JP2009263143A - ポリシラン修飾シリコン細線の製造方法およびシリコン膜の形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温で熱処理を施すことなく、結晶性の高い良好なシリコン膜を形成することが可能なシリコン膜の形成方法を提供する。
【解決手段】ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を調製(S101)したのち、基体の上にポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を用いて塗布膜を形成(S102)し、この塗布膜を加熱する(S103)ことにより、シリコン膜を形成する。これにより、高温で加熱せずに、塗布膜中においてシリコンの結晶化が促進される。
【選択図】図1
【解決手段】ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を調製(S101)したのち、基体の上にポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を用いて塗布膜を形成(S102)し、この塗布膜を加熱する(S103)ことにより、シリコン膜を形成する。これにより、高温で加熱せずに、塗布膜中においてシリコンの結晶化が促進される。
【選択図】図1
Description
本発明は、塗布法によりシリコン膜を形成する際に好適なポリシラン修飾シリコン細線の製造方法およびそれを用いたシリコン膜の形成方法に関する。
近年、液晶ディスプレイなどの普及に伴い、それに搭載される薄膜トランジスタや受光素子などの開発が進められている。これらの薄膜トランジスタや受光素子などのデバイスでは、半導体膜として、非晶質シリコン膜や多結晶シリコン膜が用いられている。
従来の非晶質シリコン膜や多結晶シリコン膜の形成方法としては、水素化シランガスを用いた熱CVD(Chemical Vapor Deposition )法、プラズマCVD法、光CVD法、蒸着法あるいはスパッタ法などが利用されている。一般的に、非晶質シリコン膜の形成にはプラズマCVD法(例えば、非特許文献1参照。)、多結晶シリコン膜の形成には熱CVD法(例えば、非特許文献2参照。)がそれぞれ広く用いられている。
プラズマCVD法により非晶質シリコン膜を形成する場合には、原料ガスとしてシラン(SiH4 )や、ジシラン(Si2 H6 )などの水素化シランガスをグロー放電により分解し、基板上に成長させる。基板としては、結晶シリコン、ガラスあるいは耐熱プラスチックなどが用いられ、約400℃以下の温度で加熱する。このプラズマCVD法では、大面積のものを比較的低コストで作製できる。なお、多結晶シリコン膜は、このようにして形成された非晶質シリコン膜に対し、パルス発振のエキシマレーザを約25nsの間隔で照射する。これにより非晶質シリコン膜が加熱・溶解され、再結晶化して多結晶シリコン膜となる。
その他にも、高次水素化シランを用いたCVD法により、非晶質シリコン膜を形成する方法が提案されている。具体的には、高次水素化シランガスを大気圧以上の圧力下で熱分解する方法(例えば、特許文献1参照。)、環状水素化シランガスを熱分解する方法(例えば、特許文献2参照。)、分岐状水素化シランを用いる方法(例えば、特許文献3参照。)、トリシラン以上の高次水素化シランガスを480℃以下で熱CVDする方法(例えば、特許文献4参照。)などである。
ところが、これらのCVD法には、原料として水素化シランをガス状で用いるため、表面に凹凸のある基体上には良好なステップカバレージを有する膜が得られにくいという問題がある。また、膜形成速度が遅いため、スループットが低いことによるデバイスの歩留まり低下といった問題もある。その他に、気相中で粒子が発生することによる装置の汚染や、プラズマCVD法においては高周波発生装置や高真空装置などの複雑で高価な装置が必要であることなどの問題もある。しかも、これらCVD法により形成された非晶質シリコン膜を多結晶シリコン膜に変換するには、上記したようなエキシマレーザなどによるレーザ結晶化プロセスや、より高温での加熱処理が不可欠である。
その一方で、液体状の水素化シランを用いてシリコン膜を形成する方法が提案されている。具体的には、膜の原料としてガス状の水素化シランを冷却した基体上で液状化することにより吸着させ、その水素化シランを化学的に活性な原子状の水素と反応させてシリコン系の薄膜を堆積させる方法が知られている(例えば、特許文献5参照。)。ところが、この方法では、原料の気化と冷却とを続けて行うため、複雑で高価な装置が必要であり、また膜厚の制御も困難であった。さらに、塗布膜への成膜エネルギーが原子状の水素からのみ与えられるため、膜形成速度が遅く、加えて電子材料としての特性を有するシリコン膜を得るためには加熱処理が必要となる。このことから、スループットが低いという問題もある。なお、この方法は、LSI(Large Scale Integration :大規模集積回路)での層間絶縁膜や平坦化膜等の酸化シリコン膜の形成には適用されているが、非晶質あるいは多結晶などのシリコン膜用には適用されていない。
また他に、液体状の水素化シランを用いてシリコン膜を形成する方法としては、液体状の水素化シランを基体上に塗布したのちに、加熱処理を施す方法、いわゆる塗布法が知られている(例えば、特許文献6参照。)。さらに、液体状の水素化シランに単結晶シリコンの微粒子を混合させて用いる方法(例えば、特許文献7参照。)や、合成された粒子状の結晶シリコンの表面をポリシランで修飾したものを用いる方法(例えば、特許文献8参照。)なども知られている。
また、周辺技術として、結晶シリコンにアルキル鎖を介してポリシランを結合させる技術も知られている(例えば、特許文献9参照。)。
Spear W.E.,Solid State Com.,1975年,第17巻,p.1193 Kern W.,J.Vac.Sci.Technol.,1977年,第14(5)巻,p.1082 特公平04−062073公報
特公平05−000469公報
特開昭60−026665号公報
特公平05−056852号公報
特開平01−296611号公報
特開平07−267621号公報
特開2005−332913号公報
特開2007−277038号公報
特開2001−040095号公報
Spear W.E.,Solid State Com.,1975年,第17巻,p.1193 Kern W.,J.Vac.Sci.Technol.,1977年,第14(5)巻,p.1082
しかしながら、上記した特許文献6〜8の技術では、以下のような問題があった。すなわち、特許文献6の技術では、400℃程度で加熱処理することにより非晶質シリコン膜が形成されるが、この非晶質シリコン膜を多結晶シリコン膜に変換するには、非晶質シリコン膜を1000℃程度の高温で加熱処理するプロセス、あるいはエキシマレーザなどによるレーザ結晶化プロセスが不可欠である。また、特許文献7の技術では、多結晶シリコンを含む膜が形成されるが、結晶シリコンと水素化シランとの界面に欠陥が生じやすい傾向にある。しかも、特許文献7の技術では、欠陥の少ない連続膜の形成には、単結晶シリコン微粒子の表面酸化膜を除去するための煩雑な工程が必要であった。また、特許文献8の技術では、多結晶シリコンを含む膜が形成されるが、その膜の結晶性は十分ではなかった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、例えば、低温で加熱処理をしても結晶性が高いシリコン膜を形成することが可能なポリシラン修飾シリコン細線の製造方法およびそれを用いたシリコン膜の形成方法を提供することにある。
本発明のポリシラン修飾シリコン細線の製造方法は、シリコン細線とポリシランとを含む混合液に光照射し、シリコン細線の表面にポリシランを結合させるものである。
本発明のシリコン膜の形成方法は、シリコン細線の表面にポリシランが結合したポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を基体に接触させる工程と、その液体と基体との接触面に光照射および熱処理のうちの少なくとも一方の処理をする工程とを含むものである。
本発明のポリシラン修飾シリコン細線の製造方法では、シリコン細線とポリシランとを含む混合液に光照射することにより、シリコン細線の表面に共有結合を介してポリシランが結合する。また、本発明のシリコン膜の形成方法では、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を用いることにより、その液体と基体との接触面を高温で加熱せずに、その接触面上においてシリコンの結晶化が促進される。
本発明のポリシラン修飾シリコン細線の製造方法によれば、シリコン細線とポリシランとを含む混合液に光照射し、シリコン細線の表面に共有結合を介してポリシランを結合させるようにしたので、高温で加熱せずに結晶性の高いシリコン膜を形成する場合に好適な材料を容易に製造することができる。また、本発明のシリコン膜の形成方法によれば、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を用いたので、高温での熱処理を施すことなく、結晶性の高い良好なシリコン膜を形成することができる。また、例えば、CVD法などの真空プロセスを必要とする方法よりも、高価で複雑な装置を必要としないので、簡便かつ低コストでシリコン膜を形成することができ、さらに、煩雑な工程も低減させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の一実施の形態に係るポリシラン修飾シリコン細線は、例えば、薄膜トランジスタ、受光素子、LSIあるいは光電変換素子などのデバイスが備えるシリコン膜の材料として用いられるものであり、シリコン細線の表面にポリシランが結合したものである。
シリコン細線は、結晶質シリコンにより構成されていてもよいし、結晶質シリコンと非晶質シリコンとが混在して構成されていてもよい。中でも、非晶質シリコンを含んで構成されているものが好ましい。シリコン膜の形成に用いる場合に、溶媒との相溶性あるいは分散媒に対する分散性が向上し、塗布性が向上するからである。このシリコン細線は、構成元素としてケイ素を含んでいるが、ケイ素の他に、他の元素、例えば、水素、ハロゲン、炭素、窒素あるいは酸素を含んでいてもよい。他の元素としては、水素を含んでいることが好ましい。シリコン膜の形成に用いる場合に、不純物の少ない良好な膜が得られるからである。
また、シリコン細線の形状は、細長い形状であれば任意であるが、ひも状、ロッド状あるいはコイル状、またはロッド状とコイル状とを組み合わせた形状となっているものが好ましい。上記した形状のシリコン細線としては、例えば、シリコンワイヤーやシリコンロッドなどが挙げられる。
シリコン細線の直径および長さは、任意である。ここで言う「直径」とは、シリコン細線の断面が円となることを限定するものではなく、長さに対しての平均の幅(径)という意味である。ポリシラン修飾シリコン細線をシリコン膜の形成に用いた場合には、このシリコン細線の直径および長さによって、形成されるシリコン膜の膜厚がある程度規定されることとなる。すなわち、デバイスの製造に用いる場合には、要求されるシリコン膜の膜厚によって、シリコン細線の直径および長さを設定することとなる。よって、この場合には、シリコン細線は、直径が1nm以上10μm以下であると共に長さが1nm以上10μm以下のものとなる。シリコン膜の形成に用いる場合には、シリコン細線の直径および長さは、いずれも要求されるシリコン膜の膜厚よりも小さいほうが好ましい。より良好なシリコン膜が形成されるからである。
シリコン細線の表面に結合したポリシランは、シリコン細線の表面にあるケイ素原子とポリシランが有するケイ素原子とが共有結合を介して結合したものである。この結合したポリシランは、例えば、複数のケイ素原子が共有結合により連結して構成された主鎖に、ケイ素あるいはケイ素以外の原子が結合して構成されたものである。このポリシランがシリコン細線の表面に共有結合を介して結合していることにより、シリコン膜の形成に用いる場合に、溶媒との相溶性あるいは分散媒に対する分散性が向上し、塗布性が向上する。結合したポリシランは、化1で表される鎖状構造および化2で表される環状構造のうちの少なくとも1種を有することが好ましい。シリコン膜の形成に用いる場合の塗布性がより向上するからである。なお、化1中のR1は互いに同一でもよいし、異なってもよく、化2中のR2についても同様である。
(化1)
−Sin R12n+1
(R1は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。nは2以上の整数である。)
−Sin R12n+1
(R1は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。nは2以上の整数である。)
(化2)
−Sim R22m-1
(R2は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。mは3以上の整数である。)
−Sim R22m-1
(R2は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。mは3以上の整数である。)
化1中のnが2以上である、および化2中のmが3以上であるのは、この範囲であると、溶媒との相溶性あるいは分散媒に対する分散性が向上するからである。
R1は、例えば、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびハロゲンからなる群より選択される1種あるいは2種以上の原子を含んで構成されている。これらの原子あるいは原子団(−R1)としては、例えば、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基あるいはチオール基や、カルボニル基を有する基、エステル基を有する基あるいはアミド基を有する基や、それらの誘導体が挙げられる。これらのことは、R2についても同様である。
化1に示した鎖状構造としては、R1が水素あるいはハロゲンである構造が好ましく、中でもR1が水素原子である構造(鎖状水素化シリル基;−Sin H2n+1)が好ましい。この鎖状水素化シリル基としては、例えば、ジシリル基(−Si2 H5 )、トリシリル基(−Si3 H7 )、ノーマルテトラシリル基(−Si4 H9 )、イソテトラシリル基(−Si4 H9 )、ノーマルペンタシリル基(−Si5 H11)、イソペンタシリル基(−Si5 H11)、ネオペンタシリル基(−Si5 H11)、ノーマルヘキサシリル基(−Si6 H13)、ノーマルへプタシリル基(−Si7 H15)、ノーマルオクタシリル基(−Si8 H17)あるいはノーマルノナシリル基(−Si9 H19)またはこれらの異性体が挙げられる。
化2に示した環状構造としては、R2が水素あるいはハロゲンである構造が好ましく、中でもR2が水素である構造(環状水素化シリル基;−Sim H2m-1)が好ましい。環状水素化シリル基としては、例えば、シクロトリシリル基(−Si3 H5 )、シクロテトラシリル基(−Si4 H7 )、シクロペンタシリル基(−Si5 H9 )、シクロヘキサシリル基(−Si6 H11)あるいはシクロヘプタシリル基(−Si7 H13)などが挙げられる。
このポリシラン修飾シリコン細線は、例えば、以下のように製造される。
まず、例えば、シリコン細線を用意する。シリコン細線としては、既成品を用いてもよく、合成法により製造したものを用いてもよい。中でも、合成法により製造されたシリコン細線は、既成品のシリコン細線を用いた場合と比較して、溶媒または分散媒に相溶あるいは分散させた状態のままで、ポリシランと結合させることができるため、シリコン細線の表面に形成された酸化膜などを除去する必要がなく、煩雑な工程を低減できるため好ましい。
合成法によりシリコン細線を製造する場合には、まず、アルゴンなどの不活性ガスを充填したグローブボックス内で、フェニルシランなどのシラン化合物と、トルエンなどの有機溶媒と、ニッケル微粒子などの触媒とを含む混合分散溶液を調整する。この混合分散溶液を調整する際には、不活性ガスによりバブリングし脱水された有機溶媒にシラン化合物および触媒としてニッケルなどの微粒子を添加し、それらを溶解させると共に、分散させる。続いて、このように調整した混合分散溶液をインジェクタを介して、加圧および加熱された耐圧容器内に注入し、そののち、さらに耐圧容器内を加圧する。これにより、シリコン細線が合成される。
次に、シリコン細線をポリシランに分散させた混合液を調整する。このポリシランは、光反応性を有するものであることが好ましく、水素化ケイ素(水素化シラン)であることが好ましい。ポリシランとしては、例えば、直鎖状あるいは分岐状の鎖状シラン化合物や、単環シラン化合物や、単環シラン化合物が2つ以上のケイ素原子を共有する状態で連結されたはしご状の環状化合物あるいは単環シラン化合物が3次元的に連結されたかご状の環状化合物などの環状シラン化合物が挙げられる。具体的には、鎖状シラン化合物としては、化3で表されるシラン化合物が挙げられ、環状シラン化合物としては、化4で表されるシラン化合物が挙げられる。なお、化3中のR3は互いに同一でもよいし、異なってもよく、化4中のR4についても同様である。
(化3)
Sip R32p+2
(R3は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。pは3以上の整数である。)
Sip R32p+2
(R3は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。pは3以上の整数である。)
(化4)
Siq R42q
(R4は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。qは4以上の整数である。)
Siq R42q
(R4は式中のケイ素原子に共有結合を介して結合する原子または原子団である。qは4以上の整数である。)
化3中のpおよび化4中のqが上記した範囲であるのは、それ以外の範囲であると気体になるからである。
R3は、例えば、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素およびハロゲンからなる群より選択される1種または2種以上の原子を含んで構成されている。これらの原子あるいは原子団(−R3)としては、例えば、水素、ハロゲン、ヒドロキシル基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基あるいはチオール基や、カルボニル基を有する基、エステル基を有する基あるいはアミド基を有する基や、それらの誘導体などが挙げられる。これらのことは、R4についても同様である。
化3に示したシラン化合物としては、R3が水素である化合物(鎖状水素化シラン;Sip H2p+2)が挙げられ、具体的には、トリシラン(Si3 H8 )、ノーマルテトラシラン(Si4 H10)、イソテトラシラン(Si4 H10)、ノーマルペンタシラン(Si5 H12)、イソペンタシラン(Si5 H12)、ネオペンタシラン(Si5 H12)、ノーマルヘキサシラン(Si6 H14)、ノーマルへプタシラン(Si7 H16)、ノーマルオクタシラン(Si8 H18)あるいはノーマルノナシラン(Si9 H20)またはこれらの異性体が挙げられる。
化4に示したシラン化合物としては、R4が水素である化合物(環状水素化シラン;Siq H2q)が挙げられ、具体的には、化5で表されるシクロペンタシラン(Si5 H10)あるいはシクロテトラシラン(Si4 H8 )、シクロヘキサシラン(Si6 H12)またはシクロヘプタシラン(Si7 H14)などが挙げられる。
このようなポリシランとしては、上記したシラン化合物のうちのいずれか1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。中でも、化5に示したシクロペンタシランが好ましい。容易に入手可能であると共に、光反応性が高いからである。また、ポリシランは、合成したものをそのまま用いてもよいし、単離されたものを用いてもよい。ここで、ポリシランの合成方法の一例として、化5に示したシクロペンタシランの合成方法について説明する。シクロペンタシランを合成する場合には、まず、例えば、テトラヒドロフラン(THF)に溶解させたフェニルジクロロシランを金属リチウムで環化させてデカフェニルシクロペンタシランを合成する。次にデカフェニルシクロペンタシランを塩化アルミニウム存在下で塩化水素により処理したのち、リチウム水素化アルミニウムで処理し、続いて減圧蒸留により精製する。これによりシクロペンタシランが合成される。
最後に、上記したシリコン細線およびポリシランを含む混合液に光照射する。この光照射により、シリコン細線表面のケイ素原子とケイ素原子以外の原子(例えば、水素原子)との結合(Si−H結合)が開裂すると共に、ポリシランのケイ素原子とケイ素原子との結合およびケイ素原子とケイ素原子以外の原子との結合が開裂し、シリコン細線の表面に共有結合を介してポリシランが結合することとなる。これにより、ポリシラン修飾シリコン細線が製造される。この光照射を施す際の光の波長領域としては、紫外線領域であれば、任意に設定可能であるが、中でも、200nm以上450nm以下が好ましい。特に、200nm以上320nm未満の光と320nm以上450nm以下の光とを照射することが好ましい。200nm以上320nm未満の光で、ポリシランのSi−Si結合およびSi−H結合が開裂し、320nm以上450nm以下の光でSi−Si結合およびSi−H結合が再結合するからである。また、光照射する際の光源としては、例えば、低圧あるいは高圧の水銀ランプや、重水素ランプや、アルゴン、クリプトンあるいはキセノンなどの希ガスの放電光が挙げられ、その他に、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガリウム)レーザや、アルゴンレーザや、炭酸ガスレーザや、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArFあるいはArClなどのエキシマレーザが挙げられる。
本実施の形態におけるポリシラン修飾シリコン細線の製造方法では、シリコン細線とポリシランとを含む混合液に光照射し、シリコン細線の表面に共有結合を介してポリシランを結合させるようにしたので、高温で加熱せずに結晶性の高いシリコン膜を形成する場合に好適な材料を製造することができる。よって、このポリシラン修飾シリコン細線を用いてシリコン膜を形成すれば、高温での熱処理を施すことなく、結晶性の高い良好なシリコン膜を形成することができる。また、ポリシランとして、光反応性を有するものや、水素化ケイ素を用いることにより、容易にポリシランをシリコン細線の表面に結合させることができる。
また、シリコン細線として、合成法により製造されたものを用いることにより、シリコン細線の表面が酸素と反応することなく、シリコン細線の表面にポリシランを結合させられるため、煩雑な工程を低減させることができる。
次に、上記したポリシラン修飾シリコン細線の使用例の一例として、シリコン膜の形成方法について説明する。
図1は、シリコン膜の形成方法の流れを表している。
最初に、例えば、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を調製する(ステップS101)。このポリシラン修飾シリコン細線を含む液体は、上記したポリシラン修飾シリコン細線のいずれか1種あるいは2種以上と、溶媒(分散媒)とを混合して調製される。ポリシラン修飾シリコン細線を用いることにより、後述する塗布膜を加熱する工程において、加熱温度が低くても結晶性の高い良好なシリコン膜が形成される。
溶媒は、ポリシラン修飾シリコン細線が相溶あるいは分散するものであれば、任意に設定可能である。この溶媒としては、例えば、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレンあるいはシクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系溶媒や、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテルあるいはp−ジオキサンなどのエーテル系溶媒や、プロピレンカーボネート、γ−ブチルラクトン、n−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルスルホキシドあるいはシクロヘキサノンなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、溶媒としては、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体は、ポリシラン修飾シリコン細線を製造する際に用いた上記のポリシランを用いてもよい。
また、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体は、上記のポリシランに光照射することにより合成される光重合体を含んでいてもよい。これにより、シリコン膜の形成速度が向上すると共に良好なシリコン膜が形成される。この光重合体は、例えば、不活性ガス雰囲気下で上記のポリシランに光照射することにより重合される。この際、照射する光の波長は、任意に設定可能であり、例えば、ポリシラン修飾シリコン細線を製造する際の光照射と同様の条件である。
また、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体は、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、ラジカル発生剤、p型半導体を形成する際に用いるp型不純物またはn型半導体を形成する際に用いるn型不純物などが挙げられる。ラジカル発生剤としては、例えば、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物あるいはアゾ系化合物が挙げられる。
次に、基体の上に、ステップS101において調製したポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を塗布することにより、基体とポリシラン修飾シリコン細線を含む液体とを接触させ、ポリシラン修飾シリコン細線を含む塗布膜を形成する(ステップS102)。ここで用いる基体は、任意であり、例えば、ガラス、石英あるいはプラスチックなどの基板や、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、非晶質シリコン膜あるいは多結晶シリコン膜などのシリコン膜が挙げられる。塗布膜を形成する方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、スプレー法あるいは浸漬法が挙げられる。
また、この場合、塗布膜を形成しながら光照射してもよいし、塗布膜を形成したのちに、塗布膜に光照射してもよい。これにより、ポリシラン修飾シリコン細線が有するポリシラン同士が結合し、Si−Si結合のネットワークが3次元的に構築され、より良好なシリコン膜が形成される。また、後述する塗布膜を加熱する工程において、加熱時間が短縮される。光照射する際の好ましい条件は、ポリシラン修飾シリコン細線を製造する際の光照射の条件と同様である。なお、この光照射する際の出力によっては、光照射により塗布膜が加熱されるため、後述の加熱する工程と併せて施してもよい。
次に、塗布膜を加熱する(ステップS103)。このように基体と塗布膜との接触面に熱処理を施すことにより、塗布膜中のポリシラン修飾シリコン細線の表面に結合しているポリシランが熱分解する。すなわち、ケイ素原子とケイ素原子との結合の一部あるいは全部、およびケイ素原子とケイ素以外の原子との結合の一部あるいは全部が開裂する。こののち、Si−Si結合が再構築する。
加熱する温度は、120℃以上1000℃以下であればよい。この範囲内であれば、ポリシラン修飾シリコン細線の表面に結合しているポリシランの熱分解が起こり、十分な特性を有する緻密で良好なシリコン膜が形成されるからである。この場合、200℃以上600℃以下であれば、より結晶性の高いシリコン膜が形成され、250℃以上450℃以下であれば、十分な特性を有するシリコン膜が形成される。
これにより、多結晶シリコンを含む膜あるいは多結晶シリコン膜が形成される。
本実施の形態におけるシリコン膜の形成方法では、基体の上にポリシラン修飾シリコン細線を含む塗布膜を形成することにより、この塗布膜を加熱する工程の際に、そのシリコン細線の表面に結合したポリシランが有するケイ素原子とケイ素原子との結合およびケイ素原子とケイ素原子以外の原子との結合が開裂したのち、ケイ素原子とケイ素原子とが再結合する。この際、シリコン細線が含む結晶質シリコンがケイ素原子を介して連結されることとなる。よって、加熱温度が低くても結晶化が促進される。
このシリコン膜の形成方法によれば、基体の上に、上記したポリシラン修飾シリコン細線を含む塗布膜を形成するので、この塗布膜を加熱する工程の際に、加熱温度が、例えば、1000℃に至らなくても結晶性が高い良好なシリコン膜を形成することができる。また、例えば、CVD法などの真空プロセスを必要とする方法よりも、高価で複雑な装置を必要としないので、簡便かつ低コストでシリコン膜を形成することができ、よって設備費も低減させることができる。さらに、煩雑な工程も低減させることができる。この場合には、結晶質で良好なシリコン膜である多結晶シリコン膜、または非晶質シリコンおよび多結晶シリコンを含む膜を形成することができる。
さらに、塗布膜を形成しながら光照射する、あるいは塗布膜を形成したのちに光照射することにより、結晶性が高い良好なシリコン膜が形成されると共に加熱時間を短縮することができる。
なお、上記したシリコン膜の形成方法では、塗布膜が形成された状態の基体に、熱処理、または熱処理および光照射の双方の処理を施す場合について説明したが、高いエネルギーで光照射することにより、光照射のみでシリコン膜を形成することも可能である。また、光照射のみでシリコン膜を形成する場合には、塗布法に限らず、浸漬法によりシリコン膜を形成することが可能となる。具体的には、まず、光照射の波長範囲における光の透過率が高い石英セルにポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を充填する。続いて、その石英セルの外側から、例えばスポットUV照射器を用いて光照射する。これにより、石英セルの内壁面の光照射された領域にシリコン膜が形成される。ただし、上記したように、基体とポリシラン修飾シリコン細線を含む液体との接触面に熱処理および光照射の双方の処理を施すほうが、結晶性の高い良好なシリコン膜を形成することができる。
本発明の実施例について詳細に説明する。
(実施例1)
上記したポリシラン修飾シリコン細線を製造した。
上記したポリシラン修飾シリコン細線を製造した。
最初に、アルゴンを充填したグローブボックス内において、アルゴンでバブリングした脱水トルエン100cm3 (100ml)にフェニルシラン0.03gを溶解させると共に、直径5nm〜6nmのニッケル微粒子0.8mgに分散させ、フェニルシラン/ニッケル微粒子混合液を調製した。次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で、チタン製の耐圧容器を密閉したのち、その耐圧容器にポンプおよびインジェクタを連結させた。続いて、アルゴンでバブリングした脱水トルエンをインジェクタを介して耐圧容器内に注入することにより、耐圧容器内の圧力を3.4MPaとなるようにした。こののち、耐圧容器を加熱して460℃とした。次に、この耐圧容器内にインジェクタを介してフェニルシラン/ニッケル微粒子混合液0.340cm3 (340μl)を注入したのち、さらにアルゴンでバブリングした脱水トルエンを注入し、耐圧容器内の圧力を23.4MPaとし、そのまま10分間反応させた。反応終了後、耐圧容器が室温になるまで冷却した。次に、耐圧容器の反応生成物をグローブボックス内で回収した。
この反応生成物を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、直径が10nm〜20nm、長さが1〜10μm程度のひも状の形状を有していることがわかった。次に、この反応生成物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、電子回折像から結晶性のシリコンワイヤーであることが確認された。さらに、反応生成物のIRスペクトルを測定したところ、2000cm-1付近にSi−H結合に起因したピークが確認された。この結果は、反応生成物の表面のSi−H結合が検出されたことを表している。これらのことから、ひも状のシリコン細線が合成されたことが確認された。
次に、ひも状のシリコン細線をポリシランであるシクロペンタシランに分散させ、分散液を調製したのち、この分散液に光照射することにより、ひも状のシリコン細線とシクロペンタシランとを反応させた。最後に、シクロペンタシランにより洗浄することにより、ポリシランの未反応物を取り除き、光反応生成物を回収した。
この光反応生成物を透過型電子顕微鏡で観察したところ、電子回折像から結晶性のシリコンワイヤーが含まれることがわかった。また、光反応生成物のIRスペクトルを測定したところ、2000cm-1付近にSi−H結合に起因したピークと、2100cm-1付近にSi−H2 結合に起因したピークとが確認された。この結果は、反応生成物の表面のSi−H結合とポリシランが有するSi−H2 結合とが検出されたことを表している。これらのことから、ひも状のシリコン細線の表面にポリシランが共有結合を介して結合したポリシラン修飾シリコン細線が製造されたことが確認された。
(実施例2−1)
次に、実施例1のポリシラン修飾シリコン細線を用いてシリコン膜を形成した。
次に、実施例1のポリシラン修飾シリコン細線を用いてシリコン膜を形成した。
まず、実施例1のポリシラン修飾シリコン細線を溶媒であるトルエンに15重量%の濃度になるように分散させたのち、この分散液を基体に滴下して、スピンコート法により塗布膜を形成した。続いて、350℃で加熱することで金属光沢を有する黄色から褐色のシリコン膜を形成した。
(実施例2−2)
塗布膜を形成しながら光照射したことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。この際、形成されたシリコン膜は、金属光沢を有する褐色であった。
塗布膜を形成しながら光照射したことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。この際、形成されたシリコン膜は、金属光沢を有する褐色であった。
(実施例2−3)
塗布膜を形成したのち、120℃で加熱することで溶媒を除去し、そののち光照射したことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。この際、形成されたシリコン膜は、金属光沢を有する褐色であった。
塗布膜を形成したのち、120℃で加熱することで溶媒を除去し、そののち光照射したことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。この際、形成されたシリコン膜は、金属光沢を有する褐色であった。
(比較例1−1)
ポリシラン修飾シリコン細線に代えて、ポリシラン修飾シリコン微粒子を用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。この際、ポリシラン修飾シリコン微粒子は以下の手順により製造した。すなわち、まず、アルゴンを充填したグローブボックス内で、容量300cm3 の4つ口マントルフラスコに、滴下ロート、バブリング用キャピラリーおよび排気管を取り付けると共にフラスコ内に攪拌子を入れた。次に、予め溶存酸素をアルゴン置換した水分濃度10ppm以下のTHF(テトラヒドロフラン)150cm3 とリチウムとをフラスコ内に入れた。次に、0℃でアルゴンによりバブリングすると共に攪拌した状態で、滴下ロートを介して液状のジフェニルジクロロシランを40cm3 を滴下したのち、リチウムが完全に消失するまで、12時間攪拌を続けた。そののち、未反応物と副生成物を除去し、末端がシリルアニオン化されたポリシランを得た。
ポリシラン修飾シリコン細線に代えて、ポリシラン修飾シリコン微粒子を用いたことを除き、実施例2−1と同様の手順を経た。この際、ポリシラン修飾シリコン微粒子は以下の手順により製造した。すなわち、まず、アルゴンを充填したグローブボックス内で、容量300cm3 の4つ口マントルフラスコに、滴下ロート、バブリング用キャピラリーおよび排気管を取り付けると共にフラスコ内に攪拌子を入れた。次に、予め溶存酸素をアルゴン置換した水分濃度10ppm以下のTHF(テトラヒドロフラン)150cm3 とリチウムとをフラスコ内に入れた。次に、0℃でアルゴンによりバブリングすると共に攪拌した状態で、滴下ロートを介して液状のジフェニルジクロロシランを40cm3 を滴下したのち、リチウムが完全に消失するまで、12時間攪拌を続けた。そののち、未反応物と副生成物を除去し、末端がシリルアニオン化されたポリシランを得た。
一方、アルゴンを充填したグローブボックス内で、3つ口フラスコに滴下ロートを取り付けると共に攪拌子を入れたのち、そのフラスコ内に予め溶存酸素をアルゴン置換した水分濃度10ppm以下の1,2−ジメトキシエタン70cm3 、ナフタレン3gおよびナトリウム0.7gを添加し、攪拌した。続いて、滴下ロートを介して、予め溶存酸素をアルゴン置換した水分濃度10ppm以下の1,2−ジメトキシエタンに溶解した四塩化ケイ素(SiCl4 )を攪拌した状態のナフタレンおよびナトリウムを含む1,2−ジメトキシエタンに滴下し、そのまま12時間反応させた。続いて、その反応液からナフタレン、ナトリウムおよび塩化ナトリウムを除去することにより、表面にClが結合したシリコン微粒子を生成した。
次に、このシリコン微粒子を分散させた1,2−ジメトキシエタンと、シリルアニオン化されたポリジフェニルシランのリチウム付加体をテトラヒドロフランに溶解させた溶液とを混合し、十分に反応させたのち、冷水が充填されたビーカー内に滴下し沈殿物を得た。この沈殿物を回収し、シクロヘキサンで洗浄し、IR、1H−NMR、29Si−NMRで分析したところ、ポリジフェニルシランが表面に結合したシリコン微粒子が得られたことが確認された。
次に、溶存酸素をアルゴン置換した水分濃度10ppm以下のトルエンに、ポリジフェニルシランが表面に結合したシリコン微粒子および塩化アルミニウムを添加したのち、塩化水素ガスを用いてバブリングした。続いて、このトルエン溶液中の溶存塩化水素をアルゴンでバブリングすることにより十分に置換したのち、水素化アルミニウムリチウムのエーテル溶液を滴下し、12時間反応させた。続いて、この反応液を濾過し、蒸留により反応生成物を精製した。この反応生成物を1H−NMRおよび29Si−NMRにより分析したところ、フェニル基が全て水素化されたポリシラン修飾シリコン微粒子が生成されたことが確認された。また、このポリシラン修飾微粒子をSEMにより観察したところ、粒径が1〜10nm程度であった。
(比較例1−2〜1−4)
ポリシラン修飾シリコン細線に代えて、光照射したシクロペンタシランを用いたことを除き、実施例2−1〜2−3と同様の手順を経た。
ポリシラン修飾シリコン細線に代えて、光照射したシクロペンタシランを用いたことを除き、実施例2−1〜2−3と同様の手順を経た。
(比較例1−5〜1−7)
シリコン膜を形成したのち、さらに、800℃で加熱処理したことを除き、比較例1−1〜1−3と同様の手順を経た。
シリコン膜を形成したのち、さらに、800℃で加熱処理したことを除き、比較例1−1〜1−3と同様の手順を経た。
これらの実施例2−1〜2−3および比較例1−1〜1−7のシリコン膜について、その膜質を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
シリコン膜の膜質を調べる際には、ラマンスペクトルを測定することにより、評価した。詳細には、シリコン膜が非晶質シリコンを含むと480付近のブロードなピークが検出され、多結晶シリコンを含むと510付近にシャープなピークが検出される。また、シリコン膜が多結晶シリコン膜の場合、510付近に大きなシャープなピークが検出される。これにより、多結晶シリコンと非晶質シリコンを含むシリコン膜と、多結晶シリコン膜とに分類した。
また実施例2−1および比較例1−1のシリコン膜について結晶化度をラマンスペクトルにより調べたところ、表1に示した結果が得られた。結晶化度は、比較例1−1の結晶化度を1として、実施例2−1の結晶化度の相対値として評価した。
表1に示したように、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を用いた実施例2−1〜2−3およびポリシラン修飾シリコン微粒子を含む液体を用いた比較例1−1では、多結晶シリコンおよび非晶質シリコンを含む膜が形成された。また、実施例2−1では、比較例1−1よりも結晶化度が1.5倍高かった。一方、加熱処理の温度は同じであるが、ポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を用いなかった比較例1−2〜1−4では、非晶質シリコンからなる膜が形成され、さらに800℃で加熱処理した比較例1−5〜1−7では、多結晶シリコンからなる膜が形成された。この結果は、ポリシラン修飾シリコン細線あるいはポリシラン修飾シリコン微粒子を用いることにより、低温で加熱処理してもシリコン膜の結晶化が促進するが、より結晶性の高いシリコン膜を形成するにはポリシラン修飾シリコン細線を用いたほうが有利であることを表している。
なお、本実施例では示していないが、電子スピン共鳴法(ESR;Electron Spin Resonance )により欠陥評価をしたところ、実施例2−1〜2−3では、比較例1−2〜1−4よりも欠陥密度が約一桁低くなった。
このことから、ポリシラン修飾シリコン細線を用いた本実施の形態のシリコン膜の形成方法では、高温で熱処理を施すことなく、多結晶シリコンを含み、結晶性の高い良好なシリコン膜を形成することができることが確認された。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明のポリシラン修飾シリコン細線の製造方法およびそれを用いたシリコン膜の形成方法を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例において説明した態様に限定されるものではなく、それらの構成は自由に変更可能である。
Claims (11)
- シリコン細線とポリシランとを含む混合液に光照射し、前記シリコン細線の表面に前記ポリシランを結合させる
ポリシラン修飾シリコン細線の製造方法。 - 前記ポリシランとして、光反応性を有するものを用いる
請求項1記載のポリシラン修飾シリコン細線の製造方法。 - 前記ポリシランとして、水素化ケイ素を用いる
請求項1記載のポリシラン修飾シリコン細線の製造方法。 - 前記シリコン細線として、合成法により製造され、ひも状、ロッド状あるいはコイル状、またはロッド状とコイル状とを組み合わせた形状のものを用いる
請求項1記載のポリシラン修飾シリコン細線の製造方法。 - シリコン細線の表面にポリシランが結合したポリシラン修飾シリコン細線を含む液体を基体に接触させる工程と、
前記液体と前記基体との接触面に、光照射および熱処理のうちの少なくとも一方の処理を施す工程と
を含むシリコン膜の形成方法。 - 前記基体の上に前記ポリシラン修飾シリコン細線を含む塗布膜を形成することにより前記液体を前記基体に接触させる請求項5記載のシリコン膜の形成方法。
- 前記シリコン細線は、合成法により製造され、ひも状、ロッド状あるいはコイル状、またはロッド状とコイル状とを組み合わせた形状を有する請求項5記載のシリコン膜の形成方法。
- 前記ポリシランは、水素化ケイ素である請求項5記載のシリコン膜の形成方法。
- 前記塗布膜を形成しながら前記光照射したのち、前記熱処理を施す請求項6記載のシリコン膜の形成方法。
- 前記塗布膜に前記光照射したのち、前記熱処理を施す請求項6記載のシリコン膜の形成方法。
- 多結晶シリコンおよび非晶質シリコンを含む膜、または多結晶シリコン膜を形成する請求項5記載のシリコン膜の形成方法。
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