転者の眼の基準点の位置は、規則によるか、全ての95パーセンタイルの男性運転者に適切な公称位置であることが好ましい。好ましくは、助手席側のミラーは、対応する風防ガラスのワイパーが届かない部分により覆い隠されず、好ましくは、運転者が着席した位置から水平方向及び鉛直方向の両方に傾けることによって調節可能である。実施形態の少なくとも1つでは、制御車両は、助手席側に設けられた凸面ミラーを含む。好ましくは、ミラーは、水平及び鉛直方向の両方に傾けることによって調節するように構成される。好ましい各外部ミラーは、126cm以上の反射面を含み、制御車両に関連する側部に沿って後部の視界を運転者にもたらすように配置される。好ましくは、あらゆるミラーの平均反射率は、SAE規格J964、OCT84に従って判断すると、少なくとも35パーセント(ヨーロッパ諸国の多くでは40%)である。本発明による電気光学ミラー要素のように、ミラー要素に複数の反射率レベルが可能である実施形態では、日中モードの最低反射率レベルは、少なくとも35(ヨーロッパ仕様では40)パーセントとされ、夜間モードの最低反射率レベルは、少なくとも4パーセントとされる。本発明の様々な実施形態は、自動二輪車の風防及びバックミラーにも等しく応用可能であることを理解すべきである。
今度は図5a及び図5bを見ると、外部バックミラーアセンブリ510a、510bの様々な構成要素が示されている。本明細書に詳細に説明するように、電気光学ミラー要素は、1次シール523bを通じて第2の基体522bと離間した関係で固定され、その間にチャンバを形成する第1の基体521bを含むことができる。実施形態の少なくとも1つでは、1次シールの少なくとも一部は、空隙を残し、少なくとも1つのチャンバ充填ポート523b1を形成する。電気光学媒体をチャンバに封入し、プラグ材料523b2を通じて充填ポートを密封的に閉鎖する。好ましくは、プラグ材料は、UV硬化性エポキシ又はアクリル材料である。実施形態の少なくとも1つでは、スペクトルフィルタ材料545a、545bは、ミラー要素の周囲付近の第1の基体の第2の表面の近くに配置される。要素には、それぞれ、第1の接着剤材料526b1、526b2を通じて電気コネクタ525b1、525b2が固定されることが好ましい。ミラー要素は、第2の接着剤材料570bを通じて支持板575bに固定される。外部バックミラーから制御車両の他の構成要素までの電気接続は、好ましくは、コネクタ585bを通じて行われる。支持板は、ポジショナ580bを通じて、関連するハウジングマウント585bに取り付けられる。好ましくは、ハウジングマウントは、ハウジング515a、515bと係合し、少なくとも1つの締結装置534b4を通じて固定される。好ましくは、ハウジングマウントは、スイベルマウント533bと係合するように構成されたスイベル部分を含む。スイベルマウントは、少なくとも1つの締結装置531bを通じて車両マウント530bに係合するように構成されることが好ましい。これらの構成要素、付加的な構成要素、それらの相互接続、及び作動の付加的な詳細を本明細書に説明する。
図5a及び図5bを更に参照すると、外部バックミラーアセンブリ510aは、スペクトルフィルタ材料524bが見る人と1次シール材料523bの間に位置決めされた第1の基体521bの視界が示されるような向きに置かれる。盲点指示器550a、キー穴照明装置555a、パドル灯560a、補足的方向指示器540a1又は541a、光センサ565a、そのいずれか、その部分的組合せ、又はその組合せは、見る人に対して要素の後部に位置決めされるようにバックミラーアセンブリに組み込むことができる。好ましくは、装置550a、555a、560a、540a、又は541a、565aは、本明細書及び引用により本明細書に組み入れた様々な参考文献に詳細に説明されているように、少なくとも部分的に隠されたミラー要素と組み合わせて構成される。これらの構成要素、付加的な構成要素、その相互接続、及び作動の付加的な詳細を本明細書に説明する。
今度は図5c〜図5eを見ると、本発明による付加的な特徴が説明されている。図5cは、スペクトルフィルタ材料596cが見る人と1次シール材料578cの間に位置決めされた第1の基体502cから見たバックミラー要素500cを示している。第1の導電部分508cを第2の導電部分530cから実質的に電気的に分離するように第1の分離領域540cが設けられる。要素の縁部に周縁材料560cを付加する。図5dは、1次シール材料578dが見る人とスペクトルフィルタ材料596dの間に位置決めされた第2の基体512dから見たバックミラー要素500dを示している。第3の導電部分518dを第4の導電部分587dから実質的に電気的に分離するように第2の分離領域586dが設けられる。要素の縁部に周縁材料560dを付加する。図5eは、図5c又は5dの要素のいずれかの断面線図5e〜図5eから見たバックミラー要素500eを示している。第1の基体502eは、1次シール材料578eを通じて第2の基体512eと離間した関係で固定されて示される。見る人と1次シール材料578eの間には、スペクトルフィルタ材料(本明細書の実施形態の少なくとも1つでは「クロム・リング」と呼ばれる)596eが位置決めされる。第1及び第2の電気クリップ563e、584eは、それぞれ、要素への電気的接続を容易にするように設けられる。要素の縁部には周縁材料560eが付加される。1次シール材料をシルクスクリーン又は分注のようなLCD産業で一般的に用いられる手段で付加することができることを理解すべきである。その開示内容が本明細書においてその全内容が引用により組み込まれているYasutake他に付与された米国特許第4、094、058号は、応用の可能な方法を説明する。これらの技術を用いて、1次シール材料は、個々の切断物に付加して基体を形成することができ、複数の1次シール形材として大きな基体に付加することができる。複数の1次シールが付加された大きな基体は、次に、別の大きな基体に積層することができ、1次シール材料を少なくとも部分的に硬化した後にその積層体から個々のミラー形材を切り取ることができる。この複数の処理技術は、LCDを製造するのに通常用いられる方法であって、アレイ工程と呼ばれることもある。本発明による電気光学装置も同様の工程を用いて作ることができる。透明導電体、反射体、スペクトルフィルタ、及び固体状態の電気光学装置の場合には、電気光学層又は各層のような全てのコーティングは、大きな基体に付加し、必要に応じてパターン化することができる。コーティングは、遮蔽物を通してコーティングを付加するか、コーティングの下にパターン化した可溶性層を選択的に付加し、コーティングを付加した後にそれ及びその上のコーティング除去することによるか、又はレーザ切除又はエッチング等のいくつかの技術を用いてパターン化することができる。これらのパターンは、製造工程中に正確に整列又は位置決めするのに用いられる位置合わせ目印又はターゲットを含むことができる。これは、通常は、例えば、パターン認識技術を用いて視覚システムで光学的に行われる。更に、ガラスには、必要に応じて、サンドブラスト、レーザ、又はダイヤモンドスクライビング等により、位置合わせ目印又はターゲットを直接付加することができる。積層基体間の間隔を制御するための間隔保持媒体を1次シール材料に入れることができ、積層する前に基体に付加することができる。間隔保持媒体又は手段は、完成した分断ミラーアセンブリから切り離されることになる積層体の領域に付加することができる。積層アレイは、装置が溶液相電気光学ミラー要素である場合には、電気光学材料で充填して充填ポートに栓をする前又は後に形状に切断することができる。
ここで、図6a及び図6bを参照すると、スペクトルフィルタ材料645a又はベゼル645bが見る人と1次シール材料(図示せず)の間に位置決めされた第1の基体622a、622bを見るようにした内部バックミラーアセンブリ610a、610bが示されている。ミラー要素は、可動ハウジング675a、675b内に位置決めされ、任意的に固定ハウジング677aの装着構造681a(固定ハウジング付き)又は681b(固定ハウジングなし)上に組み合わされて示されている。第1の指示器686a、第2の指示器687a、オペレータインタフェース691a、691b、及び第1の光センサ696aが可動ハウジングの顎部分に位置決めされる。第1の情報ディスプレイ688a、688b、第2の情報ディスプレイ689a、及び第2の光センサ697aは、見る人に対して要素の背後側になるようにアセンブリ内に組み込まれる。外部バックミラーアセンブリに関して説明したように、装置688a、688b、689a、697aは、本明細書に詳細に説明するように、少なくとも部分的に隠されることが好ましい。実施形態の少なくとも1つでは、内部バックミラーアセンブリは、印刷回路基板665bの少なくとも1つ又はそれよりも多くの照明アセンブリ670b、少なくとも1つのマイクロホン、その部分的組合せ、その組合せ、又は上述の装置との他の組合せを含むことができる。本発明の態様は、個々に又は集合的にいくつかの組合せで電気光学窓又はミラーに組み込むことができることを理解すべきである。
図6cは、第3、第4、又は第3及び第4の両方の表面に積み重ねた材料を含む第2の基体612cの平面図を示している。実施形態の少なくとも1つでは、1次シール材料の下で、積み重ねた材料の少なくとも一部620d、又は積み重ねた材料の少なくとも実質的に不透明層が除去されるか、又は被覆される。積み重ねた材料の少なくとも層の1つの少なくとも一部620c2は、実質的に基体の外側縁部まで延びるか、又は第3の表面のスタックと要素駆動回路(図6cには示さず)の間の電気的接触を容易にするための領域まで延びている。関連する実施形態では、要素アセンブリの次のミラー又は窓要素の背後からシールの検査及び/又はプラグ目視検査及び/又はプラグ硬化が行われる。実施形態の少なくとも1つでは、積み重ねた材料620cの外側縁部620dの少なくとも一部は、1次シール材料678cの外側縁部678c1と内側縁部678c2の間に配置される。実施形態の少なくとも1つでは、ほぼ2mmとほぼ8mm幅の間、好ましくはほぼ5mm幅の1次シール材料の下で、積み重ねた材料の一部620c1、又は積み重ねた材料の少なくとも実質的に不透明層が除去されるか、又は被覆される。積み重ねた材料の層の少なくとも1つの少なくとも一部620c2sは、実質的に基体の外側縁部まで延びるか、又は第3の表面のスタックと、ほぼ0.5mmとほぼ5mmの間の幅、好ましくはほぼ1mmの要素駆動回路(図示せず)の間の電気的接触を容易にする領域まで延びている。第1、第2、第3、及び第4の表層又は材料のスタックのいずれも、本明細書又は引用により本明細書の他所に組み入れた参照文献に開示されているようなものとすることができることを理解すべきである。
図6dは、材料の第3の表面のスタックを含む第2の基体612dの平面図を示している。実施形態の少なくとも1つでは、材料の第3の表面のスタック620dの外側縁部620d1の少なくとも一部は、1次シール材料678dの外側縁部678d1と内側縁部678d2の間に配置される。関連する実施形態の少なくとも1つでは、導電性タブ部分682dは、1次シール材料678dの外側縁部678d1の内側の第2の基体の縁部から延びている。関連する実施形態の少なくとも1つでは、導電性タブ部分682d1は、1次シール材料678dの下で材料の第3の表面のスタックの少なくとも一部に重なる。実施形態の少なくとも1つでは、材料の第3の表面のスタックの導電金属酸化物のような実質的に透明の導電層(個々には示さず)は、図8bに示すように第3の表面のスタックの残りの外側縁部620d1を超えて延び、第3の表面への外部電気接続部を設ける。導電タブは、図9c〜図9iに示すように基体周辺領域のいずれかに沿って被覆することができることを理解すべきである。実施形態の少なくとも1つでは、導電タブ部分は、クロムを含む。導電タブ部分は、導電電極を覆う導電性を改善するが、導電電極層に十分な導電性が与えられる限り、導電タブ部分は任意であることを理解すべきである。実施形態の少なくとも1つでは、導電電極層は、望ましい導電性を与えることに加えて、対応する反射光線の望ましい色彩特異的特性を付与する。従って、導電電極が省略される場合には、色特性は、下層材料規格を通じて制御される。材料の第1、第2、第3、及び第4の表層又は表面スタックのいずれも、本明細書又は引用により本明細書に組み入れた参照文献に開示されているようなものとすることができることを理解すべきである。
図7は、バックミラー要素700を示しており、図5eに示す要素をより詳細に示す拡大図である。要素700は、第1の表面704及び第2の表面706を有する第1の基体702を含む。第2の表面706に付加された第1の導電電極部分708及び第2の導電電極部分730は、第1の分離領域740を通じて互いに実質的に電気的に分離されている。ここに見られるように、実施形態の少なくとも1つでは、分離領域は、第1及び第2のスペクトルフィルタ材料部分それぞれ724、736及び第1及び第2の結合促進材料部分それぞれ727、739を形成するために、スペクトルフィルタ材料796及び対応する結合促進材料793も実質的に電気的に分離されるように配置される。第1の分離領域740、540c、640d、540eの一部は、その中心付近に位置する1次シール材料778の一部内に平行に延びるように示されている。分離領域740のこの部分は、見る人がスペクトルフィルタ材料内の線に容易には気付かないように置かれ、例えば、分離領域の一部をスペクトルフィルタ材料596の内側縁部797と実質的に位置合わせすることができることを理解すべきである。分離領域740のいずれかの部分が1次シール材料の内側に配置されると、本明細書の他所により詳細に説明するように、電気光学材料着色及び/又は清浄性の不連続点が観察されることがあることを理解すべきである。この作動特性は、巧みに操作して主観的に視覚的に魅力的な要素を導くことができる。
図7を更に参照すると、要素700は、第3の表面715及び第4の表面714を有する第2の基体712を含むように示されている。第1の基体は、第2の基体より大きくし、ミラーの周縁の少なくとも一部に沿ってオフセットすることができることを理解すべきである。第3及び第4の導電電極部分それぞれ718、787は、第2の分離領域786を通じて実質的に電気的に分離された第3の表面715の近くに示されている。第2の分離領域786、586c、586d、586eの一部は、その中心付近に配置される1次シール材料778の一部内で平行に延びるように示されている。分離領域786のこの部分は、見る人がスペクトルフィルタ材料内の線に容易に気付かないように置かれ、例えば、分離領域の一部は、スペクトルフィルタ材料796の内側縁部797と実質的に位置合わせすることができることを理解すべきである。更に図7に示すように、任意的なオーバー堆積材料722と第3の導電電極部分718の間には、反射材料720を付加することができる。開示内容が引用により本明細書に組み込まれた本出願人に譲渡された米国特許第6、111、684号、第6、166、848号、第6、356、376号、第6、441、943号、米国特許出願第10/115、860号、米国特許第5、825、527号、第6、111、683号、第6、193、378号、米国特許出願第09/602、919号、第10/260、741号、第60/873、474号、及び第10/430、885号に開示されているような材料のいずれかを用いて、第1の表面上の親水性コーティングのような単一表面コーティング、又は導電電極材料、スペクトルフィルタ材料、結合促進材料、反射材料、第1、第2、第3、及び第4の表面に付加されたオーバー堆積材料のようなコーティングの複合スタックを形成することができることを理解すべきである。フッ素化アルキル生理食塩水又はポリマーのような疎水性コーティング、シリコーン含有コーティング、又は特別に織り目を付けた表面を第1の表面に付加することができることも更に理解すべきである。親水性又は疎水性コーティングのいずれかは、このようなコーティングがないガラスに対して第1の表面に当たる水分の接触角を変化させることになり、水分が存在する時に後部視界が改善することになる。第3の表面及び第4の表面の両方に反射体がある実施形態が本発明の範囲に含まれることを理解すべきである。実施形態の少なくとも1つでは、第3の表面及び/又は第4の表面に付加される材料は、対応する表面のスタックの少なくとも一部に部分反射/部分透過特性を与えるように構成される。実施形態の少なくとも1つでは、第3の表面に付加された材料は一体化され、組み合わせた反射体/導電電極をもたらす。付加的な「第3の表面」材料は、1次シールの外側に延びることができることは当然理解され、この場合、対応する分離領域が付加的な材料を通って延びることを理解すべきである。例えば、図6cに示すように1次シールの少なくとも一部が第4の表面から見えるようにすると、プラグ材料の検査及びUB硬化が容易になる。実施形態の少なくとも1つでは、積み重ねた材料620cの少なくとも一部、又は積み重ねた材料の少なくとも実質的に不透明な層が1次シール材料の下で除去されるか、又は隠され、周縁部の少なくとも一部の周りで1次シール幅の少なくとも25%が検査される。より好ましくは、周縁部の少なくとも一部の周りの1次シール幅の50%を検査する。最も好ましくは、周縁部の少なくとも一部の周りの1次シール幅の少なくとも75%を検査する。本発明の様々な実施形態は、他の部分と異なるコーティング又はコーティングのスタックを有する特定の表面の部分を組み込むことになる。例えば、光源の前の「窓」、情報ディスプレイ、光センサ、又はその組合せを形成して特定の帯域の光線波長又は本明細書に組み入れた参照文献の多くに説明されているような帯域の光線波長を選択的に透過させることができる。
図6a〜図6b及び図7を更に参照すると、第1の分離領域740は、1次シール材料775の一部と協働して、第1の導電電極部分708、第1のスペクトルフィルタ材料部分724、及び第1の結合促進材料部分727から実質的に電気的に分離した第2の導電電極部分730、第2のスペクトルフィルタ材料部分736、及び第2の結合促進材料部分739を形成する。この構成により、第1の電気クリップ763が、第3の導電電極部分718、反射材料720、任意的なオーバーコート722、及び電気光学媒体710と電気的に通信するように導電体748を配置することができる。特に、第1の電気クリップ769を配置する前に導電体748が要素に付加される実施形態では、導電体は、界面757、766、772、775を少なくとも部分的に分離することができることは明らかである。好ましくは、第3の導電電極部分718、第1の電気クリップ763、及び電気的に導電体748を形成する材料、又は材料の組成物は、クリップと電気光学媒体に至る材料の間に耐久性のある電気的連絡を促進するように選択される。第2の分離領域786は、1次シール材料775の一部を協働して、第3の導電電極部分718、反射層720、任意的なオーバー堆積材料722、及び電気光学媒体710から実質的に電気的に分離された第4の導電電極部分787を形成する。この構成により、第2の電気クリップ784が第1の結合促進材料部分727、第1のスペクトルフィルタ材料部分724、第1の導電電極部分708、及び電気光学媒体710と電気的に通信するように導電体790を配置することができる。特に、第1の電気クリップ784を配置する前に導電体790が要素に付加される実施形態では、導電体は、界面785、788、789を少なくとも部分的に分離することができることは明らかである。好ましくは、第1の導電電極部分708、第1の電気クリップ784、結合促進材料793、スペクトルフィルタ材料796、及び導電体790を形成する材料、又は材料の組成物は、クリップと電気光学媒体に至る材料の間の耐久性のある電気的連絡を促進するように選択される。
フラッシュ保護膜層722が(反射層720はそうではないが)エレクトロクロミック媒体に接触するように、反射層720を覆う1つ又はそれよりも多くの任意的なフラッシュ保護膜層722を設けることが望ましいこともある。このフラッシュ保護膜層722は、電極として安定な挙動を示す必要があり、貯蔵寿命が良好である必要があり、反射層720に良好に結合し、シール部材778がそれに結合する時にその結合を維持すべきである。下層からの光学特性がカバー層が見えることである場合には、下層720の反射性を完全には遮断しないように十分に薄い必要がある。本発明の別の実施形態によれば、非常に薄いフラッシュ保護膜722が高反射層を覆って配置される場合には、高反射層720が、ミラーの反射性に依然として寄与しながらフラッシュ層が反射層を保護するために、反射層720は銀金属又は銀合金とすることができる。このような場合には、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、プラチナ、ニッケル、タングステン、モリブデン、又はその合金の薄い(例えば、約300オングストローム未満、より好ましくは約100オングストローム未満)層が反射層720を覆って被覆されている。フラッシュ層の厚みは、選択した材料に依存する。例えば、銀の下にロジウム、その下にルテニウム、その下にクロムの第3の表面コーティングを10オングストローム程の薄さのルテニウムのフラッシュ層で被覆した要素は、フラッシュ層のない要素に比較して、処理中のスポット欠陥及び高温試験を行う時に要素の可視領域に曇りが形成されることの両方に対する耐性の改善を示している。ルテニウムフラッシュ層を備える要素の初期反射率は、70〜72%であった。反射層720が銀である場合には、フラッシュ層722も銀合金又はアルミニウムドープ酸化亜鉛とすることができる。更に、フラッシュ層又はそれより厚いカバー層は、透明金属酸化物のような透明導体とすることができる。より詳細には、カバー層は、障壁特性、有利な干渉光学要素、圧縮又は引張り応力の均衡のような因子を他の層に適合するように選択することができる。上述のようなフラッシュ層は、本明細書の他所に説明する他の実施形態に用いることができることを理解すべきである。
このようなカバー層は、上述のリストの金属又はエレクトロクロミックシステムに適合することが見出された他の金属/合金/半金属で作られ、金属又は半金属層が300オングストロームより厚い場合には、その下の層から光学的な影響を殆ど受けることができない傾向がある。金属カバー層の外観であることが更に好ましいと考えられる場合には、このような厚いカバー層を用いることが有利である可能性がある。このようなスタックのある程度の説明は、Bauer他に付与された「自動車のための暗色化可能バックミラー」という名称の本出願人に譲渡された欧州特許EP0728618A2に説明されており、これは、引用により本明細書に組み込まれている。このような厚いカバー層は、結合層及びフラッシュ層と組み合わせて用いることができ、これと、インジウムドープ錫酸化物、アルミニウムドープ亜鉛酸化物、又はインジウム亜鉛酸化物のような透明導電性層が用いられる。銀、銀合金、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金のような下層を有することの導電性の利点は、依然として存在することになる。更に、このようなカバー層スタック又は中間層には、二酸化チタン、二酸化珪素、硫化亜鉛等の典型的に絶縁部体として考えられる層を用いることができ、この層は、その厚みが、更に高導電性層から依然として十分な電流を通過させるようなものである限り、更に高導電性層の利点を打ち消さない。
電位が要素に印加される時、ミラー又は窓が均一に暗色化されない可能性があることは、エレクトロクロミック技術で公知である。不均一暗色化は、EC要素の固体状態EC材料、流体、又はゲルにわたって電位が局所的に異なるためである。要素にわたる電位は、電極のシート抵抗、バスバー構成、EC媒体の導電性、EC媒体の濃度、電池間隔又は電極間の距離、及びバスバーからの距離と共に変化する。この問題に対する一般的に提唱される解決法は、電極を構成するコーティング又は層を厚くし、それによってシート抵抗を低減して要素を迅速に暗色化させることを可能にすることである。以下に説明するように、この単純化した方法には、この問題を解決するのに限定されるという実際的に欠点が付与される。多くの場合、この欠点により、EC要素は所定の用途には不適切になる。本発明の実施形態の少なくとも1つでは、単純に電極層を厚くすることから生じる問題を解決し、EC要素が更に迅速に均一に暗色化する特性を備えることになる改良電極材料、電極及びバスバー構成を製造する方法を説明する。
典型的な内部ミラーでは、バスバーは、長い方向に平行に延びている。これは、電極間の各部分にわたる電位の低下を最小限にするためである。更に、ミラーは、典型的には、高シート抵抗の透明電極及び低シート抵抗の反射体電極から成る。ミラーは、高シート抵抗電極のバスバー付近で最も迅速に暗色化することになり、2つの電極間のある中間位置で最も遅い。低シート抵抗電極のバスバー付近では、これらの2つの値の間の暗色化速度を有することになる。1つが2つのバスバーの間に移動すると有効電位が変動する。2つの長い平行なバスバーの間の距離が比較的短い場合は(バスバー間の距離がバスバーの長さの半分未満)、ミラーは、「窓日除け」様式で暗色化することになる。これは、ミラーは、1つのバス付近で迅速に暗色化し、この暗色化が、2つのバスバー間で徐々に移動すように見えることを意味する。典型的には、暗色化速度は、この部分の中間で測定され、幅対高さ比が2よりも大きいミラーの場合には、暗色化速度のあらゆる不均一性は比較的小さい。
また、ミラーの大きさ、及びそれに伴ってバスバー間の距離が大きくなると、各部分にわたる暗色化速度の相対差も増大する。これは、ミラーが外部用途に設計される場合に悪化する可能性がある。環境のような厳しさに耐えることができる金属は、典型的には、内部ミラー用途に適していてそれによく用いられる銀又は銀合金のような金属よりも導電性が低い。従って、外部用途の金属電極のシート抵抗は、6オーム/平方までとすることができ、内部ミラーはのシート抵抗は、<0.5オーム/平方とすることができる。他の外部ミラー用途では、透明電極の厚みは、様々な光学的要求に対して制限される可能性がある。ITOのような透明電極は、最も一般的な用法では、1/2波厚みに限定されることが多い。この制限は、本明細書で説明するITOの特性によるものであるが、ITOコーティングを厚くするのに伴う費用にもよる。他の用途では、コーティングは、1/2波厚みの80%に制限される。これらの厚み制約の両方は、透明電極のシート抵抗を1/2波に対して約12オーム/平方より大きく、1/2波コーティングの80%であるコーティングに対して17〜18オーム/までに限定する。金属及び透明電極が高シート抵抗であれば、暗色化が緩徐で均一性の小さなミラーになる。
暗色化速度は、電気回路に関するEC要素の分析から推定することができる。以下の考察は、要素にわたって均一なシート抵抗を有するコーティングに関する。並列電極間の何らかの位置の電位は、単純に各電極のシート抵抗及びEC媒体の抵抗の関数である。以下の表1では、電極間の要素にわたる平均電位が最大及び最小電位間の差と共に示されている。この例は、並列バスバー間が10cm間隔、180ミクロン電池間隔、1.2ボルト駆動電圧、及び100、000オーム*cm流体抵抗の要素に対するものである。上部及び底部電極シート抵抗の6つの組合せを比較する。
暗色化の速度は、高シート抵抗電極に電気的に接触する点で速く、この位置での有効電位に関連する。この電気的に接触する点(又は他所)に隣接する有効電位が高くなると、ミラーの平均暗色化が速くなる。最も速い全体暗色化時間は、その部分にわたって電位が可能な限り高くなった時に起こることになる。これは、電気化学を促進して加速した速度で暗色化させることになる。上部及び底部両方の基体のコーティングのシート抵抗は、電極間の有効電位を判断する役割を果たすが、表に見られるように、高シート抵抗電極は、更に重大な役割を果たす。以前のエレクトロクロミック技術では、改良は、殆ど専ら低抵抗電極のシート抵抗を下げることによって行われた。これは、銀のような材料を用いると、実質的な利益が生じ、実行することが比較的容易であるためであった。
当業技術では、駆動電位を増大させると全体的な速度を増大させることができるが、駆動電圧とは関係なく傾向は一定であることになることは公知である。更に、所定の電圧での電流引き込みが暗色化の均一性に影響を及ぼすことも公知である。均一性は、電池間隔、濃度、又はEC材料の選択を調節することによって改善することができるが、これらの調節を用いて均一性を改善すると、多くの場合、暗色化速度、明色化速度、又は暗色化及び明色化速度の両方に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、電池間隔を増大させ、流体濃度を低減すると、電流引き込みが減少することになり、それによって均一性が改善することになるが、清浄化時間は増大することになる。従って、層のシート抵抗は、暗色化速度及び暗色化均一性の両方が得られるように適切に設定すべきである。好ましくは、透明電極のシート抵抗は、11.5オーム/平方未満、好ましくは10.5オーム/平方未満、より好ましくは9.5オーム/平方未満とする必要があり、以下に説明する光学的要件のために、一部の実施形態では、透明電極の厚みは、約半波光学厚み未満とすべきである。反射体電極は、約3オーム/平方未満、好ましくは約2オーム/平方未満、最も好ましくは1オーム/平方未満とすべきである。更に、このように構成されたミラー又はEC要素は、比較的均一な暗色化も有することになり、最高及び最低暗色化速度の間の暗色化時間の差が係数3未満、好ましくは係数2未満、最も好ましくは係数1.5未満になる。このような高速で均一な暗色化要素が可能になる新しい高性能低価格材料を以下に説明する。
他の用途では、2つの比較的平行なバスバーを有することは現実的でない場合がある。これは、外部ミラーに共通の平らでない形状のためであると考えられる。他の状況では、低抵抗電極に接触する点を有することが望ましいことがある。点接触により、一部の実施形態で用いられるレーザ削除線を最小限にするか又は削除することができる。点接触を用いると、単純化されるか、又はミラー構築の態様のいくつかではそれが好ましいが、その部分にわたり比較的均一な電位を達成するのは困難である。低抵抗反射体電極に沿う比較的長いバスを排除すると、電極の抵抗が実質的に増大する。従って、迅速に均一に暗色化するためには、バスバー及びコーティングシート抵抗値の新しい組合せが必要である。
上述のように、当業者には、点接触方式を可能にするために、金属反射体電極には極度の低シート抵抗値を必要とすることになると予想される。予想外に、透明の電極は、低シート抵抗にして均一性を改善することが必要であることが見出された。表2は、均一性実験の結果を示している。この試験では、ほぼ8インチ幅×6インチ高さの溶液相EC要素を作られた。本明細書で説明した要素設計の利点は、主に大きな要素に関する。大きな要素は、可視領域の縁部のあらゆる点の縁部から幾何学的中心までの最小距離が、ほぼ5cmを超えるものであると定められる。均一な暗色化がなければ、距離がほぼ7.5cmを超えると更に問題が大きくなり、距離がほぼ10cmを超えると更に問題が大きくなる。透明電極(ITO)のシート抵抗及び金属反射体は、表2に示すように変化した。金属電極を点接触部と接触させた。いわゆるJクリップのようなクリップ接触部をほぼ1”長さのAgペースト線と共に用い、ミラーの短い長さの側部の1つに沿って金属反射体に電気的に接触させた。透明電極は、Agペーストを介し、点接触部と反対の1側部に沿い、ミラーの両方の長い側部に沿う距離の3分の1にわたって連続的に電気的に接触させた。暗色化時間(T5515)をミラーの3つの位置で測定した。位置1は、点接触部付近であり、位置2は、点接触部と反対側の透明電極バスの縁部であり、位置3は、ミラーの中心である。T5515時間(秒)は、ミラーが55%反射率から15%反射率になるのにかかる時間である。最大反射率は、ミラーの最大反射率である。ΔT5515は、点1と点2との間又は点2と点3の間のいずれかの時間差である。これは、ミラーの最も速い位置と他の2つの位置の間の暗色化速度の差の尺度である。暗色化の均一性が高まれば、これらの数は互いに近づく。タイミング係数は、所定の位置での暗色化時間を最も速い位置での時間で割ったものである。それによってあらゆる所定の位置での絶対速度に関係なく、異なる位置間の時間の相対的スケーリングが示されている。上述のように、好ましくは、タイミング係数は3未満、好ましくは2未満、最も好ましくは1.5未満である。この特定のミラー構成に対してITOシート抵抗が14オーム/平方である場合には、タイミング係数の3が得られないことは表2に見ることができる。ITOが9オーム/平方である3つの例全てのタイミング係数は、3未満である。ミラー読取りの中心は、最も速い位置から最も外れた位置である。このデータに統計的分析を行うと、予想外に、ITOシート抵抗は、タイミング係数に寄与する唯一の因子であることが分った。統計的モデルを用いると、ITOシート抵抗は、この実施形態では、タイミング係数3.0以下にするためには、約11.5オーム/平方未満であることが必要である。同じ統計モデルを用いると、ITOのシート抵抗は、このミラー構成では、2.0未満のタイミング係数に対して7オーム/平方未満とすべきである。第3の表面反射体のシート抵抗により、タイミング係数は影響を受けないが、全体的な暗色化速度は影響される。前記反射体のシート抵抗が2オーム/平方以下であり、ITOがほぼ9オーム/平方である場合には、このミラーに対する暗色化速度は、中心では8秒未満である。この値は、ほぼ従来のバス配列で同様の大きさのミラーに対応する。従って、ITOのシート抵抗を低下させることにより、比較的高シート抵抗反射体に点接触が可能になる。
均一性及び暗色化の速度でのITOのシート抵抗の予想外の役割は、別の組の実験に拡張された。これらの実験では、高シート抵抗電極、この例ではITOに対するバスバー接触の長さは、ミラーの側部まで、場合によっては、更にミラーの底部縁部まで拡大された。表3は、バス長さが変化すると均一性に及ぼされる影響を明らかにしている。これらの試験では、要素の形状及び構成は、説明したところ以外は表2と同じである。接触パーセントは、周縁部の全長に比較したITO接触のバスバー長さのパーセント比較である。バスバー比は、ほぼ2cm又はそれ未満の小さな反射体接触部に対するITO接触の長さである。
表3からのデータは、高シート抵抗電極のバス長さが増大すると、均一性が有意に改善することを示している。2オーム/平方の反射体では、40%から85%までバスの長さが増大すると、タイミング係数が2.4から1.7に改善する。0.5オーム/平方反射体では、ITOバス長さが同じく40から85%まで変化すると、タイミング係数が3.2から1.2まで改善し、暗色化速度が有意に改善する。低シート抵抗反射体の要素は、比較可能な2オーム/平方の場合より暗色化が一般的に速いが、ITO接触部短く均一性が0.5オームの場合には、タイミング係数で明らかにするように不良になることに注意されたい。ITOに対するバス長さを増大させると、0.5オーム/平方の反射体の要素で特に役立つ。
接触パーセントが増大すると、暗色化の最も速い位置及び最も遅い位置も変化する可能性がある。この例では、高接触パーセントでは、位置1及び3の両方の暗色化時間及び対応するタイミング係数が有意に改善する。
これらの実験は、低シート抵抗電極で短いバスを用いる場合には、反対側の電極に対するバス長さを増大させて均一性を改善することが有利であることを示している。従って、理想的には、大きなミラーには、バスバーの長さの比は5:1より大きく、好ましくは9:1より大きく、より好ましくは13:1より大きく、最も好ましくは20:1より大きくし、タイミング係数を3より小さくすることが好ましい。更に、小さなバスの長さと関係なく、高シート抵抗電極に対するバス長さを増大することによって均一性を改善し、接触パーセントを好ましくはほぼ58%より大きく、より好ましくはほぼ85%より大きくすることも見出した。典型的には大きなECミラーの接触パーセントは、50%未満である。
これらの知見は、不透明な反射体を備えるミラーに重大な意味を有するだけでなく、半透過型反射体を用いるミラーに更に重大な意味を有する。半透過型コーティングを有するためには、金属は、透明になる点まで薄くすべきである。従って、薄い金属は、高シート抵抗値を有する。本発明の実施形態の少なくとも1つでは、電気光学要素は、本明細書で教示した光学点接触バス配列を備える従来的なバスバー配列で、高速で均一な暗色化を含む。上述のバス配列を補足するのに特に良好に適合する新しい半透過型コーティングを以下に説明する。
また、エレクトロクロミックミラーをその全領域にわたって更に均一に暗色化するか、又は最初にその中心(殆どの前灯グレアが現れるところ)から外向きに可視領域の上部及び底部に向って暗色化することができるように、不透明なカバー層又は不透明な層のスタックの下に導電性をパターン化することができる。引用により本明細書に組み入れたTonar他に付与された「薄膜ベゼルカバー縁部を備えるエレクトロクロミック装置」という名称の米国特許出願20040032638A1は、「低シート抵抗コーティングを、関連する電気的接触に近接する領域か、又は周縁領域の周りに設け、電気接触からの距離が増大するにつれシート抵抗を増大させることができる」と説明しており、また、「これは、点接触部を用いる場合に特に利用可能である」と説明している。典型的には、エレクトロクロミック要素に電圧をかけない場合には、反射体に可視コントラストが全くないか又は非常に少なくしてオームにコントラストを生じさせることが望ましいであろう。
ある一定の領域を優先的に暗色化することができるようにエレクトロクロミック装置の高導電性領域が多いものと少ないものとの間に十分なコントラストを得るために、金属性でないスタック材料を含むことが必要である場合がある。これは、不透明層又は積み重ねた反射性の高い金属及び合金は、その下に更に高導電性パターンを補足することなく、自動車のエレクトロクロミックミラーに許容可能な暗色化特性とするほど十分に導電性である傾向があるためである。半金属を含むこのような材料のスタックの一例は、引用により本明細書に組み入れた「車両のための元素半導体ミラーを作る方法」という名称の米国特許第5、535、056号に説明したものと同様に構成されたものであり、不透明なシリコン層が、ほぼ1/4波光学厚みのインジウム錫酸化物で覆われ、それが、20〜25ナノメートルのシリコンで覆われ、それが、ほぼ20nmのインジウム錫酸化物で覆われていると考えられる。このようなコーティングのスタックは、不透明であり、前部からの概観に最小限の影響しか及ぼさずに、付加的な材料をパターンでその下に配置することができる。更に、このスタックは、このパターン化の利点を損なうことなく、全体を通して十分に導電性とされることになる。更に、ITOは、通常は、約1400オングストロームの厚みでほぼ12オーム/平方になる条件下で被覆される時に導電性が依然として高すぎることが見出された場合には、処理条件を調節することによるかインジウム対錫比を変化させることによって導電性を低く作ることができる。
図5f及び図7の幾何学形状を備える米国特許US20040032638A1に説明した原理により構成された要素は、上部、下部、及び左縁部に沿って導電性エポキシを有し、ポイント結合部が右縁部のほぼ中央に作られており、これが異なる第3の表面コーティングスタック及び導電性パターンで作られている。第3の表面全体をいう時、これは、レーザ処理し、本出願人に譲渡された米国特許出願20040022638A1により構成するのに必要な絶縁部領域を生成する前の表面を意味することになる。
可視領域にわたって1/2オーム/平方の第3の表面反射体を備える要素は、不透明層に覆われた要素の中心にわたる1/2”又は1”又は2”のストリップに1/2オーム/平方を有し、可視領域の残りに4オーム/平方の導電性があり、しかも、明るい状態では要素の外観が比較的均一であるようにしたものと対比した。要素を暗色化すると、要素の中心が、導電性の対照的な領域を備える縁部と比較して暗色化が遅れる傾向が僅かに減少した。
高度な導電性コントラストを有するように、要素は、それぞれほぼ12オーム及び40オーム/平方である第3の表面ITOが、単体の中心を横切って2”の銀の導電性ストリップを配置し、次に(処理耐久性のために)それを透明の導電性酸化物のフラッシュ層で覆ったことを除き、先の段落のものの構成と同様に作られた。完全なエレクトロクロミック装置に作り上げた後、要素は、ガラスの銀コーティング部分を覆って配置し、暗色化特性を評価する時に、比較的透明である12オーム/平方及び40オーム/平方のITOを備える領域の背部の銀ストリップと同様の強度の反射体が存在することになるようにした。第3の表面に40オーム/平方対1/2オームsqの対比領域を備える装置は、暗色化する時、これらの条件でみた時の12オーム/平方対1/2オーム/平方の対比領域を備える要素より絞り効果が小さいことが見られた。
要素は、第3の表面に付加的なコーティングを用いたことを除き、前段落によって作られた。このコーティングは、導電性酸化物の付加的なフラッシュ層(堆積処理で真空を用いる処理が中断するために、結合のために入れる)、ほぼ300nmシリコン、ほぼ60nmITO、別の20nmシリコン、次に10nmITOから成る。シリコン層は、表面酸化を受けやすいことがあり、このために、特定のEC要素では、表面酸化物を形成する可能性があり、それが暗色化の均一性及び一貫性を損なう。ITO又は他のTCO又はフラッシュ層又はカバー層として本明細書に説明した別の材料を用いて、上述の酸化物の形成又は悪影響を阻止することができる。40オーム/平方の初期層(先の例による)で開始したこれらの要素は、4点プローブで測定すると上部及び底部領域(図5f及び図7による)が約24オーム/平方、中心領域が<1オーム/平方の第3の表面導電性が得られた。12オーム/平方の初期ITO層で開始した要素は、上部及び底部領域が10〜12オーム/平方であった。先の例によれば、オームコントラストが大きな要素は、絞り効果が最低であるか、又は中心から縁部に暗色化する傾きが最も大きかった。更に、これらの要素は、「D65 2」角度観測装置を用いると電力を与えない状態で以下の光学特性も有した。
また、エレクトロクロミック装置のある一定の領域の優先的暗色化は、第2の表面の透明導体(スタック)又は第3の表面反射(スタック)の細い削除線により、並びに本明細書の他所に説明するようにコーティングの厚みを漸変させることによって得ることができる。例示的にレーザ削除を用いると、一般的に、レーザの作動波長を低減すると細いレーザ線を生成することができる。15ミクロン幅の削除線は、波長355nmのUVレーザを用いて生成した。これらの線は、依然として識別可能であるが、長い波長のレーザを用いることによって生成されるものより遙かに識別しにくい。更に短い波長のレーザが連続して利用可能になるにつれて、自動車のミラーに対する通常の条件で可視領域では審美的に拒絶されない削除線が可能になることは公正に予想することができる。
図5f及び図7の中心を横切って示される線又は線の一部に要素の第3の表面になることになるコーティングスタックの削除部分が存在し、次に、要素が、部分の縁部の1つに比較的小さな接触部分があり、要素の他の3つの側部に導電性エポキシが用いられるように従来の技術に従って構成される時に、暗色化特性は影響を及ぼされる...。
レーザによる削除のパターンは、次のように、1/2オーム/平方の反射体電極上に図5f及び図7に示すような要素の内部に示されている両方の線に対して作られる。
1)ガラスの縁部からガラスの縁部から15cmまで延びる細い線でコーティングが完全に削除された。
2)その部分の全幅にわたって8mm削除及び2mmの非切除の繰返しパターンで細い線でコーティングが完全に削除された。
3)ガラスの縁部から縁部から14cmまで延びる細い線でコーティングが完全に削除され、次に、部分の残りにわたって5mmの非切除及び5mmの削除の繰返しパターンで削除された。
4)線に沿ってほぼ5及び10cmで0.4mmの2つの非切除セグメントを除き、ガラスの縁部から縁部から15cmまで延びる細い線でコーティングが完全に削除された。
削除線が存在しない同様の部分に比べると、これらの要素は、暗色化されると、多少から実質的に小さいまでの「絞り効果」を示している。パターン4は、削除パターンのうちで、全体的な審美性に対して、更に、暗色化に対しても最良である。それにも関わらず、これらのパターンの全ては、許容可能な暗色化審美性に対して調節を必要とすることになるが、望ましい暗色化特性に向う動きは示された。
図8aを参照すると、第2の表面に被覆された実質的に透明な導電体の少なくとも1つの層808aを有する第1の基体802aと、その間にチャンバを形成するように1次シール材料878aを通じて互いに対して離間した関係で固定された第3の表面に被覆された積み重ねた材料を有する第2の基体812aとを含むバックミラー要素の一部を横から見た図が示されている。実施形態の少なくとも1つでは、チャンバ内に電気光学媒体810aが配置される。実施形態の少なくとも1つでは、材料の第3の表面のスタックは、下層818a、導電電極層820a、金属層822a、及び金属層及び1次シール材料の下に重なり、部分883aを有する導電タブ部分882aを含む。代替的に、導電タブ部分882aが金属コーティング822aを覆って被覆され、重なり部分を生成することができることに注意されたい。実施形態の少なくとも1つでは、下層は、チタン二酸化物である。実施形態の少なくとも1つでは、下層は用いない。実施形態の少なくとも1つでは、導電電極層は、インジウム錫酸化物である。実施形態の少なくとも1つでは、導電電極層は省略される。実施形態の少なくとも1つでは、導電電極層が省略され、下層は、チタン二酸化物の厚い層又は炭化珪素のような比較的屈折率が高い(すなわち、ITOより屈折率が高い)何らかの他の実質的に透明な材料のいずれかとされる。実施形態の少なくとも1つでは、導電タブ部分は、クロムを含む。導電タブ部分は、層の配列に応じてガラス及び/又は他の層のスタック又はエポキシに良好に結合し、車両のミラー試験条件下で腐食に耐性があるあらゆる導電体を含むことができることを理解すべきである。理解されるように、腐食しやすい材料の第3の表面スタック又は少なくともスタック内の層が1次シール材料の外側縁部で定められる領域内に保持されている場合には、要素は、第3の表面の腐食に関連する問題を実質的に免れることになる。腐食を受けやすい1つ又は複数の層は、導電性エポキシ又はオーバーコート層のような保護オーバーコート又はシール材が組み込まれていれば、1次シール材料を超えて延びることができることを理解すべきである。第1、第2、第3、及び第4の表層又は表面の材料のスタックのいずれも、本明細書又は引用により本明細書の他所に組み込まれた参照文献に開示したようなものとすることができることを理解すべきである。導電タブ部分は、導電電極を覆う導電性を改良することを理解すべきである。すなわち、導電電極層に十分な導電性が与えられる限り、導電タブ部分は任意的である。実施形態の少なくとも1つでは、導電電極層は、望ましい導電性に加えて、対応する反射光線に望ましい色彩特異的特性を付与する。従って、導電電極を省略する場合には、色彩特性は、下層材料の規格を通じて制御される。
図8bに移ると、第2の表面に被覆された実質的に透明の導電体の少なくとも1つの層808bを有する第1の基体802bと、その間にチャンバを形成するように、1次シール材料878bを通じて互いに対して離間した関係で固定された第3の表面に被覆された積み重ねた材料を有する第2の基体812bとを含むバックミラー要素の一部を横から見た図が示されている。実施形態の少なくとも1つでは、チャンバ内に電気光学媒体810bが配置される。実施形態の少なくとも1つでは、材料の第3の表面のスタックは、下層818b、導電電極層820b、金属層822b、及び1次シール材料の下に導電タブ部分を含む。実施形態の少なくとも1つでは、金属層と導電タブ部分の間に空隙領域883cが形成され、導電電極がその間を電気的に導通状態にする。実施形態の少なくとも1つでは、下層は、チタン二酸化物である。実施形態の少なくとも1つでは、下層は用いない。実施形態の少なくとも1つでは、導電電極層は、インジウム錫酸化物である。実施形態の少なくとも1つでは、導電タブ部分は、クロムを含む。導電タブ部分は、層の配列に応じてガラス及び/又は他の層のスタック又はエポキシに良好に結合し、車両のミラー試験条件下で腐食に耐性があるあらゆる導電体を含むことができることを理解すべきである。理解されるように、腐食しやすい材料の第3の表面スタック又は少なくともスタック内の層が1次シール材料の外側縁部で形成される領域内に保持されている場合には、要素は、第3の表面の腐食に関連する問題を実質的に免れることになる。第1、第2、第3、及び第4の表層又は表面の材料のスタックのいずれも、本明細書又は引用により本明細書の他所に組み込まれた参照文献に開示したようなものとすることができることを理解すべきである。
図8cを参照すると、第2の表面に被覆された実質的に透明の導電体の少なくとも1つの層808cを有する第1の基体802cと、その間にチャンバを形成するように、1次シール材料878aを通じて互いに対して離間した関係で固定された第3の表面に被覆された積み重ねた材料を有する第2の基体812aとを含むバックミラー要素の一部を横から見た図が示されている。実施形態の少なくとも1つでは、チャンバ内に電気光学媒体810cが配置される。実施形態の少なくとも1つでは、第1の金属層818cは、実質的に第3の表面全体を覆って被覆される。実施形態の少なくとも1つでは、第2の金属層820cは、第2の金属層の外側縁部が1次シール材料878cの外側縁部によって形成される領域内に配置されるように第1の金属層を覆って被覆される。実施形態の少なくとも1つでは、第1の金属層がクロムを含む。実施形態の少なくとも1つでは、第2の金属層は、銀又は銀合金を含む。第1、第2、第3、及び第4の表層又は表面の材料のスタックのいずれも、本明細書又は引用により本明細書の他所に組み込まれた参照文献に開示したようなものとすることができることを理解すべきである。
図8dに移ると、実質的に光センサ又は情報ディスプレイの前に小穴822d1を有する積み重ねた材料を含む第2の基体812dが示されている。実施形態の少なくとも1つでは、第1の金属層818dには、小穴領域に空隙領域が設けられる。実施形態の少なくとも1つでは、第2の金属層820dには、小穴領域に空隙領域が設けられる。実施形態の少なくとも1つでは、第3の金属層822dが設けられる。実施形態の少なくとも1つでは、第3の金属層のみが小穴領域に被覆される。実施形態の少なくとも1つでは、第1の金属層は、クロムを含む。実施形態の少なくとも1つでは、第2の金属層は、銀又は銀合金を含む。実施形態の少なくとも1つでは、第3の金属層は、薄い銀、クロム又は銀合金を含む。第1、第2、第3、及び第4の表層又は表面の材料のスタックのいずれも、本明細書又は引用により本明細書の他所に組み込まれた参照文献に開示したようなものとすることができることを理解すべきである。
図9a〜図9kに移ると、第2及び第3の表面導電電極部分922、908の特定の部分に選択的に接触するための様々なオプションが示されている。理解されるように、図7の構成は、各第2及び第3の表面導電電極部分の少なくとも一部に接触する電気的に導電性の材料になる。ここに示すような接触構成は、あらゆる様式で要素の周りを回転させることができることを理解すべきである。
図9aに示されている要素構成は、材料の第2の表面のスタック908aを有する第1の基体902aと、材料の第3の表面のスタック922aを有する第2の基体912aとを含む。材料の第3の表面のスタックは、隔離領域983aを有し、導電性エポキシ948aに接触する材料の第3の表面のスタックの一部が材料の第3の表面のスタックの残りから隔離されるように示されている。第1及び第2の基体は、1次シール材料978aを通じて互いに離間した関係で保持される。要素の別の側部が、可視領域内の材料の第3の表面のスタックに接触させるために、材料の第2の表面のスタックに関連する同様の隔離領域を有することができることを理解すべきである。本明細書の他所及び引用により本明細書に組み入れた参照文献に説明するように、材料の第2又は第3の表面のスタックのいずれかは、材料の単一の層とすることができることを理解すべきである。
図9bに示されている要素構成は、材料の第2の表面のスタック908bを有する第1の基体902bと、材料の第3の表面のスタック922bを有する第2の基体912bとを含む。第1及び第2の基体は、1次シール材料978bを通じて互いに離間した関係で保持される。導電性エポキシ948bは、材料の第3の表面のスタックと接触し、材料の第2の表面のスタックから絶縁部材料983bを通じて電気的に分離される。要素の別の側部は、可視領域内の材料の第3の表面のスタックに接触させるために、材料の第2の表面のスタックに関連する同様の隔離領域を有することができることを理解すべきである。本明細書の他所及び引用により本明細書に組み入れた参照文献に説明するように、材料の第2又は第3の表面のスタックのいずれかは、材料の単一の層とすることができることを理解すべきである。
図9cの要素は、材料の第2の表面のスタック908cを有する第1の基体902cと、材料の第3の表面のスタック922cを有する第2の基体912cとを含む。第1及び第2の基体は、1次シール材料978cを通じて互いに離間した関係で保持される。材料の第2の表面のスタックは、第1の導電性エポキシ、又は第1の半田948c1と電気的に接触するように1次シール材料を超えて第1の基体の縁部に向って延びている。材料の第3の表面のスタックは、第2の導電性エポキシ、又は第2の半田948c2と電気的に接触するように1次シール材料を超えて第2の基体の縁部に向って延びている。要素の別の側部は、可視領域内の材料の第3の表面のスタックに接触させるために、材料の第2の表面のスタックに関連する同様の隔離領域を有することができることを理解すべきである。本明細書の他所及び引用により本明細書に組み入れた参照文献に説明するように、材料の第2又は第3の表面のスタックのいずれかは、材料の単一の層とすることができることを理解すべきである。
図9dは、要素の第3の表面の電気的接触部948d2から対向する1側部に作られた第2の表面の電気的接触部948d1を示している。図9eは、要素の1側部に作られた第2の表面の電気的接触部948e1及び要素の1端部に作られた第3の表面の電気的接触部を示している。図9fは、要素の1側部及び連続的に1端部に作られた第2の表面の電気的接触部948f1及び要素の対向する1側部及び連続的に対向する1端部に作られた第3の表面の電気的接触部948f2を示している。図9gは、要素の対向する両側部に作られた第2の表面の電気的接触部948g1及び要素の1端部に作られた第3の表面の電気的接触部948g2を示している。図9hは、要素の対向する両側部に作られた第2の表面の電気的接触部948h1及び要素の対向する両端部に作られた第3の表面の電気的接触部948h2を示している。図9iは、要素の対向する両端部及び1側部に連続的に作られた第2の表面の電気的接触部948i1及び要素の1側部に作られた第3の表面の電気的接触部948i2を示している。図9jは、両端部、1側部全体、及び第2の側部の少なくとも一部分に連続的に作られた第2の表面の電気的接触部948J1及び要素の1側部に作られた第3の表面の電気的接触部948J2を示している。実施形態の少なくとも1つでは、長い電気的接触部が、最高シート抵抗の積み重ねた材料を有する表面に一致することになることを理解すべきである。電気的接触部は、導電性エポキシ、半田、又は導電性接着剤を通じたものとすることができることを理解すべきである。
図9kは、材料の第2の表面のスタック908kを有する第1の基体902kと、材料の第3の表面のスタック922kを有する第2の基体912kとを含む要素を示している。第1及び第2の基体は、周縁の第1及び第2の1次シール948k1、948k2を通じて互いに離間した関係で保持される。第1の1次シールは、材料の第2の表面のスタックに電気的接触を作るように働き、第2の1次シールは、材料の第3の表面のスタックに電気的接触を作るように働く。第1及び第2の1次シールは、互いに離間した関係で第1及び第2の基体を保持し、好ましくは、両方の1次シールは、各基体の縁部の実質的に外側にある。
電極又は電気光学要素のJクリップ又はLクリップのような接触クリップに電気的接続を確立するための別の方法は、固相溶接法によるものである。ワイヤ結合は、電子構成要素(通常ICチップ及びチップ担体)間に信頼することができる相互接続を確立するためにエレクトロニクス産業に用いられる溶接法である。ワイヤ結合法は、Zonghe Lai及びJohan Liu著「Nordic Electronicsパッケージ化指針」第A章に説明されている。ワイヤ結合によって作られる電気的相互接続は、金属ワイヤ又はリボン及び熱、圧力、及び/又は超音波エネルギの組合せを用いてワイヤ又はリボンを関連する金属表面に溶接する。典型的には、ワイヤ又はリボンは、特殊な楔又は毛細管結合ツールを用いて溶接される。典型的な結合工程は、熱及び/又は超音波エネルギを用いており、一般的に、3つの主要なカテゴリに分類される。すなわち、熱圧着、超音波結合、及びサーモソニック結合である。結合されるワイヤは、結合部を終端とすることができ、連続ワイヤに複数の結合部を作ることができる。ワイヤ結合のよく見られる形には、ボール結合、楔結合、及びステッチ結合が含まれる。アルミニウム、金、銀、銅、及びその合金を含む多くの異なる金属及び合金で作られるワイヤ及びリボンは、ワイヤ結合することができる。これらのワイヤは、いくつかの金属又は以下に限定されるものではないが、金、銀、ニッケル、アルミニウム、及びこれらの金属で作られた合金の金属層を含む金属層で被覆した基体に結合させることができる。電気光学要素の電極に結合する場合には、好ましい基体はガラスであり、好ましい金属堆積処理は、マグネトロンスパッタリングのような物理蒸着工程によるものである。ワイヤ結合金属層とガラスの間にクロム、モリブデン、ニクロム、又はニッケルのような1つ又は複数のグルー層を付加し、許容可能な接着剤結合を得ることができる。コーティング金属層の厚みは、5オングストローム〜1000ミクロンの間とすることができる。より好ましくは、金属層の厚みは、100オングストロームと1ミクロンとの間、最も好ましくは、金属層の厚みは、200と1000オングストロームとの間である。ワイヤの直径又はリボンの厚みは、10と250ミクロンとの間とすることができ、25と100ミクロンの間の直径又は厚みが好ましく、50と75ミクロンの間の直径又は厚みが最も好ましい。実施形態の少なくとも1つでは、連続ワイヤは、エレクトロクロミックミラーの第2の表面上のクロムリングのような基体の周囲に沿って楔又はステッチ結合することができる。ワイヤ又はリボンバスは、ワイヤ又はリボンをクリップに溶接し、次に、カップを基体に環状に接続し、それを関連する電極に溶接することによってニッケルJ又はLクリップのようなクリップに電気的に接続することができる。ワイヤ又はリボンは、金属クリップのところで開始し、EC電極に沿って進むことができ、EC電極に添って開始し、クリップに環状に接続し、電極に戻ることができる。実施形態の少なくとも1つでは、装置を信頼可能に均一に呈色させるために、関連する電極まで及び/又はEC電極から関連する電気的に接触するクリップまで重複する溶接接続を有することが好ましい。基体への複数の溶接接続は、0.005インチ〜10インチ毎の間隔で作ることができ、0.040インチ〜2インチの間隔が好ましく、0.100と0.50インチの間の間隔が最も好ましい。溶接ワイヤ又はリボンバスは、ワイヤ及び溶接部をシール材に封入することによって損傷から保護することができる。好ましい方法は、関連する要素の周縁シールにワイヤ/リボン及び溶接結合を封入することによってバスを保護することである。金属ワイヤ/ホイルは、バスを装置内(周縁シールの内部)に封入するEC媒体と化学的に適合であることが好ましい。更に、ワイヤバスを用いて要素内部の関連する電極の導電性を補足することができる。直系が75ミクロン又はそれ未満のワイヤは、人の眼には容易に明らかではない。溶接ワイヤ結合は、室温又は低温工程であり、後硬化又は後処理の必要がなく、この技術は、信頼性が確認された確立されたものであり、結合を迅速に(約100ミリ秒/結合)確立することができるために製造の観点からは魅力的である。
また、ワイヤ結合を用いて、電子構成要素を要素の基体表面に電気的に接続することができる。例えば、多くの金属は、要素のカソードとして用いる時には電気化学的に安定であるが、アノードとして用いる時には安定でない。極性が逆転した時にEC装置の作動を制限するダイオードなどにより保護することが望ましい。(これは、図11a〜図11cを参照して以下に詳細に説明する。)表面装着ダイオードのような電気構成要素を基体又はバスクリップに取り付け、ワイヤ結合により基体及び/又はクリップに電気的に接続することができる。別の実施形態では、信号伝達又は警告システムの部分である発光ダイオード(LED)は、例えば、チップの形で関連する基体に取り付け、エッチング、マスキング、又はレーザ切除により金属コーティングをパターン化することによって基体の回路に電気的に接続することができる。これらのLED又は他の電気構成要素は、基体表面1、2、3、又は4の要素上又は要素内に装着することができる。多くの場合に、温度が上昇すると溶液相エレクトロクロミック装置に印加される駆動電圧を増大させ、エレクトロクロミック種の拡散速度の上昇を補償し、広い温度範囲にわたって良好な装置の暗色化特性を維持することが望ましい。温度変調可変電圧駆動回路に必要なサーミスタ及び電子構成要素は、関連する基体表面に装着し、ワイヤ結合により基体上の金属コーティングに電気的に接続させることができる。例:アルミニウムワイヤは、次のように、ガラス基体上の金属コーティングに結合する。
ガラスは洗浄し、第1の層のクロム及び第2の層のニッケル(CN)、第1の層のクロム及び第2の層のルテニウム(CR)、第1の層のクロム、第2の層のルテニウム、及び第3の層のニッケル(CRN)を含むほぼ400オングストローム厚みの層で真空スパッタリング被覆する。1%シリコン(1〜4%伸び率、19〜21グラム引張強度)を含む0.00125”直径のアルミニウム合金ワイヤを次の設定値で「Westbond Model 454647E」ワイヤ結合装置を用いて金属被覆ガラス基体にワイヤ結合する。
設定値、第1の結合、第2の結合
「CN」電力、175、150
時間、30ミリ秒、30ミリ秒
力、26グラム、26グラム
「CRN」電力、175、150
時間、30ミリ秒、30ミリ秒
力、26グラム、26グラム
「CR」電力、150、125
時間、75ミリ秒、100ミリ秒
力、26グラム、26グラム
ワイヤの結合強度は、結合後及び摂氏300度に1時間露出した後にワイヤを引き離し、その力を測定することによって評価した。
ワイヤ結合平均引張強度:
結合後、300C焼成後
「CN」、14.51グラム、9.02グラム
「CRN」、19.13グラム、8.2グラム
「CR」、12.42グラム、8.7グラム
結合後の主な破損は、第1の溶接結合の端部でのワイヤ破断であった。焼成後には、主な破損は、「CN」及び「CRN」群に対してはスパン中央でのワイヤ破断、及び「CR」群に対しては第1の結合の端部でのワイヤ破断であった。この例は、ガラス上の典型的なスパッタリング金属層に複数の信頼可能な溶接結合を作ることができることを明らかにしている。
図10は、一般的に、多人数乗り車両に用いることができる可変透過率窓1010に加えて、可変透過率窓1010の透過率状態を制御するために可変透過率窓1010に電気的に連結された窓制御システム1008を示している。窓制御システム1008は、各可変透過率窓1010の透過率を制御するために各可変透過率窓1010に連結された窓制御ユニット1009を含む。各窓制御ユニット1009は、関連する可変透過率窓1010の透過率状態を制御するためのスレーブ制御回路1070を含む。更に、各窓制御ユニット1009は、使用者入力をスレーブ制御回路1070に与えて関連する可変透過率窓1010の透過率の状態を変化させるためのスレーブ制御回路1070に連結された使用者入力機構1060を有するようにも示されている。更に、各窓制御ユニット1009は、スレーブ制御回路1070に電力を供給するための電力源及び接地線1011、使用者入力機構1060、及び可変透過率窓1010に接続されるようにも示されている。図示のように、電力は、電力及び接地線1011からスレーブ制御回路1070を通じて可変透過率窓1010に供給される。
また、各窓制御ユニット1009は、窓制御システムバス1013に連結されるようにも示されている。更に、窓制御システムバス1013に連結される他の装置も、マスター制御回路1090及び他の電子装置1092を含む。マスター制御回路1090は、各窓制御ユニット1009により窓制御システムバス1013に供給される信号をモニタし、バスに関する制御信号を各窓制御ユニット1009に供給するように構成される。マスター制御回路1090は、論理、メモリ、及びバスインタフェース回路を含む処理回路を含み、マスター制御回路1090が窓制御システムバス1013に関する信号を生成、送信、受信、及び復号することを可能にする。各窓制御ユニット1009に含まれるスレーブ制御回路1070は、使用者入力機構1060からの望ましい窓透過率の状態を受信し、電気信号を可変透過率窓1010に供給して可変透過率窓1010の透過率の状態を使用者入力機構1060を通じて使用者により要求される状態に変化させるように構成される。更に、スレーブ制御回路1070は、可変透過率窓1010が消費する電力及び可変透過率窓1010の透過率の状態を含む可変透過率窓1010の様々な特性をモニタするようにも構成される。更に、スレーブ制御回路1070は、窓制御システムバス1013から信号を受信し、それに信号を送信するための回路も含む。
ある一定の金属膜は、アノードとして構成される場合には、インジウム錫酸化物膜のような透明の導電性酸化物に比較すると安定がよくない可能性がある。これは、アノードからの金属メッキ消滅によるか、酸化のような金属表面の化学的変化によるか、又は可動性金属原子が粗い表面に再配列することから表面がかすむことにより、エレクトロクロミック装置における循環時に明らかになる場合がある。一部の金属及び金属薄膜のスタック及び金属層を含有する薄膜のスタックは、他のものよりこれらの効果に耐性を有することになる。それにも関わらず、第3の表面の反射体電極がカソードであることを保証する対策を講じることが望ましいであろう。
ある一定の実施形態では、アノードとして用いることに敏感な材料を第2の表面の透明電極に組み込むことが好ましいと考えられるという可能性がある。この場合には、第2の表面の電極を保護するために、第3の表面の電極をアノードとして、第2の表面の電極をカソードとして駆動させることが好ましいであろう。
車両の外部のエレクトロクロミックミラーに対しては、関連する内部ミラーに配置される関連する駆動回路に直接繋がれていない電力源を存在させることができ、それによって第3の表面の反射体電極がそのミラーでアノードであることの危険性をある程度小さくすることができる(すなわち、所定の外部ミラーは、独立駆動回路を含むことができる)。しかし、外部ミラー(又は複数のミラー)の電力は、内部ミラーを通じて供給されることが一般的である。多くの場合、内部ミラーと対応する外部ミラーの間にはいくつかの接続が存在する。内部ミラーから外部ミラーへの電力の極性が逆転し、装置の第3の表面の反射体電極及びアノードを作る危険性は、関連する反射体/電極がアノードとして機能するほど十分に耐久性がない場合は許容不能である場合がある。
図11aを参照すると、外部ミラー要素1102aと並列にダイオードを有する回路1101aは、逆転した極性の電流を防止し、並びにエレクトロクロミック機能性を防止する。装置は、ミラーが通常の電圧が印加されると暗色化されることになるが、明色化のために内部ミラー回路で回路が短絡すると、外部ミラーは、その経路を通じて放電することができないことになるという点で、正しい極性で作動する時に性能が低下する可能性がある。従って、外部ミラー要素は、主に、正及び負に荷電された化学種が溶液中で互いに中和されると放電することになるが、装置の導電表面に放電する時には放電しないことになる。それによって装置の明色化速度が実質的に遅くなることになる。
図11bに示す回路1100bは、外部ミラー要素1102b付近の導線間に並列のダイオード1101bを含む。回路のその部分に供給される電流の極性が逆転すると、短絡回路が引き起こされることになる。次に、電流は、ダイオードを通るがエレクトロクロミック要素を通らずに流れることになる。内部ミラー回路1103bにより短絡が検出されると、電圧が自動的に接続を外される。従って、極性が正しい時にミラーを適切に作動させることができても、この回路は、極性が逆転するとミラーのエレクトロクロミック機能を完全に使用不可にする。
しかし、ダイオード1101cは、初期に、過剰電流(短絡)であるが逆転電圧の時には電圧の印加を中断しない回路1100cに連結されると、ミラー要素1102cは、作動可能なままとなって適切な極性が要素に送出され、反射体電極が自動的にカソードとして再接続されるようになる。この回路1100cでは、過剰電流が検出されると、2つの固体スイッチ1104c1、1104c2は、要素1102cを通して逆方向に電力を向け直すように自動的に構成される。この構成で過剰な電流が検出されると、何らかの他の故障が過剰な電流引き込みを引き起こしている可能性が高いために、固体スイッチはリセットされ、要素への駆動機構は中止される。
図11dは、逆転極性に対して自動的に補償を行う電気光学駆動回路のための別の構成を示している。ダイオード1101d1、1101d2、1101d3、1101d4は、二重電流経路を設ける整流ブリッジを形成する。実際の経路の電流の流れは、電気光学要素1102dのアノード及びカソードの常に望ましい方向を有することになる。
図11a〜図11dの回路1100a、1100b、1100c、1100dは、単一の外部ミラーに対して示される。仮に単一の外部ミラーよりも多いミラーを保護することが望ましい場合には、望ましい回路は、それに適合させることができる。
第4の表面反射体(図示せず)を有する図7に示すものと同様の電気光学要素では、透明の導電体708と718の間に電位差がない場合には、チャンバ内エレクトロクロミック媒体710は、本質的に無色又はほぼ無色であり、入射光(I0)は、前部要素702を通って入り、透明コーティング708、チャンバ内エレクトロクロミック媒体710、透明コーティング718、後部要素712を通過し、層に反射して装置を通って戻り、前部要素702から出る。上述のような可変透過率窓に関する本発明の態様では、反射層を組み入れなくてもよいことを理解すべきである。他の実施形態では、第3の表面反射体/電極を用いることができる。典型的には、電位差がない反射像(IR)の大きさは、入射光強度(I0)の約45パーセント〜約85パーセントである。正確な値は、例えば、前部要素の前面からの残留反射(IR)、及び前部要素702と前部透明電極708の間の界面からの2次反射、前部の透明電極708及びエレクトロクロミック媒体、エレクトロクロミック媒体及び第2の透明電極718、及び第2の透明電極718及び後部要素712のような以下に概説する多くの変数に依存する。これらの反射は、当業技術で公知であり、光が2つの材料間の界面を横切る時の材料の1つと別の材料との間の屈折係数の差によるものである。前部要素及び背部要素が平行でない場合には、残留反射率(I’R)又は他の2次反射は、ミラー表面からの反射像(IR)に重ならず、二重の像が現れることになる(観察者は二重又は三重に現れるもの、すなわち、反射像に実際に存在する物体の数を見ることになる)。
エレクトロクロミックミラーが車両の内部に配置されるか又は外部に配置されるかにより、反射光の強度のマグニチュードに対する最低要件が存在する。例えば、殆どの自動車製造業者に対する現在の要件によれば、内部ミラーの最小限のハイエンド反射率は、少なくとも40パーセントとすることが好ましく、外部ミラーの最小限のハイエンド反射率は、少なくとも35パーセントとすべきである。
電極層708及び718は、例えば、図10〜図11dの電子回路に接続され、これは、エレクトロクロミック媒体に電気的エネルギを与え、導電体708及び718にわたって電位が印加されると、チャンバ内のエレクトロクロミック媒体710が暗色化するようにし、光が反射体に向って通過する時及び反射されて戻ってくる時に入射光(l0)が減衰するようにするのに有効である。透明の電極間の電位差を調節することにより、好ましい装置は、広い範囲にわたって連続的な可変透過率で「グレースケール」装置として機能する。溶液相エレクトロクロミックシステムに対しては、電極間の電位が除去されるか又はゼロに戻ると、装置は、自発的に、電位が印加される前に装置が有していたのと同じゼロ電位、平衡色、及び透過率に戻る。エレクトロクロミック装置を作るのには他の材料も利用可能であり、本発明の態様は、電気光学技術を用いるか否かに関係なく適用可能であることを理解すべきである。例えば、電気光学媒体は、固体金属酸化物、酸化還元活性ポリマー、及び溶液相及び固体金属酸化物、又は酸化還元活性ポリマーの混成組合せである材料を含むことができるが、上述の溶液相の設計は、現在用いられるエレクトロクロミック装置の殆どに典型的である。
低吸収に維持しながら比較的低いシート抵抗を有する第2の表面の透明導電性酸化物を電気光学要素に設ける様々な試みが行われた。上述のエレクトロクロミックミラー、並びにエレクトロクロミック窓又は一般的に電気光学装置では、透明の導電性層708、718は、インジウムスス酸化物で作られることが多い。他の試みは、関連するガラス基体に印加される時にITO層の固有応力を低減し、基体の屈曲又は反りを最小限にすることに注目している。更に別の試みは、ITO層の1/4及び/又は半波厚みを調節することによって反射率のような光学特性を最適化するか、又は関連する全体的アセンブリの重量を最小限にするように行われた。しかし、上述の物理的制限のために、上述の光学的及び物理的特性の全てを同時に最適化する努力は殆ど成功していない。
所定のエレクトロクロミックアセンブリの光学特性を最適化するこのような以前の1つの方法は、その電極の組成を操作することであった。より詳細には、特定の光学特性は、アセンブリの反射電極の反射率を調節することによって得ることができる。より詳細には、反射電極を含む積み重ねた層の材料組成を操作することにより、その反射率を増大させ、それによって関連する透明電極の相対吸収を無にすることができる。しかし、反射電極の反射率を増大するためには、典型的には、ロジウム、ルテニウム、クロム、銀のようなそれを構成するのに用いられる付加的な量の金属を用いることが必要である。これらの金属の多くは比較的高価であるために、その付加的な量をエレクトロクロミック要素に加えると、その費用が許容不能に高くなる。更に、多くの低価格金属は、良好な反射特性を備えているが、外部ミラーアセンブリ及び外部窓アセンブリのような全体的アセンブリが受けることになる製造工程及び/又は過酷な環境条件に不適合である。
ITO電極を用いる他の方法は、互いに適合しないいくつかの光学的及び物理的パラメータの均衡をとることが必要であった。例えば、透明のITO導電性層の厚みを増大して低シート抵抗を達成すると、以下に詳細に説明するように、その層に伴う吸収、1/4及び/又は半波点の位置、及びITO層を付加する基体の屈曲に悪影響を及ぼす可能性がある。
当業技術で公知のように、その層の厚みを増大させることにより、ITO層のシート抵抗を低減することができる。しかし、ITO層の厚みを増大させると、望まないその層の光吸収の増大を伴う。更に、ITO層の厚みを増大させると、ITO層の外面からの相対反射率を最小限にするために、典型的には、所定の波長範囲(典型的にはほぼ550nmを中心にする)の半波の量に限定される。更に、ITO層の厚みを増大させると、ITO層が付加された基体の屈曲が増大する可能性がある。公知のように、ITO層は、基体に及ぼされる内部応力を含み、これは、いくつかの薄い基体に付加されると、そのような基体を屈曲させることになる可能性がある。多くの用途で、基体は、ガラスの吸収及びそれに関連する重さを低減するように比較的薄いガラスを含むために、ITO層の厚みが増大すると許容不能な屈曲が起こる。これは、航空機又は建造物に用いられるような大きな窓等の大きな用途で特に一般的である。関連する基体が屈曲すると、全体的アセンブリ内の2つの電極間の距離に影響を及ぼし、それによってその表面にわたる様々な点でのアセンブリの明色化速度、色彩、相対的に均一な暗さ又は明るさに影響を及ぼし、単一の像ではなく生成された複数の反射像の点に光学的歪も引き起こす可能性がある。ITO層の内部応力を低減する以前の手法は、エレクトロクロミック要素を生成するのに用いられる方法に注目していた。ITO層を関連する基体に付加するための当業技術で公知の1つの方法は、磁気スパッタリングを含む。従来的に、これらの試みは、いくつかの欠点のために中程度にしか成功しておらず、その欠点の1つは、この方法に固有の物理的制限であり、その例は、圧力が増大するとITO層のスタックが破壊され、ITOがクラスター化されることである。このようなクラスター化ITO層は、シート抵抗、曇り、及び吸収の増大を示している。
実施形態の少なくとも1つでは、シート抵抗が低減され、吸収性が低減され、応力が小さくなり、同時に、全体的センブリ、そのあらゆる部分的組合せ又は組合せの重量を低減しながら全体的アセンブリの均一な暗さ又は明るさが得られるITO層を用いる電気光学要素を提供する。
実施形態の少なくとも1つでは、シート抵抗が比較的減少し、同時に、吸収性が比較的減少し、関連するITO層が付加される関連する基体の屈曲が比較的減少する電気光学要素が提供され、これは、その合計重量を低減しながら全体的アセンブリに対して比較的均一な暗さ及び明るさをもたらす。
ミラーアセンブリは、本明細書で一般的に本発明の多くの詳細を説明するのに用いられるが、本発明の実施形態は、本明細書の他所で説明するように、電気光学窓の構成にも等しく適用可能であることに注意すべきである。図6a〜図6dの内部ミラーアセンブリ及び図5a〜図5fの外部バックミラーアセンブリは、カナダ特許第1、300、945号、米国特許第5、204、778号、又は米国特許第5、451、822号に示されて説明されている種類の光検知電子回路、及びグレア及び周囲光を検知し、エレクトロクロミック要素に駆動電圧を供給することができる他の回路を組み込むことができ、これらの特許の開示内容は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている。
上述のように、高性能電気光学要素(ミラー又は窓のいずれか)は、第3の表面の電極及び/又は反射体及び透明の導電電極708が中〜高導電性であり、全体的着色、着色及び明色速度の増大等も得られることが必要である。第3の表面反射体/電極を用いることによってミラー要素の改良が達成されるが、透明電極708、718に関する改良は望ましい。これも上述のように、シート抵抗を低減するために導電性を改良しながらITOの透明電極708、718の全体的厚みを単純に増大させると、エレクトロクロミック要素の他の光学的及び物理的特性に悪影響を及ぼす。表4は、異なる光学定数の3つのITOコーティングに対してITO厚みを変化させる時のEC要素の反射率の低下を示している。この例の異なるITOコーティングは、異なる虚屈折率を有する。例の要素構成は、1.7mmガラス、50nmCr、20nmRu、140ミクロンのEC流体、様々なITO、及び1.7mmガラスから成る。異なるITO層の厚みは、表4に示している。多くのサイドミラー用途では、顧客仕様書は、反射率が55%よりも大きいことを必要とする。厚みは、ITOの特性により制限され、従って、実行可能なシート抵抗も制限される。適切な製造工程では、最低吸収レベルで工程を稼働させることが常に可能とは限らない。従って、実際的な上側厚み及び低シート抵抗の制限は、製造工程の変動により束縛される。更に、低吸収のITOが、望ましくないことには高シート抵抗に対応することも一般的である。更に、厚くて低吸収のITOも高シート抵抗に対応し、それによって厚いコーティングの利点を制限する可能性がある。
EC要素に望ましい別のデザインの属性は、暗い状態で低反射率を有することである。これは、ミラー要素の高コントラストになる。表5は、ITO厚みの関数としてECミラーに対する暗い状態の反射率値を示している。この例では、EC流体は、実質的に不透明に設定される。EC流体が完全に不透明でなければ、ミラーコーティングからの反射光は、表5の反射率に加えられることになる。図示のように。暗い状態の反射率は、最低約140〜150nm又は設計波長550nmで1/2波コーティングに到達する。厚みがこの半波厚みから外れると、暗い状態の反射率が上昇し、コントラスト比が下がる。従って、ITO厚みは、所定のシート抵抗値を得るために任意の厚みに設定することができない。ITO厚みは、コーティングの吸収及び暗い状態の反射率の両方の要件により束縛される。
実施形態の少なくとも1つでは、電気光学要素は、同時に他の関連する光学的及び物理学的特性を損なうことなくバルク抵抗を低減することによって導電性を改善した少なくとも1つのITOの透明電極128を含む。より詳細には、電気光学要素は、比較的高圧及び比較的高酸素流量でスパッタリング工程を通じて構成される。従来的に、ITO層を基体に付加するために用いる従来的なスパッタリング工程は、ある一定の最大圧力に制限されている。これらの圧力を超えると、以前には、ITOの低品質層になり、より詳細には、クラスター化した不均一なコーティングになり、電気的及び物理的特性が不良になっていた。
実施形態の少なくとも1つでは、垂直なインラインスパッタリング被覆装置でITOコーティングを生成した。カソードは、長さほぼ72”であり、2つ又は4つのいずれかのカソードを用いてコーティングを生成した。カソードは、当産業でよく用いられるセラミックITOタイルで装備した。コンベヤ速度は、ターゲット厚みのコーティングを生成するのに必要であるように調節した。カソードに与えられる電力は、特に断らない限り5キロワットであった。各処理区画は、整列した対面する構成で2対のカソードを有する。本明細書に示す酸素ガス流は、特に示さなければ、4つのカソードから成る処理区画のためのものである。2つの処理区画が作業される時、同等の量の酸素が両方のチャンバに供給され、酸素の総量は、1つの処理チャンバの4つのカソードに用いる量の2倍であると考えられる。ガラス基体は、ほぼ摂氏300度まで余熱した。スパッタリングガスは、所定の圧力に達するように調節し、酸素は、指定流速又はシステムに供給される総ガスのパーセントとして導入した。しかし、本発明は、本明細書に説明する正確な流速及びパーセントに限定されず、当業者には理解されるように、異なるチャンバは、異なるポンピング構成、ガス注入口及びマニホルド、カソード及び電力源を有し、工程の異なる点での圧力を測定することを理解すべきである。それどころか、当業者は、コーティングを生成するのに用いられる方法及びそれで得られるバルク抵抗、応力、及び形態を含む特性の新規性を理解し、実験を取り消すことなく本明細書の教示を異なるスパッタリングシステムに容易にスケーリングして行うか又は適合させることができることになり、本明細書に説明する作業の大部分は、ガラス基体温度300Cで行われたが、その傾向及び知見は、それより高温及び低温にも適用可能であり、本明細書に説明する絶対値が異なる温度で得られなくても標準状態より優れた改良が得られることになる。
本発明の実施形態の少なくとも1つでは、処理圧力の増大は、酸素流量を増大させることによって相殺される。ここに説明されているように、酸素流量に対する圧力の特定の関係は、スパッタリング工程中に用いられる特定の希ガスを含むいくつかの因子に依存する。2つの希ガス、クリプトン及びアルゴンを本明細書で詳細に説明するが、他のガスを、他のガスに対する詳細を所定のデータから外挿して用いることができる。
クリプトンに関しては、酸素パーセント5%で1ミリトル(mT)に等しいか又はそれよりも大きい圧力が好ましく、酸素パーセント4%で2mTに等しいか又はそれよりも大きい圧力が更に好ましく、酸素パーセント3%で3mTに等しいか又はそれよりも大きい圧力が更に好ましく、酸素流量2%で4.5mTに等しいか又はそれよりも大きい圧力が最も好ましい。
アルゴンに関しては、酸素パーセン4%で2mTに等しいか又はそれよりも大きい圧力が好ましく、酸素パーセント3%で3mTに等しいか又はそれよりも大きい圧力が更に好ましく、酸素パーセント2%で4.5mTに等しいか又はそれよりも大きい圧力が更に好ましく、酸素パーセント1%で6mTに等しいか又はそれよりも大きい圧力が最も好ましい。
上述のように、他のガスを用いることもできる。例えば、期待される高圧、好ましくは3mTに等しいか又はそれよりも大きく、より好ましくは7又は8mTに等しいか又はそれよりも大きいネオンを用いることができる。更に、キセノンは、クリプトンに比較して比較的低圧を用いることができる。更に、当業者には、好ましい酸素パーセントは、スパッタリング装置の詳細に伴って変化する可能性があることも認めるであろう。上に列記したパーセントは、例示的なものであり非制限的なものであることを意味する。材料特性の最適な組合せを得るのに必要な酸素の総流量は、一般的に、圧力の増大に伴って増大することになる。酸素の必要量は、スパッタリングガスを同じ割合では増大しないために、酸素のパーセントは、圧力が増大すると減少する。
典型的には、ITOは、低圧、すなわち、2mT又はそれ未満で作業される。しかし、低圧では、圧縮応力を有するITOコーティングになる傾向がある。ITOの応力は、特にガラスの厚みが減少する時にガラスを屈曲するのに十分な高さである可能性がある。ガラスの厚みが減少してEC要素が軽くなると、ITO応力によるガラスの撓みが増大する。ミラー要素又は窓の大きさが大きければ、ガラスの撓みは、数ミリメートルになることがある。従来の大量生産処理では、ITOの厚みが減少すると、典型的には基体の撓みが減少する。
ガラスの撓みは、様々な方法で表現することができる。1つの方法は、ガラスの撓みがレンズ関するものであると考えることである。次に、倍率値は、直接ガラスの撓みに関連し、ガラスの寸法に独立である。倍率値は、次式:曲率半径=(3124mm)/(1−1/倍率)を用いて曲率半径に関連する。完全に平坦なガラス片の倍率値は、1.0とされることになる。コーティング側から見た被覆ガラスは、コーティングが圧縮応力を受けている場合には、ガラスは、コーティング側が凸面になる。コーティングが引張応力を受けている場合には、ガラスは、コーティング側が凹面になる。圧縮コーティングでは、歪みが生じるか又は倍率値が1未満になり、逆に、コーティングが張力を受ける場合には、倍率又は歪み値は、1より大きくなることになる。0.85程度の歪み値は、平坦なガラスから高度に歪曲されている。この程度の歪み値では、第1及び第3の表面からの反射率が重なることができないために、二重像を有する可能性があるECミラー又は窓を生じることになる。更に、許容不能な歪みを有するガラスと実行可能なシールを生成することは困難である。歪み値が0.97程の高さのガラスは、製造又は二重像に関する問題を引き起こす可能性がある。
「アルゴン圧力試験」と表示した図12を参照すると、歪み値は、1.6mmガラス上のITOコーティングに対して測定したものである。ガラス厚みは、ITO又は他の応力コーティングが付加される時に、撓み及び歪みに大きな役割を果たす。撓み量は、一般的に、ガラスの厚みの3乗に反比例して変化する(コーティングの固有応力は、コーティングの厚みに対して一定であると考える)。従って、薄いガラスは、厚いガラスに対して非線形的に歪むことになる。薄いガラスは、厚いガラスに比較すると薄いITOコーティングでは一般的に歪むことになる。歪みの量は、コーティングの厚みと直線的に比例する。図12では、コーティングは、全てほぼ50nm厚みであった。他の厚み値での歪みを計算するために、次の式を用いることができる:新しい歪み=[1−(1−歪み値)*新しい厚み/古い厚み]。この式を図12の値の0.98に用いると、ITOコーティング150nm厚みに対して歪み値0.94、及びコーティング650nm厚みに対して歪み値0.74が導かれることになる。ガラスが薄ければ、これらの値は、実質的に平坦から更に外れることになる。
図12は、いくつかの重要な知見を示している。この実験では、2.1mTで生成されたITOの第1の歪み値又は応力(y軸)は、酸素流量範囲(x軸)にわたって実質的に変化しない。この範囲にわたって、ITOは、最小シート抵抗及びバルク抵抗値を通過する。それによって他の必要な光学特性は言うまでもなく、電気的特性及び応力特性の両方を同時に最適化することが可能でないという誤った結論に達する可能性がある。非常に速い酸素流量では、歪み値は、平坦より実質的に更に大きく外れ始める。
高圧(4.0mT)では、ある一定の傾向が出現する。低酸素流量では、ITOコーティングの応力が減少する。しかし、高圧では、これは、全体的なスパッタリング環境の低酸素パーセントに平行移動する。スパッタリング技術分野では、圧力を調節する間に酸素パーセントを一定に保つことは一般的である。従って、本発明の一実施形態をもたらすこの傾向及び知見は、従来の実験を用いる時には見出されていない。線1202で示される4mTの高アルゴン圧では、強い傾向が出現し、それによってITOの応力は、1201と比較して低酸素流量で最小にする。低応力は、以下に詳細に説明するITOコーティングの独特の微細構造又は形態のためである。速い酸素流量では、歪み値は、平坦さから外れるが、あらゆる特定の酸素流量では、歪み値は、低圧力で得られるものより高いままである。この傾向は、この図12に示すものより更に高圧でも継続する。7mTを超える圧力でも利益は継続する。更に、更に高圧でも改良を得ることができるが、特定のスパッタリングチャンバの制限事項によりこの値を超える圧力での実験は拘束される可能性がある。
図13のグラフは、バルク抵抗に関するアルゴン圧及び酸素流量の相対的増大の効果を示している。この特定の試験は、スパッタリングガスとしてアルゴンを用いて行った。400sccmアルゴンの場合(線1301)は、圧力3.7mTを生じ、550sccm(線1302)は5mTを生じ、700sccm(線1303)は6.2mTを生じ、850sccm(線1304)は7.4mTを生じる。x軸の酸素流量は、sccmである。アルゴン圧力及び酸素流量が増大するとバルク抵抗性に関して有意な改良が得られることに注意されたい。更に、低アルゴン圧力の場合には、高圧力の場合に対して、高バルク抵抗値で最小値を有する傾向がある。参照として、圧力2mTで生成された比較可能なコーティングは、約180と200マイクロオームcmの間のバルク抵抗値を含む。最近公開された特許出願では、エレクトロクロミック装置の別の製造業者により、EC用途のためのITOコーティングの現在の状態は、バルク抵抗200マイクロオームcmに対応することが示されている。これは、EC用途に実行可能なITOの利点及び特性で本発明の改良ITOコーティングが予想されないことを示している。本明細書に説明する高圧力の場合には、試験した酸素の範囲で最小値が得られない。
図14のグラフは、高圧力により、更に、基体上のITOコーティングが比較的薄くなることを示している。更に、この事実が、本発明のこの実施形態が以前に達成されていない原因である。図示のように、酸素流量及びアルゴン圧力が増大すると、ITOコーティングの厚みは減少する。バルク抵抗は、ITOの電気特性の品質の固有の尺度であり、これは、シート抵抗及び厚みを掛けたものである。シート抵抗のみを測定することは一般的であるが、コーティングの特性が詳細に示されないと多くの情報が失われる。コーティングは、処理ガスの変化と共に薄くなっているために、シート抵抗は、バルク抵抗と同じ傾向は辿らない。高アルゴン圧(線1404は、線1401、線1402、及び線1403に対して最も高いものを表す)及び酸素流量でバルク抵抗に継続的に利益が得られることをシート抵抗の比較可能な分析に示している。シート抵抗を調べさえすれば、3.7mTの場合が最高であり、好ましい特性は、比較的低酸素流量で得られると結論付けることができる。低バルク抵抗で生じる別の利点は、屈折率の実部が減少することである。低屈折率の半波コーティングは、高屈折率のものより物理的に厚く、シート抵抗が更に小さくなる。
図15のグラフは、増大アルゴン圧力及び増大酸素流量と組み合わせてアルゴンガスを用いる効果を示しており、図16のグラフは、達成されたITO半波バルク抵抗を示している。1/2波コーティングを得るために、2つの処理チャンバを用いた。200sccmの場合には、EC技術分野の従来技術のITOコーティングの標準を表している。従来技術の半波コーティングのシート抵抗は、12.5オーム/平方を超えたが、本発明の実施形態の少なくとも1つによる高圧力の場合には、12オーム/平方より低い値及び11オーム/平方未満の値も得られた。高圧力で得られるバルク抵抗を実質的に改良したものを図16に例示する。この場合、酸素は、高圧力で最適化されず、バルク抵抗は、400〜800SCCMのアルゴン流量で比較的一定であるように見える。
ITOのバルク抵抗は重要であるが、本明細書の他所で説明するように、シート抵抗は、EC要素の暗色化速度に影響を及ぼす主要因子である。200マイクロオームcmのバルク抵抗は、半波コーティングに対する13.7オーム/平方のシート抵抗に等しく、180のバルク抵抗は、12.4オーム/平方のシート抵抗に等しく、140のバルク抵抗は、9.6オーム/平方のシート抵抗に等しい。9.6オーム/平方は、13.7オーム/平方の場合に比較して30%減少であり、暗色化時間が実質的に改良することになり、本明細書の他所に説明されているように新しいバス構成も可能とされることになり、これは、要素暗色化の均一性も改良する。
次の例では、コーティングは、異なる被覆装置で生成した。この被覆装置は、ほぼ27インチ長さのカソードを有する。実験は、圧力2.73ミリトルでアルゴン及びクリプトンの両方に行った。コーティングは、カソードを過ぎて2つのパスに行った。酸素は、添付の図及び表に示すように変化させた。得られるITOコーティングは、ほぼ600nm厚みである。図17では、コーティングの吸収(y軸)は、酸素流量(x軸)の関数としてプロットする。ここに見られるように、クリプトンで作られたサンプル(線1701)は、所定の酸素流量で、スパッタリングガスとしてアルゴンを用いて生成したサンプル(線1702)より吸収が高い。
図18では、ガラスの歪み(y軸)は、酸素流量(x軸)の関数としてプロットしている。クリプトン(線1801)で生成したサンプルの歪み値は、1に近いことが見られ、これは、クリプトン生成ITO被覆ガラスは、アルゴン(線1802)生成ガラスより平坦であることを示している。図18は、酸素流量が増大すると増大する歪みを示す先に示したデータを表している。
図19では、ガラスの歪み(y軸)を吸収(x軸)に対してプロットしている、クリプトン生成サンプル(線1901)は、酸素流量に対してプロットすると吸収が大きいが、歪みを吸収に比較すると、クリプトン生成サンプルは、アルゴン生成サンプル(線1902)より平坦である。
図20は、クリプトン(線2001)及びアルゴン(線2002)での歪み(y軸)対透過率(x軸)を示している。所定の増大透過率値で平坦なガラスが得られる。高圧でクリプトン又はキセノンを用いて、又はアルゴンを用いても付加的な改良が可能である。高圧により、低応力、高透明性及び低シート抵抗を同時に達成することができる。
また、ITOコーティングの形態又は表面特性も圧力及び酸素流量と共に変化する。これらの値の間には相互作用が存在し、圧力を変化させると、異なる酸素流量で異なる形態が達成される。図21〜図23に示すITOコーティングサンプルは、72”カソードを備える被覆装置で生成した。全てのサンプルは、2.1mT、5kw/ターゲット、1処理チャンバ(2ターゲット/側部)、及びライン速度32ipmで作られた。酸素流量は、それぞれ図21、図22、及び図23のサンプルに対して2、8及び17sccmであった。図21及び図23のサンプルは、極端な形態で示している。図21のサンプルは、いわゆる結節状2101形態を有するが、図23のサンプルは、小板2302形態を有する。図21のサンプルを検査すると、背景小板2102構造が分る。図21のサンプルは、多少混ざった形態を有すると考えられる。中間酸素流量での図22のサンプルは、結節2201が非常に少なく、全体的に小板2202が優勢な形態である。小板形態は、コーティングの高応力に相関するが、結節性形態は、応力の小さいコーティングに起こる。所定の処理ガス圧力に応じて、これら2つの異なる形態の間の遷移は、突然又は漸進的のいずれかである。低酸素結節性形態は、ピーク−谷間粗度が大きい(図33a及び図33bに関して詳細に説明する)ことを特徴とする。結節は、実質的にコーティングの表面の上に隆起し、従って、大きなピーク−谷間粗度を生じさせる。結節が小板微細構造に移行すると、表面の粗度は減少する。粗度は、結節が表面からちょうど消失した時に最小になる。この時点で、浅い「崖」2103、2203、2303、又は小板間の領域を備える小板微細構造が存在する。酸素流量が更に増大すると、小板間の崖の高さが増大し、望ましくないことには、表面の粗度が増大する。
図24〜図26のサンプルは、図21〜図23のサンプルと比較可能な電力及びライン速度、及び全て2sccm酸素で作られる。処理ガス圧力は、それぞれ、3.7、2.1、及び1.6ミリトルであった。形態は、圧力が増大するにつれて、徐々に結節性形態が優勢になる。結節性形態2401、2501、2601と小板形態の間の移行は、高圧力では、更に漸進的であり、従って、コーティングの望ましい光学特性と機械的特性との間を細かく調節することができる。小板2402形態は、3.7ミリトルサンプルの背景に依然として存在するが、遥かに優勢でない量である。圧力が更に減少すると、結節構成要素は、最終的には排除され、小板形態のみが残る。
クリプトン又は他の重いスパッタリング処理ガスの使用は、ある面で高圧力で運転するのに類似する。図27〜図29に示すように様々な酸素流量で処理ガスとしてクリプトンで生成した1/2波ITOサンプルの3つのSEM画像を比較する。これらのサンプルを表6を参照してより詳細に説明する。これらのサンプルは、40ipmライン速度及び6.2kw、2つの処理チャンバ(4つのカソード/側部)を用いて作られた。ガラス厚みは、1.1mmであった。酸素流量は、図27、図28、及び図29のサンプルに対してはそれぞれ8、12及び16sccmである。酸素流量は、処理チャンバ毎である。8sccm酸素で生成された図27に示すサンプルの表面は、実質的に小板構成要素がなく、非常に応力が除去されている。すなわち、このサンプルの表面は、結節2701が優勢である。図27に示すサンプル、及び表6の他の1/2波サンプルの歪み値は、本質的に1である。図28に示すサンプルの表面構造は、一般的に、結節2801から成り、僅かな崖2803を備える非常に少量の小板2802形態を有する。図29のサンプルは、本質的に全て明確な崖2903を備える小板2902の表面構造である。サンプルは、ほぼ150マイクロオームcmと非常にバルク抵抗値が低い。これらのコーティングの吸収はかなり低く、12sccmの場合が、平坦性、抵抗性、及び吸収の最良の組合せである。これらのコーティングに対する低応力値は、高圧力を用いるか又は重いスパッタリングガスで生成すると、小板形態を用いても成功することができることを示している。
図30〜図32に示すサンプルそれぞれD、E、及びFは、表7に一覧にした2波ITOの場合のものであり、それぞれ8、12、及び16sccm流速に対応する。ライン速度は、これらのサンプルに対して7ipmであり、それ以外では、処理条件は表6のものと同等であった。これらのコーティングは、その半波対応物よりほぼ5倍厚い。コーティングの形態は、これらのサンプルに関して幾分異なり、薄いサンプルの結節性3001、3101、3201形態は、粒度の細かい構造(サンプルD、図30)を生じる。図30に示されている粒子間に空隙が存在し、それによって望ましくないことには、高度な曇り及び導電性の劣化が生じるが、これは、このサンプルに対しては比較的高バルク抵抗値である200マイクロオームcmにより例示される。12sccmの酸素によって作られたサンプルEは非常に低いバルク抵抗(131マイクロオームcm)及び細かい粒子微細構造を有する。16sccmの場合には、同様の微細構造を有するが、この場合には、薄いコーティングでのように小板形態が存在しない。これらのクリプトン生成コーティングの応力レベルは、比較的低い。歪み値は、低酸素の場合に対する本質的に1から最高の酸素の場合の0.956までの範囲である。これらのサンプルは、上述のこれより厚い1.6mmガラスより歪みを更に受けやすい1.1mmガラスで生成した。依然として、歪み値は、1に非常に近い。これは、最初に1.6mmガラスに関して説明した50nmコーティングより10倍を超えて厚いコーティングを備える。これらのコーティングは、応力が非常に低いだけでなく、良好なバルク抵抗値及び許容可能な吸収値も有する。
これらのコーティングに対するピーク−谷間表面粗度(図33a及び図33bに関して下の考察に形成する)は、好ましくは200Å又はそれ未満、より好ましくは150Å未満、より好ましくは約100Å又はそれ未満、より好ましくは約50Å又はそれ未満、最も好ましくは約25Å又はそれ未満である。
本発明の少なくとも1つの実施形態により構成されたエレクトロクロミックミラーの付加的な特徴及び利点を示すために、実験結果の要約を以下の表3及び表4に示している。これらの要約では、各例で指定されたパラメータに従って構成されたエレクトロクロミックミラーの要素のスペクトル特性を参照する。色を論ずる時には、国際照明委員会(CIE)1976年CIELAB色度図(一般的に、L*a*b*図表と呼ばれる)を参照することが有用である。色彩技術は、比較的複雑であるが、F.W.Billmeyer及びM.Saltzman著「色彩技術の原理」、第2版、「J.Wiley and Sons Inc.」(1981)にかなり包括的な考察が為されており、本発明の開示内容は、色彩技術及び専門用語に関する場合、一般的に、この考察に従う。L*a*b*図表では、L*は、明度を定め、a*は、赤/緑値を意味し、b*は、黄/青値を意味する。各エレクトロクロミック媒体は、各特定の電圧で3つの数字表示であるL*a*b*値に変換することができる吸収スペクトルを有する。スペクトル透過率又は反射率からL*a*b*値のような色座標の組を計算するために、2つの付加的な項目が必要である。一方は、供給源又は光源の分光分布である。本発明の開示では、自動車前照灯からの光を模擬するのにCIE標準光源Aを用い、昼光を模擬するのにCIE標準光源D65を用いる。必要な第2の項目は、観測者のスペクトル応答である。本発明の開示は、2度CIE標準観測者を用いる。一般的にミラーに用いられる光源/観測者の組合せは、次に、A/2度として表され、一般的に窓に用いられるこの組合せは、D65/2度として表される。下の例の多くは、L*よりもスペクトル反射率に密接に対応するので、1931CIE標準からの値Yに関するものである。値C*は、以下にも説明しているが、(a*)2+(b*)2の平方根に等しく、従って、色彩の中間状態を定量する尺度になる。
表3及び表4は、本発明により構成される要素に対する実験の結果を要約している。より詳細には、実験は、スパッタリングガスとしてクリプトンを用い、圧力3mトルで半波及び2波両方の厚みに対して8sccmと16sccm酸素流量の間の範囲で行った。表6は、半波より僅かに小さなITO厚みに対する結果を要約しており、表7は、2波より僅かに大きいITO厚みに対する結果を要約しているが、半波厚みは、例えば、ミラー用途に応用の可能であり、2波厚みは、例えば、窓用途に応用の可能である。更に、これらの表は、単層及び二重層から成る要素の両方に対する結果を含むことに注意されたい。
表8は、バルク抵抗、電子移動度、及び電子担体濃度の間の相互依存を示している。所定のバルク抵抗を生じることになる担体濃度及び移動度の組合せが連続的に存在することに注意されたい。
電子担体濃度は、40e20電子/ccに等しいか又はそれよりも大きいことが好ましく、移動度は、25cmΛ2/V−sに等しいか又はそれよりも大きいことが好ましい。本明細書で示される担体濃度及び電子移動度、厚み及び表面粗度は、コーティングの偏光解析から導かれる。電子濃度及び移動度は、ホール特性決定法を用いて判断したものと異なる可能性があり、当業者は、測定法間に喰い違いが存在する可能性があることを認識するであろう。上述のように、所定のバルク抵抗を達成することができる担体濃度及び移動度値が連続的に存在する。低屈折率が好ましい実施形態では、堆積処理を調整して高担体濃度をもたらすことが好ましいことになる。低吸収が好ましい他の実施形態では、堆積処理を調整して高電子移動度をもたらすことが好ましいことになる。他の実施形態では、中間レベルで担体濃度及び移動度の両方が望ましいこともある。
実施形態の少なくとも1つでは、電気光学要素は、バルク抵抗の減少、吸収の減少、ITOが付加される関連する基体の屈曲又は歪みの減少、及び全体的アセンブリの均一な暗さ及び明るさの維持を同時に示し、その重量を低減する改良ITO層を含む。
表面トポグラフィ、形態、又は粗度は、金属コーティングを扱う非微小規模電気用途では、典型的には重要でない。表面トポグラフィは、光学用途に金属を用いる場合に特に関心が寄せられる。表面粗度が大きくなりすぎると、コーティングは、感知することができるほどの非ミラー面反射率又は曇りを有することになる。この程度の粗度は、殆どの用途では、機能性には必ずしも影響を及ぼさないが、外観に悪影響を及ぼす可能性があるため最初に対処されることが多い。本明細書に説明する多くの用途のような光学的用途の場合には、好ましくない曇りの存在は、最悪の場合のシナリオであると考えられている。表面粗度は、好ましくない曇りが生じることになるレベルよりも遥かに小さな粗度レベルで、他の否定的な結果を有する可能性がある。表面粗度レベルは、異なる光学的用途で適切に機能することができるように金属膜に許容可能な形態を形成する。表面形態を適切に制御しないことに伴う欠点は、不適切な表面形態に伴う問題を克服するのに高反射率の高額金属が大量に必要であることが多いために、多くの場合に費用が高くなることである。薄膜モデリング技術を用いる異なるレベルの形態又は表面粗度の効果を分析した。これらの技術は、薄膜技術の分野で受け入れられており、本物の薄膜又はコーティングシステムを正確に説明していることが判明しており、従って、異なる変化がコーティングに及ぼす影響を予想するのに用いることができる。これは、影響を示すのに必要な多数のサンプルを製造又は製作するのに費用又は時間を消費する可能性があるために有利である。この場合、「Software Spectra、Inc.」から供給される「TFCalc」と呼ばれる市販の薄膜プログラムを用いて計算が行われる。
本明細書で用いる場合、粗度は、平均ピーク−谷間距離に関して定義される。図33a及び図33bは、2つの異なる粗度シナリオを示している。図33aでは、大きなクリスタライト3302aが示されている。図33bでは、小さなクリスタライト3302bが示されている。これらの場合の両方で、ピーク−谷間距離3301a、3301bは、同じであるように示されている。更に、両方の例は、同じ空隙対バルク比を有する。谷間及びピークは、同じ高さでない可能性があることを理解すべきである。従って、平均ピーク−谷間測定では、更に代表的な定量的値が得られる。
層が薄い場合には、均一な屈折率を有する単一の同質層で近似することができる。混合層の屈折率を近似するにはいくつかの方法がある。これらは、有効媒体近似(EMA)と呼ばれる。異なるEMAは、各々、その強み及び弱みがある。これらの例では、BruggemanのEMA法を用いた。層の厚みが大きくなると、粗度は、単一の固定屈折率を用いれば確実に近似されない。これらの場合には、粗度は、異なる比の空隙及びバルク材料のいくつかのスライスとして近似し、漸変インデックス近似を形成することができる。
本明細書では、反射率に関する表面粗度の光学的影響の代表的な例を生成するために、いくつかの金属をモデル化する。表6、表7、及び表8は、それぞれ、Ag、Cr、及びRhに対して、表面の反射率に関する粗度厚みの影響を示している。層の厚みは、ナノメートルであり、「Cap Y」値は、コーティング表面からの反射率を表している。反射率は、これらの金属の各々に対して粗度の厚みが増大する時に低下する。用途に応じて、許容可能な粗度の量は変動することになる。粗度は、20nm平均ピーク−谷間未満、好ましくは15nm未満、より好ましくは10nm未満、より好ましくは5nm未満、最も好ましくは2.5nm未満とすべきである。これらの好ましい範囲は、上述のように、用途に依存する。例えば、一実施形態では、フラッシュ層、カバー層、障壁層、又は接着層(すなわち、機能層)の厚みは、その下の表面の粗さの程度に対応する必要はないと考えられる。その下の表面の粗度により必要とされる機能層の厚みにより、得られるスタックの光学特性の変化、高価格又は他の有害作用のような望ましくない影響が生じる可能性がある。機能層を被覆する前に表面を滑らかにするための手段を以下に説明する。実施形態によっては、表面粗度が増大すると、表面積を実質的に大きくなりシール材料への接触が良好になることのような利点がある可能性があることを理解すべきである。
また、表6、表7、及び表8は、「理論最大値の%」と表示された値も含む。この測定基準は、粗い表面を備えるコーティングの反射率が理想的な完全に滑らかな表面の反射率にどれほどぴったり一致するかを定める。理論最大値の%が100%であるコーティングは、その材料で理論的に達成可能な最大反射率を有することになる。理論最大値の%が85%であれば、達成される反射率は、理想的な滑らかなコーティングの僅か85%、又は粗度がゼロのコーティングの反射率の0.85倍とされることになる。
金属又は合金コーティングの反射率は、比較的滑らかなものであってもコーティングの多くの属性に依存する。コーティングの密度、内部空隙の存在又は不在、応力レベル、その他は、全て、反射率がある理想的な最大値にどれほど近づくかに影響を及ぼす。本明細書で定めた理論的最大反射率は、理想的コーティングのこの理想的な反射率に関するものではなく、滑らかな現実世界のコーティングの反射率値に関するものである。実際には、理論最大値は、光学的分析及び薄膜モデル化の組合せから得られる。可変角度分光偏光解析のような光学技術を用いて、表面粗度を有する現実世界のコーティングを分析することにより、このような屈折率対波長及び表面粗度を得ることができる。次に、屈折率対波長は、「TFCalc」又は「Essential Macleod」のような薄膜モデル化プログラムに入力することができ、反射率を計算することができる。測定屈折率データを用いたこの計算反射率は、こうしてその特定の膜又はコーティングからの「理論的最大」反射率値である。
好ましくは、コーティングの反射率は、理論最大値の85%より大きく、より好ましくは理論最大値の90%より大きく、最も好ましくは理論最大値の95%よりも大きい。
一部の用途では、ガラスを通して見る時に反射が金属層から離れている場合、第2の表面反射率が高いことが望ましい。この場合、表面粗度に加えて、埋設空隙に関心が寄せられる。空隙の量(バルクに対する%)は、変化する可能性があり、空隙層の厚みも変化する可能性がある。表面粗度に対する上述の原則は、ここにも当て嵌まる。
金属層が低シート抵抗を含む多くの場合に、表面粗度は、特に関心が寄せられる。金属又は他の電気的に導電体は、バルク抵抗性として公知の固有の特性を有する。コーティングのシート抵抗は、バルク抵抗数をコーティングの厚みで割ることによって判断される。原則的に、あらゆるシート抵抗値は、コーティングが十分に厚い限り、あらゆる導電体から得ることができる。低シート抵抗を達成する際の課題又は制限は、シート抵抗又は導電性に加えて他の属性が必要である場合に生じる。
コーティングの厚みが増大すると、典型的には、表面粗度も増大し、それによって上述のようなミラー面反射率が減少することになる。非常に厚いコーティングは、反射率レベルが、完全に滑らかな表面より有意に低いことが多い。コーティングが生成することになる粗度の量は、いくつかの因子の関数である。材料自体の特性が、主要な推進力であるが、境界内で、堆積処理パラメータ(それと共に堆積処理が用いられる)は、コーティングの表面特性を修正することができる。
他の考慮事項により、所定の用途に最良の表面粗度を備える材料を常に選択することができるわけではない。他の因子も役割を果たしている。例えば、結合及び費用は、コーティングのスタックに入れる材料の選択に影響を及ぼす決定的な問題である。多くの場合、要件の全てを満たすために単一の材料を選択することは不可能である。従って、多層コーティングが用いられる。ロジウム、ルテニウム、イリジウムのようなある一定のプラチナ族金属は、反射率が高いが、非常に高価である。従って、低シート抵抗のコーティング全体をこれらの材料で生成するには、法外な費用がかかることになる。ガラス又は他の材料に極度の結合性が必要である可能性がある場合には、これらの材料は、他の材料より結合強度が弱い可能性があることが公知である。銀ベースのコーティングは、アノードとしては安定性が不十分である可能性があり、コーティングスタックによっては、結合性の観点からも問題がある可能性がある。クロムのような金属は、一部の他の金属と比較すると比較的低価格であり、非常に良好な結合性を有することは公知である。従って、クロムは、接着層として機能することができ、望ましい電気的特性を得るのに十分な厚みまで増成することができる。
残念なことには、クロムは、非常に反応性が高く、それによって表面粗度値が比較的大きいという固有の性質が導かれる。高反応性は、例えば、「マグネトロンスパッタ真空蒸着(MSVD)」を用いてコーティングを堆積させる時に、クロム原子は最初に堆積したところに付着する傾向があるという点で重要である。結合形成速度は、非常に速く、それによって原子が表面にそって拡散し、エネルギが低い部位を見つける機能が制限される。典型的には、コーティング上の低エネルギの安定部位は、表面粗度を少なくするのに役立つ部位である。更に、低エネルギ状態に行かないこの傾向は、コーティングのバルク抵抗を悪化させる原因ともなる。従って、ターゲットシート抵抗を達成するために厚い層が必要とされ、表面粗度は、更に悪化する傾向がある。低シート抵抗及び高反射率という目的を同時に達成するのは、これらの競合効果により困難である。
低反射率金属の反射率は、高反射率金属の薄い層をその上に置くことによって増大させることができることは公知である。例えば、ロジウム又はルテニウムのような上述の金属を用いることができる。これらの金属が所定の反射率レベルを達成するのに必要な厚みは、その下にあるクロム層の表面粗度の直接の結果である。導電性層として用いることができる他の金属には、以下に限定されるものではないが、アルミニウム、カドミウム、クロム、コバルト、銅、金、イリジウム、鉄、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、オスミウム、パラジウム、プラチナ、ロジウム、ルテニウム、銀、錫タングステン、及び亜鉛が含まれる。これらの金属と互いとの又は他の金属又は各金属との合金は可能である。所定の用途でのこれらの材料の適合性は、要件の完全なリストに依存することになる。例えば、ルテニウムは、用途の1つでは高価な金属である可能性があるが、別の用途では、ロジウムのような別の金属に比較して低価格である可能性があり、従って、本発明の精神に含むことができる。他の非制限的実施形態では、所定の金属又は合金は、用途の他の構成要素の全てとは適合性がないことがある。この場合、感受性のある金属は、組み込むか、又はそうでなければ相互作用が限定されるところに構成要素から隔離することができる。クロムの上部に被覆された層は、通常は、その下にある層の粗度にパターン化することになる。従って、高反射率金属の薄い層は、その層又はその下の各層のために理想的反射率も持たないことになる。殆どの場合、好ましい実施形態は、観測者に向って高反射率金属を有するものである。更に、上に挙げた高導電性金属の多くは、反射率が高い。これらの金属は、適切な化学的、環境的又は物理的特性を有するように他の金属と合金する必要がある可能性がある。次に、金属又は合金は、許容不能な色又は色相を有することがある。全体的な反射率強度は、望ましい用途に適切とすることができるが、反射色が要件を満たしていない場合には、この金属又は合金は不適切である。この場合、上の説明と同様に、金属又は合金は、固有の反射率は低いが更に好ましい反射色を有する層の下に組み込むことができる。
クロム−ルテニウム2層コーティングスタックに対する反射率とシート抵抗の間の妥協点を評価することができるように基準サンプルを調製した。これらのサンプルでは、クロムは、ターゲットシート抵抗値を得るために付加した。サンプルは、次に、異なる厚みのルテニウムでオーバーコートした。次の処理条件を用いた。
コーティングの全ては、3.0mトルで処理した。
Cr@4.0Kw@(130)=ほぼ1000オングストローム
Cr@4.0Kw@(130)X9=.7オーム平方
Cr@4.0Kw@(130)X3=1.5オーム平方
Cr@4.0Kw@(87)X1=3オーム平方
Cr@4.0Kw@(170)X1=6オーム平方
Ru@1.7Kw@(130)=400オングストローム
Ru@.85Kw@(130)=200オングストローム
Ru@.43Kw@(130)=100オングストローム
Ru@.43Kw@(260)=50オングストローム
Ru@.43Kw@(520)=25オングストローム
クロムサンプルは、全て、4kwで被覆した。ライン速度(括弧内は任意単位)及びパス数(例えば、X9)は、シート抵抗ターゲットに適合させるためにコーティングの厚みを調節するように変化させた。ルテニウム層は、ターゲット厚みレベルを達成するようにライン速度及び電力を変化させて生成した。マトリックスの結果は、表12に一覧にしている。反射率は、一般的に、厚みが増大し、シート抵抗が減少すると共に低下する。3オーム平方をターゲットにして調製されたいくつかのサンプルは、この傾向に適合しない。これは、他のクロムコーティングと異なるライン速度で作られたためである。ライン速度が減少すると、基体は、遅い速度で移動する。線型工程では、これは、初期の核形成層が、スパッタ高角度堆積材料で主に形成されることを意味している。以下の説明に示すように、高角度堆積により、材料特性が劣ることになる。この高角度堆積を排除するために遮蔽を用いることが多い。この試験の3オーム平方クロムの場合には、高角度がどのようにコーティングの光学特性を低下させる可能性があるかの優れた例である。
表12から見られるように、クロムコーティング単独では、6オーム平方の場合でも比較的反射率値が低い。反射率は、このサンプルに対しては僅か約61%であった。他の手段又は処理条件で生成されたクロムは、65%を超える値を達成することができることが必要である。従って、この適度なシート抵抗値でもクロム反射率は阻害された。
3オーム平方コーティングが望ましい場合には、適度な反射率値を達成するためにでもクロムの上部に100及び200オングストロームのルテニウムが必要である。理想的には、ルテニウムコーティングは、72%を超える反射率を達成することができる必要である。6オーム平方クロムの上の400オングストロームでも、理論的最適条件に2%及ばない。低オームサンプルは、理論的に達成可能な反射率値に近づこうともしない。従って、低シート抵抗及び高反射率の両方が望ましい場合は、基準クロム−ルテニウム2層は、要件を満たさない。他の手段を用いてこの問題を解決すべきである。
堆積処理パラメータは、コーティングを形成する間に表面粗度を最小にするように調節することができる。金属の場合には、以下に詳細に説明するように工程を低圧力で好ましくはスパッタリングガスとしてネオン又はアルゴン−ネオン混合物を用いて行うことによって表面粗度を低減して反射率を増大させることができる。これらのパラメータは、堆積処理で適切に運動量及びエネルギを移行させることに役立ち、結果として表面の粗度が減少し、バルク抵抗性が低くなる。
表13は、処理パラメータを調節すると、表面粗度、反射率、及び電気的特性がどのように変化するかを示している。3mTの場合は、基準として含まれている。コーティングの厚みは、約600オングストロームである。このレベルではコーティングが殆ど不透明であり、シート抵抗が比較的低いために、この厚みは重要である。ここに見られるように、圧力を低下させると、粗度が約17%減少し、反射率のほぼ2%増大が達成される。圧力を低下させ、アルゴン及びネオンの50:50混合物でスパッタリングを行うと更に改良される。粗度は、基準の場合より約20%低く、反射率は約2.7%高い。最後の場合では、更に大量のネオンを用い、ほぼ70%のスパッタリングガスがネオンである。反射率は、基準の場合より約3.5%高く、粗度は、約24%減少する。厚み及び粗度値は、可変角度分光偏光解析を用いて判断する。
結果は、圧力を低下させ、スパッタリングガスのネオン含量を増大させることによって更に改良することができる。更に、基体温度を上昇させても、コーティングを滑らかにすることに役立つ。基体温度が高いと、コーティング原子の表面移動度が大きくなり、表面が滑らかになる。
また、表13は、クロムコーティングに対するバルク抵抗値も含む。クロムに対する理論的最小バルク抵抗値は、約13マイクロオームcmである。アルゴン中で典型的な圧力である3mTで作られた基準の場合のバルク抵抗値は、理論的バルク抵抗の6倍よりも大きい。コーティング特性を改善することにより、バルク抵抗値を理論的最小の5倍より小さくすることができる。好ましくは、バルク抵抗は、理論的最小の5倍より小さく、より好ましくは、理論的最小の4倍より小さく、より好ましくは、理論的最小の3倍より小さく、最も好ましくは、理論的最小の2倍よりも小さい。
システム中の酸素(又は水)の存在は、表面粗度の観点から見ると特に有害である可能性がある。クロムは、酸素と非常に反応性があり、直ちに反応する傾向がある。それによってコーティングの付加的な粗度になる。従って、酸素が少ないコーティングが推奨される。表14は、粗度に及ぼす酸素の影響を示している。表14の酸素レベルは、スパッタリングガス中のパーセントを意味する。圧力はmTで表し、厚みはオングストロームで表している。コーティング中に許容可能な酸素の量は、5原子パーセント未満、好ましくは2原子パーセント未満、理想的には1原子パーセント未満である。
許容可能な粗度の量は、用途に依存する。高反射率値が望ましい場合には、粗度も小さいことが望ましい。反射率が厳密に必要というわけでなければ、粗度が大きくても許容可能である可能性がある。一般的に、粗度は、約200オングストローム未満、好ましくは100オングストローム未満、より好ましくは50オングストローム未満、より好ましくは25オングストローム未満、最も好ましくは15オングストローム未満とすべきである。粗度とは、本明細書で用いる場合、偏光解析又は原子間力顕微ミラーを用いて判断される平均のピーク−谷間の距離を意味する。
他の手段を単独で用いるか、又は互いに又は上述の方法と共に用いて表面粗度を最小にすることができる。例えば、カソードを遮蔽してグレージング(高)角度堆積を最小にすることができる。表面を滑らかにする他の方法には、イオンアシストスパッタリング又はイオンアシスト蒸着、プラズマアシストスパッタリング、及び他の手段を用いて原子の表面移動度を増大させることが含まれる。カソードの種類は、「ツイン・マグズ」、不均衡マグネトロン、rf重畳直流電力、マイクロ波アシストスパッタリング、高出力パルス堆積、ACスパッタリング、又は他のそのような手段を用いることなどで滑らかなコーティングを容易にするように選択することができる。
上の例では導電性層としてクロムを用いたが、本発明の精神の範囲内で、本明細書及び本明細書に組み入れた参照文献に説明されているような他の金属、合金、又は多層堆積材料を用いることもできる。他の材料は、滑らかな表面を達成するために他の処理条件を必要とする可能性がある。例えば、ITOは、金属に好ましい条件下で常に滑らかな表面を有するわけではない。ITOの場合には、表面形態は、いくつかの工程変数により修正される。ITOの表面特性を制御する場合には、金属の場合より更に困難である。ITOは、金属のように常に導電性というわけではなく、金属の場合は滑らかなコーティングとすることができる一部の処理設定値は、ITOでは高導電性コーティングにならない可能性がある。従って、材料の他の特性の観点から形態を制御することは、かなり困難である。一般的に、ガラス又は他のガラス質の基体の高温コーティングでは、本明細書で上述のように高圧及び比較的高酸素設定で比較的滑らかなコーティングを得ることができる。滑らかなコーティングに対する処理パラメータの変動値は、半透過型コーティング用途で教示されたように、TiO2、又はTiO2及びITO等の多層のような他の材料にも適用することができる。
上述のように、粗度は、一般的に、コーティングの厚みと共に増大する。多くの場合、上述の処理設定値は、許容可能な粗度レベルのコーティングとするには不十分である。これは、極度に低シート抵抗値を必要とする場合である。このシナリオでは、同時に低シート抵抗値を有する比較的低表面粗度のコーティングを達成するためには、代わりの手段が必要である。
その全開示内容が引用により本明細書に組み込まれた本出願人に譲渡された米国特許出願公開第2006/0056003号では、コーティング基体上の局所領域のコーティングを薄くするための手段としてイオンビームが導入されている。本明細書に詳細に説明しているように、イオンビームは、粗いコーティング(図37に示すようなもの)を滑らか(図33a及び図33bに示すようなもの)にするのに用いることができる。イオンビームは、単独で用いることができ、コーティングの粗度を低減し、従って、反射率を増大させると本明細書で教示される他の方法と組み合わせて用いることができる。イオンビーム供給源の設計及び機能は変動する。この考察に関しては、本明細書に説明するエネルギ範囲でイオン束を送出することができるあらゆる設計が適切である。
イオンビームは、正又は負のエネルギのイオンの比較的平行な群である。イオンのエネルギは、イオンビームの作動電位の関数である。電流、すなわち、イオン束は、作動電位及びビームを通って供給されるガスの量及びチャンバの背景圧力の関数である。堆積材料をエッチング、粉砕除去、及び/又は滑らかにするために、イオンには十分なエネルギが望ましい。関連現象の例は、ビリヤードのそれである。入射イオンを突き玉、コーティングをゲーム開始時の玉のラックと考える。突き玉のラックが非常に低エネルギで打たれると、ラックはばらばらにならない。逆に、突き玉が高エネルギで打たれると、ラックは、かなり激しくばらばらになる可能性がある。
図34は、様々な材料に対してアルゴンイオンエネルギの関数としてのスパッタリング発生量を示している。スパッタリングが起こらないか最小限起こる閾値エネルギが存在する。エネルギが増大すると、スパッタリング発生量は増大する。更に、イオン化原子も、スパッタリング速度に影響を及ぼす可能性がある。最大スパッタリング発生量になるスパッタリングイオンの好ましい質量は、スパッタリングイオンのエネルギ及びスパッタリングする原子の質量に応じて変化することになる。図35は、500eVイオンエネルギでのスパッタリングイオン及びスパッタリングされた原子の質量の関数としてスパッタリング発生量を示している。図35に示すデータは、「物質内のイオンの停止と範囲(SRIM)」と呼ばれるコンピュータシミュレーションプログラムを用いて生成した。図示のように、所定のターゲット原子質量に対して許容可能なスパッタリング発生量を生じることになる光学スパッタガスイオン質量の範囲が存在する。一般的に、ビームエネルギが増大すると、スパッタ発生量を最大にするイオンの最適な質量が増大する。好ましいイオンは、ある程度スパッタリング原子の質量に依存することになる。最適なエネルギ及び運動量のためには、原子の移動が、比較的比較可能な質量である必要がある。図34は、閾値エネルギが、スパッタリングされた材料に依存することを示している。一部の材料は、遊離するのに他の材料よりも多くのエネルギを必要とする。更に、図34のグラフも、比較的高エネルギのイオンでは、スパッタリング発生量は、水平状態に達する傾向があることを示している。これらの比較的高いエネルギでは、処理は、イオンスパッタリングではなくイオン注入の領域内に移動し始める。効率的にスパッタリング又はエッチングをするために、イオンエネルギは、100電子ボルトを超え、好ましくは500電子ボルトを超え、最も好ましくは1000電子ボルトを超える必要がある。
平滑化効果は、図36及び図37を参照して示している。図36では、イオンは、滑らかな表面に衝突している。イオンが表面に当たると、エネルギは、表面に平行及び垂直の両方に伝達する。表面に平行に伝達するエネルギの一部は、表面に垂直で表面から離れる成分になる可能性があり、これが、放出原子になる。図37では、同じイオンが粗い表面に衝突する。理解されるように、イオンはコーティングから放出される傾向が強い。表面に垂直に向けたエネルギの大部分により、電子が放出されることになる可能性がある。すなわち、表面積が大きく、原子を放出する方向が多い。イオンミリング工程が継続すると、コーティングは、益々滑らかになる。これら及び他の例では、イオンビームは、単一の原子から成る。実際には、単一のイオンの代わりにイオン/原子のクラスターを用いることができる。この状況では、クラスターを生成する公知の方法を用いることもできる。
同様に、角度を付けて表面に衝突するイオンビームは、スパッタリング効率及び平滑化効果が実質的に高い可能性がある。この場合、角度を付けたイオンビームは、コーティング表面に横方向に材料を放出する確率が高いことになる。
以下に説明するように、特定の半透過型コーティングの反射率、透過率、吸収、及びシート抵抗特性は、層の粗度により制限される。関連コーティングの1つは、本明細書では「オプション4」と呼ばれるガラス/ITO/Si/Ruである。ITOは、最適には3/4又は5/4波コーティング、それぞれ2100又は3600オングストロームである。Si層は、約220オングストロームであり、ルテニウム層は、約70オングストロームである。更に、以下に説明するように、このスタックの異なる変形も可能である。このスタックの反射率及び透過率は、表面及び界面粗度に非常に依存する。誘電性半導体層、透明の導電酸化物、及び金属から成るオプション4のような多層スタックを考える場合には、表面の粗度と同様に界面の粗度も考える必要がある。
表15は、ITO(下部層の1つをオプション4のスタックに用いている)の表面をイオンミリングする効果を示している。データは、偏光解析を用いてコーティングの特性を示すことによって判断した。更に、表15は、ITOコーティングの初期特性も示している。3/4及び5/4波コーティングの初期粗度は、それぞれ7.4及び11.5nmである。これらの値は、比較的高い。サンプルは、アルゴンを20sccmで供給し、チャンバ内の作動圧力は2.5mTにし、270mA電流及び3000ボルトで実行される単一のビーム(38cm長さのビーム)でイオンミリングした。イオンビームは、閉鎖ドリフトホール効果アノード層型設計である。2B(30ipmで2ビーム当量)の場合に対するライン速度は15ipmであり、4B(30ipmで4ビーム当量)に対するライン速度は7.5ipmであった。ビームは、被覆ガラスの表面に垂直に向けた。イオンビームは、3/4波ITOに対しては30ipmで約17nm/ビーム当量及び30ipmで約11.1nm/ビーム当量を除去した。表面粗度は、両方の場合で劇的に低下し、3/4波ITOはほぼ完全に滑らかになった。5/4波ITOは、更に粗い初期状態から開始したためこれほど滑らかにならなかったが、これはライン速度を遅くすることが必要なこともあり、最小粗度値を達成するために付加的なビームを必要とすることもある。
重要な証拠は、イオンミリング工程で反射率が実質的に増大することである。表16aでは、表15に説明するITOコーティングは、ほぼ22nmのSi及び7nmのRuでオーバーコートされる。これらのコーティングは高反射率であるために、透過率は、イオンミリングで一般的に減少する。更に重要なことには、イオンミリングしたITOサンプルの吸収は、感知することができるほど低い。それによって同じ反射率レベルのコーティングを通る関連する光源からの光出力が高くなることになる。これらのコーティング全てを同じ反射率レベルで正規化すると、差は遥かに大きくなる。非イオンミリング部分に対し同じ反射率レベルを達成するために、ルテニウム層の厚みを実質的に増大させる。これは、次に、透過率を更に低減し、吸収を増大させるが、これは、用途によっては望ましくない。
表16aに一覧にしたようなこれらの被覆した「lite」は、表16bに一覧にしたような電気光学ミラー要素に組み入れられ、実際のEC要素での光学的諸特性を評価した。いくつかの2”x5”セルを作り、透過率及び反射率(ミラー面及び非ミラー面)を測定した。組み立てた要素の反射率の増大は、単体のデータに見られる結果と一致する。伝達される色は、反射色が全く中性であっても非常に琥珀色に偏っている。これは、この設計が、構成される特異的な材料のために、青色光より赤色光を伝達することを示唆する。これは、例えば、赤色ディスプレイをミラー要素の後部に位置決めする時に特に有利とすることができる。
また、表16bは、サンプル要素に対するミラー面除外反射率(Spec Ex)データを示している。イオンミリングは、表面を滑らかにし、それによって実質的に散乱光が減少する。得られる画像は、散乱光の量が少ないために遥かに明瞭で明快である。
多くの自動車会社は、反射率は外部ミラー用途では55%を超える必要があることを指示する規格を有する。非イオンミリングサンプルは、ITOの初期量の粗度でこの規格を満たさなかった。イオンミリングサンプルは、5/4波ITO部分でもこの規格を満たす。ミラー要素のスイッチング速度、特に暗色化速度は、コーティングのシート抵抗に依存する。5/4波ITO又はそれより厚いものを用いることを可能にすることにより、イオンビームミリングは、スイッチング時間が速くなり、同時に、反射率の要件を満たすことができるようになる。更に、3/4波要素の一部の反射率値は、最小要件を有意に超える。これらのコーティングは、このように変化させると全体的な設計の要件に利益が得られる場合には、ルテニウム又は上部層として用いられる他の高反射率金属の厚みを低減することによって高透過率値を有するように調節することができる。イオンビーム平滑化方法を用いなければ、反射率及び透過率オプションの有用な範囲は、限定されることになる。
別の用途では、非半透過型用途でITOを滑らかにするためにイオンミリングの利用が行われた。この場合、コーティングは、ガラス/ITO/Cr/Ruである。クロム及びルテニウムは、エポキシシールの内部に遮蔽され、ITOは、電極から内部のEC要素まで電流を伝達するのに用いられる。ITOは、ある程度の粗度を有するが、これは、イオンビームで処理すると減少する。図38は、固定ビーム電流で逆数ライン速度と共に減少した粗度を示している。別の例では、ガラスが被覆装置を通るライン速度は、30インチ/分(ipm)であった。単一のイオンビームを用い、電流は、イオンミリング速度を変化させるように調節した。図39は、ビーム電流に対する反射率の増大を示している。反射率の0.5%増大は、この控えめなイオンミリング条件でも達成される。これらの例では、ITOコーティングは、可視領域のITOをフライス削りして光学特性の改善を達成しながら、初期の粗度を維持し、ITOがシール領域のエポキシに結合するのを潜在的に容易に改善した。
イオンミリングを用いる別の用途では、いわゆるクロムリング型コーティングの色及び反射率を調査した。この用途では、多層金属コーティングが、ガラス上にあるITOコーティングの上部に付加される。ITO被覆ガラスは、要素の周りにリングをイオンエッチングされ、この部位のITOコーティングを薄くしてクロムリングスタックの色及び反射率を改善し、同時に、その部分の中心の厚いITOのシート抵抗を下げることを可能にした。図40は、ガラスを通して見た時の異なる条件の反射率を示している。イオンミリングをしない場合の反射率は、太い線で示される。更に、いくつかの異なるライン速度の反射率も示している。速度が減少すると、ビーム下の滞留時間が増大し、粗度が減少する。これによって反射率が増大する。反射率が横ばいに見えても、これらの試験中には、結果に影響を及ぼす可能性がある多少のアーク発生があった。重要な結果は、アーク発生があっても、イオンミリングをすると、反射率が増大するということである。図38は、アーク発生がない条件下でライン速度に対するこれらの試験でのITO粗度の変化を示している。
同じ被覆装置での別の組の試験では、イオンミリングしたクロムリングの色を調べた。ライン速度は、除去するITOの量を変化させるように調節した。ITOは1/2波として開始し、目標は、厚みを1/2波のほぼ80%まで、言い換えると、ほぼ145nmからほぼ115nmまで低減することであった。図41は、ライン速度を調節したクロムリングの反射したb*を示している。反射b*は、引用により本明細書に組み入れた優先権文書に説明されているように、ITOの厚みと直接相関する。1/2波ITOコーティングに対するb*は約16である。ライン速度が低下すると、エッチング材料の量が減少する。理想的に中心可視領域に一致する実施形態の少なくとも1つでは、b*は、約2.5であることが望ましい。従って、ライン速度は、約12.5ipmとすべきである。これより速いライン速度が必要である場合には、これよりも多くのイオンビームを用いることができる。
シート抵抗値を低減することが望ましい別の例では、反射率及び材料の使用法に及ぼされるイオンミリングの影響を調査した。上述のように、コーティングの粗度は、厚みに応じて増大し、反射率は、粗度に応じて減少する。この例では、層構造がガラス/クロム/ルテニウムである1.5オーム/平方のコーティングが望ましいものであった。クロムの厚みは、シート抵抗への寄与の大部分を生じるようにほぼ2500オングストロームに設定した。ルテニウムは、最初に400オングストロームに設定した。表面が完全に滑らかな状況では、最大反射率は、180〜200オングストロームほどの少量のルテニウムで達成されることになる。400オングストロームのレベルを用い、ルテニウムがクロムの粗い表面を幾分補償するのに確実に十分な厚みになるようにした。付加的なルテニウムは、反射率を増大させるが、費用も増大する。
図42は、ルテニウム層を付加する前のクロム層のイオンビーム処理に対する反射率対ライン速度の逆数を示している。ビーム電流は、約250mAに設定した。ライン速度約4”/分では、コーティングは、その最大反射率であるほぼ70.5%を達成する。ライン速度を更に低減しても、反射率はこれ以上増大しなかった。ライン速度を速くすることが望ましい場合には、付加的なビームを用いることができる。
図43は、イオンビームの平滑化効果ために、コーティングにどれほど低減したルテニウムの量を用いることができるかを示している。ライン速度は、約2.1ipmであり、ビーム電流は、図42の結果と同等のものであった。160オングストローム程の少なさのルテニウムを用いて最大反射率を得ることができる。それによって余分なルテニウムを用いて初期層の粗度を保証した基準の場合と比較して実質的な費用低減になる。更に、比較的高反射率のクロム及びルテニウムの1.5オーム/平方コーティングは、イオンビーム平滑化を行わなければ実際的ともいえない可能性がある。
典型的には、滑らかなコーティングにするための特別な努力を行わずに生成したコーティングの粗度は、コーティングの合計厚みのほぼ10と20%との間を変動することになる。表17は、様々なシート抵抗値を達成するのに必要なクロム/ルテニウムスタックの厚みを示している。クロム層のバルク抵抗を変動させ、バルク抵抗が変化する時に異なるシート抵抗値を達成するためにクロム層の厚みがどのように変動するかを明らかにしている。これは、クロムバルク抵抗特性の変動の例として用いることができ、クロムの代わりに異なるか変動するバルク抵抗値を有する材料を用いると何が起こるかを明らかにする手段と見なすことができる。
粗度の範囲は、表17に10及び20%バルク厚みとして計算する。ルテニウムは、理想的用途でこの材料に最大反射率を達成するのに必要な厚みをごく僅かに超える200オングストロームに設定する。クロム層が滑らかであるかイオンビームで滑らかにされている場合には、この厚みは、最適な反射率の場合を示している。表17は、ルテニウムの厚みを合計厚みに比較した計算の結果を示している。粗度の寄与は、10及び20%の場合の平均であると考えられる。スタックがルテニウムであるパーセントは、スタックのターゲットシート抵抗及びクロム又は基体のバルク抵抗に応じて変動する。シート抵抗が6オーム/平方以上である場合には、ルテニウム又は他の高反射率金属は合計厚みの50%未満であることが望ましい。スタックのシート抵抗がほぼ2オーム/平方である場合には、ルテニウム厚みは、合計厚みの約25%未満とすべきである。更に、高反射率層の厚みパーセントは、この金属のバルク反射率及び反射率ターゲットに応じても変動することになる。合計厚みの適切な高反射率パーセントは、スタックの望ましい反射率、スタックの望ましいシート抵抗、及びスタックを構成するのに用いられる異なる材料のバルク抵抗の関数である。高反射率材料のパーセントは、合計厚みの50%未満、好ましくは25%未満、より好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは7.5%未満である必要がある。この例では、クロム及びルテニウムは、本発明の一実施形態の利点を示すのに用いられる。クロム層は、シート抵抗の大部分を生じさせる手段として他の金属で置換することができる。いわゆる高反射率金属は、シート抵抗の大部分に寄与する層に比較して高反射率の金属であると定められる。この例では、導電層に比較して高反射率である最上部層の役割を説明する。他の実施形態では、導電層又は各層は、許容不能な色又は色相を有する可能性がある。反射率強度は、許容可能にすることができるが、反射色は、好ましくないと考えられる可能性がある。この実施形態では、最上部の高反射率層は、実際、反射率を増大させず、許容可能な色を生じるように機能することができる。一例では、導電層は、高度に有色化することができるが、中性反射色が好ましい。この場合、いわゆる高反射率層は、色を更に中性にするように働くことになる。
別の実施形態では、導電層は、中性反射色を有することができるが、高度に有色化された反射率が好ましい。この場合には、上部の高反射率金属が非中性の外観を生じるように選択することができる。更に別の実施形態では、導電層を覆って多層スタックを付加し、スタックが、導電層の上に載せた多層スタックの調節を通じて色を調節する柔軟性を有しながら低シート抵抗を達成することを可能にすることができる。この例では、多層スタックは、金属、誘電体層、及び/又は半導体層で構成することができる。スタック、厚み、導電層に対する方向、及び隣接する媒体を含む材料の選択は、任意の用途の設計基準により決定されることになる。
様々な用途でシート抵抗が低下すると、厚みを増大させる必要があり、従って、表面粗度が増大して反射率が減少する。次に、コーティングの反射率は、理論最大値に対して低い値まで低下することになる。ターゲットにされるシート抵抗値が低くなると、達成される理論的最大反射率値のパーセントが低くなる。シート抵抗がほぼ6オーム/平方以下のコーティングに対しては、本明細書に説明した技術により、理論最大値の90%を超え、好ましくは理論最大値の約95%を超える反射率を達成することができるようになる。シート抵抗がほぼ3オーム/平方又はそれ未満のコーティングに対しては、本明細書に説明する技術により、理論最大値の80%を超え、好ましくは理論最大値の約85%を超え、より好ましくは理論最大値の約90%を超え、最も好ましくは理論最大値の約95%を超える反射率を達成することができるようになる。シート抵抗がほぼ1.5オーム/平方又はそれ未満のコーティングに対しては、本明細書に説明する技術により、理論最大値の75%を超え、好ましくは理論最大値の約85%を超え、より好ましくは理論最大値の約90%を超え、最も好ましくは理論最大値の約95%を超える反射率を達成することができるようになる。シート抵抗がほぼ0.5オーム/平方又はそれ未満のコーティングに対しては、本明細書に説明する技術により、理論最大値の70%を超え、好ましくは理論最大値の約80%を超え、より好ましくは理論最大値の約90%を超え、最も好ましくは理論最大値の約95%を超える反射率を達成することができるようになる。
本出願人に譲渡された米国特許出願公開第2006/0056003号は、本明細書においてその全内容が引用により組み込まれており、この特許では、様々な金属のスタックが、「クロム・リング」ミラー要素に関して説明されている。ITO上に薄いクロム接着層が堆積され、クロム層上に高い固有反射率を有する金属の層が堆積される。様々な高反射率金属が説明されている。コーティングをガラス側から見ると概観に寄与しないが、可視光及びUV光の透過率を最小にするように付加されるクロムの第2の層が説明されている。可視光の減少は、シール材料を隠すためであり、UV光は、日光に露出される間にシール材料を保護するために低減される。クロムは、この例では、UV及び/又は可視であるかに関係なく光の透過率を低減する低価格の手段として意図されている。シール及び高反射率金属に良好に結合すれば、他の低価格金属も同じ機能を生じることができる。
また、高反射率金属の厚みを単純に増大させて光透過率を低減することができるが、光反射率金属は、比較的高価であり、これらの材料を単独で使用すると、コーティングの費用が高くなることになる。
ITO層は、あらゆる透明の導電酸化物又は他の透明の電極とすることができる。透明の導電酸化物又は透明電極は、単層又は多層で構成することができる。多層の層は、反射色又は外観を調節するように選択し、「リング」が、適切な光学特性を有することができる。このような多層の1つは、ガラス基体と透明の導電酸化物の間に配置される色抑制層を用いることを含むことができる。この層を用いると、ITO層厚みが調節されるために、リングに対する色のオプションが増加することになる。
接着層は、クロム、Ni、NiCrの様々な組成物、Ti、Si、又はシリコン合金、又は他の適切な結合促進層とすることができる。「高反射率金属」は、クロムより高いバルク反射率値を有する金属及び合金から選択される。例の金属には、アルミニウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、プラチナ、カドミウム、銅、コバルト、銀、金、及びこれらの材料の合金が含まれる。合金に加えて、これらの金属同士又は他の金属との混合物を用いることができる。更に、高反射率金属の概略図に示す単層の代わりに多層を用いることができる。同様に、UV遮断層は、透過率を適切に低減することになる単一の材料、合金、多層、又は他の組合せで構成することができる。
また、材料、層、又はコーティングの接着も、本明細書に説明するイオンビーム処理を用いることによって改善することができる。例えば、ITO表面のイオンビーム処理は、アルゴン、次にアルゴン及び酸素の混合物を用いて行った。これらの試験は、非イオンミリング表面に比較した。サンプルは、エポキシ材料でガラスの試験片に取り付け、シール空洞を形成した。ガラスの上部左側に穴を開け、空洞を加圧して空洞を破壊するのに必要な圧力値を判断する。破壊される様式には、エポキシ内での凝集破壊、エポキシのコーティングへの接着、ガラスの割れを含むことができ、又はコーティングが基体から脱接着することもあり、コーティング内接着不良が存在することもある。
ITO表面は、アルゴン、アルゴン/酸素混合物でイオンビーム処理されるか処理されないかのいずれかであった。表面は、次に、約50オングストローム厚みのクロムの薄い層で被覆し、その後ほぼ500オングストローム厚みのルテニウム層で被覆した(いわゆるベータ・リング)。被覆ガラスは、典型的にはEC要素に用いられるエポキシで別の部分のガラスに結合し、その後、エポキシを硬化した。表18は、破壊時の圧力値及びITOコーティングからの金属リフトの量を示している。制御部分で金属リフトの量を追跡した。アルゴンビームを照射された部分は、相当な金属リフトを有したが、破壊時の圧力は、本質的に同じであった。酸素の使用は、ここでも破壊時で同じ圧力値であったが、ITOからの金属のリフトは排除された。酸素は、ITOへのクロムの接着を改善する。イオンビームは、好ましくは、クロムの接着を助ける成分である酸素をスパッタリングすることになる。アルゴンのみの場合では、臨界酸素が最小になり、結合が弱くなることになる。ビームに酸素を加えると、ITO表面を「治癒」し、それによって結合を強化して金属リフトを最小にすると考えられている。この破壊時の圧力値は、ガラスが試験中に割れるため相関関係は示さない。この割れにより、破壊時の圧力値が決まり、従って、試験に支配的である。この例では、酸素は必要であるが、他のガスが好まれか、又はアルゴン単独の方が良い選択である状況も存在する可能性がある。
ルテニウムがITO上に直接堆積する別の例では、破壊時の圧力値の劇的な変化及び破壊様式の変化が観察された。イオンビーム処理が用いられない場合には、破壊時の圧力値は、相当に低くてほぼ6〜7psiであり、コーティングのリフトが破壊の様式であり、ガラスは割れない。ITO表面が酸素含有ビームで処理され、次にルテニウムが表面上に堆積する場合には、破壊時の圧力値は、係数2を超えて増大し、ガラスの割れが支配的な破壊様式である。コーティングは、依然としてITOから浮き上がるが、接着強度は劇的に増大する。
一部の用途で用いることができる上部層は、導電安定化材料とすることができる。その役割は、リング金属とバスバー又は銀ペーストとの間を良好に導電させることである。材料は、イリジウム、オスミウム、パラジウム、プラチナ、ロジウム、及びルテニウムのようなプラチナ族金属から選択することができる。これらの金属同士又は他の適切な金属との混合物又は合金を用いることもできる。
厚み及び層の材料の選択は、好ましくは、参照特許出願に教示するように適切な色及び反射率強度をもたらすように選択される。更に、層の厚みは、必要な透過率特性も達成するように選択すべきである。可視光透過率は、エポキシシールが見えないように設定すべきである。可視光透過率は、5%未満、好ましくは2.5%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは約0.5%未満とすべきである。UV光透過率は、可視光透過率と正確に相関していてもそうでなくてもよい。UV光透過率の場合には、リングの外観は問題でなく、シールの保護が本質的な関心事である。これは、勿論、選択したシールがUV光に感受性があることを推定している。許容可能なUV光の量は、シールがUV光の影響をどれほど受けやすいかに依存する。理想的には、コーティングは、リングコーティングがUV光に不透過性であるように設計する必要があるが、残念なことには、このレベルの透過率は価格的に無理である。更に、層の接着は、合計厚みが大きくなりすぎる場合は阻害される可能性がある。層に存在する可能性がある応力は、層をコーティングのガラス又は他の層から離層させるのに十分な歪みになる。この理由で、有限な量のUV透過率を意図すべきである。UV透過率は、約1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満、最も好ましくは0.05%未満とすべきである。
一般的になってきている特徴/領域の1つは、方向指示器、ヒーターオン/オフ指示器、半ドア警報、又は近づいてくる交通へのドアが今にも開く可能性があるという警報のような特徴を表示するのに外部ミラーを用いることである。更に、ミラー又はミラーハウジングは、パドル又は接近照明を収容するのにも用いられている。
車両の外部のミラーに比較すると内部ミラーに対する要件は特異的である。実施形態の少なくとも1つでは、内部ミラーのミラー面反射率は、好ましくは60%又はそれよりも高く、好ましくは、関連するミラー要素に適切な量の光を通過させるためにディスプレイの前部に豊富な透過率を有する。更に、内部ミラーは、外部ミラー用途で遭遇する過酷な化学物質及び環境の難問に耐える必要がない。困難な問題の1つは、バックミラーの自動車規格を満たす必要があることと、審美的に魅力的な情報センターを組み込むことが望ましいこととの均衡をとることである。ミラー要素光透過率を高くすることは、光出力が限定されたディスプレイ技術を保証するための手段の1つである。多くの場合、透過率が高いと、ミラー要素の背部の回路及び他のハードウエアが見えることになる。不透明剤層をミラー要素の第4の表面に付加してこの問題に対処することができる。
図5aに示すような補足的な方向指示器は、外部ミラーアセンブリに望ましいディスプレイ特徴の一例である。エレクトロクロミックミラー要素の背部に信号特徴を組み込む1つの方法は、要素から反射材料の一部をレーザ切除し、光が通過することを可能にすることである。別の様式及びデザインを提供しようとすることが、半透過型ミラー要素技術を用いる動機である。本発明の一部の実施形態の半透過型を用いる方法により、ミラー内の特徴を遥かに「内密の」(隠された)外観にすることができる。内密性により、光の供給源が見えないように遮断しながら、光は半透過型要素を通過することができる。内密性は、追加的に又は代替的に、ディスプレイ領域と主反射領域の間のコントラストが最小になることを意味することもある。場合によっては、色又は反射率にコントラストを付け、見る人に、どこを見れば望ましい情報が得られるかを明確に示すようにフレーミング効果を与えて、ディスプレイ又は特徴を明確に示すことが望ましい。外部ミラー用途に用いられる従来的な材料は、典型的には、感知することができる透過率レベルを達成することに伴う低反射率及び/又は高シート抵抗を有する。
例えば、ルテニウムは、比較的高反射率で環境耐久性が高いために、外部EC用途に用いられることが多い。EC要素の反射体としての23nmのRuコーティングは、反射率が、殆どの商業的ミラー反射率規格を満たすレベルであるほぼ57.5%であることになる。このコーティングのシート抵抗は、ほぼ20オーム/平方であり、EC要素の透過率は、ほぼ2.5%であることになる。この透過率もシート抵抗も実際的な用途で実行可能でない。他の環境耐久性がある金属は、僅かに異なる反射率、透過率、及びシート抵抗値を有する可能性があるが、EC用途での要件を満たす特性を有するものはない。
OEC要素には低反射率が必要であることにより、好ましい反射率、耐久性、及びエレクトロクロミック性能特性を満たすのに殆ど苦労することなく、関連する反射性及び/又は半透過型の層スタックに、銀、銀合金、クロム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、パラジウム、プラチナ、インジウム、シリコン、半導体、モリブデン、ニッケル、ニッケル−クロム、金、及び合金組合せを含む異なる構成の材料を用いることができる。一部のこれらの材料は、銀及び銀合金は外部ミラー環境で損傷を受けやすいという点で、銀又は銀合金よりも優れた利点を有する。硬い金属を用いると、製造オプションに関するミラー要素の耐久性及び最終製品の頑強さが得られるため有利である。更に、反射及び/又は半透過型スタックは、OEC要素に用いるのに十分な高さの反射率レベルを生じる誘電体で生成することができる。
Agベース材料は、一般的に、中央可視域の反射率が1パーセント減少する毎に透過率がほぼ1%増加することになる。透過性が増大することに伴う利点は、ディスプレイ又はLEDのような低価格で低光出力光源を用いることができることである。外部ミラーは、典型的には、非常に高光出力で指示することができるLEDを一般的に用いる表示型ディスプレイに用いられる。本明細書には、内部及び外部ミラー用途にAgベースの半透過型コーティングを用いることができる新しいデザインを開示する。これらの新しいデザインは、Ag層からの特異的な光学特性及び利点を維持し、同時に、外部用途にAgベース材料を用いることの限界に対処する。低透過率が設計基準の一部である場合には、Ag基部層を有するスタック及び持たないスタックを用いて異なるコーティングのオプションを考えることができる。低透過率に対する大きな利点の1つは、不透明材層の必要性が減少又は排除されることである。
多くの市場で、ミラーの大きさは、視野を大きくすることができるように益々増大している。大きなミラーの暗色化時間は、困難な問題であり、設計オプションでは重要な考慮事項である。大きなミラーは、一般的に、外部ミラーに伴うものであり、許容可能な暗色化及び明色化速度を維持するために導電性を増大又は改良することが必要である。上述のような単一の薄い金属コーティングの以前の限界事項は、スタックに「透明導電性酸化物(TCO)」を革新的に用いることによって解決される。TCOは、高レベルの透過率を維持しながら良好な導電性を達成するための手段になる。次のいくつかの例は、外部ミラーに対して満足なレベルの透過率は、比較的厚い「インジウム錫酸化物(ITO)」で達成することができることを示している。ITOは、材料の広範なTCO類の特定の例である。他のTCO材料には、F:SnO2、Sb:SnO2、ドープZnO、IZO、その他が含まれる。TCO層は、単一の金属又は合金で構成することができる金属コーティング又は多層金属コーティングでオーバーコートされる。例えば、異なる材料間の接着を容易にするために、複数の金属層を用いることが必要である可能性がある。別の実施形態では、金属層に加えて又はその代わりに半導体層を加えることができる。半導体層は、以下に説明する一部の特異的特性をもたらす。ITO/TCO層の厚みを増大させて導電性を改善する場合には、コーティング粗度の影響を考慮すべきである。粗度が増大すると、反射率が低くなる可能性があり、金属厚みを増大させることが必要になり、それによって透過率が低くなる可能性がある。更に、粗度が増大すると、他所に説明するように許容不能な曇りが生じる可能性もある。粗度問題は、ITOに対する堆積処理を修正することにより、及び/又はITOコーティングの後で次の層を堆積させる前にイオンビーム平滑化を実行することによるかのいずれかで解決することができる。両方の方法は、上に詳細に説明したものである。更に、この実施形態に上述の改良ITO材料を用い、半透過型コーティング全体のシート抵抗を低下させることができる。
半導体層は、シリコン又はドープシリコンを含むことができる。少量の付加的な1つ又は複数の要素を加え、シリコンの物理的又は光学特性を変化させ、異なる実施形態で利用することが容易になるようにすることができる。半導体層の利点は、金属に比較して吸収率が小さく、反射率が改善することである。多くの半導体材料の別の利点は、そのバンドギャップが比較的小さいことである。これは、可視スペクトルの青〜緑波長の適切な量の吸収に等しい。光の1つ又はそれよりも多くの帯域の優先吸収は、コーティングが比較的純粋な透過色を有するのに役立つ。高度透過色の純度は、可視又は近赤外線スペクトルに透過率値が低透過領域の透過率の1.5倍より大きなある一定の部分を有することに等しい。より好ましくは、高透過領域の透過率は、低透過領域の透過率の2倍よりも大きいことになり、最も好ましくは、低透過領域の透過率の4倍よりも大きいことになる。代替的に、半透過型スタックの透過色のC*値[sqrt(a*2+b*2)]は、約8より大きく、好ましくは約12より大きく、最も好ましくは約16よりも大きい必要がある。比較的高純度の透過色を備える半透過型コーティングになる他の半導体材料には、SiGe、InSb、InP、InGa、InAlAs、InAl、InGaAs、HgTe、Ge、GaSb、AlSb、GaAs、及びAlGaAsが含まれる。実行可能と考えられる他の半導体材料は、バンドギャップエネルギが約3.5eV又はそれ未満であるものであろう。内密の特性が望まれ、赤色信号が用いられる用途では、Ge又はSiGe混合物のような材料が好ましい可能性がある。Geは、Siに比較するとバンドギャップが小さく、それによって比較的透過率レベルが小さい波長の範囲が大きくなる。これは、ディスプレイと異なる波長で透過率が小さい方が、ミラーの背部に全ての特徴を隠す時に有効であるために更に好ましい可能性がある。均一な透過率が必要である場合には、比較的バンドギャップが大きい半導体材料を選択することが有利とされるであろう。
ディスプレイ領域は、性質が内密であるために、観測者は、ディスプレイが活性化されるか又は背後から照らされるまでミラーがディスプレイを有することに気付かない可能性がある。内密性は、ディスプレイ領域の反射率が残りの可視領域と比較的同様であり、色又は色相コントラストが最小である時に達成される。この特徴は、ディスプレイ領域が、上述のようにミラーの可視領域を低減しないために非常に有利である。
少量の透過光により、回路基板、LED列、覆い、及びヒーター端子のようなミラーの背部の特徴が見えるようになる可能性がある。光遮断(不透明化)層を利用し、この問題を避けることができる。不透明層は、塗料、インク、プラスチック、発泡体、金属、又は金属ホイルのような様々な材料を用いてミラーの第4の表面に付加されることが多い。この層を付加する際の困難な問題は、外部ミラーが複雑であることである。殆どの外部ミラーは、凸面又は球面の形状を有しており、それによって膜又はコーティングの付加が更に困難になる。
不透明化層は、要素の第3の表面スタックに組み込むことができる。半透過領域は、遮蔽することができ、適切な反射率及び色(不透明性)をもたらすルテニウム、ロジウム、又は他の単層又は多層スタック(金属、金属/誘電体、及び/又は誘電体)のような適切なスタックを残りの表面を覆って付加することができる。内密性の外観は、望ましい色及び反射率の一致又は不一致が維持される時に達成される。好ましい一実施形態では、ディスプレイ領域及びミラー要素の主要可視領域は、事実上区別がつかない。他の実施形態では、半透過領域が審美的に魅力的なコントラストで異なる色を有することが望ましい場合がある。
別のオプションは、全体的に透過率が低い可視スペクトルの一部に高透過率レベルを維持し、内密性概観を得ることである。狭スペクトル帯域パスフィルタを用いて内密効果を得ることができる。
要素の後部表面にコーティング又はテープ又は他の不透明化材料を用いることなく又はそれに加えて、比較的不透明な層(同じ材料又は隣接する層と異なる材料かに関わらず)をそうでなければ半透過型の第3の表面コーティングスタックに挿入することを組み込んで、ミラー要素の背部にある電子機器を隠すのに役立つ場合がある。この層を加えると、挿入した領域の反射率に影響を及ぼすことができる。次に、この領域の反射率は、材料の選択及びその厚みにより調節することができるために、ディスプレイ領域とミラー要素の比較的不透明な領域との間の差は殆ど目立たず、従って、装置の外観の一体性が維持される。
また、故意にディスプレイ領域の反射率及び/又は色相を喰い違わせ、活性化される時にディスプレイが存在する場所に対する視覚的刺激を与え、ディスプレイがオフの時でもディスプレイ機能がミラーに含まれることを示すことも有利である場合がある。導電体を用いて不透明性を加えると、ディスプレイの比較的不透明な部分の導電性が大きくなり、これに対応して、可視領域の大部分にわたって電圧の低下が小さくなり、着色速度が大きくなる。付加的な不透明化層は、その領域の背部からの反射率が、不透明化層がない場合よりも実質的に小さくなり、従って、複数の反射の影響が少なくなるようなものとすることができる。上述の原理を明らかにするこのような装置の1つは、ほぼ400オングストロームのTiO2、続いて、第3の表面全体の実質的に全てを覆う200オングストロームのITO、続いて、ほぼディスプレイを覆う領域を除いたほぼ90オングストロームのクロム、続いて、実質的に第3の表面全体を覆うほぼ320オングストロームの7%金93%銀の合金の第3の表面コーティングスタックを含む。
内部自動車ミラーのこの特定のモデルに対するディスプレイのための開口部は、球に基づく分光光度計で反射率を測定するには小さすぎ、従って、要素は、スタックの異なる部分の反射率の測定を容易にするために、その画面全体を覆うスタックの異なる部分で作られた。透過率及び反射率測定は、要素の前部及び背部の両方から行われた。
表19及び表20は、それぞれ、図44及び図45のグラフと共に得られる測定値を示している。
この特定の例では、クロムをスタックに付加すると、不透明性が増大し、要素の背部からの反射率が低下することが分る。不透明性を達成するために、非ディスプレイ領域の銀合金の厚みを増大させた場合には、この例で見られるように要素の背部からの反射率が減少しないことになるが、クロムを省略した場合には、要素の背部から見た既に比較的高い反射率が更に増大することになる。更に、このデザインのディスプレイ領域は、クロム層が含まれる領域と比較すると、透過性がディスプレイ領域でトランスフレクタとして働くのに十分であっても、輝度の差のように比較的小さく色相が異なることも分る。
また、先の例では、半透過領域の銀合金層の厚みを増大又は低減することにより、このディスプレイ領域の透過率特性の「青色バイアス」がそれぞれ大きくなったり小さくなったりすることになることにも注意すべきである。この領域の背部にRGBビデオディスプレイを用いると、演色を良好に維持するために、赤、緑、及び青エミッタの相対強度を調節することによって利益を得ることができる。例えば、透過率がスペクトルの青色領域で大きく、赤色領域で小さい場合には、青色エミッタの強度を低減し、赤色エミッタの強度を増大させることが望ましい場合がある。この種類の調節は、透過率のスペクトルバイアスが緩勾配であるか又は明確に区別される透過性の帯域を備えるものであるかに関係なく、これ及び他の半透過型設計で適切であろう。
ディスプレイが、ミラー要素が薄暗くなると用いられるように意図される場合には、強度調節を行い、コーティングからの及び活性化エレクトロクロミック媒体のあらゆるスペクトルバイアスを補償することができる。強度調節は、装置の作動電圧及び/又はエレクトロクロミック要素の色可動域のほぼ所定の点の相対RGB強度に一致する他のフィードバック機構の関数とすることができる。エレクトロクロミック種が活性化されてなくても「青色ミラー」を生成するのに用いることができるような染料を用いる場合には、エミッタの強度は、演色を改善するように調節することができる。ミラー要素の反射率が減少すると、第1及び/又は第2の表面コーティングのあらゆるスペクトルバイアスは、益々重要になることになる。すなわち、ディスプレイの異なる色の強度を補償する程度をそれに対応して調節することができる。更に、EC媒体に対するUV吸収剤及び他の添加剤も要素強度調節の可視光吸収に影響を及ぼすことができ、これは、関連するディスプレイの演色を改善するために組み込むことができる。
ディスプレイ及び信号又は他の指示器用途の両方で半透過型コーティングを設計することは有利とすることができる。信号又は指示器に高出力が必要である場合には、トランスフレクタの透過率スペクトルは、この領域の透過率を強調するように偏る可能性がある。スペクトルの赤、緑、及び青の部分の強度が等しいRGBディスプレイは、半透過型層(及びミラー要素の他の構成要素)を通過した後には異なる強度を有することになる。次に、強度のこのオフセットは、個々のRGB色の出力を調節して適切な演色が得られるようにすることによって相応に補償することができる。
不透明領域とディスプレイ領域の間の反射率が一致することが、表19及び表20の例よりも望ましい状況が存在する可能性がある。更に、異なる反射率値の範囲で反射率が一致することの利点が存在する可能性がある。従って、ディスプレイ領域の透過率は、不透明な可視領域とディスプレイ領域の間の反射率の一致を阻害することなく調節することができる。別の設計目的は、可視領域及びディスプレイ領域で一致させるか又は審美的に魅力的な様式で異ならせるかのいずれかの色を有することである。色の一致は、2つの領域の間に最小限の識別可能な差しか望まれない場合に有利とすることができる。他の環境では、反射率が一致するが、どこにディスプレイが配置されているかを見る人に案内するのに役立つように、色が一致しないことが有利である可能性がある。
他の手段を用いて、第1の表面反射率に関係なく反対方向から見る時の不透明領域の反射率を更に低減することができる。本発明の別の態様は、不透明又は可視領域に対してディスプレイ領域を知覚することに関する。見る人は、可視領域には反射光のみを見ることになり、ディスプレイ領域には、反射光及び透過光の組合せを見ることになる。この領域に透過光を加えると、両方の領域の反射率が同じでもディスプレイ領域を目立たせることができる。従って、ディスプレイ領域の反射率は、加えた透過光を補償するために低減することができる。
先の例では、不透明領域とディスプレイ領域の間の反射率の一致は、層の厚みの関数であることに注意すべきである。クロム及びAgAu7xの厚みは、反射率が比較的密接に一致するが依然として透過率が比較的低いように最適化されている。クロム及びAgAu7x厚みの関数としての反射率及び透過率の変化を表21に示している。表21のデータは、識別されたスタック、0.14ミクロンのEC流体、及び第2の表面に1/2波ITOコーティングを備えた上板から成るエレクトロクロミック要素に対するモデルデータである。不透明領域とディスプレイ領域の間の反射率の差は、クロム層が比較的薄い場合及び/又はAgAu7x層が比較的厚い場合は小さい。本方法により、ある一定の透過率及び反射率の範囲でかなり良好に一致する不透明な領域及びディスプレイを備えるミラーを作る手段が得られる。
可視領域の不透明化及びディスプレイ領域の高透過率を維持しながら望ましい反射率値の広い範囲にわたって反射率の一致を達成する手段が望ましい。これは、実施形態の少なくとも1つでは、表21の例に説明する付加的な層をスタックに加えることによって達成される。この好ましい第3の表面スタックは、TiO2/ITO/AgAu7x/Cr/AgAu7xである。AgAu7xを分割することにより、広い強度範囲にわたって反射率の一致を達成する機能及び同時に不透明な領域のスタックの透過率を制御する機能が達成される。ディスプレイ領域の透過率は、AgAu7xスタックに対して上述の値に制限される。
クロム層は、ディスプレイの領域に遮蔽され、他の層は、実質的に表面全体を覆って、又は少なくともディスプレイの領域に存在することができる。この例では、TiO2/ITOネット1/4波2層(いわゆるGTR3基部層)を用いてディスプレイ領域の半透過型銀又は銀合金層の色を中和する。ディスプレイ領域において他の半透過型色中和層で置換することができ、これは、この実施形態の範囲に含まれる。AgAu7x層を分割するクロム層は、この用途では、スタックに不透明特性を与えるだけでなく、下部層を上部AgAu7x層から光学的に隔離もする新しい特性を有する。図46は、反射率がクロム層の厚みに応じてどのように変化するかを示している。ここに見られるように、5nmより僅かに大きい厚みでは、薄いクロム層は、底部銀金合金層が反射率に寄与しないように実質的に隔離される。このような薄い層のクロムを用いてこのように隔離すると、スタックの全体的反射率に適用可能な効果を有することなく透過率値の範囲を達成するようにクロム厚みを調整することができる。
この手法の利点の1つは、ディスプレイ領域まで拡張される。底部AgAu7x層が反射率に寄与しないように隔離するには薄いクロム層しか必要でないために、底部AgAu7x層の厚みは、他の設計目的を達成するために変化させることができる。例えば、先に表したように不透明領域及びディスプレイ領域の反射率を一致させるという要望を達成することができる。半透過型ミラー要素が比較的高透過率及び低透過率の領域を有する例では、「不透明」という用語は、第4の表面に不透明化材料を加えることなく第4の表面の背部の構成要素の外観を隠すほど十分に透過率レベルが低いことを示すことを意味する。ある一定の実施形態では、透過率は、5%未満、好ましくは2.5%未満、より好ましくは1%未満、最も好ましくは0.5%未満とすべきである。AgAu7xが不透明領域に隔離されるので、厚みは、ディスプレイ領域に望ましい反射率を達成するために必要に応じて調節することができる。AgAu7x上部層は、TiO2/ITO(ディスプレイ領域に存在する)に対してCrに被覆されると高反射率を有することになる。底部AgAu7x厚みは、ディスプレイ領域が不透明領域の反射率に一致するように設定することができる。ミラー要素の反射率値は、クロム層単独の反射率値程の低さから厚いAgAu7x層の反射率までとすることができる。反射率は、この範囲にわたってあらゆる望ましい値に調整することができ、透過率も調節することができる。更に、ディスプレイ領域と可視領域の間の望ましい反射率の一致も達成することができる。
銀含有層は、7%Au93%Ag、及び他の合金又は合金の組合せとすることができる。例えば、不透明化層の下より層の上の合金に大量の金を有することは有利とすることができる。これは、不透明化層と上側銀支持層の間に耐久性の高い界面を得ること、色の好み、又は処理中又はエレクトロクロミック媒体と接触した時の上側銀支持層の耐久性に伴う理由のためとすることができる。2つの銀支持層が、金、プラチナ、パラジウム、銅、インジウムのような銀を通って容易に拡散する異なるレベルの材料を含む場合には、銀層がもはや1つ又はそれよりも多くの介在性不透明化層を持たない半透過領域は、処理時間後に、上側及び下側合金の平均の重さを有する合金になる可能性が高いことになる。例えば、上側銀支持層として銀パラジウム合金及び下側層として銀金合金を用いる場合には、半透過領域は、銀−金−パラジウム三元合金層になる可能性が高いことになる。同様に、2つの銀支持層として等しい厚みの銀中7%金及び銀中13%金を用いる場合には、半透過領域に得られる層は、銀中金10%の本質的に均一な分配を備える層である可能性が高いことになる。
不透明化層は、一方、又は両方、又は全ての層が銀を含まない可能性がある半透過領域に連結した別々の層とすることができる。例えば、半透過領域には、多くの可能な組合せのうちシリコンを覆う銀合金、又はシリコンを覆うルテニウムを用いることができる。
本明細書においてその全内容が引用により組み込まれている米国特許第6、700、692号に示されている材料のフラッシュオーバーコート層は、フラッシュ層として有用であり、これには、他にも材料はあるが、インジウム錫酸化物、他の導電性酸化物、プラチナ族金属及びその合金、ニッケル、モリブデン及びその合金が含まれ、上述の設計に組み込むことができる。フラッシュ層に選択した材料の厚み及び光学特性に応じて、比較的不透明領域と半透過領域の間に同程度の一致又は不一致を維持するために、その下のスタックに調節が必要である可能性がある。
上述のように、「不透明」領域に達成可能な透過率は、銀基部層及びクロム又は「不透明化」層の両方に依存する。クロム層が厚くなると、所定の反射率レベルで透過率が小さくなる。クロム層は、望ましいレベルまで薄くしてディスプレイ領域の透過率に接近させることができる。高透過率レベルが必要である場合には、非常に薄い層の厚みを制御することは困難であることが多い。金属不透明化層が部分的に酸化される場合は、厚い層を用いることができる。薄い純金属層に対して高透過率を達成するためには、厚い層が必要である可能性がある。図47は、上の表21及び不透明化層としてCrOx層を用いた場合のスタックに対する透過率と反射率の間の関係を示している。図47は、異なる不透明化層及び厚みに対する透過率対反射率を示している。図の記号は、異なる厚みのAgAu7x層を表している。厚い層は右側、薄い層は左側である。
ここに見られるように、AgAu7x層の厚みが薄くなると、反射率は、クロム又は不透明化層の値に近づく。不透明化層の厚みは、ミラー要素の下端反射率に影響を及ぼすことになる。例えば、Cr層が10nm厚みである場合は、下端反射率は41.7%、20nmの場合は50.5%、30nmの場合は52.7%である。不透明化層の厚みが増大すると下端反射率は一定の値に近づくが、薄い層では、層が薄くなると反射率の低下が起こることになる。これは、所定の用途に対する設計基準に応じて有利又は不利である可能性がある。クロム層に対する反射率と透過率の間の制限は、クロム層を完全に異なる材料と置換するか、又は付加的な層を加えることによって克服することができる。
米国特許第6、700、692号を参照すると、Ag含有層の上又は下の異なる金属、半導体、窒化物、又は酸化物が教示されている。これらの層及び材料は、スタックを改善するように選択される。導電性金属、金属酸化物、金属窒化物、又は合金とすることができる反射体の下の基部層が教示されている。更に、基部層と反射材料の間には中間層又は各層が存在することもある。これらの金属及び材料は、層間に直流電気反応が存在しないように及び/又は基体及び反射体又は他の層への接着を改善するように選択することができる。これらの層を基体上に堆積させることができ、又は上述の基部層の下に付加的な望ましい特性をもたらす付加的な層を存在させることができる。例えば、有効奇数1/4波光学厚みを備えるTiO2及びITOを含む誘電体対を存在させることができる。TiO2及びITO層の厚みは、必要に応じて調節し、特定の導電性及び光学的要件を満たすことができる。
金属層が銀含有層の下に堆積する場合には、それは、クロム、ステンレス鋼、シリコン、チタン、ニッケル、モリブデン、及びクロム/モリブデン/ニッケル、ニッケル/クロム、モリブデン、及びニッケルベース合金の合金、インコネル、インジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、レニウム、イリジウム、モリブデン、ロジウム、ルテニウム、ステンレス鋼、シリコン、タンタル、チタン、銅、ニッケル、金、プラチナ、及びその成分が主に上述材料である合金、あらゆる他のプラチナ族金属、及びその混合物から成る群から選択することができる。更に、反射体層の下の層は、クロム酸化物及び亜鉛酸化物のような酸化物又は金属酸化物層とすることができる。
銀含有層を覆う任意的な金属層は、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、プラチナ、ニッケル、タングステン、タンタル、ステンレス鋼、金、モリブデン、又はその合金から成る群から選択することができる。
本発明の開示内容は、ミラー又は光学要素の半透過型部分と組み合わせた不透明化層が想定されている。これは、要素又はミラーのある一定の領域の透過率を低減する働きをする金属の選択に影響を及ぼす新しい又は付加的な設計基準が含まれることを示している。以下の表22は、ECセル内のTiO2/ITO誘電性層のスタック上の様々な適切な基部又は不透明化層の金属の反射率及び色を示している。金属層全ての厚みは30nmである。色及び反射率は、金属層の厚みに応じて変化することになる。表22は、不透明化金属が比較的厚く、AgAu7x又は他のAg含有上部層が存在しない場合の下端反射率に対する様々な適切な金属不透明化層の色及び反射率の相対差を示している。当業技術で公知のように、これらの金属同士又は他の金属との合金は、異なる光学特性を有することになる。合金は、個々の金属の混合物のような挙動を示す場合もあるが、個々の金属を単に内挿した反射特性を持たない場合もある。金属又は合金は、必要に応じて、直流電気特性、反射率、色、又は他の特性で選択することができる。
銀含有反射層スタックでは、反射率及び色は、これらの異なる金属又は合金上に堆積された時に変化することになる。表23は、20nmのAgAu7xを載せた金属含有スタックを示している。20nmのAg含有層スタックの色及び反射率は、不透明化層のように、用いる金属の特性により変化する。更に、異なるスタックの透過率も示している。クロムに対して上に示すように、透過率、反射率、及び色は、不透明化金属の厚みを変えることによって変化させることができる。望ましい色、透過率、及び反射率は、不透明化金属層又は各層の特性を変化させることによって達成することができることがこれらの例から明らかである。
可視領域の色及び反射率を調整する機能は、米国特許第6、700、692号に付加的に説明されている金属不透明化層を誘電性層と組み合わせることによって更に増大又は強化することができる。誘電性層は、多くの場合、スタックの吸収に実質的に影響を及ぼすことなく色及び反射率の両方を修正することができる。
ディスプレイ領域の色及び反射率を一致させるために、銀含有反射層の下の上述の2層基部層を用いることができる。表24は、固定AgAu7x層に対して、反射率及び色が、ITO及びTiO2厚みが変わるのに応じてどのように変化するかを示している。ここに見られるように、2層の厚みは、反射率に影響を及ぼすだけでなく、色も調整することができる。次に、これらの層は、望ましい反射率及び色の両方を得るのに必要なように調節することができる。色及び反射率の調節可能性は、AgAu7x又は銀含有反射層の厚みを調節することによって更に拡張することができる。付加的な色及び反射率の変化は、ディスプレイスタックの一部として銀含有層の上か下かのいずれかに付加的な誘電性又は金属層を加えることによるか、又は誘電性層の屈折率を変えることによって得ることができる。
例えば、可視領域の色が、銀反射層の下の金属を選択することによるか又は銀反射層自体により、又は層の組合せにより偏った黄、青、緑、又は赤である場合には、色及び/又は反射率の一致は、ディスプレイ領域の層を調節することによって達成することができる。この手法の利点の1つは、実質的に全表面を覆って層を付加することができるが、不透明化層又は各層の特異的な光学遮蔽特性により、これらの下側層は、可視又は不透明領域の反射率及び色に寄与せず、不透明化層又は各層が遮蔽されているディスプレイ領域で完全に機能的であることである。本発明は、ディスプレイ領域で機能する層が全部分を覆うことに限定されない。これは、不透明化層の下の層に特に適用可能である。これらの層は、製造工程によりこの手法が保証されるならば、必要に応じてディスプレイの一般領域のみに堆積させることができる。
状況によっては、反射体及び/又はトランスフレクタは、反射色相で青みを帯びることが有利である可能性がある。更に、内密性の外観にするために、同じ要素の不透明な青みを帯びた反射体領域及び青みを帯びた半透過領域を組み合わせることが有利である可能性もある。
引用により本明細書に組み入れた米国特許第5278693号のように、電位を印加しない時でも染料を用いて青色相を有する青色エレクトロクロミック要素を作ることは公知である。更に、第3の表面コーティングスタックを用いて、外部自動車エレクトロクロミック装置での典型的な要件を満たすこのような装置を作る実際的な方法もある。更に、これらの技術は、場合によっては組み合わせて用いることができる。このような装置の反射率値は、現時点で、米国では35%を超える必要があり、ヨーロッパでは40%を超える必要がある。好ましくは、実施形態の少なくとも1つでは、反射率値は50%又は55%を超えることが好ましい。どのような第3の表面スタックを用いても、エレクトロクロミック装置で化学的及び物理的及び電気的に耐久性があることが必要である。
本質的に不透明なクロムの層をガラス上に堆積させ、次に、ほぼ900AのITOをその上部を覆って堆積させ、その後、エレクトロクロミック装置の構築を完成させることによって青みを帯びたエレクトロクロミック装置を得ることができる。このように作って用いられるコーティングスタックは、表25に示す色値及び図53に示す反射率スペクトルを有していた。表25及び図53は、コーティングがガラスの単一「lite」上にある時及びEC要素に組み込まれた後の値を示している。
空気中で測定したガラス上のコーティングを完成した装置の反射率に比較すると実質的な反射率低下が存在することになる。これを補償するために、クロム層の代わりに又はそれに加えて、上部層又は各層を同様にした銀又は銀合金の不透明層を用いることができると考えてもよい。しかし、銀の光学特性は、銀ベース材料を覆う高反射率の青みを帯びたコーティングを得ることが更に困難であるようなものである。これは、部分的には、銀が僅かに黄色のスペクトルに偏っているためであり、反射率が可視スペクトルにわたって既に100%に近いために、スペクトルのあらゆる部分で銀の反射率を介入的に増加し、有意な色を与えるために為すことができることが殆どないという事実のためでもある。
しかし、上方のスタックのクロムとITOの間に銀又は銀合金の半透明層を置けば、依然として有意な量反射率を増加させ、青みを帯びた色を維持し、第3の表面反射体電極の導電性を増大させることができる。
銀の半透明層が存在すると、本文書に含まれる教示により、色中和下層を加え、銀を「分割」し、クロムの開口部を遮蔽することにより、半透過領域を作ることができるであろう。
例えば、ほぼ40nmのTiO2、20nmのITO、14nmの銀、50nmのクロム、10nmの銀、及び90nmのITOの反射スタックは、色相及び輝度が、クロム層のない同じスタックと同様のものとしてモデル化される。クロム層がなければ、スタックの透過率は、ディスプレイ又は光センサ領域として用いるのに適切なものとして計算される。従って、その層を被覆する間、クロムを遮蔽し、装置の不透明及び半透過型部分の両方に同様の青みを帯びた色相及び輝度(すなわち、内密性)のエレクトロクロミック要素を作ることができる。
また、クロムとITOの間に低屈折率層を挿入することによって又は複数の交互の低屈折率及び高屈折率層によりクロム/ITOスタックの反射率を増大させることができる。しかし、適切な光学効果を有するのに十分な層厚みの最低屈折率酸化物及びフッ化物材料も電気絶縁部体とされることになる。しかし、銀自体は低屈折率材料であり、これが、クロムとITOの間に位置する時のその利点を部分的に説明する。
ディスプレイ窓及び半透過型コーティングの領域で有利な別の特性は、逆方向からの反射防止特性である。多くの場合、ディスプレイは、相当な量の迷光を生成し、これが、ミラー要素の背部の周りで跳ね返るか又は散乱し、最終的にディスプレイ領域から出る。要素が逆方向に比較的低反射率を有するようにすることにより、この迷光を低減することができる。第4の表面に付加的な層を用いることなく低反射率を達成すると、費用が減少するという利点が加わる。
ディスプレイ領域にTiO2/ITO/AgAu7x/AgAu7xを有すると同時に、不透明又は可視領域にCr/TiO2/ITO/AgAu7x/Cr/AgAu7xが設けられる。第1のクロム層は薄くて約2〜15nmの厚み、好ましくは約5〜10nmの厚みであり、ディスプレイ領域に遮蔽される。更に、第2のクロムもディスプレイ領域に遮蔽され、その厚みは、可視領域に望ましい透過率が得られるように調節される。TiO2/ITO2層は、全表面を覆い、その前部からはディスプレイ領域を適切な色にしながら可視領域の逆方向からの反射防止効果を得るように調節される。
表26は、逆方向から又は第4の表面からの反射率を示している。第1のケースは、基準ケースである。これは、ミラー要素の不透明又は可視領域に対して上述したスタックである。ここに見られるように、背部からの反射率は、かなり高くて約61%である。第2のケースでは、薄いクロム層(〜5nm)が誘電性層の下に加えられる。可視領域にこの薄い層を加えると、強度が10倍減少するほぼ6%まで反射率が減少する。従って、あらゆる迷光の散乱が低減されることになる。この反射率値及びその色は、クロム層及び誘電性層の厚みにより調節することができる。6.2%反射率のほぼ4%は、ガラスの非コーティングの第4の表面から生じる。反射率を更に低減することが望ましい場合には、付加的に従来的な反射防止層を加えることができる。6.2%の反射率値は、2.5%未満の値まで低減することができる。
反射率の減少量及びその絶対値は、第1の銀含有層及びその次のクロム層の特性に依存する。上述のように、これらの層は、透過率だけでなく、見る人に向う反射率も調整することによって調節される。これらの層を様々な設計目的又はターゲットを満たすように調節すると、誘電性層及び/又は基部クロム層が最適な反射防止効果を達成するように調節することができる。
クロム以外の他の金属又は吸収層を反射防止層として用いることができる。更に、タングステン、クロム、タンタル、ジルコニウム、バナジウム、及び他の同様の金属のような材料も、広範な反射防止特性を生じることになる。他の金属では、高度で更に着色された反射率になる可能性がある。更に、クロム又は他の金属層は、反射防止特性を調節するために、少量の酸素又は窒素でドープして金属の光学特性を変化させることができる。
表面又は薄膜スタックの光学特性を修正するための高及び低屈折率の層の交互の組又はこのような層の複数の組の有用性は、本文書の他所で説明している。典型的に低屈折率であると考えられる材料は、金属酸化物、窒化物、オキシナイトライド、フッ化物であり、これらは、不良導電体である傾向がある。典型的には、隣接する材料間の屈折率の差が大きくなれば、光学効果が大きくなる。これが、低屈折率材料として屈折率が約1.6又はそれ未満の材料が通常用いられる理由である。しかし、TCOが連結される材料が十分に高屈折率であり、高−低屈折率対をもたらす時には、透明導電性酸化物のような高屈折率材料で有利な効果が生じる。特に、比較的低屈折率材料としてインジウム錫酸化物に連結された比較的高屈折率材料として二酸化チタンを用いる場合には、光学的及び電気的な利点が得られる。特に、二酸化チタンは、その上又は下に配置されたITO、別のTCO、又は1つ又は複数の金属又は半金属層のような導電性の大きい薄膜を隔離するのに光学的厚みが十分に良好な絶縁部体でない比較的高屈折率材料である。TiO2が、インジウム錫酸化物のような遥かに導電性が大きい層間に光学薄膜として付加される場合には、TiO2は、エレクトロクロミック要素のITO層を互いに隔離することにならず、高−低−高スタックの望ましい光学効果が達成される。言い換えると、薄膜のITOの総厚みの累積的な導電性利点の殆どが維持されると共に、高及び低屈折率層の光学的利点が得られる。次の例は、一般的に、この原理、特にこれらの材料の利点を示すことになる。全ての基部層は、ソーダ石灰ガラス(可視スペクトルでは、nはほぼ1.5)上に堆積させて測定した。
基部層A=ほぼ145nm物理的厚み及び23オーム/平方シート抵抗の半波光学厚みITO(導電性が理想未満の条件で生成)。基部層B=シート抵抗が約110と150オーム/平方の間のほぼ20nmITOの下のほぼ40nm二酸化チタン。基部層C=シート抵抗がほぼ16オーム/平方である基部層A+基部層B(予想されるシート抵抗より低いのは、真空破壊する前にAのITO層をキャッピングして冷却することによって層A単独に比べて導電性が増強した可能性があるという事実のためと考えられる)。基部層D=シート抵抗が約40オーム/平方のほぼ42.5nm二酸化チタン、42.5nmITO、42.5nm二酸化チタン、42.5nmITO。図54aは、空中でガラス上のこれらの基部層(付加的なコーティングを備えず、エレクトロクロミック要素に組み立てる前)の反射率スペクトルを示している。
図54aのサンプルとして同じコーティング作業からのサンプル(1作業内でも幾分変動があることに注意されたい)に、6%Au94%Ag(6xと呼ぶ)合金ほぼ25nmの付加的なコーティングを行い、本明細書の他所に概説した原理に従ってエレクトロクロミック要素に組み立てた。これらの要素の第2の表面コーティングとしてガラス上のほぼ12オーム/平方の半波光学厚みのITOを用いた。次に、図54b及び図54cに示すように分光光度的測定が行われた。結果は表29に一覧にしている。
上述のように、大部分においてシール領域の下が被覆されないように銀合金を遮蔽することは有用であることが多い。このオプションを選択する場合には、要素に対する電気的接触は、第3の表面の下層に作られる。このような例では、下層の低シート抵抗は、銀又は銀合金が、バスバー又は導電性エポキシ又は他の手段を通じて電気的に接触する点までずっと取られた場合よりも更に重要になる。
説明した基部層の抵抗測定は、4点プローブで行ったが、これは、プローブが絶縁層を突破する場合には、表面導電性に関して虚偽の結果を生じる可能性がある。従って、要素は、第3の表面コーティングとして基部層のみで構成し、着色及び明色化特性を比較した。要素の性能は、4点プローブで行ったシート抵抗測定と一致した。
本発明の一実施形態では、可視領域とディスプレイ領域との間で色及び反射率が一致することが望ましい可能性がある。上述の一部の例では、2つの領域に2つの異なる金属スタックを存在させることができ、同じ金属が上部層である場合には、層の厚みを異ならせることができ、上部金属層の下に他の金属があってもなくてもよい。単体として、堆積してEC要素に入れる前に、2つの領域の反射率は、実質的に同じになるように調節することができる。堆積した後、金属と接触する媒体が空気からEC流体の媒体まで変化する場合には、反射率は、2つの領域で異なる可能性がある。これは、各スタックが、異なる方法で新しい入射媒体と相互作用するためである。
例えば、デザインの1つ(ガラス/TiO2、45nm/ITO、18nm/Ru、14nm)での上部層としてのルテニウム及び別のデザイン(ガラス/TiO2、45nm/ITO、18nm/AgAu7x、19nm)でのAgAu7xの両方は、単体として70.3%の反射率を有し、その後、要素に組み立てられるとRu側が56.6%の反射率に低下し、AgAu7x側が58.3%に低下することになるように調節する。
別の例のTiO2、40nm/ITO、18nm/Cr、25nm/AgAu7x、9nmの反射率は、単体として77.5%、要素に組み立てると65.5%であり、TiO2、40nm/ITO、18nm/AgAu7x、23.4nmの反射率は、単体として77.5%、要素に組み立てると66%である。この場合の差は、先の例ほど劇的ではないが、埋設層でも単体から要素になるまでの反射率の低下に影響を及ぼす可能性があることを示している。これは、要素で反射率の一致が望ましい場合には、単体としてはコーティングに対して反射率が不一致であることが必要である可能性があることを示している。
ミラーの2つの領域に良好な反射率及び色の一致を達成するためとされる上述の方法では、2つの領域の外観は、実質的に完全反射率が原因であると仮定する。しかし、見る人は、反射率だけでなく、ディスプレイ領域に透過光も察知する。可視又は不透明領域では、透過率が比較的低いために、見る人のみが反射率を察知する。透過光の量は、ディスプレイ領域の透過率及びミラーの第4の表面の背部又はそれと接触する構成要素の反射率の関数である。見る人により察知される光の量は、ディスプレイ領域のコーティングの透過率が増大すると増大する。同様に、ミラーの背部の構成要素の反射率が増大すると、見る人に察知される光も増大する。それによって相当な量の光が加わることができ、ディスプレイ領域が可視領域より明るくなるために、見る人にこれが分かることになる。それによってディスプレイ領域は、2つの領域が同一の反射率であっても更に明るく見えるようにすることができる。この効果は、低反射率を有する構成要素を備える要素を生成するか、及び/又は可視領域の透過率を比較的低レベルに設定することによって緩和される可能性がある。ディスプレイの出力輝度が比較的制限されるか、又は低ければ透過率を低減することによってディスプレイを実質的に薄暗くすることができる。
更に別の例の反射率が8.1%の40nmTiO2/18nmITO/EC流体/140nmITO/ガラスのEC要素では、5nmルテニウム層で第4の表面を被覆し、ミラーの背部のディスプレイを模擬すると(すなわち、5nmRu/ガラス/40nmTiO2/18nmITO/EC流体/ITO/ガラス)、反射率は、22.4%まで上昇する。ガラス/40nmTiO2/18nmITO/22nmAgAu7x/EC流体/ITO/ガラスから成るEC要素の反射率は、61.7%である。5nmのルテニウムを備えるスタックの反射率は、63.5%であり、反射率がほぼ2%増大する。この量の反射率は、見る人に完全に認知可能である。上述のように、実際の反射率の上昇は、ミラーの背部の構成要素の反射率及びEC要素の透過率に依存することになる。
2つの領域で認知される輝度の差を低減するために、2つの領域の相対反射率を調節し、透過光成分を補償することができる。従って、ミラーの表示区画に正味2パーセント明るい領域を達成するためには、可視領域の反射率を優先的に増大させるか又はディスプレイ領域の反射率を優先的に低減するかのいずれかを行う。調節量は、システムの特定の状況に依存する。
〔実施例1a〕
この実施例では、2.2mmガラス基体の第3の表面をほぼ400ÅのTiO2、続いてほぼ180ÅのITO、最後にほぼ195Åの銀−金合金(重量で93%銀/7%金)で被覆する。二酸化チタン及びITOは、好ましくは、実質的にガラスの縁部に付加され、銀合金は、好ましくは、関連するシールの少なくとも外部側の内側に遮蔽される。実施形態の少なくとも1つでは、第2の表面は、ITOの1/2波(HW)層を含む。関連する要素反射率及び透過率モデルは、図48a及び図48bのそれぞれ線4801a及び線4801bに示している。モデルの反射は、ほぼ550nmでほぼ57%、透過率はほぼ36.7%である。
〔実施例1b〕
この実施例は、関連するクリップ接触領域と銀合金の間の導電性を改善するためにシールの下を延びる第3の表面の周縁領域の少なくとも一部に沿うクロム/金属タブを除いて実施例1aと同様に構成される。外観は、同じままであるが、暗色化速度が改善する。この特徴は、第3の表面から関連する電気接触部までの導電性を改善するために、以下のいくつかの実施例に応用のすることができる。図48a及び図48bに見られるように、実施例1aの要素に関連する反射率に関して、各々の透過率は劇的に異なるが、これは、本発明の利点の1つを表している。
〔実施例1c〕
実施例1cは、実施例1aと同様に構成されるが、ディスプレイ領域が最初に遮蔽され、マスクを除去した後にCr/Ruから成るスタックが実質的に全表面を覆って堆積する(すなわち、ディスプレイ領域のガラス上にCr/Ruだけになる)。Cr/Ru不透明化スタックは、いくつかの組合せで置換することができる。反射率及び透過率の結果は、図48a及び48bにそれぞれ線4802a及び線4802bで示している。不透明化スタックは、好ましくは、ディスプレイ領域に比較して、反射率及び色の両方に対して低コントラストである。この例の別の利点は、不透明化層に一般的に用いられる金属が、ガラスの縁部まで延び、関連する電気接続クリップと第3の表面の銀−金合金との間を架橋することができることである。モデル反射は、可視領域ではほぼ550nmでほぼ56.9%、ディスプレイ領域ではほぼ57%反射であり、可視領域の透過率は<10、好ましくは<5%、より好ましくは<1%、最も好ましい設計目的では<0.1%(これは、全ての同等の設計に適用される)であり、ディスプレイ領域の透過率は、ほぼ36.7%である。光センサは、ディスプレイ又は他の光源に加えてその代わりに、「ディスプレイ領域」の背部に配置することができることを理解すべきである。
〔実施例2a〕
この実施例では、ミラー要素の第3の表面は、ほぼ2000ÅのITO、続いてほぼ50%透過性クロム、最後にほぼ170Å銀−金合金で被覆する。好ましくは、ITO及びクロムは、実質的にガラスの縁部に被覆され、銀合金は、シールの少なくとも外部側の内側に遮蔽される。Cr厚みは、好ましくは、背部プレートのみを通ってITOプラスCr層を測定すると50%透過率であるように調節される。実施形態の少なくとも1つでは、第2の表面は、好ましくは、HWITO層を含む。要素の反射率及び透過率は、図49a〜図49dのそれぞれ線4901a及び線4901bに示されている。Cr層は、半透過型要素の最終的な透過率を調節するために調節する(厚くするか薄くする)ことができる。Cr層が厚くされると、透過率は低下することになり、Cr層が薄くされると、透過率は増大することになる。Cr層の付加的な利点は、基部ITO層の通常の真空スパッタ堆積処理変動に対してスタックの色が比較的安定であることである。クロム層の物理的な厚みは、好ましくはほぼ5Åと150Åとの間、より好ましくは20と70Åとの間、最も好ましくは30と60Åとの間である。モデル反射は、ほぼ550nmでほぼ57%であり、透過率はほぼ21.4%である。
〔実施例2b〕
実施例2bは、クロム/ルテニウムの組合せのスタックが、背板のみを測定する時に(すなわち、ミラー要素に組み込む前に)透過率50%が得られるように被覆されることを除けば実施例2aと同様である。Ru層を付加すると、エポキシシールの間の安定性が改善する。Ru及びクロム厚みの比率は調節することができ、いくらかの設計の寛容域が存在する。クロムが主に組み込まれ、RuのITOへの接着性が改善される。Ruは、Ag又はAg合金への好ましい結合性を有する。適切な材料及び物理的特性が維持される限り、他の金属又は各金属をCrとRu層の間に配置することができる。反射率及び透過率特性は、図49cのそれぞれ線4901c及び線4902cに示されている。
〔実施例2c〕
実施例2cは、ディスプレイ領域が最初に遮蔽されており、マスクを除去した後にCr/Ru(又は他の不透明剤)層が実質的に第3の表面全体を堆積していることを除き、実施例2a及び実施例2bと同様である。透過率及び反射率の結果は、図49a及び図49bのそれぞれ線4902a及び線4902bに示されている。関連する利点は、実施例1cと同様である。
〔実施例3a〕
この実施例では、EC要素の第3の表面は、ほぼ400ÅのTiO2、続いてほぼ180ÅのITO、続いてほぼ195Åの銀、最後に、ほぼ125ÅのIzo−Tcoで被覆される。
この実施例は、実施例1aと類似しており、TiO2及びITOは、実質的にガラスの縁部に被覆され、銀は、シールの外部側の少なくとも内側に遮蔽され、次に、EC流体からの保護障壁としてインジウム−亜鉛−酸化物(IZO)又は他のTCOの層が銀を覆って付加される。代替的に、IZO/TCO層は、実質的にガラスの縁部まで延びることができる。実施形態の少なくとも1つでは、第2の表面は、好ましくは、HWITO層を含む。要素の反射率及び透過率は、図50a及び図50bにそれぞれ線5001a及び線5001bで示している。モデル反射は、ほぼ550nmでほぼ57%、透過率はほぼ36%である。
〔実施例3b〕
実施例3bは、ディスプレイ領域が遮蔽され、Cr/Ruから成るスタックが、実質的に第3の表面の遮蔽されていない領域全体を覆って堆積することを除き、実施例3aと同様に構成される。Cr/Ru不透明化スタックは、材料のいくつかの組合せで置換することができる。反射率及び透過率の結果は、それぞれ線5002a及び線5002bにより図50a及び図50bに示されている。この例の利点は、一般的に不透明化層に用いられる金属が、実質的にガラスの縁部まで延び、関連する電気接触クリップと銀合金との間を架橋することができることである。関連する反射率及び透過率を測定したデータは、図50cにそれぞれ線5001c、線5002cで示されている。
〔実施例4a〕
この実施例では、EC要素の第3の表面は、ほぼ2100ÅのITO、続いて、ほぼ225Åのシリコン、最後にほぼ70ÅのRu又はRhで被覆される。
層の全ては、実質的にガラスの縁部まで被覆することができる。代替的に、ガラスは、加工してシートにし、その後、切断して、ミラー要素に組み込むための単体にすることができる。Ru又はRh層は、いくつかの高反射金属又は合金の1つで置換することができる。実施形態の少なくとも1つでは、第2の表面は、好ましくはHWITOで被覆される。この実施例は、異なる波長で透過率が増大することの利点を示している。基部ITO層は、異なる厚みの層で置換することができる。一部の実施形態では、ITOは、1/4波の奇数倍であることが好ましい。これらの場合には、反射率は、ITOにより僅かに増強されることになる。この効果は、ITOが厚くなると幾分減少する。厚いITOの利点は、一般的に、シート抵抗が低いことであり、それによって要素暗色化時間が速くなることになる。モデル反射は、ほぼ550nmでほぼ57%、透過率は、ほぼ11.4%である。モデル反射率及び透過率は、それぞれ図51a及び図51bに示している。測定した反射率及び透過率は、図51cにそれぞれ線5101c、線5102cで示している。
〔実施例5〕
この実施例では、EC要素の第3の表面は、ほぼ2100ÅのITO、続いてほぼ50Åのクロム、続いてほぼ75ÅのRu、最後に、任意的に、ほぼ77ÅのRhで被覆する。
層の全てを実質的にガラスの縁部まで被覆することができ、ガラスを加工してシートにし、その後、切断して、ミラー要素に組み込むための単体にすることができる。Ru層をいくつかの高反射金属又は合金の1つで置換することができ、又はロジウムのような付加的な層を加えることができる。金属層は、高又は低反射率/透過率均衡が得られるように調節することができる。実施形態の少なくとも1つでは、第2の表面は、好ましくはHWITO層で被覆される。厚いITOの利点の1つは、一般的にシート抵抗が低いことであり、それによって要素暗色化時間が速くなることになる。ITOが厚いと、第3の表面スタックの粗度を増大させることができ、それによって反射率を下げることができる。この効果は、それぞれ図52a及び図52bのモデル透過率及び反射率を実験で得られる透過率及び反射率(図52cのそれぞれ線5201c1及び線5201c2)に比較する時に観察される。モデル反射は、ほぼ550nmでほぼ57%、透過率は、ほぼ7.4%である。
〔実施例6a〕
第3の表面上の不透明剤層
この実施例では、不透明剤層は、第3の表面コーティングスタックに組み込まれる。ほぼ600Åのクロム、続いてほぼ600ÅのITOの基部層スタックは、ディスプレイ領域を基部層スタックの堆積処理中に遮蔽するか、又は後で基部層スタックのディスプレイ領域をレーザ削除するかのいずれかでガラス基体上に堆積される。次に、ほぼ700ÅのITO及び(ほぼ180Åの銀合金Ag−X、Xは、Agの合金のオプションを示す)の層を付加する。この手法では、可視領域は実質的に不透明であり、ディスプレイ領域は半透過型である。
合金は、シールから比較的遠くで遮蔽し、過酷な環境での要素の寿命を改善することができる。モデル反射は、ほぼ550nmでほぼ52%であり、透過率はほぼ41%である。
〔実施例6b〕
実施例6bは、実施例6aと同様である。この実施例では、第3の表面は、ディスプレイ領域以外は、最初に、ほぼ600Åのクロム、続いてほぼ100ÅのITO、続いてほぼ500ÅのTiO2、最後にほぼ50Åのクロムの基部層スタックで被覆される。実質的に、第3の表面全体は、次に、ほぼ150ÅのTiO2、続いてほぼ500ÅのITO、最後にほぼ180Åの銀−金合金で被覆される。モデル反射は、ほぼ550nmでほぼ54%、透過率はほぼ41%である。
エレクトロクロミックミラーの反射率(R)は、高透過率(T)レベルが望ましい場合は制限することができ、又は高反射率が必要である場合は透過率を制限することができる。これは、吸収(A)が一定のままであると仮定すれば、関係R+T+A=1で説明することができる。一部のディスプレイ、又は光センサ、ミラー用途では、関連するディスプレイを適切に見るか又はミラー要素に適切な光を透過させるために、高レベルの透過光又は(輝度)を有することが望ましい場合がある。多くの場合、それによって望ましい反射率よりも小さい反射率のミラーになる。
上述の限界に対処するための解決法は、1つ又は複数の金属層の厚みが可視領域の反射率に適切であり、ディスプレイ領域を覆う部分でのみ薄い本明細書の他の例で説明している。他の例では、異なる領域の色及び/又は反射率を一致させようとして、ディスプレイ領域を覆う異なる金属又はコーティングスタックの層を用いている。多くの場合、反射率又は色が突然に変化すると観測者に対して好ましくない。例えば、図55及び図56aを参照すると、2つの領域間の境界(C)は突然である。領域(A)の透過率は、領域(B)よりも高い。境界(C)は、2つの領域の輪郭を描いている。図63では、高及び低反射率領域の間の移行が開始する境界も突然である。反射率の変化/単位距離の傾きは、領域間を移行する時に無限大に近づく。
実施形態の少なくとも1つでは、金属層厚みの移行の様式は、漸進的である。移行領域で反射率及び/又は透過率が漸進的に変化すると、人間の眼で検出するのは困難である。2つの領域は、依然として互いに異なる反射率及び透過率値を有するが、2つの領域間の境界は漸変し、漸次移行は、突然の不連続部を排除し、それを漸進的移行で置換する。人間の眼は、漸変されているとその界面に引き付けられない。この漸変は、線状、曲線状、又は図56b〜図56dに示す移行の他の形とすることができる。漸変が生じる距離は、変動させることができる。実施形態の少なくとも1つでは、距離は、2つの領域の反射率差の関数である。2つの領域の間の反射率が比較的低い場合には、漸変距離は、比較的短くすることができる。反射率差が大きい場合には、移行の可視性を最小限にするために漸変が長いことが好ましい可能性がある。実施形態の少なくとも1つでは、漸変の長さは、用途及び意図する用法、観測者、照明等の関数である。
図56eに示す実施形態の少なくとも1つでは、透過率は、1つ又はそれよりも多くの部分でゼロ近くまで減少する場合がある。本明細書に説明する他の場合には、反射率は、同じか又は異なるものとすることができる。本明細書の他書に説明する「内密性」の実施形態を用いて、透過率を必要に応じてミラー要素の様々な部分で調節しながら、反射率を比較的一定に維持することができる。
本発明は、透過率又は反射率が一定の2つ又はそれよりも多くの領域を有することに限定されない。図56fには、一実施形態が示されている。領域Bの透過率は比較的低く、ゼロであることもある。これは、設計目的の1つが、領域Bに半透過型被覆基体の背部に配置された物体から入る光を遮蔽させることである場合には、望ましい可能性がある。コーティングスタックは、領域Bから傾斜Cで漸進的に移行することができる。領域Aは、それ自体に別の勾配を有することができる。これには、以下に説明する潜在的な利点がある。
ある一定の用途では、二重平坦域状況を達成するのに十分な長さが利用可能でない場合がある。このような場合には、図57aに示すように、半透過型特性が望ましい領域にわたって連続傾斜を用いることが有利である。反射率の変化は漸進的であり、高透過率であることの利点が得られる。すなわち、領域間には突然の界面は存在しない。
2つのゾーン間の傾きは、様々な形をとることができる。最も広い意味では、要素は、互いに異なる均一な透過率及び反射率の領域を含むことができる。図57a〜図57cに示す例では、一定の反射率及び透過率の領域は存在しない。これらの場合には、光学特性が漸進的及び連続的に変化する。この手法の利点を図58に示している。
見る人が、ミラー要素又は被覆ガラス基体を通してディスプレイを見る時には、ディスプレイの遠い部分に対してディスプレイに近い部分には、経路長さ及び角度の連続性が存在する。ミラー要素ディスプレイの方向、要素の大きさ、観測者からの距離等によっては、入射角に対する有効角度が変化することになる。それによってディスプレイ領域の様々な部分でガラスを通る透過率の量が異なることになる。透過率の量が異なると、次に、ディスプレイの輝度が変化することになる。ディスプレイの全ての領域から光が一定に出力されることが望ましい場合には、半透過型コーティングは、視角から生じる透過率の損失及びガラスを通る経路の差を考慮して変動させることができる。有効視角が.約45度から60度まで変化する場合には、ガラスを通る透過率は約6%変化することになる。従って、ディスプレイの領域の漸変半透過型コーティングを有すると、幾分この影響を補償することができ、従って、ディスプレイにわたる感知される光強度を更に等しくすることができる。
後部カメラ又は従来的なコンパス温度ディスプレイのようなディスプレイには、漸変移行ゾーンを用いることができる。本明細書の他所で説明した「内密」の一部の例では、不透明化層が、2つのAg層の間に配置され、半透過及び不透明特性の領域の外観を一致させるのを助けるいわゆる「分割Ag」スタックが設けられる。内密ディスプレイの別の実施形態では、Ag層が、不透明化層の上方に配置される。これらの実施形態の両方は、領域間の漸変移行から利益を得ることができる。不透明化層又はAg層又は全ての層は、漸変させることができる。実施形態の少なくとも1つでは、不透明化層は、漸変して、領域間の移行の唐突さを最小限にすることができる。
1つ又は複数の層の材料の厚みを変化させて移行領域を生成するために、以下に限定されるものではないが、マスキング、基体又はコーティング源のいずれかの運動又は速度の変化、マグネトロンの磁場の変化、又は本明細書に説明したイオンビームエッチング又は他の適切な手段のような層低減技術を含む多くの方法を用いることができる。
図59は、ガラスの背板5914、ほぼ440Åの二酸化チタンの副層及び約200ÅのITOの副層を含む層5972A、領域の1つの厚みが約140Åで別の領域の厚みが約235Åの6Au94Agの層5978、及び2つの間の厚みが漸進的に移行する第1の2つの領域の間の第3の領域、厚みがほぼ140ミクロンのエレクトロクロミック流体/ゲル5925、ITOのほぼ1400Åの層5928、及び2.1mmのガラス板5912を有するエレクトロクロミックミラー構成の例を示している。要素の得られる反射率は、ミラーの大部分の約63%からディスプレイの前部の領域の約44%までの範囲である。
マスキング技術と堆積源の磁気操作との組合せを用いて、図57cに説明して示したものと同様の方式で層5978の厚みを変化させる上述のものと同様のエレクトロクロミック装置を構成した。選択する方法は、完成した要素に必要な正確な特徴及びどのような処理法が利用可能であるかに依存することになる。図60及び図61は、ミラーの位置の関数として対応する反射率データを示している。ディスプレイは、この実施例では低反射率、高透過率の領域の背部に配置される。
漸変移行の別の用途は、エポキシシールを隠す第2の表面反射体を有するエレクトロクロミック要素であり、「リング」と第3又は第4の表面に位置決めされる反射体との間の反射率及び色の一致を達成することができる。最良の一致は、リングの反射強度が反射体の反射強度に一致する時である。実施形態の少なくとも1つでは、反射体の反射率は、リングを変更しない間に更に増大する。これは、耐久性、製造性、又は他の考慮事項により起こる可能性がある。反射体とリングの間の一致を維持するための手段は、反射体の反射率が上述のように漸変される時に得ることができる。反射率に漸進的変化が生じると、反射体の反射率は、リングの近くではリングの反射率に一致し、次に、リングから離れると漸進的に増大するように調整することができる。従って、可視領域の中心の反射率は、図62に見られるように比較的高い。
同様に、ITOは、リング領域から可視領域の中心まで漸進的に変化し、要素の中心の反射率を比較的高くしながら許容可能な色に必要な厚みの範囲を保つことができる。従って、ミラーは、要素にわたってITOコーティングが比較的薄い場合に比較して、比較的急速に暗くなることになる。
同じ概念を金属反射体電極に拡張することができる。この場合、漸変は、コーティングのシート抵抗が位置と共に漸進的に変化するように用いることができる。この方法は、様々なバス構成を補足し、更に速くて均一な暗色化をもたらす。図63は、本発明以前の従来技術によるミラー要素の実施形態を示している。
本明細書に提供した詳細説明は、当業者が本発明の様々な実施形態の最良のモードを作って利用することができるように意図したものであることを理解すべきである。これらの説明は、特許請求の範囲を制限するように意図されるものでは決してない。特許請求の範囲、並びに各個々の請求項の制限は、全ての均等物を含むように解釈されるものとする。