JP2009527458A - ジベンゾチアゼピン化合物類の製造法 - Google Patents
ジベンゾチアゼピン化合物類の製造法 Download PDFInfo
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Abstract
ジベンゾチアゼピン化合物は、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を酸性触媒の存在下にて脱水縮合反応に供することにより好適に製造される;この2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物は、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を低級脂肪族エステル溶媒中にて還元することにより好適に製造される;そして、この2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物は、ニトロベンゼン化合物とチオサリチル酸化合物とを低級脂肪族アルコールと水との混合物中にて反応させることにより好適に製造される。
【選択図】なし
【選択図】なし
Description
本発明は、ジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関する。特に、本発明は、抗精神病薬として有用であることが知られている11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニルジベンゾチアゼピンおよびその誘導体を合成するための中間体として有用なジベンゾチアゼピン誘導体の製法に関する。
特許文献1には、ジベンゾチアゼピン誘導体を原料として、例えば、抗精神病薬として有用な11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニルジベンゾチアゼピン誘導体を導くことが示されている。即ち、そこで報告されているジベンゾチアゼピン誘導体の代表化合物であるジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンをオキシ塩化リンと反応させて11−クロロ−ジベンゾチアゼピン誘導体を得て、次にこの11−クロロ−ジベンゾチアゼピン誘導体にピペラジンを付加させて11−ピペラジニルジベンゾチアゼピン誘導体を得て、それを塩基性条件下で2−クロロエトキシエタノールと反応させて、目的とする11−[4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]−1−ピペラジニルジベンゾチアゼピン誘導体に導くことが示されている。
さらに上記の特許文献1にはまた、ジベンゾ−[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンを、2−(フェニルチオ)フェニルカルバミン酸フェニルあるいはその類似化合物から、ポリリン酸の存在下での環化反応によって合成することが記載されている。
非特許文献1には、チオサリチル酸メチル誘導体と2−ハロゲン化−ニトロベンゼン誘導体とをナトリウム存在下にて加熱して、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を合成し、これをラネーニッケル触媒を用いて還元して2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体とし、それを最後に加熱してジベンゾチアゼピン誘導体が製造できることが記載されている。
非特許文献2には、チオサリチル酸エステル誘導体と2−ヨード−ニトロベンゼン誘導体とをナトリウムメチラートと銅との存在下にて加熱した後、アルカリ溶液および酸溶液で処理を行って2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体を合成し、これを硫酸第一鉄のアンモニア水溶液を用いて還元して2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体とし、これを最後に減圧下で加熱してジベンゾチアゼピン誘導体が製造できることが記載されている。
特許文献2には、2−アミノチオフェノールと2−フルオロベンゾニトリルとを反応させて、2−(2−アミノフェニルチオ)ベンゾニトリルを得る工程、この化合物を加水分解して2−(2−カルボキシフェニルチオ)アニリンとする工程、および最後にこのアニリン誘導体を環化反応に付する工程によって、ジベンゾチアゼピン誘導体を製造できることが記載されている。
上記のようにジベンゾチアゼピン誘導体の製法としては、既にいくつかの方法が知られている。しかし、これらの方法は、収率が低い、反応に高温が必要である、特殊な原料を用いる必要がある、あるいは工業的に後処理が面倒な化合物を用いるなどの欠点がある。これらの欠点は、当然、目的とするジベンゾチアゼピン誘導体を工業的に製造するのには好ましいものではない。
また、特許文献3および4にもジベンゾチアゼピン誘導体の製造法が記載されている。
欧州公開特許出願第0282236A1号公報
国際公開第92/19607号公報
欧州公開特許出願第1201663A1号公報
国際公開第2004/047722A2号公報
Helv.Chim.Acta.42巻、1263頁(1959年)
Org.Prep.Proced.Int.,287頁(1974年)
本発明は、例えば、ニトロベンゼン化合物やチオサリチル酸化合物など、容易に入手可能な原料化合物を用いて、煩雑な後処理を行うことなく、高収率でジベンゾチアゼピン化合物を得る製法を提供することを目的とする。本発明の製造法、その工程、および用いる化合物は、例えば、クエチアピンのような薬剤を合成するのに有用である。本発明はまた、とりわけ、ニトロ酸化合物の単離を改善するとともに、単離されたラクタム化合物の品質を向上させることをも目的とする。
本発明は、まず、式V:
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表す)
で表される2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を酸性触媒の存在下にて脱水縮合反応させる工程を含む、式I:
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、前記と同じ意味を表す)
で表されるジベンゾチアゼピン化合物の製造法にある。
で表される2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を酸性触媒の存在下にて脱水縮合反応させる工程を含む、式I:
で表されるジベンゾチアゼピン化合物の製造法にある。
式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドは、公知の方法で得ることができる。しかし、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドは下記の方法で得ることが好ましい。
すなわち、本発明は、また、式IV:
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、前記と同じ意味を表す)
で表される2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を、炭素原子数が1〜6個の脂肪族アルコールと炭素原子数が1〜6個の脂肪族カルボン酸との脂肪族エステル中で還元する工程を含む、上記式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の製造法にもある。
で表される2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を、炭素原子数が1〜6個の脂肪族アルコールと炭素原子数が1〜6個の脂肪族カルボン酸との脂肪族エステル中で還元する工程を含む、上記式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の製造法にもある。
式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物は、公知の方法で得ることができる。しかし、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物は下記の方法で得ることが好ましい。
すなわち、本発明は、さらに、式II:
(式中、R1、R2、R3およびR4は、前記と同じ意味を表す)
で表されるニトロベンゼン化合物と、式III:
(式中、R5、R6、R7およびR8は、前記と同じ意味を表す)
で表されるチオサリチル酸化合物とを、炭素原子数が1〜6個の脂肪族アルコールと水との混合物中で反応させる工程を含む、上記式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の製造法にもある。
で表されるニトロベンゼン化合物と、式III:
で表されるチオサリチル酸化合物とを、炭素原子数が1〜6個の脂肪族アルコールと水との混合物中で反応させる工程を含む、上記式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の製造法にもある。
本発明によって、例えば、ニトロベンゼン化合物やチオサリチル酸化合物など、容易に入手可能な原料化合物を用いて、煩雑な後処理を行うことなく、高収率でジベンゾチアゼピン化合物を得ることができる。本発明の製造法、その工程、および用いる化合物は、例えば、クエチアピンのような薬剤を合成するのに有用である。本発明は、また、とりわけ、ニトロ酸化合物の単離を改善するとともに、単離されたラクタム化合物の品質を向上させる。
ここに述べる製造法に含まれる化合物の式において、「アルキル基」とは、置換基を有していない炭素原子数が1〜10個、1〜8個、1〜6個、または1〜5個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基か、または一つあるいは複数の置換基を有している炭素原子数が1〜10個、1〜8個、1〜6個、または1〜5個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を意味する。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルおよび、これらのすべての異性体、亜族などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルであり、さらに好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびペンチルである。
上記の一つあるいは複数の置換基を有している直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の置換基は、アルキル部分の任意の位置についていてもよい。置換基の具体例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシおよび、これらのすべての異性体、亜族などの、炭素原子数が1〜10個の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ペンタノイルおよび、これらのすべての異性体、亜族などの、炭素原子数が1〜5個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を持つ炭素原子数が2〜6個のアルキルカルボニル基;一つあるいは複数の置換基を有するフェニルカルボニル基;そして一つあるいは複数の置換基を有するフェニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、ここで用いられる「フェニルカルボニル基」とは、置換基を有していないフェニルカルボニル基か、または一つまたは複数の置換基を有するフェニルカルボニル基を意味する。さらに、ここで用いられる「フェニル基」とは、置換基を有していないフェニル基か、または一つまたは複数の置換基を有するフェニル基を意味する。フェニルカルボニル基およびフェニル基の置換基としては、フェニル、フェニルカルボニルあるいは上記のアルキル基、アルコキシ基およびアルキルカルボニル基を挙げることができる。
さらに、ここで用いられる「アルコキシ基」とは、置換基を有していない炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル部分を持つ炭素原子数1〜10個のアルコキシ基か、または一つまたは複数の置換基を有する炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル部分を持つ炭素原子数1〜10個のアルコキシ基を意味する。この「アルコキシ基」の例としては、上記のアルキル基、炭素原子数が2〜6個のアルキルカルボニル基、一つまたは複数の置換基を有していてもよいフェニルカルボニル基および一つまたは複数の置換基を有していてもよいフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「アルキルカルボニル基」とは、置換基を有していない炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル部分を持つ炭素原子数2〜11個のアルコキシカルボニル基か、一つまたは複数の置換基を有する炭素原子数1〜10個の直鎖状または分岐鎖状のアルキル部分を持つ炭素原子数2〜11個のアルコキシカルボニル基を意味する。「アルキルカルボニル基」のアルキル部分の例としては、上記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「アリール基」とは、置換基を有していないアリール基か、あるいは一つまたは複数の置換基を有しているアリール基を意味する。「アリール基」の例としては、フェニル、ナフチル、アントリルおよび、これらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。フェニルおよびナフチルが好ましく、フェニルがさらに好ましい。「アリール基」の置換基の例としては、アルキル基の置換基として上記したものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
「アリールオキシ基」とは、置換基を有していないアリール部分を持つアリールオキシ基か、あるいは一つまたは複数の置換基を有するアリール部分を持つアリールオキシ基を意味する。「アリールオキシ基」のアリール部分の例としては、アルキル基の置換基として上記したものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
「アリールカルボニル基」とは、置換基を有していないアリール部分を持つアリールカルボニル基か、あるいは一つまたは複数の置換基を有しているアリール部分を持つアリールカルボニル基を意味する。「アリールカルボニル基」のアリール部分の例としては、アルキル基の置換基として上記したものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
R1からR8が表す基は同一または互いに異なっていてもよく、それぞれ水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基、あるいはアリールカルボニル基を表す。好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基またはアルキルカルボニル基である。
式IIのXが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を挙げることができる。好ましくは、フッ素原子、塩素原子または臭素原子、より好ましくは塩素原子である。
本発明のジベンゾチアゼピン化合物の製造法の各工程について、以下に詳しく説明する。
本発明によるジベンゾチアゼピン化合物の製造法の第1工程では、式IIのニトロベンゼン化合物と式IIIのチオサリチル酸化合物とを、塩基の存在下にて溶媒中で反応させて、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を製造する。
上記の第1工程で使用される式IIのニトロベンゼン化合物の具体例としては、2−クロロニトロベンゼン、2−ブロモニトロベンゼン、2−フルオロニトロベンゼン、2−ヨードニトロベンゼン、2−クロロ−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−ヨード−5−メトキシ−ニトロベンゼン、2−クロロ−5−メチル−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−メチル−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−メチル−ニトロベンゼン、2−ヨード−5−メチル−ニトロベンゼン、2−クロロ−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−ヨード−5−フェニル−ニトロベンゼン、2−クロロ−5−アセチル−ニトロベンゼン、2−ブロモ−5−アセチル−ニトロベンゼン、2−フルオロ−5−アセチル−ニトロベンゼン、2−ヨード−5−アセチル−ニトロベンゼンおよび、これらの亜種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、例えば、2−クロロニトロベンゼンや2−ブロモニトロベンゼンのような2−ハロニトロベンゼンであり、2−クロロニトロベンゼンがさらに好ましい。
上記の第1工程で使用される式IIIのチオサリチル酸化合物の具体例としては、チオサリチル酸、5−メトキシ−チオサリチル酸、5−メチル−チオサリチル酸、5−フェニル−チオサリチル酸、5−アセチル−チオサリチル酸および、これらの亜種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、チオサリチル酸および5−メトキシ−チオサリチル酸であり、チオサリチル酸がより好ましい。
式IIのニトロベンゼン化合物は、式IIIのチオサリチル酸化合物1モルに対して、一般に0.7〜10モル、または1.0〜5モルの範囲の量で用いる。例えば、1.0〜1.32当量、1.1〜1.32当量、または1.2〜1.32当量の2−クロロニトロベンゼンを用いる。
上記の第1工程は、一般に溶媒中で行われる。溶媒については、反応に関与しないものであれば特に制限はない。溶媒の具体例としては、水;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびジメチルイミダゾリドン等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールおよび1−ペンタノール等の脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン類;アセトニトリルおよびベンゾニトリル等のニトリル類;およびこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは水、アミド類、脂肪族アルコールであり、低級脂肪族アルコール類(すなわち、炭素原子数1〜6個の脂肪族アルコール)と水との混合物がより好ましい。この混合物中の低級脂肪族アルコールと水との混合比は、前者/後者の体積比で10/1〜1/10(好ましくは5/1〜1/10)の範囲にあることが好ましい。混合物に用いる低級脂肪族アルコールとしては、イソプロピルアルコールが好ましい。
例えば、2−クロロニトロベンゼンのような式IIのニトロベンゼン化合物と、チオサリチル酸のような式IIIのチオサリチル酸化合物とを20〜25℃の反応容器に充填し、そこにイソプロパノールと水を加える。式IIのニトロベンゼン化合物と式IIIのチオサリチル酸化合物とを入れた反応容器は、例えば、チッ素で不活性化することができる。
第1工程の溶媒は、溶媒(例えば、水/イソプロピルアルコール混合物)に対するチオサリチル酸の質量比が0.08〜0.31、0.12〜0.27、または0.16〜0.23の範囲になるような量で用いる。
第1工程の反応は一般に、塩基の存在下に実施される。好ましい塩基の例としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメチラートおよびこれらの亜種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートおよび、これらの亜種がより好ましい。塩基の量としては、出発原料化合物の合計量1モルに対して、1〜10モル、1.5〜5モル、2.0〜2.3モル、または2.1〜2.27モルである。
第1工程の反応は、一般に、使用する溶媒の沸点以下の温度で行われる。反応温度は、例えば、0〜150℃、20〜100℃、70〜84℃、または79〜84℃である。第1工程の反応時間は、反応温度に大きく依存するが、一般に20時間以内である。例えば、反応混合物を加熱還流(約84℃)し、その温度を6時間維持する。
第1工程の反応を実施するに際しては、塩基以外に、反応を促進させる添加物を加えることができる。添加物の具体例としては、ヨウ化カリウムおよびN,N−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加物の添加量は、式IIのニトロベンゼン化合物1モルに対して、通常、0.0005〜0.5モル(添加物のモル数/ニトロベンゼン化合物のモル数)であり、または0.001〜0.1モルの範囲である。
本発明の第1工程で得られる式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の化学構造は、式IIのニトロベンゼン化合物の化学構造と式IIIのチオサリチル酸化合物の化学構造とによって規定される。2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の具体例としては、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−メトキシ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−メチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−フェニル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−4−アセチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドおよびこれらの亜種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドおよび2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドが好ましい。
第1工程で得られた式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物は、従来の洗浄操作と分離操作との組み合せを用いて回収できる。例えば、反応混合物に酸を添加して酸性とし、析出した結晶を濾別して粗生成物として得る方法や、反応液に水と抽出溶媒(有機溶媒)を添加し、これに酸を添加して反応混合物の水層を酸性にする方法が利用できる。また、有機層を減圧下に置くことでも粗生成物を回収することができる。このようにして得られた粗生成物は、そのまま次の工程に用いることができる。もし必要ならば、粗生成物をさらにカラムや再結晶によって精製することもできる。精製方法は、精製する各化合物に応じて適宜選択することができる。ここで用いる酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸およびこれらの亜種などが挙げられる。
本発明の製造法における第2工程では、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を還元して、式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を得る。
第2工程における還元操作は特に限定されず、ニトロ基を還元する公知の方法を用いることができる。例えば、ラネーニッケル法(以下、「反応A」という)、第一鉄塩法(以下、「反応B」という)およびパラジウム、白金もしくはそれらの化合物を用いる方法(以下、「反応C」という)などで行うことが好ましい。還元反応における水素の供給源としては、水素ガスが用いられる。
[反応A:ラネーニッケル法]
この方法に使用するラネーニッケルの使用量としては、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の量に対して、1.0〜80質量%(ニッケル換算)、または5.0〜40質量%である。この反応に用いられるラネーニッケルの例としては、10〜60%Ni−Al合金、あるいはこの合金にCrおよびMoを添加したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。安定化ニッケルの使用も可能である。収率は、ラネーニッケルの展開方法による影響を大して受けない。ラネーニッケル法を用いる場合、反応は水素ガス加圧下で行うのが一般的である。従って、反応はオートクレーブ中で行うのが一般的である。水素ガス圧は可能な限り高くできるが、一般的には5〜100気圧の範囲である。常圧で反応を行ってもよい。その場合、反応は水素ガスを流通させながら行う。
この方法に使用するラネーニッケルの使用量としては、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の量に対して、1.0〜80質量%(ニッケル換算)、または5.0〜40質量%である。この反応に用いられるラネーニッケルの例としては、10〜60%Ni−Al合金、あるいはこの合金にCrおよびMoを添加したものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。安定化ニッケルの使用も可能である。収率は、ラネーニッケルの展開方法による影響を大して受けない。ラネーニッケル法を用いる場合、反応は水素ガス加圧下で行うのが一般的である。従って、反応はオートクレーブ中で行うのが一般的である。水素ガス圧は可能な限り高くできるが、一般的には5〜100気圧の範囲である。常圧で反応を行ってもよい。その場合、反応は水素ガスを流通させながら行う。
反応Aで使用される溶媒については、反応に関与しないものであれば特に制限はない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールまたはn−ブタノールのような脂肪族アルコールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。溶媒の量は、溶媒の体積に対して、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の体積(すなわち、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の体積/溶媒の体積)が0.05〜0.6倍、または0.1〜0.6倍になるように選択される。
反応Aは溶媒の沸点までの温度で行うことができる。一般的には、反応温度は20〜200℃、または25〜150℃の範囲である。反応時間は温度や水素圧に依存するが、通常、反応は20時間以内に完結する。
反応Aが終了したのち、還元によって生成した式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物は、公知の清浄操作および分離操作の組合せによって回収することができる。例えば、反応混合物を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮することで回収できる。このようにして得られた生成物は、そのまま次の工程に用いることができるが、必要に応じて、生成物はさらにカラムクロマトグラフィーや再結晶によって精製することができる。精製方法は、精製する生成物に応じて適宜選択することができる。
[反応B:第一鉄塩法]
この反応に用いられる第一鉄塩の例としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの塩は水和物もしくは無水物のいずれの状態でも用いられる。硫酸第一鉄・7水和物、無水第一鉄塩、第一鉄塩・4水和物、第一鉄塩・n水和物などが好ましい。これらの塩の使用量は、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドの量に対して0.1〜30倍(鉄イオン換算)、または0.5〜10倍の範囲である。
この反応に用いられる第一鉄塩の例としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの塩は水和物もしくは無水物のいずれの状態でも用いられる。硫酸第一鉄・7水和物、無水第一鉄塩、第一鉄塩・4水和物、第一鉄塩・n水和物などが好ましい。これらの塩の使用量は、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドの量に対して0.1〜30倍(鉄イオン換算)、または0.5〜10倍の範囲である。
反応Bの溶媒としては水とアンモニア水との混合溶媒を用いるのが一般的である。アンモニア水は、濃アンモニア水(アンモニア濃度:25〜28質量%)を用いて得られる。アンモニア含量が十分であれば、低濃度のアンモニア水もしくはアンモニアガスを含有する水も使用できる。水については、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の水1体積量に対する対する量が0.01〜0.4倍当量(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の体積/水の体積)、または0.02〜0.2倍当量(上記の比)となる量である。アンモニアの量は、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体のアンモニア1体積量に対する量が0.005〜0.5倍当量、または0.01〜0.5倍当量(2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の体積/アンモニアの体積)になるように選択される。
反応Bは溶媒の沸点までの温度で行うことができる。一般的には、反応温度は20〜100℃、または40〜90℃の範囲である。反応時間は温度に依存するが、通常、反応は2時間以内に完結する。
反応Bが終了したのち、還元によって生成した式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物は、公知の清浄操作および分離操作の組合せによって回収することができる。例えば、反応混合物を濾過し、得られた濾液に酸(例、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸)を添加し、濾液のpHを酸性側にする。この濾液を減圧濃縮して粗生成物を得る。この生成物は、そのまま次の工程に用いることができるが、必要に応じて、生成物はさらにカラムクロマトグラフィーや再結晶によって精製することができる。精製方法は、精製する生成物に応じて適宜選択することができる。
[反応C:パラジウムもしくは白金(またはそれらの化合物)を用いる方法]
この反応は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、パラジウム化合物、白金化合物、それらの組合せ、およびそれらの亜種からなる群より選ばれる還元触媒(水素添加触媒)の存在下にて行う。還元触媒は、炭素(C)や硫酸バリウムのような坦体上に担持されていることが好ましい。Pt/C、Pd/C、Pd/硫酸バリウム、Pd−Pt/C(あるいはPd,Pt/C)および酸化白金が好ましく、Pd−Pt/Cがより好ましい。
この反応は、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、パラジウム化合物、白金化合物、それらの組合せ、およびそれらの亜種からなる群より選ばれる還元触媒(水素添加触媒)の存在下にて行う。還元触媒は、炭素(C)や硫酸バリウムのような坦体上に担持されていることが好ましい。Pt/C、Pd/C、Pd/硫酸バリウム、Pd−Pt/C(あるいはPd,Pt/C)および酸化白金が好ましく、Pd−Pt/Cがより好ましい。
パラジウムもしくは白金を含有する触媒の使用量は、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の量に対して、0.01〜30質量%(パラジウムもしくは白金の金属量に換算して)、または0.05〜10質量%に相当する量である。触媒が坦体に担持されている場合、触媒は、坦体の量に対して、1〜10質量%(パラジウムもしくは白金の金属量に換算して)の量で担持される。Pd/C、Pt/CあるいはPd−Pt/Cを用いる場合、水分含量が5%以下の乾燥触媒も、水分含量がそれ以上のウエット触媒も使用できる。ウエット触媒は10〜70質量%(触媒と坦体の合計量に対する水分量)のものが用いられる。
反応Cで還元触媒として酸化白金を用いる場合、その使用量は、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の量に対して、0.1〜50質量%、または1〜30質量%の範囲である。
反応Cは、一般に、水素ガス加圧下にて行われる。従って、反応は一般に、オートクレーブもしくはその他の反応容器内にて行う。水素ガス圧は、可能な限り高くできるが、一般に2〜100気圧、または4から6気圧である。反応は常圧下でも行えるが、その場合は水素ガスを流通させながら還元反応(水素付加反応)を行う。例えば、容器内に水素を5気圧になるまで導入し、撹拌を開始し、水素圧を5気圧に保つ。
反応Cは、一般に、溶媒中で行われる。使用される溶媒は、反応に関与しない限り特に限定されない。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールまたはn−ブタノールのような脂肪族アルコール;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルまたは酢酸n−ブチルのようなエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンおよびジメチルイミダゾリドン等のアミド;これらの組合せ、およびそれらの亜種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。副生成物(不純物)の生成を抑制できるので、溶媒としては、炭素原子数1〜6個の脂肪族アルコールと炭素原子数1〜6個の脂肪族カルボン酸のエステルが好ましい。溶媒の量は、式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の量に対して、2〜70質量%、または5〜50質量%の範囲である。溶媒としては、例えば、酢酸エチルが好ましく用いられる。
反応Cは、一般に、10〜200℃、または20から150℃で行われる。反応時間は反応温度や水素ガス圧に依存するが、一般的には30時間以下である。例えば、反応混合物を50℃まで加熱し、その温度を5気圧の水素ガス下で5時間維持する。
反応C(水素添加反応)によって生成した式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体は、公知の清浄操作および分離操作の組合せによって回収することができる。例えば、反応混合物を濾過し、得られた濾液を減圧濃縮することで回収できる。このようにして得られた生成物は、そのまま次の工程に用いることができるが、必要に応じて、生成物はさらにカラムクロマトグラフィーや再結晶によって精製することができる。精製方法は、精製する生成物に応じて適宜選択することができる。例えば、反応が終了したら、反応混合物を20〜25℃に冷却し、濾過して結晶状の不溶物を除去する。得られたアミノ酸の酢酸エチル溶液は水で洗浄する。この溶液は、さらなる精製や単離をすることなく、直接、次の工程に用いることができる。
第2工程(還元工程)で得られる式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の化学構造は第2工程で反応原料として用いた式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドの化学構造によって規定される。式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の例としては、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−メトキシ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−メチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−フェニル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−4−アセチル−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド、2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドおよびこれらの亜種が挙げられるが、これらに限定されるものではない。2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドおよび2−アミノ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドが好ましい。
本発明の第3工程では、式Vの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を脱水縮合して、式Iのジベンゾチアゼピン化合物を製造する。
第3工程の反応は溶媒を用いないで行うことができる。しかし、反応に関与しない疎水性有機溶媒中で行うこともできる。このような有機溶媒の例としては、トルエン、キシレン、クメン、ベンゼン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の環状脂肪族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル等の脂肪族エステル;エタノール、1−ペンタノール、メチルイソブチルケトン等のその他の溶媒;およびこれらの組合せ、亜種などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、トルエン、キシレン、クメン、および1,2−ジクロロベンゼンである。
第3工程で使用される溶媒の使用量については特に制限はない。しかし、溶媒の体積に対する2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の質量(W/V%)は3%以上、または4〜40%の範囲にある。第3工程の反応は、反応速度や転化率を高めるために、Dean−Stark装置を用いて共沸脱水操作(生成する水を除去しながら還流する操作)を行ってもよい。第3工程の反応温度に特に制限はないが、100℃〜200℃、または120℃〜140℃の範囲が適当である。さらに、第3工程の反応は酸性触媒の存在下で行うこともできる。酸性溶媒の例としては、例えば、パラ−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸、酢酸、リン酸、塩酸、硝酸、蟻酸などが挙げられる。酸性触媒の使用は、反応速度を高めるのに効果的である。好ましい触媒は、パラ−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸およびリン酸である。酸性触媒の量は、(アミノ酸、すなわち、2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の量に対して)0.01〜20モル%、または0.05〜10モル%の範囲である。例えば、アミノ酸と0.1〜0.2モル%のパラ−トルエンスルホン酸をキシレン中で10時間加熱還流して、共沸脱水する。
第3工程で得られる式Iのジベンゾチアゼピン化合物の化学構造は、式IVの2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体の化学構造によって規定される。式Iのジベンゾチアゼピン誘導体の例としては、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オン、8−メチル−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オン、8−フェニル−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オン、8−メトキシ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンおよび2−メトキシ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オン、2−メトキシ−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンおよびこれらの亜種が好ましい。
第3工程で生成した式Iのジベンゾチアゼピン化合物は、反応混合物を冷却してジベンゾチアゼピン化合物の結晶を析出させることで容易に回収できる。析出した結晶生成物を濾取することで高純度のジベンゾチアゼピン化合物を得ることができる。さらに精製が必要な場合は、再結晶を行うか、カラムクロマトグラフィーを用いればよい。あるいは、生成物を析出させる前に、アルカリ性水溶液を添加して反応混合物をアルカリ性にして、水層を除去して残った有機層を冷却してジベンゾチアゼピン化合物の結晶を析出させてもよい。ここで用いるアルカリ性水溶液は、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムあるいはこれらの亜種を用いて調製することができる。アルカリ性水溶液中のこれらアルカリ化合物の濃度は0.5〜30質量%の範囲にあることができる。アルカリ性水溶液の使用量については特に制限はないが、第3工程の生成物(すなわち、式Iのジベンゾチアゼピン化合物)1質量部に対して、0.05〜0.4質量部の範囲にあることができる。例えば、140℃、10時間の加熱を行ったのち、55℃に冷却して、得られた懸濁液を濾過する。濾取したジベンゾチアゼピンラクタムのケーキをメタノールで洗い、真空乾燥させる。
本発明の好ましい態様は以下のとおりである。
(1)式IIのニトロベンゼン化合物が、2−クロロニトロベンゼンまたは2−ブロモニトロベンゼンのようなハロニトロベンゼンである。
(2)式IIIのチオサリチル酸化合物がチオサリチル酸または5−メトキシチオサリチル酸である。
(3)本発明によるジベンゾチアゼピン化合物類の製造法の第1工程において、水酸化ナトリウムのような塩基を用いる。
(4)式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体が、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドまたは2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドである。
(5)本発明によるベンゾチアゼピン化合物の製造法の第2工程の還元反応において、Pd−Pt/C触媒を用い、溶媒として酢酸エチルを用いる。
(6)本発明のジベンゾチアゼピン製造法の脱水縮合工程において、パラ−トルエンスルホン酸またはその類の酸を用いる。
(1)式IIのニトロベンゼン化合物が、2−クロロニトロベンゼンまたは2−ブロモニトロベンゼンのようなハロニトロベンゼンである。
(2)式IIIのチオサリチル酸化合物がチオサリチル酸または5−メトキシチオサリチル酸である。
(3)本発明によるジベンゾチアゼピン化合物類の製造法の第1工程において、水酸化ナトリウムのような塩基を用いる。
(4)式IVの2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド誘導体が、2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィドまたは2−ニトロ−2’−カルボキシ−4’−メトキシ−ジフェニルスルフィドである。
(5)本発明によるベンゾチアゼピン化合物の製造法の第2工程の還元反応において、Pd−Pt/C触媒を用い、溶媒として酢酸エチルを用いる。
(6)本発明のジベンゾチアゼピン製造法の脱水縮合工程において、パラ−トルエンスルホン酸またはその類の酸を用いる。
ここに記載した本発明の製造法に基づく操作によって、薬剤合成の中間体として有用な式Iで表されるジベンゾチアゼピン化合物を、容易に高収率で製造することができる。
ここに開示した発明をより効果的に理解できるように、以下に実施例を示す。しかし、以下の実施例はあくまで説明のためのものであり、いかなる意味でも本発明を限定するものではない。
[実施例1:第1工程]
チオサリチル酸(20g、0.126モル、96.9%)と2−クロロニトロベンゼン(24.6g、0.156モル、99.7%)とを反応容器に入れ、IPA(50ml)と水(10ml)とを加えて20〜25℃に保った。容器内を不活性化(チッ素ガス)し、懸濁液を30〜35℃に加熱してKOH水溶液(30.9g、0.273モル、49.51% 質量/質量)を加え、さらに水(24.4ml)で洗浄した。反応混合物を加熱還流させ、その温度を6時間維持した。反応終了後、65℃まで冷却し水(50ml)を加えた。反応液を65℃に維持したまま、濃塩酸(20g)を加えて、粗ニトロ酸を沈殿させた。懸濁液を再び加熱還流させ、その温度で1時間撹拌した。その後、反応液を25〜30℃に冷却した。25〜30℃で30分間撹拌した後、懸濁液を濾過し、得られたケーキを水(2×40ml)とトルエン(2×40ml)で洗い、濾紙上に置いたまま1時間真空乾燥させて、2−(2−ニトロフェニルスルファリル)安息香酸(31.1g、100% 質量/質量、90%)を得た。
チオサリチル酸(20g、0.126モル、96.9%)と2−クロロニトロベンゼン(24.6g、0.156モル、99.7%)とを反応容器に入れ、IPA(50ml)と水(10ml)とを加えて20〜25℃に保った。容器内を不活性化(チッ素ガス)し、懸濁液を30〜35℃に加熱してKOH水溶液(30.9g、0.273モル、49.51% 質量/質量)を加え、さらに水(24.4ml)で洗浄した。反応混合物を加熱還流させ、その温度を6時間維持した。反応終了後、65℃まで冷却し水(50ml)を加えた。反応液を65℃に維持したまま、濃塩酸(20g)を加えて、粗ニトロ酸を沈殿させた。懸濁液を再び加熱還流させ、その温度で1時間撹拌した。その後、反応液を25〜30℃に冷却した。25〜30℃で30分間撹拌した後、懸濁液を濾過し、得られたケーキを水(2×40ml)とトルエン(2×40ml)で洗い、濾紙上に置いたまま1時間真空乾燥させて、2−(2−ニトロフェニルスルファリル)安息香酸(31.1g、100% 質量/質量、90%)を得た。
[実施例2:第2工程]
得られたニトロ酸(43.0g、145ミリモル、93%)、Pd−Pt/C触媒(ウエットで8g、0.076% 質量/質量、ドライ)および酢酸エチル(400ml)を反応容器に入れ、20〜25℃に保った。容器内に水素ガスを5気圧になるまで導入し、50℃まで加熱して、水素ガス圧、温度ともに5時間維持した。反応終了後、反応液を濾過し、アミノ酸の酢酸エチル溶液を水(120ml)で洗浄した。
得られたニトロ酸(43.0g、145ミリモル、93%)、Pd−Pt/C触媒(ウエットで8g、0.076% 質量/質量、ドライ)および酢酸エチル(400ml)を反応容器に入れ、20〜25℃に保った。容器内に水素ガスを5気圧になるまで導入し、50℃まで加熱して、水素ガス圧、温度ともに5時間維持した。反応終了後、反応液を濾過し、アミノ酸の酢酸エチル溶液を水(120ml)で洗浄した。
[実施例3:第3工程]
実施例2で得られた酢酸エチル溶液にパラ−トルエンスルホン酸(41mg、0.2175ミリモル)を加え、約50%の酢酸エチルを蒸留で除去した。反応容器にキシレン(320ml)を加え、液温が125℃に達するまで蒸留を続けた。さらに反応液を10時間加熱して共沸脱水したのち、容器内を55℃まで冷却し、得られた懸濁液を濾過した。濾取したケーキをメタノール(120ml)で洗い、単離して真空乾燥させて10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オン(28.4g、86%)を得た。
実施例2で得られた酢酸エチル溶液にパラ−トルエンスルホン酸(41mg、0.2175ミリモル)を加え、約50%の酢酸エチルを蒸留で除去した。反応容器にキシレン(320ml)を加え、液温が125℃に達するまで蒸留を続けた。さらに反応液を10時間加熱して共沸脱水したのち、容器内を55℃まで冷却し、得られた懸濁液を濾過した。濾取したケーキをメタノール(120ml)で洗い、単離して真空乾燥させて10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オン(28.4g、86%)を得た。
ここに記載されたことに加えて、上記の記述から当業者にとっては自明である種々のバリエーションが可能あり、それらは本発明の特許請求の範囲に含まれる。また、本明細書において引用した文献(学術論文、合衆国およびその他の地域の特許、特許公開公報、国際特許出願公報などであるが、これらに限定されるものではない)は、あくまで参考の為のものである。
Claims (34)
- 酸性触媒が、パラ−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸およびリン酸からなる群より選ばれる少なくとも一つの化合物である請求項1の製造法。
- 脂肪族エステルが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよび酢酸n−ブチルからなる群より選ばれる少なくとも一つのエステルである請求項3の製造法。
- 還元工程を、Pd/C、Pt/CおよびPd−Pt/Cからなる群より選ばれる少なくとも一つの触媒の存在下にて行う請求項3の製造法。
- 該混合物中の脂肪族アルコールと水との体積比が、前者/後者で10/1から1/10の範囲にある請求項6の製造法。
- 脂肪族アルコールがイソプロピルアルコールである請求項6の製造法。
- 該反応工程を還流下にて行う請求項6の製造法。
- 該反応を塩基の存在下にて行う請求項6の製造法。
- 式IV:
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表す)
で表される2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物を、炭素原子数が1〜6個の脂肪族アルコールと炭素原子数が1〜6個の脂肪族カルボン酸との脂肪族エステル中で還元する工程を含む、下記式V:
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、前記と同じ意味を表す)
で表される2−アミノ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の製造法。 - 脂肪族エステルが、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよび酢酸n−ブチルからなる群より選ばれる少なくとも一つのエステルである請求項11の製造法。
- 還元工程を、Pd/C、Pt/CおよびPd−Pt/Cからなる群より選ばれる少なくとも一つの触媒の存在下にて行う請求項11の製造法。
- 式II:
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表す)
で表されるニトロベンゼン化合物と、下記式III:
(式中、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アリール基、アリールオキシ基もしくはアリールカルボニル基を表す)
で表されるチオサリチル酸化合物とを、炭素原子数が1〜6個の脂肪族アルコールと水との混合物中で反応させる工程を含む、下記式IV:
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、 前記と同じ意味を表す)
で表される2−ニトロ−2’−カルボキシ−ジフェニルスルフィド化合物の製造法。 - 該混合物中の脂肪族アルコールと水との体積比が、前者/後者で10/1から1/10の範囲にある請求項14の製造法。
- 脂肪族アルコールがイソプロピルアルコールである請求項14の製造法。
- 該反応工程を還流下にて行う請求項14の製造法。
- 該反応を塩基の存在下にて行う請求項14の製造法。
- ハロニトロベンゼン化合物とチオサリチル酸化合物とを、塩基の存在下にて溶媒中で約84℃、約6時間反応させてニトロ酸化合物を得る工程;
上記ニトロ酸化合物をPd−Pt/C触媒を用いて酢酸エチルの存在下にて、約4から約6気圧の水素ガス中で約50℃、約5時間還元して、アミノ酸化合物を得る工程;および
前記アミノ酸化合物を酸およびキシレンの存在下にて約120℃から約140℃の温度で、約10時間、共沸脱水することで脱水縮合反応させてラクタム化合物を製造する工程;
を含む方法。 - ハロニトロベンゼン化合物が2−クロロニトロベンゼンである請求項19の方法。
- チオサリチル酸化合物がチオサリチル酸である請求項19の方法。
- 脱水縮合反応に用いる酸が、パラ−トルエンスルホン酸、硫酸、酢酸、リン酸、塩酸またはギ酸である請求項19の方法。
- 該溶媒が、水とイソプロパノールである請求項19の方法。
- 該塩基が水酸化カリウムである請求項19の方法。
- ハロニトロベンゼン化合物とチオサリチル酸化合物とを約84℃で約6時間還流する請求項19の方法。
- ハロニトロベンゼン化合物とチオサリチル酸化合物との反応によって生成したニトロ酸化合物を、65℃に冷却し、酸によって沈殿させることによって回収する請求項19の方法。
- ニトロ酸化合物を、酸によって沈殿させた後に、79℃から84℃で加熱還流する請求項26の方法。
- 加熱還流の後、ニトロ酸化合物を25℃から30℃に冷却する請求項27の方法。
- ニトロ酸化合物を、約5気圧の圧力下にてPd−Pt/C触媒で還元する請求項19の方法。
- 脱水縮合反応を約140℃で行う請求項19の方法。
- 2−クロロニトロベンゼンとチオサリチル酸とを、水酸化カリウムの存在下にて水とイソプロパノール中で約84℃、約6時間反応させて2−(2−ニトロフェニル−スルファニル)安息香酸を得る工程;
2−(2−ニトロフェニル−スルファニル)安息香酸をPd,Pt/C触媒を用いて酢酸エチルの存在下にて、約5気圧の水素ガス中で約50℃、約5時間還元して、2−(2−アミノフェニル−スルファニル)安息香酸を得る工程;および
2−(2−アミノフェニル−スルファニル)安息香酸をキシレン中でパラ−トルエンスルホン酸の存在下にて約140℃で、約10時間、共沸脱水することで脱水縮合反応させて10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンを製造する工程;
からなるジベンゾチアゼピン化合物の製造法。 - 2−クロロニトロベンゼンとチオサリチル酸とを、水酸化カリウムの存在下にて水とイソプロパノール中で約84℃、約6時間反応させて2−(2−ニトロフェニル−スルファニル)安息香酸を得る工程からなる2−(2−ニトロフェニル−スルファニル)安息香酸の製造法。
- 2−(2−ニトロフェニル−スルファニル)安息香酸をPd,Pt/C触媒を用いて酢酸エチルの存在下にて、約5気圧の水素ガス中で約50℃、約5時間還元して、2−(2−アミノフェニル−スルファニル)安息香酸を得る工程からなる2−(2−アミノフェニル−スルファニル)安息香酸の製造法。
- 2−(2−アミノフェニル−スルファニル)安息香酸をキシレン中でパラ−トルエンスルホン酸の存在下にて約140℃で、約10時間、共沸脱水することで脱水縮合反応させて10、11−ジヒドロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンを製造する工程からなる10,11−ジヒドロジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−オンの製造法。
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