JP2009523445A - 新規fshグリコシル化変異体d3n - Google Patents

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Abstract

高度にグリコシル化され、半減期の長いFSH突然変異体について記載する。ヒト患者における、卵胞形成を有するこのFSH突然変異体の用途についても記載する。

Description

1. 発明の分野
本発明は、ヒトの生殖に関する。更に具体的には、本発明は不妊治療に関する。
2.関連技術
a.ゴナドトロピン
卵胞刺激ホルモン(FSH)は、ヒトの生殖において重要な役割を果たすゴナドトロピンのファミリーのメンバーである。ゴナドトロピン、そしてまた黄体形成ホルモン(LH)及び絨毛性ゴナドトロピン(CG)などは、ヘテロダイマーであり、各々共通するα-サブユニット(92アミノ酸)及び独特のβ-サブユニット(FSH中111アミノ酸)からなる。α及びβサブユニットの成熟型のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1及び配列番号2に示す。
ヒトFSHは、下垂体及び閉経後の尿から単離されており(EP 322,438)、そして哺乳類細胞において組換え技術で産生されている (US 5,639,640, US 5,156,957, US 4,923,805, US 4,840,896, US 5,767,251, EP 211,894及びEP 521,586)。後者の文献はヒトFSHβサブユニット遺伝子についても開示している。US 5,405,945は、イントロンを一つだけ含んで成る修飾ヒトα-サブユニット遺伝子を開示している。
Liuら, J Biol Chem 1993,15 ; 268 (2): 21613-7, Grossmannら, Mol Endocrinol 1996 10 (6): 769-79, RothとDias (Mol Cell Endocrinol 1995 1; 109 (2): 143-9, Valoveら, Endocrinology 1994; 135 (6): 2657-61, Yooら, JBiol Chem 1993 25; 268 (18): 13034-42), US 5,508,261及びChappelら, 1998, ヒト Reproduction, 13 (3): 1835 は、FSHの多岐にわたる構造-機能の関係についての研究並びにFSHのレセプター結合及び活性化及びダイマー化に関与するアミノ酸残基の同定について開示している。
b.介助生殖技術におけるゴナドトロピンの使用
ゴナドトロピンは、生殖サイクルにおける重要な役割を果たし、そしてそれらの外来療法における使用は介助保護技術(ART)の、例えば、in vitro生殖(IVF)、細胞質内精子注入(IVF/ICSI)及び胚移植(ET)、並びに排卵誘発(OI)との関係において、天然に又は子宮膣内受精(IUI)のいずれかを介するin vivo生殖を受ける無排卵患者において重要である。
US4,589,402及びUS4,845,077は、LHを含まない精製されたFSH及びその生殖における使用を開示している。EP 322 438は、LH活性を実質上ともなわない6200U/mg以上のFSH活性をともなうタンパク質を開示し、ここでFSH α-サブユニット及びβサブユニットは、それぞれ、野生型又はその所定のトランケーション形態でありうる。
長期療法は、女性において卵胞形成を刺激する治療効果、典型的に、8〜10日連続の、そして時には最大21日に渡り治療効果を達成するために、そして最大18月に渡り低ゴナドトロピン性性機能低下症の男性において精子形成を誘導するため必須である。組換えhFSHは、典型的にi.m.又はs.c.日常注射として投与されており、不快症状及び局所注射部位反応の潜在性をともなう。投与の頻度を下げることは、治療を促し且つゴナドトロピン投与を一層好都合にし、一層寛容且つ患者に優しいものとする。
c.FSHのグリコシル化
ゴナドトロピンは、糖タンパク質であり、そして各サブユニットは、in vivo活性及び機能のために重要であるアスパラギン結合した(N-結合した)オリゴ糖側鎖を有する。ポリペプチドに対する炭水化物の添加(グリコシル化)は、翻訳後のイベントであり、これにより特異的アスパラギン(N結合)又はセリン/スレオニン(O結合)アミノ酸に対して糖鎖が付加される。糖タンパク質のタンパク質部分の不変アミノ酸配列とは対照的に、炭水化物構造は、可変であり、これは微小不均一性と称される特徴である。例えば、同じタンパク質のN-グリコシル化部位は、様々な炭水化物構造を含みうる。更に、ある糖タンパク質上の同じグリコシル化部位においてさえ、様々な炭水化物構造が発見されうる。この不均一性は、鋳型に依存しない炭水化物の合成の結果である。
タンパク質のN-グリコシル化は、特に共通パターン Asn-Xaa-Ser/Thrで生じ、そしてより少ない程度で共通パターンAsn-Xaa-Cysで生じ、ここでXaaは任意のアミノ酸残基であってもよい。しかし、共通トリペプチドの存在は、アスパラギン残基がグリコシル化されるだろうことを確実にするために十分ではない。例えば、Asn-Pro-Ser/Thr配列のN-グリコシル化は、Asn-Xaa-Ser/Thrの他の共通パターンよりも50回少ない割合で生じる。
ヒトFSHは、4つのN-結合グリコシル化部位を含んでいる:2つは位置52及び78における共通のサブユニット上でありそして2つは位置7及び24におけるβサブユニット上にある。FSHのサブユニットに対して結合した炭水化物は、ダイマー集成、統合性、分泌及びシグナル伝達のために重要であり、一方でβ-サブユニット炭水化物は、この循環からのダイマー集成、分泌、及びヘテロダイマーの一掃のために重要である。
Galwayら., Endocrinology 1990; 127 (1): 93-100は、N-アセチルグルコサミントランスフェラーゼ-I CHO細胞系統又はシアル酸輸送欠損CHO細胞系統において産生されるFSH変異体が、野生型細胞によって分泌されたFSHと又は精製された下垂体FSHと同程度のin vitroで活性であるが、in vivo活性を欠くことを示しており、これはおそらく、血清において、不十分にグリコシル化された変異体が迅速に掃き出されることによると推定される。D'Antonioら, Human Reprod 1999; 14 (5): 1160-7には、血流中を循環する様々なFSHイソ型が記載されている。このイソ型は、同一のアミノ酸配列を有するが、翻訳後修飾の程度が異なる。酸性イソ型基がより少ないことが、酸性イソ型基と比べてより早いin vivoクリアランスを有することが発見され、それは酸性イソ型同士のシアル酸含量の違いによる可能性がある。更に、Bishopら,Endocrinology 1995; 136 (6): 2635-40 は、循環半減期は見かけ上in vitro活性の一次決定因子であるとの結論を出した。これらの観察により、FSHの半減期は、ポリペプチドのサリチル酸含量を高めるために、更なるグリコシル化部位を導入することによって、高めることができるという仮説が導かれる。
d.FSH変異体
半減期の増加したFSHアゴニストは、hCG(CTP)のカルボキシ末端ペプチドを天然組換えヒトFSH(rhFSH)へ融合することによって開発されてきた。CTP成分は112-118〜145アミノ酸からなり、位置121、127、132及び138に4つのO-結合グリコシル化部位を伴う。US5,338,835及びUS5,585,345は、hCGのCTP成分を伴うC末端Gluにおいて広がる修飾FSH /3-サブユニットを開示する。生じる修飾類似体は、天然FSHの生物活性のみならず、長期循環半減期を有すると述べられている。US5,405,945は、hCGp-サブユニット又はその変異体のカルボキシ末端は、CG、FSH、及びLHを一掃することに対する有意な効果を有する。
US5,883,073は、CG、TSH、LH及びFSHに対するアゴニスト又はアンタゴニスト活性を有する2つのα-サブユニットからなる単鎖タンパク質を開示する。US5,508,261は、糖タンパク質ホルモンα-サブユニットを含んで成るLH及びFSHレセプターに対する結合親和性を有するヘテロダイマーポリペプチド及び天然生ずるOサブユニットポリペプチドを開示し、ここで、β-サブユニットポリペプチドは、4個の結合した配列を含んで成るアミノ酸の鎖であり、その各々は特異的配列のリストから選択される。Kleinら(2003)は、半減期が増加したFSHの単鎖アナログであって、α-サブユニット及びβ-サブユニットが、2つのN結合グリコシル化部位を含むオリゴペプチドによって結合しているアナログを開示している。
WO01/58493は、FSHのin vivo半減期を増加する試みにおいて、FSHのαサブユニットにおいて生じうる51の突然変異及びFSHのαサブユニットにおいて生じる77の突然変異を開示している。WO01/58493は、突然変異α-サブユニット及びβ-サブユニットは、個別に(1つの追加のグリコシル化部位)又は組み合わせ(2つの追加のグリコシル化部位)において使用されうることを開示している。hCGの構造並びhCGとFSHのβ-サブユニットの間で同一性が32%しかないにもかかわらず、FSH及びhCGの配列アライメント基づいて生じたFSHの3D構造のモデル50個を使用することによって、128個の候補突然変異が同定された。WO 01/58493は、グリコシル化部位が部位特異的突然変異誘発により誘導されたFSHのα-サブユニット又はβ-サブユニットの産生又は試験を何ら開示していない。
WO 05/020934は、FSHのα-サブユニット及びβ-サブユニットの双方に変異、例えばβ E55N/V57Tに二重変異を有する、すなわち、55アミノ酸位のE残基がN、そして57アミノ酸位のV残基がTに突然変異しているGM1を開示している。β E55N/V57Tのアミノ酸配列は、配列番号3に示すとおりである。
FSHの治療上関連のある効果の一部又は全部を提供する産物、現在入手可能なFSH製品と比較してより少ない頻度で投与されうる産物、そして、好ましくは現在の処理によって達成可能であるよりも一層安定なレベルの循環するFSH活性を提供する産物についての臨床上の要請がある。
本発明は、かかる産物並びにかかる産物を製造する方法に関する。
発明の概要
本発明は、FSHのα−サブユニットが配列番号4を含んで成り、そしてFSHのβ−サブユニットが配列番号3を含んで成る、突然変異FSH分子に関する。当該FSHは、前記突然変異FSHの0、1、2、3、4、5又は6つのアスパラギン残基においてNグリコシル化されていてもよい。1つの態様において、配列番号4の突然変異α−サブユニットのN3がグリコシル化されていてもよい。
本発明は、配列番号4の配列を含んで成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードする単離DNA分子にも関する。本発明はまた、配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードする単離DNAにも関する。
本発明は、配列番号4の配列を含んで成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成るベクターにも関する。このベクターは発現ベクターであってもよい。
本発明はまた、配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成るベクターに関する。このベクターは発現ベクターであってもよい。
本発明は、第一のDNA及び第二のDNAを含んで成るベクターであって、当該第一のDNAが配列番号4の配列を含んで成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードし、第二のDNAが配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードするベクター、にも関する。このベクターは、発現ベクターであってもよい。
本発明は、配列番号4の配列を含んで成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成る細胞にも関する。このベクターは発現ベクターであってもよい。前記細胞は哺乳動物細胞、例えばCHO細胞であってもよい。
本発明は、配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成る細胞にも関する。このベクターは哺乳類細胞であってもよい。前記細胞は哺乳類細胞、例えばCHOであってもよい。
本発明はまた、第一のDNA及び第二のDNAを含んで成る細胞であって、当該第一DNAが配列番号4の配列を含んで成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードし、そして当該第二のDNAが配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードする細胞に関する。このベクターは、発現ベクターであってもよい。前記細胞は哺乳類細胞、CHO細胞であってもよい。
本発明は、第一及び第二のベクターを含んで成る細胞にも関連し、ここで当該第一ベクターは配列番号4から成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成り、そして当該第二のベクターは配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成る。このベクターは、発現ベクターであってもよい。前記細胞は哺乳類細胞、例えばCHO細胞であってもよい。
本発明はまた、タンパク質をグリコシル化できる哺乳類細胞を培養することを含んで成るFSH突然変異体を生産するための方法であって、当該細胞が、配列番号4の配列を含んで成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成る第一の発現ベクター及び配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成る第二の発現ベクターを含んで成る、方法に関する。本発明の別の態様において、前記細胞は、配列番号4の配列を含んで成るFSHα-サブユニット突然変異体をコードするDNA、そして更に配列番号3の配列を含んで成るFSHβ-サブユニット突然変異体をコードするDNAを含んで成る一種のベクターを含んで成る。
本発明はまた、FSH突然変異及び医薬として許容される担体又は賦形剤を含んで成る医薬組成物であって、FSHα-サブユニットが、配列番号4の配列を含んで成り、そして前記FSHβ-サブユニットが配列番号3を含んで成る組成物に関する。
本発明は、不妊の哺乳動物を処置する方法であって、有効量の突然変異FSHを、それを必要とする動物に対して投与することを含んで成り、ここで当該FSHα-サブユニットは、配列番号4の配列番号を含んで成り、そして当該FSH サブユニットは配列番号3の配列を含んで成る方法、に関する。
本発明はまた、哺乳動物における卵胞形成を刺激する方法であって、有効量の突然変異FSH突然変異体を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含んで成り、ここで当該FSHβ-サブユニットは配列番号4の配列を含んで成り、そして当該FSHβ-サブユニットは配列番号3を含んで成る、方法に関する。
本発明は、哺乳動物における卵巣過剰刺激症候群を誘導する方法であって、有効量の突然変異FSH突然変異を、それを必要とする哺乳動物に対して投与することを含んで成り、ここでFSHαサブユニットは、配列番号3の配列を含んで成り、そしてここで当該FSHβ-サブユニットは、配列番号4の配列を含んで成る、方法、に関する。
発明の詳細な説明
FSHの炭水化物含量を増加させることは、in-vivo半減期の増加をもたらすことが示されている一方で、FSHの半減期を向上させることは、単に追加のグリコシル化部位を付加することよりも一層複雑である。グリコシル化共通配列は、炭水化物付加のために欠かせない一方で、炭水化物付加部位が利用されることを確実にするのに十分ではない。他の因子、例えば、生合成の間の局所的なタンパク質ホールティング及びコンホメーションは、オリゴ糖がある共通配列部位に結合したかどうかを決定する。加えて、共通配列は、所定の部位のグリコシル化がレセプター結合と干渉しない、又は糖タンパク質のホールディング、コンホメーション又は安定性を損わないような位置になければならない。この点に対して、半減期が増加したFSH類似体は、ポリペプチドの融合タンパク部分が追加のグリコシル化部位を含んだ融合タンパク質に主に限定されている。
1. 突然変異FSH
追加のグリコシル化認識部位が作られるように修飾されたFSH突然変異体が提供される。FSHの突然変異体のα-サブユニットは、野生型α-サブユニットと比較して以下の突然変異のうちの1つを有してもよい:D3N及びQ5T。突然変異FSHは、上記突然変異α-サブユニットと、突然変異β-サブユニットと組み合わせて含んで成ることもあり、例えば、βFM1は、以下の突然変異を含んでいる:E55N/V57T。組換えFSHの1又は複数の追加のグリコシル化部位は、in vitro又はin vivoでグリコシル化されてもよい。
FSH突然変異体は、当業者に知られている任意の適当な方法で産生してもよい。これらの方法として、各FSH 突然変異をコードしており、且つトランスフェクションされた適当な宿主内でアミノ酸配列を発現するヌクレオチド配列の構築がある。前記FSH 突然変異は、化学合成によって又は化学合成と組換えDNA技術の組み合わせによって産生してもよい。
前記FSH突然変異体は、ダイマーポリペプチドを形成するようにin vivoでダイマー化する、2つの個別のポリペプチド鎖の形態の、FSHのα-サブユニット及びβ-サブユニットを含んで成ることもあり、あるいは、ペプチド結合又はペプチドリンカーによって共有結合した2つのサブユニットを含んで成る単鎖構築体を含んで成ることもある。リンカーペプチドのアミノ酸残基は、FSH突然変異の活性に有意に干渉しないような特性を示しうる。
本発明のFSH 突然変異体は、野生型FSHと比較して半減期が長いことがある。本発明のFSH突然変異体は、野生型FSHと比較して適切に安定性が高いこともある。FSH 突然変異体はオリゴ糖を、0、1、2、3、4、5又は6つのN結合グリコシル化部位に含んで成る場合がある。前記FSH突然変異は、1又は複数のFSH突然変異イソ型を含んで成り、ここで各イソ型は、0、1、2、3、4、5又は6つのN結合グリコシル化部位にオリゴ糖を含んで成る。
本発明のFSH突然変異のα-サブユニット又はβ-サブユニットをコードするヌクレオチド配列は、親FSH サブユニット、例えば、hFSH-α又はhFSH-βをコードする、配列番号1及び2でそれぞれ示されたアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を単離又は合成することによってそれぞれ構築してもよい。次いで、ヌクレオチド配列は関連するアミノ酸残基の置換を起こすように変化されることもある。ヌクレオチド配列は、部位指定突然変異誘発によって修飾してもよい。あるいは、ヌクレオチド配列は、化学合成によって調製してもよく、ここでオリゴヌクレオチドは、FSH突然変異の特異的アミノ酸配列に基づいて設計される。
前記ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、組換えベクターに挿入されて、トランスフェクションされた所望の宿主細胞中でのポリペプチドの発現に必要な制御配列に作用可能に連結されてもよい。制御配列は、ポリペプチドの発現にとって必要又は有利な任意の成分でありうる。哺乳類細胞内で転写を指示するための適当な制御配列の例には、SV40及びアデノウイルスの前記及び後期プロモーター、例えばアデノウイルス2型主要後期プロモーター、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター及びヒトサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV)である。
当業者は、過度の実験を行うことなく、これらのベクター、発現制御配列及び宿主のなかから選択しうる。組換えベクターは、自立的に反復するベクターであり、即ち、染色体外のものとして存在し、その複製は、染色体の複製とは独立している、プラスミドなどである。あるいは、ベクターは、宿主細胞中に導入された場合、宿主細胞ゲノムに組み込まれそして染色体と一緒に複製されるものであってもよい。
前記ベクターは、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列がその転写のために必要な追加のセグメントに作用可能に連結する発現ベクターであってもよい。ベクターは、プラスミド又はウィルスDNAに由来しうる。本明細書中に記載の宿主細胞中での発現のための多くの適切な発現ベクターは、市販されて入手可能であるかあるいは刊行物に記載されている。
組換えベクターは、問題の宿主細胞中での当該ベクターの複製を可能にするDNA配列を更に含んで成ることもある。かかる配列の例(宿主細胞が哺乳類細胞である場合)は、SV40の複製起点である。このベクターは、選択的なマーカーを含んで成ることもあり、それは例えば、その産物が宿主細胞中欠損を補う遺伝子、例えばジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)をコードする遺伝子又は薬物、例えば、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリンクロラムフェニコール、ネオマイシン、ヒグロマイシン若しくはメトトレキサートに対する耐性を与える遺伝子である。
組換えベクターは、増幅可能な遺伝子、例えば、DHFRを含んで成ることもあり、その結果、増幅可能遺伝子の複数のコピー及びフランキング配列、例えば、突然変異FSH DNAを有する細胞は、適当な培地上で選択することができる。
FSH突然変異体のα-サブユニットをコードするDNAも提供される。FSH突然変異体のアルファ及びベータサブユニットをコードするヌクレオチド配列は、部位指定突然変異誘発、合成、PCR又は他の方法で調製されてるか否かに拘わらず、任意に、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を更に含んでもよい。シグナルペプチドは、それを発現している細胞から分泌された場合に存在しうる。かかるシグナルペプチドは、もし存在すれば、ポリペプチドの発現のために選択される細胞によって認識されうる。シグナルペプチドは、ポリペプチドに対して、相同的(例えば、hFSH サブユニットと通常結合している)又は非相同的(即ち、hFSH以外の他の源に由来する)であるかあるいは宿主細胞に対して相同的であるかあるいは非相同的、即ち、宿主細胞から通常発現されるシグナルペプチドであるかあるいは宿主細胞から通常発現されないものである。
本発明のポリペプチドサブユニットを生産するために使用されうる適切な宿主としては、例えば、細菌、真菌(酵母を含む)、植物、昆虫、哺乳動物、又は他の適切な動物細胞もしくは細胞系統、並びにトランスジェニック動物又は植物がある。適切な哺乳類宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系統、(例えば、CHO-KL ; ATCC CCL-61)、ミドリザル細胞系統(COS)(例えば、COS 1 (ATCC CRL-1650)、COS 7 (ATCC CRL-1651)) ; マウス細胞(例えば NSIO), ベビーハムスター腎臓(BI-EK)細胞系統(例えば、ATCC CRL-1632又はATCC CCL-10)、及びヒト細胞(例えばBEK 293 (ATCC CRL-1573))、並びに組織培養における植物細胞である。更に適切な細胞系統は当業界で公知であり且つAmerican Type Culture Collection, USAなどの公共寄託機関から入手可能である。外因性DNAを哺乳類宿主細胞中へ導入するための方法としては、カルシウムリン酸介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン介在トランスフェクション、リポソーム介在トランスフェクション及びウィルスベクターが挙げられる。
細胞は、当業界で公知の方法を使用することで、ポリペプチドを生産するための適切な栄養培地において培養してもよい。例えば、細胞は、研究室又は産業発酵装置において、ポリペプチドが発現及び/又は単離されることが可能になる適切な培地と条件下で行われる、振とうフラスコ培養、スモールスケール又はラージスケール発酵(例えば、連続、バッチ、フェドバッチ、又は固体状態発酵)で培養してもよい。培養を、当業界で公知の手順を使用することで、炭素及び窒素源及び無機塩を含んで成る適切な栄養培地中で行う。適切な培地は商業的供給者から入手可能であるか、あるいは刊行物(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ)にある成分に従って調製してもよい。もし、ポリペプチドが栄養培地中へと分泌されたら、それは細胞溶解物から回収してもよい。
結果として生ずる突然変異FSHポリペプチドは、当業者に公知の方法によって回収してもよい。例えば、それは、常用の方法の例えば、限定されないが、遠心、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発、又は沈殿によって栄養培地から回収してもよい。突然変異FSHポリペプチドは、当業界で公知の様々な手順によって精製してもよく、その手段は例えば、限定しないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、クロマト分画、及びサイズ排除)、電気泳動手段(例えば、例えば、予備(preparative)等電点電気泳動)、溶解度差(例えば、硫酸アンモニウム沈殿)、SDS-PAGE、又は抽出である。
前記FSH突然変異体を含んで成る医薬組成物も提供される。かかる医薬組成物は、卵胞形成を刺激するために使用してもよく、例えば、排卵誘発又は介助生殖技術(ART)と併用することができる。本発明のFSH突然変異体は、多数の卵胞の成長及び成熟を誘導するために特に有効であり、そして特に、多数の卵母細胞を回収することが望まれるARTにおいて使用することが好適である。
前記FSH突然変異は、in vivo受精のために、OIのための単一卵胞形成(mono-folliculogenesis)を誘導し、又はIUIのためのパウシ卵胞形成(paucifolliculogenesis)(最大3つの卵胞)を誘導するために使用してもよい。単一卵胞形成は、FSH突然変異体の投与量を減少させることにより、又は典型的なFSH調製物と比較して投与頻度を減少させることにより達成してもよい。例えば、OIにおいて、本発明のFSH調製物は3日ごとに225〜400IUで、又は、患者の反応によってはより少ない投与量で投与してもよい。患者の反応は、超音波検査によって追跡されうる。
本発明のFSH突然変異体は、コントロールされた排卵誘発(COH)計画において使用してもよい。COHのための標準的な計画は次の段階を含む。内因性黄体形成ホルモン(LH)が、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストの投与によってダウンレギュレーションされるダウンレギュレーション段階、しかる後の卵胞刺激ホルモン(FSH)の日々の投与(通常約150〜225IU/日)によって卵胞成長(卵胞形成)が誘導される刺激段階である。あるいは、刺激は、自然又は誘導された月経、しかる後のGnRH-アンタゴニスト(典型的に、刺激段階の約6日後)の投与により始まる。16mm超の卵胞が3つ以上存在している場合(一つは18mm)、、hCG(5〜10,000IU)の単回静脈内投与を行って、天然のLHサージに類似した排卵を誘導させることもある。卵母細胞回収は、hCG注入後36〜38時間に設定されうる。
本発明のFSH突然変異体は、OI及びIUIに使用してもよい。例えば、本発明の調製物によるFSH刺激は、日々75〜150IUの投与量において、自然又は誘導された月経後に始まる。1又は3つの卵胞が16 mm以上の直径に達した場合、hCGの単回静脈内投与を行って排卵を誘導してもよい。受精は、定期的な性交又はIUIによって、in vivoで行われる。
本発明のFSH突然変異体は、野生型のFSH調製物に比べて増加した半減期を有することがあるので、例えば、上記の計画は、より少ないOI投与量のFSHが使用されることもあり、そして/あるいはFSH刺激期間が短くなることがあるので、卵胞の数と生存の観点から、同じ又はより良い反応を達成しながら変更を加えられることもある。例えば、本発明のFSH製剤を使用することで、適切な卵胞形成が、約50〜150以上のIU FSH、好ましくは約50〜100、より好ましくは約50〜75IU FSH以上の日々の投与により達成されうる。FSHの投与量は、通常、一日一回又は一日二回ベースである。投与期間は、約14日以下、好ましくは約12日以下、より好ましくは約11又は10日以下である。OIのために、本発明のFSH突然変異調製物は、25〜150IU FSH/日、好ましくは50〜125IU FSH/日の投与量で投与してもよい。男性不妊の治療のために、本発明のFSH突然変異調製物は、3×150〜300IU/週で、精子形成レベルが定期的な性交又はART技術のいずれかにより受精に十分になるまで投与してもよい。
前記突然変異FSHの半減期はより長期なものであるため、長期作用製剤として投与されることがある。常用のFSHは、2日ごとに約300IU以上で投与してもよく、しかも約150IU以上で毎日投与されたのと同じ結果に到達する。前記突然変異FSHは、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと又は7日ごとに投与してもよく、しかも常用のFSHの日々の投与と同様の又はそれより優れた結果が得られる。
前記FSH突然変異又はFSH突然変異を含んで成る医薬組成物は、疾患、障害又は症状を治療するための医薬の製造のために使用してもよい。別の観点において、本発明のポリペプチド又は医薬組成物は、哺乳動物、特にヒトを処置する方法であって、かかるポリペプチド又は医薬組成物を必要とする哺乳動物に投与することを含んで成る方法に使用される。
有効量の本発明のポリペプチド、調製物、又はその組成物は、当該ポリペプチドもしくは調製物もしくは組成物が単独でもしくは他の治療剤との組み合わせて投与されるか否かに拘わらず、とりわけ、疾患、投与量、投与スケジュール、組成物の血清半減期、及び患者の一般的健康に依存することは当業者に明らかだろう。典型的に、本発明の調製物又は組成物の有効な量は治療効果を確実にするために十分である。
本発明のFSH突然変異体は、1又は複数の医薬として許容される担体もしくは賦形剤を含む組成物において投与してもよい。「医薬として許容される」とは、患者に投与された場合に不都合な効果を生じない担体又は賦形剤を意味する。かかる医薬として許容される担体及び賦形剤は、当業界で周知であり、そして本発明のポリペプチドは、周知の方法によって医薬組成物へと処方してもよい(例えば、 Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, A. R. Gennaro, Ed. , Mack Publishing Company (1990); Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins, S. Frokjaer and L. Hovgaard, Eds. , Taylor & Francis (2000); and Handbook of Pharmaceutical Excipients, 3rd edition, A. Kibbe, Ed., Pharmaceutical Press (2000)を参照のこと)。本発明のポリペプチドを含んで成る組成物において使用してもよい医薬として許容される賦形剤は、例えば、緩衝剤、安定化剤、防腐剤、等張化剤(isotonifiers)、非イオン性界面活性剤又はデタージェント「湿潤剤」)、抗酸化物質、充填剤又は充填剤、キレート剤、及び共溶媒である。
FSH突然変異体を含んで成る本発明の医薬組成物は、様々な形態、例えば、液体の例えば、すぐに使用できる溶液又は懸濁、ゲル、凍結乾燥形態、又は任意の他の適切な形態の例えば、溶液を調製するために適した粉末又は結晶で処方してもよい。組成物の形態は、治療される特定の適応症に依存し、そして当業者にとっては自明であろう。
本発明のFSH突然変異体を含んで成る医薬組成物は、静脈内、筋内、腹腔内、皮内、皮下、舌下、頬、鼻腔内、経皮に、吸入、又は任意の他の許容できる方法、例えば、PowderJectもしくはProLease technologyもしくはペン注射システムによって投与してもよい。投与の方法は、治療される特定の適応症に依存し、そして当業者にとっては自明であろう。組成物は皮下に投与してもよく、これにより、患者自ら投与することが可能となる。
本発明の医薬組成物は、他の治療剤との組み合わせで投与してもよい。これらの剤は、同医薬組成物の一部として組み込まれて組み込まれることがあり、又は、本発明のポリペプチドとは別個に、同時に又は他の許容できる治療スケジュールに従って投与してもよい。加えて、本発明のポリペプチド、調製物又は医薬組成物は、他の治療に付随して使用してもよい。
本発明は、多数の観点を有し、以下の限定的ではない例によって示される。
実施例1
FSH 突然変異体
ヒトFSHの3D結晶構造を使用して、FSHのα-サブユニットの候補グリコシル化部位、又は候補グリコシル化部位が挿入されうるFSH分子内の領域を同定した。2つのFSH分子(4つのサブユニット)が、結晶構造の各不斉単位に存在している。2つのFSH分子を重ね合わせて比較し、そして各残基を潜在的N-グリコシル化部位を同定するために視覚的に調べる。FSHの結晶構造は、候補としてのN-グリコシル化部位の選択を助けるためにFSH/FSHRレセプター相互作用の知見と組み合わせた。主たる設計基準は、3D構造の最小破壊、予測結合及び活性化部位の最小破壊、及びグリコシル化に適合する予測可能な3D構造である。上記基準に基づいて、FSHのα-サブユニットのアミノ酸配列に対する以下の突然変異を同定した。
Figure 2009523445
実施例2
FSH突然変異体の形態学的分析
FSHのα-サブユニット突然変異体の一過性発現に由来する由来する濃縮培養上清のアリコートを、遊離α-サブユニット及びβ-サブユニットに由来する完全なFSHヘテロダイマーの分解を可能にする、非還元条件下でのSDS-PAGEにより分析した。各突然変異ヘテロダイマーの見かけの分子量と、野生型FSHのものとを比較することで、突然変異FSHが野生型FSHと比較して高度にグリコシル化されているか否かを決定することができる。要約すると、電気泳動後、タンパク質は、電気泳動によりPVDFに移され、そしてFSHのα-サブユニットに対するSerono抗体9-14を用いて視覚化した。コントロールとして、野生型のヒトFSH、突然変異GM1、FSH-CTP及びGonal Fも解析した。表1は、分子量のスタンダードに基づいて算出したα-サブユニット突然変異体及び野生型β-サブユニットにより形成したヘテロダイマーの見かけの分子量を示す。
Figure 2009523445
実施例3
FSH突然変異体のin vitroでの機能
FSH突然変異体の活性を決定するために、組換えによってヒトFSH受容体を発現するCHO細胞系におけるcAMPの産生を刺激する突然変異体の能力について試験した。CHO-FSHR細胞は、FSHR成長培地[MEM α(-)(Gibco, カタログ番号12561-056)+10%の透析済みFBS(Gibco, カタログ番号26300-020)+600μg/mlジェネティシン(Gibco, カタログ番号10131-035)+0.02μM MTX]中で維持した。CHO-FSHR細胞は、100μl/ウェル(2x106細胞/10ml=1プレート)中2x104細胞/ウェルで播種し、そして37℃で24時間アッセイ前にインキュベートした。細胞は、少なくとも70%コンフルエントの状態でアッセイに使用した。
全ての試料及び内部標準につき、67.5nMから出発して12点の1:3段階希釈を行った(Gonal Fを内部標準として使用した)。全ての希釈は、アッセイ培地[DMEM/F12(フェノール無し,Gibco, カタログ番号11039-021)+1mg/ml BSA (Sigma, A-6003)+0.1mM IBMX (3-イソブチル-1-メチルキサントンホスホジエステラーゼ阻害剤、Sigma, カタログ番号I-7018)]中で行った。成長培地をアッセイプレートから除去し、25μlのアッセイ培地(MA6000 cAMP MSDキット Meso Scale Discovery, Gaithersburg, MDを補充)を添加し、プレートを回収して、37℃で15分間インキュベートした。続いてウェルにそれぞれ25μlの試験試料を与え、混合し、回収したプレートを1時間37℃でインキュベートした。1時間のインキュベーション後、試料及び培地をウェルから除去した。25μlの標準溶解バッファー (MA 6000 Meso Scale Discoveryキットを補充)を続いて各ウェルに添加し、そしてプレートをプレートシーラー (Packard, カタログ番号6005185)で覆い、そして5分間振とうした。5分間溶解のためにインキュベーションした後、25μlの溶解した細胞材料をcAMP Meso Scale Discoveryプレート (MA6000 MSDキットを補充)に移し、そして室温で穏やかに混合しながら30分間インキュベートした。25μlのcAMP-APコンジュゲートを各ウェルに添加し、そして混合した。25μlの抗cAMP抗体を各ウェルに添加し、プレートをプレートシーラーで覆い、30分間室温で振とうした。続いてプレートを350μl/ウェルの洗浄バッファーで自動プレート洗浄機において6回洗浄した。100μlのSapphire II RTU(レディートゥユース)の基質のエンハンサーを続いて各ウェルに添加し、プレートをプレートシーラーで覆い、そして暗室において25℃で30分間インキュベートした。続いてプレートをウェル当たり1秒読み取った。ここで、高いシグナルは低い低レベルのcAMPを示し、そして低いシグナルは高レベルのcAMPを示す。FSH突然変異体の用量依存曲線を図2に示す。EC50値を算出して表2に示す。
図2及び表2に示すとおり、FSH突然変異体は、野生型FSHに匹敵するin vitro活性を有している。
Figure 2009523445
実施例4
FSH突然変異体のin vivoでの半減期
2つの異なるロットのD3N突然変異体を別々の薬物動態研究で解析した。2つの研究は同一の設計のものとした:21日齢の33匹の未成熟の雌のSDラット(約40gの体重;Charles River Laboratories, Wilmington, MA)を5つの処置グループ(n=6)及び1つのベースライングループに無作為に分けた。未成熟の雌のラットの選択は、in vivoでのFSH活性に関する生物学的評価について、この年齢及び性別の使用に基づいた。処置グループの動物には、4gのGM1(コントロール)、D3N突然変異体又は8μgのGonal-F rhFSH(コントロール)を皮下(s.c.)注射した。後眼窩洞から、ベースライングループは0時間目に、そして処置グループの動物からは1, 2, 4, 6, 10, 24, 48及び72時間目に採血した(n=3/時点;ラットは、その後の2回のサンプリング時点で出血していないように交代させた)。約0.1mlの血液を各ラットから各出血につき回収し、そして血漿を収集し、そしてELISAで解析するまで-80℃で保存した。両研究由来の血清中のFSHタンパク質を測定するのに使用したアッセイは、DSL FSHコーティングウェルELISA (Diagnostics Systems Laboratories, Webster, TX)で行った。血清試料は、三回一組でそれぞれ解析した。
D3N突然変異体の半減期は、野生型FSHのものと比較して有意に長かった。
実施例5
in vivoでの生体活性
D3N突然変異体の生体活性を評価するために使用したin vivoモデルは、ラット卵巣重量アッセイである。FSH又はFSH様の活性を有する分子、例えばD3N突然変異体による未成熟の21日齢の雌のラットの処置は、卵胞の成育及び卵母細胞の産生を引き起こす。この生育は、処置期間の終了時に卵巣重量を測定することにより容易に検出される。このモデルにおいて、試験されるべき物質は、3日間注射によって与えられ、そして最後の投与の後、卵巣を摘出し、そして計量する。このアッセイは、数十年間、FSHの力価を標識目的で臨床産物に割り当てるための基準として使用された。これは、FSHの関連する生理学的作用を測定し、そして診療所における製品のパフォーマンスと明確な相関関係を有している。
D3N突然変異体のin vivo活性は野生型FSHと比較された。全ての用量は、in vitroでの力価及びラットにおける半減期を考慮して、予想される同量のFSHに基づいて定めた。D3N突然変異体は、野生型FSHと同等の強力なFSH活性を有していることが明らかとなった。
図1は、ヒトFSHのα-サブユニット(配列番号1)に対するD3Nα-サブユニット突然変異体(配列番号4)のアラインメントを示す。残基の番号は、ヒトFSHのα-サブユニット(配列番号1)のものを指し、ここで、1は成熟ポリペプチドの第一アミノ酸である。 図2は、野生型FSHの用量応答曲線と比較した、D3N突然変異体のα-サブユニット及び配列番号3のGM-1β-サブユニットを含んで成る突然変異体FSHについての用量応答曲線を示す。当該用量応答曲線は、突然変異体及び野生型FSHの両方の種々の希釈物でのFSH活性を示す。クローン15Cは、D3N突然変異体を指す。クローン14Cは無関係のFSH突然変異体を指す。

Claims (17)

  1. 配列番号4の配列を含んで成る、FSHの突然変異α-サブユニットをコードする核酸。
  2. 請求項1に記載の核酸を含んで成るベクター。
  3. 発現ベクターである、請求項2に記載のベクター。
  4. 配列番号3の配列をコードする核酸を更に含んで成る、請求項2に記載のベクター。
  5. 請求項2に記載のベクターを含んで成る宿主細胞。
  6. 哺乳類細胞である、請求項5に記載の宿主細胞。
  7. β-サブユニットが配列番号3の配列を含んで成り、α-サブユニットが請求項1に記載の核酸によってコードされる配列を含んで成る、突然変異FSH。
  8. 0〜6個のアスパラギン残基のいずれかがグリコシル化されている、請求項1に記載の突然変異FSH。
  9. α-サブユニットが配列番号4の配列を含んで成り、N5がグリコシル化されている、請求項7に記載の突然変異FSH。
  10. FSH突然変異体を産生する方法であって:
    (a) 請求項1に記載の核酸及び配列番号3をコードする第二の核酸を含んで成る細胞を準備し;
    (b) 第一及び第二の核酸の発現を可能にする条件下で前記細胞を培養すること、
    を含んで成る方法。
  11. 前記細胞がタンパク質をグリコシル化することができる、請求項1に記載の方法。
  12. 前記細胞が、請求項1に記載の核酸及び配列番号3をコードする核酸を含んで成る一種のベクターを含んで成る、請求項11に記載の方法。
  13. 前記細胞が、請求項1に記載の核酸を含んで成るベクターを含んで成り、且つ配列番号3をコードする核酸を含んで成る第二のベクターを更に含んで成る、請求項11に記載の方法。
  14. 請求項1に記載の突然変異FSH及び、任意に、医薬として許容される任意の担体又は賦形剤を含んで成る、医薬組成物。
  15. 不妊の哺乳類を処置する方法であって、必要とする哺乳類に対し、請求項15に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
  16. 哺乳類の卵胞形成を刺激する方法であって、必要とする哺乳類に対し、請求項14に記載の組成物を投与することを含んで成る方法。
  17. 哺乳類における卵巣過剰刺激を誘導する方法であって、請求項14に記載の医薬組成物を投与することを含んで成る方法。
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