JP2009280872A - 被膜形成方法および該方法で被膜を形成した摺動部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】エアロゾルデポジション(AD)法において簡易な手段でチャンバー内の排気流の影響を低減して成膜効率の向上を図れる被膜形成方法、および該方法で被膜を形成した摺動部材を提供する。
【解決手段】微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル形成工程と、排気口6を介して真空ポンプにより連続的に排気されている真空チャンバー2内で、矩形の吐出口を有するエアロゾル吐出ノズル3からエアロゾルを基材4の表面上に吐出して被膜を形成する成膜工程とを備えてなる、AD法による被膜形成方法であって、上記成膜工程において、エアロゾル吐出ノズル3の吐出口の長寸3aと、真空チャンバー2の排気方向6aとの相対角度αを 80°以上 90°以下にして被膜を形成する。
【選択図】図2
【解決手段】微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル形成工程と、排気口6を介して真空ポンプにより連続的に排気されている真空チャンバー2内で、矩形の吐出口を有するエアロゾル吐出ノズル3からエアロゾルを基材4の表面上に吐出して被膜を形成する成膜工程とを備えてなる、AD法による被膜形成方法であって、上記成膜工程において、エアロゾル吐出ノズル3の吐出口の長寸3aと、真空チャンバー2の排気方向6aとの相対角度αを 80°以上 90°以下にして被膜を形成する。
【選択図】図2
Description
本発明は、エアロゾルデポジション(以下、ADと記す)法において、チャンバー内の排気方向を考慮して被膜を形成する被膜形成方法および該方法で被膜を形成した摺動部材に関する。
基板上の膜の形成方法として、微粒子ビーム堆積法あるいはAD法と呼ばれる脆性材料の膜や構造物の形成方法がある。AD法は、真空ポンプにより排気されたチャンバー内で、脆性材料の微粒子を含むエアロゾルをノズルから基板に向けて吐出し、基板に微粒子を衝突させて、その機械的衝撃力を利用して脆性材料の多結晶構造物を基板上にダイレクトに形成する方法である(例えば、特許文献1参照)。
従来、AD法におけるノズル先端部形状についてはエアロゾル流を均一化させる目的で、被膜形成対象物の形状に応じて、例えば、エアロゾルを噴射させるための矩形の吐出開口の長辺方向を拡大し、かつ吐出開口から吐出されるエアロゾル濃度が均一になるように、エアロゾルが通過するエアロゾル通過空間を有するノズル本体の内部形状を工夫することによって、均一な膜厚の構造物を短時間で作製する方法が知られている(特許文献2参照)。
従来、AD法におけるノズル先端部形状についてはエアロゾル流を均一化させる目的で、被膜形成対象物の形状に応じて、例えば、エアロゾルを噴射させるための矩形の吐出開口の長辺方向を拡大し、かつ吐出開口から吐出されるエアロゾル濃度が均一になるように、エアロゾルが通過するエアロゾル通過空間を有するノズル本体の内部形状を工夫することによって、均一な膜厚の構造物を短時間で作製する方法が知られている(特許文献2参照)。
AD法では、真空ポンプの排気能力の大小でチャンバー内の減圧度が左右され、ノズル吐出口より吐出されるエアロゾル流の速度が変化する。また、チャンバー内の排気口の位置によっては、ノズルから吐出したエアロゾルの流れが、排気流の影響を受けて乱され、成膜効率が低下するという問題がある。
この問題に対して、排気口の位置に関わらず、チャンバー内の排気流による影響を避けるため、チャンバー(成膜室)内にエアロゾル噴射流の側方を覆う遮蔽部材を設けたものが知られている(特許文献3参照)。
この問題に対して、排気口の位置に関わらず、チャンバー内の排気流による影響を避けるため、チャンバー(成膜室)内にエアロゾル噴射流の側方を覆う遮蔽部材を設けたものが知られている(特許文献3参照)。
AD法において大面積を成膜する場合には、特許文献2に示すような矩形ノズルにおいて、ノズルの吐出開口(吐出口)の寸法を広く取ったノズルを使用する。例えば、吐出口寸法をa×bとしたとき、a:0.2〜2.0 mm b:5〜50 mm 程度のノズルを使用する。
このような矩形ノズルを用いる場合、上記排気流の影響を受けやすく、成膜対象である基材において、ノズルの矩形両端部で被膜の膜厚が不均一になるなどの問題が発生しやすい。
また、上記特許文献3のように遮蔽部材を設けるものでは、チャンバー内に所定の形状で該部材を別途設置する必要があり、装置および製造コストが高くなる。このため、矩形ノズルを用いる場合において、より簡易な手段で、装置内でのエアロゾルの流れに乱れが生じにくい被膜形成方法の開発が期待される。
特開平11−21677号公報
特開2003−247080号公報
特開2007−84925号公報
このような矩形ノズルを用いる場合、上記排気流の影響を受けやすく、成膜対象である基材において、ノズルの矩形両端部で被膜の膜厚が不均一になるなどの問題が発生しやすい。
また、上記特許文献3のように遮蔽部材を設けるものでは、チャンバー内に所定の形状で該部材を別途設置する必要があり、装置および製造コストが高くなる。このため、矩形ノズルを用いる場合において、より簡易な手段で、装置内でのエアロゾルの流れに乱れが生じにくい被膜形成方法の開発が期待される。
本発明はこのような問題に対処するためになされたもので、AD法において簡易な手段でチャンバー内の排気流の影響を低減して成膜効率の向上を図れる被膜形成方法、および該方法で被膜を形成した摺動部材を提供することを目的とする。
本発明の被膜形成方法は、微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル形成工程と、真空ポンプにより連続的に排気されている真空チャンバー内で、矩形もしくは矩形に準じる形状の吐出口を有するエアロゾル吐出ノズルから上記エアロゾルを基材表面上に吐出して被膜を形成する成膜工程とを備えてなる、エアロゾルデポジション法による被膜形成方法であって、上記成膜工程において、上記エアロゾル吐出ノズルの吐出口の長寸方向と、真空チャンバーの排気方向との相対角度を 80°以上 90°以下にして被膜を形成することを特徴とする。また、上記吐出口のアスペクト比が 2 以上 30 以下であることを特徴とする。
真空チャンバーの「排気方向」とは、排気口断面中央と基材成膜面中央とを繋ぐ方向である。ここで、「排気口断面中央」とは、上記真空チャンバーに設けられた真空ポンプと繋がっている排気口の垂直断面の中央である。また、「基材成膜面中央」とは、任意の瞬間にエアロゾル吐出ノズルから吐出したエアロゾル流が基材表面に衝突している部分を瞬間成膜面(基材表面の一部分)としたときの、該瞬間成膜面の中央である。
上記エアロゾル吐出ノズルと上記基材とが所定の距離を保ちつつ相対移動して被膜を形成することを特徴とする。また、上記相対移動の方向がノズル吐出口の短寸方向と同じ方向であることを特徴とする。
上記微粒子がセラミックス微粒子であることを特徴とする。特に、上記セラミックス微粒子がアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニアを含む微粒子であることを特徴とする。
また、上記セラミックス微粒子は、粒子径 0.1μm 以上 1μm 以下の粉末であることを特徴とする。
また、上記セラミックス微粒子の吐出速度が 300〜1000 m/sec であることを特徴とする。
また、上記セラミックス微粒子は、粒子径 0.1μm 以上 1μm 以下の粉末であることを特徴とする。
また、上記セラミックス微粒子の吐出速度が 300〜1000 m/sec であることを特徴とする。
本発明の摺動部材は、平板または円筒体からなる摺動部材であって、該摺動部材は軟鋼、軸受鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼またはセラミックスのいずれかの基材表面に上記被膜形成方法で被膜を形成したことを特徴とする。
また、上記平板は、すべり板、ブレーキパッドであり、上記円筒体は、軸受のころ、外輪、内輪であることを特徴とする。
また、上記平板は、すべり板、ブレーキパッドであり、上記円筒体は、軸受のころ、外輪、内輪であることを特徴とする。
本発明の被膜形成方法は、エアロゾル吐出ノズルの吐出口の長寸方向と、真空チャンバーの排気方向との相対角度αを 80°以上 90°以下にして被膜を形成するので、ノズルの吐出口の長寸両端において、成膜に寄与するエアロゾル中の粒子濃度がほぼ等しくなり、基材表面に均一なセラミックス被膜を形成することができる。また、上記排気方向を考慮してノズルおよび基材を設置することで均一なセラミックス被膜が得られるので、簡易で低コストである。
本発明の摺動部材は、平板または円筒体からなる摺動部材であって、該摺動部材は軟鋼、軸受鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼またはセラミックスのいずれかの基材表面に上記被膜形成方法で形成した被膜を有するので、基材の表面硬度、表面の緻密性等の物性を向上させることができる。
本発明の被膜形成方法に用いる被膜形成装置の構成例を図1および図2に基づいて説明する。図1は基材として平板に被膜を形成する場合の構成を示す図である。図2は図1のB部分の拡大模式平面図である。
図1に示すように、AD法による被膜形成装置1は、エアロゾル発生装置10と、真空チャンバー2とを有する。真空チャンバー2内には、平板である基材4と、エアロゾル吐出ノズル3とが配設されている。基材4は、位置決め用XYテーブル5に取り付けられている。真空チャンバー2外には、排気口6を介して真空ポンプ8が設けられ、真空ポンプ8によりエアロゾル発生装置10および真空チャンバー2は減圧に保たれる。微粒子フィルター7は真空ポンプ8へのセラミックス微粒子の侵入防止のために設けられている。
内部にセラミックス微粒子を有するエアロゾル発生装置10は、外部にガス供給設備9を備え、ガス供給設備9から供給される搬送ガスによってセラミックス微粒子と搬送ガスとからなるエアロゾルを形成する。このエアロゾルは、搬送ガスの流れと真空ポンプ8の吸引とにより真空チャンバー2内のエアロゾル吐出ノズル3に供給される。エアロゾルの搬送ガスとしては、不活性ガスや乾燥空気を使用することができる。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム等が挙げられる。乾燥空気は、露点−40℃程度に除湿処理を施したものを用いることが好ましい。
図1に示すように、AD法による被膜形成装置1は、エアロゾル発生装置10と、真空チャンバー2とを有する。真空チャンバー2内には、平板である基材4と、エアロゾル吐出ノズル3とが配設されている。基材4は、位置決め用XYテーブル5に取り付けられている。真空チャンバー2外には、排気口6を介して真空ポンプ8が設けられ、真空ポンプ8によりエアロゾル発生装置10および真空チャンバー2は減圧に保たれる。微粒子フィルター7は真空ポンプ8へのセラミックス微粒子の侵入防止のために設けられている。
内部にセラミックス微粒子を有するエアロゾル発生装置10は、外部にガス供給設備9を備え、ガス供給設備9から供給される搬送ガスによってセラミックス微粒子と搬送ガスとからなるエアロゾルを形成する。このエアロゾルは、搬送ガスの流れと真空ポンプ8の吸引とにより真空チャンバー2内のエアロゾル吐出ノズル3に供給される。エアロゾルの搬送ガスとしては、不活性ガスや乾燥空気を使用することができる。不活性ガスとしては、アルゴン、窒素、ヘリウム等が挙げられる。乾燥空気は、露点−40℃程度に除湿処理を施したものを用いることが好ましい。
図2に示すように、エアロゾル吐出ノズル3は、互いに対向する2つの長寸3aと、互いに対向する2つの短寸3bとを有する矩形状の吐出口を有する。なお、エアロゾル吐出ノズル3の吐出口は、楕円、菱形、長円のような矩形に準じる形状であってもよい。
エアロゾル吐出ノズル3の吐出口は、ノズルの長寸側寸法を一定としたとき、アスペクト比が 2 以上 30 以下であることが好ましい。アスペクト比が 2 未満の場合にはノズル吐出口面積が大きくなり、ノズルより吐出するエアロゾルの吐出速度が成膜に最適な速度に達しないため、十分な成膜速度が得られない。アスペクト比が 30 をこえるとノズル吐出口で生じる抵抗が大きすぎるため、吐出エアロゾル流量が小さくなる。そのため、単位時間当たりにノズルより吐出するエアロゾル中に含まれるセラミックス粉末量が少なくなり、成膜に必要なエアロゾル濃度が得られないため、好ましくない。
上記アスペクト比を 2 以上 30 以下の範囲に保ちつつ、被膜形成対象物のサイズに合わせて、長寸は 5〜50 mm、短寸は 0.2〜2.0 mm の範囲とすることが好ましい。
エアロゾル吐出ノズル3の吐出口は、ノズルの長寸側寸法を一定としたとき、アスペクト比が 2 以上 30 以下であることが好ましい。アスペクト比が 2 未満の場合にはノズル吐出口面積が大きくなり、ノズルより吐出するエアロゾルの吐出速度が成膜に最適な速度に達しないため、十分な成膜速度が得られない。アスペクト比が 30 をこえるとノズル吐出口で生じる抵抗が大きすぎるため、吐出エアロゾル流量が小さくなる。そのため、単位時間当たりにノズルより吐出するエアロゾル中に含まれるセラミックス粉末量が少なくなり、成膜に必要なエアロゾル濃度が得られないため、好ましくない。
上記アスペクト比を 2 以上 30 以下の範囲に保ちつつ、被膜形成対象物のサイズに合わせて、長寸は 5〜50 mm、短寸は 0.2〜2.0 mm の範囲とすることが好ましい。
本発明の被膜形成方法を図1〜図4に基づいて説明する。
平板基材4を、位置決め用XYテーブル5に取り付け、セラミックス微粒子の所定量をエアロゾル発生装置10に投入する。真空ポンプ8を起動して真空チャンバー2の排気口6から内部気体を排出し、真空チャンバー2およびエアロゾル発生装置10の内部を所定の減圧にする。ガス供給設備9から搬送ガスをエアロゾル発生装置10に供給し、セラミックス微粒子と搬送ガスとからなるエアロゾルを発生させる。このエアロゾルを、搬送ガスの流れおよび真空ポンプ8の吸引によって真空チャンバー2に供給し、基材4を位置決め用XYテーブル5により移動させながら、固定したエアロゾル吐出ノズル3からエアロゾルを吐出させ基材4に衝突させる。このときエアロゾル吐出ノズル3と基材4とは所定の距離一定に保たれる。
なお、図1において基材が円筒体である場合には、XYテーブル上に基材回転モータを取り付け、XYテーブルを動かすことで基材回転モータに取り付けた円筒体を所定の位置に移動させ、円筒体を回転させながら、被膜を形成する。下記の図2および図3は円筒体の直径が平板の基材幅に相当する投影図でもある。
平板基材4を、位置決め用XYテーブル5に取り付け、セラミックス微粒子の所定量をエアロゾル発生装置10に投入する。真空ポンプ8を起動して真空チャンバー2の排気口6から内部気体を排出し、真空チャンバー2およびエアロゾル発生装置10の内部を所定の減圧にする。ガス供給設備9から搬送ガスをエアロゾル発生装置10に供給し、セラミックス微粒子と搬送ガスとからなるエアロゾルを発生させる。このエアロゾルを、搬送ガスの流れおよび真空ポンプ8の吸引によって真空チャンバー2に供給し、基材4を位置決め用XYテーブル5により移動させながら、固定したエアロゾル吐出ノズル3からエアロゾルを吐出させ基材4に衝突させる。このときエアロゾル吐出ノズル3と基材4とは所定の距離一定に保たれる。
なお、図1において基材が円筒体である場合には、XYテーブル上に基材回転モータを取り付け、XYテーブルを動かすことで基材回転モータに取り付けた円筒体を所定の位置に移動させ、円筒体を回転させながら、被膜を形成する。下記の図2および図3は円筒体の直径が平板の基材幅に相当する投影図でもある。
図2に示すように、排気口断面中央Pと基材成膜面中央Wとを結ぶ直線PWと、基材成膜面中央Wを通り長寸3aに平行な直線3cとの成す相対角度αを所定の角度に保ちつつ、基材4を移動させ(図中C方向)ながら、固定したエアロゾル吐出ノズル3からエアロゾルを吐出させ、基材4にセラミックス微粒子を衝突させ被膜を形成する。このときエアロゾル吐出ノズル3が固定されているので、基材成膜面中央Wの位置、排気方向6aの方向および相対角度αが、それぞれ固定された状態で基材4に成膜できる。
また、図3に示すように基材4を固定してエアロゾル吐出ノズル3を移動させてもよい(図中D方向)。この場合、基材成膜面中央WはW0 の位置からW1 の位置まで移動し、排気方向6aは6a0 から6a1 まで変化し、それに伴い上記相対角度αはα0やα1 に変化する。
本発明の被膜形成方法において成膜量に及ぼす、エアロゾル吐出ノズルの吐出口の長寸方向とエアロゾル排気方向との相対角度の関係について図4(a)および図4(b)を用いて説明する。図4(a)は相対角度αが 90°の場合、図4(b)は相対角度αが 0°の場合の平面を示す模式図である。
図4(a)の相対角度αが 90°の場合、ノズル3の吐出口の長寸3a両端から排気口断面中央Pまでの距離が略等しくなる。よって、ノズル3の吐出口の短寸3b側に対応して移動する基材の幅方向両端面4a、4bにおいて、吐出されるエアロゾルのうち、排気口6に吸引される量が略等しくなるので、基材4の幅方向両端面4a、4bにおいて衝突する微粒子の量も略等しくなり、形成される被膜の膜厚差を小さくすることができる。相対角度αが 80°以上であれば、同様の効果が得られる。
図4(a)の相対角度αが 90°の場合、ノズル3の吐出口の長寸3a両端から排気口断面中央Pまでの距離が略等しくなる。よって、ノズル3の吐出口の短寸3b側に対応して移動する基材の幅方向両端面4a、4bにおいて、吐出されるエアロゾルのうち、排気口6に吸引される量が略等しくなるので、基材4の幅方向両端面4a、4bにおいて衝突する微粒子の量も略等しくなり、形成される被膜の膜厚差を小さくすることができる。相対角度αが 80°以上であれば、同様の効果が得られる。
図4(b)の相対角度αが 0°の場合、ノズル3の吐出口の長寸3a両端から排気口6までの距離が異なる。よって、ノズル3の吐出口の短寸3b側に対応して移動する基材の幅方向両端面4a、4bにおいて、吐出されるエアロゾルのうち、排気口6に近い4aでは排気口6に吸引される量が大となり、排気口6に遠い4bでは排気口6に吸引される量が小となり、成膜に寄与する微粒子の量が不均一となるため、基材4の幅方向両端面4a、4bにおいて形成される被膜の膜厚差が大きくなる。
これらのことから、図2および図3において、相対角度αを80°以上 90°以下に制御することによって、後述の実施例に示すように、形成される被膜の膜厚差を十分に小さくすることができる。
本発明の被膜形成方法においてエアロゾルの吐出は、微粒子の速度が 300〜1000 m/sec になるように設定することが好ましい。300 m/sec 未満の場合には衝突速度が遅くなり、セラミックス粒子が基材上に堆積し、成膜しない。1000 m/sec をこえる場合にはエアロゾルの衝突速度が速くなり、基材がエッチングされ成膜しない。
本発明の被膜形成方法において使用できる微粒子としては被膜形成可能なものであればよく、主にセラミックス微粒子が挙げられる。セラミックス微粒子としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア等の酸化物、炭化珪素、窒化珪素等の微粒子が挙げられる。これらの中で、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニアを含む微粒子であることが好ましい。
セラミックス微粒子以外でも、シリコン、ゲルマニウムなどのへき開性の強い脆性材料の微粒子を使用することも可能である。
セラミックス微粒子以外でも、シリコン、ゲルマニウムなどのへき開性の強い脆性材料の微粒子を使用することも可能である。
本発明において使用するセラミックス微粒子は、平均粒子径 0.1μm 以上 1μm 以下の粉末であることが好ましい。0.1μm 未満では凝集しやすくエアロゾル化は困難であり、1μm をこえるとAD法での膜形成は困難となる。
また、被膜形成を良好に行なうため、基材への衝突時に微粒子が容易に粉砕するように、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて微粒子にクラックを予め形成しておくことが好ましい。
また、被膜形成を良好に行なうため、基材への衝突時に微粒子が容易に粉砕するように、ボールミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて微粒子にクラックを予め形成しておくことが好ましい。
本発明の摺動部材は、平板または円筒体からなる摺動部材であって、該摺動部材は軟鋼、軸受鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼またはセラミックスのいずれかの表面に耐食性向上、表面硬度向上、表面の緻密性向上等の表面物性向上を目的として上記方法で被膜を形成したものである。
上記平板はすべり板、ブレーキパッド、軸受外輪等に用いることができ、上記円筒体は軸受のころ、外輪、内輪等に用いることができる。
上記平板はすべり板、ブレーキパッド、軸受外輪等に用いることができ、上記円筒体は軸受のころ、外輪、内輪等に用いることができる。
実施例1〜実施例2および比較例1〜比較例5
図1に示す被膜形成装置1において、基材平面上にAD法でアルミナ被膜を形成した。まず、エアロゾル発生装置10にアルミナ微粒子(住友化学社製:AKP−50、平均粒子径 0.2μm )100 g を仕込み、真空ポンプ8を起動して、エアロゾル搬送ガスとして、乾燥空気(露点−40℃)をエアロゾル発生装置10に導入した。減圧条件は 100 Pa とした。
次に、エアロゾル発生装置10にてアルミナ微粒子と搬送ガスとからなるエアロゾルを発生させ、これを搬送ガスの流れと真空ポンプ8の吸引とにより真空チャンバー2に供給して、エアロゾル吐出ノズル3(ノズル吐出口寸法 10 mm×1.0 mm の矩形ノズル)からエアロゾルを 500 m/sec で噴射させ、基材の平板(幅 30 mm×長さ 30 mm×高さ 2 mm)平面上にノズル吐出口長寸3aとチャンバー排気方向6aとの角度αを表1に示す角度にて、目標膜厚 10μm として噴射してアルミナ被膜を形成した。
図1に示す被膜形成装置1において、基材平面上にAD法でアルミナ被膜を形成した。まず、エアロゾル発生装置10にアルミナ微粒子(住友化学社製:AKP−50、平均粒子径 0.2μm )100 g を仕込み、真空ポンプ8を起動して、エアロゾル搬送ガスとして、乾燥空気(露点−40℃)をエアロゾル発生装置10に導入した。減圧条件は 100 Pa とした。
次に、エアロゾル発生装置10にてアルミナ微粒子と搬送ガスとからなるエアロゾルを発生させ、これを搬送ガスの流れと真空ポンプ8の吸引とにより真空チャンバー2に供給して、エアロゾル吐出ノズル3(ノズル吐出口寸法 10 mm×1.0 mm の矩形ノズル)からエアロゾルを 500 m/sec で噴射させ、基材の平板(幅 30 mm×長さ 30 mm×高さ 2 mm)平面上にノズル吐出口長寸3aとチャンバー排気方向6aとの角度αを表1に示す角度にて、目標膜厚 10μm として噴射してアルミナ被膜を形成した。
得られた被膜について基材平板の幅方向両端の膜厚差を測定した。この膜厚差が目標膜厚の 5%未満であるものを膜厚差が小さく均一性に優れた被膜であるとして「○」を、膜厚差が 5〜20%であるものを膜厚差がやや大きい被膜であるとして「△」を、膜厚差が 20%をこえるものを膜厚差が大きく均一性に劣る被膜であるとして「×」を、それぞれ表1に併記する。
ノズル吐出口長寸3aとチャンバー排気方向6aとの相対角度αが 80°、90°である実施例1および実施例2において、基材幅方向両端面における膜厚差の小さい優れた被膜を形成することが認められた。
本発明の被膜形成方法は、AD法において簡易な方法で膜厚差の小さい優れた被膜を形成できるので、各種産業部品等へのセラミックス被膜形成に好適に利用できる。
1 被膜形成装置
2 真空チャンバー
3 エアロゾル吐出ノズル
4 基材
5 XYテーブル
6 排気口
7 微粒子フィルター
8 真空ポンプ
9 ガス供給設備
10 エアロゾル発生装置
2 真空チャンバー
3 エアロゾル吐出ノズル
4 基材
5 XYテーブル
6 排気口
7 微粒子フィルター
8 真空ポンプ
9 ガス供給設備
10 エアロゾル発生装置
Claims (11)
- 微粒子をガス中に分散させてエアロゾルを形成するエアロゾル形成工程と、真空ポンプにより連続的に排気されている真空チャンバー内で、矩形もしくは矩形に準じる形状の吐出口を有するエアロゾル吐出ノズルから前記エアロゾルを基材表面上に吐出して被膜を形成する成膜工程とを備えてなる、エアロゾルデポジション法による被膜形成方法であって、
前記成膜工程において、前記エアロゾル吐出ノズルの吐出口の長寸方向と、真空チャンバーの排気方向との相対角度を 80°以上 90°以下にして被膜を形成することを特徴とする被膜形成方法。 - 前記吐出口のアスペクト比が 2 以上 30 以下であることを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。
- 前記エアロゾル吐出ノズルと前記基材とが所定の距離を保ちつつ相対移動して被膜を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載の被膜形成方法。
- 前記相対移動の方向がノズル吐出口の短寸方向と同じ方向であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3項記載の被膜形成方法。
- 前記微粒子がセラミックス微粒子であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項項記載の被膜形成方法。
- 前記セラミックス微粒子がアルミナ、窒化珪素、炭化珪素、ジルコニアを含む微粒子であることを特徴とする請求項5記載の被膜形成方法。
- 前記セラミックス微粒子は、粒子径 0.1μm 以上 1μm 以下の粉末であることを特徴とする請求項5または請求項6記載の被膜形成方法。
- 前記微粒子の吐出速度が 300〜1000 m/sec であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の被膜形成方法。
- 平板または円筒体からなる摺動部材であって、該摺動部材は軟鋼、軸受鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼またはセラミックスのいずれかの基材表面に請求項1ないし請求項8のいずれか一項記載の方法で被膜を形成したことを特徴とする摺動部材。
- 前記平板は、すべり板、ブレーキパッドであることを特徴とする請求項9記載の摺動部材。
- 前記円筒体は、軸受のころ、外輪、内輪であることを特徴とする請求項9記載の摺動部材。
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