JP2008280612A - 耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼及びその製造方法 - Google Patents

耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2008280612A
JP2008280612A JP2008102548A JP2008102548A JP2008280612A JP 2008280612 A JP2008280612 A JP 2008280612A JP 2008102548 A JP2008102548 A JP 2008102548A JP 2008102548 A JP2008102548 A JP 2008102548A JP 2008280612 A JP2008280612 A JP 2008280612A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
fatigue damage
strength steel
internal fatigue
damage resistance
steel
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008102548A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5146063B2 (ja
Inventor
Toshizo Tarui
敏三 樽井
Tatsuro Ochi
達朗 越智
Manabu Kubota
学 久保田
Tetsushi Senda
徹志 千田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2008102548A priority Critical patent/JP5146063B2/ja
Publication of JP2008280612A publication Critical patent/JP2008280612A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5146063B2 publication Critical patent/JP5146063B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Abstract

【課題】自動車、各種産業機械等に広く用いられている軸受け、歯車、シャフト、ばね等の高強度鋼に関するものであり、特に非金属介在物等に起因する内部疲労損傷を防止することのできるビッカース硬さが650以上の高強度鋼を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.65〜1.30%、Si:0.01〜2.50%、Mn:0.01〜0.80%、V:0.80〜3.00%、Mo:3.00超〜7.00%を含有し、焼戻しマルテンサイトが主体の組織からなり、焼入れ焼戻し処理後のV−Mo系炭化物もしくはV−Mo−X系炭化物(X:Ti、Nb、Zr、Wの1種又は2種以上)のサイズが5〜100nmであり、その析出数が1×1017個/cm3以上であり、ビッカース硬さが650以上であることを特徴とする耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。Ti、Nb、Zr、W、Niの1種又は2種以上を含有しても良い。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車、各種産業機械等に広く用いられている軸受け、歯車、シャフト、ばね等の高強度鋼に関するものであり、特に内部疲労損傷特性に優れたビッカース硬さ(HV10)が650以上の高強度鋼に関するものである。
自動車や各種産業機械の軽量化、高性能化、高耐久化のために、各種部品の高強度化のニーズが高まっている。鋼材を高強度化する際にネックとなる課題の一つは疲労特性である。通常の疲労破壊は鋼材表面で亀裂が発生し内部に亀裂が伝播するプロセスで起きる。しかし、鋼材を高強度化していくと疲労亀裂が内部から発生し(以下、内部疲労損傷)、疲労寿命が低下する現象が生じる。
例えば、ばね鋼の疲労では、通常の疲労破壊は表面起点であるが、高強度化に伴ってAl23等の非金属介在物起点の内部疲労損傷の頻度が増加する。この結果、強度の増加に伴って疲労強度のばらつきが大きくなり、疲労特性が劣化する。また、軸受け鋼の転がり疲労においても、非金属介在物起点の内部疲労損傷が起きており、高耐久化を阻害している要因になっている。
このような内部疲労損傷を低減させるために、鋼中の非金属介在物量の低下、介在物サイズの微細化、介在物の組成制御等の種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1では鋼材の酸素濃度の制御、特許文献2では非金属介在物サイズの制限がそれぞれ提案されている。また、特許文献3では非金属介在物サイズと個数、非特許文献1では酸化物系非金属介在物の組成制御に関する技術がそれぞれ提案されている。
しかしながら、鋼材を高強度化するほど要求される系非金属介在物のサイズ及び量の制御は一層厳しくなり、工業的規模で非金属介在物のサイズ、量を従来以上に制御することは困難であった。
特開2000−87974号公報 特開2000−110841号公報 特開2006−328464号公報 鉄鋼協会編、「介在物制御と高清浄度鋼製造技術」、第182・183回西山記念講座、2004年、66〜67頁
本発明は上記の如き実状に鑑みなされたものであって、非金属介在物等に起因する内部疲労損傷を防止することのできる高強度鋼を提供することを目的とするものである。
本発明は、高強度鋼の耐内部疲労損傷特性の改善に、3%超のMo及び0.8%以上のVの添加と、焼戻しマルテンサイト中に析出する合金炭化物の組成、サイズ、析出数の制御が有効であるという知見に基づいてなされたものであり、その要旨は、次の通りである。
(1) 質量%で、C:0.65〜1.30%、Si:0.01〜2.50%、Mn:0.01〜0.80%、V:0.80〜3.00%、Mo:3.00超〜7.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、焼戻しマルテンサイトが主体の組織からなり、焼入れ焼戻し処理後のV−Mo系炭化物のサイズが5〜100nmであり、その析出数が1×1017個/cm3以上であり、ビッカース硬さが650以上であることを特徴とする耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
(2) ばね用に用いる高強度鋼であって、質量%で、C :0.65〜0.95%、Si:1.0〜2.50%、Mn:0.01〜0.50%、V :0.80〜3.00%、Mo:3.00超〜7.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする(1)記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度ばね用鋼。
(3) 軸受け用に用いる高強度鋼であって、質量%で、C :0.8〜1.3%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜0.80%、V :0.80〜3.00%、Mo:3.00超〜7.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする(1)記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度軸受け用鋼。
(4) 質量%で、Ti:0.02〜1.00%、Nb:0.02〜1.00%、Zr:0.02〜1.00%、W:0.02〜1.00%の1種又は2種以上を含有し、焼入れ焼戻し処理後のV−Mo系炭化物もしくはV−Mo−X系炭化物(X:Ti、Nb、Zr、Wの1種又は2種以上)のサイズが5〜100nmであり、その析出数が1×1017個/cm3以上であることを特徴とする(1)〜(3)の何れか1項に記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
(5) 質量%で、Ni:0.05〜2.00%を含有することを特徴とする(1)〜(4)の何れか1項に記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
(6) 質量%で、N:0.0020〜0.0070%、Al:0.050%以下、Cr:0.20%以下の1種又は2種以上を含有することを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
(7) (1)〜(6)の何れか1項に記載の高強度鋼の製造方法であって、(1)〜(6)の何れか1項に記載の成分組成を有する鋼を、1000℃〜1200℃に加熱して焼入れ、500〜650℃の温度範囲で焼戻すことを特徴とする耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼の製造方法。
本発明によれば、ビッカース硬さが650以上であり、優れた耐内部疲労損傷特性を有する高強度鋼を提供することが可能になり、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明者らは、まず高強度鋼において生じる内部疲労損傷を防止するために、鋼材成分と合金炭化物の種類及び合金炭化物の組成の影響に関して詳細に究明した。この結果、内部疲労損傷を防止するためには、非金属介在物のサイズと量の低減以外に、合金炭化物の種類とサイズ及びその析出個数が大きく影響されることを初めて見出した。
以下に、本発明の対象とする鋼の成分の限定理由について述べる。
V、Mo:VとMoは、本発明において最も重要な元素であり、焼入れ処理後の焼戻し時に微細なV−Mo系炭化物として析出し、耐内部疲労損傷特性を著しく向上させる作用がある。Vが0.80%未満、Moが3.00%以下では、V−Mo系炭化物の析出数が少なすぎるために耐内部疲労損傷特性を改善させる効果が少なく、また、Vが3.00%、Moが7.00%を超えて添加しても、添加量に見合う効果が発揮できないため、Vは0.80〜3.00%、Moは3.00超〜7.00%の範囲とした。
なお、V−Mo系炭化物は、具体的には(V、Mo)43であり、更に選択的にTi、Nb、Zr、Wを含む場合は、(V、Mo、X)43である。ここで、Xは、Ti、Nb、Zr、Wの1種又は2種以上である。また、耐内部疲労損傷特性に優れる本発明の鋼には、サイズが5〜100nm、析出数が1×1017個/cm3以上のV−Mo系炭化物が析出している。V−Mo系炭化物のサイズが5nm未満では本願で目的とする耐内部疲労損傷の向上が達成できず、一方、炭化物のサイズが100nmを超えた場合も耐内部疲労特性の向上が図れず、また、ビッカース硬さの低下が起こりやすいため、V−Mo系炭化物サイズを5〜100nmに制限した。V−Mo系の析出数が1×1017個/cm3未満では、耐内部疲労損傷の向上効果が少ないために、析出数の下限を1×1017個/cm3未に制限した。V−Mo系炭化物のサイズと析出数は、3次元アトムプローブ分析装置で測定することができ、サイズは板状に析出したV−Mo系炭化物の長さである。なお、炭窒化物のサイズは、平均サイズを意味する。
C:Cは、鋼の強度を増加させるために有効な元素であるが、0.65%未満では本発明で目的とするビッカース硬さ650以上を得ることが困難である。一方、1.3%を越える過剰な添加は強度が高くなるものの靭性が低下する。従って、Cの範囲は、0.65〜1.3%に限定した。なお、鋼の高強度化の観点では、好ましい下限は0.7%である。また、高強度ばね用鋼に適用する場合のC量の好ましい範囲は、0.65〜0.95%である。0.65%未満では目的とする高強度化の達成が困難であり、0.95%を超えるとばねに必要な靭性の確保が困難なためである。更に、高強度軸受け用鋼に適用する場合のC量の好ましい範囲は、0.8〜1.3%である。前記特性に加えて、0.8%未満では良好な転動疲労特性の確保が困難であり、1.3%を超えて添加してもその効果が飽和するためである。
Si:Siは、脱酸に有効であるとともに固溶強化及び焼戻し軟化抵抗を増加させ、高強度化に有効な元素である。0.01%未満では前記の効果が期待できず、一方2.5%を越えて添加しても効果が飽和するため、0.01〜2.5%の範囲に制限した。また、高強度ばね用鋼に適用する場合のSi量の好ましい範囲は、1.0〜2.5%である。前記特性に加えて、1.0%未満ではばねの耐へたり特性の確保が困難であり、2.5%を超えて添加してもその効果が飽和するためである。更に、高強度軸受け用鋼に適用する場合のSi量の好ましい範囲は、0.01〜1.0%である。前記特性に加えて、0.01%未満では固溶強化及び焼戻し軟化抵抗の向上効果を発揮することが困難であり、一方、1.0%を超えて添加してもその効果が飽和するためである。
Mn:Mnは、脱酸、脱硫のために必要であるばかりでなく、マルテンサイト組織を得るための焼入性を高めるために有効な元素である。更に焼戻し軟化抵抗を増加させる効果も有している。0.01%未満では上記の効果が得られず、一方0.8%を越えて添加しても効果が飽和するため0.01〜0.8%の範囲に制限した。また、高強度ばね用鋼に適用する場合のMn量の好ましい範囲は、0.01〜0.50%である。前記特性に加えて、Mnが0.50%を越えると高強度ばねの耐遅れ破壊特性が劣化し,折損し易くなるためである。
以上が本発明の高強度鋼の基本成分であるが、本発明では耐内部疲労損傷特性の向上やオーステナイト粒の微細化の観点から、Ti、Nb、Zr、Wの1種又は2種以上を、高強度鋼の靭性向上と焼入性増加の観点からNiを含有させることができる。
Ti、Nb、Zr、W:Ti、Nb、Zr、Wは、いずれも焼入れ焼戻し時に(V、Mo、X)43として析出し、内部疲労損傷を防止させる効果がある。ここで、XはTi、Nb、Zr、Wの1種あるいは2種以上である。また、Ti、Nb、Zr、Wは、いずれも焼戻し時の(V、Mo、X)43の成長速度を抑制させる作用があり、(V、Mo、X)43の粗大化の防止に著しい効果がある。更に、Ti、Nb、Zrは鋼中の窒素と結合し、微細窒化物を生成するため、焼入れ加熱時のオーステナイト結晶粒を窒化物により微細化させる効果も有している。これらの効果は、Ti、Nb、Zr、Wのいずれも、0.02%未満では小さく、一方、Ti、Nb、Zr、Wのいずれも、1.00%を超えて添加しても効果が飽和する。従って、Ti、Nb、Zr、Wの添加範囲は、いずれも0.02〜1.00%とすることが好ましい。
Ni:Niは、高強度化に伴って劣化する延性を向上させると共に、熱処理時の焼入性を向上させる目的で添加するが、効果を得るには、0.05%以上の添加が好ましい。一方、2.00%を越えて添加しても、添加量に見合う効果が発揮できないため、0.05〜2.00%の範囲とすることが好ましい。
P、Sについては特に制限しないものの、高強度鋼の靭性低下を防ぐ点で、それぞれ0.020%以下が好ましい範囲である。また、Nは、Ti、Al、V、Nbの窒化物を生成することによりオーステナイト粒の細粒化効果があるため、0.0020〜0.0070%が好ましい範囲である。Alは、硬質の酸化物系非金属介在物を生成し易く、耐内部疲労損傷特性を劣化させるため、0.050%以下が好ましい範囲である。酸素は、非金属介在物量を増加させ耐内部疲労損傷特性を劣化させるため、0.0030%以下が好ましい範囲である。更にCrは、V−Mo系炭化物の析出数を低下させる作用があるため、0.20%以下が好ましい条件である。
本発明の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼は、焼戻しマルテンサイトが主体の組織からなる。なお、焼戻しマルテンサイトが主体の組織とは、ビッカース硬さを低下させない程度のフェライト、ベイナイト、パーライト等の非焼戻しマルテンサイトを許容することを意味する。
フェライト、ベイナイト、パーライト等の非焼戻しマルテンサイトの分率が増加するとビッカース硬さが低下し易くなるため、焼戻しマルテンサイトの分率を90%以上とすることが好ましい。耐内部疲労損傷特性を向上させるには、焼戻しマルテンサイト組織の分率を、95%以上とすることが更に好ましい。焼戻しマルテンサイトの組織分率は、走査型電子顕微鏡(SEM)で倍率を2000として10視野以上の組織写真を撮影し、画像処理によって各視野の焼戻しマルテンサイト組織の面積分率を測定し、その平均値を求めた値である。
本発明の鋼材は、軸受け、歯車、シャフト、ばね等に使用される鋼材の、通常の工程によって製造される。即ち、鋼片を熱間圧延して得られた素材を伸線、冷間鍛造あるいは熱間鍛造等により所定の形状に成形した後、焼入れ、焼戻し処理を行う製造工程である。なお、本発明の耐内部疲労損傷に優れた高強度鋼は、V−Mo系炭化物を微細に析出させるために、焼入れ、焼戻し処理を以下の条件で行うことが必要である。
焼入れ温度は、1000℃未満では炭化物が溶体化できない可能性があり、また、1200℃を超えるとオーステナイト粒径が粗大化し易く靭性が低下する。従って、焼入れ温度は1000〜1200℃の範囲に限定した。焼入れ処理は、空冷もしくは油冷が好ましい条件である。
焼戻し温度は500〜650℃の温度範囲に限定した。焼戻し温度が500℃未満では、(V、Mo)43、(V、Mo、X)43のV−Mo系炭化物の析出数を1×1017個/cm3以上とし、耐内部疲労損傷特性を向上させることが困難であるため、焼戻し温度の下限を500℃とした。一方、焼戻し温度が650℃を超えるとV−Mo系炭化物のオストワルド成長が起こり易くなりV−Mo系炭化物のサイズが100nmを超える頻度が増し、析出数も1×1017個/cm3未満になる頻度が増し、更にビッカース硬さも低下することがあるため、焼戻し温度の上限を650℃に制限した。
ビッカース硬さの下限を650に限定した理由は、本発明では軸受け、歯車、シャフト、ばねなどの高強度鋼への適用を目的としているためである。ビッカース硬さを650以上にするためには、前述したように、C量を0.65%以上とし、更に焼戻しマルテンサイトの分率を90%以上、V−Mo系の炭化物サイズを5〜100nm、炭化物の析出数を1×1017個/cm3以上とするとよい。
以下、実施例により本発明の効果を更に具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する供試材を用いて常法の熱間圧延を行った。得られた素材を伸線加工し、その後、表1に示す条件で焼入れ・焼戻し処理を行った。
表2のHV硬さは、JIS Z 2244に準拠し、荷重を98.07N(10kgf)として測定したビッカース硬さである。単位のHV10は、荷重を98.07Nとして測定したビッカース硬度を意味する。
表2のV−Mo系炭化物サイズとV−Mo系炭化物析出数は、(V、Mo)43、(V、Mo、X)43について調査したものである。V−Mo系炭化物のサイズ及び析出数は3次元アトムプローブ分析装置で測定した。炭窒化物10個以上について測定し、その平均サイズをもってサイズとした。なお、焼戻しマルテンサイトの組織分率は、SEMと画像解析によって測定した結果、いずれも95%以上であった。
内部疲労損傷特性の評価は次の条件で行った。焼入れ・焼戻し後に疲労試験片を製作し、内部疲労損傷を促進する目的で疲労試験片表面の圧縮残留応力が−800〜−1000MPaになるようにショットピーニング処理を施した後、疲労試験を行った。なお、残留応力測定はX線回折法で行った。疲労試験は、最小応力が300MPa、最大応力が1200MPa、最大繰返し数108回の条件で15本の疲労試験を行い、介在物を起点とする内部疲労破壊の頻度を求めた。15本の疲労試験において、内部疲労破壊の発生する回数が2回以下である場合を耐内部疲労損傷特性が良好であると判定した。
また、高強度ばね用鋼に関しては、ねじり疲労特性の評価も併せて行った。焼入れ・焼戻し後にねじり疲労試験片を製作し,ショットピーニング処理により疲労試験片表面の圧縮残留応力を−500〜−600MPaに調整した後、陰極水素チャージにより1.5〜1.6ppmの拡散性水素を試験片にチャージして、ねじり疲労試験を行った。ここで、拡散性水素をチャージした理由は、介在物を起点とする内部疲労破壊を促進させるためである。疲労試験は、剪断応力が720±680MPa、最大繰返し数107回の条件で行った。7本の疲労試験を行い、107回までの試験片の破断本数でねじり疲労特性を評価した。
更に、高強度軸受け用鋼については、一般的に使われているスラスト型転動疲労試験機を用いて、転動疲労特性の評価を行った。焼入れ・焼戻し後に転動疲労試験片を製作し、ショットピーニング処理により試験片表面の圧縮残留応力を−500〜−600MPaに調整した後、陰極水素チャージにより2.0〜2.1ppmの拡散性水素を試験片にチャージして、転動疲労試験を行った。ここで、拡散性水素をチャージした理由は、介在物を起点とする剥離等の表面損傷を促進させるためである。転動疲労試験は、面圧5700MPa、最大繰返し数108回の条件で行った。10本の転動疲労試験を行い、介在物を起点とする表面損傷数で転動疲労特性を評価した。
Figure 2008280612
Figure 2008280612
表1及び2において、試験No.1〜30が本発明例であり、この内、試験No.8〜10、19〜22、24、25、27、28、30が高強度ばね用鋼、試験No.1、2、4〜7、12、14〜17、26、29が高強度軸受け用鋼、試験No.3、11、13、18、23が高強度用鋼の例である。また、試験No.31〜43が比較例である。
表2に見られるように本発明例は、いずれもHV硬さが650以上という高強度化が達成できており、更に耐内部疲労損傷特性にも優れている。また、高強度ばね用鋼では、ねじり疲労特性にも優れ、更に、高強度軸受け用鋼では、転動疲労特性にも優れている。
これに対して、No.31〜35は、従来の鋼材を用いた比較例である。No.31〜33は、Mo及びVが添加されていない鋼材であり、焼入れ後の低温焼戻しで高強度化を図った例であるが、No.31、32はHV硬さが650以上にならず、更にNo.31〜33のいずれも耐内部疲労損傷特性が向上していない。また、No.31、32は、ねじり疲労特性が向上せず、No.33は転動疲労特性が向上していない。No.34は、浸炭処理によって表面硬さの増加を図った例であり、また、No.35は高周波焼入れによって高強度化を図った例であり、いずれもHV硬さは650以上に達しているものの、耐内部疲労損傷特性が向上していない。更に、No.34は転動疲労特性が向上せず、No.35はねじり疲労特性の改善が見られない。
No.36〜39は、鋼材の化学成分が不適切な例である。No.36はV含有量が少なく、No.38はMo含有量が少ないために、いずれもV−Mo系炭化物の析出数が少なくHV硬さが650以上に達せず、更に耐内部疲労損傷特性も悪かった例である。また、No.38は、ねじり疲労特性も改善ができていない。No.37は、Mo、V含有量は適切なもののCrが過剰に添加されているために、V−Mo系炭化物の析出数が低下し、HV硬さが650以上に達しなかった例であり、転動疲労特性も向上が達成できていない。比較例であるNo.39は、C含有量が少ないために、HV硬さが650以上に達しなかった例である。
No.40〜43は、成分組成は本発明の範囲内であるものの、熱処理条件が不適切である比較例である。No.40、41は、焼入れ加熱温度が低過ぎるために、炭化物が十分に固溶できず、焼戻し処理時に析出したV−Mo系炭化物の析出数が少なく、HV硬さが650以上に達せず、更に耐内部疲労損傷特性の改善効果がなかった例である。No.42は、焼戻し温度が低過ぎるためにV−Mo系炭化物が析出しなかった例であり、この結果、耐内部疲労損傷特性の改善効果がなかった例である。また、No.40〜42は、いずれも転動疲労特性の向上効果が少ない。No.43は焼戻し温度が高過ぎるために、V−Mo系炭化物が成長して析出数が低下し、HV硬さが650に達しなかった例であり、ねじり疲労特性も本発明例に比べ劣っている。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C :0.65〜1.30%、
    Si:0.01〜2.50%、
    Mn:0.01〜0.80%、
    V :0.80〜3.00%、
    Mo:3.00超〜7.00%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、焼戻しマルテンサイトが主体の組織からなり、焼入れ焼戻し処理後のV−Mo系炭化物のサイズが5〜100nmであり、その析出数が1×1017個/cm3以上であり、ビッカース硬さが650以上であることを特徴とする耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
  2. ばね用に用いる高強度鋼であって、質量%で、
    C :0.65〜0.95%、
    Si:1.0〜2.50%、
    Mn:0.01〜0.50%、
    V :0.80〜3.00%、
    Mo:3.00超〜7.00%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
  3. 軸受け用に用いる高強度鋼であって、質量%で、
    C :0.8〜1.30%、
    Si:0.01〜1.0%、
    Mn:0.01〜0.80%、
    V :0.80〜3.00%、
    Mo:3.00超〜7.00%
    を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
  4. 質量%で、
    Ti:0.02〜1.00%、
    Nb:0.02〜1.00%、
    Zr:0.02〜1.00%、
    W:0.02〜1.00%
    の1種又は2種以上を含有し、焼入れ焼戻し処理後のV−Mo系炭化物もしくはV−Mo−X系炭化物(X:Ti、Nb、Zr、Wの1種又は2種以上)のサイズが5〜100nmであり、その析出数が1×1017個/cm3以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
  5. 質量%で、
    Ni:0.05〜2.00%
    を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
  6. 質量%で、
    N:0.0020〜0.0070%、
    Al:0.050%以下、
    Cr:0.20%以下
    の1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の高強度鋼の製造方法であって、請求項1〜6の何れか1項に記載の成分組成を有する鋼を、1000℃〜1200℃に加熱して焼入れ、500〜650℃の温度範囲で焼戻すことを特徴とする耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼の製造方法。
JP2008102548A 2007-04-12 2008-04-10 耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼及びその製造方法 Expired - Fee Related JP5146063B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008102548A JP5146063B2 (ja) 2007-04-12 2008-04-10 耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼及びその製造方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007104943 2007-04-12
JP2007104943 2007-04-12
JP2008102548A JP5146063B2 (ja) 2007-04-12 2008-04-10 耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008280612A true JP2008280612A (ja) 2008-11-20
JP5146063B2 JP5146063B2 (ja) 2013-02-20

Family

ID=40141679

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008102548A Expired - Fee Related JP5146063B2 (ja) 2007-04-12 2008-04-10 耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5146063B2 (ja)

Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010217076A (ja) * 2009-03-18 2010-09-30 Nsk Ltd 介在物評価方法
JP2011158380A (ja) * 2010-02-02 2011-08-18 Toyota Motor Corp 金属材料の介在物の抽出方法
US8393226B2 (en) 2010-07-29 2013-03-12 Nsk Ltd. Inclusion rating method
EP2682493A1 (en) * 2011-03-04 2014-01-08 NHK Spring Co.,Ltd. Spring and manufacturing method thereof
CN115125455A (zh) * 2016-10-19 2022-09-30 三菱制钢株式会社 高强度弹簧及其制造方法和高强度弹簧用钢及其制造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10121201A (ja) * 1996-10-14 1998-05-12 Kobe Steel Ltd 耐遅れ破壊性に優れた高強度ばね
JP2000282178A (ja) * 1998-10-22 2000-10-10 Nsk Ltd 転がり軸受
JP2001221238A (ja) * 2000-02-10 2001-08-17 Nsk Ltd 転がり軸受
JP2003105485A (ja) * 2001-09-26 2003-04-09 Nippon Steel Corp 耐水素疲労破壊特性に優れた高強度ばね用鋼およびその製造方法
JP2003226939A (ja) * 2002-02-05 2003-08-15 Nippon Koshuha Steel Co Ltd 熱間工具鋼

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH10121201A (ja) * 1996-10-14 1998-05-12 Kobe Steel Ltd 耐遅れ破壊性に優れた高強度ばね
JP2000282178A (ja) * 1998-10-22 2000-10-10 Nsk Ltd 転がり軸受
JP2001221238A (ja) * 2000-02-10 2001-08-17 Nsk Ltd 転がり軸受
JP2003105485A (ja) * 2001-09-26 2003-04-09 Nippon Steel Corp 耐水素疲労破壊特性に優れた高強度ばね用鋼およびその製造方法
JP2003226939A (ja) * 2002-02-05 2003-08-15 Nippon Koshuha Steel Co Ltd 熱間工具鋼

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010217076A (ja) * 2009-03-18 2010-09-30 Nsk Ltd 介在物評価方法
JP2011158380A (ja) * 2010-02-02 2011-08-18 Toyota Motor Corp 金属材料の介在物の抽出方法
US8393226B2 (en) 2010-07-29 2013-03-12 Nsk Ltd. Inclusion rating method
EP2682493A1 (en) * 2011-03-04 2014-01-08 NHK Spring Co.,Ltd. Spring and manufacturing method thereof
EP2682493A4 (en) * 2011-03-04 2014-08-27 Nhk Spring Co Ltd SPRING AND MANUFACTURING METHOD THEREFOR
US9341223B2 (en) 2011-03-04 2016-05-17 Nhk Spring Co., Ltd. Spring and manufacture method thereof
CN115125455A (zh) * 2016-10-19 2022-09-30 三菱制钢株式会社 高强度弹簧及其制造方法和高强度弹簧用钢及其制造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP5146063B2 (ja) 2013-02-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5432105B2 (ja) 肌焼鋼およびその製造方法
WO2012073485A1 (ja) 冷間鍛造性に優れた浸炭用鋼およびその製造方法
JP4050829B2 (ja) 転動疲労特性に優れた浸炭材
JP5556151B2 (ja) 異物環境下での転動疲労特性に優れた軸受部品の製造方法
JP5872863B2 (ja) 耐ピッチング性に優れた歯車およびその製造方法
WO2014097872A1 (ja) 耐水素脆性に優れた高強度ばね用鋼線材およびその製造方法並びに高強度ばね
JP5541418B2 (ja) ばね鋼およびばね
JP2011174176A (ja) 肌焼鋼および浸炭材
JP3562192B2 (ja) 高周波焼入用部品およびその製造方法
JP5543814B2 (ja) 熱処理用鋼板及び鋼部材の製造方法
JP2006307271A (ja) 耐結晶粒粗大化特性と冷間加工性に優れた軟化焼鈍の省略可能な肌焼用鋼およびその製法
JP5146063B2 (ja) 耐内部疲労損傷特性に優れた高強度鋼及びその製造方法
JP2010053429A (ja) 耐高面圧性に優れた歯車
JP4847681B2 (ja) Ti含有肌焼き鋼
JP2011231375A (ja) 肌焼用熱間加工鋼材
JP2004027334A (ja) 高周波焼もどし用鋼およびその製造方法
JP2006241572A (ja) 機械構造用鋼
JP2012237052A (ja) 冷間鍛造性および結晶粒粗大化抑制能に優れた肌焼鋼とその製造方法
JP5869919B2 (ja) 冷間加工性に優れた肌焼用条鋼
JP2009256769A (ja) 浸炭用鋼材の製造方法
JP4450217B2 (ja) 軟窒化用非調質鋼
JP2004124190A (ja) ねじり特性に優れる高周波焼もどし鋼
JP3432944B2 (ja) 捩り疲労強度の優れた高周波焼入れ軸部品用鋼材
JP6635100B2 (ja) 肌焼鋼
JP2009221497A (ja) 黒皮外周旋削性とねじり強度に優れた鋼材

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100810

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120529

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120605

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120726

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121030

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121112

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5146063

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151207

Year of fee payment: 3

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees