JP2009291889A - 金属部材の製造方法及び金属部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】ショットピーニング処理で発生する角部及び縁部の巻き込みによる疲労寿命の劣化を防止するため、簡易な工程によりショットピーニング処理される金属部材の疲労寿命を向上させる方法を提供する。
【解決手段】金属部材10の角部及び縁部のバリを除去するバリ取り工程と、該バリ取り工程の後に面取り処理を施すことなく、平均粒径が10μm以上400μm以下の粒子を、前記金属部材の表面に投射する投射工程とを有する金属部材の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、ショットピーニング処理により疲労寿命が向上した金属部材の製造方法及び金属部材に関する。
航空機や自動車などの構造部材に用いられる金属部材は、疲労寿命を向上させるためにショットピーニング処理による表面改質が施される。ショットピーニング処理とは、粒径が500μmから800μmの粒子を、圧縮空気と共に噴射して、または、羽根車の回転により加速して、金属部材表面に衝突させることにより、金属部材表面の硬度を上昇させ、一定の深さで圧縮残留応力を持った層を形成する方法である。
金属部材の疲労寿命の向上効果を更に高める方法として、より細かい微粒子(例えば平均粒径400μm以下)を用いた微粒子ショットピーニング処理が、非特許文献1に開示されている。
片岡泰弘ら、「微粒子ピーニングとコーティング法によるアルミニウム合金の表面改質」、愛知県産業技術研究所研究報告(2002)
図1に示すように、機械加工後に角部及び縁部のバリを除去した金属部材10の表面(被処理面)11にショットピーニング処理を施すと、金属部材の角部及び縁部にバリや巻き込み12が発生する。角部および縁部にバリや巻き込みが発生すると、角部及び縁部を起点にして金属部材の疲労寿命が劣化する。特に、大径粒子を用いたショットピーニング処理では、金属部材の変形量が大きいため、角部及び縁部の巻き込みによる疲労寿命の劣化が生じやすいことが問題となっていた。
そこで、AMS(米国航空宇宙材料規格)2430に記載されるように、ショットピーニング処理の前処理として、金属部材の角部及び縁部を円弧状に面取り(丸面取り)することが必須とされていた。角部及び縁部を丸面取りすることにより、ショットピーニング処理による角部及び縁部の巻き込みやバリによる疲労寿命の低下を防止することができる。微粒子ショットピーニングにおいても、同様に前処理として金属部材の角部及び縁部の丸面取りを行っていた。
実機生産においては、疲労強度の劣化を確実に防止するために、通常の機械加工時よりも大きい丸面取りが施されていた。しかし、大きい丸面取りを施すために、前処理工程に多大な時間を要することが問題となっていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、従来よりも簡易な工程により、疲労寿命が向上した金属部材を製造する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、金属部材の角部及び縁部のバリを除去するバリ取り工程と、該バリ取り工程の後に面取り処理を施すことなく、平均粒径が10μm以上400μm以下の粒子を、前記金属部材の表面に投射する投射工程とを有する金属部材の製造方法を提供する。
本発明者らが検討した結果、平均粒径が10μm以上400μm以下の粒子を金属部材の表面に投射する微粒子ショットピーニング処理においては、ショットピーニング処理の前処理として行われていた角部及び縁部の面取り工程を実施しなくても、ショットピーニング処理後の金属部材の角部及び縁部での巻き込みやバリの発生を防止することができることを見出した。本発明の製造方法によれば、角部及び縁部の面取り工程を省略しても疲労寿命の劣化を防止することができるため、金属部材の製造に要する時間を大幅に短縮することができるとともに、ショットピーニング処理による疲労寿命向上効果を保持した金属部材を製造することができる。微粒子ショットピーニング処理の前に、金属部材の角部及び縁部のバリを除去することによって、疲労寿命の劣化を確実に防止することができる。
また、本発明は、バリが除去された角部及び縁部に面取り処理が施されることなく、平均粒径が10μm以上400μm以下の粒子が投射されることによって、表面が処理された金属部材を提供する。
このように、角部及び縁部に面取り処理が施されることなく、平均粒径が10μm以上400μm以下の粒子を投射する微粒子ショットピーニング処理が表面に施された金属部材は、疲労寿命の劣化が防止された金属部材となる。また、角部及び縁部が面取りされていないため、部材の形状が維持され、良好な品質を有する金属部材とすることができる。
本発明によれば、前処理としての角部及び縁部の面取り工程を省略して金属部材の製造に要する時間を大幅に短縮するとともに、疲労寿命の劣化を防止した金属部材を製造することができる。さらに、品質が良好な金属部材を得ることができる。
以下に、本発明に係る金属部材の製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態の金属部材は、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金などの軽金属とされる。
上記金属部材の角部及び縁部に、微粒子ショットピーニング前の処理として通常実施される円弧状の丸面取り処理が施されることなく、金属部材表面に微粒子ショットピーニング処理が施される。ただし、微粒子ショットピーニング処理前に、角部及び縁部が糸面取りされ、バリが除去されることが好ましい。
本実施形態の微粒子ショットピーニング処理の投射粒子(ショットメディア)は、その材質による疲労寿命向上効果への格段の差はないが、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子などのセラミックス粒子が好適例として挙げられる。投射粒子の平均粒径は、10μm以上400μm以下、好ましくは20μm以上250μm以下、より好ましくは30μm以上150μm以下とされる。投射粒子の平均粒径が400μmを超えると、ショットピーニング処理による金属部材の変形量が大きく、角部及び縁部に巻き込みが発生して疲労寿命の低下に繋がる。平均粒径が10μmより小さい場合、安定した投射を実施することが困難となる。
ショットピーニングの強さを表す指標であるアークハイト値(インテンシティ)は、0.05mmN以上0.3mmN以下、好ましくは0.075mmN以上0.2mmN以下、より好ましくは0.08mmN以上0.095mmN以下とされる。上記のアークハイト値の値となるように、粒子投射時の圧縮空気の噴射圧力を設定する。
ショットピーニング処理におけるカバレージは、100%以上1000%以下とすることが好ましい。カバレージが100%未満であると、ショットされない部分が残存するため、十分な疲労寿命向上効果が得られない。また、カバレージが1000%を超えると、表面粗度が増加するため、十分な疲労寿命向上効果が得られない。
上記条件で微粒子ショットピーニング処理を施した金属部材は、最表面またはその近傍に、高い圧縮残留応力が存在する。そのため、表面が強化され、疲労寿命が向上する。また、上記条件の微粒子ショットピーニング処理では、従来必須とされていた角部及び縁部の面取り処理工程を実施しなくても、金属部材の角部及び縁部に巻き込みが発生しない。そのため、角部及び縁部を起点とした疲労劣化が生じにくくなる。さらに、角部及び縁部の形状が維持されるため、品質の良好な金属部材となる。
特に、微粒子ショットピーニング処理前に金属部材の角部及び縁部のバリを除去した場合は、角部及び縁部を起点とした疲労劣化を確実に防止されるとともに、金属部材の品質が更に向上するので好ましい。
本実施形態の金属部材の製造方法では、角部及び縁部の面取り処理工程が省略されるため、製造の所要時間が大幅に削減される。
(実施例)
板状のアルミニウム合金(7050−T7451、190mm×45mm×5mm)からなる供試体の角部及び縁部のバリを除去するために、糸面取り(0.075mm(0.003インチ)の角仕上げ)を施した。
投射粒子として、セラミックス粒子(アルミナ/シリカセラミックス粒子、平均粒径45μm)を用い、噴射圧力0.4MPa、投射時間30秒の条件で、上記供試体表面にショットピーニング処理を施した。なお、上記条件でのアークハイト値は0.08mmN、カバレージは100%以上であった。
ショットピーニング処理後の実施例の供試体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、角部及び縁部での巻き込みやバリの発生は見られなかった。また、角部及び縁部は、上記糸面取りの形状が維持されていた。
(比較例1)
実施例と同様の供試体の角部及び縁部に、0.75mm(0.03インチ)の円弧状の丸面取り処理を施した。その後、実施例と同様の条件で、供試体表面にショットピーニング処理を施した。
ショットピーニング処理後の比較例1の供試体を走査型電子顕微鏡で観察した結果、角部及び縁部での巻き込みやバリの発生は見られなかった。また、角部及び縁部は、上記丸面取りの形状となっていた。
(比較例2)
実施例と同様の供試体の角部及び縁部に糸面取り(0.075mm(0.003インチ)の角仕上げ)を施し、バリを除去した。その後、投射粒子として、金属製粒子(カットワイヤショットAWCR28、平均粒径0.8mm)を用い、噴射圧力0.1MPa、上記供試体表面にショットピーニング処理を施した。なお、上記条件でのアークハイト値は0.180mmA、カバレージは100%以上であった。
ショットピーニング処理後の比較例2の供試体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、角部及び縁部に巻き込みやバリが発生していることが確認できた。
(比較例3)
実施例と同様の供試体の角部及び縁部を、0.75mm(0.03インチ)の円弧状の丸面取り処理を施した。その後、比較例2と同様の条件で、供試体表面にショットピーニング処理を施した。
ショットピーニング処理後の比較例3の供試体を走査型電子顕微鏡で観察したところ、角部及び縁部に巻き込みやバリの発生は確認できなかった。しかし、角部及び縁部は、丸面取り処理直後の形状が維持されず、上記丸面取り処理により付与された円弧よりも大きい弧を有する角部及び縁部となっていた。
(比較例4)
実施例と同様の供試体の角部及び縁部に糸面取り(0.075mm(0.003インチ)の角仕上げ)処理を施し、バリを除去した。比較例4の供試体にはショットピーニング処理を施さなかった。
実施例及び比較例1乃至比較例4の供試体について、一軸疲労試験を実施した。試験条件は、応力比0.1、最大応力344.7MPa、周波数13Hzとした。
図2に、各供試体の疲労寿命を示す。微粒子ショットピーニング処理を施した実施例及び比較例1の供試体は、大径粒子によるショットピーニング処理を施した比較例2及び比較例3の供試体、及び、ショットピーニング処理を実施しなかった比較例4の供試体と比べて、疲労寿命が大幅に向上した。実施例は、面取り処理を行った比較例1とほぼ同程度の疲労寿命を示した。すなわち、微粒子ショットピーニング処理においては、角部及び縁部を大きく丸面取りしなくても、優れた疲労寿命を得ることができた。
ショットピーニング処理による金属部材の角部及び縁部の巻き込みを表した模式図である。 実施例及び比較例の供試体の疲労寿命を示すグラフである。
符号の説明
10 金属部材
11 被処理面
12 巻き込み

Claims (2)

  1. 金属部材の角部及び縁部のバリを除去するバリ取り工程と、
    該バリ取り工程の後に面取り処理を施すことなく、平均粒径が10μm以上400μm以下の粒子を、前記金属部材の表面に投射する投射工程とを有する金属部材の製造方法。
  2. バリが除去された角部及び縁部に面取り処理が施されることなく、平均粒径が10μm以上400μm以下の粒子が投射されることによって、表面が処理された金属部材。
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