JP2009298997A - 蛍光体および蛍光表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 従来に比較して一層輝度の高いCaTiO3:Pr系蛍光体、および蛍光表示装置を提供する。
【解決手段】 CaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体は、CaTiO3に第1添加物、第2添加物としてPr、Znを添加したCaTiO3:Pr,Zn系蛍光体において、第3添加物としてRbまたはCs(R)が更に添加されることから、従来のCaTiO3系蛍光体に比較して一層高い輝度が得られる。各添加物は、母体100(mol%)に対して、第1添加物Prは0.003〜0.05(mol%)、第2添加物Znは1〜5(mol%)、第3添加物Rは1〜8(mol%)の範囲がそれぞれ好ましい。
【選択図】 図5

Description

本発明は、蛍光体およびこれを発光源として備えた蛍光表示装置に関する。
例えば蛍光表示管(Vacuum Fluorescent Display:VFD)等の蛍光表示装置に用いられる低速電子線で励起発光させる赤色発光蛍光体として、従来からZn1-xCdxS(以下、ZnCdSと表記する)系蛍光体が使用されてきた。近年、環境問題からCd等の有害元素の使用が規制されてきており、ZnCdS系蛍光体もそのような規制の対象となっている。また、硫化物であるZnCdS系蛍光体が電子線照射により分解されると、飛散したSによって電子源である酸化物カソードの電子放出能力が低下させられる問題もある。なお、本願において「低速電子線」は、特に断らない限り、VFDに好適な10〜200(V)程度の電圧で加速されたものをいう。
これに対して、CdおよびSを含まない酸化物系低速電子線用赤色蛍光体として、アルカリ土類金属とTiの酸化物から成る母体に希土類元素および三族元素を添加したものが提案されている。上記アルカリ土類金属は、例えばMg、Sr、Ca、Baであり、希土類元素は例えばCe、Pr、Eu、Tb、Er、Tm、三族元素は例えばAl、Ga、In、Tlであり、典型的な組成例としては、例えば、SrTiO3:Pr,Alが挙げられる(例えば特許文献1、2を参照)。ここで、「:」の右側の元素(Pr,Al)は母体であるSrTiO3に添加された成分である。この組成において、PrおよびAlの好ましい範囲はそれぞれ0.1〜2(mol%)、1〜50(mol%)とされている(特許文献1参照)。
特開平8−85788号公報 特開2003−41246号公報 特開2005−281507号公報 特開2006−282703号公報
ところで、前記特許文献1に記載されたSrTiO3:Pr,Al蛍光体では、輝度劣化が激しく寿命が短い問題があった。前記特許文献2には、蛍光体の粒子表面にその母体化合物から成る保護膜を設けることによって輝度劣化を抑制する技術が記載されているが、このような処理を施してもZnCdS系蛍光体に比較すると寿命が著しく短いのである。しかも、上記保護膜を設けたSrTiO3:Pr,Alは、初期的にもZnCdS系蛍光体に比べて低輝度であった。
そこで、本願出願人は、先に、CaTiO3を母体とし、Prがその母体に対して0.003〜0.05(mol%)の範囲で添加されると共に、Al、Ga、In、Zn、Mg、Na、およびKのうちの少なくとも一種(M)が添加されたCaTiO3:Pr,M蛍光体や、Ca1-xSrxTiO3(但し、0<x≦0.5)を母体とし、PrおよびLiが添加されたCa1-xSrxTiO3:Pr,Li蛍光体を提案した(特許文献3,4を参照。)。これらCaTiO3:Pr系蛍光体によれば、長寿命且つ高輝度の酸化物蛍光体を得ることができた。
しかしながら、上記のような蛍光体においても、従来のCd系蛍光体に比較すると未だ低輝度である。例えば、Znを3(mol%)程度までの範囲で添加したCaTiO3:Pr,Zn蛍光体では、80(cd/m2)程度の輝度に留まっていた(前記特許文献3の0049および図9を参照。)。そのため、ディスプレイの高性能化に対する要求に伴い、酸化物系蛍光体の輝度を一層高めることが求められていた。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、従来に比較して一層輝度の高いCaTiO3:Pr系蛍光体、および蛍光表示装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、第1発明のCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体の要旨とするところは、CaTiO3を母体とし、Prが第1添加物として、Znが第2添加物として、RbおよびCsの少なくとも一方(R)が第3添加物として、共に添加されたことにある。
また、第2発明の蛍光表示装置の要旨とするところは、前記第1発明のCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体を発光源として備えたことにある。
前記第1発明によれば、CaTiO3にPr、Znを添加したCaTiO3:Pr,Zn系蛍光体において、RbおよびCsの何れかが第3添加物として添加されることから、CdやSを含まない酸化物蛍光体において、従来に比較して一層高い輝度が得られる。
また、前記第2発明によれば、上記第1発明のCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体を発光源として備えることから、低電圧で動作可能であると共に、長寿命を有し且つ高輝度の蛍光表示装置が得られる。
なお、本願において、CaTiO3というときは、特に明示する場合を除く他、Ca/Ti比が1である化学量論組成のものに限られず、その比が1よりも僅かに大きい或いは僅かに小さい組成のものも含むものとする。例えば、その比が1.05〜0.95の範囲内のものも含まれる。
また、前記第1発明の蛍光体は、VFDで利用される低速電子線でも高輝度を得ることが可能なものであるが、1(kV)以上の高速電子線や紫外線でも励起して発光させ得るものであり、その用途は低速電子線で励起する場合に限られない。すなわち、本発明の蛍光体は、1(kV)〜10(kV)程度の電圧で発生させられた電子線で蛍光体を励起して発光させるFED(Field Emission Display:電界放射ディスプレイ)や、10(kV)程度の電圧で発生させられた電子線で蛍光体を励起発光させるCRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)、紫外線で蛍光体を励起発光させるPDP(Plasma Display Panel)等にも好適に用いられ、第2発明の表示装置には、蛍光表示管を始めとして、蛍光体を発光源とするこれらのものも含まれる。
また、第1発明において、第1添加物Prは発光中心として機能するものである。価数が+3または+4(特に、赤色発光の場合は+3)であるPrはイオン半径から考えてCaサイトを置換するものと考えられるが、Caの価数は+2であるからこの置換によって+の電荷が過剰になる。第2添加物のZnはイオン半径から考えてTiサイトを置換するものと考えられるが、Tiの価数は+4、Znの価数は+2であるから、Prの置換によって過剰になった電荷のバランスを取ることができる。すなわち、Znは、Prを安定して存在させて高輝度を得るために必須の成分である。
ここで、前記第1発明において、好適には、前記第3添加物Rb,Csの添加量は前記母体100(mol%)に対して1〜8(mol%)の範囲内である。第3添加物は僅かでも添加すればその添加量に応じて輝度向上効果が得られるが、1(mol%)以上の添加で顕著な輝度向上が認められる。また、過剰になると輝度が却って低下する傾向が認められるので、8(mol%)以下に留めることが好ましい。なお、第3添加物としてRbおよびCsを同時に添加してもよいが、その場合には、上記添加量の範囲はこれらの合計量である。
また、好適には、前記第3添加物Rb,Csの添加量は前記母体100(mol%)に対して3〜5(mol%)の範囲である。このようにすれば、低速電子線励起の場合にも、一層高い輝度を得ることができる。
また、好適には、前記第1添加物Prの添加量は前記母体100(mol%)に対して0.003〜0.05(mol%)の範囲である。このようにすれば、低速電子線励起の場合にも一層高い輝度を得ることができる。発光中心であるPr添加量が0.003(mol%)未満または0.05(mol%)を越えると、紫外線や1(kV)以上の高速電子線で励起すれば高輝度が得られる場合があるものの、低速電子線励起では低輝度に止まる。Pr濃度が高くなり過ぎると濃度消光により輝度が低下し、Pr濃度が低くなり過ぎると発光中心の数が少なくなるので輝度が低下するためと考えられる。一層好適には、Pr添加量は0.008〜0.023(mol%)の範囲内の値である。
また、好適には、前記第2添加物Znの添加量は、前記母体100(mol%)に対して1〜5(mol%)の範囲内である。このようにすれば、低速電子線励起の場合にも一層高い輝度が得られる。
また、本発明のCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体は、好適には、(a)CaTiO3から成る母体を構成するための母体原料と、Prを含む第1添加物原料と、Znを含む第2添加物原料と、RbおよびCsの少なくとも一方を含む少なくとも一種の第3添加物原料とを混合する混合工程と、(b)得られた混合物を1050〜1250(℃)の範囲内、好適には、1050〜1200(℃)の範囲内、更に好適には、1100〜1150(℃)の範囲内の所定の焼成温度で焼成する焼成工程とを、含む工程により製造される。
このようにすれば、混合工程において、母体原料、第1添加物原料、第2添加物原料、および第3添加物原料が混合され、焼成工程において、その混合物が1050〜1250(℃)の範囲内の温度で焼成される。そのため、長寿命を有し且つ低速電子線で励起しても高輝度で発光する酸化物蛍光体が得られる。なお、第2添加物原料としては、例えばZnS等の硫化物が好適に用いられる。また、第3添加物原料としては、例えばRb2CO3やCs2CO3等の炭酸塩が好適に用いられる。
また、好適には、前記焼成工程に先立って前記混合物を前記焼成温度よりも50〜150(℃)だけ低い所定温度で焼成する一次焼成工程を含み、その焼成工程は、その一次焼成工程により得られた仮焼物に焼成処理を施すものである。このようにすれば、母体であるCaTiO3に添加元素が一層均一に拡散する。このため、一次焼成工程を実施しない場合に比較して輝度が一層高められる利点がある。なお、Prの濃度分布に偏りがあると、高濃度の部分では濃度消光が生じ易くなる一方、低濃度の部分でも発光中心の不足により輝度が低くなるため、全体の発光強度が低下する。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の一実施例の蛍光体の製造方法の概略を説明するための工程図である。この図1を参照して本発明の蛍光体の一例であるCaTiO3:Pr,Zn,Rb蛍光体の製造方法を説明する。先ず、原料混合工程P1では、この蛍光体の出発原料となる適当な化合物、例えば、CaCO3、TiO2、PrCl3、ZnS、Rb2CO3を、製造しようとする蛍光体の組成に応じてそれぞれ秤量し、ボールミルや乳鉢等を用いて十分に混合する。混合比は、例えば、Ca/Ti=0.99(モル比)、CaTiO3に対して、Pr添加量が0.003〜0.05(mol%)の範囲内、Zn添加量が1〜5(mol%)の範囲内、Rb添加量が1〜8(mol%)の範囲内である。
次いで、一次焼成工程P2において、混合した原料(混合物)を、例えば純度99.5(%)以上のアルミナ製坩堝に入れ、例えば大気中において、1100(℃)程度の最高保持温度で6時間程度の一次焼成(仮焼)処理を施す。
次いで、焼成工程P3では、仮焼物にそのまま1150(℃)程度の最高保持温度で3時間程度の焼成処理を施す。これにより、前記出発原料から下記(1)に示される化学反応により、CaTiO3:Pr,Zn,Rbが合成される。粉砕工程P4では、この合成された蛍光体を、例えばアルミナ乳鉢等を用いて平均粒径3(μm)程度の大きさに粉砕する。
CaCO3+TiO2+PrCl3+ZnS+Rb2CO3 → CaTiO3:Pr,Zn,Rb ・・・(1)
次いで、水洗工程P5においては、粉砕した蛍光体粉末を精製水中に分散することによって水溶性の残留分を溶解する。前記出発原料のうちPrCl3、Rb2CO3は水に可溶である一方、合成された蛍光体や他の原料は不溶であるため、未反応のPrCl3、Rb2CO3のみが溶解することになる。
次いで、篩い分け工程P6においては、蛍光体を精製水に分散させたまま、例えば#305程度の篩を通すことによって粗大粒子を除去し、その後、適当な時間だけ静置して蛍光体粒子を沈降させる。所定の時間の後、上澄み液をピペット等で吸い取って除去する。これにより、上澄み液中に含まれている水溶性残留分(すなわち原料中の可溶成分)が除去される。この処理を水溶性残留分が完全に除去されるように、必要に応じて複数回行う。上澄み液を除去した後、残った蛍光体粒子を、乾燥工程P7において例えば120(℃)程度の温度で5時間程度乾燥し、その後、解砕工程P8において、得られた固形物をアルミナ製乳鉢等を用いて3(μm)程度の粒径に解砕することにより、CaTiO3:Pr,Zn,Rb蛍光体粉末が得られる。
次に、上記のように合成した蛍光体の特性を評価した結果を説明する。この評価に際しては、蛍光体粉末にその導電性を補うための適量のIn2O3粉末を混合し、更に、有機バインダおよび有機溶剤等から成るビヒクルと混合して蛍光体ペーストを調製した。In2O3の混合量は、蛍光体粉末自体の導電性および蛍光体層に要求される導電性に応じて適宜定められるものであるが、例えば、蛍光体粉末100(重量%)に対して5〜15(重量%)程度である。調製したペーストを、例えば表示装置において電子の射出方向に配置される表示面上に適当な厚さ寸法で塗布し、蛍光体層を形成して評価した。評価した表示装置は、例えば、図2〜図4に示されるような構造を備えた蛍光表示管10である。
上記の図2は、本発明の蛍光表示装置の一例である蛍光表示管10を一部を切り欠いて示す斜視図である。図2において、蛍光表示管10は、所定の発光パターンに形成された蛍光体層22を複数個所に備えたガラス、セラミックス、琺瑯などの絶縁体材料製の基板12と、枠状に形成されたガラス製のスペーサ14と、透明なカバー・ガラス板16と、複数本の陽極端子18p、複数本のグリッド端子18g、およびカソード端子18kとを備えたものである。それら基板12およびカバー・ガラス板16がスペーサ14を介して相互にガラス封着されることにより長手平箱状の気密容器が構成され、その内部にそれらの部材により囲まれた真空空間が形成されている。
基板12の表示面20には、種々の形状に形成された多数の蛍光体層22が備えられ、各々グリッド電極24および補助グリッド電極26により囲まれている。この補助グリッド電極26は、例えばグリッド電極24と電気的に絶縁され且つ全面共通に設けられている。また、これらグリッド電極24および補助グリッド電極26は、表示面20に設けられたグリッド配線30,32、およびその長辺に沿って設けられた多数の端子パッドを介して前記のグリッド端子18gに接続されている。
また、基板12の両端部には、前記カソード端子18kを備えた一対の端子部材34が固設されており、これに固着されたアンカ36および図示しないサポート間に直熱型カソード(陰極)として機能する細線状の複数本のフィラメント(フィラメント・カソード)38が基板12の長手方向に平行であって基板12の表示面20から離隔した所定の高さ位置となるように張設(すなわち、蛍光体層22の上方に架設)されている。このフィラメント38は、表面に電子放出層として(Ba,Sr,Ca)O等の仕事関数の低いアルカリ土類金属の酸化物固溶体がコーティングされたタングステン(W)ワイヤ等から成るものである。なお、蛍光表示管10には、気密容器内の真空度を高めるためのゲッタや、気密容器が形成された後に排気して内部を真空にするための排気管或いは排気穴等が備えられているが、これらは省略した。
図3は、上記表示面20の一部を拡大して詳細に示す図であり、図4は、その断面の要部を更に拡大して示す図である。表示面20には、例えば厚膜導体から成る陽極配線40が陽極端子18pに接続されるように設けられており、その上には、スルーホール42を適宜備えた厚膜ガラス材料等から成る絶縁体層44が固着されている。絶縁体層44の上には、蛍光体層22よりも若干大きい平面形状のグラファイト等から成る陽極46がスルーホール42を介して陽極配線40と導通する位置に形成されている。蛍光表示管10においては、前記蛍光体層22はこの陽極46上に形成される。また、蛍光体層22の周囲には、例えば厚膜ガラス材料製のリブ状壁48,50が立設されている。前記のグリッド電極24および補助グリッド電極26は、例えば厚膜導体から成るものであって、これらリブ状壁48,50の頂部に設けられている。
このように構成された蛍光表示管10において、上記フィラメント38から放出された熱電子は、その零(V)のフィラメント38に対して例えば20(V)程度の正電圧が印加されたグリッド電極24により加速されるので、例えば、グリッド電極24に順次に加速電圧を印加して走査すると共にその走査に同期して所望の蛍光体層22が接続された陽極配線40に正電圧を印加すると、その蛍光体層22に熱電子が衝突してその蛍光体層22が発光させられる。したがって、グリッド電極24の走査の一周期ごとに正電圧を印加する陽極配線40を選択することにより所望の発光表示を得ることができる。なお、蛍光体の評価に際しては、蛍光体層22に定常的に正電圧を印加することにより、常時点灯させた状態でその輝度を測定した。
図5は、CaTiO3100(mol%)に対して、Pr添加量を0.011(mol%)、Zn添加量を3(mol%)とし、Rb添加量を0〜8(mol%)の範囲で変化させて得られる蛍光体の輝度を評価した結果を表したものである。蛍光体には、導電性を補うためのIn2O3を適量添加した。なお、測定に際しては、蛍光表示管10のフィラメント電圧を3.5(V)、アノード電圧を26(V)、デューティ比を1/12とし、本実施例の蛍光体の可視光ピーク波長である614(nm)程度の赤色光の初輝度を測定した。また、寿命評価結果は省略するが、以下の各評価例の何れにおいても、従来のCaTiO3系蛍光体と同等の寿命を有している。
上記の図5において、Rb添加量が0(mol%)のデータは、Rbを添加しない従来のCaTiO3:Pr,Zn蛍光体の測定値である。この測定値とRbを添加した場合の測定値とを比較すれば、Rbを添加することによる輝度向上効果が明らかである。Rb無添加の場合には、80(cd/m2)程度の輝度であるが、1(mol%)添加では100(cd/m2)程度まで輝度が向上し、添加量が3(mol%)になると125(cd/m2)程度の輝度が得られる。すなわち、輝度が50(%)以上向上する。添加量が5(mol%)を超えると輝度が低下する傾向が認められるが、8(mol%)でも1(mol%)添加の場合と同程度以上の輝度が得られ、Rb無添加の場合よりも高輝度である。
なお、上記評価の範囲では、Rb添加効果を享受できる添加量の上限は見出せなかったが、僅かな添加量でも輝度が向上すること、および、少なくとも8(mol%)までの範囲では輝度が向上することが明らかとなった。
図6は、上記のRbに代えてCsを添加したCaTiO3:Pr,Zn,Cs蛍光体の輝度を前記蛍光体と同様にして評価した結果を示したものである。この蛍光体を製造するに際しては、前記図1に示される製造工程において、出発原料にRb2CO3に代えてCs2CO3を用いればよい。焼成過程における蛍光体の合成反応は、下記(2)の通りである。
CaCO3+TiO2+PrCl3+ZnS+Cs2CO3 → CaTiO3:Pr,Zn,Cs ・・・(2)
上記の図6に示されるように、Csが添加された組成においても、Rb添加の場合と同様な傾向が認められる。すなわち、Csを添加することで、その添加量が僅かであっても無添加の場合に比較して輝度が向上し、添加量が3(mol%)になると122(cd/m2)程度の輝度が得られる。また、添加量が5(mol%)を越える辺りから輝度が低下する傾向があるが、8(mol%)でも1(mol%)添加の場合と同程度以上の輝度が得られ、Cs無添加の場合よりも高輝度である。
したがって、Csを添加したCaTiO3:Pr,Zn,Cs蛍光体においても、添加量の上限は明らかではないが、僅かな添加量でも輝度が向上し、少なくとも8(mol%)までの範囲では輝度が向上することが明らかとなった。
上述したように、本実施例においては、CaTiO3にPrおよびZnを添加したCaTiO3:Pr,Zn系蛍光体において、RbまたはCsが更に添加されることから、従来に比較して一層高い輝度が得られる。
図7は、CaTiO3:Pr系蛍光体におけるPrの適正量を検討するための試験結果をまとめたものである。横軸はCaTiO3100(mol%)に対するPrの添加量を表している。この評価は、Alの添加量を0〜1.5(mol%)の範囲で変化させたCaTiO3:Pr,Al蛍光体について行ったものであるが、発光中心であるPrの添加量に対する輝度変化はZnを添加したCaTiO3:Pr,Zn蛍光体においても同様になる。
図7に示されるように、Al添加量が0.1〜1.0(mol%)の範囲では、Pr添加量が0.003〜0.05(mol%)の範囲において、50(cd/m2)以上の輝度を得ることができた。特に、Pr添加量が0.008〜0.023(mol%)の範囲では、肉眼で蛍光体の発光が十分に確認できる70(cd/m2)以上の高輝度を得ることができる。また、Alが0.3(mol%)の組成でPr添加量を0.011(mol%)にすると、110(cd/m2)を超える高輝度が得られる。
なお、Pr添加量が0.02(mol%)を超える領域では、Pr添加量が増えるに従ってなだらかに輝度が低下する傾向が見られ、0.05(mol%)を超えると輝度の低下が著しい。すなわち、Pr添加量が過少でも過多でも高輝度が得られず、0.003〜0.05(mol%)の範囲が適当である。
図8は、CaTiO3:Pr系蛍光体におけるZnの適正量を検討するための試験結果をまとめたものである。この評価は、前記図7に評価結果をまとめた蛍光体のAlに代えて、CaTiO3100(mol%)に対して0.13〜2.65(mol%)の範囲でZnを添加したCaTiO3:Pr,Zn蛍光体の初輝度を測定して行った。なお、Prの添加量は、上記図7の評価で最も良い結果の得られた0.011(mol%)とした。
上記の図8によれば、Zn添加量を0.13(mol%)以上にすることにより、50(cd/m2)以上の輝度が得られ、1.0(mol%)以上にすれば、70(cd/m2)以上の輝度が得られる。Zn添加量の上限値は明らかではないが、右上がりのグラフから予測するに、少なくとも5(mol%)までは十分に高い輝度に保たれるものと考えられる。すなわち、1〜5(mol%)の範囲が適切で、特に3(mol%)程度が好ましいと考えられる。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
本発明の一実施例の蛍光体の製造方法を説明する工程図である。 本発明の蛍光表示装置の一例である蛍光表示管の全体構成をカバー・ガラスの一部を切り欠いて示す図である。 図2の蛍光表示管の表示面の一部を拡大して蛍光体層を示す平面図である。 図2の蛍光表示管の断面の要部を拡大して構成を説明する図である。 本発明の一実施例の蛍光体においてRb添加量を変化させた場合の蛍光表示管の輝度を示す図である。 Cs添加量を変化させた場合の輝度を示す図である。 Pr添加量の最適範囲を定めるための評価試験結果を説明する図である。 Zn添加量の最適範囲を定めるための評価試験結果を説明する図である。

Claims (5)

  1. CaTiO3を母体とし、Prが第1添加物として、Znが第2添加物として、RbおよびCsの少なくとも一方(R)が第3添加物として、共に添加されたことを特徴とするCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体。
  2. 前記第3添加物の添加量は前記母体100(mol%)に対して1〜8(mol%)の範囲内である請求項1のCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体。
  3. 前記第1添加物の添加量は前記母体100(mol%)に対して0.003〜0.05(mol%)の範囲である請求項1または請求項2のCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体。
  4. 前記第2添加物の添加量は前記母体100(mol%)に対して1〜5(mol%)の範囲である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載のCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体。
  5. 前記請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載されたCaTiO3:Pr,Zn,R蛍光体を発光源として備えたことを特徴とする蛍光表示装置。
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