JP2009292667A - 繊維補強セメント複合材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料の製造方法は、水結合材比(W/B)を35重量%以上、細骨材と結合材との重量比(S/B)を0.5〜0.95で調合したマトリックスに、270MPa以上の繊維引張強度と、35〜70μmの繊維直径と、5〜18mmの繊維長さとを有する、ポリオレフィン系合成樹脂からなるポリプロピレン繊維を、2.0〜4.0体積%の添加率で配合する。
【選択図】図1
Description
水結合材比(W/B)を35重量%以上、細骨材と結合材との重量比(S/B)を0.5〜0.95で調合したマトリックスに、ポリオレフィン系合成樹脂からなるポリプロピレン繊維を、2.0〜4.0体積%の添加率で配合したことを特徴とする。
本実施形態に係る複数微細ひび割れ型繊維補強セメント複合材料(High Performance Fiber Reinforced Cement Composite;以下、HPFRCCという)は、所定の条件に調合したマトリックスに、PP繊維を配合したものである。なお、マトリックスとは、HPFRCCを構成する材料のうち、セメントや混和材料などの粉体材料及び骨材の総称である。
図1に示すように、本実施形態に係るHPFRCCに使用するマトリックスは、水結合材比(W/B)を35重量%以上、細骨材と結合材との重量比(S/B;細骨材結合材重量比という)を0.5〜0.95で調合したものである。
なお、ここで使用するPP繊維は、特に、その繊維直径が35〜70μm、繊維長さが5〜18mmとなるように作製したものを用いる。
本実施形態のHPFRCCに配合する繊維としてPP繊維を選定した理由の一つとして、耐薬品性に優れることが挙げられる。
図2の表に示すように、各種薬品に対する合成樹脂の耐性が、性能の良い方から順に、二重丸印(◎)、丸印(○)、三角印(△)、バツ印(×)の4段階で評価されており、同表によれば、PPはアルカリ性の薬品に対して特に耐性が優れていることがわかる。
そして、本実施形態に係るHPFRCCは、上記調合したマトリックスに、上記仕様のPP繊維を2.0〜4.0体積%の添加率で配合することにより作製される。
仕様選定試験では、マトリックスに添加する繊維として、本実施形態に係るPP繊維と、比較対象として従来から広くセメント補強用の繊維として使用される素材であるポリビニルアルコール(以下、PVAという)とを用いた。
PP繊維としては、具体的に上記特許第3167900号に開示される特許発明「セメント強化用ポリプロピレン繊維」と同様のものを用いた。
図3に示すように、仕様選定試験では、例えば、0.91g/cm3の密度と、13decitexのフィラメント単糸当りの繊度と、12mmの繊維長と、約450MPaの繊維引張強度とを有するPP繊維を用いた(後述の図5の実施例6及び9参照)。なお、仕様選定試験では、試験体によりPP繊維の繊度(もしくは繊維直径)や繊維長等の寸法を変更しており、これにより上記繊維の物性も変化する。
一方、PVA繊維としては、一般にセメント配合用の繊維として市販されるもので、密度が1.30g/cm3を有するものを用いた。
図4に示すように、結合材(B)として、普通ポルトランドセメント(C)、フライアッシュ(FA)、及び膨張材(EX)を、また細骨材(S)として珪石粉を用いた。なお、細骨材(S)には、目開き0.07mmのふるい通過量が80質量%以上で、ブレーン比表面積が3900±300cm2/gのものを用いた。
先ず、実施例1は、水結合材比(52.0重量%)及び細骨材結合材重量比(0.90)が他の例と比較して大きい場合である。セメント複合材料は、水結合材比を大きくするほど、硬化時に強度が低下する傾向を有するが、流動性が向上するため細骨材結合材重量比を大きくすることができる。しかしながら、水結合材比と細骨材結合材重量比との双方を大きくすると細骨材の界面に欠陥が生じやすくなる。
図8に示すように、PP繊維及びPVA繊維のどちらの場合も、セメント複合材料を1m3作製する際に、427kgの水(W)と、854kgのセメント(C)と、675kgの細骨材(S)とを混合してなる、水結合材比(W/B)が50.0重量%に調合されたマトリックスを用いることとし、これらにPP繊維を27.3kg(3体積%)、又はPVA繊維を26.0kg(2体積%)を夫々添加することにより、各試験流体を作製した。ここで、PP繊維を配合された試験流体は、さきに述べた本実施形態のHPFRCCの条件を満たしている。
図9に示すように、PP繊維及びPVA繊維のどちらの場合も、セメント複合材料を1m3作製する際に、380kgの水(W)と、675kgのセメント(C)と、169kgのフライアッシュ(FA)と、717kgの細骨材(S)とを混合してなる、水結合材比(W/B)が45.0重量%に調合されたマトリックスを用いることとし、これらにPP繊維を37.3kg(3体積%)、又はPVA繊維を26.0kg(2体積%)を夫々添加することにより、各試験流体を作製した。ここで、PP繊維を配合された試験流体は、さきに述べた本実施形態のHPFRCCの条件を満たしている。なお、試験流体の作製にあたり、両試験流体とも、強制練り2軸ミキサを用いて練り混ぜた。
そして、これら試験流体について、タッピングが0打及び15打時のモルタルフロー値を測定した。
図10に示すように、PP繊維及びPVA繊維のどちらの場合も、セメント複合材料を1m3作製する際に、385kgの水(W)と、573kgのセメント(C)と、680kgの細骨材(S)とを混合してなる、水結合材比(W/B)が47.0重量%に調合されたマトリックスを用いることとし、これらにPP繊維を27.3kg(3体積%)、又はPVA繊維を26.0kg(2体積%)を夫々添加することにより、各試験流体を作製した。ここで、PP繊維を配合した試験流体は、さきに述べた本実施形態のHPFRCCの条件を満たしている。
なお、試験流体の作製にあたり、両試験流体とも強制練り2軸ミキサを用いて練り混ぜた。
図12に示すように、水結合材比が50.0重量%、細骨材結合材重量比が0.93のマトリックスに、添加率をPP繊維が0〜4.0体積%、PVA繊維が0〜2.0体積%の範囲で変更した繊維を添加することにより、実施例13〜23の11種類のセメント複合材料を作製した。なお、試験に使用したPP繊維は、繊度(単糸当り)が13decitexで長さ12mmのもの、PVA繊維は、繊度が15decitexで長さ12mmのものを用いた。
その他引張終局ひずみ及び終局時の平均ひび割れ幅の評価については、さきに述べた基準と同じである。
実施例13〜16は、PP繊維を全く添加せず、PVAの添加率を実施例の順番に0.5〜2.0体積%に増加させている。試験結果は、すべての実施例について分散性及び分離抵抗性の試験の評価は良好(○)であったが、実施例13及び実施例14は引張終局ひずみ及び終局時の平均ひび割れ幅は基準を満たさなかった(×)。これは、セメント複合材料中に、引張荷重に抵抗するための繊維量が不足しているからと考えられる。
Claims (6)
- 繊維補強セメント複合材料であって、
水結合材比(W/B)を35重量%以上、細骨材と結合材との重量比(S/B)を0.5〜0.95で調合したマトリックスに、ポリオレフィン系合成樹脂からなるポリプロピレン繊維を、2.0〜4.0体積%の添加率で配合したことを特徴とする繊維補強セメント複合材料。 - 前記ポリプロピレン繊維は、270MPa以上の繊維引張強度と、35〜70μmの繊維直径と、5〜18mmの繊維長さとを有することを特徴とする請求項1に記載の繊維補強セメント複合材料。
- 前記細骨材の粒径は、1.3mm以下であり、かつその中央値が10〜100μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の繊維補強セメント複合材料。
- 前記マトリックスに、1.0体積%以上の前記ポリプロピレン繊維と、1.0体積%未満のポリビニルアルコール系合成樹脂からなるポリビニルアルコール繊維とを配合したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の繊維補強セメント複合材料。
- 前記ポリプロピレン繊維は、前記ポリオレフィン系合成樹脂のフィラメントが分離可能に連結した連糸形状の繊維からなることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の繊維補強セメント複合材料。
- 繊維補強セメント複合材料の製造方法であって、
水結合材比(W/B)を35重量%以上、細骨材と結合材との重量比(S/B)を0.5〜0.95で調合したマトリックスに、
270MPa以上の繊維引張強度と、35〜70μmの繊維直径と、5〜18mmの繊維長さとを有する、ポリオレフィン系合成樹脂からなるポリプロピレン繊維を、2.0〜4.0体積%の添加率で配合することを特徴とする繊維補強セメント複合材料の製造方法。
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