JP2004026619A - 剥落防止用繊維補強コンクリート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリオレフィン系繊維又はポリアミド系繊維のモノフィラメントからなり、その形状が扁平状であり、その片面又は両面に平面状底部を有する窪みが複数形成されており、かつ、該モノフィラメントの繊度の平方根X((dtex)1/2)と窪みの深さY(mm)との関係が、式
0.011618X−0.43230≦Y≦0.011618X−0.02477 (I)
(式中、窪みの深さYは、該扁平状モノフィラメントの最大厚さ(T1)と窪みの平面状底部における最小厚さ(T2)との差(T1−T2)で示される。)を満足し、その長手方向の長さが5〜60mmの範囲である短繊維コンクリート補強材を、繊維混入率0.01体積%以上1.0体積%未満の割合で含有することを特徴とする剥落防止用繊維補強コンクリート。
【選択図】なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道高架橋、道路橋、トンネル等のコンクリート構造物等に用いられる新規な剥落防止用繊維補強コンクリートに関する。本明細書において、コンクリートとは、コンクリートのみならず、モルタル、セメントモルタル、セメントペースト等を包含する概念である。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば、鉄道高架橋、道路橋、トンネル等のセメントコンクリート構造物において、コンクリートの内部鉄筋の発錆・膨張に伴うコンクリート片の剥落が問題となっている。
【0003】
コンクリート片の剥落は、コンクリートが、圧縮には強いが引張には弱いという脆性的な材料であるため、環境条件等の影響により、内部の補強鉄筋が腐食しすると発錆時の膨張圧により、かぶり部分(鉄筋からコンクリート表面間の部分)のコンクリートにひび割れが生じ、このひび割れが進展して、コンクリート片として落下するものであり、橋梁等の場合、第三者被害を発生させる危険がある。
【0004】
コンクリート片の剥落を防止するために、コンクリート中に無機系、有機系の短繊維である補強材を混入することが有効である。すなわち、あらかじめコンクリート中に通常長さ5〜60mm程度の短繊維を混入しておくことにより、コンクリートにひび割れが生じた場合でも、ひび割れを横断する位置に短繊維を配し、その位置の短繊維がひび割れ部に作用する引張力を分担し、ひび割れの進展を防止、もしくは遅延させることができる。
【0005】
しかしながら、従来のコンクリート補強材として用いられている短繊維は、汎用的にコンクリートを補強することを目的として製作されているものであって、剥落防止を目的として使用する上で、好適な短繊維が開発されているとは言えない。即ち、剥落防止を目的とした短繊維には、(1)適当な本数の繊維がコンクリート片の剥落を確実に防止できるようにコンクリート中に分散していること、(2)コンクリートの配合やフレッシュ性状に及ぼす影響が小さいこと、(3)安価であること等の性能が要求されるが、これらの性能を全て充足するものは開発されているとは言えない。
【0006】
即ち、無機系繊維の内、例えば、鋼繊維は、スランプ低下等のフレッシュ性状に及ぼす影響が大きく、又水や大気中の酸素等によって、発錆するため、コンクリート表面の美観を損ね、場合によっては、コンクリート表面のポップアウトを引き起こすという欠点がある。ガラス繊維には、セメント中のアルカリによって、劣化し、剥落防止効果が徐々に低下するという欠点がある。炭素繊維には、耐久性上の問題は発生しないが、破断伸度が低く、コンクリートの練混ぜ中に繊維自体が損傷し、剥落防止効果が低下する、さらに高価であるという欠点を有する。
【0007】
さらに、有機系繊維の内、例えば、ポリプロピレン繊維の扁平状モノフィラメントに凹凸を付与してカットしたコンクリート補強材が、特開平11−116297号公報に開示されているが、該公報には、コンクリートの剥落防止効果との関係についての記載、示唆は無い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、コンクリート片の剥落防止効果に優れた新規な繊維補強コンクリートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記従来技術の現状に鑑み、特定の扁平状モノフィラメントに複数の窪みを形成してなるコンクリート補強材について鋭意研究したところ、該モノフィラメントの繊度の平方根Xと窪みの深さYの関係について特定の式を満足する場合には、該モノフィラメントの最大の補強効果が発揮できること、窪みが特定形状で特定数形成されている場合には更に補強効果が向上すること、この補強材はコンクリートの剥落防止用としての前記(1)〜(3)の要求性能を全て充足しており少量の混入により、剥落防止を十分に達成できること等を見出し、更に検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の剥落防止用繊維補強コンクリートに係る。
【0011】
1.ポリオレフィン系繊維又はポリアミド系繊維のモノフィラメントからなり、その形状が扁平状であり、その片面又は両面に平面状底部を有する窪みが複数形成されており、かつ、該モノフィラメントの繊度の平方根X((dtex)1/2)と窪みの深さY(mm)との関係が、式
0.011618X−0.43230≦Y≦0.011618X−0.02477 (I)
(式中、窪みの深さYは、該扁平状モノフィラメントの最大厚さ(T1)と窪みの平面状底部における最小厚さ(T2)との差(T1−T2)で示される。)を満足し、その長手方向の長さが5〜60mmの範囲である短繊維コンクリート補強材を、繊維混入率0.01体積%以上1.0体積%未満の割合で含有することを特徴とする剥落防止用繊維補強コンクリート。
【0012】
2.コンクリート補強材を、繊維混入率0.01〜0.5体積%の割合で含有する上記項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。
【0013】
3.コンクリート補強材の引張強度が、2.0〜6.0cN/dtexの範囲である上記項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。
【0014】
4.コンクリート補強材が、
(1)その最大幅(W)が0.30〜2.00mmで、扁平率が最大厚さ(T1)と最大幅(W)との比(W/T1)で1.5〜8の範囲であり、
(2)その両面に、平面状底部を有する窪みが長手方向2.54cm当たり合計で12〜48個形成されており、
(3)片面の長手方向2.54cm当たりの平面図面積(S1)と窪みの平面状底部(平面状底部に通じる斜面部分を含まず)の合計面積(S2)との比(S2/S1)が0.02〜0.42の範囲であり、
(4)片面の長手方向2.54cm当たりの平面図面積(S1)と該平面図面積から窪み部分(平面状底部及び斜面部分の合計)を除いた面積(S3)との比(S3/S1)が0.20〜0.85の範囲であり、且つ
(5)最大厚さ(T1)と窪みの平面状底部における最小厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.10〜0.82の範囲のものである上記項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。
【0015】
5.モノフィラメントが、ポリプロピレン系繊維である上記項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。
【0016】
【発明の実施の形態】
コンクリート補強材の素材
本発明の繊維補強コンクリートにおいて、混入されるコンクリート補強材の素材は、ポリオレフィン系繊維又はポリアミド系繊維のモノフィラメントである。モノフィラメントの材質としては、補強材をセメント、骨材と混合する際の剛性の点から、ポリオレフィン系繊維が好ましく、ポリプロピレン系繊維がより好ましい。
【0017】
また、上記モノフィラメントの引張強度は、平面状底部を有する窪みの形成後において、2.0〜6.0cN/dtexの範囲であることが好ましい。6.0cN/dtexより高い強度のものを用いても、コンクリートマトリックスに埋め込まれた状態で引張力を受けた場合、引抜け抵抗力に大きな増加は見られず、強度を不必要に高めることは生産を効率よく行う観点から好ましくない。引抜け抵抗力に大きな増加が認められなくなる原因としては、高強度を得るための高延伸によって、フィラメントの分子配向による結晶化が進んで硬くなるため、高強度の繊維に大きな凹凸を形成し難くなり、所望する繊維とコンクリートマトリックスとの付着力を確保できず、繊維の引抜けが発生し易くなること、過度に凹凸を付与した場合には、凹凸を付与する過程で繊維内部に欠陥が生じ易くなり、所望の強度が得難いことが挙げられる。また、2.0cN/dtex未満ではモノフィラメント自身の強度が不十分である。2.0〜6.0cN/dtexの範囲であれば、上記繊維内部の欠陥が生じにくい範囲であると共に、延伸倍率がそれほど大きくないために無理がかからず適した範囲の窪みを作れ、生産工程が安定するため、コンクリートマトリックスに埋め込まれたものについて好ましい引抜け抵抗力が得られる。
【0018】
上記モノフィラメントの引張強度は、より好ましくは2.0〜5.5cN/dtexの範囲、特に好ましくは2.2〜4.5cN/dtexの範囲である。
【0019】
コンクリート補強材を構成するモノフィラメントの繊度と窪みの深さの関係
本発明で用いる扁平状モノフィラメントに複数の窪みを形成してなるコンクリート補強材は、該モノフィラメントの繊度の平方根Xと窪みの深さYの関係について、前記式(I)を満足することにより、該モノフィラメントの最大の補強効果が発揮され、少量でもコンクリート片の剥落を有効に防止できる。
【0020】
即ち、本発明者の研究によれば、モノフィラメントの繊度の平方根X((dtex)1/2)と窪みの深さY(mm)の関係が、式
Y=0.011618X−0.19461 (II)
の近傍となるように窪みを形成したときに、そのモノフィラメントをコンクリートやモルタルに埋め込んだ状態から引っ張り荷重を加える試験における最大荷重である引抜け抵抗力が極大となることが見出された。この式(II)よりも、窪みの深さYが小さい場合は補強材の引き抜けが支配的に生じ、窪みの深さYが大きい場合は補強材の破断が支配的に生じる。従って、式(II)の近傍では、補強材とコンクリートマトリックス間の付着力と、補強材を構成するモノフィラメントの繊度とのバランスがとれた状態であると考えられる。
【0021】
図1は、本発明で用いる補強材を構成するモノフィラメントの繊度の平方根X((dtex)1/2)と窪みの深さY(mm)の上記関係式(II)の直線を示したグラフである。この式(II)で表される直線を、実験の振れ幅を考慮して、上下に平行移動した範囲として、Yの範囲を決定して得られた該モノフィラメントの繊度の平方根Xと窪みの深さYの関係が前記式(I)である。
【0022】
従って、前記式(I)を満足する場合には、その補強材を混合したコンクリートにおいて、補強材を構成するモノフィラメントの最大の引抜け抵抗力が得られることになる。
【0023】
コンクリート補強材の形態
本発明で用いるコンクリート補強材の形態を、図面を参照しつつ、説明する。図2は、該コンクリート補強材の一例を示す模式図である。図2の(a)は補強材の扁平面の一方を示す平面図であり、(b)及び(c)は(a)のA1−A2切断線における断面図である。ここで、扁平面とは補強材の最大幅を有する面を意味する。断面図(b)は、A1−A2切断線の位置において、扁平面の一方のみに窪みが有る場合の断面であり、断面図(c)は、A1−A2切断線の位置において、扁平面の両方に窪みが有る場合の断面である。図2の(a)における上端及び下端の波線は、それぞれ、同様の形状が、長手方向に更に続いていることを示す。
【0024】
図2において、1は偏平状のモノフィラメント繊維を、2は窪みの平面状底部に通じる斜面部分を、3は窪みの平面状底部を、4はエンボス加工等により窪みを形成したときに生じる膨らみ部分を、それぞれ示す。また、2の斜面部分及び3の平面状底部を合わせたものが窪み部分である。また、図2の(b)及び(c)におけるT2は窪みの平面状底部における最小厚さを、又T1は補強材の最大厚さを、それぞれ示す。更に、図2のWは補強材の最大幅を示す。ここで、補強材の最大幅とは、膨らみ部分がある場合は該部分を含んだ幅を意味する。
【0025】
図2から明らかなように、本発明で用いるコンクリート補強材は、扁平状のモノフィラメントの扁平面に、平面状底部を有する窪みが複数形成されているものである。ここで、個々の窪み部分の平面的な大きさに関係なく、平面状底部を有する窪みである限り、1つの窪みとして扱う。
【0026】
窪み部分の平面的な輪郭形状は、図2の(a)に示した例では、正方形であるが、これに限られず、円形、楕円形、長方形、平行四辺形、菱形、これらの形状の種々の組み合わせ等の、いずれの形状であってもよい。また、窪み部分の平面的な大きさも、窪み自体が本発明特定の面積比の範囲内である限りにおいて限定されず、同じ大きさの窪みが連続的に形成されていても、異なる大きさの窪みが周期的に又は適宜の順で形成されていてもよい。更に、窪みの深さも、本発明特定の最大厚さ(T1)と最小厚さ(T2)との比の範囲内である限りにおいて限定されず、同じ深さの窪みが連続的に形成されていても、異なる深さの窪みが周期的に又は適宜の順で形成されていてもよい。
【0027】
また、窪み部分における平面状底部の平面状とは、SEM(走査型電子顕微鏡)により観察して、概ね平面とみなせる状態を意味する。該平面状には、数学的意味での平面のみならず、曲面部分を有するもの、うねりのような起伏を有するもの、微細な凹凸を有するもの等が包含される。
【0028】
また、窪み部分の全体的な立体形状としては、コンクリートの微細な容器としての役割を果たし、コンクリートが充填されてアンカー効果が発現できる形状であればよく、例えば、箱状、トレイ状、茶碗状、什器状、皿状等の各種容器形状が挙げられる。
【0029】
窪みは、補強材を構成する扁平状モノフィラメントの片面又は両面に形成される。補強効果の観点からは、両面に形成することが、好ましい。窪みを両面に形成する場合、両面に形成された窪みの位置は、一致している必要はなく、異なっていても構わない。
【0030】
本発明で用いるコンクリート補強材の好ましい形態は、次の通りである。該補強材を構成するモノフィラメントは、その形状が扁平状であり、最大幅(W)が0.30〜2.00mmの範囲であるのが好ましい。2.00mm以上に大きくなると、例えば1m3中に同一補強材料を同一体積%分投入する時に、補強材の本数が少なくなり、コンクリート補強効果やモルタル剥落抑制効果が低下する傾向にある。一方、補強材の本数を多くするために、0.30mmよりも細くしすぎると柔らかくなりすぎてファイバーボール現象を起こしてセメントや骨材とうまく混ざらない傾向がある。最大幅は、0.35〜1.80mmの範囲がより好ましく、0.50〜1.60mmの範囲が特に好ましく、0.70〜1.40mmの範囲が最も好ましい。最大幅は、例えば、ノギス、マイクロスコープ等により、容易に測定できる。
【0031】
また、扁平状モノフィラメントの最大厚さ(T1)は、通常、好ましくは0.2〜0.6mm程度、より好ましくは0.25〜0.55mm程度であるのが望ましい。
【0032】
また、扁平状モノフィラメントの扁平率としては、通常、最大厚さ(T1)と最大幅(W)との比(W/T1)で好ましくは1.5〜8程度、より好ましくは2〜5程度の範囲であるのが望ましい。
【0033】
本発明で用いるコンクリート補強材においては、上記扁平状モノフィラメントの扁平面に、平面状底部を有する窪みが、長手方向2.54cm当たり、両面の合計で12〜48個形成されているのが好ましい。ここで、2.54cmの長さは、1インチの長さを意味する。窪みの数は、例えば、目盛り付きのルーペ等により、容易に測定できる。
【0034】
窪みの個数が、48個/2.54cmを超えると、窪みの斜面部分が近づきすぎて斜面部分に対してモノフィラメントの長手方向にかかる剪断力により該斜面部分が削り取られ易くなったり、延ばされ易くなって大きな引抜け抵抗力が得られなくなってしまい、補強や剥落防止の効果は少なくなる。一方、12個/2.54cmを下回ると、窪みの斜面数が少なすぎて大きな摩擦力が発生しないばかりかコンクリートとの接触面積も少なくなって抜け易くなる。窪みの数は、14〜44個/2.54cmの範囲がより好ましく、20〜40個/2.54cmの範囲が特に好ましい。
【0035】
また、モノフィラメントの扁平面の片面の長手方向2.54cm当たりの平面図面積(S1)と窪みの平面状底部の合計面積(S2)との比(S2/S1)が0.02〜0.42の範囲であるのが好ましい。平面図面積とは、モノフィラメントの扁平面の片面を真上から見たとき時の面積を意味する。ここで、S1は2.54cm当たりの窪み部分を含めた扁平面全体の平面図面積を、又S2は2.54cm当たりの扁平面に形成された複数の窪みの平面状底部の各面積の合計面積を、それぞれ意味する。S2/S1が0.42を超えると窪みの平面状底部面積が増大し、窪み部分以外の平滑部分が縮小することになり、引抜け時にコンクリートやモルタルとの摩擦で該平滑部分が削られやすくなるために引抜け抵抗力が減少する方向になる。一方、S2/S1が0.02未満では窪みの平面状底部面積が狭くてアンカー効果が出ず、引抜け抵抗力が減少する。S2/S1は、0.03〜0.35の範囲がより好ましく、0.05〜0.25の範囲が特に好ましい。
【0036】
また、モノフィラメントの扁平面の片面の長手方向2.54cm当たりの平面図面積(S1)と該平面図面積から窪み部分を除いた面積(S3)との比(S3/S1)が0.20〜0.85の範囲であるのが好ましい。ここで、S3は2.54cm当たりの扁平面に形成された複数の窪み部分を除いた平面図面積(片面)を意味する。S3/S1が0.20未満であると窪み部分以外の平滑部分が縮小することになり、引抜け時にコンクリートやモルタルとの摩擦で該平滑部分が削られやすくなるために引抜け抵抗力が減少することになる。また、0.85を超えると窪み部分が少なくなるのでアンカー効果が低くなり引抜け抵抗力も低くなる。S3/S1は、0.25〜0.80の範囲であるのがより好ましく、0.30〜0.75の範囲であるのが特に好ましい。
【0037】
ここで、上記S1、S2及びS3の各面積は、SEM(走査型電子顕微鏡)による表面写真より窪み部分とそれ以外の部分との境界部及び窪みの平面状底部に通じる斜面部分と該平面状底部との境界部に線を引いて求めた。
【0038】
また、補強材の最大厚さ即ちモノフィラメントの最大厚さ(T1)と窪みの平面状底部における最小厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.10〜0.82の範囲であるのが好ましい。T2/T1が0.82を超える浅い窪みではコンクリートと補強材との間の引抜け時摩擦に大きな値は期待できず、一方、T2/T1が0.10未満の深い窪みとなるとモノフィラメント自身の強度低下を生じる。T2/T1は、0.10〜0.70の範囲であるのがより好ましく、0.14〜0.60の範囲であるのが特に好ましい。ここで、上記T1及びT2の各厚さは、SEM(走査型電子顕微鏡)による断面写真及びダイヤルゲージ式の厚み計を用いて、測定した。
【0039】
本発明で用いるコンクリート補強材は、扁平状モノフィラメントに特定形態の窪みが形成された長繊維を、長手方向の長さが、5〜60mm程度の範囲、好ましくは10〜50mm程度の範囲になるように幅方向に切断して得られる短繊維状のものとして、使用する。
【0040】
コンクリート補強材の製造方法
本発明で用いるコンクリート補強材は、例えば、ポリオレフィン系樹脂又はポリアミド系樹脂を紡糸してモノフィラメントとし、これを熱延伸及び熱弛緩処理後に、エンボス加工等により、窪みを形成し、同時に扁平状とすることにより、好適に製造することができる。また、必要に応じて、更に、幅方向に切断して、短繊維とすることができる。
【0041】
原料のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸アルキル等のポリエチレン系樹脂、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン単独重合体等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン−1等を挙げることができ、これらの一種を又は二種以上をブレンドして使用できる。これらの中では、耐熱性、耐久性等の点でポリプロピレン系樹脂が好ましい。エチレン−プロピレン共重合体の場合における共重合割合としては、通常、両者の合計量に対して、エチレン1〜20モル%程度、プロピレン99〜80モル%程度とするのが好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂に、紡糸性向上等のためにポリエチレン樹脂等を5〜40重量%程度ブレンドすることもできる。ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレート(JIS K 7210法に準拠、以下「MFR」という)としては、0.1〜30g/10minが好ましく、1〜10g/10minであるのがより好ましい。
【0042】
また、原料のポリアミド系樹脂としては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン等を挙げることができ、これらの一種を又は二種以上をブレンドして使用できる。
【0043】
紡糸は、例えば、ポリオレフィン系樹脂又はポリアミド系樹脂を、押出機等に投入して、円形、楕円形、扁平形等のノズルから紡糸し、冷却することにより、行うことができる。
【0044】
また、紡糸を行う際に、例えば、芯層及び鞘層からなる複合モノフィラメント等となるようにして、これを使用することもできる。
【0045】
熱延伸及び熱弛緩処理は、例えば、原料のポリオレフィン系樹脂又はポリアミド系樹脂を溶融紡出し、原料樹脂の融点以下〜軟化点以上の温度にて延伸する。この際、モノフィラメントの軽量化のため、発泡剤を混入することもできる。
【0046】
延伸温度は、通常、150〜90℃程度であり、延伸倍率は、通常、13〜5倍程度好ましくは10〜7倍程度である。熱延伸法としては、熱ロール式、熱風オーブン式、熱板式、沸水式、これらの方式の組み合わせ等により、行うことができる。
【0047】
ここで、得られたモノフィラメントの繊度は、通常、880〜5,500dtex程度の範囲、好ましくは1,100〜4,000dtex程度の範囲、より好ましくは1,650〜3,300dtex程度の範囲とするのが適当である。
【0048】
モノフィラメントのエンボス加工は、上記延伸工程後、例えば、複数本のモノフィラメントを並列に並べて、二個の金属製ロールの間を通過させて行うことができる。二個のロールは、その一方又は両方を、エンボスロールとする。エンボスロールの表面には、例えば、相交差する細い直線状斜線等の凹部等を設けておく。
【0049】
このエンボス加工により、モノフィラメントが、前記扁平率を有する扁平状になると共に、本発明特定の窪みが形成される。
【0050】
また、本発明補強材は、エンボス加工以外にも、例えば、平滑なモノフィラメント面に砂を一定時間叩きつけるという方法によっても、製造することができる。
【0051】
上記により得られた、扁平状モノフィラメントに特定形態の窪みが形成された長い繊維状の補強材は、使用に際して、幅方向に切断して、短繊維補強材とする。短繊維補強材の長さとしては、通常、好ましくは5〜60mm程度、より好ましくは10〜50mm程度とするのが適当である。
【0052】
また、上記の長い繊維状補強材又は短繊維補強材は、必要に応じて、表面の親水化、活性化等の目的で、繊維表面を界面活性剤、分散剤、カップリング剤等で処理してもよいし、コロナ放電処理、紫外線照射、電子線照射等の処理をしてもよい。
【0053】
剥落防止用繊維補強コンクリート
本発明の剥落防止用繊維補強コンクリートは、上記の短繊維コンクリート補強材が、繊維混入率0.01体積%以上1.0体積%未満の割合で混入されていることを特徴とするものである。繊維混入率が0.01体積%未満ではコンクリート片の剥落防止効果が不十分となる場合があり、一方1.0体積%以上とするのは剥落防止目的としてはこれ以上の混入は不要でありコスト的に好ましくない。繊維混入率は、好ましくは0.01〜0.5体積%程度である。
【0054】
ここで、繊維混入率(FC、Fiber Content)は、式
FC=(V1/V2)×100 (III)
(式中、V1は繊維補強コンクリートの単位体積(1,000リットル=1m3)中に混入された補強繊維の体積(リットル)を示し、V2は繊維補強コンクリートの単位体積(1,000リットル=1m3)を示す。)で表される割合(体積%)である。
【0055】
本発明の繊維補強コンクリートは、特定量の上記短繊維コンクリート補強材を、常法に従って、各種コンクリートに混入することにより、調製できる。例えば、該補強材を、水、セメント、細骨材、粗骨材、混和剤等と共に混合し、その際に、通常、コンクリート中の該補強材の含有量が0.01体積%以上1.0体積%未満、好ましくは0.01〜0.5体積%程度となるように調整することにより、容易に調製できる。
【0056】
上記セメントとしては、例えば、普通セメント、早強セメント、超早強セメント、中庸熱セメント、低熱セメント、耐硫酸塩セメント等の各種ポルトランドセメント;ジェットセメント、アルミナセメント等の特殊セメント等を使用することができる。
【0057】
細骨材、粗骨材としては、例えば、川砂利、砕石、スラグ砕石等を使用することができる。また、混和剤としては、例えば、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤等を挙げることができる。
【0058】
また、繊維補強コンクリートのフレッシュ性状としては、具体的用途に応じて適宜調整すればよいが、例えば、高性能AE減水剤をセメント重量に対して0.3〜2.0重量%程度用い、スランプが2.5〜21cm程度、空気量が、1.0〜6.0体積%程度、特に2.0〜5.0体積%程度に調整するのが好ましい。ここで、本発明で用いる短繊維補強材は、フレッシュ性状に及ぼす影響が小さいという特性を有している。
【0059】
本発明の剥落防止用繊維補強コンクリートは、常法に従って、現場施工用、プレキャスト構造体用等として使用でき、剥落が有効に防止されたコンクリート構造体が得られる。特に、鉄道高架橋、道路橋、トンネル等に好適に使用でき、剥落が有効に防止されたコンクリート構造物が得られる。
【0060】
本発明の繊維補強コンクリートにより得られるコンクリート構造物は、ひび割れの生成及び進展が効果的に抑制され、コンクリート片の剥落が顕著に防止されており、又高い引張強度や曲げ強度を有するという特徴を有している。従って、本発明の繊維補強コンクリートは、例えば、鉄道高架橋、道路橋、トンネル等のセメントコンクリート構造物における、コンクリートの劣化に伴うコンクリート片の剥落の問題を好適に解消できる。また、トンネルのライニングや法面コンクリート等の吹き付けコンクリートの剥落防止にも極めて有効である。
【0061】
【実施例】
以下、実験例及び実施例を挙げて、本発明をより一層具体的に説明する。
【0062】
実験例1
ポリプロピレン樹脂(MFR3.0g/10min、測定温度230℃)に紡糸性向上の目的でポリエチレン樹脂(MFR4.0g/10min、測定温度190℃)を25重量%混ぜた樹脂混合物を使用して、扁平ノズルにより、モノフィラメントを紡糸した。この際、延伸条件、延伸倍率を変えることにより、設定引張強度で約3.5cN/dtex(低強力タイプ)、約5cN/dtex(中強力タイプ)及び約7cN/dtex(高強力タイプ)の3種類、太さ(繊度)で1,600dtex、2,200dtex及び4,400dtexの3種類である、合計9種類のモノフィラメントを得た。
【0063】
次いで、各モノフィラメントを15本平行に並べた状態で二つのエンボスロールの間を通してエンボス加工を行った。即ち、各モノフィラメントについて、上記状態で、エンボス加工用ロールのニップ圧を変えて、平面状底部を有する浅い窪み又は深い窪みの2種類のエンボス加工を行い、その両面に窪みが形成された扁平状モノフィラメントを得た。窪み部分の平面的形状は、図2のような正方形である。また、エンボス加工用でない二つのロールを用いて、同様のニップ圧で、加圧加工を行い、窪みのない扁平状モノフィラメントを得た。このようにして窪みのないもの、浅い窪みを形成したもの及び深い窪みを形成したものの27種類の扁平状モノフィラメントを得た。
【0064】
得られた各サンプルの形態の測定を、SEM(走査型電子顕微鏡)写真、デジタルノギス(PEACOCK社製、DIAL THICK−NESS GAUGE、MODEL H.Mitutoyo Digimatic Ca−liper)及びルーペを使用して、行った。
【0065】
次に、長さ30mm×幅16mm×高さ11mmの直方体容器2個を使い、その内の1個の16mm×11mmの面の中央部に上記の各モノフィラメントの30mmカットサンプル1片の一端から15mmが埋設されるようにセメントを水で練り上げたものを詰めた。他端の15mm側にも同様に処し、2個の練り上げセメントの直方体が接する中央部を、未固化セメント同士が接触固化しないように薄い離型膜材で分離した。このようにして上記27種類の扁平状モノフィラメントのそれぞれについて、同様に埋め込み、7日間の固化日数経過後に、固化物の直方体部分をチャックで掴んだ状態で引張り試験機に掛けて、各水準サンプルの引抜け抵抗力を調べた。
【0066】
表1に、繊度1,600dtexのモノフィラメントを用いて得たサンプルの形態及び試験結果を記す。表1において、No.1〜3は低強力タイプのモノフィラメントを、No.4〜6は中強力タイプのモノフィラメントを、No.7〜9は高強力タイプのモノフィラメントを、それぞれ用いて得たサンプルである。また、表1における引張強度は、エンボス加工又は加圧加工後の測定値である。
【0067】
【表1】
【0068】
表1において、窪み数が片面当たり10個(両面で20個)形成されたサンプル(No.2、3、5、6、8及び9)は、いずれも、前記式(I)の関係を満足するものであった。
【0069】
表2に、繊度2,200dtexのモノフィラメントを用いて得たサンプルの形態及び試験結果を記す。表2において、No.1〜3は低強力タイプのモノフィラメントを、No.4〜6は中強力タイプのモノフィラメントを、No.7〜9は高強力タイプのモノフィラメントを、それぞれ用いて得たサンプルである。表2における引張強度は、エンボス加工又は加圧加工後の測定値である。
【0070】
【表2】
【0071】
表2において、窪み数が片面当たり10個(両面で20個)形成されたサンプルの内No.5以外のもの(No.2、3、6、8及び9)は、いずれも、前記式(I)の関係を満足するものであった。
【0072】
表3に、繊度4,400dtexのモノフィラメントを用いて得たサンプルの形態及び試験結果を記す。表3において、No.1〜3は低強力タイプのモノフィラメントを、No.4〜6は中強力タイプのモノフィラメントを、No.7〜9は高強力タイプのモノフィラメントを、それぞれ用いて得たサンプルである。表3における引張強度は、エンボス加工又は加圧加工後の測定値である。
【0073】
【表3】
【0074】
表3において、全てのサンプル(No.1〜9)は、いずれも、前記式(I)の関係を満足しないものであった。
【0075】
表1〜3の結果より、次の点が明らかである。引抜け抵抗力をみると、各繊度内における扁平状モノフィラメントの引張強度と引抜け抵抗力に正比例関係は無く、必ずしも低強力タイプより高強力タイプの方に高い値が出るとは限らない。
【0076】
また、扁平状モノフィラメントの片面の長手方向2.54cm当たりの平面図面積(S1)と窪みの平面状底部の合計面積(S2)との比(S2/S1)の値が大きいほど抜けにくい結果(引抜け抵抗力が大きい値)になっている。これは、窪みがある程度の底面積を有する方が良いことを示す。これは、一定長中に同数の窪みが存在する時、V字窪みよりも底面積を有する窪みのほうがセメントとの接触面積が大きくなるためである。
【0077】
また、扁平状モノフィラメントの片面の長手方向2.54cm当たりの面積(S1)と窪み部分以外の平面部分の面積(S3)との比(S3/S1)が0.20〜0.85の範囲であるものがよい。これはモノフィラメントに引張力が作用すると、窪み部分に侵入したコンクリートから強い押し圧を受ける。このコンクリートの押し圧に削り取られにくくするには窪み部分と窪み部分との間の仕切り部(ここでは平滑部がそれに該当する)を厚くしたほうがよいからである。
【0078】
また、扁平状モノフィラメントの最大厚さ(T1)と窪みの平面状底部における最小厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.7程度以下に高い引抜け抵抗力が出ている。これは、単に窪みを作っても浅い窪みでは効果が出ない領域があるということであり、窪みの深い方がコンクリートとの付着力が大きいことを示している。当然、窪み無しのモノフィラメントは境界面でアンカー効果が無いために滑りやすくて小さな引抜け抵抗力しか出ていない。また、T2/T1比が、0.1未満になっても引抜け抵抗力は低くなるが、これは窪みが深すぎるためにモノフィラメント強度が低下して引張力作用時にモノフィラメントが切断してしまうからである。
【0079】
従って、ポリオレフィン系樹脂等のモノフィラメントの強度について必ずしも高強度でなくても高い引抜け抵抗力が出せること、窪みを的確な範囲内の形状にすることによりコンクリートの補強効果や剥落抑制効果が顕著に向上することが判明した。
【0080】
実施例1
実験例1の表2のNo.6のサンプルを、幅方向に切断して、長さ30mmの短繊維補強材を得た。
【0081】
上記短繊維補強材を用いて、繊維補強コンクリートを次の配合に基づき、調製した。即ち、普通ポルトランドセメント315kg/m3、水173kg/m3、砂(FM2.90)860kg/m3、砂利(FM6.87)949kg/m3及びリグニン系AE減水剤セメント重量に対して0.5重量%を、容量55リットルの強制練り2軸型ミキサを用いて、90秒間練り混ぜた後、上記短繊維補強材2.73kg/m3を加えて、更に30秒間練り混ぜた。この配合において、W/Cは55%、s/aは48.6%、繊維混入量は0.3体積%であった。
【0082】
練り混ぜられた繊維補強コンクリートのフレッシュ性状は、スランプ(JISA 1101に準じて測定)9.5cm、空気量(JIS A 1108に準じて測定)2.3体積%であった。
【0083】
この繊維補強コンクリートを用いて、JSCE G551及びJSCE G552に準じて、圧縮強度及び曲げ強度を調べた。圧縮強度についてはφ10×20cmの供試体を、曲げ強度については10×10×40cmの供試体を、それぞれ用いた。また、比較のため、補強繊維を混入していないコンクリートについても、同様に強度を調べた。材齢7日の供試体各3個の平均値である、試験結果を、表4に示す。
【0084】
【表4】
【0085】
次に、下記試験方法により、上記繊維補強コンクリートのコンクリート片の剥落防止性能試験を行った。
【0086】
剥落防止性能試験(擬似的評価):図3に示す様な径20mmの小孔を有する450×450×150mmの直方供試体を作製し、20℃、7日間の気中養生を経た後、この小孔に市販品の静的破砕剤(水粉体比=25%)を充填し、ひび割れを発生させた。図3において、5は直方供試体を、6は径20mmの小孔を、それぞれ示す。市販品の静的破砕剤としては、住友大阪セメント(株)製の石灰系静的破砕剤(商品名「Sマイト」)を使用した。この擬似的評価においては、静的破砕剤充填後の最大ひび割れ幅、及びひび割れにより破砕された供試体の分割数により剥落防止性能を評価した。
【0087】
図4は、上記剥落防止性能試験(擬似的評価)における、静的破砕剤充填後の最大ひび割れ幅(mm)と繊維混入率(体積%)の関係を示すグラフである。このグラフには、繊維混入率0.3体積%の場合に加えて、0.15体積%の場合及び0.45体積%の場合の結果も記載した。この0.15〜0.45体積%の範囲では、混入率に比例して、ひび割れ幅が減少する(即ちひび割れ幅抑制効果が高くなる)ことが明らかである。●は本発明の補強コンクリートについての結果を、又○は補強繊維を混入していないコンクリートについての結果を示す。
【0088】
図5は、図4の結果を、最大ひび割れ幅(mm)と繊維混入本数(×104本/m3)の関係として示すグラフである。この結果から、20〜60万本/m3の範囲では、混入本数に比例して、ひび割れ幅が減少する(即ちひび割れ幅抑制効果が高くなる)ことが明らかである。●は本発明の補強コンクリートについての結果を、又○は補強繊維を混入していないコンクリートについての結果を示す。
【0089】
図6は、上記剥落防止性能試験後(擬似的評価)の直方供試体の分割数と繊維混入本数(×104本/m3)の関係を示すグラフである。このグラフより、繊維混入本数が約30万本/m3程度以上の場合には、静的破砕剤の充填による膨張に伴いひび割れが生じた場合でも、補強繊維の混入により、供試体は一体性を保ち、剥落が防止されることが判る。●は本発明の補強コンクリートについての結果を、又○は補強繊維を混入していないコンクリートについての結果を示す。
【0090】
さらに、下記試験方法により、上記繊維補強コンクリートのコンクリート片の剥落防止性能試験を行った。
【0091】
剥落防止性能試験(現実的評価):図7に示す様な径30mmの小孔を有する500mmの立方供試体を作製し、20℃、7日間の湿布養生を経た後、この小孔の深さ方向中心部に長さ200mmの油圧チューブを挿入し、内圧をかけ、コンクリート表面にひび割れを生じさせた。径30mmの小孔は、コンクリート表面からかぶり10mmの位置に配置した。図7において、7は立方供試体を、8は径30mmの小孔を、それぞれ示す。その後、この小孔に、(市販品の静的破砕剤)/(石灰石粉)=70/30(重量比)で石灰石粉を混入した静的破砕剤(水粉体比=25%)を充填し、剥落防止性能を調べた。ここで、市販品の静的破砕剤に石灰石粉を混入したのは、静的破砕剤の膨張量を調節するためであって、より現実の剥落現象に近い状況を再現するためである。市販品の静的破砕剤としては、住友大阪セメント(株)製の石灰系静的破砕剤(商品名「Sマイト」)を使用した。
【0092】
図8は、繊維混入率0.3体積%の本発明繊維補強コンクリートについて、上記剥落防止性能試験(現実的評価)終了後の図7の立方供試体の外観を撮影した図面に代わる写真である。図8より、コンクリート片の剥落が完全に防止されていることが判る。
【0093】
図9は、補強繊維を混入していないコンクリートについて、上記剥落防止性能試験(現実的評価)終了後の図7の立方供試体の外観を撮影した図面に代わる写真である。図9より、かぶり部分に相当するコンクリート片がすべて剥落していることが判る。
【0094】
【発明の効果】
本発明の繊維補強コンクリートは、使用した短繊維補強材が、(1)適当な本数の繊維がコンクリート片の剥落を確実に防止できるようにコンクリート中に好適に分散していること、(2)コンクリートの配合やフレッシュ性状に及ぼす影響が小さいこと、(3)安価であること等の剥落防止用繊維としての要求性能を全て充足し、優れた剥落防止性能を有している。また、使用した短繊維補強材が剥落防止性能に優れていることにより、剥落防止に必要と考えられる繊維混入本数を確保しつつ、繊維混入率を低減することが可能になり、コスト低減の面で、大きな効果が得られる。更に、該補強材がフレッシュ性状に及ぼす影響が小さいため、施工性が良好である。
【0095】
従って、本発明の繊維補強コンクリートは、例えば、鉄道高架橋、道路橋、トンネル等のセメントコンクリート構造物における、コンクリートの劣化に伴うコンクリート片の剥落の問題を、好適に解消できる。また、コンクリート構造物の強度、特に引張強度、曲げ強度等が向上している。
【0096】
上記本発明の効果は、使用したコンクリート補強材が、好ましくは次のような形態を有することに起因すると考えられる。
【0097】
即ち、本発明で使用する補強材は、特定の扁平状モノフィラメントに、特定の関係式を満足する深さの窪みを形成したことにより、更には窪みが特定形態であり、又該窪みを特定数形成したことにより、コンクリートとの付着性が著しく向上しており、これを用いたコンクリート構造物のクラックの進展を顕著に抑えたり、高い引抜け抵抗力や曲げ強度を有するコンクリート構造物が得られる。
【0098】
また、本発明で用いる補強材は、コンクリートとのアンカー効果が高いことにより、コンクリート構造物に荷重がかかりひび割れが発生したときに、そのひび割れの進展を防ぐ効果が発揮され、ひいてはコンクリート構造体の破壊強度が向上する効果が期待出来る。更に、吹き付けコンクリートの剥落防止に極めて有効である。
【0099】
また、本発明で用いる補強材は、セメント等と容易に混合でき、安全面で問題がなく、高強度を付与できるため、補強材使用量を減少でき、コスト的にも有利であり、比較的高強度でない素材を有効に使用できるという利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明で用いる補強材を構成するモノフィラメントの繊度の平方根X((dtex)1/2)と窪みの深さY(mm)の関係式(II)の直線を示したグラフである。
【図2】図2は、本発明で用いるコンクリート補強材の一例を示す模式図であり、(a)は補強材の扁平面の一方を示す平面図であり、(b)及び(c)は(a)のA1−A2切断線における断面図である。図2の(a)における上端及び下端の波線は、それぞれ、同様の形状が、長手方向に更に続いていることを示す。
【図3】図3は、コンクリート片の剥落防止性能を調べるための径20mmの小孔を有する450×450×150mmの直方供試体を示す図である。
【図4】図4は、コンクリート片の剥落防止性能試験(擬似的評価)における静的破砕剤充填後の最大ひび割れ幅(mm)と繊維混入率(体積%)の関係を示すグラフである。このグラフにおいて、●は本発明の補強コンクリートについての結果を、又○は補強繊維を混入していないコンクリートについての結果をそれぞれ示す。
【図5】図5は、コンクリート片の剥落防止性能試験(擬似的評価)における静的破砕剤充填後の最大ひび割れ幅(mm)と繊維混入本数(×104本/m3)の関係を示すグラフである。このグラフにおいて、●は本発明の補強コンクリートについての結果を、又○は補強繊維を混入していないコンクリートについての結果をそれぞれ示す。
【図6】図6は、コンクリート片の剥落防止性能試験(擬似的評価)後の直方供試体の分割数と繊維混入本数(×104本/m3)の関係を示すグラフである。このグラフにおいて、●は本発明の補強コンクリートについての結果を、又○は補強繊維を混入していないコンクリートについての結果を示す。
【図7】図7は、コンクリート片の剥落防止性能を調べるための径30mmの小孔を有する500mmの立方供試体を示す図である。
【図8】図8は、繊維混入率0.3体積%の本発明繊維補強コンクリートの剥落防止性能試験(現実的評価)終了後の立方供試体の外観を撮影した図面に代わる写真である。
【図9】図9は、補強繊維を混入していないコンクリートの剥落防止性能試験(現実的評価)終了後の立方供試体の外観を撮影した図面に代わる写真である。
【符号の説明】
1 偏平状のモノフィラメント繊維
2 窪みの平面状底部に通じる斜面部分
3 窪みの平面状底部
4 補強材の膨らみ部分
5 直方供試体
6 径20mmの小孔
7 立方供試体
8 径30mmの小孔
T1 補強材の最大厚さ
T2 窪みの平面状底部における最小厚さ
W 補強材の最大幅。
Claims (5)
- ポリオレフィン系繊維又はポリアミド系繊維のモノフィラメントからなり、その形状が扁平状であり、その片面又は両面に平面状底部を有する窪みが複数形成されており、かつ、該モノフィラメントの繊度の平方根X((dtex)1/2)と窪みの深さY(mm)との関係が、式
0.011618X−0.43230≦Y≦0.011618X−0.02477 (I)
(式中、窪みの深さYは、該扁平状モノフィラメントの最大厚さ(T1)と窪みの平面状底部における最小厚さ(T2)との差(T1−T2)で示される。)を満足し、その長手方向の長さが5〜60mmの範囲である短繊維コンクリート補強材を、繊維混入率0.01体積%以上1.0体積%未満の割合で含有することを特徴とする剥落防止用繊維補強コンクリート。 - コンクリート補強材を、繊維混入率0.01〜0.5体積%の割合で含有する請求項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。
- コンクリート補強材の引張強度が、2.0〜6.0cN/dtexの範囲である請求項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。
- コンクリート補強材が、
(1)その最大幅(W)が0.30〜2.00mmで、扁平率が最大厚さ(T1)と最大幅(W)との比(W/T1)で1.5〜8の範囲であり、
(2)その両面に、平面状底部を有する窪みが長手方向2.54cm当たり合計で12〜48個形成されており、
(3)片面の長手方向2.54cm当たりの平面図面積(S1)と窪みの平面状底部(平面状底部に通じる斜面部分を含まず)の合計面積(S2)との比(S2/S1)が0.02〜0.42の範囲であり、
(4)片面の長手方向2.54cm当たりの平面図面積(S1)と該平面図面積から窪み部分(平面状底部及び斜面部分の合計)を除いた面積(S3)との比(S3/S1)が0.20〜0.85の範囲であり、且つ
(5)最大厚さ(T1)と窪みの平面状底部における最小厚さ(T2)との比(T2/T1)が0.10〜0.82の範囲のものである請求項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。 - モノフィラメントが、ポリプロピレン系繊維である請求項1に記載の剥落防止用繊維補強コンクリート。
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