JP7352529B2 - コンクリートの配合設計方法 - Google Patents
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Description
しかし、2019年の改正で、上記基準値を越える、スランプフロー(コンクリートのスランプフロー試験方法[JIS A 1150]に定めるスランプコーンの引上時におけるコンクリートの広がり)が60cmまでの流動性の高いコンクリートに関しても、標準的仕様のレディーミクストコンクリートの対象となった。これは、近時、閉所等の締固めが困難な場合だけでなく、労務削減を目的として締固め作業を不要又は低減したいという要望が強くなってきていることなどに起因している。
粉体系高流動コンクリートは、セメント又はその他の粉体材料の量を多くすることで粘性を確保している。しかし、セメントは、コンクリートの構成材料の中では比較的高価であり、混和材である石灰石微粉末なども、通常、生コンクリート工場で使用されていない構成材料であることから高価とならざるを得ず、製造費用の上昇につながってしまっていた。また、増粘剤系高流動コンクリートは、特殊な混和材料である増粘剤を添加することで粘性を確保するため、やはり製造費用の上昇につながってしまっていた。さらに、併用系高流動コンクリートは、粉体量を多くすることに加え、増粘剤を使用するため、上記と同様に製造費用が高価となってしまっていた。
この点に関し、流動性については一定の目安が示されているが、分離抵抗性については明確な目安はなく、その定量的な評価方法が求められている。
Vfp = Vp + Vs’ 式(1)
Vwo = Vw / (1 - Kad × AD) 式(2)
但し、Vp :設定配合で定めた上記粉体材料量
Vs':材料分離抵抗性に有効な上記細骨材量(有効微小細骨材粒量)
Vs :設定配合で定めた上記細骨材量
Vw :設定配合で定めた上記水量
Kad:上記化学混和剤の上記粉体材料に対する質量比が1%のときの、上記
化学混和剤の減水率
AD:上記化学混和剤の上記粉体材料に対する質量比
Vwo = Vw × (1 + K’ad × AD) 式(3)
但し、Vw :設定配合で定めた上記水量
K’ad:化学混和剤の粉体材料に対する質量比が1%のときのスランプ増加
量に対応する増水率(下記で詳説する)
AD :上記化学混和剤の上記粉体材料に対する質量比
また、減水性能を有する化学混和剤(以下、「化学混和剤」という。)とは、コンクリートの流動性を維持しながら練り混ぜ水量を減少させるために添加される混和剤であり、減水剤、AE(Air Entraining)減水剤、高性能減水剤及び高性能AE減水剤等、その効果を奏するものであれば、種々の混和剤を使用することができる。なお、化学混和剤は、減水率に関する事項を含めて、JIS A 6204で定められている。
本配合設計方法は、JIS A 5308に規定される一般的な構成材料を使用して製造されるレディーミクストコンクリート、及び当該レディーミクストコンクリートに鋼繊維を混入して製造される鋼繊維補強コンクリートを主な対象としている。したがって、本配合設計方法の対象とするコンクリートは、セメント及びその他の混和材を含む粉体材料と、細骨材と、粗骨材と、減水性能を有する化学混和剤と、水を必須の構成材料とし、必要に応じて添加される鋼繊維が混合されるものであってもよい。
Vwo / Vfp ≦ Rmax 式(A)
但し、Vwo:評価用水量
Vfp:評価用微小粒量
なお、分離抵抗性評価値上限値Rmaxの定め方の一例は、第1実施例で説明する。
また、材料分離抵抗性に有効な細骨材の微小粒量Vs’は、低減係数Ksに、設定配合で定めた細骨材量Vsを乗じて算出する。
Vfp = Vp + Vs’ 式(1)
但し、Vfp:評価用微小粒量
Vp :設定配合で定めた粉体材料量
Vs':材料分離抵抗性に有効な細骨材量(有効微小細骨材粒量)
(=Ks × Vs)
Ks :低減係数
Vs :設定配合で定めた細骨材量
なお、適用にあたり、低減係数Ksは、骨材種類ごとに、ふるい分け試験(JIS A 1102)における特定の呼び寸法のふるいを通過する質量分率(又は体積分率)ごとに、事前試験を行った上で、設定することが好適である。
一般に、化学混和剤の性能は、当該化学混和剤を不使用とした場合を基準として、化学混和剤を不使用とした場合のコンクリートの水量V0と、所定の添加量(例えば、粉体材料に対する質量比が1%)で化学混和剤を使用した場合であって、化学混和剤を不使用とした場合と同じスランプとなるコンクリートの水量V1の差(低減された水量[V0-V1])のコンクリート水量V0に対する割合である「減水率」として表される。
Vwo = Vw / (1 - Kad × AD) 式(2)
但し、Vwo:評価用水量
Vw :設定配合で定めた水量
Kad:化学混和剤の粉体材料に対する質量比が1%のときの、当該化学混和
剤の減水率
AD:化学混和剤の粉体材料に対する質量比
なお、スランプ増加量に対応する増水率は、JIS規格等において定められているものではなく、スランプの増加量を見かけの増水量に換算して算出する評価値である。
Vwo = Vw × (1 + K’ad × AD) 式(3)
但し、Vwo :評価用水量
Vw :設定配合で定めた水量
K’ad:化学混和剤の粉体材料に対する質量比が1%のときのスランプ増加
量に対応する増水率
AD :化学混和剤の粉体材料に対する質量比
上記考え方の下、本配合設計方法の具体的適用方法について説明する(図1)。
まず、求められる配合強度及び耐久性を発現できるように、水粉体材料比を決定する。次に、要求されるワーカビリティが得られるように単位水量を決定し、水粉体材料比と、単位水量から単位粉体材料量を決定する。さらに、要求される耐久性と施工性を考慮して、細骨材量及び粗骨材量を決定し、最後に、所望の施工性を満たすように化学混和剤量を決定する。
本発明によれば、机上で定めた配合条件に関し、分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)を算出し、分離抵抗性評価値上限値Rmax以下か否かを判定することで、材料分離抵抗性と流動性の両者を満たすコンクリートを配合設計することができる。そのため、配合設計の後、試し練りを繰り返して性能確認を行うことなく、配合設計の段階で、コンクリート性状の簡易評価が可能となる。したがって、試し練りに先立ち、広範囲な配合検討が可能になることから、試し練りのための配合案の精度の向上が期待できる。その結果、試し練りの回数を削減できることになり、配合設計の合理化及び省力化に寄与することになる。
また、本配合設計方法を使用することにより、最適な配合となるコンクリートを提案することができるため、経済的なコンクリートの製造が可能となる。
なお、本配合設計方法は、化学混和剤を、一般的な添加量の範囲内で使用する場合を想定しているため、当該化学混和剤の過剰添加による減水効果の低減及び粘性の増大等の影響は考慮していない。
第1実施例では、分離抵抗性評価値上限値Rmaxの設定方法の一例について説明する。
配合条件は、水粉体材料比(水セメント比)(W/C)50%及び後記骨材Aを使用した場合を基本条件とする(配合名A50)(なお、配合名は、使用骨材の種類を示すアルファベットと、水粉体材料比(%)の数字を使用して記載しているものであり、以下、「配合名」の記載を省略する場合がある)。そして、骨材の影響を捨象して、水粉体材料比の相違が与える影響を分析するために、水粉体材料比40%及び骨材Aの配合(A40)を採用する。また、水粉体材料比の影響を捨象して、骨材の相違が与える影響を分析するために、水粉体材料比50%及び後記骨材Bの配合を採用する(B50)。
以上3水準の配合条件に基づき(表1-1)、コンクリートの試し練りを行い、その性状を確認した。
細骨材A及び細骨材Bは、ともに天然砂と砕砂から形成される混合砂であるが、粒度分布が相違している(表1-2)。すなわち、細骨材Bは、細骨材Aと比較して、2.5mmのふるいを通過する質量分率が大きく(2.5mm以下の割合が大きく)なっている。
また、粗骨材A及び粗骨材Bは、表乾密度は異なるが、ともに、砕石2005(JIS A 5005)である(表1-3)。
なお、表1-4に記載されている試験結果の各構成材料の単位量(1m3における質量[kg])の表記には、記載スペースの関係から、表1-3の構成材料の( )内に記載されている各構成材料の記号表記を使用している。
なお、表1-4の試験結果において、配合名における「-」の後の枝番号の「1」は、「材料分離の直前」の場合を、「2」は、「材料分離の直後」の場合をそれぞれ示している。
また、式(2)の算出において、設定配合で定めた水量Vwは、表1-4に示す単位水量W(L/m3)を、化学混和剤の粉体材料に対する質量比AD(%)は、表1-4に示す値を、それぞれ用いるとともに、高性能AE減水剤の減水率Kadは、「0.18」とした。なお、化学混和剤量は、表1-4のAD(%)に、同表の粉体材料量(C)を乗じた値である。
第2実施例では、本発明の有効性を検証するために、表1-1と同じ構成材料を使用して、第1実施例とは異なる4種類の配合条件に基づき(表2-1)、コンクリートの試し練りを行い、その性状を確認した。
なお、A45及びB45では、分離抵抗性評価値上限値Rmaxは、「0.55」とした。
Claims (2)
- セメントを含有する粉体材料と、水と、細骨材と、粗骨材と、減水性能を有する化学混和剤と、さらに、必要に応じて鋼繊維とを含み、それらの各構成材料を混練したコンクリートに関し、
求められる配合強度及び耐久性を発現できるように水粉体材料比を決定し、
次に、要求されるワーカビリティが得られるように単位水量を決定し、前記水粉体材料比と、前記単位水量から単位粉体材料量を決定し、
さらに、求められる前記耐久性と施工性を考慮して細骨材量及び粗骨材量を決定し、
所望の施工性を満たすように化学混和剤量を決定し、
続いて、設定配合で定めた粉体材料量Vpに、材料分離抵抗性に有効な細骨材量Vs’を加算することにより求められる、下式(1)で定められる評価用微小粒量Vfpと、
使用する前記化学混和剤の添加量を変えた場合に、同じスランプを得るための水量が直線的に減少する場合において、前記化学混和剤量を考慮して、前記設定配合で定めた水量Vwを補正した、下式(2)で定められる評価用水量Vwoに関し、
前記評価用水量Vwoの前記評価用微小粒量Vfpに対する容量比である分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)を算出し、前記粉体材料の種類ごとに予め定められている分離抵抗性評価値上限値Rmax以下か否かを判定し、
前記分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)が前記分離抵抗性評価値上限値Rmax以下である場合には、その設定配合を採用し、
前記分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)が前記分離抵抗性評価値上限値Rmaxを超える場合には、前記各構成材料の設定配合を修正して、前記同様の検討を行うコンクリートの配合設計方法であって、
前記式(1)における前記材料分離抵抗性に有効な細骨材の微小粒量Vs’は、
前記材料分離抵抗性に有効な細骨材の粒径の上限値に基づいて算出され、前記細骨材の種類に応じて予め求められている、前記細骨材量に対する前記材料分離抵抗性に有効な細骨材量の割合である低減係数Ksに、
前記設定配合で定めた前記細骨材量Vsを乗じて算出するものであり、
所定の粒度分布を示す各ふるいを通過する細骨材の質量分率を100で除した値を用いて算定した各前記低減係数Ksを使用して、前記分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)を算出した中から、材料分離を生じる臨界値の境界値における最もばらつきがない低減係数Ksを前記低減係数Ksとするとともに、前記最もばらつきがない低減係数Ksにおける分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)を前記分離抵抗性評価値上限値Rmaxとして用いるものであること、を特徴とするコンクリートの配合設計方法。
Vfp = Vp + Vs’ 式(1)
Vwo = Vw / (1 - Kad × AD) 式(2)
但し、Kad:前記化学混和剤の前記粉体材料に対する質量比が1%のときの、前記
化学混和剤の減水率
AD:前記化学混和剤の前記粉体材料に対する質量比 - セメントを含有する粉体材料と、水と、細骨材と、粗骨材と、減水性能を有する化学混和剤と、さらに、必要に応じて鋼繊維とを含み、それらの各構成材料を混練したコンクリートに関し、
求められる配合強度及び耐久性を発現できるように水粉体材料比を決定し、
次に、要求されるワーカビリティが得られるように単位水量を決定し、前記水粉体材料比と、前記単位水量から単位粉体材料量を決定し、
さらに、求められる前記耐久性と施工性を考慮して細骨材量及び粗骨材量を決定し、
所望の施工性を満たすように化学混和剤量を決定し、
続いて、設定配合で定めた粉体材料量Vpに、材料分離抵抗性に有効な細骨材量Vs’を加算することにより求められる、下式(1)で定められる評価用微小粒量Vfpと、
使用する前記化学混和剤の添加量を変えた場合に、同じ水量で得られるスランプが直線的に増加する場合において、前記化学混和剤量を考慮して、前記設定配合で定めた水量Vwを補正した、下式(3)で定められる評価用水量Vwoに関し、
前記評価用水量Vwoの前記評価用微小粒量Vfpに対する容量比である分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)を算出し、前記粉体材料の種類ごとに予め定められている分離抵抗性評価値上限値Rmax以下か否かを判定し、
前記分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)が前記分離抵抗性評価値上限値Rmax以下である場合には、その設定配合を採用し、
前記分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)が前記分離抵抗性評価値上限値Rmaxを超える場合には、前記各構成材料の設定配合を修正して、前記同様の検討を行うコンクリートの配合設計方法であって、
前記式(1)における前記材料分離抵抗性に有効な細骨材の微小粒量Vs’は、
前記材料分離抵抗性に有効な細骨材の粒径の上限値に基づいて算出され、前記細骨材の種類に応じて予め求められている、前記細骨材量に対する前記材料分離抵抗性に有効な細骨材量の割合である低減係数Ksに、
前記設定配合で定めた前記細骨材量Vsを乗じて算出するものであり、
所定の粒度分布を示す各ふるいを通過する細骨材の質量分率を100で除した値を用いて算定した各前記低減係数Ksを使用して、前記分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)を算出した中から、材料分離を生じる臨界値の境界値における最もばらつきがない低減係数Ksを前記低減係数Ksとするとともに、前記最もばらつきがない低減係数Ksにおける分離抵抗性評価値(Vwo/Vfp)を前記分離抵抗性評価値上限値Rmaxとして用いるものであること、を特徴とするコンクリートの配合設計方法。
Vfp = Vp + Vs’ 式(1)
Vwo = Vw × (1 + K’ad × AD) 式(3)
但し、K’ad:前記化学混和剤の前記粉体材料に対する質量比が1%のときのスラ
ンプ増加量に対応する増水率
AD :前記化学混和剤の前記粉体材料に対する質量比
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