JP2009528062A - 真皮細胞のコンパクト凝集のための方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを凝集させる方法を提供する。本方法は、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を凝集させるために、真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを浮遊培養で増殖させる工程、及び前記培養を有効量の酵素と接触させる工程を含み、この場合、前記酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である。前記培養はハンギングドロップ培養であることができ、さらに前記酵素はヒアルロニダーゼであることができる。
【選択図】図28

Description

発明の詳細な説明
本明細書で引用される全ての特許、特許出願及び刊行物は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。これら刊行物の全体の開示は参照することにより本願に組み込まれる。
本特許の開示は、著作権保護に付される題材を含んでいる。かかる題材が米国特許商標庁の特許ファイル又はレコードに現れるとき、あらゆる者による特許文書又は特許開示の複製に対して著作権保有者は反対しない。それ以外は、あらゆる全ての著作権を留保する。
背景技術
皮膚圧縮は皮膚の付属器の形態発生にとって必須である。圧縮のメカニズムは、他の系(例えば骨)については説明されているが、毛包の皮膚圧縮についての厳密な分子的基礎は不明である。歴史的な研究において、初期毛包の形態発生中のCD44及びヒアルロナン(HA)の発現が記載されている。マイクロアレイ分析により、我々は、このメカニズムが皮膚圧縮の形成において主要な役割を果たしえることを示す新規な証拠を明らかにした。CD44が、HAのための主要レセプターとして機能すると同様に発生シグナリング経路の成分として機能することを示す証拠が文献で増加している。
発明の要旨
本発明は、真皮乳頭細胞(dermal papilla cell)を凝集させる方法、真皮鞘細胞(dermal sheath cell)を凝集させる方法、毛包形成を促進させる方法、及び毛髪の成長を促進させる方法に関する。
本発明は、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を浮遊培養で凝集させる方法を提供する。いくつかの実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。
本発明はまた、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を浮遊培養で凝集させる方法を提供し、この場合、前記培養は有効量の酵素と接触され、ここで前記酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である。いくつかの実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。ある種の実施態様では、前記酵素はヒアルロニダーゼである。
本発明は、真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを凝集させる方法を提供する。前記方法は、a)真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを浮遊培養で増殖させてコンパクトな細胞凝集物を入手する工程を含む。本発明はまた、真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを凝集させる方法を提供する。前記方法は、a)真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを浮遊培養で増殖させる工程、及びb)浮遊培養中の細胞外マトリックスの量を減少させることができる物質の有効量を前記培養と混合してコンパクトな細胞凝集物を入手する工程を含む。ある実施態様では、前記浮遊培養は可溶性因子を含む。ある実施態様では、前記浮遊培養はハンギングドロップ培養である。
ある実施態様では前記物質はタンパク質である。ある実施態様では、前記タンパク質は酵素である。ある実施態様では、前記タンパク質は細胞外マトリックス中の分子の1つを分解する。ある実施態様では、前記酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である。ある実施態様では、前記酵素は、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、又はそれらの組合せである。ある実施態様では、ヒアルロニダーゼは、約20U/mLから約50U/mLの量で約15日間までの間前記培養と混合される。ある実施態様では、ヒアルロニダーゼは、Hyal-1、Hyal-2、Hyal-3又はそれらの組合せである。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約9,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約7,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約5,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約3,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、浮遊培養はさらに上皮細胞を含む。ある実施態様では、上皮細胞は毛包又は皮膚に由来する。ある実施態様では、上皮細胞はケラチノサイトである。ある実施態様では、ハンギングドロップは少なくとも24時間培養される。ある実施態様では、ハンギングドロップは少なくとも48時間培養される。ある実施態様では、ハンギングドロップは約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15日まで培養される。ある実施態様では、ハンギングドロップは、誘導性マーカー遺伝子の発現が低下するまで培養される。ある実施態様では、誘導性マーカー遺伝子は、Wnt10b、WISE、ヴァーシカン、又はそれらの組み合わせを含む。ある実施態様では、可溶性因子は外因的に添加される。ある実施態様では、可溶性因子は、約5ng/mLから約300ng/mLの量で投与される。ある実施態様では、可溶性因子は、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、Wnt10b、表1及び表2の任意の1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせを含む。ある実施態様では、本方法はさらに、Wnt10b、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、表1及び表2に列挙された1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸を細胞にトランスフェクトする工程を含む。ある実施態様では、本方法はさらに、コンパクトな細胞凝集物を対象者の皮膚に移植する工程を含む。ある実施態様では、対象者は哺乳動物である。ある実施態様では、前記哺乳動物はヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はトリである。ある実施態様では、細胞は前記対象者にとって自己由来である。ある実施態様では、本方法はさらに、コンパクトな細胞凝集物を浮遊後培養(post-suspension culture)に置く工程を含む。ある実施態様では、前記浮遊後培養は生物分解性骨組みを含む。ある実施態様では、前記生物分解性骨組みはアルギネートを含む。ある実施態様では、前記細胞は一次細胞、二次細胞、継代された二次細胞又は細胞株を含む。ある実施態様では、前記細胞は、哺乳動物から入手されるか、又は哺乳動物由来である。ある実施態様では、前記哺乳動物はヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はトリである。
本発明はまた、凝集した真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せの毛包形成を促進する方法を提供する。前記方法は、a)真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを浮遊培養で増殖させる工程、b)ヒアルロニダーゼを前記培養と約1日から約15日間混合してコンパクトな凝集真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を生じる工程、及びc)前記培養を十分な時間増殖させて毛包を形成する工程を含む。ある実施態様では、前記浮遊培養は可溶性因子を含む。ある実施態様では、前記浮遊培養はハンギングドロップ培養である。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約9,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約7,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約5,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、ハンギングドロップ培養は約3,000未満の細胞を含む。ある実施態様では、前記培養はさらに上皮細胞を含む。ある実施態様では、上皮細胞は毛包又は皮膚に由来する。ある実施態様では、上皮細胞はケラチノサイトである。ある実施態様では、ヒアルロニダーゼは、約20U/mL培養液(culture media)から約50U/mL培養液の量で混合される。ある実施態様では、ヒアルロニダーゼは、Hyal-1、Hyal-2、Hyal-3又はそれらの組合せである。ある実施態様では、増殖工程は少なくとも24時間である。ある実施態様では、前記浮遊培養は、誘導性マーカー遺伝子の発現が低下するまで培養される。ある実施態様では、前記誘導性マーカー遺伝子は、Wnt10b、WISE、ヴァーシカン、又はそれらの組み合わせを含む。ある実施態様では、前記可溶性因子は前記増殖培養に添加される。ある実施態様では、前記可溶性因子は、約5ng/mL培養液から約300ng/mL培養液の量で培養に混合される。ある実施態様では、前記可溶性因子は、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、Wnt10b、表1及び表2の任意の1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせを含む。ある実施態様では、本方法はさらに、Wnt10b、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、又は表1及び表2に列挙された1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸を細胞にトランスフェクトする工程を含む。ある実施態様では、本方法はさらに、前記毛包を対象者の皮膚に移植する工程を含む。ある実施態様では、対象者は哺乳動物である。ある実施態様では、前記哺乳動物はヒト、マウス、イヌ、ネコ又はトリである。ある実施態様では、前記細胞は前記対象者にとって自己由来である。ある実施態様では、本方法はさらに、前記毛包を浮遊後培養に置く工程を含むか、又は前記増殖は浮遊後培養で生じる。ある実施態様では、前記浮遊後培養は生物分解性骨組みを含む。ある実施態様では、前記生物分解性骨組みはアルギネートを含む。ある実施態様では、前記細胞は一次細胞、二次細胞、継代された二次細胞又は細胞株を含む。ある実施態様では、前記細胞は哺乳動物由来である。ある実施態様では、前記哺乳動物はヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はトリである。
さらにまた、本発明は真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を浮遊培養で凝集させる方法を提供し、この場合、前記培養は有効量の酵素と接触され、ここで前記酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子であり、さらに前記培養液は有効量の可溶性因子が補充されている。いくつかの実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。ある種の実施態様では、前記酵素はヒアルロニダーゼである。本発明のさらに別の実施態様では、前記可溶性因子は外因的に添加される。他の実施態様では、前記可溶性因子は、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、又はWnt10bである。いくつかの実施態様では、前記可溶性因子は、表1及び表2から成る可溶性因子の群から選択される。
本発明は、浮遊培養で増殖させた凝集真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の毛包形成を促進する方法を提供し、この場合、前記培養は約21日から約35日ヒアルロニダーゼ酵素と接触されて凝集真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を生じ、さらに前記培養は十分な時間増殖されて毛包形成を可能にする。いくつかの実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。ある種の実施態様では、前記酵素はヒアルロニダーゼである。
本発明はまた、浮遊培養で増殖させた凝集真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の毛包形成を促進する方法を提供し、この場合、前記培養液は有効量の可溶性因子が補充され、さらに前記培養は約21日から約35日ヒアルロニダーゼ酵素と接触されて凝集真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を生じ、さらに前記培養は十分な時間増殖されて毛包形成を可能にする。いくつかの実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。ある種の実施態様では、前記酵素はヒアルロニダーゼである。本発明のさらに別の実施態様では、前記可溶性因子は外因的に添加される。他の実施態様では、前記可溶性因子は、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、又はWnt10bである。いくつかの実施態様では、前記可溶性因子は、表1及び表2から成る可溶性因子の群から選択される。
本発明は、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を圧縮する方法を提供し、この場合、ヒアルロン酸は真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の浮遊培養内で分解され、さらに前記浮遊培養は、CD44と結合したヒアルロン酸の真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞への取り込みを許容する条件下で増殖されて真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の圧縮を引き起こす。いくつかの実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。
さらにまた、本発明は、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を凝集させる方法を提供し、この場合、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の浮遊培養が提供され、ヒアルロン酸を分解することができる酵素が前記浮遊培養に混合され、さらに前記真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞に可溶性因子又は転写因子をコードするベクターを接触させて真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞にベクターをトランスフェクトし、可溶性因子又は転写因子を産生させ、それによって真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を凝集させる。いくつかの実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。他の実施態様では、前記ベクターに保持されている可溶性因子は、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、又はWnt10bである。ある種の実施態様では、ベクターに保持されている可溶性因子は、表1及び表2から成る可溶性因子の群から選択される。さらに別の実施態様では、ベクターに保持されている転写因子は、表1及び表2から成る転写因子の群から選択される。
本発明は、対象者で毛髪の成長を促進する方法を提供する。本方法では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を入手し、浮遊培養で培養する。前記細胞を有効量の酵素で処理し(前記酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である)、続いて細胞を対象者の皮膚に移植し、それによって対象者での毛髪の成長を促進する。いくつかの実施態様では、前記対象者は哺乳動物である。他の実施態様では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞は対象者にとって自己由来である。ある種の実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。さらに別の実施態様では、酵素はヒアルロニダーゼである。
本発明は、対象者で毛髪の成長を促進する方法を提供する。本方法では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を入手し、有効量の可溶性因子を補充した浮遊培養で培養し、さらに細胞を有効量の酵素で処理し(この場合酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックスである)、続いてこの細胞を対象者の皮膚に移植し、それによって対象者で毛髪の成長を促進する。いくつかの実施態様では、対象者は哺乳動物である。他の実施態様では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞は対象者にとって自己由来である。ある種の実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。さらに別の実施態様では、前記酵素はヒアルロニダーゼである。本発明のさらに別の実施態様では、前記可溶性因子は外因的に添加される。本発明のさらに別の他の実施態様では、前記可溶性因子は、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、又はWnt10bである。いくつかの実施態様では、前記可溶性因子は、表1及び表2から成る可溶性因子の群から選択される。
さらに別に、本発明は、対象者で毛髪の成長を促進する方法を提供する。本方法では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の圧縮を促進する有効量のヒアルロニダーゼ酵素が対象者の皮膚に適用され、ここでヒアルロニダーゼ酵素は、(a)皮膚によるヒアルロニダーゼ酵素の吸収の制御に有効な物質、(b)ヒアルロニダーゼ酵素の皮膚への浸透を促進する物質、及び(c)ヒアルロニダーゼ酵素並びに(a)及び(b)の物質のための担体を含む処方物で調製されて、対象者で毛髪の成長を促進する。いくつかの実施態様では、対象者は哺乳動物である。他の実施態様では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞は対象者にとって自己由来である。ある種の実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。さらに別の実施態様では、前記担体は水又はエタノールである。
本発明はまた、対象者で毛髪の成長を促進する方法を提供する。本方法では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の圧縮を促進する有効量のヒアルロニダーゼ酵素及び有効量の可溶性因子が対象者の皮膚に適用され、ここで前記ヒアルロニダーゼ酵素及び可溶性因子は、(a)皮膚によるヒアルロニダーゼ酵素及び可溶性因子の吸収の制御に有効な物質、(b)ヒアルロニダーゼ酵素及び可溶性因子の皮膚への浸透を促進する物質、及び(c)ヒアルロニダーゼ酵素、可溶性因子並びに(a)及び(b)の物質のための担体を含む処方物で調製されて、対象者で毛髪の成長を促進する。いくつかの実施態様では、対象者は哺乳動物である。他の実施態様では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞は対象者にとって自己由来である。ある種の実施態様では、前記培養はハンギングドロップ培養である。さらに別の実施態様では、前記酵素はヒアルロニダーゼである。本発明のさらに他の実施態様では、前記可溶性因子は外因的に添加される。本発明のさらに別の他の実施態様では、前記可溶性因子は、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、又はWnt10bである。いくつかの実施態様では、前記可溶性因子は、表1及び表2から成る可溶性因子の群から選択される。ある種の実施態様では、前記担体は水又はエタノールである。
発明の詳細な説明
真皮乳頭(DP)の形成をもたらす真皮細胞の圧縮は、部分的にはヒアルロン酸(HA)のCD44仲介分解によって開始する。HA分解は、真皮細胞の圧縮を、さらには潜在的には、前記細胞が凝集するやたちまち毛包を誘発するというDP細胞の能力を推進する。DPの長期培養は、DP細胞の誘発性能力の喪失により再移植に際して毛包形成を誘発することができない。本発明は、CD44仲介経路を介してDP細胞の前記誘発特性を維持し、それによって毛包の形成を可能にすることにより毛の成長を促進する新規な方法を提供する。本発明はまたDP細胞を凝集させる新規な方法を提供する。本方法では、DP細胞を三次元培養で増殖させ、酵素で処理してそれらの誘発能を再度獲得又は維持し、したがって天然の成長プロセスが再度許容される。もちろんのこと、本発明の方法は、導入遺伝子、機械的骨組み及び/又はバイオマテリアルの使用と合わせて実施することができる
外皮の概要
外皮(又は皮膚)は身体の最大の器官であり、身体の外表を覆う極めて複雑な器官である。前記は、多様な身体開口部において消化管及び他の導管の粘膜とともに出現する。外皮は、多数の主要な機能(例えば体温及び水分減少の調節を介する一定の内部環境の維持;汗腺による排泄)を果たすが、主として、深部組織に対する物理的、化学的及び生物学的因子の作用に対して防御的バリヤーとして機能する。皮膚は弾力性を有し、いくつかの領域(例えば足裏、手のひら及び耳)を除いて下部組織とゆるやかに結合している。皮膚はまた、まぶた(“薄い皮膚”)の0.5nm(0.02インチ)から手のひら及び足裏(“厚い皮膚”)の4nm(0.17インチ)又はそれ以上まで厚さが変動する(Ross MH, Histology: A. text and atlas, 3rd edition, Williams and Wilkins, 1995: Chapter 14;Burkitt HG, et al, Wheater's Functional Histology, 3rd Edition, Churchill Livingstone, 1996: Chapter 9)。
皮膚は、a)表皮及びb)真皮の2つの層で構成される。表皮(又は角質)は外層であり、比較的厚い(0.1nm)。前記は数細胞の厚みがあり、以下の5層で構成される:胚芽層、有棘層、顆粒層、淡明層(厚い皮膚に限られる)、及び角質層。表皮最外層(角質層)は死細胞から成り、前記死細胞は表面から常時放出され、胚芽層と呼ばれる1層の細胞基底層によって下から置き換えられる。表皮はもっぱらケラチノサイトで構成され、前記は細胞集団の95%以上を構成する。基底層(胚芽層)のケラチノサイトは定常的に分裂し、続いて娘細胞は上方及び外側に移動し、ここでそれら細胞は分化期間を経て最終的に表面から捨てられる。表皮の残余の細胞集団には樹状突起細胞(例えばランゲルハンス細胞及びメラノサイト)が含まれる。表皮は、本質的に細胞性で血管をもたず、細胞外マトリックスをほとんど含まない(ただしコラーゲン層及びケラチノサイトの基底層下の他のタンパク質を除く)(Ross MH, Histology: A. text and atlas, 3rd edition, Williams and Wilkins, 1995: Chapter 14;Burkitt HG, et al, Wheater's Functional Histology, 3rd Edition, Churchill Livingstone, 1996: Chapter 9)。
真皮は皮膚の内層であり、コラーゲン性細胞外物質、血管、神経及び弾性線維のネットワークで構成される。真皮内には、毛包とそれらの付属の皮脂腺(包括的に毛包皮脂腺ユニットとしても知られている)及び汗腺が存在する。表皮と真皮の間の境界は極めて不規則で非平坦性である(薄い皮膚を除く)。この2層間の接合部は、指様の結合組織の突起(真皮乳頭(DP)と呼ばれる)の連続から成る。表皮-真皮境界面に沿って存在する基底表皮細胞の下で、特殊化された細胞外マトリックスは組織化されて、基底膜と呼ばれる別個の構造物を構成する(Ross MH, Histology: A. text and atlas, 3rd edition, Williams and Wilkins, 1995: Chapter 14;Burkitt HG, et al, Wheater's Functional Histology, 3rd Edition, Churchill Livingstone, 1996: Chapter 9)。
哺乳動物の毛線維は角質化細胞で構成され、毛包から発達する。毛包は、表皮のダウングロースに由来する組織の釘であり、皮膚表面の真下に存在する。毛包の遠位部は、外部の皮膚性表皮と直接つながっている。小構造物ではあるが、毛包は高度に組織化された系であり、同心円的に連続して編成された別個の層を認識することができる。活動している毛包は真皮を通過し(皮下組織、これは結合組織の疎な層である)、さらに脂肪層へと下方に伸長する(Ross MH, Histology: A. text and atlas, 3rd edition, Williams and Wilkins, 1995: Chapter 14;Burkitt HG, et al, Wheater's Functional Histology, 3rd Edition, Churchill Livingstone, 1996: Chapter 9)。
活動毛包の基底部には毛球が存在する。毛球は真皮細胞体(真皮乳頭として知られる)から成り、表皮細胞で構成されたひっくり返されたコップ(表皮マトリックスとして知られる)内に収納されている。毛包の型に関係なく、この表皮マトリックスの最基底部の胚芽層の表皮細胞は、毛線維をいくつかの表皮支持層と併せて構成する。最下部の皮膚鞘膜は乳頭基底茎と接触し、ここから前記鞘膜は、ヘアマトリックス表皮層のほぼ全周の外側を薄い組織被覆としてカーブを描く。さらに皮膚鞘膜の最深部は毛包全長に対してスリーブ又は管として連続する(Ross MH, Histology: A. text and atlas, 3rd edition, Williams and Wilkins, 1995: Chapter 14;Burkitt HG, et al, Wheater's Functional Histology, 3rd Edition, Churchill Livingstone, 1996: Chapter 9)。
皮膚付属物(例えば毛包及び羽包)の発達は、皮膚の2つの層、表皮及び真皮の間の相互作用に左右される。胚の発生では、これら2つの層間における連続的な情報の交換が一連の複雑な形態発生プロセスを促進し、大人の包構造が形成される。しかしながら、一般的な皮膚の真皮及び表皮細胞とは対照的に、ある種の毛包細胞集団は、成熟後にそれらの胚タイプの相互作用、誘発作用及び生合成作用を維持する。これらの特性は、おそらく周期的な生産性を有する包の非常にダイナミックな性質に由来するであろう。そのような包では、反復される組織の再造形は、高レベルの真皮-表皮の相互作用的情報交換を必要とし、前記情報交換は胚の発達には必須であり、他の形態の組織再構築でも望ましいであろう。
毛線維は活動包の基底部で非常に速い速度で産生される。例えば、包は毛線維をヒトの頭皮で0.4mm/日、ラットの震毛又はひげで1.5mm/日までの速度で産生し、これは、毛包表皮の細胞分裂は大人の組織で最速に位置づけられることを意味する(Malkinson FD and JT Kearn, Int J Dermatol 1978, 17:536-551)。
深く埋め込まれた末端球(ここで局所的真皮-表皮相互作用によって活発な線維の成長が駆動される)は、毛包のもっともダイナミックな領域である。この同じ領域がまた、増殖期と退縮期との間を毛包又は付属物が正確に入れ替わるために必要な組織の再改造及び発達的変化の中心となる。真皮乳頭(これらの活動の重要なプレーヤー)が、胚芽層の原始的な表皮細胞供給源から毛繊維を形成することを特徴とする分化の複雑なプログラムを統制するように思われる(Oliver RF, J Soc Cosmet Chem, 1971, 22:741-755;Oliver RF and CA Jahoda, Biology of Wool and Hair (eds Roger et al.), 1971, Cambridge University Press: 51-67;Reynolds AJ and CA Jahoda, Development, 1992, 115:587-593;Reynolds AJ, et al., J Invest Dermatol, 1993, 101:634-38)。最下部の皮膚鞘膜は乳頭基底茎下で立ち上がり、ここから前記鞘膜は外側及び上方へカーブを描いていく。続いて、この皮膚鞘膜は、表皮ヘアマトリックス層の全てを薄い組織のコップとして外から包み込み、さらに毛包全長にわたって細管状の装置として連続する。この表皮外側根鞘膜はまた、毛包の全長にわたって連続し(毛包は2つの相の間で皮膚鞘膜の直ぐ内側に存在する)、ガラス状膜と称される特殊化された基底膜を形成する。外側根鞘膜はより下方の毛包では表皮単層以上のものはほとんど構成しないが、表面に近づくにつれだんだんと肥厚していく(Ross MH, Histology: A. text and atlas, 3rd edition, Williams and Wilkins, 1995: Chapter 14;Burkitt HG, et al, Wheater's Functional Histology, 3rd Edition, Churchill Livingstone, 1996: Chapter 9)。
以前の研究で、その末端球が除去されたラットのひげの毛包は、毛の成長促進に必要な全ての必須成分の再生により毛線維の成長を回復させえることが報告された(Oliver RF, In the Skin of Vertebrates [Ed. Spearman RIC], New York Academy Press, 1980: 199-210)。単離した真皮乳頭細胞は、in vivoで再移植されたとき、毛包を誘発する能力を示す相互作用力を有することもまた研究で示された(Oliver RF, J Soc Cosmet Chem, 1971, 22:741-755)。さらに、その後の実験もラットモデル系で実施された実験を支持し(Reynolds AJ and CA Jahoda, Development, 1992, 115:587-593;Reynolds AJ and CA Jahoda, PNAS, 1991, 624:226-42;Jahoda CA, Development, 1992, 115:1103-9;Jahoda CA and AJ Reynolds, J Invest Dermatol, 1993, 101:584-90)、さらに以下を含む他の種に由来する真皮乳頭細胞も同様な相互作用力を有することが確認された:マウス(Weinberg WC et al. J Invest Dermatol, 1993, 100:229-236;Lichti U et al. J Invest Dermatol, 1993, 101:124s-29s)及びヒツジ(Watson SA et al. Br J Dermatol, 1994, 131:827-35)。in situにおけるヒトの顔面毛包(Hage JJ and FG Boumann, Plast Reconstr Surg, 1991, 88:446-51)及び腋窩毛包(Inaba M and Y Inaba, Human Body Odor, Etiology, Treatment and Related Factors, Springer-Verlag [Tokyo], 1992: Chapter 16)は、げっ歯類宿主に移植した単離ヒト毛包(Johoda CA et al. J Invest Dermatol, 1996, 107:804-807)と同様に、末端球の除去の後で再生することもまた報告された。さらにin vitroの実験でもまた、ヒトの毛包組織及び細胞は、げっ歯類モデル系で観察された高度に特殊化された相互作用特性を示すことが強く示唆された(Reynolds AJ and CA Jahoda, Sem Devel Biol, 1993, 4:241-250)。
ある実施態様では、本発明は、毛包の球体から得られた細胞を凝集させる方法を提供する。別の実施態様では、前記細胞は真皮乳頭細胞である。他の実施態様では、前記細胞は真皮鞘細胞である。本発明はまた、凝集した真皮乳頭細胞の毛包形成を促進する方法を提供する。
CD44及びその組織特異的変種スプライス型
CD44は、広く分布する細胞表面糖タンパク質レセプターであり、前記は、組織特異的及び細胞タイプ特異的に選択されるスプライシングを介して単一遺伝子から生じた多くのアイソフォームとして発現される。CD44の特異的なアイソフォームは、いくつかの器官、特に上皮-間葉相互作用を示す部位の陥入上皮、例えば発達中の歯及び嚢胞における形態発生の重大な部位及びステージで存在する。
CD44遺伝子は20のエキソンで構成され、そのうちの10個が選択的にスプライスされて組織特異的アイソフォームを生じえる。CD44標準型(CD44s)(最も多い約80kDのアイソフォーム)は、エキソン1から5、16から18および20によってコードされ、HA-結合細胞外ドメイン、トランスメンブレンドメイン及び細胞質ドメインを含む。変種アイソフォームは、エキソン6−15の種々の組合せを含み、通常v1−v10と称される。皮膚の真皮はもっぱら一般的なCD44型を発現する。興味深いことに、表皮のケラチノサイトは、より大きな約180kDの変種型、v1-10及びv3-10を発現する唯一の細胞である。このアイソフォームはまた文献ではエピカンとして知られている。
ヒアルロナン(CD44の主要なリガンド)もまた形態発生的活動の徴候において存在する。今のところは、CD44とHAの分布がそれらの形態発生における協調的関与を示唆した例は比較的少ない。重要な例は、いくつかの重要な発生事象(肺及び骨端の発生を含む)の間のCD44によるヒアルロナンのエンドサイトーシス的排除の仲介である。皮膚の隣接区画内におけるHA及びCD44の毛包陥入時の同時局在は、同じメカニズムがこのプロセスで働いている可能性を示唆している(Yu Q and BP Toole, Dev Dyn, 1997, 208:1-10)。
圧縮は他の間葉細胞タイプではCD44-HAによって仲介される
圧縮は、いくつかの間葉系組織の発生では極めて重要なステージである。前記ステージは、以前に分散した細胞集団が一緒に集合して単一組織に分化するときに発生し、組織特異的遺伝子がアップレギュレートされる器官形成における最も早いステージを示す。圧縮は、有糸分裂活性の強化、中心に向かう細胞凝集、及び/又は中心からの細胞分散の失敗の3つの過程の1つ又はそれらの組合せの結果として形成される。
毛包の発達では、第一及び第三のメカニズムに反する証拠が存在し、利用可能なデータはいずれも、優勢なメカニズムとして中心に向かう細胞の凝集を指し示しているが、ただし毛包真皮の圧縮を支配する分子の指示は明らかではない。
第二のタイプの圧縮は、細胞間における細胞間間隙の減少と生じた細胞集団の凝集によって生じる。他の間葉系細胞タイプの圧縮を支配する因子には、とりわけWnt、Shh、FGF及びTGFβファミリーメンバーが含まれる。実施例3に記載されているマイクロアレイ実験結果及び文献で示されるように、これらの主要シグナリング経路もまた毛包誘発における重要なプレーヤーである(Beaudoin GM et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2005, 102(41):14653-8;O'Shaughnessy RF et al. J Invest Dermatol 2004, 123(4):613-21;Shimizu H and BA Morgan J Invest Dermatol 2004, 122(2):239-45;Andl T et al. Dev Cell, 2002, 2(5):643-53;Hibino T and T Nishijima, J Dermatol Sci, 2004, 35(1):9-18)。
興味深いことに、毛包のマイクロアレイデータセットの遺伝子本体の分析(実施例3)はまた、骨及び軟骨発生で必要な多くの遺伝子の存在を明らかにした。この実験結果は、もっとも初期の間葉の圧縮が詳細に判明している骨形態発生に関する文献(Wheatley SC et al. Development, 1993, 119(2):295-306;Weber B et al. Differentiation, 1996, 60(1):17-29)とマイクロアレイでのこの発見との比較を急がせ、前記がCD44-HA依存メカニズムによって仲介されることが示された。
細胞外マトリックス(ECM)は、細胞の一部分ではない、組織の材料部分を含む結合組織を規定する特徴である。ECMの主要成分は種々の糖タンパク質及びプロテオグリカンである。骨の場合、ECMはまたミネラルデポジットを含む。ECM中でもっとも豊富な糖タンパク質は、ほとんどの動物でコラーゲン(例えばI−XII型コラーゲン)である。プロテオグリカンもまた糖タンパクでありえるが、より多くの炭水化物側鎖クラスターで修飾されている。ECMで見出されるプロテオグリカンのいくつかの例は、コンドロイチン硫酸、硫酸ヘパラン、硫酸ケラタン及びヒアルロン酸(HA)である(Hardingham and Fosang, 1992, FASEB J, 6(3):861-70;Couchman, 1993, J Invest Dermatolo, 101(1 Suppl):60S-64S)。中心に向かう圧縮時に2つの細胞間の間隙を減少させる1つのメカニズムは、HAの除去によるものである。高HA濃度はある種の細胞タイプの凝集を阻止することができ、一方、低HA濃度は反対の作用をもちえる。HAの除去は2つの方法で達成することができる。第一は、HAS酵素の1つによるHA合成の緻密な制御を必要とする。HA生合成の維持及び真皮毛包でのHAS2発現停止のタイミング(他の圧縮の形成におけるその役割と同種である)は、将来の皮膚圧縮のサイズ及び位置を制御しえる。
第二に、HAの除去はまたCD44による内在化及び分解レベルで制御される。HA-仲介凝集は、内因性レセプター(もっとも一般的にはCD44)とHAとの結合に左右される(CD44は近傍の細胞上に存在する)。毛包の皮膚圧縮物で観察されたCD44発現の増加は、エンドサイトーシスによるHA除去及びそれに続くリソゾームヒアルロニダーゼによる細胞内分解を促進するために機能するかもしれない。今日までに報告されたヒアルロニダーゼの6つの型は、Hyal-1、Hyal-2、Hyal-3、Hyal-4、Spam1及びHyalp-1である(Csoka et al, 2001, Matrix Biology 20:499-508)。HAの分解産物はアクチンフィラメントのアラインメントに影響を及ぼし、おそらくは細胞の形状及び毛包の形態発生時に高度に活発となる運動に影響を与えるシグナリング経路を活性化することが知られている。発達中の毛包にCD44-HA成分が局在することは、どちらか(又は潜在的に)両方のメカニズムが毛包の皮膚圧縮の制御に必要とされえることを示唆している。
本発明は、毛包の球体から得られた細胞を凝集させる方法を提供する。ある実施態様では、前記細胞は真皮乳頭細胞である。別の実施態様では、前記細胞は真皮鞘細胞である。さらに別の実施態様では、細胞は、有効量の酵素の存在下で浮遊培養(例えば三次元培養、たとえばハンギングドロップ培養)で増殖され、酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である。さらに別の実施態様では、酵素はヒアルロニダーゼである。
本発明はまた、凝集した真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の毛包形成を促進する方法を提供する。ある実施態様では、細胞は、浮遊培養(例えば三次元培養、たとえばハンギングドロップ培養)で増殖される。別の実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素は、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の浮遊培養と約1日から約15日間接触される。さらに本発明の別の実施態様では、約10日から約15日間ヒアルロニダーゼ酵素と接触させた真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の浮遊培養を、毛包を形成させるために培養で増殖させる。
本発明では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を圧縮する方法もまた提供される。ある実施態様では、HAは、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の浮遊培養(例えば三次元培養、たとえばハンギングドロップ培養)内で分解される。別の実施態様では、浮遊培養は、CD44結合HAの真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞内への取り込みを可能にする条件下で増殖される。
Wntシグナリング経路及び他の調節発生タンパク質
本発明は、部分的には、Wntタンパク質(例えばWnt10b)は真皮乳頭細胞でのCD44遺伝子発現を調節し、さらに真皮乳頭細胞が保有する誘導能力はWnt10bシグナリングによって維持されるという発見に基づく。
Wntは、細胞から分泌されるが、可溶形としては稀である(Papkoff J and B Schryver, Mol Cell Biol, 1990, 10:2723-30;Burrus LW and McMahon AP, Exp Cell Res, 1995, 220:363-73;Willert K et al. Nature, 2003 423:448-52)。Wntタンパク質はグリコシル化されてあり(Mason JO et al. Mol Biol Cell, 1992, 3:521-33)、さらにパルミトイル化されている(Willert K et al. Nature, 2003, 423:448-52)。Wntシグナリング経路では、Wntはフリッズルド(Frizzled)(Frz)(多様な細胞タイプで見出される細胞表面レセプター)と結合する。ディシェヴェルド(Dishevelled)(Dsh)の存在下では、WntとFrzレセプターとの結合は、GSK3β仲介リン酸化の抑制をもたらすと主張されている。主張によれば、このリン酸化事象の抑制は、続いてβ-カテニンのリン酸化依存分解をもたらすであろう。したがって、Wnt結合は、細胞のβ-カテニンを安定化させる。続いてβ-カテニンは、Wnt結合の存在下で細胞質に蓄積し、さらにその後転写因子(例えばLef1)と結合することができる。β-カテニン-Lef1複合体は続いて核へ移動し、ここでβ-カテニン-Lef1複合体は転写活性化を仲介することができる。Wntシグナリング経路の他の作用及び成分は以下に記載されている:Aras AM et al. Curr Opin Gene Dev 1999, 9:447-454;Nusse R, Development, 2003, 130(22):5297-305;Nelson WJ and R. Nusse, Science, 2004, 303:1483-7;Logan CY and R Nusse, Annu Rev Cell Dev Biol, 2004, 20:781-810;Moon RT, et al. Nat Rev Genet 2004, 5(9):691-701;Brennan KR and AM Brown, J Mammary Gland Biol Neoplasia, 2004, 9(2):119-31;Johnson ML, et al. Bone Miner Res, 2004, 19(11):1749-57;Nusse R, Nature, 2005, 438:747-9;Reya T and H Clevers, Nature, 2005, 434:843-50;Gregorieff A and H Clevers, Genes Dev, 2005, 19(8):877-90;Brejsovec A, Cell, 2005, 120(1):11-4;Brembeck FH, et al. Curr Opin Genet Dev, 2006, 16(1):51-9(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
ペリオスチン(Osf2としても知られている)は、昆虫のタンパク質ファシクリンと相同性を有する、骨で最初に同定された分泌細胞粘着タンパク質であり、同種細胞好性細胞粘着を仲介する(Litvin J et al. Anat Record Part A, 2005, 287:1025-12;Horiuchi K, et al. J Bone Miner Res, 1999, 14(7):1239-49)。前記は、骨芽細胞及び卵巣上皮細胞の細胞粘着の調節、細胞分化(血管平滑筋細胞(VSMC)及び骨芽細胞)、及び細胞遊走(VSMC及び卵巣上皮細胞)の調節に関与している(Rios H et al. Mol Cell Biol, 2005, 25(24):11131-144;Litvin J et al. Anat Record Part A, 2005, 287:1025-12;Litvin J et al. J Cell Biochem, 2004, 92:1044-61;Oshima A, et al. J Cell Biochem, 2002, 86:792-804)。ペリオスチンは、胎児の骨膜、心臓弁、胎盤で、上皮間葉接合物の発達中の歯で、及び歯周靭帯で大量に発現される(Litvin J et al. Cardiovas Path, 2006, 15:24-32;Rios H, et al. Mol Cell Biol, 2005, 25(24):11131-144;Lindner V et al. Arterioscler Throm Vasc Biol, 2005, 25:77-83;Litvin J, et al. J Cell Biochem, 2004, 92:1044-61;Kruzyska-Frejtag, et al. Dev Dyn, 2004, 229:857-868;Horiuchi K, et al. J Bone Miner Res 1999, 14(7):1239-49)。前記はまた、多くの癌性組織で発現され、したがって腫瘍形成に必要であると考えられている(Tai IT, et al. Carcinogenesis, 2005, 26(5):908-15;Bao S, et al. Cancer Cell, 2004, 5:329-39)。Wntシグナリング分子、Wnt3もまたマウスの乳房上皮細胞でペリオスチンを調節すると報告された(Haertel-Wiesmann M, et al. J Biol Chem, 2000, 275(41):32046-51)。
毛包形成及び周期は抑制性シグナル及び刺激性シグナルによって制御される。このシグナリングの合図は、TGFβ-BMPファミリーのメンバーである増殖因子によって強化される。TGFβ-BMPファミリーメンバーの主要なアンタゴニストはフォリスタチンである。フォリスタチンは種々のBMP(例えばBMP-2、-4、-7及び-11)及びアクチビンの作用を前記タンパク質と結合することによって抑制する分泌タンパク質であり、主張によれば毛包の発達で役割を果たす(Nakamura M, et al. FASEB J, 2003, 17(3):497-9;Patel K, Intl J Biochem Cell Bio, 1998, 30:1087-93;Ueno N, et al. PNAS, 1987,84:8282-86;Nakamura T, et al. Nature, 1990, 247:836-8;Iemura S, et al. PNAS, 1998,77:649-52;Fainsod A, et al. Mech Dev, 1997, 63:39-50;Gamer LW, et al. Dev Biol 1999, 208:222-32)。フォリスタチンは、多様な翻訳後改変のために31−42KDaの分子量を有するモノマーポリペプチドである(Robertson DM, et al. BBRC, 1987, 149:744-49)。前記は、毛原基、ヘアマトリックス、毛包間表皮、外側根鞘膜の突出部で、内側根鞘膜細胞と同様に発現される(Ohyama M et al. J Clin Invest, 2006, 116(1):249-60;Nakamura M et al. FASEB J, 2003, 17(3):497-9)。Fst遺伝子のノックアウトマウスは歯及びひげの異常発生、ぴんと張っててかてか光る毛皮を呈し、生後まもなく死ぬ(Matzuk MM, et al. Nature, 1995, 374:360-3)。しかしながら、フォリスタチンタンパク質を過剰発現するマウスは、てかてか光った不規則な毛皮を有していた(Guo Q, et al. Mol Endocrinol 1997, 12:96-106)。これらの報告は、毛包の発生を調節するフォリスタチンの役割を示唆している。
WISEは、最初アフリカツメガエルで同定された分泌分子である(Itasaki N, et al. Development, 2003, 130:4295-305)。Wise遺伝子は、状況依存態様でWntシグナリング経路を調節し、さらに後神経マーカーを誘発することができる分泌タンパク質である(Itasaki N, et al. Development, 2003, 130:4295-305;O'Shaughnessy RF, et al. J Invest Dermatol, 2004, 123:613-21)。WISEは、Wntシグナリングを調節することが示されたタンパク質であり、Wnt阻害物質として作用すると主張されている(Beaudoin GM, et al. PNAS, 2005,102(41):14653-58)。Wiseは、初期発育相における毛包の前皮質及び突出領域で発現されると同様に、真皮乳頭細胞でも発現される(O'Shaughnessy RF et al. J Invest Dermatol 2004, 123(4):613-21)。しかしながら、WISE発現は、培養で維持されたDP細胞では失われる(O'Shaughnessy RF et al. J Invest Dermatol 2004, 123(4):613-21)。
本発明は、毛包の球体から得られる真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を凝集させる方法を提供する。ある実施態様では、細胞は、有効量の酵素の存在下で浮遊培養(例えば三次元培養、たとえばハンギングドロップ培養)で増殖され、酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である。別の実施態様では、酵素はヒアルロニダーゼである。他の実施態様では、ハンギングドロップ培養の培養液には、可溶性因子、例えばペリオスチン、Wnt10b、フォリスタチン及びWiseが補充される。さらに別の実施態様では、ハンギングドロップ培養の培養液には、表1及び表2に列挙された可溶性因子から選択される可溶性因子が補充される。
表1:マイクロアレイハイブリダイゼーションによって決定された真皮乳頭で誘発される遺伝子
Figure 2009528062
アクセッション:アフィメトリックスプローブセットのアクセッション番号
遺伝子:遺伝子記号
p-値:6クロスワイズ比較に対する中間p-値
倍率1及び倍率2:2つの代表的な実験におけるDP/DSの絶対増加倍率
EST?:ESTシークェンシングプロジェクト(Sleemann et al. 2000)で検出された遺伝子
表2:真皮乳頭及び皮膚鞘膜の両方で発現される選択遺伝子
Figure 2009528062

Figure 2009528062
本発明はまた、凝集した真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の毛包形成を促進する方法を提供する。ある実施態様では、細胞は、浮遊培養(例えば三次元培養、たとえばハンギングドロップ培養)で増殖される。別の実施態様では、ヒアルロニダーゼ酵素は、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の浮遊培養と約21日から約35日間接触される。さらに本発明の別の実施態様では、約21日から約35日間ヒアルロニダーゼ酵素と接触させた真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の浮遊培養を、毛包を形成させるために培養で増殖させる。他の実施態様では、ハンギングドロップ培養の培養液には、可溶性因子、例えばペリオスチン、Wnt10b、フォリスタチン及びWiseが補充される。さらに別の実施態様では、ハンギングドロップ培養の培養液には、表1及び表2に列挙された可溶性因子から選択される可溶性因子が補充される。
細胞治療
細胞治療法のためのDNA操作:ポリペプチド(例えばWnt10b、ペリオスチン、フォリスタチンなど)はいくつかの方法で入手できることは当業者には理解されよう。前記方法には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):生化学的手段により前記タンパク質を単離するか、又は問題のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を遺伝子操作方法によって発現させる。
本発明は、Wnt10b分子、ペリオスチン分子、フォリスタチン分子、又はWISE分子をコードする核酸を提供する。ある実施態様では、前記分子(例えばWnt10b分子、ペリオスチン分子、フォリスタチン分子、又はWISE分子)は、例えば細胞内での過剰発現を達成するための発現カセットである。本発明の核酸は、発現可能な様式(例えば発現カセット)の状態にあるRNA、cDNA、cDNA様、又はDNA核酸分子でありえる。前記は、天然のプロモーター又はその誘導体、又は完全に異種のプロモーターから発現させることができる。また別には、問題の核酸はアンチセンスRNAをコードしてもよい。前記問題の核酸はタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン、又はWnt10b)をコードすることができ、イントロンを含んでいてもいなくてもよい。
種々の生物由来の種々のWnt分子のヌクレオチド及びアミノ酸配列は公知である(以下を参照されたい:Lee FS, et al. Proc Natl Acad Sci USA, 1995, 92(6):2268-72;Gavin BJ, et al. Genes Dev, 1990, 4(12B):2319-32;及びChristiansen JH, et al. Mech Dev 1995, 51(2-3):341-50、前記文献は例えばネズミのWnt1、Wnt2、Wnt3a、Wnt3b、Wnt4、Wnt5a、Wnt5b、Wnt6、Wnt7a、Wnt7b、Wnt8a、Wnt8b、Wnt10b、Wnt11、Wnt12について記載している;van't Veer LJ, et al. Mol Cell Biol, 1984, 4:2532-34;Wainwright BJ, et al. EMBO J, 1988, June, 7(6):1743-8;米国特許6,159,950号;米国特許出願公開2005/0271632;PCT公開WO2001/74164;及びPCT公開WO1995/17416(前記文献はヒトWnt1、Wnt2、Wnt3、Wnt4、Wnt5a、Wnt7a及びWnt7bについて記載している)。種々の生物のWise分子のアミノ酸配列は以下の文献で見出される:Itasaki N, et al. Development, 2003, 130:4295-305及びO'Shaughnessy RF, et al. J Invest Dermatol, 2004, 123:613-21。ペリオスチン分子のアミノ酸配列は以下に記載されている:Takeshita S, et al. Biochem J 1993, 294:271-8;Horiuchi K et al. J Bone Miner Res, 1999, 14(7):1239-49;Litvin et al, J Cell Biochem, 2004, 92:1044-61;及びLitvin J et al. Anat Record Part A, 2005, 287:1025-12。フォリスタチン分子のアミノ酸配列は以下で見出されえる:Shimasaki S et al. Mol Endocrinol, 1989, 3(4):651-9;及びNakamura T, et al. Science, 1990, 247(4944):836-8。上記の参考文献は参照により本明細書に含まれる。
本発明のある実施態様では、問題のタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10b)をコードする遺伝子は、当業者に周知の標準的なプロトコルにしたがってゲノムライブラリー又はcDNAのどちらかからクローニングすることができる。例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10bをコードするcDNAは、適切な細胞株から全mRNAを単離することによって入手することができる。この全mRNAから二本鎖cDNAを当分野で既知の方法を用いて調製し、続いて適切なプラスミド又はバクテリオファージベクターに挿入することができる。遺伝子はまた、当分野で十分に確立されたPCR技術を用いてクローニングすることができる。ある実施態様では、フォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10bをコードする遺伝子は、Genbank、及び本発明がまた別に提供するヌクレオチド配列情報にしたがってPCRでクローニングすることができる。さらに別の実施態様では、フォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10bのcDNAを含むDNAベクターは、PCR反応の鋳型として機能しえる。前記PCR反応では、問題の領域を増幅するように設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、当該領域を含む単離DNAフラグメントを入手することができる。
本発明の発現ベクターは、少なくとも1つの調節性配列と宿主細胞内でヌクレオチドの発現が許容される態様で連結された、フォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10bのいずれかをコードするヌクレオチドを含むことができる。調節配列は当業者には周知であり、文献(Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990))に記載されたように、問題のタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10b)の発現を適切な宿主細胞で指令するために選択することができる。調節配列の非限定的な例には以下が含まれる:ポリアデニル化シグナル、プロモーター(例えばCMV、ASV、SV40、又は他のウイルスのプロモーター(例えばウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス及びアデノウイルス2に由来するプロモーター(Fiers et al. 1973, Nature 273:113;Hager GL, et al. Curr Opin Genet Dev, 2002, 12(2):137-41))、エンハンサー、及び他の発現コントロールエレメント。
エンハンサー領域(前記は非コードDNA領域でプロモーター領域の上流又は下流で見出される配列である)もまた最適化発現に重要であることは当業者には理解されよう。必要な場合には、ウイルス由来の複製起点を利用することができる(例えば原核細胞宿主がプラスミドDNAの導入に用いられる場合)。しかしながら、真核細胞生物では、染色体組み込みはDNA複製のための一般的なメカニズムである。
哺乳動物細胞の安定なトランスフェクションのために、わずかな細胞が導入DNAをそれらのゲノムに組み込みえることは当業者には理解されよう。利用される発現ベクター及びトランスフェクションの方法は、組み込み事象の成功を左右する因子でありえる。所望のタンパク質の安定な増幅及び発現のために、問題のタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10b)をコードするDNAを保持しているベクターが、真核細胞(例えば哺乳動物細胞、例えば毛包の末端球由来の細胞)のゲノムに安定的に組み込まれ、トランスフェクトされた遺伝子の安定な発現をもたらす。外因性核酸配列は、細胞(例えば哺乳動物細胞で上記に記載した一次又は二次細胞のどちらか)に米国特許5,641,670号(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に開示された相同組換えによって導入することができる。
選別可能なマーカー(例えば抗生物質又は薬剤(例えばアンピシリン、G418、及びヒグロマイシン)に対する耐性)をコードする遺伝子を、問題の遺伝子と一緒に宿主細胞に導入して、問題のタンパク質をコードする遺伝子を安定的に発現するクローンを同定しこれを選別することができる。選別可能マーカーをコードする遺伝子を問題の遺伝子と同じプラスミドで宿主に導入してもよいが、また別個のプラスミドで導入することもできる。問題の遺伝子を含む細胞を薬剤選別によって同定することができる。この場合、前記選別可能マーカー遺伝子を取り込んだ細胞は前記薬剤の存在下で生存するであろう。続いて生存細胞を所望のタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10b)の産生についてスクリーニングすることができる。
細胞治療を目的とする細胞トランスフェクション:真核細胞発現ベクターを用いて細胞にトランスフェクトし、ベクターのヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10b)を製造することができる。哺乳動物細胞(例えば毛球から単離した細胞、例えば真皮鞘細胞及び真皮乳頭細胞など)は、当分野で公知の方法を介して適切な宿主細胞に発現ベクターを導入することにより発現ベクター(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10bをコードする遺伝子を含む発現ベクター)を保持することができる。
外因性核酸は、当分野で公知の多様な技術(例えばリポフェクチン、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム沈殿、DEAE-デキストリン-仲介トランスフェクション、又はエレクトロポレーション)により、細胞に導入することができる。エレクトロポレーションは、対象細胞(例えば毛包の末端球の細胞、例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)へのDNA構築物の進入をもたらす凡その電圧及び静電容量で実施される。細胞にトランスフェクトするために用いられる他の方法にはまた、リン酸カルシウム沈殿、改変リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン沈殿、マイクロインジェクション、リポソーム融合、及びレセプター仲介遺伝子デリバリーが含まれえる。
遺伝的に操作される細胞は、一次細胞及び二次細胞でもよく、それらは多様な組織から入手することができ、培養で増殖させて維持することができる細胞タイプを含む。一次細胞及び二次細胞の非限定的な例には、上皮細胞(例えば真皮乳頭細胞)、神経細胞、内皮細胞、グリア細胞、線維芽細胞、筋細胞(例えば筋原細胞)、ケラチノサイト、血液構成細胞(例えばリンパ球、骨髄細胞)及びこれらの体細胞タイプの前駆細胞が含まれる。
脊椎動物組織は、当業者に公知の方法、例えば穿刺生検又は、対象の一次細胞型の組織供給源を得る他の外科的方法によって入手することができる。ある実施態様では、穿刺生検又は穿刺摘出は、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、又は間葉細胞(例えば毛包細胞又は真皮乳頭細胞)の供給源を入手するために用いることができる。別の実施態様では、毛包の摘出は、線維芽細胞、ケラチノサイト、内皮細胞又は間葉細胞(例えば毛包細胞又は真皮乳頭細胞)供給源を得るために用いることができる。一次細胞の混合物は、当分野で容易に実施できる方法、例えば体外移植又は酵素消化(例えばプロナーゼ、トリプシン、コラゲナーゼ、エラスターゼディスパーゼ及びキモトリプシンのような酵素を使用する)を用いて組織から入手することができる。生検方法はまた、米国特許出願公開1004/0057937及びPCT出願公開WO2001/32840に記載されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
一次細胞は、遺伝的に操作した一次又は二次細胞が投与される個体から入手することができる。しかしながら、一次細胞はまた、同じ種のドナー(レシピエント以外の者)から入手することもできる。細胞はまた別の種(例えばウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ウマ、ウシ、トリ、又はブタ)から入手することもできる。一次細胞にはまた、組織培養土台(例えばフラスコ又は培養皿)に付着増殖させた、又は浮遊状態で増殖させた単離脊椎動物組織源に由来する細胞;及びこれら平板培養した細胞から誘導した細胞培養浮遊物が含まれえる。二次細胞は、培養土台から取り出し再び平板培養又は継代した平板培養一次細胞を、その後続いて継代された細胞と併せて含むことができる。二次細胞は1回以上継代することができる。これらの一次又は二次細胞は、問題のタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10b)をコードする遺伝子を含む発現ベクターを保持することができる。
細胞治療のための細胞培養:種々の培養パラメーターを培養される宿主細胞に対応して用いることができる。哺乳動物細胞に適した培養条件は当分野で周知であり(Cleveland WL, et al. J Immunol Methods, 1983, 56(2):221-234)、または当業者が決定することができ(例えば以下を参照されたい:Animal Cell Culture: A Practical Approach 2nd Ed., Rickwood, D and Hames, B.D., eds. (Oxford University Press: New York, 1992))、さらに個々の選択宿主細胞にしたがって変動する。市販の培養液を利用することができる。培養液の非限定的な例には、例えばミニマル・エッセンシャル・メディウム(MEM, Sigma, St. Louis, Mo);ダルベッコー改変イーグル培養液(DMEM, Sigma);ハムF10培養液(Sigma);ハイクローン細胞培養液(HyClone, Logan, Utah);RPMI-1640培養液(Sigma);及び化学的規定(CD)培養液(前記は個々の細胞タイプのために処方される)、例えばCD-CHO培養液(Invitrogen, Carlsbad, Calif)が含まれる。
上記に記載した培養液には、必要に応じて補助成分又は含有物を補充することができる。前記には必要な若しくは所望される適切な濃度又は量の任意成分が含まれる。細胞培養液は、以下のカテゴリーの1つ以上に由来する少なくとも1つの成分を提供する:(1)エネルギー源、通常は炭水化物(例えばグルコース)の形態;(2)全ての必須アミノ酸、及び通常は20アミノ酸の基本セット+システイン;(3)低濃度で必要なビタミン及び/又は他の有機化合物;(4)遊離脂肪酸又は脂質、例えばリノール酸;及び(5)微量成分(微量成分は、典型的には非常に低濃度、通常はマイクロモルの範囲で必要とされる無機化合物又は天然に存在する元素と定義される)。
培養液にはまた、以下のカテゴリーのいずれかに由来する1つ以上の成分を任意に補充することができる:(1)塩、例えばマグネシウム、カルシウム、及びリン酸塩;(2)ホルモン及び他の成長因子、例えば血清、インスリン、トランスフェリン及び表皮増殖因子;(3)タンパク質及び組織加水分解物質、例えばペプトン又はペプトン混合物(前記は精製ゼラチン、植物材料又は動物副産物から得ることができる);(4)ヌクレオシド及び塩基、例えばアデノシン、チミジン及びヒポキサンチン;(5)緩衝剤、例えばHEPES;(6)抗生物質、例えばゲンタマイシン又はアンピシリン;(7)細胞保護剤、例えばプルロニックポリオール;及び(8)ガラクトース。ある実施態様では、可溶性因子、例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10bなどを培養液に添加することができる。
本発明で用いることができる哺乳動物細胞培養は、培養される個々の細胞に適した培養液中で調製される。ある実施態様では、細胞培養液は、哺乳動物由来の血清(例えばウシ胎児血清(FBS))が補充された前述の培養液の1つ(例えばMEM)であってもよい。別の実施態様では、前記培養液は、毛包の毛球から得られた細胞(例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)の増殖を維持するための条件付け培養液であってもよい。さらに別の実施態様では、毛包の毛球から得られた細胞(例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)に、問題のタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン、Wnt10b、表1及び表2の転写因子、又は表1及び表2の可溶性因子)をコードする遺伝子を含むDNAベクターをトランスフェクトすることができる。本発明の他の実施態様では、細胞は、有効量の酵素の存在下で浮遊培養(例えば三次元培養、例えばハンギングドロップ培養)で増殖され、この場合、前記酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である。別の実施態様では、前記酵素はヒアルロニダーゼである。毛包の毛球から得られた細胞(例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)は、当分野で実施されている方法、例えばPCT出願公開WO2004/044188及び米国特許出願公開No.2005/0272150(前記文献は参照により本明細書に含まれる)に記載された方法にしたがって培養することできる。
浮遊培養は、細胞又は細胞凝集物(例えばDP細胞凝集物)が液体培養液で浮遊しながら増殖する培養タイプである。哺乳動物細胞を含む浮遊培養は、付着しないか、又は付着形には見られない特異的な細胞の特徴を細胞に表示させることできる細胞タイプの維持のために用いることができる。浮遊培養のいくつかのタイプには三次元培養又はハンギングドロップ培養(例えば実施例6−8に記載の培養)を含むことができる。ハンギングドロップ培養は、平坦表面(例えばカバーガラス、ガラススライド、ペトリ皿、フラスコなど)に付着させた液の雫の中に培養されるべき材料が接種される培養であり、空洞表面に対してひっくり返すことができる。ハンギングドロップ中の細胞は、重力の結果として雫のたれさがった中心部に向かって凝集することができる。しかしながら、本発明の方法にしたがえば、細胞外マトリックスを分解するタンパク質(例えばコラゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼなど)の存在下で培養された細胞は、ハンギングドロップ培養内でさらにコンパクトになり凝集するようになるであろう。なぜならば、ECMの分解は、存在するECMを少なくして細胞が互いにより接近することを可能にするからである。
毛包の毛球から得られた細胞(例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)は、ハンギングドロップ培養で単一の均質な集団として培養され、DP細胞の凝集物を生じることができる。細胞はまた、ハンギングドロップ培養で不均質集団として(例えばDP及びDS細胞を含む)培養され、DP細胞及びDS細胞のキメラ凝集物を生じることができる。これは、本質的に本出願の実施例6−8に記載したように、又は以下の文献に記載された方法にしたがって実施することができる:Handbook in Practical Animal Cell Biology: Epithelial Cell Culture(Chapter 8)(Cambridge Univ Press Great Britain; 1996);Underhill CB, J Invest Dermatol, 1993, 101(6):820-6);又はArmstrong and Armstrong, (1990) J Cell Biol 110:1439-55(前記文献は全て参照により本明細書に含まれる)。
三次元培養は、寒天(例えばGey's Agar)ヒドロゲル(例えばマトリゲル、アガロースなど;Lee et al. (2004) Biomaterials 25:2461-66)又は架橋ポリマーから構成することができる。これらのポリマーは、天然のポリマー及びそれらの誘導体、合成ポリマー及びそれらの誘導体、又はそれらの組合せを含むことができる。天然のポリマーは、陰イオン性ポリマー、陽イオン性ポリマー、両親媒性ポリマー、又は中性ポリマーでありえる。陰イオン性ポリマーの非限定的な例にはヒアルロン酸、アルギニン酸(アルギネート)、カラギーナン、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸及びペクチンが含まれる。陽イオンポリマーのいくつかの例には、キトサン又はポリリジンが含まれるが、ただしこれらに限定されない(Pappas et al. 2006, Adv Mater 18:1345-60;Hoffman AS, (2002) Adv Drug Deliv Rev, 43:3-12;Hoffman AS, (2001) Ann NY Acad Sci, 944:62-73)。両親媒性ポリマーの例には、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン及びカルボキシメチルキチンが含まれえるが、ただしこれらに限定されない。中性ポリマーの非限定的な例にはデキストラン、アガロース又はプルランが含まれえる(Peppas et al. 2006, Adv Mater 18:1345-60;Hoffman AS, 2002, Adv Drug Deliv Rev, 43:3-12;Hoffman AS, (2001) Ann NY Acad Sci, 944:62-73)。
ある実施態様では、細胞(例えばDP細胞、DS細胞など)は、アルギネートビーズによるミクロ被包化培養で増殖させることができる。これは、本実施例10又は文献(Li et al. 2005, J Dermatol Sci, 38:107-9(前記文献は参照により本明細書に含まれる))に記載されたように実施することができる。当業者には、アルギネートは、その固有の生物適合性及び分解特性、並びに人体における使用についてのFDA認可のゆえに生物学的な系での移植に有用な材料として理解されよう(以下を参照されたい:Higasi et al. 2004, J Biosci and Bioeng, 97:191-195;Bunger et al. 2005, Biomaterials, 26:2353-2360;Lee et al. (2004) Biomaterials 25:2461-66;Li et al. 2006, Biotechnol Prog, 22(6):1683-9(前記文献はいずれも参照により本明細書に含まれる))。さらにまた、アルギネート素材を用いる免疫抑制は容易に改変がすることができる(Bunger et al. 2005, Biomaterials 26:2353-60)。
本発明の方法による培養に適した細胞は、導入された発現ベクター(構築物)、例えばプラスミドなどを保持することができる。前記発現ベクター構築物は、形質転換、マイクロインジェクション、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション又は感染により導入することができる。発現ベクターは、発現及び産生のためのタンパク質をコードするコード配列又はその部分を含むことができる。産生されるタンパク質及びポリペプチドをコードする配列を適切な転写及び翻訳エレメントとともに含む発現ベクターは、当業者に周知であり当業者によって実施されてきた方法を用いて作成することができる。これらの方法には、合成技術、in vitro組換えDNA技術、及びin vivo遺伝子組み換えが含まれ、前記は以下の文献に記載されている:J Sambrook et al. 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Plainview, N.Y.;及びFM Ausubel et al. 1989, Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.
細胞治療のための細胞移植:本発明は対象者で毛髪の成長を促進する方法を提供する。前記方法は、有効量のヒアルロニダーゼ酵素を対象者の皮膚に適用して、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の圧縮を促進することを必要とする。ある実施態様では、本方法はさらに可溶性因子(前記もまた真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の圧縮の促進に有益である)を対象者の皮膚に適用することを必要とする。可溶性因子の非限定的な例にはペリオスチン、フォリスタチン、Wise、Wnt10bの他に表1及び2に列挙された因子が含まれる。
ヒアルロニダーゼ酵素は、皮膚によるヒアルロニダーゼ酵素の吸収の制御に有効な薬剤、ヒアルロニダーゼの皮膚への浸透を促進する薬剤、並びにヒアルロニダーゼ酵素及び上記に記載の薬剤のための賦形剤(例えば水、又はアルコール、すなわちエタノール)を含む処方物で調製されえる。局所投与のために、細胞凝集物(例えばDP又はDS凝集物)は溶液、ゲル、軟膏、クリーム、懸濁物などとして当分野で周知のように処方することができる。いくつかの実施態様では、条件付け培養液が経皮デリバリー系(前記系は経皮吸収のために活性な化合物をゆっくりと放出する)で利用されえる。浸透促進剤を用いて条件付け培養液中の活性因子の経皮浸透を促進させることができる。経皮パッチは例えば以下に記載されている:米国特許5,407,713号、同5,352,456号、同5,332,213号、同5,336,168号、同5,290,561号、同5,254,346号、同5,164,189号、同5,163,899号、同5.088,977号、同5,087,240号、同5,008,110号及び同4,921,475号。
本発明はまた対象者で毛髪の成長を促進する方法を提供する。前記方法では、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を入手し、浮遊培養として培養する(例えば三次元培養、例えばハンギングドロップ培養又はアルギネートビーズを用いるマイクロ被包化による培養)。これらの真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を続いて有効量の酵素(例えばヒアルロニダーゼ)で処理し、この場合、酵素の基質は浮遊培養中の細胞外マトリックス分子(例えばヒアルロナン)でありえる。さらに、凝集した真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を対象者の皮膚に移植する。ある実施態様では、本方法はさらに、可溶性因子を培養液に適用して、真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の圧縮の促進をさらに容易にすることができる。
多様な投与経路及び多様な細胞移植部位(例えば皮下又は筋肉内)を用い、凝集細胞集団を所望部位に導入することができる。対象者(例えばマウス、ラット、又はヒト)にいったん移植したら、続いて毛包形成及びそれに続く毛髪構造物の導入部位での成長のために前記凝集細胞を刺激することができる。別の実施態様では、トランスフェクト細胞(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン、又はWnt10bを発現する細胞)が対象者に移植され、対象者で毛包の形成が促進される。さらに別の実施態様では、前記トランスフェクト細胞は、毛包の末端球に由来する細胞である。
1回以上継代して維持した凝集細胞(例えばハンギングドロップ培養で増殖させた細胞)又はトランスフェクト細胞(本明細書に記載のように作成した細胞)を対象者(例えばラット、マウス、イヌ、ネコ、ヒトなど)に導入することができる。ある実施態様では、細胞(例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)は、毛包の末端球から誘導することができる。本発明の他の実施態様では、細胞をハンギングドロップ培養での増殖により凝集させる。さらに別の実施態様では、細胞を、有効量の酵素(例えばヒアルロニダーゼ)と細胞をハンギングドロップ培養で接触させることによって凝集させる。この場合、前記酵素の基質は細胞外マトリックス分子(例えばヒアルロナン)である。他の実施態様では、細胞を、有効量の可溶性因子(例えばフォリスタチン、ペリオスチン、WISE及び/又はWnt10b)と細胞をハンギングドロップ培養で接触させることによって凝集させる。
さらに別の実施態様では、培養(例えばハンギングドロップ培養)で維持される細胞(一次又は二次細胞のどちらか、例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)にトランスフェクトしてもよく、続いて前記を対象者に導入することができる。さらに別の実施態様では、トランスフェクトした細胞はフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10bを発現することができる。さらに別の実施態様では、トランスフェクト細胞(例えば真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞)を、有効量の酵素(例えばヒアルロニダーゼ)と細胞をハンギングドロップ培養で接触させることによって凝集させる。この場合、前記酵素の基質は細胞外マトリックス分子(例えばヒアルロナン)である。他の実施態様では、問題のタンパク質(例えばフォリスタチン、WISE、ペリオスチン又はWnt10b)を発現するトランスフェクトされた真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を、有効量の酵素(例えばヒアルロニダーゼ)と細胞をハンギングドロップ培養で接触させることによって凝集させる。この場合、前記酵素の基質は細胞外マトリックス分子(例えばヒアルロナン)である。
“皮下”投与は、皮膚直下(すなわち真皮の下)に投与することを指す。一般的には、皮下組織は脂肪及び結合組織の層であり、前記にはより大きな血管及び神経が収納されている。この層のサイズは体全体を通して変動し、さらに個々人でも変動する。皮下層と筋肉層の境界は皮下投与によって囲まれえる。
この投与態様は、組成物中に存在する因子が投与位置から遊走又は拡散し、毛髪形成に必要な毛包細胞と接触することができるように皮下層が十分に薄い場合に実行可能である。したがって、皮内投与が意図される場合は、投与された大量の組成物は皮下層の近くに存在する。
細胞凝集物(例えばDP又はDS凝集物)の投与は単一経路に限定されないが、多重ルートによる投与を含むことができる。例えば、多重ルートによる例示的投与にはとりわけ、皮内及び筋肉内投与、又は皮内及び皮下投与の組合せが含まれる。多重投与は連続的でも同時でもよい。多重ルートによる他の適用態様は当業者には明白であろう。
他の実施態様では、この移植方法は幾人かの対象者については1回治療であろう。本発明のさらに別の実施態様では、多重細胞治療移植が要求されるであろう。いくつかの実施態様では、移植に用いられる細胞は一般的には対象者に特異的な、遺伝子的に操作された細胞であろう。別の実施態様では、異なる種又は同じ種の別の個体から入手される細胞を用いることができる。したがって、そのような細胞の使用は、移植される細胞の拒絶を予防するために免疫抑制剤の投与を必要とする可能性がある。そのような方法はまた、米国特許出願公開2004/0057937及びPCT出願公開WO2001/32840に記載されている(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。
実施例
本発明のより完全な理解を容易にするために下記に実施例を提供する。下記実施例は本発明の実施の例示的態様を詳述する。しかしながら、また別の方法を利用して同様な結果が得られるという理由により、本発明の範囲は、単なる説明を目的とするこれらの実施例で開示される特定の態様に限定されない。
実施例1:CD44は毛包におけるWnt標的遺伝子である
Wntシグナリングは毛包誘発に必要であることが示された。CD44は、腸管上皮におけるWnt応答性遺伝子であると提唱されている(Kuhnert et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2004, 101(1):266-71)が、ただしこれに関する明確な証拠はない。Wntシグナリングの阻害による毛包の形態発生の阻止は一切の毛包構造の完全な欠如をもたらし、真皮でWnt応答カスケード事象が必要とされえることが示唆される。CD44がまことに毛包におけるWnt応答性遺伝子であることを示すために実験を実施する。WntによるCD44の調節が直接的又は間接的のどちらであるかを示すためにもまた実験を実施する。これらの実験は、プロモーター-レポーターアッセイ、特にWnt経路の成分を査定するアッセイを用いて実施される。
実施例2:毛包真皮におけるHA消失のメカニズム
ヒアルロナンのCD44内在化は、発達中の骨圧縮で利用される主要なメカニズムである。マイクロアレイ分析によって、毛包形成直前の真皮内のCD44発現増加の証拠が、発達中の毛包真皮内のHAの著名な減少と同様に示された(表3参照)。発達中の毛包真皮内のCD44の発現及び主張されるHA内在化におけるその役割が判定されるであろう。
表3:DS細胞と比較してアップレギュレートされるDP細胞の遺伝子発現のマイクロアレイデータ(平均化されていない)
Figure 2009528062

Figure 2009528062
実施例3
毛包形態発生における遺伝子プロファイリング
マウス皮膚の初期毛包形態発生の序盤及び初期毛包形態発生中の遺伝子発現を解明する方法が、マイクロアレイ分析前に真皮及び表皮区画を分割することによって考案された。1つの特に興味深い遺伝子セットが、無傷の皮膚で実施したマイクロアレイ分析からもたらされた。これらは両方の区画でそれらが発現するために以前には隠蔽されていたものであった。
例えば、CD44は細胞表面糖タンパク質であり、前記は一般的な80kD型で多くの組織で広く発現される。表皮のケラチノサイトは、しかしながら顕著に異なる180kD型(エピカンとしても知られている)を発現する。同様に、皮膚でヒアルロナンシンターゼをコードする2つの異なる酵素(HAS2及びHAS3)は、それぞれ真皮及び表皮内で弁別的発現を示す。散発的な時点しか示されていない以前の実験と総合すれば、我々のマイクロアレイ分析は、12時間間隔における真皮及び表皮の弁別的な遺伝子発現について時間的及び空間的に広範囲なスナップ写真を提供する。
発生中の皮膚におけるCD44、ヒアルロナン及びそのシンターゼ発現
マイクロアレイ実験で示されたように、CD44-HAターンオーバーに必要とされる遺伝子の多くが、毛包形成時のマウスの皮膚に存在する(表3)。対応するタンパク質の時空的出現はさらに明確であった。CD44の90kD型は最初、e14.5の発生中毛包の真下の皮膚圧縮物中で発現される(図30及び下記文献を参照されたい:Underhill CB, J Invest Dermatol, 1993, 101(6):820-6)。その発現は、e15.5でわずかに増加し、続いて出生時に見えなくなるまで減少する。表皮はCD44の180kD型の弱い染色を示し、これは、マウスの妊娠期間を通して真皮と比較したとき比較的低いままであるが、それより後に表皮内で劇的に増加する。したがって、CD44は、圧縮真皮細胞のHA除去で役割を果たすためにまさに当を得た時期及び場所で発現される。
HA又は関連代理タンパク質の発現の同時減少は、提示された実験に基づいて予想される。HAそれ自体は、HABP(ヒアルロン酸結合タンパク質)に対する抗体を用いてアッセイされた。HABP染色の驚くべき減少が、発生中の毛包領域内において毛包間領域と比較して観察された(それぞれ図29A及び図29B)。同様に、アルシアンブルー染色を利用して発生中の毛包におけるグリコサミノグリカンをモニターし(図1)、HAの顕著な減少が、わずかに硫酸化されたグリコサミノグリカンに加えて、MgCl2濃縮と低pHを用いて観察された(図2−3参照)。皮膚圧縮物におけるある種のGAG(ヒアルロナンと類似)の消失は、“ホワイトアウト(whited-out)”領域によって示され、この領域では、おそらくCD44によってHAが消失する(図1を図2と比較されたい(それぞれマグネシウムの非存在下及び存在下を示す))。さらにまた、毛包発生の後期ステージ画像は、上皮区画におけるGAG濃度の低下を示している(図3)。総合すれば、発現実験は、マイクロアレイ分析の結果を確認しただけでなく、真皮圧縮の仲介で中心的役割を果たすべくCD44及びHAを正に正確な時間的空間的位置に配した。
マイクロアレイ実験及び分析の詳細な方法は以前に記載されている(O'Shaughnessy RF, et al. J Invest Dermatol, 2004)(前記文献は参照により本明細書に含まれる)。表1及び2は、ハンギングドロップ培養で増殖させた真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞の凝集に重要でありえる関連遺伝子を列挙している(O'Shaughnessy RF, et al. J Invest Dermatol, 2004)。
実施例4:CD44-HA経路の混乱は圧縮物を破壊しえる
CD44-HA経路のいくつかの成分が変異の標的となっている変異マウスを作成した。CD44変異動物は明確な表現型を示さず、これは、おそらく他の細胞表面レセプターによるCD44についての代償によるものであろう。しかしながら、2つのヒアルロナンシンターゼの除去を標的とする変異が報告され、前記は発生時のそれらの役割の解決に光明を投じた。HAS2は身体で発現されるHASの主要なアイソフォームである。HAS2のノックアウトは、心臓隆起から心臓凝膠体への遊走(上皮-間葉遷移(EMT)によって仲介されるプロセス)時期のe9.5で致死的である。HAS3-/-の動物は生存し繁殖能力を有するが、毛包における表現型を示す(Spicer AP, et al. Glycoconj J 2002, 19(4-5):341-5)。
興味深いことには、逆のアプローチもまた圧縮における混乱をもたらす。圧縮の開始は、軟骨細胞培養を操作して正常な圧縮時期を通してHAS発現を維持し、CD44によりHAが内在化され分解される時期を過ぎてもHAの生合成を持続させることによって実験的に遅らせることができる。
完全な皮膚の器官培養モデルを用いて、このメカニズムがまた毛包真皮の圧縮に必要か否かが決定されるであろう。このモデル利用の熟練性は下記に示され、この場合、毛包形成は以前に示されたようにEGFを用いて完全に阻害することができる(Kashiwagi M, et al. Dev Biol 1997, 189(1):22-32)。CD44は中和抗体を用いて阻止され、HAS2発現はショートヘアピンRNA(shRNA)を用いてノックダウンさせるか、又は培養液にグルココルチコイドを添加することによって阻害されるであろう。
それぞれその後に続く毛周期とともに毛包圧縮能力の強化を示す、1つのマウスモデル(構成的に活性を示すβ-カテニンマウス)が存在する。同様に、Dkk1-K14トランスジェニックマウスはWntシグナリングの完全な阻止を示し、毛包構造は全く見られない。これら変異体の皮膚の器官培養は、CD44-HAメカニズムはWnt強化及び/又はWnt抑制環境において活発であるか否かを問うために用いられるであろう。
実施例5:ヒゲパッド間葉のヒアルロニダーゼによる処置は圧縮をもたらす
ヒト及びラットの両方から新しく切り出した完全なDPは、低継代培養のラットDPのように、耳創傷アッセイで移植したとき新規な毛包を誘発することが示された。他方、培養ヒトDP細胞を用いたときはin vivoで新規な毛を誘発することができなかった。培養ヒトDPのこの誘発の失敗の主な理由は、それらが、創傷への導入時に圧縮を形成する能力を持たないことによると考えられている。それどころか、ヒトDP細胞は、あたかもそれらは創傷治癒環境に存在するかのように反応し、移植部位から離れていく。
凝集、圧縮および毛包の新生を受ける培養ヒトDPの能力を強化するいくつかの異なる手段が試されるであろう。以前の実験では、Underhill(J Invest Dermatol, 1993, 101:820-26)は、毛包発生時の間葉細胞の圧縮はヒアルロナンの局在分解に左右されるか否かを決定しようとした。この実験のために、d12.5のマウス胎児の頬パッドを切り出し、ストレプトマイセスヒアルロニダーゼ(特異的にHAを分解する酵素)の存在下及び非存在下で培養した。マウスヒゲパッドの器官培養のヒアルロニダーゼによる処理は、間葉細胞間の間隙の減少及び間葉の全般的圧縮をもたらした。この実験は、このメカニズムは毛包の発生で保存される可能性を支持する証拠を提供するが、圧縮細胞が誘発能力を高めたか否かの重要な機能的質問に答えるまでには至らない
凝集を高めるためのヒアルロニダーゼによる酵素処理の他に、このアプローチはDP細胞の三次元ハンギングドロップ培養と組み合わされるであろう。非付着条件下で増殖したヒトDP細胞は、雫中で自己凝集するとき完全なDPの特性の多くを提示することが示された。種々の増殖因子の培養液への添加の効果を判定して、これら因子が培養ヒトDP細胞の誘発性特性をさらに強化することができるか否かが決定されるであろう。これら因子には、Wnt10b(誘発性能力を強化することが文献で報告された)の他にペリオスチン(胚芽層上皮細胞から我々が同定した遺伝子)が同様に存在し、これらをラットDP細胞と同時培養すると誘発性が強化される。
実施例6:真皮乳頭細胞培養の新規なモデル
培養で増殖させたヒト毛包真皮乳頭(DP)細胞を調べた。前記細胞は特に興味深い。なぜならば、それら細胞は、初期継代の間それらの誘発性能力を維持するからである。しかしながら、in vivoでのDP細胞と培養DP細胞との間にはいくつかの重要な相違が認識された。例えば、平滑筋αアクチン(αSMA)は鞘膜細胞特異的in vivoマーカーであるが、いったん培養されると、乳頭細胞も鞘膜細胞も両方ともαSMAを発現する。さらにまた、発育相のDPに由来する培養細胞は高度に増殖性であるが、同じ細胞がin vivoでは増殖しない。プロテオグリカンは、組織の再造形において突出した役割を果たし、毛包におけるそれらの役割も例外ではない。プロテオグリカンは、細胞対細胞及び細胞対マトリックス相互作用を通して、及び細胞シグナリングの仲介物質として毛周期の間重要な役割を果たす。DPでのプロテオグリカンの発現は毛周期のステージとともに変動する。コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのバマカン(Bamacan)は周期特異的であり、前記は発育相で発現され、退行期に入ったときに消失し休止期の間はずっと消失している。シンデカン-1(Syndecan-1)(硫酸ヘパランプロテオグリカン)は、発育相のDPと同様に形態発生時に存在する。対照的に、硫酸ヘパランプロテオグリカンのパーレカン(Perlecan)の発現は毛周期を通して一定を維持する。
本実施例は、DP細胞は極めてわずかな体積の浮遊培養で増殖することができ、in vivoで見出される真皮乳頭細胞に形態学的により類似する小さな球状体を形成する。αSMA、プロテオグリカン及び増殖マーカーの発現プロフィルを用いる、DP細胞を増殖させる2つの培養間の相違が記載される。
一般的なラットDP及びDS細胞培養法:真皮乳頭(DP)を大人のラットのヒゲ毛包から以前に記載された方法を用いて切り出した(Jahoda CA and RF Oliver, Br J Dermatol, 1981, 105:623-27;PCT公開WO2005/05911929)。略記すれば、ミスタシアル(mystacial)パッドを切開し、皮膚を反転させ、単離した毛包洞末端球領域を取り出した。続いて極細ピンセットを用いて、末端球のコラーゲンカプセルを反転させ、乳頭及び上皮マトリックスを露出させた。続いて前記マトリックス成分を取り出し、乳頭上になお存在する一切の上皮組織を剥がした。続いて極細ピンセットを用いて乳頭を抜き取り、培養容器に移した。
切り出した乳頭を、最初は20%ウシ胎児血清(Seralab)及びイーグル最少必須培養液(E-MEM)(前記はGlutamax-I、アール塩類及びゲンタマイシン(50μg/mL)含有25mMヘペス(Invitrogen)を含む)中で培養した。細胞培養は、35mmの培養皿(Falcon)で開始し、第1回の継代後これらの容器で継続した。第二回の継代で、細胞を25cm2のフラスコ(Falcon)に移した。第1回の継代の後、ウシ胎児血清の培養液中の濃度を10%に下げた。皮膚鞘膜(DS)組織はヒゲ毛包から記載にしたがって単離した(Reynolds AJ, 1989, from Ph.D. Thesis: in vivo and in vitro studies of isolated and interavting dermal and epidermal components of the integument)。上記のDPの解剖の間、毛包の末端球を反転させたとき、DSは潰れるが、DPの基底に結合したままであった。続いて極細ピンセットを用いてDSを乳頭からそぎ取り、いくつかの毛包のDS組織片を、最初に上記DP細胞について記載した態様と正確に同じ態様で培養した。
真皮乳頭及び真皮鞘細胞クローンの調製:真皮乳頭及び皮膚鞘膜組織は、3カ月齢のウィスターラットのヒゲ毛包から上記に記載したように微細解剖によって入手した。個々の体外移植片は24ウェルプレートで、20%DP又はDS一次培養条件付け培養液を含む、抗生物質(Sigma)補充MEM+10%FES(MEM+CM)中で培養した。一次培養は37℃/5%CO2で5日間培養して、細胞分裂量を抑制しながら体外移植片から外へ細胞が増殖するのを可能にした。個々の体外移植片から得られた細胞を37℃にて5分0.25%トリプシンでインキュベートすることによって採集し、各ウェル当たり1細胞の濃度で限界稀釈により96ウェルプレートでクローニングした。24時間後に位相差顕微鏡により単一細胞を含むウェルを確認し、これらを7日毎に培養液を交換しながらMEM+CM中で28日間培養した。培養は21−35日毎に日常的に継代した。
継代3から継代5のヒトDP細胞をトリプシン処理し、35mmの培養皿に50,000細胞でプレート培養するか、又は3000細胞を含むハンギングドロップに置いた。全ての細胞を10%FBS含有MEMで培養し、培養30時間後に採集した。2つの培養間の特性決定及び比較をリアルタイムRT-PCR及び免疫細胞化学を用いて実施した。球体の完全性及び生存率をTEM及び生存マーカーを用いて確認した。
結果:パーレカン及びシンデカン-1の発現はフラット細胞及び真皮細胞球体の両方で同様であった。しかしながらバマカン発現は真皮球体で低下した。αSMAは培養細胞で発現したが、発現は真皮球体で消失した。細胞分裂は培養細胞では示されたが、球体内の細胞は、Ki67及びPCNAの発現低下によって示されるように極めてわずかしか増殖しなかった。
結論:ハンギングドロップ培養細胞は通常培養の真皮乳頭細胞とは異なるプロフィルを示し、球体は休止期様状態に類似した。
実施例7:摘出毛包に移植されたヒトDP“ボール”
凝集物を作成するために細胞を調製する:DP細胞を先ず初めにそのT25フラスコ内で洗浄し、続いて前記フラスコ内でトリプシン処理した。10%FBSを含む培養液を細胞に添加してトリプシン処理を停止し、続いて1000rpmで5分間遠心した。余分な培養液を流し去り、細胞ペレットを無血清/無抗生物質培養液で洗浄して一切の残留トリプシンを除去し、さらに1000rpmで5分遠心した。余分な培養液を流し去った後、細胞ペレットを10%FBS含有dMEM培養液の1mLに再浮遊させた。血球計算盤を用いて細胞を計測した。10%FBS含有dMEM培養液を添加することによって細胞を300細胞/μLに稀釈した。
凝集物の形成:DP細胞凝集物(“ボール”)を、ひっくり返したペトリ皿のふたの上にほぼ3000細胞/雫となるようにピペットで10μLの細胞の雫を約0.7cm離して置いた(図4参照)。ペトリ皿の土台部をPBSで満たした後、続いてふたをひっくり返し(滑らかにかつ迅速に)、土台部上に置いた(図5参照)。このプロセスはさらに2枚のプレートで繰り返し、DPボールを含むプレートの積み重ねを作成した。DPボールを含まないがPBSを満たした最後のペトリ皿を前記の積み重ねの一番上に置いた(図5)。これらの培養皿を37℃で30時間インキュベートし、真皮乳頭(DP)細胞を含む単一ボールを作成した。
この方法はまた真皮鞘細胞の凝集物を作成するために実施することができる。
摘出毛包:ラットのヒゲ毛包をフェースパッドから切り出し、MEM培養液で洗浄し、続いて寒天上に置いた。神経の上部で末端球を取り出し、続いてゲイ(Gey)寒天に上方の毛包を最初に押し込んだ。ボール(上記に記載)を培養皿から取り出し、1滴のMEM培養液中に置いた。続いて1個のDPボールを外側根鞘膜に対抗して静置し、これをヌードマウスの腎カプセル下で移植した(図6及び図7に示した模式図を参照)。続いてサンプルを取り出し、写真撮影し、続いて顕微鏡分析(例えばH&E染色(Cat#SS007:Biogenex, San Ramon, CA);免疫組織化学、例えばDAB染色(Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labellin Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA);および免疫蛍光顕微鏡法(Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labellin Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA))のために切片を作成した。
結果:ヒト成人DP凝集物は摘出毛包で新規な毛の成長を誘発した(図8−10参照)。毛包切片では、新しい真皮乳頭細胞がヴァーシカンに対する抗体で染色された(赤)。ヴァーシカンは大きなコンドロイチン硫酸プロテオグリカンであり、この結果は、実際に発育相のDP細胞は特異的ヴァーシカン発現を維持することを示した(図11)。これらのDP細胞はまた、培養で毛の誘発活性を維持した(以前の実験は、上皮細胞からの刺激がなければ培養を継代している間にDP細胞はこの誘発能力を失うことを示した)。陽性コントロールとして、毛包に移植されたラットDP細胞から出る太い黒色の線維が観察される(図12)。
実施例8:フットパッドの上皮に移植されたヒトDP“ボール”
凝集物作成のために細胞を調製する:DP細胞を先ず初めにそのT25フラスコ内で洗浄し、続いて前記フラスコ内でトリプシン処理した。10%FBSを含む培養液を細胞に添加してトリプシン処理を停止し、続いて1000rpmで5分間遠心した。余分な培養液を流し去り、細胞ペレットを無血清/無抗生物質培養液で洗浄して一切の残留トリプシンを除去し、さらに1000rpmで5分遠心した。余分な培養液を流し去った後、細胞ペレットを10%FBS含有dMEM培養液の1mLに再浮遊させた。血球計算盤を用いて細胞を計測した。10%FBS含有dMEM培養液を添加することによって細胞を300細胞/μLに稀釈した。
凝集物の形成:DP細胞凝集物(“ボール”)を、ひっくり返したペトリ皿のふたの上にほぼ3000細胞/雫となるように10μLの細胞の雫をピペットで約0.7cm離して置いた(図4参照)。ペトリ皿の土台部をPBSで満たした後、続いてふたをひっくり返し(滑らかにかつ迅速に)、土台部上に置いた(図5参照)。このプロセスはさらに2枚のプレートで繰り返し、DPボールを含むプレートの積み重ねを作成した。DPボールを含まないがPBSを満たした最後のペトリ皿を前記の積み重ねの一番上に置いた(図5)。これらの培養皿を37℃で30時間インキュベートし、真皮乳頭(DP)細胞を含む単一ボールを作成した。
この方法はまた真皮鞘細胞の凝集物を作成するために実施することができる。
フットパッド上皮:アールMEM培養液中のパンクレアチン及びトリプシンを用いて皮膚の半分にわたってフットパッドの表皮及び真皮を分離させた。表皮をそれ自体の上で折り返し前記をゲイ寒天上に置いた。続いてDPボールを培養から取り出し、1滴のMEM培養液中に置いた。1度に1個のDPボールをピンセットで取り出し、真皮の上に置いた。ほぼ4−5個のDPボールを各皮膚の小片上に置いた。続いて折れた表皮を戻してDPボールを挟み、続いて37℃で2時間インキュベートした。続いてこのDPボールをヌードマウスの腎カプセル下に置き(図13及び図14に示した模式図を参照)、これを取り出し、写真撮影し、続いて顕微鏡分析(例えばH&E染色(Cat#SS007:Biogenex, San Ramon, CA);免疫組織化学、例えばDAB染色(Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labellin Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA);および免疫蛍光顕微鏡法(Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labellin Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA))のために切片を作成した。
結果:ヒト成人DP凝集物は皮膚圧縮物として観察された(図15参照)。毛包切片では、上皮細胞は、P-カドへリン(毛包上皮に特異的なマーカー)に対して作成された抗体で染色された。これらの細胞は、DP細胞を含む皮膚圧縮物(図16で観察される、P-カドヘリン染色を欠くことによって示される)を取り囲んだ。フットパッドの皮膚に挿入され続いて腎カプセル上に移植したDPボールのDP細胞は、周囲の上皮細胞の非存在下でそれらの毛誘発活性を維持した。DP凝集物のアルシアンブルー染色は、GAG(例えばヒアルロナン(図17で褐色の染色として示される、中央パネル))の存在について陽性を示した(図17)。
実施例9
マイクロアレイデータ
初期の毛皮毛包形態発生時の皮膚の主要なシグナリング経路を解明するために、微細解剖及びマイクロアレイ技術を組合せて用いた。12.5dpc(days post coitus(交尾後))、13.5dpc、14.5dpc及び15.5dpcの胚から採取した皮膚を酵素により真皮及び表皮成分を別々に分割し、全転写プロファイリングをマイクロアレイチップ(MOE430A)を用いて実施した。比較用参照として12.5dpc胚の皮膚を用い、GeneTrafficTMソフトウェアでデータを分析した。マイクロアレイデータの最初の精査によって、ソニック、ヘッジホッグ及びWnt経路(毛包形態発生時の主要なシグナリング分子として以前に同定された)における弁別的な遺伝子発現が明示された。更なるデータの調査により、ヒアルロナン合成及び調節に必要な遺伝子の発現レベルでさらに多くの新規な変化が特定された。
ヒアルロナン及びCD44は毛包形態発生時の真皮の圧縮物で逆に発現される
ヒアルロナン(HA)及びCD44の発現を、13.5dpcから16.5dpcの時点(毛包発生の初期ステージに対応する)の胎児マウス皮膚の毛皮毛包で精査した。CD44もHAも両方とも発生中の毛包の皮膚圧縮物でダイナミックな発現パターンを示した。免疫組織化学分析(DAB染色;Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labellin Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA)によって、CD44タンパク質は精査した全ての発生時点で表皮の上部の分化中の細胞層で 発現することが示された。真皮内では、CD44の発現は14.5dpcまでは存在せず、この時点で表皮の毛の原基及び真皮圧縮の両方が眼に見えるようになった(図30))。この発生ステージで、CD44の発現は文献(Yu and Toole, Development Dynamics 1997, 208:1-10)に記載された方法にしたがって可視化され、真皮区画内の皮膚圧縮物にもっぱら限定されることが見出された(図28)。この局在化した発現は調べた発生ステージを通して持続した。HA分布は、以前に記載されたように(Underhill CB, J Invest Dermatol, 1993, 101(6):820-6)、高親和性の特異的ヒアルロナン結合タンパク質を用いて精査した。調査した発生の全ての時点で、HAはもっぱら真皮内で見出された(図1−3)。皮膚圧縮の形成時に、HAはこの構造物から消失し、毛包形態発生の初期ステージ中は存在しないままであった(図13)。
皮膚圧縮物内のヒアルロナンのダウンレギュレーションは進化において保存されたメカニズムである
羽の形態発生の初期ステージに対応するニワトリの背部皮膚(7.5dpc及び8.5dpc)を、HA特異的プローブを用いて調べた(染色は図18に赤色で示されている)。マウスの皮膚の発現結果と同様に、HAは真皮全体に均質に発現された(皮膚圧縮物が形成される前(7.5dpc))。しかしながら、いったん皮膚圧縮物が見えるようになると(8.5dpc)、この構造物で発現は消失した(図18)。このことは、皮膚圧縮は多様な種で保存されたメカニズムであることを示唆している。
マウス胎児皮膚の器官培養におけるヒアルロナン及びCD44の発現はマウスのin vivo発現を繰り返す
HFの発生におけるHAの誤発現の影響を調べるために、胎児皮膚の器官培養モデルを利用した。HAのin vivo分布の役割を調べるためにこのモデルがどの程度典型的であるかを判定するために、培養胎児皮膚におけるCD44及びHAの発現を先ず初めに精査した。胎児皮膚の培養は、前毛包開始(14.5dpc)皮膚を用いて樹立し、72時間インキュベートした。培養皮膚の毛プラコードは培養後24時間で見えるようになった。72時間後に、皮膚を培養から取り出し、切片を作成し、HA及びCD44の両方の発現を判定した(図19)。皮膚圧縮物はHA染色(赤色)について陰性であったが、CD44は発現した(緑色)。培養背部皮膚のHFの両タンパク質の発現は、16.5dpcのin vivoの背部皮膚のそれと実質的に区別することはできなかった(図19)。
胎児皮膚培養におけるHA低下の毛包形態発生に対する影響
HA合成のダウンレギュレーションの毛包形態発生に対する影響を調べた。胎児の皮膚をBSA(コントロール)又は2つのHAS阻害物質、レフルノミド(Lef)(50nM)又は4-メチルウンベリフェロン(30mM)のうちの1つの存在下で72時間培養した。BSAの存在下では、CD44はもっぱら皮膚圧縮物中に局在したが、HAは皮膚圧縮物には欠落したままであった(図20)。したがってBSAはタンパク質発現を変化させず、また細胞性メカニズム(例えばCD44仲介HA取り込み)も破壊しなかった。4-メチルウンベリフェロン処理皮膚(n=6)の表面を可視化したとき眼に見える毛包の数に影響はなかった。Lef処理は、しかしながら、皮膚(n=6)の表面の眼に見える毛包の数を減少させた(図21)。この減少は、毛包の形態発生および発達に対するLefの実際の阻害作用によるものか否かを確認するために、全ての処理及びコントロール群から得た培養皮膚を酵素により分離し、分離した表皮を反転させて発達中の表皮の毛の原基を見ることを可能にした。Lef処理培養の表皮の原基ははっきりと見ることができたが、しかしながらそれらは、コントロール又は4-メチルウンベリフェロン処理皮膚培養のそれよりも小さくさらにまばらであった(図21)。
皮膚培養における毛包の形態発生時のHAタンパク質の全分解の影響を調べるために、胎児の皮膚を、BSA(コントロール)又はヒアルロナナーゼ(HAase)(25ユニット/mL)のどちらかの存在下で72時間培養した。Lef処理皮膚の培養に関しては、表皮の原基の数を皮膚表面で識別することは可能であり、その数は減少しているようであった。興味深いことに、上記のような表皮と真皮の分離は、HAase処理がほとんど又は全く表皮の毛原基のサイズ又は数に影響を与えないことを明らかにし、皮膚表面の眼で見える毛包の欠如は、毛包の阻害以外(すなわち表皮の肥厚)の影響による可能性があることを示唆した。
HAS阻害及びHAase処理の影響の特性決定
72時間の培養に続いて、上記記載の4つの処理から得た胎児の皮膚を凍結包埋し、切片を作成し、組織学的調査のためにヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色した。4-メチルウンベリフェロンの存在下で培養した皮膚は、繰り返せばコントロールの皮膚(16.5dpcのin vivoの背部皮膚に対応する)と区別することはできないようであった(図22)。シンデカン-1(皮膚圧縮物のマーカー)に特異的な抗体を用いた特性決定によって、正常な毛包の発達が明らかにされた。シンデカン-1の発現分析と併せてLef処理皮膚におけるH&E染色は、HAS1阻害は毛包の発達の阻害をもたらすことを示した(図22)。培養72時間後の毛包は、14.5dpcのin vivoの皮膚で見出される毛包と生物学的にもシンデカン-1の発現パターンでも一致した(図22)。
HAase処理は濃密真皮を形成し、周囲の毛包間真皮から皮膚圧縮物を区別することを困難にした。しかしながら、シンデカン-1発現は局在したままであり、皮膚圧縮物は形成され、別個の生物学的ユニットとして存在することが示唆された(図22)。
実施例10:フットパッドの上皮に移植されたアルギネートミクロ被包化ヒトDP凝集物
凝集物を作成するために細胞を調製する:DP細胞をラットのヒゲから単離し、3−5代まで継代培養した。DP細胞を先ず初めにそのT25フラスコ内で洗浄し、続いて前記フラスコ内でトリプシン処理した。10%FBSを含む培養液を細胞に添加してトリプシン処理を停止し、続いて1000rpmで5分間遠心した。余分な培養液を流し去り、細胞ペレットを無血清/無抗生物質培養液で洗浄して一切の残留トリプシンを除去し、さらに1000rpmで5分遠心した。余分な培養液を流し去った後、細胞ペレットを10%FBS含有dMEM培養液の1mLに再浮遊させた。血球計算盤を用いて細胞を計測した。10%FBS含有dMEM培養液を添加することによって細胞を300細胞/μLに稀釈した。
アルギネートマトリックス及び凝集物の形成:アルギネート(褐藻類の細胞壁から抽出される)は、1,4-結合D-マンヌロン酸(M)、L-グルロン酸(G)のリンカー(lincar)コポリマーを形成するヒドロゲルの1タイプである。アルギネートビーズは半透膜を構成することができ、そのゲル特性は生物学的に活性な種(例えば栄養素、CO2及びO2)のビーズ内外への拡散を可能にする。したがって、前記ビーズは細胞の生存性を担保しさらに治療分子の分泌と同様に老廃物分子の適切な排出を可能にすることができる。急速な拡散を可能にする一方、アルギネートゲルは、適切な機械的強度および細胞(例えばDP細胞、DS細胞など)を収容する安定性を維持する。アルギネートビーズ中のゲルは細胞が内部に浮遊することを可能にし、したがって三次元的なミクロの環境を作り出すことができる。
DP細胞は、22g注射針を用いることによりアルギネートビーズ内でミクロ被包化された。ほぼ3000細胞をビーズに導入した(図23参照)。このアルギネートビーズを37℃で30時間インキュベートした。この方法はまた真皮鞘細胞の凝集物を作成するためにも実施することができる。
生存率細胞毒性アッセイ:ビーズ内に被包化したDP細胞のin vitro培養中の細胞生存及び生育活性を、製造業者の指示にしたがって0、2、4、10及び42日目に、2つのプローブ(カルセインAM及びエチジウムホモダイマー-1(Molecular Probes, Catalog# L3224;Invitrogen Corp., CA))を用いて調べた。前記プローブは標準的な共焦点顕微鏡画像化技術(Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labelling Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA)を用いて可視化することができる。アルギネートビーズに被包化されている間は10日培養後でさえも、DP細胞は、0日目の培養開始のDP細胞に匹敵する生存率を維持した(生存細胞は緑色像として示され、死細胞は赤色像として示された;図24)。
フットパッド上皮細胞:アールMEM培養液中のパンクレアチン及びトリプシンを用いて皮膚の半分にわたってフットパッドの表皮及び真皮を分離させた。表皮をそれ自体の上で折り返し前記をゲイ寒天上に置いた。続いてアルギネート被包化DPビーズを培養から取り出し、1滴のMEM培養液中に置いた。1度に1個のDPボールをピンセットで取り出し、真皮の上に置いた。各皮膚の小片に2個から4個のアルギネート被包化DPビーズを置いた。続いて折れた表皮を元に戻してアルギネート被包化DPビーズを挟み、続いて37℃で2時間インキュベートした。続いてこのDPボールをヌードマウスの腎カプセル下に置き(図25及び図26に示した模式図を参照)、これを取り出し、写真撮影し、続いて顕微鏡分析(例えばH&E染色(Cat#SS007:Biogenex, San Ramon, CA));免疫組織化学、例えばDAB染色(Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labellin Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA);及び免疫蛍光顕微鏡法(Molecular Probes, The Handbook; A Guide to Fluorescent Probes and Labellin Technologies, 10th edition (Invitrogen Corp., CA))のために切片を作成した。
結果:この方法で用いられたアルギネート被包化DPビーズは、前記ビーズがフットパッドに“フィット”しなかったという点で“大きすぎる”ように思われた。いくつかの例では、このアルギネート被包化DPビーズはフットパッド上皮から外れ、移植部位内に留まることができなかった。そのような障害にもかかわらず、初歩的結果は、毛包誘発のいくつかの証拠を示した(図27、パネル1−6)。DP細胞は、上皮細胞から生じる刺激及び/又はシグナルの非存在下でアルギネート被包化DPビーズ内においてそれらの誘発能力を維持したように思われる。したがって、DP細胞を被包化するためにより小さなアルギネートビーズサイズを用いることによって、毛包の誘発を強化することはきわめて容易であろう。
発達中の毛包でグリコサミノグリカン(GAG)をモニターするために用いられたアルシアン染色(MgCl2処理無し)を示す光学顕微鏡画像である。Epi:表皮、CON:GAG(例えばヒアルロナン)を含む皮膚圧縮物。 発達中の毛包でグリコサミノグリカン(GAG)をモニターするために用いられたアルシアン染色(MgCl2処理有り)を示す光学顕微鏡画像である。皮膚圧縮物中のある種のGAG(例えばヒアルロナン)の消失は“ホワイトアウト”領域によって現される。CON:皮膚圧縮物。 発達中の毛包でグリコサミノグリカン(GAG)をモニターするために用いられたアルシアン染色を示す光学顕微鏡画像である。DP:真皮乳頭。 ペトリ皿の蓋の上にハンギングドロップを作るため模式図である。 ひっくり返した後のハンギングドロップ培養の模式図である。 摘出毛包に挿入されたヒトDP凝集物を腎カプセル移植する工程図である。 摘出毛包に挿入されたヒトDP凝集物(“ボール”)の腎カプセル移植の写真である。 摘出毛包に挿入されたDP凝集物(“ボール”)の腎カプセル移植後の毛の誘発を示す写真画像である。白い矢印は毛構造物を指している。 摘出毛包に挿入されたDP凝集物(“ボール”)の腎カプセル移植後の毛の誘発の写真画像である。黒い矢印は毛構造物を指し示している。 摘出毛包に挿入されたヒトDP凝集物(“ボール”)の腎カプセル移植後の毛の誘発を示す写真画像である。白い矢印は毛構造物を指し示している。 毛包の切片の顕微鏡画像を示す。図11Aは、ヴァーシカンに対して作成された抗体で染色された新しい真皮乳頭細胞の免疫組織化学的画像である。図11Bは、前記毛包切片の位相差像を示す。 真皮乳頭細胞を含むラット毛包の移植後の毛の誘発を示す写真画像である。白い矢印は毛構造物を指している。 酵素により分離させたフットパッドの皮膚に挿入されたヒトDP凝集物の腎カプセル移植の工程図である。 酵素により分離させたフットパッドの皮膚に挿入されたヒトDP凝集物(“ボール”)の腎カプセル移植の写真である。 酵素により分離させたフットパッドの皮膚に挿入されたヒトDP凝集物の移植後の皮膚圧縮物(白矢印)を示す光学顕微鏡画像(ヘマトキシリン及びエオシン染色)である。 酵素により分離させたフットパッドの皮膚に挿入されたヒトDP凝集物の移植後の毛包切片の免疫蛍光学顕微鏡画像である。上皮細胞は、P-カドヘリン(毛包上皮に特異的なマーカー)に対して作成された抗体で染色され(赤色)、前記は皮膚圧縮物(染色されない)を取り囲んでいる。 フットパッドの皮膚に挿入され、続いて腎カプセルに移植されたDP細胞を含むDP“ボール”の切片の光学顕微鏡画像である(パネルA−C)。DP凝集物のアルシアンブルー染色はGAGの存在のために陽性であった(パネルA)。DP凝集物のDAB染色はヒアルロナン(HA)の存在のために陽性であった(パネルBで褐色の染色として示されている)。パネルCは染色されていないDP凝集物を示す。 ニワトリの背部皮膚から得られた表皮の切片内に局在するHA(赤色)を示す免疫蛍光顕微鏡画像である。上段及び下段のパネルは羽の形態発生の初期ステージに対応する(7.5dpc及び8.5dpc)。白い点線は基底膜(BM)を示す。皮膚圧縮物は、点線で表されたひし形状の輪郭で示され(下段パネル)、BMの下に位置している。DAPI染色は細胞の核を示す(青色)。 培養胎児皮膚から得られた表皮切片内のHA及びCD44の局在を示す免疫蛍光顕微鏡画像である。ヒアルロナン結合タンパク質(HABP)に対して作成された抗体は真皮全体に分布したが(赤色;第一及び第二段)、皮膚圧縮物(点線で表した三日月形の輪郭)には存在しなかった。CD44に対して作成された抗体は表皮および皮膚圧縮物に分布した(緑色;第三段)。点線は基底膜(BM)を表し、皮膚圧縮物の上に位置した。DAPI染色は細胞の核を示す(青色)。 72時間培養胎児皮膚から得られた表皮切片内のHA(青色、左パネル)及びCD44(赤色、右パネル)の局在を示す免疫蛍光顕微鏡画像を示す。点線は基底膜(BM)を表し、皮膚圧縮物(点線で表した三日月形の輪郭)の上に位置した。 BSA(コントロール)、ヒアルロナーゼ(HAase)、又は2つのHAS阻害物質(レフルノミド(Lef)又は4-メチルウンベリフェロン)のうちの1つの存在下で72時間培養した胎児皮膚から得られた、酵素により分離させた皮膚の表面又は下側を示す光学顕微鏡画像である。眼に見える毛包は皮膚の表面に存在するであろう(左の列)。発生中の表皮の毛原基は皮膚の下側に存在するであろう(右の列) BSA(コントロール)、ヒアルロナーゼ(HAase)、又は2つのHAS阻害物質(レフルノミド(Lef)又は4-メチルウンベリフェロン)のうちの1つの存在下で72時間培養した胎児皮膚から得られた、酵素により分離させた皮膚の表面又は下側を示す光学及び免疫蛍光顕微鏡画像である。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色は左の列で見られ、シンデカン-1(赤色;皮膚圧縮物のマーカー)の局在は右の列に示されている。ラミニン(緑色;基底膜のマーカー);DAPI(青色;核染色を示す)。 DP細胞をミクロ被包化するために用いられたアルギネートビーズの模式図である。 in vitro培養の間アルギネートビーズ中に被包化されたDP細胞の細胞生存率及び生命活性を示す蛍光顕微鏡画像である。細胞は、2つのプローブ(カルセリンAM(緑色)及びエチジウムホモダイマー-1(赤色))を用い共焦点顕微鏡により可視化された。左のパネルは0日目のアルギネートビーズミクロ被包化DP細胞培養を、右のパネルは培養10日後のものを表している。生存細胞は緑色像として示され、死細胞は赤色像として示されている。 酵素により分離させたフットパッドの皮膚サンプルに挿入された、アルギネートビーズによってミクロ被包化されたヒトDP凝集物の写真である。 画像内に割り振られた態様にしたがってマウスモデルに移植された、アルギネートビーズによってミクロ被包化されたヒトDP凝集物の写真である。 酵素により分離させたフットパッドの皮膚サンプルに挿入された、アルギネートビーズによってミクロ被包化されたヒトDP凝集物から得られた、ネズミ表皮のヘマトキシリン及びエオシン(H&E)連続染色切片の光学顕微鏡画像を示し、前記は毛包誘発を表している(パネル1−6)。一番上の2枚のパネルは毛包のH&E染色を示している。 免疫組織化学(DAB染色)によって可視化されたCD44発現の蛍光顕微鏡画像である。CD44はもっぱら真皮区画(褐色の染色)内の皮膚圧縮物内で観察される。 GAGを可視化するためにアルシアンブルー染色(図29A)、又はヒアルロナン結合タンパク質(HABP)特異的領域を突き止めるためにDAB染色(褐色染色として認められる)(図29B)に付された毛包の横断面の写真である。 種々の発生時期(交尾後日数、dpc)における表皮の分化中の上部細胞層のEGF因子及びCD44タンパク質発現を示すグラフである。

Claims (66)

  1. コンパクトな細胞凝集物を入手するために、a)真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを浮遊培養で増殖させる工程を含む、真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを凝集させる方法。
  2. コンパクトな細胞凝集物を入手するために、a)真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを浮遊培養で増殖させる工程、及びb)浮遊培養中の細胞外マトリックスの量を減少させることができる物質の有効量を前記培養と混合する工程を含む、真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを凝集させる方法。
  3. 浮遊培養が可溶性因子を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 浮遊培養がハンギングドロップ培養である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記物質がタンパク質である、請求項2に記載の方法。
  6. 前記タンパク質が酵素である、請求項5に記載の方法。
  7. 前記タンパク質が細胞外マトリックスの1つ以上の分子を分解する、請求項5に記載の方法。
  8. 前記酵素の基質が浮遊培養中の細胞外マトリックス分子である、請求項6に記載の方法。
  9. 前記酵素が、ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼ、コンドロイチナーゼ、又はそれらの組合せである、請求項6に記載の方法。
  10. ヒアルロニダーゼが、約20U/mLから約50U/mLの量で約15日間までの間前記培養と混合される、請求項9に記載の方法。
  11. ヒアルロニダーゼが、Hyal-1、Hyal-2、Hyal-3又はそれらの組合せである、請求項9に記載の方法。
  12. ハンギングドロップ培養が約9,000未満の細胞を含む、請求項4に記載の方法。
  13. ハンギングドロップ培養が約7,000未満の細胞を含む、請求項4に記載の方法。
  14. ハンギングドロップ培養が約5,000未満の細胞を含む、請求項4に記載の方法。
  15. ハンギングドロップ培養が約3,000未満の細胞を含む、請求項4に記載の方法。
  16. 浮遊培養がさらに上皮細胞を含む、請求項4に記載の方法。
  17. 上皮細胞が毛包又は皮膚に由来する、請求項16に記載の方法。
  18. 上皮細胞がケラチノサイトである、請求項16に記載の方法。
  19. ハンギングドロップが少なくとも24時間培養される、請求項4に記載の方法。
  20. ハンギングドロップが少なくとも48時間培養される、請求項4に記載の方法。
  21. ハンギングドロップが、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15日まで培養される、請求項4に記載の方法。
  22. ハンギングドロップが、誘導性マーカー遺伝子の発現が低下するまで培養される、請求項4に記載の方法。
  23. 誘導性マーカー遺伝子が、Wnt10b、WISE、ヴァーシカン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項22に記載の方法。
  24. 可溶性因子が外因的に添加される、請求項3に記載の方法。
  25. 可溶性因子が約5ng/mLから約300ng/mLの量で投与される、請求項3に記載の方法。
  26. 可溶性因子が、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、Wnt10b、表1及び表2の任意の1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項3に記載の方法。
  27. さらに、Wnt10b、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、表1及び表2に列挙された1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸を細胞にトランスフェクトする工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  28. さらに、コンパクトな細胞凝集物を対象者の皮膚に移植する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  29. 前記対象者が哺乳動物である、請求項28に記載の方法。
  30. 前記哺乳動物がヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はトリである、請求項29に記載の方法。
  31. 細胞が前記対象者にとって自己由来である、請求項28に記載の方法。
  32. さらに、コンパクトな細胞凝集物を浮遊後培養に置く工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  33. 前記浮遊後培養が生物分解性骨組みを含む、請求項32に記載の方法。
  34. 前記生物分解性骨組みがアルギネートを含む、請求項33に記載の方法。
  35. 前記細胞が一次細胞、二次細胞、継代された二次細胞又は細胞株を含む、請求項1又は2に記載の方法。
  36. 前記細胞が哺乳動物から入手されるか、又は哺乳動物由来である、請求項35に記載の方法。
  37. 前記哺乳動物がヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はトリである、請求項36に記載の方法。
  38. 以下の工程を含む、凝集した真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せから毛包の形成を促進する方法:
    a)真皮乳頭細胞若しくは真皮鞘細胞又はそれらの組合せを浮遊培養で増殖させる工程;
    b)ヒアルロニダーゼを前記培養と約1日から約15日間混合してコンパクトな凝集した真皮乳頭細胞又は真皮鞘細胞を生じる工程;及び
    c)前記培養を十分な時間増殖させて毛包を形成する工程。
  39. 前記浮遊培養が可溶性因子を含む、請求項38に記載の方法。
  40. 前記浮遊培養がハンギングドロップ培養である、請求項38に記載の方法。
  41. ハンギングドロップ培養が約9,000未満の細胞を含む、請求項40に記載の方法。
  42. ハンギングドロップ培養が約7,000未満の細胞を含む、請求項40に記載の方法。
  43. ハンギングドロップ培養が約5,000未満の細胞を含む、請求項40に記載の方法。
  44. ハンギングドロップ培養が約3,000未満の細胞を含む、請求項40に記載の方法。
  45. 前記培養がさらに上皮細胞を含む、請求項38に記載の方法。
  46. 前記上皮細胞が毛包又は皮膚に由来する、請求項45に記載の方法。
  47. 上皮細胞がケラチノサイトである、請求項45に記載の方法。
  48. ヒアルロニダーゼが、約20U/mL培養液から約50U/mL培養液の量で混合される、請求項38に記載の方法。
  49. ヒアルロニダーゼが、Hyal-1、Hyal-2、Hyal-3又はそれらの組合せである、請求項38に記載の方法。
  50. 工程(c)の増殖が少なくとも24時間である、請求項38に記載の方法。
  51. 前記浮遊培養が、誘導性マーカー遺伝子の発現が低下するまで培養される、請求項38に記載の方法。
  52. 前記誘導性マーカー遺伝子が、Wnt10b、WISE、ヴァーシカン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項51に記載の方法。
  53. 前記可溶性因子が工程(c)の増殖培養に添加される、請求項39に記載の方法。
  54. 前記可溶性因子が、約5ng/mL培養液から約300ng/mL培養液の量で培養と混合される、請求項39に記載の方法。
  55. 前記可溶性因子が、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、Wnt10b、表1及び表2の任意の1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項39に記載の方法。
  56. さらに、Wnt10b、ペリオスチン、フォリスタチン、Wise、又は表1及び表2に列挙された1つ以上の可溶性因子、又はそれらの任意の組み合わせをコードする核酸を細胞にトランスフェクトする工程を含む、請求項38に記載の方法。
  57. さらに、毛包を対象者の皮膚に移植する工程を含む、請求項38に記載の方法。
  58. 対象者が哺乳動物である、請求項57に記載の方法。
  59. 前記哺乳動物がヒト、マウス、イヌ、ネコ又はトリである、請求項58に記載の方法。
  60. 前記細胞が対象者にとって自己由来である、請求項57に記載の方法。
  61. さらに前記毛包を浮遊後培養に置く工程を含むか、又は工程(c)の増殖が浮遊後培養で生じる、請求項38に記載の方法。
  62. 前記浮遊後培養が生物分解性骨組みを含む、請求項61に記載の方法。
  63. 前記生物分解性骨組みがアルギネートを含む、請求項62に記載の方法。
  64. 前記細胞が一次細胞、二次細胞、継代された二次細胞又は細胞株を含む、請求項38に記載の方法。
  65. 前記細胞が哺乳動物由来である、請求項64に記載の方法。
  66. 前記哺乳動物がヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ又はトリである、請求項65に記載の方法。
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