JP2009275564A - 可変圧縮比内燃機関の始動制御装置 - Google Patents

可変圧縮比内燃機関の始動制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関の始動制御装置において、機関始動時における混合気の着火性を好適に高めることのできる技術を提供する。
【解決手段】圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構9を備える内燃機関1において、機関始動時におけるバッテリ電圧である始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimよりも低い場合には、始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlim以上である場合と比べて機関始動時の目標圧縮比εtを高圧縮比側に制御する。
【選択図】図5

Description

本発明は、可変圧縮比内燃機関の始動制御装置に関する。
内燃機関の圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を備える可変圧縮比内燃機関が公知である。ここで、機関始動時(クランキング時)において、スタータに駆動力を供給するバッテリの電圧が低下していると、スタータの駆動出力が低下する。一方、内燃機関の圧縮比を高くするほどフリクショントルクは増大する。
これに関連して、特許文献1には、機関始動時におけるバッテリ電圧が低いほど、当該始動時における圧縮比を低圧縮比に制御する可変圧縮比内燃機関の始動制御装置が開示されている。この技術では、機関始動時にスタータの駆動出力が低下する条件下においては、内燃機関の圧縮比を低圧縮比側に制御してポンプロスを減少させている。このようにして、機関始動時のフリクショントルクを減少させることによって、機関回転数を上昇させやすくしている。
特開2005−16381号公報
しかし、上記従来技術によれば機関始動時のバッテリ電圧が低い場合においてもスタータを駆動させやすいものの、内燃機関の圧縮行程において圧縮された混合気の温度が低くなってしまう。その結果、混合気の着火性が低下する場合がある。さらに、バッテリ電圧が低いと点火プラグによるスパーク(火花)のエネルギも減少しやすいため、混合気の着火性が悪化すると内燃機関が失火する虞がある。また、その場合には始動期間が延長されてしまい、バッテリ電圧の更なる低下が助長されてしまう虞もある。
本発明は上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関の始動制御装置において、機関始動時における混合気の着火性を好適に高めることのできる技術を提供することである。
本発明は、上記した課題を解決するために、機関始動時におけるバッテリの電圧である始動時電圧が低い場合には、該始動時電圧が高い場合と比較して内燃機関の圧縮比を増加させるようにした。
より詳しくは、本発明にかかる可変圧縮比内燃機関の始動制御装置は、内燃機関の圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、
前記内燃機関に設けられるバッテリと、
機関始動時における前記バッテリの電圧である始動時電圧を取得する取得手段と、
前記始動時電圧が所定の基準電圧よりも低い場合に、該始動時電圧が該基準電圧以上である場合と比べて機関始動時における前記内燃機関の圧縮比が高くなるように前記可変圧縮比機構を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
本発明における所定の基準電圧とは、混合気の着火性を改善させなくても内燃機関の円滑な始動を実現できる(例えば、始動時間(クランキング時間)が過度に長くならない)と判断される始動時電圧の下限値である。この基準電圧は、バッテリから電力供給がなさ
れるスタータモータや、点火プラグの定格などに基づいて定めるようにしても良い。
上記構成によれば、始動時電圧が基準電圧よりも低い場合には、該始動時電圧が基準電圧以上に維持されている場合と比べて、機関始動時における内燃機関の圧縮比が高められる。つまり、機関始動時において混合気の着火性が悪化する虞のある条件下では、そうでない場合に比べて機関始動時における内燃機関の圧縮比が高圧縮比側に制御される。
これによれば、圧縮端温度(ピストンが上死点に位置する時の気筒内の温度)及び混合気の燃焼温度を高めることができるので、混合気の着火性を高めることができる。そのため、バッテリ電圧が低いことによって、点火プラグによるスパーク(火花)のエネルギが少なくなっても、混合気への確実な着火を担保することができる。また、混合気の着火性を向上させることによって内燃機関の始動期間の短縮が実現できるので、バッテリの電圧の更なる低下を抑制することができる。
なお、本発明にかかる可変圧縮比機構は、燃焼室容積(ピストンが上死点にある時のシリンダ容積)とピストンが下死点にある時のシリンダ容積との比(機械圧縮比)を変更可能な機構であっても良い。あるいは、吸気弁の閉弁時期を変更することにより燃焼室容積と吸気弁閉弁時のシリンダ容積との比(有効圧縮比)を変更する機構であっても良い。
また、本発明において、制御手段は、始動時電圧が低いほど機関始動時における内燃機関の圧縮比が高くなるように可変圧縮比機構を制御すると好適である。これによれば、機関始動時における内燃機関の圧縮比を始動時電圧に応じて細やかに制御することができる。なお、機関始動時における内燃機関の圧縮比と始動時電圧との関係、始動時電圧が低くなるに従って機関始動時における内燃機関の圧縮比の目標値を連続的に変更しても良いし、段階的に変更しても良い。
本発明によれば、圧縮比を変更可能な可変圧縮比内燃機関の始動制御装置において、機関始動時における混合気の着火性を好適に高めることができる。
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を例示的に詳しく説明する。尚、本実施の形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
<実施例1>
本発明を実施するための実施例1について説明する。図1は、本実施例における圧縮比を可変とする可変圧縮比内燃機関(以下、単に「内燃機関」という)1の概略構成を示した図である。尚、本実施例においては、内燃機関1を簡潔に表示するため、一部の構成要素の表示を省略している。
シリンダ2内の燃焼室には、シリンダヘッド10に設けられた吸気ポート18を介して吸気管19が接続されている。シリンダ2への吸気の流入は吸気弁5によって制御される。吸気弁5の開閉は、吸気側カム7の回転駆動によって制御される。また、シリンダヘッド10に設けられた排気ポート20を介して、排気管21が接続されている。シリンダ2外への排気の排出は排気弁6によって制御される。排気弁6の開閉は排気側カム8の回転駆動によって制御される。
更に、吸気ポート18には、該吸気ポート18を流れる吸気に燃料を噴射する燃料噴射
弁17が取り付けられている。また、シリンダ2の頂部には、シリンダ2内の混合気に点火する点火プラグ16が設けられている。また、ピストン15は、コンロッド14を介してクランクシャフト13に接続されている。これにより、ピストン15の往復運動に伴ってクランクシャフト13が回転する。クランクシャフト13の端部には、外周にリングギアが形成されたフライホイール22が設けられている。
また、内燃機関1には、バッテリ23を電源として作動するスタータ24が設置されている。このスタータ24には、フライホイール22に形成されたリングギアに噛み合うように形成されたピニオンが設けられている。そして、バッテリ23から供給する駆動電圧を受けてスタータ24が作動し、フライホイール22がクランキングされることでクランクシャフト13が回転する。また、クランクシャフト13の近傍には、該クランクシャフト13の回転角度(クランク角)を検出するクランクポジションセンサ25が配置されている。
内燃機関1には、該内燃機関1を制御するための電子制御ユニット(以下、「ECU」という)30が併設されている。このECU30は、CPUの他、後述する各種のプログラム及びマップを記憶するROM、RAM等を備えており、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態等を制御するユニットである。
このECU30には、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)に応じた電気信号を出力するアクセル開度センサ27が電気的に接続されている。そして、ECU30はアクセル開度に応じた信号を受け取り、内燃機関1に要求される機関負荷等を算出する。また、クランクポジションセンサ25がECU30と電気的に接続されている。そして、ECU30は内燃機関1のクランク角に応じた信号を受け取ることで、内燃機関1の機関回転数や、該機関回転数とギア比等から内燃機関1が搭載されている車両の車両速度等を算出する。また、ECU30には、内燃機関1のウォータージャケット内を循環する冷却水の温度に応じた信号を出力する水温センサ26が電気的に接続されており、その出力信号がECU30に入力される。更に、ECU30には、スタータ24のON、OFFを切り替えるスタータスイッチSW(不図示)が電気的に接続されており、スタータスイッチSWの出力信号(ON−OFF信号)がECU30に入力される。なお、スタータスイッチSWは内燃機関1を搭載した車両の運転席に設けられている。
また、ECU30には、燃料噴射弁17、点火プラグ16およびスタータ24が電気的に接続されており、これらがECU30によって制御される。更に、バッテリ23もECU30と電気的に接続されており、ECU30からの指令によってバッテリ23がスタータ24や点火プラグ16へと電力を供給すると共に、バッテリ23の出力電圧(以下、「バッテリ電圧」という)VBがECU30へと入力される。尚、本実施例において、バッテリ電圧VBはバッテリ23の出力端子間の電圧であり、バッテリ24の蓄電量と相関がある。
また、本実施例における内燃機関1には可変圧縮比機構9が備えられている。この可変圧縮比機構9によって、シリンダブロック3をクランクケース4に対してシリンダ2の軸線方向に相対移動させることで、内燃機関1の圧縮比が変更される。即ち、可変圧縮比機構9が、シリンダブロック3と共にシリンダヘッド10を、シリンダ2の軸線方向にクランクケース4に対して相対移動させることによって、シリンダブロック3、シリンダヘッド10およびピストン15によって構成される燃焼室の容積が変更され、その結果、内燃機関1の圧縮比が可変制御される。例えば、シリンダブロック3がクランクケース4から遠ざかる方向に相対移動すると、燃焼室容積が増えて圧縮比が低下する。逆に、シリンダブロック3がクランクケース4に近づく方向に相対移動すると、燃焼室容積が減って圧縮比が増加する(高まる)。
ここで、可変圧縮比機構9の詳細構成について説明する。可変圧縮比機構9は、軸部9aと、該軸部9aの中心軸に対して偏心された状態で軸部9aに固定された正円形のカムプロフィールを有するカム部9bと、カム部9bと同一外形を有し軸部9aに対して回転可能且つカム部9bと同じように偏心状態で取り付けられた可動軸受部9cと、軸部9aと同心状に設けられたウォームホイール9dと、ウォームホイール9dと噛み合うウォーム9eと、ウォーム9eを回転駆動させるモータ9fによって構成される。
そして、カム部9bはシリンダブロック3に設けられた収納孔内に設置され、可動軸受部9cはクランクケース4に設けられた収納孔内に設置されている。また、モータ9fは、シリンダブロック3に固定されており、シリンダブロック3と一体的に移動する。ここで、モータ9fからの駆動力は、ウォーム9eとウォームホイール9dとを介して軸部9aに伝えられる。そして、偏心状態にあるカム部9b、可動軸受部9cが駆動されることで、シリンダブロック3がクランクケース4に対してシリンダ2の軸線方向に相対移動させられる。
ここで、可変圧縮比機構9を構成するモータ9fはECU30と電気的に接続されている。そして、ECU30からの指令によりモータ9fが駆動されて、可変圧縮比機構9による内燃機関1の圧縮比の変更が行われる。具体的には、内燃機関1の運転状態(機関負荷と機関回転数)に基づいて圧縮比の目標値(以下、「目標圧縮比」という)εtが設定され、圧縮比がこの目標圧縮比εtに一致するように可変圧縮比機構9が制御される。
例えば、内燃機関1の通常運転状態では、内燃機関1のノッキングを回避するために、低機関負荷から高機関負荷になるに従い又は低機関回転数から高機関回転数になるに従い、目標圧縮比εtは低圧縮比側に変更される。つまり、シリンダブロック3をクランクケース4から遠ざける方向にモータ9fを駆動して、内燃機関1の圧縮比を高圧縮比から低圧縮比へと移行させる。このように内燃機関1の通常運転状態においては、その運転状態と目標圧縮比εtとの関係が格納された通常時用マップに基づいて目標圧縮比εtが導出される。なお、この通常時用マップは、ECU30のROMに記憶されており、運転状態をパラメータにアクセスすることで目標圧縮比εtを随時読み出すことができる。また、本実施例において通常運転状態とは、内燃機関1の始動(クランキング)時を除いた運転状態をいう。
次に、本実施例に係る内燃機関1の始動時に実施される制御、特に内燃機関1の圧縮比にかかる制御について説明する。本実施例においては、スタータスイッチSWがOFFからONへと切り替えられると、ECU30はバッテリ23に指令を出し、該バッテリ23からスタータ24へと駆動電力が供給される。このようにしてスタータ24を作動させることにより内燃機関1が始動(クランキング)される。その後は、燃料噴射弁17からの燃料噴射制御や、点火プラグ16による混合気への点火制御などの各種エンジン制御が実行される。なお、スタータ24の作動は、内燃機関1の機関回転数が、スタータ24の作動停止の閾値であるスタータ停止回転数に達すると停止される。
次に、内燃機関1の始動時における可変圧縮比機構9による圧縮比にかかる制御(以下、「始動時圧縮比制御」という)について詳しく説明する。本実施例では、内燃機関1の始動時用の目標圧縮比である基本圧縮比εstbが予め設定されている。この基本圧縮比εstbは、スタータ24による内燃機関1のクランキングが行われる期間に設定される圧縮比の目標値であり、その値は予め実験等によって適合値を求めておく。本実施例では、既述した通常時用マップにおいて設定される目標圧縮比εtに比べて高圧縮比側となるように基本圧縮比εstbを設定している。
ところで、機関始動時におけるバッテリ電圧(以下、「始動時バッテリ電圧」という)VBstがバッテリ23の最大バッテリ電圧VBmaxと比較してある程度低下している状態で内燃機関1が始動される場合がある。この最大バッテリ電圧VBmaxは、バッテリ23の蓄電量が最大容量に一致するときにおけるバッテリ23の出力端子間の電圧である。
上記のように始動時バッテリ電圧VBstが低下すると点火プラグ16の点火電圧も低下することになる。そのため、点火プラグ16の電極間におけるスパーク(火花)のエネルギが減少することで、燃焼室内の混合気の着火性が悪化しやすくなる。そうすると内燃機関1が失火する虞や、始動期間が延長されてしまうことによってバッテリ電圧VBの更なる低下が助長されてしまう虞がある。
これに対して、本実施例では、始動時バッテリ電圧VBstが低い場合には、高い場合と比較して機関始動時における目標圧縮比εtを高く設定して始動時圧縮比制御を実行するようにした。本実施例においては始動時バッテリ電圧VBstが本発明における始動時電圧に相当する。
ここで、図2は、本実施例の始動時圧縮比制御にかかる機関始動時の目標圧縮比εtと始動時バッテリ電圧VBstとの関係を例示したマップである。横軸に始動時バッテリ電圧VBstを表し、縦軸に機関始動時の目標圧縮比εtを表す。横軸の符号VBlimは、許容バッテリ電圧を意味しており、混合気の着火性を特段改善しなくても内燃機関1の円滑な始動を実現できると判断される始動時バッテリ電圧VBstの下限値であり、予め実験的に求められる。
本実施例では、機関始動時の目標圧縮比εtを基本圧縮比εstbとした場合の、スタータ24の作動により内燃機関1のクランキングが開始されてから内燃機関1の機関回転数がスタータ停止回転数に達するまでに要する期間(以下、「クランキング期間」という)と、始動時バッテリ電圧VBstとの関係を予め実験等に求めておく。そして始動時バッテリ電圧VBstが最大バッテリ電圧VBmaxのときに比べて上記クランキング期間が過度に長くならない範囲で許容バッテリ電圧VBlimを設定することとした。さらに、本実施例における許容バッテリ電圧VBlimは、スタータ24および点火プラグ16の定格などにも基づいて設定されている。
図示のように、始動時バッテリ電圧VBstが、許容バッテリ電圧VBlim以上である場合(VBlim≦VBst≦VBmax)には、機関始動時の目標圧縮比εtとして基本圧縮比εstbが採用される。そして、始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimより低い場合(VBst<VBlim)には、機関始動時の目標圧縮比εtとして電圧降下時用圧縮比εstmが採用される。本実施例では、この電圧降下時用圧縮比εstmが基本圧縮比εstbに比べて高圧縮比側に設定される。
以下、本実施例における始動時圧縮比制御の実行手順について図3のフローチャートに沿って説明する。図3は、本実施例における始動時圧縮比制御ルーチンを示すフローチャートである。始動時圧縮比制御ルーチンは、予めECU30のROMに記憶されているルーチンであり、ECU30によって周期的に実行される。本ルーチンを実行するECU30は本発明における制御手段に相当する。
始動時圧縮比制御ルーチンでは、ECU30は、先ずステップS101では、スタータスイッチSWがONであるか否かを判定する。本ステップにおいてスタータスイッチSWがON(始動)であると判定された場合には、ステップS102へと進む。
一方、スタータスイッチSWがOFFであると判定された場合には、内燃機関1が通常運転状態であると判断され、本ルーチンを一旦抜ける。その後の内燃機関1の圧縮比にかかる制御は、上述した通常時用マップに基づいて行われる。すなわち、アクセル開度センサ27の出力値に基づいて算出された機関負荷、およびクランクポジションセンサ25の出力値に基づいて算出された機関回転数を通常時用マップに代入して、目標圧縮比εtを導出する。そして、内燃機関1の圧縮比が目標圧縮比εtとなるように可変圧縮比機構9のモータ9fを制御する。
ステップS102では、ECU30がバッテリ23の始動時バッテリ電圧VBstを読み込む。本実施例においては始動時バッテリ電圧VBstを読み込むECU30が本発明における取得手段に相当する。続くステップS103では、この始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimよりも低いか否かを判定する。本ステップにおいて始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimよりも低いと判定された場合(VBst<VBlim)には、ステップS104へと進む。一方、そうでない場合(VBst≧VBlim)には、ステップS105へと進む。
ステップS104では、図2に示したマップから電圧降下時用圧縮比εstmを読み込み、この電圧降下時用圧縮比εstmを目標圧縮比εtに決定する。本ステップの処理が終了するとステップS106に進む。また、ステップS105では、図2に示したマップを参照して基本圧縮比εstbを読み込み、この基本圧縮比εstbを目標圧縮比εtとして決定する。本ステップの処理が終了するとステップS106に進む。
ステップS106では、ステップS103において始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimよりも低いと判定されていた場合には、ステップS104において決定された目標圧縮比εt(電圧降下時用圧縮比εstm)に内燃機関1の圧縮比が一致するように可変圧縮比機構9を制御する。一方、ステップS103において始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlim以上であると判定されていた場合には、ステップS105において決定された目標圧縮比εt(基本圧縮比εstb)へと内燃機関1の圧縮比が一致するように可変圧縮比機構9を制御する。そして、本ステップの処理が終了すると本ルーチンを一旦抜ける。
上記制御によれば、機関始動時において始動時バッテリ電圧VBstが低い場合には、機関始動時の目標圧縮比εtが基本圧縮比εstbよりも高圧縮比側の電圧降下時用圧縮比εstmに設定されるので、圧縮端温度(ピストン15が上死点(TDC)に位置する時の燃焼室温度)及び混合気の燃焼温度がより高められる。そのため、燃焼室における混合気の着火性を向上させる(高める)ことができる。従って、始動時バッテリ電圧VBstの低下に伴って、点火プラグ16の電極間に印加される電圧が低下する状況下においても混合気への確実な着火を担保することができる。
また、混合気の着火性を向上させることによってクランキング期間(始動期間)の短縮を実現することができる。これによれば、バッテリ23におけるバッテリ電圧VBが更に低下することを好適に抑制することができる。
なお、内燃機関1の圧縮比を変更する方法として、コネクティングロッドの長さを変更する可変圧縮比機構等を利用する方法を採用することができる。また、本実施例では、機関始動時に始動時バッテリ電圧VBstを取得しているが、これは始動時バッテリ電圧VBstを取得するための一例である。例えば、内燃機関1の停止する際に、予めバッテリ23からバッテリ電圧VBを読み込んでおいても良い。そして、そのバッテリ電圧VBを次回の再始動時における始動時バッテリ電圧VBstとしてECU30に記憶させておくことができる。
<実施例2>
次に、本発明を実施するための実施例2について説明する。図4は、本実施例における内燃機関1の概略構成を示した図である。尚、本実施例においては、図1と共通する構成要素については、同一の参照符号を付することによってその説明を省略する。
図4に示すように、本実施例にかかる内燃機関1では、吸気側カム7が取り付けられている吸気側カムシャフト31に、クランクシャフト13に対する該吸気側カムシャフト31の回転位相を変更する可変動弁機構32が取り付けられている。この可変動弁機構32はECU30と電気的に接続されている。そして、ECU30からの制御信号により可変動弁機構32が制御されることで、吸気弁5の開閉タイミング(バルブタイミング)が調節される。
次に、本実施例における始動時圧縮比制御について説明する。本実施例においても、始動時バッテリ電圧VBstが低い場合には、高い場合と比較して機関始動時の目標圧縮比εtを高圧縮比側に設定する点で実施例1と共通する。
ここで、図5は、本実施例の始動時圧縮比制御にかかる機関始動時の目標圧縮比εtと始動時バッテリ電圧VBstとの関係を例示したマップである。横軸に始動時バッテリ電圧VBstを表し、縦軸に機関始動時の目標圧縮比εtを表す。本実施例においても、始動時バッテリ電圧VBstが、許容バッテリ電圧VBlim以上である場合には機関始動時の目標圧縮比εtとして基本圧縮比εstbを採用する点で実施例1と同様である。
本実施例では、始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimより低い場合には、始動時バッテリ電圧VBstが低いほど電圧降下時用圧縮比εstmが高圧縮比側に設定される。すなわち、始動時バッテリ電圧VBstが低いほど、機関始動時の目標圧縮比εtがより高められる。なお、この図において、始動時バッテリ電圧VBstと電圧降下時用圧縮比εstmとの関係は曲線的に表されているが直線的であっても良い。また、この図では、始動時バッテリ電圧VBstが低くなるに従って電圧降下時用圧縮比εstmが連続的に変更されているが、段階的に変更されても構わない。
次に、本実施例において内燃機関1の圧縮比を変更する方法について説明する。実施例1においては、ECU30が可変圧縮比機構9を制御することによって燃焼室容積(ピストン15が上死点に位置する時のシリンダ2内の容積)とピストン15が下死点に位置する時のシリンダ2内の容積との比である機械圧縮比を変更した。これに対して、本実施例では、ECU30が可変動弁機構32を制御して吸気弁50の閉弁時期を変更させることによって、内燃機関1の有効圧縮比を変更する。ここで、有効圧縮比とは、燃焼室容積と吸気弁5が閉弁した時のシリンダ2内の容積との比をいう。本実施例においては、内燃機関1の有効圧縮比を変更する可変動弁機構32が本発明における可変圧縮比機構に相当する。
ここで、機関始動時の目標圧縮比εtと吸気弁5の閉弁時期との関係について図6を参照して説明する。図6は、可変動弁機構32を利用して内燃機関1の有効圧縮比を上昇させる方法を模式化した図である。図中の破線は機関始動時の目標圧縮比εtが基本圧縮比εstbに設定されるときの吸気弁5の開弁期間を示し、図中の鎖線は機関始動時の目標圧縮比εtが電圧降下時用圧縮比εstmに設定されるときの吸気弁5の開弁期間を示している。また、図中の符号TDC、BDCの夫々は吸気行程におけるピストン上死点、吸気行程におけるピストン下死点を表す。また、図中の符号IVO、IVCの夫々は吸気弁5の開弁時期、閉弁時期を表す。
図示のように、機関始動時の目標圧縮比εtが電圧降下時用圧縮比εstmに設定されるときは、該目標圧縮比εtが基本圧縮比εstbに設定されるときに比べて、吸気弁5の閉弁時期(IVC)が進角側(吸気下死点(BDC)寄り)に設定される。各々の場合について、吸気弁5の閉弁時期(IVC)におけるシリンダ2内の容積を比較すると、機関始動時の目標圧縮比εtが電圧降下時用圧縮比εstmに設定されるときの方が大きくなる。
そのため、機関始動時の目標圧縮比εtが電圧降下時用圧縮比εstmに設定されるときにおける内燃機関1の(有効)圧縮比を、該目標圧縮比εtが基本圧縮比εstbに設定されるときに比べて、高圧縮比側にすることができる。なお本実施例では、図5に示したように、始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimより低い場合には、始動時バッテリ電圧VBstが低いほど電圧降下時用圧縮比εstmが高圧縮比側に設定される。従って、始動時バッテリ電圧VBstが低いほど、吸気弁5の閉弁時期(IVC)がより進角側(BDC寄り)に制御される。
図7は、本実施例における始動時圧縮比制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンは、予めECU30のROMに記憶されているルーチンであり、ECU30によって周期的に実行される。本実施例においては本ルーチンを実行するECU30が本発明における制御手段に相当する。また、本ルーチンにおいて、図3のルーチンと同一処理については、同一の参照符号を付すことによってその詳しい説明を省略する。
本ルーチンにおけるステップS104では、上述した図5に示したマップに、ステップS102で読み込んだ始動時バッテリ電圧VBstをパラメータとしてアクセスし、電圧降下時用圧縮比εstmを導出する。そして、この電圧降下時用圧縮比εstmを機関始動時の目標圧縮比εtに設定する。本ステップの処理が終了するとステップS201に進む。
ステップS201では、ステップS103において始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimよりも低いと判定されていた場合には、ステップS104において決定された目標圧縮比εt(電圧降下時用圧縮比εstm)に内燃機関1の圧縮比が一致するように可変動弁機構32を制御する。一方、ステップS103において始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlim以上であると判定されていた場合には、ステップS105において決定された目標圧縮比εt(基本圧縮比εstb)へと内燃機関1の圧縮比が一致するように可変動弁機構32を制御する。
すなわち、クランクシャフト13に対する該吸気側カムシャフト31の回転位相を可変動弁機構32に調節させることによって、吸気弁5の閉弁時期が制御される。より具体的には、目標圧縮比εtが高いほど、可変動弁機構32は吸気弁5の閉弁時期(IVC)をより進角側(BDC寄り)に調節する。そして、本ステップの処理が終了すると本ルーチンを一旦抜ける。
上記制御によれば、始動時バッテリ電圧VBstの大きさに応じて電圧降下時用圧縮比εstmをより細やかに設定することができる。始動時バッテリ電圧VBstの低下度合いに応じて、混合気の着火性をより精度良く向上させることができる。
次に、本実施例において、機関始動時における機関温度を考慮して該機関始動時の目標圧縮比εtを設定する方法について説明する。ここで、図5に示したように、電圧降下時用圧縮比εstmは、始動時バッテリ電圧VBstが許容バッテリ電圧VBlimより低いほど高圧縮比側に設定される。ところが、機関始動時の機関温度が低温である場合には、内燃機関1の潤滑油の粘度が高くなり、内燃機関1の始動時におけるフリクショントル
クが増加してしまう。そのような場合にまで機関始動時の目標圧縮比εtを過度に高めてしまうと、スタータ24を円滑に作動させることが困難になる虞がある。
そこで、本実施例では、機関始動時にECU30が水温センサ26の出力信号から冷却水の温度を検出し、機関温度を推定する。そして、始動時バッテリ電圧VBstの他、推定された機関温度に基づいて機関始動時の目標圧縮比εtを設定する。より具体的には、図5のマップにおいて始動時バッテリ電圧VBstに対応する電圧降下時用圧縮比εstmを、上記機関温度が低いほどより低圧縮比側へと補正する。
すなわち、電圧降下時用圧縮比εstmは基本圧縮比εstbよりも高く設定されるところ、機関温度が低いほど基本圧縮比εstbとの差が小さくなるように電圧降下時用圧縮比εstmが補正される。これによれば、機関始動時における機関温度が低く、かつ始動時バッテリ電圧VBstが低下している場合であっても、スタータ24の円滑な作動を確保しつつ、混合気の着火性を向上させることができる。
なお、上記の制御例では、基本圧縮比εstbに関しては機関始動時の機関温度に応じた補正を行っていないが、これは、もともと基本圧縮比εstbは、電圧降下時用圧縮比εstmと比較して低く設定されることによる。しかしながら、基本圧縮比εstbに関しても、機関始動時の機関温度に応じて電圧降下時用圧縮比εstmと同様な補正を行っても構わないのは勿論である。
また、機関始動時における目標圧縮比εtは、機関始動時の機関温度に応じて以下のように設定することができる。すなわち、機関始動時の目標圧縮比εtに対して、機関始動時の機関温度に応じた上限側のガード値εtgdを設定しておく。このガード値εtgdは、機関始動時の機関温度が低くてもスタータ24の円滑な作動を確保できる範囲内で設定される。
この場合には、図5のマップに始動時バッテリ電圧VBstを代入して導出された機関始動時の目標圧縮比εtとガード値εtgdとの大小関係が比較される。そして、この目標圧縮比εtはこのガード値εtgdを超えない範囲内で設定される。具体的には、マップから導出された値がガード値εtgdよりも高圧縮比ではない場合(ガード値εtgdを超えない場合)にはその値が目標圧縮比εtとして採用される。一方、マップから導出された値がガード値εtgdよりも高圧縮比である場合には、ガード値εtgdが目標圧縮比εtとして採用される。このように機関始動時の目標圧縮比εtを設定することにより、スタータ24の円滑な作動を確保と混合気の着火性の向上とを、両立させることができる。
なお、上記制御では水温センサ26の出力値に基づいて機関温度を推定しているが、外気温を測定する外気温センサ(不図示)の出力値に基づいて推定しても良い。
次に、本実施例において、燃料噴射弁17から吸気ポート18内に噴射される燃料性状を考慮した該機関始動時における目標圧縮比εtの設定方法について説明する。ここで、燃料性状が相違すると燃焼室内の混合気の着火性に影響を及ぼす。例えば、内燃機関1に重質燃料が使用される場合には、軽質燃料を使用する場合に比べて、混合気の着火性は悪化する。そこで、内燃機関1に供給される燃料が重質であるほど、機関始動時の目標圧縮比εtを高圧縮比側に設定すると良い。
また、燃料性状を表す指標としてオクタン価があり、オクタン価が低い低オクタン価燃料は着火性が良く、逆に高オクタン価燃料は着火性が悪くなる傾向がある。従って、内燃機関1に供給される燃料のオクタン価が高いほど、機関始動時の目標圧縮比εtを高圧縮
比側に設定すると良い。具体的には、内燃機関1に供給される燃料が重質であるほど、またオクタン価が高いほど、図5のマップから求められた機関始動時の目標圧縮比εtを更に高圧縮比側に補正すると良い。
これによれば、燃料性状に応じて機関始動時の目標圧縮比εtをより精度良く制御することが可能となり、機関始動時における混合気の着火性を好適に向上させることができる。
実施例1における内燃機関の概略構成を示した図である。 実施例1の始動時圧縮比制御にかかる機関始動時の目標圧縮比εtと始動時バッテリ電圧VBstとの関係を例示した図である。 実施例1における始動時圧縮比制御ルーチンを示すフローチャートである。 実施例2における内燃機関の概略構成を示した図である。 実施例2の始動時圧縮比制御にかかる機関始動時の目標圧縮比εtと始動時バッテリ電圧VBstとの関係を例示した図である。 可変動弁機構を利用して内燃機関の有効圧縮比を上昇させる方法を模式化した図である。 実施例2における始動時圧縮比制御ルーチンを示すフローチャートである。
符号の説明
1・・・内燃機関
2・・・シリンダ
3・・・シリンダブロック
4・・・クランクケース
5・・・吸気弁
7・・・吸気側カム
9・・・可変圧縮比機構
13・・クランクシャフト
15・・ピストン
16・・点火プラグ
17・・燃料噴射弁
18・・吸気ポート
23・・バッテリ
24・・スタータ
25・・クランクポジションセンサ
26・・水温センサ
27・・アクセル開度センサ
30・・ECU

Claims (2)

  1. 内燃機関の圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構と、
    前記内燃機関に設けられるバッテリと、
    機関始動時における前記バッテリの電圧である始動時電圧を取得する取得手段と、
    前記始動時電圧が所定の基準電圧よりも低い場合に、該始動時電圧が該基準電圧以上である場合と比べて機関始動時における前記内燃機関の圧縮比が高くなるように前記可変圧縮比機構を制御する制御手段と、
    を備えることを特徴とする可変圧縮比内燃機関の始動制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記始動時電圧が低いほど機関始動時における前記内燃機関の圧縮比が高くなるように前記可変圧縮比機構を制御することを特徴とする請求項1に記載の可変圧縮比内燃機関の始動制御装置。
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