JP2009286833A - インクジェット用水性インクおよびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】開放放置安定性を向上させたインクジェット用水性インクを提供すること。
【解決手段】自己分散性顔料、溶解度パラメータが11(cal/cm1/2以下である低極性有機溶剤、0.05〜0.25質量%の1価金属塩、および水を含むインクジェット用水性インク。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用水性インクおよびインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録システムは、流動性の高い液体インクを微細なノズルから噴射し、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う印刷システムである。このシステムは、比較的安価な装置で、高解像度、高品位の画像を、高速かつ低騒音で印刷可能、という特徴を有し最近急速に普及している。
インクとしては、安価に高画質の印刷物が得られることから、水性タイプのインクが普及している。また、耐光性および耐水性が良好であることから、色剤として顔料を用いる顔料インクが急速に普及しつつある。
水性の顔料インクでは、顔料を微粒子分散させるために、通常は界面活性剤などの分散剤を使用するが、インクの保存安定性の観点から、分散機能を持つ官能基が顔料に直接化学結合しており、分散剤を使用する必要のない自己分散性顔料も用いられる。
水性インクを用いて普通紙に印字する場合の問題点として、カール(凸カール)やコックリング(波打ち)現象が挙げられる。これは、記録媒体である用紙繊維への水性インクの浸透が早く、インク中の水分により繊維間の水素結合が切断され、用紙が膨潤してしまうために生じる現象である。
特許文献1は、特定の表面張力、粘度、および蒸気圧を備えた溶媒を含み、記録ヘッドにおける出射性、デキャップ適性が改良され、裏抜け耐性、文字品質、カール特性に優れたインクジェット用水性インクを開示する。
特許文献2は、カラー印刷に適したインクであって、水、染料、多価アルコール低級アルキルエーテル、ノニオン性アセチレングリコール、およびグリセリンまたは特定の多価アルコール類を含み、カール防止能力に優れたインクジェット用水性インクを開示する。
特開2005−220296号公報 特開平10−130550号公報
用紙変形を抑制する観点からは、インク中の水分量を減らし、極性の低い水溶性有機溶剤を溶媒として使用することが効果的である。しかし、自己分散性顔料のような表面極性の高い顔料は、インクが大気開放された環境(たとえばインクジェット記録装置の印刷ヘッドのノズル部)に放置されて水分が蒸発してしまうと、低極性有機溶剤中で分散安定性を保つことができなくなって凝集を生じ、インクの増粘およびノズル詰まり等の弊害を引き起こす。
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、開放放置安定性を向上させたインクジェット用水性インク、および、それを用いたインクジェット記録方法を提供することを課題とする。
本発明の一側面によれば、自己分散性顔料、溶解度パラメータが11(cal/cm1/2以下である低極性有機溶剤、0.05〜0.25質量%の1価金属塩、および水を含むインクジェット用水性インクが提供される。
別の本発明の一側面によれば、上記本発明に係るインクジェット用水性インクと、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置とを用いる、インクジェット記録方法が提供される。
本発明のインクジェット用水性インクは、特定量の1価金属塩を含むので、インク中の水分が蒸発した後も、低極性有機溶剤への自己分散性顔料の分散安定性を保つことができ、その結果、インクの増粘を抑制し、インクジェト記録装置のノズル詰まりや吐出不良を低減させることができる。さらに、水分が蒸発した放置後のインクに新しいインクを添加した際の顔料の再分散性も良好である。
本発明のインクジェット記録方法によれば、低極性有機溶剤を用い1価金属塩を含む上記本発明に係るインクを用いることにより、用紙のカール等を抑制して、ラインヘッド方式で高速印刷を行なうことができる。
インクジェット用水性インク(以下、単に「インク」ともいう。)は、顔料、水溶性有機溶剤、1価金属塩、および水を含む。
顔料としては、化学的または物理的処理により顔料の表面に親水性官能基が導入された自己分散性顔料(または自己分散顔料)を用いる。自己分散性顔料としては、イオン性を有する親水性官能基が導入されたものであることが好ましく、顔料表面をアニオン性またはカチオン性に帯電させることにより、静電反発力によって顔料粒子を水中に安定に分散させることができる。アニオン性官能基としては、スルホン酸基、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基、ホスホン酸基等が好ましい。カチオン性官能基としては、第4級アンモニウム基、第4級ホスホニウム基などが好ましい。なかでも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、リン酸基等のアニオン性基であることが好ましい。
これらの親水性官能基は、顔料表面に直接結合させてもよいし、他の原子団を介して結合させてもよい。他の原子団としては、アルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基などが挙げられるが、これらに限定されることはない。顔料表面の処理方法としては、ジアゾ化処理、スルホン化処理、次亜塩素酸処理、フミン酸処理、真空プラズマ処理などが挙げられる。
自己分散性顔料の市販品としては、キャボット社製CAB−O−JET300、CAB−O−JET400、オリエント化学(株)製BONJET BLACK CW−1、同CW−2、東海カーボン(株)製Aqua−Black 162等を例示できる。
インクに含まれる自己分散性顔料(固形分)の配合量は、0.1〜25質量%程度であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましく、5〜15質量%であることが一層好ましい。
次に、インクの水溶性有機溶剤としては、溶解度パラメータが11(cal/cm1/2以下である低極性有機溶剤を使用する。このような低極性有機溶剤を用いることにより、印刷後の用紙のカールを抑制することができ、かつ、用紙へのインクの浸透性を向上させて、印刷画像の濃度を向上させることができる。
上記低極性有機溶剤は、用紙のカール抑制の観点から、インク中に10〜60質量%含まれることが好ましく、20〜45質量%含まれることがさらに好ましい。
上記溶解度パラメータを満たす低極性有機溶剤としては、モノアルキレングリコールモノ(ジ)アルキルエーテル類、ポリアルキレングリコールモノ(ジ)アルキルエーテル類、アセテート類が例示できる。これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用することもできる。
上記例示のなかでも、用紙のカール抑制の観点から、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルを用いることがより好ましい。
ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、たとえば、
ジエチレングリコールモノアルキルエーテル類(たとえば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等);
トリエチレングリコールモノアルキルエーテル類(たとえば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等);
テトラエチレングリコールモノアルキルエーテル類(たとえば、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル等);
ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類(たとえば、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等);
トリプロピレングリコールモノアルキルエーテル類(たとえば、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル等);
テトラプロピレングリコールモノアルキルエーテル類(たとえば、テトラプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等);
を挙げることができ、これらは2種以上を併用することもできる。
インクは、水溶性有機溶剤として、溶解度パラメータが11(cal/cm1/2を超える高極性有機溶剤を含むことができる。
この高極性有機溶剤としては、たとえば、
グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン;
1価アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、2−メチル−2−プロパノール等);
多価アルコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール等);
アミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等);
アミド類(アセトアミド、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等);
が例示できる。ポリグリセリンは、カール抑制効果の観点から、分子量300以上のものが好ましい。これらは単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用することもできる。
上記例示のなかでも、保湿性および沸点(低揮発性)の観点から、グリセリンを用いることがより好ましい。
上記高極性有機溶剤が含まれる場合は、保水性を高めてインクの増粘を防止し、インクジェット吐出安定性確保の観点から、インク中に5〜15質量%含まれることが好ましい。
上記低極性有機溶剤と、任意で高極性有機溶剤を含む水溶性有機溶剤は合計で、インク中に、20〜75質量%程度含まれることが好ましく、30〜50質量%であることがより好ましい。
水は、インク中に、30〜75質量%程度含まれることが好ましく、40〜60質量%であることがより好ましい。水としては、イオン交換水、蒸留水などの純水、または超純水を使用することが好ましい。
1価金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。複数種の1価金属塩を組み合わせて用いることもできる。
アニオン成分としては、特に限定されず、1価のアニオンでも、2価以上の多価のアニオンでもよいし、有機アニオンでも無機アニオンでもよい(つまり、1価金属塩は有機塩でも無機塩でもよい)。たとえば、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、および酢酸塩を好ましく用いることができる。硫酸塩には、正塩のほかに硫酸水素塩が含まれ、リン酸塩には、正塩のほかにリン酸一水素塩およびリン酸二水素塩が含まれ、炭酸塩には、正塩のほかに炭酸水素塩が含まれる。
本発明において1価金属塩を配合することの効果を得るために、1価金属塩はインク中に、0.05〜0.25質量%含まれることが好ましい。1価金属塩の配合量が0.05質量%未満では、充分な効果が得られにくくなり、一方0.25質量%を超えて配合されると、インク中での顔料の静電反発力を阻害して自己分散性顔料の凝集によるインク粘度上昇が生じる恐れがあるために好ましくない。
本発明において1価金属塩を配合することにより自己分散性顔料の凝集抑制という効果が得られる理由は明らかではないが、驚くべきことに、ノズル部でインク中の水分が蒸発して溶剤リッチとなっても、1価金属塩の存在により自己分散性顔料の凝集・沈降が抑制されて、分散安定性を維持することができる。なお、2価金属塩では同じ効果が得られないばかりか、かえって顔料を凝集させてしまうことがわかっている。
インクには、必要に応じて、本発明の目的を阻害しない範囲内で、当該分野において通常用いられている各種添加剤を含ませることができる。
具体的には、顔料分散剤、消泡剤、表面張力低下剤等として、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、または高分子系、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤をインクに含有させることができる。
酸化防止剤を配合することにより、インク成分の酸化を防止し、インクの保存安定性を向上させることができる。酸化防止剤としては、たとえば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、イソアスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムを用いることができる。
防腐剤を配合することにより、インクの腐敗を防止して保存安定性を向上させることができる。防腐剤としては、たとえば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン等のイソチアゾロン系防腐剤;ヘキサヒドロ−1,3,5−トリス(2−ヒドロキシエチル)−s−トリアジン等のトリアジン系防腐剤;2−ピリジンチオールナトリウム−1−オキシド、8−オキシキノリン等のピリジン・キノリン系防腐剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム等のジチオカルバメート系防腐剤;2,2−ジブロモ−3−ニトリロプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジブロモ−2−ニトロエタノール、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン等の有機臭素系防腐剤;p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、サリチル酸を用いることができる。
インクの粘度は、吐出ヘッドのノズル径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において1〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましい。ここで粘度は、23℃において剪断応力を、1分間かけて0Paから10Paまで増加させたときの値を表す。
上記インクを用いた画像形成は、インクジェット記録法により行なわれる。インクジェットプリンターは、ピエゾ方式、静電方式、サーマル方式など、いずれの方式のものであってもよく、デジタル信号に基づいてインクジェットヘッドからインクを吐出させ、吐出されたインク液滴を記録媒体に付着させるようにする。なかでも、インク吐出量の制御が比較的容易であり、幅広いインクに対応可能であるという観点からピエゾ方式であることが好ましい。
本発明に係るインクは、用紙のカール抑制効果が高いことから、ラインヘッド方式の高速印刷に好ましく使用できる。本発明に係るインクを用いることで、ノズル詰まりおよび吐出不良が抑制されて、飛行曲がりが生じることなく正確な位置にインク滴(ドット)を着弾させることができる点からも、ラインヘッド方式の高速印刷に適している。さらに、ラインヘッド方式では、ヘッドが固定されているために、シリアル方式のヘッドに比べてメンテナンスがしづらい機構であるが、本発明のインクを用いることにより、ノズル部のクリーニング操作が容易となる点も利点として挙げられる。
そこで、本発明に係るインクジェット記録方法は、本発明に係るインクと、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置とを用いるものである。
記録媒体としては、様々な種類の紙を使用することができ、コピー用紙、コピー用再生紙などの普通紙であることが好ましい。表面処理を行なったコート紙なども用いられる。
この記録方法によれば、カール等の用紙変形が有効に防止されるので、用紙搬送性が良好であり、したがって1分間に120枚といった高速印刷にも対応することができる。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例および比較例>
表1に示した組成で、各インクを調製した。使用した成分は以下のとおりである。
顔料「CAB−O−JET300」(カーボンブラック、キャボット社)
グリセリン(和光純薬工業(株))
トリエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業(株))
界面活性剤「サーフィノール465」(アセチレングリコールエチレンオキサイド、エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ社製)
TEA(pH調整剤、トリエタノールアミン、和光純薬工業(株))
Figure 2009286833
<インクの放置後の吐出性>
ライン型インクジェット記録装置「HC5500」(理想科学工業(株))にインクを装填し、次のようにして放置後のインクの吐出性を評価した。HC5500は、300dpiのライン型インクジェットヘッドを使用しており、口径が25μmの各ノズルが約85μm間隔で並んでいる。
インクがフレッシュな状態で吐出を行なった後、インクを充填したままヘッドを外して45℃、湿度30%の環境下において1週間放置した。その後、ヘッドを記録装置に取り付けて吸引クリーニング動作を行なってから再び吐出を行ない、放置後の吐出性を以下の基準で評価した。
A:ノズルが容易に回復し、ノズル抜けが発生することなく吐出できる。
C:ノズルが回復せず、不吐出ノズルが存在する。
得られた結果を、表1に併せて示す。
上記実施例のインクにみるように、本発明によれば、1価金属塩を配合したことにより、開放下でインクを放置した後の顔料の分散安定性が向上して、吐出性が良好なインクを提供することができる。

Claims (5)

  1. 自己分散性顔料、溶解度パラメータが11(cal/cm1/2以下である低極性有機溶剤、0.05〜0.25質量%の1価金属塩、および水を含むインクジェット用水性インク。
  2. 前記1価金属塩が、ハロゲン化物、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩、および酢酸塩からなる群から選ばれた塩である、請求項1記載のインクジェット用水性インク。
  3. 前記低極性有機溶剤が、10〜60質量%含まれる、請求項1または2記載のインクジェット用水性インク。
  4. 前記自己分散性顔料が、アニオン性の分散基を表面に有するものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット用水性インク。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット用水性インクと、ラインヘッド方式のインクジェット記録装置とを用いる、インクジェット記録方法。
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