特許文献1のロールブラシは、チャンネルブラシをコイルブラシに形成する際、1本のチャンネルブラシによりコイルブラシが形成され、前記コイルブラシがロールに密着螺旋巻きにより外挿して製作される。その為、コイルブラシはロールの長手方向にたいして略直角に配置されるので、ロールの軸心の垂線にたいするコイルブラシの傾斜角度は極めて小さく、ロールブラシの回転に伴い、被洗浄面にブラシ材が当接しない隙間部分、すなわちブラシマークが発生する。前記の如くのブラシマークは、被洗浄面にたいする洗浄残りとなることから、ロールブラシは被洗浄面を均一に洗浄することができず、洗浄性能が劣るという課題を有していた。なお、1本のチャンネルブラシで傾斜角度が大きくなるように設定すると、チャンネルブラシのピッチが広がり、ブラシ材が被洗浄面に当接しない隙間部分が大きくなる。
特許文献2のチャンネルブラシ式ブラシロールは、洗浄残り(ブラシマーク等)による洗浄性低下を防ぐ為、毛材先端の密度を25本/cm2以上、250本/cm2以下に設定しているが、毛材先端の密度が25本/cm2に近くて小さい場合、毛材の間に隙間が発生することから、前記の如くの隙間部分には毛材が被洗浄面に当接しないので、被洗浄面から異物等の対象物を完全に除去することができない。また、毛材先端の密度が250本/cm2に近くて大きい場合、被洗浄面から除去された対象物は毛材の間に捕捉され、チャンネルブラシ式ブラシロールの外部に排除され難い為、チャンネルブラシ式ブラシロールの回転に伴い、毛材の間に捕捉された対象物は被洗浄面の表面に落下し、被洗浄面に再付着する。その為、効率よく確実に被洗浄面から対象物を除去することが難しいという課題を有していた。
特許文献3のブラシロールは、ブラシロールが対称軸からロール本体の端へ向かって異物等の対象物を送る方向と逆の方向に回転した場合、対象物はロール本体の中央に設定された対称軸に向かって集積するので、ブラシロールの外部に対象物を排除することができない。その為、効率よく確実に被洗浄面から対象物を排除するには、ブラシロールの回転方向が限定されるという課題があった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被洗浄面に洗浄残りが発生することがなく、ブラシロールの回転方向に限定されることなく、長期間に亘り、効率よく確実に異物等の対象物を除去する高い洗浄性能を有するブラシロール、及びそのブラシロールを搭載した洗浄装置を提供することを目的としている。
上記従来の課題を解決するために、請求項1のブラシロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板、あるいはフィルム状樹脂組成物等からなる被洗浄面の洗浄、清掃、研磨、表面処理等を行うブラシロールにおいて、前記ブラシロールは、略棒状又は円筒状の回転軸と、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き付けられたブラシ部を有し、前記ブラシ部は断面略U字状の帯状体と、前記帯状体で芯線と共に挟持されるブラシ毛材とで構成されたチャンネルブラシからなるブラシ体が3本以上並列に設けられてあると共に、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてあり、前記ブラシ体は前記回転軸の軸心の垂線にたいして45°以下の傾斜角度を有すると共に、前記回転軸の外周に固定手段にて固定して形成されてあるもので、ブラシロールは1本のブラシ体が回転軸の外周に螺旋状に巻き回されてあるピッチの間に、他の2本以上のブラシ体が配列されている。従って、ブラシロールは、1本、あるいは2本のブラシ体が回転軸の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてある場合に比べ、各ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角度を、大きく設定することができる。その為、ブラシロールの回転に伴い、ブラシ毛材は被洗浄面にたいして接触面積を広く確保して当接するので、被洗浄面にブラシ毛材が当接しない隙間部分、すなわちブラシマークの発生が抑えられ、被洗浄面に洗浄残りが生じることがなく、ブラシロールは被洗浄面を均一に洗浄する。
また、ブラシロールは、上記の如く、1本、あるいは2本のブラシ体が回転軸の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてある場合に比べ、各ブラシ体が回転軸の軸心の垂線にたいして傾斜角度を大きく設定して形成されていることから、被洗浄面からブラシ毛材により除去された異物等の対象物がブラシ毛材の間に捕捉されても、ブラシロールの回転に伴い被洗浄面の表面に落下し難い。その為、異物等の対象物の被洗浄面への再付着が防止される。
なお、ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角度は45°以下にて設定される。ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角度が45°を超える場合、帯状体の側縁部に、ブラシ毛材が被洗浄面に当接する際の応力が集中しやすくなる為、帯状体の側縁部にてブラシ毛材に毛癖が付き、毛癖の付いた部分から疲労屈折が生じ、ブラシ毛材に毛折れが発生する。その為、ブラシロールの洗浄性能が劣化すると共に、耐久性が低下する。本発明のブラシロールは、ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角度が45°以下にて設定されているので、帯状体の側縁部に、ブラシ毛材が被洗浄面に当接する際の応力が集中し難く、ブラシ毛材の毛癖、毛折れが発生し難いことから、長期間に亘り、優れた洗浄性能が発揮される。
さらに、ブラシロールは、回転することにより、ブラシ体の傾斜角度に沿って異物等の対象物を移動させ、ブラシロールの外部に排除するが、ブラシ体は回転軸の外周に同一の方向にて螺旋状に巻き回されて形成されているので、ブラシロールの回転方向に限定されることなく、ブラシロールのどちらか一方の端部から異物等の対象物を外部に排除する。
請求項2のブラシロールは、特に、請求項1のブラシロールにおいて、ブラシ部は少なくとも1本以上のブラシ体を構成するブラシ毛材が、他のブラシ体を構成するブラシ毛材と異なる材質にて形成されてあるもので、例えば、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材の材質に、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、金属繊維等の異なる材質のブラシ毛材を用いることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。すなわち、天然繊維、再生繊維、半合成繊維等は毛腰が柔軟で、被洗浄面にたいする追従性が向上する。また、合成繊維、金属繊維等は毛腰が剛直で、被洗浄面にたいする押付力が向上する。
ところで、被洗浄面には、例えば、塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる有機物、鉄粉、石等の無機物、繊維クズ等からなる塵埃等、さまざまな対象物が付着、堆積している。また、被洗浄面にたいする付着状態も、合成樹脂からなる有機物の如く、強固に圧着している対象物から、無機物、塵埃等の如く、表面に添付しているだけの対象物までさまざまである。また、硬さも、鉄粉、石等の無機物の如く、硬い対象物から、塵埃等の如く、柔らかい対象物までさまざまである。従って、毛腰が柔軟である天然繊維、再生繊維、半合成繊維等のブラシ毛材により、無機物、塵埃等の対象物が確実に除去され、毛腰が剛直である合成繊維、金属繊維等のブラシ毛材により、合成樹脂からなる有機物等の対象物が効率よく除去される。前記の如く、ブラシ体を構成するブラシ毛材の材質を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化が付与され、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物が、効率よく確実に、除去される。
なお、本発明のブラシロールにおける異なる材質のブラシ毛材とは、上記に示した天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等の有機物系繊維と、金属繊維等の無機物系繊維とによる区分のみならず、例えば、合成繊維を用いる場合においても、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン等の異なる合成樹脂からなる繊維を、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材として用いるならば、異なる材質のブラシ毛材である。前記のブラシ毛材の内、アクリル、ウレタン等は、特に、弾力性が高く、ポリプロピレン等は、特に、剛性が高い。
また、例えば、ポリエステルを用いる場合においても、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等の異なる構造式からなるポリエステルを、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材として用いるならば、異なる材質のブラシ毛材として認められる。前記のブラシ毛材の内、特に、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等は、特に、弾力性が高く、ポリエチレンテレフタレート等は、特に、剛性が高い。なお、異なる構造式とは、例えば、ポリプロピレンにおけるアイソタクチック、シンジオタクチック、アタクチック等の分子の配列の違い等も含むものである。さらに、合成樹脂に熱可塑性エラストマー等をブレンドして、ポリマーアロイにより得られたブラシ毛材を用いる場合も、本発明のブラシロールにおける異なる材質のブラシ毛材の範疇に含まれるものである。
請求項3のブラシロールは、特に、請求項1から2のブラシロールにおいて、ブラシ部は少なくとも1本以上のブラシ体を構成するブラシ毛材が、他のブラシ体を構成するブラシ毛材と異なる線径にて形成されてあるもので、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材の線径を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。すなわち、線径の細いブラシ毛材は毛腰が柔軟で、被洗浄面にたいする追従性が向上する。また、線径の太いブラシ毛材は毛腰が剛直で、被洗浄面にたいする押付力が向上する。前記の如く、ブラシ体を構成するブラシ毛材の線径を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化が付与され、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物が、効率よく確実に、除去される。
請求項4のブラシロールは、特に、請求項1から3のブラシロールにおいて、ブラシ部は少なくとも1本以上のブラシ体を構成するブラシ毛材が、他のブラシ体を構成するブラシ毛材と異なる形状にて形成されてあるもので、異なる形状とは、例えば、ブラシ毛材の長手方向における形状、ブラシ毛材の断面形状等のことである。夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材の形状を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。ブラシ毛材の長手方向における形状としては、複数本の単糸を撚り合わせた撚り糸は毛腰が柔軟であり、長手方向に湾曲部を有する波形状の単糸繊維は毛腰に弾力性があり、繊維の表面に酸化アルミニウム、炭化ケイ素、ダイアモンド等の砥粒が付着した砥粒入り繊維は毛腰が剛直である。
また、ブラシ毛材の断面形状としては、概三角形、概四角形等の多角形断面、十字形、卍形等の異形断面は、毛腰が剛直であると共に、ブラシ毛材に形成された角部により、被洗浄面に付着している異物等の対象物を掻き取る。特に、被洗浄面に強固に圧着した合成樹脂、堆積した鉄粉、石等の対象物を、的確に掻き取り、除去する。また、十字形、卍形等の異形断面形状繊維は、直交部に、洗浄液等の液体を保持しながら、洗浄することができ、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができるので、洗浄性能が向上する。
さらに、長手方向に中空部、あるいは空洞部を有する中空繊維は、洗浄中にブラシ毛材が中空部、あるいは空洞部に洗浄液等の液体を保持することができるので、保液性が高く、ブラシ毛材は、被洗浄面にたいして表面張力を低下させて当接する。その為、中空部、あるいは空洞部を有する中空繊維を、ブラシ毛材として用いた場合、被洗浄面に付着、堆積している異物等の対象物を、的確に除去することができ、洗浄性能の向上を図ることができる。なお、中空部とは中空状態が繊維の長手方向にて貫通している状態であり、空洞部とは中空状態が繊維の長手方向の途中において閉塞している状態である。
ところで、表面張力とは、異物等の対象物である固体と、洗浄液等の液体が接している境界面において、接触面積を小さくする方向に働く張力のことである。従って、表面張力が低下するということは、固体と液体の接触面積が大きくなることであり、固体である異物等の対象物と、ブラシ毛材に保持された液体である洗浄液等との接触面積は大きくなる。すなわち、洗浄液等の異物等の対象物にたいする濡れ性が向上する。その為、保液性に優れた異形断面形状繊維、中空繊維等は、異物等の対象物にたいする濡れ性が増大することから、異物等の対象物を除去しやすくなり、洗浄性能が向上するのである。
請求項5のブラシロールは、特に、請求項1から4のブラシロールにおいて、ブラシ部は少なくとも1本以上のブラシ体を構成するブラシ毛材が、他のブラシ体を構成するブラシ毛材と異なる毛丈にて形成されてあるもので、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材の毛丈を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材を当接させることができる。すなわち、毛丈の長いブラシ毛材は毛腰が柔軟で、被洗浄面にたいする追従性が向上する。また、毛丈の短いブラシ毛材は毛腰が剛直で、被洗浄面にたいする押付力が向上する。前記の如く、ブラシ体を構成するブラシ毛材の毛丈を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化が付与され、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物が、効率よく確実に、除去される。
請求項6のブラシロールは、特に、請求項1から5のブラシロールにおいて、ブラシ部は夫々のブラシ体の始点及び終点が、回転軸の外周の等分箇所に固定手段にて固定して形成されてあるもので、ブラシロールは、回転に伴う回転軸の芯ブレの発生が抑制され、安定した回転が保持される為、長期間に亘り、優れた洗浄性能が発揮される。
請求項7の洗浄装置は、請求項1から6のいずれか1項に記載されたブラシロールと、前記ブラシロールを回転駆動する駆動手段と、前記ブラシロール及び/又は被洗浄面に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズルを有するもので、被洗浄面にブラシマーク、すなわち洗浄残りの発生が抑制されたブラシロールが搭載されてあることから、優れた洗浄性能を発揮することができる。
請求項1のブラシロールは、各ブラシ体の回転軸の軸心の垂線にたいする傾斜角度が45°以下に設定されると共に、1本、あるいは2本のブラシ体が回転軸の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてある場合に比べ、傾斜角度を大きく設定することができるので、被洗浄面の表面にブラシマークを残すことがなく、優れた洗浄性能を有すると共に、長期間に亘り、異物等の対象物を、効率よく確実に除去することができる。
請求項2のブラシロールは、ブラシ体を構成するブラシ毛材の材質を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができるので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、効率よく確実に、除去することができる。
請求項3のブラシロールは、ブラシ体を構成するブラシ毛材の線径を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができるので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、効率よく確実に除去することができる。
請求項4のブラシロールは、ブラシ体を構成するブラシ毛材の形状を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができるので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、効率よく確実に除去することができる。また、多角形断面形状繊維、異形断面形状繊維等はブラシ毛材の有する角部により、被洗浄面に強固に圧着している合成樹脂等の対象物を、掻き取り、除去する。さらに、異形断面形状繊維、中空繊維等は、洗浄液等の液体の保液性が高く、被洗浄面に付着、堆積している異物等の対象物にたいする濡れ性が増大することから、異物等の対象物を除去しやすくなり、洗浄性能が向上する。
請求項5のブラシロールは、ブラシ体を構成するブラシ毛材の毛丈を変えることにより、ブラシ毛材の毛腰に強弱の変化を付与することができるので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、効率よく確実に除去することができる。
請求項6のブラシロールは、回転バランスが向上するので、回転に伴う芯ブレを抑制することができる。
請求項7の洗浄装置は、優れた洗浄性能を有するブラシロールが搭載されているので、被洗浄面にブラシマーク、すなわち洗浄残りが発生することがなく、優れた洗浄性能を発揮することができる。
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
(実施例1)
図1(a)は、本発明の第1の実施例におけるブラシロールの部分正面図、図1(b)は、ブラシロールの側面図、図1(c)は、ブラシ体を前面側から見た斜視図、図2は、本発明の第1の実施例におけるブラシロールの部分断面図、図3は、チャンネルブラシの製造状態を前面側から見た斜視図である。
図1(a)、及び図1(b)において、ブラシロール1は、鉄、アルミニウム等の金属材料、あるいはポリ塩化ビニル、ポリアセタール等の合成樹脂材料からなると共に、中空部9を有する直径Dの略円筒状の回転軸3の外周に、3本のブラシ体4a、4b、4cからなるブラシ部2が装着されて形成されている。3本のブラシ体4a、4b、4cは、それぞれピッチPにて回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されていると共に、回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいして傾斜角度θを有して並列に装着されている。なお、回転軸3は、中実状の略棒状であってもよい。
図1(c)において、ブラシ体4a、4b、4cは、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる長尺状の断面略U字状の帯状体6と、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる概丸形断面を有する長尺状の芯線7との間に、ブラシ毛材8が挟持された長尺状のチャンネルブラシ5にて形成されている。ブラシ体4a、4b、4cは、回転軸3の外周に装着される際、図1(b)の如く、回転軸3の一方の端部近傍の外周等分3箇所に、3本のブラシ体4a、4b、4cの始点S1、S2、S3が溶接による固定部10を介して固定され、螺旋状に巻き回されると共に、回転軸3の他方の端部近傍の外周等分3箇所に、3本のブラシ体4a、4b、4cの終点(図示せず)が溶接による固定部(図示せず)を介して固定されて形成される。
なお、本実施例では、回転軸3の外周に、3本のブラシ体4a、4b、4cを設けたが、勿論4本、あるいはそれ以上でもよい。
次に、図2を用いて、ブラシロール1の構成について説明する。
図2において、ブラシロール1は、帯状体6と芯線7にブラシ毛材8が挟持されたチャンネルブラシ5からなる3本のブラシ体4a、4b、4cが、中空部9を有する回転軸3の外周に並列に巻き回されて装着されたブラシ部2として形成されている。1本のブラシ体4aは、ピッチPをもって回転軸3の外周に螺旋状に装着されている。そして、前記の如くのピッチPの間に、他の2本のブラシ体4b、4cが並列されると共に、他の2本のブラシ体4b、4cもピッチPをもって回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されて装着されている。
また、それぞれのブラシ体4a、4b、4cを構成する帯状体6の幅はWで、略同一の寸法であると共に、隣り合うブラシ体4aとブラシ体4b、ブラシ体4bとブラシ体4c、ブラシ体4cとブラシ体4aの隙間の幅はGで、略同一の寸法にて形成されている。従って、ブラシ体4a、4b、4cのピッチPは、ブラシ体4a、4b、4cを構成する帯状体6の幅Wと、隣り合うブラシ体4a、4b、4cの隙間の幅Gとの和として表わされる。すなわち、ピッチP=(3W+3G)となる。
次に、ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θについて詳説する。
回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいして、3本のブラシ体4a、4b、4cが有する傾斜角度θは、45°以下にて設定されている。ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θが45°を超える場合、帯状体6の側縁部に、ブラシ毛材8が被洗浄面に当接する際の応力が集中しやすくなる為、帯状体6の側縁部にてブラシ毛材8に毛癖が付き、毛癖の付いた部分から疲労屈折が生じ、ブラシ毛材8に毛折れが発生する。その為、ブラシロール1の洗浄性能が劣化すると共に、耐久性が低下する。
さらに好ましくは、傾斜角度θは、4°以上30°以下にて設定されるのが望ましい。4°未満の場合、傾斜角度θが小さすぎて被洗浄面から除去された異物等の対象物が回転軸3の長手方向に移動し難く、効率よく確実に異物等の対象物をブラシロール1の外部に排除するのが難しい。一方、傾斜角度θが30°を超える場合、ブラシ毛材8は被洗浄面にたいする接触面積を、より広く確保して当接するものの、ブラシ毛材8の被洗浄面にたいする摩擦抵抗が増大すると共に、ブラシ毛材8の摩耗が促進される。
ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θは、ブラシ体4a、4b、4cのピッチP、及び回転軸3の直径Dにより規定され、その数値により変化する。すなわち、ブラシ体4a、4b、4cのピッチPの値が大きいほど、回転軸3の直径Dの値が小さいほど、ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θは大きくなる。前記は、三角関数と極限式を用いて説明される。
回転軸3の直径Dの値が一定(定数)で、ブラシ体4a、4b、4cのピッチPの値が変化する(変数)場合は、下記の数式で表わすことができる。
ブラシ体4a、4b、4cのピッチPの値が無限大に近づく、すなわち大きくなるほど、正弦(sinθ)は1に近づく。sinθ=1の場合、傾斜角度θの値は最大の90°であり、上記の数式は、ブラシ体4a、4b、4cのピッチPの値が大きくなるほど、ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θが大きくなることを表わしている。
一方、ブラシ体4a、4b、4cのピッチPの値が一定(定数)で、回転軸3の直径Dの値が変化する(変数)場合は、下記の数式で表わすことができる。
回転軸3の直径Dの値が0に近づく、すなわち小さくなるほど、余弦(cosθ)は0に近づく。cosθ=0の場合、傾斜角度θの値は最大の90°であり、上記の数式は、回転軸3の直径Dの値が小さくなるほど、ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θが大きくなることを表わしている。
次に、図3を用いて、ブラシロール1の製作方法について説明する。
最初に、図3の如く、概丸形断面を有する長尺状のブラシ毛材8を複数本、用意する。ブラシ毛材8は、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン等の合成繊維、アセテート、プロミックス等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生繊維、綿、羊毛、絹等の天然繊維、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線、真鍮線、燐青銅線等の金属繊維のいずれかからなる。ブラシ毛材8の断面形状は、特に限定されるものではなく、概丸形以外にも、例えば三角形、四角形等の多角形、星形、卍形、十字形、M形、N形等の異形断面形状であっても構わない。また、中実状、中空状のいずれであってもよい。さらに、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれであっても何ら支障はない。ブラシ毛材8の材質、線径、形状、及び毛丈等については、ブラシロール1の使用される環境、コスト等を勘案して、適宜、決定されるものである。
上記の如くのブラシ毛材8が複数本、用意されたならば、ブラシ毛材8の長手方向の略中央部が、帯状体6の上部に重なるよう基台11に設置する。次いで、縦ロール12を使用して、芯線7にてブラシ毛材8を挟み付けると共に、芯線7を断面略U字状の帯状体6の内部に押し込む。次に、帯状体6の両側に設置された横ロール13、13を使用して、帯状体6を両側から、かしめる。その結果、図1(c)の如く、長尺状のブラシ毛材8の略中央部が芯線7、及び帯状体6に挟み付けられて折り合わされた長尺状のチャンネルブラシ5からなるブラシ体4a、4b、4cが形成される。
次に、図1(b)の如く、1本のブラシ体4aの一方の端部、すなわち始点S1は、回転軸3の一方の端部近傍に、溶接による固定部10を介して固定され、図1(a)の如く、回転軸3の外周にピッチPをもって螺旋状に巻き回されて装着される。そして、ブラシ体4aの他方の端部、すなわち終点(図示せず)が、回転軸3の他方の端部近傍に、溶接による固定部(図示せず)を介して固定される。同様に、他の2本のブラシ体4b、4cが回転軸3の外周に、ブラシ体4aのピッチPの間に装着されると共に、他の2本のブラシ体4b、4cもピッチPをもって回転軸3の外周に巻き回され、回転軸3の両端部近傍に始点S2、S3と、図示しない終点が溶接による固定部10を介して固定されることにより、ブラシ部2が回転軸3の外周に形成されたブラシロール1が、図1(a)の如く、製造される。
なお、ブラシ体4a、4b、4cを構成するブラシ毛材8は、夫々のブラシ体4a、4b、4cにおいて同一の材質であっても構わないし、異なる材質であってもよい。
上記の如く構成されたブラシロール1の動作、作用は下記の通りである。
ブラシロール1は、1本のブラシ体4aが回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されてあるピッチPの間に、他の2本のブラシ体4b、4cが配列されている。従って、ブラシロール1は、1本のブラシ体4aのみ、あるいは2本のブラシ体4a、4bが回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてある場合に比べ、各ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θを、大きく設定することができる。その為、ブラシロール1の回転に伴い、ブラシ毛材8は被洗浄面にたいして接触面積を広く確保して当接するので、被洗浄面にブラシ毛材8が当接しない隙間部分、すなわちブラシマークの発生が抑えられ、被洗浄面に洗浄残りが生じることがなく、ブラシロール1は被洗浄面を均一に洗浄する。
また、ブラシロール1は、1本のブラシ体4aのみ、あるいは2本のブラシ体4a、4bが回転軸3の外周に螺旋状に巻き回されて形成されてある場合に比べ、各ブラシ体4a、4b、4cが回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいして傾斜角度θを大きく設定して形成されていることから、被洗浄面からブラシ毛材8により除去された異物等の対象物がブラシ毛材8の間に捕捉されても、ブラシロール1の回転に伴い被洗浄面の表面に落下し難い。その為、異物等の対象物の被洗浄面への再付着が防止される。
また、ブラシロール1は、ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の軸心C.L.の垂線P.L.にたいする傾斜角度θが45°以下にて設定されているので、帯状体6の側縁部に、ブラシ毛材8が被洗浄面に当接する際の応力が集中し難く、ブラシ毛材8の毛癖、毛折れが発生し難いことから、長期間に亘り、優れた洗浄性能が発揮される。
さらに、ブラシロール1は、回転することにより、ブラシ体4a、4b、4cの傾斜角度θに沿って異物等の対象物を移動させ、ブラシロール1の外部に排除するが、ブラシ体4a、4b、4cは回転軸3の外周に同一の方向にて螺旋状に巻き回されて形成されているので、ブラシロール1の回転方向に限定されることなく、ブラシロール1のどちらか一方の端部から異物等の対象物を外部に排除する。
さらにまた、ブラシ体4a、4b、4cの始点S1、S2、S3及び終点が、回転軸3の外周の等分箇所に溶接による固定部10を介して形成されているので、ブラシロール1の回転バランスが向上し、回転に伴う芯ブレが抑制される。
なお、夫々のブラシ体4a、4b、4cにおいて、異なる材質のブラシ毛材8が用いられている場合、ブラシロール1は、ブラシ毛材8の毛腰に強弱の変化を付与することができ、被洗浄面にたいして異なる接触力、押付力にてブラシ毛材8を当接させることができるので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、効率よく確実に、除去することができる。
(実施例2)
図4(a)は、本発明の第2の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の平面図、図4(b)は、図4(a)のA−A断面図、図4(c)は、本発明の第2の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の平面図、図4(d)は、図4(c)のB−B断面図、図4(e)は、本発明の第2の実施例におけるブラシロールを構成する3本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の平面図、図4(f)は、図4(e)のC−C断面図である。実施例2は、実施例1の3本のブラシ体において、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材の線径が異なる形態である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
図4(a)から図4(f)において、ブラシ毛材18a、18b、18cは、概丸形断面を有する長尺状の合成繊維であり、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材18a、18b、18cの線径D1、D2、D3は0.1〜0.8mm程度で、ブラシ毛材18aの線径D1が最も大きく、次いでブラシ毛材18bの線径D2、ブラシ毛材18cの線径D3が最も小さい。例えば、ブラシ毛材18aの線径D1は0.5mm、ブラシ毛材18bの線径D2は0.3mm、ブラシ毛材18cの線径D3は0.2mm等に設定される。
ブラシ毛材18aは、上記の如く、線径D1が最も大きいことから、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が極めて強く、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる対象物を除去することができる。
ブラシ毛材18bは、上記の如く、線径D2が、ブラシ毛材18aに次いで大きいことから、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰を強く設定し、被洗浄面に付着している鉄粉、石等の硬い無機物系の対象物を、迅速に除去することができる。
ブラシ毛材18cは、上記の如く、線径D3が、最も小さいことから、3本目のブラシ体4cとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰は他のブラシ毛材18a、18bに比べて弱いものの、被洗浄面に傷を付着させることなく、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している柔らかい対象物を、的確に掃き取ることができる。
本実施例におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材18a、18b、18cの異なる接触力、押付力により、効率よく確実に、被洗浄面から除去することができる。
(実施例3)
図5(a)は、本発明の第3の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の斜視図、図5(b)は、本発明の第3の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の斜視図、図5(c)は、本発明の第3の実施例におけるブラシロールを構成する3本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の斜視図である。実施例3は、実施例1の3本のブラシ体において、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材の長手方向における形状が異なる形態である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
図5(a)において、ブラシ毛材28aは、概丸形断面を有する長尺状の合成繊維29aの外周に、粒状の砥粒25が複数固着して形成されている。砥粒25は、合成繊維29aとの重量比で、20〜30%程度配合される。ブラシ毛材28aは、前記の如く、砥粒25を含有していることから、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が極めて強く、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる対象物を、砥粒25により掻き取ることができる。
ブラシ毛材28aを構成する合成繊維29aは、ナイロン、ポリエステル等からなり、線径は0.1〜0.8mm程度である。また、砥粒25は、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、ダイアモンド等の無機物で、粒径は0.1〜10μm程度である。合成繊維29aに、砥粒25を固着させる際、シランカップリング剤を用いると、砥粒25を合成繊維29aに強固に接着させることができ、洗浄中にブラシロール1から砥粒25が脱落することを防止することができる。シランカップリング剤は、分子中に2個の異なった反応基をもつ有機ケイ素単量体で、一方の反応基は無機物と化学結合する反応基であり、他方の反応基は有機物と化学結合する反応基である。従って、シランカップリング剤は、無機物である砥粒25と、有機物である合成繊維29aとを化学的に結合する為、砥粒25を合成繊維29aに強固に接着させることができるのである。
図5(b)において、ブラシ毛材28bは、概丸形断面を有する長尺状の合成繊維29bであり、長手方向に湾曲部24が形成され、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材28bの線径は0.1〜0.8mm程度である。ブラシ毛材28bは、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、耐摩耗性に優れた合成繊維29bからなると共に、長手方向に湾曲部24が形成され、弾力性に優れる為、被洗浄面に付着している対象物の内、鉄粉、石等の硬い無機物に当接した場合においても毛折れ、毛切れ等を発生させることなく、鉄粉、石等の無機物を除去することができる。
図5(c)において、ブラシ毛材28cは、概丸形断面を有する長尺状の合成繊維からなる複数本の単糸27が撚り合わされて形成された撚り糸である。単糸27はナイロン、ポリエステル等からなり、線径は10〜100μm程度である。単糸27の撚り本数に関しては、特に、限定されるものではない。ブラシ毛材28cは、3本目のブラシ体4cとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、撚り糸にて形成されているので、被洗浄面への当接を繰り返すことにより、ブラシ毛材28cの先端部がほぐれ、被洗浄面の細かな凹凸部分に付着している繊維クズ等の塵埃を掻き出すことができる。また、ブラシ毛材28cは、撚りが形成されている為、被洗浄面からの衝撃等の反力を吸収できるので、高い耐久性を維持できる。
ブラシ毛材28cは、複数本の単糸27を撚り合わせ、撚り糸に形成する際、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、NBR、SBR、MBR等の高分子弾性体を、撚り合わされた単糸27を接着する接着剤として用いても構わない。前記の如くの接着剤が用いられている場合、撚り糸は被洗浄面への当接を繰り返すことにより、短期間にて撚りが全てほぐれ、単糸27にばらけてしまうことが防止されるので、長期間に亘って、ブラシ毛材28cの毛腰を保持することができる。使用される高分子弾性体の種類については、ブラシロール1が使用される環境、洗浄液の種類等に応じて、適宜、決定される。
本実施例におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材28a、28b、28cの異なる接触力、押付力により、効率よく確実に、被洗浄面から除去することができる。
(実施例4)
図6(a)は、本発明の第4の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、図6(b)は、本発明の第4の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、図6(c)は、本発明の第4の実施例におけるブラシロールを構成する3本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図である。実施例4は、実施例1の3本のブラシ体において、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材の断面形状が異なる形態である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
図6(a)において、ブラシ毛材38aは、概丸形断面を有する合成繊維であり、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材38aは、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が柔軟であり、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している柔らかい対象物を、的確に掃き取ることができる。
図6(b)において、ブラシ毛材38bは、四隅に角部35bを有する概四角形断面の合成繊維であり、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材38bは、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰を保持しながら、被洗浄面に堆積している鉄粉、石等の硬い無機物系の対象物を、角部35bにより掻き取ることができる。
図6(c)において、ブラシ毛材38cは、8箇所の角部35c、及び4箇所の直交部36cを有する十字断面の合成繊維であり、ナイロン、ポリエステル等からなる。ブラシ毛材38cは、3本目のブラシ体4cとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が極めて強く、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる対象物を、角部35cにより掻き取ることができる。また、直交部36cに洗浄液等の液体を保液することができるので、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができ、洗浄性能が向上する。
本実施例におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材38a、38b、38cの異なる接触力、押付力により、効率よく確実に、被洗浄面から除去することができる。また、ブラシ毛材38b、38cは、角部35b、35cにより、異物等の対象物を掻き取り、除去する。さらに、ブラシ毛材38cは、直交部36cに洗浄液等の液体を保液することができる。
(実施例5)
図7(a)は、本発明の第5の実施例におけるブラシロールを構成する1本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、図7(b)は、本発明の第5の実施例におけるブラシロールを構成する2本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図、図7(c)は、本発明の第5の実施例におけるブラシロールを構成する3本目のブラシ体に用いられるブラシ毛材の断面図である。実施例5は、実施例1の3本のブラシ体において、夫々のブラシ体を構成するブラシ毛材が中空繊維であり、且つ断面形状が異なる形態である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、同一符号を付してその詳しい説明を省略する。
図7(a)において、ブラシ毛材38dは、中空部39dを有する概丸形中空断面の中空繊維であり、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなる。ブラシ毛材38dは、1本目のブラシ体4aとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が柔軟であり、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している柔らかい対象物を、的確に掃き取ることができる。また、中空部39dに洗浄液等の液体を保液することができるので、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができ、洗浄性能が向上する。
図7(b)において、ブラシ毛材38eは、2箇所の中空部39eと、2箇所の湾曲した窪み部34eを有する概眼鏡形中空断面の中空繊維であり、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなる。ブラシ毛材38eは、2本目のブラシ体4bとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰を保持しながら、被洗浄面に堆積している鉄粉、石等の硬い無機物系の対象物を、窪み部34eにて掻き取り、除去することができる。また、2箇所の中空部39e、及び窪み部34eに洗浄液等の液体を保液することができるので、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができ、洗浄性能が向上する。
図7(c)において、ブラシ毛材38fは、3箇所の角部35fと、中空部39fを有する概三角形中空断面の中空繊維であり、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維からなる。ブラシ毛材38fは、3本目のブラシ体4cとして構成され、ブラシロール1に形成された場合、毛腰が極めて強く、被洗浄面に強固に圧着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる対象物を、角部35fにより掻き取ることができる。また、中空部39fに洗浄液等の液体を保液することができるので、被洗浄面にたいする表面張力を低下させることができ、洗浄性能が向上する。
本実施例におけるブラシロール1は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着、堆積しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材38d、38e、38fの異なる接触力、押付力により、効率よく確実に、被洗浄面から除去することができる。また、ブラシ毛材38eは、2箇所の窪み部34eにより、ブラシ毛材38fは、3箇所の角部35fにより、異物等の対象物を掻き取り、除去する。さらに、中空部39d、39e、39f、及びブラシ毛材38eは窪み部34eに洗浄液等の液体を保液することができる。
(実施例6)
図8は、本発明の第6の実施例におけるブラシロールの部分断面図である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、詳しい説明を省略する。
図8において、ブラシロール41は、帯状体46と芯線47にブラシ毛材48a、48b、48cが挟持されたチャンネルブラシ45からなる3本のブラシ体44a、44b、44cが、中空部49を有する回転軸43の外周に並列に巻き回されて装着されたブラシ部42として形成されている。ブラシ毛材48a、48b、48cは合成繊維、半合成繊維、再生繊維、天然繊維、金属繊維のいずれかである。
1本目のブラシ体44aを構成するブラシ毛材48aは毛丈H1を有し、2本目のブラシ体44bを構成するブラシ毛材48bは毛丈H2を有し、3本目のブラシ体44cを構成するブラシ毛材48cは毛丈H3を有する。ブラシ毛材48a、48b、48cの毛丈H1、H2、H3は40〜70mm程度で、ブラシ毛材48aの毛丈H1が最も長く、次いでブラシ毛材48bの毛丈H2、ブラシ毛材48cの毛丈H3が最も短い。例えば、ブラシ毛材48aの毛丈H1は60mm、ブラシ毛材48bの毛丈H2は55mm、ブラシ毛材48cの毛丈H3は50mm等に設定される。ブラシ毛材48a、48b、48cの毛丈H1、H2、H3が40mm未満の場合、ブラシ毛材48a、48b、48cは回転軸43の近傍、すなわち帯状体46の近傍まで被洗浄面に当接しやすくなり、被洗浄面にたいする摩擦抵抗が増大すると共に、ブラシ毛材48a、48b、48cの摩耗が促進される。一方、ブラシ毛材48a、48b、48cの毛丈H1、H2、H3が70mmを超える場合、被洗浄面から除去された異物等の対象物がブラシ毛材48a、48b、48cの間に捕捉され、回転軸43の長手方向に移動し難く、効率よく確実に異物等の対象物をブラシロール41の外部に排除するのが難しい。
ブラシ毛材48aは、上記の如く、毛丈H1が最も長いことから、1本目のブラシ体44aとして構成され、ブラシロール41に形成された場合、被洗浄面にたいする接触面積を広く確保して、繊維クズ等の被洗浄面に軽く添付している柔らかい対象物を、的確に掃き取ることができる。
ブラシ毛材48bは、上記の如く、毛丈H2が、ブラシ毛材48aに次いで長いことから、2本目のブラシ体44bとして構成され、ブラシロール41に形成された場合、毛腰を強く設定し、被洗浄面に付着している鉄粉、石等の硬い無機物系の対象物を、迅速に除去することができる。
ブラシ毛材48cは、上記の如く、毛丈H3が、最も短いことから、3本目のブラシ体44cとして構成され、ブラシロール41に形成された場合、ブラシ毛材48cの先端部にて、毛腰を極めて強く設定し、被洗浄面に強固に付着している塗料ミスト、ペンキ、搬送ベルトから剥離したウレタン等の合成樹脂からなる対象物を除去することができる。
本実施例におけるブラシロール41は、以上のように構成されているので、被洗浄面に付着しているさまざまな性状を有する異物等の対象物を、ブラシ毛材48a、48b、48cの異なる接触力、押付力により、効率よく確実に、被洗浄面から除去することができる。
(実施例7)
図9(a)は、本発明のブラシロールが搭載された洗浄装置の斜視図、図9(b)は、図9(a)のE−E断面図である。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。
図9(a)において、洗浄装置50は、自動車の鋼板57のプレス加工ライン等に設置され、プレス機等の加工機器(図示せず)に供給される鋼板57等のブランク材を洗浄するもので、平板状の鋼板57をブラシロール51a、51bに送り込む図示しない上下一対の送りロールと、前記送りロールから送り出された鋼板57の両面を洗浄する上下一対にて設置されたブラシロール51a、51bと、ブラシロール51a、51bを回転駆動する駆動手段54、54と、ブラシロール51a、51b及び/又は鋼板57に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズル55を有する配管56、56から構成されている。
ブラシロール51a、51bは、略円筒状の回転軸53の外周にブラシ部52が形成されてあり、上記第1から第6の実施例におけるブラシロール1、41のいずれかと同一である。上部に位置するブラシロール51aは鋼板57の表面を洗浄し、下部に位置するブラシロール51bは鋼板57の裏面を洗浄する。
ブラシロール51a、51bは、駆動手段54により、図9(b)の如く、矢印の方向に一定の回転速度で回転している。送りロール(図示せず)によりブラシロール51a、51bに送り込まれた鋼板57は、上部のブラシロール51aと下部のブラシロール51bの間を通過すると共に、ブラシロール51a、51bの有するブラシ部52が鋼板57の両面に当接し、鋼板57の表面、裏面に付着、堆積している異物等の対象物(図示せず)を除去する。その際、配管56からノズル55に洗浄液が送り込まれ、ノズル55からブラシロール51a、51b及び/又は鋼板57にたいして洗浄液が噴霧され、洗浄液により異物等の対象物が鋼板57から浮き上がりやすくする。
上記の如く構成された洗浄装置50の動作、作用は下記の通りである。
図示しない送りロールにより鋼板57がブラシロール51a、51bに送り込まれると、配管56を通して各洗浄ノズル55に洗浄液が供給されながら、ブラシロール51a、51b及び/又は鋼板57にたいして洗浄液が噴霧され、鋼板57は回転している上部のブラシロール51aと、下部のブラシロール51bとの間を通過すると共に、上部のブラシロール51aで鋼板57の表面が、下部のブラシロール51bで鋼板57の裏面がそれぞれ洗浄される。
鋼板57の表面では、上部のブラシロール51aで擦り取られた塵埃や鉄粉等の対象物が、洗浄液と共に上部のブラシロール51aの一方の端部へ向かって送り出され、洗浄装置50の内部に落下していく。また、鋼板57の裏面では、下部のブラシロール51bで擦り取られた異物等の対象物の一部は、洗浄液と共に、直ちに洗浄装置50の内部に落下していき、洗浄液の粘着性や表面張力により、ブラシ部52に捕捉された対象物は、下部のブラシロール51bの螺旋状のブラシ部52により、下部のブラシロール51bの一方の端部へ向かって送り出され、洗浄装置50の内部に落下していく。
洗浄装置50の内部に落下し、回収された異物等の対象物は、汚れた洗浄液と共に排出配管(図示せず)を通って、図示しない濾過装置や、廃液処理装置に送られていき、フィルター等により捕捉される。洗浄液は濾過されて、再び配管56へ送り込まれる。
以上のように、本実施例によれば、洗浄性能に優れ、しかも鋼板57の両面にブラシロール51a、51bのブラシ部52によるブラシマークが付き難い洗浄装置50を提供することができる。