JP2009518125A - 皮膚に対する外因性および内因性因子の影響の評価方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、種々の外因性または内因性因子による皮膚における構造変化を評価する非侵襲性in vivo DISC型方法を提供する。皮膚の定量的および定性的特徴づけを開発することが可能である。例えば、皮膚を、その暦年齢ではなくその構造年齢に基づいて特徴づけることが可能である。個体の皮膚の構造年齢およびタイプに基づいて、美容的、皮膚科学的、医学的または操作的処理を個別に設計することが可能である。該方法は部分的には、正常な顔面表情中に皮膚において生じる不連続性を定量することに基づく。該方法は、短期間(1日間)または長期間(1年以上)にわたって生じるヒトの皮膚応答における変化の評価をもたらす。該方法は、美容的、皮膚科学的もしくは医学的処理に対する又は皮膚に影響を及ぼすとされている任意の他の因子に対する皮膚の応答の評価をもたらす。
【選択図】図2
【選択図】図2
Description
本発明は、化粧品および皮膚科学の分野、特に、種々の因子による皮膚の構造変化の定量方法に関する。
ヒトの皮膚は外因性または内因性因子による影響を受け、それらの多くは有害であるが、有益と考えられるものもある。これらの因子には、重力、局所皮膚薬、日光曝露、環境汚染、喫煙、副流煙、医薬、経口栄養補助剤、食事、運動、外傷、機械的操作(例えば、マッサージ)および加齢が含まれる。これらの因子のいくつかに関連した皮膚の構造変化には、皮膚の表層におけるコラーゲンおよびエラスチン網状組織の劣化が含まれる。この劣化は皮膚の弾性および引き締まりの喪失を引き起こして、皮膚の弛みを招く。また、皮膚が老化するにつれて、ヒトは皮膚下の小さな顔面筋の永久的な収縮を示しうる。ヒトにおいては、顔面筋は、表面筋腱膜系と称されるものを介して上層皮膚に直接的に連結されている。該筋腱膜系は、種々の表情を作る能力をヒトに付与するものである。しかし、十分な皮膚弾性が失われると、皮膚下の小さな筋肉の永久的な収縮が、皮膚、特に眉間、目じり付近および口角における皺として現れる。コラーゲンおよびエラスチンの喪失は、四六時中皮膚を引っ張る重力により更に悪化する。弾性が損なわれた皮膚は、重力に抗して皮膚を持ち上げられないか、またはその能力を完全に喪失している可能性がある。これは一般に、頬および垂れている瞼において生じる。
皮膚の機械的特性の変化は、原因が何であれ、一般には、影響を受けた領域において等方性でも均一性でもない。したがって、皺は皮膚の機械的特性の局所変化の結果であり、皺になった皮膚は周囲の皮膚より脆弱であると考えられうる。皮膚の皺は皮膚の細い線とは定性的に異なる。細い線は習慣的な顔面表情の結果であり、その他の点では健常な皮膚において生じる。細い線は皮膚下の永久的な筋肉収縮には無関係である。
ヒトの皮膚の肌理(きめ)および外観を定量し特徴づけるための方法には、肉眼的技術および顕微鏡的技術が含まれる。肉眼的技術は、しばしば、人的主体(評価者)による主観的評価を伴う。これの欠点は、ヒトによる観察に基づいて評価値を物理的特性に割り当てる際に、評価者がどんなに十分に訓練されていたとしても、ある程度の不確実性が常に存在することである。これを克服するために、人的要素の一部または全てを除去して不確実性を軽減する、装置により補助された種々の技術が開発されている。光学装置に基づく技術が公知であり、最も単純な光学装置はカメラである。被験者を直接的に解析する代わりにその画像(イメージ)を解析することが可能となるよう、被験者の写真を撮影する。これは、物理的特徴を一定形態で捕捉してそれらを長期間にわたって解析しうるという利点を有する。測定は、写真から直接的に行うことが可能である。例えば、皮膚における皺の長さを正確に測定することが可能である。あるいは、研究中の特徴を写真画像上で特定し、ついで、予め定められた分類方式で分類することが可能である。分類の操作は人的主体により、または光学式走査および処理ソフトウェアを含みうる光学装置により行われうる。これらの技術は皮膚自体の機械的特性に関してはほとんど又は全く何も示さず、それらは、統計的に有意な尺度が予め定められている場合にのみ最も有用である(例えば、“Comparison of Age-Related Changes In Wrinkling and Sagging of the Skin In Caucasian Females and In Japanese Females”; Tsukaharaら; Journal of Cosmetic Science; Jul/Aug 2004, vol. 55, no.3, pp. 373-385を参照されたい)。
これとは対照的に、機械工学および材料試験において一般的な種々の技術を用いて、皮膚および他の軟組織の機械的特性が研究されている。これらの技術の多くは、一定の負荷が加えられた試験サンプルの表面変位およびひずみを測定する。これらの測定から、弾性、ヤング率、引張強さ及び硬さのような固有特性が導き出されうる。これらの技術は、生きた組織の局所不連続性を見出すために、生きた組織にも適用されている。そのような不連続性は、該組織の機械的特性を改変する、作用している病的過程の指標となりうる。このタイプのいくつかの測定は、材料試験に一般に関連した侵襲性接触法および装置、例えば硬さ試験用のジュロメーター、引張試験用のひずみゲージ、吸盤および弾性に関するねじり法などを用いる。これらの試験をin vivoで行うのは実用的でないことが多い。
皮膚の機械的特性を測定する、より低い侵襲性の方法には、デジタル画像相関が含まれる。種々の形態のデジタル画像相関が開発されているが、一般に、それらは全て、表面に加えられた負荷により生じる変位および変形勾配を測定しようとするものである。それらは、変形後に得られたデジタル画像の小さな領域を、変形前に得られたデジタル画像上の同じ領域と相関させることにより、これを行う。研究中の試料の画像全体にわたる多数の点においてこの相関を行うと、それは変形表面に関するベクトル変位場を与える。この変位場から、応力、ひずみ及びヤング率が計算されうる。
1つのデジタル画像相関技術として、特に、デジタル画像スペックル相関が挙げられる。デジタル画像スペックル相関(digital image speckle correlation)(DISC)は、応力および環境に対する材料の応答を解析するために、20年以上にわたって使用され開発されている。原則として、すべてのタイプの材料、生物および無生物がDISCで研究されうる。一般に、変形前のデジタル画像の領域内に幾何学的特徴を特定し、ついでこれらの特徴を追跡して、変形後の画像領域内にそれらの新たな位置を突き止める。この追跡により、変形表面に関するベクトル変位場が構築されうる。DISCの通常方法においては、反射材(スペックル)を被検表面上にランダムに分布させる。スペックルは、容易に追跡される幾何学的特徴を被検試料の表面上に付与する。未変形表面の1つのデジタル画像および変形表面の1つのデジタル画像を捕捉した後、それらの画像をサブセットに分ける。未変形表面の画像上のサブセットを変形表面の画像上の対応サブセットに符合させる。これは、該前写真および後写真における光強度のパターンを比較する高性能数値コンピューター解析により行われる。サブセットの各ペアの中心点の座標は、変形の結果としてのサブセットの平均変位を示す変位ベクトルを定める。変位ベクトルは垂直成分および水平成分に分離可能であり、その情報は垂直および水平投影地図として表されうる。数値微分を用いて、いずれかの方向に沿った典型的なひずみが得られうる。
“Determining Mechanical Properties of Rat Skin With Digital Image Speckle Correlation”(Guanら, Dermatology, vol 208, no. 2, 2004, p. 112-119)(その内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に、ラットの皮膚のサンプルに対するDISCのin vitro適用が記載されている。皮膚の3つの断片を試験した。皮膚を新鮮に切り出し、切り出した後24時間にわたり皮膚を静置し、商業的に入手可能な美容用抗皺保湿剤で皮膚を24時間予備処理した。該皮膚断片を引張試験装置で0.508mm/分の一定割合で伸長させた。スペックル材は、高いコントラストの白黒表面を与える24μmの炭化ケイ素およびタルク材よりなるものであった。2,029×2,048ピクセルの解像度を有するKodak MegaPlus 1.6i荷電結合素子カメラでデジタル画像を撮影した。各皮膚サンプルに関して、引張応力、引張ひずみ、終局ひずみ、ヤング率および破壊強さを測定した。該文献は、部分的に、該保湿剤がラットの皮膚の弾性の喪失を効率的に抑制したと結論づけている。該文献は更に、皺形成の予測手段となりうる、皮膚の弾性の変化をモニターするためのDISCのin vivoでの使用を示唆しているが、それを記載はしていない。該文献は、ガスローディング電流力計を使用して該皮膚がストレス下に置かれうることに単に触れているに過ぎず、それを記載はしていない。該文献はまた、in vivo DISC技術により美容効力が測定可能であり、この場合、皮膚を抗老化製品で処理する前および後にDISC測定がされることを示唆しているが、それを詳細には記載していない。この文献は、本発明のin vivo技術も、皮膚に対する外因性および内因性因子の影響を評価するための本発明の方法も、開示も示唆もしていない。
スペックル材の代わりに、変形を追跡するための皮膚孔を用いる、修飾されたDISC技術が、in vivoで成功裏に適用されている(“Dynamic Facial Recognition With DISC: Identify the Enemies”, American Physical Society学会(2004年3月22〜26日, Montreal)で発表された文献を参照されたい)。顔面の皮膚下の筋組織は皮膚の変形をもたらした。この文献は顔面認識法の成功を記載している。該文献は、皮膚障害または皮膚異常の早期検出のために該技術が用いられうることに触れているが、それ以上の開示はなされていない。この文献は、本発明のin vivo技術も、皮膚に対する外因性および内因性因子の影響を評価するための本発明の方法も、開示も示唆もしていない。
“Investigations of Facial Recognition and Mechanical Properties of Aging Skin Through Digital Image Speckle Correlation”(Intel Science Talent Searchに投稿されたもの, November, 2004)に、ヒト顔面皮膚に対するDISC技術のin vivo適用が開示されている。皮膚の加齢関連変化(例えば、弾性の喪失)は、ベクトル変位地図の断面図を調べることにより観察されうることが確認された。該地図は、DISC類似法において得られたベクトル変位データから作成される。
前記のものはいずれも、皮膚に対する1以上の外因性または内因性因子の影響を定量、定性または評価するための非侵襲性in vivo DISC型データ収集系を開示していない。
Tsukaharaら; Journal of Cosmetic Science; Jul/Aug 2004, vol. 55, no.3, pp. 373-385 Guanら, Dermatology, vol 208, no. 2, 2004, p. 112-119 "Dynamic Facial Recognition With DISC: Identify the Enemies", American Physical Society学会(2004年3月22〜26日, Montreal) "Investigations of Facial Recognition and Mechanical Properties of Aging Skin Through Digital Image Speckle Correlation"(Intel Science Talent Searchに投稿されたもの, November, 2004)
Tsukaharaら; Journal of Cosmetic Science; Jul/Aug 2004, vol. 55, no.3, pp. 373-385 Guanら, Dermatology, vol 208, no. 2, 2004, p. 112-119 "Dynamic Facial Recognition With DISC: Identify the Enemies", American Physical Society学会(2004年3月22〜26日, Montreal) "Investigations of Facial Recognition and Mechanical Properties of Aging Skin Through Digital Image Speckle Correlation"(Intel Science Talent Searchに投稿されたもの, November, 2004)
本発明の主要目的は、正常な顔面表情中のヒトの皮膚の挙動を特徴づけるための非侵襲性in vivo方法を提供することである。
もう1つの目的は、正常な顔面表情中に生じる皮膚における不連続性に基づいてヒトの皮膚の構造年齢を評価することである。
もう1つの目的は、皮膚に対する外因性または内因性因子の影響を評価する方法を提供することである。
もう1つの目的は、短期間(1日間)または長期間(1年以上)にわたって生じるヒトの皮膚の応答の変化を評価するための方法を提供することである。
もう1つの目的は、美容的、皮膚科学的、医学的または機械的処理に対するヒトの皮膚の応答を特徴づけ、それによりそのような処理の効力を評価するための方法を提供することである。
もう1つの目的は、皮膚処理計画を処方する方法を提供することである。
本発明は、正常筋肉収縮中のヒトの皮膚の変形を追跡するためにデジタル画像スペックル相関の非侵襲性in vivo形態を用いるものである。顔面の皮膚および筋組織に特に関心が持たれるが、本発明は身体の任意の部分および非ヒトに適用されうる。in vitro法とは異なり、また、皮膚を装置で引張る侵襲性in vivo法とは異なり、本発明は、変形前および変形後の画像を作成するために、正常な筋肉の機能に基づくものである。それらの画像から、皮膚の定量的および定性的特徴づけを進展させることが可能である。例えば、皮膚は、その暦年齢ではなくその構造年齢に基づいて特徴づけられうる。また、個体の皮膚が長期間および短期間でどのように変化するのか、ならびに美容的、皮膚科学的もしくは医学的処理に対して又は皮膚に影響を及ぼすとされている任意の他の因子に対して皮膚がどのように応答するのかを特徴づけることも可能である。同じ又は異なるタイプの皮膚を有する人物の比較を含む、異なる人物の皮膚の有意な比較が可能である。個体の皮膚の構造年齢およびタイプに基づいて、美容的、皮膚科学的、医学的または操作的処理が個別に設計されうる。
本発明は、表面筋腱膜系を介して顔面筋と上層皮膚との間に存在する密接な関係を利用するものである。それは、皮膚を変形させるために、外的に加えられる負荷を用いる代わりに顔面筋を用いることにより、これを行う。これを行う幾つかの利点がある。第1に、本発明のDISC技術は、皮膚(特に、皺が一般に生じる研究対象領域)に外的引張負荷を加えることを要するものより遥かに簡便である。一般に、そのような負荷を加えることは実用的でさえないかもしれない。これとは対照的に、本発明のDISC技術は、完全に非侵襲性である一方で、in vivoで用いられる。さらに、外的に加えられた負荷は不自然な様態で皮膚を引張る。外的負荷に対する皮膚の応答は、筋肉活動により顔面皮膚が受ける自然応答にほとんど又は全く類似していないことがある。したがって、外的に加えられた負荷を用いるDISC技術は、ヤング率のような皮膚の幾つかの物理的パラメーターを測定するのに有用かもしれないが、そのような技術は、実際の生活状況における皮膚自体の動的な挙動を特徴づける機会を逃している。顔面筋の運動およびそれにより生じる皮膚の応答は個体に非常に特徴的なものである。したがって、ヤング率または幾つかの他の材料パラメーターのような機械的特性を測定することは、皮膚の挙動を予測する能力も、処理に対する皮膚の応答を予測する能力ももたらさない。なぜなら、該系は余りにも複雑であり、各個体に特異的だからである。これとは対照的に、本発明の技術は、正常な運動中の個体の皮膚の動的応答を直接的に測定するものである。したがって、本発明の技術は、皮膚の機械的特性をその動的応答に関連づける複雑さを回避するだけでなく、本発明の技術は、個体の皮膚の動的応答を皮膚の定量的および定性的な特徴づけに組み入れるものでもある。これは大きな利点である。なぜなら、皮膚の動的応答は、個体の様相を外の世界に示すものの一部だからである。顔を一日中、不動のまま保つヒトはほとんどいないため、そのヒトの皮膚を評価または特徴づける場合に各個体の特徴的な運動を利用することは理にかなっている。
本明細書の全体にわたり、「構造年齢」および「構造的に、より老いた」なる語は、皮膚の状態および皮膚の劣化の度合を示すものであり、「暦年齢」と区別するために用いられる。「暦年齢」は、その者の皮膚の状態には無関係に、その者の誕生後の期間の長さを意味する。高齢者のなかには、構造的に若い皮膚を有する者もあり、その逆もある。本発明は部分的に、暦年齢には無関係に、構造年齢をヒトの皮膚に割り当てることに関するものである。
本明細書の全体にわたり、「含む」、「含んでなる」などの用語は一貫して、対象の集合が、具体的に列挙されている対象に限定されないことを意味する。また、「正常な顔面表情」なる語は、外的に加えられた負荷により引き起こされる運動とは対照的に、顔面筋により引き起こされる皮膚の運動を意味する。
図1は本発明のデジタル画像スペックル相関系の概要図である。デジタル画像を捕捉するためのカメラ(1)は、少なくとも4メガピクセルの解像度をもたらす荷電結合素子である。この解像度は、本発明の技術において追跡される点であるヒトの皮膚の孔を分離するのに十分なものである。技術的には、画像領域内の実質的に全ての特徴が画像間の追跡に有用でありうるが、DISC型の技術の成功は、追跡すべき過剰の特徴を有することにかかっている。ヒトにおいては、皮膚孔はこの要件を満たしている。いくつかの有用なカメラとして、Canon EOS Rebel Digitalカメラ(解像度6.3メガピクセル)およびToshiba DK-120F CCDカメラが挙げられる。該カメラにより収集したデータを、EPIX(登録商標)のPIXCI(登録商標)のようなフレーム取り込み器(2)により前処理し、デジタル化された情報を数値解析のためにコンピューター(3)にダウンロードする。多数の研究グループが、彼ら自身の必要性に適合するようDISC技術に関する独自のソフトウェアを開発している。当業者であれば、過度な負担を伴うことなくそのようなソフトウェアを開発することが可能である。さらに、商業的に入手可能なソフトウェアアプリケーションも存在し、一例として、1ピクセルの100分の1より良好な、宣伝されている変位精度を有する、Correlated Solutions Inc.(West Colombia, South Carolina)のVIC-2Dが挙げられる。デジタル画像相関系およびソフトウェアのもう1つの供給業者として、Optical Metrology Innovations, Cork, Irelandが挙げられる。
典型的な操作は、2つの画像を捕捉することを含む。第2の画像は、被験者の皮膚が変形した後、第1の画像の直後に作成される。いくつかの研究の場合、この操作は、より後の時点で繰返されうる。本明細書の全体にわたり、「変形」は、皮膚が、初期形状とは異なる形状を示していることを意味する。本発明においては、変形は被検皮膚の全領域下の筋肉の正常な筋肉収縮を伴う。例えば、研究対象領域が口角である場合、「前」または「初期」または「未変形」画像は、皮膚の最低限度の筋肉緊張を伴う、中立的な表情の画像でありうる。「後」または「最終」または「変形」画像は、笑っている又は口内に物を保持している被験者のものでありうる。あるいは、おそらくは、被検領域は額であり、その場合の初期画像は、両眼を閉じた中立的な表情のものであることが可能であり、一方、最終画像は、両眼を開いて上げたものでありうる。一般に、変形画像は、問題の皮膚が何らかの変形を受けるよう被検皮膚の領域下の顔面筋を働かせることにより作成される。好ましくは、画像捕捉中、被験者の頭部は不動状態で保たれる。例えば、被験者の頭部を静止状態に保つために、顎当て又はフル・ヘッド・ハーネスが使用されうる。写真撮影中にカメラを不動状態に保つことも好ましい。この目的にはカメラスタンドが使用されうる。
画像が得られたら、被検領域の境界および基準座標系を画像に加えるために、ならびに孔変位の概算値を得るために、Adobe(登録商標)のPhotoshop(著作権)のようなソフトウェアが有用である。該境界は或る程度は随意的なものであり、皮膚の幾つかの領域を解析するのに十分な大きさの範囲が定められるよう選択されうる。該イメージングソフトウェアは、前画像および後画像に関して、基準座標系に対する、変位場における各孔の座標を決定する。このデータから、前画像および後画像における孔間の相関が確立され、前記の変位ベクトルの場が得られる。各変位ベクトルは、1つの孔の、その初期位置から最終位置への移動を表す。変位ベクトルの場における各孔ベクトルは、その垂直投影および水平投影に分離され、それらから、垂直および/または水平投影地図が作成される。本発明のDISC技術により得られる変位ベクトルの場の一例を図2に示す。図3aおよび3bは、それぞれ、図2のベクトル場の垂直および水平投影地図である。該投影地図において、水平軸および垂直軸は研究対象領域における任意の位置の座標を伝える。図3aおよび3bにおいては、単位はピクセルである。これらの図においては、一定変位の領域が色分けされている。該投影地図の1以上から、該地図の「関心」領域を貫く断面図をとる。「関心」断面図は、該投影地図上で見た場合に相対的に大きい変位または急な勾配の領域を貫くものである。驚くべきことに、1以上の投影地図から作成された断面グラフの使用は、種々の状況におけるヒトの皮膚を特徴づけるのに非常に有用であることが判明した。以下の非限定的な実施例は本発明に対する読者の理解を深めるであろう。
実施例1
孔変位、皮膚の構造年齢および皺予測
この実施例における研究対象領域は額であった。両眼を閉じた状態の初期画像を作成し、両眼を開き見上げた状態の最終画像を作成した。どちらの画像も、額の筋肉の最低限度の収縮を伴う状態で作成した。変位ベクトル場を得、その場の垂直成分、すなわち、投影地図を図2に示す。この図において、各陰影は、示されている変位(単位はピクセル)を表す。この変形では、額の孔の変位は主として垂直であり、両眼の間のおおよその対称垂直線が存在する。このため、両眼の間の対称垂直線に沿って作成した、垂直投影地図の断面図を見るのが便利である。この断面に沿った垂直変位のグラフを図3に示す。この図において、該孔の垂直変位(単位はピクセル)は垂直軸上に示されており、該孔の初期位置の垂直成分(単位はピクセル)は水平軸上に示されている。
孔変位、皮膚の構造年齢および皺予測
この実施例における研究対象領域は額であった。両眼を閉じた状態の初期画像を作成し、両眼を開き見上げた状態の最終画像を作成した。どちらの画像も、額の筋肉の最低限度の収縮を伴う状態で作成した。変位ベクトル場を得、その場の垂直成分、すなわち、投影地図を図2に示す。この図において、各陰影は、示されている変位(単位はピクセル)を表す。この変形では、額の孔の変位は主として垂直であり、両眼の間のおおよその対称垂直線が存在する。このため、両眼の間の対称垂直線に沿って作成した、垂直投影地図の断面図を見るのが便利である。この断面に沿った垂直変位のグラフを図3に示す。この図において、該孔の垂直変位(単位はピクセル)は垂直軸上に示されており、該孔の初期位置の垂直成分(単位はピクセル)は水平軸上に示されている。
図3のグラフの形状から直ちに、皮膚の垂直変位は段階的に生じることが理解されうる。該画像の更なる精査は、該段階の垂直部分が皮膚における細い線および皺において生じることを示している。記載されている運動を行う際に、皺の間に位置する孔は比較的少ししか変位しないが、皺の近くの穴は有意に、より大きく変位する。見たところでは、下層の筋肉により与えられる引張力は皮膚を介して異方性様態で伝わって、皺に近ければ近いほど大きなひずみを、そして皺から離れれば離れるほど小さなひずみを引き起こすようである。さらに、図3における垂直段階(孔変位)が大きければ大きいほど、皺は深くなることが観察されている。皺は、より強い皮膚に囲まれた脆弱な皮膚の局所領域であることを思い起こせば、これは理にかなったことであろう。皺の深さの原因となるその脆弱性は、皺における皮膚の過剰な変位の原因となりうるか又は少なくともそれに相関されうる。したがって、正常な顔面表情中の孔変位における局所性不連続性(これらはベクトル投影地図の断面上に段階として現れる)の存在は、本発明においては、皮膚の老化の徴候として特定される。驚くべきことに、本発明者らは、正常な顔面表情の結果としての皮膚の孔の段階的変位が、皮膚の構造年齢を特徴づけるのに用いられうるという示唆を導いた。局所性不連続性の度合が大きければ大きいほど、構造的な観点からは皮膚は老いている。したがって、この実施例は、正常な顔面表情中の孔変位における不連続性を特定する工程を含む、ヒト個体の皮膚を特徴づけるin vivo方法を確立するものである。
さらに、全く意外なことに、正常な顔面表情中の孔変位における局所性不連続性の特定は、十分に発達した皺が視認されうる前でさえも有用である。これは、脆弱化した皮膚および小さな顔面筋の永久的収縮の両方が皺形成に関与しているからである。皮膚は過酷な外因性および内因性因子への曝露により脆弱化し、一方、筋テタニーの状態は他の原因により生じる。皮膚の構造老化または脆弱化は一般に絶えず進行するものであり、有意な影響は一般に、小さな顔面筋の永久的収縮のかなり前に生じるであろう。したがって、孔変位における局所性不連続性は皺の発生のかなり前に発生し、皺の発生のかなり前に観察可能である。したがって、本発明の技術は、任意の状態の皮膚を特徴づけるのに有用である一方で、孔変位における不連続性は、皮膚に皺が全く無い場合でさえも観察可能でありうることを強調することが重要である。皺は、小さ過ぎるから気づかれないのではなく、それが全く存在しないかもしれないのである。したがって、正常な顔面表情中の孔変位における局所性不連続性を測定することにより、皺形成の将来の位置を予測することが可能である。これは先行技術において公知ではない。
この原理は新規であり、本明細書に記載のDISC技術のほかへも拡張されうる。例えば、正常な顔面表情中の孔変位における不連続性の任意の定量的および/または定性的測定は、皮膚の構造年齢を特徴づけるのに、および皺形成を予測するのに有用であろう。しかし、本発明で用いる孔-DISC技術は特に簡便である。前記の額の具体例においては、孔変位は主として一方向(垂直)であり、孔変位における不連続性の特定は比較的簡便であった。顔面の他の領域は、孔変位の、より複雑なパターンを示し、これは一般に、運動を行うために引き寄せられる筋肉の形状および作用に左右される。それでもやはり、皮膚の構造が外因性および内因性因子の結果として異方性脆弱を引き起こした場合、それらの脆弱性は孔変位における不連続性として現れるであろう。
実施例2
加齢相関研究 - 額
以下の実験を25歳、34歳および58歳の3名に対して行った。これらの被験者は「歳相応」に見えた。前記のとおりに額領域の画像を作成した。ベクトル変位地図を水平および垂直投影地図に分離し、両眼の間の対称線に沿った断面を調べることにより垂直投影地図を解析した。図4は全3名の被験者の垂直断面グラフを示す。水平および垂直の両軸上の単位はピクセルである。前記のとおり、最も決定的に重要な観察は、皮膚脆弱性の局所領域に対応する、該グラフにおける段階の存在である。明らかに、皮膚脆弱性の局所領域は、見たところでは引き締まった若い皮膚を有する25歳の被験者においてさえも存在する。したがって、正常な顔面表情による孔変位における局所性不連続性(段階)の存在は、それ単独では、ある被験者と他の被験者との比較を可能にするものではない。ある被験者を別の被験者と比較するための別の手段が必要である。その目的のために、図4において、段階サイズを測定し、最大および最小段階サイズを決定してそれらからそれらの比を得た。この情報を表1に示す。
加齢相関研究 - 額
以下の実験を25歳、34歳および58歳の3名に対して行った。これらの被験者は「歳相応」に見えた。前記のとおりに額領域の画像を作成した。ベクトル変位地図を水平および垂直投影地図に分離し、両眼の間の対称線に沿った断面を調べることにより垂直投影地図を解析した。図4は全3名の被験者の垂直断面グラフを示す。水平および垂直の両軸上の単位はピクセルである。前記のとおり、最も決定的に重要な観察は、皮膚脆弱性の局所領域に対応する、該グラフにおける段階の存在である。明らかに、皮膚脆弱性の局所領域は、見たところでは引き締まった若い皮膚を有する25歳の被験者においてさえも存在する。したがって、正常な顔面表情による孔変位における局所性不連続性(段階)の存在は、それ単独では、ある被験者と他の被験者との比較を可能にするものではない。ある被験者を別の被験者と比較するための別の手段が必要である。その目的のために、図4において、段階サイズを測定し、最大および最小段階サイズを決定してそれらからそれらの比を得た。この情報を表1に示す。
該データは、構造老化が段階サイズの増加だけでなく、段階サイズの変動の増加をも伴うことを示唆している。これの解釈は、構造老化が、皮膚脆弱性の、より局所性の領域だけでなく、それらの領域の脆弱性における変動の増加をも伴いうるというものである。これとは対照的に、構造的に、より若い皮膚は、局所性脆弱性における遥かに小さな変動を示す。これは、十分に発達した皺形成を有する、構造的に、より老いた者においては、より多くの皺だけでなく、それらの皺の深さにおける、より大きな変動が存在することを意味する。皺形成の前に、皮膚が老化するにつれて、それは、より脆弱な領域、そして恐らくは予想どおり、それらの領域の脆弱性における、より大きな変動を発生する。一生において、より早期に生じた脆弱性の領域は、皮膚の最弱領域であり、一方、より新しく形成された脆弱性の領域は、それほどは脆弱化していないであろう。したがって、驚くべきことに、構造年齢は、ベクトル変位グラフ上の段階サイズだけでなく、段階サイズにおける変動によっても識別されうることが分かる。
この知見は多数の様態において有用であろう。例えば、類似した暦年齢および類似した皮膚外観の2人を、正常な顔面表情中の孔の変位における変動に関して解析することが可能である。そのような解析から、一方の被験者は最大孔変位対最小孔変位の特定の比を有し、他方の被験者は前者の3倍の比を有することが確認されうる。これらの被験者は外観および暦年齢においては類似しているが、皺形成が一旦始まれば皺形成の速度は、より大きな孔変位変動を有する第2の被験者のほうが速いことが、これらの測定値から予測されるであろう。その知見を用いて、第2の被験者は、皮膚の構造脆弱化を遅らせるための予防策を講じることが可能であろう。そのような処理の効力は、処理前および処理後の孔変位データを比較することにより評価されうるであろう。したがって、異なる個体の皮膚が比較可能であるばかりでなく、1つの個体の皮膚を、異なる時点における自分自身のものと比較することも可能である。孔変位における変動(および従って皮膚脆弱性)が大きくなり続けたら、処理は有効ではない。変動が一定のままとなるか又は減少すれば、処理は効果を現していると言えるであろう。
実施例3
重力の影響に関する研究 - 額
本発明の技術の有用性のもう1つの例として、本発明の技術を用いて、顔面皮膚、特に額の皮膚に対する重力の影響を調べた。一般に、顔面の皮膚および筋肉はそれ自身の重量の引張を受ける。この重量は、頭が垂直の位置にある1日16時間以上にわたり最大となりうる。
重力の影響に関する研究 - 額
本発明の技術の有用性のもう1つの例として、本発明の技術を用いて、顔面皮膚、特に額の皮膚に対する重力の影響を調べた。一般に、顔面の皮膚および筋肉はそれ自身の重量の引張を受ける。この重量は、頭が垂直の位置にある1日16時間以上にわたり最大となりうる。
この研究の第1の形態においては、2つのセットの前画像および後画像を作成した。被験者を、顔を上に向けた(仰向け)状態で横たわらせた。横たわらせることにより、額の皮膚はそれ自身の重量を支える必要がなくなり、重力の影響が或る程度相殺される。この後、更に2枚の画像を撮影した。この場合の唯一の違いは、被験者を、例えば立った状態で垂直に位置させたことであった。各場合に、互いに数秒以内の間隔で前画像および後画像を作成した。該前表情は、両眼を閉じているがその他の点においては筋肉の関与が無い状態のものである。該後表情は、両眼を開いて見上げた状態のものであった。頭部を安定させるために顎当てを使用した。前記のとおり、最小および最大の段階サイズならびにそれらの比を決定するために、垂直変位地図の断面を測定した。この操作を1名の「若い」被験者および1名の「老いている」被験者に行った。若いほうの被験者の皮膚は引き締まっていて皺は無いようであった。老いたほうの被験者の皮膚は明らかに、構造的に、より老いており、十分に発達した皺形成を有していた。該データを表2に示す。該データが示すとおり、重力の影響は、構造的に若いほうの皮膚に関しては、比較的小さい。老いたほうの被験者では、重力の即時的影響は、孔変位における変動を240%増加させることであった。若いほうの被験者に関する変化率は負の数であることが認められる。これは、測定された影響より大きい試験の不確実性によるものであろう。結果は、「若いほう」の皮膚に関する重力の即時的影響が非有意でない可能性があることを示している。
この研究の第2の形態においては、前画像および後画像の第1のセットを、被験者を立たせた状態で、午前中(おおよそ午前9時)に作成した。前画像および後画像の第2のセットを、同様に被験者を立たせた状態で、第1のセットの約7時間後の午後(おおよそ午後4時)に作成した。これは、前記と同じ「若い」および「老いている」被験者に対して行った。午前中の測定の前には、重力の影響が数時間軽減されていた。なぜなら、被験者は前夜の間じゅう、睡眠のために横になっていたからである。したがって、この試験の開始時には、皮膚は十分に休んでいた。
この場合、若いほうの被験者は、午前および午後の試験の両方において、1の最大/最小孔変位比を有していた(表2を参照されたい)。これとは対照的に、より老いた被験者は、午前中には5.5および午後(この時、重力は長期にわたって作用していた)には10の最大/最小比を有していた。それは、数時間にわたって累積した82%の変化である。これらの結果は、1日にわたる重力の影響が、構造的に老いたほうの皮膚においては、構造的に若いほうの皮膚の場合より遥かに顕著であることを、明らかに示唆している。数時間にわたって、重力は、構造的に若いほうの皮膚の応答にはほとんど又は全く影響を及ぼさなかった。これとは対照的に、構造的に老いた皮膚は、重力に対する数時間の曝露の後、有意に脆弱であった。このことは、重力が、短期間(1日間またはそれ未満)にわたる場合でさえも、正常な顔面表情に対する皮膚の応答に有意な影響を及ぼしうることを示している。
皮膚の重量は取るに足りないと思われうるが、この実施例は、構造的により老いた者の皮膚においては、重力が即時的影響および累積的影響の両方を及ぼすことを示している。したがって、孔変位の最大/最小比における変化を拡大させるために重力を用いることにより、構造年齢において類似していると思われる被験者を識別するために、前記の研究を用いることが可能である。構造的により老いた皮膚を有する被験者の場合、構造的により若い皮膚を有する被験者の場合より劇的なその比における変化が見られると予想される。皮膚の構造年齢が評価されたら、その年齢に、より適した処理が、行われうる。したがって、類似しているように見える皮膚を有する人たちは、実際には、異なる処理を要するかもしれない。この試験プロトコールは完全に非侵襲性である一方で、正常な顔面表情に対する皮膚応答のもう1つの観点を提供する点で、該試験プロトコールは有利である。
興味深いことに、医学的に推奨される量の睡眠を取っていない人は、そうでない人より長時間にわたって立った状態でいることの結果として、皮膚を害していることを、この研究は示唆している。この有害な影響は、睡眠不足により引き起こされる影響とは別物であるが、ついでながら、睡眠不足により引き起こされる影響も本発明の方法により研究されうるであろう。最後に、これらの研究は、皮膚の構造年齢に対する重力の影響に関する貴重な情報が、重力が低下した環境(例えば、地球の軌道または月面上)での長期間の滞在の前、途中および後に該測定を行うことにより得られうることを示唆している。したがって、皮膚に対する重力の影響を定量する新規in vivo方法は、以下の工程、すなわち、DISC型系を用いて、第1の正味重力に付された皮膚のパッチ(部分)から初期変位地図を作成し、DISC型系を用いて、第2の正味重力に付された皮膚のパッチから最終変位地図を作成し、該初期変位地図および該最終変位地図から断面変位グラフを作成し、各断面グラフ上で最大および最小変位を特定し、対応する断面変位グラフに関する初期および最終断面変位比を計算し、該初期および最終断面変位比を比較することを含みうるであろう。
実施例4
ストレス伝達皮膚解析 - 眼領域
本明細書に記載の方法により、眼の場合には外眼角(目尻)の真横の532ピクセル×652ピクセルの領域にわたって、10名の被験者を試験した。両眼を開けてリラックスした状態で第1画像を撮影し、両眼を閉じて最低限度の圧力を加えた状態で第2画像を撮影した。この運動は主として眼輪筋により行われる。該研究対象領域においては、眼輪筋の線維は一般には垂直に配列している。図5は2つのベクトル変位地図を示し、5aは「若いほう」の被験者のものであり、5bは「老いたほう」の被験者のものである。これらの地図において、各ベクトルは皮膚の表面の一点の運動に対応する。非常に集中(濃縮)したストレスが加わる領域から離れている研究対象領域においては、若いほうの被験者の皮膚は基本的に水平(X軸に平行)に変位すると理解されうる。これに対して、老いたほうの被験者の皮膚の変位は有意な水平および垂直(Y軸に平行)成分を示している。これは、老いたほうの被験者の皮膚が、若いほうの被験者より水平方向の柔軟性に乏しいと解釈されうる。その結果、筋組織により誘導されるストレスは、老いたほうの被験者においては、若いほうの被験者の場合より空間的に集中しており、より速く低下する一方で、老いたほうの被験者の皮膚を多数の方向に引張る。若いほうの被験者においては、より柔軟な皮膚において誘導されたストレスは水平に広がり、老いたほうの被験者の場合より徐々に減少しうる。
ストレス伝達皮膚解析 - 眼領域
本明細書に記載の方法により、眼の場合には外眼角(目尻)の真横の532ピクセル×652ピクセルの領域にわたって、10名の被験者を試験した。両眼を開けてリラックスした状態で第1画像を撮影し、両眼を閉じて最低限度の圧力を加えた状態で第2画像を撮影した。この運動は主として眼輪筋により行われる。該研究対象領域においては、眼輪筋の線維は一般には垂直に配列している。図5は2つのベクトル変位地図を示し、5aは「若いほう」の被験者のものであり、5bは「老いたほう」の被験者のものである。これらの地図において、各ベクトルは皮膚の表面の一点の運動に対応する。非常に集中(濃縮)したストレスが加わる領域から離れている研究対象領域においては、若いほうの被験者の皮膚は基本的に水平(X軸に平行)に変位すると理解されうる。これに対して、老いたほうの被験者の皮膚の変位は有意な水平および垂直(Y軸に平行)成分を示している。これは、老いたほうの被験者の皮膚が、若いほうの被験者より水平方向の柔軟性に乏しいと解釈されうる。その結果、筋組織により誘導されるストレスは、老いたほうの被験者においては、若いほうの被験者の場合より空間的に集中しており、より速く低下する一方で、老いたほうの被験者の皮膚を多数の方向に引張る。若いほうの被験者においては、より柔軟な皮膚において誘導されたストレスは水平に広がり、老いたほうの被験者の場合より徐々に減少しうる。
各被験者に関して、水平変位地図を作成し、該水平変位地図を貫く断面をプロットした。図5aおよび5bの「老いた」および「若い」被験者に関する断面プロットを図6aおよび6bに示す。ストレスが皮膚を通って伝達される速度の何らかの比較尺度を得るために、各断面グラフから半値全幅(FWHM)を測定した。より大きなFWHMは、ストレスがより遅く広がり減少すること、すなわち、より柔軟な、より若い皮膚を示す。結果を表3に示す。ここで、10名の被験者は2つの群、すなわち、18〜23歳の5名の若い被験者および55歳を超える5名の老いた被験者に分けられている。認められうるとおり、老いたほうの皮膚および若いほうの皮膚の挙動における劇的な相違が存在し、これは、若いほうの被験者の、有意に、より大きなFWHMにより実証されている。したがって、FWHMは、皮膚の構造年齢に相関されうるパラメーターとみなされる。より一般的には、ストレス伝達パラメーターを皮膚の構造年齢に相関させることを目的とした、in vivoにおけるベクトル変位地図の作成方法は、本明細書においては、ストレス伝達皮膚解析と称される。
実施例5
ストレス伝達解析 - 頬領域
この実施例における研究対象領域は、口角の真横の1000ピクセル×2000ピクセルの頬の長方形区画であった。20〜59歳の年齢範囲の13名の被験者を試験した。変形は、口を開けることにより生じる頬の皮膚の自然変形である。口を閉じてリラックスした状態で第1画像を得た。最低限度の努力で口を少し開いた状態で第2画像を得た。第2画像を得る際に、制御がより良好となるよう、各被験者の歯の間に舌圧子を保持させた。各被験者に関して、午前中に1セットの画像を得、24時間後にもう1つのセットの画像を得た。前記のとおり、垂直変位地図の断面グラフから半値全幅を測定した。両方の日の結果を平均し、それを表4に示す。
ストレス伝達解析 - 頬領域
この実施例における研究対象領域は、口角の真横の1000ピクセル×2000ピクセルの頬の長方形区画であった。20〜59歳の年齢範囲の13名の被験者を試験した。変形は、口を開けることにより生じる頬の皮膚の自然変形である。口を閉じてリラックスした状態で第1画像を得た。最低限度の努力で口を少し開いた状態で第2画像を得た。第2画像を得る際に、制御がより良好となるよう、各被験者の歯の間に舌圧子を保持させた。各被験者に関して、午前中に1セットの画像を得、24時間後にもう1つのセットの画像を得た。前記のとおり、垂直変位地図の断面グラフから半値全幅を測定した。両方の日の結果を平均し、それを表4に示す。
実施例4に合致して、表4のデータは、FWHMが概ね年齢の増加と共に減少することを示している。それはまた、FWHMの比較的急な減少が約35〜50歳において生じたことを示している。該チャートにおける、この、より急勾配の領域は、該集団全般において、皮膚が一定速度では老化しない可能性があることを示唆している。
実施例6
製品の効力の研究 - 頬領域
この実施例における研究対象領域は、口角の真横の400ピクセル×1000ピクセル(1ピクセルは約60ミクロンに相当する)の頬の長方形区画であった。20〜63歳の年齢範囲の19名の被験者を試験した。変形は、口を開けることにより生じる頬の皮膚の自然変形である。口を閉じてリラックスした状態で第1画像を得た。最低限度の努力で口を少し開いた状態で第2画像を得た。第2画像を得る際に、制御がより良好となるよう、各被験者の歯の間に舌圧子を保持させた。各被験者に関して、第0日の午後に1セットの画像を得、第30日の午後にもう1つのセットの画像を得た。第0日の初期測定の後、第30日に第2セットの画像を得るまで、各被験者に1日1回、局所皮膚治療製品を塗布させた。10人の被験者が本研究を行った。前記のとおり、垂直変位地図の断面グラフから半値全幅を測定した。両方の日の生データを表5に示す。47歳の被験者は第30日に統計的な外れ値を示している。その被験者の結果を除外した後、30日間の治療の後のFWHMにおける平均変化率(%)は、2%から149%までの範囲で35%であった。
製品の効力の研究 - 頬領域
この実施例における研究対象領域は、口角の真横の400ピクセル×1000ピクセル(1ピクセルは約60ミクロンに相当する)の頬の長方形区画であった。20〜63歳の年齢範囲の19名の被験者を試験した。変形は、口を開けることにより生じる頬の皮膚の自然変形である。口を閉じてリラックスした状態で第1画像を得た。最低限度の努力で口を少し開いた状態で第2画像を得た。第2画像を得る際に、制御がより良好となるよう、各被験者の歯の間に舌圧子を保持させた。各被験者に関して、第0日の午後に1セットの画像を得、第30日の午後にもう1つのセットの画像を得た。第0日の初期測定の後、第30日に第2セットの画像を得るまで、各被験者に1日1回、局所皮膚治療製品を塗布させた。10人の被験者が本研究を行った。前記のとおり、垂直変位地図の断面グラフから半値全幅を測定した。両方の日の生データを表5に示す。47歳の被験者は第30日に統計的な外れ値を示している。その被験者の結果を除外した後、30日間の治療の後のFWHMにおける平均変化率(%)は、2%から149%までの範囲で35%であった。
これらの結果は更に、本明細書に記載されているDISC法を、実質的に全ての外因性または内因性因子(例えば、皮膚治療法)の、皮膚に対する経時的影響を定量および定性するための新規手段として確立するものである。表6の結果は更に、そのような手段の必要性を実証している。なぜなら、それらの被験者なかで、治療に対する応答の範囲は非常に様々であったからである。これは、特定の個体のために治療を個別化するための手段としての、本明細書に記載されている方法の重要性を強調するものである。与えられた個体に関して、本明細書に開示されているとおり、ベクトル変位地図から導き出されたデータに基づいて治療の効力を評価することが可能である。そのような情報を用いて、同じ治療を継続するか治療プロトコールを変更するかどうかについての、同意に基づく決定がなされうる。
この点において、本発明の技術は、正常な運動中の個体の皮膚の動的応答を直接的に測定するものであり、その情報は皮膚反応の他の尺度(例えば、外因性および内因性因子に対する皮膚の反応、ならびに皮膚の構造年齢を決定するための、1つの皮膚と別の皮膚との比較)に組み込まれうると理解されるであろう。これは大きな利点である。なぜなら、皮膚の動的応答は、個体の様相を外の世界に示すものの一部だからである。本発明のもう1つの利点は、該技術が非侵襲性であると同時にin vivoのものであることである。
前記の説明は、本明細書に記載されている実施例により限定されるものではなく、該技術は、実質的に全ての外因性もしくは内因性因子に対する皮膚の応答および/または皮膚に対する影響を評価するために用いられうる。実際、本発明の範囲内で、記載されている原理の通常の適用により、皮膚の構造年齢が暦年齢および他の因子に有意に相関されうるよう、1以上の集団から十分な情報を収集することが可能であろう。被験者に面接を行い、暦年齢、民族性、地理的領域、ライフスタイル、性別、個人収入、食事、運動などを含む、関心のあるいずれかの因子に従い定められる統計的に妥当な亜集団をサンプリング(標本抽出)することが想定されうるであろう。表4のようなデータを各亜集団に関して得、皮膚の構造年齢と種々の外因性および内因性因子との間の統計的に有意な相関を特定することが可能であろう。各亜集団に関する相関された情報をチャート、グラフまたは任意の簡便な表示形式の形態で示すことが可能であろう。この相関された情報は幾つかの用途を有するであろう。例えば、それらの因子により引き起こされる皮膚に対する相対的な害または利益に関する妥当な結論を導き出すことが可能であろう。専ら例示目的の完全に仮定的な一例として、「1週間当たり3時間の日光曝露は、25〜40歳の人にとって、1週間当たり1箱の煙草を吸うことより皮膚に対して10倍有害である」というような主張を裏付けるための統計的に有意なデータを容易に収集すること想定されうる。そのようなデータの潜在的な用途のもう1つの例として、特定の亜集団のプロファイルに合致する人が、年齢により、チャートまたはグラフ上に自分自身を位置づけることが可能であろう。そして該グラフ上の該個体の位置は、その個体の皮膚の将来の老化の経過の指標となるであろう。例えば、自分が該グラフの急速な皮膚老化部分に近づきつつあることを該個体が見出したら、該個体は予防策を講じるよう促されうる。
前記のとおりの種々の亜集団からの相関データのもう1つの用途は、老化の原因因子の特定、および種々の生活段階においてそれらの因子を優先的に考慮しうることである。種々の生活段階において、皮膚老化の主要原因は変化する可能性がある。日光崇拝者の皮膚は、より適度な日光曝露を受けている人の場合より速く老化するというような、予想される結果が見出されうるであろう。しかし、潜在的因子の数を考慮すると、いくつかのこれまでに未知の関連性が、疑いなく明るみに出るであろう。統計的に妥当な亜集団から導き出された相関されたデータのもう1つの用途は、疾患または治療の進行、特に、皮膚に影響を及ぼす疾患(例えば、いくつかの全身性加速性老化疾患)または治療をモニターする手段としてのものである。この場合、皮膚の構造年齢は、何らかの他の身体系において疾患または治療がどのように進行しているのかを評価するための診断手段として有用でありうる。
したがって、本発明の完全に非侵襲性のin vivo技術は、統計的に有意な集団に、容易かつ有用な様態で拡張されることが可能であり、そのように行われると、種々の外因性および内因性因子の相対的重要性が、皮膚に対するそれらの影響を直接的に測定することにより立証されうる。これは、先行技術のいかなるものとも全く異なるものである。
Claims (27)
- 正常な顔面表情中に生じる不連続性を皮膚において特定する工程を含んでなる、ヒト個体の皮膚を特徴づけるin vivo方法。
- 該不連続性が孔変位における不連続性であり、画像をデジタル化するための手段およびデジタル画像相関ソフトウェアを使用して該不連続性を特定する、請求項1記載の方法。
- 画像をデジタル化するための手段およびデジタル画像相関ソフトウェアがデジタル画像スペックル相関系の一部である、請求項2記載の方法。
- ヒトの皮膚を構造年齢および/または予測される皺形成に関して特徴づける、請求項1記載の方法。
- 該不連続性をベクトル変位地図の断面グラフ上の段階パターンとして特定する、請求項1記載の方法。
- 請求項5記載の方法を各個体に対して行い、
各個体に関して、最大段階サイズと最小段階サイズとの比を測定し、
構造的に最も老いた皮膚を、最大の比を有するものとして特定する工程を含んでなる、2以上の個体の皮膚の構造年齢を比較する方法。 - 請求項5記載の方法を各個体に対して行い、
ベクトル変位地図の断面グラフ上で最大段階サイズを特定し、
該ベクトル変位地図上の最大段階サイズの位置を皮膚上のそれらの位置に相関させる工程を含んでなる、皺形成の位置を予測する方法。 - 個体の皮膚を、1以上の外因性および/または内因性因子に対するその応答に関して特徴づける方法であって、
請求項1記載の方法を該個体に対して行い、
1以上の外因性または内因性因子に該皮膚を或る時間にわたって曝露し、
請求項1記載の方法をもう一度行い、
該曝露の前および後の孔変位データを比較する工程を含んでなる方法。 - 1以上の外因性因子が、重力、局所皮膚薬、日光曝露、環境汚染、喫煙、副流煙、経口医薬、経口栄養補助剤、食事、運動、外傷または物理的操作よりなる群から選ばれる、請求項8記載の方法。
- 該局所皮膚薬が、抗老化剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗セルライト剤、抗皺剤、サンスクリーン(日焼け止め)、保湿剤、保湿バリヤーまたはコラーゲン増強剤である、請求項9記載の方法。
- 皮膚を局所皮膚薬に曝露する工程が、長期間にわたる皮膚への該局所皮膚薬の複数の適用を含む、請求項10記載の方法。
- 運動が心血管性または筋緊張性のものである、請求項9記載の方法。
- 緊張性筋肉が顔面筋である、請求項12記載の方法。
- 1以上の内因性因子が加齢を含む、請求項8記載の方法。
- 1以上の因子が、約1秒間〜数十年間続く期間にわたって皮膚に影響を及ぼす、請求項8記載の方法。
- 各個体を或る時間にわたって横たわらせて静止させ、
横たわらせた直後に、各個体を立たせた状態で請求項5記載の方法を各個体に対して行い、
各個体に関する最大段階サイズと最小段階サイズとの第1比を計算し;
各個体を少なくとも約7時間にわたって立たせた状態で静止させ、
各個体を立たせた状態で、請求項5記載の方法を各個体に対してもう一度行い、
各個体に関する最大段階サイズと最小段階サイズとの第2比を計算し;
構造的に、より老いた皮膚を、第1比と第2比とにおける最大差を有するものとして特定する工程を含んでなる、2以上の個体の皮膚の構造年齢を比較するin vivo方法。 - DISC型系を用いて、第1の正味重力に付された皮膚のパッチから初期変位地図を作成し、
DISC型系を用いて、第2の正味重力に付された皮膚のパッチから最終変位地図を作成し、
該初期変位地図および該最終変位地図から断面変位グラフを作成し、
各断面グラフ上で最大および最小変位を特定し、
対応する断面変位グラフに関する初期および最終断面変位比を計算し、
該初期および最終断面変位比を比較する工程を含んでなる、皮膚に対する重力の影響を定量するin vivo方法。 - 第1または第2の正味重力が、重力が低下した環境中に皮膚のパッチが存在することの結果である、請求項16記載の方法。
- 該不連続性が、該皮膚における誘導されたストレスの1以上の濃度として現れ、画像をデジタル化するための手段およびデジタル画像相関ソフトウェアを使用して該濃度を特定する、請求項1記載の方法。
- 画像をデジタル化するための手段およびデジタル画像相関ソフトウェアがデジタル画像スペックル相関系の一部である、請求項19記載の方法。
- ベクトル変位地図の断面グラフ上で決定される半値全幅に関してヒトの皮膚を特徴づける、請求項19記載の方法。
- 濃縮されたストレスの領域を、比較的小さい半値全幅を有する領域として特定する、請求項21記載の方法。
- 請求項22記載の方法を各個体に対して行い、
構造的に、より老いた皮膚を、より小さい半値全幅を有するものとして特定する工程を含んでなる、2以上の個体の皮膚の構造年齢を比較するin vivo方法。 - 請求項22記載の方法を皮膚の部分上で行い、
第1半値全幅を測定し、
皮膚の該部分に皮膚処理方式を適用し、
請求項22記載の方法を皮膚の部分上でもう一度行い、
第2半値全幅を測定し、
治療の前および後の半値全幅データを比較する工程を含んでなる、皮膚処理方式の効力を評価する方法。 - ヒトの亜集団の皮膚を特徴づけるin vivo方法であって、
該亜集団のメンバーに共通の1以上の形質によりヒトの亜集団を特定し、
統計的に有意な数の亜集団個体から、該個体に関する個人情報を得、
各個体の皮膚において、正常な顔面表情中に生じる不連続性を特定し、
該不連続性情報を該個体の個人情報と相関させる工程を含んでなる方法。 - 正常な顔面表情中に生じる不連続性に関する亜集団データの1以上の提示を得、各提示を1以上の外因性および内因性因子に相関させ、
該個体に適したデータの1以上の提示を特定し、
暦年齢により各提示上の該個体の位置を位置づけし、
各外因性および内因性の皮膚老化に対する相対的重要性を決定する工程を含んでなる、個体の皮膚に対する種々の外因性および内因性因子の影響の相対的重要性を決定するための非侵襲性in vivo方法。 - ストレス伝達皮膚解析を用いてストレス伝達パラメーターを皮膚の構造年齢に相関させる方法。
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