ところで、上記の信号増幅装置では、第1のこぎり波生成回路、第1比較回路、第1電力増幅回路および第1ローパスフィルタで入力信号の正側領域をD級動作で増幅し、かつ第2のこぎり波生成回路、第2比較回路、第2電力増幅回路および第2ローパスフィルタで入力信号の負側領域をD級動作で増幅して、それぞれの出力を負荷の各端部に印加することにより、A級増幅装置のように、負荷に対して歪みの少ない状態で増幅された信号を出力する。しかしながら、電力増幅段においてトランスを利用して信号を増幅する構成の信号増幅装置の場合には、各パルス幅変調信号にデッドタイムを設ける必要があるが、上記の信号増幅装置の各のこぎり波は、底辺が0Vラインとなる三角形であるため、入力信号が第1のこぎり波の上限に達したときや、第2のこぎり波の下限に達したときには、各パルス幅変調信号のデューティが100%になってデッドタイムがゼロになるという課題が存在している。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、デッドタイムを確実に確保し得る信号増幅装置を提供することを主目的とする。
上記目的を達成すべく請求項1記載の信号増幅装置は、鋸歯状信号を生成する信号生成部と、入力信号の電圧が前記鋸歯状信号の電圧を超えているときにオン状態となる第1PWM信号を生成する第1PWM回路、一次側に印加された前記第1PWM信号を昇圧して二次側から第1PWM昇圧信号を出力する第1トランス、および当該第1PWM昇圧信号を検波して前記入力信号と同位相の交流成分に直流正電圧が重畳してなる正電圧信号を生成する第1検波回路を備えた正側D級増幅部と、前記入力信号の反転信号の電圧が前記鋸歯状信号の電圧を超えているときにオン状態となる第2PWM信号を生成する第2PWM回路、一次側に印加された前記第2PWM信号を昇圧して二次側から第2PWM昇圧信号を出力する第2トランス、および当該第2PWM昇圧信号を検波して前記入力信号と同位相の交流成分に直流負電圧が重畳してなる負電圧信号を生成する第2検波回路を備えた負側D級増幅部と、前記正電圧信号と前記負電圧信号とを加算して前記入力信号の増幅信号を出力する加算部とを備え、前記信号生成部は、所定時間だけ正電源電圧と同電圧となる直線波形と、当該正電源電圧から徐々に負電源電圧側に変化した後に当該正電源電圧に戻るV字状波形とで一周期の波形が構成される信号を前記鋸歯状信号として生成する。
また、請求項2記載の信号増幅装置は、鋸歯状信号を生成する信号生成部と、入力信号の電圧が前記鋸歯状信号の電圧未満のときにオン状態となる第1PWM信号を生成する第1PWM回路、一次側に印加された前記第1PWM信号を昇圧して二次側から第1PWM昇圧信号を出力する第1トランス、および当該第1PWM昇圧信号を検波して前記入力信号と同位相の交流成分に直流正電圧が重畳してなる正電圧信号を生成する第1検波回路を備えた正側D級増幅部と、前記入力信号の反転信号の電圧が前記鋸歯状信号の電圧未満のときにオン状態となる第2PWM信号を生成する第2PWM回路、一次側に印加された前記第2PWM信号を昇圧して二次側から第2PWM昇圧信号を出力する第2トランス、および当該第2PWM昇圧信号を検波して前記入力信号と同位相の交流成分に直流負電圧が重畳してなる負電圧信号を生成する第2検波回路を備えた負側D級増幅部と、前記正電圧信号と前記負電圧信号とを加算して前記入力信号の増幅信号を出力する加算部とを備え、前記信号生成部は、所定時間だけ負電源電圧と同電圧となる直線波形と、当該負電源電圧から徐々に正電源電圧側に変化した後に当該負電源電圧に戻るV字状波形とで一周期の波形が構成される信号を前記鋸歯状信号として生成する。
また、請求項3記載の信号増幅装置は、請求項1記載の信号増幅装置において、前記信号生成部は、一端が基準電位に接続されたコンデンサと、一端が前記負電源電圧に接続された負側抵抗と、当該負側抵抗の他端および前記正電源電圧のいずれか一方を前記コンデンサの他端に選択的に接続するスイッチと、当該スイッチを駆動して前記コンデンサの他端を前記負側抵抗の他端および前記正電源電圧に交互に接続させるスイッチ駆動部とを備えている。
また、請求項4記載の信号増幅装置は、請求項2記載の信号増幅装置において、前記信号生成部は、一端が基準電位に接続されたコンデンサと、一端が前記正電源電圧に接続された正側抵抗と、当該正側抵抗の他端および前記負電源電圧のいずれか一方を前記コンデンサの他端に選択的に接続するスイッチと、当該スイッチを駆動して前記コンデンサの他端を前記正側抵抗の他端および前記負電源電圧に交互に接続させるスイッチ駆動部とを備えている。
また、請求項5記載の信号増幅装置は、請求項1または2記載の信号増幅装置において、前記信号生成部は、一端が基準電位に接続されたコンデンサと、一端が前記正電源電圧に接続された正側抵抗と、一端が前記負電源電圧に接続された負側抵抗と、前記正側抵抗の他端および前記負側抵抗の他端のいずれか一方を前記コンデンサの他端に選択的に接続するスイッチと、当該スイッチを駆動して前記コンデンサの他端を前記正側抵抗の他端および前記負側抵抗の他端に交互に接続させるスイッチ駆動部とを備えている。
請求項6記載の信号増幅装置は、正側鋸歯状信号および負側鋸歯状信号を生成する信号生成部と、入力信号の電圧が前記正側鋸歯状信号の電圧を超えているときにオン状態となる第1PWM信号を生成する第1PWM回路、一次側に印加された前記第1PWM信号を昇圧して二次側から第1PWM昇圧信号を出力する第1トランス、および当該第1PWM昇圧信号を検波して前記入力信号と同位相の交流成分に直流正電圧が重畳してなる正電圧信号を生成する第1検波回路を備えた正側D級増幅部と、前記入力信号の電圧が前記負側鋸歯状信号の電圧に達していないときにオン状態となる第2PWM信号を生成する第2PWM回路、一次側に印加された前記第2PWM信号を昇圧して二次側から第2PWM昇圧信号を出力する第2トランス、および当該第2PWM昇圧信号を検波して前記入力信号と同位相の交流成分に直流負電圧が重畳してなる負電圧信号を生成する第2検波回路を備えた負側D級増幅部と、前記正電圧信号と前記負電圧信号とを加算して前記入力信号の増幅信号を出力する加算部とを備え、前記信号生成部は、所定時間だけ正電源電圧と同電圧となる直線波形と、当該正電源電圧から徐々に低下した後に当該正電源電圧に戻るV字状波形とで一周期の波形が構成される信号を前記正側鋸歯状信号として生成すると共に、所定時間だけ負電源電圧と同電圧となる直線波形と、当該負電源電圧から徐々に上昇した後に当該負電源電圧に戻る逆V字状波形とで一周期の波形が構成される信号を前記負側鋸歯状信号として生成する。
また、請求項7記載の信号増幅装置は、請求項6記載の信号増幅装置において、前記信号生成部は、一端が基準電位に接続された第1コンデンサと、一端が前記負電源電圧に接続された負側抵抗と、当該負側抵抗の他端および前記正電源電圧のいずれか一方を前記第1コンデンサの他端に選択的に接続する第1スイッチと、一端が前記基準電位に接続された第2コンデンサと、一端が前記正電源電圧に接続された正側抵抗と、当該正側抵抗の他端および前記負電源電圧のいずれか一方を前記第2コンデンサの他端に選択的に接続する第2スイッチと、前記第1スイッチを駆動して前記第1コンデンサの他端を前記負側抵抗の他端および前記正電源電圧に交互に接続させると共に、前記第2スイッチを駆動して前記第2コンデンサの他端を前記正側抵抗の他端および前記負電源電圧に交互に接続させるスイッチ駆動部とを備えている。
また、請求項8記載の信号増幅装置は、請求項6記載の信号増幅装置において、前記信号生成部は、一端が基準電位に接続された第1コンデンサと、一端が前記正電源電圧に接続された第1正側抵抗と、一端が前記負電源電圧に接続された第1負側抵抗と、前記第1正側抵抗の他端および前記第1負側抵抗の他端のいずれか一方を前記第1コンデンサの他端に選択的に接続する第1スイッチと、一端が前記基準電位に接続された第2コンデンサと、一端が前記正電源電圧に接続された第2正側抵抗と、一端が前記負電源電圧に接続された第2負側抵抗と、前記第2正側抵抗の他端および前記第2負側抵抗の他端のいずれか一方を前記第2コンデンサの他端に選択的に接続する第2スイッチと、前記第1スイッチを駆動して前記第1コンデンサの他端を前記第1正側抵抗の他端および前記第1負側抵抗の他端に交互に接続させると共に、前記第2スイッチを駆動して前記第2コンデンサの他端を前記第2正側抵抗の他端および前記第2負側抵抗の他端に交互に接続させるスイッチ駆動部とを備えている。
請求項1記載の信号増幅装置では、信号生成部が、所定時間だけ正電源電圧と同電圧となる直線波形と、電圧が正電源電圧から徐々に負電源電圧側に変化した後に正電源電圧に戻るV字状波形とで一周期の波形が構成される信号を鋸歯状信号として生成する。
したがって、この信号増幅装置によれば、鋸歯状信号はその一周期内に正電源電圧と同電圧となる直線波形が常に含まれるため、正側D級増幅部および負側D級増幅部において、鋸歯状信号の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第1PWM信号および第2PWM信号が生成され、これによって第1PWM信号に基づいて駆動される第1トランス、および第2PWM信号に基づいて駆動される第2トランスに対するデッドタイムが常に確保されるため、第1トランスおよび第2トランスが飽和状態に至る事態を確実に防止することができる。
請求項2記載の信号増幅装置では、信号生成部が、所定時間だけ負電源電圧と同電圧となる直線波形と、電圧が負電源電圧から徐々に正電源電圧側に変化した後に負電源電圧に戻るV字状波形とで一周期の波形が構成される信号を鋸歯状信号として生成する。
したがって、この信号増幅装置によれば、鋸歯状信号はその一周期内に負電源電圧と同電圧となる直線波形が常に含まれるため、正側D級増幅部および負側D級増幅部において、鋸歯状信号の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第1PWM信号および第2PWM信号が生成され、これによって第1PWM信号に基づいて駆動される第1トランス、および第2PWM信号に基づいて駆動される第2トランスに対するデッドタイムが常に確保されるため、第1トランスおよび第2トランスが飽和状態に至る事態を確実に防止することができる。
請求項3記載の信号増幅装置によれば、一端が基準電位に接続されたコンデンサと、一端が負電源電圧に接続された負側抵抗と、負側抵抗の他端および正電源電圧のいずれか一方をコンデンサの他端に選択的に接続するスイッチと、スイッチを駆動してコンデンサの他端を抵抗の他端および正電源電圧に交互に接続させるスイッチ駆動回路とを備えて信号生成部を構成したことにより、簡易な構成でありながら、負側抵抗の抵抗値を調整(変更)することで、直線波形およびV字状波形を含む鋸歯状信号をそのV字状波形における下端部の電圧値(つまり鋸歯状信号の振幅)を変更可能な状態で生成することができる。このため、この信号増幅装置によれば、鋸歯状信号の振幅を調整することで、正側D級増幅部から出力される正電圧信号に含まれる直流正電圧および負側D級増幅部から出力される負電圧信号に含まれる直流負電圧を任意の電圧値に設定することができ、これにより、正電圧信号および負電圧信号に歪みを生じさせたり、歪みのない状態にしたりすることができるため、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように波形に歪みの生じた状態で増幅信号を出力させたり、またはA級増幅装置の出力と同じように波形に生じる歪みが極めて少ない状態で増幅信号を出力させたりすることができる。
請求項4記載の信号増幅装置によれば、一端が基準電位に接続されたコンデンサと、一端が正電源電圧に接続された正側抵抗と、正側抵抗の他端および負電源電圧のいずれか一方をコンデンサの他端に選択的に接続するスイッチと、スイッチを駆動してコンデンサの他端を抵抗の他端および負電源電圧に交互に接続させるスイッチ駆動回路とを備えて信号生成部を構成したことにより、簡易な構成でありながら、正側抵抗の抵抗値を調整(変更)することで、直線波形およびV字状波形を含む鋸歯状信号をそのV字状波形における上端部の電圧値(つまり鋸歯状信号の振幅)を変更可能な状態で生成することができる。このため、この信号増幅装置によっても、鋸歯状信号の振幅を調整することで、正側D級増幅部から出力される正電圧信号に含まれる直流正電圧および負側D級増幅部から出力される負電圧信号に含まれる直流負電圧を任意の電圧値に設定することができ、これにより、正電圧信号および負電圧信号に歪みを生じさせたり、歪みのない状態にしたりすることができるため、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように波形に歪みの生じた状態で増幅信号を出力させたり、またはA級増幅装置の出力と同じように波形に生じる歪みが極めて少ない状態で増幅信号を出力させたりすることができる。
請求項5記載の信号増幅装置によれば、一端が基準電位に接続されたコンデンサと、一端が正電源電圧に接続された正側抵抗と、一端が前記負電源電圧に接続された負側抵抗と、正側抵抗の他端および負側抵抗の他端のいずれか一方をコンデンサの他端に選択的に接続するスイッチと、スイッチを駆動してコンデンサの他端を正側抵抗の他端および負側抵抗の他端に交互に接続させるスイッチ駆動回路とを備えて信号生成部を構成したことにより、簡易な構成でありながら、正側抵抗の抵抗値および負側抵抗の抵抗値を調整(変更)することで、正電源電圧の同電圧となる直線波形と、正電源電圧から徐々に負電源電圧側に変化した後に正電源電圧に戻るV字状波形とで一周期の波形が構成される信号を、その下端部の電圧値を変更可能な状態で鋸歯状信号として生成したり、また負電源電圧の同電圧となる直線波形と、負電源電圧から徐々に正電源電圧側に変化した後に負電源電圧に戻るV字状波形とで一周期の波形が構成される信号を、その上端部の電圧値を変更可能な状態で鋸歯状信号として生成したりすることができる。さらに、正側抵抗および負側抵抗の各抵抗値を調整してコンデンサに対する充放電特性(時定数)を揃えることにより、V字状波形における下端部を挟んだ前半側波形および後半側波形間の間隔についての振幅方向に沿ったリニアリティを改善することができ、この結果、入力信号をよりリニアに増幅することができる。
請求項6記載の信号増幅装置では、信号生成部が、正電源電圧と同電圧の直線波形とV字状波形とを含んで構成される正側鋸歯状信号を生成して正側D級増幅部に出力し、負電源電圧と同電圧の直線波形と逆V字状波形とを含んで構成される負側鋸歯状信号を生成して負側D級増幅部に出力する。
したがって、この信号増幅装置によれば、正側D級増幅部において、正側鋸歯状信号の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第1PWM信号が生成されると共に、負側D級増幅部において、負側鋸歯状信号の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第2PWM信号が生成され、これによって、第1PWM信号に基づいて駆動される第1トランス、および第2PWM信号に基づいて駆動される第2トランスに対するデッドタイムが常に確保されるため、第1トランスおよび第2トランスが飽和状態に至る事態を確実に防止することができる。
また、請求項7記載の信号増幅装置によれば、一端が基準電位に接続された第1コンデンサと、一端が負電源電圧に接続された負側抵抗と、負側抵抗の他端および正電源電圧のいずれか一方を第1コンデンサの他端に選択的に接続する第1スイッチと、一端が基準電位に接続された第2コンデンサと、一端が正電源電圧に接続された正側抵抗と、正側抵抗の他端および負電源電圧のいずれか一方を第2コンデンサの他端に選択的に接続する第2スイッチと、第1スイッチを駆動して第1コンデンサの他端を負側抵抗の他端および正電源電圧に交互に接続させると共に、第2スイッチを駆動して第2コンデンサの他端を正側抵抗の他端および負電源電圧に交互に接続させるスイッチ駆動部とを備えて信号生成部を構成したことにより、簡易な構成でありながら、抵抗の抵抗値を調整(変更)することで、直線波形およびV字状波形を含む正側鋸歯状信号、並びに直線波形および逆V字状波形を含む負側鋸歯状信号を、V字状波形および逆V字状波形の振幅を変更可能な状態で生成することができる。したがって、この信号増幅装置によれば、正側鋸歯状信号や負側鋸歯状信号の振幅を調整することで、正側D級増幅部から出力される正電圧信号に含まれる直流正電圧および負側D級増幅部から出力される負電圧信号に含まれる直流負電圧を任意に設定することができ、これにより、正電圧信号および負電圧信号に歪みを生じさせたり、歪みのない状態にしたりすることができるため、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように波形に歪みの生じた状態で増幅信号を出力させたり、またはA級増幅装置の出力と同じように波形に生じる歪みが極めて少ない状態で増幅信号を出力させたりすることができる。また、この信号増幅装置によれば、正電圧信号に含まれる直流正電圧および負電圧信号に含まれる直流負電圧を独立して任意に設定することができるため、増幅信号における正側波形および負側波形のバランスを微調整することもできる。
また、請求項8記載の信号増幅装置によれば、一端が基準電位に接続された第1コンデンサと、一端が正電源電圧に接続された第1正側抵抗と、一端が負電源電圧に接続された第1負側抵抗と、第1正側抵抗の他端および第1負側抵抗の他端のいずれか一方を第1コンデンサの他端に選択的に接続する第1スイッチと、一端が基準電位に接続された第2コンデンサと、一端が正電源電圧に接続された第2正側抵抗と、一端が負電源電圧に接続された第2負側抵抗と、第2正側抵抗の他端および第2負側抵抗の他端のいずれか一方を第2コンデンサの他端に選択的に接続する第2スイッチと、第1スイッチを駆動して第1コンデンサの他端を第1正側抵抗の他端および第1負側抵抗の他端に交互に接続させると共に、第2スイッチを駆動して第2コンデンサの他端を第2正側抵抗の他端および第2負側抵抗の他端に交互に接続させるスイッチ駆動部とを備えて信号生成部を構成したことにより、簡易な構成でありながら、抵抗の抵抗値を調整(変更)することで、直線波形およびV字状波形を含む正側鋸歯状信号、並びに直線波形および逆V字状波形を含む負側鋸歯状信号を、V字状波形および逆V字状波形の振幅を変更可能な状態で生成することができる。したがって、正側鋸歯状信号や負側鋸歯状信号の振幅を調整することで、正側D級増幅部から出力される正電圧信号に含まれる直流正電圧および負側D級増幅部から出力される負電圧信号に含まれる直流負電圧を任意に設定することができ、これにより、正電圧信号および負電圧信号に歪みを生じさせたり、歪みのない状態にしたりすることができるため、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように波形に歪みの生じた状態で増幅信号を出力させたり、またはA級増幅装置の出力と同じように波形に生じる歪みが極めて少ない状態で増幅信号を出力させたりすることができる。また、この信号増幅装置によれば、正電圧信号に含まれる直流正電圧および負電圧信号に含まれる直流負電圧を独立して任意に設定することができるため、増幅信号における正側波形および負側波形のバランスを微調整することもできる。さらに、第1正側抵抗および第1負側抵抗の各抵抗値を調整して第1コンデンサに対する充放電特性(時定数)を揃えることにより、V字状波形における下端部を挟んだ前半側波形および後半側波形間の間隔についての振幅方向に沿ったリニアリティを改善することができると共に、第2正側抵抗および第2負側抵抗の各抵抗値を調整して第2コンデンサに対する充放電特性(時定数)を揃えることにより、逆V字状波形における下端部を挟んだ前半側波形および後半側波形間の間隔についての振幅方向に沿ったリニアリティについても改善することができ、この結果、入力信号をよりリニアに増幅することができる。
以下、本発明に係る信号増幅装置の最良の形態について、添付図面を参照して説明する。
最初に、信号増幅装置1の構成について、図面を参照して説明する。
信号増幅装置1は、図1に示すように、信号生成部2、信号反転部3、正側D級増幅部4、負側D級増幅部5および加算部6を備え、正電圧(本発明における正電源電圧)Vccおよび負電圧(本発明における負電源電圧)Vddの供給を受けて作動して、入力信号(アナログ交流信号)S1を増幅して出力信号(アナログ交流信号)Soとして出力する。なお、負電源電圧Vddは、本例では、正電源電圧Vccと絶対値は同じで極性の異なる電圧であるものとする。
信号生成部2は、一例として、図4に示すように、所定時間tdだけ正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Sa、および電圧が正電源電圧Vccから徐々に低下(正電源電圧Vccから徐々に負電源電圧Vdd側に変化)した後に正電源電圧Vccに戻る(本例では急激に上昇して正電源電圧Vccに短時間で戻る)V字状波形Sbで一周期T1の波形が構成される信号を鋸歯状信号S2として生成する。具体的には、信号生成部2は、一例として、図2に示すように、一端が基準電位(本例ではグランド電位)に接続されたコンデンサ21と、一端が負電源電圧Vdd(本発明における他方の電源電圧)に接続された抵抗(本発明における負側抵抗。一例として可変抵抗)22と、可変抵抗22の他端および正電源電圧Vcc(本発明における一方の電源電圧)のいずれか一方をコンデンサ21の他端に選択的に接続するスイッチ23と、スイッチ23を駆動してコンデンサ21の他端を可変抵抗22の他端および正電源電圧Vccに交互に接続させるスイッチ駆動回路24とを備えて構成されている。この場合、スイッチ駆動回路24は、スイッチ23を駆動することで、正電源電圧Vccをコンデンサ21の他端に所定時間tdだけ接続し、かつ残りの時間に可変抵抗22の他端をコンデンサ21の他端に接続する動作を周期T1で繰り返し実行する。この構成により、コンデンサ21の他端側には、上記した図4に示す鋸歯状信号S2が生成され、この生成された鋸歯状信号S2が信号生成部2から出力される。この信号生成部2では、可変抵抗22の抵抗値を調整することにより、可変抵抗22によるコンデンサ21からの放電特性の時定数を変更することができ、これによって、V字状波形Sbにおける下端部(最小電圧値)Aの電圧値を任意の電圧値を任意に(具体的には、負電源電圧Vddと基準電位との間の電圧範囲内で任意に、さらには負電源電圧Vddと正電源電圧Vccとの間の電圧範囲内で任意に)調整可能となっている。図4の例では、このV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値が負電源電圧Vddと同じ電圧となるように可変抵抗22の抵抗値が調整されている。信号反転部3は、入力した入力信号S1を反転して、反転信号S1rとして出力する。
正側D級増幅部4は、図1に示すように、第1PWM回路41、第1駆動回路42、第1トランス43および第1検波回路44を備え、入力信号S1と鋸歯状信号S2とに基づいて、図4に示すように、入力信号S1と同位相の交流成分Vacに直流正電圧Vdcが重畳することによって正側領域において電圧値が変化する正電圧信号S13を生成する。
具体的には、第1PWM回路41は、一例として、図2に示すように、コンパレータで構成されて、非反転入力端子に入力信号S1が入力され、反転入力端子に鋸歯状信号S2が入力されている。また、第1PWM回路41は、入力信号S1および鋸歯状信号S2を比較することにより、図4に示すように、入力信号S1の電圧が鋸歯状信号S2の電圧を超えているときには、予め規定された正電圧(オン状態)となり、入力信号S1が鋸歯状信号S2以下のときには、グランド電位(オフ状態)となる第1PWM信号S11を生成して出力する。この場合、鋸歯状信号S2はその一部に正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Saを含んで構成されているため、鋸歯状信号S2の一周期全体に亘って第1PWM信号S11が正電圧となる状態が確実に回避されている。
第1駆動回路42は、スイッチング素子(例えばトランジスタなどの半導体素子)で構成されて、図3に示すように、第1トランス43の一次巻線43a(本発明における一次側)と直列接続された状態で、正電源電圧Vccとグランドとの間に配設されている。この構成により、第1駆動回路42は、第1PWM信号S11が正電圧のときにオン状態に移行し、グランド電位のときにオフ状態に移行して、第1トランス43の一次巻線43aを駆動する。
第1トランス43は、第1PWM信号S11により一次巻線43aが駆動されることで、具体的には、上記したように、第1PWM信号S11によってオン・オフ状態に交互に移行する第1駆動回路42によって一次巻線43aが駆動されることで、図4に示すように、昇圧(増幅)されたパルス状の第1PWM昇圧信号S12を二次巻線43b(本発明における二次側)に発生させる。この場合、同図に示すように、第1PWM昇圧信号S12は、第1PWM信号S11と同位相の信号として生成される。また、上記したように、鋸歯状信号S2の一周期全体に亘って第1PWM信号S11が正電圧とはならいない状態に維持されているため(言い換えれば、鋸歯状信号S2の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第1PWM信号S11が生成されるため)、この第1PWM信号S11に基づいて作動する第1駆動回路42によって駆動される第1トランス43に対するデッドタイムが常に確保された状態となっている。これにより、第1トランス43の飽和が確実に回避されている。第1検波回路44は、一例として、図3に示すように、ダイオード44aとコンデンサ44bとで構成されて、第1トランス43から出力される第1PWM昇圧信号S12を検波することにより、上記した正電圧信号S13を出力する。
負側D級増幅部5は、図1に示すように、第2PWM回路51、第2駆動回路52、第2トランス53および第2検波回路54を備え、反転信号S1rと鋸歯状信号S2とに基づいて、図4に示すように、入力信号S1と同位相の交流成分Vacに直流負電圧Vdcが重畳することによって負側領域において電圧値が変化する負電圧信号S23を生成する。
具体的には、第2PWM回路51は、一例として、図2に示すように、コンパレータで構成されて、非反転入力端子に反転信号S1rが入力され、反転入力端子に鋸歯状信号S2が入力されている。また、第2PWM回路51は、反転信号S1rおよび鋸歯状信号S2を比較することにより、図4に示すように、反転信号S1rの電圧値が鋸歯状信号S2の電圧値を超えているときには、予め規定された正電圧(オン状態)となり、反転信号S1rが鋸歯状信号S2以下のときには、グランド電位(オフ状態)となる第2PWM信号S21を生成して出力する。この場合、鋸歯状信号S2はその一部に正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Saを含んで構成されているため、鋸歯状信号S2の一周期全体に亘って第2PWM信号S21が正電圧となる状態が確実に回避されている。
第2駆動回路52は、スイッチング素子(例えばトランジスタなどの半導体素子)で構成されて、図3に示すように、第2トランス53の一次巻線53a(本発明における一次側)と直列接続された状態で、正電源電圧Vccとグランドとの間に配設されている。この構成により、第2駆動回路52は、第2PWM信号S21が正電圧のときにオン状態に移行し、グランド電位のときにオフ状態に移行して、第2トランス53の一次巻線53aを駆動する。
第2トランス53は、第2PWM信号S21により一次巻線53aが駆動されることで、具体的には、上記したように、第2PWM信号S21によってオン・オフ状態に交互に移行する第2駆動回路52によって一次巻線53aが駆動されることで、図4に示すように、昇圧(増幅)されたパルス状の第2PWM昇圧信号S22を二次巻線53b(本発明における二次側)に発生させる。この場合、同図に示すように、第2PWM昇圧信号S22は、第2PWM信号S21と逆位相の信号として生成される。また、上記したように、鋸歯状信号S2の一周期全体に亘って第2PWM信号S21が正電圧とはならいない状態に維持されているため(言い換えれば、鋸歯状信号S2の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第2PWM信号S21が生成されるため)、第2トランス53に対しても第1トランス43の場合と同様にしてデッドタイムが常に確保された状態となっており、第2トランス53の飽和が確実に回避されている。第2検波回路54は、一例として、図3に示すように、ダイオード54aとコンデンサ54bとで構成されて、第2トランス53から出力される第2PWM昇圧信号S22を検波することにより、上記した負電圧信号S23を出力する。
加算部6は、正側D級増幅部4から出力される正電圧信号S13と負側D級増幅部5から出力される負電圧信号S23とを加算して、入力信号S1の増幅信号Soを生成して出力する。一例として本例では、加算部6は、同じ抵抗値の2本の抵抗61,62が直列に接続されて構成されている。また、加算部6を構成する各抵抗61,62の直列回路の一端には正電圧信号S13が印加され、他端には負電圧信号S23が印加される。この構成により、加算部6は、各抵抗61,62の接続点Bから、電圧が正電圧信号S13および負電圧信号S23の各電圧を加算した電圧の二分の一となる増幅信号Soを生成して出力する。この場合、上記したように、V字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値を負電源電圧Vddと同じ電圧値に規定したことにより、鋸歯状信号S2はその最大電圧値が正電源電圧Vccとなり、かつその最小電圧値が負電源電圧Vddとなっている。このため、正側D級増幅部4では入力信号S1が全範囲(全振幅)に亘って鋸歯状信号S2と比較され、また負側D級増幅部5でも反転信号S1rが全範囲(全振幅)に亘って鋸歯状信号S2と比較される。したがって、正側D級増幅部4および負側D級増幅部5は、共に、正電圧信号S13と負電圧信号S23を歪みの極めて少ない状態で出力する結果、加算部6から出力される増幅信号Soも、A級増幅装置の出力と同じように、歪みの極めて少ない状態で出力される。
次いで、信号増幅装置1による入力信号S1の増幅動作について説明する。
まず、図4に示すように、鋸歯状信号S2のV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値が負電源電圧Vddとほぼ同じになるように、信号生成部2を構成する可変抵抗22の抵抗値が調整されているときには、上記したように、正側D級増幅部4において入力信号S1が全範囲に亘って鋸歯状信号S2と比較され、かつ負側D級増幅部5においても反転信号S1rが全範囲に亘って鋸歯状信号S2と比較される。したがって、正側D級増幅部4および負側D級増幅部5から歪みの極めて少ない正電圧信号S13と負電圧信号S23が出力されるため、加算部6から出力される増幅信号Soは、同図に示すように、A級増幅装置の出力と同じように歪みの極めて少ない状態で出力される。
一方、図5に示すように、鋸歯状信号S2のV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値が、負電源電圧Vddよりも高い電圧となるように、信号生成部2を構成する可変抵抗22の抵抗値を調整したときには、同図に示すように、入力信号S1や反転信号S1rの電圧が低い領域(下端部Aの電圧値よりも低電圧の領域)C,Dにおいて、V字状波形Sbにおける下端部Aの電圧が入力信号S1や反転信号S1rの電圧に達しない状態にすることができる。この場合には、図5に示すように、正側D級増幅部4から出力される正電圧信号S13は、入力信号S1の上記領域Cに対応する部位において歪んだ状態で出力される。同様にして、負側D級増幅部5から出力される負電圧信号S23も、反転信号S1rの上記領域Dに対応する部位において歪んだ状態で出力される。したがって、加算部6において、この正電圧信号S13と負電圧信号S23とが加算されて生成される増幅信号Soも、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように、歪みの生じた状態、具体的には、上記の各領域C,Dに対応する部位において歪む信号として出力される。つまり、信号増幅装置1の増幅動作が変更されたことになる。このように、増幅信号Soを部分的に歪ませる増幅動作のときには、正電圧信号S13に含まれる直流正電圧、および負電圧信号S23に含まれる直流負電圧を低くすることができるため、加算部6で消費される電力が低減されて、その結果として信号増幅装置1全体の消費電力が低減される。
このように、この信号増幅装置1では、信号生成部2が、所定時間tdだけ正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Saと、電圧が正電源電圧Vccから徐々に低下した後に急激に上昇して正電源電圧Vccに短時間で戻るV字状波形Sbとで一周期T1の波形が構成される信号を鋸歯状信号S2として生成する。これにより、鋸歯状信号S2の一周期内に正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Saが常に含まれるため、鋸歯状信号S2の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第1PWM信号S11および第2PWM信号S21が生成される。したがって、この信号増幅装置1によれば、第1PWM信号S11に基づいて作動する第1駆動回路42によって駆動される第1トランス43、および第2PWM信号S21に基づいて作動する第2駆動回路52によって駆動される第2トランス53に対するデッドタイムが常に確保されるため、第1トランス43および第2トランス53が飽和状態に至る事態を確実に防止することができる。
また、この信号増幅装置1では、鋸歯状信号S2の振幅(具体的には、V字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値)を可変抵抗22によって任意に調整可能に信号生成部2が構成されている。したがって、この信号増幅装置1によれば、鋸歯状信号S2の振幅を調整することで、正側D級増幅部4から出力される正電圧信号S13に含まれる直流正電圧および負側D級増幅部5から出力される負電圧信号S23に含まれる直流負電圧を任意の電圧値に設定することができ、これにより、正電圧信号S13および負電圧信号S23に歪みを生じさせたり、歪みのない状態にしたりすることができるため、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように波形に歪みの生じた状態で増幅信号Soを出力させたり、またはA級増幅装置の出力と同じように波形に生じる歪みが極めて少ない状態で増幅信号Soを出力させたりすることができる。
また、信号増幅装置1によれば、一端が基準電位(グランド電位)に接続されたコンデンサ21と、一端が負電源電圧Vddに接続された可変抵抗22と、可変抵抗22の他端および正電源電圧Vccのいずれか一方をコンデンサ21の他端に選択的に接続するスイッチ23と、スイッチ23を駆動してコンデンサ21の他端を可変抵抗22の他端および正電源電圧Vccに交互に接続させるスイッチ駆動回路24とを備えて信号生成部2を構成したことにより、簡易な構成でありながら、直線波形SaおよびV字状波形Sbを含む鋸歯状信号S2を、そのV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値を変更可能な状態で生成することができる。
なお、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、図2に示す信号生成部2において、可変抵抗22の配置を負電源電圧Vdd側から正電源電圧Vcc側に変えて、この可変抵抗22を本発明における正側抵抗として構成し、その一端を正電源電圧Vccに接続することにより、スイッチ23を介してコンデンサ21の他端を可変抵抗22の他端および負電源電圧Vddに交互に接続させる構成を採用することもできる。この構成の信号増幅装置では、図4に示す鋸歯状信号S2と逆極性の鋸歯状信号、すなわち、所定時間tdだけ負電源電圧Vddと同電圧となる直線波形Sa、および電圧が負電源電圧Vddから徐々に正電源電圧Vcc側に変化した後に負電源電圧Vddに戻る逆V字状波形Sbで一周期T1の波形が構成される鋸歯状信号が信号生成部2から生成される。この場合、図2に示す構成とは異なり、コンパレータで構成された第1PWM回路41および第2PWM回路51の各非反転入力端子にこの鋸歯状信号を入力し、それぞれのPWM回路41,51の反転入力端子に入力信号S1や反転信号S1rを入力する構成とする。この構成では、第1PWM回路41は、入力信号S1の電圧が鋸歯状信号の電圧未満のときにオン状態となる第1PWM信号を生成し、第2PWM回路51は、入力信号S1の反転信号の電圧が鋸歯状信号の電圧未満のときにオン状態となる第2PWM信号を生成する。
したがって、この構成を備えた信号増幅装置においても、第1PWM信号S11に基づいて作動する第1駆動回路42によって駆動される第1トランス43、および第2PWM信号S21に基づいて作動する第2駆動回路52によって駆動される第2トランス53に対するデッドタイムが常に確保されるため、第1トランス43および第2トランス53が飽和状態に至る事態を確実に防止することができる。なお、この信号増幅装置では、上記した信号生成部、およびPWM回路41,51以外の構成については、信号増幅装置1と同一であるため、重複した説明を省略する。
また、上記の信号増幅装置1では、共通の鋸歯状信号S2を正側D級増幅部4および負側D級増幅部5に供給し、かつ正側D級増幅部4に入力信号S1を入力すると共に負側D級増幅部5に入力信号S1の反転信号S1rを入力しているが、図6に示す信号増幅装置1Aのように、正側D級増幅部4および負側D級増幅部5に入力信号S1を入力し、かつ正側D級増幅部4に鋸歯状信号(本発明における正側鋸歯状信号)S2を入力すると共に、負側D級増幅部5に鋸歯状信号S2の極性と逆の極性の鋸歯状信号(本発明における負側鋸歯状信号)S2rを入力する構成とすることもできる。以下、この信号増幅装置1Aについて説明する。なお、信号増幅装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
最初に、信号増幅装置1Aの構成について、図面を参照して説明する。
信号増幅装置1Aは、図6に示すように、信号生成部2A、正側D級増幅部4、負側D級増幅部5および加算部6を備え、正電圧(本発明における正電源電圧)Vccおよび負電圧(本発明における負電源電圧)Vddの供給を受けて作動して、入力信号(アナログ交流信号)S1を増幅して出力信号(アナログ交流信号)Soとして出力する。このように、信号増幅装置1Aは、信号生成部2に代えて信号生成部2Aを備え、信号反転部3を備えていない点で信号増幅装置1と相違するだけで、他の構成については同じである。したがって、主として、この相違する構成についてのみ説明する。
信号生成部2Aは、一例として、図7に示すように、第1生成回路20a、第2生成回路20bおよびスイッチ駆動回路24を備えている。この場合、第1生成回路20aは、コンデンサ(本発明における第1コンデンサ)21a、抵抗(本発明における負側抵抗。一例として可変抵抗)22a、および可変抵抗22aの他端および正電源電圧Vccのいずれか一方をコンデンサ21aの他端に選択的に接続するスイッチ(本発明における第1スイッチ)23aを有して構成されて、正側鋸歯状信号S2を生成する。第2生成回路20bは、一端が基準電位(本例ではグランド電位)に接続されたコンデンサ(本発明における第2コンデンサ)21b、一端が正電源電圧Vccに接続された抵抗(本発明における正側抵抗。一例として可変抵抗)22b、および可変抵抗22bの他端および負電源電圧Vddのいずれか一方をコンデンサ21bの他端に選択的に接続するスイッチ(本発明における第2スイッチ)23bを有して負側鋸歯状信号S2rを生成する。また、第1生成回路20aで生成される正側鋸歯状信号S2は、信号増幅装置1の信号生成部2で生成される鋸歯状信号S2と同じように、所定時間tdだけ正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Sa、および電圧が正電源電圧Vccから徐々に低下した後に急激に上昇して正電源電圧Vccに短時間で戻るV字状波形Sbで一周期T1の波形が構成される。一方、第2生成回路20bで生成される負側鋸歯状信号S2rは、所定時間tdだけ負電源電圧Vddと同電圧となる直線波形Sc、および電圧が負電源電圧Vddから徐々に上昇した後に急激に下降して負電源電圧Vddに短時間で戻る逆V字状波形Sdで一周期T1(正側鋸歯状信号S2と同一周期)の波形が構成される。
スイッチ駆動回路24は、第1スイッチ23aを駆動して第1コンデンサ21aの他端を第1可変抵抗22aの他端および正電源電圧Vccに交互に接続させると共に、第2スイッチ23bを駆動して第2コンデンサ21bの他端を可変抵抗22bの他端および負電源電圧Vddに交互に接続させる。本例では一例として、スイッチ駆動回路24は、各スイッチ23a,23bを同一タイミングで駆動する。具体的には、スイッチ駆動回路24は、スイッチ23aを駆動することで、正電源電圧Vccをコンデンサ21aの他端に所定時間tdだけ接続し、かつ残りの時間に可変抵抗22aの他端をコンデンサ21aの他端に接続する動作を周期T1で繰り返し実行する。また、スイッチ駆動回路24は、スイッチ23bを駆動することで、正電源電圧Vccのコンデンサ21aの他端への接続に対応させて負電源電圧Vddをコンデンサ21bの他端に所定時間tdだけ接続し、かつ残りの時間に可変抵抗22bの他端をコンデンサ21bの他端に接続する動作を周期T1で繰り返し実行する。この構成により、コンデンサ21aの他端側には上記した正側鋸歯状信号S2が生成され、かつコンデンサ21bの他端側には上記した負側鋸歯状信号S2rが生成されて、これら正側鋸歯状信号S2および負側鋸歯状信号S2rが信号生成部2から出力される。
また、この信号生成部2Aでも、可変抵抗22aの抵抗値を調整することにより、上記の信号生成部2と同様にして、可変抵抗22aによるコンデンサ21aからの放電特性の時定数を変更することができ、これによって、V字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値を任意に(具体的には、負電源電圧Vddと基準電位との間の電圧範囲内で任意に、さらには負電源電圧Vddと正電源電圧Vccとの間の電圧範囲内で任意に)調整可能となっている。さらに、信号生成部2Aでは、可変抵抗22bの抵抗値を調整することにより、可変抵抗22bによるコンデンサ21bへの充電特性の時定数を変更することができ、これによって、逆V字状波形Sdにおける上端部Aの電圧値を任意に(具体的には、正電源電圧Vccと基準電位との間の電圧範囲内で任意に、さらには正電源電圧Vccと負電源電圧Vddとの間の電圧範囲内で任意に)調整可能となっている。図8の例では、このV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値が負電源電圧Vddと同じ電圧となり、またこの逆V字状波形Sdにおける上端部Aの電圧値が正電源電圧Vccと同じ電圧となるように、可変抵抗22a,22bの各抵抗値が調整されている。
正側D級増幅部4は、図6に示すように、第1PWM回路41、第1駆動回路42、第1トランス43および第1検波回路44を備え、第1PWM回路41(コンパレータ)の非反転入力端子に入力信号S1が入力され、反転入力端子に正側鋸歯状信号S2が入力されている。この構成により、正側D級増幅部4は、信号増幅装置1の場合と同様にして、入力信号S1と正側鋸歯状信号S2とに基づいて、図8に示すように、入力信号S1と同位相の交流成分Vacに直流正電圧Vdcが重畳することによって正側領域において変化する正電圧信号S13を生成する。この場合、正側鋸歯状信号S2は、上記したように、その一部に正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Saを含んで構成されている。このため、正側D級増幅部4では、正側鋸歯状信号S2の一周期全体に亘って第1PWM信号S11が正電圧となる状態が確実に回避され、これによって、第1トランス43に対するデッドタイムが常に確保される結果、第1トランス43の飽和が確実に回避されている。
負側D級増幅部5は、図6に示すように、第2PWM回路51、第2駆動回路52、第2トランス53および第2検波回路54を備え、第2PWM回路51(コンパレータ)の反転入力端子に入力信号S1が入力され、非反転入力端子に負側鋸歯状信号S2rが入力されている。この構成により、負側D級増幅部5は、入力信号S1と負側鋸歯状信号S2rとに基づいて、図8に示すように、入力信号S1と同位相の交流成分Vacに直流負電圧Vdcが重畳することによって負側領域において変化する負電圧信号S23を生成する。この場合、第2PWM回路51は、図8に示すように、入力信号S1が負側鋸歯状信号S2r未満のときには、予め規定された正電圧(オン状態)となり、入力信号S1が負側鋸歯状信号S2r以上のときには、グランド電位(オフ状態)となる第2PWM信号S21を生成して出力する。負側鋸歯状信号S2rは、上記したように、その一部に負電源電圧Vddと同電圧となる直線波形Scを含んで構成されているため、この直線波形Sc部分では第2PWM信号S21は常にグランド電位となる。このため、負側D級増幅部5でも、負側鋸歯状信号S2rの一周期全体に亘って第2PWM信号S21が正電圧となる状態が確実に回避され、これによって、第2トランス53に対するデッドタイムが常に確保される結果、第2トランス53の飽和が確実に回避されている。
次いで、信号増幅装置1Aによる入力信号S1の増幅動作について説明する。
まず、図8に示すように、正側鋸歯状信号S2のV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値が負電源電圧Vddとほぼ同じになるように可変抵抗22aの抵抗値が調整され、かつ負側鋸歯状信号S2rの逆V字状波形Sdにおける上端部Aの電圧値が正電源電圧Vccとほぼ同じになるように可変抵抗22bの抵抗値が調整されているときには、正側D級増幅部4において入力信号S1が全範囲に亘って正側鋸歯状信号S2と比較され、かつ負側D級増幅部5においても入力信号S1が全範囲に亘って負側鋸歯状信号S2rと比較される。したがって、正側D級増幅部4および負側D級増幅部5から歪みの極めて少ない正電圧信号S13と負電圧信号S23が出力されるため、加算部6から出力される増幅信号Soは、同図に示すように、A級増幅装置の出力と同じように歪みの極めて少ない状態で出力される。
一方、図9に示すように、正側鋸歯状信号S2のV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値が負電源電圧Vddよりも高い電圧となり、かつ負側鋸歯状信号S2rの逆V字状波形Sdにおける上端部Aの電圧値が正電源電圧Vccよりも低い電圧となるように、各可変抵抗22a,22bの抵抗値を調整したときには、正側D級増幅部4では、入力信号S1の電圧が低い領域(下端部Aの電圧値よりも低電圧の領域)Cにおいて、V字状波形Sbにおける下端部Aの電圧が入力信号S1の電圧に達しない状態にすることができる。また、負側D級増幅部5では、入力信号S1の電圧が高い領域(上端部Aの電圧値よりも高電圧の領域)Eにおいて、逆V字状波形Sdにおける上端部Aが入力信号S1に達しない状態にすることができる。この場合には、図9に示すように、正側D級増幅部4から出力される正電圧信号S13は、入力信号S1の上記領域Cに対応する部位において歪んだ状態で出力される。同様にして、負側D級増幅部5から出力される負電圧信号S23も、入力信号S1の上記領域Eに対応する部位において歪んだ状態で出力される。したがって、加算部6において、この正電圧信号S13と負電圧信号S23とが加算されて生成される増幅信号Soも、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように、歪みの生じた状態、具体的には、上記の各領域C,Eに対応する部位において歪む信号として出力される。
このように、増幅信号Soが各領域C,Eに対応する部位において歪む信号として出力されるときには、正電圧信号S13に含まれる直流正電圧、および負電圧信号S23に含まれる直流負電圧を低くすることができるため、加算部6で消費される電力が低減されて、その結果として信号増幅装置1A全体の消費電力が低減される。
このように、この信号増幅装置1Aでも、信号生成部2Aから正側D級増幅部4に出力される正側鋸歯状信号S2が正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Saと、下端部Aの電圧値が調整可能(振幅が調整可能)なV字状波形Sbとを含んで構成され、かつ信号生成部2Aから負側D級増幅部5に出力される負側鋸歯状信号S2rが負電源電圧Vddと同電圧となる直線波形Scと、上端部Aの電圧値が調整可能(振幅が調整可能)な逆V字状波形Sdとを含んで構成されている。これにより、正側鋸歯状信号S2の一周期内に正電源電圧Vccと同電圧となる直線波形Saが常に含まれるため、正側鋸歯状信号S2の一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第1PWM信号S11が生成される。また、負側鋸歯状信号S2rの一周期内に負電源電圧Vddと同電圧となる直線波形Scが常に含まれるため、負側鋸歯状信号S2r一周期内に常にグランド電位となる期間が存在するように第2PWM信号S21が生成される。
したがって、この信号増幅装置1Aにおいても、信号増幅装置1と同様にして、各トランス43,53の飽和を確実に回避することができる。また、信号増幅装置1Aにおいても、正側鋸歯状信号S2や負側鋸歯状信号S2rの振幅を調整することで、正側D級増幅部4から出力される正電圧信号S13に含まれる直流正電圧および負側D級増幅部5から出力される負電圧信号S23に含まれる直流負電圧を任意に設定することができ、これにより、正電圧信号S13および負電圧信号S23に歪みを生じさせたり、歪みのない状態にしたりすることができるため、AB級増幅装置やB級増幅装置の各出力と同じように波形に歪みの生じた状態で増幅信号Soを出力させたり、またはA級増幅装置の出力と同じように波形に生じる歪みが極めて少ない状態で増幅信号Soを出力させたりすることができる。さらに、信号増幅装置1Aによれば、正電圧信号S13に含まれる直流正電圧および負電圧信号S23に含まれる直流負電圧を独立して任意に設定することができるため、増幅信号Soにおける正側波形および負側波形のバランスを微調整することもできる。
また、本発明は、上記の構成に限定されない。例えば、上記の信号増幅装置1,1Aにおける信号生成部2,2Aでは、可変抵抗22,22a,22bの抵抗値を調整することにより、鋸歯状信号S2および正側鋸歯状信号S2の振幅(下端部Aの電圧値)や、負側鋸歯状信号S2rの振幅(上端部Aの電圧値)を変更する構成を採用しているが、スイッチ駆動回路24によるスイッチ23,23a,23bのオン・オフ駆動の周期や、デューティー比を変更する構成を採用することもできる。また、第1トランス43および第2トランス53については、センタータップのない一次巻線43a,53aを使用して、第1駆動回路42や第2駆動回路52によってシングルエンド駆動される構成としているが、センタータップを備えた一次巻線を使用してディファレンシャル駆動される構成を採用することもできる。また、二次巻線43b,53bについてもセンタータップのない上記の構成に代えてセンタータップのある構成とし、これに伴い、第1検波回路44および第2検波回路54についても、上記した半波整流回路(ダイオード1つで整流する回路)に代えて全波整流回路(ダイオード2つで整流する回路)を採用することもできるし、さらには、4つのダイオードで構成されるブリッジ整流回路を採用することもできる。また、第1トランス43および第2トランス53を巻線トランスで構成したが、圧電トランスを使用することもできる。
また、第1検波回路44および第2検波回路54においては、倍電圧整流方式の回路構成を採用することもできるし、さらにはコッククロフト・ウォルトン方式の回路構成を採用してもよいのは勿論である。また、上記した各信号増幅装置1,1Aは、電圧センサなどの各種の測定器における信号増幅に利用することができる。また、一例として、加算部6を直列に接続された2つの抵抗61,62で構成した例について上記したが、他の構成で加算回路を構成しても良いのは勿論である。
また、上記の信号増幅装置1の信号生成部2では、スイッチ23を可変抵抗22の他端および正電源電圧Vccに接続して、コンデンサ21の他端を可変抵抗22の他端および正電源電圧Vccに交互に接続させる構成としたが、図10に示すように、正電源電圧Vcc側にも一端が正電源電圧Vccに接続された状態で抵抗(本発明における正側抵抗。一例として可変抵抗)25を配置して、コンデンサ21の他端を可変抵抗(本発明における負側抵抗の一例)22の他端および可変抵抗25の他端に交互に接続させる構成を採用することもできる。この構成の信号生成部2によれば、簡易な構成を維持しつつ、直線波形SaおよびV字状波形Sbを含む鋸歯状信号S2を、そのV字状波形Sbにおける下端部Aの電圧値を変更可能な状態で生成することができる。さらに、可変抵抗22および可変抵抗25の各抵抗値を調整してコンデンサ21に対する充放電特性(時定数)を揃えることにより、図10に示すように、V字状波形Sbにおける下端部Aを挟んだ前半側波形および後半側波形間の間隔Lについての振幅方向に沿ったリニアリティを改善すること(振幅方向に沿って間隔Lをほぼリニアに変化させること)ができ、この結果、入力信号S1をよりリニアに増幅して増幅信号Soとして出力させることができる。
また、上記の信号増幅装置1Aの信号生成部2Aにおいても、上記した信号増幅装置1の信号生成部2と同様にして、図11に示すように、第1生成回路20aでは抵抗(一例として可変抵抗)25aを正電源電圧Vcc側に追加して、その一端をスイッチ23aに接続し、第2生成回路20bでは抵抗(一例として可変抵抗)25bを負電源電圧Vdd側に追加して、その一端をスイッチ23bに接続する構成とすることができる。この場合、可変抵抗25a,22aが本発明における第1正側抵抗および第1負側抵抗を構成し、可変抵抗22b,25bが本発明における第2正側抵抗および第2負側抵抗を構成する。このように信号生成部2Aを構成することにより、各生成回路20a,20bで生成される正側鋸歯状信号S2および負側鋸歯状信号S2rについての上記リニアリティを上記した信号増幅装置1の信号生成部2と同様にして改善することができるため、入力信号S1をよりリニアに増幅して増幅信号Soとして出力させることができる。