JP2009280681A - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
回転式圧縮機は、従来の往復式と比較して、省資源や騒音、振動の対策および効率等の観点から、幅広く使用されている。一方、回転式圧縮機の潤滑条件は、潤滑油が高温高圧の空気やガスと接触することなど、往復式の場合より過酷であるため、熱安定性および酸化安定性の高い圧縮機油が望まれている。
一方、潤滑油に汎用的に用いられているフェノール系酸化防止剤(ジーt−ブチル−p−クレゾール)は揮発し易く、また、変色度合いも大きいため、耐久性、ならびに油の変色抑制の観点から十分ではなかった。さらに、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤は、それ自体では十分な摩擦特性(耐焼付性、耐摩耗性)を有しておらず、潤滑性向上のためには、耐熱性や酸化安定性に乏しい硫黄/リンなどを含む摩擦調整剤を併用せざるを得なかった
このような背景から、ガス圧縮機など使用条件が過酷な機械用として、耐熱性および酸化安定性に優れ、変色やスラッジの発生が少ない潤滑油が求められている。
そこで、本発明の目的は、潤滑性、熱安定性、酸化安定性、耐変色性、および耐スラッジ性を高水準で達成することのできる潤滑油組成物を提供することにある。
〔1〕基油に、下記式(1)で示す構造を有する酸化防止剤を配合してなることを特徴とする潤滑油組成物。
(式中、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数5〜8のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、R3は、水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基である。Xは硫黄原子もしくは−CHR6−基(R6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数5〜8のシクロアルキル基である。)であり、nは0または1である。Aは、炭素原子数2〜8のアルキレン基または*−CO(R7)m−基(R7は炭素原子数1〜8のアルキレン基を、*は酸素原子と結合する部分であることを示し、mは0または1である。)である。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基または炭素原子数7〜12のアラルキルオキシ基であり、もう一方が水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基である。)
〔3〕上述の〔1〕または〔2〕に記載の潤滑油組成物において、前記基油は、n−d−M環分析による%CAが10以下で、硫黄分が300質量ppm以下で、粘度指数が80以上であることを特徴とする潤滑油組成物。
〔4〕上述の〔1〕〜〔3〕のいずれか一つに記載の潤滑油組成物において、さらに、無灰系分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、極圧剤、金属不活性化剤、防錆剤、消泡剤、抗乳化剤および着色剤の少なくともいずれかを配合してなることを特徴とする潤滑油組成物。
〔5〕上述の〔1〕〜〔4〕のいずれか一つに記載の潤滑油組成物がガス圧縮機用であることを特徴とする潤滑油組成物。
基油としては、鉱油および合成油のいずれをも使用することができる。鉱油としては、例えば原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいは鉱油系ワックスやフィッシャートロプシュプロセス等により製造されるワックス(ガストウリキッドワックス)を異性化することによって製造される基油等が挙げられる。
また、合成油としては、従来公知の種々のものが使用可能であり、例えば、ポリα−オレフィン(α−オレフィン共重合体を含む)、ポリブテン、ポリオールエステル、二塩基酸エステル、芳香族エステル、リン酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ネオペンチルグリコール、シリコーンオイル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、更にはヒンダードエステルなどを用いることができる。
上記基油としては、40℃における動粘度が1〜1,000mm2/sであることが好ましく、n−d−M環分析法による%CAが10以下であるものが好ましい。該動粘度が上記範囲にあると圧縮機の自動変速機のギヤ軸受けやクラッチなどの摺動部における摩擦を十分に低減し得るとともに、低温特性も良好となる。該動粘度は、40℃で2〜320mm2/sがより好ましく、5〜220mm2/sであることが特に好ましい。%CAが10以下であると酸化安定性を高めることができ、%CAが3以下であることがより好ましく、特に%CAが1以下であるとさらに好ましい。
また、上記基油は、硫黄分が300質量ppm以下のものが好ましく、200質量ppm以下であることがより好ましく、100質量ppm以下であることがさらに好ましい。該硫黄分が300質量ppm以下であると、酸化安定性が良好となる。
ここで、前記式(1)において、R1、R2、R4およびR5は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数5〜8のシクロアルキル基、炭素原子数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素原子数7〜12のアラルキル基またはフェニル基であり、R3は、水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基である。Xは硫黄原子もしくは−CHR6−基(R6は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数5〜8のシクロアルキル基である。)であり、nは0または1である。Aは、炭素原子数2〜8のアルキレン基または*−CO(R7)m−基(R7は炭素原子数1〜8のアルキレン基を、*は酸素原子と結合する部分であることを示し、mは0または1である。)である。Y、Zは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素原子数1〜8のアルコキシ基または炭素原子数7〜12のアラルキルオキシ基であり、もう一方が水素原子または炭素原子数1〜8のアルキル基である。
また、*−COR7−基における*は、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合する部分であることを示す。R7における、炭素原子数1〜8のアルキレン基の代表例としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられる。*−CO(R7)m−基として好ましくは、mが0である*−CO−基、または、mが1でありR7としてはエチレンである*−CO(CH2CH2)−基である。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば前記と同様のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えばアルキル部分が前記の炭素数1〜8のアルキルと同様のアルキルであるアルコキシ基が挙げられる。また、炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えばアラルキル部分が前記炭素数7〜12のアラルキルと同様のアラルキルであるアラルキルオキシ基が挙げられる。
式(2)の化合物:6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン
これらのうち、特にフェニル−α−ナフチルアミン、アルキルジフェニルアミンの一種単独でまたは二種を組み合わせて使用するのが好ましく、ジオクチルジフェニルアミンとN−(p−オクチルフェニル)−1−ナフチルアミンとを組み合わせて使用することが、酸化安定性(耐酸化寿命)、耐スラッジ性の観点から特に好ましい。
アミン系酸化防止剤は、潤滑油組成物中に0.01〜5質量%となるように配合することが前記した効果の観点より好ましい。また、配合量が5質量%以下の範囲であると、潤滑油組成物への溶解性、経済性と酸化防止性能との調和がとれるようになる。より好ましい配合量は、組成物全量基準で0.1〜4質量%、特に好ましくは、0.3〜3質量%である。
無灰分散剤としては、数平均分子量が900〜3,500のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、およびこれらのホウ酸変性物等の誘導体等が挙げられる。これらの無灰分散剤は、単独でまたは複数種を任意に組み合わせて含有させることができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.01〜10質量%の範囲である。
極圧剤としては、例えば硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィドなどの硫黄系化合物、リン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩などのリン系化合物等が挙げられ、通常その配合量は、組成物全量基準で0.01〜10質量%の範囲である。
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、アルカリ土類金属(カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、バリウム(Ba)等)のスルフォネート、フェネート、サリシレートおよびナフテネート、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられ、通常その配合量は、組成物全量基準で0.01〜5質量%の範囲である。
消泡剤としては、液状シリコーンが適しており、例えば、メチルシリコーン、フルオロシリコーン、およびポリアクリレート等が使用可能である。これら消泡剤の好ましい配合量は、組成物全量基準で0.0005〜0.1質量%である。
抗乳化剤として、エチレンプロピレンブロックポリマー、アルカリ土類金属(カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)等)のスルフォネート、フェネート、サリシレートおよびナフテネートなどを用いることができ、通常その配合量は0.0005〜1質量%である。
着色剤としては、染料や顔料等を用いることができ、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1質量%である。
各実施例および比較例において、それぞれ以下に示す基油および添加剤を用いて表1に示す組成を有する潤滑油組成物(以下、「試料油」ともいう)を調製した。
(1)鉱油:API分類 GI、動粘度(40℃) 29.28mm2/s
(2)鉱油:API分類 GII、動粘度(40℃) 30.98mm2/s
(1)酸化防止剤A:住友化学製 スミライザーGP
6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンズ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン
(2)酸化防止剤B:ジオクチルジフェニルアミン
(3)酸化防止剤C:オクチルフェニルナフチルアミン
(4)酸化防止剤D:DBPC(4,4'-メチレン-ビス-2.6-ジ-t-ブチルフェノール)
(5)その他:防錆剤(アルケニルコハク酸エステル)、金属不活性化剤(ベンゾトリアゾール)、消泡剤(ジメチルシリコーン)
<潤滑性試験(耐摩耗性試験および耐荷重性試験)>
耐摩耗性試験(シェル摩耗試験):
ASTM D 2783に準拠して、荷重192N、回転数1200rpm、油温80℃、試験時間60分の条件で行った。1/2インチ球3個の摩耗痕径を平均して平均摩耗痕径を算出した。
耐荷重性試験(シェルEP試験):
ASTM D 2783に準拠して、回転数1800rpm、室温の条件で行った。最大非焼付荷重(LNL)と融着荷重(WL)から荷重摩耗指数(LWI)を求めた。この値が大きいほど耐荷重性が良好である。
JIS K 2540に準拠して行った。具体的には、試料油を150℃で168時間保持した後の動粘度、酸価およびミリポア量を測定した。各項目は、以下のようにして測定した。
動粘度:JIS K 2283に準拠して測定した。新油に比べてこの値が高くなるほど増粘傾向があると言える。
酸価:JIS K 2501に準拠して測定した。新油に比べてこの値が高くなるほど酸化劣化が進行しているとわかる。
ミリポア量:孔径0.8μmのメンブランフィルターを用い、熱安定度試験後の試料油を減圧下にて100mlろ過する。ろ過前後のフィルター質量から、フィルターに捕捉された試料油不溶物の量を測定する。この値が高ければ高いほど試料油不溶分(スラッジ)が多いことがわかる。
JIS K 2514に準拠して行った。具体的には、試料油を165.5℃に保ち、鋼-銅触媒存在の下、1300rpmで強制攪拌し、周りの空気を攪拌により試料油内に取り込みながら96時間保持した。その後、前記した熱安定度試験と同様の方法で試料油の動粘度、酸価およびミリポア量を測定した。ISOTは、試料油を加速的に酸化劣化させる試験であるため、前記した熱安定度試験よりも空気による酸化の影響がより顕著に現れる。
表1の結果から明らかなように、本発明に係る実施例1〜6の試料油は、いずれも、潤滑性(耐摩耗性、耐荷重性能)に優れるだけでなく、耐熱性および酸化安定性にも優れる。さらに、スラッジの発生がほとんどない。
また、実施例6の試料油は、ガス圧縮機用として一般的な添加剤をさらに配合したものであるが、本発明の主要な構成要素である特定の酸化防止剤の効果が阻害されることもなく、上記した各特性が維持されていることがわかる。
これに対して、比較例1〜4の試料油では、酸化防止剤として、DBPCやアミン系酸化防止剤のような汎用の酸化防止剤しか配合されておらず、本発明における特定の酸化防止剤が配合されていないので、潤滑性、熱安定性および酸化安定性に劣るとともに、スラッジの発生も顕著である。
Claims (5)
- 基油に、下記式(1)で示す構造を有する酸化防止剤を配合してなることを特徴とする潤滑油組成物。
- 請求項1に記載の潤滑油組成物において、
さらにアミン系酸化防止剤を配合してなることを特徴とする潤滑油組成物。 - 請求項1または請求項2に記載の潤滑油組成物において、
前記基油は、n−d−M環分析による%CAが10以下で、硫黄分が300質量ppm以下で、粘度指数が80以上であることを特徴とする潤滑油組成物。 - 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の潤滑油組成物において、
さらに、無灰系分散剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、極圧剤、金属不活性化剤、防錆剤、消泡剤、抗乳化剤および着色剤の少なくともいずれかを配合してなることを特徴とする潤滑油組成物。 - 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の潤滑油組成物がガス圧縮機用であることを特徴とする潤滑油組成物。
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JPH09176671A (ja) * | 1995-12-21 | 1997-07-08 | Cosmo Sogo Kenkyusho:Kk | 潤滑油組成物 |
JPH10273494A (ja) * | 1996-08-05 | 1998-10-13 | Sumitomo Chem Co Ltd | 亜リン酸エステル類、その製造法及びその用途 |
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