JP2009276796A - 画素回路と表示装置及びこれらの駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】黒レベルの微弱な信号電流も充分書き込み可能な画素回路を提供する。
【解決手段】画素回路2の第1サンプリング手段は、トランジスタTr1,Tr3,Tr4と画素容量Cs2とで構成されており、信号線SLに流れる信号電流Isigをサンプリングする。第2サンプリング手段はトランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4と画素容量Cs1とで構成され、信号電流Isigに前後して信号線SLに流れる所定の基準電流Irefをサンプリングする。差分手段はトランジスタTr1,Tr3,Tr4と一対の画素容量Cs1,Cs2で構成されており、サンプリングされた信号電流Isigと基準電流Irefの差分に応じた制御電圧を生成する。駆動トランジスタTrdは、この制御電圧をゲートGに受けてソースS/ドレインD間に流れる駆動電流Idsを発光素子ELに供給する。
【選択図】図2
【解決手段】画素回路2の第1サンプリング手段は、トランジスタTr1,Tr3,Tr4と画素容量Cs2とで構成されており、信号線SLに流れる信号電流Isigをサンプリングする。第2サンプリング手段はトランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4と画素容量Cs1とで構成され、信号電流Isigに前後して信号線SLに流れる所定の基準電流Irefをサンプリングする。差分手段はトランジスタTr1,Tr3,Tr4と一対の画素容量Cs1,Cs2で構成されており、サンプリングされた信号電流Isigと基準電流Irefの差分に応じた制御電圧を生成する。駆動トランジスタTrdは、この制御電圧をゲートGに受けてソースS/ドレインD間に流れる駆動電流Idsを発光素子ELに供給する。
【選択図】図2
Description
本発明は、画素毎に配した発光素子を電流駆動する画素回路及びその駆動方法に関する。またこの画素回路をマトリクス状(行列状)に配列した表示装置であって、特に各画素回路内に設けた絶縁ゲート型電界効果トランジスタによって、有機ELなどの発光素子に通電する電流量を制御する、いわゆるアクティブマトリクス型の表示装置及びその駆動方法に関する。
画像表示装置、例えば液晶ディスプレイなどでは、多数の液晶画素をマトリクス状に並べ、表示すべき画像情報に応じて画素毎に入射光の透過強度または反射強度を制御する事によって画像を表示する。これは、有機EL素子を画素に用いた有機ELディスプレイなどにおいても同様であるが、液晶画素と異なり有機EL素子は自発光素子である。その為、有機ELディスプレイは液晶ディスプレイに比べて画像の視認性が高く、バックライトが不要であり、応答速度が高いなどの利点を有する。また、各発光素子の輝度レベル(階調)はそれに流れる電流値によって制御可能であり、いわゆる電流制御型であるという点で液晶ディスプレイなどの電圧制御型とは大きく異なる。
有機ELディスプレイにおいては、液晶ディスプレイと同様、その駆動方式として単純マトリクス方式とアクティブマトリクス方式とがある。前者は構造が単純であるものの、大型且つ高精細のディスプレイの実現が難しいなどの問題がある為、現在はアクティブマトリクス方式の開発が盛んに行われている。この方式は、各画素回路内部の発光素子に流れる電流を、画素回路内部に設けた能動素子(一般には薄膜トランジスタTFT)によって制御するものであり、以下の特許文献に記載がある。
図22は、従来のアクティブマトリクス方式の有機ELディスプレイを示す模式的なブロック図である。図示するように、この表示装置は、主要部となる画素アレイ1と周辺の回路部とで構成されている。周辺の回路部は電流ドライバー3、ライトスキャナ4、ドライブスキャナ5、補正用スキャナ7などを含んでいる。画素アレイ1は行状の走査線WSと列状の信号線SLと両者の交差する部分にマトリクス状に配列した画素R,G,Bとで構成されている。カラー表示を可能とする為、RGBの三原色画素を用意しているが、これに代えて白黒表示の単色画素を用いる事もある。各画素R,G,Bはそれぞれ画素回路2で構成されている。信号線SLは電流ドライバー3によって駆動され、信号電流が流れるようになっている。走査線WSはライトスキャナ4によって走査される。なお、走査線WSと平行に別の走査線DSお及びAZも配線されている。走査線DSはドライブスキャナ5によって走査される。ドライブスキャナ5は各画素に含まれる発光素子の発光期間を制御するものである。走査線AZは補正用スキャナ7によって走査される。ライトスキャナ4、ドライブスキャナ5及び補正スキャナ7は全体としてスキャナ部を構成しており、1水平期間毎に画素の行を順次走査する。
図23は、図22に示した画素回路の構成例を示す回路図である。図示するように、画素回路2は4個のトランジスタTr1,Tr4,Tr5,Trdと1個の画素容量Csと1個の発光素子ELとで構成されている。4個のトランジスタはいずれも薄膜トランジスタである。この内、トランジスタTr1,Tr4及びTr5は制御用のスイッチングトランジスタであり、いずれもNチャネル型を用いている。これに対し、トランジスタTrdは発光素子ELを駆動する為の駆動トランジスタであり、Pチャネル型を用いている。また発光素子ELはアノード及びカソードを備えた二端子型の自発光素子であり、例えば有機EL素子を用いる事ができる。
駆動トランジスタTrdのソースSは電源Vccに接続している。ドレインDは発光素子ELのアノード側に位置する。発光素子ELのカソード側は接地されている。駆動トランジスタTrdのゲートGは画素容量Csの一端に接続している。画素容量Csの他端は電源Vccに接続している。
スイッチングトランジスタTr1のソース/ドレインは信号線SLと駆動トランジスタTrdのゲートGとの間に接続されている。スイッチングトランジスタTr1のゲートは走査線WSに接続している。スイッチングトランジスタTr4のソース/ドレインは駆動トランジスタTrdのゲートGとドレインDとの間に接続されている。このトランジスタTr4のゲートは走査線AZに接続している。スイッチングトランジスタTr5のソース/ドレインは駆動トランジスタTrdのドレインDと発光素子ELのアノードとの間に接続されている。このトランジスタTr5のゲートは走査線DSに接続されている。
駆動トランジスタTrdは飽和領域で動作し、その特性は以下の数式1で表される。
数式1において、Vgsはゲート電圧であり、駆動トランジスタTrdのソースSとゲートGとの間の電圧を表している。Idsはドレイン電流であり、駆動トランジスタTrdのソースSとドレインDとの間を流れて発光素子ELに供給される。Vthは駆動トランジスタTrdの閾電圧を表している。μは同じく駆動トランジスタTrdのキャリア移動度を表している。またkは定数であり、Cox・W/Lで与えられる。ここでCoxは駆動トランジスタTrdのゲート容量、Wはチャネル幅、Lはチャネル長である。定数kはサイズファクタと呼ばれる場合がある。駆動トランジスタTrdは飽和領域で動作する時、上記数式1から明らかなように、ゲート電圧Vgsが閾電圧Vthを越えた時点からドレイン電流Idsが流れ始める。ドレイン電流Idsの大きさはゲート電圧Vgsの2乗に比例して増大する。なお、本明細書では、駆動トランジスタの閾電圧Vthは、駆動トランジスタの閾値電圧の絶対値をとったものとする。ちなみに、Pチャネル型のトランジスタではしきい値電圧は負の値を持つので、その値をそのまま上記数式1に入れてしまうと正しくないことになる。その為、本明細書では絶対値をとり、Vthは正の値にて取り扱うことにする。
駆動トランジスタTrdは例えば多結晶シリコン薄膜を活性層とするTFTである。多結晶シリコン薄膜としては、レーザーアニールで結晶化された低温ポリシリコンが多用されている。一般に、低温ポリシリコンTFTはデバイス毎に閾電圧Vthやキャリア移動度μがばらつく傾向にある。換言すると、個々の画素回路2毎に駆動トランジスタTrdのVthやμが異なっている。
画素回路2は大別してサンプリング動作と発光動作を行う。始めのサンプリング動作ではトランジスタTr5をオフする一方トランジスタTr1及びTr4をオンする。この状態で信号線SLを電流ドライバー3で駆動すると、信号電流Isigが電源Vccから駆動トランジスタTrd及びスイッチングトランジスタTr4,Tr1を通って信号線SLに流れる。この時の駆動トランジスタTrdの動作特性は以下の数式2で表される。
上記数式2は数式1のドレイン電流Idsを信号電流Isigで置き換えたものとなっている。
信号電流Isigが流れたとき駆動トランジスタTrdのゲートGとソースSとの間に現れるゲート電圧Vgsは、数式2をVgsで解くことによって、以下の数式3の様に表される。
数式3で表されるゲート電圧Vgsは画素容量Csに保持される。この様にして、サンプリング動作では電流ドライバー3によって供給される信号電流Isigのレベルに応じたゲート電圧Vgsが画素容量Csに書き込まれる。簡略的に言うと、信号電流Isigが駆動トランジスタTrdのゲートに書き込まれた事になる。
続いて発光動作では、トランジスタTr1及びTr4がオフする一方、Tr5がオンになる。これにより、駆動トランジスタTrdから駆動電流Idsが発光素子ELに流れ、所定の輝度で発光する事になる。このとき駆動トランジスタTrdに流れる駆動電流Idsは以下の数式4で表される。
数式3で求めたVgsを数式4のVgsに代入して整理すると、結局移動度μ及び閾電圧Vthの項がキャンセルされ、Ids=Isigとなる。したがって駆動トランジスタTrdの移動度μや閾電圧Vthが画素毎にばらついていても、上述の信号電流書き込み動作を行うことで全てキャンセルされ、画面のユニフォーミティを維持する事ができる。
図23に示した従来の画素回路は駆動トランジスタの移動度μや閾電圧Vthのばらつきに関わらず、信号電流Isigと同じ駆動電流Idsを発光素子ELに供給する事ができるという利点がある。電流ドライバー3は信号電流Isigのレベルを階調制御する事で、発光素子ELの輝度を黒レベルから中間のグレーレベルを通って白レベルまで変化させる事ができる。黒レベルのとき信号電流Isigは微弱となって0に近づく一方、白レベルでは大きな電流値となる。しかしながら、信号線SLの寄生容量は数十pFと比較的大きく、図23に示した従来の構成では、電流値の微弱な黒レベルの信号電流Isigはサンプリング動作に割り当てられた1水平映像期間(1H)内で充分に書き込む事ができないという課題があった。
図24は、この問題を模式的に表したものである。画素アレイ1は画面を構成しており、黒の背景に白のウインドウを表示させた場合である。白いウインドウの下方にグレーの部分が現れている。本来、このグレーの部分は背景に属し、黒色でなければならない。しかしながら、図23に示した従来の画素回路構成では、白いウインドウの下方に位置する画素に黒レベルの信号電流を書き込むことができず、図示のような黒浮きや縦クロストークなどが発生する為、解決すべき課題となっている。
上述した従来の技術の課題に鑑み、本発明は黒レベルの信号電流も充分書き込み可能な画素回路及び表示装置とこれらの駆動方法を提供することを目的とする。かかる目的を達成するために以下の手段を講じた。即ち本発明は、信号電流が流れる信号線と制御信号を供給する走査線とが交差する部分に配され、発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する制御部とからなる画素回路であって、前記制御部は該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手段と、該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手段と、サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手段とを含み、前記駆動トランジスタは該制御電圧をゲートに受けてソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給して発光を行わせることを特徴とする。
具体的に、前記第1及び第2サンプリング手段が各々サンプリングする信号電流及び基準電流は、両者の相対的な差分が小さい時該発光素子の発光量が少なくなり且つ差分が大きい時発光量が多くなる一方、両者の相対的な差分が小さい時でも該信号電流及び基準電流の絶対的なレベルはサンプリングを可能とする様に大きく設定されている。好ましくは、前記制御部は、該駆動トランジスタの閾電圧を検出してこれを該制御電圧に加える補正手段を有しており、該閾電圧の影響を該駆動電流からキャンセルする。一態様では、前記第1サンプリング手段は該信号電流を該駆動トランジスタに流してその時ゲートに発生する信号電圧をサンプリングし、前記第2サンプリング手段は該駆動トランジスタに該基準電流を流してその時ゲートに発生する基準電圧をサンプリングし、前記差分手段は容量を介して該信号電圧と該基準電圧をカップリングさせ両者の差分を求めて該制御電圧を生成する。この場合、前記第1サンプリング手段はサンプリングした信号電圧を保持する第1の容量を有し、前記第2サンプリング手段はサンプリングした基準電圧を保持し且つ該信号電圧にカップリングする為の第2の容量を有し、前記第1及び第2の容量は同一の容量値を有する。
本発明は又、画素アレイ部とドライバー部とスキャナ部とからなり、前記画素アレイ部は、列状の信号線と、行状の走査線と、両者の交差する部分に配された行列状の画素回路とからなり、前記ドライバー部は、各信号線に信号電流を流し、前記スキャナ部は、各走査線に制御信号を供給し、各画素回路は、発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する画素内制御部とからなる表示装置であって、前記画素内制御部は、該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手段と、該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手段と、サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手段とを含み、前記駆動トランジスタは該制御電圧をゲートに受けてソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給して発光を行わせることを特徴とする。
具体的に、前記第1及び第2サンプリング手段が各々サンプリングする信号電流及び基準電流は、両者の相対的な差分が小さい時該発光素子の発光量が少なくなり且つ差分が大きい時発光量が多くなる一方、両者の相対的な差分が小さい時でも該信号電流及び基準電流の絶対的なレベルはサンプリングを可能とする様に大きく設定されている。このM市区は、好ましくは、前記画素内制御部は、該駆動トランジスタの閾電圧を検出してこれを該制御電圧に加える補正手段を有しており、該閾電圧の影響を該駆動電流からキャンセルする。
本発明は更に、信号電流が流れる信号線と制御信号を供給する走査線とが交差する部分に配され、発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する制御部とからなる画素回路の駆動方法であって、該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手順と、該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手順と、サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手順と、該制御電圧を前記駆動トランジスタのゲートに印加しソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給する発光手順とを行なうことを特徴とする。
加えて本発明は、画素アレイ部とドライバー部とスキャナ部とからなり、前記画素アレイ部は、列状の信号線と、行状の走査線と、両者の交差する部分に配された行列状の画素回路とからなり、前記ドライバー部は各信号線に信号電流を流し、前記スキャナ部は各走査線に制御信号を供給し、各画素回路は、発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する画素内制御部とからなる表示装置の駆動方法であって、該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手順と、該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手順と、サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手順と、該制御電圧を前記駆動トランジスタのゲートに印加しソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給する発光手順とを行なうことを特徴とする。
本発明にかかる表示装置は、電流ドライバー側から信号電流ばかりでなく基準電流も供給している。画素回路は前後して信号電流及び基準電流をサンプリングし、さらに両者の差分を求めて駆動トランジスタのゲート制御電圧としている。これにより、駆動トランジスタは基準電流に対する信号電流の差分に応じて発光素子を駆動する事ができる。その際、黒レベルの発光輝度では差分が0に近くなり、信号電流が基準電流と略同じになる。この様な状態でも、信号電流及び基準電流の絶対値は信号線の寄生容量に対して充分高く設定する事ができる。したがって、黒レベルの電流でも各画素に充分高速で書き込むことができ、従来問題となっていた黒浮きや縦クロストークを防ぐ事ができる。表示すべき輝度階調に依存することなく、信号電流及び基準電流のレベルを高く設定できるので、黒表示の電流であっても1水平期間内に充分画素に書き込むことができ、輝度が充分沈んだ黒色を表現でき、高いコントラスト特性を得ることが可能である。また、駆動トランジスタの閾電圧や移動度に依存することなく、信号電流と基準電流の差分を求めて発光素子に対する駆動電流を制御する為、駆動トランジスタの特性ばらつきに影響を受けることなく、高いユニフォーミティの画像を表示する事ができる。特に、移動度や閾電圧が大きくばらつく低温ポリシリコンTFTを用いた画素回路で、本発明の効果が大きい。
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明にかかる表示装置の実施形態の全体的な構成を示すブロック図である。図示するように、本表示装置はアクティブマトリクス型であり、主要部となる画素アレイ1と周辺の回路部とで構成されている。周辺の回路部は電流ドライバー3、第一ライトスキャナ41、第二ライトスキャナ42、第三ライトスキャナ43、ドライブスキャナ5及び補正用スキャナ7などを含んでいる。画素アレイ1は行状の走査線WSと列状の信号線SLと両者の交差する部分にマトリクス状に配列した画素R,G,Bとで構成されている。各画素R,G,Bはそれぞれ画素回路2で構成されている。信号線SLは電流ドライバー3によって駆動される。換言すると、電流ドライバー3は信号線SLに信号電流及び基準電流を流す。走査線WSは実際には3本の走査線WS1,WS2,WS3に分かれている。最初の走査線WS1は第一ライトスキャナ41によって走査される。次の走査線WS2は第二ライトスキャナ42によって走査される。残る走査線WS3は第三ライトスキャナ43によって走査される。これらの走査線WS1ないしWS3に供給される制御信号はそれぞれタイミングが異なっている。また、走査線WS1,WS2,WS3と平行に別の走査線DS及びAZも配線されている。走査線DSはドライブスキャナ5によって走査される。ドライブスキャナ5は各画素に含まれる発光素子の発光期間を制御するものである。走査線AZは補正用スキャナ7によって走査される。ライトスキャナ41,42,43、ドライブスキャナ5及び補正用スキャナ7は全体としてスキャナ部を構成しており、1水平期間ごと画素の行を順次走査する。
図2は、図1に示した画素回路2の構成を示す回路図である。本画素回路2は、6個の薄膜トランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4,Tr5及びTrdと、2個の画素容量Cs1,Cs2と1個の発光素子ELとで構成されている。6個の薄膜トランジスタの内、スイッチング制御用のトランジスタTr1ないしTr5はNチャネル型である。残るトランジスタTrdは、発光素子ELを駆動する為の駆動トランジスタである。駆動トランジスタTrdはPチャネル型となっている。本実施形態では、これら6個の薄膜トランジスタは低温ポリシリコン薄膜をチャネル領域としている。発光素子ELはアノード及びカソードを備えた二端子型デバイスであり、例えば有機EL発光素子を用いる事ができる。なお、上記実施例ではトランジスタTr1〜Tr5は全てNチャネル型としているが、これらは全てPチャネル型もしくはNチャネル型とPチャネル型が混在していても構わない。
駆動トランジスタTrdのソースSは電源Vccに接続している。駆動トランジスタTrdのドレインDは発光素子ELのアノード側に接続している。発光素子ELのカソードは接地されている。なお、発光素子ELのカソード接地電位は、Vcathodeで表される場合がある。駆動トランジスタTrdのゲートGは画素容量Cs2の一端に接続している。この画素容量Cs2の他端はもう1つの画素容量Cs1の一端に接続している。この画素容量Cs1の他端は電源Vccに接続している。
スイッチングトランジスタTr1のソース/ドレインは信号線SLと駆動トランジスタTrdのゲートGに接続しており、そのゲートは走査線WS1を介して第一ライトスキャナ41に接続されている。スイッチングトランジスタTr2はそのソース/ドレインが駆動トランジスタTrdのゲートGと画素容量Cs1の一端との間に接続され、ゲートが走査線WS2を介して第二ライトスキャナ42に接続している。スイッチングトランジスタTr3はソース/ドレインが一対の画素容量Cs1,Cs2の間に接続され、このゲートが走査線WS3を介して第三ライトスキャナ43に接続している。スイッチングトランジスタTr4は、そのソース/ドレインが駆動トランジスタTrdのゲートGとドレインDとの間に接続されており、そのゲートが走査線AZを介して補正用スキャナ7に接続している。スイッチングトランジスタTr5は、そのソース/ドレインが駆動トランジスタTrdのドレインDと発光素子ELのアノードとの間に接続され、そのゲートが走査線DSを介してドライブスキャナ5に接続されている。
図3は、図2に示した画素回路の動作説明に供する模式図である。図示するように、信号線には、電流ドライバーから信号電流Isig及び基準電流Irefが交互に流れる。また、各スイッチングトランジスタTrのゲートには対応する走査線を介して各スキャナから制御信号が供給される。図では理解を容易にする為、走査線と同じ符号を用いて制御信号を表している。例えばスイッチングトランジスタTr1のゲートに印加される制御信号はWS1で表してある。同様にトランジスタTr2のゲートに印加される制御信号はWS2で表され、トランジスタTr3の制御信号はWS3で表され、トランジスタTr4の制御信号はAZで表され、トランジスタTr5の制御信号はDSで表されている。また、一対の画素容量Cs1,Cs2はその容量値C1,C2を図示してある。本実施形態では、一対の画素容量Cs1,Cs2の容量値C1とC2は等しくなるように設定されている。
図4は、図3に示した画素回路の動作説明に供するタイミングチャートである。時間軸Tに沿って、信号電流及び各制御信号WS1,WS2,WS3,AZ,DSの波形を表してある。信号電流Isigは1水平期間(1H)毎に変化しており、それぞれ対応する行の画素に割り当てられる。1H内で電流レベルは、IsigとIrefの間を切り替わる。基準電流Irefは予め所定のレベルに設定されている。信号電流Isigはこの基準電流Irefを基準として1H毎に変化している。信号電流Isigのレベルが高くなる程、発光輝度は大きくなる。
タイミングT0で制御信号WS1,WS2及びAZはローレベルにある一方、制御信号WS3及びDSはハイレベルにある。各スイッチングトランジスタはNチャネル型であるので、対応する制御信号がハイレベルにある時オン状態となり、ローレベルにある時オフ状態となる。タイミングT0では制御信号DSがハイレベルである為スイッチングトランジスタTr5はオンとなっており、駆動トランジスタTr5から発光素子ELに駆動電流が流れるので、画素回路は発光状態である。
ここからタイミングT1になると、制御信号DSがローレベルになり、発光素子ELは非発光状態に切り替わる。タイミングT2で制御信号AZがハイレベルになる。さらにタイミングT3で制御信号WS1及びWS2もハイレベルとなる。このとき信号線には基準電流Irefが流れている。タイミングT4に進むと制御信号WS2がローレベルに戻る。このタイミングT3〜T4までの期間で基準電流Irefを画素容量C1に書き込む。
続いてタイミングT5になると信号線側が基準電流Irefから信号電流Isigに切り替わる。さらにタイミングT6で制御信号WS3がローレベルになる。このタイミングT5〜T6の間で、信号電流Isigの書き込み及びIrefとIsigの差分保持動作が行われる。
この後タイミングT7で制御信号WS1が立ち下がる。さらにタイミングT8で制御信号WS2が再びハイレベルになる。続いてタイミングT9で制御信号AZがローレベルに戻る。このタイミングT8〜T9の間で駆動トランジスタの閾電圧Vthの補正動作が行われる。
さらにタイミングT10に進むと制御信号WS2がローレベルに戻る。タイミングT11になると制御信号WS3がハイレベルになると共に制御信号DSがハイレベルになる。これにより発光動作が行われる。
図5は、図4のタイミングチャートに示した期間T3−T4で行われるIref書き込み動作を示す模式図である。この期間T3−T4では、信号線に基準電流Irefが流れている。スイッチングトランジスタはTr1ないしTr4がオンで、Tr5がオフとなっている。したがって基準電流Irefが、電源Vccから駆動トランジスタTrd、スイッチングトランジスタTr4及びTr1を通って信号線側に流れる。この結果基準電流Irefに応じた電位Vrefが駆動トランジスタTrdのゲートに現れる。この時、駆動トランジスタTrdのゲート電圧Vgsは以下の数式5によって表される。
したがって、基準電流Irefが駆動トランジスタTrdを流れた時の特性式は以下の数式6で表される。
数式6ではVgsに数式5のVcc−Vrefを代入する事で、IrefとVrefの関係が求められている。
ここで数式6をVrefについて整理すると、以下の数式7の様になる。
この様にして得られた基準電位Vrefはオン状態にあるトランジスタTr2を介して容量C1に書き込まれる。
図6は、図4に示したタイミングチャートの期間T5−T6で行われるIsig書き込み及び電流差分保持動作を示す模式図である。期間T5−T6では、信号線に信号電流Isigが流れる。スイッチングトランジスタはTr1、Tr3及びTr4がオンにある一方、Tr2及びTr5がオフになっている。この状態で、信号電流Isigが電源Vccから駆動トランジスタTrd、スイッチングトランジスタTr4及びTr1を通って信号線に流れる。この結果、駆動トランジスタTrdのゲート電位はVrefからVsigに変化する。このVsigは、数式7でVrefを求めた時と同様にして、以下の数式8によって求められる。
駆動トランジスタTrdのゲートに現れた電位変化Vsig−Vrefは、容量C2を介してノードAにカップリングされる。ノードAは一対の容量C1,C2の接続点であり、その電位をVaで表してある。ゲート電位の変化の容量カップリング分は(Vsig−Vref)C2/(C1+C2)で表される。元々電位VrefにあったA点にこの容量カップリング分が加わる為、ノードAの電位Vaは以下の数式9で表される事になる。
なお上記数式9ではC1=C2を仮定しているので、Va=(Vsig+Vref)/2となっている。
ノードAの電位Vaから駆動トランジスタTrdのゲート電位Vsigを引いたものが、容量C2に保持された電位である。数式9の結果から、この容量C2の両端に保持された電圧Va−Vsigは(Vref−Vsig)/2で表される。さらに、このVref及びVsigに、数式7及び8で得られた結果を代入すると、結局以下の数式10が得られる。
上記の数式10から明らかなように、容量C2の両端には、信号電流Isigと基準電流Irefの差分に応じた電圧が保持された事になる。以上の動作により、信号電流Isigの書き込みとIref及びIsigの電流差分が求められ、且つ電流差分に応じた電圧が数式10で表される形によって容量C2に保持される。
図7は、図4に示したタイミングチャートの期間T8−T9で行われるVthキャンセル動作を示す模式図である。この期間T8−T9では、スイッチングトランジスタTr1,Tr3及びTr5がオフにある一方、スイッチングトランジスタTr2及びTr4がオンしている。これにより、電源Vcc、駆動トランジスタTrd、スイッチングトランジスタTr4、スイッチングトランジスタTr2及び容量C1により閉ループが構成される。この閉ループに電源Vccから電流が流れ、容量C1を充電して駆動トランジスタTrdのゲート電位を上昇させる。駆動トランジスタTrdのゲート電圧Vgsが丁度閾電圧Vthに到達した段階で、過渡電流は流れなくなる。この時のゲート電圧Vgsが閾電圧Vthとして容量C1に書き込まれる事になる。この様にして、駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthのキャンセルに必要な電位Vthが容量C1に保持される。
図8は、図4のタイミングチャートに示した期間T11以降で行われる発光動作を示す模式図である。図示するように、タイミングT11以降の発光期間では、スイッチングトランジスタTr1,Tr2及びTr4がオフする一方、Tr3及びTr5がオンしている。この結果駆動電流Idsが電源Vccから駆動トランジスタTrd及びスイッチングトランジスタTr5を通って発光素子ELに流れ、所定の輝度で発光が行われる。この発光期間における駆動トランジスタTrdのゲート電圧VgsはスイッチングトランジスタTr3がオンしている為、容量C1に保持された電圧と容量C2に保持された電圧の和となる。トランジスタTr3をオンして容量C1とC2を接続した時、駆動トランジスタTrdのゲート寄生容量に比べて容量C1及びC2の値が大きいのでC1とC2は電荷を保持したまま接続される。よって駆動トランジスタTrdのゲート電圧VgsはC1に保持された電圧VthとC2に保持された電圧(Vref−Vsig)/2の和となり、以下の数式11で表される。
一方、発光期間に流れる駆動電流Idsは以下の数式12によって表される。なお、この数式12はトランジスタの基本特性を示す数式1と同じである。
数式12に含まれるVgsに数式11で求めた結果を代入すると、以下の数式13が得られる。
上記数式13から明らかなように、元々のトランジスタ特性式に含まれていたVthの項は容量C1に保持されたVthの項によってキャンセルされる。これにより、駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthのばらつきの影響が除かれる。さらに数式13で残された(Vref−Vsig)/2の項に数式10で求めた結果を代入すると、以下の数式14が得られる。
数式14に含まれている移動度μの項は結局分子と分母でキャンセルするので、最終的な駆動電流Idsの式は以下の数式15のようになる。
上記数式15から明らかなように、駆動電流Idsは信号電流Isigと基準電流Irefの差分に応じて決まり、駆動トランジスタに固有の移動度μや閾電圧Vthは含まれていない。この様にして本発明の画素回路では、IsigとIrefの電流差分値により発光電流が決定され、閾電圧Vthと移動度μのばらつきによらないユニフォーミティの高い画質を得ることができる。さらに、本画素回路で黒表示はIsig=Irefにて表示する。そしてIref及びIsigの値は書き込みに充分な電流値に設定している。このため黒表示の信号電流でも1水平期間内に充分画素容量に書き込む事ができ、黒浮きや縦クロストークなどの発生を抑制できる。
図9は、本発明にかかる画素回路に含まれる駆動トランジスタの動作を模式的に表したグラフである。このグラフは横軸にゲート電圧Vgsを取り、縦軸にドレイン電流Idsを取って、駆動トランジスタの動作特性を模式的に表している。実線は画素Aに含まれる駆動トランジスタの特性であって、移動度μが大きい場合である。点線のカーブは画素Bに含まれる駆動トランジスタの特性であって、移動度μが小さい場合である。移動度μが小さいほど特性カーブは傾斜が緩やかになっており、各画素で特性にばらつきがある。この様な特性のばらつきは低温ポリシリコン薄膜を用いたトランジスタに顕著である。この様に特性のばらつきがある駆動トランジスタであっても、本発明は信号電流Isigと基準電流Irefの差分に応じて発光電流が定まるように駆動トランジスタを制御している。したがって、移動度μがばらついても、常に各画素で電流差分に応じた発光電流制御が行われる為、高ユニフォーミティの画面品質が得られる。
以上説明したように、図2に示した本発明の実施形態にかかる画素回路は、信号電流Isigが流れる信号線SLと、制御信号を供給する走査線WS1,WS2,WS3,AZ,DSとが交差する部分に配されている。この画素回路2は、発光素子ELと、発光素子ELに駆動電流Idsを供給する駆動トランジスタTrdと、制御信号WS1,WS2,WS3,AZ,DSに応じて動作し信号電流Isigに基づいて駆動トランジスタTrdの駆動電流Idsを制御する制御部とで構成されている。この制御部は、第1サンプリング手段と第2サンプリング手段と差分手段とを含んでいる。第1サンプリング手段は、トランジスタTr1,Tr3,Tr4と画素容量C2とで構成されており、信号線SLに流れる信号電流Isigをサンプリングする。第2サンプリング手段はトランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr4と画素容量C1とで構成され、信号電流Isigに前後して信号線SLに流れる所定の基準電流Irefをサンプリングする。差分手段はトランジスタTr1,Tr3,Tr4と一対の画素容量C1,C2で構成されており、サンプリングされた基準電流Irefに対するサンプリングされた信号電流Isigの差分に応じた制御電圧(Vref−Vsig)/2を生成する。駆動トランジスタTrdは、この制御電圧(Vref−Vsig)/2をゲートGに受けてソースS/ドレインD間に流れる駆動電流Idsを発光素子ELに供給して発光を行わせる。
第1及び第2サンプリング手段が各々サンプリングする信号電流Isig及び基準電流Irefは、両者の相対的な差分が小さいとき発光素子ELの発光量が小さくなり且つ差分が大きいとき発光量が大きくなる一方、相対的な差分が小さいときでも信号電流Isig及び基準電流Irefの絶対的なレベルはサンプリングを可能とするように大きく設定されている。
画素回路2の制御部は、上述した第1及び第2サンプリング手段と差分手段に加え、補正手段を有している。この補正手段はトランジスタTr2,Tr4と画素容量C1とで構成されており、駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthを検出してこれを前述した制御電圧(Vref−Vsig)/2に加える事ができる様にしている。これにより、閾電圧Vthの影響を駆動電流Idsからキャンセルする事ができる。
本実施形態では、第1サンプリング手段は信号電流Isigを駆動トランジスタTrdに流してその時ゲートGに発生する信号電圧Vsigをサンプリングする。同様に第2サンプリング手段は駆動トランジスタTrdに基準電流Irefを流してその時ゲートGに発生する基準電圧Vrefをサンプリングする。このとき差分手段は、容量C2を介して信号電圧Vsigと基準電圧Vrefをカップリングさせ両者の差分を求めて制御電圧(Vref−Vsig)2を生成している。なお、第1サンプリング手段はサンプリングした信号電圧Vsigを保持する容量C2を有し、第2サンプリング手段はサンプリングした基準電圧Vrefを保持し且つ信号電圧Vsigにカップリングする為の容量C1を有する。この場合、第1及び第2の容量C1,C2は同一の容量値を有する。
図10は、本発明にかかる画素回路及びこれを組み込んだ表示装置の他の実施形態を示す回路図である。図示するように、本表示装置は主要部を構成する画素アレイ1とその周辺に位置する回路部とで構成されている。周辺回路部はドライバー部を構成する電流ドライバー3とスキャナ部を構成するライトスキャナ4、ドライブスキャナ5、補正用スキャナ7とで構成されている。画素アレイ1には列状に信号線SLが形成されている。この信号線SLは電流ドライバー3によって駆動され、所定の基準電流及び信号電流が交互に流れる様になっている。画素アレイ1には走査線WS,DS,AZが行状に配されている。走査線WSはライトスキャナ4に接続されており、信号電流や基準電流のサンプリング用の制御信号WSが供給される。走査線DSにはドライブスキャナ5が接続されており、発光制御用の制御信号DSが供給される。走査線AZには補正用スキャナ7が接続されており、閾電圧補正用の制御信号AZが供給される。
列状の信号線SLと行状の走査線WS,DS,AZが交差する部分に、各画素回路2が集積形成されている。図10は、図示を簡略化するため1個の画素回路2のみを表示してある。図示するように、画素回路2は、6個のトランジスタTr1,Tr2,Tr3,Tr5,Tr6,Trdと、2個の画素容量Cs1,Cs2と、1個の発光素子ELとで構成されている。6個のトランジスタのうち、Tr1,Tr3,Tr5及びTr6はNチャネル型の薄膜トランジスタである。これに対しトランジスタTr2とTrdはPチャネル型の薄膜トランジスタである。一対のPチャネル型トランジスタTr2,Trdは画素容量Cs1を介してゲートが互いに接続されており、カレントミラー構成となっている。トランジスタTr2はカレントミラー回路の入力側に位置し、トランジスタTrdは出力側に位置する。この出力側に位置するトランジスタTrdは発光素子ELを駆動する為の駆動トランジスタである。発光素子ELはアノード及びカソードを備えた二端子型(ダイオード型)であり、例えば有機EL発光素子を用いる事ができる。駆動トランジスタTrdのソースSは電源Vccに接続されている。駆動トランジスタTrdのドレインDはトランジスタTr6を介して発光素子ELのアノードに接続している。発光素子ELのカソードは接地されている。駆動トランジスタTrdのゲートGは画素容量Cs1の一端に接続されている。図では画素容量Cs1の一端をA点で表してある。トランジスタTr5のソース/ドレインは駆動トランジスタTrdのゲートGとドレインDとの間に接続されている。このトランジスタTr5のゲートには走査線AZを介して補正用スキャナ7から制御パルスAZが供給される。本明細書では理解と表記を容易にする為、走査線と対応する制御信号は同じ表記を用いている。トランジスタTr6のソース/ドレインはドライブトランジスタTrdのドレインDと発光素子ELのアノードとの間に接続され、そのゲートは走査線DSを介してドライブスキャナ5から発光制御用の制御信号DSが供給される。カレントミラー回路の入力側を構成するトランジスタTr2は、そのソースSが電源Vccに接続され、ドレインDがトランジスタTr1を介して信号線SLに接続し、ゲートGが画素容量Cs1の他端に接続している。図では画素容量Cs1の他端をB点で表してある。トランジスタTr2は駆動トランジスタTrdのミラーであって、基本的に移動度μは等しい値となっている。トランジスタTr1のソース/ドレインは信号線SLとトランジスタTr2のドレインDとの間に接続され、そのゲートは走査線WSを介してライトスキャナ4から信号サンプリング用の制御信号WSを受け入れる。トランジスタTr3のソース/ドレインはトランジスタTr2のドレインDとB点との間に接続されており、そのゲートは走査線WSに接続されている。B点と電源Vccとの間に別の画素容量Cs2が接続されている。
図11は、図10に示した画素回路の動作説明に供するタイミングチャートである。時間軸Tに沿って、信号電流の波形及び各制御信号WS,AZ,DSの波形の変化を表している。合わせて、A点及びB点における電位の変化も表示してある。前述したように、A点は、カレントミラー回路を構成するペアトランジスタTr2,Trdの内、出力側に位置する駆動トランジスタTrdのゲートGである。またB点はペアトランジスタTr2,Trdの内、入力側に位置するミラートランジスタTr2のゲートGである。図示のタイミングチャートは、タイミングT1で1フィールドがスタートし、タイミングT7で1フィールドが終わる様になっている。1フィールドで1画面を表示する。このフィールド動作を繰り返すとこで連続的に画面を画素アレイに表示する。
信号線に流れる信号電流は1水平期間(1H)毎に変化している。各水平期間では、前半で所定の基準電流Irefが流れ、後半で信号電流Isigが流れる。基準電流Irefは固定されている一方、信号電流Isigは映像信号に応じたレベルを有する。
当該フィールドが開始する前のタイミングT0で制御信号WS及びAZはローレベルにある一方、制御信号DSはハイレベルにある。制御信号DSがハイレベルなのでスイッチングトランジスタTr6がオンしており、発光素子ELには駆動トランジスタTrdから駆動電流が供給される。したがって、タイミングT0では発光素子ELが発光状態にある。
タイミングT1で当該フィールドがスタートすると、制御信号WS及びAZが立ち上がり、全てのスイッチングトランジスタTr1,Tr3,Tr5,Tr6がオン状態になる。このとき略同時に信号線側が信号電流Isigから基準電流Irefに切り替わる。これにより、電源Vccから入力側トランジスタTr2及びスイッチングトランジスタTr1を通って信号線SLに基準電流Irefが流れる。これに応じて、入力側トランジスタTr2のゲートGに接続したB点の電位が基準電流Irefに対応したレベルになる。換言すると、画素容量Cs2に基準電流Irefに応じた電位が書き込まれる事になる。この動作はタイミングT4まで続く。すなわち、タイミングT1〜タイミングT4までの期間T1−T4でIrefの書き込みが行われる。
一方、A点側では、タイミングT1で一旦駆動トランジスタTrdに電流を流した後タイミングT2でスイッチングトランジスタTr6を遮断する。これにより、駆動トランジスタTrdは電流路を遮断されるのでゲート電位(A点電位)は上昇していく。A点電位が駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthに達した時点で、駆動トランジスタTrdはカットオフする。この動作で駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthが検出され、容量Cs1に保持される。この保持されたVthは後の発光動作で駆動トランジスタTrdの閾電圧のばらつきをキャンセルする為に用いられる。駆動トランジスタTrdがカットオフした後のタイミングT3で、制御信号AZはローレベルとなり、スイッチングトランジスタTr5がオフする。これにより、画素容量Cs1に書き込まれたVthが固定される。この様にして駆動トランジスタTrdのVthを検出保持する処理がタイミングT2〜タイミングT3の間で行われる。この期間T2−T3を本明細書ではVth補正期間あるいはVthキャンセル期間という。以上の説明から明らかなように、期間T1−T4の間でカレントミラー回路の入力トランジスタTr2側ではIref書き込みが行われる一方、出力側トランジスタTrdではVthキャンセルが行われる。
タイミングT4で信号線に流れる電流が基準電流Irefから信号電流Isigに切り替わる。この結果、入力側トランジスタTr2には電源Vccから信号線SLに向かって信号電流Isigが流れる。よってB点電位は先の基準電流Irefに応じたレベルから信号電流Isigに応じたレベルに変化する。この変化はカレントミラー動作により画素容量Cs1を介してA点側にカップリングされる。この後タイミングT5で制御信号WSがローレベルになり、トランジスタTr1及びTr3がオフする。この様にしてタイミングT4〜タイミングT5までの期間T4−T5でIsigがサンプリングされ且つIrefとIsigの差分に応じた電位変化がB点側からA点側にカップリングされる。
タイミングT6に至ると制御信号DSが再びハイレベルとなり、スイッチングトランジスタTr6がオンする。これにより駆動トランジスタTrdと発光素子ELが直結し、駆動トランジスタTrdから発光素子ELに駆動電流が供給され、発光状態となる。このとき駆動トランジスタTrdから供給される駆動電流は、A点に書き込まれた電位に応じたものとなる。A点電位は先に説明したように、基準電流と信号電流の差分に応じたものとなっている。
この後タイミングT7に至ると当該フィールドが終了すると共に次のフィールドが開始する。前のフィールドと同じようにタイミングT7でIref書き込みが始まると共に次のタイミングT8でVthキャンセル動作が始まる。
図12は、図11のタイミングチャートに示した期間T1−T4で行われるIref書き込み及びVth補正動作を示す模式図である。理解を容易にする為、この模式図では各スイッチングトランジスタTr1,Tr3,Tr5,Tr6をスイッチシンボルで置き換え、また画素容量Cs1,Cs2を容量値C1,C2で表してある。カレントミラー構成の画素回路の出力側でVth補正動作が行われる。すなわちトランジスタTr6をオン状態からオフ状態に切り替えることで駆動トランジスタTrdの電流路が遮断され、スイッチングトランジスタTr5を介して画素容量C1を充電し始める。その充電によりA点電位が駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthまで上昇すると、駆動トランジスタTrdがカットオフする。この後トランジスタTr5をオフすることで、画素容量C1に保持された閾電圧Vthが固定される。
一方カレントミラー回路の入力側でIref書き込むが行われる。トランジスタTr1及びTr3がオンしているので、電源Vccから入力側トランジスタTr2及びスイッチングトランジスタTr1を通って基準電流Irefが信号線に流れる。このとき入力側トランジスタTr2のゲートに接続したB点に現れる電位をVrefとする。このVrefは基準電流Irefに応じたレベルとなる。入力側トランジスタTr2のソースSとゲートGとの間に現れるゲート電圧VgsはVcc−Vrefで表される。ここで入力側トランジスタTr2はトランジスタTr3がオンなので飽和領域で動作しておりドレイン電流Irefとゲート電圧Vgsとの関係は以下の数式16で表される。
上記数式16において、VgsはVcc−Vrefで置き換えられている。したがって、数式16はIrefとVrefの関係を表したものとなる。
数式16をVrefについて整理すると、以下の数式17が得られる。
上記数式から明らかなように、B点電位Vrefは基準電流Irefの関数となっている。なお、数式17中μは入力側トランジスタTr2の移動度を表し、kは同じくトランジスタTr2のサイズを表し、Vthは同じくトランジスタTr2の閾電圧を表している。
図13は、図11に示したタイミングチャートの期間T4−T5で行われるIsig書き込み及びカップリング動作を示す模式図である。この期間T4−T5ではトランジスタTr5及びTr6がオフすると共に、信号線を流れる電流が基準電流Irefから信号電流Isigに切り替わる。これにより、電源Vccから入力側トランジスタTr2及びスイッチングトランジスタTr1を通って信号線にIsigが流れる。換言すると、この信号電流Isigは入力側トランジスタTr2を流れるドレイン電流となっている。このドレイン電流Isigが流れる事で、B点電位は先のVrefからVsigに変化する。Vrefを表す数式17と同じ計算で、Vsigが以下の数式18により表される。
上記数式18から明らかなように、B点電位Vsigは信号電流Isigの関数となっている。
B点に現れる電位変化はΔVb=Vsig−Vrefとなる。これに数式17及び数式18を代入すると、以下の数式19が得られる。
上記数式19から明らかなように、B点の電位変化ΔVbは基準電流Irefの平方根と信号電流Isigの平方根との差分となっている。
このB点の電位変化ΔVbはカレントミラー動作により画素容量C1を介してA点側にカップリングされる。カップリング量は画素容量C1と駆動トランジスタTrdのゲート容量Cgとの容量分割にて決定される。したがって、A点の電位変化ΔVaは以下の数式20により表される。
数式20のΔVbに数式19を代入すると、結局A点の電位変化ΔVaは以下の数式21で表される事になる。
上記数式21において、画素容量C1は駆動トランジスタTrdのゲート容量Cg比べて大きい。したがって数式21の右辺の係数C1/(C1+Cg)は1に近い値となっている。換言すると、カレントミラー回路の入力側の電位変化ΔVbは略そのまま出力側の電位変化ΔVaにミラーリングされる。
図14は図11に示したタイミングチャートの期間T6−T8で行われる発光動作を示す模式図である。発光期間ではスイッチングトランジスタTr1,Tr3,Tr5がオフする一方Tr6がオンする。これにより、駆動トランジスタTrdと発光素子ELが直結し、駆動電流Idsが流れて発光素子ELが発光する。このとき流れる駆動電流Idsは駆動トランジスタTrdのゲート電圧Vgsにより規定される。ゲート電圧Vgsは電源電位VccからA点電位Vaを引いたものである。A点電位VaはVthキャンセル動作で書き込まれた電位Vcc−Vthに数式21で求めた電位変化ΔVaを足したものである。したがってVa=Vcc−Vth+ΔVaとなる。この様にして求めたVgsを先の数式1で表したトランジスタの基本特性式に代入すると、駆動電流Idsが以下の数式22の様に求められる事になる。
上記数式22中で、μは駆動トランジスタTrdの移動度を表している。これはペアトランジスタの他方を構成するTr2の移動度μと同じである。またk´は駆動トランジスタTrdのサイズファクタを表している。数式22を整理すると、結局駆動電流Idsは信号電流Isigと基準電流Irefの差分に応じた値となっており、閾電圧Vth及び移動度μの影響はキャンセルされている。数式22で表された駆動電流IdsにはVthやμの項を含まない事が分かる。これにより、本発明にかかる画素回路は閾電圧Vthや移動度μのばらつきに依存しない、ユニフォーミティの高い画質を得る事ができる。また、駆動電流Idsの値はkとk´の比、つまりペアトランジスタTr2,Trdのサイズ比によって決められる。さらに本発明の画素回路では、黒表示はIsig=Irefに設定する事で得られる。数式22から明らかなようにIsig=IrefとすればIds=0となり、発光素子には駆動電流が流れないので完全な黒表示が得られる。黒表示の場合であっても、Isig及びIrefの絶対値は書き込みに充分な電流値としている。この為、黒信号でも1水平期間(1H)内に充分書き込む事ができ、黒浮きや縦クロストークなどの発生を抑制できる。なお、本画素回路は駆動トランジスタTrdとミラートランジスタTr2以外のスイッチングトランジスタTr1,Tr3,Tr5及びTr6はNチャネル型を用いているが、これに限られるものではなくPチャネル型であっても良い。あるいはNチャネル型とPチャネル型とを混在しても良い。
以上の説明から明らかなように、本発明にかかる画素回路2は、信号電流Isigが流れる信号線SLと制御信号を供給する走査線WS,DS,AZとが交差する部分に配されている。画素回路2は、発光素子ELとこれに駆動電流Idsを供給する駆動トランジスタTrdと各制御信号WS,AZ,DSに応じて動作し信号電流Isigに基づいて駆動トランジスタTrdの駆動電流Idsを制御する制御部とで構成されている。制御部は基本的に第1サンプリング手段と第2サンプリング手段と差分手段とを含む。第1サンプリング手段はスイッチングトランジスタTr1,Tr3と画素容量C2とミラートランジスタTr2とで構成され、信号線SLに流れる信号電流Isigをサンプリングする。第2サンプリング手段はスイッチングトランジスタTr1,Tr3と画素容量C2とミラートランジスタTr2とで構成され、信号電流Isigに前後して信号線SLに流れる所定の基準電流Irefをサンプリングする。差分手段は画素容量C1を含んでおり、サンプリングされた基準電流Irefに対するサンプリングされた信号電流Isigの差分に応じた制御電圧を生成する。駆動トランジスタTrdはこの制御電圧をゲートGに受けてソースS/ドレインD間に流れる駆動電流Idsを発光素子ELに供給して発光を行わせる。
図15は、本発明にかかる画素回路の別の実施形態を示す模式的な回路図である。画素回路2は、列状の信号線SLと行状の走査線WS1,WS2,WS3,AZ,DSとが交差する部分に配されている。信号線SLには図示しない電流ドライバーから信号電流Isigと基準電流Irefが前後して流される。走査線WS1,WS2,WS3,AZ,DSにはそれぞれ対応するスキャナから制御信号WS1,WS2,WS3,AZ,DSを供給する。本明細書では表記を簡略化する為、走査線とこれに対応する制御信号は同じ参照符号を用いてある。
画素回路2は、8個のスイッチングトランジスタTr1ないしTr8と、1個の駆動トランジスタTrdと、3個の画素容量Cs1ないしCs3と、発光素子ELとで構成されている。スイッチングトランジスタTr1ないしTr8は全てNチャネル型の薄膜トランジスタである。駆動トランジスタTrdはPチャネル型の薄膜トランジスタである。発光素子ELはアノード及びカソードを備えた二端子型(ダイオード型)の発光素子であり、例えば有機EL素子を用いる事ができる。なお、上記実施例ではトランジスタTr1〜Tr8は全てNチャネル型としているが、これらは全てPチャネル型もしくはNチャネル型とPチャネル型が混在していても構わない。
駆動トランジスタTrdはそのソースSが電源Vccに接続されており、ドレインDがスイッチングトランジスタTr1を介して発光素子ELのアノード側に接続され、そのゲートGは画素容量Cs3の一端に接続されている。駆動トランジスタTrdと発光素子ELの間に介在するスイッチングトランジスタTr1のゲートには、走査線DSから制御信号DSが印加される。駆動トランジスタTrdのゲートGとドレインDとの間にスイッチングトランジスタTr2が接続されている。このトランジスタTr2のゲートは走査線AZに接続されている。
スイッチングトランジスタTr3のソース/ドレインは信号線SLと画素容量Cs3の他端との間に接続されている。このトランジスタTr3のゲートは走査線WS1に接続している。スイッチングトランジスタTr5は画素容量Cs3の他端と画素容量Cs1の一端との間に接続されている。このスイッチングトランジスタTr5のゲートはトランジスタTr3と同じく走査線WS1に接続されている。画素容量Cs1の他端は電源Vccに接続されている。スイッチングトランジスタTr4は電源Vccと画素容量Cs2の一端との間に接続されている。このスイッチングトランジスタTr4のゲートは走査線WS2に接続している。画素容量Cs2の他端は画素容量Cs3の他端に接続している。スイッチングトランジスタTr6は画素容量Cs1の一端と画素容量Cs2の一端との間に接続されている。このトランジスタTr6のゲートは走査線WS3に接続している。またトランジスタTr7は画素容量Cs1の他端と画素容量Cs2の他端との間に接続されている。このスイッチングトランジスタTr7のゲートは、Tr6と同じく走査線WS3に接続されている。最後にスイッチングトランジスタTr8は駆動トランジスタTrdのドレインDと画素容量Cs3の他端との間に接続されている。このトランジスタTr8のゲートは、スイッチングトランジスタTr3及びTr5と同じく走査線WS1に接続されている。
図16は、図15に示した画素回路2の動作説明に供するタイミングチャートである。時間軸Tに沿って、制御信号DS,AZ,WS1,WS2,WS3の波形変化を表している。同時に信号電流Isigの波形変化も表してある。この信号電流Isigは1水平期間(1H)毎に信号レベルが変化する。また各水平期間内で前半に信号電流Isigが流れた後後半は所定の基準電流Irefに切り替わる。基準電流Irefは固定されているのに対し、信号電流Isigは映像信号に応じて変化する。本表示装置は1フィールドで1画面を画素アレイに書き込む。図16のタイミングチャートでは、1フィールドがタイミングT1から始まるように記載されている。
当該フィールドが開始するタイミングT1の前の期間T0で、制御信号DSがハイレベルにある一方残りの制御信号AZ,WS1,WS2,WS3はローレベルにある。制御信号DSがハイレベルなのでスイッチングトランジスタTr1がオンしており、発光素子ELは駆動トランジスタTrdによって駆動されており、発光状態にある。
タイミングT1で当該フィールドが開始すると、制御信号AZ及びWS3がローレベルからハイレベルに切り替わる。これにより駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthを検出する準備状態に入る。続いてタイミングT2で制御信号DSがハイレベルからローレベルに切り替わり、発光素子ELが発光状態から非発光状態になると共に、駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthの検出が行われる。続いてタイミングT3で制御信号AZ及びWS3がローレベルになり、検出された閾電圧が保持固定される。この保持固定されたVthは後の発光段階で駆動トランジスタTrdの閾電圧のばらつきのキャンセルもしくは補正に用いられる。そこで、タイミングT2〜タイミングT3までの期間T2−T3をVth補正期間と呼ぶ場合がある。
タイミングT4に進むと制御信号WS1及びWS2がハイレベルに切り替わる。この時信号線SLには信号電流Isigが流れている。この信号電流Isigがサンプリングされて画素回路2に書き込まれる。続いてタイミングT5で制御信号WS2がローレベルに切り替わるとIsigの書き込みが終了する。タイミングT4〜タイミングT5までIsigがサンプリングされる期間をIsig書き込み期間と呼ぶ場合がある。
続いてタイミングT5のあと信号線SLに流れる電流が信号電流IsigからIrefに切り替わると、この基準電流Irefのサンプリングが行われる。タイミングT6で制御信号WS1がローレベルに戻ると、Irefの書き込みが終了する。タイミングT5〜タイミングT6までの期間T5−T6はIref書き込み期間と呼ばれる。以上の説明から明らかなように、タイミングT4〜T6まで制御信号WS1がハイレベルの間に、Isig書き込みとIref書き込みが順次行われる。制御信号WS1がハイレベルの期間T4−T6は丁度1水平期間(1H)となっている。当該画素回路2に割り当てられた1水平期間1Hで順次Isig及びIrefをサンプリングする事ができる。
この後タイミングT7で制御信号WS3が立ち上がり、タイミングT8で同じく制御信号WS3が立ち下がる。この制御信号WS3がハイレベルにある期間T7−T8でIsigとIrefの差分が求められる。この差分は画素容量Cs1とCs2のキャンセル動作によって行われる。そこでこの期間T7−T8を容量キャンセル期間と呼ぶ場合がある。
タイミングT9になると、制御信号DSがハイレベルに変ると共に制御信号WS2もハイレベルになる。これにより、画素容量Cs2とCs3が結合されると共に、駆動電流Idsが駆動トランジスタTrdから発光素子ELに供給され、発光動作が行われる。
図17は、図16に示したVth補正期間T2−T3で行われるVthキャンセル動作を示す模式図である。この期間T2−T3で、スイッチングトランジスタTr1、Tr3、Tr4、Tr5、Tr8がオフしている一方、Tr2,Tr6及びTr7がオンしている。この結果画素容量Cs3の一端は駆動トランジスタTrdのゲートに接続する一方、他端はトランジスタTr7を介して電源Vccに接続している。電源Vccから発光素子ELに向かって電流が流れている状態でスイッチTr1をオフすると、電流路が遮断される為トランジスタTr2を介して画素容量Cs3を充電していく。この充電に伴い駆動トランジスタTrdのゲート電位は上昇していく。丁度ゲート電位が駆動トランジスタTrdのVthとなったところで駆動トランジスタTrdがカットオフする。この時点で検出された駆動トランジスタTrdのVthが画素容量Cs3の両端に保持される。この後トランジスタTr2がオフして、画素容量Cs3に保持されたVthが固定される。この様にして保持固定されたVthは後の発光動作で駆動トランジスタTrdの閾電圧のばらつきのキャンセルもしくは補正に用いられる。
図18は、図16のタイミングチャートに示した期間T4−T5で行われるIsig書き込み動作を示す模式図である。この期間では、信号線に信号電流Isigが流れている。また、トランジスタTr1,Tr2,Tr6,Tr7がオフしている一方、トランジスタTr3,Tr4,Tr5,Tr8がオンしている。この結果、信号電流Isigが電源Vccから駆動トランジスタTrd,スイッチングトランジスタTr8,スイッチングトランジスタTr3を通って信号線側に流れる。換言すると、Isigがドレイン電流として駆動トランジスタTrdを流れた事になる。よって、数式1で示したトランジスタの基本特性に従い、ドレイン電流Isigは以下の数式23で表される。
上記数式23において、Vgsは駆動トランジスタTrdのゲートソース間に現れるゲート電圧を表し、Vthは同じく駆動トランジスタTrdの閾電圧を表し、kは同じく駆動トランジスタTrdのサイズファクタを表し、μは同じく移動度を表している。
ここで数式23をVgsについて整理すると、以下の数式24が得られる。
ここで図18を参照すると駆動トランジスタTrdのソースとゲートとの間には画素容量Cs2とCs3が直列接続されている。ここで画素容量Cs2の両端に保持された電圧をVcs2とし画素容量Cs3に保持された電圧をVcs3とすると、ゲート電圧Vgs=Vcs2+Vcs3で与えられる。ここで先のVthキャンセル動作により、Vcs3はVthに設定されている。したがってVgs=Vcs2+Vthとなる。この式のVgsに数式24で与えられたVgsを代入してまとめると、画素容量Cs2に保持された電圧Vcs2が以下の数式25により与えられる
上記数式25から明らかなように、画素容量Cs2に保持された電圧Vcs2は信号電流Isigの平方根に比例している。換言すると、期間T4−T5のIsig書き込み動作により、画素容量Cs2に信号電流Isigに対応した電圧Vcs2がサンプリング保持された事になる。
図19は、図16に示した期間T5−T6で行われるIref書き込み動作を示す模式図である。図18に示したIsig書き込み動作から本図のIrefの書き込み動作に進むと、制御線WS2がローレベルになる結果、トランジスタTr4がオフする。その他のスイッチングトランジスタの状態はそのまま維持されている。したがって、図18と図19を比較すれば明らかなように、画素容量Cs2が画素容量Cs1に切り替わった関係となっている。より具体的には、図18のIsig書き込み動作では、駆動トランジスタTrdのソース/ゲート間には画素容量Cs2及びCs3が直列に接続されていたのに対し、本図のIref書き込み動作では駆動トランジスタTrdのソースとゲートとの間に画素容量Cs1と画素容量Cs3が直列に接続されている。すなわち、回路動作としては単にCs2がCs1に入れ代わっているに過ぎない。このとき信号線には先のIsigに代わってIrefが流れている。より具体的には、基準電流Irefは電源Vccから駆動トランジスタTrdを通り、さらにスイッチングトランジスタTr8及びTr3を介して信号線側に流れる。このとき駆動トランジスタTrdのソースとゲートとの間に生じるゲート電圧Vgsの一部が画素容量Cs1に保持される。この電圧をVcs1とすると、数式25の場合と全く同様にして、以下の数式26のように表される。
ここで数式25と数式26を比較すれば明らかなように、式の左辺がVcs2からVcs1に置き換わる一方、式の右辺はIsigからIrefに置き換わっている。数式26から明らかなように、画素容量Cs1に保持された電圧Vcs1は基準電流Irefの平方根に対応している。換言すると、このIref書き込み動作で、画素容量Cs1に基準電流Irefに対応した電圧がサンプリングされた事になる。
図20は、図16に示したタイミングチャートの期間T7−T8で行われる容量キャンセル動作を示す模式図である。この動作ではスッチングトランジスタTr3,Tr5及びTr8がオフする一方、Tr6及びTr7がオンする。これにより、画素容量Cs1のマイナス側端子と画素容量Cs2のプラス側端子が接続され、且つ画素容量Cs1のプラス側端子と画素容量Cs2のマイナス側端子が接続される。これにより画素容量Cs1とCs2の容量キャンセルがVcs1とVcs2との間で行われる。つまり、画素容量Cs1に保持された電圧Vcs1と画素容量Cs2に保持された電圧Vcs2の差分が得られ且つこの差分が画素容量Cs2の両端に保持される。ここで画素容量Cs1とCs2の容量が等しい場合、容量キャンセル後の画素容量Cs2に保持された電位Vcs2´は以下の数式27で与えられる。
上記数式27から明らかなように、Vcs2´は信号電流Isigと基準電流Irefとの差分に応じた値となっている。正確には、Isigの平方根とIrefの平方根との差に応じた電圧が画素容量Cs2にVcs2´として保持される事になる。
図21は、図16に示したタイミングT9以降に行われる発光期間における容量結合及び発光動作を示す模式図である。タイミングT9に至ると、制御信号DSとWS2がハイレベルになる一方、他の制御信号は全てローレベルである。したがってスイッチングトランジスタTr4及びTr1がオン状態になる一方、残りのスイッチングトランジスタTr3,Tr5,Tr6,Tr7,Tr2,Tr8はオフ状態である。Tr4がオンになる為、駆動トランジスタTrdのソースとゲートとの間で画素容量Cs2とCs3が結合される。このとき駆動トランジスタTrdのゲート容量Cgが充分小さいので、画素容量Cs2とCs3はお互いの電荷を保持した状態で結合される。つまり、発光時における駆動トランジスタTrdのゲート電圧VgsはVgs=Vcs3+Vcs2´=Vth+Vcs2´となる。
この様にして得られたVgsを先の数式1で示したトランジスタの基本特性式に入れると、以下の数式28に示すような駆動電流Idsが得られる。
上記数式28の一段目で、VgsにVth+Vcs2´を代入している。これにより、Vthがキャンセルされ、駆動電流IdsはVcs2´の2乗に比例した形となる。さらに数式28の二段目に示すようにVcs2´に数式27を代入する。このあと分母に現れる移動度μと係数部の移動度μがキャンセルされ、最終的に数式28の三段目で表す形となる。この式から明らかなように、IsigとIrefの電流差分値により駆動電流(発光電流)Idsが決定され、駆動トランジスタのVthや移動度μのばらつきによらないユニフォーミティの高い画質を得る事ができる。さらに本発明の画素回路では黒表示時Isig=Irefに設定する。数式28から明らかなように、Isig=IrefにするとIds=0となり、発光電流はなくなる。この結果完全な黒表示となる。一方黒表示でもIrefの絶対値は充分に高いレベルに設定する事ができ、1水平期間(1H)内で充分に黒信号を書き込む事ができる事になる。これにより、黒浮きや縦クロストークなどの発生を抑制でき、完全に沈んだ黒を表現でき高いコントラスト特性を得る事ができる。
以上説明したように、図15に示した本発明の実施形態にかかる画素回路は、信号電流Isigが流れる信号線SLと、制御信号を供給する走査線WS1,WS2,WS3,AZ,DSとが交差する部分に配されている。この画素回路2は、発光素子ELと、発光素子ELに駆動電流Idsを供給する駆動トランジスタTrdと、制御信号WS1,WS2,WS3,AZ,DSに応じて動作し信号電流Isigに基づいて駆動トランジスタTrdの駆動電流Idsを制御する制御部とで構成されている。この制御部は、第1サンプリング手段と第2サンプリング手段と差分手段とを含んでいる。第1サンプリング手段は、トランジスタTr3,Tr4,Tr8と画素容量Cs2とで構成されており、信号線SLに流れる信号電流Isigをサンプリングする。第2サンプリング手段はトランジスタTr3,Tr5,Tr8と画素容量Cs1とで構成され、信号電流Isigに前後して信号線SLに流れる所定の基準電流Irefをサンプリングする。差分手段はトランジスタTr6,Tr7と一対の画素容量Cs1,Cs2で構成されており、サンプリングされた基準電流Irefに対するサンプリングされた信号電流Isigの差分に応じた制御電圧Vcs2´を生成する。駆動トランジスタTrdは、この制御電圧をゲートGに受けてソース/ドレイン間に流れる駆動電流Idsを発光素子ELに供給して発光を行わせる。
第1及び第2サンプリング手段が各々サンプリングする信号電流Isig及び基準電流Irefは、両者の相対的な差分が小さいとき発光素子ELの発光量が小さくなり差分が大きいとき発光量が大きくなる一方、相対的な差分が小さいときでも信号電流Isig及び基準電流Irefの絶対的なレベルはサンプリングを可能とするように大きく設定されている。
画素回路2の制御部は、上述した第1及び第2サンプリング手段と差分手段に加え、補正手段を有している。この補正手段はトランジスタTr1,Tr2,Tr7と画素容量Cs3とで構成されており、駆動トランジスタTrdの閾電圧Vthを検出してこれを前述した制御電圧Vcs2´に加える事ができる様にしている。これにより、閾電圧Vthの影響を駆動電流Idsからキャンセルする事ができる。
1・・・画素アレイ、2・・・画素回路、3・・・電流ドライバー、4・・・ライトスキャナ、5・・・ドライブスキャナ、7・・・補正用スキャナ、41・・・第一ライトスキャナ、42・・・第二ライトスキャナ、43・・・第三ライトスキャナ、Trd・・・駆動トランジスタ、Tr1・・・スイッチングトランジスタ、Tr2・・・スイッチングトランジスタ、Tr3・・・スイッチングトランジスタ、Tr4・・・スイッチングトランジスタ、Tr5・・・スイッチングトランジスタ、Tr6・・・スイッチングトランジスタ、Tr7・・・スイッチングトランジスタ、Tr8・・・スイッチングトランジスタ、EL・・・発光素子、Cs1・・・画素容量、Cs2・・・画素容量、Cs3・・・画素容量
Claims (10)
- 信号電流が流れる信号線と制御信号を供給する走査線とが交差する部分に配され、
発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する制御部とからなる画素回路であって、
前記制御部は該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手段と、該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手段と、サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手段とを含み、
前記駆動トランジスタは該制御電圧をゲートに受けてソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給して発光を行わせることを特徴とする画素回路。 - 前記第1及び第2サンプリング手段が各々サンプリングする信号電流及び基準電流は、両者の相対的な差分が小さい時該発光素子の発光量が少なくなり且つ差分が大きい時発光量が多くなる一方、両者の相対的な差分が小さい時でも該信号電流及び基準電流の絶対的なレベルはサンプリングを可能とする様に大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の画素回路。
- 前記制御部は、該駆動トランジスタの閾電圧を検出してこれを該制御電圧に加える補正手段を有しており、該閾電圧の影響を該駆動電流からキャンセルすることを特徴とする請求項1記載の画素回路。
- 前記第1サンプリング手段は該信号電流を該駆動トランジスタに流してその時ゲートに発生する信号電圧をサンプリングし、前記第2サンプリング手段は該駆動トランジスタに該基準電流を流してその時ゲートに発生する基準電圧をサンプリングし、前記差分手段は容量を介して該信号電圧と該基準電圧をカップリングさせ両者の差分を求めて該制御電圧を生成することを特徴とする請求項1記載の画素回路。
- 前記第1サンプリング手段はサンプリングした信号電圧を保持する第1の容量を有し、前記第2サンプリング手段はサンプリングした基準電圧を保持し且つ該信号電圧にカップリングする為の第2の容量を有し、前記第1及び第2の容量は同一の容量値を有することを特徴とする請求項4記載の画素回路。
- 画素アレイ部とドライバー部とスキャナ部とからなり、
前記画素アレイ部は、列状の信号線と、行状の走査線と、両者の交差する部分に配された行列状の画素回路とからなり、
前記ドライバー部は、各信号線に信号電流を流し、
前記スキャナ部は、各走査線に制御信号を供給し、
各画素回路は、発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する画素内制御部とからなる表示装置であって、
前記画素内制御部は、該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手段と、該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手段と、サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手段とを含み、
前記駆動トランジスタは該制御電圧をゲートに受けてソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給して発光を行わせることを特徴とする表示装置。 - 前記第1及び第2サンプリング手段が各々サンプリングする信号電流及び基準電流は、両者の相対的な差分が小さい時該発光素子の発光量が少なくなり且つ差分が大きい時発光量が多くなる一方、両者の相対的な差分が小さい時でも該信号電流及び基準電流の絶対的なレベルはサンプリングを可能とする様に大きく設定されていることを特徴とする請求項6記載の表示装置。
- 前記画素内制御部は、該駆動トランジスタの閾電圧を検出してこれを該制御電圧に加える補正手段を有しており、該閾電圧の影響を該駆動電流からキャンセルすることを特徴とする請求項6記載の表示装置。
表示装置 - 信号電流が流れる信号線と制御信号を供給する走査線とが交差する部分に配され、発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する制御部とからなる画素回路の駆動方法であって、
該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手順と、
該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手順と、
サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手順と、
該制御電圧を前記駆動トランジスタのゲートに印加しソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給する発光手順とを行なうことを特徴とする画素回路の駆動方法。 - 画素アレイ部とドライバー部とスキャナ部とからなり、前記画素アレイ部は、列状の信号線と、行状の走査線と、両者の交差する部分に配された行列状の画素回路とからなり、前記ドライバー部は各信号線に信号電流を流し、前記スキャナ部は各走査線に制御信号を供給し、各画素回路は、発光素子と、該発光素子に駆動電流を供給する駆動トランジスタと、該制御信号に応じて動作し該信号電流に基づいて該駆動トランジスタの駆動電流を制御する画素内制御部とからなる表示装置の駆動方法であって、
該信号線に流れる信号電流をサンプリングする第1サンプリング手順と、
該信号電流に前後して該信号線に流れる所定の基準電流をサンプリングする第2サンプリング手順と、
サンプリングされた該信号電流と該基準電流の差分に応じた制御電圧を生成する差分手順と、
該制御電圧を前記駆動トランジスタのゲートに印加しソース・ドレイン間に流れる駆動電流を該発光素子に供給する発光手順とを行なうことを特徴とする表示装置の駆動方法。
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