JP2009296834A - モータ制御装置 - Google Patents

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大二郎 滝沢
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Abstract


【課題】2相環状巻線による3相ステータを具備するモータの結線状態を変更すること無しにトルク特性を容易に可変とする。
【解決手段】モータ制御装置50は、逆起電圧位相差が電気角で60°のU相およびW相環状巻線により3相起磁力を発生するステータを備える3相のモータ1に対して、U相およびW相環状巻線に対して通電位相差が電気角で120°の通電をおこなう平衡通電と、U相およびW相環状巻線に対して通電位相差が電気角で60°の通電をおこなう変則通電とを、切り替えて実行可能であり、対的に大きな最大トルクが要求される場合に変則通電を実行し、相対的に小さなトルクリップルが要求される場合に平衡通電を実行する。
【選択図】図5

Description

本発明は、モータ制御装置に関する。
従来、例えば2相環状巻線による3相ステータにおいて、通常の3相巻線による3相ステータに比べて、巻線ターン数を(√3)倍に変更し、通電位相を所定位相だけずらすことによって、同等の電力を発生させるモータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006−280188号公報
ところで、上記特許文献1に係るモータにおいては、モータの結線状態を変更すること無しに通電制御によってトルク特性を可変とすることが望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、2相環状巻線による3相ステータを具備するモータの結線状態を変更すること無しにトルク特性を容易に可変とすることが可能なモータ制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係るモータ制御装置は、2相巻線(例えば、実施の形態でのU相およびW相環状巻線14,15)により3相起磁力を発生するステータ(例えば、実施の形態でのステータ10)を備えるモータ(例えば、実施の形態でのモータ1)を制御するモータ制御装置であって、前記2相巻線の逆起電圧位相差と同じ通電位相差の通電をおこなう変則通電手段(例えば、実施の形態でのステップS05)と、前記2相巻線の逆起電圧位相差と異なる通電位相差の通電をおこなう平衡通電手段(例えば、実施の形態でのステップS04)とを備える。
さらに、本発明の第2態様に係るモータ制御装置では、前記2相巻線の逆起電圧位相差は電気角で60°であり、前記平衡通電手段は前記2相巻線に対して前記通電位相差が電気角で120°の通電をおこない、前記変則通電手段は前記2相巻線に対して前記通電位相差が電気角で60°の通電をおこなう。
さらに、本発明の第3態様に係るモータ制御装置は、前記変則通電手段による通電時に3相に印加する電圧の位相および振幅を相互インダクタンスの電圧成分により補正する補正手段(例えば、実施の形態でのステップS24)を備える。
さらに、本発明の第4態様に係るモータ制御装置は、相対的に大きな最大トルクが要求される場合に前記変則通電手段を選択し、相対的に小さなトルクリップルが要求される場合に前記平衡通電手段を選択する通電切替手段(例えば、実施の形態でのステップS03)を備える。
さらに、本発明の第5態様に係るモータ制御装置は、前記2相巻線以外の相の電圧指令を変動させることで前記2相巻線に印加する電圧の振幅を変調する変調手段(例えば、実施の形態でのステップS27)を備える。
さらに、本発明の第6態様に係るモータ制御装置は、パルス幅変調信号により前記2相巻線への通電を順次転流させるインバータを備え、前記インバータは2相独立のHブリッジ回路(例えば、実施の形態でのブリッジ回路51a)を備える。
本発明のモータ制御装置によれば、2相巻線の逆起電圧位相差が所定位相差となる結線状態を保持した状態で、2相巻線の逆起電圧位相差と異なる通電位相差の通電をおこなうことで3相の平衡起磁力を発生する平衡通電と、2相巻線の逆起電圧位相差と同じ通電位相差の通電をおこなうことで最大のトルクを発生する変則通電とを、容易に切り替えることができる。
さらに、本発明の第2態様に係るモータ制御装置によれば、2相巻線の逆起電圧位相差は電気角で60°であることから、平衡通電手段による通電位相差が電気角で120°の平衡通電では、各相間の通電位相差が120°であることを前提とする通常のベクトル制御の処理を流用することができ、制御処理が複雑化することを抑制することができる。
また、変則通電手段による変則通電では、2相巻線の逆起電圧位相差と同じ通電位相差の電気角で60°の通電をおこなうことで、最大のトルクを発生させることができる。
さらに、本発明の第3態様に係るモータ制御装置によれば、変則通電手段による変則通電において、2相巻線での相互インダクタンス成分の位相差が逆起電圧位相差と異なることに起因して2相巻線に印加する電圧の位相差が逆起電圧位相差からずれてしまう場合であっても、補正手段によって適切に補正をおこなうことができる。
さらに、本発明の第4態様に係るモータ制御装置によれば、相対的に小さなトルクリップルが要求される場合には3相の平衡起磁力を発生する平衡通電をおこない、相対的に大きな最大トルクが要求される場合には2相巻線の逆起電圧位相差と同じ通電位相差の変則通電をおこなうことにより、モータの運転状態に対する要求に応じて適切な運転をおこなうことができる。
さらに、本発明の第5態様に係るモータ制御装置によれば、2相巻線以外の相の電圧指令を変動させることで2相巻線に印加する電圧の振幅を電源電圧に応じた最大の振幅にすることができる。
さらに、本発明の第6態様に係るモータ制御装置によれば、例えばインバータに3相ブリッジ回路を備える場合には、変則通電において2相巻線以外の相の電流の振幅が2相巻線の電流の振幅よりも大きくなることに対応して、この電流集中に対応した電流定格の増大が必要となることに対して、2相巻線に対する2相独立のHブリッジ回路を備えることによって電流集中の発生を防止することができ、特定の相の電流定格のみを増大させる必要が生じることを防止し、インバータの構成に要する費用が増大することを防止することができる。
以下、本発明のモータ制御装置の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に係るモータ1は、例えばハイブリッド車両や燃料電池車両や電動車両等の車両に搭載され、例えば内燃機関Eと共に車両の駆動源としてモータ1を備えるハイブリッド車両において、内燃機関Eとモータ1とトランスミッションT/Mとを直列に直結した構造のパラレルハイブリッド車両では、少なくとも内燃機関Eまたはモータ1の何れか一方の駆動力はトランスミッションT/Mを介して車両の駆動輪W,Wに伝達されるようになっている。
また、車両の減速時に駆動輪W,W側からモータ1に駆動力が伝達されると、モータ1は発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車体の運動エネルギーを電気エネルギー(回生エネルギー)として回収する。さらに、内燃機関Eの出力がモータ1に伝達された場合にもモータ1は発電機として機能して発電エネルギーを発生する。
このモータ1は、例えば図1から図3に示すように3相のクローポール型モータであって、複数の永久磁石5a,…,5aを有するロータ5と、このロータ5を回転させる回転磁界を発生する複数相(例えば、U相,V相,W相の3相)のステータ10とを備え、ロータ5の回転軸の一端は内燃機関のクランクシャフトに連結され、他端はトランスミッションの入力軸に連結されている。
このロータ5において、複数の略長方形板状の永久磁石5a,…,5aは、例えばロータ5の外周部に周方向に所定間隔をおいて配置され、各永久磁石5aは厚さ方向(つまりロータ5の径方向)に磁化され、周方向で隣り合う永久磁石5a,5aは互いに磁化方向が異方向となるように、すなわち外周側がN極とされた永久磁石5aには、外周側がS極とされた永久磁石5aが周方向で隣接するように配置されている。
また、各永久磁石5aの外周面は、ロータ5の外周部に対向配置される略円筒状のステータ10の内周面に向かい露出している。
ロータ5を回転させる回転磁界を発生するステータ10は、U相およびV相およびW相からなる3相の各相毎のU相ステータリング11と、V相ステータリング12と、W相ステータリング13と、U相およびW相からなる2相のU相環状巻線14およびW相環状巻線15とを備えて構成されている。
U相ステータリング11は、例えば図2に示すように、略円環状のU相ヨーク21と、このU相ヨーク21の内周部の周方向Cに所定間隔を置いた位置から径方向R内方および軸線方向Pの他方に向かい突出し、径方向Rに対する断面形状が略長方形状に形成されたU相ティース22とを備えて構成され、U相ヨーク21およびU相ティース22からなるU相ステータリング11の周方向Cに対する断面形状が略L字状となるように構成されている。
V相ステータリング12は、例えば図2に示すように、略円環状のV相ヨーク23と、このV相ヨーク23の内周部の周方向Cに所定間隔を置いた位置から径方向R内方および軸線方向Pの一方および他方に向かい突出し、径方向Rに対する断面形状が略長方形状に形成されたV相ティース24とを備えて構成され、V相ヨーク23およびV相ティース24からなるV相ステータリング12の周方向Cに対する断面形状が略T字状となるように構成されている。
W相ステータリング13は、例えば図2に示すように、略円環状のW相ヨーク25と、このW相ヨーク25の内周部の周方向Cに所定間隔を置いた位置から径方向R内方および軸線方向Pの一方に向かい突出し、径方向Rに対する断面形状が略長方形状に形成されたW相ティース26とを備えて構成され、W相ヨーク25およびW相ティース26からなるW相ステータリング13の周方向Cに対する断面形状が略L字状となるように構成されている。
そして、各ステータリング11,12,13は、各ヨーク21,23,25が軸線方向Pに沿って積み重ねられるようにして接続されている。そして、例えば図3に示すように、複数の各ティース22,…,22および24,…,24および26,…,26が所定順序(例えば、順次、U相ティース22,V相ティース24,W相ティース26等)で周方向Cに沿って配列され、周方向Cで隣り合う各ティース22,24間には1相のU相環状巻線14が配置されるスロットが形成され、周方向Cで隣り合う各ティース24,26間には1相のW相環状巻線15が配置されるスロットが形成され、周方向Cで隣り合う各ティース22,26間には2相のU相環状巻線14およびW相環状巻線15が配置されるスロットが形成されている。
各環状巻線14,15は、例えば軸線周りの周面内でクランク状に蛇行しつつ周回するようにして、複数の各U相蛇行部31,…,31およびW相蛇行部32,…,32を備えて構成されている。
各蛇行部31,32の周方向Cの幅つまりコイルピッチは、例えば図3に示すように、電気角で120°(edeg)に設定され、各蛇行部31,32は互いに異なる方向(つまり互いの対向方向であって軸線方向Pの一方および他方)に向かい突出するように設けられ、U相環状巻線14とW相環状巻線15とは、電気角で240°(edeg)の位相差を有するようにして周方向Cに沿って相対的にずれた位置に配置されている。これにより、例えばU相蛇行部31に対して、周方向Cの一方側で隣り合うW相蛇行部32は電気角で240°(edeg)の位相差を有し、周方向Cの他方側で隣り合うW相蛇行部32は電気角で120°(edeg)の位相差を有することになる。そして、2相の各環状巻線14,15は、互いの対向方向に突出する互いの各蛇行部31,32が周方向Cに沿って交互に配列され、互いに交差しないように配置されている。
そして、U相環状巻線14のU相蛇行部31にはU相ステータリング11の1つのU相ティース22が配置され、W相環状巻線15のW相蛇行部32にはW相ステータリング13の1つのW相ティース26が配置され、周方向Cで隣り合うU相蛇行部31とW相蛇行部32との間にはV相ステータリング12の1つのV相ティース24が配置されている。
これにより、周方向Cで隣り合う各ティース22,24または24,26または22,26間を縫うようにして配置された2相の各環状巻線14,15は所謂電気角で120°(edeg)の短節波巻きをなすように形成されている。
ところで、例えば図4(a)に示すようなY字状の結線状態を有し、互いに120°の通電位相差の正弦波で通電される3相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータの電圧方程式は、例えば相抵抗を無視すると、各相交流電圧指令値Vu,Vv,Vwと、各相電流Iu,Iv,Iwと、各相の自己インダクタンスLと、相互インダクタンスMと、ロータの回転角速度ωと、誘起電圧定数Keと、時間tとにより、下記数式(1)に示すように記述される。
なお、下記数式(1)において、L=−2Mとし、漏れ磁束を無視した。
Figure 2009296834
この3相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータでは、通電位相差および逆起電圧位相差が120°であり、各相電力Pu,Pv,Pwは下記数式(2)に示すように記述される。なお、下記数式(2)において、(ωt=回転角度θ)とし、漏れ磁束を無視した。
Figure 2009296834
これにより、各相電力Pu,Pv,Pwを加算して得られる3相電力和は下記数式(3)に示すように記述され、回転角度θに応じて変化しない値となる。
Figure 2009296834
そして、上記数式(1)において、各相電流Iu,Iv,Iwは何れか2相の電流により記述できるため、例えばV相電流IvをU相電流IuおよびW相電流Iwにより記述して消去すると、各相交流電圧指令値Vu,Vv,Vwによる線間電圧(例えば、U相−V相間の線間電圧Vuv(=Vu−Vv)とW相−V相間の線間電圧Vwv(=Vw−Vv))は下記数式(4)に示すように記述される。
Figure 2009296834
ところで、上記数式(1)に示す3相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータの電圧方程式において、例えばV相の成分を除去したモデル(つまり2相巻線による3相のモータ)は、下記数式(5)に示すように記述される。
Figure 2009296834
先ず、上記数式(5)に示すモデルは、W相の巻線の向きを反転させる(つまり、W相の巻線を逆接続する)と、下記数式(6)に示すように記述される。
Figure 2009296834
次に、上記数式(6)に示すモデルは、各巻線のターン数nを(√3)倍に変更すると、下記数式(7)に示すように記述される。
Figure 2009296834
次に、上記数式(7)に示すモデルは、誘起電圧の位相の角度原点を90°(=π/2)だけ移動させ、U相の成分とW相の成分とを入れ替えると、下記数式(8)に示すように記述され、上記数式(4)と同等になる。
Figure 2009296834
この2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータでは、通電位相差が120°かつ逆起電圧位相差が60°であり、例えば図4(b)に示すように、V字状の結線状態の2相巻線に対して、U相の電流を30°進角、かつ、巻線が逆接続されたW相の電流を90°遅角として通電位相を設定することにより、各相電力Puv,Pwvは下記数式(9)に示すように記述される。なお、下記数式(9)において、ωt=回転角度θとし、漏れ磁束を無視した。
Figure 2009296834
これにより、各相電力Puv,Pwvを加算して得られる2相電力和は下記数式(10)に示すように記述され、上記数式(3)と同等になり、例えば図4(a)に示すような結線状態を有する3相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータの3相電力和と同等であって、回転角度θに応じて変化しない値となる。
つまり、通常の3相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータの巻線ターン数Nに対して、この2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータでは(√3)倍の巻線ターン数(√3N)にしているが、相電流Iの通電時の起磁力は(巻線ターン数N×相電流I)であって、巻線ターン数の増大分に相当する起磁力が発生していないものの、巻線が省略されたV相を含めて、各相の起磁力が同等となる。
Figure 2009296834
この2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータにおいて、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した状態で、各相の通電位相を互いに独立に制御するようにして任意の位相角度α,βを用いると、各相電力Puv,Pwvは下記数式(11)に示すように記述される。
Figure 2009296834
上記数式(11)において、U相電力Puvが最大となるのは位相角度αが0°(つまり、α=0°)の場合であって、W相電力Pwvが最大となるのは、位相角度βが(−60°)(つまり、β=−60°)の場合である。
これにより、各相電力Puv,Pwvを加算して得られる2相電力和の最大値は、下記数式(12)に示すように記述され、回転角度θに応じて変化する値となるが、回転角度θの1周期での平均値は(√3・ωKeI)となり、上記数式(10)に示す2相電力和に対して約1.155倍の値となる。
Figure 2009296834
つまり、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータにおいて、例えば図4(b)に示すようにU−W相間の通電位相差を120°に設定することで平衡起磁力を発生させる平衡通電と、例えば図4(c)に示すようにU−W相間の通電位相差を60°に設定することで変則起磁力を発生させる変則通電とを切り替えることにより、モータの平均トルクを可変とすることができる。
なお、変則通電においては、U−W相間の通電位相差が60°となることから、V相電流Ivの振幅が各相電流Iu,Iwの振幅の(√3)倍となる。
また、変則通電においては、逆起電圧位相差と通電位相差とが同等の値(つまり60°)に揃うことで、発生する電力は最大となるが、相対的にV相の起磁力が低下することに伴い、各相の起磁力が揃わずに、トルクリップルが増大することになる。
この実施形態によるモータ1を制御するモータ制御装置50は、例えば図5に示すように、パワードライブユニット(PDU)51と、バッテリ52と、制御部53とを備えて構成されている。
このモータ制御装置50において、複数相(例えば、U相、V相、W相の3相)のモータ1の駆動および回生作動は制御部53から出力される制御指令を受けてPDU51により行われる。
PDU51は、例えば図6に示すように、トランジスタのスイッチング素子を複数用いてブリッジ接続してなるブリッジ回路51aと、平滑コンデンサ51bとを具備するパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを備え、モータ1と電気エネルギーの授受を行う高圧系のバッテリ52が接続されている。
PDU51は、例えばモータ1の駆動時に、制御部53から出力されるスイッチング指令であるゲート信号(つまり、PWM信号)に基づき、PWMインバータの各トランジスタのオン(導通)/オフ(遮断)状態を切り替えることによって、バッテリ52から供給される直流電力を3相交流電力に変換する正弦波変調のPWM通電により、3相のモータ1の2相のU相およびW相環状巻線14,15への通電を順次転流させ、U相およびW相環状巻線14,15に交流のU相電流Iu及びW相電流Iwを通電する。
また、例えばモータ1の回生作動時などにおいてバッテリ52を充電する際には、制御部53においてモータ1の回転角度θの出力波形に基づいて同期がとられたパルスに応じてPWMインバータの各トランジスタをオン/オフ駆動させ、モータ1から出力される3相交流電力を直流電力に変換し、このパルスのデューティに応じた所定の電圧値をバッテリ52の正極側端子ptと負極側端子ntとの間に出力する。
PDU51のブリッジ回路51aは、各対をなすハイ側,ロー側U相トランジスタUH,UL、および、ハイ側,ロー側V相トランジスタVH,VL、および、ハイ側,ロー側W相トランジスタWH,WLを備えている。各ハイ側トランジスタUH,VH,WHはバッテリ52の正極側端子ptに接続されてハイサイドアームを構成し、各ロー側トランジスタUL,VL,WLはバッテリ52の負極側端子ntに接続されローサイドアームを構成しており、ハイサイドアームの各トランジスタとローサイドアームの各トランジスタとは、各対毎にバッテリ52に対して直列に接続されている。各トランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDUH,DUL,DVH,DVL,DWH,DWLが接続されている。
そして、ブリッジ回路51aのハイ側U相トランジスタUHのエミッタおよびロー側U相トランジスタULのコレクタには、U相環状巻線14の一方の入出力端子が接続され、ブリッジ回路51aのハイ側W相トランジスタWHのエミッタおよびロー側W相トランジスタWLのコレクタには、W相環状巻線15の一方の入出力端子が接続されている。
そして、ブリッジ回路51aのハイ側V相トランジスタVHのエミッタおよびロー側V相トランジスタVLのコレクタには、U相環状巻線14およびW相環状巻線15の各他方の入出力端子が接続されている。
制御部53は、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御を行うものであり、Id指令(Idref)及びIq指令(Iqref)に基づいて各相交流電圧指令値Vu,Vv,Vwを算出してPDU51へ出力すると共に、実際にPDU51からモータ1に供給される各相電流Iu,Iwをdq座標上に変換して得たd軸電流Id及びq軸電流Iqと、Id指令及びIq指令との各偏差がゼロとなるように制御を行う。
この回転直交座標をなすdq座標は、例えばロータ5の永久磁石5aによる界磁極の磁束方向をd軸(界磁軸)とし、このd軸と直交する方向をq軸(トルク軸)としており、モータ1のロータ5と共に同期して電気角速度ω(以下、単に、回転角速度ωと呼ぶ)で回転している。これにより、PDU51からモータ1の各相に供給される交流信号に対する電流指令として、直流的な信号であるId指令Idref及びIq指令Iqrefを与えるようになっている。
この制御部53は、例えば、フィルタ処理部71と、3相−dq変換部72と、回転数演算部73と、電流指令出力部74と、減算器75a,75bと、電流フィードバック制御部76と、dq−3相個別変換部77と、電圧振幅位相補正部78と、電流位相ずれ演算部79と、積分補償部80と、電流位相補正部81と、通電切替指令出力部82と、PWM信号生成部83とを備えて構成されている。
フィルタ処理部71は、モータ1の各環状巻線14,15に通電される各相電流Iu,Iwを検出する2つの電流センサ91,91により検出されたU相,W相電流に対する検出信号Ius,Iwsに対して、高周波成分の除去等のフィルタ処理を行い、各相電流Iu,Iwを抽出する。
3相−dq変換部72は、例えばロータ5の回転角度つまりロータ5の磁極位置を検出するレゾルバなどの回転センサ92から出力されるロータ5の回転角度θを用いて、静止座標上における電流である各相電流Iu,Iwを、モータ1の回転位相による回転座標すなわちdq座標上でのd軸電流Id及びq軸電流Iqに変換する。そして、3相−dq変換部72から出力されるd軸電流Id及びq軸電流Iqは減算器75a,75bへ出力されている。
3相−dq変換部72は、通電切替指令出力部82から出力される通電切替指令、つまり平衡通電または変則通電を切り替えて実行することを指示する指令信号に応じて、平衡通電に対する3相−dq変換処理または変則通電に対する3相−dq変換処理を切り替えて実行する。
平衡通電に対する3相−dq変換処理は、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、各相間の通電位相差が120°であることを前提とする通常のベクトル制御での変換処理と同等である。
これに対して、変則通電に対する3相−dq変換処理は、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、U−W相間の通電位相差を60°としており、任意の位相角度A,Bと任意の変換のスケーリング係数Kdqとにより下記数式(13)に示すように記述される変換式において、例えば下記数式(14)に示すように任意の位相角度αにより各相電流Iu,Iwを記述すると、下記数式(13)のd軸電流Idは下記数式(15)に示すように記述される。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
Figure 2009296834
下記数式(16)に基づき、上記数式(15)のd軸電流Idは下記数式(17)に示すように記述される。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
上記数式(17)においてd軸電流Idを直流的な信号とするためには、下記数式(18)に示すように、(ωt=回転角度θ)を含むcos成分がゼロとなる必要があり、これにより、下記数式(19)が成り立つ。そして、下記数式(19)に基づき、任意の位相角度A,Bは、下記数式(20)に示すように記述される。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
Figure 2009296834
上記数式(20)により、上記数式(13)は下記数式(21)に示すように記述される。
なお、下記数式(21)は下記数式(22)と同等であって、下記数式(22)において、例えばdq座標の設定あるいは回転センサ92でのゼロ点較正などに応じて任意に設定可能な位相角度A,A´に対して、q軸をd軸の90°進角に設定した場合(つまり、A´=A+90°)に相当している。
なお、位相角度A,A´に対して、q軸をd軸の90°遅角に設定した場合には(A´=A+90°)の代わりに(A´=A−90°)となる。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
以下に、変則通電に対する3相−dq変換処理の具体例として、d軸をU相の角度原点とし、q軸をd軸の90°進角とした場合について説明する。
上記数式(14)における位相角度αが90°(つまり、α=90°)のときに、d軸電流Id=0かつq軸電流Iq>0となることから、d軸電流Id=0により上記数式(17)は下記数式(23)に示すように記述される。
Figure 2009296834
上記数式(20)および上記数式(23)から下記数式(24)が成り立ち、位相角度A,Bの組み合わせは下記数式(25)に示すように記述される。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
また、q軸電流Iq>0により上記数式(13)のq軸電流Iqは下記数式(26)に示すように記述される。
上記数式(25)に示す位相角度A,Bの組み合わせに対して、下記数式(27)が成り立つことから、位相角度A=−30°かつ位相角度B=90°となり、一般化された変換式である上記数式(13)は、具体的な変換式として下記数式(28)に示すように記述される。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
Figure 2009296834
回転数演算部73は、回転センサ92から出力されるロータ5の回転角度θの検出信号からモータ1の回転数Nmを算出する。
電流指令出力部74は、例えば、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作に関するアクセル操作量やモータ1の回転数Nmなどに応じて必要とされるトルク値をモータ1に発生させるためのトルク指令Tqに基づき、PDU51からモータ1に供給する各相電流Iu,Iwを指定するための電流指令を演算しており、この電流指令は、回転する直交座標上でのId指令Idref及びIq指令Iqrefとして減算器75a,75bへ出力されている。
減算器75aはId指令Idrefとd軸電流Idとの偏差ΔIdを算出し、減算器75bはIq指令Iqrefとq軸電流Iqとの偏差ΔIqを算出し、各偏差ΔId及び偏差ΔIqを電流フィードバック制御部76へ出力する。
電流フィードバック制御部76は、例えばPI(比例積分)動作により、偏差ΔIdを制御増幅してd軸電圧指令値Vdを算出し、偏差ΔIqを制御増幅してq軸電圧指令値Vqを算出し、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqをdq−3相個別変換部77へ出力する。
dq−3相個別変換部77は、例えば回転センサ92から出力されるロータ5の回転角度θを用いて、dq座標上でのd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを、静止座標である3相交流座標上でのU相交流電圧指令値Vu及びV相交流電圧指令値Vv及びW相交流電圧指令値Vwに変換する。
dq−3相個別変換部77は、通電切替指令出力部82から出力される通電切替指令、つまり平衡通電または変則通電を切り替えて実行することを指示する指令信号に応じて、平衡通電に対するdq−3相個別変換処理または変則通電に対するdq−3相個別変換処理を切り替えて実行する。
平衡通電に対するdq−3相個別変換処理は、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、各相間の通電位相差が120°であることを前提として各相毎に個別に変換処理を行うものであって、例えば図7に示す制御目標位相差γが120°(つまり、γ=120°)とされる。そして、特に、U相およびW相に対しては、電流位相補正部81から出力される各相毎の各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)に応じて、各相毎にd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを補正し、補正により得たdq座標上での各指令値を各相毎に個別に静止座標である3相交流座標上でのU相交流電圧指令値Vu及びW相交流電圧指令値Vwに変換する。
また、変則通電に対するdq−3相個別変換処理は、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、各相間の通電位相差が60°であることを前提として各相毎に個別に変換処理を行うものであって、例えば図7に示す制御目標位相差γが60°(つまり、γ=60°)とされる。そして、特に、U相およびW相に対しては、電圧振幅位相補正部78から出力される各相毎の各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)と、電流位相補正部81から出力される各相毎の各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)とに応じて、各相毎にd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqを補正し、補正により得たdq座標上での各指令値を各相毎に個別に静止座標である3相交流座標上でのU相交流電圧指令値Vu及びW相交流電圧指令値Vwに変換する。
この変則通電においては、各自己インダクタンスLu,Lwと、各相互インダクタンスMuw,Mwuとにより、例えばU相逆起電圧位相を90°とした場合に下記数式(29)に示すように記述されるモータモデルの数式において、例えば下記数式(30)に示すように任意の位相角度αおよび電流Iaにより各相電流Iu,Iwを記述すると、モータモデルの数式は下記数式(31)に示すように記述される。
なお、下記数式(29),(31)においては、d軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqの補正を簡略化するためにV相交流電圧指令値Vvをゼロ(つまり、Vv=0)としている。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
Figure 2009296834
ところで、上記数式(31)において各相互インダクタンスMuw,Mwuをゼロ(Muw=Mwu=0)とした場合に対応するベクトル図(例えば、位相角度αが90°(つまり、α=90°)である図8(a))に示すように、U相交流電圧指令値Vuは、U相逆起電圧成分ωKe_uとU相自己インダクタンス成分ωLuIaとの合成電圧であり、W相交流電圧指令値Vwは、W相逆起電圧成分ωKe_wとW相自己インダクタンス成分ωLwIaとの合成電圧である。そして、各相間において、U相逆起電圧成分ωKe_uとW相逆起電圧成分ωKe_wとの位相差およびU相自己インダクタンス成分ωLuIaとW相自己インダクタンス成分ωLwIaとの位相差は60°であることから、各自己インダクタンスLu,Lw(例えば、図8(a)ではLu=Lw)および電流Iaの大きさに拘らずに、U相交流電圧指令値VuとW相交流電圧指令値Vwとの位相差も60°となる。
一方、各相互インダクタンスMuw,Mwuがゼロ以外(Muw=Lu/2≠0,Mwu=Lw/2≠0)である場合に対応するベクトル図(例えば、位相角度αが90°(つまり、α=90°)である図8(b))に示すように、U相交流電圧指令値Vuは、U相逆起電圧成分ωKe_uとU相自己インダクタンス成分ωLuIaとU相−W相間相互インダクタンス成分ωMuwIaとの合成電圧であり、W相交流電圧指令値Vwは、W相逆起電圧成分ωKe_wとW相自己インダクタンス成分ωLwIaとW相−U相間相互インダクタンス成分ωMwuIaとの合成電圧である。そして、各相間において、U相逆起電圧成分ωKe_uとW相逆起電圧成分ωKe_wとの位相差およびU相自己インダクタンス成分ωLuIaとW相自己インダクタンス成分ωLwIaとの位相差は60°であるのに対して、U相−W相間相互インダクタンス成分ωMuwIaとW相−U相間相互インダクタンス成分ωMwuIaとの位相差は(−60°)となることから、U相交流電圧指令値VuとW相交流電圧指令値Vwとの位相差は60°とはならずにずれてしまう。このため、各相互インダクタンスMuw,Mwuに応じて、U相交流電圧指令値VuとW相交流電圧指令値Vwとの振幅および位相を補正する必要が生じる。具体的には、後述するように、dq−3相個別変換部77は、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqに対して、各相互インダクタンスMuw,Mwuにより発生する各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)を作用させる補正をおこなう。
なお、平衡通電においては、各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)はゼロである。
また、この実施形態によるモータ1では、3相(U相、V相、W相)のうち2相のU相環状巻線14およびW相環状巻線15のみを備えることから、この2相間(つまり、U相−W相間)の磁気抵抗は、他の2相間(つまり、U相−V相間およびV相−W相間)の磁気抵抗に比べて小さくなることから、各相のインダクタンスに不整合が生じる。そして、このようなインダクタンスの不整合に起因して各相電流Iu,Iv,Iwの位相にずれが生じ、平衡通電ではU−W相間の通電位相差が120°からずれ、変則通電ではU−W相間の通電位相差が60°からずれることになる。このため、後述するように、dq−3相個別変換部77は、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqに対して、各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)を作用させる補正をおこなう。
例えば位相角度Aが(−30°)(つまり、A=−30°)である時にU相の角度原点をd軸とした場合での変換式は、任意の位相角度A,A´と、任意の係数Kadqと、各補正電圧指令値(Vdu,Vqu),(Vdw,Vqw)とに基づき、下記数式(32)に示すように記述される。なお、下記数式(32)において、V相交流電圧指令値Vvはゼロと仮定した。
Figure 2009296834
上記数式(32)において、d軸をU相の角度原点とし(つまり、A=−30°)、かつ、q軸をd軸の90°進角とした場合(つまり、A´=A+90°=60°)での変換式は、下記数式(33)に示すように記述される。
Figure 2009296834
そして、各補正電圧指令値(Vdu,Vqu),(Vdw,Vqw)は、各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)と、各電流補正項(Vdu_fb,ΔVqu_fb),(ΔVdw_fb,ΔVqw_fb)とに基づき、下記数式(34)に示すように記述される。
Figure 2009296834
電圧振幅位相補正部78は、変則通電に対して下記数式(35)により各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)を算出する。
つまり、例えば図8(b)に示すように、U相−W相間相互インダクタンス成分ωMuwIaはId指令Idref及びIq指令Iqrefに対して150°進角、W相−U相間相互インダクタンス成分ωMwuIaはId指令Idref及びIq指令Iqrefに対して30°進角であるから、各相互インダクタンスMuw,Mwuが互いに等しい(Muw=Mwu)として、各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)は、下記数式(35)に示すように記述される。
Figure 2009296834
なお、上記数式(35)において、電圧振幅位相補正部78は、相互インダクタンスMuwを、例えば予め実行する試験により得られる値に基づくフィードフォワード項としたり、例えば適宜の係数K(0<K<1)を各自己インダクタンスLu,Lwに作用させて得られる値(例えば、K・Lu)として、係数Kの最適値を適宜に演算する。
また、電流位相補正部81は、下記数式(36)により各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)を算出する。
つまり、各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)は、例えば積分ゲインkと、相抵抗rと、各自己インダクタンスLu,Lwに応じた自己インダクタンスL(例えば、2つのU相およびW相自己インダクタンスLu,Lwの平均値、あるいは、2つのU相およびW相自己インダクタンスLu,Lwのうち何れか大きい値または何れか小さい値など)とに基づき、下記数式(36)に示すように記述される。
Figure 2009296834
そして、上記数式(36)において、積分ゲインkは、フィードバックゲインKfbに基づき、下記数式(37)に示すように記述される。
Figure 2009296834
上記数式(36)において、モータ1の回転数Nmが増大すると、相抵抗rは(ωL)に比べて十分に小さく(つまり、r≪ωL)なることから、自己インダクタンスLの値の大小は積分ゲインkの値によって吸収されることになる。
つまり、制御目標位相差γ(平衡通電では120°(つまり、γ=120°)、変則通電では60°(つまり、γ=60°))からの位相ずれ角度δの検出値に対して、自己インダクタンスLとフィードバックゲインKfbとによるフィードバック処理がおこなわれて、各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)が演算されている。
電流位相ずれ演算部79は、位相ずれ角度δを、例えば図7に示すように、ロータ5の異なる回転角度θ,θでの各相の瞬時電流値Iu1,Iw1,Iu2,Iw2に基づき算出し、積分補償部80へ出力する。なお、各回転角度θ,θは、回転センサ92から出力される回転角度θにより得られる。
つまり、各相のインダクタンスの不整合に起因してU相電流IuとW相電流Iwとには、互いに逆方向の位相ずれ角度δが生じることから、各相電流Iu,Iwを正弦波状とすれば、U相電流IuおよびW相電流Iwは下記数式(38)に示すように記述される。
Figure 2009296834
そして、同一相で異なる適宜の回転角度θ,θでのU相電流IuおよびW相電流Iwの各瞬時電流値Iu,Iu,Iw,Iwは、例えば下記数式(39)に示すように記述されることから、U相の各瞬時電流値Iu,IuおよびW相の各瞬時電流値Iw,Iwに対して下記数式(40)が成り立つ。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
ここで、各電圧Vsu,Vcu,Vsw,Vcwを下記数式(41)に示すようにして定義すると、適宜の回転角度θ,θの差(θ−θ)の正弦値sin(θ−θ)≠0の場合に、これらの各電圧Vsu,Vcu,Vsw,Vcwと、上記数式(40)とに基づき、下記数式(42)に示すようにして、位相ずれ角度δの正弦値を算出することができ、さらに、位相ずれ角度δ≒0において、下記数式(43)に示すようにして、この位相ずれ角度δの近似値を算出することができる。
Figure 2009296834
Figure 2009296834
Figure 2009296834
積分補償部80は、上記数式(37)に示すように、電流位相ずれ演算部79にて算出される各相電流Iu,Iwの位相ずれ角度δを積分動作により制御増幅して積分ゲインkを算出し、電流位相補正部81へ出力する。
電流位相補正部81は、積分補償部80にて算出される積分ゲインkに基づき、各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)を算出し、dq−3相個別変換部77へ出力する。
電流位相補正部81は、モータ1の突極性を無視した場合におけるdq座標上での回路方程式に基づき、各相交流電圧指令値Vu,Vwおよび各相電流Iu,Iwの所定定常値からの変化に応じたd軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqとd軸電流Idおよびq軸電流Iqとの各変化ΔVd,ΔVq,ΔId,ΔIqを、例えば下記数式(44)に示すように近似する。
Figure 2009296834
そして、電流位相補正部81は、上記数式(44)に基づき、例えばU相電流Iuを進角させる際にd軸電流指令Idrefおよびq軸電流指令Iqrefをπ/2=90°(edeg)だけ位相を進める電圧変化(ΔVdu(fb),ΔVqu(fb))と、例えばW相電流Iwを遅角させる際にd軸電流指令Idrefおよびq軸電流指令Iqrefをπ/2=90°(edeg)だけ位相を遅らせる電圧変化(ΔVdw(fb),ΔVqw(fb))とを、例えば下記数式(45)に示すように記述する。
Figure 2009296834
そして、電流位相補正部81は、上記数式(45)と積分ゲインkとに基づき、各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)を、上記数式(36)により演算する。
dq−3相個別変換部77は、電流位相補正部81により算出された各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)によって各電圧指令値Vd,Vqを補正して得た値から変換処理によって各相交流電圧指令値Vu,Vwを算出することで、これらの各相交流電圧指令値Vu,Vwに応じた各相電流Iu,Iwを進角または遅角させることができる。
通電切替指令出力部82は、モータ1を搭載する車両の運転状態あるいは操作者による指示入力などに応じて、通電切替指令つまり平衡通電または変則通電を切り替えて実行することを指示する指令信号を出力する。
例えばモータ1の回生作動時などのように相対的に大きな最大トルクが要求される場合には変則通電の実行を指示し、例えばモータ1の始動時などのように相対的に小さなトルクリップルが要求される場合には平衡通電の実行を指示する。
PWM信号生成部83は、例えばモータ1の駆動時に正弦波状の各相電流を通電するために、各相交流電圧指令値Vu,Vv,Vwと三角波などのキャリア信号とを比較して、PDU51のPWMインバータの各トランジスタをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成する。
PDU51からモータ1の2相のU相およびW相環状巻線14,15に通電されるU相電流IuおよびW相電流Iwと、各相電流Iu,Iwから算出されるV相電流Iv(=−Iu−Iw)とは、平衡通電においては例えば図9(a)に示すように変化し、変則通電においては例えば図9(b)に示すように変化する。
つまり、平衡通電においては、U−W相間の通電位相差が120°であって、各相電流Iu,Iv,Iwの振幅は等しくなる。
一方、変則通電においては、U−W相間の通電位相差が60°であって、V相電流Ivの振幅が各相電流Iu,Iwの振幅の(√3)倍となる。
そして、3相−dq変換部72においては、平衡通電と変則通電とにおいて、3相−dq変換処理が切り替えられることから、平衡通電での各相電流Iu,Iwおよび変則通電での各相電流Iu,Iwに対して、例えば図9(c)に示すように、直流的なd軸電流Idおよびq軸電流Iqが得られることになる。
また、例えば図10に示すように、U相環状巻線14およびW相環状巻線15の各巻線ターン数を10ターンとし、通電電流を200(Arms)とした場合の平衡通電と変則通電との各相の起磁力(A・Turn)において、変則通電では、平衡通電に比べて、U相およびW相の波高値が約1.5倍に増大し、V相の波高値が約0.57倍に低下することが認められる。
また、例えば図11に示すように、変則通電においては、平衡通電に比べて、逆起電圧位相差と通電位相差とが同等の値(つまり60°)に揃うことで、通電電流に対する平均トルクが約13%増大することが認められる。
また、例えば図12に示すように、変則通電においては、平衡通電に比べて、相対的にV相の起磁力が低下することに伴い、トルクリップルがやや増大することが認められる。
また、図13には、変則通電においてId指令(Idref)及びIq指令(Iqref)を適宜に変更した場合の各線間電圧Vuv,Vwvおよび各相逆起電圧Vemf_u,Vemf_wおよび各相交流電圧指令値Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwおよびd軸電流Id及びq軸電流Iqおよびd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqのシミュレーションの結果を示した。
また、PWM信号生成部83は、変則通電においてd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqの補正を簡略化するためにdq−3相個別変換部77によってゼロとされたV相交流電圧指令値Vvを変動させるようにPWM変調をおこなう。
このPWM変調では、例えば下記数式(46)に示すように、V相交流電圧指令値Vv=ゼロでの各線間電圧Vuv,Vwv(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwと同等)に応じて、新たにV相交流電圧指令値Vvを設定することによって、例えば図14に示すように、各線間電圧Vuv,Vwvの振幅を、バッテリ52の端子電圧Vbによる値(Vb/2)から値(Vb)まで拡大させることができる。
例えば図14に示すように、このPWM変調の実行前(変調前)では、V相交流電圧指令値Vvがゼロ(つまり、Vv=0)であることに伴い、各線間電圧Vuv,Vwvの振幅の最大値は、各相交流電圧指令値Vu,Vwの振幅の最大値と同等である端子電圧Vbの(1/2)倍の値(Vb/2)となる。
一方、PWM変調の実行後(変調後)では、V相交流電圧指令値Vvが変動することに伴い、各相交流電圧指令値Vu,Vwの振幅の最大値は端子電圧Vbの(1/2)倍の値(Vb/2)であるのに対して、各線間電圧Vuv,Vwvの振幅の最大値は端子電圧Vbとなる。
Figure 2009296834
本実施の形態によるモータ制御装置50は上記構成を備えており、次に、このモータ制御装置50の動作、特に、平衡通電と変則通電とを切り替える処理について添付図面を参照しながら説明する。
先ず、図15に示すステップS01においては、例えば、運転者によるアクセルペダルの踏み込み操作に関するアクセル操作量やモータ1の回転数Nmなどに応じて必要とされるトルク値をモータ1に発生させるためのトルク指令Tqを取得する。
次に、ステップS02においては、モータ1の運転状態あるいはモータ1を搭載する車両の運転状態に係る各種信号(例えば、モータ1の運転モード(例えば、駆動あるいは回生まど)を示す信号、車両の運転モード(例えば加速あるいはクルーズ走行あるいは減速など)を示す信号など)を取得する。
次に、ステップS03においては、取得したトルク指令Tqまたは運転状態に基づき、変則通電の実行を許可する所定条件が成立しているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS04に進み、このステップS04においては、後述する平衡通電の処理を実行し、リターンに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS05に進み。このステップS05においては、後述する変則通電の処理を実行し、リターンに進む。
以下に、上述したステップS04での平衡通電の処理について説明する。
先ず、例えば図16に示すステップS11においては、2つの電流センサ91,91の出力に基づき、各相電流Iu,Iwを取得する。
そして、ステップS12においては、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、各相間の通電位相差が120°であることを前提とする3相−dq変換処理を実行する。
そして、ステップS13においては、3相−dq変換処理により算出されたd軸電流Id及びq軸電流Iqと、Id指令(Idref)及びIq指令(Iqref)との各偏差がゼロとなるように電流フィードバックの処理を実行する。
そして、ステップS14においては、各相のインダクタンスの不整合に起因して各相電流Iu,Iv,Iwの位相に生じるずれを補正するための電流補正フィードバックの処理を実行する。
そして、ステップS15においては、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、各相間の通電位相差が120°であることを前提として各相毎に個別に変換をおこなうdq−3相個別変換処理を実行する。
そして、ステップS16においては、dq−3相個別変換処理により算出された各相交流電圧指令値Vu,Vv,Vwと、三角波などのキャリア信号とを比較して、PDU51のPWMインバータの各トランジスタをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成して出力し、エンドに進む。
以下に、上述したステップS05での変則通電の処理について説明する。
先ず、例えば図17に示すステップS21においては、2つの電流センサ91,91の出力に基づき、各相電流Iu,Iwを取得する。
そして、ステップS22においては、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、各相間の通電位相差が60°であることを前提とする3相−dq変換処理を実行する。
そして、ステップS23においては、3相−dq変換処理により算出されたd軸電流Id及びq軸電流Iqと、Id指令(Idref)及びIq指令(Iqref)との各偏差がゼロとなるように電流フィードバックの処理を実行する。
そして、ステップS24においては、各相互インダクタンスMuw,Mwuに応じて、U相交流電圧指令値VuとW相交流電圧指令値Vwとの振幅および位相を補正する位相・振幅補正の処理を実行する。
そして、ステップS25においては、各相のインダクタンスの不整合に起因して各相電流Iu,Iv,Iwの位相に生じるずれを補正するための電流補正フィードバックの処理を実行する。
そして、ステップS26においては、逆起電圧位相差が60°となる結線状態を保持した2相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータ1において、各相間の通電位相差が60°であることを前提として各相毎に個別に変換をおこなうdq−3相個別変換処理を実行する。
そして、ステップS27においては、V相交流電圧指令値Vv=ゼロでの各線間電圧Vuv,Vwv(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwと同等)に応じて、新たにV相交流電圧指令値Vvを設定する変調の処理を実行する。
そして、ステップS28においては、dq−3相個別変換処理により算出された各相交流電圧指令値Vu,Vwと変調の処理により算出されたV相交流電圧指令値Vvと、三角波などのキャリア信号とを比較して、PDU51のPWMインバータの各トランジスタをオン/オフ駆動させるゲート信号(つまり、PWM信号)を生成して出力し、エンドに進む。
以下に、上述したステップS14およびステップS25での電流補正フィードバックの処理について説明する。
先ず、例えば図18に示すステップS31においては、上記数式(45)と積分ゲインkとに基づき、各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)を、上記数式(36)により演算する。
そして、ステップS32においては、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqに対して、各電流補正項(Vdu_fb,Vqu_fb),(Vdw_fb,Vqw_fb)を作用させて、各補正電圧指令値(Vdu,Vqu),(Vdw,Vqw)を算出し、エンドに進む。
以下に、上述したステップS24での位相・振幅補正の処理について説明する。
先ず、例えば図19に示すステップS41においては、上記数式(35)に基づき、各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)を算出する。
そして、ステップS42においては、d軸電圧指令値Vdおよびq軸電圧指令値Vqに対して、各電圧成分(ΔVdu,ΔVqu),(ΔVdw,ΔVqw)を作用させて、各補正電圧指令値(Vdu,Vqu),(Vdw,Vqw)を算出し、エンドに進む。
以下に、上述したステップS27での変調の処理について説明する。
先ず、例えば図20に示すステップS51においては、V相交流電圧指令値Vv=ゼロでの各線間電圧Vuv,Vwv(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwと同等)がゼロよりも大きいか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS55に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS52に進む。
そして、ステップS52においては、V相交流電圧指令値Vv=ゼロでの各線間電圧Vuv,Vwv(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwと同等)のうち何れか大きい方の(−1/2)倍の値を、新たにV相交流電圧指令値Vvとして設定する。
そして、ステップS53においては、U相交流電圧指令値VuにV相交流電圧指令値Vvを加算して得た値を、新たにU相交流電圧指令値Vuとして設定する。
そして、ステップS54においては、W相交流電圧指令値VwにV相交流電圧指令値Vvを加算して得た値を、新たにW相交流電圧指令値Vwとして設定し、エンドに進む。
また、ステップS55においては、V相交流電圧指令値Vv=ゼロでの各線間電圧Vuv,Vwv(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwと同等)がゼロよりも小さいか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS56に進み、このステップS56においては、V相交流電圧指令値Vv=ゼロでの各線間電圧Vuv,Vwv(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwと同等)のうち何れか小さい方の(−1/2)倍の値を、新たにV相交流電圧指令値Vvとして設定し、ステップS53に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS57に進み、このステップS57においては、V相交流電圧指令値Vv=ゼロでの各線間電圧Vuv,Vwv(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwと同等)の和の(−1/2)倍の値(つまり、各相交流電圧指令値Vu,Vwの平均値の負値)を、新たにV相交流電圧指令値Vvとして設定し、ステップS53に進む。
上述したように、本実施の形態によるモータ制御装置50によれば、2相の各環状巻線14,15の逆起電圧位相差が電気角で60°となる結線状態を保持した状態で、2相の各環状巻線14,15の逆起電圧位相差と異なる電気角で120°の通電位相差の通電をおこなうことで3相の平衡起磁力を発生する平衡通電と、2相の各環状巻線14,15の逆起電圧位相差と同じ通電位相差の通電をおこなうことで最大のトルクを発生する変則通電とを切り替えることによって、モータ1の運転特性を容易に切り替えることができる。
しかも、平衡通電では、各相間の通電位相差が120°であることを前提とする通常のベクトル制御の処理を利用して制御処理が複雑化することを抑制することができる。
さらに、変則通電において、2相の各環状巻線14,15でのU相−W相間相互インダクタンス成分ωMuwIaとW相−U相間相互インダクタンス成分ωMwuIaの位相差が逆起電圧位相差と異なることに起因して2相の各環状巻線14,15に印加する電圧の位相差が逆起電圧位相差からずれてしまう場合であっても、電圧振幅位相補正部78によって各環状巻線14,15に印加する電圧の位相差を適切に補正することができる。
さらに、相対的に小さなトルクリップルが要求される場合には3相の平衡起磁力を発生する平衡通電をおこない、相対的に大きな最大トルクが要求される場合には2相の各環状巻線14,15の逆起電圧位相差と同じ通電位相差の変則通電をおこなうことにより、モータ1の運転状態に対する各種要求の変化に応じて適切な運転をおこなうことができる。
例えば図21に示すように、駆動時に比べてモータ1に対する要求トルクの最大値が大きくなると共に、駆動時に比べてトルクリップルをイナーシャにより吸収可能であってトルクリップルの許容範囲が相対的に大きい回生時においては、変則通電を実行することにより、回生電力を増大させることができる。
さらに、2相の各環状巻線14,15の逆起電圧位相差が電気角で60°となる結線状態において、V相交流電圧指令値Vvを変動させるようにPWM変調をおこなうことで、各線間電圧Vuv,Vwvの振幅の最大値を、V相交流電圧指令値Vv=ゼロに対応する値(Vb/2)から、バッテリ52の端子電圧Vbまで増大させることができる。
なお、上述した実施の形態において、ブリッジ回路51aを構成する各トランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLの定格電流を互いに同等に設定することに限定されず、少なくともハイ側,ロー側V相トランジスタVH,VLのみに対して定格電流を相対的に(√3)倍に増大させてもよい。つまり、平衡通電では各相電流Iu,Iv,Iwの振幅は等しくなるのに対して、変則通電の各相電流Iu,Iwの振幅は平衡通電の各相電流Iu,Iv,Iwの振幅と同等、かつ、変則通電のV相電流Ivの振幅は平衡通電の各相電流Iu,Iv,Iwの振幅の(√3)倍となる。このため、例えばブリッジ回路51aを構成する各トランジスタUH,UL,VH,VL,WH,WLの定格電流を一様に(√3)倍に増大させることに代えて、ハイ側,ロー側V相トランジスタVH,VLのみの定格電流を相対的に(√3)倍に増大させることにより、ブリッジ回路51aの構成に要する費用が過剰に増大してしまうことを防止することができる。
なお、上述した実施の形態においては、ブリッジ回路51aを3相ブリッジ回路としたが、これに限定されず、例えばブリッジ回路51aを2相独立のHブリッジ回路としてもよい。
この変形例において、PDU51のブリッジ回路51aは、例えば図22に示すように、各対をなすハイ側,ロー側U相第1トランジスタU1H,U1L、および、ハイ側,ロー側U相第2トランジスタU2H,U2L、および、ハイ側,ロー側W相第1トランジスタW1H,W1L、および、ハイ側,ロー側W相第2トランジスタW2H,W2Lを備えている。各ハイ側トランジスタU1H,U2H,W1H,W2Hはバッテリ52の正極側端子ptに接続されてハイサイドアームを構成し、各ロー側トランジスタU1L,U2L,W1L,W2Lはバッテリ52の負極側端子ntに接続されローサイドアームを構成しており、ハイサイドアームの各トランジスタとローサイドアームの各トランジスタとは、各対毎にバッテリ52に対して直列に接続されている。各トランジスタU1H,U1L,U2H,U2L,W1H,W1L,W2H,W2Lのコレクタ−エミッタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向となるようにして、各ダイオードDU1H,DU1L,DU2H,DU2L,DW1H,DW1L,DW2H,DW2Lが接続されている。
そして、ブリッジ回路51aのハイ側U相第1トランジスタU1Hのエミッタおよびロー側U相第1トランジスタU1Lのコレクタには、U相環状巻線14の一方の入出力端子が接続され、ブリッジ回路51aのハイ側U相第2トランジスタU1Hのエミッタおよびロー側U相第2トランジスタU1Lのコレクタには、U相環状巻線14の他方の入出力端子が接続されている。
また、ブリッジ回路51aのハイ側W相第1トランジスタW1Hのエミッタおよびロー側W相第1トランジスタW1Lのコレクタには、W相環状巻線15の一方の入出力端子が接続され、ブリッジ回路51aのハイ側W相第2トランジスタW1Hのエミッタおよびロー側W相第2トランジスタW1Lのコレクタには、W相環状巻線15の他方の入出力端子が接続されている。
この変形例においては、ブリッジ回路51aにおいて、V相電流Ivの通電に要するトランジスタが不要であり、電流集中の発生を防止することができ、各トランジスタU1H,U1L,U2H,U2L,W1H,W1L,W2H,W2Lの定格電流を同一に設定することができ、ブリッジ回路51aの構成に要する費用が増大することを抑制することができる。
なお、この変形例においては、上記数式(32)に示すU相交流電圧指令値VuおよびW相交流電圧指令値Vwによって変則通電に対するdq−3相個別変換処理を実行することができる。
本発明の実施形態に係るモータの分解斜視図である。 本発明の実施形態に係るステータの要部分解斜視図である。 本発明の実施形態に係るモータのステータの要部の径方向断面図である。 図4(a)は3相巻線による3相(U相、V相、W相)のモータのステータの結線状態を示す図であり、図4(b)は本発明の実施形態に係るステータの各環状巻線の結線状態および平衡通電での通電位相を示す図であり、図4(c)は本発明の実施形態に係るステータの各環状巻線の結線状態および変則通電での通電位相を示す図である。 本発明の実施形態に係るモータ制御装置の構成図である。 本発明の実施形態に係るパワードライブユニット(PDU)の構成図である。 図5に示すdq−3相個別変換部および電流位相ずれ演算部および積分補償部および電流位相補正部および電圧振幅位相補正部の構成図である。 図8(a)は本発明の実施形態に係るモータの各相互インダクタンスMuw,Mwuをゼロとした場合に対応するベクトル図であり、図8(b)は本発明の実施形態に係るモータの各相互インダクタンスMuw,Mwuがゼロ以外である場合に対応するベクトル図である。 図9(a)は本発明の実施形態に係るモータの平衡通電での各相電流Iu,Iv,Iwを示すグラフ図であり、図9(b)は本発明の実施形態に係るモータの変則通電での各相電流Iu,Iv,Iwを示すグラフ図であり、図9(c)は本発明の実施形態に係るモータの平衡通電および変則通電でのd軸電流Idおよびq軸電流Iqである。 本発明の実施形態に係るモータの平衡通電および変則通電での各相の起磁力を示すグラフ図である。 本発明の実施形態に係るモータの平衡通電および変則通電での平均トルクを示すグラフ図である。 本発明の実施形態に係るモータの平衡通電および変則通電でのトルクを示すグラフ図である。 本発明の実施形態に係るモータの変則通電においてId指令(Idref)及びIq指令(Iqref)を適宜に変更した場合の各線間電圧Vuv,Vwvおよび各相逆起電圧Vemf_u,Vemf_wおよび各相交流電圧指令値Vu,Vv,Vwおよび各相電流Iu,Iv,Iwおよびd軸電流Id及びq軸電流Iqおよびd軸電圧指令値Vd及びq軸電圧指令値Vqのシミュレーションの結果を示すグラフ図である。 本発明の実施形態に係るモータのV相交流電圧指令値Vvを変動させるPWM変調の実行前と実行後とにおける各相電圧Vu,Vv,Vwおよび各線間電圧Vuv,Vwvを示すグラフ図である。 本発明の実施形態に係るモータ制御装置の動作を示すフローチャートである。 図15に示す平衡通電の処理を示すフローチャートである。 図15に示す変則通電の処理を示すフローチャートである。 図16および図17に示す電流補正フィードバックの処理を示すフローチャートである。 図17に示す位相・振幅補正の処理を示すフローチャートである。 図17に示す変調の処理を示すフローチャートである。 本発明の実施形態に係るモータのトルク−回転数特性を示すグラフ図である。 本発明の実施形態の変形例に係るパワードライブユニット(PDU)の構成図である。
符号の説明
1 モータ
10 ステータ
14 U相環状巻線(2相巻線)
15 W相環状巻線(2相巻線)
51a ブリッジ回路
ステップS03 通電切替手段
ステップS04 平衡通電手段
ステップS05 変則通電手段
ステップS24 補正手段
ステップS27 変調手段

Claims (6)

  1. 2相巻線により3相起磁力を発生するステータを備えるモータを制御するモータ制御装置であって、
    前記2相巻線の逆起電圧位相差と同じ通電位相差の通電をおこなう変則通電手段と、
    前記2相巻線の逆起電圧位相差と異なる通電位相差の通電をおこなう平衡通電手段とを備えることを特徴とするモータ制御装置。
  2. 前記2相巻線の逆起電圧位相差は電気角で60°であり、
    前記平衡通電手段は前記2相巻線に対して前記通電位相差が電気角で120°の通電をおこない、
    前記変則通電手段は前記2相巻線に対して前記通電位相差が電気角で60°の通電をおこなうことを特徴とする請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記変則通電手段による通電時に3相に印加する電圧の位相および振幅を相互インダクタンスの電圧成分により補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 相対的に大きな最大トルクが要求される場合に前記変則通電手段を選択し、相対的に小さなトルクリップルが要求される場合に前記平衡通電手段を選択する通電切替手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載のモータ制御装置。
  5. 前記2相巻線以外の相の電圧指令を変動させることで前記2相巻線に印加する電圧の振幅を変調する変調手段を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載のモータ制御装置。
  6. パルス幅変調信号により前記2相巻線への通電を順次転流させるインバータを備え、
    前記インバータは2相独立のHブリッジ回路を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1つに記載のモータ制御装置。
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