JP2009518019A - mRNAの安定化方法 - Google Patents
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Abstract
【選択図】なし
Description
配列番号2 遺伝子cggRとgapAとの間の特定の配列を表す。
配列番号3 hrcA〜grpE遺伝子配列を表す。
配列番号4 遺伝子hrcAとgrpEとの間の特定の配列を表す。
配列番号5 cggR〜gapA安定化エレメントがオペロンilvBNCにおいてilvB遺伝子の5’リーダー配列内に挿入された染色体DNA配列を表す。
配列番号6 hrcA〜grpE安定化エレメントがilvD遺伝子の5’リーダー配列内に挿入された染色体DNA配列を表す。
[一般的な方法論]
[菌株およびプラスミド]
本発明の枯草菌(Bacillus subtilis)株は、枯草菌(B.subtilis)168(trpC2)の誘導体である菌株CU550(trpC2 ilvC leuC)および1A747(SPβc、原栄養体)に由来する。菌株は両方とも、米国43210オハイオ州、コロンバスのオハイオ州立大学のBacillus Genetic Stock Centerから入手した。定型的なクローニングのために大腸菌(E.coli)株Top10(インビトロジェン(Invitrogen))を用いた。汎用性のクローニングベクターとしてプラスミドpUC18、pUC19、およびpBR322(New England Biolabs)を用いた。クロラムフェニコール(cat)、テトラサイクリン(tet)、エリスロマイシン(erm)、およびスペクチノマイシン(spec)に対する耐性を与える抗生物質耐性遺伝子は、プラスミドpC194(GeneBank M19465、Cat#1E17 米国43210オハイオ州、コロンバスのオハイオ州立大学のBacillus Genetic Stock Center)、pBC16(GeneBank X51366、Cat#1E9 Bacillus Genetic Stock Center)、pDG646およびpDG1726(グロット−フロイリー(Guerot−Fleury)ら、1995年、Gene 167:335−336頁)から得た。枯草菌(B.subtilis)バクテリオファージSPO1のP26およびP15プロモーター(リー(Lee)ら、1980年、Mol.Gen.Genet.180:57−65頁)はそれぞれ、プラスミドpUC18SP01−26およびプラスミドpX12の誘導体であるpXI23roDTD−SPO1−15から得た(ハムベリン(Huembelin)ら、1999年、J.Ind.Microbiol.Biotech.22:1−7頁)。
枯草菌(B.subtilis)のための標準的な最少培地(MM)は、1×Spizizen塩、0.04%のグルタミン酸ナトリウム、および0.5%のグルコースを含有する。標準的な固体完全培地は、Tryptose Blood Agar Broth(TBAB、Difco)である。標準的な液体完全培地は、Veal Infusion−Yeast Extract broth(VY)である。これらの培地の組成は以下に記載される。
TBAB培地:33gのDifco Tryptose Blood Agar Base(カタログ#0232)、1Lの水、オートクレーブ処理。
VY培地:25gのDifco Veal Infusion Broth(カタログ#0344)、5gのDifco Yeast Extract(カタログ#0127)、1Lの水、オートクレーブ処理。
最少培地(MM):100mlの10×Spizizen塩、10mlの50%グルコース、1mlの40%グルタミン酸ナトリウム、qsp1Lの水。
10×Spizizen塩:140gのK2HPO4、20gの(NH4)2SO4、60gのKH2PO4、10gのクエン酸Na3・2H2O、2gのMgSO4・7H2O、水によりqsp1L。
VFB MMGT培地:100mlの10×VFB MM、100mlの0.5MTris(pH6.8)、44mlの50%グルコース、2mlの微量元素溶液、2mlのFe溶液、2mlのCaCl2溶液、2mlのMg/Zn溶液、748mlの無菌蒸留水。
10×VFB最少培地(10×VFB MM):2.5gのNa−グルタミン酸、15.7gのKH2PO4、15.7gのK2HPO4、27.4gのNa2HPO4・12H2O、40gのNH4Cl、1gのクエン酸、68gの(NH4)2SO4、qsp1Lの水。
微量元素溶液:1.4gのMnSO4・H2O、0.4gのCoCl2・6H2O、0.15gの(NH4)6Mo7O24・4H2O、0.1gのAlCl3・6H2O、0.075gのCuCl2・2H2O、qsp200mlの水。
Fe溶液:0.21gのFeSO4・7H2O、qsp10mlの水。
CaCl2溶液:15.6gのCaCl2・2H2O、qsp500mlの水。
Mg/Zn溶液:100gのMgSO4・7H2O、0.4gのZnSO4・7H2O、qsp200mlの水。
SMG培地:62.78gのMOPS、20gのCargill大豆粉(soy four)(200/20)、1mlのPSTE−1000X溶液、5gのNa−グルタミン酸および8gの(NH4)2SO4、735mlまでの水(pH7.2)、オートクレーブ処理(121℃で30分)。オートクレーブ処理の後、100mlの1MのK−リン酸緩衝液(pH7.2)、120mlの50%グルコース、10mlの1MのMgSO4・7H2O、1.4mlの1MのCaCl2・2H2Oおよび35mlの無菌蒸留水を添加した。
PSTE−1000X溶液:0.2gのMnC1・4H2O、0.15gのZnSO4・7H2O、0.2gのCoCl2・6H2O、0.025gのCuSO4・5H2O、Na2MoO4・2H2O、qsp100mlの水。
抗生物質:アンピシリン(Amp)またはカナマイシン(Km)をそれぞれ100μg/mlおよび50μg/mlの濃度で用いて、LB複合培地で成長させた大腸菌(E.coli)細胞においてプラスミドを形質転換および増殖させた。抗生物質遺伝子含有DNAフラグメントを枯草菌(B.subtilis)に形質転換するために、5μg/mlのクロラムフェニコール(Cm)、15μg/mlのテトラサイクリン(Tc)および50μg/mlのスペクチノマイシン(Spec)を培地に添加した。エリスロマイシン(Erm)遺伝子選択のためには、1μg/mlのエリスロマイシン/25μg/mlのリンコマイシンの混合物を使用した。
振とうフラスコ培養条件:VY豊富な培地中で一晩成長させた細胞培養物を用いて、VFB MMGT培地(1:100希釈)に播種した。細胞が約0.6〜0.8のOD600に到達するまで成長を監視し、その時点で同じ培地中にもう一度希釈し、OD600を0.03にした。さらに18時間成長を続行させ、その後サンプルを採取し、細胞を除去し、HPLCにより上澄みを分析した。あるいは、一晩成長させた細胞培養物を用いて、SMG培地に播種し、24時間成長させた後、HPLCにより上澄みを分析することもできる。
標準的な遺伝子および分子生物学的技法は当該技術分野において一般に知られており、既に記載されている。DNA形質転換、PBS1普遍形質導入、および他の標準的な枯草菌(B.subtilis)遺伝子技法も当該技術分野において一般に知られており、既に記載されている(ハーウッド(Harwood)およびカッティング(Cutting)(編)、1992年、Molecular biological methods for Bacillus、ニューヨーク、John Wiley and Sons)。
対数期のVFB MMGT培地において成長させた細胞(OD600=約0.6)を4℃で収集し、上澄みをデカントした後液体窒素中で直ちに凍結させた。全RNAを以下のように抽出した。氷冷したTE緩衝液(10mMのTris、1mMのEDTA、pH8.0)中にペレットを再懸濁させた。ビードビーター(bead beater)(BioSpec)内で2分間振とうさせることによって、マカロイド(macaloid)、フェノール/クロロホルム、SDSおよび酸洗浄したガラスビーズを含有する混合物中に細胞を溶解した。遠心分離の後、上澄みにフェノール/クロロホルム抽出を3回行った。2段階の沈殿および洗浄の後、全RNAをジエチルピロカーボネート(DEPC)処理したH2O中に再懸濁した。デオキシリボヌクレアーゼI処理の後、RNeasy Midi Kit(キアゲン(Qiagen))を用いて全RNAを精製した。このステップで、tRNAのようなより小さいRNA分子を除去した。品質管理のために、一定分量の全RNAに1.2%アガロースゲル分析を行い、そして/あるいはRNA6000NanoChip(Agilent BioAnalyzer)において分析した。等量の全RNAを1.2%アガロースゲルに負荷し、電気泳動法により転写物を分離した。RNAをアガロースゲルからナイロン膜へ移した後、これらをDIG−標識化アンチセンスmRNAプローブに対して探索した。プローブは、プライマー対の使用によって、適切なT7ポリメラーゼ結合部位を含むPCR断片から作成した。これらのPCR断片からのプローブの作成、およびブロット化膜試験(blotted membrane testing)は、製造者の使用説明書に従ってDIGノーザン・スターター・キット(Northern Starter Kit)(Roche Diagnostics)を使用することにより開発した。
[タンパク質合成の増大をもたらす枯草菌(B.subtilis)ilvDのネイティブプロモーターの下流でのmRNA安定化エレメントの導入]
安定化転写物から翻訳すべき遺伝子を発現する無改変プロモーターによって仲介されるタンパク質の過剰産生の可能性を分析するために、ネイティブilvDプロモーターとilvD遺伝子との間の5’非翻訳リーダー領域としてmRNA安定化エレメントを挿入した。PCRを用いて、枯草菌(B.subtilis)遺伝子ypgRとilvDとの間に存在する遺伝子間領域を含むDNA断片を作成した。ilvD翻訳開始コドンより21bp上流にBglIIおよびHindIII連続制限部位を含むように、519bpのこの断片を操作した。プライマーPilvD+7およびPilvD−2(表1)を用いて、ilvD翻訳開始コドンから250bpで始まるypgR−ilvD遺伝子間領域全体に及ぶ枯草菌(B.subtilis)DNAからの断片を増幅した。pCRXLTOPO(インビトロジェン)においてDNA断片をクローニングし、配列解析によってその同一性を確認し、EcoRI/BamHIカセットとしてベクター骨格から単離した。同様に消化されたプラスミドpDG1728(グロウト−フロイリー(Guerout−Fleury)ら、1996年、Gene 180:57−61頁)と連結した後、得られたpPA475プラスミドを枯草菌(B.subtilis)1A747において形質転換して菌株PA494をもたらし、これは、ilvDの推定上のRBSより上流にBglIIおよびHindIII部位を含む、amyE遺伝子内に組み込まれたlacZ遺伝子に転写的に融合されたilvDプロモーター領域の単一のコピーを含有した。第2のプロモータープローブを作成して、非翻訳リーダー配列としてのmRNA安定化エレメントの導入によるタンパク質産生における効果をさらに分析した。従って、プライマー2HrcLoop+および2HrcLoop−(表1)を用いるPCRによって、枯草菌(B.subtilis)染色体DNAからhrcA−grpE遺伝子間領域を含有するDNA断片を増幅した。合成した断片127bpをBglIIおよびHindIIIで消化し、BglII/HindIII消化pPA475DNAに連結した。次に、得られたプラスミドpPA477を1A747において形質転換し、スペクチノマイシン耐性について選択した。これにより、菌株PA517が産生された。菌株PA494およびPA517は、PA494が野生型5’非翻訳リーダー領域とのilvD−lacZ融合物を含有し、PA517が、hrcA−grpE RNA安定化エレメントを有する5’非翻訳リーダー領域とのilvD−lacZ融合物を含有することを除いて、同質遺伝子的な菌株である。当業者によく知られている標準的なONPGアッセイでは、最少培地の振とうフラスコ培養において48時間の成長の後、菌株PA517は、菌株PA494よりも4倍多いβ−ガラクトシダーゼ活性を産生した。β−ガラクトシダーゼ活性のこの増大は、ilvD構造遺伝子の前のhrcA−grpE安定化エレメントの存在にのみ起因し得る。
[高いパントテネート産生力価は、構成的に発現される外因性プロモーターまたはmRNA安定化エレメントを含有するネイティブプロモーターのいずれかを用いてIlvDタンパク質が過剰産生される場合に達成され得る。]
ネイティブプロモーターの制御下で発現されるmRNAの安定化により仲介される酵素過剰発現の代謝産物の産生における効果を、構成的に発現された強力なものの代わりにネイティブプロモーターを用いる従来技術において十分に記載されている方法と比較するために、枯草菌(B.subtilis)ilvD遺伝子より上流の染色体DNA領域を操作することによって2つの菌株を得た。第1の菌株を構築して、強力な構成的なSP01−26プロモーターの制御下でIlvDタンパク質を過剰発現させた。そうするために、パントテネートの生合成遺伝子panBCDおよびpanEのSP01−15プロモーター改変を含有する菌株CU550の誘導体である枯草菌(B.subtilis)PA49(P15panBCD P15panE)(国際公開第2004/113510号パンフレット)をさらに改変して、ilvD遺伝子(その発現はSP01−26プロモーターによって制御される)を含有させた。これを達成するために、ロング・フランキング・ホモロジー(Long Flanking Homology)PCR(LFH−PCR)の使用によって、まず枯草菌(B.subtilis)株1A747からilvDのプロモーター領域(ilvDp)を欠失させた。プライマー対P1/ilvD/for、P2/ilvD/r/spおよびP3/ilvD/f/sp、P4/ilvD/rev(表2)、ならびにテンプレートとしての枯草菌(B.subtilis)1A747染色体DNAを用いて、PCR作成断片F1およびF2を得た。次に、これらの断片を、テンプレートとしてプラスミドpSPEC12flipからのスペクチノマイシン耐性遺伝子カセット(ウェイド(Wade)ら、1999年、J Bacteriol.181:4365−4373頁)を用いる第2のPCR反応においてプライマーとして用いた。この最終PCRのDNA産物を枯草菌(B.subtilis)1A747に形質転換し、スペクチノマイシン耐性(Specr)について選択した。多くのSpecrコロニーを回収し、いくつかは、プライマーP1ilvD/forおよびP4ilvD/revを用いるPCR分析によってilvDプロモーター領域の欠失を有することを確認した。Specrコロニーから単離したDNAを用いて4000bpのPCR断片(ilvDプロモーター領域の欠失の表示)を検出したが、非形質転換細胞からのDNA(欠失なし)は3000bp断片を生じた。また、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、およびバリン(Val)アミノ酸に対する予想される栄養要求性についてコロニーを試験し、全てのSpecr、PCR陽性コロニーは、Ile、Leu、およびValアミノ酸が欠乏した最少培地において成長できなかった。1つのSpecr、PCR陽性のIlv−栄養要求体をPA24(P15panBCD P15panE ΔilvDp::spec)と名づけ、さらなる使用のために保存した。次に、PA24のPBS1ライセートでPA49を形質導入し、スペクチノマイシン耐性(Spec)について選択した。Specrコロニーを回収し、1つは、PCRおよびIlv栄養要求体によってΔilvDp::spec変異を含有することを確認した。このコロニーは新たにPA60(P15panBCD P15panE ΔilvDp::spec)と命名した。
[ilvオペロンのネイティブプロモーターより下流でのmRNA安定化エレメントの導入は、タンパク質の合成を増大する。]
mRNA安定化エレメントがタンパク質の過剰産生を誘発する能力は、もう1つのネイティブプロモーター発現遺伝子がパントテネート合成に関与する環境下で試験した。そうするために、非翻訳リーダー領域を含むilvBのプロモーター領域(ilvBp)を操作して、その後の改変を可能にする2つの制限部位を含有させた。2つの制限部位は、ilvB構造遺伝子翻訳開始コドンより474bp(PshAI)および7bp(NheI)上流に位置した。プライマー対PilvUP2+、PilvUP−およびPilv+、Pilv−(表3)によって枯草菌(B.subtilis)168染色体DNAから2つの重複PCR断片を作成した。第3のPCR反応によりプライマーとして2つのより短い重複断片を用いて単一のDNA断片を作成するように構築した後、製造業者の使用説明書に従ってpCRXLTOPO(インビトロジェン)において、得られた断片をTAクローニングし、その配列を確認した。次に、EcoRI/BamHI消化によってクローン化断片を除去し、当業者に既知の手順に従ってlacZプロモータープローブベクターpDG1728にサブクローニングし(グロウト−フロイリー、1996年、Gene 180:57−61頁)、プラスミドpPA415が得られた。このプラスミドを次に枯草菌(B.subtilis)1A747において形質転換し、スペクチノマイシン耐性について選択し、PilvB*−lacZ融合物をamyE染色体座位に組み込み、菌株PA431を作成した。
[そのネイティブプロモーター、および5’リーダー領域を有する外因性mRNA安定化エレメントを用いてilvBNC−leuABCDオペロンを発現する菌株は、構成的に強力な外因性プロモーターの転写制御下でilvBNC−leuABCDオペロンを含有する菌株と同様のタンパク質レベルを達成することができる。]
ネイティブilvBプロモーターを強力な構成的プロモーターで置換するために、あるいはネイティブilvBプロモーター領域とilvB構造遺伝子との間にmRNA安定化エレメントを導入するために、まずネイティブilvBプロモーター領域(PilvB)の欠失を以下のように構築した。PilvBの上流および下流の枯草菌(B.subtilis)染色体セクションによって隣接されたクロラムフェニコール(cat)耐性遺伝子カセットを含有するプラスミドを初めに構築した。これを達成するために、枯草菌(B.subtilis)168から、テンプレートとして染色体DNAおよびプライマーysnD3−およびysnD+(表4)を用いるPCRによって、ysnD遺伝子(PilvBプロモーターより上流に位置する)の5’末端を含有するDNA断片を合成した。第2のPCRで作成されたcat耐性コード化遺伝子を含む断片は、プライマーilvBCat+およびilvBCat−(表4)、ならびにプラスミドpDG1661(グロウト−フロイリーら、1996年、Gene 57−61頁)をテンプレートとして用いて調製した。この断片は、ysnD含有PCR断片の3’末端と重複する。精製した後、プライマーilvBCat+およびysnD3−による第3のPCR反応において両方のPCR断片をテンプレートとして使用して、ysdD’−cat断片が得られた。第4のPCR反応を用いて、PilvBより下流のilvB構造遺伝子の5’末端を増幅した。このようにしてプライマーilvB+およびilvB−(表4)の使用によって、枯草菌(B.subtilis)168染色体DNAからPCR産物を得た。製造業者の使用説明書に従い、pCXLTOPOキット(インビトロジェン)によってこのilvB’断片をクローニングした。クローン化断片を、KpnI/SacI断片としてpUC19(New England Biolabs)にサブクローニングした。制限分析によってその完全性を確認した後、ilvB’セグメントより上流に上記のysnD’−cat断片を挿入し(BamHI/KpnI部位を用いて)、最終プラスミドpPA401が得られた。cat遺伝子配列がKpnI/MluI消化によってysnD’−cat−ilvB’カセットから除去され、他の任意のDNAエレメントによって置換されるような形でこのプラスミドを操作した。次に、プラスミドpPA401を枯草菌(B.subtilis)原栄養性の野生型菌株(1A747)およびパントテネート産生株(PA73)に形質転換し、クロラムフェニコール耐性について選択した。Cmrコロニーは、Ilv−栄養要求体(すなわち、バリン、ロイシン、およびイソロイシンアミノ酸を添加しないと最少培地で成長することができない細菌)であることが分かった。得られた菌株をPA401(Δilvp::cat)およびPA441(P15panBCD P15panE P26ilvD Δilvp::cat)と名づけた。
PA444−IlvB56%、IlvC473%、LeuA271%、LeuB579%、LeuC153%、およびLeuD306%、
PA445、IlvB60%、IlvC648%、LeuA274%、LeuB499%、LeuC195%、およびLeuD523%。
[内在性mRNA安定化エレメントの導入は、ネイティブプロモーターによりコードされるmRNAの転写物存在量を増大することができる。]
PA444およびPA455は、ilv−leuオペロンの転写を制御する、異なるDNAエレメントの存在を除いて同質遺伝子的な菌株である。PA444は強力な構成的SP01−26プロモーターおよび野生型5’非翻訳リーダー領域を含有し、PA445は、野生型プロモーターおよびcggR−gapA RNA安定化エレメントを有する改変5’非翻訳リーダー領域を含有する。ilv−leuオペロンの転写に対するに対する2つの異なるDNAエレメントの効果を分析するために、標準ノーザンブロットを用いて、両方の菌株のmRNA転写プロファイルを分析した。プライマーIlvBFor/IlvBRev(IlvBプローブ)、IlvCFor/IlvCRev(IlvCプローブ)、およびLeuDFor/LeuDRev(LeuDプローブ)(表5)を用いて得られるPCR断片からのilvB、ilvC、およびleuD遺伝子に対する標識化アンチセンスmRNAプローブを作成し、標準条件下、変性アガロースゲル上で分離される全RNAに対して別々にハイブリッド形成した。結果は、2つの菌株が異なる転写物プロファイルを生じたことを示した。ilvBおよびilvCプローブの両方とハイブリッド形成するが、leuDプローブとはハイブリッド形成しない高存在量の3.5kbのmRNA種をPA445全RNAにおいて検出したが、PA444全RNAでは検出しなかった。マーダー(Maeder)らによると、この3.5kb転写物はilvB、ilvN、およびilvC遺伝子を包含し、野生型細菌からの全RNAからは検出されない(マーダーら、2004年、J.Bacteriol.186:2240−2252頁)。さらに、このRNA種はPA445において検出されないので、当業者は、このmRNA種の存在量の増大が、cggR−gapA DNAエレメントによるmRNAメッセージの安定性を増大することによって生じたものであり、転写のレベルを増大することによってではないことを認識するであろう。
[mRNA安定化エレメントの使用によるilvBNC−leuABCDオペロンでコードされたタンパク質のレベルの増大は、枯草菌(B.subtilis)細胞におけるパントテネートの産生を増大させる。]
菌株PA73、PA444、およびPA445をVFB MMGT最少培地を含有する振とうフラスコ培養におけるパントテネート産生について評価し、48時間成長させた。これらの振とうフラスコ培養から調製した無細胞の上澄みのHPLC分析によって、以下のレベルのパントテネートの存在が明らかになった。
PA73、550mg/l、
PA444、150mg/l、
PA445、750mg/l。
[mRNAの安定化は、枯草菌(B.subtilis)におけるRNase E活性とは無関係である。]
枯草菌(B.subtilis)株168は、推定では大腸菌(E.coli)RNase Eの機能的相同体をコードする2つの遺伝子(ymfAおよびykqC)を含有すると記載されている。菌株SSB348は、野生型枯草菌(B.subtilis)168の誘導体であり、遺伝子ymfAが欠失され、ykqC発現は、IPTG(イソプロピルガラクトピラノシド)誘導性プロモーター(Pspac)の制御下に置かれる(エベン(Even)ら、2005年、Nucleic Acids Res 33:2141頁)。菌株PA431、PA432、PA494、およびPA517から抽出したDNAで菌株SSB348を形質転換し、それぞれ、菌株PA602(ネイティブilvBプロモーターシグナルの制御下で発現されたilvB−lacZ融合物)、PA603(ネイティブilvBプロモーターシグナルの制御下で発現された5’末端におけるcggR−gapA mRNA安定化エレメントの付加によって、安定化転写物として発現されたilvB−lacZ融合物)、PA604(ネイティブilvBプロモーターシグナルの制御下で発現された5’末端におけるcggR−gapA mRNA安定化エレメントの付加によって安定化転写物として発現されたilvB−lacZ融合物)、およびPA605(5’末端におけるhrcA−grpE安定化エレメントの組み込みによって安定化転写物としてネイティブプロモーターシグナルilvD遺伝子の制御下で転写されたilvD−lacZ融合物)をもたらした。37℃で18時間の25ml振とうフラスコ培養において各菌株を成長させ、標準(ONPGアッセイ)法を用いてβ−ガラクトシダーゼレベルを測定した。これらの結果は表6で要約される。各菌株において、IPTG誘発の存在または不在下で細胞が成長される場合に、β−ガラクトシダーゼレベルの差は少しも観察されなかった。これらの結果は、遺伝子ymfAおよびykqCによりコードされる活性が、枯草菌(B.subtilis)におけるmRNA安定化エレメントの機能のために必要とされないことを実証する。
[mRNA安定化により仲介される強化されたタンパク質合成に対する安定化エレメントの二次構造および不対5’配列の長さの効果。]
シャープ(Sharp)およびベックホファー(Bechhofer)(2005年、Molecular Microbiology 57:484−495頁)は、枯草菌(B.subtilis)における効率的なmRNAの安定化のために、(i)5’末端二次構造が、極小値(−2.8および−4.7kcal/mol)未満の自由エネルギー(ΔG)を有さなければならないこと、ならびに(ii)転写物の5’末端から4および7不対ヌクレオチド(nt)に満たない位置にあることを実証した。4つの不対ヌクレオチド(ermC安定化エレメントにおいて)および7つの不対ヌクレオチド(SP82安定化エレメントにおいて)の存在は、安定化の完全な損失をもたらす。
Claims (20)
- ステムループを形成することができ、そして1つ以上の遺伝子からのmRNA転写物の安定性を増大することができるDNA配列を、コード化DNA遺伝子配列の5’末端に導入することによって、前記構造遺伝子配列の転写を制御するネイティブプロモーターシグナルを強化することなく、微生物における所望の化合物の産生を増大するための方法であって、
ループ形成DNA配列が、微生物の関連遺伝子の転写の開始部位より7DNAヌクレオチドまたはそれ以上下流に導入されることを特徴とする方法。 - 前記ステムループ形成DNA配列が天然に存在する請求項1に記載の方法。
- 前記DNA配列が、以下の特性:
少なくとも6塩基対の二本鎖ステム構造および3〜30ヌクレオチドのヘアピンループ構造と、
−2.8kcl/mol以下である前記構造の計算された熱力学的安定性(ΔG)と
を有する1つ以上のステムループ二次構造を形成する最低15ヌクレオチドからなる請求項1または2に記載の方法。 - 前記ループ形成DNA配列が、微生物の染色体に由来する請求項2または3に記載の方法。
- 前記微生物がバチルス属(Bacillus)である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記微生物が枯草菌種(Bacillus subtilis)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 前記DNA配列が、遺伝子cggR〜遺伝子gapAの配列、遺伝子hrcA〜遺伝子grpEの配列、遺伝子ilvN〜遺伝子ilvCの配列、遺伝子aprE〜遺伝子yhfOの配列、遺伝子ybdA〜遺伝子gsiBの配列、および遺伝子ytxC〜遺伝子thrSの配列からなる群の一員において生じる連続的な配列からなる、枯草菌(Bacillus subtilis)の染色体ヌクレオチド領域であると定義される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記DNA配列が、枯草菌(Bacillus subtilis)の天然に存在する遺伝子cggR〜遺伝子gapAの配列、好ましくは遺伝子cggRの3’末端およびcggR遺伝子の終止コドンより10ヌクレオチド以上下流の配列であり、配列番号1またはその一部によって表される請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記DNA配列が配列番号2である請求項8に記載の方法。
- 前記DNA配列が、配列番号3で表される枯草菌(Bacillus subtilis)の天然に存在する遺伝子hrcA〜遺伝子grpEの配列、好ましくはこれらの遺伝子の間の配列である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記DNA配列が配列番号4である請求項10に記載の方法。
- 前記DNA配列が配列番号5または配列番号6である請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 微生物の関連遺伝子の転写の開始点より7DNAヌクレオチドまたはそれ以上下流に導入されたDNA配列から転写される安定化エレメントをその5’末端に含有することを特徴とするmRNA配列。
- 前記安定化エレメントがステムループであり、以下の特性:
少なくとも6塩基対の二本鎖ステム構造および3〜30ヌクレオチドのヘアピンループ構造と、
−2.8kcal/mol以下である前記構造の計算された熱力学的安定性(ΔG)と
を有する1つ以上のステムループ二次構造を形成する最低15ヌクレオチドを含むことを特徴とする請求項13に記載のmRNA配列。 - 微生物による転写の際に、請求項13または14に記載の安定化mRNA配列を形成するDNA配列。
- 配列番号1〜6のいずれか1つを特徴とするDNA配列。
- 請求項15または16に記載のDNA配列を含む形質転換微生物。
- 微生物における所望の化合物の産生を増大するための請求項13または14に記載の安定化mRNA配列の使用。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法において、1つ以上の遺伝子からのmRNA転写物の安定性を増大するための請求項15または16に記載のDNA配列の使用。
- 特に実施例に関連して以下に記載されるような発明。
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