JP2009286926A - 高飽和ニトリルゴム組成物及びその架橋物 - Google Patents

高飽和ニトリルゴム組成物及びその架橋物 Download PDF

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務 吉村
Makoto Nagaya
誠 長屋
Shinya Ikeda
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Abstract

【課題】耐熱老化性に優れた高飽和ニトリルゴム組成物を提供すること。
【解決手段】高飽和ニトリルゴム、シリカ及びシランカップリング剤を含有してなり、シリカとシランカップリング剤との重量比率(シリカ/シランカップリング剤)が13〜2の範囲内であることを特徴とする高飽和ニトリルゴム組成物。シリカとシランカップリング剤との重量比率(シリカ/シランカップリング剤)が11〜4の範囲内であることが好ましい。シランカップリング剤が、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含有するものであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は高飽和ニトリルゴム組成物及びその架橋物に関する。更に詳しくは、耐熱老化性に優れた架橋物を与えることができ、かつ、加工性が良好な高飽和ニトリルゴム組成物及びその架橋物に関する。
耐油性、耐熱性及び耐オゾン性を有するゴムとして、高飽和ニトリルゴムが知られている。高飽和ニトリルゴムの架橋物は、自動車用ゴム製品として、ベルト、ホース、ガスケット、パッキン、オイルシール等の種々の用途で、用いられている。
最近、市場での品質要求が高度化し、殊に自動車のエンジンまわりで使用されるベルト、ガスケット、シール等において機械的強度、耐熱老化性、耐摩耗性等、種々の特性について、一層の向上が望まれるようになった。
特許文献1には、ヨウ素価80以下のニトリル基含有共重合体にpH8.5以上のシリカ系無機配合剤及びビニル系シランカップリング剤を配合してなるゴム組成物を加硫することにより、耐熱性及び耐油性が一層改善されることが記載されている。
しかし、市場における耐熱老化性に対する要求は、更に高度化し、高温下での長寿命化がより強く求められるようになった。
特開昭62−240338号公報
耐熱老化性を向上させるには、フィラーとして、従来賞用されてきたカーボンブラックに代えてシリカを使用することが有効である。
しかし、高飽和ニトリルゴムにシリカを配合すると、粘度が上昇して加工性が低下して、その結果、得られるコンパウンドの物性が悪化する。
コンパウンドの粘度を低下させるには、可塑剤を添加するのが一般的な手法であるが、可塑剤の添加により、このコンパウンドから得られる成形体の強度が低下し、熱履歴により可塑剤が揮散して硬度が上昇する問題が生じる。しかも、伸びも低下するという問題をも生じる。
考えられる他の手法は、低ムーニー粘度の高飽和ニトリルゴムを使用することであるが、このような高飽和ニトリルゴムは、工業的に入手が困難である。
従って、本発明の目的は、耐熱老化性に優れた架橋物を与えることができ、かつ、加工性が良好な高飽和ニトリルゴム組成物及びその架橋物に関する。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、高飽和ニトリルゴム、シリカ及びシランカップリング剤を含有してなる高飽和ニトリルゴム組成物において、シリカとシランカップリング剤との比率を特定範囲内とすることにより、上記目的にかなう高飽和ニトリルゴム組成物が得られることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、高飽和ニトリルゴム、シリカ及びシランカップリング剤を含有してなり、シリカとシランカップリング剤との重量比率(シリカ/シランカップリング剤)が13〜2の範囲内であることを特徴とする高飽和ニトリルゴム組成物が提供される。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物において、シリカとシランカップリング剤との重量比率(シリカ/シランカップリング剤)が11〜4の範囲内であることが好ましい。
また、本発明の高飽和ニトリルゴム組成物において、シランカップリング剤が、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含有するものであることが好ましい。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物において、高飽和ニトリルゴムが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%、ジエン単量体単位及び/又はα−オレフィン単量体単位を20〜90重量%並びにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル単量体単位を0〜70重量%含有してなるものであることが好ましい。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物において、高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))が10〜95であることが好ましく、15〜85であることがより好ましい。
また、本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、架橋剤を含有してなるものであってもよい。
また、本発明によれば、本発明の高飽和ニトリルゴム組成物を架橋してなる高飽和ニトリルゴム架橋物が提供される。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、従来の高飽和ニトリルゴムを使用した場合と比較して、伸び変化量や硬さ変化量が低減され、耐熱老化性が大きく向上する。従って、ベルト、ガスケット、シール材等の厳しい耐熱性が要求される部品の製造に有効に用いられる。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、高飽和ニトリルゴム、シリカ及びシランカップリング剤を含有してなる。
本発明で使用する高飽和ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位とジエン単量体単位及び/又はα−オレフィン単量体単位を必須成分とする共重合体ゴムが好ましい。
高飽和ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、ジエン単量体単位及び/又はα−オレフィン単量体単位を含有してなるものが好ましい。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を構成する単量体は、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;メタクリロニトリル等のα−アルキルアクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル等のα−ハロゲノアクリロニトリル;等が挙げられる。
これらのうち、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましい。
上記単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。
高飽和ニトリルゴムにおけるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは18〜45重量%である。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎると、高飽和ニトリルゴムの架橋物の耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
ジエン単量体単位を構成するジエン単量体は、特に限定されないが、その具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等の炭素数が4以上の共役ジエン、及び1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン等の好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエンが挙げられる。
これらの中では共役ジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
ジエン単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。
α−オレフィン単量体単位を構成するα−オレフィン単量体は、特に限定されないが、通常、炭素数が2〜12のものである。その具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等を挙げることができる。
α−オレフィン単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。
なお、本発明において、α−オレフィン単量体単位は、α−オレフィン単量体の重合により得られるもののほか、ジエン単量体単位を水素化してα−オレフィン単量体単位と同等の構造を有することとなったものであってもよい。
高飽和ニトリルゴムにおけるジエン単量体単位及びα−オレフィン単量体単位の合計含有量は、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは27〜82重量%である。
高飽和ニトリルゴムにおけるこれらの単量体単位含有量が少なすぎると高飽和ニトリルゴムの架橋物の弾性が低下するおそれがあり、多すぎると耐熱老化性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
高飽和ニトリルゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、ジエン単量体単位及びα−オレフィン単量体単位以外に、これらの単量体と共重合可能なその他の単量体の単位を含有することができる。
その具体例としては、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位が好ましい。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体単位を構成するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の多価カルボン酸を挙げることができる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。
α,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位を構成するα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであって、アルキル基の炭素数が1〜18のもの;(メタ)アクリル酸メトキシメチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルであって、アルコキシアルキル基の炭素数が2〜12のもの;(メタ)アクリル酸α−シアノエチル、(メタ)アクリル酸β−シアノエチル等の(メタ)アクリル酸シアノアルキルエステルであって、シアノアルキル基の炭素数が2〜12のもの;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであって、ヒドロキシアルキル基の炭素数が1〜12のもの;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルであって、アミノアルキル基の炭素数が2〜12のもの;(メタ)アクリル酸フルオロベンジル等の(メタ)アクリル酸フッ素置換ベンジルエステル;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル等の(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステル;マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル等のα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸ポリアルキルエステル;マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル等のα,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸モノアルキルエステル;等が挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、ジエン単量体及びα−オレフィン単量体と共重合可能なその他の単量体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。
高飽和ニトリルゴムにおけるこれらの単量体単位の含有量は、好ましくは0〜70重量%、より好ましくは0〜55重量%、更に好ましくは0〜40重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
高飽和ニトリルゴムのヨウ素価は、120以下であることが好ましく、より好ましくは40以下、更に好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。高飽和ニトリルゴムのヨウ素価が低くなると、その架橋物の耐熱老化性や耐オゾン性がより一層向上する。
高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、好ましくは10〜95、より好ましくは15〜80、特に好ましくは20〜70である。
高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度が低すぎると、その架橋物の機械的特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると、高飽和ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
高飽和ニトリルゴムの製造方法は、特に限定されないが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、ジエン単量体及び/又はα−オレフィン単量体、並びに、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合し、必要に応じて、水素化する方法が好ましい。
重合法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法及び溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。
乳化重合法は、通常、水性媒体に単量体、重合開始剤、乳化剤、重合連鎖移動剤等を加えて重合する方法である。なお、その方式は、回分式、半回分式、連続式のいずれでもよい。
乳化剤としては従来公知のものが使用可能であり、特に制限されない。
その具体例としては、アニオン型界面活性剤(高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族カルボン酸エステルのスルホン酸塩等)、ノニオン型界面活性剤(ポリエチレングリコールのアルキルエステル、アルキルフェニルエーテル、アルキルエーテル等)及び両性型界面活性剤(アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸塩又はリン酸エステル塩を、カチオン部分としてアミン塩又は第四級アンモニウム塩を有している界面活性剤)等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、全単量体100重量部当たり、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部、特に好ましくは1.5〜3.0重量部である。
乳化剤の使用量が多すぎると、残留する乳化剤を除くための洗浄工程が煩雑となるおそれがあり、逆に、乳化剤の使用量が少なすぎると、重合時の安定性が低下して乳化重合反応を行なうことができなかったり、得られるラテックスの安定性が劣ったりする場合がある。
乳化重合において使用する重合開始剤は、ラジカル開始剤であれば特に限定されない。
その具体例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。
また、過酸化物は重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
これらの重合開始剤のうち、無機又は有機の過酸化物が好ましい。
重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。
重合開始剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.05〜1.5重量部である。
乳化重合において、得られる共重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤を使用することができる。
分子量調整剤は、特に限定されない。
その具体例としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン等のメルカプタン類;四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;テトラエチルチウラムダイサルファイド、ジペンタメチレンチウラムダイサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンダイサルファイド等の含硫黄化合物;等が挙げられる。
これらの分子量調整剤のうち、メルカプタン類が好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましい。
分子量調整剤は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。
分子量調整剤の使用量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは0.1〜0.8重量部、より好ましくは0.2〜0.7重量部の範囲である。
乳化重合において、更に、必要に応じて、キレート剤、分散剤、pH調整剤、脱酸素剤、粒子径調整剤等の重合副資材を用いることができる。
これらは種類、使用量とも特に限定されない。
重合開始剤、分子量調整剤をはじめとする各重合副資材の添加方法は特に限定されず、重合初期に一括添加する方法、分割して添加する法、連続して添加する方法等いずれの方法でもよい。
乳化重合の媒体としては、通常、水が使用される。水の量は、全単量体100重量部に対して、好ましくは80〜500重量部、より好ましくは100〜300重量部である。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、ジエン単量体及び/又はα−オレフィン単量体、並びに、必要に応じて使用されるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合して得られる共重合体(以下、「ニトリル共重合体」という。)の炭素−炭素二重結合を、所望により、水素化して、そのヨウ素価を調整する。
ニトリル共重合体の水素化反応に際し、ニトリル基まで水素化すると得られる高飽和ニトリルゴムの耐油性を低下させるので、炭素−炭素二重結合のみを選択的に水素化することが好ましい。
なお、ニトリル共重合体のムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、好ましくは10〜95、より好ましくは15〜80、特に好ましくは20〜60である。
ニトリル共重合体のムーニー粘度がこの範囲を外れると、これを水素化して得られる高飽和ニトリゴムのムーニー粘度が不適切になるおそれがある。ニトリル共重合体のムーニー粘度は、分子量調整剤の量、重合反応温度、重合開始剤濃度等の条件を適宜選定することにより調整することができる。
選択的水素化は公知の方法によればよく、油層水素化法及び水層水素化法のいずれも可能であるが、油層水素化法が好ましい。
ニトリル共重合体の油層水素化法による水素化は、好適には、以下のように行なう。
乳化重合により調製したニトリル共重合体のラテックスから、塩析による凝固、濾別及び乾燥を経て得たニトリル共重合体を有機溶媒に溶解する。次いで、水素添加反応を行ない、得られた水素化物を大量の水中に注いで凝固、濾別及び乾燥を行なう。
ラテックスの塩析凝固には、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム等の公知の凝固剤を使用することができる。凝固剤の使用量は、ニトリル共重合体100重量部に対して、好ましくは1〜100重量部、より好ましくは1〜50重量部である。凝固温度は、10〜80℃が好ましい。
油層水素化法に使用する溶媒は、ニトリル共重合体を溶解する液状有機化合物であれば特に限定されない。
その具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン等の脂環族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;等を挙げることができる。
油層水素化法に用いる触媒としては、公知の選択的水素化触媒が限定なく使用できるが、パラジウム系触媒及びロジウム系触媒が好ましく、パラジウム系触媒(酢酸パラジウム、塩化パラジウム、水酸化パラジウム等)がより好ましい。
これらの水素化触媒は、2種以上を併用してもよいが、その場合はパラジウム系触媒を主たる活性成分とすることが好ましい。
水素化触媒は、通常、担体に担持させて使用する。
担体としては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、珪藻土、活性炭等を挙げることができる。
使用する触媒の量は、ニトリル共重合体に対して、好ましくは1〜5,000重量ppm、より好ましくは10〜3,000重量ppmである。
油層水素化法における水素化反応温度は、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃であり、水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.2〜20MPaであり、反応時間は、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜25時間である。
ニトリル共重合体の水層水素化法による水素化に際しては、乳化重合により調製したニトリル共重合体のラテックスに、必要に応じて水を加えて希釈し、水素添加反応を行なうのが好ましい。
水層水素化法には、水素化触媒存在下の反応系に水素を供給して水素化する水層直接水素化法と、酸化剤、還元剤及び活性剤の存在下で還元して水素化する水層間接水素化法とがある。
水層直接水素化法において、ニトリル共重合体のラテックスの固形分濃度は、凝集を防止するため40重量%以下であることが好ましい。
水素化触媒は、水で分解しにくい化合物であれば特に限定されない。
その具体例として、パラジウム触媒としては、ギ酸、プロピオン酸、ラウリン酸、コハク酸、オレイン酸、フタル酸等のカルボン酸のパラジウム塩;塩化パラジウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)パラジウム、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウム等のパラジウム塩素化物;ヨウ化パラジウム等のヨウ素化物;硫酸パラジウム・二水和物等が挙げられる。
これらの中でもカルボン酸のパラジウム塩、ジクロロ(ノルボルナジエン)パラジウム及びヘキサクロロパラジウム(IV)酸アンモニウムが特に好ましい。
水素化触媒の使用量は、適宜定めればよいが、ニトリル共重合体に対し、好ましくは5〜6,000重量ppm、より好ましくは10〜4,000重量ppmである。
水層直接水素化法における反応温度は、好ましくは0〜300℃、より好ましくは20〜150℃、特に好ましくは30〜100℃である。
反応温度が低すぎると反応速度が低下するおそれがあり、逆に、高すぎるとニトリル基の水素添加等の副反応が起こる可能性がある。
水素圧力は、好ましくは0.1〜30MPa、より好ましくは0.5〜20MPaである。
反応時間は反応温度、水素圧、目標の水素化率等を勘案して選定される。
水層直接水素化法においては、水素化反応終了後、通常、ラテックス中の水素化触媒を除去するが、水素化触媒を除去せずにラテックス中に残存させることも可能である。
水素化触媒の除去方法としては、例えば、活性炭、イオン交換樹脂等の吸着剤をラテックスに添加して攪拌することによって、水素化触媒を吸着剤に吸着させ、次いでラテックスを濾過又は遠心分離する方法を採ることができる。
水層間接水素化法では、ニトリル共重合体ラテックスの固形分濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは1〜40重量%である。
酸化剤としては、酸素、空気、過酸化水素等が用いられる。
酸化剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(酸化剤/炭素−炭素二重結合)が、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1となるような量である。
還元剤としては、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、酢酸ヒドラジン、ヒドラジン硫酸塩、ヒドラジン塩酸塩等のヒドラジン類又はヒドラジンを遊離する化合物が用いられる。
還元剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(還元剤/炭素−炭素二重結合)が、好ましくは0.1:1〜100:1、より好ましくは0.8:1〜5:1となる量である。
活性剤としては、銅、鉄、コバルト、鉛、ニッケル、鉄、スズ等の金属のイオンが用いられる。
活性剤の使用量は、炭素−炭素二重結合に対するモル比(活性剤/炭素−炭素二重結合)が、好ましくは1:1,000〜10:1、より好ましくは1:50〜1:2となる量である。
水層間接水素化法における水素化反応は、0℃から還流温度までの範囲内、好ましくは0〜250℃、より好ましくは20〜100℃、特に好ましくは40〜80℃で行なわれる。
水層での直接水素化法及び間接水素化法のいずれにおいても、水素化に続いて、塩析による凝固、濾別及び乾燥を行なうことが好ましい。また、凝固に続く濾別及び乾燥の工程はそれぞれ公知の方法によって行なうことができる。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、補強性充填材として、シリカを配合してなる。
シリカとしては、特に制限はなく、組成式中に(SiO)を含む化合物であればよい。
具体的には、石英粉末、珪石粉末等の天然シリカ;無水珪酸(シリカゲル、アエロジル等)、含水珪酸等の合成シリカ;珪酸金属塩;等が挙げられ、これらの中でも、合成シリカ及び珪酸金属塩が好ましい。なお、上記の天然シリカ及び合成シリカは、(SiO)又は(SiO・nHO)の組成式を有する(nは正の整数)。
合成シリカとしては、無水合成シリカを用いるのが好ましい。無水合成シリカは、所謂、白色充填材(ホワイトカーボン)として合成ゴムの充填材に一般的に用いられているものが好ましい。
高飽和ニトリルゴム100重量部に対するシリカの配合量は、下限が好ましくは0.1重量部、より好ましくは0.5重量部、更に好ましくは1重量部、特に好ましくは10重量部であり、上限が好ましくは300重量部、より好ましくは150重量部、特に好ましくは80重量部である。
シリカの合計配合量が少なすぎると、ゴムの強度が低下する場合があり、配合量が多すぎると、粘度が上がり、成形加工性が損なわれる場合がある。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、シランカップリング剤を特定量配合してなる。
シランカップリング剤を特定量配合することにより、ゴム架橋物の耐熱性が向上する。
本発明で使用するシランカップリング剤は、特に限定されない。
その具体例としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトメチルトリメトキシラン、γ−メルカプトメチルトリエトキシラン、γ−メルカプトヘキサメチルジシラザン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピルジスルファン)等の硫黄を含有するシランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプリピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン(部分加水分解物を含む)等のアミノ基含有シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシ基含有シランカップリング剤(アクリロイル基又はメタクリロイル基を含有するシランカップリング剤);ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロロプロピル基含有シランカプリング剤;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカプリング剤:p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基含有シランカップリング剤;3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド基含有シランカップリング剤;ジアリルジメチルシラン等のアリル基含有シランカップリング剤;テトラエトキシシラン等のアルコキシ基含有シランカップリング剤;ジフェニルジメトキシシラン等のフェニル基含有シランカップリング剤;トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフロロ基含有シランカップリング剤;イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン等のアルキル基含有シランカップリング剤;を挙げることができる。
これらのシランカップリング剤のうち、ビニル基を有するものが好ましく、メタクリロキシ基及び/又はアクリロキシ基を有するシランカップリング剤がより好ましい。
ビニル基を有するものを使用すると、得られるゴム組成物の熱老化後の硬度変化だけでなく、伸び変化も小さくなるので好ましい。
また、シランカップリング剤の量は、シリカとシランカップリング剤との重量比率(シリカ/シランカップリング剤)が13〜2であることが必要であり、11〜4であることが好ましく、11〜6の範囲内であることが特に好ましい。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、更に架橋剤を配合してなるものであってもよい。架橋剤を配合してなる高飽和ニトリルゴム組成物を、以下、「架橋性高飽和ニトリルゴム組成物」という。
高飽和ニトリルゴム組成物に配合する架橋剤としては、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤及びポリアミン系架橋剤が好ましく、硫黄系架橋剤及び有機過酸化物系架橋剤が更に好ましい。
硫黄系架橋剤の具体例としては、粉末硫黄、沈降硫黄等の硫黄;4,4’−ジチオモルホリンやテトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、高分子多硫化物等の有機硫黄化合物;等が挙げられる。
有機過酸化物系架橋剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル類;等が挙げられる。
ポリアミン系架橋剤は、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNH2で表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物が好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられる。
ポリアミン系架橋剤を配合する場合、塩基性架橋促進剤等の架橋助剤を用いてもよい。塩基性架橋促進剤は、テトラメチルグアニジン、テトラエチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、o−トリルビグアニド、ジカテコールホウ酸のジ−o−トリルグアニジン塩等のグアニジン系架橋促進剤;n−ブチルアルデヒドアニリン、アセトアルデヒドアンモニア、ヘキサメチレンテトラミン等のアルデヒドアミン系架橋促進剤;等が挙げられる。中でもグアニジン系架橋促進剤が好ましい。
架橋剤の配合量は、高飽和ニトリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.2〜20重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
架橋促進剤の配合量は、高飽和ニトリルゴム100重量部に対し、下限が、好ましくは0.5重量部、より好ましくは1重量部、特に好ましくは2重量部であり、上限が、好ましくは10重量部、より好ましくは7重量部である。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、シリカ、シランカップリング剤及び架橋剤以外に、ゴム加工分野において通常使用されるその他の配合剤、例えば、補強性充填剤(カーボンブラック、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛等)、非補強性充填材(炭酸カルシウム、クレー等)、酸化防止剤、光安定剤、スコーチ防止剤(一級アミン等)、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、受酸剤、防黴剤、帯電防止剤、着色剤、架橋促進剤、架橋遅延剤等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、配合目的に応じた量を適宜採用することができる。
本発明の高飽和ニトリルゴム組成物の調製方法は、特に限定されない。通常、架橋剤及び熱に不安定な架橋助剤等を除いた成分を、バンバリーミキサー、インターミキサー、ニーダー等の混合機で一次混練した後、ロール等に移して加硫剤等を加えて二次混練する。
なお、架橋剤及びその他の配合剤は、好ましくは非水系で高飽和ニトリルゴムと混合する。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4(100℃))(コンパウンドムーニー)は、好ましくは15〜150、より好ましくは40〜120である。
本発明の高飽和ニトリルゴム架橋物は、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得ることができる。
この架橋物を得るにあたっては、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロール等により成形を行ない、架橋反応によりゴム架橋物としての形状を固定化すればよい。
架橋の時期は、架橋性ニトリルゴム組成物を予め成形した後でも、成形と同時でもよい。
成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。
架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
また、高飽和ニトリルゴム架橋物の形状、大きさ等によっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、更に加熱して二次架橋を行ってもよい。
本発明の高飽和ニトリル架橋物は、170℃で504時間処理した後の伸び率の変化率が少ない。
本発明の高飽和ニトリルゴム架橋物の好適な用途としては、O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール及び空気圧機器用シール等の各種シール用ゴム部材;動力平ベルト、コンベアーベルト、Vベルト、タイミングベルト及び歯付ベルト等の各種ベルト;燃料ホース、オイルホース、マリンホース、ライザー及びフローライン等の各種ホース;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール及び事務機器用ロール等の各種ロール;CVJブーツ及びプロペラシャフトブーツ等の各種ブーツ;バルブ及びバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、及びプラター等の油田用シールゴム部品;クッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材等の減衰材ゴム部品;自動車エンジン用のガスケット、インテークマニフォールドガスケット、ロッカーカバーガスケット、オイルパンガスケット等の各種ガスケット;ダストカバー;自動車内装部材;被覆ケーブル及び靴底等が挙げられるが、シール用ゴム部材、ベルト、ホース及びガスケットとしてより有用であり、高度な耐熱性が要求される自動車のエンジンまわりに特に好適に用いられる。
以下に製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の配合において、[部]及び[%]は、特に断りのない限り重量基準である。
試験・評価は下記によって行なった。
(1)常態物性(伸び及び強度)
架橋剤を配合した高飽和ニトリルゴム組成物を縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、加圧しながら170℃で30分間プレス成形及び架橋を行ってシート状架橋物を得た。得られたシート状架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作成した。この試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の伸び及び強度を測定した。
(2)常態物性(硬さ)
上記(1)と同様にして得られた試験片を用いて、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機タイプAを用いてゴム架橋物の硬さを測定した。
(3)ムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕
高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー)及び架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー)をJIS K6300に従ってそれぞれ測定した。
(4)熱老化後の物性(耐熱老化性)
上記(1)と同様にして得られた試験片をギヤーオーブン中に170℃で504時間置いてから取り出し、JIS K6251に従ってゴム架橋物の伸びを、また、JIS K6253に従ってデュロメータ硬さ試験機タイプAによる硬さを測定した。
これらの値から、下記式により、伸び変化率及び硬度変化幅を求めた。
伸び変化率(%)=100×(熱老化後の伸び−常態での伸び)/常態での伸び
硬さ変化幅=熱老化後の硬さ−常態での硬さ
伸び変化率は、その絶対値が小さい方が優れている。
硬さ変化幅は、その数値が小さい方が優れている。
(製造例)
金属製ボトル内でイオン交換水200部に、炭酸ナトリウム0.2部を溶解し、それに脂肪酸カリウム石鹸(ADEKA社製、「商品名HDF−18K」)を2.25部添加して石鹸水溶液を調製した。
これにアクリロニトリル37部及びt−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部をこの順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン63部を仕込んだ。
金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、温度を5℃に保ちながら16時間重合反応を行なった。
次いで、濃度10%のハイドロキノン(重合停止剤)水溶液0.1部を加えて重合反応を停止し、ロータリーエバポレータを用いて水温60℃で残留単量体を除去してニトリルゴムのラテックスを得た(重合転化率80%)。
ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単量体単位37%及びブタジエン単量体単位63%であり、ラテックス濃度は25%であった。
ニトリルゴムラテックスの一部を、そのニトリルゴム分に対して3%となる量の硫酸アルミニウムの水溶液に加えて撹拌してラテックスを凝固し、水で洗浄しつつ濾別した後、60℃で12時間真空乾燥してニトリル共重合体(a1)を得た。得られたニトリル共重合体(a1)を、濃度12%となるようにアセトンに溶解し、オートクレーブに入れ、パラジウム・シリカ触媒をニトリル共重合体(a1)に対して500重量ppm加え、水素圧3.0MPaで水素添加反応を行なった。水素化反応終了後、大量の水中に注いで凝固させ、濾別及び乾燥を行なって高飽和ニトリルゴム(A1)を得た。
得られた高飽和ニトリルゴム(A1)は、ヨウ素価7、ムーニー粘度ML1+4(100℃)=65であった。
(実施例1)
高飽和ニトリルゴム(A1)100部に、シリカ(塩野義製薬社製、商品名「カープレックス1120」)40部、酸化亜鉛(架橋促進剤。「亜鉛華1号」、正同化学社製)5部、ステアリン酸(架橋促進剤)1部、N,N’−m−フェニレンジマレイミド(架橋助剤。昭和電工社製、商品名「HVA#2」)2部、4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(芳香族第二級アミン系老化防止剤。ユニロイヤル社製、商品名「ナウガード445」)1.5部、2−メルカプトベンズイミダゾール亜鉛塩(老化防止剤。大内新興化学工業社製、商品名「ノクラックMBZ」)1.5部、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン40%品(有機過酸化物。GEO Specialty Chemicals Inc社製、商品名「バルカップ40KE」)8部(有機過酸化物純分3.2部)、及び、シランカップリング剤CP−1として3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名「KBM503」)4部を配合し、50℃でロール混練して、架橋性高飽和ニトリルゴム組成物1を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は76であった。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物1を用いて得たゴム架橋物1の常態物性(伸び、硬さ、強度)並びに耐熱老化性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えて、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名「KBM5103」)をシランカップリング剤CP−2として用いたほかは実施例1と同様にして、架橋性高飽和ニトリルゴム組成物2を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は81であった。これから得られたゴム架橋物2について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例3)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えて、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製、商品名「KBM403」)をシランカップリング剤CP−3として用いたほかは実施例1と同様にして、架橋性高飽和ニトリルゴム組成物3を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は81であった。これから得られたゴム架橋物3について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例4)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランに代えて3−トリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミンとその部分加水分解物(シランカップリング剤、信越シリコーン社製、商品名「KBM9103」)をシランカップリング剤CP−4として用いたほかは実施例1と同様にして、架橋性高飽和ニトリルゴム組成物4を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は80であった。これから得られたゴム架橋物4について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
(実施例5)
シランカップリング剤(CP−1)である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの量を4部から6部に変えた他は実施例1と同様にして、架橋性高飽和ニトリルゴム組成物5を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は71であった。これから得られたゴム架橋物5について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例1)
シランカップリング剤を配合しないほかは実施例1と同様にして、架橋性高飽和ニトリルゴム組成物C1を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は100であった。これから得られたゴム架橋物C1について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例2)
実施例1において、シランカップリング剤を配合せずに、可塑剤(トリメリット酸誘導体。旭電化工業社製、商品名「アデカサイザーC−8」)10部を配合した他は実施例1と同様にして架橋性高飽和ニトリルゴム組成物C2を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は71であった。これから得られたゴム架橋物C2について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例3)
シランカップリング剤(CP−1)の量を2.7部に変更した他は実施例1と同様にして架橋性高飽和ニトリルゴム組成物C3を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は85であった。これから得られたゴム架橋物C3について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例4)
シリカに代えてFEFカーボンブラックを使用した他は実施例1と同様にして架橋性高飽和ニトリルゴム組成物C4を調製した。この架橋性高飽和ニトリルゴム組成物のコンパウンドムーニー粘度ML1+4(100℃)は87であった。これから得られたゴム架橋物C4について、実施例1と同様の試験、評価を行なった。結果を表1に示す。
Figure 2009286926
表1の結果から、以下のことが分かる。
特定量のシランカップリング剤を配合した本発明の高飽和ニトリルゴム組成物は、170℃で504時間という厳しい条件下での耐熱老化試験後の伸びの減少率が大幅に低減されている。また、硬さ変化量が大幅に小さくなっている(実施例)。
一方、シランカップリング剤を配合していない高飽和ニトリルゴム組成物(比較例1及び2)は、熱老化後には、伸びが大幅に低下しており、また、劣化により硬さが大きく上昇している。
また、シランカップリング剤を使用した場合もその使用量が本願発明で規定する範囲を外れるときは、伸び及び硬さの変化が大きい(比較例3)。
更に、シリカに代えてカーボンブラックを使用した場合は、伸び及び硬さの変化が大きい(比較例4)。

Claims (8)

  1. 高飽和ニトリルゴム、シリカ及びシランカップリング剤を含有してなり、シリカとシランカップリング剤との重量比率(シリカ/シランカップリング剤)が13〜2の範囲内であることを特徴とする高飽和ニトリルゴム組成物。
  2. シリカとシランカップリング剤との重量比率(シリカ/シランカップリング剤)が11〜4の範囲内である請求項1に記載の高飽和ニトリルゴム組成物。
  3. シランカップリング剤が、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を含有するものである請求項1又は2に記載の高飽和ニトリルゴム組成物。
  4. 高飽和ニトリルゴムが、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を10〜60重量%、ジエン単量体単位及び/又はα−オレフィン単量体単位を20〜90重量%並びにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸及び/又はそのエステル単量体単位を0〜70重量%含有してなるものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の高飽和ニトリルゴム組成物。
  5. 高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))が10〜95である請求項1〜4のいずれか1項に記載の高飽和ニトリルゴム組成物。
  6. 高飽和ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4(100℃))が15〜85である請求項5に記載の高飽和ニトリルゴム組成物。
  7. 更に架橋剤を配合してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の高飽和ニトリルゴム組成物。
  8. 請求項7に記載の高飽和ニトリルゴム組成物を架橋してなる高飽和ニトリルゴム架橋物。
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