JP2011158380A - 金属材料の介在物の抽出方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間の少ないサイクル数で疲労試験を場合であっても、金属試験片の内部を起点としてこれを疲労破壊し、この破断面から金属試験片の内部の介在物を抽出することができる、金属材料の介在物の抽出方法を提供する。
【解決手段】金属材料から金属試験片を製作する工程と、該金属試験片の表面に、ショットピーニング処理、浸炭処理、または鏡面仕上げ処理の少なくとも1つの表面処理を行う工程と、該表面処理された金属試験片に対して、前記金属材料の疲労強度よりも大きい繰り返し応力で疲労試験を行うことにより、前記金属試験片を疲労破壊させ、該疲労破壊した金属試験片の破断面に、前記金属試験片に含有する介在物を抽出させる工程と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、金属材料中に含有する介在物の抽出方法に係り、特に、疲労試験を行うことにより、その破断面(破面)から介在物を好適に抽出することができる介在物の抽出方法に関する。
高強度鋼などの金属材料は、内部の非金属介在物や組織割れを起点として疲労破壊する。この疲労破壊はフィッシュアイ破壊と呼ばれ、特に機械構造物の疲労破壊の原因となっている。
そこで、このような金属材料の疲労破壊の起点となる介在物の量、大きさ、及びその種類を、予め試験により特定(抽出)しておくことは、安全設計を行う上で重要なことである。この金属材料に含まれる介在物を抽出方法として、例えば以下に示す方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
まず、金属材料からなる疲労試験用の試験片を準備する。次に、試験片に対して、引張圧縮疲労試験機(例えば超音波疲労試験機)を用いて、引張り圧縮応力を繰り返し試験片に作用させ、試験片を疲労破壊する。そして、この破壊した試験片の破断面に露出する介在物を分析することにより、介在物を抽出している。
特開2004−45363号公報
しかしながら、試験片を疲労破壊させるには、試験片に対して、引張り圧縮応力を長時間(ギガサイクル)付与しなければならなかった。そこで、試験時間を短縮するためには、この繰り返し付与する引張り圧縮応力をより高くすることも考えられるが、この場合、内部の介在物が破壊の起点とならず、試験片のその表面が起点となってしまう。
これは、そもそも一般的な品質の鋼材などの金属材料には、数μ〜数百μm程度の大きさの介在物が含まれており、このような材料を用いて疲労試験を行った場合、高応力領域(疲労強度以上)で、試験片の表面のほうが、内部(介在物)よりも弱く、破断(破壊)の起点となりやすいからである。
したがって、内部起点(内部の介在物を起点)として、試験片を破断させるためには、必然的に低応力(疲労強度以下)の条件で、長時間(10サイクル以上)試験をせざるを得なかった。
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高負荷(高応力)で疲労試験を行った場合、すなわち短時間の少ないサイクル数で疲労試験を場合であっても、金属試験片の内部を起点としてこれを疲労破壊し、この破断面に金属試験片の内部の介在物を抽出することができる、金属材料の介在物の抽出方法を提供することにある。
このような課題を解決すべく、本発明に係る金属材料の介在物の抽出方法は、金属材料から金属試験片を製作する工程と、該金属試験片の表面に、ショットピーニング処理、浸炭処理、または鏡面仕上げ処理の少なくとも1つの表面処理を行う工程と、該表面処理された金属試験片に対して疲労試験を行うことにより、前記金属試験片を疲労破壊させ、該疲労破壊した金属試験片の破断面に、前記金属試験片に含有する介在物を抽出させる工程と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、金属試験片の表面に対して、ショットピーニング処理、浸炭処理、または鏡面仕上げ処理の少なくとも1つの表面処理を行うことにより、金属試験片の表面は強化される。具体的には、ショットピーニング処理の場合には、硬質粒子を金属試験片の表面に投射することにより、金属試験片の表層の圧縮残留応力を付与し、金属試験片の表面が強化される。また、浸炭処理の場合には、金属試験片の表面に、炭素が浸透拡散し、金属試験片の表面が強化される。さらに、鏡面仕上げ処理を行った場合には、金属表面の表面粗さが小さくなるので、金属試験片の表面が強化される。
このように、表面が強化された金属試験片に対して、金属材料の疲労強度よりも大きい応力を繰り返し付与することにより、金属試験片の疲労試験を行う。この際、金属試験片の表面を起点とせず、金属試験片の内部を起点として、低サイクルで疲労破壊が生じる。この結果、金属試験片の破断面には、金属材料の内部に含有する介在物と同じ、疲労破壊の起点となる介在物が抽出される。
そして、金属試験片の内部の介在物を抽出後、SEMやEDAXなどを用いることより、金属試験片の破断面に含まれる介在物の種類、大きさ、または量を分析し検出する。これにより、金属材料の内部に含有する介在物の種類、その大きさ、またはその量を特定することができる。
本発明によれば、高負荷(高応力)で疲労試験を行って、短時間の少ないサイクル数で、金属試験片の内部を起点としてこれを疲労破壊し、この破断面に金属試験片の内部の介在物を抽出することができる。
実施形態に係る金属材料の介在物の抽出方法において、金属材料から製作した金属試験片の形状の一例を示した図。 本実施形態に係る金属材料の介在物の抽出方法において、金属試験片の表面処理として、その表面にショットピーニング処理を行った際の表面粗さと、圧縮残留応力及び疲労強度の関係を示した図。 本実施形態に係る金属材料の介在物の抽出方法において、金属試験片の表面処理として、その表面に浸炭処理を行った際の表面硬さと疲労強度の関係を示した図。 本実施形態に係る金属材料の介在物の抽出方法において、金属試験片の表面処理として、その表面に、鏡面仕上げ処理を行った際の表面粗さと疲労強度の関係を示した図。 表面処理(表面強化処理)を行った金属試験片と、この処理を行っていない場合のSN線図。 実施例1〜3及び比較例1〜3の金属試験片の表面粗さと、圧縮残留応力及び疲労強度の関係を示した図。 実施例4及び5及び比較例1及び4の金属試験片の表面硬さと疲労強度の関係を示した図。 実施例6及び比較例1及び6の金属試験片の表面粗さと疲労強度の関係を示した図。
以下、図面を参照して、実施の形態に基づき本発明を説明する。図1は、本発明に係る金属材料の介在物の抽出方法において、金属材料から製作した金属試験片の一例を示した図である。なお、図1に示す数値は、金属試験片の寸法の一例である。
本実施形態では、まず、図1に示すように、内部の介在物を抽出すべき金属材料を準備し、この金属材料から超音波疲労試験用の金属試験片を製作する。この金属試験片の材料としては、例えば、低・中強度鋼や、チタン合金などを挙げることができる。
次に、図2〜4に示すような条件となるように、金属試験片の表面処理を行い、金属試験片の表面を強化させ、金属試験片の疲労強度を高める。ここで、図2は、金属試験片の表面にショットピーニング処理を行った際の表面粗さと、圧縮残留応力及び疲労強度の関係を示した図であり、図3は、金属試験片の表面に、浸炭処理を行った際の表面硬さと疲労強度の関係を示した図であり、図4は、金属試験片の表面に、鏡面仕上げ処理を行った際の表面粗さと疲労強度の関係を示した図である。
まず、図2に示す材料特性を得るために、ショットピーニング処理により、金属試験片の表面に、例えば、セラミック粒子等の金属材料よりも硬質の粉末を吹き付ける。これにより、金属試験片の表層に圧縮残留応力を付与するので表面が強化され、金属試験片の疲労強度σw1をさらに高めることができる。
この際に、ショットピーニングにより、金属試験片の表面粗さが、大きくなってしまうと、図2に示すように、金属材料そのもの(表面処理を行っていない試験片)の疲労強度σw1よりも小さくなる。このため、この疲労強度σw1よりも小さい疲労強度とならないように、表面に圧縮残留応力と表面粗さを付与するような条件で、ショットピーニング処理を行うことが重要である。
また、図3に示す材料特性を得るために、浸炭処理により、金属試験片を、例えば炭化水素系ガス雰囲気下で加熱することにより、金属試験片の表面及び表層を浸炭する。これにより、金属試験片の表面及び表層の表面硬さは向上するので表面が強化され、金属試験片の疲労強度σw1をさらに高めることができる。
また、図4に示す材料特性を得るために、研磨による鏡面仕上げ処理により、金属試験片の表面の表面粗さを小さくする。これにより、金属試験片の表面が強化され、金属試験片の疲労強度σw1をさらに高めることができる。
表面強化処理を行った表面処理された金属試験片を、超音波疲労試験機にセットし、疲労試験を行う。なお、図5は、上述した表面処理(表面強化処理)を行った金属試験片と、この処理を行っていない場合のSN線図である。
具体的には、この試験片の疲労強度は、図5に示す、金属材料の疲労強度σw1よりも大きくなるので(疲労強度σw2)、この疲労強度σw2で繰り返し応力を付与する疲労試験を行うことにより、前記金属試験片を疲労破壊させることができる。これにより、表面強化処理をしていない金属材料のサイクル数(cycle1)よりも、より少ないサイクル数cycle2で、すなわち、短時間で金属試験片は疲労破壊する。
この疲労破壊した金属試験片の破断面には、疲労破壊の原因となった介在物(内部介在物)が起点として抽出される。また、別の態様としては、表面処理を行った金属試験片に対して、疲労強度σw1の繰り返し応力を付与した疲労試験を行った場合であっても、従来強度ばらつきのため表面起点で折損(破断)していた試験片が内部起点で折損するので、その介在物の抽出確率を上げることができる。
さらに、疲労破壊した金属試験片の破断面において、抽出された介在物を特定する。具体的には、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して、撮影した破断面から、介在物の寸法及びその量を測定する。また、欠陥の種類はEDAXで分析することにより特定する。このようにして、金属材料の内部に含有する介在物の種類、その大きさ、またはその量を特定することができる。
以下に示す実施例により、本発明を説明する。
[実施例1]
まず、金属材料として、クロム鋼(JIS規格SCr20)の焼入れ焼き戻し材を準備し、図1に示す形状の金属試験片を製作した。この金属試験片は、表面粗さが、最大高さ:1μm、圧縮残留応力:σγ500MPa、疲労強度σw:600MPa、表面硬さ(内硬):HV550であった。
なお表面粗さ測定は、JIS B 0601の最大高さRzにより行った。残留応力測定は、X線により残留応力ピーク値(MPa)を測定することで行い、これを圧縮残留応力とした。さらに、疲労強度の測定は、別途、試験片を準備して疲労試験を行うことにより行った。また、硬さ試験は、測定荷重10kgfのビッカース硬度計を用いて行った。なお、以下に示す他の測定値は、この測定方法により行ったものである。
次に、表1に示すように、圧縮残留応力σγ800MPaとなるように、粒径50〜300μmの材料の硬さHV800〜850の硬質粒子を、吹きつけ圧0.5MPa、カバレージ300%投射し、金属試験片にショットピーニング処理を行った。このときの最大高さRzを測定し、超音波疲労試験を行って、疲労強度σwと、破断時のサイクル数(回)を測定した。この金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表1に示す。
さらに、この疲労試験後の金属試験片の破断面を観察し、起点となる介在物の有無を確認した。この結果を表1に示す。なお、金属試験片の破断面に介在物がある場合には、介在物抽出の欄に○、そうでない場合には、×を印した。
Figure 2011158380
[実施例2及び3]
実施例1と同じようにして、金属試験片を作成し、超音波疲労試験を行い、介在物を抽出した。実施例1と相違する点は、ショットピーニング処理の処理条件を変更し、順次、圧縮残留応力σγを1300MPa、2000MPaにした点である。この金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表1に示す。
[比較例1]
実施例1と同じようにして、金属試験片を作成し、超音波疲労試験を行い、介在物の抽出を行った。実施例1と相違する点は、ショットピーニング処理を行っていない点である。この金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表1に示す。
[比較例2及び3]
実施例1と同じようにして、金属試験片を作成し、超音波疲労試験を行い、介在物を抽出した。実施例1と相違する点は、ショットピーニング処理の処理条件を変更し、圧縮残留応力σγ1900MPa、2800MPaにした点である。これらの金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表1に示す。
さらに、上記表1の結果に基づいて、実施例1〜3及び比較例1〜3の金属試験片の表面に、ショットピーニング処理を行った際の表面粗さと、圧縮残留応力及び疲労強度の関係を、図6に示す。なお、表1の(1)〜(6)が、図5の(1)〜(6)に対応する。
[結果1及び考察]
実施例1〜3の金属試験片は、比較例1のサイクル数以下で、介在物の抽出をすることができたが、比較例2及び3のものは、介在物の抽出ができなかった。これは、比較例2及び3は、内部応力の増加と共に、最大高さRzが、60μm、65μmと粗くなり、この結果として、疲労強度が低下したものと考えられる。
このことから、ショットピーニング処理により、圧縮残留応力σγ:500を超え、2000MPa以下、最大高さRz:0を超え、50μm以下、の表面処理を行うことが望ましいと考えられる。これにより、金属試験片の表面強度があがり、短時間かつ高確率で、介在物を抽出することができる。そして、圧縮残留応力σγが2000MPaを超えた場合は、最大高さRzが50μmを超えてしまい、これにより、疲労強度が低下すると考えられる。
[実施例4及び5]
実施例1と同じように、金属試験片を作成し、超音波疲労試験を行い、介在物の抽出を行った。実施例1と相違する点は、金属試験片に対して、ショットピーニング処理の代わりに、浸炭処理を行って、表面硬さを、順次ビッカース硬さHv800、Hv900にした点である。具体的には、それぞれ、炭化水素系ガスとして、エンリッチガス及びRXガスを用いて、このガス雰囲気下で、4時間、930℃加熱することにより、浸炭処理を行った。これらの金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表2に示す。
Figure 2011158380
[比較例4]
実施例1と同じように、金属試験片を作成し、超音波疲労試験を行い、介在物の抽出を行った。実施例1と相違する点は、金属試験片に対して、ショットピーニング処理の代わりに、脱炭処理を行って、表面硬さを、順次ビッカース硬さHV500にした点である。この金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表2に示す。
さらに、表2の結果に基づいて、実施例4及び5及び比較例1及び4の金属試験片の表面に、浸炭処理を行った際の表面硬さと疲労強度の関係を、図6に示す。なお、表2の(1)〜(4)までが、図7の(1)〜(4)に対応する。
[結果2及び考察]
実施例4及び5の金属試験片は、比較例1のサイクル数以下で、介在物の抽出をすることができたが、比較例4は、それよりもサイクル数が多くなり、さらに、介在物の抽出ができなかった。これは、比較例4は、脱炭により、疲労強度が低下したものと考えられる。
このことから、材料強度は、硬さと相関があるため、金属試験片の表面硬さを、内部硬さよりも高くすることが望ましく、浸炭により、金属試験片の内部硬さ(HV550)を超え、HV900以下であることがより好ましい。なお、浸炭により、鋼系の材料の表面を、HV900を越える硬さにすることは難しい。これにより、金属試験片の表面強度があがり、短時間かつ高確率で、介在物を抽出することができる。
[実施例6]
実施例1と同じように、金属試験片を作成し、超音波疲労試験を行い、介在物の抽出を行った。実施例1と相違する点は、金属試験片に対して、ショットピーニング処理の代わりに、その表面に、最大高さRz0.1μmとなるような鏡面仕上げ処理を研磨により行った点である。この金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表3に示す。
[比較例6]
実施例1と同じように、金属試験片を作成し、超音波疲労試験を行い、介在物の抽出を行った。実施例1と相違する点は、金属試験片の表面を、最大高さRz2μmに粗くした点である。この金属試験片に対する疲労強度σw、破断時のサイクル数、介在物の抽出の結果を、表3に示す。
さらに、表3の結果に基づいて、実施例6及び比較例1及び6の金属試験片の表面に、鏡面仕上げ処理を行った際の表面粗さと疲労強度の関係を、図8に示す。なお、表3の(1)〜(3)までが、図8の(1)〜(3)に対応する。
Figure 2011158380
[結果3及び考察]
実施例6の金属試験片は、比較例1のサイクル数以下で、介在物の抽出をすることができたが、比較例6は、それよりもサイクル数が多くなり、さらに、介在物の抽出ができなかった。これは、比較例6は、金属試験片の表面が粗くなったことにより、疲労強度が低下したものと考えられる。
このことから、材料の疲労強度は、表面粗さと相関があるため、金属試験片の表面粗さ、最大高さ0を超え、1μm以下であることが好ましいと考えられる。これにより、金属試験片の表面強度があがり、短時間かつ高確率で、介在物を抽出することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
例えば、本実施例では、表面処理として、ショットピーニング処理、浸炭処理、または鏡面仕上げ処理の1つの表面処理を行ったが、複数の処理を行ってもよい。

Claims (1)

  1. 金属材料から金属試験片を製作する工程と、
    該金属試験片の表面に、ショットピーニング処理、浸炭処理、または鏡面仕上げ処理の少なくとも1つの表面処理を行う工程と、
    該表面処理された金属試験片に対して疲労試験を行うことにより、前記金属試験片を疲労破壊させ、該疲労破壊した金属試験片の破断面に、前記金属試験片に含有する介在物を抽出させる工程と、
    を含むことを特徴とする金属材料の介在物の抽出方法。
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