JP2009300593A - 加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録材が通過する通紙域において記録材上の画像を効果的に加熱しつつ、層間乖離の発生しやすい非通紙域において、弾性層と表層の接着強度を向上させた加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置を提供する。
【解決手段】定着フィルム25の最も内側に形成される基層30と、定着フィルム25の最も外側に形成される表層32との間には弾性層31が形成されており、弾性層31には弾性層31の熱伝導性を高めるためのフィラー33が混入されており、弾性層31におけるフィラー33の密度は、定着フィルム25の軸方向に沿って分布を有しており、加熱ニップ部Nにおいて記録材Pが通紙される領域ではフィラー33の密度は大きく、加熱ニップ部Nにおいて記録材Pが通紙されない領域ではフィラー33の密度が小さくなっていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、記録材上の画像を加熱する加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置に関する。
従来の電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置には、例えば未定着トナー画像を記録材上に加熱定着させるための加熱定着装置、または記録材上に形成された画像を加熱して光沢を与える装置などが備えられている。このように、記録材上の画像を加熱して、記録材上の画像に対して加熱定着または光沢付与等を行う装置を像加熱装置と称する。
像加熱装置としては、いわゆる熱ローラ方式の装置が一般的に用いられている。例えば熱ローラ方式の像加熱装置を定着装置として用いる場合は、未定着トナー画像を担持した記録材を定着ローラと加圧ローラを互いに圧接させて形成した加熱ニップ部に通過させることで、未定着トナー画像を記録材上に加熱定着させる事ができる。
図7に熱ローラ方式の像加熱装置の概略構成を示す。熱ローラ方式の像加熱装置は、加熱用回転体として内部に加熱体65を備えた定着ローラ60を有している。定着ローラ60は、アルミニウムやステンレス製の中空芯金64の内部にハロゲンランプ等の加熱体65を設け、芯金64の外周に弾性層62が形成されており、表層にはトナーと定着ローラ60の離型性を上げるための離型層61が形成されている。さらに、サーミスタ等の温度検知手段66を用いて定着ローラ60の表面温度を検知し、不図示の通電制御回路によって加熱体65への通電を制御することで定着ローラ60の表面温度を、所望の温度に保っている。
また、加圧ローラ70も定着ローラ60と同様に複層構造を有しており、芯金73の外周には弾性層72が設けられている。弾性層72としては、シリコーンゴム等により形成したもの、あるいはシリコーンゴムを発泡することで得られるスポンジ状のものが用いられている。また、弾性層72のさらに外周には、フッ素樹脂等を原料とし、記録材に直接接触する離型層71が形成されている。
そして定着ローラ60と加圧ローラ70が不図示の加圧機構によって所定の圧力で相互に圧接することで、回転駆動する加圧ローラ70に定着ローラ60が矢印の方向に従動回転し、両者の接触領域には加熱ニップ部Nが形成される。そしてこの加熱ニップ部Nに記録材Pが導入され、挟持搬送されて通過することにより、記録材P上の画像(例えば未定着トナー画像など)に対して、加熱、加圧することができる。
一方、近年では上記熱ローラ方式の像加熱装置とは別に、消費電力の低減およびクイックスタート性を向上させたフィルム加熱方式の像加熱装置も提案されている。図5にフィルム加熱方式を採用した像加熱装置の概略構成を示す。
フィルム加熱方式の像加熱装置は、加熱用回転体として可撓性を有するエンドレス状の薄肉フィルム25(以下、定着フィルム25と称する)を用いることが大きな特徴である。定着フィルム25は、その内周面において加熱体としての加熱ヒータ20と直接摺動しており、加熱ヒータ20としてはアルミナ、窒化アルミニウム等のセラッミクス基板23上に通電発熱抵抗パターン22がプリントされたセラミックヒータが一般的に用いられる。
また、加熱ヒータ20はLCP等の耐熱性樹脂により形成されたヒータホルダ29に固定されており、定着フィルム25はヒータホルダ29にルーズに外嵌し、その回転方向をヒータホルダ29にガイドされている。
なお、定着フィルム25はクイックスタート性を向上させるために総厚が100μm〜数mmと薄く、その基層には、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES等の樹脂や、SUSやNi等の金属が用いられている。また、表層にはPFA、PTFE、FEP等の離型性を有する材料が用いられており、基層と表層の間には弾性層が設けられている。このように定着フィルム25は、材料が異なる層をコーティング又はチューブで形成した複合フィルムである。
また、加熱ヒータ20の温度は、ヒータ背面に配置されたサーミスタ等の温度検知手段24により検知され、CPU271、トライアック272を備える通電制御部27へフィードバックされ、加熱ヒータ20が所定の温度で一定になるよう温調されている。
また、定着フィルム25を挟んで加熱ヒータ20の反対側に加圧ローラ26が配置されており、回転駆動する加圧ローラ26が定着フィルム25に圧接することで両者の接触領域には加熱ニップ部Nが形成されている。また加圧ローラ26は芯金261、弾性層262を有しており、その回転駆動は、定着駆動モータ281、CPU282を備える駆動制御部28によって制御されている。
このように、以上で述べた熱ローラ方式及びフィルム加熱方式の像加熱装置では、定着ローラ60または定着フィルム25に弾性層が設けられている。これは、像加熱装置(または画像形成装置)のカラー処理、高速処理に対応するために設けられたものである。すなわち、近年では、像加熱装置の加熱処理をより高速化することが求められている。また、カラートナーも広く普及しており、記録材上にカラー画像が形成されている場合も多くみられる。
しかしながら、高速で搬送されてくるカラー画像を有する記録材に対して十分に加熱が行われない場合は、定着ムラ、または光沢不足等の画像不良を引き起こす虞があり、良質な画像を得ることが困難になる。
そこで、カラー処理、高速処理を実現しつつ、カラー画像に対して十分な加熱を行い、良質な画像を得るために、従来より定着ローラ、定着フィルムには、シリコーンゴム等を材料とする弾性層が基層と離型層(表層)との間に設けられてきた。
このように弾性層を設けることで、記録材P上のトナー画像が加熱ニップ部Nを通過する際に、弾性層がトナーに沿って変形し、トナーが弾性層に包み込まれ、トナーに対して均一に熱を与えることができる。その結果、定着ムラが無く高光沢で良質な画像を得ることができる。しかし、定着ローラ、定着フィルムに弾性層を設けると、以下に示す課題が生じる。
一般的に弾性層には断熱作用があり、弾性層を導入することで定着ローラ60および定着フィルム25の熱伝導率が低下してしまう。また、弾性層の材料として一般的に用いられるシリコーンゴムと、表層の材料として用いられるフッ素樹脂は、いずれも離型性に優れており、それ故、弾性層と表層を確実に接着させることは困難である。
これらの課題に対して、まず熱伝導率の低下を防ぐために、従来より定着ローラ60および定着フィルム25の弾性層に、SiC、ZnO、Al、AlN、MgO、カー
ボン等の高熱伝導性フィラーを混入させる手法が採用されている(特許文献1参照)。
また、弾性層と表層とを確実に接着させるために、弾性層と表層との間に両者を接着させるための接着層を設けるといった手法が採用されている。接着層としては例えばシリコーン系接着剤が用いられ、これはシリコーンゴム、フッ素樹脂に対する接着強度が高いので、弾性層と表層を確実に接着することができる。さらに他の手法として、弾性層の表面をサンドブラスト加工して凹部を形成し、この凹部内にフッ素樹脂を埋め込み、投錨効果(以降、アンカー効果と記載)によって弾性層と表層との接着を行う接着方法も考えられる(特許文献2参照)。
特開平10−305500号公報 特開2004−255828号公報
しかしながら、高熱伝導性フィラーを有する弾性層を備え、さらに弾性層と表層の接着状態を向上させた加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置であっても、以下に示す問題を生じる。
近年、像加熱装置に対して、より高速に加熱処理を行うことへの要望がさらに強くなっている。そのため、図5、図7に示した従来の熱ローラ式及びフィルム加熱方式の像加熱装置では、高速化に対応するために、これまで以上に定着ローラ60、または定着フィルム25の熱伝導率を大きくすることが求められている。そして熱伝導率を大きくするために、弾性層に混入させている高熱伝導性フィラーの密度(以下、フィラー密度と称する)フィラー密度を大きくすることが求められている。
しかし、フィラー密度を大きくすればする程、弾性層と接着層との間の接着強度が低下し、記録材を加熱ニップ部に大量に通紙する過程で、特に温度が高くなりやすい記録材Pの通過しない領域(非通紙域)で、弾性層と表層が乖離(層間乖離)する虞がある。その結果、表層がシワ状になり、また破れが発生するといった耐久性の課題が生じることで、画像不良が発生するといった問題が生じる。
すなわち、従来の加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置では、弾性層のフィラー密度を大きくして画像を効果的に加熱しつつ、耐久性を満足する構成については開示されていない。
そこで本発明は、記録材が通過する通紙域において記録材上の画像を効果的に加熱しつつ、層間乖離の発生しやすい非通紙域において、弾性層と表層の接着強度を向上させた加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明にあっては、
記録材上の画像を加熱する回転可能な加熱用回転体であって、
内部に加熱体を有し、加圧部材と圧接して形成されるニップ部に通紙された記録材上の画像に対して前記加熱体から熱を与える加熱用回転体において、
前記加熱用回転体の最も内側に形成される基層と、
前記加熱用回転体の最も外側に形成される表層との間には弾性層が形成されており、
前記弾性層には前記弾性層の熱伝導性を高めるためのフィラーが混入されており、
前記弾性層における前記フィラーの密度は、
前記加熱用回転体の軸方向に沿って分布を有しており、
前記ニップ部において記録材が通紙される領域では前記フィラーの密度は大きく、
前記ニップ部において記録材が通紙されない領域では前記フィラーの密度が小さくなっていることを特徴とする。
また、
記録材上の画像を加熱する回転可能な加熱用回転体であって、
内部に加熱体を有し、加圧部材と圧接して形成されるニップ部に通紙された記録材上の画像に対して前記加熱体から熱を与える加熱用回転体において、
前記加熱用回転体の最も内側に形成される基層と、
前記加熱用回転体の最も外側に形成される表層との間には弾性層が形成されており、
前記弾性層には前記弾性層の熱伝導性を高めるためのフィラーが混入されており、
前記弾性層における前記フィラーの密度は、
前記加熱用回転体の軸方向に沿って分布を有しており、
サイズの異なる記録材を前記ニップ部に通紙する場合において、
各々の記録材の幅方向の端部近傍に接触する領域では前記フィラーの密度が小さくなっていることを特徴とする。
また、本発明の像加熱装置にあっては、
上記加熱用回転体と、
前記加熱用回転体の内部に設けられた加熱体と、
前記加熱用回転体に圧接する回転可能な加圧部材と、
を備え、
前記加熱用回転体と前記加圧部材とで形成されるニップ部に記録材を通紙することで、該記録材上の画像に対して前記加熱体から熱を与えることを特徴とする。
本発明によれば、記録材が通過する通紙域において記録材上の画像を効果的に加熱しつつ、層間乖離の発生しやすい非通紙域において、弾性層と表層の接着強度を向上させた加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置を提供することが可能になる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施の形態に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
[第1の実施の形態]
図1、図4〜図8を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置について説明する。なお、ここでは本発明に係る像加熱装置を画像形成装置における定着手段として用いた場合について説明するが、本発明に係る像加熱装置は定着手段以外にも適用可能であり、例えば、定着済みの画像を加熱して光沢を付与する加熱装置としても適用可能である。
本実施の形態では、最大通紙幅(記録材が搬送される方向と直交する方向の幅)がLetterサイズ幅(215.9mm)であり、画像は記録材の幅方向両端に5mm程度の非印字部分つまり余白を有して記録材上に形成されるものとする。なお、記録材の幅方向とは、記録材の搬送方向に直交する方向であり、さらには加熱用回転体の軸方向を指すものとする。
(画像形成装置の概略構成)
図4に本実施の形態に係る像加熱装置が設けられた画像形成装置の概略構成を示す。こ
こでは、画像形成装置の一例としてレーザープリンタを用いて説明を行う。
画像形成装置は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体1(以下、感光ドラムと称する)を備えている。感光ドラム1は回転自在に支持されており、不図示の駆動手段によって矢印R1方向に所定のプロセススピードで回転駆動される。
感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って順に、帯電ローラ(帯電手段)2、レーザスキャナ(露光手段)3、現像装置(現像手段)4、転写ローラ(転写手段)5、クリーニング装置(クリーニング手段)7が配設されている。
また、装置本体Mの下部には、紙などの記録材Pを収納可能なカセットCが配設されており、記録材Pの搬送経路に沿って順に、給送ローラ11、搬送ローラ8、トップセンサ9、搬送ガイド10、が備えられている。搬送ガイド10のさらに下流側には、本発明に係る像加熱装置としての定着装置6、搬送ローラ12、排出ローラ13、排出トレイ14が配設されている。
かかる構成の画像形成装置の動作について説明する。画像形成プロセスを制御する不図示の制御部に画像形成開始の信号が入力されると、まず不図示の感光ドラム駆動手段によって感光ドラム1が回転する。そして矢印R1方向に回転駆動された感光ドラム1の表面は、帯電ローラ2によって所定の極性、電位で一様に帯電される。
表面が帯電した後の感光ドラム1のその表面に対して、レーザスキャナ3から画像情報に基づいてレーザ光Eが射出され、感光ドラム1の表面が露光され、露光部分の電荷が除去されて静電潜像が形成される。その後、静電潜像に対して現像装置4に設けられた現像ローラ41からトナーが静電気的に供給され、感光ドラム1の表面において静電潜像がトナー像として現像される。
このようにして現像されたトナー像は、記録材Pを挟んで感光ドラム1に圧接する転写ローラ5によって紙などの記録材Pに転写される。なお、記録材Pは給送カセットCに収納されており、給送ローラ11によって給送され、搬送ローラ8によって搬送され、トップセンサ9を通過し、感光ドラム1と転写ローラ5によって形成される転写ニップ部に搬送されてくるものである。この搬送途中において、記録材Pはトップセンサ9によって先端の通過が検知され、これにより感光ドラム1上に形成されたトナー像との同期が取られる。そして、転写ローラ5には転写バイアスが印加されることで、感光ドラム1上のトナー像が記録材P上の所定の位置に転写される。
一方、トナー像を転写した後の感光ドラム1上に記録材Pに転写されずに残ったトナー(転写残トナー)は、クリーニング装置7に設けられたクリーニングブレード71によって除去され、次の画像形成時に再度使用される。
転写された未定着トナー像を担持した記録材Pは、搬送ガイド10に沿って、像加熱装置としての定着装置6に搬送され、ここで表面に担持した未定着トナー像が加熱、及び加圧されることで記録材P上に加熱定着される。なお、定着装置6については後に説明する。
定着装置6においてトナー像が加熱定着した記録材Pは、定着装置6から排出後、搬送ローラ12によって搬送され、排出ローラ13によって装置本体上面の排出トレイ14上に排出される。
以上の動作を繰り返すことによって、記録材Pに対して順次画像形成を行うことができ
る。なお、上記で説明した本実施の形態における画像形成装置は、プリント速度:55枚/分、プロセススピード311mm/secで画像形成を行うことができる。
(像加熱装置の構成)
本発明に係る像加熱装置が適用された定着装置6の構成について説明する。本実施の形態における定着装置6は、フィルム加熱方式の定着装置である。なお、定着装置6の概略構成は図5に示した従来のフィルム加熱方式の像加熱装置と同一であるので、従来と同一の部材には同一の符号を付し、ここでは図5を参照して本実施の形態における定着装置6の概略構成について説明する。
定着装置6は、加熱用回転体として、可撓性を有するフィルム状の定着フィルム25と、加圧部材として回転可能な加圧ローラ26とを有し、両者が互いに圧接することで加熱ニップ部Nを形成している。
また、定着フィルム25を介して記録材P上に形成されたトナー像を加熱するために、定着フィルム25の内周面に直接摺動するように、定着フィルム25の内部にはセラミックヒータ(加熱体)20が配設されている。未定着のトナー像を担持して加熱ニップ部Nに通紙された記録材Pは、加熱ニップ部Nで加熱および加圧され、トナー像は記録材P表面に加熱定着される。
加圧ローラ26は外径約30mmであり、芯軸部261にはアルミニウム、鉄などの金属材料、もしくは高強度、低熱容量で断熱効果の高いセラッミクス多孔質体を用いても良い。また、芯軸部261の外周は弾性層262によって覆われており、弾性層262はシリコーンゴム等の材料で形成された層(ソリッドゴム層)で形成されている。あるいは、断熱効果を持たせるために、シリコーンゴムを発泡させた材料で形成された層(スポンジ層)、またはさらに断熱効果を持たせるために、シリコーンゴム層内に中空フィラーや吸水性ポリマー、水などを添加した層(気泡ゴム層)で形成してもよい。
ここで、加圧ローラ26の熱容量が大きい場合、加圧ローラ26が定着フィルム25表面から熱を吸収しやすくなり、定着フィルム25の表面温度が上昇しにくくなり、効果的に記録材上の画像を加熱することが困難になる。従って、加圧ローラ26の熱容量が小さい材質の方が、定着フィルム25の立ち上がり時間を短縮化する点では有利である。
しかし、定着装置をカラー画像形成装置や高速処理を行う装置に用いる場合は、加圧ローラ26からの熱の供給が画像の定着性や光沢度の向上に対して必要であるため、加圧ローラ26の熱容量はある程度高いほうが好ましい。すなわち、加圧ローラ26の材質は、画像形成装置の特徴を考慮して決定する必要がある。
加熱体としてのセラッミクヒータ20は抵抗発熱体であり、窒化アルミニウム、アルミナなどの耐熱性基板23上に、例えば印刷といった手法によって抵抗体パターン22を形成し、その表面をガラス層21で被覆したものである。セラミックヒータ20の長手寸法は、記録材Pの幅方向、すなわち図5の紙面に対して垂直方向に、記録材Pの幅よりも長くなるように形成されている。
また、セラミックヒータ20の裏面にはセラミックヒータ20の温度を検知するサーミスタ24が配設されている。そして制御部としてのCPU271がサーミスタ24が検知する温度に基づいてトライアック272を制御し、通電を制御することでセラミックヒータ20への通電電流を制御して温調制御を行う。
また、セラミックヒータ20はヒータホルダ29によって支持されている。ヒータホル
ダ29は、液晶ポリマー、フェノール樹脂、PPS、PEEKなどの耐熱性樹脂によって形成され、次に説明する定着フィルム25の回転を規制するガイド部材としても作用する。
(加熱用回転体の構成)
本実施の形態では、加熱用回転体として定着フィルム25を用いた。以下、図6を参照して、定着フィルム25の構成について説明する。図6は、本実施の形態に係る加熱用回転体としての定着フィルム25の層構造を示す概略構成図である。
定着フィルム25は、最も内側に円筒状の基層30が形成され、最も外側に表層(離型層)32が形成された複層構造を有している。基層30は、可撓性を有する薄肉の無端状ベルトで、その材料として、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEKなどの耐熱性樹脂が用いられている。なお、基層の材料はこれに限られず、高熱伝導性を達成すべくSUS、Niなどの金属材料を用いることもできる。また、基層30はクイックスタート性、機械的強度をともに満足する必要があるため、その厚みを5μm以上100μm以下、好ましくは、20μm以上70μm以下としている。
また、基層30と表層32との間には弾性層31が形成されており、基層30と弾性層31の間には接着層34が塗布されている。弾性層31は、高光沢で定着ムラのない良質な画像を得るためには必要であり、その根拠は上記で説明した通りである。
すなわち、記録材Pが加熱ニップ部Nに通紙される際、記録材P上のトナーや紙繊維などの表面凹凸に対して弾性層31が変形し、それらを包み込むことによってトナーに均一に熱を伝えることができる(以降、包み込み効果と称する)。この包み込み効果によって、特に表面の凹凸が大きな記録材P上のハーフトーン画像などで発生しやすい定着濃度ムラ(定着ムラ)を抑えることができる。また、トナー画像を記録材上に均一に定着させることができるため、高光沢な画像を得ることができる。
弾性層31の材料としては、シリコーンゴムなどの弾性を有する材料が用いられるが、シリコーンゴム単体では熱伝導率が低い。よって、本実施の形態では弾性層31の熱伝導性を高めるために、SiC、ZnO、Al、AlN、MgO、カーボンなどの高熱伝導性の充填剤(以降、フィラーと記載)をシリコーンゴムに混入させている。
特に、高速処理を行う場合は、弾性層31に例えばAl等の高熱伝導性フィラー33を混入させ、弾性層31全体の熱伝導率を1.0〜1.5W/mk程度にしている。また、このときのフィラー33は電気伝導性などの物性を付与させるためのものであっても良く、2種類以上のフィラーを混入させても良い。
弾性層31の厚さは、より厚いほど包み込み効果が大きくなるが、厚すぎると定着フィルム25の熱容量が大きくなってしまい、クイックスタート性が低下してしまう。そのため、弾性層31の厚さは、30μm以上500μm以下、特に100μm以上300μm以下とすることが望ましい。
表層32はパーフルオロアルコキシ樹脂(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン樹脂(FEP)等のフッ素樹脂に代表される、トナーに対して離型性を有する材料で形成されている。表層32は、1μm〜50μm程度の厚みであることが好ましく、チューブを被覆させたものでも、表面を塗料でコートしたものであっても良い。
ここで、弾性層31であるシリコーンゴムと、表層32であるフッ素樹脂は共に離型性
に優れた物質であり、特に加工することなくお互いを強固に密着させることは困難であるため、本実施の形態ではこれらの層を接着させるために接着層35を用いている。
接着層35は、エポキシ系やシリコーン系などの接着剤(プライマ−)で形成されており、弾性層31および表層32のいずれに対しても接着性を有している。また、接着法として、弾性層表面をブラスト加工して凹部を設け、その凹部にフッ素樹脂を流し込むことで発生する投錨効果(アンカー効果)により、弾性層31と表層32を接着させる方法を採用することもできる。
しかし、上記で説明した接着方法を取る場合、弾性層31と表層32との間の接着強度は、弾性層31に含まれるフィラー密度の影響を大きく受ける。すなわち、弾性層31に含まれるフィラー密度が大きい場合、弾性層31と接着層35の界面に存在するフィラーによって両者の接着が阻害され、弾性層31と接着層35との間の接着性が低下する。
逆に、フィラー密度が小さい場合は、弾性層31と接着層35との接着性は良好に保たれるが、フィラー密度が小さいが故に、定着フィルム25の熱伝導性を所望の値にすることが困難になる。
一方、アンカー効果によって接着を行う場合、弾性層31表面に存在するフィラーが、サンドブラスト処理によって凹部を形成する妨げとなるため、この接着方法においても、フィラー密度が大きいほど接着性は低下してしまう。
図8に、従来の定着フィルムの層構造の概略構成を示す。図8に示すように、従来の定着フィルムでは、弾性層310にフィラー330を定着フィルムの軸方向方向(記録材の幅方向)で均一に分散させていた。特に、高速処理を行う場合は、定着フィルムに高い熱伝導性を付与するために、弾性層310の熱伝導フィラー330を高密度にしていた。
しかし、このような従来の定着フィルムを用いた場合、通常通紙されるサイズの記録材Pの幅方向の端部(図中にDで記載)を中心とした幅3mm程度の帯状領域R(以降、紙コバ部と記載)において、弾性層310と表層320とで層間乖離が生じることが多い。
例えば200k枚(=200,000枚)以上といった大量の記録材を通紙させた場合、弾性層310と表層320の層間の接着強度が低下し、表層320が弾性層310から離れて浮き、表層320がシワ状となってしまう現象が発生していた。
表層320が浮いてシワ状になると、定着フィルムの離型性が低下し、不良画像が発生してしまう。このように紙コバ部で接着性の悪化が起こる理由は、紙コバ部では紙の厚み分で弾性層310が変形し表層320と弾性層310の界面にストレスがかかり、それが大量に繰り返されることによって、表層320が剥がれ易くなることが原因として挙げられる。この課題を解決するためには、紙コバ部における弾性層310と表層320の接着強度を向上させる必要がある。
そこで本実施の形態に係る定着フィルム25の層構造を、図1に示す構造とした。図1は、本実施の形態に係る加熱用回転体の層構造を示す概略構成図である。ここで、図中CはA4サイズ記録材の通紙幅の幅方向中央部であり、EはA4サイズ記録材の端部の呼称位置である。なお、記録材の端部が通過する位置は、記録材の裁断サイズや通紙位置のずれ等が原因で、経験的に±1.5mm程度ずれる。つまり、Eから1.5mm内側をDとすると、Dから外側は紙コバ部が通過することになる。
そのため、弾性層31と表層32の接着強度を上げるために、フィラー密度をDから外
側で小さくなるようにしたことが本実施の形態の特徴である。
このように定着フィルム25の軸方向(記録材の幅方向)でフィラー密度に分布を持たせると、通紙耐久するA4サイズの紙コバ部Rにおける弾性層31のフィラー密度が小さいため、弾性層31と表層32との間の接着性を強くすることができる。そのため、200k枚以上といったA4サイズ紙の大量通紙を行っても、弾性層31と表層32の間の接着は強固に保たれたままで、表層32が弾性層31から乖離して浮いてしまうといった現象は発生しなくなる。
一方、この弊害として、A4通紙幅の外側ではフィラー密度が小さいために、その部分の熱伝導率が低下し、A4通紙幅外の画像定着性が悪化することが懸念される。しかし、本実施の形態の画像形成装置は、最大通紙幅がレターサイズ幅(215.9mm)であり、A4サイズ幅の外でLetter紙通紙域となる部分(両端部3mm程度の領域)は、通常は余白であるため、画像の定着性不良が発生するといった問題は発生しない。
従って、本実施の形態の構成を用いることで、画像印字領域における高い定着性を満足させたままで、紙コバ部の表層32の浮き発生を防止することができる定着フィルム25を提供することができる。
(フィラーの分散方法)
次に、本実施の形態の定着フィルム25において、弾性層31内にフィラー33を定着フィルム25の軸方向に沿って分散させる方法を述べる。ここでは、定着フィルム25の弾性層31をスプレーで塗布する形成方法の場合について説明する。
まず、接着層34を塗った基層30表面に、基層30の径より僅かに径が大きく、A4通紙幅に相当する幅の円筒形のマスクを設置し、フィラー密度が低い弾性層31の塗布を行う。これで、A4通紙幅の外側に低フィラー密度の弾性層31を形成することができる。
次に、A4通紙幅に相当する上記のマスクを外し、A4通紙幅の外側、つまり低フィラー密度の弾性層31を形成した部分に相当する幅のマスクを設置し、高フィラー密度の弾性層31の塗布を行う。なお、ここで2種類の弾性層を塗布する順序は逆であっても構わない。以上の手法で形成した弾性層31上に、接着層25と表層32を形成する。このようにして、本実施の形態で説明した定着フィルム25を得ることができる。
(定着性能、耐久性能の評価)
本実施の形態に係る加熱用回転体の効果を確認するために、本実施の形態に係る定着フィルム25で定着画像を形成し、その耐久性能および定着性能を評価した。その評価結果を表1に示す。
なお、記録材Pの搬送スピードは311mm/sec、解像度は600dpi、定着フィルムの加圧ローラへの加圧力は176.4N(18kgf)、加熱ニップ幅Nは8mm
、試験環境は室温23℃湿度50%とした。また、セラミックヒータ20の裏面温度が230℃で一定になるように電力を制御した。
また、記録材としてオフィスプランナー(キヤノン株式会社製:普通紙、A4サイズ、坪量68g/m)を用い、その上に横線パターンを、200k枚(=200,000枚)連続で通紙耐久した。耐久後、記録材XEROX4200(富士ゼロックス株式会社製:普通紙、レターサイズ、坪量75g/m)上に記録材の幅方向両端から各5mmの余白を取った実用画像を印字し、画像性能を評価した。また、定着フィルムの様子を観察す
ることで耐久性能の評価を行った。
表1における、耐久性能の符号の意味は以下のとおりである。端部における定着フィルム25の表層32が、○:「弾性層と接着しており、画像不良が発生していない」、×:「弾性層と離れているため画像不良が発生し、実用上問題がある」である。
一方、定着性能の符号の意味は、○:「画像に欠けが無く、擦ってもトナーが落ちない」、×:「画像に欠けが発生し、擦るとトナーがはがれる」である。
また、表1における従来例(比較例)では、定着フィルムの軸方向に一様にフィラーを分散させ、その密度はそれぞれ30重量%と5重量%とした。一方、本実施の形態は、弾性層31のフィラー密度が、定着フィルム25の軸方向のA4通紙幅より内側では30重量%であり、A4通紙幅より外では5重量%となるように分布をもたせた。
Figure 2009300593
表1に示すように、比較例1の場合、つまりフィラー密度を30重量%で一様に分散させた場合では、定着性能は良好であるが、表層が浮いてしまい画像不良が発生した。一方、比較例2の場合、つまりフィラー密度を5重量%で一様に分散させた場合では、耐久性能は良好であるが、熱伝導フィラー密度が小さく熱伝導率が低いため、定着不良が発生した。
それに対して、本実施の形態の場合、つまり弾性層31のフィラー密度を定着フィルム25の軸方向のA4通紙幅より内では30重量%、A4通紙幅より外では5重量%とした場合では、耐久性能、定着性能は共に良好であった。
以上の結果より、定着フィルム25の弾性層31のフィラー密度を、定着フィルム25の軸方向で分布を持たせることで、高い耐久性と熱伝導性を両立させる定着フィルム25を提供できる。その結果、200k枚といった大量通紙を行った後でも良好な画像を得ることが可能となった。
なお、本実施の形態では、弾性層31と表層32を接着剤層35で密着させる場合について説明したが、アンカー効果を用いて密着させる場合についても同様の効果が得られることは言うまでもない。
[第2の実施の形態]
図2を参照して本発明の第2の実施の形態に係る加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置について説明する。なお、ここでも本実施の形態に係る像加熱装置を画像形成装置の定着手段として用いた場合について説明するが、画像形成装置の概略構成は上記第1の実施の形態と同一であるのでその説明は省略する。
本実施の形態では、最大通紙幅がLetterサイズ幅(215.9mm)であり、記録材の幅方向両端に余白を取らない、いわゆる縁なし印刷方式で画像を形成可能な画像形成装置に像加熱装置を用いた場合について説明する。
縁なし印刷方式の画像形成装置では、A4サイズ幅の外でLetter紙通紙域となる部分についても高い定着性を満たす必要がある。つまり、定着フィルム25の軸方向におけるA4幅の外側の部分でも高い熱伝導率を満足する必要がある。
(加熱用回転体の構成)
図2は、本実施の形態に係る加熱用回転体の層構造を示す概略構成図である。図2において、第1の実施の形態と同一の部材に対しては同符号を付して説明する。なお、図2において、CはA4サイズ通紙幅の幅方向中央部、EはA4端部の呼称位置、DはEから内側1.5mmの位置を示す。
さらに第1の実施の形態と同様に、Dから外側は紙コバ部が通過するため、フィラー密度をDから外側で小さくする分布とした。さらに、A4通紙幅の外側では高い熱伝導率を満たす必要があるため、弾性層31の厚みを薄くした。すなわち、フィラー密度が小さくなっている領域では、弾性層31の厚さを薄くすることが本実施の形態の特徴である。
このように、A4通紙幅の外側の弾性層31を薄くすることで、熱伝導フィラー密度は小さくとも高い熱伝導率を実現でき、A4サイズ幅の外でLetter紙通紙域となる部分についても高い定着性を満たす定着フィルム25を得ることができる。
一方、この弊害として、定着ガサつきの問題点が考えられる。定着ガサつきとは、一般に定着フィルムが硬い場合に発生し、トナーが均一につぶされず濃度ムラとして画像に表れる現象のことを指す。つまり、A4通紙幅外部では弾性層31が薄く硬度が高いため、A4幅の外側で定着ガサつきが悪化することが予想される。
しかし、本実施の形態では、最大通紙幅がLetterサイズであるため、定着ガサつきの悪化する両端部の領域はそれぞれ3mm程度であり、目視による画像評価ではほとんど目立たない。従って、本実施の形態のケースでは、実画像に対する定着ガサつきの影響はほとんど無い。
(定着性能、耐久性能の評価)
本実施の形態に係る加熱用回転体の効果を確認するために、本実施の形態に係る定着フィルム25で定着画像を形成し、その耐久性能および定着性能を評価した。その評価結果を表2に示す。
表2に弾性層31の厚さ・弾性層31内のフィラー密度と、それぞれの定着フィルム25を用いた場合の耐久性能・定着性能・定着ガサつきの関係をまとめた。記録材Pの搬送スピードは311mm/sec、解像度は600dpi、定着フィルムの加圧ローラへの加圧力は176.4N(18kgf)、加熱ニップ幅Nは8mm、試験環境は室温23℃
湿度50%とした。また、セラミックヒータ20の裏面温度が230℃で一定になるように電力を制御した。
この条件の下、横線パターンを300k枚(=300,000枚)連続で通紙耐久し、記録材としてオフィスプランナー(キヤノン株式会社製:普通紙、A4サイズ、坪量68g/m)上に、横線パターンを200k枚連続で通紙耐久した。耐久後、記録材XEROX4200(富士ゼロックス株式会社製:普通紙、レターサイズ、坪量75g/m)上に記録材両端まで印字した実用画像を形成し、画像性能および定着ガサつきを評価した。また、定着フィルムの様子を観察することで耐久性能の評価を行った。
表2における定着ガサつきの符号の意味は以下のとおりである。○:「ガサつきが無く画像が良好」、△:「一部ガサつきが発生しているが、実画像上はほとんど問題ない」、
×:「定着ガサつきが全面で発生し、実画像上でも問題がある」である。
また、表2における従来例(比較例)では、定着フィルムの軸方向で一様にフィラーを分散させてあり、その密度はそれぞれ比較例1では30重量%、比較例2、3では5重量%である。また、弾性層の厚みも、軸方向で一様であり、比較例1、2では200μm、比較例3では100μmである。
一方、本実施の形態では、弾性層31のフィラー密度が軸方向のA4通紙幅より内では30重量%であり、A4通紙幅より外では5重量%である。また、弾性層31の厚さは、軸方向のA4通紙幅より内では200μmであり、A4通紙幅より外では100μmである。
Figure 2009300593
表2に示すように、従来例(比較例1〜3)では耐久性能、定着性能、定着ガサつきのいずれかで不良が発生しているのに対し、本実施の形態の構成ではいずれも高いレベルで良好であった。
以上の結果より、本実施の形態に示した構成を取ることで、高い耐久性と熱伝導性、および定着ガサつきの防止のいずれについても満足させる定着フィルム25を提供可能である。さらに、縁なし印刷方式の画像形成装置で200k枚といった大量通紙を行った後でも良好な画像を得ることが可能となった。
[第3の実施の形態]
図3を参照して本発明の第3の実施の形態に係る加熱用回転体及びそれを備える像加熱装置について説明する。なお、ここでも本実施の形態に係る像加熱装置を画像形成装置の定着手段として用いた場合について説明するが、画像形成装置の概略構成は上記第1の実施の形態と同一であるのでその説明は省略する。
本実施の形態では、最大通紙幅がA3サイズ幅(297mm)であり、通常通紙する記録材が官製はがき(幅:100mm)である画像形成装置に像加熱装置を用いた場合に、効果的な定着フィルムを提案するものである。つまり、本実施の形態に係る定着フィルム25は、官製はがき通紙幅の僅かに外側で表層浮きを防ぐ必要があり、かつA3紙通紙域内で高い定着性を満たす必要がある。
(加熱用回転体の構成)
図3は、本実施の形態に係る加熱用回転体の層構造を示す概略構成図である。図3において、第1の実施の形態と同一の部材に対しては同符号を付して説明する。ここで、C’は官製はがき通紙幅の幅方向中央部、E’は官製はがき端部の呼称位置、H’はA3端部の呼称位置、D’、F’はそれぞれE’から内側、外側1.5mmに相当する位置、G’はH’から内側1.5mmに相当する位置を示す。
また、第1の実施の形態と同様に、D’からE’の範囲(帯状領域R)およびG’の外
側(帯状領域T)は紙コバ部が通過するため、フィラー密度をDから外側で小さくした。すなわち、同図に示すところの弾性層31は、帯状領域Rおよび帯状領域Tでフィラー密度が小さく、また弾性層31の厚さが薄くなっている。
つまり、本実施の形態では、サイズの異なる記録材を加熱ニップ部Nに通紙する場合において、各々の記録材Pの幅方向の端部近傍に接触する領域ではフィラー33の密度が小さくなっていることを特徴とする。
このような構成にすることで、帯状領域RおよびTで表層浮きを防ぐことができ、かつA3紙通紙域内で高い定着性を満たすことができる。また、先述のように、弾性層が薄い領域Rは幅3mm程度であるため、実画における定着ガサつきへの影響は小さい。
(定着性能、耐久性能の評価)
本実施の形態に係る加熱用回転体の効果を確認するために、本実施の形態に係る定着フィルム25で定着画像を形成し、その耐久性能および定着性能を評価した。その評価結果を表3に示す。
表3に弾性層31の厚さ・弾性層31内のフィラー密度と、それぞれの定着フィルム25を用いた場合の耐久性能・定着性能・定着ガサつきの関係をまとめる。記録材Pの搬送スピードは311mm/sec、解像度は600dpi、定着フィルムの加圧ローラへの加圧力は176.4N(18kgf)、ニップ幅Nは8mm、試験環境は室温23℃湿度
50%で、セラミックヒータ20の裏面温度が230℃で一定になるように電力を制御した。
この条件の下、記録材として官製はがき(普通紙、坪量157g/m)上に、横線パ
ターンを200k枚連続で通紙耐久した。耐久後、オフィスプランナー(キヤノン株式会社製:普通紙、A3サイズ、坪量68g/m)上に実用画像を形成し、画像性能および
定着ガサつきを評価した。また、定着フィルム25の様子を観察することで耐久性能の評価を行った。
表3における従来例(比較例)では、定着フィルムの軸方向で一様にフィラーを分散させており、その密度はそれぞれ比較例1では30重量%、比較例2、3では5重量%である。また、弾性層の厚みも軸方向で一様であり、比較例1、2では200μm、比較例3
では100μmとした。一方、本実施の形態では、図7中のPW−3および領域Sで、弾
性層31のフィラー密度が30重量%、弾性層厚みは、200μmである。一方、図3中
の領域RおよびTではそれぞれ、5重量%、100μmである。
Figure 2009300593
表3に示すように、従来例(比較例1〜3)では耐久性能、定着性能、定着ガサつきのいずれかで不良が発生しているのに対し、本実施の形態の構成ではいずれも高いレベルで良好であった。
以上の結果より、本実施の形態に示した構成を取ることで、最大通紙幅がA3の画像形成装置で官製はがきを200k枚通紙した後でも(すなわちサイズの異なる記録材を通紙させる場合であっても)、良好な画像を得ることが可能となった。なお、本実施の形態では、官製はがきで通紙耐久を行った場合について説明した。しかし、LegalサイズやB5サイズなどで通紙耐久を行う場合においても、各サイズの紙コバ部の弾性層フィラー密度を下げることで同様の効果が得られることは明らかである。
また、領域Rの幅が小さければ(例えば3mm程度以下)、弾性層厚みが厚い(例えば200μm以上)場合においても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
[その他の実施の形態]
上記第1〜第3の実施の形態では、加熱用回転体として定着フィルム25を用いて説明したが、本発明に係る加熱用回転体は、定着ローラでもよい。定着ローラを用いる場合であっても上記と同様の効果を奏することが可能である。
第1の実施の形態に係る加熱用回転体の層構造を示す概略構成図。 第2の実施の形態に係る加熱用回転体の層構造を示す概略構成図。 第3の実施の形態に係る加熱用回転体の層構造を示す概略構成図。 第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図。 フィルム加熱方式の像加熱装置の概略構成図。 第1の実施の形態に係る加熱用回転体の層構造を示す概略構成図。 熱ローラ方式の像加熱装置の概略構成図 従来の加熱用回転体の層構造を示す概略構成図。
符号の説明
1 感光ドラム
6 定着装置
20 加熱ヒータ
25 定着フィルム
26 加圧ローラ
30 (定着フィルムの)基層
31 (定着フィルムの)弾性層
32 (定着フィルムの)表層
33 高熱伝導性フィラー
34 (定着フィルムの)接着層
35 (定着フィルムの)接着層
N 加熱ニップ部
P 記録材
R 記録材のコバ部

Claims (4)

  1. 記録材上の画像を加熱する回転可能な加熱用回転体であって、
    内部に加熱体を有し、加圧部材と圧接して形成されるニップ部に通紙された記録材上の画像に対して前記加熱体から熱を与える加熱用回転体において、
    前記加熱用回転体の最も内側に形成される基層と、
    前記加熱用回転体の最も外側に形成される表層との間には弾性層が形成されており、
    前記弾性層には前記弾性層の熱伝導性を高めるためのフィラーが混入されており、
    前記弾性層における前記フィラーの密度は、
    前記加熱用回転体の軸方向に沿って分布を有しており、
    前記ニップ部において記録材が通紙される領域では前記フィラーの密度は大きく、
    前記ニップ部において記録材が通紙されない領域では前記フィラーの密度が小さくなっていることを特徴とする加熱用回転体。
  2. 記録材上の画像を加熱する回転可能な加熱用回転体であって、
    内部に加熱体を有し、加圧部材と圧接して形成されるニップ部に通紙された記録材上の画像に対して前記加熱体から熱を与える加熱用回転体において、
    前記加熱用回転体の最も内側に形成される基層と、
    前記加熱用回転体の最も外側に形成される表層との間には弾性層が形成されており、
    前記弾性層には前記弾性層の熱伝導性を高めるためのフィラーが混入されており、
    前記弾性層における前記フィラーの密度は、
    前記加熱用回転体の軸方向に沿って分布を有しており、
    サイズの異なる記録材を前記ニップ部に通紙する場合において、
    前記加熱用回転体における、各々の記録材の幅方向の端部近傍に接触する領域では前記フィラーの密度が小さくなっていることを特徴とする加熱用回転体。
  3. 前記フィラーの密度が小さくなっている領域では、
    前記弾性層の厚さが薄くなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱用回転体。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱用回転体と、
    前記加熱用回転体の内部に設けられた加熱体と、
    前記加熱用回転体に圧接する回転可能な加圧部材と、
    を備え、
    前記加熱用回転体と前記加圧部材とで形成されるニップ部に記録材を通紙することで、該記録材上の画像に対して前記加熱体から熱を与えることを特徴とする像加熱装置。
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