JP2009263725A - 高温強度に優れる溶接構造用鋼の製造方法 - Google Patents

高温強度に優れる溶接構造用鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 各種の溶接鋼構造物用鋼として高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用高張力鋼の製造方法の提供。
【解決手段】 C:0.01〜0.10%、Si:0.60%以下、Mn:0.2〜2.0%、P:0.020%以下、S:0.010%以下、Mo:0.05〜0.20%、Nb:0.01〜0.10%、Al:0.060%以下、N:0.001〜0.006%で、かつ、C+Mo/10+Nb:0.06〜0.12%で、必要に応じ、特定量のV、Ti、Ni、Cu、Cr、B、Mg、Ca、REMを1種または2種以上をさらに含有する鋳片または鋼片を、1000〜1300℃の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上として850点以上の温度で熱間圧延を終了した後、放冷する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、火災など高温時の耐力維持を目的とした建築構造用耐火鋼を主たるターゲットとするものであるが、建築用途に限らず、海洋構造物、船舶、橋梁、各種貯槽タンク用など幅広い用途に適用できる溶接構造用鋼の製造方法に関するものである。
JIS等で規格化されている一般の構造用鋼は、約350℃から強度低下するため、その許容温度は約500℃となっている。すなわち、ビルや事務所、住居、立体駐車場などの建築物に前記の鋼材を用いた場合は、火災時における安全性を確保するため、十分な耐火被覆を施すことが義務付けられており、建築関連諸法令では、火災時に鋼材温度が350℃以上にならないように規定されている。これは、前記鋼材では、350℃程度で耐力が常温の2/3程度になり、必要な強度を下回るためである。また、2000年の建築基準法改正により、30分防火柱が必要となる条件と必要仕様が明文化され、さらに、2007年の法改正で、確認審査が厳格化されることになった。
このため、一般鋼材を建造物に利用する場合、火災時において鋼材の温度が350℃に達しないよう、あるいは火災を想定した標準加熱条件下での加熱開始後30分間構造耐力上支障ある変形や損傷を生じないよう耐火被覆を施す必要がある。
これに対し、無耐火被覆化を目的とし、600℃での耐力を確保したいわゆる耐火鋼は、多くの技術が開示されており(例えば、特許文献1参照)、そのほとんどはMoを比較的多く含有するものである。確かに、Moは、鋼の高温耐力を確保する上で極めて有効な元素であるが、高価で市況変化も大きく、添加量にもよるが、耐火被覆コストと見合わない状況も出てくることもある。このため、Mo低減ないしはMoを添加しない安価な高温強度保証鋼の開発・実用化が待たれていた。
本発明者らは、先に、Moを製鋼時のコンタミネーションのみに抑えた実質的にMoを添加含有しない高温強度保証鋼を発明した(特許文献2、3参照)。しかし、実質的にMoを添加含有せずに所定の高温強度と常温強度や溶接性、溶接部靭性などの溶接構造用鋼としての基本特性を高いレベルで両立させることは必ずしも容易ではなく、鋼成分や製造プロセスを厳格に管理・制御する必要があるなど、工業生産上は改善の余地が残されていた。また、30分防火柱対応鋼としてみた場合、板厚、部材構造によっては前記600℃耐火鋼では必ずしも十分ではないことが、本発明者らによる熱伝導シミュレーションや実部材での加熱試験で確認しており、さらなる高性能(高温強度の優れた)鋼材開発が待たれていた。
特開平2−77523号公報 特開2007−277679号公報 特開2007−277680号公報
本発明は、上記実情に鑑み、工業生産上の製造安定性をも考慮した上で、優れた高温強度とともに溶接構造用としての基本性能に優れる鋼材を得ることを目的とし、比較的低いMoとNbの複合添加をベースに、C、Mo、Nbの総量およびその他元素も特定範囲に限定することで、工業的に安定して、しかも低コストで供給可能な溶接構造用鋼の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明のポイントは、高温耐力確保・維持にきわめて有効なために通常用いられるMoを微量添加に抑えつつ、高温耐力を安定して確保し、しかも優れた溶接性、溶接部靭性を具備した鋼材を得るため、C−Mo−Nbを適正範囲で複合添加することで変態組織強化とMoやNbの析出物(炭窒化物)を利用するものである。Moは添加するものの、その量を微量に抑えることで、高温特性はもとより溶接構造用鋼としての基本性能(強度、靭性)はもちろん、低コスト化にも寄与し、Moの高い焼入性とによって製造安定性の向上にもつながる。
本発明は、C、Mo、Nbのみならず、Si、Mnをはじめとするその他の合金元素量も限定し、さらに製造条件を限定することで、溶接構造用鋼としての各種使用性能はもちろん、優れた高温強度と溶接性、溶接部靭性を両立させたものであるが、その発明の要旨は、以下の通りである。
(1) 成分が質量%で、
C:0.01〜0.10%、
Si:0.60%以下、
Mn:0.2〜2.0%、
P:0.020%以下、
S:0.010%以下、
Mo:0.05〜0.20%、
Nb:0.01〜0.10%、
Al:0.060%以下、
N:0.001〜0.006%
を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、
0.06≦C+Mo/10+Nb≦0.12%
を満足する鋳片または鋼片を、1000〜1300℃の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上として850℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、放冷することを特徴とする高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
(2) さらに、質量%で
V:0.01〜0.20%、
Ti:0.005〜0.025%
の範囲で1種または2種を含有することを特徴とする上記(1)に記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
(3) さらに、質量%で
Ni:0.05〜0.50%、
Cu:0.05〜0.50%、
Cr:0.05〜1.0%、
B:0.0002〜0.003%、
Mg:0.0002〜0.005%
の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
(4) さらに、質量%で
Ca:0.0005〜0.004%、
REM:0.0005〜0.008%
の範囲で1種または2種を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
本発明によれば、通常用いられる高価なMoを微量添加に抑え、既存の600℃耐火鋼よりも高温強度と低温靭性に優れ、しかも優れた溶接性、溶接部靭性を具備した溶接構造用鋼が大量かつ安価に提供できるようになった。その結果、30分防火柱用として、耐火被覆の軽減または省略が可能となった。また、建築以外の用途においても、強度、靭性などの基本性能を具備した上で、さらに高温強度をも具備したため、高温に晒される可能性のある溶接構造物用鋼として、構造物の安全性を一段と高めることができるようになった。
耐火部材の加熱開始30分後の部材温度は、板厚、部材構造などによって異なるため、30分防火柱として必要な鋼材特性(高温特性:温度、耐力)を一律に規定することは、多くの場合、過大な仕様となりかねず、多量の合金元素添加により経済性を損ねたり、そもそも仕様達成が困難となる可能性がある。したがって、鋼材開発においては、一般鋼+耐火被覆ならびにその施工コストに見合うものであることが前提となる。
このため、本発明では、板厚19mm以上で、650℃での保有耐力が、JIS G 3136「建築構造用圧延鋼材」におけるSN400鋼の常温規格最小降伏点または耐力である235MPaの2/3以上、すなわち157MPa以上をターゲットとし、常温強度は特に問わないものとした。
本発明によれば、火災時など高温にさらされる環境でも十分な耐力を有する溶接構造用鋼が大量かつ安価に供給できるため、種々の用途の広範な溶接鋼構造物の安全性向上に資することが可能となる。
まず、本発明が、請求項の通りに鋼成分を限定した理由について説明する。ここで、成分についての%は質量%を表している。
(C:0.01〜0.10%)
Cは、高張力鋼としては非常に低いレベルに限定しており、本発明の特徴の一つである。これは、後述する他の成分とともに製造方法とも密接に関係している。鋼成分の中でもCは鋼材の特性に最も大きな影響を及ぼすもので、下限0.01%は強度確保や溶接、ガス切断などの熱影響部が必要以上に軟化することのないようにするための最小量である。しかし、C量が多すぎると焼入性が必要以上に上がり、鋼材が本来有すべき強度、靱性のバランス、溶接性、溶接部靭性などに悪影響を及ぼすため、上限を0.10%とした。
(Si:0.60%以下)
Siは、脱酸上鋼に含まれる元素であるが、多く添加すると溶接性、HAZ靭性が劣化するため、上限を0.60%に限定したが、好ましくは0.45%以下である。鋼の脱酸はTi、Alのみでも十分可能であり、HAZ靱性、焼入性などの観点から低いほど好ましく、Siは必ずしも添加する必要はない。
(Mn:0.2〜2.0%)
Mnは、常温の強度、靭性を確保する上で不可欠な元素であり、その下限は0.2%である。しかし、Mn量が多すぎると焼入性が上昇して溶接性、HAZ靭性を劣化させるだけでなく、連続鋳造スラブの中心偏析を助長するので上限を2.0%とした。好ましくは0.5〜1.6である。
(P:0.020%以下)
Pは、本発明鋼においては不純物であり、P量の低減はHAZにおける粒界破壊を減少させる傾向があるため、少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.020%としたが、0.010%以下が好ましい。
(S:0.010%以下)
Sは、Pと同様本発明鋼においては不純物であり、母材の低温靭性の観点からは少ないほど好ましい。含有量が多いと母材、溶接部の低温靭性を劣化させるため上限を0.010%としたが、0.005%以下が好ましい。
(Mo:0.05〜0.20%)
Moは、後述するNbとともに高温強度を確保する上で本発明においては必須元素である。ただし、Moは高価で市況変化も大きいため、本発明においては、コストと製造安定性(すなわち材質安定性)とのバランス上、比較的に少量添加に限定した。すなわち、下限の0.05%は、後述する圧延後放冷する製造プロセスにおいて、Moの高い焼入性効果を顕著に発現できる最小量であり、上限の0.20%は、高温強度を補うに足り、かつ耐火被覆工法に若干の市況変動を考慮してもなお比肩し得るコストとする上での許容上限量である。したがって、冶金的、技術的限界量ではなく、商業生産上低コストを指向したものであって本発明の特徴を明確にするためのものである。
(Nb:0.01〜0.10%)
Nbは、Mo同様、本発明における最も重要な元素の一つである。なぜなら、前記のように比較的低いMo添加に限定された本発明鋼においては、高温耐力確保のため固溶NbならびにNbの析出物(炭窒化物)を利用しているからである。それらの効果を享受するため、最低0.01%の添加が必須である。高温強度の観点からは、Nbは多いほど有利であるが、HAZ靭性や経済性の観点から0.10%に限定する。この上限については、必ずしも限界を見極めたわけではないが、本発明者らの実験により、溶接部の大幅な靭性劣化を招かない範囲として、限定したものである。なお、Nb添加は、オーステナイトの未再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮することにも寄与する。好ましくは、Nbは0.01〜0.06%である。
(Al:0.060%以下)
Alは、一般に脱酸上鋼に含まれる元素であるが、脱酸はSiまたは必要に応じて添加するTiだけでも十分であり、本発明鋼においては、その下限は限定しない。しかし、Al量が多くなると鋼の清浄度が悪くなるだけでなく、溶接金属の靭性が劣化するので上限を0.060%とした。
(N:0.001〜0.006%)
Nは、不可避的不純物として鋼中に含まれるものであるが、Nbと結合して炭窒化物を形成して強度を増加させ、また、Tiを添加した場合、TiNを形成して前述のように鋼の性質を高める。このため、N量として最低0.001%必要である。しかしながら、N量の増加は溶接熱影響部靭性、溶接性に有害であり、本発明鋼においてはその上限は0.006%であるが、0.005%以下とすることが好ましい。
次に、必要に応じて含有することができるV、Tiの添加理由について説明する。
(V:0.01〜0.20%)
Vは、Nbとほぼ同様の効果を有し、本発明におけるVの役割は、Nbを補完するものである。ただし、Vは、Nbに比べて効果は小さく、焼入れ性にも影響を及ぼすため、上下限を限定したものだが、下限はV添加の効果を確実に享受できる最少量として0.01%に、上限はあくまでNbの補完的役割であることと溶接性への影響も勘案し0.20%とした。好ましくは、0.01〜0.10%である。
(Ti:0.005〜0.025%)
Tiは母材および溶接熱影響部靭性向上のため、溶接構造用鋼としては添加することが望ましい。なぜならばTiは、Al量が少ないとき(例えば0.003%以下)、Oと結合してTi2O3を主成分とする析出物を形成、粒内変態フェライト生成の核となり溶接熱影響部靭性を向上させる。また、TiはNと結合してTiNとしてスラブ中に微細析出し、加熱時のγ粒の粗大化を抑え圧延組織の細粒化に有効であり、また鋼板中に存在する微細TiNは、溶接時に溶接熱影響部組織を細粒化するためである。これらの効果を得るためには、Tiは最低0.005%必要である。しかし多過ぎるとTiCを形成し、低温靭性や溶接性を劣化させるので、その上限は0.025%、好ましくは0.015%である。
次に、必要に応じて含有することができるNi、Cu、Cr、B、Mgの添加理由について説明する。
基本となる成分に、さらにこれらの元素を添加する主たる目的は、本発明鋼の優れた特徴を損なうことなく、強度、靭性などの特性を向上させるためである。したがってその添加量は自ずと制限されるべき性質のものである。
(Ni:0.05〜0.50%)
Niは、過剰に添加しなければ、溶接性、溶接熱影響部靭性に悪影響を及ぼすことなく母材の強度、靭性を向上させる。これら効果を発揮させるためには、少なくとも0.05%以上の添加が必須である。一方、過剰な添加は高価なだけでなく、溶接性に好ましくない。また、Niを多く添加すると液体アンモニア中で応力腐食割れ(SCC)を誘起する可能性が指摘されている。発明者らの実験によれば、1.0%までの添加は溶接性や液体アンモニア中でのSCCを大きく劣化させず、強度、靭性向上効果の方が大きいが、経済性を優先し、上限を0.50%とした。
(Cu:0.05〜0.50%)
Cuは、Niとほぼ同様の効果、現象を示し、上限の0.50%は溶接性劣化に加え、過剰な添加は熱間圧延時にCu−クラックが発生し製造困難となるため規制される。下限は実質的な効果が得られるための最小量とすべきで0.05%である。
(Cr:0.05〜1.0%)
Crは、焼入性向上効果により変態温度が低下して常温および高温強度を嵩上げするとともに、Crの固溶強化やCr炭化物は高温強度維持に寄与する。これらの効果を享受するため、最低0.05%は必要である。しかし、添加量が多すぎると母材、溶接部の靭性および溶接性の劣化を招き、経済性も失するため上限を1.0%としたが、好ましくは0.10〜0.80%である。
(B:0.0002〜0.003%)
Bは、オーステナイト粒界に偏析し、フェライトの生成を抑制することを介して、焼入性を向上させ、強度向上に寄与する。この効果を享受するため、最低0.0002%以上必要である。しかし、多すぎる添加は焼入性向上効果が飽和するだけでなく、靭性上有害となるB析出物を形成する可能性もあるため、上限を0.003%とした。なお、タンク用鋼などとして、応力腐食割れが懸念されるケースでは、母材および溶接熱影響部の硬さの低減がポイントとなることが多く(例えば、硫化物応力腐食割れ(SSC)防止のためにはHRC≦22(HV≦248)が必須とされる)、そのようなケースでは焼入性を増大させるB添加は好ましくない。
(Mg:0.0002〜0.005%)
Mgは、溶接熱影響部においてオーステナイト粒の成長を抑制し、細粒化する作用があり、溶接部の強靭化が図れる。このような効果を享受するためには、Mgは0.0002%以上必要である。一方、添加量が増えると添加量に対する効果代が小さくなるため、コスト上得策ではないので上限は0.005%としたが、0.003%とすることが好ましい。
次に、請求項4にかかるCaまたはREMの添加理由について説明する。
(Ca:0.0005〜0.004%、REM:0.0005〜0.008%)
CaおよびREMは、MnSの形態を制御し、母材の板厚方向特性や低温靭性を向上させるほか、湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を低減させる。これらの効果を発揮するためには、夫々最低0.0005%必要である。しかし、多すぎる添加は、鋼の清浄度を逆に悪化させ、母材靭性や湿潤硫化水素環境下での水素誘起割れ(HIC、SSC、SOHIC)感受性を高めるため、添加量の上限はCa、REMそれぞれ0.004%、0.008%に限定した。CaとREMは、ほぼ同等の効果を有するため、いずれか1種を上記範囲で添加すればよく、両者を添加してもよい。
上記のように鋼の個々の成分を限定した上で、さらに本発明の特徴を明確にするために、C、Mo、Nbの総量をさらに限定する。すなわち、「C+Mo/10+Nb」なる量を0.06%以上、0.12%以下とする。C、Mo、Nbは、高温強度および溶接性、溶接部靭性に大きな影響を元素であり、先の「C+Mo/10+Nb」と表す量は、これら元素の影響の程度を勘案して決定した本発明者らの経験的指標・指数である。下限の0.06%は、高温強度、本発明においては、後述する製造条件の下で、650℃の0.2%耐力が157MPa以上を安定して確保するための最小量であり、上限の0.12%は優れた溶接性、溶接部靭性を維持できる範囲で、コストも勘案して限定したものである。したがって、技術的・冶金的な意味での上限値ではない。
上記に述べた限定された鋼成分において、優れた高温強度と低温靭性を両立する溶接構造用高張力鋼を得るためには、製造条件も本発明の通りに限定することが必要である。
以下、その理由について説明する。
熱間圧延に先立つ加熱温度を1000〜1300℃に限定した理由は、加熱時のオーステナイト粒を小さく保ち、圧延組織の微細化を図るためである。1300℃は加熱時のオーステナイトが極端に粗大化しない上限温度であり、加熱温度がこれを超えるとオーステナイト粒が粗大混粒化し、変態後の組織も粗大化するため鋼の靭性が著しく劣化する。一方、加熱温度が低すぎると、板厚によっては後述する圧延終了温度の確保が困難となるばかりでなく、オーステナイトの未再結晶温度を上昇させ、熱間圧延時の制御圧延の効果を最大限に発揮させたり、析出硬化を発現させるためのNbの溶体化の観点から下限を1000℃に限定した。
上述のような条件で加熱した鋳片または鋼片を、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上とし、850℃以上で熱間圧延を終了した後、放冷する。オーステナイト未再結晶温度域での圧延を行うことによって、実質的にオーステナイト粒を細粒化するため、少なくとも30%以上の累積圧下量が必要である。圧延終了温度が850℃を下回ると、比較的C量の低い本発明においては、フェライトが変態析出し、フェライトを加工(圧延)する恐れがあり、低温靭性確保の点で好ましくない。また、フェライトが変態しない場合でも、過度な低温での圧延は、オーステナイト粒径に起因する焼入性を必要以上に低下させ、高温強度確保に必要な変態強化が得られ難くなるため、圧延終了温度は850℃以上に限定する。
熱間圧延終了後は放冷としたが、これは本発明の成分であれば、放冷で概ね40〜60キロ級の強度が得られるためである。必ずしも圧延後の加速冷却を否定するものではないが、冷却の均一性など製造容易性の観点では放冷の方が明らかに優位であり、本発明では放冷に限定した。
以下実施例に基づいて本発明の効果を詳細に説明する。
転炉−連続鋳造−厚板工程で種々の鋼成分の鋼板(厚さ19〜80mm)を製造(圧延後の冷却はいずれも放冷)し、その材質を調査した。
第1表に比較鋼とともに本発明鋼の鋼成分を、第2表に鋼板の製造条件と諸特性を示す。なお、常温強度はJIS Z 2241に規定される試験方法に準拠し、試験片は圧延方向に直角方向に採取したJIS Z 2201に規定される1A号試験片(板厚50mm以下)または同4号試験片(板厚50mm超、1/4板厚位置より採取)を用いた。また、シャルピー衝撃試験はJIS Z 2242に準拠し、試験片は圧延方向に1/4板厚位置から採取したJIS Z 2202に規定される2mmVノッチ試験片を用いた。さらに、高温強度は、JIS G 0567に規定される試験方法に準拠し、圧延方向に直角方向に1/4板厚位置から採取した直径10mmの丸棒試験片を用いた。さらに、再現HAZ靭性は、再現熱サイクル装置により、1400℃に10秒保持後、800〜500℃の冷却時間が100秒となる熱サイクルを付与した短冊試験片から、2mmVノッチシャルピー試験片を採取して試験に供した。
本発明法にしたがって製造した鋼板(本発明鋼)は、すべて良好な特性、即ち、降伏強さ(MPa)、引張り強さ(MPa)、vTrs(℃)、650℃での耐力(降伏強さMPa)および再現HAZ靭性vE(J)について全て良好であった。これに対し、本発明によらない比較鋼は、いずれかの特性が劣っていた。
比較鋼19は、個々の元素は本発明の限定範囲にあるが、C、Mo、Nbの総量(C+Mo/10+Nbの量)が低いため、650℃での耐力(降伏強さ)が低い。比較鋼20は、Nbが高いため、再現HAZ靭性が低い。比較鋼21は、Mo無添加のため、高温強度が低い。比較鋼22は、C量が低いために常温、高温強度とも低い。比較鋼23は、C量が高いため母材靭性、再現HAZ靭性とも劣位であり、また、Nb無添加のため、高温強度も低い。
また、鋼成分は本発明鋼5と同じであるが、比較鋼5−1は、γ未再結晶温度域の累積圧下量が小さいため母材靭性に劣り、比較鋼5−2は、圧延終了温度が低いためフェライトが加工されたためと思われるが、母材靭性、高温強度に劣る。
Figure 2009263725
Figure 2009263725

Claims (4)

  1. 成分が質量%で、
    C:0.01〜0.10%、
    Si:0.60%以下、
    Mn:0.2〜2.0%、
    P:0.020%以下、
    S:0.010%以下、
    Mo:0.05〜0.20%、
    Nb:0.01〜0.10%、
    Al:0.060%以下、
    N:0.001〜0.006%
    を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ、
    0.06≦C+Mo/10+Nb≦0.12%
    を満足する鋳片または鋼片を、1000〜1300℃の温度に加熱し、オーステナイト未再結晶温度域での累積圧下量を30%以上として850℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、放冷することを特徴とする高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
  2. さらに、質量%で
    V:0.01〜0.20%、
    Ti:0.005〜0.025%
    の範囲で1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
  3. さらに、質量%で
    Ni:0.05〜0.50%、
    Cu:0.05〜0.50%、
    Cr:0.05〜1.0%、
    B:0.0002〜0.003%、
    Mg:0.0002〜0.005%
    の範囲で1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
  4. さらに、質量%で
    Ca:0.0005〜0.004%、
    REM:0.0005〜0.008%
    の範囲で1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高温強度と低温靭性に優れる溶接構造用鋼の製造方法。
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