JP2009281018A - 既設コンクリート構造物の補強方法 - Google Patents

既設コンクリート構造物の補強方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強化繊維格子筋の強度を有効に利用して、さらなる耐力向上を図る。
【解決手段】炭素繊維またはガラス繊維を格子状に積層成形してなる強化繊維格子筋(炭素繊維格子筋10)を既設コンクリート構造物1の表面に布設した後に、モルタル30を吹き付けまたは塗りつけて増厚する既設コンクリート構造物1の補強方法において、強化繊維格子筋は、既設コンクリート構造物1に沿って矩形状に形成されており、強化繊維格子筋の互いに対向する端部筋11a,11bに、この端部筋11a,11bを補剛する棒状の補剛材20,20をそれぞれ沿わせて固定した後に、強化繊維格子筋を既設コンクリート構造物1の表面に布設してモルタル30を吹き付けまたは塗りつける。
【選択図】図1

Description

本発明は、炭素繊維またはガラス繊維を格子状に積層成形してなる強化繊維格子筋を既設コンクリート構造物の表面に布設した後に、モルタルを吹き付けまたは塗り付けて増厚する既設コンクリート構造物の補強方法に関する。
近年、既設コンクリート構造物の機能回復および向上を目的とした補修・補強工事が増加する傾向にあり、炭素繊維格子筋やガラス繊維格子筋からなる強化繊維格子筋と、モルタルとによる補強方法が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
前記の補強方法は、橋梁のコンクリート梁やコンクリート桁等の既設コンクリート構造物の表面に、強化繊維格子筋を布設して、その上からモルタルを吹き付けまたは塗り付けることで、強化繊維格子筋を既設コンクリート構造物の表面に固定するとともに、コンクリートを増厚するようになっており、曲げ補強やせん断補強がなされている。この補強方法は、軽量であり、また施工が比較的容易であるので、これからも採用されることが多くなると考えられている。
特開2004−308130号公報
ところで、本発明者らが、前記の補強方法を採用して、梁状のコンクリート構造物の側面に強化繊維格子筋を布設してモルタルを吹き付けた試験体を形成して、この試験体を用いて2点曲げ載荷実験を行ったところ、吹き付けたモルタルの剥離が進行して、せん断破壊が発生した。このとき、せん断破壊が発生するせん断終局荷重は、強化繊維格子筋の引張強度に達しておらず、強化繊維格子筋が持つ強度を有効に活用しきれていなかった。また、せん断破壊は、耐震上好ましくない。
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、強化繊維格子筋の強度を有効に利用して、さらなる耐力向上が図れる既設コンクリート構造物の補強方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、炭素繊維またはガラス繊維を格子状に積層成形してなる強化繊維格子筋を既設コンクリート構造物の表面に布設した後に、モルタルを吹き付けまたは塗り付けて増厚する既設コンクリート構造物の補強方法において、前記強化繊維格子筋は、前記既設コンクリート構造物に沿って矩形状に形成されており、前記強化繊維格子筋の互いに対向する端部筋に、この端部筋を補剛する棒状の補剛材を沿わせて固定した後に、前記強化繊維格子筋を前記既設コンクリート構造物の表面に布設することを特徴とする既設コンクリート構造物の補強方法である。
また、請求項2に係る発明は、炭素繊維またはガラス繊維を格子状に積層成形してなる強化繊維格子筋を水平方向に延出する既設コンクリート構造物の側面に布設した後に、モルタルを吹き付けまたは塗り付けて増厚する既設コンクリート構造物の補強方法において、前記強化繊維格子筋は、前記既設コンクリート構造物に沿って矩形状に形成されており、前記強化繊維格子筋の上下方向で互いに対向する端部筋に、この端部筋を補剛する棒状の補剛材を沿わせて固定した後に、前記強化繊維格子筋を前記既設コンクリート構造物の側面に布設することを特徴とする既設コンクリート構造物の補強方法である。
本発明において、本発明者らは、強化繊維格子筋とモルタルを用いて補強された既設コンクリート構造物のせん断耐荷挙動がこれまで充分に検討されていなかった点に着目し、せん断耐荷挙動について強度実験を行い、その実験結果に基づいて、効果的な補強方法を見出した。具体的には、本発明者らは、強化繊維格子筋とモルタルを用いて補強された既設コンクリート構造物について2点曲げ載荷実験を行って、「モルタルの斜めひび割れが支点(互いに対向する端部筋の位置)付近まで進展すると、端部筋の直交方向に延びる直交筋の定着長が短くなり、強化繊維格子筋の引抜き力を受け持っていたモルタルが既設コンクリート構造物から剥離し、さらに、強化繊維格子筋の端部筋はせん断強度が小さいため、モルタルが次々と剥離を生じ、その剥離面積が所定以上に達すると既設コンクリート構造物がせん断破壊を起してしまう現象」を発見したが、これについて鋭意研究を行った結果、強化繊維格子筋の互いに対向する端部筋を補強すると、モルタルの剥離を抑制できることを見出した。
したがって、前記のような方法によれば、モルタルの大規模な剥離を防止することができ、強化繊維格子筋を既設コンクリート構造物に確実に定着させることができるので、強化繊維格子筋の強度を有効に利用して、補強された既設コンクリート構造物のさらなる耐力向上を図ることができる。また、モルタルの大規模な剥離が起こらないので、せん断破壊の発生を防止することができる。
請求項3に係る発明は、前記補剛材が、前記端部筋に線状部材で巻き付けられて固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既設コンクリート構造物の補強方法である。
このような方法によれば、簡単な施工で、補剛材をその全長に亘って端部筋に固定することができる。
請求項4に係る発明は、前記補剛材が、複数の棒材を前記強化繊維格子筋の表面に沿って並列して構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の既設コンクリート構造物の補強方法である。
鉄筋を補剛材として用いた場合に、鉄筋の外周面から所定の被り厚が必要となるが、このような方法によれば、強化繊維格子筋の表面から外側に突出する寸法を小さくすることができるので、モルタルが厚くなるのを抑えることができる。
本発明によれば、強化繊維格子筋の強度を有効に利用して、補強された既設コンクリート構造物のさらなる耐力向上を図ることができるといった優れた効果を発揮する。
次に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、橋梁の橋桁や梁などの既設コンクリート構造物の側面に炭素繊維格子筋を布設した後に、モルタルを吹き付けて増厚して、既設コンクリート構造物を補強する場合を例に挙げて説明する。
図1は本発明に係る既設コンクリート構造物の補強方法によって補強された補強構造物を示した斜視図である。図2は本発明に係る既設コンクリート構造物の補強方法によって補強された補強構造物を示した図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。
本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強方法は、強化繊維格子筋(本実施形態では炭素繊維格子筋)を橋桁や梁などの水平方向に延出する既設コンクリート構造物の側面に布設した後に、モルタルを吹き付けまたは塗り付けて(本実施形態では吹付け)増厚する既設コンクリート構造物の補強方法であって、強化繊維格子筋が、既設コンクリート構造物に沿って矩形状に形成されており、強化繊維格子筋の上下方向で互いに対向する端部筋に、この端部筋を補剛する棒状の補剛材を沿わせて固定した後に、強化繊維格子筋を既設コンクリート構造物の側面(表面)に布設するようにしたことを特徴とする。
図1および図2に示すように、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強方法によって補強される既設コンクリート構造物1は水平方向に延出する梁であって、その側面2に強化繊維格子筋を構成する炭素繊維格子筋(CFRP格子筋)10が布設され、この炭素繊維格子筋10を覆うようにモルタル30が吹き付けられている。
炭素繊維格子筋10は、炭素繊維を格子状に積層成形することで構成されており、詳しくは、カーボンなどの連続強化繊維を樹脂に含浸させながら、一体的に複層成形されている。炭素繊維格子筋10は、比重が非常に軽く、格子の交差部分が面一となるため鉄筋と比較して薄厚でありながら、高強度且つ高弾性の連続強化繊維が二方向に配列されているため、鉄筋と同様の補強効果を得られる。さらに炭素繊維格子筋10は、錆が発生することもなく耐食性に優れている。
炭素繊維格子筋10は、既設コンクリート構造物1である梁の側面の形状と略同等の矩形状(本実施形態でが長方形状)に形成されている。本発明において、矩形とは、長方形、正方形は勿論、台形や菱形等の四角形も含むものとする。長方形状に形成された炭素繊維格子筋10は、長手方向に延出する複数の長尺筋11,11・・・と、この長尺筋11と直交して、短手方向に延出する複数の短尺筋12,12・・・とで構成されている。炭素繊維格子筋10を梁に布設したときに、長尺筋11は水平方向に沿って配置され、短尺筋12は鉛直方向に沿って配置されることとなる。長尺筋11,11・・・は、上下方向に所定のピッチで互いに平行に配置され、短尺筋12,12・・・は、水平方向に所定のピッチで互いに平行に配置されている。長尺筋11,11・・・のうち、炭素繊維格子筋10を梁に布設したときに上端と下端に位置する長尺筋が、請求項上の上下方向で互いに対向する端部筋11a,11bをそれぞれ構成することとなる。上側の端部筋11aの上方、下側の端部筋11bの下方には、各短尺筋12,12・・・がそれぞれ所定の長さで延出している。また、水平方向両端に位置する短尺筋12a,12aの外方には、各長尺筋11,11・・・がそれぞれ所定の長さで延出している。
上下の端部筋11a,11bには、棒状の補剛材20,20がそれぞれ固定されている。補剛材20は、複数の棒材(本実施形態では2本の鉄筋21,21)にて構成されており、端部筋11a,11bにそれぞれ平行に沿わして配置されている。鉄筋21は、例えば6mm径の鉄筋が採用されており、上下の端部筋11a,11b部分に、二本ずつ配置されている。二本の鉄筋21,21は、上下方向に隣接して並列され、炭素繊維格子筋10の外側表面に沿って接触して配置されている。補剛材20は、所定のピッチ(例えば200mmピッチ)ごとに配置された結束線22により、端部筋11a,11bに固定されている。結束線22による補剛材20の固定位置に制限はないが、本実施形態の補剛材20は、長尺筋11と短尺筋12との交差部分で巻き付けられて固定されている。なお、補剛材20を端部筋11a,11bに巻き付けて固定する部材は、結束線22に限られるものではなく、テープ状炭素繊維製シートなどの、補剛材20のせん断耐力を端部筋11a,11bに伝達可能な強度を有する線状部材であればよい。
なお、炭素繊維格子筋10は、既設コンクリート構造物1の側面2に所定の間隔をあけて設けられたアンカーボルト(図示せず)等の係止部材によって係止されて、その後モルタル30が吹き付けられることによって、既設コンクリート構造物1に一体的に固定される。
既設コンクリート構造物1と炭素繊維格子筋10の表面に吹き付けられるモルタル30は、ポリマーセメントモルタル(PCM)等の、通常のセメントモルタルよりも接着性の高いものが採用されている。モルタル30は、炭素繊維格子筋10の厚さに応じて10〜20mmの厚さに吹き付けられている。なお、モルタル30は、吹付けだけでなく、手塗り等によって施工してもよい。
炭素繊維格子筋10、補剛材20およびモルタル30による補強は、既設コンクリート構造物1の両側の側面2,2に施されるようになっている。なお、必要な補強効果や既設コンクリート構造物1の形状に応じて、前記補強を既設コンクリート構造物の片側の側面に施すようにしてもよい。
次に、かかる既設コンクリート構造物の補強方法によって補強された補強構造物について行った強度実験について説明する。
かかる強度実験は、本発明に係る既設コンクリート構造物の補強方法によって補強した試験体Aと、補剛材を設けない従来の炭素繊維格子筋とモルタルによる補強方法によって補強した試験体Bと、補強を行わないコンクリート構造物である試験体Cについて、2点曲げ載荷実験を行い、曲げひび割れ発生荷重、せん断ひび割れ発生荷重および終局荷重を計測するとともに、破壊形態を観測した。
試験体Cは、図3の(c)に示すように、長さ2750mm、高さ500mm、幅200mmの直方体のコンクリートブロック50であって、上部に上端筋(2−D10)51、下部に上下二段の下端筋(3−D32)52および6mm径の鉄筋にて構成されたU型のスターラップ筋(図示せず)を有している。スターラップ筋は、試験体Cの長手方向に200mmピッチで配置されている。コンクリートは、レディーミクストコンクリートを使用し、目標圧縮強度(材齢28日)24N/mmとし、目標スランプ12cm、目標空気量4.5%とした。
試験体Bは、図3の(b)に示すように、試験体Cと同じ構造のコンクリートブロック50の両側面に、炭素繊維格子筋10を布設した後にモルタル30を吹き付けて形成されている。コンクリートブロック50の側面には、モルタル30の吹付け前にブラスト処理を行って、目荒らし加工を施した。ブラスト材にはアルミナを使用し、投射密度は30kg/m、投射時間は5min/mを目安として、ブラスト処理を行った。表面処理後、試験体表面にプライマー処理を行い、アンカーを用いて側面に炭素繊維格子筋10を布設して、モルタル30を吹き付けて増厚する。
炭素繊維格子筋10は、日鉄コンポジット株式会社製の「トウグリッド」(登録商標)の炭素繊維高強度タイプである「CR8」の格子間隔が100mmのものを用いている。モルタル30は、短繊維を混入したプレミックス湿式吹付けモルタルに、スチレンブチレン共重合体系ポリマー(SBR系ポリマー)を混入してなるポリマーセメントモルタルが用いられており、コンクリートブロック50の側面および炭素繊維格子筋10上に吹き付けられている。
試験体Aは、図3の(a)に示すように、試験体Cと同じ構造のコンクリートブロック50の両側面に、試験体Bと同様の炭素繊維格子筋10の上下の端部筋11a,11bに、棒状の補剛材20,20を固定して布設した後に、モルタル30を吹き付けて形成されている。補剛材20は、6mm径の鉄筋21を上下方向に二本並列して、一般的な結束線22を用いて、長尺筋11と短尺筋12との交差部分で、200mmピッチで端部筋11a(11b)に巻き付けて固定することで構成されている。試験体Aのその他の構成と施工工程は、試験体Bと同様であるので、説明を省略する。
各試験体A,B,Cは、完成してから屋外にて28日間湿布養生され、その後に、2点曲げ載荷実験に使用される。
2点曲げ載荷実験は、2000kN油圧ジャッキを用いて、試験体A(B,C)に曲げひび割れが発生するまで荷重を漸増させ、曲げひび割れ発生後、5kN程度まで除荷する。そして、各試験体A(B,C)に斜めひび割れ(せん断ひび割れ)が発生するまで再度加力を行い、斜めひび割れ発生後、5kN程度まで除荷する。そして、さらに、各試験体A(B,C)の終局破壊が起こるまで荷重を漸増させた。載荷時には、炭素繊維格子筋のひずみ、支点および部材中央変位、コンクリートひずみ(スパン中央の上縁、下縁)、軸鉄筋ひずみ(スパン中央下段)を適宜測定した。なお、載荷速度は、0.6kN/secとし、載荷位置は、長さ方向両端部からそれぞれ内側に1300mm離れた2点(図3の(b)の白抜き矢印にて示す)としている。
このようにして行った強度実験の結果について図4、図5および表1に基づいて説明する。
Figure 2009281018
図4の(c)および表1に示すように、無補強の試験体Cは、破壊形態がせん断破壊を呈しており、荷重220kNにおいてせん断ひび割れが発生し、荷重300kNにおいてせん断ひび割れが試験体Cの上面から100mm程度の位置まで進展し、ひび割れ幅も2mmを超える程度まで拡大した。終局荷重450kNの時点で、載荷部周辺に圧縮破壊の様子は見られなかった。
図4の(b)および表1に示すように、従来型補強の試験体Bも、破壊形態がせん断破壊を呈している。試験体Bは、荷重340kN程度においてせん断ひび割れが発生し、その後はせん断ひび割れが試験体Bの上面から100mm程度の位置まで進展した後、せん断ひび割れ周辺に新たに細かいせん断ひび割れを発生しながら終局荷重(631kN)まで至り、せん断破壊した。
これは、図5に示すように、モルタル30の斜めひび割れが支点付近まで進展して、下側の端部筋11bの直交方向に延びる直交筋(短尺筋12)の定着長L(モルタル30と直交筋との接着長さ)が斜めひび割れよりも下側の長さL’,L”・・分、短くなり、炭素繊維格子筋10(強化繊維格子筋)の引抜き力を受け持っていたモルタル30がコンクリートブロック50から剥離し、さらに、炭素繊維格子筋10の端部筋11bはせん断に対する強度が小さいため外側にはらんで、モルタル30が外側に押されて次々と剥離を生じ、その剥離面積が所定以上に達したときに試験体Bがせん断破壊を起してしまったためである。
図4の(a)および表1に示すように、本発明型補強の試験体Aは、破壊形態が圧縮破壊を呈している。試験体Cでは、せん断ひび割れ発生荷重が280kNで、破壊終局荷重が790kNであった。ここで、試験体Cが圧縮破壊していることより、炭素繊維格子筋10によるせん断補強が十分に行われていることがわかる。
これは、炭素繊維格子筋10の上下の端部筋11a,11bに、棒状の補剛材20,20をそれぞれ固定したことで、モルタル30の斜めひび割れが支点付近まで進展して直交筋(短尺筋12)の定着長が短くなった場合でも、端部筋11a,11bが変形せずに、外側にはらまず、炭素繊維格子筋10の引抜き力を受け持つモルタル30の剥離を防止できるためである。これによって、モルタル30がコンクリートブロック50から剥離するのを防止でき、試験体Aは、コンクリートブロック50の圧縮破壊が発生する荷重まで耐えることができる。
補強効率を、計算による載荷能力の増加分に対する実際の載荷能力の増加分の比として定義し、下記の式(1)によって各試験体A,B,Cの補強効率を数値化し、評価した。
Figure 2009281018
ここで、式(1)中、γは補強効率(%)、Vcsは終局荷重の計算値(kN)、V’csは終局荷重の測定値(kN)、V’cs0は試験体Aの終局荷重の測定値(kN)をそれぞれ示している。
前記の式(1)を用いて、試験体Cに対する試験体A,Bの補強効率をそれぞれ計算したところ、従来型補強の試験体Bでは、補強効率が31%であったのに対して、本発明型補強の試験体Aでは、補強効率は58%であった。
ここで、各試験体は単位長さ当りのせん断補強筋の断面積が相違するため、同じ条件で比較できるように、下記の式(2)によって算出した比較係数を補強効率に乗じて補正値を算出した。
Figure 2009281018
ここで、式(2)中、αは比較係数、ρは試験体単位長さ当りの補強筋の断面積(mm/mm)、ρは比較する試験体試験体単位長さ当りの補強筋の断面積の最大値(mm/mm)を示し、ρを表した式中、Asvは補強筋の断面積(mm)、Sは補強筋のピッチ(mm)を示している。
前記の式(2)を用いて、試験体A,Bの補強効率の補正値をそれぞれ計算したところ、従来型補強の試験体Bでは、補強効率の補正値が27%であったのに対して、本発明型補強の試験体Aでは、補強効率の補正値が51%であり、補正値においても補強効率が大幅に向上していることが解った。
以上の結果より、本実施形態に係る既設コンクリート構造物の補強方法によれば、炭素繊維格子筋10の上下の端部筋11a,11bの補強を行ったことによって、端部筋11a,11bが外側にはらむのを防止できる。これによって、モルタルの大規模な剥離を防止することができ、炭素繊維格子筋10を既設コンクリート構造物1に確実に定着させることができるので、炭素繊維格子筋10の強度を有効に利用して、破壊終局荷重の値を高めることができるとともに、破壊終局荷重に至った場合であっても、耐震上好ましくないせん断破壊を回避することができる。
そして、既設コンクリート構造物1のコンクリート強度が前記実験のコンクリート強度よりも高い場合には、破壊終局荷重の値が高くなり、補強効率がより一層高くなる。
また、本実施形態では、補剛材20を、端部筋11a,11bに結束線22やテープ状炭素繊維製シートなどの線状部材で巻き付けて固定しているので、簡単な施工で、補剛材20,20をその全長に亘って端部筋11a,11bに固定することができる。
さらに、本実施形態では、補剛材20,20が、二本の鉄筋(棒材)を炭素繊維格子筋10の表面に沿って並列して構成されているので、炭素繊維格子筋10の表面から外側への突出寸法を小さくすることができ、モルタル30の吹付けまたは塗付け量を軽減することができ、補強構造物の軽量化が図れる。特に、本実施の形態のように、鉄筋21を補剛材20として用いた場合には、鉄筋21の外側面から所定の被り厚が必要となるため、補剛材20の突出寸法を小さくできることの効果が大きい。
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、補剛材20として鉄筋21を利用しているが、補剛材20を構成する棒材は、鉄筋21に限定されるものではなく、必要以上のせん断強度を有していれば、例えば、ステンレス製やアルミニウム製のものであってもよい。このように鉄筋21以外のものを利用すれば、モルタル30の被り厚が規制されないので、モルタル30の厚さを薄くすることができる。また、補剛材20は、棒材に限定されるものではなく、プレート状の材料であってもよい。
また、前記実施形態では、強化繊維格子筋として炭素繊維格子筋10を用いた例を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、ガラス繊維を格子状に積層成形することで構成されるガラス繊維格子筋であってもよい。
さらに、本実施形態では、炭素繊維格子筋10(強化繊維格子筋)を、水平方向に延出する既設コンクリート構造物である梁の側面に布設して補強する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、柱などの鉛直方向に延出する既設コンクリート構造物であっても、補強することが可能である。この場合、強化繊維格子筋の水平方向に互いに対向する端部筋(上下方向に延びる端部筋)に、棒状の補剛材を沿わせて固定するようにする。このようにすることで、地震時の水平力に対して効率的にせん断補強を行うことができる。
本発明に係る既設コンクリート構造物の補強方法によって補強された補強構造物を示した斜視図である。 本発明に係る既設コンクリート構造物の補強方法によって補強された補強構造物を示した図であって、(a)は正面図、(b)は断面図である。 各試験体を示した正面図および断面図であって、(a)は試験体A,(b)は試験体B、(c)は試験体Cをそれぞれ示す。 各試験体のひび割れ状況を示した正面図であって、(a)は試験体A,(b)は試験体B、(c)は試験体Cをそれぞれ示す。 試験体Bのモルタルの剥離状況を示した正面図である。
符号の説明
1 既設コンクリート構造物
10 炭素繊維格子筋(強化繊維格子筋)
11a 端部筋
11b 端部筋
20 補剛材
21 鉄筋(棒材)
22 結束線(線状部材)
30 モルタル

Claims (4)

  1. 炭素繊維またはガラス繊維を格子状に積層成形してなる強化繊維格子筋を既設コンクリート構造物の表面に布設した後に、モルタルを吹き付けまたは塗り付けて増厚する既設コンクリート構造物の補強方法において、
    前記強化繊維格子筋は、前記既設コンクリート構造物に沿って矩形状に形成されており、
    前記強化繊維格子筋の互いに対向する端部筋に、この端部筋を補剛する棒状の補剛材を沿わせて固定した後に、前記強化繊維格子筋を前記既設コンクリート構造物の表面に布設する
    ことを特徴とする既設コンクリート構造物の補強方法。
  2. 炭素繊維またはガラス繊維を格子状に積層成形してなる強化繊維格子筋を水平方向に延出する既設コンクリート構造物の側表面に布設した後に、モルタルを吹き付けまたは塗り付けて増厚する既設コンクリート構造物の補強方法において、
    前記強化繊維格子筋は、前記既設コンクリート構造物に沿って矩形状に形成されており、
    前記強化繊維格子筋の上下方向で互いに対向する端部筋に、この端部筋を補剛する棒状の補剛材を沿わせて固定した後に、前記強化繊維格子筋を前記既設コンクリート構造物の側表面に布設する
    ことを特徴とする既設コンクリート構造物の補強方法。
  3. 前記補剛材は、前記端部筋に線状部材で巻き付けられて固定されている
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既設コンクリート構造物の補強方法。
  4. 前記補剛材は、複数の棒材を前記強化繊維格子筋の表面に沿って並列して構成されている
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の既設コンクリート構造物の補強方法。
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