JP2009283950A - 圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 - Google Patents
圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2009283950A JP2009283950A JP2009150695A JP2009150695A JP2009283950A JP 2009283950 A JP2009283950 A JP 2009283950A JP 2009150695 A JP2009150695 A JP 2009150695A JP 2009150695 A JP2009150695 A JP 2009150695A JP 2009283950 A JP2009283950 A JP 2009283950A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ferroelectric film
- pzt
- film
- ferroelectric
- electrode
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Withdrawn
Links
Landscapes
- Semiconductor Memories (AREA)
- Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
Abstract
【課題】結晶欠陥が少なく良好な特性を持つ強誘電体膜積層体を提供する。
【解決手段】強誘電体膜積層体100は、第1電極102、および第2電極103と、第1電極102上に形成されたPZT系強誘電体膜101とを含む。強誘電体膜101は、Ti組成のうち、2.5モル%以上40モル%以下をNbに置換し、第1電極102および第2電極103は、Pt、Ir、Ru等の白金族元素の単体または白金族元素を主体とした複合材料よりなる。電極102は、強誘電体膜から拡散する酸素をほぼ含まない。
【選択図】図1
【解決手段】強誘電体膜積層体100は、第1電極102、および第2電極103と、第1電極102上に形成されたPZT系強誘電体膜101とを含む。強誘電体膜101は、Ti組成のうち、2.5モル%以上40モル%以下をNbに置換し、第1電極102および第2電極103は、Pt、Ir、Ru等の白金族元素の単体または白金族元素を主体とした複合材料よりなる。電極102は、強誘電体膜から拡散する酸素をほぼ含まない。
【選択図】図1
Description
本発明は、強誘電体膜積層体、および強誘電体膜積層体を有する強誘電体キャパシタを用いて構成される強誘電体メモリ、圧電素子、液体噴射ヘッドおよびプリンタに関する。
近年、PZT、SBT等の強誘電体膜や、これを用いた強誘電体キャパシタ、強誘電体メモリ装置等の研究開発が盛んに行われている。強誘電体メモリ装置の構造は1T、1T1C、2T2C、単純マトリクス型に大別できる。この中で、1T型は構造上キャパシタに内部電界が発生するためリテンション(データ保持)が1ヶ月と短く、半導体一般で要求される10年保証は不可能といわれている。1T1C型、2T2C型は、DRAMと殆ど同じ構成であり、かつ選択用トランジスタを有するために、DRAMの製造技術を生かすことが出来、かつSRAM並みの書き込み速度が実現されるため、現在までに256kbit以下の小容量品が商品化されている。
これまで強誘電体材料としては、主にPb(Zr、Ti)O3(PZT)が用いられているが、同材料の場合、Zr/Ti比が52/48あるいは40/60といった、稜面体晶および正方晶の混在領域およびその近傍の組成が用いられ、かつLa、Sr、Caといった元素をドーピングされて用いられている。この領域が用いられているのは、メモリ素子に最も必要な信頼性を確保するためである。もともとヒステリシス形状はTiをリッチに含む正方晶領域が良好であるのだが、イオン性結晶構造に起因するショットキー欠陥が発生し、このことが原因で、リーク電流特性あるいはインプリント特性(いわゆるヒステリシスの変形の度合い)不良が発生してしまい、信頼性を確保することが困難である。
一方、単純マトリックス型は、1T1C型、2T2C型に比べセルサイズが小さく、またキャパシタの多層化が可能であるため、高集積化、低コスト化が期待されている。
また、従来の単純マトリクス型強誘電体メモリ装置に関しては、特開平9−116107号公報等に開示されている。同公開公報においては、メモリセルへのデータ書き込み時に、非選択メモリセルへ書き込み電圧の1/3の電圧を印加する駆動方法が開示されている。
しかしながら、この技術においては、動作に必要とされる強誘電体キャパシタのヒステリシスループに関しては、具体的に記載されていない。実際に動作が可能な単純マトリクス型強誘電体メモリ装置を得るには角型性の良好なヒステリシスループが必要不可欠である。これに対応可能な強誘電体材料としては、Tiリッチな正方晶のPZTが候補として考えられるが、既述の1T1Cおよび2T2C型強誘電体メモリ同様、信頼性の確保が最重要課題となる。
また、PZT正方晶は、メモリ用途に適した角型性を有するヒステリシス特性を示すが、信頼性に乏しく実用化されていない。その理由は、以下の通りである。
まず、結晶化後のPZT正方晶薄膜は、Ti含有率が高ければ高いほど、リーク電流密度が高くなる傾向がある。加えて、+あるいは−方向のどちらか一方に一回だけデータを書き込んで、100℃に加熱保持した後、データを読み出す、いわゆるスタティックインプリント試験を行うと、24時間後には、殆ど書き込んだデータが残っていない。これらは、イオン性結晶であるPZTおよびPZTの構成元素であるPbとTi自身の抱える本質的なものであり、このことが構成元素の大部分がPbおよびTiからなるPZT正方晶薄膜の抱える最大の課題となっている。この課題は、PZTペロブスカイトがイオン性結晶であることが大きく、PZTが抱える本質的なものである。
図35は、PZTの各構成元素の結合にまつわる主なエネルギーの一覧である。PZTは結晶化後に酸素空孔を多く含むことが知られている。すなわち、図35より、Pb−OはPZT構成元素中、結合エネルギーが最も小さく、焼成加熱時や、分極反転時に簡単に切れることが予想される。すなわち、Pbが抜けると電荷中性の原理よりOが抜けてしまう。
次に、インプリント試験等の加熱保持時には、PZTの各構成元素は振動し衝突を繰り返していることになるが、PZT構成元素中でTiは最も軽く、高温保持時の振動衝突により抜け易い。したがって、Tiが抜けると電荷中性の原理よりOが抜ける。また、Pb:+2、Ti:+4の最大価数で結合に寄与しているため、Oが抜ける以外に電荷中性が成り立たない。すなわち、PZTはPbおよびTiといった陽イオン1つに対しOという陰イオンが2つ抜けやすく、いわゆるショットキー欠陥を容易に形成する。
ここで、PZT結晶中の酸素欠損によるリーク電流の発生のメカニズムについて説明する。図36(A)〜図36(C)は、一般式ABO2.5で表されるブラウンミラライト型結晶構造を有する酸化物結晶におけるリーク電流の発生を説明するための図である。図36(A)に示すように、ブラウンミラライト型結晶構造は、一般式ABO3で表されるPZT結晶などが持つペロブスカイト型結晶構造に対して酸素欠損を有する結晶構造である。そして、図36(B)に示すように、ブラウンミラライト型結晶構造では、陽イオンの隣は酸素イオンが来るため、陽イオン欠陥は、あまりリーク電流増大の原因にはなりにくい。しかしながら、図36(C)に示すように、酸素イオンはPZT結晶全体に直列で繋がっており、酸素欠損が増えることにより結晶構造がブラウンミラライト型結晶構造となると、リーク電流もそれに従って増大してしまうのである。
また、上記したリーク電流の発生に加えて、PbおよびTiの欠損や、それに伴うOの欠損は、いわゆる格子欠陥であり、図37に示すような空間電荷分極の原因となる。すると、PZT結晶には強誘電体の分極による電界によって格子欠陥による反電界が生じてしまい、いわゆるバイアス電位が掛かった状態となり、この結果、ヒステリシスがシフトあるいは減極してしまう。さらに、この現象は、温度が高くなるほど速やかに生じてしまう。
以上はPZTの抱える本質的な問題であり、純粋なPZTでは上記の問題を解決困難であると考えられ、現在に至るまで正方晶のPZTを用いたメモリ素子で十分な特性を有するものは実現していない。
本発明の目的は、結晶欠陥が少なく優れた特性を有する強誘電体膜積層体を提供することにある。
本発明の目的は、1T1C、2T2Cおよび単純マトリクス型強誘電体メモリのいずれにも使用可能なヒステリシス特性を持つ強誘電体キャパシタを含む、1T1C、2T2Cおよび単純マトリクス型の強誘電体メモリを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記強誘電体膜積層体を用いた圧電素子、液体噴射ヘッドおよびプリンタを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、上記強誘電体膜積層体を用いた圧電素子、液体噴射ヘッドおよびプリンタを提供することにある。
本発明に係る強誘電体膜積層体は、電極と、該電極上に形成されたPZT系強誘電体膜と、を含む強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜は、Ti組成のうち、2.5モル%以上40モル%以下をNbに置換し、前記電極は、前記PZT系強誘電体膜から拡散する酸素をほぼ含まない。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜の強誘電体は一般式PbZrxTiyNbzで示され、以下の関係、
x+y+z=1
0≦x≦0.975
が成立する。
x+y+z=1
0≦x≦0.975
が成立する。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記電極における前記PZT系強誘電体膜からの酸素の拡散距離は、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)および核反応分析法(NRA)によるプロファイルから求めると、15nm以下であることができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記電極における前記PZT系強誘電体膜からの酸素の拡散距離は、オージェ電子分光法(AES)によるプロファイルから求めると、30nm以下であることができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体は、電極と、該電極上に形成されたPZT系強誘電体膜と、を含む強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜は、Ti組成のうち、2.5モル%以上40モル%以下をNbに置換し、前記PZT系強誘電体膜は、該PZT系強誘電体膜における酸素原子の割合の分布がほぼ一定である。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜における酸素原子の割合の分布は、該PZT系強誘電体膜の膜厚方向での酸素原子の割合のばらつきを、(最大値−最小値)/(最大値と最小値の平均値)で表し、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)および核反応分析法(NRA)によるプロファイルから求めると、1%以下であることができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜における酸素原子の割合の分布は、該PZT系強誘電体膜の膜厚方向での酸素原子の割合のばらつきを、(最大値−最小値)/(最大値と最小値の平均値)で表し、オージェ電子分光法(AES)によるプロファイルから求めると、3%以下であることができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜は、該PZT系強誘電体膜に含まれる酸素の95%以上がペロブスカイト構造の酸素位置に存在することができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜は、Zr組成よりもTi組成を多くすることができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、Ti組成のうち、5モル%以上30モル%以下をNbに置換することができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、Ti組成のうち、10モル%以上30モル%以下をNbに置換することができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜は、正方晶系および稜面体晶系の少なくとも一方の結晶構造を有することができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、0.5モル%以上のSi或いはSiおよびGeを含むことができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、0.5モル%以上、5モル%以下のSi或いはSiおよびGeを含むことができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記PZT系強誘電体膜は、前記Nbのかわりに、その全部もしくは一部がTa、W、VおよびMoの少なくとも1種によって置換されることができる。
本発明に係る強誘電体膜積層体において、前記電極は、白金族元素あるいはその合金からなることができる。
本発明に係る強誘電体メモリは、本発明の強誘電体膜積層体を用いている。
本発明に係る圧電素子は、本発明の強誘電体膜を用いている。
本発明に係る液体噴射ヘッドは、本発明の圧電素子を用いている。
本発明に係るプリンタは、本発明の液体噴射ヘッドを用いている。
また、本発明は、上記強誘電体膜積層体を用いた、強誘電体メモリおよび圧電素子に適用することができる。
本発明に係る強誘電体メモリは、予めSiウェハ上に形成されたCMOSトランジスタのソース或いはドレイン電極のどちらかと導通している第1電極と前記第1電極上に形成された強誘電体膜、前記強誘電体膜上に形成された第2電極、とを含み、前記第1電極、前記強誘電体膜および前記第2電極によって構成されるキャパシタが、予めSiウェハ上に形成されたCMOSトランジスタによって選択動作を行う強誘電体メモリであって、前記強誘電体膜は、Ti比率が50%以上の正方晶PZTからなり、Ti組成のうち5モル%以上40モル%以下がNbで置換され、同時に1モル%以上のSiおよびGeを含む強誘電体膜からなることができる。
また、本発明に係る強誘電体メモリは、予め作りこまれた第1電極と、前記第1電極と交差する方向に配列された第2電極と、少なくとも前記第1電極と前記第2電極との交差領域に配置された強誘電体膜とを、含み、前記第1電極、前記強誘電体膜および前記第2電極によって構成されるキャパシタがマトリクス状に配置された強誘電体メモリであって、前記強誘電体膜は、Ti比率が50%以上の正方晶PZTからなり、Ti組成のうち5モル%以上40モル%以下がNbで置換され、同時に1モル%以上のSiおよびGeを含む強誘電体膜からなることができる。
以下、本発明に好適な実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
1.強誘電体膜積層体、強誘電体キャパシタ、およびそれらの製造方法
図1は、本発明の実施形態に係る強誘電体膜積層体を適用した強誘電体キャパシタ100を模式的に示す断面図である。
図1は、本発明の実施形態に係る強誘電体膜積層体を適用した強誘電体キャパシタ100を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、強誘電体キャパシタ100は、強誘電体膜101、第1電極102、および第2電極103から構成される。
第1電極102および第2電極103は、Pt、Ir、Ru等の白金族元素の単体または白金族元素を主体とした複合材料よりなる。第1電極102および第2電極103に強誘電体の元素が拡散すると電極と強誘電体膜101との界面部に組成ずれが生じヒステリシスの角型性が低下するため、第1電極102および第2電極103には強誘電体の元素が拡散しない緻密性が要求される。第1電極102および第2電極103の緻密性を上げるためには、例えば、質量の重いガスでスパッタ成膜する方法、Y、La等の酸化物を白金族元素からなる電極中に分散させる等の方法がとられることもある。本発明では、後述するように強誘電体膜から電極への酸素の拡散はほとんど認められない。
強誘電体膜101は、Pb、Zr、Tiを構成元素として含む酸化物からなるPZT系強誘電体を用いて形成される。特に、本実施形態では、この強誘電体膜101をTiサイトにNbをドーピングしたPb(Zr、Ti、Nb)O3(PZTN(登録商標))を採用することを特徴とする。
すなわち、前記PZT系強誘電体膜の強誘電体は一般式PbZrxTiyNbzで示され、以下の関係、
x+y+z=1
0≦x≦0.975
が成立する。
x+y+z=1
0≦x≦0.975
が成立する。
具体的には、強誘電体膜101は、Ti組成のうち、2.5モル%以上40モル%以下、好ましくは5モル%以上30モル%以下、より好ましくは10モル%以上30モル%以下をNbに置換することができる。
さらに、電極102,103は、強誘電体膜101から拡散する酸素をほぼ含まないことを特徴とする。このことは、以下の分析法によって確認される。具体的には、電極における強誘電体膜からの酸素の拡散距離は、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)および核反応分析法(NRA)によるプロファイルから求めると、15nm以下であることができる。また、電極における強誘電体膜からの酸素の拡散距離は、オージェ電子分光法(AES)によるプロファイルから求めると、30nm以下であることができる。これらの分析法を用いた拡散距離の求め方については、後に詳述する。
RBSおよびNRAは、いずれも数MeVの高エネルギーイオンビームを試料原子に照射して、散乱あるいは反応により出てきた粒子を検出して、元素ごとの深さ方向の分布を分析する方法である。それぞれの方法ごとに検出が得意な元素と不得意な元素が存在するため、両者は併用される。
AESは、数keVの電子線を試料原子に照射して、放出された電子を分析して試料表面近くの元素ごとの割合を分析する方法である。AESでは試料表面近くしか分析できないため、深さごとの元素の分布を分析する場合は、試料表面を削りながら分析を行う。
RBSおよびNRAは、高エネルギーイオンビームを用いるために一般的な手法ではないが、検出される粒子に深さの情報が含まれるため、深さ方向の精度が高い分析方法である。一方、AESは、検出される電子に深さの情報が含まれないために前者ほどには深さ方向の精度は高くないが、一般的に用いられる分析方法の一つであり、それらの中では深さ方向の精度が高い分析方法である。
以上のように、本実施形態の強誘電体膜積層体は、PZTN(登録商標)からなる強誘電体膜を有し、後述するように、725℃という高温条件下でも、強誘電体膜の酸素原子が電極中に数十nm以下の深さで拡散するに止まり、PZTに比べて極めて小さい拡散距離であるといえる。このように、電極への酸素の拡散が極めて少なく、従来のPZTに比べればほとんどないといえることから、電極と強誘電体膜との界面部に組成ずれが生じてヒステリシスの角型性が低下することがない。
また、本実施形態の強誘電体膜積層体において、強誘電体膜は、該強誘電体膜における酸素原子の割合の分布がほぼ一定であることにも特徴を有する。
具体的には、強誘電体膜における酸素原子の割合の分布は、該強誘電体膜の膜厚方向での酸素原子の割合のばらつきを、(最大値−最小値)/(最大値と最小値の平均値)で表し、RBSおよびNRAによるプロファイルから求めると、1%以下であることができる。また、同様のばらつきを、AESによるプロファイルから求めると、3%以下であることができる。酸素原子の割合の具体的なばらつきの求め方については、後に詳述する。
以上のように、本実施形態において、強誘電体膜における酸素原子の割合のばらつきが少ないことは、酸素原子のほとんどすべてが強誘電体において本来あるべき格子位置にあり、かつ酸素原子の欠陥に起因する結晶格子の壊れがほとんど見られないことを意味する。つまり、強誘電体膜に含まれる酸素は、その95%以上がペロブスカイト構造の酸素位置に存在するといえる。このことは、最も移動しやすい酸素のみならず、他の元素、例えばPb,Zr,Tiの拡散がしにくいことを意味し、PZTN(登録商標)の膜自体がバリア性、例えば酸素バリア性を有する。
本実施形態の強誘電体膜積層体では、強誘電体膜は、Zr組成よりもTi組成が多いことができる。具体的には、Tiの比率が50%以上であることができる。また、強誘電体膜は、正方晶系および稜面体晶系の少なくとも一方の結晶構造を有することができる。
本発明において、PZTN(登録商標)が上述した特徴を有するのは、以下の理由によると考えられる。すなわち、NbはTiとサイズ(イオン半径が近く、原子半径は同一である。)がほぼ同じで、重さが2倍あり、格子振動による原子間の衝突によっても格子から原子が抜けにくい。また原子価は、+5価で安定であり、たとえPbが抜けても、Nb5+によりPb抜けの価数を補うことができる。また結晶化時に、Pb抜けが発生したとしても、サイズの大きなOが抜けるより、サイズの小さなNbが入る方が容易である。
また、Nbは+4価も存在するため、Ti4+の代わりは十分に行うことが可能である。更に、実際にはNbは共有結合性が非常に強く、Pbも抜け難くなっていると考えられる(H.Miyazawa,E.Natori,S.Miyashita;Jpn.J.Appl.Phys.39(2000)5679)。
これまでも、PZTへのNbドーピングは、主にZrリッチの稜面体晶領域で行われてきたが、その量は、0.2〜0.025mol%(J.Am.Ceram.Soc,84(2001)902;Phys.Rev.Let,83(1999)1347)程度と、極僅かなものである。このようにNbを多量にドーピングすることができなかった要因は、Nbを例えば10モル%添加すると、結晶化温度が800℃以上に上昇してしまうことによるものであったと考えられる。
そこで、強誘電体膜101を形成する際には、更にPbSiO3シリケートを例えば、1〜5モル%の割合で添加することが好ましい。これによりPZTN(登録商標)の結晶化エネルギーを軽減させることができる。すなわち、強誘電体膜101の材料としてPZTN(登録商標)を用いる場合、Nb添加とともに、PbSiO3シリケートとを添加することでPZTN(登録商標)の結晶化温度の低減を図ることができる。
また、本実施形態において、強誘電体膜101には、PZTに対してNbに代えてTa、W、V、Moを添加物質として加えても同等の効果を有する。また、Mnを添加物質として用いてもNbに準じた効果を有する。また、同様の考え方で、Pb抜けを防止するために、+3価以上の元素でPbを置換することも考えられ、これらの候補として、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuなどのランタノイド系が挙げられる。加えて、結晶化を促進する添加剤として、シリケート(Si)ではなくゲルマネート(Ge)を用いることもできる。図42(A)に、PZTに対してNbに代えて10モル%のTaを添加物質として用いた場合のヒステリシス特性を示す。また、図42(B)に、PZTに対してNbに代えて10モル%のWを添加物質として用いた場合のヒステリシス特性を示す。Taを用いた場合にもNb添加と同等の効果が得られることが分かる。また、Wを用いた場合にも絶縁性の良好なヒステリシス特性が得られる点でNb添加と同等の効果があることが分かる。
次に、本実施形態の強誘電体キャパシタ100に適用されるPZTN(登録商標)強誘電体膜101の成膜方法の一例を述べる。
PZTN(登録商標)強誘電体膜101は、Pb、Zr、Ti、およびNbの少なくともいずれかを含む第1〜第3の原料溶液からなる混合溶液を用意し、これらの混合液に含まれる酸化物を熱処理等により結晶化させて得ることができる。
第1の原料溶液としては、PZTN(登録商標)強誘電体相の構成金属元素のうち、PbおよびZrによるPbZrO3ペロブスカイト結晶を形成するため縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
第2の原料溶液としは、PZTN(登録商標)強誘電体相の構成金属元素のうち、PbおよびTiによるPbTiO3ペロブスカイト結晶を形成するため縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
第3の原料溶液としては、PZTN(登録商標)強誘電体相の構成金属元素のうち、PbおよびNbによるPbNbO3ペロブスカイト結晶を形成するため縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液が例示できる。
上記第1、第2および第3の原料溶液を用いて、例えば、PbZr0.2Ti0.6Nb0.2O3(PZTN(登録商標))からなる強誘電体膜101を形成する場合、(第1の原料溶液):(第2の原料溶液):(第3の原料溶液)=2:6:2の比で混合することになるが、この混合溶液をそのまま結晶化させようとしても、PZTN(登録商標)強誘電体膜101を作製するには、高い結晶化温度を必要とする。すなわち、Nbを混合すると、結晶化温度が急激に上昇してしまい、700℃以下の素子化可能な温度範囲では結晶化が不可能なため、従来では5モル%以上のNbはTiの置換元素としては用いられておらず、これまでは添加剤の域を出ていなかった。加えて、TiがZrよりも多く含まれるPZT正方晶では全く例がなかった。このことは、参考文献J.Am.Ceram.Soc,84(20001)902やPhys.Rev.Let,83(1999)1347等より明らかである。
そこで、本実施形態では、上記課題を、第4の原料溶液としての、PbSiO3結晶を形成するため縮重合体をn−ブタノール等の溶媒に無水状態で溶解した溶液を例えば、1モル%以上5モル%以下で上記混合溶液中に更に添加することで解決することができる。
すなわち、上記第1、第2、第3および第4溶液の混合溶液を用いることで、PZTN(登録商標)の結晶化温度を700℃以下の素子化可能な温度範囲で結晶化させることが可能となる。
具体的には、図2に示したフローチャートに従い強誘電体膜101を成膜する。混合溶液塗布工程(ステップST11)、アルコール除去工程〜乾燥熱処理工程〜脱脂熱処理工程(ステップST12,ステップST13)の一連の工程を所望の回数行い、その後に結晶化アニール(ステップST14)により焼成して強誘電体膜101を形成する。
各工程における条件の例を下記に示す。
初めにSi基板上にPt等の電極用貴金属を被覆して下部電極を成膜する(ステップST10)。次に、混合液の塗布をスピンコートなどの塗布法で行う(ステップST11)。具体的には、Pt被覆基板上に混合溶液を滴下する。滴下された溶液を基板全面に行き渡らせる目的で500rpm程度でスピンを行った後、50rpm以下に回転数を低下させて10秒ほど回転させる。乾燥熱処理工程は150℃〜180℃で行う(ステップST13)。乾燥熱処理は大気雰囲気下でホットプレート等を用いて行う。同様に脱脂熱処理工程では300℃〜350℃に保持されたホットプレート上で、大気雰囲気下で行う(ステップST13)。結晶化のための焼成は、酸素雰囲気中でサーマルラピッドアニール(RTA)等を用いて行う(ステップST14)。
また焼結後の膜厚は100〜200nm程度とすることができる。次に、上部電極をスパッタ法等により形成した後に(ステップST15)、第2電極と強誘電体薄膜との界面形成、および強誘電体薄膜の結晶性改善を目的としてポストアニールを、焼成時と同様に、酸素雰囲気中でRTA等を用いて行い(ステップST16)、強誘電体キャパシタ100を得る。
以下では、PZTN(登録商標)強誘電体膜101を用いることによる強誘電体キャパシタ100へのヒステリシス特性への影響を考察する。
図3は、強誘電体キャパシタ100のP(分極)−V(電圧)ヒステリシス曲線を模式的に示した図である。まず、電圧十Vs印加すると分極量P(十Vs)となり、その俊、電圧を0にすると分極量Prとなる。さらに、電圧を−1/3Vsとした時、分極量はP(−1/3Vs)となる。そして、電圧を−Vsとした時には分極量はP(−Vs)となり、再び電圧0とした時に分極量−Prとなる。また、電圧を+1/3Vsとした時には、分極量はP(+1/3Vs)となり、再び電圧を+Vsとした時、分極量は再びP(+Vs)に戻る。
また、強誘電体キャパシタ100は、ヒステリシス特性において以下のような特徴をも有する。まず、一旦、電圧Vsを印加して分極量P(+Vs)にした後、−1/3Vsの電圧を印加して、さらに印加電圧を0とした時、ヒステリシスループは図3中矢印Aに示す軌跡をたどり、分極量は安定な値PO(0)を持つ。また、一旦、電圧−Vsを印加して分極量をP(−Vs)にした後、+1/3Vsの電圧を印加して、さらに印加電圧を0とした時、ヒステリシスループは図2中矢印Bに示す軌跡をたどり、分極量は安定な値PO(1)を持つ。この分極量PO(0)と分極量PO(1)の差が充分にとれていれば、前記特開平9−116107号公報等に開示されている駆動法により単純マトリクス型強誘電体メモリ装置を動作させることが可能である。
そして、本実施形態の強誘電体キャパシタ100によれば、結晶化温度の低温化、ヒステリシスの角型性の向上、Prの向上が図れる。また、強誘電体キャパシタ100によるヒステリシスの角型性の向上は、単純マトリクス型の強誘電体メモリ装置の駆動にとって重要なディスターブの安定性に顕著な効果がある。単純マトリクス型強誘電体メモリ装置においては、書き込み、読み出しを行わないセルにも±1/3Vsの電圧がかかるため、この電圧で分極が変化しないこと、いわゆるディスターブ特性が安定である必要がある。実際に、本願発明者は、一般的なPZTでは分極の安定した状態から分極を反転させる方向に1/3Vsパルスを108回与えると分極量は80%程度の低下が見られるが、本実施形態の強誘電体キャパシタ100によると10%以下の低下量であることを確認した。従って、本実施形態の強誘電体キャパシタ100を強誘電体メモリ装置に適用すれば、単純マトリクス型メモリの実用化が可能となる。
以下に、本実施形態についての詳細な実施例を説明する。
(1)実施例1
本実施例では、本願発明によるPZTN(登録商標)と従来のPZTとを比較する。成膜フローは全て前述の図2を用いた。
本実施例では、本願発明によるPZTN(登録商標)と従来のPZTとを比較する。成膜フローは全て前述の図2を用いた。
Pb:Zr:Ti:Nb=1:0.2:0.6:0.2とした。ここにPbSiO3を0モル%,0.5モル%および1モル%添加した。
この時の膜の表面モフォロジーを図4(A)〜図4(C)に示す。また、この膜の結晶性をX線回折法により測定すると、図5(A)〜図5(C)に示すようであった。図5(A)に示される0%(なし)の場合、結晶化温度を800℃まであげても、常誘電体パイロクロアのみが得られた。また、図5(B)に示される0.5モル%の場合、PZTとパイロクロアの混在であった。また、図5(C)に示される1モル%の場合、PZT(111)単一配向膜が得られた。また結晶性もこれまで得られたことがないほど良好なものであった。
次にPbSiO3の1モル%添加PZTN(登録商標)薄膜に対して、膜厚を120〜200nmとしたところ、図6(A)〜図6(C)ならびに図7(A)〜図7(C)に示すように、それぞれ膜厚に比例した結晶性を示した。なお、図6(A)〜図6(C)は、膜厚120nm〜200nmにおける表面モフォロジーを示す電子顕微鏡写真であり、図7(A)〜図7(C)は、膜厚120nm〜200nmにおけるPZTN(登録商標)薄膜の結晶性を示すX線回折法による測定結果である。また、図8(A)〜図8(C)および図9(A)〜図9(C)に示すように、膜厚が120nm〜200nmの範囲の全てにおいて角型性の良好なヒステリシス特性が得られた。なお、図9(A)〜図9(C)は、図8(A)〜図8(C)のヒステリシスカーブの拡大図である。特に、図9(A)〜図9(C)に示すように、本例のPZTN(登録商標)薄膜では、2V以下という低い電圧でしっかりとヒステリシスが開き、かつ飽和していることが確認された。
また、リーク特性についても、図10(A)および図10(B)に示すように、膜組成や膜厚によらず、2V印加時(飽和時)で5×10-8〜7×10-9A/cm2と非常に良好であった。
次に、PbZr0.2Ti0.6Nb0.2O3薄膜の疲労特性、およびスタティックインプリントを測定したところ、図11(A)および図11(B)に示すように、非常に良好であった。特に、図11(A)に示す疲労特性は、上下電極にPtを用いているにもかかわらず、非常に良好である。
さらに、図12に示すように、基板601上に、下部電極602、本実施例のPZTN(登録商標)強誘電体膜603、上部電極605を形成した強誘電体キャパシタ600の上にオゾンTEOSによるSiO2膜604の形成を試みた。従来からあるPZTはオゾンTEOSによるSiO2膜形成を行うと、TEOSから発生する水素が上部Ptを通してPZTを還元し、全くヒステリシスを示さなくなるほど、PZT結晶が壊れてしまうことが知られている。
しかしながら本実施例によるPZTN(登録商標)強誘電体膜603は、図13に示すように、ほとんど劣化せず、良好なヒステリシスを保持していた。すなわち、本実施例によるPZTN(登録商標)強誘電体膜603は耐還元性にも強いことが分かった。また、本願発明による正方晶PZTN(登録商標)強誘電体膜603ではNbが40モル%を超えない場合、Nbの添加量に応じて、良好なヒステリシスが得られた。
次に、比較のために従来のPZT強誘電体膜の評価を行った。従来PZTとしては、それぞれPb:Zr:Ti=1:0.2:0.8、1:0.3:0.7、および1:0.6:0.4とした。そのリーク特性は、図14に示すように、Ti含有量が増加するほどリーク特性は劣化してしまい、Ti:80%の場合、2V印加時に、10-5A/cm2となり、メモリ応用に適していないことが分かった。同様に疲労特性も図15に示すように、Ti含有量が増加するほど疲労特性は劣化した。またインプリント後には、図16に示すように、殆どデータが読み出せないことが分かった。
以上の実施例から分かるように、本実施例によるPZTN(登録商標)強誘電体膜は、従来、PZTの本質が原因と考えられるリーク電流増大並びにインプリント特性劣化という問題を解決したばかりか、これまで、上記理由から使われてこなかった、正方晶PZTをメモリの種類、構造によらずにメモリ用途に用いることが可能となる。加えて、同じ理由から正方晶PZTが使われなかった圧電素子用途にも本材料は適用可能である。
(2)実施例2
本実施例では、PZTN(登録商標)強誘電体膜において、Nb添加量を0、5、10、20、30、40モル%と変化させて強誘電特性を比較した。全ての試料においてPbSiO3シリケートを5モル%添加している。また、膜形成のための原料となる強誘電体膜形成用ゾルゲル溶液には、コハク酸ジメチルを添加してpHを6とした。成膜フローは全て前述の図2を用いている。
本実施例では、PZTN(登録商標)強誘電体膜において、Nb添加量を0、5、10、20、30、40モル%と変化させて強誘電特性を比較した。全ての試料においてPbSiO3シリケートを5モル%添加している。また、膜形成のための原料となる強誘電体膜形成用ゾルゲル溶液には、コハク酸ジメチルを添加してpHを6とした。成膜フローは全て前述の図2を用いている。
図17〜図19に、本実施例のPZTN(登録商標)強誘電体膜を測定したヒステリシス特性を示す。
図17(A)に示すように、Nb添加量が0の場合、リーキーなヒステリシスが得られたが、図17(B)に示すように、Nb添加量が5モル%となると、絶縁性の高い良好なヒステリシス特性が得られた。
また、図18(A)に示すように、強誘電特性は、Nb添加量が10モル%までは、殆ど変化が見られなかった。Nb添加量が0の場合も、リーキーではあるが、強誘電特性には変化が見られていない。また、図18(B)に示すように、Nb添加量が20モル%の場合は、非常に角型性の良いヒステリシス特性が得られた。
しかしながら、図19(A)および図19(B)に示すように、Nb添加量が20モル%を超えると、ヒステリシス特性が大きく変化し、劣化していくことが確認された。
そこで、X線回折パターンを比較したところ図20のようであった。Nb添加量が5モル%(Zr/Ti/Nb=20/75/5)の場合、(111)ピーク位置は、従来からあるNbが添加されていないPZT膜の時と変わらないが、Nb添加量が20モル%(Zr/Ti/Nb=20/60/20)、40モル%(Zr/Ti/Nb=20/40/40)と増加するに従って、(111)ピークは低角側にシフトした。すなわち、PZTの組成はTiリッチで正方晶領域であるにもかかわらず、実際の結晶は、稜面体晶となっていることが分かる。また結晶系が変化するに従って、強誘電体特性が変化していることが分かる。
加えて、Nbを45モル%添加したところ、ヒステリシスは開かず、強誘電特性を確認できなかった(図示省略)。
また、本願発明によるPZTN(登録商標)膜は、非常に絶縁性が高いことは既に述べたが、ここでPZTN(登録商標)が絶縁体であるための条件を求めてみたところ、図21のようであった。
すなわち、本願発明によるPZTN(登録商標)膜は、非常に絶縁性が高く、このことはPbの欠損量の2倍に相当する組成比で、TiサイトにNbが添加されていることとなる。また、ペロブスカイト結晶は図22に示されるWO3の結晶構造からも分かるように、Aサイトイオンが100%欠損していても成り立ち、かつWO3は結晶系が変化し易いことが知られている。
従って、PZTN(登録商標)の場合は、Nbを添加することで、Pb欠損量を積極的に制御して、かつ結晶系を制御していることとなる。
このことは、本実施形態のPZTN(登録商標)膜が、圧電素子への応用にも非常に有効であることを示している。一般的に、PZTを圧電素子に応用する場合、Zrリッチ組成の稜面体晶領域を用いる。このとき、ZrリッチなPZTはソフト系PZTと呼ばれる。このことは文字通り、結晶が軟らかいことを意味している。例えば、インクジェットプリンターのインク吐き出しノズルにも、ソフト系PZTが使われているが、あまりにもソフトであるため、あまり粘度の高いインクでは、インクの圧力に負けて押し出すことが出来ない。
一方で、Tiリッチな正方晶PZTはハード系PZTと呼ばれ、固くて脆いことを意味している。しかしながら、本願発明のPZTN(登録商標)膜ではハード系でありながら、人工的に結晶系を稜面体晶に変化させることが出来る。その上、結晶系をNbの添加量によって任意に変化させることが可能で、かつTiリッチなPZT系強誘電体膜は比誘電率が小さいため、素子を低電圧で駆動することも可能となる。
このことにより、これまで用いられることのなかった、ハード系PZTを例えば、インクジェットプリンターのインク吐き出しノズルに用いることが可能となる。加えて、NbはPZTに軟らかさをもたらすため、適度に硬いが、脆くないPZTを提供することが可能となる。
最後に、これまで述べたように、本実施例ではNb添加するだけでなく、Nb添加と同時に、シリケートを添加することで、結晶化温度をも低減することが出来る。
(3)実施例3
本実施例では、例えば、強誘電体メモリのメモリセル部分を構成する強誘電体キャパシタや例えば、インクジェットプリンターのインク吐き出しノズル部分を構成する圧電アクチュエータの電極材料として用いられるPtやIrなどの白金系金属からなる金属膜上にPZTN(登録商標)膜を形成した場合における格子整合性の点からPZTN(登録商標)膜を用いることの有効性を検討した。白金系金属は、PZT系強誘電体膜を素子応用する場合に、強誘電体膜の結晶配向性を決める下地膜となるとともに、電極材料としても有用な材料である。しかし、両者の格子整合性が十分でないため、素子応用に関しては、強誘電体膜の疲労特性が問題となってくる。
本実施例では、例えば、強誘電体メモリのメモリセル部分を構成する強誘電体キャパシタや例えば、インクジェットプリンターのインク吐き出しノズル部分を構成する圧電アクチュエータの電極材料として用いられるPtやIrなどの白金系金属からなる金属膜上にPZTN(登録商標)膜を形成した場合における格子整合性の点からPZTN(登録商標)膜を用いることの有効性を検討した。白金系金属は、PZT系強誘電体膜を素子応用する場合に、強誘電体膜の結晶配向性を決める下地膜となるとともに、電極材料としても有用な材料である。しかし、両者の格子整合性が十分でないため、素子応用に関しては、強誘電体膜の疲労特性が問題となってくる。
そこで、本願発明者らは、PZT系強誘電体膜の構成元素中にNbを含ませることで、PZT系強誘電体膜と白金系金属薄膜との間の格子不整合の改善を図る技術を開発した。この場合のPZT系強誘電体膜の成膜工程を図23(A)〜図23(C)に示す。
まず、図23(A)に示すように、所与の基板10を用意する。基板10としては、SOI基板上にTiOx層が形成されたものを用いた。なお、基板10としては、公知の材料からなるものの中から好適なものを選択して用いることができる。
次に、図23(B)に示すように、基板100上に例えば、スパッタ法を用いてPtからなる金属膜(第1電極)102を形成し、その後、図23(C)に示すように、金属膜102上に強誘電体膜101としてPZTN(登録商標)膜を形成する。PZTN(登録商標)膜を形成するための材料としては、例えば、ゾルゲル溶液を用いることができる。より具体的には、PbZrO3用ゾルゲル溶液、PbTiO3用ゾルゲル溶液、およびPbNbO3用ゾルゲル溶液を混合したものを用いる。なお、PZTN(登録商標)膜は、構成元素にNbを含むため、結晶化温度が高い。このため、結晶化温度を低減させるためには、PbSiO3用ゾルゲル溶液をさらに添加したものを用いることが好ましい。本実施例では、上記したゾルゲル混合溶液をPt金属膜102上にスピンコート法で塗布し、所定の熱処理を行って結晶化する。成膜工程のフローは、図2に示したものと同様である。
本実施例では、Nbの添加量を0mol%〜30mol%の範囲として得られたPZTN(登録商標)膜について、X線回折法を用いて結晶の格子定数を測定したところ図24(A)および図24(B)のようであった。図24(A)および図24(B)によれば、Nbの添加量が多くなるほど、a軸(またはb軸)における格子定数とc軸における格子定数とが近づいていくことがわかる。また、図24(A)中におけるV(abc)は、格子定数(a,b,c)を体積変換した指数である。また、図24(A)中のV/V0は、Nbが添加されていないPZT結晶の格子定数を体積変換した指数V0に対するPZTN(登録商標)結晶についてのV(abc)との比である。このように、V(abc)あるいはV/V0の欄からも、PZTN(登録商標)結晶は、Nbの添加量が増加するに従って結晶格子が小さくなっていくことが確認できる。
そして、このようにNbを添加して形成されたPZTN(登録商標)膜の格子定数から、Pt金属膜の格子定数(a,b,c=3.96)との格子不整合率を計算してNbの添加量(mol%)を横軸としてプロットしたものが図25に示される。図25によれば、PZT系強誘電体膜に対してNbが含まれることの効果は、上述した各実施例のごとく強誘電体特性が向上する効果のみならず、その格子定数をPtなどの白金系金属結晶の格子定数に近づける効果もあることが確認された。特に、Nbの添加量が5mol%以上の領域では、その効果が顕著に表れることが確認された。
従って、本発明の手法を用いれば、電極材である金属膜と強誘電体膜との間の格子不整合が軽減され、例えば、Nbの添加量が30mol%では、格子不整合率が2%程度まで改善されることが確認された。これは、PZTN(登録商標)の結晶構造において、BサイトのTi原子を置換したNb原子がO原子との間でイオン結合性と共有結合性とを併せ持つ強い結合が生じ、その結合力が結晶格子を圧縮する方向に働いて、格子定数が小さくなる方向に変化していったものと考えられる。
また、Ptなどの白金系金属は化学的に安定な物質であって、強誘電体メモリや圧電アクチュエータの電極材料としては好適であり、本実施例の手法によれば、このPt金属膜上に直接PZTN(登録商標)膜を形成しても、格子不整合を従来よりも緩和させることができるとともに、界面特性を向上させることができる。従って、本実施例の手法は、PZT系強誘電体膜の疲労劣化を軽減することができ、強誘電体メモリや圧電アクチュエータなどへの素子応用にも適しているといえる。
(4)実施例4
図43に示す構造のサンプルを作製し、各種方法により深さ方向の元素ごとの割合を分析した。以下に、サンプルの作製方法を説明する。
図43に示す構造のサンプルを作製し、各種方法により深さ方向の元素ごとの割合を分析した。以下に、サンプルの作製方法を説明する。
シリコン基板10の表面を熱酸化して400nm程度の膜厚の酸化シリコン層103を形成した。この酸化シリコン層103の上に、スパッタ法によりチタンを成膜して酸素中で焼成することにより、40nm程度の膜厚の酸化チタン層104を形成した。この酸化チタン層104の上に、イオンスパッタ法および蒸着法を組み合わせた2段階成膜法により、150nm程度の膜厚の白金層(電極)105を形成した。
そして、白金層105の上に、PbZr0.2Ti0.6Nb0.2O3(PZTN(登録商標))を成膜して酸素中725℃で焼結して結晶化させることにより、150nm程度の膜厚の強誘電体膜106を形成し、実施例のサンプルを得た。また、同様にして白金層105まで形成し、さらに白金層105の上に、PbZr0.2Ti0.8O3(PZT)を成膜して酸素中725℃で焼結して結晶化させることにより、150nm程度の膜厚の強誘電体膜107を形成し、比較用のサンプルを得た。
これらのサンプルについて、それぞれ、RBSとNRAによる分析、およびAESによる分析を行った。図44(A)、図44(B)に、RBSとNRAによる分析を示した。図44(A)は、PZTN(登録商標)の分析結果を示し、図44(B)は、PZTの分析結果を示す。また、図45(A)、図45(B)に、AESによる分析結果を示す。図45(A)は、PZTN(登録商標)の分析結果を示し、図45(B)は、PZTの分析結果を示す。なお、いずれの分析方法においても原子量が近いZrとNbを完全に区別することができないため、両者は一緒に検出されている。
図44(A)、図44(B)および図45(A)、図45(B)に示す結果から、実施例および比較例のサンプルについて、電極への酸素原子の拡散距離、および強誘電体膜における酸素原子の割合のばらつきを求めた。以下に、それぞれの求め方について述べる。
(1)酸素原子の拡散距離
電極(白金層)への酸素原子の拡散距離は、図46および図47に示す方法によって求めた。
電極(白金層)への酸素原子の拡散距離は、図46および図47に示す方法によって求めた。
RBSとNRAとを組み合わせた分析方法では、プロファイルは総原子数で規定されているので、ピークの面積を比較することによって拡散距離を求めることができる。具体的には、図46に示すように、酸素原子のピークの裾と白金原子のピークの裾とが重なる領域の白金ピークの面積を「面積1」とし、白金ピークの総面積を「面積2」とすると、拡散距離は、以下の式(1)で求めることができる。
式(1):拡散距離=白金層の膜厚×面積1/(面積1+面積2)
また、AESではスパッタ時間で深さを規定しているので、スパッタレートを一定であると仮定して距離を比較することで拡散距離を求めている。具体的には、図47に示すように、酸素原子のピークの裾と白金原子のピークの裾とが重なる領域の深さの幅を「深さ1(D1)」とし、白金ピークの深さの幅を「深さ2(D2)」とすると、拡散距離は、以下の式(2)で求めることができる。D1およびD2については、わかりやすい例として図45(B)に具体的に示した。
また、AESではスパッタ時間で深さを規定しているので、スパッタレートを一定であると仮定して距離を比較することで拡散距離を求めている。具体的には、図47に示すように、酸素原子のピークの裾と白金原子のピークの裾とが重なる領域の深さの幅を「深さ1(D1)」とし、白金ピークの深さの幅を「深さ2(D2)」とすると、拡散距離は、以下の式(2)で求めることができる。D1およびD2については、わかりやすい例として図45(B)に具体的に示した。
式(2):拡散距離=白金層の膜厚×深さ1/深さ2
以上の式(1)、(2)を用いて、実施例のサンプルについて、RBS+NRA分析による酸素原子の拡散距離を求めたところ、15nmであった。また、実施例のサンプルについて、AES分析による酸素原子の拡散距離を求めたところ、30nmであった。これに対し、比較例のサンプルでは、RBS+NRA分析による酸素原子の拡散距離は約70nmであり、AES分析では90nmであった。
以上の式(1)、(2)を用いて、実施例のサンプルについて、RBS+NRA分析による酸素原子の拡散距離を求めたところ、15nmであった。また、実施例のサンプルについて、AES分析による酸素原子の拡散距離を求めたところ、30nmであった。これに対し、比較例のサンプルでは、RBS+NRA分析による酸素原子の拡散距離は約70nmであり、AES分析では90nmであった。
以上のように、いずれの分析方法でも、実施例のサンプルでの酸素の拡散距離は、比較例のサンプルでの酸素の拡散距離に比べて格段に短くなっていることが確認された。
本実施例は、高温(725℃)の条件下で熱処理されたサンプルを用いて行われ、上記酸素原子の拡散距離の数値は、厳しい条件下で得られたものである。したがって、他の条件で作成される実施例のサンプルについて、RBS+NRA分析による酸素原子の拡散距離を求めると、15nm以下であると予測される。また、同様に、他の実施例のサンプルについて、AES分析による酸素原子の拡散距離を求めると、30nm以下であると予測される。
(2)酸素原子の割合のばらつき
強誘電体膜における酸素原子の割合のばらつきは、以下の式(3)によって求めたものである。以下の式において、「最大値」および「最小値」は、酸素ピークでの拡散領域を除いた部分での最大値および最小値を示す。例えば、図45(B)に示すように、酸素のピークのうち、鉛が顕著に拡散している領域および白金が拡散している領域を除いた領域A100において、ピークの最大値(Max)と最小値(Min)を求める。
強誘電体膜における酸素原子の割合のばらつきは、以下の式(3)によって求めたものである。以下の式において、「最大値」および「最小値」は、酸素ピークでの拡散領域を除いた部分での最大値および最小値を示す。例えば、図45(B)に示すように、酸素のピークのうち、鉛が顕著に拡散している領域および白金が拡散している領域を除いた領域A100において、ピークの最大値(Max)と最小値(Min)を求める。
式(3):ばらつき=(最大値−最小値)/(最大値と最小値の平均値)
以上の式(3)を用いて、実施例のサンプルについて、RBS+NRA分析による酸素原子の割合のばらつきを求めたところ、1%であった。また、実施例のサンプルについて、AES分析による酸素原子の割合のばらつきを求めたところ、3%であった。これに対し、比較例のサンプルでは、RBS+NRA分析による酸素の割合のばらつきは実施例とあまり差は見られないが(その代わり、拡散領域に存在する酸素原子数が実施例に比べて格段に多い。)、AES分析では8%のばらつきがあることが確認された。
以上の式(3)を用いて、実施例のサンプルについて、RBS+NRA分析による酸素原子の割合のばらつきを求めたところ、1%であった。また、実施例のサンプルについて、AES分析による酸素原子の割合のばらつきを求めたところ、3%であった。これに対し、比較例のサンプルでは、RBS+NRA分析による酸素の割合のばらつきは実施例とあまり差は見られないが(その代わり、拡散領域に存在する酸素原子数が実施例に比べて格段に多い。)、AES分析では8%のばらつきがあることが確認された。
本実施例は、高温(725℃)の条件下で熱処理されたサンプルを用いて行われ、上記酸素原子の割合のばらつきの数値は、厳しい条件下で得られたものである。したがって、他の条件で作成される実施例のサンプルについて、RBS+NRA分析による酸素原子の割合のばらつきを求めると、1%以下であると予測される。また、同様に、他の実施例のサンプルについて、AES分析による酸素原子の割合のばらつきを求めると、8%以下であると予測される。
以上のように、特にAES分析では、実施例のサンプルでの酸素原子のばらつきは、比較例のサンプルでの酸素のばらつきに比べて格段に小さくなっていることが確認された。したがって、本発明における強誘電体薄膜は、該強誘電体薄膜中の深さ方向での酸素原子の割合の分布がほとんど一定であることが確認された。
以上のようなPZTN(登録商標)とPZTとの相違は、以下の理由によるものと考えられる。
固体の界面においてある元素の拡散について考えるとき、その拡散係数をDとすると、D=a2/t・exp(−E/kT)で表される。ここでaは粒子間の距離、1/tは粒子間の飛躍が起こる頻度、Eは活性化エネルギーである。
ここで、1/tは元素の欠損によって大きくなる。そのため、PZTおよびPZTN(登録商標)における拡散の度合いの違いについて以下のように説明することができる。
PZT膜を熱処理することにより、PZT膜内からPbおよびOが抜けてPbおよびO欠損ができる。特にO欠損ができると、O原子は他の元素よりも動きやすいためにO原子の拡散が起こる。さらに、O欠損により電荷のバランスが崩れて膜内部のPb,Zr,Tiが不安定になる。そしてこれらの元素の拡散係数も大きくなる。
PZTN(登録商標)においては、特にO欠損を防ぐため、O元素の拡散係数を抑えることができる。そのためにPZTの場合と比べて熱処理による拡散を著しく抑えることができる。このように、PZTN(登録商標)は、結晶中の欠陥が極めて少ないため、PZTN(登録商標)膜自体が酸素バリア膜として機能する。このようなPZTN(登録商標)の特性によって、例えば、スタック型FeRAMなどにおいて、タングステンプラグの酸化を防ぐ技術において、現状では複雑な電極構造を必要としているがPZTN(登録商標)を用いることでそれを省くことができる。
(5)実施例5
Ir電極上にPbZr0.36Ti0.44Nb0.20O3(PZTN(登録商標)(36/44/20)、実施例)およびPbZr0.56Ti0.44O3(PZT(56/44)、比較例)をそれぞれ約1μm積層させた強誘電体(圧電体)膜を作製した。それぞれの圧電体膜は、スピンコートにより溶液を塗布し、乾燥および脱脂させる工程を、所望の膜厚になるまで繰り返し、750℃の高速熱処理により結晶化させることにより、作製した。
Ir電極上にPbZr0.36Ti0.44Nb0.20O3(PZTN(登録商標)(36/44/20)、実施例)およびPbZr0.56Ti0.44O3(PZT(56/44)、比較例)をそれぞれ約1μm積層させた強誘電体(圧電体)膜を作製した。それぞれの圧電体膜は、スピンコートにより溶液を塗布し、乾燥および脱脂させる工程を、所望の膜厚になるまで繰り返し、750℃の高速熱処理により結晶化させることにより、作製した。
図48にPZTN(登録商標)(36/44/20)膜のラマンスペクトルを示す。このスペクトルでは、500cm-1付近に1つのピークを持つ。これは、図49に示す正方晶PZTN(登録商標)(20/60/20)膜のラマンスペクトルとは明らかに異なる。このことから、本実施例のPZTN(登録商標)(36/44/20)は稜面体晶であることがわかる。同様にPZT(56/44)も稜面体晶であった。
図50、図51にそれぞれPZTN(登録商標)(36/44/20)膜およびPZT(56/44)膜のSEMによる断面プロファイルを示す。第1の違いとして、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜と下部電極との界面は明瞭であり、PZT(56/44)膜と下部電極との界面は明瞭でない。第2の違いとして、PZT(56/44)膜は膜内に組成ずれが起因であると考えられる白点が見られるが、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜はこのような白点が見られない。これらから、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜はPZT(56/44)膜よりも膜内の組成が均一であり電極との相互拡散が少ないことが考えられる。
図52、図53にそれぞれPZTN(登録商標)(36/44/20)膜およびPZT(56/44)膜のESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)による深さ方向の組成分析結果を示す。第1の違いとして、PZT(56/44)膜においてはZrとTiの組成の深さ方向における揺らぎが大きいが、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜においてはすべての元素成分が深さ方向においてほぼ一定である。第2の違いとして、PZT(56/44)膜においては電極との界面において成分の相互拡散が大いに見られるが、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜においては電極との界面においてほとんど成分の相互拡散がない。これらの結果により、断面プロファイルにおける双方の違いが明確に分かった。
図54にPZTN(登録商標)(36/44/20)膜とPZT(56/44)膜の圧電特性(d33)を示す。PZTN(登録商標)(36/44/20)膜はPZT膜に比べ大きなd33を有する。これは、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜の方がPZT(56/44)膜よりも柔らかい材料であることによるとも考えられるが、前述したPZTN(登録商標)(36/44/20)膜の特長である、膜内の組成が均一であり電極との相互拡散が少ないことがより深く関係していると考えられる。一般的に膜における圧電特性はバルクよりも劣るが、この原因として、膜においては電極との間の界面層や組成ずれに起因する異相などの形成により、膜内において圧電定数が高い部分と圧電定数が低い部分が形成され、圧電定数が低い部分において変位が抑えられるためであると考えられる。つまりPZTN(登録商標)(36/44/20)膜においては界面層や異相の形成が抑えられるためにPZT(56/44)膜よりも材料本来の圧電特性が生かされており、このことがPZTN(登録商標)(36/44/20)膜における圧電定数d33の大きさに繋がったと考えられる。
また、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜は膜内で一様な組成であり電極との界面が清浄であるために大面積においてばらつきが少ない。図55、図56に示すように、PZTN(登録商標)(36/44/20)膜は、6インチウェハの中心部と周辺部における配向性はほとんど同じであり、したがってウェハの全域において均一な配向性を示す。このことは、生産性の観点から見たPZTN(登録商標)(36/44/20)膜の大きな特長のひとつである。
(参考例)
本例ではPbZr0.4Ti0.6O3強誘電体膜を作製した。
本例ではPbZr0.4Ti0.6O3強誘電体膜を作製した。
従来の方法では、20%程度Pbを過剰に含む溶液を用いるが、これは、揮発Pbの抑制および結晶化温度低減のためである。しかしながら、出来た薄膜で過剰Pbが、どのようになっているかは不明であり、本来ならば最小限のPb過剰量で抑えるべきである。
そこで、過剰Pbが0、5、10、15、20%である10重量%濃度のPbZr0.4Ti0.6O3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)を用い、更に10重量%濃度のPbSiO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)を、それぞれ1モル%添加して、図26に示すステップST20〜ステップST25の各工程を行い、200nmのPbZr0.4Ti0.6O3強誘電体膜を形成した。この時の表面モフォロジーは図27(A)〜図27(C)に示すようであり、XRDパターンは図28(A)〜図28(C)に示すようであった。
従来は20%程度過剰なPbが必要であったが、5%過剰のPbで十分に結晶化が進行していることが示された。このことは、わずか1モル%のPbSiO3触媒が、PZTの結晶化温度を下げたために、過剰Pbは殆どいらないことを示している。以降、PZT、PbTiO3、およびPb(Zr、Ti)O3形成用溶液としては、全て5%Pb過剰溶液を用いている。
次に、10重量%濃度のPbZrO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)および10重量%濃度のPbTiO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)を4:6の割合で混合した溶液に10重量%濃度のPbSiO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)を、1モル%添加した混合溶液を用いて図2のフローにしたがって、200nm−PbZr0.4Ti0.6O3強誘電体膜を作製した。この時の、ヒステリシス特性は、図29(A)および図29(B)に示すように、角型性の良好なものであった。しかしながら、同時にリーキーであることがわかった。
また、比較のために、従来の方法で、前述の図26のフローを用いて、10重量%濃度のPbZr0.4Ti0.6O3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)に10重量%濃度のPbSiO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)を、1モル%添加した混合溶液を用いて、200nm−PbZr0.4Ti0.6O3強誘電体膜を作製した。この時、ヒステリシス特性は、図30に示すように、あまり良好なヒステリシスはえられなかった。
そこで、それぞれの強誘電体膜を用いて脱ガス分析を行ったところ、図31(A)および図31(B)のようであった。
図31(A)に示すように、PZTゾルゲル溶液で作製した従来の強誘電体膜は、室温から1000℃までの温度上昇に対して、常にHやCに纏わる脱ガスが確認された。
一方、図31(B)に示すように、10重量%濃度のPbZrO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)および10重量%濃度のPbTiO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)を4:6の割合で混合した溶液を用いた本願発明による強誘電体膜の場合は、分解するまで殆ど脱ガスが見られないことが判った。
このことは、10重量%濃度のPbZrO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)および10重量%濃度のPbTiO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)を4:6の割合で混合した溶液を用いることで、初めに混合溶液中の10重量%濃度のPbTiO3形成用ゾルゲル溶液(溶媒:n−ブタノール)によりPt上でPbTiO3が結晶化し、これが結晶初期核となり、またPtとPZTとの格子ミスマッチを解消し、PZTが容易に結晶化したものと思われた。かつ、混合溶液を用いることで、PbTiO3とPZTが良好な界面で連続して形成され、良好なヒステリシスの角型性へと繋がったものと考えられる。
2.強誘電体メモリ
図32(A)および図32(B)は、本発明の実施形態における、単純マトリクス型の強誘電体メモリ装置300の構成を示した図である。図32(A)はその平面図、図32(B)は図32(A)のA−A線に沿った断面図である。強誘電体メモリ装置300は、図32(A)および図32(B)に示すように、基板308上に形成された所定の数配列されたワード線301〜303と、所定の数配列されたビット線304〜306とを有する。ワード線301〜303とビット線304〜306との間には、上記実施の形態において説明したPZTN(登録商標)からなる強誘電体膜307が挿入され、ワード線301〜303とビット線304〜306との交差領域に強誘電体キャパシタが形成される。
図32(A)および図32(B)は、本発明の実施形態における、単純マトリクス型の強誘電体メモリ装置300の構成を示した図である。図32(A)はその平面図、図32(B)は図32(A)のA−A線に沿った断面図である。強誘電体メモリ装置300は、図32(A)および図32(B)に示すように、基板308上に形成された所定の数配列されたワード線301〜303と、所定の数配列されたビット線304〜306とを有する。ワード線301〜303とビット線304〜306との間には、上記実施の形態において説明したPZTN(登録商標)からなる強誘電体膜307が挿入され、ワード線301〜303とビット線304〜306との交差領域に強誘電体キャパシタが形成される。
この単純マトリクスにより構成されるメモリセルを配列した強誘電体メモリ装置300において、ワード線301〜303とビット線304〜306との交差領域に形成される強誘電体キャパシタヘの書き込みと読み出しは、図示しない周辺の駆動回路や読み出し用の増幅回路等(これらを「周辺回路」と称す)により行う。この周辺回路は、メモリセルアレイと別の基板上にMOSトランジスタにより形成して、ワード線301〜303およびビット線304〜306に接続するようにしてもよいし、あるいは基板308に単結晶シリコン基板を用いることにより、周辺回路をメモリセルアレイと同一基板上に集積化することも可能である。
図33は、本実施形態における、メモリセルアレイが周辺回路と共に同一基板上に集積化されている強誘電体メモリ装置300の一例を示す断面図である。
図33において、単結晶シリコン基板401上にMOSトランジスタ402が形成され、このトランジスタ形成領域が周辺回路部となる。MOSトランジスタ402は、単結晶シリコン基板401、ソース・ドレイン領域405、ゲート絶縁膜403、およびゲート電極404により構成される。
また、強誘電体メモリ装置300は、素子分離用酸化膜406、第1の層間絶縁膜407、第1の配線層408、および第2の層間絶縁膜409を有する。
また、強誘電体メモリ装置300は、強誘電体キャパシタ420からなるメモリセルアレイを有し、強誘電体メモリ420は、ワード線またはビット線となる下部電極(第1電極または第2電極)410、強誘電体相と常誘電体相とを含む強誘電体膜411、および強誘電体膜411の上に形成されてビット線またはワード線となる上部電極(第2電極または第1電極)412から構成される。
さらに、強誘電体メモリ装置300は、強誘電体キャパシタ420の上に第3の層間絶縁膜413を有し、第2の配線層414により、メモリセルアレイと周辺回路部が接続される。なお、強誘電体メモリ装置300において、第3の層間絶縁膜413と第2の配線層414との上には保護膜415が形成されている。
以上の構成を有する強誘電体メモリ装置300によれば、メモリセルアレイと周辺回路部とを同一基板上に集積することができる。なお、図4に示される強誘電体メモリ装置300は、周辺回路部上にメモリセルアレイが形成されている構成であるが、もちろん、周辺回路部上にメモリセルアレイが配置されず、メモリセルアレイは周辺回路部と平面的に接しているような構成としてもよい。
本実施形態で用いられる強誘電体キャパシタ420は、上記実施の形態に係るPZTN(登録商標)から構成されるため、ヒステリシスの角形性が非常に良く、安定なディスターブ特性を有する。さらに、この強誘電体キャパシタ420は、プロセス温度の低温化により周辺回路等や他の素子へのダメージが少なく、またプロセスダメージ(特に水素の還元)が少ないので、ダメージによるヒステリシスの劣化を抑えることができる。したがって、かかる強誘電体キャパシタ420を用いることで、単純マトリクス型強誘電体メモリ装置300の実用化が可能になる。
また図34(A)には、変形例として1T1C型強誘電体メモリ装置500の構造図を示す。図34(B)は、強誘電体メモリ装置500の等価回路図である。
強誘電体メモリ装置500は、図34に示すように、下部電極501、プレート線に接続される上部電極502、および本実施形態のPZTN(登録商標)強誘電体を適用した強誘電体膜503からなるキャパシタ504(1C)と、ソース/ドレイン電極の一方がデータ線505に接続され、ワード線に接続されるゲート電極506を有するスイッチ用のトランジスタ素子507(1T)からなるDRAMに良く似た構造のメモリ素子である。1T1C型のメモリは書き込みおよび読み出しが100ns以下と高速で行うことが出来、かつ書き込んだデータは不揮発であるため、SRAMの置き換え等に有望である。
3.圧電素子およびインクジェット式記録ヘッド
以下に、本発明の実施形態における、インクジェット式記録ヘッドについて詳細に説明する。
以下に、本発明の実施形態における、インクジェット式記録ヘッドについて詳細に説明する。
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
そして、たわみ振動モードのアクチュエータを使用したものとしては、例えば、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電体層を形成し、この圧電体層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成したものが知られている。
図38は、本発明の一実施形態に係るインクジェット式記録ヘッドの概略を示す分解斜視図であり、図39は、図38の平面図およびA−A’断面図であり、図40は、圧電素子700の層構造を示す概略図である。図示するように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には予め熱酸化により形成した二酸化シリコンからなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。流路形成基板10には、複数の圧力発生室12がその幅方向に並設されている。また、流路形成基板10の圧力発生室12の長手方向外側の領域には連通部13が形成され、連通部13と各圧力発生室12とが、各圧力発生室12毎に設けられたインク供給路14を介して連通されている。なお、連通部13は、後述する封止基板30のリザーバ部32と連通して各圧力発生室12の共通のインク室となるリザーバ800の一部を構成する。インク供給路14は、圧力発生室12よりも狭い幅で形成されており、連通部13から圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を一定に保持している。
また、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。
一方、このような流路形成基板10の開口面とは反対側には、上述したように、厚さが例えば約1.0μmの弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、厚さが例えば、約0.4μmの絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.05μmの上電極膜80とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子700を構成している。ここで、圧電素子700は、下電極膜60、圧電体層70および上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極および圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極および圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子700の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子700の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子700と当該圧電素子700の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、圧電体層70は、各圧力発生室12毎に独立して設けられ、図40に示すように、複数層の強誘電体膜71(71a〜71f)で構成されている。
インクジェット式記録ヘッドは、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備する記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図41は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。図41に示すように、インクジェット式記録ヘッドを有する記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、インク供給手段を構成するカートリッジ2Aおよび2Bが着脱可能に設けられ、この記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この記録ヘッドユニット1Aおよび1Bは、例えば、それぞれブラックインク組成物およびカラーインク組成物を吐出するものとしている。そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッドユニット1Aおよび1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上に搬送されるようになっている。
なお、液体噴射ヘッドとしてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッドを一例として説明したが、本発明は、圧電素子を用いた液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置全般を対象としたものである。液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を挙げることができる。
本実施形態の圧電素子は、上記実施の形態に係るPZTN(登録商標)膜を圧電体層に用いるため、次の効果が得られる。
(1)圧電体層中の共有結合性が向上するため、圧電定数を向上させることができる。
(2)圧電体層中のPbOの欠損を抑えることができるため、圧電体層の電極との界面における異相の発生が抑制されて電界が加わり易くなり、圧電素子としての効率を向上させることができる。
(3)圧電体層のリーク電流が抑えられるため、圧電体層を薄膜化することができる。
また、本実施形態の液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置は、上記の圧電体層を含む圧電素子を用いるため、特に次の効果が得られる。
(4)圧電体層の疲労劣化を軽減することができるため、圧電体層の変位量の経時変化を抑えて、信頼性を向上させることができる。
以上に、本発明に好適な実施の形態について述べてきたが、本発明は、上述したものに限られず、発明の要旨の範囲内において種々の変形態様により実施することができる。
101…強誘電体膜、102…第1電極、103…第2電極。
Claims (20)
- 電極と、該電極上に形成されたPZT系強誘電体膜と、を含む強誘電体膜積層体において、
前記PZT系強誘電体膜は、Ti組成のうち、2.5モル%以上40モル%以下をNbに置換し、
前記電極は、前記PZT系強誘電体膜から拡散する酸素をほぼ含まない、強誘電体膜積層体。 - 請求項1において、
前記PZT系強誘電体膜の強誘電体は一般式PbZrxTiyNbzで示され、以下の関係、
x+y+z=1
0≦x≦0.975
が成立する、強誘電体膜積層体。 - 請求項1において、
前記電極における前記PZT系強誘電体膜からの酸素の拡散距離は、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)および核反応分析法(NRA)によるプロファイルから求めると、15nm以下である、強誘電体膜積層体。 - 請求項1において、
前記電極における前記PZT系強誘電体膜からの酸素の拡散距離は、オージェ電子分光法(AES)によるプロファイルから求めると、30nm以下である、強誘電体膜積層体。 - 電極と、該電極上に形成されたPZT系強誘電体膜と、を含む強誘電体膜積層体において、
前記PZT系強誘電体膜は、Ti組成のうち、2.5モル%以上40モル%以下をNbに置換し、
前記PZT系強誘電体膜は、該PZT系強誘電体膜における酸素原子の割合の分布がほぼ一定である、強誘電体膜積層体。 - 請求項5において、
前記PZT系強誘電体膜における酸素原子の割合の分布は、該PZT系強誘電体膜の膜厚方向での酸素原子の割合のばらつきを、(最大値−最小値)/(最大値と最小値の平均値)で表し、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)および核反応分析法(NRA)によるプロファイルから求めると、1%以下である、強誘電体膜積層体。 - 請求項5において、
前記PZT系強誘電体膜における酸素原子の割合の分布は、該PZT系強誘電体膜の膜厚方向での酸素原子の割合のばらつきを、(最大値−最小値)/(最大値と最小値の平均値)で表し、オージェ電子分光法(AES)によるプロファイルから求めると、3%以下である、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし7のいずれかにおいて、
前記PZT系強誘電体膜は、該PZT系強誘電体膜に含まれる酸素の95%以上がペロブスカイト構造の酸素位置に存在する、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記PZT系強誘電体膜は、Zr組成よりもTi組成が多い、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし9のいずれかにおいて、
Ti組成のうち、5モル%以上30モル%以下をNbに置換した、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし9のいずれかにおいて、
Ti組成のうち、10モル%以上30モル%以下をNbに置換した、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし11のいずれかにおいて、
前記PZT系強誘電体膜は、正方晶系および稜面体晶系の少なくとも一方の結晶構造を有する、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし12のいずれかにおいて、
0.5モル%以上のSi、或いはSiおよびGeを含む、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし13のいずれかにおいて、
0.5モル%以上、5モル%以下のSi、或いはSiおよびGeを含む、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし14のいずれかにおいて、
前記PZT系強誘電体膜は、前記Nbのかわりに、その全部もしくは一部がTa、W、VおよびMoの少なくとも1種によって置換された、強誘電体膜積層体。 - 請求項1ないし15のいずれかにおいて、
前記電極は、白金族元素あるいはその合金からなる、強誘電体膜積層体。 - 請求項1〜16のいずれかに記載の強誘電体膜積層体を用いた、強誘電体メモリ。
- 請求項1〜17のいずれかに記載の強誘電体膜積層体を用いた、圧電素子。
- 請求項18に記載の圧電素子を用いた、液体噴射ヘッド。
- 請求項19に記載の液体噴射ヘッドを用いた、プリンタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009150695A JP2009283950A (ja) | 2004-04-23 | 2009-06-25 | 圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 |
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004128691 | 2004-04-23 | ||
JP2009150695A JP2009283950A (ja) | 2004-04-23 | 2009-06-25 | 圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 |
Related Parent Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005026648A Division JP4811556B2 (ja) | 2004-04-23 | 2005-02-02 | 圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009283950A true JP2009283950A (ja) | 2009-12-03 |
Family
ID=35346617
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009150695A Withdrawn JP2009283950A (ja) | 2004-04-23 | 2009-06-25 | 圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 |
Country Status (2)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009283950A (ja) |
CN (1) | CN100385669C (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2453493A2 (en) | 2010-11-10 | 2012-05-16 | Seiko Epson Corporation | Liquid ejecting head, liquid ejecting apparatus and piezoelectric element, and method for manufacturing piezoelectric element |
US9533502B2 (en) | 2012-08-14 | 2017-01-03 | Ricoh Company, Ltd. | Electro-mechanical transducer element, liquid droplet ejecting head, image forming apparatus, and electro-mechanical transducer element manufacturing method |
CN112198659A (zh) * | 2020-10-16 | 2021-01-08 | 江苏南锦电子材料有限公司 | 一种光学扩散膜片吸蓝光处理方法 |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR100754612B1 (ko) | 2006-01-26 | 2007-09-05 | 삼성전자주식회사 | 서로 다른 이동 통신 방식 간에 패킷 호 재접속 지연시간을 최소화하기 위한 핸드오버 방법 및 이를 위한멀티모드 단말기 |
JP4164701B2 (ja) * | 2006-05-31 | 2008-10-15 | セイコーエプソン株式会社 | 強誘電体キャパシタ、強誘電体キャパシタの製造方法、強誘電体メモリおよび強誘電体メモリの製造方法 |
CN106970246B (zh) * | 2017-02-13 | 2023-03-14 | 河南师范大学 | 一种高速扫描隧穿显微镜测绝缘样品膜厚形貌缺陷的方法 |
Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04184808A (ja) * | 1990-11-20 | 1992-07-01 | Olympus Optical Co Ltd | 強誘電体薄膜の製造方法 |
JPH05206534A (ja) * | 1992-01-29 | 1993-08-13 | Toyota Motor Corp | 積層型圧電素子 |
JPH11274589A (ja) * | 1998-03-24 | 1999-10-08 | Kyocera Corp | 積層型圧電アクチュエータおよびその製造方法 |
JP2000007430A (ja) * | 1998-06-19 | 2000-01-11 | Yamaha Corp | 強誘電体材料及び強誘電体メモリ |
JP2001210888A (ja) * | 1999-11-18 | 2001-08-03 | Kansai Research Institute | 圧電体素子およびその製造方法ならびにそれを用いたインクジェット式プリンタヘッド |
JP2002538617A (ja) * | 1999-03-05 | 2002-11-12 | テルコーディア テクノロジーズ インコーポレイテッド | 強誘電メモリセル内の非晶質バリア層 |
Family Cites Families (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO1998057380A1 (en) * | 1997-06-09 | 1998-12-17 | Bell Communications Research, Inc. | Annealing of a crystalline perovskite ferroelectric cell and cells exhibiting improved barrier properties |
JPH10203868A (ja) * | 1997-11-20 | 1998-08-04 | Samsung Electron Co Ltd | 強誘電体キャパシタ用pzt薄膜 |
US6312816B1 (en) * | 1998-02-20 | 2001-11-06 | Advanced Technology Materials, Inc. | A-site- and/or B-site-modified PbZrTiO3 materials and (Pb, Sr, Ca, Ba, Mg) (Zr, Ti, Nb, Ta)O3 films having utility in ferroelectric random access memories and high performance thin film microactuators |
JP2000236075A (ja) * | 1999-02-12 | 2000-08-29 | Sony Corp | 誘電体キャパシタの製造方法および半導体記憶装置の製造方法 |
KR100333669B1 (ko) * | 1999-06-28 | 2002-04-24 | 박종섭 | 레드니오비움지르코니움타이타니트 용액 형성 방법 및 그를 이용한 강유전체 캐패시터 제조 방법 |
-
2005
- 2005-04-12 CN CNB2005100649484A patent/CN100385669C/zh not_active Expired - Fee Related
-
2009
- 2009-06-25 JP JP2009150695A patent/JP2009283950A/ja not_active Withdrawn
Patent Citations (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH04184808A (ja) * | 1990-11-20 | 1992-07-01 | Olympus Optical Co Ltd | 強誘電体薄膜の製造方法 |
JPH05206534A (ja) * | 1992-01-29 | 1993-08-13 | Toyota Motor Corp | 積層型圧電素子 |
JPH11274589A (ja) * | 1998-03-24 | 1999-10-08 | Kyocera Corp | 積層型圧電アクチュエータおよびその製造方法 |
JP2000007430A (ja) * | 1998-06-19 | 2000-01-11 | Yamaha Corp | 強誘電体材料及び強誘電体メモリ |
JP2002538617A (ja) * | 1999-03-05 | 2002-11-12 | テルコーディア テクノロジーズ インコーポレイテッド | 強誘電メモリセル内の非晶質バリア層 |
JP2001210888A (ja) * | 1999-11-18 | 2001-08-03 | Kansai Research Institute | 圧電体素子およびその製造方法ならびにそれを用いたインクジェット式プリンタヘッド |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2453493A2 (en) | 2010-11-10 | 2012-05-16 | Seiko Epson Corporation | Liquid ejecting head, liquid ejecting apparatus and piezoelectric element, and method for manufacturing piezoelectric element |
US8721052B2 (en) | 2010-11-10 | 2014-05-13 | Seiko Epson Corporation | Piezoelectric element, liquid ejecting head and liquid ejecting apparatus |
US9533502B2 (en) | 2012-08-14 | 2017-01-03 | Ricoh Company, Ltd. | Electro-mechanical transducer element, liquid droplet ejecting head, image forming apparatus, and electro-mechanical transducer element manufacturing method |
CN112198659A (zh) * | 2020-10-16 | 2021-01-08 | 江苏南锦电子材料有限公司 | 一种光学扩散膜片吸蓝光处理方法 |
CN112198659B (zh) * | 2020-10-16 | 2022-05-20 | 江苏南锦电子材料有限公司 | 一种光学扩散膜片吸蓝光处理方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CN1691332A (zh) | 2005-11-02 |
CN100385669C (zh) | 2008-04-30 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4811556B2 (ja) | 圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 | |
JP3791614B2 (ja) | 強誘電体膜、強誘電体メモリ装置、圧電素子、半導体素子、圧電アクチュエータ、液体噴射ヘッド及びプリンタ | |
JP4735834B2 (ja) | 強誘電体キャパシタの製造方法、強誘電体メモリの製造方法、圧電素子の製造方法、圧電アクチュエータの製造方法、及び液体噴射ヘッドの製造方法 | |
JP4171908B2 (ja) | 強誘電体膜、強誘電体メモリ、及び圧電素子 | |
JP4720969B2 (ja) | 強誘電体膜、圧電体膜、強誘電体メモリ及び圧電素子 | |
JP2009283950A (ja) | 圧電素子、液体噴射ヘッドおよび液体噴射装置 | |
KR100720629B1 (ko) | Mfs형 전계 효과 트랜지스터 및 그 제조 방법, 강유전체메모리 및 반도체 장치 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20101102 |
|
A761 | Written withdrawal of application |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761 Effective date: 20101227 |