JP2009296974A - パンを素材とした食品の製造方法、パンを素材とした食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パンからなり、厚さが8.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層1を有し、外層1が直線Aで一部除去されて外周部に内層2が露出している部分を有する素材を用意する。この素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が3.0質量%以下である、パンを素材とした食品を得る。
【選択図】図2
Description
最近のラスクは、個別包装されて販売されている。このラスクは、フランスパンを8.0mm以上12.0mm以下の厚さにスライスした後、オーブンで焼いて、水分含有率を3.0質量%以下としている。水分含有率を3.0質量%以下とすることで、サクサクとした食感と香ばしさを有するラスクが得られるが、そのための乾燥工程で製品にヒビが入り、このヒビに起因して運搬等の流通時にラスクに割れが生じることがある。割れたラスクは商品価値が損なわれるため、割れを生じにくくすることが求められている。
社団法人全国調理師養成施設協会編、改訂調理用語辞典、図書印刷株式会社、1998年12月25日、p1241-1242
本発明の方法において、前記素材は、外周の50%の長さで外層が除去されるように切断されているものが好ましい。この素材は、例えば、外層が外周部全体にあるパンを、1.0mm以上12.0mm以下の範囲の厚さでスライスするとともに、スライス面に垂直な直線でスライス面が二分の一になるように切断することで得られる。
本発明はまた、パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法を提供する。
また、厚さが1.0mm以上12.0mm以下のパンを、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率を5.0質量%以下にしているため、サクサクとした食感と香ばしさが確保される。素材の厚さは5.0mm以上12.0mm以下であることが好ましく、8.0mm以上12.0mm以下であることがより好ましい。また、加熱後の水分含有率を3.0質量%以下にすることが好ましい。
本発明の方法においては、前記パンとしてフランスパンを用いることが好ましい。
本発明はまた、本発明の方法で製造されたパンを素材とした食品を提供する。
[第1実施形態]
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
カット割合が10%のサンプルは、77個中4個にひびが生じず(図6)、73個に図7に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が30%のサンプルは、88個中39個にひびが生じず(図9)、49個に図10に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が40%のサンプルは、73個中42個にひびが生じず(図11)、31個に図12に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
これらの結果を図15と図16にグラフで示す。図15は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図16は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が13.1%で、10%カットサンプルおよび20%カットサンプルよりは多かったが、30%以上カットされたサンプルより少なかった。また、10%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの全数が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が91.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが8.2%であった。なお、カットなしのサンプルの場合、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が7.1%であった。
よって、スライス面に垂直で短軸に平行な直線で、外周の10%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図17に示すように、スライス面に垂直で長軸に平行な直線Bで切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。直線Bによる切断位置を変えることで、切断された外層1の外周の長さL1 を変え、この長さL1 の切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
カットなしのサンプルは、59個中6個にひびが生じず(図18)、7個に図19に示すような縦ヒビ(スライス面内の中心部付近に短軸方向に延びて入るヒビ)が生じ、46個に図20に示すような周辺ヒビ(スライス面内の外周に近い部分に外周に沿って入るヒビ)が生じた。
カット割合が20%のサンプルは、72個中9個にひびが生じず(図24)、5個に図25に示すような縦ヒビが生じ、58個に図26に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が30%のサンプルは、74個中16個にひびが生じず(図27)、2個に図28に示すような縦ヒビが生じ、56個に図29に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が50%のサンプルは、74個の全数にひびが生じなかった(図32)。
これらの結果を図33と図34にグラフで示す。図33は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図34は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が10.2%で、10%以上カットされているサンプルより少なかった。また、10%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの90%以上が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが13.2%であった。なお、縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合は、カットなしのサンプルが11.9%、10%カットのサンプルが7.6%、20%カットのサンプルが6.9%であり、であった。30%カットのサンプルが2.7%であり、40%カットのサンプルが0%であり、50%カットのサンプルが0%であった。
よって、スライス面に垂直で長軸に平行な直線で、外周の10%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図35に示すように、スライス面に垂直で長軸および短軸に交差する斜めの直線C1 〜C5 で切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。切断ラインを直線C1 〜C5 に変えることで、切断された外層1の外周の長さを変え、この長さの切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)が10%、20%、30%、40%、50%とされた素材を用意した。
各素材を、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分間加熱した。加熱後の素材を常温の室内に6時間放置した後の状態を目視で観察して、ヒビが生じているかどうかを調べた。また、この状態での素材の水分含有率は2.9質量%以下であり、サクサクとした食感と香ばしさが確保されていた。
カット割合が10%のサンプルは、49個中9個に図36に示すような縦ヒビが生じ、40個に図37に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が20%のサンプルは、60個中5個にひびが生じず(図38)、5個に図39に示すような縦ヒビが生じ、50個に図40に示すような周辺ヒビが生じた。
カット割合が40%のサンプルは、91個中73個にひびが生じず(図44)、18個に図45に示すような周辺ヒビが生じ、縦ヒビが生じたサンプルはなかった。
カット割合が50%のサンプルは、86個の全数にひびが生じなかった(図46)。
これらの結果を図47と図48にグラフで示す。図47は、各サンプルごとに、全数中のヒビなしサンプルの割合を示すグラフである。図48は、各サンプルごとに、ヒビありサンプル全数中の「周辺ヒビ入り」サンプルの割合を示すグラフである。
カットなしのサンプルでは、ヒビなしサンプルの割合が10.2%で、10%カットサンプルおよび20%カットサンプルよりは多かったが、30%以上カットされたサンプルより少なかった。また、20%以上カットされているサンプルでは、ヒビ有りサンプルの88.4%以上が周辺ヒビ入りサンプルであったのに対して、カットなしのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が86.8%であり、縦ヒビ入りサンプルが13.2%であり、10%カットのサンプルは周辺ヒビ入りサンプルの割合が81.6%であり、縦ヒビ入りサンプルが18.4%であった。
すなわち、20%以上カットされているサンプルは、ヒビが発生していないか、発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの発生率が高く、割れにつながりやすい縦ヒビの発生率は低い(縦ヒビ入りサンプルの全数中の割合が0〜8.9%)。
よって、スライス面に垂直で長軸および短軸と交差する直線で、外周の20%以上の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これを、図49に示すように、スライス面に垂直で短軸に平行な2本の直線D1 ,D2 で切断する。これにより、外層1が一部除去されて外周部に内層2が露出する。この実施形態では、切断された外層1の外周の長さL1 ,L2 の、切断前の外周の長さ(全周)に対する割合(カット割合)がそれぞれ20%となるようにし、全体で40%カットされた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のままカットしていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
よって、スライス面に垂直で短軸に平行な2本の直線で、両端を外周の20%ずつ合計40%の長さで外層が除去されて内層が露出するようにカットした素材を、乾燥した空気で加熱することで、割れが生じにくいラスク(パンを素材とした食品)が得られる。
図1に示すように、断面がほぼ楕円形(長軸6.9〜7.3mm、短軸4.7〜5.0mm)であり、厚さ9.41mm〜10.57mmにスライスされたフランスパンを用意した。このスライスされたフランスパンは外周部のみに茶色の外層を有する。
これに、図52に示すように、短軸に平行で上側の外層(厚さ1mm)から内層に至る長さ3mmの切り込みを入れた素材と、図53に示すように、長軸に平行で右側の外層(厚さ1mm)から内層に至る長さ3mmの切り込みを入れた素材を用意した。また、比較例の素材として、図1の状態のまま切り込みを入れていないものを用意した。各素材の水分含有率は28.0質量%である。
図52のように上側に切り込みを入れたサンプルは、107個中18個にひびが生じず、33個に縦ヒビが生じ、56個に周辺ヒビが生じた。すなわち、ヒビなしサンプルの全数中の割合が16.8%であり、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が62.9%であった。
このように、切り込みを入れたサンプルは切り込みを入れないサンプルよりも、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が高った。また、上側切り込みと右側切り込みとでは右側切り込みのサンプルの方が、ヒビありサンプル全数中の周辺ヒビ入りサンプルの割合が高かった。すなわち、切り込みを入れることで、ヒビが発生していても割れにつながりにくい周辺ヒビの割合が高くなる。
なお、第1〜第4実施形態では、フランスパンをスライスした後に、スライス面に垂直に切断することで外層の一部を除去しているが、スライスと外層除去のための切断を一度に行える構造のカッターを用いて、一度に行ってもよい。
また、パンを素材とした食品の種類に応じ、素材のスライス面に所望の調味料等を載せたものを乾燥した空気で加熱することで、味のついた「パンを素材とした食品」を得ることができる。
第1実施形態と同じ6種類の素材を用いて、外層をカットした素材の加熱時間を短くして得られたものの水分含有率を測定した。
外層をカットしていない素材は、第1実施形態と同じように、上下に熱源のあるオーブンの網の上にスライス面が水平になるように置き、220〜230℃の熱風(乾燥した空気)で6分00秒間加熱した後に、オーブンから取り出して室温まで冷ましたサンプルを粉々に砕き、水分計を使って水分含有率を測定した。具体的には、粉々に砕いたサンプルを105℃に10分間保持し、その間に蒸発した水分量から水分含有率を算出した。その結果、水分含有率は2.9質量%であった。
外層を30%カットした素材は、加熱時間を5分15秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.9質量%であった。外層を40%カットした素材は、加熱時間を5分00秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.6質量%であった。外層を50%カットした素材は、加熱時間を4分45秒間にし、それ以外は同じ方法で加熱し、同じ方法で水分含有率を測定したところ、2.7質量%であった。
この結果から、外層の一部をカットすることで、カットしない場合と比較して、同じ水分含有率にするための加熱時間を短くすることができるため、生産コストを低減できる効果も有する。
パンを素材とした食品の一種であるラスクは、サクサクとした軽い食感であることが望まれるため、以下の方法で食感試験を行った。
図54に示すように、第1実施形態で得られたカットなしのサンプル(A)と、カット割合が50%のサンプル(B)と、サンプルAのほぼ相似形でサンプルBとほぼ同じ表面積で同じ厚さで同じ方法で得られたサンプル(C)を用意した。これらについて、レオメータを用い、割れるのに必要なエネルギーと力を測定した。この測定値はサンプルの硬さに比例するため、この測定値が低いほど軽い食感となる。それぞれ30個について測定して平均値を算出した。その結果を図55と図56に示す。
また、サンプルA〜Cを50人に試食していただき、食感と食べやすさについて聞いたところ、以下の結果が得られた。
食感について
Aが最も良い:4人(8%)
Bが最も良い:30人(60%)
Cが最も良い:15人(30%)
変わらない:1人(2%)
食べやすさについて
Aが最も良い:1人(2%)
Bが最も良い:31人(62%)
Cが最も良い:18人(36%)
変わらない:0人(0%)
このように、本発明の実施例に相当するサンプルBが食感および食べやすさのいずれについても高い評価を得られた。
2 内層
A 切断ライン
B 切断ライン
C1 〜C5 切断ライン
D1 ,D2 切断ライン
Claims (6)
- パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層が一部除去されて外周部に内層が露出している部分を有する素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法。
- 前記素材は、外周の10%以上の長さで外層が除去されるように切断されている請求項1記載の食品の製造方法。
- 前記素材は、外周の50%の長さで外層が除去されるように切断されている請求項2記載の食品の製造方法。
- パンからなり、厚さが1.0mm以上12.0mm以下で、外周部のみに茶色の外層を有し、外層から内層に至る切り込みが入れてある素材を、乾燥した空気で加熱することで、水分含有率が5.0質量%以下である「パンを素材とした食品」を得る食品の製造方法。
- 前記パンはフランスパンである請求項1〜4のいずれか1項に記載の食品の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で製造されたパンを素材とした食品。
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2008
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