JP2009267300A - 多層配線基板の製造方法 - Google Patents

多層配線基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来、無電解銅メッキ層を利用して作製されていた多層配線基板を、無電解メッキ銅層に代えて、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を利用して作製する方法の提供。
【解決手段】例えば、無電解銅メッキの際、触媒として利用可能なSn−Pd系触媒を付着し、活性処理を施すことで得られるPd金属触媒の付着層を、金属核粒子付着層として利用する。該金属核粒子を核として、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子を還元することで再生された銅ナノ粒子を低温焼結させることで、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を形成する。この銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を利用して、絶縁性樹脂層上の上層配線層の形成と、下層配線層と上層配線層の間における、ビアホールを介する層間導通を達成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、多層配線基板の製造方法に関し、特には、ビアホールを介する層間導通を利用する多層配線基板の製造方法に関する。
多層配線基板では、下層配線層と上層配線層との間に絶縁層を設けている。上下の配線層間の導通には、両層を隔てる絶縁層を貫通する孔部を形成し、ビアホールを介する層間導通が利用されている。
多層配線基板、例えば、ビルド・アップ基板の作製工程では、下層配線層を被覆するように、絶縁層を形成する。ビアホールを介する層間導通に利用される貫通孔部を、該絶縁層を貫通し、その開口部に下層配線層の表面が露出するように設ける。絶縁層の上面に上層配線層を形成する際、この貫通孔部を埋め込み、開口部に露呈する下層配線層の表面を覆うような導電体層を形成し、ビアホールを介する層間導通を達成している。
無電解メッキ銅層を用いて、上層配線層を形成する場合、ビアホールを介する層間導通用の導電体層にも無電解メッキ銅層を採用している。具体的には、ビアホールを介する層間導通用の導電体層と、該導電体層と電気的に連結される上層配線層は、一体に形成されている。
無電解メッキ金属層に代えて、導電性金属ペーストを利用して形成される導電体層を用いて、上層配線層を形成する、多層配線基板も提案されている。例えば、導電性媒体として、平均粒子径が1〜100nmの金属ナノ粒子を用い、絶縁層表面への樹脂接着に利用される有機バインダー樹脂を添加している導電性金属ペーストを利用して、上層配線層の形成を行っている多層配線基板の製造方法が提案されている(特許文献1を参照)。その際、絶縁層の上面、貫通孔部の側壁面、その開口部に露呈する下層配線層の表面を被覆するように、導電性金属ペーストの塗布膜層を所定のパターン形状で描画する。この導電性金属ペーストの塗布膜層に250℃以下の温度で加熱処理を施し、含有される平均粒子径が1〜100nmの金属ナノ粒子相互が低温焼結した焼結体層を作製する。この金属ナノ粒子焼結体層は、添加されている有機バインダー樹脂を利用して、絶縁層の上面、貫通孔部の側壁面に接着固定される。貫通孔部の開口部に露呈する下層配線層の表面では、金属ナノ粒子焼結体層と密に接触する状態となり、ビアホールを介する層間導通が達成されている。この手法では、利用される導電性金属ペースト中では、金属ナノ粒子の表面に、該金属ナノ粒子に含まれる金属元素に対して配位結合可能な有機化合物による被覆層を設け、該被覆層を保持する状態で金属ナノ粒子が溶媒中に安定に分散されている。さらに、導電性金属ペースト中には、加熱時に、前記被覆層を構成する有機化合物に作用可能な捕捉物質を配合している。
加えて、多層配線基板、例えば、ビルド・アップ基板の作製工程において、下層配線層と上層配線層を、ともに導電性ペーストを利用し、また、層間分離用の絶縁性樹脂層を、絶縁性ペーストを利用して、一括して作製する方法も提案されている(特許文献2を参照)。この作製工程では、描画にインクジェット法を用いて、絶縁基板上に、下層配線用の導電性ペースト塗布膜層を形成し、上層の配線層パターンが重なる積層部位に対して、上下層間の導通を図る積層部位を除き、他の部位上を覆う部分領域のみに、層間分離用に、絶縁性ペースト塗布膜層を形成する。さらに、上層配線用の導電性ペースト塗布膜層を積層形成し、加熱処理して、各導電性ペースト塗布膜層から導電体層、絶縁性ペースト塗布膜層から絶縁体層を作製する。その結果、部分領域の絶縁膜で層間分離され、絶縁膜の形成を省いた積層部位では、上下の配線層間の連結・導電がなされる多層配線層が形成される。すなわち、下層配線用の導電性ペースト塗布膜層と上層配線用の導電性ペースト塗布膜層とが積層される部位では、両層の導電性ペースト塗布膜層は直接接触した状態で加熱処理がなされる結果、該積層部位では、一体化された導電体層が形成されている。絶縁性ペースト塗布膜層が、下層配線用の導電性ペースト塗布膜層と接する部分領域では、同時に加熱処理が施されるため、下層配線層の上面と、上層配線層の下面に、絶縁性樹脂層は緻密に接着した状態となっている。
また、金属ナノ粒子分散液を利用して、メッキ代替導電性金属皮膜を形成する方法が提案されている(特許文献3を参照)。無電解メッキ層の形成が可能なメッキ下地層の表面に、有機ハンダー成分を含有していない金属ナノ粒子分散液を塗布し、加熱処理を施し、該金属ナノ粒子の低温焼結を行うことで、メッキ下地層表面に金属ナノ粒子焼結体層を形成している。その際、メッキ下地層表面と金属ナノ粒子焼結体層との間の接着は、メッキ下地層表面の金属核(メッキ核)と金属ナノ粒子との間の金属間接合形成により達成されている。従って、配線基板の作製時、メッキ下地層表面に無電解メッキ層を形成する部分を代替する目的で、前記方法を適用して形成される該メッキ代替導電性金属皮膜の利用が提案されている。例えば、両面配線基板を貫通するスルーホールの内壁面に形成される、スルーホール用メッキ膜の代替層としての利用が提案されている。
金属ナノ粒子焼結体型の導電体層を形成する方法に関しては、多くの提案がなされている。特に、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を形成する方法の一つとして、平均粒子径を1〜100nmの範囲に選択される、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を用いて、銅ナノ粒子相互の焼結体層を形成する方法が提案されている(特許文献4を参照)。その際、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を還元して、銅ナノ粒子へ再生し、同時に、再生された銅ナノ粒子の焼成を行って、焼結体層を形成する手法が選択されている。この還元処理工程では、還元能を有する有機化合物の存在下、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を加熱し、その表面の銅酸化物に還元能を有する有機化合物を作用させ、金属銅へと還元している。例えば、酸化によって、オキソ基(=O)またはホルミル基(−CHO)へと変換可能なヒドロキシ基を有する有機化合物を、還元能を有する有機化合物として利用している。
特許第3900248号公報 特開2005−93814号公報 特許第3764349号公報 特許第3838735号公報
上述するように、多層配線基板を作製する際、無電解金属メッキ層により構成されている導電体層に代えて、金属ナノ粒子焼結体型の導電体層を利用する方法が提案されている。
多層配線基板では、下層配線層と上層配線層との間に絶縁層を設けている。上下の配線層間の導通には、両層を隔てる絶縁層を貫通する孔部を形成し、ビアホールを介する層間導通が利用されている。例えば、ビルド・アップ基板では、下層配線層を被覆するように、層間分離用の絶縁層を形成する。ビアホールを介する層間導通に利用される貫通孔部を、該絶縁層を貫通し、その開口部に下層配線層の表面が露出するように設ける。絶縁層の上面に上層配線層を形成する際、この貫通孔部を埋め込み、開口部に露呈する下層配線層の表面を覆うような導電体層を形成し、ビアホールを介する層間導通を達成している。
例えば、無電解銅メッキ層を用いて、上層配線層を形成する場合、ビアホールを介する層間導通用の導電体層にも無電解銅メッキ層を採用している。具体的には、ビアホールを介する層間導通用の導電体層と、該導電体層と電気的に連結される上層配線層は、一体に形成されている。
この絶縁層の上面に形成される上層配線層、ならびに、ビアホールを介する層間導通用の導電体層に、無電解銅メッキ層に代えて、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を利用する構成を採用する多層配線基板を作製する方法の開発が望まれている。
具体的には、有機バインダー樹脂を利用することなく、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層と絶縁層の上面との接着を達成でき、また、該銅ナノ粒子焼結体型の導電体層は、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を用いて、作製することが可能な多層配線基板を作製する方法の開発が望まれている。特に、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を還元し、銅ナノ粒子へと変換する工程では、気相から供給する水素ガスを利用する還元反応を採用している、多層配線基板を作製する方法の開発が望まれている。
本発明は、前記の課題を解決するものである。本発明の目的は、従来、無電解銅メッキ層を利用して作製されていた多層配線基板を、無電解メッキ銅層に代えて、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を利用して作製する方法を提供することにある。特には、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層の作製工程では、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を用いて、層間分離用の絶縁性樹脂層上面に所定の配線パターンの塗布膜層を形成し、同時に、絶縁性樹脂層に設ける貫通孔部中を埋め込む形状に塗布膜層を形成した後、気相から供給する水素ガスを利用する還元反応によって、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を還元し、銅ナノ粒子へと変換し、さらに、低温焼成処理によって、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を形成している、多層配線基板の新規な作製方法を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するため、検討を行い、下記の事項を見出した。
まず、層間分離用の絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴(貫通孔)の側壁面に対して、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を緻密に接着する手段に関して、検討を進めた。その際、絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴(貫通孔)の側壁面に油脂や皮脂の被膜層が残余すると、接着性を低下させる要因となることを確認した。
また、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層を形成する際、無電解銅メッキ層を形成する場合にメッキ下地層として利用される、金属核(メッキ核)が緻密に生成されている下地層を利用すると、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層の絶縁性樹脂層上面に対する接着性を格段に向上させることを見出した。
すなわち、メッキ下地層に利用可能な、Sn−Pd触媒付着層を、絶縁性樹脂層上面を被覆するように形成すると、該Sn−Pd触媒付着層表面のPd金属核に、銅ナノ粒子が付着し、さらに、銅ナノ粒子の二次元的な集積が進むことが判明した。該Sn−Pd触媒付着層を構成するPdは、絶縁性樹脂層上面に対して、高い密着性を示すため、このSn−Pd触媒付着層を介して、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層は絶縁性樹脂層上面に緻密に付着した状態となる。絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴(貫通孔)の側壁面も、Sn−Pd触媒付着層で被覆されており、このSn−Pd触媒付着層を介して、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層は貫通孔部の側壁面に緻密に付着した状態となる。
一方、ビアホール用の穴(貫通孔)の開口部(底面)には、下層導電体層表面が露呈した状態となっている。この下層導電体層として、例えば、電解メッキ銅箔層で構成される配線層を採用する際、該電解メッキ銅箔層の表面には、銅酸化物被膜が存在している。このメッキ銅箔層表面の銅酸化物被膜を一旦除去すると、その後、一分子層程度の酸化被膜が生成されるが、容易に還元され、清浄な銅表面となる。この清浄な銅表面上に、銅ナノ粒子が付着し、さらには、銅ナノ粒子の二次元的な集積が進むと、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層が形成されることを見出した。
さらに、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を還元し、銅ナノ粒子を再生する手段として、下記の条件を利用できることを見出した。
分散溶媒が残留する状態が維持されている場合、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液の塗布膜層中では、気相から供給される水素分子(H2)を利用して、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子に対する還元反応が進行する。この表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子に対する還元反応は、加熱温度を、150℃以上、250℃以下に選択して、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気下において、少なくとも1.1気圧以上に加圧された状態で実施することができる。この加圧条件では、塗布膜層中の分散溶媒が残留した状態を維持することができ、該分散溶媒中に溶解する水素分子を利用することで、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子の還元が進行する。
本発明者は、上記の一連の知見に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明にかかる多層配線基板の製造方法は、
ビアホールを介する層間導通を利用する多層配線基板を製造する方法であって、
前記多層配線基板は、下層配線層と、上層配線層と、その層間に配置する層間絶縁膜を有し、
該層間絶縁膜は、絶縁性樹脂層で形成されており、該下層配線層は、電解メッキ銅箔層で形成されており、
前記下層配線層と上層配線層の間における、ビアホールを介する層間導通は、
前記層間絶縁膜の表面から、前記下層配線層の表面に達する、ビアホールを介する層間導通用の導電体層は、銅ナノ粒子の焼結体層により形成されており、
前記銅ナノ粒子の焼結体層を形成する方法は、
前記層間絶縁膜の表面から、前記下層配線層の表面に達する、ビアホール形成用の穴を作製する工程と、
該ビアホール形成用の穴の側壁面、底面、ならびに前記層間絶縁膜の表面に、金、銀、銅、白金、パラジウムからなる群より選択される金属からなる金属核粒子を均一に付着させる工程と、
平均粒子径を1〜100nmの範囲に選択される、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を用いて、該分散液の塗布膜層を、該ビアホール形成用の穴の側壁面、底面、ならびに前記層間絶縁膜の表面上に描画する工程と、
前記塗布膜層中に含まれる、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子に対して、表面酸化膜層または酸化銅を還元する処理を施し、さらに、還元処理を受けたナノ粒子の焼成を行って、焼結体層を形成する工程とを有し、
同一工程内で実施される、前記還元処理と焼成処理は、加熱温度を、150℃以上、250℃以下に選択して、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気下において、少なくとも1.1気圧以上に加圧された状態において行い、
前記還元処理を受けたナノ粒子の焼成工程では、
少なくとも、層間絶縁膜表面においては、その表面に付着している金属核粒子を核として、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層形成が行なわれる
ことを特徴とする多層配線基板の製造方法である。
さらに、前記焼結体層を形成する工程の後に、
層間絶縁層の表面が露出するまで焼結体層を除去し、ビアホール形成用の穴内部のみに、焼結体層を残存させる工程を設ける形態とすることもできる。
本発明にかかる多層配線基板の製造方法では、前記金属核粒子を均一に付着させる工程に先立ち、
該ビアホール形成用の穴の底面に露呈する、下層配線層の表面に対して、該下層配線層表面の表面酸化被膜を除去する工程を設けることが好ましい。
また、前記金属核粒子として、無電解銅メッキにおいて、銅(II)カチオンを金属銅(0)へと還元する際、該還元反応を触媒可能なパラジウム系触媒に利用される、パラジウムからなる金属核粒子を用いることが好ましい。特に、前記パラジウムからなる金属核粒子は、
無電解銅メッキにおいて、銅(II)カチオンを金属銅(0)へと還元する際、該還元反応を触媒可能なスズ−パラジウム系触媒に対して、該スズ−パラジウム系触媒中のスズを選択的に溶出することで、活性化されたパラジウム系触媒からなる金属核粒子であることがより好ましい。
本発明では、
分散液中に含有される、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子は、
少なくとも、前記表面酸化膜層は、酸化第一銅、酸化第二銅、またはこれら銅酸化物の混合物のいずれかを含んでなり、
また、該銅ナノ粒子は、酸化第一銅、酸化第二銅、またはこれら銅の酸化物の混合物、ならびに金属銅のうち、2つ以上を含んでなる混合体状粒子であることが好ましい。
さらに、前記還元処理と焼成処理における、水素ガス雰囲気、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気中の水素分子の含有率は、1体積%〜100体積%の範囲に選択されていることが好ましい。
その際、前記還元処理と焼成処理における、水素分子を含有する混合気体の雰囲気は、
水素分子と、不活性気体の混合物であり、
該不活性気体は、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、あるいは、それらの二種以上を混合したものであることが望ましい。
特に、前記還元処理と焼成処理において、
前記加熱温度に達した際、気相の圧力を1.4気圧〜10気圧の範囲とする加圧状態を達成していることが好ましい。
前記分散液中には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子100質量部当たり、ジアルキルアミンが、2質量部〜20質量部の範囲で含有されていることが好ましい。その際、前記ジアルキルアミンは、その二つのアルキル基は、炭素数5以上、9以下の範囲であるジアルキルアミンから選択されていることが好ましい。
また、前記分散液中には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子100質量部当たり、
付粘性成分として、沸点が150℃以上の、粘性を有する炭化水素溶媒が、20質量部〜2質量部の範囲で含有されていることが好ましい。その際、付粘性成分として含有される、前記沸点が150℃以上の、粘性を有する炭化水素溶媒は、流動パラフィン、イソパラフィン、鉱物油、化学合成油、植物油からなる炭化水素溶媒から選択される一種、または、二種以上を混合したものであることが望ましい。
本発明にかかる多層配線基板の製造方法は、
前記銅ナノ粒子の焼結体層の膜厚は、5μm〜100μmの範囲に選択される際、特に有効な方法となる。
本発明にかかる多層配線基板の製造方法では、層間分離用の絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面に対して、無電解銅メッキ下地層に利用可能な、Sn−Pd触媒付着層を被覆することで、銅ナノ粒子焼結体層は、該Sn−Pd触媒付着層中に含まれるPd金属を核として、銅ナノ粒子が二次元的に集積し、絶縁性樹脂層上面、穴の側壁面に密な接着を達成した状態とできる。同時に、ビアホール用の穴の開口部(底面)に露呈する下層配線層の銅メッキ層表面においても、Sn−Pd触媒付着層中に含まれるPd金属を核として、銅ナノ粒子焼結体層が二次元的に形成される。結果的に、層間分離用の絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面、底面部において、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を還元することで再生される銅ナノ粒子が、Pd金属を核として、二次元的に集積して緻密な焼結体層を形成することが可能である。
以下に、本発明を詳しく説明する。
本発明にかかる多層配線基板の製造方法では、従来、無電解銅メッキを利用して形成されていた、下層配線層と上層配線層の間における、ビアホールを介する層間導通を、銅ナノ粒子焼結体層を利用して形成している。
その際、層間分離用の絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面、底面部全体に銅ナノ粒子焼結体層を二次元的に形成させるため、例えば、Sn−Pd触媒付着層中に含まれるPd金属を核として、銅ナノ粒子焼結体層を形成している。具体的には、層間分離用の絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面、底面に対して、無電解銅メッキ下地層に利用可能な、Sn−Pd触媒付着層を被覆する。このSn−Pd触媒は、緻密な面密度で付着しており、該Sn−Pd触媒付着層中に含まれるPd金属を核として、銅ナノ粒子の焼結を開始すると、隣接する核から成長する銅ナノ粒子焼結体の微小塊が相互に接合し、銅ナノ粒子焼結体の微小塊複数から二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層が構成される。引き続き、この二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層を下地として、銅ナノ粒子の融着、焼結が進行することによって、全体が一体化し、所望の膜厚を有する、二次元的な銅ナノ粒子焼結体層となる。
最初に形成される二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層の平面形状は、Sn−Pd触媒付着層上に塗布される、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液の塗布膜層の平面形状と一致する。すなわち、分散液の塗布膜層とSn−Pd触媒付着層とが接する領域に、二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層が形成される。その後、形成される二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層を下地として、銅ナノ粒子の融着、焼結が進行するため、分散液の塗布膜層の膜厚に比例した、所望の膜厚を有する、二次元的な銅ナノ粒子焼結体層が形成される。
例えば、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴部分では、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を塗布する際、その分散液の塗布膜層の上面は、絶縁性樹脂層上面における分散液の塗布膜層の上面と同じ水準となる。その場合、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面、底面にも、Sn−Pd触媒付着層が形成されており、穴の側壁面、底面全体を被覆するように、二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層が形成される。その結果、ビアホール用の穴の側壁面の上端部分にも、絶縁性樹脂層上面と同様の膜厚を有する二次元的な銅ナノ粒子焼結体層が形成される。一方、ビアホール用の穴の側壁面の下端部分では、ビアホール用の穴の底面に形成される銅ナノ粒子焼結体層と一体化している。そのため、ビアホール用の穴の側壁面を被覆する銅ナノ粒子焼結体層は、上端から下端への徐々に膜厚は増加するが、全体として、一体化した銅ナノ粒子焼結体層を構成している。
本発明のかかる多層配線基板の製造方法は、図3に例示する工程で構成される。まず、層間分離用の絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面、底面部全体に、金属核粒子を均一に付着させる。例えば、Sn−Pd触媒付着層を形成し、その後、活性化処理を施し、Pd触媒粒子が均一に付着している状態とする(触媒付与)。その後、層間分離用の絶縁性樹脂層上面、ビアホール用の穴の側壁面、底面部を被覆するように、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液の塗布膜層を形成する(ペースト印刷)。
その際、塗布する分散液は流動性を有するので、ビアホール用の穴の内部は、分散液で満たされ、分散液の塗布膜層の表面は、絶縁性樹脂層上面とビアホール用の穴の上部で同じ水準となる。絶縁性樹脂層の厚さに相当する穴の深さA、絶縁性樹脂層上面における分散液の塗布膜層の膜厚Bを用いて、ビアホール用の穴部分の見かけの塗布膜層の膜厚は、(A+B)と表される。
その後、加熱処理を施す際、分散液中の分散溶媒が蒸散する結果、分散液自体の粘度は上昇する。その間、分散溶媒の蒸散は、分散液の塗布膜層の表面から進行し、分散液の塗布膜層の表面は、絶縁性樹脂層上面とビアホール用の穴の上部で同じ水準に維持される。
分散液自体の粘度がある水準を超えると、実質的に流動性が失われる。そのため、図3に例示するように、加熱処理を施し、銅ナノ粒子の焼成を行って形成した、銅ナノ粒子焼結体層は、絶縁性樹脂層表面と、ビアホール用の穴部分では、その表面の水準は相違する(焼成後)。すなわち、絶縁性樹脂層表面に形成される、銅ナノ粒子焼結体層の膜厚Cと、ビアホール用穴部分中央の銅ナノ粒子焼結体層の膜厚Dとは、(A+C)>Dの関係となる。
本発明では、形成される銅ナノ粒子の焼結体層の膜厚は、5μm〜100μmの範囲に選択することが好ましい。具体的には、100μm≧(A+C)>D>C≧5μmの範囲に選択することが好ましい。例えば、50μm≧D≧30μm、30μm≧C≧20μmの範囲に選択することが可能である。
さらに、本発明では、銅ナノ粒子焼結体層の形成を終えた後、層間絶縁層の表面が露出するまで焼結体層を除去し、ビアホール形成用の穴内部のみに、焼結体層を残存させる工程を設ける形態とすることもできる。すなわち、図4に例示するように、銅ナノ粒子焼結体層の形成工程(焼成後)、例えば、研磨処理を施すことによって、層間絶縁層上面に形成されている銅ナノ粒子焼結体層を除去する工程を設ける。この工程を実施すると(研磨後)、ビアホール形成用の穴内部のみに、焼結体層が残り、その焼結体層の上面は、層間絶縁層の表面と同じ水準となる。
従って、ビアホール形成用の穴内部に残留する銅ナノ粒子の焼結体層の膜厚Eは、該ビアホール形成用の穴の深さAと、一致する。勿論、この形態では、銅ナノ粒子焼結体層の形成を終えた際、ビアホール用穴部分中央の銅ナノ粒子焼結体層の膜厚Dは、(A+C)>D>A>Cの条件を満たすように選択されている。その際、100μm≧(A+C)>D>A>C≧5μmの範囲、例えば、60μm≧(A+C)>D>A>C≧5μmの範囲に選択することが可能である。
対応して、分散液の塗布膜層の膜厚は、絶縁性樹脂層表面における膜厚Bは、絶縁性樹脂層表面に形成される、銅ナノ粒子焼結体層の膜厚Cに対して、例えば、10×C≧B≧5×Cの範囲とする。また、ビアホール用の穴部分の見かけの塗布膜層の膜厚(A+B)は、例えば、A+10×C≧(A+B)≧A+5×Cの範囲とする。
前記層間絶縁層上面に形成されている銅ナノ粒子焼結体層を除去する工程では、従来、無電解銅メッキ膜の研磨除去に利用される選択的な研磨処理を適用することができる。例えば、無電解銅メッキ膜の研磨除去に利用される、メカノケミカル研磨法が利用可能である。
本発明では、二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層を形成するため、例えば、Sn−Pd触媒付着層を構成する、Sn−Pd触媒中に含まれるPd金属を核として利用している。この金属核粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウムからなる群より選択される金属からなる金属核粒子であり、絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面、底面部全体に均一な面密度で付着した状態とする。
その際、表面に付着する金属核粒子の面密度は、1×1010個/mm2〜1×1015個/mm2の範囲、望ましくは5×1010個/mm2〜2×1013個/mm2の範囲、例えば、5×1010個/mm2〜1×1012個/mm2の範囲に選択することができる。単純換算して、表面に付着する金属核粒子の面密度は、1×10-2個/nm2〜1×103個/nm2の範囲、望ましくは5×10-2個/nm2〜2×10個/nm2の範囲、例えば、5×10-2個/nm2〜1個/nm2程度に選択することができる。
この金属核粒子自体は、その金属表面には酸化被膜が存在しない状態とする。そのため、還元された銅ナノ粒子が、金属核粒子の金属面と接すると、融着が生じ、金属核粒子を囲むように、銅ナノ粒子の凝集がなされる。金属核粒子が均一に付着しているため、この銅ナノ粒子が凝集し、融着した塊も均一な面密度で生成する。金属核粒子付着層における金属核粒子の面密度が高いため、隣接した銅ナノ粒子が凝集し、融着した塊は、相互に接した形態となる。隣接した銅ナノ粒子が凝集し、融着した塊は、相互に接した形態となると、その外周の隙間を埋め込むように、銅ナノ粒子の凝集と融着が進行する結果、二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層が構成される。一旦、二次元的な銅ナノ粒子焼結体薄層が構成されると、これを下地層として、銅ナノ粒子の融着が進行する結果、絶縁性樹脂層の上面には、分散液の塗布膜層の平面形状と同じ形状を有し、膜厚が均一な銅ナノ粒子焼結体層が形成される。
絶縁性樹脂層上面、ならびに、絶縁性樹脂層に設けるビアホール用の穴の側壁面、底面部全体に、金属核粒子を均一に付着させるためには、金属核粒子の付着の妨げとなる、皮脂や穴開け加工時に発生する残渣を除去することが好ましい。また、ビアホール用の穴の底部に露呈する、下層配線層の表面の酸化被膜も除去することが好ましい。この表面洗浄処理として、無電解銅メッキを行う際、基板表面の洗浄処理に利用される、「コンディショナー洗浄」処理が利用できる。
また、金属核粒子付着層の形成手段として、無電解銅メッキの際、触媒として利用されるSn−Pd触媒を付着させる手法が利用可能である。さらに、例えば、Sn−Pd触媒を利用する際には、Pd金属が該触媒の表面に露呈した状態とする。例えば、Sn−Pd触媒に含まれるSnを除去し、Pd金属が露呈し、該触媒の活性化が施された状態とすることが好ましい。
例えば、無電解銅メッキを行う際、基板表面の洗浄処理に利用される、「コンディショナー洗浄」処理を行い、引き続き、無電解銅メッキの際、触媒として利用可能なSn−Pd触媒を均一に付着させ、該Sn−Pd触媒の活性化処理を行い、Pd系触媒に変換する、一連の処理を利用することができる。
本発明で利用する、銅ナノ粒子焼結体型の導電体の形成方法では、所望の形状に描画塗布された塗布膜層に含まれる銅ナノ粒子の表面に存在する酸化銅被膜層または酸化銅ナノ粒子を、特に、水素分子を利用して還元する。この、第一の処理過程では、不活性気体中に混合されている、水素分子の存在下、加圧条件下、加熱温度を250℃以下に選択して、加熱処理を行う。塗布膜層中に含まれる該微粒子表面に対して、気相から供給される、水素分子を「還元剤」として作用させることで、加圧条件下、加熱温度が、250℃以下と低温であっても、表面の酸化銅の還元反応が速やかに進行する。一旦、表面に生成した、非酸化状態の銅原子と、その内部に存在する酸化銅分子との固相反応により、内部の酸化銅は非酸化状態の銅原子に変換され、代わって表面に酸化銅が生成される。引き続き、この表面に生成された酸化銅は、継続して供給される水素分子を「還元剤」とする還元反応によって、非酸化状態の銅原子まで還元される。前記の一連の反応サイクルが繰り返される結果、当初は、ナノ粒子の内部まで達していた酸化銅被膜層は徐々に減少して、最終的には、ナノ粒子全体が金属銅で構成される、銅ナノ粒子に復する。
仮に、この銅ナノ粒子に復した状態を、加熱下、再び大気中の酸素分子などに一定時間以上接触させると、再び表面酸化膜が生じる。それを避けるため、本発明の方法では、加圧条件、加熱下、水素分子を含む雰囲気に保ち、再生された銅ナノ粒子相互の融着を行わせる。再生された銅ナノ粒子では、その表面全体に、表面マイグレーション可能な銅原子が存在しているため、銅ナノ粒子相互の接触点には、表面マイグレーションによって、周囲から銅原子が供給される。その結果、二つの銅ナノ粒子は相互に一体化され、塗布膜全体にわたり、緻密な焼結体層を形成することが可能となる。
まず、本発明の方法では、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を用いて、目的とする上層配線層の平面形状パターンに合わせて、該分散液の塗布膜層を描画する。その際、分散質とする表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子の平均粒子径は、100nm以下であり、極めて微細な配線パターンの形成にも応用できる。
その際、ナノ粒子の平均粒子径を、1〜100nmの範囲に、より好ましくは、1〜20nmの範囲に選択することで、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層の層厚のバラツキ、局所的な高さの不均一を抑制することが可能となる。
本発明で利用される、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層の形成方法では、使用する表面に酸化銅被膜層を有する銅ナノ粒子の平均粒子径は、1〜100nmの範囲に、より好ましくは、1〜20nmの範囲に選択する。すなわち、還元することで再生される銅ナノ粒子相互の低温焼成が容易に進行する粒子径の範囲に選択する。
なお、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液中に含有される、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子では、少なくとも、その表面酸化膜層は、酸化第一銅、酸化第二銅、またはこれら銅酸化物の混合物のいずれかを含んでいる。また、該ナノ粒子は、酸化第一銅、酸化第二銅、またはこれら銅の酸化物の混合物、ならびに金属銅のうち、2つ以上を含んでなる混合体状微粒子であってもよい。特に、含有される表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子として、平均粒子径が100nm以下の表面に酸化銅被膜層を有する銅ナノ粒子が含まれる際には、かかる銅ナノ粒子の表面は、酸化銅被膜層で均一に被覆される形態とする。この形態では、分散液中において、ナノ粒子の金属表面が直接接触して、相互に融合した凝集体の形成を引き起こす現象を回避することが可能となる。
本発明で利用される、銅ナノ粒子焼結体型の導電体層の形成方法では、銅ナノ粒子相互の電気的な接触を、焼結体形成で達成するので、利用する分散液中には、バインダーとなる樹脂成分を配合しない組成とされる。従って、分散液中に含まれる分散媒体は、かかる分散液を塗布して、層間絶縁膜表面上に、目的のパターン形状の塗布膜層の形成に利用可能な分散溶媒であれば、種々の分散溶媒が利用可能である。
一方、下記する、加圧条件下、加熱処理を実施する際、塗布膜層内部に対して、気相から供給される水素分子が作用可能である必要があり、最終的には、加圧条件下、かかる加熱処理温度において、蒸散がなされる分散溶媒であることが必要となる。
従って、利用される分散溶媒は、室温では、液状である必要があり、融点は、少なくとも、20℃以下、好ましくは、10℃以下であり、一方、300℃以下に選択される加熱処理温度では、高い蒸散性を示す必要もある。従って、分散溶媒として利用する有機溶剤の沸点は、少なくとも、350℃以下、好ましくは、300℃以下であることが好ましい。但し、その沸点が、100℃を下回ると、塗布膜層の描画を行う過程で、分散溶媒の蒸散が相当に進行するため、塗布膜層に含有される表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子の量にバラツキを引き起こす要因ともなる。従って、分散溶媒には、沸点が、少なくとも、100℃以上、300℃以下の範囲、より好ましくは、150℃以上、300℃以下の範囲である有機溶剤を選択することがより望ましい。
表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液の調製に利用される分散溶媒には、例えば、テトラデカン(融点5.86℃、沸点253.57℃)などの高い沸点を有する鎖式炭化水素溶媒を利用することができる。特には、沸点が150℃以上、300℃以下の範囲、より好ましくは、200℃以上、300℃以下の範囲である、鎖式炭化水素溶媒を利用することが望ましい。
一方、分散液を塗布する際、分散液全体の流動性が高いと、横方向の拡がりが大きく、微細な線幅の描画が困難となる。また、描画する塗布膜層の膜厚を厚くすることが困難となる。すなわち、分散液全体の粘度を、描画する塗布膜層の形状精度、例えば、最小の線幅、塗布膜層の膜厚に応じて、適宜調整する必要がある。分散液全体に粘性を付与する目的で、分散溶媒中に付粘性成分を添加することができる。また、分散溶媒として利用する有機溶剤として、粘性を有する炭化水素溶媒を利用することができる。例えば、付粘性成分としての機能を有する炭化水素溶媒として、流動パラフィン(アルキルナフテン系炭化水素;沸点:300℃以上 50%蒸留性状 約450℃)、イソパラフィン(分岐炭化水素;水素添加ポリブテン(イソブテン/ブテン共重合体);沸点:250℃以上 50%蒸留性状 約316℃)などを利用することができる。また、流動パラフィン、イソパラフィンは、その炭素数が異なる複数の成分からなる混合物であり、個々の成分の沸点は、その炭素数に依存して異なっている。加熱処理を進める際、徐々に蒸散するが、含有されている高沸点成分が残余し、付粘性成分としての機能を有する。従って、含有されている高沸点成分の含有比率の指標:50%蒸留性状の値が、少なくとも、250℃以上、好ましくは、300℃以上、500℃以下の流動パラフィン、イソパラフィンを利用することが望ましい。さらには、複数の成分の混合物の形態をとる、鉱物油、化学合成油、植物油のうち、含有されている高沸点成分の含有比率の指標:50%蒸留性状の値が、少なくとも、250℃以上、好ましくは、300℃以上、500℃以下のものも利用できる。例えば、沸点300℃以上の植物油の例として、オレイン酸メチル(沸点:320〜340℃)、オレイン酸エチル等の脂肪酸エステル(沸点:340℃〜360℃)、ジオクチルフタレート(沸点:384℃)、セバシン酸ジエチル(沸点:318℃)、セバシン酸ジブチル(沸点:330〜350℃)、スクワラン(沸点:440〜460℃)などをあげることができる。
この付粘性成分は、通常、高い沸点を示す液状の有機物であるため、例えば、分散溶媒中に含まれる、比較的に沸点の低い他の溶剤成分と比較すると、蒸散性は劣っている。従って、分散液の塗布膜を、加圧条件下で、加熱する際、その昇温過程において、比較的に沸点の低い他の溶剤成分の蒸散が先に進み、分散溶媒全体の量が減少した段階でも、相当の比率で残留する。温度の上昇とともに、付粘性成分の流動性が徐々に増すため、分散液の塗布膜全体の膜厚を平均化させる機能を発揮する。すなわち、分散溶媒全体の量が減少するに伴って、塗布膜全体の膜厚が低減するが、その際、付粘性成分の徐々に流動性が増すため、分散液の厚さが均一化されるように、分散質の表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子の積層構造が構成される。換言するならば、加熱処理が進行し、分散溶媒が蒸散した段階では、残余している付粘性成分は、バインダー、レベリング剤の機能を発揮する。最終的に、この付粘性成分も蒸散すると、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子が緻密に積層された構造となっている。
上記のバインダー、レベリング剤の機能を発揮するため、付粘性成分として利用される、炭化水素溶媒は、沸点は、少なくとも、150℃以上、好ましくは、200℃以上であることが望ましい。一方、かかる付粘性成分の配合量は、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子の含有量に応じて、これらナノ粒子が集積した際、バインダーとして機能する上では、少なくとも、その隙間を充填可能な量であることが好ましい。なお、最終的に、焼結処理を進める際には、残余している付粘性成分の量が不必要に多いと、還元処理が施された銅ナノ粒子が付粘性成分を分散溶媒として、離散的に分散された状態となる。その場合、還元処理が施された銅ナノ粒子が沈降し、相互に緻密な接触を達成することに対して、付粘性成分は、その阻害要因となる場合がある。従って、還元処理が施された銅ナノ粒子が集積する際、最蜜充填状態を達成した場合に、その隙間を占めるに必要な量の付粘性成分が、加熱処理を開始する時点で残留していることが好ましい。例えば、還元処理が施された銅ナノ粒子の体積の総和:VCuに対して、配合される付粘性成分の体積:V1は、VCu:V1の比率が、少なくとも、30:70〜70:30の範囲、好ましくは、50:50〜70:30の範囲に選択することが望ましい。あるいは、分散液中には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子100質量部当たり、付粘性成分が、20質量部〜2質量部の範囲、好ましくは、10質量部〜2質量部の範囲で含有されている状態とすることが望ましい。
加えて、本発明では、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液中には、水素分子を「還元剤」として利用する還元過程において、その還元過程に関与する成分として、第2アミンを添加する。この第2アミンは、分散液中において、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子が均一な分散状態を示す上で、その分散剤としての機能を有する。すなわち、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子の表面は、一般に、酸化銅(II):CuOが表出しているが、このCuOに対して、第2アミン中に存在する>NHの構造を利用して、>NH…OCuの形態で分子間結合を形成する。また、部分的に、金属銅原子Cuが表面に存在する場合には、第2アミン中に存在する>NHの構造において、窒素原子の孤立電子対を利用して、>(H)N:CuOの形態で、配位的な結合を形成する。その結果、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子の表面は、第2アミン分子によって、被覆された状態として、分散溶媒中に分散される。分散溶媒として、炭化水素溶媒を利用する場合、該第2アミン中に存在する炭化水素基部分に起因する溶媒分子との親和性を利用して、分散剤としての機能を発揮する。
第2アミン分子は、炭化水素溶媒に対して、親和性を有するため、添加された第2アミンの一部が、炭化水素溶媒中に溶解している。本発明においては、第2アミン分子を、分散液中において、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子の分散性を保持する分散剤として利用するため、均一な被覆状態を達成可能な添加量とする。この第2アミン分子は、平均粒子径100nm以下のナノ粒子表面を被覆するため、分散溶媒中に溶存している濃度と、この表面上の付着密度とは平衡した状態となる。CuOに対して、>NH…OCuの形態で分子間結合を形成する、あるいは、Cuに対して、>(H)N:CuOの形態で、配位的な結合を形成する上では、アミン窒素原子に置換する炭化水素基は、電子供与性を有するものが好ましい。従って、本発明では、第2アミンとして、HN(CH2R’)2の形状を有するアミンを利用することが好ましい。その際、アミン窒素原子上に置換する炭化水素基(−CH2R’)の相互間で、立体障害を誘起することが懸念されないものが好ましい。従って、NH(CH2R’)2と表記可能なジアルキルアミンを選択することが好ましい。
分散液中に添加するジアルキルアミンの量は、分散溶媒中における濃度を適正な範囲に設定するように選択する。分散溶媒の種類、分散質のナノ粒子に対する、分散溶媒の量比と、該分散溶媒中での溶解度を考慮して、ジアルキルアミンの添加比率を適宜選択する。好ましくは、加圧条件下、温度を上昇させて、分散溶媒を徐々に蒸散させる際、この分散液の液相中における、ジアルキルアミンの濃度が徐々に上昇し、ナノ粒子表面を被覆している状態を保持する形態とする。その観点から、分散液の液相中には、当初から、高濃度でジアルキルアミンが含有されている状態とすることが好ましい。具体的には、分散液中には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子100質量部当たり、ジアルキルアミンが、2質量部〜20質量部の範囲、好ましくは、3質量部〜15質量部の範囲で含有されている状態とすることが好ましい。
また、利用されるジアルキルアミンの蒸散が、分散溶媒の蒸散よりも、顕著に早く進むことは望ましくない。一方、還元処理が終了し、焼結処理に移行する際、蒸散せず、多量のジアルキルアミンが残留することは望ましくない。従って、利用されるジアルキルアミンは、沸点が、少なくとも、100℃以上、好ましくは、200℃以上、300℃以下のものを利用することが望ましい。ジアルキルアミンとして、二つのアルキル基は、炭素数5以上、9以下の範囲のジアルキルアミンが好適に利用できる。特には、炭素数5以上、9以下の範囲のアルキル基を持ち、HN(CH2R’)2の形状を有するジアルキルアミン、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)アミン((CH3−CH2−CH2−CH2−CH(C25)−CH22NH;沸点:281℃)などを利用することができる。
さらには、上記の第2アミンに代えて、水素分子を「還元剤」として利用する還元過程において、その還元過程に関与する成分として、第3アミンを利用することもできる。この第3アミンとして、Cuに対して、R3N:CuOの形態で、配位的な結合を形成する上では、アミン窒素原子に置換する炭化水素基は、電子供与性を有するものが好ましい。従って、本発明では、第3アミンとして、N(CH2R’)3の形状を有するアミンを利用することが好ましい。その際、アミン窒素原子上に置換する炭化水素基(−CH2R’)の相互間で、立体障害を誘起することが懸念されないものが好ましい。従って、N(CH2R’)3と表記可能なトリアルキルアミンを選択することが好ましい。
分散液中に添加するトリアルキルアミンの量は、分散溶媒中における濃度を適正な範囲に設定するように選択する。分散溶媒の種類、分散質のナノ粒子に対する、分散溶媒の量比と、該分散溶媒中での溶解度を考慮して、トリアルキルアミンの添加比率を適宜選択する。好ましくは、加圧条件下、温度を上昇させて、分散溶媒を徐々に蒸散させる際、この分散液の液相中における、トリアルキルアミンの濃度が徐々に上昇し、ナノ粒子表面を被覆している状態を保持する形態とする。その観点から、分散液の液相中には、当初から、高濃度でトリアルキルアミンが含有されている状態とすることが好ましい。具体的には、分散液中には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子100質量部当たり、トリアルキルアミンが、2質量部〜20質量部の範囲、好ましくは、3質量部〜15質量部の範囲で含有されている状態とすることが好ましい。
また、利用されるトリアルキルアミンの蒸散が、分散溶媒の蒸散よりも、顕著に早く進むことは望ましくない。一方、還元処理が終了し、焼結処理に移行する際、蒸散せず、多量のトリアルキルアミンが残留することは望ましくない。従って、利用されるトリアルキルアミンは、沸点が、少なくとも、100℃以上、好ましくは、200℃以上、300℃以下のものを利用することが望ましい。トリアルキルアミンとして、そのアルキル基を、炭素数4以上、9以下の範囲に選択するものが好適に利用できる。
場合によっては、このナノ粒子分散液を上層配線層の形成に用いる際、分散液を均一分散化、高濃度化、液粘度の調整を行うために、粘度調整用のチキソ剤あるいは希釈用の有機溶剤を添加し、さらに混合・攪拌して、塗布、描画に用いるナノ粒子分散液を調製することもできる。一方、表面に酸化銅被膜層を有する銅ナノ粒子、あるいは酸化銅ナノ粒子自体は、その表面に存在する酸化膜被覆のため、互いに接触しても、ナノ粒子間の融着は起こらず、凝集体形成など、均一な分散特性を阻害する現象は生じないものとなっている。従って、描画した塗布膜層中では、分散溶媒の蒸散とともに酸化銅被膜層を有する銅ナノ粒子は、沈積・乾固して、最終的に緻密な積層状態を達成できる。
また、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を用いて、所望の上層配線層パターンを層間絶縁膜の表面上に描画する手法としては、従来から、金属ナノ粒子を含有する分散液を利用する微細配線パターンの形成において利用される、スクリーン印刷、インクジェット印刷、または転写印刷のいずれの描画手法をも、同様に利用することができる。具体的には、目的とする微細配線パターンの形状、最小の配線幅、配線層の層厚を考慮した上で、これらスクリーン印刷、インクジェット印刷、または転写印刷のうち、より適するものを選択することが望ましい。
一方、利用する該ナノ粒子を含有する分散液は、採用する描画手法に応じて、それぞれ適合する液粘度を有するものに、調製することが望ましい。例えば、上部配線層パターンの描画にスクリーン印刷を利用する際には、該ナノ粒子を含有する分散液は、その液粘度を、30〜300 Pa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。また、転写印刷を利用する際には、液粘度を、3〜300 Pa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。インクジェット印刷を利用する際には、液粘度を、1〜100 mPa・s(25℃)の範囲に選択することが望ましい。該ナノ粒子を含有する分散液の液粘度は、用いるナノ粒子の平均粒子径、分散濃度、用いている分散溶媒の種類に依存して決まり、前記の三種の因子を適宜選択して、目的とする液粘度に調節することができる。
本発明においては、例えば、絶縁性樹脂層表面上に形成される銅ナノ粒子の焼結体層の膜厚Cを、10μm以上に選択する際、分散液の塗布膜層の膜厚は、前記目的とする焼結体層の膜厚の少なくとも5倍程度に選択する。その際、所望の分散液塗布膜層の膜厚を達成するためには、塗布された分散液の液粘度は、30〜300 Pa・s(25℃)の範囲とすることが好ましい。本発明で利用する表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液では、上記の付粘性成分の配合によって、目的とする液粘度を達成することが可能である。すなわち、表面に酸化銅被膜層を有する銅ナノ粒子、あるいは酸化銅ナノ粒子からなる固相成分と、分散溶媒と付粘性成分からなる液相成分の体積比率(固相/液相比)を維持し、液相成分中の付粘性成分の配合比率を選択することで、分散液の液粘度を調整することが可能である。
塗布に利用する分散液自体を、例えば、30〜300 Pa・s(25℃)の範囲とする形態に加えて、塗布に利用する分散液自体は、分散溶媒の配合比率を高め、低い液粘度として、インクジェット印刷を利用して、塗布するが、乾燥処理を行って、塗布膜層中の分散溶媒の含有比率を低下させ、目的の液粘度とする形態を選択することが可能である。
一方、加熱処理を実施する際、分散溶媒の蒸散とともに、固相/液相比が上昇し、付粘性成分の含有比率も相対的に上昇するが、液温の上昇とともに、付粘性成分の流動性が上昇するので、分散液の塗布膜層中の液相の流動性の急速な低下を抑制できている。その結果、分散液の塗布膜層全体の流動性の急速な低下も抑制できている。加熱処理を実施する際、分散溶媒の蒸散とともに、固相/液相比が上昇し、塗布膜層の厚さが減少する。その過程において、絶縁性樹脂層表面上とビアホール形成用の穴部分において、塗布膜層の上面は、実質的に同じレベルに維持された状態で、塗布膜層の厚さが減少する。すなわち、ビアホール形成用の穴部分に、その周囲の絶縁性樹脂層表面上から分散液が流入することによって、塗布膜層の厚さの均一化がなされる。
最終的に、銅ナノ粒子の低温焼結が進行すると、銅ナノ粒子間の隙間空間が減少することで、体積収縮が進むため、絶縁性樹脂層表面と比較して、ビアホール形成用の穴部分の中央では、形成される銅ナノ粒子の焼結体層の上面が若干窪んだ形状となる。
銅ナノ粒子焼結体層の形成を終えた後、絶縁性樹脂層の表面が露出するまで焼結体層を除去し、ビアホール形成用の穴内部のみに、焼結体層を残存させる工程を実施すると、前記の窪んだ形状も除かれる。その結果、図4に例示するように、ビアホール形成用の穴内部に銅ナノ粒子の焼結体層が充満された形状が得られる。
層間絶縁膜の表面上に形成される表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液の塗布膜層に対して、加圧条件下、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気下において、加熱処理を行うことによって、還元処理と、その後の焼成処理を行う。この還元処理を進める第一の処理過程では、水素分子を「還元剤」として利用し、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子の還元がなされる。かかる還元過程では、下記の二つの経路を介して、酸化銅:CuOから金属銅:Cuへの還元がなされる可能性がある。その際、本発明では、分散液中に添加される、第2アミン分子、例えば、NH(CH2R’)2と表記可能なジアルキルアミンが関与する還元反応を主に利用する。このNH(CH2R’)2と表記可能なジアルキルアミンが関与する還元反応を以下に説明する。
NH(CH2R’)2と表記可能な第2アミン分子が関与する、銅ナノ粒子の表面酸化被膜の還元処理は、下記の二つのメカニズム、第一の機構と第二の機構によっていると推定される。
表面酸化被膜の最表面は、酸化銅(II):CuOの状態と考えられる。このCuOの還元は、系内に共存している、第2アミン:NH(CH2R’)2と水素分子(H2)が関与する、第一の機構は、下記の二段階のステップを介して、進行すると考えられる。
(i) CuO+HN(CH2R’)2
→〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕+H2
(ii) 〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕+H2
→Cu+HN(CH2R’)2
まず、ステップ(i)では、酸化銅(II):CuOのOに対して、NH(CH2R’)2と表記可能な第2アミンが、>NH…Oの水素結合型の相互作用を介して、配位する。
(i-1) CuO+HN(CH2R’)2→〔CuO…HN(CH2R’)2
その後、以下の部分還元が進行する。
(i-2) 〔CuO…HN(CH2R’)2〕→〔>N・…HOCu(I)〕
さらに、生成したラジカル種[・N(CH2R’)2]中、隣接する−CH2−の水素原子が供与されて、還元反応が完了する。
(i-3) 〔>N・…HOCu(I)〕
→〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕+H2
Figure 2009267300
その際、ナノ粒子表面で生成される銅原子に対して、N(CH2R’)=CHR’分子は、その−HC=N−部分のπ電子を利用して、π−配位子型の配位を行った状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕となる。
Figure 2009267300
その状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕に対して、気相から供給される水素分子(H2)による、水素付加反応が進行する。すなわち、銅原子が、触媒中心として機能して、N(CH2R’)=CHR’分子は、その−HC=N−部分への水素付加反応を促進する。結果的に、上記のステップ(ii)の水素付加反応によって、第2アミン:NH(CH2R’)2の再生が行われる。
微視的には、ナノ粒子表面で生成される銅原子Cu(0)の下層には、CuOが存在しているため、Cu(0)−O−Cu(II)は、Cuδ+−O−Cu(2-δ)+の状況にある。そのため、上述するπ−配位子型の配位を行った状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕を形成することが可能となっている。
このステップ(i)+ステップ(ii)の二段階の反応全体を考えると、見かけ上、下記の反応として、表記される。すなわち、水素分子(H2)が「還元剤」として、酸化銅(II):CuOに作用して、銅原子と、副生成物として、水分子(H2O)を生成している。
なお、ナノ粒子の表面に生成する銅原子Cuと、内部に存在する酸化銅(II):CuOの間で、酸化状態の交換が引き起こされる。
(iii) CuO+Cu→〔Cu2O〕
(iv) 〔Cu2O〕→Cu+CuO
結果的に、ナノ粒子の中心部には、銅原子Cu(0)が集積され、最表面には、酸化銅(II):CuOが表出している状態となる。このステップ(i+ii)〜(iv)の素過程が繰り返される。
すなわち、ステップ(ii)で再生される第2アミン:NH(CH2R’)2は、このナノ粒子表面において、一旦、再生された銅原子Cu(0)に対して、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を形成する。一方、前記ステップ(iii)〜(iv)によって、該銅原子Cu(0)が酸化銅(II):CuOに変換されると、再び、酸化銅(II):CuOのOに対して、第2アミン:NH(CH2R’)2が、>NH…Oの水素結合型の相互作用を介して、配位する。結果として、表面酸化被膜が水素分子を「還元剤」として利用する還元反応によって、消失し、完全に銅ナノ粒子への再生される間は、ナノ粒子の表面は、実質的に、第2アミン:NH(CH2R’)2によって、継続的に被覆された状態に維持される。
還元処理が完了し、完全に銅ナノ粒子に再生されると、銅原子Cu(0)に対して、そのアミノ窒素原子上に存在する孤立電子対を利用して、配位的な結合を形成している、第2アミン:NH(CH2R’)2は、徐々に熱的に離脱する。その結果、再生された銅ナノ粒子相互の金属表面が接触し、第二の処理過程である焼成処理が進行する。
なお、この第二の工程で利用されている、加圧条件下、水素分子を含む雰囲気中、水素分子の含有比率(分圧)が高くなると、下記する第二の機構を介する還元反応が生じる頻度が増す。この第二の機構は、下記の二段階のステップを介して、進行すると考えられる。
(v) CuO+HN(CH2R’)2
→〔Oδ-−Cuδ+:NH(CH2R’)2
(vi) 〔Oδ-−Cuδ+:NH(CH2R’)2〕+H2
→〔H2Oδ-…Cuδ+:NH(CH2R’)2
→H2O↑+Cu+HN(CH2R’)2
先ず、表面酸化被膜の表面に存在する酸化銅(II):CuOを考慮すると、表面に存在している銅(II)に対して、第2アミン:NH(CH2R’)2が、そのアミン窒素原子上の孤立電子対を利用して、配位する。その際、Oδ-−Cuδ+の分極が引き起こされる。この時、加圧条件下、水素分子の分圧が高いと、銅(II)に隣接する酸素原子に対して、気相から供給される、水素分子(H2)が直接作用することが可能となる。
Figure 2009267300
銅(II)に隣接する酸素原子と、水素分子(H2)との反応によって、水分子(H2O)が生成される。その過程で、結果的に、隣接する銅(II)は、銅原子Cu(0)へと還元される。一方、生成した水分子(H2O)は、表面から脱離し、気相中に移行する。
Figure 2009267300
次いで、同様に、ナノ粒子の表面に生成する銅原子Cuと、内部に存在する酸化銅(II):CuOの間で、酸化状態の交換が引き起こされる。
(iii) CuO+Cu→〔Cu2O〕
(iv) 〔Cu2O〕→Cu+CuO
結果的に、ナノ粒子の中心部には、銅原子Cu(0)が集積され、最表面には、酸化銅(II):CuOが表出している状態となる。このステップ(iii)+(iv)と、ステップ(v)+(vi)の素過程が繰り返されると、第2アミン:NH(CH2R’)2によって、促進される還元反応が進行する。
この第二の機構は、水素分子(H2)が表面に到達することで進行する反応であり、表面に到達する頻度が高い場合、換言するならば、加圧条件下、水素分子の分圧が高い場合に、その頻度が高くなる。一方、第一の機構は、初期のステップでは、水素分子(H2)は関与しておらず、加圧条件下、水素分子の分圧が相対的に低い場合にも、進行可能な反応である。
本発明では、第2アミン:NH(CH2R’)2を利用する際には、上記の第一の機構と第二の機構の双方が寄与するが、特に、第一の機構の寄与が主要な比率を占める条件を選択する。すなわち、第二の工程における、還元処理と、その後の焼成処理を行う際、加熱温度を、150℃以上、250℃以下に選択して、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気下において、少なくとも、1.1気圧以上、好ましくは、1.4気圧以上、より好ましくは、2気圧以上に加圧された状態を選択している。その際、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気は、水素分子の含有率は、1体積%〜100体積%の範囲、好ましくは、2体積%〜100体積%の範囲、より好ましくは、4体積%〜100体積%の範囲に選択することが望ましい。例えば、水素分子を含有する混合気体の雰囲気を利用する場合、その水素分子の含有率に応じて、加圧条件を選択する。すなわち、還元処理のため、加熱を行っている際、その加熱された雰囲気中における水素ガス分圧は、0.1気圧以上、好ましくは、0.2気圧以上であることが好ましい。具体的は、還元性雰囲気中に含まれる水素ガスの含有比率:CH2%と、加熱状態における圧力:P気圧から、算出される水素ガス分圧:PH2気圧=(CH2/100)×Pを、0.1気圧以上、より好ましくは、0.2気圧以上に選択する。
一方、本発明において、第2アミン:NH(CH2R’)2に代えて、第3アミン:N(CH2R’)3を利用する際には、上記の第二の機構の寄与のみとなる。従って、第二の機構の促進に好適な条件を選択する。すなわち、還元処理と、その後の焼成処理を行う際、加熱温度を、150℃以上、250℃以下に選択して、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気下において、少なくとも、1.1気圧以上、好ましくは、1.4気圧以上、より好ましくは、2気圧以上に加圧された状態を選択している。その際、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気は、水素分子の含有率は、1体積%〜100体積%の範囲、好ましくは、2体積%〜100体積%の範囲、より好ましくは、4体積%〜100体積%に選択することが望ましい。例えば、水素分子を含有する混合気体の雰囲気を利用する場合、その水素分子の含有率に応じて、加圧条件を選択する。すなわち、還元処理のため、加熱を行っている際、その加熱された雰囲気中における水素ガス分圧は、0.1気圧以上、より好ましくは、0.2気圧以上であることが好ましい。
なお、前記還元処理と焼成処理における、水素分子を含有する混合気体の雰囲気は、水素分子と不活性気体の混合物とする。すなわち、前記不活性気体は、水素分子を希釈する役割を有するが、一旦、換言された銅ナノ粒子の表面に対して、加熱状態で銅原子と何らの反応を起こすことも無いものとする。水素分子の希釈ガスとして、利用される該不活性気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、あるいは、それらの二種以上を混合したものであることが好ましい。特には、該不活性気体としては、加熱状態で銅ナノ粒子表面に吸着を起こすこともない、希ガス分子:ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、あるいは、それらの二種以上を混合したものを使用することがより好ましい。
加圧条件下、加熱すると、更に、圧が上昇する。その際、加熱温度に達した際、気相の圧力を1.4気圧〜10気圧の範囲、特には、2気圧〜10気圧の範囲とする加圧状態を達成していることが好ましい。加圧条件下、温度を上昇させる際、分散溶媒を蒸散させるが、例えば、その段階で、10気圧を超える状態となっていると、分散溶媒の種類によっては、完全に蒸散していない状態となる場合もある。前記の加圧条件の範囲であれば、加熱温度に達した時点では、分散溶媒の蒸散が完了した状態となる。一方、気相の圧力を1.4気圧〜10気圧の範囲、より好ましくは、2気圧〜10気圧の範囲とすることで、表面酸化被膜の表面に、化学的な吸着状態(酸化銅との水素結合を介した配位状態)を達成する、第2アミン:NH(CH2R’)2の離脱を十分に抑制する効果が得られる。また、この加圧条件下では、圧力上昇を伴う反応は、抑制を受ける。上述する第二の機構、第一の機構は共に、還元反応が進行する間は、「還元剤」として使用する、水素分子(H2)から、水分子(H2O)が生成するため、実質的に圧力上昇を回避している。
また、この加圧条件では、水素分子の分圧は、例えば、(20体積%、10気圧)では、2気圧以下となっており、第二の機構と比較して、上述する第一の機構の寄与を高くする目的にも適合する範囲となっている。
一方、還元反応が完了すると、銅ナノ粒子表面の銅原子に配位的な結合を行っている、第2アミン:NH(CH2R’)2の離脱が徐々に進む際、10気圧以下の加圧条件は、顕著な抑制因子とはならない。
上層配線層のパターンの描画は、表面に酸化銅被膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含む分散液を用いて実施できるため、その微細な描画特性は、従来の、金、銀のナノ粒子を利用する微細な配線パターン形成と遜色の無いものとなる。具体的には、形成される上層配線層の配線パターンは、例えば、最小配線幅を、1〜50μmの範囲、実用的には、5〜50μmの範囲、対応する最小の配線間スペースを、1〜50μmの範囲、実用的には、5〜50μmの範囲に選択する場合にも、良好な線幅均一性・再現性を達成することができる。
加えて、得られる上層配線層は、界面に酸化物被膜の介在の無い、銅ナノ粒子の焼結体層となり、その体積固有抵抗率も、10×10-6Ω・cm以下とすることができ、良好な導通特性を達成できる。
さらに、形成される銅ナノ粒子の焼結体層は、銅自体は、エレクトロマイグレーションの少ない導電性材料であるので、上層配線層を微細な配線パターンとする場合にも、エレクトロマイグレーションに起因する配線厚さの減少、断線の発生を抑制できる。
また、還元処理、焼成処理工程における加熱処理温度は、還元処理に関与する、第2アミン(ジアルキルアミン)の反応性、また、「還元剤」として利用する水素分子の反応性を考慮して、適宜選択すべきものである。加熱時の加圧条件を、1.4気圧〜10気圧の範囲、特には、2気圧〜10気圧の範囲に選択する場合、少なくとも、250℃以下の範囲で、例えば、150℃以上、250℃以下、通常、200℃以上の範囲に選択することが好ましい。加えて、処理装置内に設置される基板自体の材質に応じた耐熱特性を満足する温度範囲内、250℃以下、例えば、150℃〜250℃の範囲に維持されるように、温度の設定・調節を行う。
還元処理の進行速度は、前記の設定温度、「還元剤」として利用する、水素分子の分圧、加圧条件、添加されている第2アミンの種類などの条件に依存する。勿論、還元処理が完了するまでに要する時間は、銅ナノ粒子の表面に存在している表面酸化被膜の厚さに依存している。これらの条件を考慮した上で、一般に、還元処理と焼成処理の時間合計は、10分間〜1時間の範囲、好ましくは、20分間〜1時間の範囲に選択することが可能である。具体的には、酸化銅ナノ粒子の平均粒子径、あるいは、銅ナノ粒子表面を覆う酸化銅被膜層の厚さを考慮した上で、その還元に要する時間を調整するため、設定温度、水素分子の分圧、加圧条件、添加されている第2アミンの種類を適宜選択する。
本発明の方法では、第一の処理過程において、銅ナノ粒子表面を覆う酸化銅被膜層を還元除去して、銅ナノ粒子に復する。その時点では、銅ナノ粒子の表面は、銅原子に対して、配位的な結合形成が可能な、孤立電子対を有する窒素原子を含んでいる第2アミン(ジアルキルアミン)によって、相当の部分が被覆された状態となっている。すなわち、上述する還元過程に関与する第2アミン(ジアルキルアミン)は、表面酸化被膜層が一掃された後は、〔CuO…HN(CH2R’)2〕という形態ではなく、一旦は、〔Cu…NH(CH2R’)2〕という形態を構成する。しかし、その後、第二の処理過程では、徐々に、この配位的な結合を解消して、表面から第2アミン:HN(CH2R’)2の離脱が進行する。そして、銅ナノ粒子相互の接触が可能となり、銅ナノ粒子相互の焼結が進行する。
実際には、塗布膜層中に含まれる銅ナノ粒子の表面に存在している表面酸化被膜の厚さは、分布を有しているため、個々の銅ナノ粒子で、第一の処理過程が完了する時間には、ある程度のバラツキが生じる。しかしながら、塗布膜層全体として、上述する処理時間の間には、第一の処理過程を終え、第二の処理過程が十分に進行した状態となる。
なお、第二の処理過程では、再生された銅ナノ粒子の表面の相当の部分を被覆している第2アミンの離脱とともに、銅ナノ粒子相互の焼結が進行する。その際、第2アミンの離脱速度は、処理を行う系内の加圧条件ならびに加熱温度に依存する。加熱時の加圧条件を、1.4気圧〜10気圧の範囲(1.4×103 hPa〜10×103 hPaの範囲)に選択する場合、少なくとも、250℃以下の範囲で、例えば、150℃以上、通常、200℃以上の範囲に選択すると、第2アミン(ジアルキルアミン)の離脱が十分に進行可能な条件となる。
一方、分散溶媒、あるいは、付粘性成分として利用される炭化水素化合物は、ナノ粒子表面を被覆している表面酸化被膜中のCuO、あるいは、部分的に存在しているCu表面とは、極弱い相互作用を示すのみである。そのため、加圧条件下、昇温過程において、分散溶媒、あるいは、付粘性成分として利用される炭化水素化合物の蒸散は、相対的に速やかに進行する。分散溶媒、あるいは、付粘性成分として利用される炭化水素化合物の蒸散が進むにつれて、単位面積当たりの塗布膜を形成するペースト状の分散液の体積が減少する。すなわち、加熱処理前の塗布膜の膜厚から、その膜厚の均一性を保ったまま、膜厚が徐々に低減する。
以下に、具体例を示し、本発明をより具体的に説明する。これらの具体例は、本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はこれら具体例により限定を受けるものではない。
(実施形態1)
市販されている銅ナノ粒子分散液(商品名:独立分散超微粒子パーフェクトカッパー 真空治金(株))、具体的には、その表面に酸化被膜を有する銅ナノ粒子100質量部、アルキルアミンとして、ドデシルアミン(分子量185.36,沸点:248℃)15質量部、有機溶剤(分散溶媒)として、トルエン(沸点:110.6℃)75質量部を含む、平均粒径5nmの表面酸化被膜層を有する銅ナノ粒子の分散液を利用した。
この表面酸化被膜層を有する銅ナノ粒子の分散液100質量部に、メタノール(沸点:64.65℃)100質量部を加える。極性溶媒のメタノールを加えると、含有されている表面に酸化被膜を有する銅ナノ粒子は沈降する。同時に、ドデシルアミンの大半は、メタノールによって溶離されて、混合溶媒中に溶解した状態となる。その後、沈降している表面に酸化被膜を有する銅ナノ粒子と、液相成分を、デカンテーテーション処理によって分離する。この段階では、沈降している、表面に酸化被膜を有する銅ナノ粒子は、残余する液相成分に浸されている状態となる。すなわち、容器の底に沈降している、表面に酸化被膜を有する銅ナノ粒子の体積に対して、約2倍の体積の液相成分が残余した状態である。
さらに、含有される銅ナノ粒子80質量部当たり、アミン化合物として、ビス(2−エチルヘキシル)アミン(沸点:281℃)を質量部、付粘性成分として、流動パラフィン(アルキルナフテン系炭化水素;沸点:300℃以上、50%蒸留性状 約450℃)を4質量部添加する。これらを混合した後、室温(25℃)において、減圧処理を施し、メタノール(沸点:64.65℃)ならびにトルエン(沸点:110.6℃)を除去する。攪拌して調製されたペーストに対して、その粘度を調整するため、チキソ剤もしくは希釈溶剤(テトラデカン:沸点 253.57℃)を加えて、その粘度をおよそ80Pa・sに調整する。
なお、作製されるペーストの組成は、銅ナノ粒子中の銅60質量部、分散剤ドデシルアミン20質量部、ビス(2−エチルヘキシル)アミン4質量部、流動パラフィン4質量部、希釈溶剤(テトラデカン)12質量部の比率である。作製されるペースト中に含有される、固形成分の銅ナノ粒子と、他の有機物成分の体積比率は、1:6〜7となっている。
[銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理]
工程1:コンディショナー洗浄
層間絶縁層にビアホール接続用の穴(ホール)を形成する穴あけ加工を施す。穴あけ加工処理後、無電解銅メッキ用のコンディショナー(ムロマチテクノス製MK−140)を使用し、基板表面を洗浄する。このコンディショナー洗浄によって、基板表面の油・皮脂などが除去される。また、穴あけ加工で形成される穴の側壁面、ならびに、穴の底面に露呈している、下層のメッキ銅箔層の表面の浄化もなされる。該コンディショナーによる洗浄処理を施すと、層間絶縁層表面への無電解銅メッキ膜の析出に利用される、スズ−パラジウム系触媒の吸着を増進させる。
コンディショナー洗浄後、表面に残余するコンディショナー液を温水洗浄により希釈除去する。さらに、水洗を行っている。
工程2:プレディップ処理・スズ−パラジウム系触媒の吸着処理
スズ−パラジウム系触媒の吸着処理を施す前に、基板をプレディップ液(ムロマチテクノス製プレディップ203)に浸漬する。次いで、スズ−パラジウム系触媒の吸着処理用の触媒浴(ムロマチテクノス製MK−2605)に漬ける。該触媒浴中に浸漬する間に、層間絶縁層表面、穴(ホール)の側壁面、穴(ホール)の底面に露呈する下層のメッキ銅箔層の表面に、スズ−パラジウム系触媒が析出し、吸着する。水洗し、表面に残余する触媒浴液を除去する。
工程3:スズ−パラジウム系触媒の触媒活性促進処理
層間絶縁層表面に析出・吸着しているスズ−パラジウム系触媒に対して、活性促進剤を作用させ、含まれるスズ成分を溶解除去する。水洗して、表面に残余する活性促進剤を洗浄除去する。洗浄後、減圧乾燥処理を施し、層間絶縁層表面に吸着している触媒表面の水分子を除去する。
この段階では、図2に触媒塗布状態として例示するように、層間絶縁層表面、穴(ホール)の側壁面、穴(ホール)の底面に、活性化されたPd触媒粒子が均一に付着されている状態となる。
工程4:銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成
前記活性促進処理を施したパラジウム系触媒が付着されている、層間絶縁層表面に、ならびに、ビアホール接続用の穴(ホール)内に、ペースト状の銅ナノ粒子分散液を塗布する。該ペースト状の銅ナノ粒子分散液の塗布には、スクリーン印刷法を利用して、層間絶縁層表面における塗布膜層厚さは、50μmに選択している。
層間絶縁層の厚さは、30μmであり、ビアホール接続用の穴(ホール)の開口径(直径)は、60μm、その底面部の径(直径)は、45μmである。このビアホール接続用の穴(ホール)中に、ペースト状の銅ナノ粒子分散液は満たされ、塗布膜層の上面は、層間絶縁層表面の塗布膜層と同一の水準となっている。従って、ビアホール接続用の穴(ホール)部分では、塗布膜層の合計厚さは、80μmに相当している。
工程5:表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理
ペースト状の銅ナノ粒子分散液塗布を終えた後、オートクレーブ内に、基板を設置する。オートクレーブ内を水素ガスで満たし、還元ガス雰囲気下とする。該水素ガスを充填した、オートクレーブ内に、充填される水素ガスの圧力は、常温(25℃=298K)で約5気圧(5×103 hPa)に選択されている。水素ガスを加圧・封入した状態のオートクレーブ内温度を、約1時間を要して、温度200℃(473K)まで加熱し、30分間保持する。なお、200℃まで加熱することで、オートクレーブ内の内圧は、約7.0気圧(7.0×103 hPa)まで上昇している。その後、自然冷却により、降温させる。なお、この降温過程では、内部温度が、50℃以下に降下するのに、約30分間を要している。
冷却後、オートクレーブ内壁には、多量の有機分が付着している。加圧条件下において、加熱を行う過程において、ペースト状の銅ナノ粒子分散液中に含有される溶剤成分(テトラデカン)の蒸散、ならびに、その他の有機物(アミン類、流動パラフィン)の離脱・気化が進行していると判断される。
その際、分散液中に含有される溶剤成分、その他の有機物は、大気圧(1気圧)における沸点と比較すると、加圧条件下では、沸点が上昇している。従って、含有される溶剤成分、沸点が200℃以上である、テトラデカンは、徐々に蒸散する。従って、塗布膜層の膜厚は、溶剤成分の蒸散に伴って、徐々に減少する。また、その他の有機物(アミン類、流動パラフィン)も、200℃以上の高い沸点を有しており、希釈溶剤のテトラデカン中に溶解し、その蒸散は緩やかに進行する。
一方、層間絶縁層表面の塗布膜層では、含有される希釈溶剤の蒸散とともに、分散液全体の流動性は急速に低下するが、全体の膜厚は、均一性を保ったまま、徐々に減少していると推定される。また、ビアホール接続用の穴(ホール)中の塗布膜層でも、その開口部から、希釈溶剤の蒸散が進行する。その結果、穴(ホール)の側壁面は、流動性が急速に低下した分散液で被覆された状態を保っている。従って、穴(ホール)の開口部の中心では、徐々に塗布膜層の膜厚は減少する。結果的に、穴(ホール)の側壁面においても、層間絶縁層表面と同程度の膜厚を保持した状態で、希釈溶剤テトラデカンの蒸散が進行する。
この希釈溶剤テトラデカンが、銅ナノ粒子相互の隙間を満たした状態で、該銅ナノ粒子の表面に存在する表面酸化被膜層の還元が進行する。表面酸化被膜層の還元が完了すると、該銅ナノ粒子の表面は金属銅原子が露呈しており、銅ナノ粒子相互が接触すると、融着が進行する。最終的に、銅ナノ粒子相互が融着して、銅ナノ粒子焼結体層が形成される。形成される銅ナノ粒子焼結体層の膜厚は、層間絶縁層表面においては、約10μmであり、銅ナノ粒子分散液塗布膜層の平均膜厚50μm(実測値)に対して、およそ、1/5となっている。
また、ビアホール接続用の穴(ホール)部分では、その側壁面に形成される銅ナノ粒子焼結体層の膜厚は、開口部から底部に向かって、徐々に厚くなっている。なお、その開口部に形成される銅ナノ粒子焼結体層の平均的膜厚は、約35μmであり、層間絶縁層表面における平均膜厚10μmに対して、およそ、7/2となっている。
[銅ナノ粒子焼結体層の断面観察]
本実施形態で得られた銅ナノ粒子焼結体層について、SEMでその断面を観察し、得られた焼結体層の微視的な構造を調べた。その結果、層間絶縁層表面に付着させているパラジウム系触媒の層上に、銅ナノ粒子相互が密に焼結され、焼結体層が形成されている。すなわち、層間絶縁層表面に付着させているパラジウム系触媒を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている形態であることを示唆する構造が見出される。
[銅ナノ粒子の表面酸化被膜の還元処理のメカニズム]
本実施形態1において、銅ナノ粒子の表面酸化被膜の還元処理は、下記のメカニズムによっていると推定される。
表面酸化被膜の最表面は、酸化銅(II):CuOの状態と考えられる。このCuOの還元は、系内に共存している、ビス(2−エチルヘキシル)アミンと水素分子(H2)が関与する下記の二段階のステップを介して、進行すると考えられる。
(i) CuO+HN(CH2CH(C25)C492
→〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕+H2
(ii) 〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕+H2
→Cu+HN(CH2CH(C25)C492
まず、ステップ(i)では、酸化銅(II):CuOのOに対して、ビス(2−エチルヘキシル)アミンが、>NH…Oの水素結合型の相互作用を介して、配位する。
(i-1) CuO+HN(CH2R’)2→〔CuO…HN(CH2R’)2
その後、以下の部分還元が進行する。
(i-2) 〔CuO…HN(CH2R’)2〕→〔>N・…HOCu(I)〕
さらに、生成したラジカル種[・N(CH2R’)2]中、隣接する−CH2−の水素原子が供与されて、還元反応が完了する。
(i-3) 〔>N・…HOCu(I)〕
→〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕+H2
Figure 2009267300
その際、ナノ粒子表面で生成される銅原子に対して、N(CH2R’)=CHR’分子は、その−HC=N−部分のπ電子を利用して、π−配位子型の配位を行った状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕となる。
Figure 2009267300
その状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕に対して、気相から供給され、液相中に溶解している水素分子(H2)による、水素付加反応が進行する。すなわち、銅原子が、触媒中心として機能して、N(CH2R’)=CHR’分子は、その−HC=N−部分への水素付加反応を促進する。結果的に、上記のステップ(ii)の水素付加反応によって、ビス(2−エチルヘキシル)アミンの再生が行われる。
微視的には、表面で生成される銅原子Cu(0)の下層には、CuOが存在しているため、Cu(0)−O−Cu(II)は、Cuδ+−O−Cu(2-δ)+の状況にある。そのため、上述するπ−配位子型の配位を行った状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕を形成することが可能となっている。
このステップ(i)+ステップ(ii)の二段階の反応全体を考えると、見かけ上、下記の反応として、表記される。すなわち、水素分子(H2)が「還元剤」として、酸化銅(II):CuOに作用して、銅原子と、副生成物として、水分子(H2O)を生成している。
なお、ナノ粒子の表面で生成する銅原子Cuと、内部に存在する酸化銅(II):CuOの間で、酸化状態の交換が引き起こされる。
(iii) CuO+Cu→〔Cu2O〕
(iv) 〔Cu2O〕→Cu+CuO
結果的に、ナノ粒子の中心部には、銅原子Cu(0)が集積され、最表面には、酸化銅(II):CuOが表出している状態となる。このステップ(i+ii)〜(iv)の素過程が繰り返される。
さらには、CuOの還元は、系内に流動パラフィンの主要な構成成分であるアルキルナフテンが存在しているので、アルキルナフテン(例えば、C611−CH2−R)と水素分子(H2)が関与する下記の二段階のステップを介する過程も寄与していると考えられる。
(i’) CuO+C611−CH2−R→〔C610=CH−R:Cu〕+H2
(ii’) 〔C610=CH−R:Cu〕+H2→Cu+C611−CH2−R
まず、ステップ(i’)では、酸化銅(II):CuOのOに対して、シクロアルキル環上のメチン水素(>CH−CH2−R)が、>C(−CH2−R)−H…Oの水素結合型の相互作用を介して、配位する。
(i’-1) CuO+>CH−CH2−R→〔>C(−CH2−R)−H…OCu〕
Figure 2009267300
その後、以下の部分還元が進行する。
(i’-2) 〔>C(−CH2−R)−H…OCu〕→〔>C・(−CH2−R)…HOCu(I)〕
さらに、生成したラジカル種[>C・(−CH2−R)]から、隣接するアルキル基(−CH2−R)のメチレン(−CH2−)から水素原子が供与されて、還元反応が完了する。
(i’-3) 〔>C・(−CH2−R)…HOCu(I)〕→〔>C=CH−R:Cu〕+H2
Figure 2009267300
その際、表面で生成される銅原子に対して、C610=CH−R分子は、そのC=C部分のπ電子を利用して、π−配位子型の配位を行った状態〔C610=CH−R:Cu〕となる。
Figure 2009267300
その状態〔C610=CH−R:Cu〕に対して、気相から供給され、液相中に溶解する水素分子(H2)による、水素付加反応が進行する。すなわち、銅原子が、触媒中心として機能して、C610=CH−R分子は、そのC=C部分への水素付加反応を促進する。結果的に、上記のステップ(ii’)の水素付加反応によって、アルキルナフテン(例えば、C611−CH2−R)の再生が行われる。
微視的には、ナノ粒子表面で生成される銅原子Cu(0)の下層には、CuOが存在しているため、Cu(0)−O−Cu(II)は、Cuδ+−O−Cu(2-δ)+の状況にある。そのため、上述するπ−配位子型の配位を行った状態〔C610=CH−R:Cu〕を形成することが可能となっている。
このステップ(i’)+ステップ(ii’)の二段階の反応全体を考えると、見かけ上、下記の反応として、表記される。すなわち、水素分子(H2)が「還元剤」として、酸化銅(II):CuOに作用して、銅原子と、副生成物として、水分子(H2O)を生成している。
(i’+ii’) CuO+H2→Cu+H2
なお、ナノ粒子の表面で生成する銅原子Cuと、内部に存在する酸化銅(II):CuOの間で、酸化状態の交換が引き起こされる。
(iii) CuO+Cu→〔Cu2O〕
(iv) 〔Cu2O〕→Cu+CuO
結果的に、ナノ粒子の中心部には、銅原子Cu(0)が集積され、最表面には、酸化銅(II):CuOが表出している状態となる。このステップ(i’+ii’)〜(iv)の素過程も繰り返される。
その際、反応系が加圧条件下に保たれているため、全体の圧力の上昇を回避する上記の反応が進行可能である。仮に、反応系が開放系であれば、生成するN(CH2R’)=CHR’分子、H2O分子が気相に移行しても、圧力上昇が引き起こされない。その場合、ナノ粒子表面に生成する銅原子に対して、π−配位子型の配位を行った状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕、〔C610=CH−R:Cu〕に留まる比率は、極端に低下する。従って、ステップ(ii)、ステップ(ii’)の素過程の進行頻度は極端に少なくなる。一方、反応系を加圧条件下に保っている場合、π−配位子型の配位を行った状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕、〔C610=CH−R:Cu〕に留まる比率は、高くなっている。その結果、上記のステップ(i+ii)〜(iv)の素過程、ステップ(i’+ii’)〜(iv)の素過程を繰り返させることが可能となっている。
また、第2アミンであるHN(CH2CH(C25)C492を利用することによって、ステップ(i-3)において、二つのアルキル基のいずれから水素原子の移動が生じてもよい状態となっている。換言すると、立体配置に対する依存性が無く、ステップ(i)の反応性も高くなっている。結果的に、π−配位子型の配位を行った状態〔Cu:N(CH2R’)=CHR’〕を形成する効率を高く保つ効果が発揮されている。すなわち、第2アミン:HN(CH2R’)2を利用すると、隣接する炭素原子上からの水素原子の転移過程では、立体配置依存性に起因する反応性の低下要因がなくなっている。また、その後、銅原子上にπ−配位子型の配位を維持する際にも、立体障害による、効率の低下も回避される。
一方、アルキルナフテン(例えば、C611−CH2−R)が関与する過程でも、ステップ(i’-3)において、水素原子の移動が速やかに進行する。また、立体障害を引き起こす原子団を内在していないため、π−配位子型の配位を行った状態〔C610=CH−R:Cu〕を形成する効率を高く保つ効果が発揮されている。但し、アルキルナフテン(例えば、C611−CH2−R)が関与する過程は、シクロアルキル環上のメチン水素(>CH−CH2−R)と、隣接するアルキル基(−CH2−R)のメチレン基(−CH2−)上の水素原子とがcis−配向を示す場合に起こる。そのような配向を示す頻度は制限されており、全体の還元反応に対する寄与がさほど高くない。
銅の密度は、8.92g/cm3であるが、酸化銅(II)の密度は、6.31g/cm3であり、還元が完了すると、表面酸化被膜を有する銅ナノ粒子の嵩は、最大、7/10まで減少する。付粘性成分として配合されている流動パラフィンは、沸点:300℃以上、50%蒸留性状 約450℃であり、上記還元処理の加熱を行った時点では、流動パラフィンの大部分、少なくとも、その高沸点(沸点:450℃以上に相当)成分は、蒸散せずに残余している。すなわち、銅ナノ粒子:6.7容当たり、流動パラフィンが、最大、4.4容、少なくとも、その流動パラフィン中の高沸点成分が、2.2容は残余している。従って、銅ナノ粒子:6.7容が最蜜充填状態に類する配置をとる際、銅ナノ粒子の間に存在する隙間空間:2〜4容を、残余している流動パラフィンのみでも、十分に充填可能な状態となっている。すなわち、加熱処理を進める間に、希釈溶媒(テトラデカン)が蒸散しても、付粘性成分として配合されている流動パラフィンによって、還元中の銅ナノ粒子は浸漬された状態に維持される。そのため、銅ナノ粒子を含む塗布膜層全体として、希釈溶媒(テトラデカン)の蒸散、還元に伴う銅ナノ粒子の嵩の減少が進行する間、乾燥による「ひび割れ」が入った形状となることが回避される。最終的には、還元された銅ナノ粒子相互の融着と、焼結が進行するが、得られる導電体層は、「ひび割れ」が存在しない、一体的に焼結体層を構成している状態となる。
すなわち、配合されている流動パラフィンの最も重要な機能は、加熱処理を進める間、塗布膜中に含まれる銅ナノ粒子相互を蜜に繋ぎ止める「粘性」を具えた「バインダー成分」としての役割である。
一方、ジアルキルアミンの相当部分は、加熱処理の間も、流動パラフィンと混和した状態で、塗布膜中に含まれる銅ナノ粒子表面の酸化被膜を還元する過程を「触媒」している。このジアルキルアミンの蒸散も、より高い沸点を示す、流動パラフィンと混和した状態を維持することによって、抑制されている。従って、塗布膜中に含まれる銅ナノ粒子全体の還元処理を速やかに行うことができる。
加えて、層間絶縁層表面に、ならびに、ビアホール接続用の穴(ホール)内には、前記活性促進処理を施したパラジウム系触媒が付着している。該活性促進処理を施したパラジウム系触媒の表面では、パラジウム原子上に、例えば、C610=CH−R分子は、そのC=C部分のπ電子を利用して、π−配位子型の配位を行った状態〔C610=CH−R:Pd〕となる。その状態〔C610=CH−R:Pd〕に対して、気相から供給される、水素分子(H2)による、水素添加反応が進行する。すなわち、パラジウム原子が、水素添加反応の触媒中心として機能して、C610=CH−R分子のC=C部分への水素添加反応を促進する。結果的に、下記のステップ(iia’)の水素添加反応によって、アルキルナフテン(例えば、C611−CH2−R)の再生が行われる。
(iia’) C610=CH−R+Pd → 〔C610=CH−R:Pd〕
〔C610=CH−R:Pd〕+H2 → Pd+C611−CH2−R
Figure 2009267300
また、パラジウム系触媒の表面のパラジウム原子に対して、第2アミンから生成される、N(CH2R’)=CHR’分子も、その−HC=N−部分のπ電子を利用して、π−配位子型の配位を行った状態〔Pd:N(CH2R’)=CHR’〕となる。その状態〔Pd:N(CH2R’)=CHR’〕に対して、気相から供給される、水素分子(H2)による、水素添加反応が進行する。すなわち、パラジウム原子が、水素添加反応の触媒中心として機能して、N(CH2R’)=CHR’分子の−N=C<部分への水素添加反応を促進する。結果的に、下記のステップ(iia)の水素添加反応によって、第2アミン(例えば、HN(CH2CH(C25)C492)の再生が行われる。
(iia) 〔Pd:N(CH2R’)=CHR’〕+H2
→Pd+HN(CH2CH(C25)C492
活性促進処理を施したパラジウム系触媒を利用する際には、第2アミン(例えば、HN(CH2CH(C25)C492)の再生、アルキルナフテン(例えば、C611−CH2−R)の再生の過程に、相当の寄与を有していると推定される。
(実施形態2)
本実施形態では、銅箔表面上に銅ナノ粒子焼結体層を形成する際には、パラジウム系触媒を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程に代えて、銅箔の表面酸化被膜を除去し、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程を利用可能であることを検証する。
利用するペースト状の銅ナノ粒子分散液は、上述の実施形態1に記載する銅ナノ粒子分散液と同じ方法で調製している。
[銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理]
上記の実施形態1に記載する工程1〜工程5のうち、工程1、工程2と工程3によるパラジウム系触媒の付着操作に代えて、下記工程Bによる銅箔の表面酸化被膜を除去する操作を行っている。
工程B:銅箔の表面酸化被膜の除去処理
上記の工程1のコンディショナー洗浄、工程2:プレディップ処理・スズ−パラジウム系触媒の吸着処理、工程3:スズ−パラジウム系触媒の触媒活性促進処理に代えて、銅箔表面に、エッチボンド前処置剤(メック製、メックブライトCA−5330A)を使用し、エッチング処理を施す。
このエッチボンド前処置剤によるエッチング処理は、銅箔表面に存在する表面酸化被膜をエッチング除去する。その際、銅箔の表面酸化被膜の表面に付着している、ビアホール接続用の穴(ホール)形成時の残渣、皮脂なども、表面酸化被膜とともに除去される。結果的に、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体が、穴(ホール)底部に露呈する状態となる。
この段階では、銅箔表面に存在する表面酸化被膜のエッチング除去(酸洗浄)によって、図1に示すように、穴(ホール)底部には、金属銅の表面が露出した銅メッキ粒子は、高い面密度で露呈する状態となる。この金属銅の表面が露出した銅メッキ粒子は、金属核粒子として機能する。
その後、上記の工程4、工程5に従って、銅箔表面上に銅ナノ粒子焼結体層を形成する。
[銅ナノ粒子焼結体層の断面観察]
本実施形態で得られた銅ナノ粒子焼結体層について、SEMでその断面を観察し、得られた焼結体層の微視的な構造を調べた。その結果、穴(ホール)底部では、穴(ホール)底部に露呈するメッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子上に、銅ナノ粒子相互が密に焼結され、焼結体層が形成されている。すなわち、銅メッキ粒子を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている形態であることを示唆する構造が見出される。
(実施形態3)
本実施形態では、銅箔表面上に銅ナノ粒子焼結体層を形成する際には、パラジウム系触媒を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程に加えて、銅箔の表面酸化被膜を除去し、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程を利用可能であることを検証する。
利用するペースト状の銅ナノ粒子分散液は、上述の実施形態1に記載する銅ナノ粒子分散液と同じ方法で調製している。
[銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理]
上記の実施形態1に記載する工程1〜工程5のうち、工程1と工程2と間に、下記工程B’による銅箔の表面酸化被膜を除去する操作を行っている。
工程B’:銅箔の表面酸化被膜の除去処理
上記の工程1のコンディショナー洗浄後、工程2:プレディップ処理・スズ−パラジウム系触媒の吸着処理を行う前、銅箔表面に、エッチボンド前処置剤(メック製、メックブライトCA−5330A)を使用し、エッチング処理を施す。
このエッチボンド前処置剤によるエッチング処理は、銅箔表面に存在する表面酸化被膜をエッチング除去する。その際、銅箔の表面酸化被膜の表面に付着している、ビアホール接続用の穴(ホール)形成時の残渣、皮脂なども、表面酸化被膜とともに除去される。結果的に、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体が、穴(ホール)底部に露呈する状態となる。
引き続き、工程2:プレディップ処理・スズ−パラジウム系触媒の吸着処理、工程3:スズ−パラジウム系触媒の触媒活性促進処理を施している。
従って、層間絶縁層表面、ならびに、ビアホール接続用の穴(ホール)の側壁面には、前記活性促進処理を施したパラジウム系触媒が付着されている。穴(ホール)の底面部に露呈するメッキ銅箔表面では、表面酸化被膜が除去され、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体が、穴(ホール)底部に露呈する状態となる。
その後、上記の工程4、工程5に従って、銅ナノ粒子焼結体層を形成する。
[銅ナノ粒子焼結体層の断面観察]
本実施形態で得られた銅ナノ粒子焼結体層について、SEMでその断面を観察し、得られた焼結体層の微視的な構造を調べた。その結果、穴(ホール)底部では、穴(ホール)底部に露呈するメッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子上に、銅ナノ粒子相互が密に焼結され、焼結体層が形成されている。すなわち、銅メッキ粒子を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている形態であることを示唆する構造が見出される。
また、層間絶縁層表面、穴(ホール)の側壁面では、上述する実施形態1と同様に、層間絶縁層表面、該穴(ホール)の側壁面に付着させているパラジウム系触媒を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている。
従って、ビアホール接続用の穴(ホール)部分全体は、層間絶縁層表面に形成される銅ナノ粒子焼結体層と一体化された銅ナノ粒子焼結体によって被覆された構造となる。
(実施形態4)
本実施形態では、銅箔表面上に銅ナノ粒子焼結体層を形成する際には、パラジウム系触媒を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程に加えて、銅箔の表面酸化被膜を除去し、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程を利用可能であることを検証する。特に、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理の工程において、加圧雰囲気中に含まれる水素分子の含有比率を減少させ、水素分子を含有する混合気体を採用する形態も利用可能であることを検証する。
利用するペースト状の銅ナノ粒子分散液は、上述の実施形態1に記載する銅ナノ粒子分散液と同じ方法で調製している。
[銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理]
上記の実施形態1に記載する工程1〜工程5のうち、工程1と工程2と間に、下記工程B’による銅箔の表面酸化被膜を除去する操作を行っている。
工程B’:銅箔の表面酸化被膜の除去処理
上記の工程1のコンディショナー洗浄後、工程2:プレディップ処理・スズ−パラジウム系触媒の吸着処理を行う前、銅箔表面に、エッチボンド前処置剤(メック製、メックブライトCA−5330A)を使用し、エッチング処理を施す。
このエッチボンド前処置剤によるエッチング処理は、銅箔表面に存在する表面酸化被膜をエッチング除去する。その際、銅箔の表面酸化被膜の表面に付着している、ビアホール接続用の穴(ホール)形成時の残渣、皮脂なども、表面酸化被膜とともに除去される。結果的に、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体が、穴(ホール)底部に露呈する状態となる。
引き続き、工程2:プレディップ処理・スズ−パラジウム系触媒の吸着処理、工程3:スズ−パラジウム系触媒の触媒活性促進処理を施している。
従って、層間絶縁層表面、ならびに、ビアホール接続用の穴(ホール)の側壁面には、前記活性促進処理を施したパラジウム系触媒が付着されている。穴(ホール)の底面部に露呈するメッキ銅箔表面では、表面酸化被膜が除去され、メッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子自体が、穴(ホール)底部に露呈する状態となる。
その後、上記の工程4に従って、銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成を行う。
次いで、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理の工程では、水素ガス雰囲気に代えて、アルゴン−4%水素の混合気体を使用して、下記の工程5’に記載する条件で表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理を実施する。
工程5’:表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理
ペースト状の銅ナノ粒子分散液塗布を終えた後、オートクレーブ内に、基板を設置する。オートクレーブ内をアルゴン−4%水素の混合ガスで満たし、還元ガス雰囲気下とする。該混合ガスを充填した、オートクレーブ内に、充填されるガスの圧力は、常温(25℃=298K)で約5気圧(5×103 hPa)に選択されている。該混合ガスを加圧・封入した状態のオートクレーブ内温度を、約1時間を要して、温度200℃(473K)まで加熱し、30分間保持する。なお、200℃まで加熱することで、オートクレーブ内の内圧は、約7.0気圧(7.0×103 hPa)まで上昇している。その後、自然冷却により、降温させる。なお、この降温過程では、内部温度が、50℃以下に降下するのに、約30分間を要している。
[銅ナノ粒子焼結体層の断面観察]
本実施形態で得られた銅ナノ粒子焼結体層についても、SEMでその断面を観察し、得られた焼結体層の微視的な構造を調べた。その結果、穴(ホール)底部では、穴(ホール)底部に露呈するメッキ銅箔を構成する銅メッキ粒子上に、銅ナノ粒子相互が密に焼結され、焼結体層が形成されている。すなわち、上述する実施形態3と同様に、銅メッキ粒子を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている形態であることを示唆する構造が見出される。
また、層間絶縁層表面、穴(ホール)の側壁面では、上述する実施形態3と同様に、層間絶縁層表面、該穴(ホール)の側壁面に付着させているパラジウム系触媒を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている。
従って、ビアホール接続用の穴(ホール)部分全体は、層間絶縁層表面に形成される銅ナノ粒子焼結体層と一体化された銅ナノ粒子焼結体によって被覆された構造となる。
(参考形態)
本参考形態では、層間絶縁層表面、穴(ホール)の側壁面、底面に金属核粒子を付着していない場合、ペースト状の銅ナノ粒子分散液の塗布液層中において、銅ナノ粒子の不規則な凝集が発生し、生成する銅ナノ粒子の凝集塊を核として、銅ナノ粒子の焼結体の形成がなされることを検証する。
利用するペースト状の銅ナノ粒子分散液は、上述の実施形態1に記載する銅ナノ粒子分散液と同じ方法で調製している。
[銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理]
上記の実施形態1に記載する工程1、工程2と工程3によるパラジウム系触媒の付着操作のうち、工程1:コンディショナー洗浄のみを行い、工程2と工程3によるパラジウム系触媒の付着は行わない。
その後、上記の工程4、工程5に従って、銅ナノ粒子焼結体層を形成する。
[銅ナノ粒子焼結体層の断面観察]
本参考形態で得られた銅ナノ粒子焼結体層について、SEMでその断面を観察し、得られた焼結体層の微視的な構造を調べた。その結果、層間絶縁層表面では、全体的には膜厚が均一な焼結体層が生成しているが、微視的には、銅ナノ粒子の不規則な凝集塊が、表面近傍に見出される。すなわち、塗布液層中において、銅ナノ粒子の不規則な凝集が発生し、生成する銅ナノ粒子の凝集塊を核として、銅ナノ粒子の焼結体の形成が進行していることを反映している。
一方、ビアホール接続用の穴(ホール)部分では、その表面近傍では、銅ナノ粒子の不規則な凝集が発生し、生成する銅ナノ粒子の凝集塊を核として、銅ナノ粒子の焼結体の形成が進行している。一方、穴(ホール)部分の内部でも、銅ナノ粒子の不規則な凝集が発生しており、全体として、一体化した焼結体層を構成していない状態となっている。また、ビアホール接続用の穴(ホール)の底部に露呈する銅箔表面は、酸化被膜が残余しており、該銅箔表面を緻密に被覆する銅ナノ粒子の二次元的な焼結体は形成されていない。
(実施形態5−7)
本実施形態では、銅箔表面上に銅ナノ粒子焼結体層を形成する際には、パラジウム系触媒を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程に代えて、金、銀、パラジウムのいずれかの貴金属ナノ粒子自体を核とする、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層の形成過程が利用可能であることを検証する。
利用するペースト状の銅ナノ粒子分散液は、上述の実施形態1に記載する銅ナノ粒子分散液と同じ方法で調製している。
[銅ナノ粒子分散液の塗布膜層の形成、表面酸化被膜層の還元、低温焼成処理]
上記の実施形態1に記載する工程1〜工程5のうち、工程1、工程2と工程3によるパラジウム系触媒の付着操作に代えて、下記工程Cによる貴金属(金、銀、パラジウム)ナノ粒子の付与操作を加えている。
工程C:貴金属ナノ粒子の基板への付与
上記の工程1のコンディショナー洗浄、工程2:プレディップ処理・スズ−パラジウム系触媒の吸着処理、工程3:スズ−パラジウム系触媒の触媒活性促進処理に代えて、平均粒子径5nm程度の貴金属ナノ粒子のヘキサン分散液に基板を浸漬する。その後、前記浸漬処理によって、基板表面を均一に被覆する、貴金属ナノ粒子のヘキサン分散液の薄い塗布膜を、室温で乾燥する。分散溶媒ヘキサンの蒸散後、層間絶縁層表面、ならびに、ビアホール接続用の穴(ホール)の側壁面、底面に、貴金属ナノ粒子が均一な面密度で付着している状態となる。
前記貴金属ナノ粒子のヘキサン分散液は、貴金属ナノ粒子100質量部当たり、分散溶媒のヘキサン9900質量部を含んでいる。その結果、付着する貴金属ナノ粒子の面密度は、5×1010個/mm2〜1×1011個/mm2の範囲となる。単純換算すると、付着する貴金属ナノ粒子の面密度は、5×10-2個/nm2〜1×10-1個/nm2の範囲となる。
その後、上記の工程4、工程5に従って、銅ナノ粒子焼結体層を形成する。
[銅ナノ粒子焼結体層の断面観察]
本実施形態で得られた銅ナノ粒子焼結体層について、SEMでその断面を観察し、得られた焼結体層の微視的な構造を調べた。その結果、層間絶縁層表面では、付着している貴金属ナノ粒子を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている。
ビアホール接続用の穴(ホール)の底面でも、付着している貴金属ナノ粒子を核として、この核に銅ナノ粒子が融着し、二次元的な焼結体層の形成がなされている。また、穴(ホール)の側壁面においても、この側壁面に付着している貴金属ナノ粒子を核として、銅ナノ粒子が融着している。その結果、ビアホール接続用の穴(ホール)の底面、側壁面、層間絶縁層表面を被覆するように、二次元的な焼結体層の形成がなされ、全体として、一体化された銅ナノ粒子焼結体によって被覆された構造となる。
実施形態1〜7、ならびに、参照形態に記載する手法を適用した際、ビアホール接続用の穴(ホール)の底面、側壁面を被覆する銅ナノ粒子焼結体の微視的な形態を、表1にまとめて示す。
Figure 2009267300
上記の形態では、上記の「銅ナノ粒子の表面酸化被膜の還元処理のメカニズム」に開示する還元過程を経て、一旦、銅ナノ粒子に復され、その表面を分散剤分子が被覆している状態となる。その後、銅ナノ粒子の表面を覆う、分散剤分子が離脱すると、表面に付着している金属核粒子が存在する場合、銅ナノ粒子は、まず、該金属核粒子の金属面に銅ナノ粒子が選択的に融着する。その結果、均一に付着している金属核粒子を核として、その表面に融着する銅ナノ粒子が形成する焼結体は二次元的焼結体層を構成している。
一方、金属核粒子が存在していない場合、銅ナノ粒子相互が融着して、銅ナノ粒子の凝集体が形成される。この銅ナノ粒子の凝集体の生成は、不規則であり、分散液の塗布膜層全体で起こる。その際、分散溶媒の蒸散が進むとともに、塗布膜層表面近傍では、単位体積当たりに分散している銅ナノ粒子の密度は相対的に高くなる。従って、ビアホール接続用の穴(ホール)部分では、分散液の塗布膜層全体の層厚が厚いため、穴(ホール)の内部には、分散溶媒が相当量残留している段階で、その塗布膜層の表面近傍では、銅ナノ粒子凝集体の生成が進行する。塗布膜層の表面近傍では、生成した銅ナノ粒子凝集体相互が、連結して、蓋状の構造を形成する。その後、この蓋状の構造を核として、銅ナノ粒子の融着、凝集が進行する。一方、穴(ホール)の内部では、不規則的に生成する銅ナノ粒子凝集体に対して、銅ナノ粒子の融着、凝集が進行する。その際、不規則的に生成する銅ナノ粒子凝集体相互の連結は、疎らになされるのみである。全体として、ビアホール接続用の穴(ホール)の表面は、銅ナノ粒子凝集体相互が密に連結して、蓋状の構造を形成するが、穴(ホール)の内部では、銅ナノ粒子凝集体が不規則的に配置され、焼結の密度は疎な状態となる。
本発明の多層配線基板の製造方法は、例えば、ビルド・アップ基板の作製に好適に利用される。
ビアホール接続用の穴(ホール)部分の底面に露呈するメッキ銅箔の表面酸化被膜を除去する酸洗浄の操作を模式的に示す図である。 ビアホール接続用の穴(ホール)部分、層間絶縁層表面にスズ−パラジウム系触媒の付着(触媒塗布)がなされた状態を模式的に示す図である。 ビアホール接続用の穴(ホール)部分、層間絶縁層表面へのスズ−パラジウム系触媒の付着(触媒塗布)、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液の塗布(ペースト印刷)、低温焼成による銅ナノ粒子焼結体層の形成の工程を模式的に示す図である。 ビアホール接続用の穴(ホール)部分、層間絶縁層表面へのスズ−パラジウム系触媒の付着(触媒塗布)、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液の塗布(ペースト印刷)、低温焼成による銅ナノ粒子焼結体層の形成、ならびに、層間絶縁層表面上の銅ナノ粒子焼結体層の研磨除去(研磨)の工程を模式的に示す図である。

Claims (14)

  1. ビアホールを介する層間導通を利用する多層配線基板を製造する方法であって、
    前記多層配線基板は、下層配線層と、上層配線層と、その層間に配置する層間絶縁膜を有し、
    該層間絶縁膜は、絶縁性樹脂層で形成されており、該下層配線層は、電解メッキ銅箔層で形成されており、
    前記下層配線層と上層配線層の間における、ビアホールを介する層間導通は、
    前記層間絶縁膜の表面から、前記下層配線層の表面に達する、ビアホールを介する層間導通用の導電体層は、銅ナノ粒子の焼結体層により形成されており、
    前記銅ナノ粒子の焼結体層を形成する方法は、
    前記層間絶縁膜の表面から、前記下層配線層の表面に達する、ビアホール形成用の穴を作製する工程と、
    該ビアホール形成用の穴の側壁面、底面、ならびに前記層間絶縁膜の表面に、金、銀、銅、白金、パラジウムからなる群より選択される金属からなる金属核粒子を均一に付着させる工程と、
    平均粒子径を1〜100nmの範囲に選択される、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子を含有する分散液を用いて、該分散液の塗布膜層を、該ビアホール形成用の穴の側壁面、底面、ならびに前記層間絶縁膜の表面上に描画する工程と、
    前記塗布膜層中に含まれる、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子に対して、表面酸化膜層または酸化銅を還元する処理を施し、さらに、還元処理を受けたナノ粒子の焼成を行って、焼結体層を形成する工程とを有し、
    同一工程内で実施される、前記還元処理と焼成処理は、加熱温度を、150℃以上、250℃以下に選択して、水素ガス雰囲気下、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気下において、少なくとも1.1気圧以上に加圧された状態において行い、
    前記還元処理を受けたナノ粒子の焼成工程では、
    少なくとも、層間絶縁膜表面においては、その表面に付着している金属核粒子を核として、銅ナノ粒子の二次元的な焼結体層形成が行なわれる
    ことを特徴とする多層配線基板の製造方法。
  2. 前記焼結体層を形成する工程の後に、
    層間絶縁層の表面が露出するまで焼結体層を除去し、ビアホール形成用の穴内部のみに、焼結体層を残存させる工程を設ける
    ことを特徴とする請求項1に記載の多層配線基板の製造方法。
  3. 前記金属核粒子を均一に付着させる工程に先立ち、
    該ビアホール形成用の穴の底面に露呈する、下層配線層の表面に対して、該下層配線層表面の表面酸化被膜を除去する工程を設ける
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の多層配線基板の製造方法。
  4. 前記金属核粒子として、
    無電解銅メッキにおいて、銅(II)カチオンを金属銅(0)へと還元する際、該還元反応を触媒可能なパラジウム系触媒に利用される、パラジウムからなる金属核粒子を用いる
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
  5. 前記パラジウムからなる金属核粒子は、
    無電解銅メッキにおいて、銅(II)カチオンを金属銅(0)へと還元する際、該還元反応を触媒可能なスズ−パラジウム系触媒に対して、該スズ−パラジウム系触媒中のスズを選択的に溶出することで、活性化されたパラジウム系触媒からなる金属核粒子である
    ことを特徴とする請求項4に記載の多層配線基板の製造方法。
  6. 分散液中に含有される、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子は、
    少なくとも、前記表面酸化膜層は、酸化第一銅、酸化第二銅、またはこれら銅酸化物の混合物のいずれかを含んでなり、
    また、該銅ナノ粒子は、酸化第一銅、酸化第二銅、またはこれら銅の酸化物の混合物、ならびに金属銅のうち、2つ以上を含んでなる混合体状粒子である
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
  7. 前記還元処理と焼成処理における、水素ガス雰囲気、または水素分子を含有する混合気体の雰囲気中の水素分子の含有率は、1体積%〜100体積%の範囲に選択されている
    ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
  8. 前記還元処理と焼成処理における、水素分子を含有する混合気体の雰囲気は、
    水素分子と、不活性気体の混合物であり、
    該不活性気体は、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン、あるいは、それらの二種以上を混合したものである
    ことを特徴とする請求項7に記載の多層配線基板の製造方法。
  9. 前記還元処理と焼成処理において、
    前記加熱温度に達した際、気相の圧力を1.4気圧〜10気圧の範囲とする加圧状態を達成している
    ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
  10. 前記分散液中には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子100質量部当たり、ジアルキルアミンが、2質量部〜20質量部の範囲で含有されている
    ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
  11. 前記ジアルキルアミンは、その二つのアルキル基は、炭素数5以上、9以下の範囲であるジアルキルアミンから選択されている
    ことを特徴とする請求項10に記載の多層配線基板の製造方法。
  12. 前記分散液中には、表面酸化膜層を有する銅ナノ粒子または酸化銅ナノ粒子100質量部当たり、
    付粘性成分として、沸点が150℃以上の、粘性を有する炭化水素溶媒が、20質量部〜2質量部の範囲で含有されている
    ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
  13. 付粘性成分として含有される、前記沸点が150℃以上の、粘性を有する炭化水素溶媒は、流動パラフィン、イソパラフィン、鉱物油、化学合成油、植物油からなる炭化水素溶媒から選択される一種、または、二種以上を混合したものである
    ことを特徴とする請求項12に記載の多層配線基板の製造方法。
  14. 前記銅ナノ粒子の焼結体層の膜厚は、5μm〜100μmの範囲に選択される
    ことを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の多層配線基板の製造方法。
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