JP5190766B2 - 複合構造物形成装置および複合構造物の形成方法 - Google Patents
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しかしながら、より多くの凝集粉を除去して欠陥の発生率を低減させ良品率を高めるためにさらなる改善が望まれていた。
特許文献3〜5に開示がされた技術を用いれば、複合構造物の形成に寄与しなかった微粒子を回収することで間接的に凝集粉の付着または堆積を抑制することができる。しかしながら、凝集粉の付着や堆積の抑制としては効果が充分ではなくさらなる改善が望まれていた。
図1は、本発明の実施の形態に係る複合構造物形成装置を例示するための模式断面図である。尚、図1(a)は基材の一端側に複合構造物を形成している状態を表し、図1(b)は基材の他端側に複合構造物を形成している状態を表している。
図2は、図1(a)におけるA−A矢視断面図である。
形成室2は、大気圧よりも低い減圧雰囲気を維持可能であり、また、その内部には噴射手段3、保持走査機構5、整流手段11が配設されている。
噴射手段3は、エアロゾルを基材4に向けて噴射させるためのものであり、その一端には噴射口が設けられている。また、噴射手段3の他端(供給口)にはエアロゾル搬送管8の一端が接続され、エアロゾル搬送管8の他端はエアロゾル生成手段7に接続されている。
噴射手段3の配設数には特に限定はない。そのため、噴射手段3を1つだけ配設することもできるし、複数の噴射手段3を配設することもできる。この場合、基材4の大きさ(複合構造物を形成させる面積)や形成時間などを考慮してその数を決定することができる。
そのため、保持走査機構5により基材4を適宜走査しつつエアロゾルを吹き付けることで、噴射手段3から噴射されるエアロゾルのビームサイズよりも大面積の被処理面上に複合構造物を形成させることができる。
エアロゾル生成手段7は、内部に原料の微粒子を収納する図示しない収納部を備えている。また、エアロゾル生成手段7とガス供給手段9(例えば、ガスボンベなど)とがガス配管10を介して接続されている。そして、ガス供給手段9から供給されたガスと原料の微粒子とが混合されることでエアロゾルが生成されるようになっている。ここで、エアロゾル生成手段7に収納される原料の微粒子を例示するものとすれば、例えば、平均粒径が0.1〜5μm程度のセラミック微粒子とすることができる。
筒状を呈する吸引部11bの一端には開口部が設けられている。そして、エアロゾルを吸引する吸引部11bは、開口部をエアロゾルに向けるようにしてエアロゾルの到達点近傍に設けられている。また、吸引部11bの他端は、配管13aを介して排気手段13と接続されている。
尚、吸引部11bと排気手段13との間に図示しない微粒子回収手段を設けるようにすることもできる。図示しない微粒子回収手段は、固気分離を可能とするものであれば特に限定されるものではない。例えば、サイクロン、細孔フィルタなどとすることができる。 整流構造体11aは、エアロゾルの主流F(被処理面に沿って流れるエアロゾルの流れ)に対して略平行となるように設けられている。
また、噴射手段3から噴射されたエアロゾルが基材4上を通過するまでの間の領域において、少なくとも被処理面(基材4における構造物が形成される部位が構成する面)に対して略平行となるようにすることができる。すなわち、整流構造体11aは、被処理面に対して略平行に設けられるようにすることができる。
図3〜図6は、整流構造体の断面形状を例示するための模式断面図である。尚、各図とも図1(a)におけるB−B矢視方向から見た図である。
例えば、図4に示すように、基材4の被処理面に対して略垂直な部分12aを備える整流構造体11a2とすることができる。また、図5に示すように、基材4の被処理面に対して交差する方向に角度を有する部分12bを曲線で構成した整流構造体11a3とすることもできる。
また、表1は図7における各点の値を抜き出したものである。
基材4の被処理面に対する整流構造体11aの配設位置と、凝集粉の堆積量との関係は以下の条件で実験を行うことにより求めた。
図1に例示をした複合構造物形成装置1において噴射手段3の数を4つとし、基材4として500mm×500mmの青板ガラス基材を用いた。また、整流構造体11aは、断面形状が矩形の平板とした。そして、整流構造体11aを基材4の被処理面と平行に配設した。
原料の微粒子はイットリア微粒子とし、その平均粒径を0.5μmとした。また、ガス供給手段9から供給されるガス(搬送ガス)は高純度窒素ガスとし、各噴射手段3に対して10L/minの流量を供給するようにした。
また、基材4の被処理面と整流構造体11aとの間の寸法は、255mm、100mm、70mm、50mm、30mm、20mm、10mm、7mmとした。
このエアロゾルの噴射後、基材4上に堆積した凝集粉(複合構造物の形成に寄与しなかった微粒子)を集めて、その重量を堆積量として計測するようにした。
ここで、凝集粉(複合構造物の形成に寄与しなかった微粒子)は膜状構造物を形成させる際にマスクとなり膜状構造物の形成が阻害され得るので、余り多くたまると欠陥が発生するおそれがある。この場合、本発明者の得た知見によれば、凝集粉の堆積量が16gfを超えると欠陥の発生率が増加するおそれがある。
図7および表1から分かるように、基材4の被処理面と整流構造体11aとの間の寸法を70mm以下とすれば、堆積量を16gf以下とすることができるので、欠陥の発生を抑制することができる。そのため、基材の被処理面と整流構造体との間の寸法は70mm以下とすることが好ましい。また、50mm以下とすればさらに欠陥の発生を低減させることができるのでより好ましく、20mm以下とすることがさらに好ましい。
また、表2は図8における各点の値を抜き出したものである。
この場合、実験条件は図7で説明をしたものと同様とした。また、基材4上の空間を一様に流れるエアロゾルに関して、流束をそれぞれ計算により求めるようにした。
すなわち、流束は、基材4の被処理面(基材4の表面が形成する面)と整流構造体の表面との間に形成される空間におけるエアロゾルの主流に対して直交する方向の断面の面積と、単数あるいは複数の噴射手段3から噴射されるエアロゾルの総流量とから計算により求めるようにした。
尚、基材4の平面形状は矩形のほか、円形など様々であるが、両端部が空間的に開放されている場合には前述の計算方法を適用して断面積を計算することができる。また、小型の基材を保持部5aに複数並べて保持させた場合も同様である。
また、流束の計算においては、25℃、1atmの場合におけるガス流量を用いるものとしている。
具体的な計算結果を例示するものとすれば、基材4の被処理面と整流構造体11aとの間の寸法が255mmの場合は流束は0.003cc/(min・mm2)、100mmの場合は0.008cc/(min・mm2)、70mmの場合は0.011cc/(min・mm2)、50mmの場合は0.016cc/(min・mm2)、30mmの場合は0.027cc/(min・mm2)、20mmの場合は0.040cc/(min・mm2)、10mmの場合は0.080cc/(min・mm2)、7mmの場合は0.114cc/(min・mm2)となる。
図8および表2から分かるように、流束を0.011cc/(min・mm2)以上とすれば、堆積量を16gf以下にすることができる。その結果、前述したように欠陥の発生を抑制することができる。そのため、エアロゾルの流束を0.011cc/(min・mm2)以上とすることが好ましい。また、0.016cc/(min・mm2)以上とすればさらに欠陥の発生を低減させることができるのでより好ましく、0.040cc/(min・mm2)以上とすることがさらに好ましい。
複合構造物が形成された基材4は、図示しない搬入搬出手段により形成室2の外部に搬出される。そして、必要に応じて次の基材4が搬入され、前述の手順を繰り返すことで複合構造物の形成が続行される。
また、本実施の形態においては、形成室2aの内壁のうち基材4の被処理面に対向する側の内壁が整流構造体21aとなっている。また、エアロゾルの到達点側であって、整流構造体21aとなる内壁に略直交する内壁には吸引部21bが開口するようにして設けられている。また、整流構造体21aとなる内壁には所定の噴射角度α1を有する噴射手段3aが開口するようにして設けられている。また、吸引部21bには、配管13aを介して排気手段13が接続されている。また、保持部5aを鉛直方向に移動可能として整流構造体21aと基材4の被処理面との間の寸法が所定の値となるように調整することができるようになっている。
噴射手段3aはエアロゾル搬送管8を介してエアロゾル生成手段7に接続されている。また、図1において例示をしたものと同様に噴射角度αが10°以上となるようになっている。また、噴射手段3aの噴射口(内壁の開口)から基材4の被処理面上の衝突点までの寸法L1が100mm以下となるようになっている。
本実施の形態によれば、複合構造物形成装置1aのコンパクト化、簡素化を図ることができる。
保持部5aには、図1などに例示をした大きな基材4を1枚保持させることもできるが、図10に示すように小さな基材4aを複数枚保持させることもできる。尚、保持させる基材の数は例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
図1に示すように、被処理面に対して略平行となるように整流構造体11aを設けることもできるが、図11に示すように、エアロゾル主流Fに直交する方向の断面の面積が、噴射手段3から離れるに従って漸減するように設けることもできる。すなわち、出口側の断面積が小さくなるような方向に傾斜させて整流構造体11cを設けるようにすることもできる。このようにすれば、噴射手段3から離れた部分におけるエアロゾル主流Fの流束低下をさらに抑制することができる。そのため、凝集粉の付着または堆積をさらに抑制することができる。
図12は、整流構造体と噴射手段との配設形態を例示するための要部模式図である。 図1に示すように、整流構造体11aと噴射手段3とを離隔させて配設することもできるが、図12に示すように整流構造体11aの端部と噴射手段3とを当接させるようにして配設することもできる。このようにすれば、基材4の被処理面と衝突することで跳ね返る微粒子を整流構造体11aと被処理面との間に形成される空間に導くことができる。そのため、整流構造体11aなどに付着または堆積する凝集粉を低減させることができる。そして、整流構造体11aなどに付着または堆積した凝集粉が基材4の被処理面などに付着することを抑制することができる。
Claims (5)
- 脆性材料微粒子をガス中に分散させたエアロゾルを基材の被処理面に衝突させて前記脆性材料微粒子の構成材料からなる構造物が前記基材の前記被処理面上に形成された複合構造物を形成するエアロゾルデポジション法に用いる複合構造物形成装置であって、
一端に噴射口が設けられ、前記噴射口から前記エアロゾルを前記基材の前記被処理面に向けて噴射する噴射手段と、
前記基材の前記被処理面に対向して設けられ、前記被処理面との間に空間を形成する整流構造体と、を備え、
前記噴射手段から噴射された前記エアロゾルが、前記基材の前記被処理面の衝突点に衝突し、前記衝突点から前記被処理面に沿って流れる第1の流れを形成するように、前記噴射手段は、前記基材の前記被処理面に垂直な方向と前記噴射口からのエアロゾルの噴射方向との間の角度が10°以上となり、かつ、前記噴射口から前記被処理面上の前記エアロゾルの衝突点までの距離が100mm以下となるように設けられ、
前記整流構造体は、前記エアロゾルの前記第1の流れが前記空間を通過するよう配置され、
前記空間を通過する前記第1の流れが、0.011cc/(min・mm 2 )以上の流束となるように、前記整流構造体は、前記被処理面の近くに設けられること、を特徴とする複合構造物形成装置。 - 前記整流構造体は、前記被処理面との間の寸法が70mm以下となるように設けられること、を特徴とする請求項1に記載の複合構造物形成装置。
- 前記整流構造体は、前記整流構造体と前記被処理面との間の寸法が、前記噴射手段から離れるに従って漸減するように設けられること、を特徴とする請求項1または2に記載の複合構造物形成装置。
- 前記空間の外側に前記噴射手段が配置され、前記空間を介して前記噴射手段と反対側には、前記エアロゾルを吸引する吸引部が設けられること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合構造物形成装置。
- 請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合構造物形成装置を用いて基材の被処理面に複合構造物を形成させること、を特徴とする複合構造物の形成方法。
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